JP2013003310A - 感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法及び電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、250℃以下で加熱処理を行っても、高い脱水閉環率を示し、優れた耐薬品性及び高温高湿条件下での基板への密着性を有するパターン硬化膜を与える、感光性樹脂組成物を提供するものである。さらに本発明は、該感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法を提供するものである。さらに、本発明は、該パターン硬化膜を用いた層間絶縁膜及び表面保護膜を有することにより、信頼性の高い電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)アルカリ可溶性樹脂と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤と、(e)分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又はホスフィン酸基を有し、これら基のリン原子上に少なくとも1つの水酸基を有する化合物と、を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法、層間絶縁膜、表面保護膜及び電子部品に関し、特に、高温高湿条件下での密着性、耐熱性及び耐薬品性に優れ、良好な形状のパターンが得られる感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法、層間絶縁膜、表面保護膜及び電子部品に関するものである。
従来、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミドが用いられている。近年、ポリイミド自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられており、これを用いるとパターン作製工程が簡略化でき、煩雑な製造工程が短縮できるという特徴を有する。
感光性ポリイミドは、現像の際にN−メチルピロリドン等の有機溶剤が用いられてきたが、最近では、環境への配慮から、アルカリ水溶液で現像ができるポジ型感光性ポリイミドの提案がなされている。ポジ型感光性ポリイミドとしては、ポリイミド又はポリイミド前駆体に感光剤としてナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献1、2参照)が提案されている。
また、最近では、アルカリ水溶液で現像できるポジ型感光性樹脂として、ポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体が提案されている。ポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体は、ポリイミド又はポリイミド前駆体よりも、露光部と未露光部の溶解速度のコントラストが大きいため、より精密なパターンを形成することが可能である(例えば、特許文献3、非特許文献1参照)。
特開昭64−60630号公報 米国特許第4395482号明細書 特開2009−265520号公報
J.Photopolym.Sci.Technol.,vol.17,207−213.
最近、半導体素子の高集積化及び小型化が進み、パッケージ基板の薄膜化、小型化等の要求がある。そこで、基板等の損傷を抑制するために、このような半導体素子の層間絶縁膜及び表面保護膜を形成する際に、低温での製造工程が望まれている。
しかしながら、非特許文献1に記載されているポリベンゾオキサゾール前駆体は、パターン硬化膜を作製する際の加熱処理工程において、高温で脱水閉環を行う必要があった。そして、このポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物を250℃以下の低温で脱水閉環すると、耐薬品性及び基板との密着性等のパターン硬化膜の特性が低下する傾向があった。特に、半導体素子の用途の多様化に伴い、感光性樹脂組成物を用いた層間絶縁膜及び表面保護膜は、高温高湿条件下での基板との密着性が求められているが、低温での脱水閉環では、高温高湿条件下において十分な基板との密着性を与えることが困難であった。
本発明の目的は、250℃以下で加熱処理を行っても、高い脱水閉環率を示し、優れた耐薬品性及び高温高湿条件下での基板への密着性を有するパターン硬化膜を与える感光性樹脂組成物を提供することである。
また、本発明は、前記感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法を提供するものである。さらに、本発明は、前記パターン硬化膜を用いた層間絶縁膜又は表面保護膜を有することにより、信頼性の高い電子部品を提供することを目的とする。
本発明によれば、以下の感光性樹脂組成物が提供される。
即ち、本発明による感光性樹脂組成物は(a)アルカリ可溶性樹脂と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤と、(e)分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又はホスフィン酸基を有し、これら基のリン原子上に少なくとも1つの水酸基を有する化合物を含有する。
また、本発明による感光性樹脂組成物は、(a)成分が、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール、又は、ポリヒドロキシアミドのいずれかの構造を有することが好ましい。
さらに、(a)成分が、一般式(I)で表される構造単位を有することがより好ましい。
Figure 2013003310
(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO−であり、Vは2価の有機基を示し、少なくとも、Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるか、又はUが主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基である。)
本発明による感光性樹脂組成物は、(e)成分が、下記一般式(II)〜(V)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
Figure 2013003310
(式中、R21、R22、R23及びR24は各々独立に、1価の有機基である。)
また、本発明による感光性樹脂組成物は、(e)成分が、分子内にビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、又は、炭素数1〜15のアルキル基のいずれかを有する化合物であることが好ましい。
さらに、(e)成分が、下記式(VI)〜(VIII)のいずれかで表される化合物であることがより好ましい。
Figure 2013003310
(式中、R及びRは各々独立にアクリロイル基(CH=CHCO−)又はメタアクリロイル基(CH=C(CH)CO−)を示し、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を示す。t、u、v、w、x、及びyは各々独立に1〜8の整数を示す。)
また、本発明による感光性樹脂組成物は、(d)成分が、メチロール基又はアルコキシアルキル基を有する化合物であることが好ましい。
また、本発明による感光性樹脂組成物は、(b)成分が、光により酸又はラジカルを発生する化合物であることが好ましい。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法は、前記感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥し、感光性樹脂膜を形成する工程、前記塗布、乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程を含む。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法は、前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
また、本発明の層間絶縁膜、又は、表面保護膜は前記パターン硬化膜の製造方法により得られる。また、本発明の電子部品は、該層間絶縁膜又は該表面保護膜を有する。
本発明の感光性樹脂組成物を用いることで、250℃以下で加熱処理を行っても、高い脱水閉環率を示し、優れた耐薬品性及び高温高湿条件下での基板への密着性を有するパターン硬化膜を形成することが可能である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、250℃以下で加熱処理を行っても、高温で加熱処理したものと遜色ない十分な感度、及び機械特性を有する。
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、200℃以下で加熱処理を行っても、耐薬品性及び高温高湿下での基板への密着性を有するパターン硬化膜を形成することが可能である。
また、本発明のパターン硬化膜の製造方法によれば、前記感光性樹脂組成物の使用により、密着性に優れた、パターン硬化膜を得られる。さらに、本発明は、該パターン硬化膜を用いた層間絶縁膜及び表面保護膜を有することにより、信頼性の高い電子部品を提供することができる。
本発明の実施形態である再配線構造を有する半導体装置の概略断面図である。
以下に、本発明による感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
[感光性樹脂組成物]
