JP2009266575A - 硫化物系電解質の製造方法及びボールミル - Google Patents

硫化物系電解質の製造方法及びボールミル Download PDF

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Abstract

【課題】工業的に大規模スケール、コンタミネーションを防止して、歩留まりが高く、硫化物系電解質を製造可能な製造方法およびそれを用いたボールミルを提供する。
【解決手段】ボールミル1に、ポット16に開閉可能に取り付けられた注入弁162と、この注入弁162を介してポット16内に溶媒を注入する溶媒注入管31と、ポット16内で、硫黄化合物と溶媒とを粉砕混合し、スラリにするボール160と、ポット16に開閉可能に取り付けられた排出弁171と、この排出弁171を介してポット16内からスラリを排出するスラリ排出管とを設けた。
【選択図】図4

Description

本発明は、硫化物系電解質の製造方法及びボールミルに関する。
近年、リチウム電池は、携帯電話末端、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モータを電力源とする自動二輪車、ハイブリット電気自動車などの主電源として利用されており、需要が増大している。リチウム電池には、固体電解質が用いられており、この固体電解質の多くは、可燃性の有機物が含まれていることから電池に異常が生じた際には発火する等の恐れがある。このため、より安全性の高い電池システムを構築するための固体電解質が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特許文献1には、LiS、GeS、およびZnSの混合物を炭素コーティングしたシリカチューブに真空封入して、LiS―GeS―ZnS系リチウムイオン伝導性物質を合成する点が示されている。
特許文献2には、メカニカルミリングにより電解質を合成する際に加えるエネルギを特定範囲にコントロールして硫化物系固体電解質を得る点が示されている。
特開平11−176236号公報 特開2008−4334号公報
しかし、特許文献1に記載のものでは、シリカチューブなどを用いるため、工業的な大規模スケールで製造することができないおそれがある
また、特許文献2に記載のものでは、ミル容器の壁やボール表面に硫化物系固体電解質が固着したり付着してしまったりする場合がある。
例えば、従来では、図6および図7に示すように、ミル容器91の壁や底やボール92などの表面に硫化物系固体電解質93が固着したり付着したりする。
この場合、硫化物系固体電解質をミル容器から取り出すには、グローブボックス、ドライルームなどのドライ環境の中でミル容器を開封した上で、はつり操作などによる取り出し操作を行う必要がある。このように、はつり操作等により硫化物系固体電解質を回収した場合では、回収率が低くなるおそれがある。そして、スケールアップした大規模装置で同様に硫化物系固体電解質を製造する場合では、上述の問題が一層厳しくなる。
工業的に電解質を製造する際に使用するボールミルの粉砕容器は、例えば、100L以上のものを使用する可能性がある。
大規模装置においてはつり操作を行う場合では、ミル容器の内部に硫化物系固体電解質が多く残留する可能性があるので、次の製造時のコンタミネーションの原因になるおそれもある。
実験室レベルの小規模合成では、ドライ環境の下、特殊ジグを用いた手作業によるはつりを行うことで、付着した硫化物系固体電解質を回収することができる。しかし、大規模装置になった場合、ミル容器の開封に際して内部に水分の混入を防ぐ工夫が必要な上、はつり操作を行うには作業員が装置内に入り作業を行うことが必要となる。
本発明の目的は、工業的に大規模スケールで製造する際にも、コンタミネーションを防止して、歩留まりが高く硫化物系電解質を製造可能な製造方法およびそれを用いたボールミルを提供することである。
本発明の硫化物系電解質の製造方法は、メカニカルミリング法によりボールミルの粉砕容器内で硫化物系電解質を製造する製造工程と、粉砕容器内において炭化水素系溶媒と前記硫化物系電解質とを混合してスラリにするスラリ化工程と、前記粉砕容器から前記スラリを取出す取出工程と、を含むことを特徴とする。
この発明では、メカニカルミリング法により粉砕容器中で硫化物系電解質を製造した後、粉砕容器に炭化水素系溶媒を加え、スラリとすることにより、容易に粉砕容器から硫化物系電解質を取り出すことができるので、工業的に大スケールで、歩留まりが高く硫化物系電解質を得ることができる。さらに、粉砕容器内における電解質が残留することによる、いわゆるコンタミネーションを防止できるので、電解質の品質を安定させて繰り返し製造することができる。
