JP2020164577A - ポリエステル系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】生分解性を維持し、成形体としての優れた耐衝撃性、引裂強度や引張破断伸びなどの機械特性を下げることなく、成形時の流動性が高いことから、目ヤニの発生を抑制でき、優れた成形性を得ることができるポリエステル系樹脂組成物を提供する。【解決手段】芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、及び脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含有するポリエステル系樹脂100質量部に対し、有機充填材及び/又は無機充填材(D)を20〜250質量部、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を0.01〜10質量部含有するポリエステル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、高剛性、耐衝撃性、引裂強度や引張破断伸びなどの機械特性が改良され、かつ成形性に優れたポリエステル系樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
近年、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材等、幅広い用途において、様々な生分解性樹脂が研究されている。例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等の脂肪族オキシカルボン酸系樹脂、さらにはポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂が知られている。
しかし、生分解性樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用樹脂に比べ、機械的強度が十分でない場合が多い。そのため、成形品等に加工して使用する場合には、成形加工性を改善し、且つ得られる成形品の機械強度を高めるために、生分解性樹脂にフィラーなどの充填材を配合することが行われる。
例えば、特許文献1には、脂肪族ポリエステル系樹脂に高含有量で無機充填材を添加してなる、高比重で適度な生分解性を有する樹脂組成物及び成形品が開示されており、さらにステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩を添加することで、成形性を向上できることが開示されている。
一方、ポリオレフィンフィルムを成形すると、インフレーション法においても、T−ダイ法においても、ダイスにメヤニが発生し、得られるフィルムの品質が低下するという問題が知られており、特許文献2には、その問題を解決するものとして、ポリオレフィン樹脂、顔料、ポリエチレンワックス及び金属石鹸からなるポリオレフィン着色用マスターバッチが開示され、目ヤニの発生を効果的に防止できることが記載されている。特許文献2には、金属石鹸として、炭素数8〜20の脂肪酸のマグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、アルミニウム及びタリウム塩が好適に用いられることが開示されている。
特開2014−077061号公報 特開2000−178361号公報
生分解性樹脂の成形においても、特許文献2のようにフィルムに成形する際の目ヤニの発生の問題があるが、上記特許文献1に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物では、成形時の流動性が十分でなく、押出成形などでは、成形温度を上げて成形しなければならないため、樹脂組成物の熱分解が進みやすく、目ヤニが発生する等の問題がある。
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、生分解性樹脂に高含有量で充填材を含む樹脂組成物において、流動性に優れ、また、目ヤニ等の発生が抑制され、成形加工性に優れたポリエステル系樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)などの生分解性樹脂に有機充填材及び/又は無機充填材を含む混合物に対し、上記の金属石鹸等の中でも12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を所定の割合で配合することで、他の脂肪酸金属塩に比べて、樹脂組成物としての流動性が顕著に向上し、成形時の目ヤニ等の発生も低減し、成形性も改善でき、且つ得られる成形品の機械特性も向上させることができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、下記の[1]〜[3]に存する。
[1] 脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位と芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位とを主構成単位として含む芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、及び脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位を主構成単位として含む脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含有するポリエステル系樹脂100質量部に対し、有機充填材及び/又は無機充填材(D)を20〜250質量部、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を0.01〜10質量部含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
[2] 有機充填材及び/又は無機充填材(D)が、有機充填材であることを特徴とする[1]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[3] [1]又は[2]に記載のポリエステル系樹脂組成物よりなる成形品。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、生分解性を維持し、成形体としての優れた耐衝撃性、引裂強度や引張破断伸びなどの機械特性を下げることなく、成形時の流動性が高いことから、目ヤニの発生を抑制でき、優れた成形加工性を得ることができる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物及びその成形品、特にフィルムは、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物、粉粒物若しくは固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等に広く利用することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
なお、本明細書において、“質量%”、及び“質量部”と、“質量%”及び“質量部”とは、それぞれ同義である。