まず、本発明による感光性樹脂組成物について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤と、(e)分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又はホスフィン酸基を有し、これら基のリン原子上に少なくとも1つの水酸基を有する化合物を含有する。
本明細書の記載において、場合によりそれぞれ単に(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び(e)成分と記す。以下、各成分について説明する。
((a)成分:アルカリ可溶性樹脂)
本発明における(a)成分(アルカリ可溶性樹脂)は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液に可溶な樹脂である。一般には、濃度が2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が用いられるので、(a)成分は、この水溶液に対して可溶性であることが好ましい。
ここで、本発明の感光性樹脂組成物がアルカリ性の溶液に可溶であることの1つの基準を以下に説明する。(a)成分単独と任意の溶剤、又は以下に順を追って説明する(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分から得られた樹脂溶液を、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して膜厚5μm程度の樹脂膜を形成する。これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか1つに、20〜25℃において浸漬する。この結果、均一な溶液として溶解し得るとき、用いた(a)成分はアルカリ水溶液に可溶であると判断する。
(a)成分としては、耐熱性に優れているという観点から、ポリイミド、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)、ポリベンゾオキサゾール、又は、ポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を用いることが好ましい。また、アルカリ水溶液への溶解性の観点から、分子内にフェノール性水酸基、カルボキシル基、又は、スルホン酸基を有する化合物であることが好ましい。
さらに、耐熱性(ガラス転移温度(Tg)等により評価できる)及びアルカリ性の溶液への溶解性を両立させるという観点から、ポリアミド酸、ポリヒドロキシアミド、フェノール性水酸基を有するポリイミド、又は、カルボキシル基を有するポリイミドを用いることがより好ましい。また、耐熱性及びアルカリ水溶液への溶解性がより優れているという観点から、ポリヒドロキシアミドを用いることが特に好ましい。
良好な機械特性(破断伸び測定等により評価できる)及び耐熱性(ガラス転移温度(Tg)測定等により評価できる)を発現できる観点から、(a)成分として、下記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物が好ましい。
Figure 2013003310
(式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO−であり、Vは2価の有機基を示し、少なくとも、Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるか、又はUが、主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基であることが好ましい。)
尚、主鎖の部分を構成する炭素とは、2つのベンゼン環をつなぐ直鎖(分岐は含まない)を構成する炭素を意味する。
Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるとき、Uは任意の2価の有機基でよく、Uが、主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基であるとき、Vは任意の2価の有機基でよく、Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であり、かつ、Uが主鎖の部分を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基であってもよい。
尚、一般式(I)で表される構造単位における、同一のベンゼン環上に結合しているヒドロキシ基とアミド基は、加熱工程における脱水閉環により、耐熱性、機械特性及び電気特性に優れるオキサゾール環に変換される。
また、250℃以下での加熱工程において脱水閉環率が高く、良好な耐熱性、機械強度、紫外及び可視光領域での高い透明性を示すため、(a)成分は一般式(IX)で表される構造単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 2013003310
(式中、R及びR10は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO−であり、nは1〜30の整数である。)
さらに、一般式(IX)で表される構造単位を有する化合物において、nは7〜30の整数であることが好ましい。nが7〜30の整数であると、パターン硬化膜の弾性率が低く、破断伸びが良好である。また、nが7〜30の整数であると、感光性樹脂組成物がN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶媒に容易に溶け、保存安定性が向上する。
一般式(I)又は(IX)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は、一般的にジカルボン酸又はジカルボン酸誘導体類(以下、ジカルボン酸類という)と、ジヒドロキシ基を有するジアミン類を用いて、後述する合成法により合成できる。一般式(I)又は(IX)においてUはジアミン類の残基が有する基、Vはジカルボン酸類の残基である。
一般式(I)及び(IX)において、Uで表される2価の有機基、単結合、−O−、又は−SO−を与えるジアミン類としては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのジアミン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
一般式(I)及び(IX)において、Uが、主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基である場合、かかるポリベンゾオキサゾール前駆体を与えるジアミン類としては、炭素数が2〜30の脂肪族構造を含むジアミン類が用いられる。例えば、下記の一般式で示される化合物が挙げられる。
Figure 2013003310
(式中、mは1〜6の整数である。)
一般式(I)において、Vで表される2価の有機基を与えるジカルボン酸類としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
一般式(I)においてVが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基である場合、かかるポリベンゾオキサゾール前駆体を与えるジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸等が挙げられる。
さらに、下記一般式で示されるジカルボン酸等が挙げられる。
Figure 2013003310
(式中Zはそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基、nは1〜6の整数である。)
(a)成分が一般式(IX)で表される構造単位を有する場合も、これらの化合物をジカルボン酸類として用いることができる。
一般式(I)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体として、共重合体である、以下に示す一般式(X)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を使用することもできる。
Figure 2013003310
(式中、U及びWは各々独立に2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO−であり、V及びXは各々独立に2価の有機基を示す。U及びVについて、少なくとも、Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるか、又はUが主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基である。構造単位Aが一般式(I)で示される構造単位部分である。j及びkは構造単位Aと構造単位Bのモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)
ここで、式中のj及びkのモル分率は、j=5〜85モル%、k=15〜95モル%であることがパターン性、機械特性、耐熱性及び耐薬品性の観点で好ましい。
尚、一般式(X)で表されるヒドロキシ基を含有するアミン類の残基は、加熱工程における脱水閉環により、機械特性、耐熱性及び電気特性に優れるオキサゾールに変換される。
尚、共重合体は、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。式(X)は共重合体の構成単位及び構造単位間の結合を示したものであり、ブロック共重合体を記載したものではない。後述する式(XI)又は(XII)についても同様である。
また、一般式(I)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体として、以下に示す一般式(XI)又は(XII)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を使用することもできる。
