JP2010096927A - 感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品 - Google Patents

感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】硬化後の膜の物性が、高温で硬化したものと遜色ない性能が得られ、かつ金属配線や金属層などの銅及び銅合金の腐食を抑制する感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物は、(a)一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、及び(d)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する。
【化1】
Figure 2010096927

【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する耐熱性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関し、特に、感度、解像度、現像時の密着性、耐熱性及び耐薬品性に優れ、銅及び銅合金に対して優れた防錆効果、残膜防止効果、膜密着効果を有する良好な形状のパターンが得られるポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関するものである。
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。このポリイミド樹脂膜は、一般にはテトラカルボン酸二無水物とジアミンを極性溶媒中で常温常圧において反応させ、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液(いわゆるワニス)をスピンコートなどで薄膜化して熱的に脱水閉環(硬化)して形成する(例えば、非特許文献1参照)。
近年、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきている。この感光性ポリイミドを用いるとパターン形成工程が簡略化でき、煩雑なパターン製造工程の短縮が行えるという特徴を有する(例えば、特許文献1〜3参照)。
従来、上記感光性ポリイミドの現像にはN−メチルピロリドン等の有機溶剤が用いられてきたが、最近では、環境やコストの観点からアルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の提案がなされている。このようなアルカリ現像可能なポジ型の感光性樹脂を得る方法として、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(例えば、非特許文献2参照)、可溶性ヒドロキシルイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献4、5参照)などがある。かかる方法により得られる樹脂には、低誘電率化が期待でき、そのような観点からも感光性ポリイミドと共に感光性ポリベンゾオキサゾールが注目されている。
最近、電子部品の層間絶縁膜層や表面保護膜層などの樹脂硬化膜を形成する場合のプロセスとして、低温プロセスが望まれており、それに対応するためには、低温で脱水閉環ができ、脱水閉環後の膜の物性が高温で脱水閉環したものと遜色ない性能が得られるポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが不可欠となってきた。しかしながら、ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体を熱的に脱水閉環させてポリイミド薄膜やポリベンゾオキサゾール薄膜とする場合、通常、350℃前後の高温を必要とする。この350℃前後の高温は、基板に悪影響を与えるおそれがある。
そこで、最近は熱履歴に由来する不良回避のため、半導体製造プロセスにおける処理温度の低温化が望まれている。このプロセスにおける処理温度の低温化を実現するためには、表面保護膜でも、従来の350℃前後というような高温ではなく、約250℃未満の低温で脱水閉環ができ、脱水閉環後の膜の物性が高温で脱水閉環したものと遜色ない性能が得られるポリイミド材料やポリベンゾオサゾール材料が不可欠となる。しかしながら、熱拡散炉を用い温度を下げて脱水閉環する場合では、一般的に膜の物性は低下する。
ここで、一般的にポリベンゾオキサゾール前駆体の脱水閉環温度は、ポリイミド前駆体の脱水閉環温度に比べて高いことが知られている(例えば、非特許文献3参照)。従って、ポリイミド前駆体を脱水閉環させることよりもポリベンゾオキサゾール前駆体を250℃未満の温度で脱水閉環させることはより困難である。
近年、半導体素子の小型化、高集積化による多層配線化、チップサイズパッケージ(CSP)、ウエハーレベルパッケージ(WLP)への移行等により、低誘電率化や、また、銅、アルミニウム、金、チタニウム等の配線又は配線金属との密着性向上の要求から、更に高性能のポリベンゾオキサゾール樹脂やポリイミド樹脂が必要とされている。また、これら半導体素子の製造では熱履歴に由来する不良回避のため、低温プロセスが望まれている。
密着に関しては、一般に、有機ケイ素化合物を用いることにより、シリコンやチッ化膜等の基板との密着性の向上が図られることが知られている(特許文献6)。しかし、銅等に代表される再配線を構成する材料に対しては、樹脂の密着が不充分である傾向にある。この接着性の不良は、導体配線が断線、短絡を引き起こすという点で問題となる。
更に、従来のポリイミド系樹脂は、銅及び銅合金などの金属に対して腐食性を有するという問題があった。ポリイミド前駆体のポリアミド酸が主鎖及び末端基にカルボキシル基を含んでいること、そして、ポリイミド化した後にもカルボキシル基が残存する場合に銅及び銅合金の腐食が多い。これは酸性官能基であるカルボキシル基が、銅及び銅合金と反応するためである。従って、例えば、ポリイミド前駆体を含有するワニスを用いて、多層配線板用層間絶縁膜を形成させる場合、ワニスの乾燥工程又は加熱硬化(ポリイミド化)する工程又は硬化後に、塗膜と接触する銅又は銅合金に腐食作用と銅イオンの発生が起こり、絶縁不良、断線、ショート、金属部位の錆、膜の密着性の低下、膜物性の劣化などの種々の問題を引き起こしていた。
一方、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミドは主鎖にカルボキシル基を持たないものの、末端基にカルボキシル基を含むことからポリイミド系樹脂と同様に銅及び銅合金などの金属に対して腐食性を有するという問題があった。ポリベンゾオキサゾール前駆体の末端基をカルボキシル基を含まない化合物で修飾する方法もあるが、定量的にポリマーの末端基を修飾することは困難であり、若干のカルボキシル基がポリマー構造中に残存する。このため銅及び銅合金などの金属に対して腐食性を改善する方法としては、不十分である傾向にある。
感光性ポリイミド前駆体又は感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体のワニスを用いてポリイミド膜又はポリベンゾオキサゾール膜を形成する場合、ポリマー中の主鎖及び末端基に存在するカルボキシル基と銅又は銅合金との反応に起因して、現像時に残膜が生じやすく、感度の大幅な低下や良好なパターンが得られないということがある。すなわち、ポリマー中のカルボキシル基と銅が反応すると、カルボキシル銅(銅塩)が生成する。カルボキシル銅が生成したポリマーは、それ自身の現像液に対する溶解性が低下し、露光工程の後、現像液を用いて現像する際に、ポジ型の感光性樹脂組成物であれば、露光部に残膜が発生し、ネガ型の感光性樹脂組成物であれば、未露光部に残膜が発生する原因になる。銅イオンは、電気絶縁性低下のみならず、膜物性低下、密着性低下等を引き起こす。
また、感光性ポリイミド前駆体又は感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体のワニスを用いて、銅配線上でポリイミドパターンを形成する方法では、ポリマー中のカルボキシル基と銅との反応に起因する銅イオンのマイグレーションにより、現像後残膜の発生が起きたり、ポリイミド膜又はポリベンゾオキサゾール膜と銅配線とのPCT(プレッシャークッカーテスト)後の密着性の低下が起きたりする場合があった。そこで、感光性ポリイミド前駆体のワニスを塗布する前に、銅配線層をクロムめっきなどのメッキ処理をする方法が一般に行われている。また、銅層表面にアミノ基を有するケイ素化合物で表面処理する方法(特許文献7)、銅層表面を酸素又は薬品で処理して酸化銅の皮膜を生成させる方法(特許文献8)など、銅層に対する表面処理を行った上で、ポリイミド前駆体被膜のパターニングを行う方法が提案されている。さらに、銅層表面を防錆剤で処理する方法も知られている。しかし、銅層表面をメッキ処理したり、薬品処理をしたりして皮膜を形成する方法は、製造工程が増えるため、作業性や経済性の面で好ましくない。
特開昭49−115541号公報 特開昭59−108031号公報 特開昭59−219330号公報 特開昭64−60630号公報 米国特許第4395482号明細書 特開昭63−001584号公報 特開平6−242613号公報 特開平5−198559号公報 日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」(2002年) J.Macromol.Sci.,Chem.,vol.A24,12, 1407(1987年) J.Photopolym.Sci.Technol.,vol.17,207−213.