また、前記スラリの硫化物系電解質の濃度が5〜50重量%であることが好ましい。
そして、前記硫化物系電解質は、硫黄、リチウムおよびリンを含有することが好ましい。
本発明の第1のボールミルは、粉砕容器と、前記粉砕容器に、開閉可能に設けられ、前記粉砕容器内に炭化水素系溶媒を注入する注入部と、前記粉砕容器内で、硫化物系電解質を製造するとともに、前記硫化物系電解質と、前記炭化水素溶媒を混合し、スラリにするボールと、前記粉砕容器に、開閉可能に設けられ、前記粉砕容器内から前記スラリを排出する排出部と、を備えることを特徴とする。
この発明では、上述の請求項1の発明と同様の作用効果を奏する。
また、粉砕容器に注入部が設けられているので、かかる注入部に外部のホース等を取り付けて炭化水素系溶媒を注入すれば、外部から空気や水などの混入を防止しつつ炭化水素系溶媒を粉砕容器に注入することができる。また、粉砕容器に注入部が設けられているので、かかる排出部に外部のホース等を取り付けてスラリを排出すれば、ミル容器を開放することなくスラリを取出すことができる。
さらに、注入時に注入部を上にくるように調整すれば、ミル容器を傾ける必要がなく、また排出時に上記排出部を下にくるように調整すれば、硫化物系電解質を取出す際、ミル容器を傾けるなどの操作をしなくて済むから、硫化物系電解質を容易に取出すことができる。
本発明の第2のボールミルは、粉砕容器と、前記粉砕容器内で、硫化物系電解質を製造するとともに、前記硫化物系電解質と、炭化水素溶媒を混合し、スラリにするボールと、前記粉砕容器に、開閉可能に設けられ、前記粉砕容器内に前記炭化水素溶媒を注入し、前記粉砕容器内から前記スラリを排出する注入・排出部と、を備えることを特徴とする。
この発明では、注入排出部により、炭化水素系溶媒を注入するとともに、スラリを排出するので、溶媒を注入する注入部と、スラリを排出する排出部が別々に粉設けられている場合と比較して、ボールミルの構成が簡単になり、操作性を向上させることができる。
注入排出部を炭化水素系溶媒注入時に上にくるように調整する効果とスラリ排出時に下にくるように調整する効果は上記の通りである。
なお、第1のボールミル及び第2のボールミルにおける、注入部、排出部、注入排出部の設置位置は特に限定しないが、粉砕容器中心が膨らんだ形状の場合は中心部であることが好ましい。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本実施形態におけるボールミルを示す斜視図である。図2は、ポットに原料を投入する状態を示す側面図である。
[ボールミルの構成]
図1、2に示すように、ボールミル1は、いわゆるメカニカルミリング装置であり、例えば、遊星ミル、振動ミル、回転ミルなどが挙げられる。
ボールミル1は、下記粉砕容器に金属のボールと下記原料を入れ、この粉砕容器を連続的に回転させることにより原料に繰り返し金属ボールからの衝撃を与え、原料を粉砕すると共に下記硫化物電解質(以下「電解質」と略記する)を製造する。
ボールミル1は、一対のマシンフレーム10を備え、これらマシンフレーム10の間に支持板11が挟まれている。支持板11上には、一対のローラ12が回転自在に支持されている。一方のローラ12には、プーリ13が取り付けられ、モータ14にもプーリ13が取り付けられている。これらプーリ13には、エンドレスベルト15が掛け渡されており、モータ14が駆動することにより、一方のローラ12が回転するようになっている。他方のローラ12は、従動ローラ12であり、回転自在にマシンフレーム10に支持されている。なお、従動ローラ12もモータ14の回転によって、一方のローラ12と同期して回転駆動されるようにしてもよい。
これら一対のローラ12上には、粉砕容器としてのポット16が載置されており、ローラ12の回転によって、ポット16も回転するようになっている。
このポット16内には、複数のボール160が収容されている。また、ポット16は、一方の端部に原料投入口161を有している。ポット16の原料投入口161近傍の側面には、例えば、ボール弁などの注入部としての注入弁162が取り付けられている。そして、この注入弁162には、溶媒を注入可能な溶媒注入管31を取り付けることができる。また、ポット16の原料投入口161には、平板状のエンドプレート17がボルト18にて固定されている。そして、このエンドプレート17には、例えば、ボール弁などの排出部としての排出弁171が取り付けられている。この排出弁171には、スラリを排出可能なスラリ排出管41を取り付けることができる。また、原料投入口161には、ボール160と、スラリとを分離可能なメッシュが取り付けられている。