一般式(XI)又は(XII)で示される構造単位は、一般式(I)で示される構造単位以外のポリベンゾオキサゾールの構造単位、ポリイミド又はポリイミド前駆体(ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル等)の構造単位等を有する。
Figure 2013003310
(式中、U及びYは各々独立に2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO−であり、V及びZは各々独立に2価の有機基を示す。U及びVについて、少なくともVが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるか、又はUが主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基である。j及びlは、それぞれの構造単位のモル分率を示し、j及びlの和は100モル%であり、jが60〜99.9モル%、lが0.1〜40モル%である。)
ここで、アルカリ水溶液に対する可溶性は、式中、ベンゼン環に結合するヒドロキシル基(一般にはフェノール性水酸基)に依存するため、式中のjとlのモル分率は、j=80〜99.9モル%、l=0.1〜20モル%であることが好ましい。
Figure 2013003310
(式中、U、W及びYは各々独立に2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO−であり、V、X及びZは各々独立に2価の有機基を示す。U及びVについて、少なくとも、Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるか、又はUが主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基である。j、k及びlは、それぞれの構造単位のモル分率を示し、j、k及びlの和は100モル%であり、j及びkの和:j+kが60〜99.9モル%、lが0.1〜40モル%である。)
ここで、アルカリ水溶液に対する可溶性は、式中、ベンゼン環に結合するヒドロキシル基(一般にはフェノール性水酸基)に依存する。よってアルカリ水溶液に対する可溶性という観点から、式中のj、k及びlのモル分率は、j+k=80〜99.9モル%、l=0.1〜20モル%であることがより好ましい。尚、上記一般式(XI)及び(XII)において、Yは、U及びWとは異なるものであり、一般には、フェノール性水酸基を含まないジアミン類の残基である。
一般式(XI)及び(XII)において、U及びWで表される2価の有機基、単結合、−O−、又は−SO−は、一般式(I)及び(IX)のUで表される2価の有機基、単結合、−O−、又は−SO−を与えるジアミン類として上述したジアミン類の残基であり、V、X及びZで示される2価の有機基は、一般式(I)のVで表される基を与えるジカルボン酸類として上述したジカルボン酸類の残基である。Yは2価の芳香族基又は脂肪族基であることが好ましく、炭素原子数が4〜40のものが好ましく、炭素原子数が4〜40の芳香族基であることがより好ましい。
一般式(XI)及び(XII)においてYで表される2価の有機基を与えるジアミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物が挙げられる。また、シリコーン基を有するジアミン化合物として、「LP−7100」、「X−22−161AS」、「X−22−161A」、「X−22−161B」、「X−22−161C」及び「X−22−161E」(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。Yで表される2価の有機基を与えるジアミン類は、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
(a)成分の分子量は、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましく、10,000〜50,000がさらに好ましい。ここで分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
本発明において、(a)アルカリ可溶性樹脂の製造方法に特に制限はなく、例えば前記一般式(I)及び(IX)で表される構造単位を有するポリヒドロキシアミドは、一般的にジカルボン酸類とヒドロキシ基を有するジアミン類とから合成できる。
具体的には、ジカルボン酸類をジハライド誘導体に変換後、ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸類とハロゲン化剤を溶媒中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
反応溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましく、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を用いることができる。また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
また、ポリアミド酸は、一般的に、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン類との反応を行うことにより合成できる。有機溶媒としては、前記ポリヒドロキシアミドの合成に用いられる物と同様のものを用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族系テトラカルボン酸二酸無水物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。具体的には、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メチレン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)エーテル、4,4−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジカルボキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,1,3,3,−テトラメチル1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
((b)成分:感光剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記ポリベンゾオキサゾール前駆体とともに(b)感光剤を含む。この感光剤とは、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、形成した感光性樹脂膜に光を照射した場合に、光に反応して、照射部と未照射部の現像液に対する溶解性に差異を付与する機能を有するものである。本発明で(b)成分として用いられる感光剤に特に制限はないが、光により酸又はラジカルを発生するものであることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物をポジ型感光性樹脂組成物として用いる場合、(b)感光剤は、光により酸を発生するもの(光酸発生剤)であることがより好ましい。光酸発生剤は、光の照射により酸を発生し、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。そのような光酸発生剤としてはo−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられ、良好な感度を発現するという観点から、o−キノンジアジド化合物を用いることが好ましい。
上記o−キノンジアジド化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物又はアミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
前記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとしては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等を用いることができる。
前記ヒドロキシ化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等を用いることができる。
前記アミノ化合物としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を用いることができる。
前記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物又はアミノ化合物との反応は、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基及びアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間とされる。
上記反応の反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
また、一般式(I)、(X)、(XI)及び(XII)中のV、X、Y及びZで示される構造が、アクリロイル基、メタクリロイル基のような光架橋性基を有する基がある場合は、(b)成分(感光剤)として、ラジカルを発生するもの(光重合開始剤)を用いることが好ましい。(b)成分として光重合開始剤を用いると、本発明の感光性樹脂組成物をネガ型感光性樹脂組成物として用いることができる。
