JP2012048973A - 硫化物固体電解質材料およびリチウム固体電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、オルト組成を有するイオン伝導体と、LiIとを有する硫化物固体電解質材料であって、ガラス転移点を有するガラスであることを特徴とする硫化物固体電解質材料を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図4
Description
まず、本発明の硫化物固体電解質材料について説明する。本発明の硫化物固体電解質材料は、2つの実施態様に大別することができる。以下、本発明の硫化物固体電解質材料について、第一実施態様および第二実施態様に分けて説明する。
第一実施態様の硫化物固体電解質材料は、オルト組成を有するイオン伝導体と、LiIとを有する硫化物固体電解質材料であって、ガラス転移点を有するガラスであることを特徴とするものである。
第一実施態様の硫化物固体電解質材料は、ガラス転移点を有するガラスであることを大きな特徴とする。ガラス転移点の有無は、示差熱分析(DTA)により確認することができる。なお、硫化物固体電解質材料が非晶質体であることは、CuKα線を使用したX線回折(XRD)測定で判断することができる。
次に、第一実施態様の硫化物固体電解質材料の製造方法について説明する。第一実施態様の硫化物固体電解質材料の製造方法は、上述した硫化物固体電解質材料を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。上記硫化物固体電解質材料の製造方法としては、例えば、Li2Sと、X(XはP、Si、Ge、AlまたはBである)の硫化物と、LiIとを含有する原料組成物を、湿式メカニカルミリングで非晶質化する合成工程を有する製造方法を挙げることができる。
次に、本発明の硫化物固体電解質材料の第二実施態様について説明する。第二実施態様の硫化物固体電解質材料は、オルト組成を有するイオン伝導体と、LiIとを有する硫化物固体電解質材料であって、上記イオン伝導体が、酸素(O)を含有することを特徴とするものである。
第二実施態様の硫化物固体電解質材料は、オルト組成を有するイオン伝導体が、酸素(O)を含有することを大きな特徴とする。上記イオン伝導体に含まれるOは、通常、Sのみからなるオルト組成のアニオン構造(例えばPS4 3−構造)のSの位置に存在するものである。具体例としては、PS3O3−、PS2O2 3− 、PSO3 3−等を挙げることができる。また、上記イオン伝導体がOを有することは、NMR、ラマン分光法、XPS等により確認することができる。特に、イオン伝導体がPを有する場合、31P MAS NMRにより測定することが好ましい。また、上記イオン伝導体の酸素は、酸素含有化合物に由来するものであることが好ましく、Li2Oに由来するものであることがより好ましい。化学安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。
次に、第二実施態様の硫化物固体電解質材料の製造方法について説明する。第二実施態様の硫化物固体電解質材料の製造方法は、上述した硫化物固体電解質材料を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。上記硫化物固体電解質材料の製造方法の一例としては、Li2Sと、Li2Oと、X(XはP、Si、Ge、AlまたはBである)の硫化物と、LiIとを含有する原料組成物を、非晶質化する合成工程を有する製造方法を挙げることができる。
次に、本発明のリチウム固体電池について説明する。本発明のリチウム固体電池は、2つの実施態様に大別することができる。以下、本発明のリチウム固体電池について、第一実施態様および第二実施態様に分けて説明する。
第一実施態様のリチウム固体電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するリチウム固体電池であって、上記正極活物質層が、電位が2.8V(vs Li)以上である上記正極活物質と、オルト組成を有するイオン伝導体およびLiIを有する硫化物固体電解質材料とを含有することを特徴とするものである。
E=ΔUelec/γF=270.29×103/1×96450=2.8V(vs Li)
以下、第一実施態様のリチウム固体電池について、構成ごとに説明する。
第一実施態様における正極活物質層は、電位が2.8V(vs Li)以上である正極活物質と、オルト組成を有するイオン伝導体およびLiIを有する硫化物固体電解質材料とを含有するものである。
第一実施態様における硫化物固体電解質材料は、上記「A.硫化物固体電解質材料 1.第一実施態様」に記載された硫化物固体電解質材料(ガラス転移点を有するガラス)のみならず、ガラスを除く非晶質体であっても良く、結晶性を有するものであっても良く、完全な結晶質であっても良い。第一実施態様においては、LiIの少なくとも一部が、オルト組成を有するイオン伝導体の構造中に取り込まれた状態で存在することが好ましい。上記LiIの含有量は、特に限定されるものではないが、例えば1mol%〜60mol%の範囲内であることが好ましく、5mol%〜50mol%の範囲内であることがより好ましく、10mol%〜40mol%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、オルト組成を有するイオン伝導体については、上記「A.硫化物固体電解質材料 1.第一実施態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