感光性ポリイミド又は感光性ポリベンゾオキサゾールは、パターン形成後に、通常、350℃前後の高温で硬化を行う。これに対して、最近、登場してきた次世代メモリーとして有望なMRAM(Magnet Resistive RAM)は高温プロセスに弱く、低温プロセスが望まれている。また、半導体素子の小型化、高集積化による多層配線化、チップサイズパッケージ(CSP)、ウエハーレベルパッケージ(WLP)への移行等により、低誘電率化や、銅、アルミニウム、金、チタニウム等の配線又は配線金属との密着性向上の要求から、更に高性能のポリベンゾオキサゾール樹脂やポリイミド樹脂が必要とされており、これら半導体素子の製造でも熱履歴に由来する不良回避のため、低温プロセスが望まれている。従って、バッファーコート(表面保護膜)材や層間絶縁膜でも、従来の350℃前後というような高温ではなく、約280℃の以下の低温で硬化ができ、さらには硬化後の膜の物性が、高温で硬化したものと遜色ない性能が得られ、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する材料が不可欠となってきた。
しかしながら、このような低温で硬化でき、しかも高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる材料は、現状では未だ得られていない。また、銅及び銅合金からなる金属配線又は金属層が形成された基板上にポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆対ワニスを塗布し多層配線板用絶縁膜を形成する際、ポリマーが銅又は銅合金に腐食作用を引き起こし、絶縁不良、断線、ショート等を生じるといった問題があった。
本発明は、上述の従来の問題点を解消するためになされたものであって、その課題は、280℃以下の低温でも高い脱水閉環率を有する特定の構造単位を持つポリベンゾオキサゾール感光性樹脂膜をベース樹脂として、さらに感光剤及び複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する感光性樹脂組成物を加熱処理することにより、硬化後の膜の物性が、低温で硬化しても高温で硬化したものと遜色ない性能が得られ、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能な感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体をベースポリマーとして有しており、この感光性ポリベンゾオキサゾールは、以下に示す一般式(1)又は(5)においてUとVの両方又は一方が脂肪族鎖状構造を有することを特徴とする。かかる構造により、約280℃の以下でもポリベンゾオキサゾール前駆体の脱水閉環率が高いので、この樹脂組成物を用いることにより低温での硬化プロセスによっても高温での硬化膜の物性と差がないような耐熱性に富んだ硬化膜を得ることができる。また、複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有するにより、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する感光性樹脂組成物が得られる。
また、この脂肪族鎖状構造を有するポリベンゾオキサゾール硬化膜は、より低温での硬化プロセスにより形成しても、高い破断伸び、低誘電率、優れた耐薬品性を示す。本発明は、前記感光性樹脂組成物の使用により、アルカリ水溶液で現像可能であり、脂肪族鎖状構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は光透過性が高いため、感度、解像度に優れ、280℃以下の低温硬化プロセスによって耐熱性に優れた、良好な形状のパターン硬化膜を得ることができるパターン硬化膜の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、良好な形状と特性のパターンを有し、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有し、さらには低温プロセスで硬化可能な感光性樹脂組成物を用いることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品を歩留まり良く提供するものである。
すなわち、本発明による感光性樹脂組成物は、(a)一般式(1):
Figure 2010096927
(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、及び(d)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有してなることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分の一般式(1)におけるU及びVの少なくとも一方が、一般式(UV1):
Figure 2010096927
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)で表される構造を含む基、又は一般式(UV2):
Figure 2010096927
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、bからdは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。また、Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。ここでR9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基。)で表される構造を含む基であることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分が、一般式(2):
Figure 2010096927
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基、Uは2価の有機基であり、aは1〜30の整数である。)で表されることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分の一般式(2)におけるaが、7〜30で表されることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物は、(a)一般式(3):
Figure 2010096927
(式中、U, V, W, Xは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であり、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)で示されるA構造単位とB構造単位からなるポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体と、(b)感光剤と、(c)溶剤、及び(d)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有してなることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分の一般式(3)におけるU及びVの少なくとも一方が、一般式(UV1):
Figure 2010096927
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)で表される構造を含む基、又は一般式(UV2):
Figure 2010096927
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、bからdは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。また、Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。ここでR9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基。)で表される構造を含む基であることを特徴とする。
また、本発明の感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分が、一般式(4):
Figure 2010096927
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基、U,W,Xは2価の有機基を示し、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%であり、aは1〜30の整数である。)で表されることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分の一般式(4)におけるaが、7〜30で表されることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(b)成分の感光剤が、光により酸又はラジカルを発生する感光剤であることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(d)成分の複素環状化合物が、トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(d)成分の複素環状化合物が、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(d)成分の複素環状化合物が、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、さらに(e)成分として、加熱により架橋又は重合し得る架橋剤を含むことを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(e)成分を、前記(a)成分100重量部に対し、20〜50重量部用いることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、さらに(f)成分として、加熱により酸を発生する熱酸発生剤を含むことを特徴とする。
また、本発明によるポリベンゾオキサゾール膜は、前記感光性樹脂組成物を用い、そのポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環して形成されることを特徴とする。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法は、前記感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法にあっては、前記加熱処理工程が、前記パターン樹脂膜にマイクロ波をその周波数を変化させながらパルス状に照射することにより行うことを特徴とする。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法にあっては、前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が280℃以下であることを特徴とする。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法にあっては、前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が230℃以下であることを特徴とする。
また、本発明による保護膜は、前記パターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜で構成されていることを特徴とする。
また、本発明による保護膜にあっては、前記保護膜が半導体素子又は表示素子の表面保護膜であることを特徴とする。
また、本発明による絶縁膜は、前記パターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜で構成されていることを特徴とする。
また、本発明による絶縁膜にあっては、前記絶縁膜が半導体素子又は表示素子の層間絶縁膜であることを特徴とする。
また、本発明による表示素子は、前記表面保護膜を有していることを特徴とする。
また、本発明による表示素子は、前記層間絶縁膜を有していることを特徴とする。
また、本発明による半導体装置は、前記保護膜と前記絶縁膜の両方を有していることを特徴とする。
また、本発明による半導体装置の製造方法は、前記保護膜と前記絶縁膜の両方を有していることを特徴とする。
また、本発明による表示素子は、前記保護膜と前記絶縁膜の両方を有していることを特徴とする。
また、本発明による電子部品は、前記パターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を有していることを特徴とする。