なお、ポット16を構成する材料としては、例えば、スチール等の金属や、各種セラミックなどが挙げられる。ボール160の材料としては、例えば、金属やセラミックなどが挙げられる。
電解質は、硫黄、リチウムおよびリンを含有している。
電解質の原料である硫黄化合物としては、硫化リン、硫化ゲルマニウム、硫化ケイ素、および硫化ホウ素のうち少なくともいずれか1種類以上の化合物と、硫化リチウムと、を使用する。
硫化リン、硫化ゲルマニウム、硫化ケイ素、および硫化ホウ素のうち少なくともいずれか1種類以上の化合物と、硫化リチウムとの混合モル比は、イオン伝導性の観点から、5:95〜70:30、好ましくは、15:85〜60:40である。
原料としては、特に、硫化リンと硫化リチウムとの混合物が好ましい。また、硫化リンとしては、五硫化二リンが好ましい。
硫化リチウムの製造法としては、特に制限はない。
例えば、以下の(a)〜(c)の方法で製造された硫化リチウムを精製することにより得ることもできる。これらの製造法の中では、特に(a)又は(b)の方法が好ましい。
(a)非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを0〜150℃で反応させて水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を150〜200℃で脱硫化水素化する方法(特開平7−330312号公報)。
(b)非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを150〜200℃で反応させ、直接硫化リチウムを生成する方法(特開平7−330312号公報)。
(c)水酸化リチウムとガス状硫黄源を130〜445℃の温度で反応させる方法(特開平9−283156号公報)。
上記のようにして得られた硫化リチウムの精製方法としては、特に制限はない。好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号等が挙げられる。
具体的には、上記のようにして得られた硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。
洗浄に用いる有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましく、さらに、硫化リチウム製造に使用する非プロトン性有機溶媒と洗浄に用いる非プロトン性極性有機溶媒とが同一であることがより好ましい。
洗浄に好ましく用いられる非プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等の非プロトン性の極性有機化合物が挙げられ、単独溶媒、又は混合溶媒として好適に使用することができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)は、良好な溶媒として選択される。
洗浄に使用する有機溶媒の量は特に限定されず、また、洗浄の回数も特に限定されないが、2回以上であることが好ましい。洗浄は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
さらに、好ましくは、洗浄された硫化リチウムを、洗浄に使用した有機溶媒の沸点以上の温度で、窒素等の不活性ガス気流下、常圧又は減圧下で、5分以上、好ましくは約2〜3時間以上乾燥する。
炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、2―エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等の不飽和炭化水素、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。あらかじめ脱水されていることが好ましく、具体的に水分含有量として100ppm以下が好ましく、より好ましくは30ppm以下である。
炭化水素系溶媒(以下「溶媒」と略記する)による電解質のスラリ濃度としては、5wt%〜50wt%であり、好ましくは、10wt%〜40wt%である。スラリ濃度が5wt%未満では使用する炭化水素溶媒量が多量必要であり、コストが増大する場合がある。一方、50wt%を越える場合では、スラリの流動性が少なく安定した排出ができない場合がある。