このような光重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物に加え、光照射によってラジカルを発生する化合物であれば既知のものを使用することができる。このような、化合物としては、例えば、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニループロパンー1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチループロパンー1−オン、オキシーフェニルーアセチック アシッド2−[2−オキソー2−フェニルーアセトキシーエトキシ]エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、2−エチルヘキシルー4−ジメチルアミノベンゾエート、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドやマレイミドを有する化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
このネガ型感光性樹脂組成物において(b)成分は、光の照射による架橋反応によって、照射部のアルカリ水溶液への可溶性を低下させる機能を有するものである。
本発明の感光性樹脂組成物において、(b)成分(感光剤)の含有量は、露光部と未露光部の溶解速度差及び感度の点から、(a)成分(ポリベンゾオキサゾール前駆体)100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、8〜40質量部がより好ましい。
((c)成分:溶剤)
本発明に使用される(c)成分(溶剤)としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられ、通常、感光性樹脂組成物中の他の成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はない。
この中でも各成分の溶解性と樹脂膜形成時の塗布性に優れる観点から、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
これらの溶剤は単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、使用する溶剤の量は特に制限はないが、一般に感光性樹脂組成物中の溶剤の割合が20〜90質量%となるように調整されることが好ましい。
((d)成分:架橋剤)
本発明に使用される(d)成分(架橋剤)は、感光性樹脂組成物を塗布、露光及び現像後に加熱処理する工程において、ポリベンゾオキサゾール前駆体若しくはポリベンゾオキサゾールと反応(架橋反応)、又は、架橋剤自身が重合する。これにより、感光性樹脂組成物を比較的低い温度、例えば200℃以下で硬化した場合も、良好な機械特性、薬品耐性及びフラックス耐性を付与させることができる。
この(d)成分は、加熱処理する工程において架橋又は重合する化合物であれば特に制限はないが、分子内にメチロール基、アルコキシメチル基等のアルコキシアルキル基、エポキシ基、オキセタニル基又はビニルエーテル基を有する化合物であると好ましい。
これらの基がベンゼン環に結合している化合物、N位がメチロール基若しくはアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂が好ましい。また、これらの基がフェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合している化合物は、現像する際に露光部の溶解速度が増加して感度が向上させることができる点でより好ましい。中でも良好な感度及びワニスの安定性、並びに、パターン形成後の感光性樹脂膜の硬化時に、感光性樹脂膜の溶融を防ぐことができるという観点から、分子内に2個以上のメチロール基又はアルコキシメチル基を有する化合物がより好ましい。
(d)架橋剤としては、下記一般式(XIII)、(XIV)、(XV)及び(XVI)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2013003310
(式中、Xは単結合、−O−、−SO−又は1〜4価の有機基を示し、R11は水素原子又は一価の有機基を示し、R12は一価の有機基を示す。nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数である。)
Figure 2013003310
(式中、Yは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、その水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基、その水素原子の一部がヒドロキシル基で置換されたヒドロキシアルキル基、又は、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、R13及びR14は各々独立に一価の有機基を示し、R15及びR16は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、r及びtは各々独立に1〜3の整数であり、s及びuは各々独立に0〜3の整数である)
Figure 2013003310
(式中、R17及びR18は各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R18は互いが結合することで環構造となっていてもよい。)
Figure 2013003310
(式中、R19、R20、R21、R22、R23及びR24は各々独立に水素原子、メチロール基又はアルコキシメチル基を示す。)
尚、一般式(XIII)(XIV)、及び(XV)において、一価の有機基としては、炭素原子数1〜10の、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基、それらの水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものが好ましいものとして挙げられる。この中でも一般式(XI)で表される化合物を用いると、感光性樹脂組成物を200℃以下の低温で硬化した場合に、優れた耐薬品性を有する硬化膜が得られるため、好ましい。
ここで、一般式(XIII)(XIV)、(XV)及び(XVI)で表される化合物としては、より具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2013003310
上記の化合物のうち、(a)成分との相溶性、耐熱性及びフラックス耐性の観点から、(d)成分として以下に記載する化合物を用いることがより好ましい。
Figure 2013003310
本発明の感光性樹脂組成物において、(d)成分の含有量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅、及び硬化膜物性の点から、(a)成分100質量部に対して1〜50質量部が好ましい。また、感光性樹脂組成物を250℃以下で硬化した場合の硬化膜の良好な薬品耐性及びフラックス耐性を発現させる観点から、15〜50質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましい。
((e)成分:分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又はホスフィン酸基を有し、これら基のリン原子上に少なくとも1つの水酸基を有する化合物)
本発明の(e)成分(分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又はホスフィン酸基を有し、これら基のリン原子上に少なくとも1つの水酸基を有する化合物)は、銅及び銅合金等の金属との密着性を向上させる効果を有する。また、感光性樹脂組成物と、配線及び基板に用いられる、銅及び銅合金等の金属の腐食を防ぐ効果を有する。
さらに、感光性樹脂組成物をシリコン基板に塗布した場合と、他の基板の上に塗布した場合との、溶解速度の差の緩和をする効果や、メタルマイグレーションを抑制する効果を有する。ここで、メタルマイグレーションとは、バイアス(電圧)をかけた際に、対向する電極間を金属(例えば銅)イオンが移動し、還元析出して、結果的に配線間を繋いでショートを起こす現象である。
これらの効果は特に感光性樹脂組成物を低温(例えば250℃以下)で硬化した際に顕著に発現する。つまり、本発明は(a)成分で挙げた低温での硬化に用いることが好ましいアルカリ可溶性樹脂である、ポリヒドロキシアミド(例えば一般式(I)、(IX)で表されるポリヒドロキシアミド)と、(e)成分とを併せて用いることで、低温での硬化を行うことができ、かつ低温で硬化した場合も、密着性、機械物性等の膜物性を十分に発現する感光性樹脂組成物を得ることができるというものである。
前述の(d)成分である一般式(XV)で表される化合物は、一般的に、優れた耐薬品性を与える反面、基板との密着性が低下する可能性がある。しかし、本発明の(e)成分と組合せることで、優れた耐薬品性を維持しつつ、高温高湿条件下において、基板への十分な密着性を発現することができる。
分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又はホスフィン酸基を有し、これら基のリン原子上に少なくとも1つの水酸基を有する化合物とは、具体的には、一般式(II)〜(V)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2013003310
(式中、R21、R22、R23及びR24は各々独立に、1価の有機基である。)