また、本発明の電子部品にあっては、前記電子部品の素子がチップサイズパッケージ又はウエハーレベルパッケージであることを特徴とする。
また、本発明による電子部品にあっては、前記電子部品が磁気抵抗メモリーであることを特徴とする。
従来、感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いられているポリベンゾオキサゾール前駆体は、パターン形成後に脱水閉環するために350℃前後の高温で硬化を行う必要がある。これに対し、本発明の感光性樹脂組成物は、280℃以下の低温でも高い脱水閉環率を持つ特定のポリベンゾオキサゾール感光性樹脂膜をベース樹脂として有しており、それにより、硬化後の膜の物性が高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる。従って、より低温で効率的に環化反応や硬化反応が起きる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度差(溶解コントラスト)が現れ、所望のパターンを形成できる。さらに、複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有することにより、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する。
また、本発明のパターン硬化膜の製造方法によれば、前記感光性樹脂組成物の使用により、感度、解像度、接着性に優れ、さらに低温硬化プロセスでも耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターンが得られる。
さらに、本発明の電子部品は、その構成要素である硬化膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されるので、良好な形状と接着性、耐熱性に優れたパターン硬化膜を有する。本発明の電子部品は、さらにはその硬化膜を低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられるので、信頼性の高いものである。また、本発明の電子部品は、そのプロセスにおけるデバイスへのダメージが少ないことから、その製造歩留まりも高いという利点を有する。
以下に、本発明にかかる感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
[感光性樹脂組成物]
まず、本発明による低温硬化用の感光性樹脂組成物について説明する。本発明による感光性樹脂組成物は、(a)一般式(1):
Figure 2010096927
(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、及び(d)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する。なお、(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)感光剤、(c)溶剤及び(d)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、本明細書の記載において、場合によりそれぞれ単に(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分と記す。
また、上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体の代わりに、(a)成分として以下に示す一般式(3)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体を使用することもできる。
Figure 2010096927
(式中、U,V,W,Xは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であり、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)
以下、本発明による感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
((a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体)
ポリベンゾオキサゾール前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体は、通常、アルカリ水溶液で現像するので、アルカリ水溶液可溶性であることが好ましい。本発明においては、例えば、前記一般式(1)、(3)以外のポリベンゾオキサゾール前駆体ではないポリアミドの構造、ポリベンゾオキサゾールの構造、ポリイミドやポリイミド前駆体(ポリアミド酸やポリアミド酸エステル)の構造を、前記一般式(1)、(3)のポリオキサゾール前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体の構造と共に有していても良い。
なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。ポリオキサゾール前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体の構造、即ち、一般式(1)、(3)で表されるヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、最終的には硬化時の脱水閉環により、耐熱性、機械特性、電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。
本発明で用いるポリベンゾオキサゾール前駆体は、前記一般式(1)、(3)で表される繰り返し単位を有するが、そのアルカリ水溶液に対する可溶性は、Uに結合するOH基(一般にはフェノール性水酸基)に由来するため、前記OH基を含有するアミドユニットが、ある割合以上含まれていることが好ましい。
例えば、下記一般式(5)、(6) で表されるポリイミド前駆体であることが好ましい。
Figure 2010096927
(式中、U,V,Y,Zは2価の有機基を示す。jとlは、それぞれの繰り返し単位のモル分率を示し、jとlの和は100モル%であり、jが60〜100モル%、lが40〜0モル%である。)
ここで、式中のjとlのモル分率は、j=80〜100モル%、l=20〜0モル%であることがより好ましい。
Figure 2010096927
(式中、U,V,W,X,Y,Zは2価の有機基を示す。jとkとlは、それぞれの繰り返し単位のモル分率を示し、jとkとlの和は100モル%であり、jとkの和j+kが60〜100モル%、lが40〜0モル%である。)
ここで、式中のjとkとlのモル分率は、j+k=80〜100モル%、l=20〜0モル%であることがより好ましい。
(a)成分の分子量は、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
本発明において、ポリベンゾオキサゾール前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体の製造方法に特に制限はなく、例えば前記一般式(1)、(3)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、前記ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。反応溶媒としは、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましく、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。また、有機溶媒としは、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
以下に、一般式(1)、(3)を再掲し、続いて、これら一般式(1)、(3)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体について詳述する。
Figure 2010096927
(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)
Figure 2010096927
(式中、U, V, W, Xは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であり、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)
ここで、式中のjとkのモル分率は、j=5〜85モル%、k=15〜95モル%であることがパターン性、機械特性、耐熱性、耐薬品性の点でより好ましい。
上記一般式(1)、(3)中のUとして用いて好ましい基について説明する。
炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基は、一般式(1)、(3)において、UとしてもVとして存在していても良い。脂肪族鎖状構造を含む基として、下記一般式(UV1)又は(UV2)に示す構造を含む基であると、280℃の以下での脱水閉環率が高い点で望ましい。さらに炭素数7〜30の脂肪族直鎖構造であると弾性率が低くかつ破断伸びが高く、より好ましい。
Figure 2010096927
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)
Figure 2010096927
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、bからdは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。また、Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。ここでR9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
前記ジアミン類としては、例えば下記一般式(7)に示す化合物が挙げられる。
Figure 2010096927
(式中、nは1〜6の整数である。)
さらに、上記一般式(1)、(3)中のU又はWに用いられるジアミン類としては、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の、前記以外の芳香族系のジアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのジアミン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、上記一般式(1)、(3)中のVとして好ましい基について説明する。
一般式(1)、(3)においてVで表される2価の有機基とは、一般に、ジアミンと反応してポリアミド構造を形成する、ジカルボン酸の残基である。
本発明において、炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基は、前記一般式(1)、(3)において、UとしてもVとして存在していても良い。脂肪族鎖状構造を含む基としては、下記一般式(UV1)又は(UV2)に示す構造を有すると、耐熱性、紫外及び可視光量域での高い透明性を有し、280℃の以下での脱水閉環率が高い点で優れる。さらに、炭素数7〜30の脂肪族直鎖構造であると、そのポリマーはN−メチル−2−ピロリドン以外にもγ−ブチロラクトンやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートといった溶剤にも易溶となり、保存安定性も高い。さらに弾性率が低くかつ破断伸びが高く、より好ましい。
Figure 2010096927
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)
Figure 2010096927
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、bからdは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。また、Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。ここでR9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
上記ジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸、さらに下記一般式(8):
Figure 2010096927
(式中、Eは炭素数1〜6の炭化水素基、nは1〜6の整数である。)で示されるジカルボン酸等が挙げられる。