また、電解質をスラリ調製するためのミリング条件としては、固着物が除去できるミリング条件であれば特に限りはない。例えば、製造条件と同じ条件下にて数分から数時間、電解質と溶媒とを混合することでスラリにすることができる。
[電解質の製造]
次に、ボールミルを用いた電解質の製造方法について、図2〜図5を参照して説明する。図3は、電解質を製造する状態を示す側面図である。図4は、ポット内に溶媒を注入する状態を示す側面図である。図5は、ポットからスラリを排出する状態を示す側面図である。
まず、図2に示すように、原料投入口161がやや上方となる状態にポット16を傾ける。そして、原料容器20を用いて原料投入口161からポット16内に原料である硫黄化合物を投入する。投入後、ボルト18により、ポット16にエンドプレート17を取り付けて、図3に示すように、ポット16を水平にする。そして、モータ14を駆動させて、ローラ12を介してポット16を回転させる。ここで、ポット16の回転により、硫黄化合物を粉砕混合して、電解質を製造する。所定時間経過後、溶媒タンク30に接続された溶媒注入管31を注入弁162に接続して溶媒を注入する。ここで、電解質の濃度が5〜50重量%となるように溶媒を注入する。再び、注入弁162から溶媒注入管31を取り外し、ポット16を回転させる。ここで、ポット16を回転させることにより、ポット16の底や内壁に固着した電解質が溶媒により取り除かれ、スラリとなる。所定時間経過後、排出弁171がやや下方となる状態にポット16を傾ける。そして、スラリタンク40に接続されたスラリ排出管41を排出弁171に接続して、外部の空気や水の混入を防止しつつ、スラリタンク40にスラリを流し出す。ここで、ポット16の内部に、窒素などのガスを吹き込んで、ポット16内のスラリを押し出しても良い。原料投入口161には、メッシュが取り付けられているので、ボール160とスラリとを分離することができる。
ここで、ポット16の回転数は、製造した電解質の粒径が所望範囲内である場合には製造した電解質を粉砕しない範囲であることが好ましい。
また、製造した電解質の粒径が所望範囲より大きい場合には、ポット16の底や内壁に固着した電解質が溶媒により取り除くとともに、所望範囲の粒径にするため、ポット16の回転数を調整する必要がある。
得られたスラリは、その状態で直接製品とすることができる。また、スラリから固形分である電解質をろ過したり、遠心分離したり乾燥させることで電解質粉末を得ることもでき、電解質粉末を製品としても良い。
さらに、電解質粉末に加熱処理を行い伝導度の向上を図ることもできる。
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、メカニカルミリング法によりポット16内で電解質を製造し、ポット16内において溶媒と電解質とを混合してスラリにし、ポット16からスラリを取出す。
メカニカルミリング法によりポット16中で電解質を製造した後、ポット16に溶媒を加えることにより、電解質をスラリ状態にするので、電解質の固化およびポット16への付着を防止することができる。また、スラリとすることにより、容易にポット16から電解質を取り出すことができるので、工業的に大スケールで、歩留まりが高く電解質を得ることができる。さらに、ポット16内に電解質が残留することによる、いわゆるコンタミネーションを防止できるので、電解質の品質を安定させて繰り返し製造することができる。
また、ポット16の原料投入口161に、ボールと電解質とを分離可能なメッシュが取り付けられている。
ポット16からボールを出し入れする必要が無いので、連続して電解質を製造することができる。
また、電解質の濃度が5〜50重量%となるように溶媒を加えた。
スラリの濃度が特定の範囲となるので、固体電解質の固化やポット16の側壁や底面やボール160への固着をさらに防止することができる。
そして、電解質は、硫黄、リチウムおよびリンを含有している。
硫黄、リチウムおよびリン元素を含有することによりガラスのみでなく種々構造の結晶相を析出することができ、高いリチウムイオン伝導性を有する硫化物系電解質が得られる。
さらに、ボールミル1に、ポット16に開閉可能に取り付けられた注入弁162と、この注入弁162を介してポット16内に溶媒を注入する溶媒注入管31と、ポット16内で、硫黄化合物と溶媒とを粉砕混合し、スラリにするボール160と、ポット16に開閉可能に取り付けられた排出弁171と、この排出弁171を介してポット16内からスラリを排出するスラリ排出管41とを設けた。