また、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位と芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位とを主構成単位として含む芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、及び脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位を主構成単位として含む脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含有するポリエステル系樹脂(以下、「本発明のポリエステル系樹脂」と称す場合がある。)100質量部に対し、有機充填材及び/又は無機充填材(D)を20〜250質量部、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を0.01〜10質量部含有することを特徴とする。
なお、本発明において、脂肪族ジオールとは脂肪族炭化水素基に水酸基が2つ結合したものをいい、該脂肪族炭化水素基としては、通常直鎖脂肪族炭化水素基が用いられるが、分岐構造を有していても構わないし、環状構造を有していても構わず、それらを複数有していても構わない。また、脂肪族ジカルボン酸とは、脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が2つ結合したものをいい、該脂肪族炭化水素基としては、通常直鎖脂肪族炭化水素基が用いられるが、分岐構造を有していても構わないし、環状構造を有していても構わず、それらを複数有していても構わない。
また、芳香族ジカルボン酸とは、芳香族炭化水素基にカルボキシル基が2つ結合したものをいい、芳香族炭化水素基としては、通常、ベンゼン環骨格を有する炭化水素基であり、分岐構造を有していても構わないし、それらを複数有していても構わない。
[ポリエステル系樹脂]
本発明のポリエステル系樹脂は、以下に説明する芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有するものであり、これらのポリエステル系樹脂以外のポリエステル系樹脂、例えば芳香族ポリエステル系樹脂を含有していてもよいが、本発明のポリエステル系樹脂は、その生分解性を良好なものとするために、以下に説明する芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を50質量%以上特に70〜100質量%含むのであることが好ましく、とりわけ以下に説明する芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂のみで構成されることが好ましい。
なお、本発明のポリエステル系樹脂は、繰返し単位を有する重合体であるが、それぞれの繰返し単位は、それぞれの繰返し単位の由来となる化合物に対する化合物単位とも呼ぶ。例えば、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位を「脂肪族ジオール単位」、脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「脂肪族ジカルボン酸単位」、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「芳香族ジカルボン酸単位」とも呼ぶ。
また、ポリエステル系樹脂中の「主構成単位」とは、通常、その構成単位が当該ポリエステル系樹脂中に80質量%以上含まれる構成単位のことであり、主構成単位以外の構成単位が全く含まれない場合もある。
<芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いる芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)(以下「ポリエステル系樹脂(A)」と称す場合がある。)は、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位、および芳香族ジカルボン酸単位を主構成単位として含む芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂である。具体的には、例えば、下記式(1)で表される脂肪族ジオール単位、下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、および下記式(3)で表される芳香族ジカルボン酸単位を主構成単位とし、また、生分解性を有するものが好ましい。
−O−R−O− (1)
(式(1)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
−OC−R−CO− (2)
(式(2)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
−OC−R−CO− (3)
(式(3)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を表す。)
式(1)の脂肪族ジオール単位を与える脂肪族ジオールは、特に限定はされないが、コストと機械強度のバランスから炭素数が2以上10以下のものが好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でも、炭素数2以上4以下の脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。尚、上記脂肪族ジオールは、2種類以上を用いることもできる。
式(2)の脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分は、特に限定はされないが、コストと生分解性とのバランスから炭素数2以上12以下のものが好ましい。例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等やそのアルキルエステル等の誘導体が挙げられる。中でも、セバシン酸又はアジピン酸、アゼライン酸やそのアルキルエステル等の誘導体が好ましい。尚、上記脂肪族ジカルボン酸成分は、2種類以上を用いることもできる。
式(3)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、Rの環構造が2以下であることが好ましく、より具体的には、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等やそのアルキルエステル等の誘導体が挙げられる。中でも、生分解性の観点からRはフェニレン基であることが好ましく、式(3)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸やそのアルキルエステル等の誘導体が好ましく、テレフタル酸やそのアルキルエステル等の誘導体が特に好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸であってもよい。尚、上記芳香族ジカルボン酸成分は2種類以上を用いることもできる。
ポリエステル系樹脂(A)における芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸単位である脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位との合計100モル%に対して、融点と生分解性の観点から、好ましくは5モル%以上、より好ましくは35モル%以上、特に好ましくは40モル%以上であり、好ましくは95モル%以下、より好ましくは65モル%以下、特に好ましくは60モル%以下である。