その他の一般式(1)、(3)、(5)及び(6)中のV,X又はZとして用いられるジカルボン酸類としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸などを併用することができる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記一般式(5)及び(6)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、Yで表される2価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成する、ジアミン由来(但し前記Uを形成するジヒドロキシジアミン以外)の残基である。Yとしては2価の芳香族基又は脂肪族基が好ましく、炭素原子数としては4〜40のものが好ましく、炭素原子数4〜40の2価の芳香族基がより好ましい。
このようなジアミン類としては、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物、この他にもシリコーン基の入ったジアミンとして、市販品である商品名「LP−7100」、「X−22−161AS」、「X−22−161A」、「X−22−161B」、「X−22−161C」及び「X−22−161E」(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
((b)成分:感光剤)
本発明による感光性樹脂組成物は、(a)成分であるポリベンゾオキサゾール前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体と共に、(b)成分である感光剤を含む。この感光剤とは、光に反応して、その組成物から形成された膜の現像液に対する機能を有するものである。本発明で(b)成分として用いられる感光剤に特に制限はないが、光により酸又はラジカルを発生するものであることが好ましい。
ポジ型の感光性樹脂組成物の場合は、(b)感光剤は、光により酸を発生するもの(光酸発生剤)であることがより好ましい。光酸発生剤は、ポジ型においては、光の照射により酸を発生し、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。そのような光酸発生剤としては、o−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、o−キノンジアジド化合物が感度が高く好ましいものとして挙げられる。
上記o−キノンジアジド化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物などとを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。前記o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',3'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3',4',5'−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
前記アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが使用できる。
前記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とは、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間である。
上記反応の反応溶媒としては,ジオキサン,アセトン,メチルエチルケトン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては,炭酸ナトリウム,水酸化ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,トリメチルアミン,トリエチルアミン,ピリジンなどが挙げられる。
また、一般式(1)、(5)及び(6)中のU,V,X,Yで示される構造において、アクリロイル基、メタクリロイル基のような光架橋性基を有する基がある場合は、(b)成分として、ラジカルを発生するもの、即ち光重合開始剤を用いることでネガ型感光性樹脂組成物として用いることができる。このネガ型感光性樹脂組成物は、光の照射による架橋反応によって、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を低下させる機能を有するものである。
本発明の感光性樹脂組成物において、(b)成分(感光剤)の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、8〜40重量部がより好ましい。
((c)成分:溶剤)
本発明に使用される(c)成分である溶剤としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、使用する溶剤の量は特に制限はないが、一般に、感光性樹脂組成物中溶剤の割合が20〜90重量%となるように調整されることが好ましい。
((d)成分:複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物)
本発明の(d)成分である複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の中で、複素環式化合物とは、2種又はそれ以上の元素の原子(炭素のほか、窒素、酸素、硫黄など)から環が構成されてなる環式化合物をいう。複素環式化合物としては、トリアゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H−ピラン環及び6H−ピラン環、トリアジン環を有する化合物等が挙げられ、中でも炭素原子と窒素原子を含むトリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環を有する化合物が好ましい。
本発明の(d)成分の中で、チオ尿素類としては、モノメチルチオ尿素、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の(d)成分の中で、複素環状化合物及びメルカプト基を有する化合物として具体的には、ピロール、3−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、2−エチルピロール、インドール、5−ヒドロキシインドール、ピラゾール、4−メチルピラゾール、3−アミノピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、インダゾール、5−アミノインダゾール、6−アミノインダゾール、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−イミダゾールカルボン酸、4−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメチル−1,3,4−チアジゾール、4−フェニル−1,2,3−チアジゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジゾール、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−オキサジアゾール、チアゾール、2−アミノチアゾール、2−メチルチアゾール、2−メトキシチアゾール、2−エトキシチアゾール、2−イソブチルチアゾール、2−トリメチルシリルチアゾール、5−トリメチルシリルチアゾール、4−メチルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、2−エチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、2−アミノ−5−メチルチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール、2,4,5−トリメチルチアゾール、ベンゾチアゾール、2−メチルベンゾチアゾール、2,5−ジメチルベンゾチアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,5−トリアゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジプロピル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、3,5−ジアミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、5−アミノ−1H−ベンゾトリアゾール、ベンゾトリゾール−4−スルホン酸、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−(メチルチオ)−1H−テトラゾール、5−(エチルチオ)−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−ニトロ−1H−テトラゾール1−メチル−1H−テトラゾール、5,5’−ビス−1H−テトラゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明の(d)成分の中で、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましく、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5,5’−ビス−1H−テトラゾールが特に好ましい。
本発明の(d)成分は、感光性樹脂と基板(銅及び銅合金)との腐食を防ぎ、かつ密着性を向上させるために用いられるものである。
本発明の(d)成分(複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物)の配合量は、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して、通常1種類につき、0.1〜10重量部、2種類以上を組み合わせる場合は合計で0.1〜10重量部である。より好ましくは0.2〜5重量部の範囲である。0.1重量部未満であると金属層への密着性の向上効果が低下する傾向があり、10重量部を超えるとそれ以上配合しても密着性の大きな向上が見込まれない。
((e)成分:加熱により架橋又は重合し得る架橋剤)
本発明による感光性樹脂組成物は、(e)成分である加熱により架橋又は重合し得る架橋剤を含むことが好ましい。この(e)成分は、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程において、架橋剤である化合物がポリベンゾオキサゾール前駆体又はポリベンゾオキサゾールと反応、すなわち橋架けをする。又は加熱処理する工程において、架橋剤である化合物自身が重合する。これによって、比較的低い温度、例えば200℃以下の硬化において懸念される膜の脆さを防ぎ、機械特性や薬品耐性、フラックス耐性を向上させることができる。
この(e)成分は、加熱処理する工程において架橋又は重合する化合物である以外に特に制限はないが、分子内にメチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基又はビニルエーテル基を有する化合物であると好ましい。これらの基がベンゼン環に結合している化合物、あるいはN位がメチロール基及び/又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂、尿素樹脂が好ましい。また、これらの基がフェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合している化合物は、現像する際に露光部の溶解速度が増加して感度が向上させることが出来る点でより好ましい。中でも感度とワニスの安定性、加えてパターン形成後の膜の硬化時に、膜の溶融を防ぐことができる点で、分子内に2個以上のメチロール基、アルコキシメチル基を有する化合物がより好ましい。
そのような化合物は、下記一般式(9)〜(11)で表すことができる。
Figure 2010096927
(式中、Gは単結合又は1〜4価の有機基を示し、R11、R12は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、oは1〜4の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である。)
Figure 2010096927
(式中、2つのJは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基で酸素原子、フッ素原子を含んでいても良く、R13〜R16は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、r及びsは各々独立に1〜3の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である。)