ポット16に注入弁162および溶媒注入管31が接続されているので、外部から空気や水などの混入を防止しつつ溶媒をポット16に注入することができる。また、ポット16に排出弁171およびスラリ排出管41が接続されているので、ポット16を開放することなくスラリを排出することができ、外部からの空気や水の混入を防止することができる
[実施形態の変形例]
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構成などとしても問題はない。
例えば、本実施の形態では、溶媒注入管31によりポット16の内部に溶媒を注入する構成を示したが、これに限られない。例えば、溶媒注入管31から原料を投入しても良く、スラリを排出してもよい。また、スラリ排出管41によりポット16の内部からスラリを排出する構成を示したが、これに限られない。例えば、スラリ排出管41から原料を投入しても良く、溶媒を注入してもよい。
また、本実施の形態では、注入弁162に溶媒注入管31を取りつけてポット16に溶媒を注入する構成を示したが、これに限られない。例えば、注入弁162、溶媒注入管31をポット16に取り付けることなく、ポット16の原料投入口161から直接溶媒を注入してもよい。さらに、本実施の形態では、排出弁171にスラリ排出管41を取り付けてポット16からスラリを排出する構成を示したが、これに限られない。例えば、排出弁171およびスラリ排出管41をポット16に取り付けることなく、ポット16の原料投入口161から直接スラリを排出してもよい。
また、本実施形態では、ローラ12の回転により、ポット16を回転させる構成を示したが、これに限られない。例えば、ポット16の内部に回転可能な収容部を設け、ポット16全体が回転することなく、内部の収容部が回転する構成でもよい。
この場合、電解質を製造する際に、ポット16から溶媒注入管31やスラリ排出管41を取り外す必要がないから、操作を簡略化することができる。
さらに、本実施形態では、ポット16に、溶媒注入管31とスラリ排出管41とを別々に取り付ける構成を示したが、これに限られない。例えば、溶媒注入管31とスラリ排出管41とを一体化させてポット16に取り付けても良い。つまり、一部材で溶媒の注入およびスラリの排出が可能な注入排出管を取り付けても良い。また、この注入排出管から原料を投入可能な構成にしてもよい。
また、ポット16を鉛直方向に回転させる構成を取らなくてもよい。
その他、本発明の実施における具体的な材料および処理などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の材料および処理などとしてもよい。
実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
まず、実施例および比較例に用いられる硫化リチウムの製造例について説明する。
[硫化リチウムの製造]
硫化リチウムは、特開平7−330312号公報における第1の態様(2工程法)の方法に従って製造した。具体的には、撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。続いてこの反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した水硫化リチウムを脱硫化水素化し硫化リチウムを得た。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。水硫化リチウムの脱硫化水素反応が終了後(約80分)に反応を終了し、硫化リチウムを得た。
次に、硫化リチウムの精製手順について説明する。
[硫化リチウムの精製]
上述の製造法で得られた500mLのスラリ反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリ)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100ミリLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。尚、亜硫酸リチウム(LiSO)、硫酸リチウム(LiSO)並びにチオ硫酸リチウム(LiS2O)の各硫黄酸化物、及びN−メチルアミノ酪酸リチウム(NMAB)の含有量は、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、LMABは0.07質量%であった。