また、本発明のポリエステル系樹脂(A)の芳香族ジカルボン酸単位に用いられる単位としては、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位、ナフタレンジカルボン酸単位やフランジカルボン酸単位等が挙げられ、好ましくは、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及びフランジカルボン酸単位が挙げられ、さらに、テレフタル酸単位が特に好ましい。
なお、テレフタル酸単位以外の芳香族ジカルボン酸単位はポリエステル系樹脂(A)の結晶性を落とさない限り、全芳香族ジカルボン酸単位中10モル%まで含んでよい。
ポリエステル系樹脂(A)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。さらに、これらの低級アルキルエステル又は分子内エステル等の誘導体であってもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸又はグリコール酸或いはその誘導体である。これら脂肪族オキシカルボン酸成分は単独でも、2種類以上の混合物としても使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(A)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
また、ポリエステル系樹脂(A)は、3官能以上の脂肪族多価アルコール、3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物、或いは3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよく、ジイソシアネート化合物やカーボネート化合物等の鎖延長剤により鎖延長されたものであってもよい。
ポリエステル系樹脂(A)が含んでいてもよい3官能以上の脂肪族多価アルコール、3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物、或いは3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分は、後述のポリエステル系樹脂(B)の項で例示するものと同様である。
ポリエステル系樹脂(A)がこれら3官能以上の成分由来の構成単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として、下限が通常0モル%であり、上限が通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
ポリエステル系樹脂(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常5,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは10,000以上500,000以下である。
ポリエステル系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。ポリエステル系樹脂(A)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
ポリエステル系樹脂(A)の融点は通常60℃以上であり、70℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上であり、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは140℃以下、特に好ましくは120℃以下である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(A)の弾性率は180〜1000MPaであることが好ましい。
融点が上記範囲外では成形性に劣り、弾性率が180MPa未満では成形加工性に問題が起こり易く、一方、弾性率が1000MPaを超えると耐衝撃強度が悪くなる傾向にある。
ポリエステル系樹脂(A)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、芳香族ジカルボン酸成分以外の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合成分の種類を選択したり、ぞれぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
本発明では、ポリエステル系樹脂(A)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上のポリエステル系樹脂(A)をブレンドして用いることができる。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(B)>
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(B)(以下「ポリエステル系樹脂(B)」と称す場合がある。)は、脂肪族ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位を主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂である。なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)は、芳香族ジカルボン酸単位を含まないことで、前述の芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)とは区別される。
本発明で用いるポリエステル系樹脂(B)は、全脂肪族ジカルボン酸単位中のコハク酸単位の割合が5モル%以上100モル%以下であることが好ましい。ポリエステル系樹脂(B)は、コハク酸単位の量が異なる脂肪族ポリエステル系樹脂の混合物であってもよく、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含まない(脂肪族ジカルボン酸単位としてコハク酸単位のみを含む)脂肪族ポリエステル系樹脂と、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂とをブレンドして、ポリエステル系樹脂(B)におけるコハク酸単位量を上記好適範囲内に調整して使用することも可能である。
より具体的には、ポリエステル系樹脂(B)は、下記式(4)で表される脂肪族ジオール単位、および下記式(5)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含むポリエステル系樹脂である。
−O−R−O− (4)
(式(4)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
−OC−R−CO− (5)
(式(5)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
上記式(4)、(5)で表される脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位は、石油から誘導された化合物由来であっても、植物原料から誘導された化合物由来であってもかまわないが、植物原料から誘導された化合物由来であることが望ましい。
ポリエステル系樹脂(B)が共重合体である場合には、ポリエステル系樹脂(B)中に2種以上の式(4)で表される脂肪族ジオール単位が含まれていてもよく、ポリエステル系樹脂(B)中に2種以上の式(5)で表される脂肪族ジカルボン酸単位が含まれていてもよい。