第一実施態様における正極活物質は、2.8V(vs Li)以上の電位を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCuPO4等のオリビン型活物質等を挙げることができる。また、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等のSi含有酸化物を正極活物質として用いても良い。さらに、正極活物質の電位は、より高いことが好ましく、例えば3.0V(vs Li)以上であることが好ましい。
第一実施態様における正極活物質層は、正極活物質および硫化物固体電解質材料の他に、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。結着材としては、例えば、PTFE、PVDF等のフッ素含有結着材を挙げることができる。上記正極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
次に、第一実施態様における負極活物質層について説明する。第一実施態様における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
次に、第一実施態様における固体電解質層について説明する。第一実施態様における固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層であり、固体電解質材料から構成される層である。固体電解質層に含まれる固体電解質材料は、Liイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。
第一実施態様のリチウム固体電池は、上述した正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、リチウム固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、第一実施態様に用いられる電池ケースには、一般的なリチウム固体電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えば、SUS製電池ケース等を挙げることができる。
第一実施態様のリチウム固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば、車載用電池として有用だからである。第一実施態様のリチウム固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
次に、本発明のリチウム固体電池の第二実施態様について説明する。第二実施態様のリチウム固体電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するリチウム固体電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記固体電解質層の少なくとも一つが、上述した硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とするものである。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)、五硫化二リン(P2S5)およびヨウ化リチウム(LiI)を用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、Li2SおよびP2S5を、75Li2S・25P2S5のモル比(Li3PS4、オルト組成)となるように秤量した。次に、LiIが10mol%となるように、LiIを秤量した。この混合物2gを、遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO2製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下、4g)を投入し、さらにZrO2ボール(φ=5mm、53g)を投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、1時間処理および15分休止のメカニカルミリングを40回行った。その後、得られた試料を、ホットプレート上でヘプタンを除去するように乾燥させ、硫化物固体電解質材料を得た。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、10LiI・90(0.75Li2S・0.25P2S5)であった。
LiIの割合を30mol%となるように変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして硫化物固体電解質材料を得た。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、30LiI・70(0.75Li2S・0.25P2S5)であった。
LiIの割合を、それぞれ、35mol%および40mol%となるように変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして硫化物固体電解質材料を得た。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、それぞれ、35LiI・65(0.75Li2S・0.25P2S5)および40LiI・60(0.75Li2S・0.25P2S5)であった。
非特許文献1に記載されたLi2S−P2S5−LiI系非晶質材料を、できるだけ忠実に再現した。なお、非特許文献1には、湿式メカニカルミリングについては一切記載されていないので、通常の乾式メカニカルミリングとした。まず、出発原料として、硫化リチウム(Li2S)、五硫化二リン(P2S5)およびヨウ化リチウム(LiI)を用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、Li2SおよびP2S5を、75Li2S・25P2S5のモル比(Li3PS4、オルト組成)となるように秤量した。次に、LiIが30mol%となるように、LiIを秤量した。この混合物1gを、遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO2製)に投入し、さらにZrO2ボール(φ=10mm、10個)を投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数370rpmで、1時間処理および15分休止のメカニカルミリングを40回行った。これにより、硫化物固体電解質材料を得た。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、30LiI・70(0.75Li2S・0.25P2S5)であった。