このようにして精製したLiSを、以下の実施例および比較例で使用した。
次に、実施例1〜実施例3および比較例1について説明する。
[実施例1]
本実施例では、本実施形態における注入部、排出部を具備しないミル容器を用いて実施した。
上述の製造例により製造したLiSとP(アルドリッチ株式会社製)を出発原料に用いた。LiS 16.27g(70モル%)、P 33.73g(30モル%)を10mmφアルミナボール175個が入った500mlアルミナ製容器に入れ密閉した。上述の計量、添加、密閉作業は全てグローブボックス内で実施し、使用する器具類は全て乾燥機で事前に水分除去したものを用いた。
この密閉したアルミナ容器を遊星ボールミル(株式会社伊藤製作所 LP-4)にて室温下、290rpmにて36時間メカニカルミリング処理することで灰白色の個体を得た。得られた固体の大部分は凝集塊として容器壁、ボール表面に固着した状態であった。ここに脱水トルエン(関東化学株式会社製)を134ml(117g)を加え、さらに290rpmにて1時間メカニカルミリング処理を行った。容器内部を観察した結果、容器壁、ボール表面への付着は完全に除去されスラリ状態になった。スラリを1mm□のメッシュでボールと電解質スラリとの分離を行った。容器、ボールを少量のトルエンを使って洗浄し、電解質スラリに加えた。電解質スラリを真空条件下、150℃、5時間加熱乾燥し、灰白色の粉末を48g(回収率96%)得た。
乾燥により得られた粉末のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418A)を行なった結果、原料LiSのピークは観測されず、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。上記固体電解質粉体をグローブボックス内、Ar雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、300℃,2時間の加熱処理を行ない、固体電解質ガラスセラミックを得た。このガラスセラミック粉末のX線回折測定では、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
また、硫化物系電解質ガラスセラミックを錠剤成形機に充填し、4〜6MPaの圧力を加え成形体を得た。更に、電極としてカーボンと電解質ガラスセラミックを重量比1:1で混合した合材を成形体の両面に乗せ、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、伝導度測定用の成形体 (直径約10mm、厚み約1mm) を作製した。この成形体について交流インピーダンス測定によりイオン伝導度測定を実施したところ、1.6E−3S/cmであった。なお、イオン伝導度の値は25℃における数値を採用した。
[実施例2]
実施例1において、脱水トルエンの代わりに脱水ヘプタン(関東化学株式会社製)を171ml(117g)を用いた以外は同様に処理を行い、固体電解質ガラスを回収率97%で得た。また、実施例1と同様にして固体電解質ガラスに加熱処理を施して固体電解質ガラスセラミックを得た。X線回折測定の結果、実施例1同様にガラス及びガラスセラミックが合成されていることを確認した。この電解質ガラスセラミックを用いて実施例1と同様にイオン伝導度を測定したところ、1.2E−3S/cmであった。
[実施例3]
本実施例では、量産化を想定し、注入部、排出部を備えたミル容器を用いた実験について記載する。LiS 485g(70モル%)、P 1005g(30モル%)を20mmφジルコニアボール43.3kgを充填した容量30Lの直径300mmφミル容器に入れ密閉した。
ミル回転数62rpmにて、10日間ミリングを行い反応を行った。その後、注入部より脱水トルエン3500gを注入し、ミル回転数62rpmで12時間ミリングを行った。その後、排出部より電解質のトルエンスラリとしての内容物1を抜きだした。その後、再度注入部より脱水トルエン3500gを注入し、ミル回転数62rpmで1時間ミリングを行った。電解質のトルエンスラリとしての内容物2を抜き出し、内容物1と内容物2とを合わせて電解質スラリを調製した。スラリを真空条件下、150℃にて加熱乾燥し、灰白色の粉末を1445g(回収率97%)得た。