具体的には、メチルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、(アミノメチル)ホスホン酸、(1−アミノエチル)ホスホン酸、メチレンジホスホン酸等、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸ジフェニル、1−アミノプロピルリン酸、1−アミノ−2−メチルプロピルリン酸等が挙げられる。
(a)〜(d)成分との相溶性の観点から、R21、R22、R23及びR24は、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8のアルキルアミノ基、又は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15のアルキル基のいずれかを有することが好ましい。
また、硬化時の自己重合性(例えば、ビニル基同士の重合反応)、高温放置時の揮発性低減の観点から、(e)成分は、分子内にビニル基を含む化合物、又は、一般式(VI)、(VII)又は(VIII)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2013003310
(式中、R及びRは各々独立にアクリロイル基(CH=CHCO−)又はメタアクリロイル基(CH=C(CH)CO−)を示し、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を示す。t、u、v、w、x、及びyは各々独立に1〜8の整数を示す。)
分子内にビニル基を含む化合物、又は、一般式(VI)、(VII)又は(VIII)で表される化合物は、具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ビス((2−メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフェート)、アシッドホスホオキシエチルアクリレート(ビス((2−アクリロイルオキシ)エチル)ホスフェート)、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート(ビス((2−メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフェート)、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2’−ジアクリロイロキシジエチルホスフェート、2,2’−ジメタクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート、リン酸ビニル、及び式(XVII)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2013003310
上記に示した、(e)成分の中で、分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上含有する化合物が特に好ましい。
本発明の(e)成分の含有量は、(a)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。0.1〜10質量部であることで、高湿高温条件下における基板への良好な密着性を発現することができる。0.2〜5質量部であることがより好ましく、0.5〜3質量部であることがさらに好ましい。
本発明の組成物は、例えば、90%重量以上、95重量%以上、98重量%以上、100重量%が、(a)〜(e)成分からなってもよい。
[その他の成分]
本発明による感光性樹脂組成物において、上記(a)〜(e)成分に加えて、さらに必要に応じて(1)シランカップリング剤、(2)溶解促進剤、(3)溶解阻害剤、(4)界面活性剤又はレベリング剤等の成分を配合してもよい。
((1)シランカップリング剤)
通常、シランカップリング剤は、感光性樹脂組成物を塗布、露光、現像後に加熱処理する工程において、(a)成分と反応して架橋する、又は加熱処理する工程においてシランカップリング剤自身が重合すると推定される。これにより、得られる硬化膜と基板との密着性をより向上させることができる。特に本発明において、分子内にウレア結合を有するシランカップリング剤を、本発明の組成に加えて用いることにより、250℃以下の低温下で硬化を行った場合も基板との密着性をさらに高めることができる。
好ましいシランカップリング剤としては、ウレア結合(−NH−CO−NH−)を有する化合物が挙げられ、低温での硬化を行った際の密着性の発現に優れる点で、下記式(XVIII)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2013003310
(式中、R31及びR32は、各々独立に炭素数1〜5のアルキル基である。aは、1〜10の整数であり、bは、1〜3の整数である。)
式(XVIII)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2−ウレイドエチルトリメトキシシラン、2−ウレイドエチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4−ウレイドブチルトリメトキシシラン、4−ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3−ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
さらに上記分子内にウレア結合を有するシランカップリング剤に加えてヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤を併用すると、さらに低温硬化時の硬化膜の基板への密着性向上に効果がある。
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤としては、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等や、下記一般式(XVIV)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 2013003310
(式(XVIV)中、R33はヒドロキシ基又はグリシジル基を有する1価の有機基、R34及びR35は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基である。cは1〜10の整数、dは0〜2の整数である。)
上記の化合物のうち、特に一般式(XVIV)で示される化合物が、基板との密着性をより向上させるため、好ましい。
このようなシランカップリング剤としては、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4−ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤は、ヒドロキシ基又はグリシジル基と共に、さらに、窒素原子を含む基、具体的にはアミノ基やアミド結合を有するシランカップリング剤であることが好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−グリシドキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミド結合を有するシランカップリング剤としては、下記式で示される化合物等のアミド結合を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
X−(CH−CO−NH−(CH−Si(OR)
(Xはヒドロキシ基又はグリシジル基であり、e及びfは各々独立に1〜3の整数であり、Rはメチル基、エチル基又はプロピル基である。)
シランカップリング剤を用いる場合の含有量は、(a)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、0.3〜10質量部であることがさらに好ましい。
((2)溶解促進剤)
本発明においては、(a)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性をより促進させるために、溶解促進剤を加えてもよい。溶解促進剤としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物は、感光性樹脂組成物に加えることで、アルカリ水溶液を用いて現像する際に露光部の溶解速度が増加し感度が上がり、また、パターン形成後の感光性樹脂膜の硬化時に、感光性樹脂膜の溶融を防ぐことができる。
フェノール性水酸基を有する化合物に特に制限はないが、比較的分子量の小さい化合物が好ましい。このような化合物としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、ビスフェノールA、B、C、E、F及びG、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール、2,6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’−[1−[4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’−エチリジントリスフェノール、4−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−2−エトキシフェノール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、2,2’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4’,4’’−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリジン)トリスフェノール、4,4’,4’’,4’’’−(1,4−フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ビス[(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェニル]−フェニル]エチリデン]ビス[2,6−ビス(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェノール等が挙げられる。