Figure 2010096927
(式中、R17、R18は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、複数あるR18は環構造を有して、互いに連結していても良い。)
上述の架橋剤として、例えば下記化学式(12)
Figure 2010096927
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の感光性樹脂組成物において、(e)成分(加熱により架橋又は重合し得る架橋剤)の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅、及び硬化膜物性の点から、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。 一方、230℃以下での硬化膜の薬品耐性、フラックス耐性の観点では、20重量部以上、すなわち、20〜50重量部とすることがさらに好ましい。
((f)成分:加熱により酸を発生する熱酸発生剤)
本発明において、さらに、(f)成分として加熱により酸を発生する熱酸発生剤(熱潜在酸発生剤)を使用することができる。熱酸発生剤を使用すると、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒として効率的に働くので好ましい。また、本発明の約280℃の以下での脱水閉環率が高い特定の樹脂に、この酸熱発生剤を併用することにより、脱水環化反応をさらに低温化できるので、低温での硬化でも硬化後の膜の物性が、高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる。
上記熱酸発生剤(熱潜在酸発生剤)から発生する酸としては、強酸が好ましく、具体的には、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸等が好ましい。これらの酸は、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒として効率的に働く。これに対して、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸や硝酸が出るような酸発生剤では、発生した酸の酸性度が弱く、さらに加熱で揮発し易いこともあって、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には殆ど関与しないと考えられ、本発明の十分な効果が得られにくい。
これらの酸は、熱酸発生剤として、オニウム塩としての塩の形やイミドスルホナートのような共有結合の形で本発明の感光性樹脂組成物に添加される。
上記オニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩のようなジアリールヨードニウム塩、ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩のようなジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリメチルスルホニウム塩のようなトリアルキルスルホニウム塩、ジメチルフェニルスルホニウム塩のようなジアルキルモノアリールスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩のようなジアリールモノアルキルヨードニウム塩等が好ましい。これらが好ましいの」は、分解開始温度が150〜250℃の範囲にあり、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して効率的に分解するためである。これに対してトリフェニルスルホニウム塩は、本発明の熱酸発生剤としては望ましくない。トリフェニルスルホニウム塩は熱安定性が高く、一般に分解温度が300℃を超えているため、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際しては分解が起きず、環化脱水の触媒としては十分に働かないと考えられるためである。
以上の点から、熱酸発生剤としてのオニウム塩としての熱酸発生剤としては、例えば、アリールスルホン酸、カンファースルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸又はアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩、ジアルキルモノアリールスルホニウム塩又はジアリールモノアルキルヨードニウム塩が保存安定性、現像性の点から好ましい。さらに具体的には、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度180℃、5%重量減少温度185℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度151℃、5%重量減少温度173℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度255℃、5%重量減少温度278℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩(1%重量減少温度186℃、5%重量減少温度214℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度154℃、5%重量減少温度179℃)、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、カンファースルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、エタンスルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩等を好ましいものとして挙げることができる。
また、上記イミドスルホナートとしては、ナフトイルイミドスルホナートが望ましい。これに対して、フタルイミドスルホナートは、熱安定性が悪いために、硬化反応よりも前に酸が出て、保存安定性等を劣化させるので望ましくない。ナフトイルイミドスルホナートの具体例としては、例えば、1,8−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度189℃、5%重量減少温度227℃)、2,3−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度185℃、5%重量減少温度216℃)などを好ましいものとして挙げることができる。
また、上記(f)成分(熱酸発生剤)として、下記の化学式(13)に示すように、R1920C=N−O−SO2−R21の構造を持つ化合物(1%重量減少温度204℃、5%重量減少温度235℃)を用いることもできる。ここで、R21としては、例えば、p−メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基等のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。また、R19としては、シアノ基、R20としては、例えば、メトキシフェニル基、フェニル基等が挙げられる。
Figure 2010096927
また、上記(f)成分(熱酸発生剤)として、下記の化学式(14)に示すように、アミド構造−HN−SO2−R22をもつ化合物(1%重量減少温度104℃、5%重量減少温度270℃)を用いることもできる。ここで、R22としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル等のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。また、−HN−SO2−R22の結合する基としては、例えば、2,2,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや2,2,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジ(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が挙げられる。
Figure 2010096927
また、本発明で用いる(f)成分(熱酸発生剤)としては、オニウム塩以外の強酸と塩基から形成された塩を用いることもできる。このような強酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸が好ましい。塩基としては、例えば、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンのようなアルキルピリジン、2−クロロ−N−メチルピリジンのようなN−アルキルピリジン、ハロゲン化−N−アルキルピリジン等が好ましい。さらに具体的には、p−トルエンスルホン酸のピリジン塩(1%重量減少温度147℃、5%重量減少温度190℃)、p−トルエンスルホン酸のL−アスパラギン酸ジベンジルエステル塩(1%重量減少温度202℃、5%重量減少温度218℃)、p−トルエンスルホン酸の2,4,6−トリメチルピリジン塩、p−トルエンスルホン酸の1,4−ジメチルピリジン塩などが保存安定性、現像性の点から好ましいものとして挙げられる。これらも280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して分解し、触媒として働くことができる。
(f)成分(熱酸発生剤)の配合量は、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、0.2〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部がさらに好ましい。
[その他の添加成分]
本発明による感光性樹脂組成物において、上記(a)〜(f)成分に加えて、(1)溶解促進剤、(2)溶解阻害剤、(3)密着性付与剤、(4)界面活性剤又はレベリング剤などの成分を配合しても良い。
((1)溶解促進剤)
本発明においては、さらに(a)成分であるベース樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を促進させる溶解促進剤、例えばフェノール性水酸基を有する化合物を含有させることができる。フェノール性水酸基を有する化合物は、加えることでアルカリ水溶液を用いて現像する際に露光部の溶解速度が増加し感度が上がり、また、パターン形成後の膜の硬化時に、膜の溶融を防ぐことができる。
本発明に使用することのできるフェノール性水酸基を有する化合物に特に制限はないが、フェノール性水酸基を有する低分子化合物としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、ビスフェノールA、B、C、E、F及びG、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール、2,6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’−[1−[4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’−エチリジントリスフェノール、4−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−2−エトキシフェノール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、2,2’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4’,4’’−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリジン)トリスフェノール、4,4’,4’’,4’’’−(1,4−フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ビス[(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェニル]−フェニル]エチリデン]ビス[2,6−ビス(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェノールなど挙げることができる。
上記フェノール性水酸基を有する化合物の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅の点から、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がより好ましい。