(X線回折測定)
実施例1−1、1−2、比較例1−1〜1−3で得られた硫化物固体電解質材料に対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。XRD測定には、リガク製RINT UltimaIIIを使用した。その結果を図2に示す。図2(a)に示されるように、実施例1−1、1−2では、ハローパターンが得られ、非晶質体であることが確認された。一方、比較例1−2では、2θ=26°付近に、LiIのピークが確認され、非晶質体ではなかった。また、比較例1−1では、2θ=26°付近にわずかにLiIのピークが見られ、非晶質体ではないと判断した。一方、図2(b)に示されるように、比較例1−3では、ハローパターンが得られ、非晶質体であることが確認された。
実施例1−2および比較例1−3で得られた硫化物固体電解質材料に対して、示差熱分析(DTA)を行った。DTAには、メトラー製TGA/SDTA851eを用いた。その結果を図3に示す。図3に示されるように、実施例1−2では、約70℃にガラス転移が確認された。これに対して、比較例1−3では、明確なガラス転移が確認されなかった。実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料は、図2(a)に示すように非晶質体であり、かつ、図3に示すようにガラス転移点を有することから、厳密な意味でのガラスであった。これに対して、比較例1−3では、非晶質体であっても、厳密な意味でのガラスではなかった。実施例1−2では、湿式メカニカルミリングを用いているため、容器の壁面に原料組成物が固着することを防止でき、より非晶質性の高い硫化物固体電解質材料が得られたものと考えられる。また、結晶化挙動を比較すると、湿式メカニカルミリングを用いた実施例1−2の方が、乾式メカニカルミリングを用いた比較例1−3よりも、ピークがシャープであるため、分子構造がより均一であることが示唆された。
実施例1−1、1−2で得られた硫化物固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるLiイオン伝導度(常温)の測定を行った。Liイオン伝導度の測定は以下のように行った。支持筒(マコール製)に添加した試料100mgを、SKD製の電極で挟んだ。その後、4.3ton/cm2の圧力で試料を圧粉し、6Ncmで試料を拘束しながらインピーダンス測定を行った。測定にはソーラトロン1260を用い、測定条件は、印加電圧5mV、測定周波数域0.01MHz〜1MHzとした。その結果を図4に示す。なお、図4には、非特許文献1のFig. 2の結果も同時に示した。図4に示されるように、実施例1−1、1−2で得られた硫化物固体電解質材料は、非特許文献1に記載された硫化物固体電解質材料よりもLiイオン伝導度が高いことが確認された。
実施例1−1、1−2で得られた硫化物固体電解質材料に対して、ラマン分光測定を行った。ラマン分光測定には、東京インスツルメンツ製Nanofinder SOLAR T IIを使用した。その結果を図5に示す。図5に示されるように、実施例1−1、1−2で得られた硫化物固体電解質材料は、420cm−1付近にPS4 3−構造のピークを有することが確認された。また、架橋硫黄を含むP2S7 4−構造のピーク(410cm−1付近)は有していなかった。
実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料(30LiI・70(0.75Li2S・0.25P2S5))に対して、サイクリックボルタンメトリ(CV)を行った。評価用セルとして、Li/硫化物固体電解質材料/SUSから構成されるセルを用意した。この評価用セルは、参照極および対極にLiを用い、作用極にSUSを用いた2極式の構成のセルである。また、電位走査速度は5mV/sとし、電位範囲は−0.3V〜10Vとした。その結果を図6に示す。図6に示されるように、Liの溶解析出に対応する酸化還元電流は確認されたものの、LiIの酸化分解反応は確認できなかった。このことから、オルト組成を有するイオン伝導体に、LiIをドープした場合には、LiIの酸化分解は生じないことが確認された。
実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料(30LiI・70(0.75Li2S・0.25P2S5))と、厚さ7nmのLiNbO3で被覆したLiCoO2(正極活物質)とを、正極活物質:硫化物固体電解質材料=7:3の重量比で混合し、正極合材を得た。次に、実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料と、黒鉛(負極活物質)とを、負極活物質:硫化物固体電解質材料=5:5の重量比で混合し、負極合材を得た。次に、固体電解質層形成用材料として、実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料を用意した。正極合材16.2mg、固体電解質層形成用材料65mg、負極合材12mgをシリンダーに投入し、4.3ton/cm2の圧力でコールドプレスを行い、リチウム固体電池を得た。