前述の通り、式(5)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸単位が、全脂肪族ジカルボン酸単位に対して5モル%以上100モル%以下含まれることが好ましい。ポリエステル系樹脂(B)におけるコハク酸構成単位量を上記所定範囲内とすることで、引裂強度が向上するとともに耐衝撃強度にも優れたフィルム等の成形品を得ることが可能となる。同様の理由から、ポリエステル系樹脂(B)中のコハク酸単位量は、全脂肪族ジカルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは64モル%以上、特に好ましくは68モル%以上であり、好ましくは83モル%以下、より好ましくは81モル%以下、特に好ましくは79モル%以下である。
以下、ポリエステル系樹脂(B)中の全脂肪族ジカルボン酸単位に対するコハク酸単位の割合を「コハク酸単位量」と称す場合がある。
式(4)で表されるジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、成形性や機械強度の観点から、炭素数が2以上10以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4以上6以下の脂肪族ジオールが特に好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。尚、上記脂肪族ジオールは、2種類以上を用いることもできる。
式(5)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体が好ましく、炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体が特に好ましい。コハク酸以外の炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等やそのアルキルエステル等の誘導体が挙げられ、中でもアジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。尚、上記脂肪族ジカルボン酸成分は、2種類以上を用いることもでき、この場合、コハク酸とアジピン酸との組み合わせが好ましい。
ポリエステル系樹脂(B)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等の誘導体が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸或いはその誘導体である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(B)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸単位を含む場合、その含有量は、成形性の観点から、ポリエステル系樹脂(B)を構成する全構成単位を100モル%として20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下であり、最も好ましくは0モル%(含まない)である。
また、ポリエステル系樹脂(B)は3官能以上の脂肪族多価アルコール、3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物、或いは3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられ、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、成形性、機械強度や成形品外観の観点からリンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、カルボキシル基を複数有するものが好ましく、より具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(B)がこのような3官能以上の成分由来の構成単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル系樹脂(B)を構成する全構成単位を100モル%として、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
本発明で用いるポリエステル系樹脂(B)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは20,000以上500,000以下、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
ポリエステル系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。ポリエステル系樹脂(B)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
ポリエステル系樹脂(B)の融点は70℃以上が好ましく、より好ましくは75℃以上であり、170℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは130℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(B)の弾性率は180〜500MPaであることが好ましい。
融点が上記範囲外では成形性に劣り、弾性率が180MPa未満では成形性や製袋性に問題が起こり易く、一方、弾性率が500MPaを超えると引裂強度や耐衝撃強度の改良効果が得られにくい。
ポリエステル系樹脂(B)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合成分の種類を選択したり、ぞれぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
本発明では、ポリエステル系樹脂(B)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上のポリエステル系樹脂(B)をブレンドして用いることができる。
<ポリエステル系樹脂(A)およびポリエステル系樹脂(B)の製造方法>
本発明に係るポリエステル系樹脂(A)およびポリエステル系樹脂(B)の製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。通常、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行うことによって更に重合度を高める方法が採用される。
ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)の製造時には、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。この場合、鎖延長剤の量は、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)を構成する全構成単位を100モル%とした場合のポリエステル系樹脂(A)及び(B)中のカーボネート結合やウレタン結合の割合として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)中にウレタン結合やカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、本発明では、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)を構成する全構成単位に対し、カーボネート結合は1モル%未満、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合は0.55モル%以下、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.12モル%以下、更に好ましくは0.05モル%以下とするのがよい。この量は、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)100質量部あたりに換算すると、0.9質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。特に、ウレタン結合量が上記上限値を上回ると、成膜工程等において、ウレタン結合の分解のため、ダイス出口からの溶融膜からの発煙や臭気が問題となる場合があり、また、溶融膜中に発泡による膜切れが起こって安定的に成形できないことがある。
なお、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)中のカーボネート結合量やウレタン結合量は、H−NMRや13C−NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
<脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)>
本発明で用いる脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)(以下、「ポリエステル系樹脂(C)」と称す場合がある。)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を主構成単位とするものであり、その脂肪族オキシカルボン酸単位は、下記式(6)で表されることが好ましい。
−O−R−CO− (6)
(上記式(6)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表す。)
脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、3−ヒドロキシ吉草酸等、またはこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体または水溶液であってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸またはグリコール酸であり、乳酸が最も好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
また、ポリエステル系樹脂(C)は、3官能以上の脂肪族オキシカルボン酸成分由来の脂肪族オキシカルボン酸単位を有していてもよい。3官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、ポリエステル系樹脂(C)の着色や異物などを低減して品質を高めるという観点で、リンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸等好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(C)は、上記したようなポリエステル系樹脂(A)やポリエステル系樹脂(B)に由来するその他の構造単位を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂(C)におけるその他の構造単位の含有量は、脂肪族オキシカルボン酸単位と、その他の構造単位との合計を100モル%として、下限が、通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が、通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
ポリエステル系樹脂(C)としては、ポリ乳酸(PLA)が好ましい。
また、生分解性に影響を与えない範囲で、ポリエステル系樹脂(C)にはウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
ポリエステル系樹脂(C)は、上記の原料を直接脱水重縮合する方法、乳酸やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体を開環重合させる方法、微生物による産生等により得ることができる。
本発明で用いるポリエステル系樹脂(C)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは20,000以上500,000以下、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
ポリエステル系樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。
ポリエステル系樹脂(C)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
ポリエステル系樹脂(C)の融点は70℃以上が好ましく、より好ましくは75℃以上であり、170℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは130℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(C)の弾性率は180〜1000MPaであることが好ましい。
融点が上記範囲外では成形性に劣り、弾性率が180MPa未満では成形加工性に問題が起こり易く、一方、弾性率が1000MPaを超えると耐衝撃強度が悪くなる傾向にある。
ポリエステル系樹脂(C)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、脂肪族オキシカルボン酸以外の共重合成分の種類を選択したり、ぞれぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
ポリエステル系樹脂(C)としては、以下に説明するポリヒドロキシアルカノエート(c)も好ましく用いることができる。
本発明において好適に用いられる用いるポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称することがある)(c)は、一般式:[−CHR−CH−CO−O−](式中、Rは炭素数1〜15のアルキル基である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであり、3−ヒドロキシブチレート単位と3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主たる構成単位として含む共重合体である。
本発明で用いるポリヒドロキシアルカノエート(c)は、成形性、熱安定性の観点から、構成成分として3−ヒドロキシブチレート単位を80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。また、微生物によって生産されたものが好ましい。ポリヒドロキシアルカノエート(c)の具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂等が挙げられる。