((2)溶解阻害剤)
本発明においては、さらに(a)成分であるベース樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物である溶解阻害剤を含有させることができる。具体的には、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイド等である。
これらは、発生する酸が揮発し易いこともあり、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には関与しない。しかし、効果的に溶解阻害を起こし、残膜厚や現像時間をコントロールするのに役立つ。上記成分(溶解阻害剤)の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して0.01〜50重量部が好ましく、0.01〜30重量部がより好ましく、0.1〜20重量部がさらに好ましい。
((3)密着性付与剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等の密着性付与剤を含むことができる。
有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
これらの密着性付与剤を用いる場合は、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。
((4)界面活性剤又はレベリング剤)
また、本発明の感光性樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させたりするために、適当な界面活性剤又はレベリング剤を添加することができる。
このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R−08」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
[パターン硬化膜の製造方法]
次に、本発明によるパターン硬化膜の製造方法について説明する。本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述した感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜の形成工程、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程、及び前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を経て、ポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜を得ることができる。以下、各工程について説明する。
(感光性樹脂膜の形成工程)
まず、この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、上述した本発明による感光性樹脂組成物をスピンナーなどを用いて回転塗布後、ホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。これにより、感光性樹脂組成物の被膜である感光性樹脂膜が得られる。
(露光工程)
次に、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射することにより露光を行う。
(現像工程)
現像工程では、活性光線が露光した感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去することにより、パターン硬化膜が得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。さらに、上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像後得られたパターンを加熱処理することにより、オキサゾール環や他の官能基を有する耐熱性のポリオキサゾールのパターンを形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、280℃以下、望ましくは120〜280℃、より望ましくは160〜250℃、最も望ましくは170〜230℃である。
また、加熱処理は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等を用いて行う。また、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が感光性樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので望ましい。上記加熱温度範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができる。従って、本発明のパターンの製造方法を用いることによって、デバイスが歩留り良く製造できる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。
また、本発明の加熱処理としては、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置や周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらをもちいることにより、基板やデバイスの温度は例えば220℃以下に保ったままで、感光性樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である。
例えば、特許第2587148号明細書及び特許第3031434号明細書では、マイクロ波を用いたポリイミド前駆体の脱水閉環が検討されている。また米国特許第5738915号明細書では、マイクロ波を用いてポリイミド前駆体薄膜を脱水閉環する際に、周波数を短い周期で変化させて照射することにより、ポリイミド薄膜や基材のダメージを避ける方法が提案されている。
周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射した場合は、定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。さらに基板として電子部品のように金属配線を含む場合は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させる際に照射するマイクロ波の周波数は0.5〜20GHzの範囲であるが、実用的には1〜10GHzの範囲が好ましく、さらに2〜9GHzの範囲がより好ましい。
照射するマイクロ波の周波数は連続的に変化させることが望ましいが、実際は周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくく、その時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
照射するマイクロ波の出力は、装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10〜2000Wの範囲であり、実用上は100〜1000Wがより好ましく、100〜700Wがさらに好ましく、100〜500Wが最も好ましい。出力が10W以下では被加熱体を短時間で加熱することが難しく、2000W以上では急激な温度上昇が起こりやすいので好ましくない。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体をマイクロ波により脱水閉環する温度は、先に述べたとおり、脱水閉環後のポリベンゾオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けるためにも低い方が好ましい。本発明において脱水閉環する温度は、280℃以下が好ましく、250℃以下がさらに好ましく、220℃以下がより好ましく、220℃以下が最も好ましい。なお、基材の温度は赤外線やGaAsなどの熱電対といった公知の方法で測定する。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させる際に照射するマイクロ波は、パルス状に入/切させることが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、ポリベンゾオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けることができる点で好ましい。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は条件によって異なるが、概ね10秒以下である。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれかを選択することができる。
このようにして、本発明の感光性樹脂組成物を層として有する基材に、前述の条件でマイクロ波を照射して本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環すれば、マイクロ波による低温での脱水閉環プロセスによっても熱拡散炉を用いた高温での脱水閉環膜の物性と差がないポリオキサゾールが得られる。
[半導体装置の製造工程]
次に、本発明によるウエハーレベルパッケージの製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。図1〜図9は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第9の工程へと一連の工程を表している。
これらの図において、回路素子(図示しない)を有するシリコン基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜3で被覆され、露出した回路素子上にパッド電極として第1導体層2が形成されている(図1)。
次に、半導体基板1上にスピンコート法等で有機絶縁膜(層間絶縁膜層)4として感光性を有するポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体等の膜が形成される(図2)。
この有機絶縁膜4の所定部分に窓5を形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像し、パターンを形成する。その後、加熱して有機絶縁膜(層間絶縁膜層)4としてのポリイミド又はポリベンゾオキサゾール膜とする(図3)。
パターン形成した有機絶縁膜4の上に、接着促進層、拡散防止層及びメッキ層の機能を果たす第1アンダーバンプメタル層6をスパッタリング法等により形成する(図4)。
次に、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる。なお3層以上の多層配線構造を形成する場合には、上記の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる(図5)。
さらに、第2導体層7を覆って、有機絶縁膜(表面保護膜層)8が感光性を有するポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体等をスピンコート法等によって形成される(図6)。
次に、有機絶縁膜8について、窓9を形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像し、パターンを形成する。その後、加熱して有機絶縁膜8としてのポリイミド又はポリベンゾオキサゾール膜とする(図7)。この有機絶縁膜8は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。なお、上記例において有機絶縁膜(層間絶縁膜層)4は、有機絶縁膜(表面保護膜層)8と同様の本発明による感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
外部接続端子を形成する前に、パターン形成した有機絶縁膜8上に第2アンダーバンプメタル層10をスパッタリング法等により形成する(図8)。
この第2アンダーバンプメタル層10に、ソルダボール等の外部接続端子11を形成すると、ウエハーレベルパッケージの製造が完了する(図9)。
本発明では、従来は350℃前後の高温を必要としていた上記ポリベンゾオキサゾール膜を形成する加熱工程において、280℃以下の低温の加熱を用いて硬化が可能である。280℃以下の硬化においても、本発明による感光性樹脂組成物は環化脱水反応が十分に起きることから、その膜物性(伸び、吸水率、重量減少温度、アウトガス等)が300℃以上で硬化したときに比べて物性変化は小さいものとなる。従って、プロセスが低温化できることから、デバイスの熱による欠陥を低減でき、信頼性に優れた半導体装置(電子部品)を高収率で得ることができる。また、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有することから、これらの金属配線を有する半導体装置に適用でき、その製造歩留まりも高いという利点を有する。また、上記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