まず、Li2SおよびP2S5の割合を、67Li2S・33P2S5のモル比となるように変更したこと以外は、比較例1−3と同様にして硫化物固体電解質材料を得た(乾式メカニカルミリング)。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、30LiI・70(0.67Li2S・0.33P2S5)であった。
次に、正極合材、負極合材および固体電解質層形成用材料に用いられた硫化物固体電解質材料を、上記で得られた硫化物固体電解質材料(30LiI・70(0.67Li2S・0.33P2S5))に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてリチウム固体電池を得た。
(充放電サイクル特性の評価)
実施例2および比較例2で得られたリチウム固体電池を用いて、充放電サイクル特性の評価を行った。リチウム固体電池に対して3V〜4.1Vの範囲で定電流充放電測定を行った。充放電レートは0.1Cとし、温度は25℃とした。その結果を図7に示す。図7に示されるように、実施例2は、比較例2よりも、充放電を繰り返しても放電容量の低下が少ないことが確認された。比較例2のように、架橋硫黄を有する硫化物固体電解質材料を用いた場合、硫化物固体電解質材料が酸化分解するため、放電容量の低下が大きくなったと考えられる。これに対して、実施例2のように、架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料を用いた場合には、硫化物固体電解質材料の酸化分解が起きず、放電容量は高い値を維持できたものと考えられる。
実施例2および比較例2で得られたリチウム固体電池を用いて、反応抵抗測定を行った。リチウム固体電池の電位を3.96Vに調整した後、複素インピーダンス測定を行うことにより、電池の反応抵抗を算出した。なお、反応抵抗は、インピーダンス曲線の円弧の直径から求めた。その結果を図8に示す。図8に示されるように、実施例2は、比較例2よりも、反応抵抗が大幅に小さいことが確認された。比較例2のように、架橋硫黄を有する硫化物固体電解質材料を用いた場合、硫化物固体電解質材料が酸化分解するため、反応抵抗が大きくなったと考えられる。これに対して、実施例2のように、架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料を用いた場合には、硫化物固体電解質材料の酸化分解が起きず、反応抵抗の増加が起きなかったものと考えられる。上述した酸化分解の検証、充放電サイクル特性の評価、および、反応抵抗測定の結果から、従来から懸念されていたLiIの分解は起きず、実際には架橋硫黄の分解が生じていることが示唆された。
まず、出発原料として、硫化リチウム(Li2S)、酸化リチウム(Li2O)、五硫化二リン(P2S5)、およびヨウ化リチウム(LiI)を用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、Li2S、P2S5およびLiIを所定量秤量した。この混合物2gを、遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO2製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下、4g)を投入し、さらにZrO2ボール(φ=5mm、53g)を投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数370rpmで、1時間処理および15分休止のメカニカルミリングを20回行った。次に、得られた試料に、Li2Oを所定量添加し、再び、同条件で、メカニカルミリングを行った。その後、得られた試料を、ホットプレート上でヘプタンを除去するように乾燥させ、硫化物固体電解質材料を得た。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、30LiI・70(0.69Li2S・0.06Li2O・0.25P2S5)であった。
LiIの割合を、xLiI・(100−x)(0.69Li2S・0.06Li2O・0.25P2S5)において、それぞれ、x=10、20、40、43、60となるように変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして硫化物固体電解質材料を得た。
Li2OおよびLiIを用いず、Li2SおよびP2S5を、75Li2S・25P2S5のモル比(オルト組成)で秤量したこと以外は、実施例3−1と同様にして硫化物固体電解質材料を得た。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、75Li2S・25P2S5であった。
まず、出発原料として、硫化リチウム(Li2S)、酸化リチウム(Li2O)、および五硫化二リン(P2S5)を用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、Li2SおよびP2S5を、69Li2S・25P2S5のモル比となるように秤量した。この混合物2gを、遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO2製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下、4g)を投入し、さらにZrO2ボール(φ=5mm、53g)を投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、1時間処理および15分休止のメカニカルミリングを20回行った。得られた試料に、Li2Oを6mol%となるように添加し、再び、同条件でメカニカルミリングを行った。その後、得られた試料を、ホットプレート上でヘプタンを除去するように乾燥させ、硫化物固体電解質材料を得た。得られた硫化物固体電解質材料の組成は、69Li2S・6Li2O・25P2S5であった。