特に、成形加工性および得られる成形体の物性の観点から、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、即ちPHBHが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート(c)において、3−ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)と、共重合している3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)等のコモノマーとの構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー比率としては、成形加工性および成形体品質等の観点から、3−ヒドロキシブチレート/コモノマー=97/3〜80/20(モル%/モル%)であることが好ましく、95/5〜85/15(モル%/モル%)であることがより好ましい。このコモノマー比率が3モル%未満であると、成形加工温度と熱分解温度が近接するため成形加工し難い場合がある。コモノマー比率が20モル%を超えると、ポリヒドロキシアルカノエート(c)の結晶化が遅くなるため生産性が悪化する場合がある。
ポリヒドロキシアルカノエート(c)中の各モノマー比率は、以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定できる。
乾燥PHA約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(質量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、上清中のPHA分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求められる。
本発明で用いるポリヒドロキシアルカノエート(c)の重量平均分子量(以下、Mwと称する場合がある)は、前記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常200,000以上2,500,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは250,000以上2,000,000以下、より好ましくは300,000以上1,000,000以下である。重量平均分子量が200,000未満では、機械物性等が劣る場合があり、2,500,000超えると、成形加工が困難となる場合がある。
ポリヒドロキシアルカノエート(c)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、好ましくは1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、より好ましくは80g/10分以下、特に好ましくは50g/10分以下である。ポリヒドロキシアルカノエート(c)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
ポリヒドロキシアルカノエート(c)の融点は100℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上であり、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは160℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート(c)は、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP−6038(原寄託FERM P−15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生される。
ポリヒドロキシアルカノエート(c)としては、市販品を用いることもでき、3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含むポリヒドロキシアルカノエート(c)の市販品としては、カネカ社製「Aonilex X331N」、「Aonilex X131A」、「Aonilex X151A」等を用いることができる。
本発明では、上記ポリヒドロキシアルカノエート(c)を含め、ポリエステル系樹脂(C)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上のポリエステル系樹脂(C)をブレンドして用いることができる。
<有機充填材及び/又は無機充填材(D)>
本発明のポリエステル系樹脂組成物に含まれる有機充填材としては、天然動植物性の素材が好ましく、繊維状、粉末状、粒子状のいずれの形状でも良い。
有機充填材としては、例えば、澱粉、綿、麻、パルプ、紙、もみがら、製材時ののこくず、果実や実の搾りかすや殻、セルロース粉、セルロースナノファイバー等が挙げられ、好ましくは、製材時ののこくずである。
本発明のポリエステル系樹脂組成物に含まれる無機充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、カオリン、クレー、ベントナイト、ゼオライト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、石膏、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、石英、アルミナ、硫化バリウム、シリカ、酸化ケイ素、珪藻土、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
無機充填材についても機械的強度の観点から板状又は繊維状のものが好ましく、タルク、クレー、マイカ等が好ましいものとして挙げられる。
繊維状の有機充填材及び/又は無機充填材(D)の粒子径や粒子長には特に制限はないが、粒子径は2〜500μm程度であることが、機械特性及び外観の観点から好ましい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、有機充填材及び/又は無機充填材(D)として有機充填材の1種又は2種以上を含むものであってもよく、無機充填材の1種又は2種以上を含むものであってもよい。また、有機充填材の1種又は2種以上と無機充填材の1種又は2種以上とを含むものであってもよい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物において、有機充填材及び/又は無機充填材(D)の含有量は、本発明のポリエステル系樹脂100質量部に対して、20質量部以上250質量部以下であり、好ましくは40質量部以上150質量部以下であり、さらに好ましくは65質量部以上100質量部以下である。有機充填材及び/又は無機充填材(D)の含有量が20質量部未満であると流動性の改善や目ヤニ防止の効果が十分でなく、250質量部より多いと、充填材の密度にもよるが、流動性改善の効果を十分に得ることができない。
<12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)>
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、上記のような割合で有機充填材及び/又は無機充填材(D)を含むポリエステル系樹脂組成物において、成形時の流動性を高めて、目ヤニの発生を抑制し、成型性の向上を図る目的で、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を含む。