溶解促進剤を用いる場合の含有量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅の点から、(a)成分100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、3〜25質量部がより好ましい。
((3)溶解阻害剤)
本発明においては、(a)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物である溶解阻害剤を含有させることができる。溶解阻害剤は(a)成分の溶解性を阻害することで、残膜厚や現像時間を調整するのに役立つ。一方、発生する酸が揮発し易いことから、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)又はポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)の環化脱水反応には関与しないと考えられる。
溶解阻害剤として用いることのできる化合物としては、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等のジフェニルヨードニウム塩が好ましいものとして挙げられる。
溶解阻害剤を用いる場合の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(a)成分100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましく、0.01〜30質量部がより好ましく、0.1〜20質量部がさらに好ましい。
((4)界面活性剤又はレベリング剤)
また、本発明の感光性樹脂組成物は、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)、及び現像性の向上のために、界面活性剤又はレベリング剤を加えてもよい。
このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられ、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R−08」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
界面活性剤又はレベリング剤を用いる場合の含有量は、各成分との相溶性及び高温放置時の揮発性の点から、(a)成分100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
[パターン硬化膜の製造方法]
次に、本発明によるパターン硬化膜の製造方法について説明する。本発明のパターン硬化膜の製造方法は、本発明の感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥し、感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜を形成する工程、前記塗布、乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程を含有する。以下、各工程について説明する。
(感光性樹脂膜形成工程)
まず、この工程では、ガラス、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO、SiO等)、窒化ケイ素、銅、銅合金等の基板上に、前記本発明の感光性樹脂組成物をスピンナー等を用いて回転塗布し、次に、ホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。この際の加熱温度は80〜150℃であることが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を膜状に形成した感光性樹脂膜が得られる。
(露光工程)
次に、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射することにより露光を行う。露光装置としては例えば高圧水銀灯又は低圧水銀灯を有する露光装置、365nm(i線)の単色光での照射が可能なI線ステッパー、平衡露光機、投影露光機、スキャナー露光機等を用いることができる。
(現像工程)
現像工程は、露光工程後の感光性樹脂膜を現像液で処理することによりパターン形成された感光性樹脂膜を得る工程である。一般的に、ポジ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、露光部を現像液で除去し、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像液で除去する。
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。これらの水溶液の濃度は、0.1〜10質量%とされることが好ましい。さらに上記現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で配合することができる。
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像工程で得られたパターン形成された感光性樹脂膜を加熱処理することにより、(a)成分がポリアミド酸である場合は脱水閉環しイミド環を与え、(a)成分がポリヒドロキシアミドである場合は脱水閉環しオキサゾール環を与える。また、同時に(a)成分の官能基同士、又は、(a)成分と(d)成分間に架橋構造等を形成し、パターン硬化膜を形成することができる。
加熱処理工程における加熱温度は、好ましくは280℃以下、より好ましくは120〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃、特に好ましくは160〜200℃である。
加熱処理工程に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等が挙げられる。また、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が感光性樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので好ましい。
上記加熱温度範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができる。従って、本発明のパターンの製造方法を用いることによって、デバイスが歩留り良く製造できる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。
また、本発明の加熱処理としては、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置又は周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらを用いることにより、基板やデバイスの温度は例えば220℃以下に保ったままで、感光性樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である(例えば、特許第2587148号公報参照)。
マイクロ波を用いて硬化を行う場合、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると、定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができるため、好ましい。さらに基板として電子部品のように金属配線を含む場合は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。また、マイクロ波をパルス状に照射すると、設定した加熱温度を保持することができ、感光性樹脂膜や基板へのダメージを避けることができる点で好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することができる。
[半導体装置の製造工程]
次に、本発明によるパターン硬化膜の製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態である再配線構造を有する半導体装置の概略断面図である。本実施形態の半導体装置は多層配線構造を有している。層間絶縁層(層間絶縁膜)1の上にはAl配線層2が形成され、その上部にはさらに絶縁層(絶縁膜)3(例えばP−SiN層)が形成され、さらに素子の表面保護層(表面保護膜)4が形成されている。配線層2のパット部5からは再配線層6が形成され、外部接続端子であるハンダ、金等で形成された導電性ボール7との接続部分である、コア8の上部まで伸びている。さらに表面保護層4の上には、カバーコート層9が形成されている。再配線層6は、バリアメタル10を介して導電性ボール7に接続されているが、この導電性ボール7を保持するために、カラー11が設けられている。このような構造のパッケージを実装する際には、さらに応力を緩和するために、アンダーフィル12を介することもある。
この図において、本発明の感光性樹脂組成物は、層間絶縁層及び表面保護層だけではなく、その優れた特性故、カバーコート層、コア、カラー、アンダーフィル等の材料として非常に適している。本発明の感光性樹脂組成物を用いた耐熱性感光性樹脂硬化体は、メタル層や封止剤等との接着性に優れ、応力緩和効果も高いため、本発明の感光性樹脂組成物から得られた耐熱性感光性樹脂硬化体をカバーコート層、コア、カラー、アンダーフィル等に用いた半導体素子は、極めて信頼性に優れるものとなる。