[電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、上述した感光性樹脂組成物を用いて上記パターン硬化膜の製造方法によって形成されるパターンを有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。特に、耐熱性の低いMRAM(磁気抵抗メモリー:Magnet Resistive Random Access Memory)が好ましいものとして挙げられる。
また、上記パターンは、具体的には、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、前記感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造を採ることができる。例えば、本発明の感光性樹脂組成物は、MRAMの表面保護膜用や、チップサイズパッケージ又はウエハーレベルパッケージの層間絶縁膜用及び表面保護膜用として好適である。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(合成例1) ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92gを添加し、攪拌溶解した。続いて、この溶液を温度を0〜5℃に保ちながら、セバシン酸ジクロリド9.09gを10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は33,100、分散度は2.0であった。
(合成例2)
合成例1で使用したセバシン酸ジクロリドをドデカン二酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は31,600、分散度は2.0であった。
(合成例3)
合成例1で使用した2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は28,800、分散度は1.9であった。
(合成例4)
合成例1で使用したセバシン酸ジクロリドをドデカン二酸ジクロリドに、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は24,300、分散度は1.9であった。
(合成例5)
合成例1で使用したセバシン酸ジクロリドの20mol%を4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例6と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は45,100、分散度は2.0であった。
(合成例6)
合成例2で使用したドデカン二酸ジクロリドの20mol%を4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例7と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は41,800、分散度は2.0であった。
(合成例7)
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物20.16g、N−メチルピロリドン83.93g、イソプロピルアルコール7.81g、ジアザビシクロウンデセン0.30gを仕込み、室温で120時間攪拌し反応させて、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルのN−メチルピロリドン溶液を得た。次いで、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルのN−メチルピロリドン溶液103.56gをフラスコに入れて0℃に冷却し、塩化チオニル12.44gを滴下し、30分反応させて,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルジクロリドのN−メチルピロリドン溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン53.72gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデン13.44gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン16.32gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルジクロリドのN−メチルピロリドン溶液107.56gを20分間で滴下した後、1時間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧してポリイミド前駆体(以下、ポリマーVIIとする)を得た。GPC(カラム:日立化成(株)製GL−S300MDT−5)を用いて測定した重量平均分子量は、23,800であった。
(合成例8)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル12.64gを滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.31gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン8.53gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVIIIとする)を得た。GPC(カラム:日立化成(株)製GL−S300MDT−5)を用いて測定した重量平均分子量は17,900であった。
(合成例9)
合成例1で使用した2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンを2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリイミド前駆体(以下、ポリマーIXとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は22,000であった。
(GPC法による重量平均分子量の測定条件)
測定装置;検出器 株式会社日立製作所社製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所社製L6000
株式会社島津製作所社製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min、検出器:UV270nm
ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
(合成ポリマーを用いた感光特性評価)
実施例1〜12及び比較例1〜10
(a)成分として上記各ポリマー100重量部に対し、(b)、(c)、(d)成分及び添加成分を表1に示した所定量にて配合した。
Figure 2010096927
表1中、BLOはγ−ブチロラクトン、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、NMPはN−メチルピロリドンをそれぞれ表し、BLO/NMPは、両者を混合して用いたことを表す。BLO/PGMEAは8/2(重量比)の混合溶液、BLO/NMPは混合比1/1(重量比)である。(c)成分の添加量は、160〜170重量である。括弧内は、(a)成分ポリマー100重量部に対する添加量を重量部で示した。B1、B2、D1〜D3、E1〜E6は、下記化学式(15)〜(17)にそれぞれ示す化合物である。
Figure 2010096927
Figure 2010096927
Figure 2010096927
5インチのシリコンウエハ及び5インチのシリコンウエハ上にTiN膜を約200Åの膜厚でスパッタ形成し、その上にCu膜を約500Åの膜厚でスパッタ形成したウエハ(以下、「Cuウエハ」という。)上に、前記感光性樹脂組成物の溶液をスピンコートして乾燥膜厚3〜10μmの塗膜を形成した。その後、干渉フィルターを介して、超高圧水銀灯を用いてパターンマスクを介し、i線(365nm)露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハ及びCuウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしパターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。その結果を表2に示した。
Figure 2010096927
以上の結果から、本発明の(d)成分であるD1、D2、D3を含有する実施例1〜12及び比較例4,5,7の感光性樹脂組成物は、同条件下での感光特性評価においてシリコンウエハ及びCuウエハともに同等の感度、解像度が得られた。一方、(d)成分を含有しない比較例1〜3,6,8〜10ではシリコンウエハに比べ、Cuウエハでは感度が劣化した。
次に、5インチのCuウエハ上に実施例1〜12の感光性樹脂組成物溶液をパターン形成し、ガスオーブン中、窒素雰囲気下、100℃で60分加熱した後、さらに200℃で1時間加熱して有機絶縁膜を得た。得られたウエハ上の硬化膜を用いて密着性試験としてスタッドプル試験を行った。スタッドプル試験には、フォトテクニカ(株)製スタッドピン(エポキシ接着剤付Al)を用いた。スタッドピンと硬化膜との接着は、150℃のオーブンで1時間硬化することにより行った。その結果、エポキシ接着層の凝集破壊が起こり、実施例1〜12の硬化膜とCuウエハとの接着強度はエポキシ凝集密度強度よりも大きく、密着性は十分であった。また、硬化膜を形成したCuウエハを、プレッシャークッカーを用いて温度135℃/湿度85%で100時間処理を行った後、同様にスタッドプル試験を行った。その結果、エポキシ接着層の凝集破壊が起こり、実施例1〜12の硬化膜とCuウエハとの接着強度はPCT処理後もほとんど劣化しなかった。
これらの結果から、(d)成分を含有した感光性樹脂組成物の実施例1〜12は、シリコンウエハ上と同等の感度、解像度がCuウエハでも得られ、その硬化膜はCuウエハと十分な接着性を示した。
実施例1〜12、比較例1〜10で調製した溶液に、さらに(f)成分として熱酸発生剤を表3に示したように、前記(a)成分100重量部に対して所定量を配合した。また、表3中、(f)成分のF1〜F4は、下記化学式(18)に示す化合物を使用した。
Figure 2010096927
Figure 2010096927
上記感光性樹脂組成物の溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間乾燥し、膜厚12μmの塗膜(A)を得た。この塗膜を光洋サーモシステム社製イナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに200℃で1時間又は320℃で1時間加熱して硬化膜(200℃で加熱した硬化膜(B)、350℃で加熱した硬化膜(C))を得た。これらの塗膜(A)及び硬化膜(B)、(C)の赤外吸収スペクトルを測定し、1540cm-1付近のC−N伸縮振動に起因するピークの吸光度を求めた。赤外吸収スペクトルの測定は、測定装置としてFTIR−8300(株式会社島津製作所製)を使用した。塗膜(A)の脱水閉環率を0%、硬化膜(C)の脱水閉環率を100%として、次の式から硬化膜(B)の脱水閉環率(%)を算出した。
Figure 2010096927
次に、4.9%フッ酸水溶液を用いて、上記硬化膜を剥離し、水洗、乾燥した後、ガラス転移点(Tg)、破断伸び(%)といった膜物性を調べた。Tgは、セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6000を用い、昇温速度5℃/minにて熱膨張の変曲点より求めた。破断伸び及び弾性率は、島津製作所社製オートグラフAGS−100NHを用いて引っ張り試験より求めた。これらの脱水閉環率、Tg、破断伸びを測定した結果を表3に示した。なお、硬化温度320℃で硬化した膜の脱水閉環率を100%とし、硬化温度200℃で硬化した膜の脱水閉環率を算出した。
以上の結果から、本発明の(a)成分であるポリマーを含有する実施例1〜12及び比較例8〜10の感光性樹脂組成物は、表3に示したように、200℃硬化で脱水閉環率が80%以上と高かった。また、実施例1〜12及び比較例8〜10の感光性樹脂組成物は、320℃で硬化した膜と比べて、200℃で硬化した膜のTg、破断伸びは変化が小さく、遜色のない膜物性が得られた。特に、200℃で硬化した膜の破断伸びは20%以上と実用上問題ない機械特性を有すると分かった。