乾燥により得られた粉末のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、原料LiSのピークは観測されず、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。上記固体電解質粉体をグローブボックス内、Ar雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、300℃,2時間の加熱処理を行ない、固体電解質ガラスセラミックを得た。このガラスセラミック粉末のX線回折測定では、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
この電解質ガラスセラミックを用いて、実施例1と同様にイオン伝導度を測定したところ、1.8E−3S/cmであった。
[比較例]
実施例1において、脱水トルエンを加えない状態で、ミル容器を開放した際は図2に示すような状態になった。
ミル容器に固着した電解質をハンマー等の衝撃により長時間かけて掻き落した。固着物の回収率は78%であった。固体電解質粉体をグローブボックス内、Ar雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、300℃,2時間処理して固体電解質ガラスセラミックを得た。このガラスセラミック粉末のX線回折測定では、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
この合計36時間処理した固体電解質ガラスセラミックを用いて実施例1と同様にイオン伝導度を測定したところ、1.7E−3S/cmであった。
[実施例1〜実施例3および比較例1で得られた電解質の評価]
表1に実施例1〜実施例3および比較例1で得れた電解質の評価結果を示す。表1に示すように、比較例1では、高いリチウムイオン伝導性を有する電解質が得られるものの、回収率が低かった。一方、実施例1〜実施例3では、高いリチウムイオン伝導性を有する電解質が高い回収率で得られることがわかった。
したがって、溶媒により固体電解質をスラリ状態にして、ミル容器から取出すことにより、高い回収率で電解質を得ることができることがわかった。
本発明の硫化物系電解質の製造方法は、固体電池等に使用される硫化物系電解質を製造する方法として利用される。
本実施形態におけるボールミルを示す斜視図。 ポットに原料を投入する状態を示す側面図。 硫黄化合物系電解質を製造する状態を示す側面図。 ポット内に溶媒を注入する状態を示す側面図。 ポットからスラリを排出する状態を示す側面図。 従来例にて硫化物系電解質を製造した際のミル容器内部を示す拡大斜視図。 従来例にて硫化物系電解質を製造した際のミル容器内部を示す拡大斜視図。
符号の説明
1………ボールミル
16……粉砕容器としてのポット
31……溶媒注入管
41……スラリ排出管
91……ミル容器
92……ボール
93……硫化物系固体電解質
160…ボール
162…注入部としての注入弁
171…排出部としての排出弁

Claims (5)

  1. メカニカルミリング法によりボールミルの粉砕容器内で硫化物系電解質を製造する製造工程と、
    粉砕容器内において炭化水素系溶媒と前記硫化物系電解質とを混合してスラリにするスラリ化工程と、
    前記粉砕容器から前記スラリを取出す取出工程と、
    を含むことを特徴とする硫化物系電解質の製造方法。
  2. 前記スラリの硫化物系電解質の濃度が5〜50重量%である
    ことを特徴とする請求項1に記載の硫化物系電解質の製造方法。
  3. 前記硫化物系電解質は、硫黄、リチウムおよびリンを含有する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の硫化物系電解質の製造方法。
  4. 粉砕容器と、
    前記粉砕容器に、開閉可能に設けられ、前記粉砕容器内に炭化水素系溶媒を注入する注入部と、
    前記粉砕容器内で、硫化物系電解質を製造するとともに、前記硫化物系電解質と、前記炭化水素溶媒を混合し、スラリにするボールと、
    前記粉砕容器に、開閉可能に設けられ、前記粉砕容器内から前記スラリを排出する排出部と、
    を備えることを特徴とするボールミル。
  5. 粉砕容器と、
    前記粉砕容器内で、硫化物系電解質を製造するとともに、前記硫化物系電解質と、炭化水素溶媒を混合し、スラリにするボールと、
    前記粉砕容器に、開閉可能に設けられ、前記粉砕容器内に前記炭化水素溶媒を注入し、前記粉砕容器内から前記スラリを排出する注入・排出部と、
    を備えることを特徴とするボールミル。
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