本発明の半導体装置は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される層間絶縁層、表面保護層、カバーコート、再配線用コア、半田等のボール用カラー、又はアンダーフィル等を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
本発明では、従来は350℃前後の高温を必要としていたパターン硬化膜を形成する加熱工程において、250℃以下の低温の加熱を用いて硬化が可能である。250℃以下の硬化においても、本発明の感光性樹脂組成物は環化脱水反応が十分に起きることから、その膜物性(伸び、吸水率、重量減少温度、アウトガス等)が300℃以上で硬化したときに比べて物性変化は小さいものとなる。従って、プロセスが低温化できることから、デバイスの熱による欠陥を低減でき、信頼性に優れた半導体装置(電子部品)を高収率で得ることができる。さらに200℃以下の硬化においても、十分な膜物性を有する。
[電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、上述した感光性樹脂組成物を用いて上記製造方法によって形成されるパターン硬化膜を有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。
また、上記パターン硬化膜は、具体的には、半導体装置等電子部品の表面保護膜、層間絶縁膜等、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、前記感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜、層間絶縁膜等を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[ポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)の合成]
合成例1
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、セバシン酸ジクロリド9.56g(40mmol)を10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。
溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は33,100、分散度は2.0であった。
尚、GPC法による重量平均分子量の測定条件は以下の通りである。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所社製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所社製L6000
株式会社島津製作所社製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/l)、HPO(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min、検出器:UV270nm
ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
合成例2
合成例1で使用したセバシン酸ジクロリドをドデカン二酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は31,600、分散度は2.0であった。
合成例3
合成例1で使用したセバシン酸ジクロリドをアジピン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は29,300、分散度は1.9であった。
合成例4
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、セバシン酸ジクロリド7.65g(32mmol)と4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド2.36g(8mmol)をそれぞれ10分間で滴下した後、室温に戻し3時間攪拌を続けた。
溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIVとする)。ポリマーIVのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は32,500、分散度は2.2であった。
合成例5
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、ドデカン二酸ジクロリド8.55g(32mmol)と4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド2.36g(8mmol)をそれぞれ10分間で滴下した後、室温に戻し3時間攪拌を続けた。
溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーVとする)。ポリマーVのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は39,500、分散度は1.9であった。
合成例6
合成例1で使用したセバシン酸ジクロリドを4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は16,900であり、分散度は1.7であった。
[ポリイミドの合成]
合成例7
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.2)1.75g、脂肪族エーテルジアミン(「D−400」、ポリオキシアルキレンジアミン、BASF社製(商品名)、分子量452.4)15.38g及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(「LP−7100」、信越化学製、商品名)分子量248.5)0.37g及びN−メチルピロリドン105gを仕込んだ。次いで、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量326.3)16.32gをフラスコを氷浴中で冷却しながら、上記フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン70gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。
得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミド(以下、ポリマーVIIとする)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=33000、分散度は2.2であった。
実施例1〜17、比較例1〜3
前記(a)成分である各ポリマー100質量部に対し、それぞれ(b)〜(e)成分を表1に示す配合量にて配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。表1中の数値の単位は質量部である。
B1、B2、D1〜D5、E1〜E5を以下に示す。
B1、B2は(b)成分である。
D1〜D5は(d)成分である。
E1〜E4は(e)成分であるが、E5は(e)成分ではない。
尚、(c)成分として、BLO(γ−ブチロラクトン)、EL(乳酸エチル)、又はNMP(N−メチルピロリドン)を用いた。
Figure 2013003310
D1:4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]
D2:1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコウリル
D3:4,4’−メチレンビス(2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール)
D4:2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン
D5:ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)エーテル
E1:リン酸ジブチル(東京化成工業(株)製)
E2:ビニルホスホン酸(東京化成工業(株)製)
E3:カヤマーPM−2(ビス((2−メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフェート、日本化薬(株)製、商品名)
E4:カヤマーPM−21(カプロラクトン変性リン酸時メタクリレート、日本化薬(株)製、商品名)
E5:トリデシルホスフィンオキシド(東京化成工業(株)製)
Figure 2013003310
評価1
実施例1〜17及び比較例1〜3で調製した感光性樹脂組成物について、パターン硬化膜を成膜する際の感度及び溶解速度を評価した。具体的に、実施例1〜17及び比較例1〜3で調製した感光性樹脂組成物を、それぞれシリコン基板と銅基板上にスピンコートして、乾燥膜厚が10〜12μmの樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜に、超高圧水銀灯を用いて、干渉フィルターを介して、100〜1000mJ/cmのi線を所定のパターンに照射して、露光を行った。露光後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液にて露光部のシリコン基板又は銅基板が露出するまで現像した後、水でリンスして、パターン樹脂膜を得た。
得られたパターン樹脂膜について、以下の評価を実施した。
(1)感度の評価