一方、比較例1〜7の感光性樹脂組成物は320℃で硬化した膜と比べて、200℃で硬化した膜のTg、破断伸びは変化が大きかった。200℃で硬化した膜の破断伸びは、5%以下、又は測定できないほど靭性が小さかった。
次に、表3に示した(f)成分を配合した実施例1〜12、比較例1〜10の感光性樹脂組成物の溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに、200℃で1時間、180℃で1時間又は160℃で1時間加熱して硬化膜を得た。200℃、180℃及び160℃にて1時間熱硬化したときの脱水閉環率をそれぞれ測定した。さらに、それぞれの硬化膜について、アセトン、BLO(γ−ブチロラクトン)、NMP(N−メチルピロリドン)のそれぞれ室温で15分間浸漬させたときの硬化膜の変化を観察した。それぞれの結果を併せて表4に示した。硬化膜にクラックが入ったものを×、クラック無しのものを○で表中に記した。
Figure 2010096927
薬品耐性について表4に示したように、比較例1〜7の感光性樹脂組成物は、いずれの溶剤に対してもクラックが生じた。これに対して、本発明の(a)成分であるポリマーを含有する実施例1〜12及び比較例8〜10の感光性樹脂組成物について、実施例2,4〜7,9,12及び比較例8では、160℃又は180℃で硬化させた時、アセトンやNMPに対してクラックが生じたが、BLOに対しては優れた薬品耐性を示した。一方、実施例1,3,10〜11及び比較例9,10では、160℃、180℃、及び200℃の硬化において、アセトン、BLO、及びNMPの全てに対して優れた薬品耐性を示した。このことから本発明の(a)成分であるポリマーを含有する感光性樹脂組成物は、薬品耐性に優れていることが分かった。
これらの結果から本発明の(a)成分であるポリマーを含有した感光性樹脂組成物の実施例1〜12及び比較例8〜10は、320℃で硬化した膜と同様に200℃で硬化した膜の耐熱性及び機械特性は、遜色がなく、実用上問題ない膜物性が得られた。また200℃以下で硬化した膜はアセトン、BLO、及びNMPといった有機溶剤に対して十分な薬品耐性を示した。このように、実施例1〜12の感光性樹脂組成物は、銅及び銅合金に対してシリコンウエハと同等の感光特性及び十分な接着性を示した。さらに200℃で硬化した膜は実用上問題ない十分な耐熱性、機械特性を有し、有機溶剤に対して十分な薬品耐性を示すことが分かった。
以上のように、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、硬化後の膜の物性が、低温で硬化しても高温で硬化したものと遜色ない性能が得られ、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する。従って、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に適している。
本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
符号の説明
1 半導体基板
2 第1導体層(パッド電極)
3 保護膜
4 有機絶縁膜(層間絶縁膜)
5 窓
6 第1アンダーバンプメタル層
7 第2導体層
8 有機絶縁膜(表面保護膜)
9 窓
10 第2アンダーバンプメタル層
11 外部接続端子

Claims (32)

  1. (a)一般式(1):
    Figure 2010096927
    (式中、U又はVは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、
    (b)感光剤と、
    (c)溶剤と、及び
    (d)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と
    を含有してなることを特徴とする感光性樹脂組成物。
  2. 前記(a)成分の一般式(1)におけるU及びVの少なくとも一方が、一般式(UV1):
    Figure 2010096927
    (式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)で表される構造を含む基、又は一般式(UV2):
    Figure 2010096927
    (式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、bからdは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。また、Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。ここでR9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基である。)で表される構造を含む基
    であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 前記(a)成分が、一般式(2):
    Figure 2010096927
    (式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基、Uは2価の有機基であり、aは1〜30の整数である。)
    で表されることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  4. 前記(a)成分の一般式(2)におけるaが、7〜30であることを特徴とする請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
  5. (a)一般式(3):
    Figure 2010096927
    (式中、U, V, W, Xは2価の有機基を示し、U及びVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であり、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)で示されるA構造単位とB構造単位とを有してなるポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体と、
    (b)感光剤と、
    (c)溶剤と、及び
    (d)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と
    を含有してなることを特徴とする感光性樹脂組成物。
  6. 前記(a)成分の一般式(3)におけるU及びVの少なくとも一方が、一般式(UV1):
    Figure 2010096927
    (式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)で表される構造を含む基、又は一般式(UV2):
    Figure 2010096927
    (式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、bからdは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。また、Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。ここでR9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基である。)で表される構造を含む基
    であることを特徴とする請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
  7. 前記(a)成分が、一般式(4):
    Figure 2010096927
    (式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基、U,W,Xは2価の有機基を示し、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%であり、aは1〜30の整数である。)で表されることを特徴とする請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
  8. 前記(a)成分の一般式(4)におけるaが、7〜30であることを特徴とする請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
  9. 前記(b)成分の感光剤が、光により酸又はラジカルを発生する感光剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  10. 前記(d)成分の複素環状化合物が、トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  11. 前記(d)成分の複素環状化合物が、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  12. 前記(d)成分の複素環状化合物が、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  13. さらに(e)成分として、加熱により架橋又は重合し得る架橋剤を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  14. 前記(e)成分を、前記(a)成分100重量部に対し、20〜50重量部用いることを特徴とする請求項13に記載の感光性樹脂組成物。
  15. さらに(f)成分として、加熱により酸を発生する熱酸発生剤を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用い、そのポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環して形成されることを特徴とするポリベンゾオキサゾール膜。
  17. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜の形成工程と、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程とを含むことを特徴とするパターン硬化膜の製造方法。
  18. 前記加熱処理工程が、前記パターン樹脂膜にマイクロ波をその周波数を変化させながらパルス状に照射することにより行うことを特徴とする請求項17に記載のパターン硬化膜の製造方法。
  19. 前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が280℃以下であることを特徴とする請求項17又は18に記載のパターン硬化膜の製造方法。
  20. 前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が230℃以下であることを特徴とする請求項17又は18に記載のパターン硬化膜の製造方法。
  21. 請求項17〜20のいずれか1項に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜で構成されていることを特徴とする保護膜。
  22. 前記保護膜が、半導体素子又は表示素子の表面保護膜であることを特徴とする請求項21に記載の保護膜。
  23. 請求項17〜20のいずれか1項に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
  24. 前記絶縁膜が、半導体素子又は表示素子の層間絶縁膜であることを特徴とする請求項23に記載の絶縁膜。
  25. 請求項22に記載の表面保護膜を有していることを特徴とする表示素子。
  26. 請求項24に記載の層間絶縁膜を有していることを特徴とする表示素子。
  27. 請求項21に記載の保護膜と、請求項23に記載の絶縁膜との両方を有していることを特徴とする半導体装置。
  28. 請求項21に記載の保護膜と、請求項23に記載の絶縁膜との両方を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  29. 請求項21に記載の保護膜と、請求項23に記載の絶縁膜との両方を有していることを特徴とする表示素子。
  30. 請求項17〜20のいずれか1項に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を有していることを特徴とする電子部品。
  31. 前記電子部品の素子が、チップサイズパッケージ又はウエハーレベルパッケージである請求項30記載の電子部品。
  32. 前記電子部品が、磁気抵抗メモリーであることを特徴とする請求項30に記載の電子部品。
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