本発明のポリエステル系樹脂組成物における12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)の含有量は本発明のポリエステル系樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部であり、好ましくは0.1〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)の含有量が上記下限よりも少ないと、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を含むことによる本発明の効果を十分に得ることができず、上記上限を超えるとブリード等の不良を生じる恐れがある。
本発明のポリエステル系樹脂組成物が様々な金属石鹸(脂肪酸金属塩)のなかでも、特に12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を所定の割合で含有することは極めて重要な構成要件であり、本発明では、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を上記所定の限られた含有量で含むことにより、本発明の効果を有効に得ることができる。
<その他の樹脂>
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、および脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)を含む本発明のポリエステル系樹脂以外の樹脂、例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS(アクリロニトリルスチレン)、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステルなどの合成樹脂などの1種又は2種以上を含有していてもよい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物が、本発明のポリエステル系樹脂以外のその他の樹脂を含有する場合、芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、および脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)を含むことによる本発明の効果を有効に得るために、その他の樹脂の含有量は、本発明のポリエステル系樹脂組成物100質量部中に、10質量部以下、特に5質量部以下であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明のポリエステル系樹脂組成物には、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、分散助剤、各種界面活性剤、スリップ剤等の各種添加剤や、或いはこれらの混合物が「その他の成分」として含まれていてもよい。また、本発明のポリエステル系樹脂組成物には、機能性添加剤として、鮮度保持剤、抗菌剤等を配合することもできる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
これらのその他の成分の含有量は、通常、本発明のポリエステル系樹脂組成物の物性を損なわないために、混合する成分の総量が、本発明のポリエステル系樹脂組成物の総量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
<ポリエステル系樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリエステル系樹脂組成物の製造方法としては、公知の手法を適用することができる。例えば、ブレンドした原料ペレットおよびフィラーを同一の押出機で溶融混練する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられる。押出機としては、単軸または2軸押出機が利用できる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物の形状は、通常、ペレット状、棒状、粉末状等が好ましい。この場合、本発明のポリエステル系樹脂組成物を混合機で均一にして、通常の成形条件で射出成形等に供することができる。
[成形品]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形することができる。その成形法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、熱プレス成形、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。中でも、射出成形、押出成形、圧縮成形、又は熱プレス成形が好適に適用される。成形品の具体的な形状としては、フィルム、容器又は繊維への適用が好ましい。
また、本発明のポリエステル系樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種の二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
[用途]
本発明のポリエステル系樹脂組成物からなる本発明の成形品は、各種食品、薬品、雑貨等の液状物や粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において好適に用いられる。その具体的用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレー、ファーストフードの容器、野外レジャー製品等)、押出成形品(フィルム、例えば、釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート等)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられる。更に、その他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙、医療用として手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル等のDDS、創傷被覆材等が挙げられる。
更に、トナーバインダー、熱転写用インキバインダー等の情報電子材料、電気製品筐体、インパネ、シート、ピラー等の自動車内装部品、バンパー、フロントグリル、ホイールカバー等の自動車外装構造材料等の自動車部品等に使用できる。中でも、より好ましくは、包装用資材、例えば、包装用フィルム、袋、トレー、ボトル、緩衝用発泡体、魚箱等、及び、農業用資材、例えば、マルチングフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、防草シート、畦シート、発芽シート、植生マット、育苗床、植木鉢等が挙げられる。本発明の成形品は、耐衝撃性、引裂強度や引張破断伸びなどの機械特性、生分解性等に優れたものであり、このうちフィルムの用途に用いられることが特に好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた原料の仕様は次の通りである。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(B)>
(B1)ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)