シリコン基板上のパターン樹脂膜形成において、未露光部の残膜率(現像前後の膜厚の比)が80%となる時の、露光部のパターンが開口するのに必要な最小露光量(感度)を求めた。尚、露光は100mJ/cmから10mJ/cm刻みで露光量を上げていきながらパターン照射して現像を行い、最小露光量は、開口パターンを顕微鏡で観察しながら判断した。結果を表2に示す。
(2)基板間の感度差
同様に銅基板上のパターン樹脂膜形成において、未露光部の残膜率(現像前後の膜厚の比)が80%となる時の、露光部のパターンが開口するのに必要な最小露光量(感度)を求めた。結果を表2に示す。シリコン基板上のパターン樹脂膜形成における感度を基準とし、シリコン基板上のパターン樹脂膜形成における感度と銅基板上のパターン樹脂膜における感度の差が10%未満であったものをA、10%以上のものをBで示した。
(3)基板間の溶解速度差
シリコン基板上及び銅基板上のパターン樹脂膜形成において、それぞれ、現像に要した時間をもとに、未露光部の溶解速度を求めた。溶解速度は所定時間内に溶解した膜厚(現像前の幕厚−現像後の膜厚)を時間で除すること((溶解した膜厚)÷(溶解時間))で求めた。結果を表2に示す。シリコン基板上のパターン樹脂膜形成における溶解速度を基準とし、シリコン基板上のパターン樹脂膜形成における溶解速度と銅基板上のパターン樹脂膜における溶解速度の基板間の差が10%未満であったものをA、10%以上のものをBで示した。
評価2
上記評価1で作製したパターン樹脂膜からパターン硬化膜の製造し、密着性と耐薬品性を評価した。具体的に、パターン樹脂膜付きシリコン基板、及びパターン樹脂膜付き銅基板を縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム社製)を用いて窒素雰囲気下、100℃で1時間加熱した後、さらに250℃又は200℃で1時間加熱してパターン硬化膜(硬化後膜厚5〜10μm)を得た。
得られたパターン樹脂膜について、以下の評価を実施した。
(1)密着性の評価
製造したパターン硬化膜付き銅基板(硬化温度250℃及び/又は200℃)を用いて、パターン硬化膜の基板に対する密着性をスタッドプル法を用いて評価した。結果を表2に示す。スタッドプル法とは、具体的には、高温高湿条件(131℃/85RH%)で100時間処理したパターン硬化膜付き銅基板のパターン硬化膜上に、エポキシ系樹脂のついたアルミ製のピンを立て、オーブンで150℃/1時間加熱してエポキシ樹脂のついたスタッドピンを硬化膜に接着させた。このピンをROMULUS(Quad Group Inc.社製)を用いて引っ張り、剥がれたときの剥離状態を目視で観察した。
接着強度が600kg/cm以上のものをA、接着強度は600kg/cm未満であるが、硬化膜とエポキシ樹脂の界面、又はエポキシ樹脂とアルミ製ピンの界面から剥離した場合をB、銅基板と硬化膜の界面で剥離した場合をCとして、それぞれ評価した。結果を表2に示す。
以上のような密着性評価を、高温高湿条件での処理時間を200時間、300時間とした硬化膜に対しても同様に行った。結果を表2に示す。
(2)耐薬品性の評価
次に、上記と同様にしてシリコン基板上に作製したパターン硬化膜(硬化温度250℃及び/又は200℃)(硬化後膜厚5〜10μm)を用いて、それぞれの硬化膜について、アセトン、BLO、NMPのそれぞれ室温で15分間浸漬させたときの硬化膜の変化を観察した。クラック又は剥離が発生せず、浸漬前後の膜厚の変化が1μm以下のものをA、クラック又は剥離が発生せず、浸漬前後の膜厚の変化が1μmより大きい物をB、クラックは発生しなかったが、膨潤により基板から硬化膜が剥離したものをC、硬化膜にクラックが入ったものをDとした。結果を表2に示す。
Figure 2013003310
実施例1〜17では、いずれも良好な高温高湿条件下での基板密着性及び良好な耐薬品性が確認できた。また、実施例1〜12、15〜17では、200℃以下という低温で硬化した際も、良好な基板密着性及び耐薬品性を示した。
一方、架橋剤を用いない比較例1では、耐薬品性が低下した。(e)成分を用いない比較例2、リン酸基及びホスホン酸基を有しない(e)成分を用いた比較例3では、基板密着性及び耐薬品性に劣る結果となった。比較例2及び3では特に200℃の低温で硬化を行った際、基板密着性が低下した。
本発明による感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂と、(b)感光剤と、(c)溶剤と、(d)架橋剤と、(e)分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又は、ホスフィン酸基を有する化合物を含有することにより、硬化後のパターン硬化膜の物性が高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる。また、本発明のパターンの製造方法によれば、前記感光性樹脂組成物の使用により、感度、高温高湿条件下での基板への密着性に優れ、さらに低温硬化プロセスでも耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターン硬化膜が得られる。本発明の感光性樹脂組成物から得られるパターン硬化膜は、良好な形状と密着性、耐熱性に優れ、さらには低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品が得られる。
1 層間絶縁層
2 Al配線層
3 絶縁層
4 表面保護層
5 配線層のパット部
6 再配線層
7 導電性ボール
8 コア
9 カバーコート層
10 バリアメタル
11 カラー
12 アンダーフィル

Claims (14)

  1. (a)アルカリ可溶性樹脂と、
    (b)感光剤と、
    (c)溶剤と、
    (d)架橋剤と、
    (e)分子内にリン酸基、ホスホン酸基、又はホスフィン酸基を有し、これら基のリン原子上に少なくとも1つの水酸基を有する化合物と、を含有する感光性樹脂組成物。
  2. 前記(a)成分が、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール、又は、ポリヒドロキシアミドのいずれかの構造を有する樹脂である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 前記(a)成分が、一般式(I)表される構造単位を有する請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
    Figure 2013003310
    (式中、Uは2価の有機基、単結合、−O−、又は、−SO−であり、Vは2価の有機基を示し、少なくとも、Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるか、又はUが、主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基である。)
  4. 前記(e)成分が、下記一般式(II)〜(V)のいずれかで表される化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
    Figure 2013003310
    (式中、R21、R22、R23及びR24は各々独立に、1価の有機基である。)
  5. 前記(e)成分が、分子内にビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、又は、炭素数1〜15のアルキル基のいずれかを有する化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  6. 前記(e)成分が、下記式(VI)〜(VIII)のいずれかで表される化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
    Figure 2013003310
    (式中、R及びRは各々独立にアクリロイル基(CH=CHCO−)又はメタアクリロイル基(CH=C(CH)CO−)を示し、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を示す。t、u、v、w、x、及びyは各々独立に1〜8の整数を示す。)
  7. 前記(d)成分が、メチロール基又はアルコキシアルキル基を有する化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  8. 前記(b)成分が、光により酸又はラジカルを発生する化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥し、感光性樹脂膜を形成する工程、前記塗布、乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程、及び前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程を含む、パターン硬化膜の製造方法。
  10. 前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が250℃以下である請求項9に記載のパターン硬化膜の製造方法。
  11. 前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が200℃以下である請求項9に記載のパターン硬化膜の製造方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を用いた、層間絶縁膜。
  13. 請求項9〜11のいずれか1項に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜を用いた、表面保護膜。
  14. 請求項12又は13に記載の層間絶縁膜又は表面保護膜を有する電子部品。
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