JP5741641B2 - 感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品 - Google Patents

感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する耐熱性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関し、特に、感度、解像度、現像時の密着性、耐熱性及び耐薬品性に優れ、良好な形状のパターンが得られるポジ型感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品に関するものである。
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。このポリイミド樹脂膜は、一般にはテトラカルボン酸二無水物とジアミンを極性溶媒中で常温常圧において反応させ、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液(いわゆるワニス)をスピンコートなどで薄膜化して熱的に脱水閉環(硬化)して形成する(例えば、非特許文献1参照)。
近年、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきている。この感光性ポリイミドを用いるとパターン形成工程が簡略化でき、煩雑なパターン製造工程の短縮が行えるという特徴を有する(例えば、特許文献1〜3参照)。
従来、上記感光性ポリイミドの現像には、N−メチルピロリドン等の有機溶剤が用いられてきたが、最近では、環境やコストの観点からアルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の提案がなされている。このようなアルカリ現像可能なポジ型の感光性樹脂を得る方法として、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(例えば、非特許文献2参照)、可溶性ヒドロキシルイミドまたはポリベンゾオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献4、5参照)などがある。かかる方法により得られる樹脂には、低誘電率化が期待でき、そのような観点からも感光性ポリイミドとともに感光性ポリベンゾオキサゾールが注目されている。
最近、電子部品の層間絶縁膜層や表面保護膜層などの樹脂硬化膜を形成する場合のプロセスとして、低温プロセスが望まれており、それに対応するためには、低温で脱水閉環ができ、脱水閉環後の膜の物性が高温で脱水閉環したものと遜色ない性能が得られるポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが不可欠となってきた。しかしながら、ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体を熱的に脱水閉環させてポリイミド薄膜やポリベンゾオキサゾール薄膜とする場合、通常、350℃前後の高温を必要とする。この350℃前後の高温は、基板に悪影響を与えるおそれがある。そこで、最近は熱履歴に由来する不良回避のため、半導体製造プロセスにおける処理温度の低温化が望まれている。このプロセスにおける処理温度の低温化を実現するためには、表面保護膜でも、従来の350℃前後というような高温でなく、約250℃未満の低温で脱水閉環ができ、脱水閉環後の膜の物性が高温で脱水閉環したものと遜色ない性能が得られるポリイミド材料やポリベンゾオキサゾール材料が不可欠となる。しかしながら、熱拡散炉を用い温度を下げて脱水閉環する場合では、一般的に膜の物性は低下する。
ここで、一般的にポリベンゾオキサゾール前駆体の脱水閉環温度は、ポリイミド前駆体の脱水閉環温度に比べて高いことが知られている(例えば、J.Photopolym.Sci.Technol.,vol.17,207−213.参照)。したがって、ポリイミド前駆体を脱水閉環させることよりもポリベンゾオキサゾール前駆体を250℃未満の温度で脱水閉環させることはより困難である。
特開昭49−11541号公報 特開昭59−108031号公報 特開昭59−219330号公報 特公昭64−60630号公報 米国特許第4395482号公報 特許第2587148号公報 特許第3031434号公報 米国特許第5738915号公報
日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」(2002年) J.Macromol.Sci.,Chem.,vol.A24,1407(1987年) Tetrahedron,vol.57,9225−9283(2001年)
感光性ポリイミド又は感光性ポリベンゾオキサゾールは、パターン形成後に、通常、350℃前後の高温で硬化を行う。これに対して、最近、登場してきた次世代メモリーとして有望なMRAM(Magnet Resistive RAM)は高温プロセスに弱く、低温プロセスが望まれている。従って、バッファーコート(表面保護膜)材でも、従来の350℃前後というような高温ではなく、約280℃の以下の低温で硬化ができ、さらには硬化後の膜の物性が、高温で硬化したものと遜色ない性能が得られるバッファーコート材が不可欠となってきた。しかしながら、このような低温で硬化でき、しかも高温で硬化したものと遜色ない性能が得られるバッファーコート材は、未だ得られていないという問題点があった。
本発明は、上述の従来の問題点を解消するためになされたものであって、その課題は、280℃以下でも高い脱水閉環率を有する特定の構造単位を持つポリベンゾオキサゾール感光性樹脂膜をベース樹脂とすることにより、硬化後の膜の物性が、高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能な感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体をベースポリマーとして有しており、この感光性ポリベンゾオキサゾールは、以下に示す一般式(I)又は(V)においてUとVの両方又は一方が脂肪族鎖状構造を有することを特徴とする。かかる構造により、約280℃の以下でもポリベンゾオキサゾール前駆体の脱水閉環率が高いので、この樹脂組成物を用いることにより低温での硬化プロセスによっても高温での硬化膜の物性と差がないような耐熱性に富んだ硬化膜を得ることができる。
また、この脂肪族鎖状構造を有するポリベンゾオキサゾール硬化膜は、より低温での硬化プロセスにより形成しても、高い破断伸び、低誘電率、優れた耐薬品性を示す。本発明は、前記感光性樹脂組成物の使用により、アルカリ水溶液で現像可能であり、脂肪族鎖状構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は光透過性が高いため、感度、解像度に優れ、280℃以下の低温硬化プロセスによって耐熱性に優れた、良好な形状のパターン硬化膜を得ることができるパターン硬化膜の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、良好な形状と特性のパターンを有し、さらには低温プロセスで硬化可能な感光性樹脂組成物を用いることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品を歩留まり良く提供するものである。
すなわち、本発明による低温硬化用の感光性樹脂組成物は、(a)一般式(I):
Figure 0005741641
(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U又はVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、及び(c)溶剤とを含有してなることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分の一般式(I)におけるU又はVの少なくとも一方が、以下に示す一般式(UV1):
Figure 0005741641
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)で表される構造を含む基、または下記に示す一般式(UV2):
Figure 0005741641
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aからcは各々独立に1〜6の整数を表し、dは0〜3の整数である。また、式中Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。R9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基。)で表される構造を含む基、であることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分が、以下に示す一般式(II)で表されることを特徴とする。