PTTMCCBiochem社製 商品名:BioPBSTM FD92PB
MFR:5g/10分
融点:89℃
(B2)ポリブチレンサクシネート(PBS)
PTTMCCBiochem社製 商品名:BioPBSTM FZ71PM
MFR:22g/10分
融点:114℃
<有機充填材/無機充填材(D)>
(有機充填材)
(D1)スギ木粉(製材所ののこくずを使用)
(無機充填材)
(D2)タルク(富士タルク社製 製品名:MG115、平均粒子径14μm)
<12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)>
日東化成工業社製 商品名:MS−6
融点:125〜135℃
<比較用の金属石鹸>
ステアリン酸カルシウム
日東化成工業社製 商品名:Ca−St
融点:145〜160℃
ステアリン酸モノグリセリド
理研ビタミン社製 商品名:リケマールS−100A
融点:63〜68℃
12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム
日東化成工業社製 商品名:AS−6
融点:145〜160℃
[実施例A1〜A2、比較例A1〜A7]
表−1に示す原料配合でブレンドし、レオ・ラボ(株)製 Micro15ccTwinScrewCompounderを使用して、窒素雰囲気下、160℃にて回転数100rpmで4分間混練を行った。得られたストランドをペレット化して、真空乾燥機で60℃で5時間乾燥した。乾燥したペレットを東洋精機社製キャピログラフで溶融粘度測定を実施した。結果を表−1に示す。
Figure 2020164577
上記の比較例A1に対して、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを配合した実施例A1の溶融粘度(190℃,1200sec−1)を比べてみると、204Pa.sに対して106Pa・sであった(溶融粘度比:106/204=0.52)。比較例A4では、ステアリン酸カルシウムを配合しているが、溶融粘度は196Pa・sであった(溶融粘度比:196/204=0.96)。また、また比較例A6では、ステアリン酸モノグリセリドを配合しているが、溶融粘度は180Pa・sであった(溶融粘度比:180/204=0.88)
比較例A1とはPBSAとスギ木粉の配合割合が異なる比較例A2に対して、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを配合した実施例A2の溶融粘度(190℃,1200sec−1)を比べてみると、314Pa.sに対して210Pa・sであった(溶融粘度比:210/314=0.67)。比較例A5では、ステアリン酸カルシウムを配合しているが、溶融粘度は280Pa・sであった(溶融粘度比:280/314=0.89)。また、また比較例A7では、ステアリン酸モノグリセリドを配合しているが、溶融粘度は278Pa・sであった(溶融粘度比:278/314=0.89)
以上のことから、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを用いた場合は、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸モノグリセリドを用いた場合に比べて、溶融粘度比が格段に低いことから、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムは金属石鹸の中でもとりわけ効果的に脂肪族ポリエステル系樹脂と有機充填材の樹脂組成物の流動性を高め、成形性を向上させることができることがわかる。
[実施例B1、比較例B1〜B3]
表−2に示す原料配合でブレンドし、二軸混練機((株)日本製鋼所社製TEX30α、ダイス穴数:3)を使用して、混練温度180℃にて、スクリュー回転数200rpm、吐出量30kg/hで混練を行い、ストランドを水槽を通して、ストランドカッターでペレットを得た。得られたペレットを、住友重機械工業株式会社製射出成形機(SE18D、最大型締力18トン)にて射出成形を行った。成形条件は、金型温度40℃、シリンダー温度190℃である。このようにして、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの標準試験片を得た。
このポリエステル系樹脂組成物及び標準試験片について、以下の物性評価と目ヤニ量の測定を行い、結果を表−2に示した。
[物性評価方法]
<MFR>
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、2.16kg荷重で測定した。
<曲げ弾性率>
JIS K7171(2008)に準拠して曲げ弾性率を測定した。
<耐熱性>
JIS K7191−2(2007)に準拠して、B法フラットワイズにて荷重たわみ温度(HDT)を測定した。
<耐衝撃性>
JIS K7111−1(2012)に準拠して、シャルピー衝撃強度を測定した。
[目ヤニ量の測定]
二軸混練機((株)日本製鋼所社製TEX30α、ダイス穴数:3)を使用して、混練温度180℃にて、スクリュー回転数200rpm、吐出量30kg/hで1時間混練を行い、終了後、ダイスの3穴の周辺に付着した目ヤニを集め、質量を測定した。
Figure 2020164577
表−2より、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを配合した場合の脂肪族ポリエステル系樹脂と無機充填材の樹脂組成物の目ヤニ発生量が、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウムやステアリン酸カルシウムを配合した場合に比べて、飛躍的に低減できていることがわかる。
従って、本発明のポリエステル系樹脂組成物によれば、剛性、耐衝撃性等の機械特性を損なうことなく、流動性や目ヤニの低減等の成形性の向上を図ることができることが分かる。

Claims (3)

  1. 脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位と芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位とを主構成単位として含む芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(A)、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、及び脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位を主構成単位として含む脂肪族オキシカルボン酸系樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含有するポリエステル系樹脂100質量部に対し、有機充填材及び/又は無機充填材(D)を20〜250質量部、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(E)を0.01〜10質量部含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
  2. 有機充填材及び/又は無機充填材(D)が、有機充填材であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂組成物よりなる成形品。
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