正極合材、負極合材および固体電解質層形成用材料に用いられた硫化物固体電解質材料を、実施例3−1で得られた硫化物固体電解質材料(30LiI・70(0.69Li2S・0.06Li2O・0.25P2S5))に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてリチウム固体電池を得た。
正極合材、負極合材および固体電解質層形成用材料に用いられた硫化物固体電解質材料を、それぞれ、比較例3−1で得られた硫化物固体電解質材料(75Li2S・25P2S5)および、比較例3−2で得られた硫化物固体電解質材料(69Li2S・6Li2O・25P2S5)に変更したこと以外は、実施例4と同様にしてリチウム固体電池を得た。
正極合材、負極合材および固体電解質層形成用材料に用いられた硫化物固体電解質材料を、実施例1−2で得られた硫化物固体電解質材料(30LiI・70(0.75Li2S・0.25P2S5))に変更したこと以外は、実施例4と同様にしてリチウム固体電池を得た。
(Liイオン伝導度測定)
実施例3−1〜3−6で得られた硫化物固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるLiイオン伝導度(常温)の測定を行った。測定方法は、上記と同様である。その結果を図9に示す。なお、参考までに、実施例1−1、1−2で得られた硫化物固体電解質材料の結果についても図9に示す。図9に示されるように、LiIおよびLi2Oの両方をドープした実施例3−1〜3−6は、LiIのみをドープした実施例1−1、1−2よりもLiイオン伝導度が高くなることが確認された。LiIおよびLi2Oの両方をドープすることにより、Liイオン伝導度が向上する理由は、未だ定かではないが、混合アニオン効果(異種アニオンを混合することで伝導度が向上する効果)が生じている可能性がある。
実施例4、比較例4−1、4−2、参考例4で得られたリチウム固体電池を用いて、反応抵抗測定を行った。反応抵抗測定の方法は、上述した内容と同様である。その結果を図10に示す。図10に示されるように、参考例4は、比較例4−1に比べて反応抵抗が若干増加した。これは、参考例4は、比較例4−1に対し、LiIをドープしたものであることを考慮すると、LiIのドープにより、硫化物固体電解質材料の化学的安定性が低下した可能性が考えられる。また、比較例4−2は、比較例4−1に比べて反応抵抗が増加した。これは、比較例4−2がLi2Oをドープしたものであることを考慮すると、Li2Oのドープにより、硫化物固体電解質材料のLiイオン伝導性が低下した可能性が考えられる。
2 … 負極活物質層
3 … 固体電解質層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 電池ケース
10 … リチウム固体電池
Claims (13)
- オルト組成を有するイオン伝導体と、LiIとを有する硫化物固体電解質材料であって、ガラス転移点を有するガラスであることを特徴とする硫化物固体電解質材料。
- 前記LiIの含有量が、10mol%〜30mol%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記イオン伝導体が、Liと、X(XはP、Si、Ge、AlまたはBである)と、Sとを含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記イオン伝導体が、Liと、Pと、Sとを含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硫化物固体電解質材料。
- オルト組成を有するイオン伝導体と、LiIとを有する硫化物固体電解質材料であって、前記イオン伝導体が、酸素を含有することを特徴とする硫化物固体電解質材料。
- 前記イオン伝導体の酸素が、Li2Oに由来するものであることを特徴とする請求項5に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記イオン伝導体が、Liと、X(XはP、Si、Ge、AlまたはBである)と、Sと、Oとを含有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記イオン伝導体が、Liと、Pと、Sと、Oとを含有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の硫化物固体電解質材料。
- 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するリチウム固体電池であって、
前記正極活物質層が、電位が2.8V(vs Li)以上である前記正極活物質と、オルト組成を有するイオン伝導体およびLiIを有する硫化物固体電解質材料とを含有することを特徴とするリチウム固体電池。 - 前記イオン伝導体が、Liと、X(XはP、Si、Ge、AlまたはBである)と、Sとを含有することを特徴とする請求項9に記載のリチウム固体電池。
- 前記イオン伝導体が、Liと、Pと、Sとを含有することを特徴とする請求項9に記載のリチウム固体電池。
- 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するリチウム固体電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記固体電解質層の少なくとも一つが、請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とするリチウム固体電池。 - 前記正極活物質層が、電位が2.8V(vs Li)以上である前記正極活物質と、前記硫化物固体電解質材料とを含有することを特徴とする請求項12に記載のリチウム固体電池。
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