Figure 0005741641
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基、Uは2価の有機基であり、nは1〜30の整数である。)
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分の一般式(II)におけるnが7〜30で表されることを特徴とする。
また、本発明による低温硬化用の感光性樹脂組成物にあっては、(a)一般式(III):
Figure 0005741641
(式中、U、V、W、Xは2価の有機基を示し、U又はVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であり、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)で示されるA構造単位とB構造単位からなるポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体と、(b)感光剤と、及び(c)溶剤とを含有してなることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、 前記(a)成分の一般式(III)におけるU又はVの少なくとも一方が、以下に示す一般式(UV1):
Figure 0005741641
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)で表される構造を含む基、または一般式(UV2):
Figure 0005741641
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aからcは各々独立に1〜6の整数を表し、dは0〜3の整数である。また、式中Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。R9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基。)で表される構造を含む基、であることを特徴とする。
また、本発明による低温硬化用の感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分が一般式(IV)で表されることを特徴とする。
Figure 0005741641
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基、U,W,Xは2価の有機基を示し、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%であり、nは1〜30の整数である。)
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(a)成分の一般式(IV)におけるnが7〜30で表されることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(b)成分が光により酸又はラジカルを発生する感光剤であることを特徴とする。
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、さらに、(d)成分として加熱により酸を発生する熱酸発生剤を含むことを特徴とする。
また、本発明によるポリベンゾオキサゾール膜にあっては、前記感光性樹脂組成物を用い、そのポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環して形成されることを特徴とする。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法にあっては、前記感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法にあっては、前記加熱処理工程が、前記パターン樹脂膜にマイクロ波をその周波数を変化させながらパルス状にマイクロ波を照射するものであることを特徴とする。
また、本発明によるパターン硬化膜の製造方法にあっては、前記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程において、その加熱処理温度が280℃以下であることを特徴とする。
また、本発明による電子部品にあっては、前記パターン硬化膜の製造方法により得られるパターン硬化膜の層を、層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として有することを特徴とする。
また、本発明による電子部品にあっては、前記電子部品が磁気抵抗メモリであることを特徴とする。
従来、感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いられているポリベンゾオキサゾール前駆体は、パターン形成後に脱水閉環するために350℃前後の高温で硬化を行う必要がある。これに対し、本発明の感光性樹脂組成物は、280℃以下でも高い脱水閉環率を持つ特定のポリベンゾオキサゾール感光性樹脂膜をベース樹脂として有しており、それにより、硬化後の膜の物性が高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる。従って、より低温で効率的に環化反応や硬化反応が起きる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度差(溶解コントラスト)が現れ、所望のパターンを形成できる。
また、本発明のパターン硬化膜の製造方法によれば、前記感光性樹脂組成物の使用により、感度、解像度、接着性に優れ、さらに低温硬化プロセスでも耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターンが得られる。
さらに、本発明の電子部品は、その構成要素である硬化膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されるので、良好な形状と接着性、耐熱性に優れたパターン硬化膜を有する。本発明の電子部品は、さらにはその硬化膜を低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられるので、信頼性の高いものである。また、本発明の電子部品は、そのプロセスにおけるデバイスへのダメージが少ないことから、その製造歩留まりも高いという利点を有する。
本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。 本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
以下に、本発明による感光性樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法及び電子部品の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
[感光性樹脂組成物]
まず、本発明による低温硬化用の感光性樹脂組成物について説明する。本発明による感光性樹脂組成物は、(a)一般式(I):
Figure 0005741641
(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U又はVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、(b)感光剤と、及び(c)溶剤とを含有する。なお、(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体、(b)感光剤及び(c)溶剤を、本明細書の記載において、場合によりそれぞれ単に(a)成分、(b)成分及び(c)成分と記す。
また、一般式(I)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体の代わりに、(a)成分として以下に示す一般式(III)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を使用することもできる。
Figure 0005741641
(式中、U、V、W、Xは2価の有機基を示し、U又はVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であり、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)
以下、本発明による感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
((a)成分:ポリベンゾオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体)
ポリベンゾオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体は、通常、アルカリ水溶液で現像するので、アルカリ水溶液可溶性であることが好ましい。本発明においては、例えば、前記一般式(I)、(III)以外のポリベンゾオキサゾール前駆体ではないポリアミドの構造、ポリベンゾオキサゾールの構造、ポリイミドやポリイミド前駆体(ポリアミド酸やポリアミド酸エステル)の構造を、前記一般式(I)、(III)のポリオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体の構造と共に有していても良い。
なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。ポリオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体の構造、即ち、一般式(I)、(III)で表されるヒドロキシ基を含有するアミドユニットは、最終的には硬化時の脱水閉環により、耐熱性、機械特性、電気特性に優れるオキサゾール体に変換される。
本発明で用いるポリベンゾオキサゾール前駆体は、前記一般式(I)、(III)で表される繰り返し単位を有するが、そのアルカリ水溶液に対する可溶性は、Uに結合するOH基(一般にはフェノール性水酸基)に由来するため、前記OH基を含有するアミドユニットが、ある割合以上含まれていることが好ましい。
例えば、下記一般式(V)、(VI)で表されるポリイミド前駆体であることが好ましい。
Figure 0005741641
(式中、U,V,Y,Zは2価の有機基を示す。jとlは、それぞれの繰り返し単位のモル分率を示し、jとlの和は100モル%であり、jが60〜100モル%、lが40〜0モル%である。)
ここで、式中のjとlのモル分率は、j=80〜100モル%、l=20〜0モル%であることがより好ましい。
Figure 0005741641
(式中、U、V、W、X、Y、Zは2価の有機基を示す。jとkとlは、それぞれの繰り返し単位のモル分率を示し、jとkとlの和は100モル%であり、jとkの和j+kが60〜100モル%、lが40〜0モル%である。)
ここで、式中のjとkとlのモル分率は、j+k=80〜100モル%、l=20〜0モル%であることがより好ましい。
(a)成分の分子量は、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。ここで分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
本発明において、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の共重合体の製造方法に特に制限はなく、例えば前記一般式(I)、(III)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、前記ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては、通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。反応溶媒としは、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましく、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。また、有機溶媒としは、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
以下に、一般式(I)、(III)を再掲し、続いて、これら一般式(I)、(III)で表される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体について詳述する。
Figure 0005741641
(式中、U又はVは2価の有機基を示し、U又はVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。)
Figure 0005741641
(式中、U、V、W、Xは2価の有機基を示し、U又はVの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基であり、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)
ここで、式中のjとkのモル分率は、j=5〜85モル%、k=15〜95モル%であることがパターン性、機械特性、耐熱性、耐薬品性の点でより好ましい。
上記一般式(I)、(III)中のUとして用いて好ましい基について説明する。
炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基は、一般式(I)、(III)において、UとしてもVとして存在していても良い。脂肪族鎖状構造を含む基として、下記一般式(UV1)または(UV2)に示す構造を含む基であると、280℃の以下での脱水閉環率が高い点で望ましい。さらに炭素数7〜30の脂肪族直鎖構造であると、弾性率が低くかつ破断伸びが高く、より好ましい。
Figure 0005741641
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)
Figure 0005741641
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aからcは各々独立に1〜6の整数を表し、dは0〜3の整数である。また、式中Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。R9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基。)
以上のようなジアミン類として、例えば
Figure 0005741641
(式中nは1〜6の整数である。)が挙げられる。
さらに、上記一般式(I)、(III)中のU又はWに用いられるジアミン類としては、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の、前記以外の芳香族系のジアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのジアミン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、これらの脂肪族鎖状構造を有するジアミンを使用する場合、前記化学式(V)及び一般式(VI)に示したジアミン類を本発明の効果が損なわれない程度に併用することも可能である。
次に、上記一般式(I)、(III)中のVとして好ましい基について説明する。
一般式(I)、(III)においてVで表される2価の有機基とは、一般に、ジアミンと反応してポリアミド構造を形成する、ジカルボン酸の残基である。
本発明において、Vとしては炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基は、一般式(I)、(III)において、UとしてもVとしても存在していても良い。脂肪族鎖状構造を含む基としては、下記一般式(UV1)または(UV2)に示す構造を有すると、耐熱性、紫外及び可視光量域での高い透明性を有し、280℃の以下での脱水閉環率が高い点で優れる。さらに炭素数7〜30の脂肪族直鎖構造であると、そのポリマーはN−メチル−2−ピロリドン以外にもγ−ブチロラクトンやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートといった溶剤にも易溶となり、保存安定性も高い。さらに弾性率が低くかつ破断伸びが高く、より好ましい。
Figure 0005741641
(式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜30の整数を示す。)
Figure 0005741641
(式中、R3〜R8は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、aからcは各々独立に1〜6の整数を表し、dは0〜3の整数である。また、式中Aは−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF32、−C≡C−、−R9C=CR10−である。R9〜R10は、各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基。)
以上のようなジカルボン酸類として、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸、さらに下記一般式:
Figure 0005741641
(式中、Zは炭素数1〜6の炭化水素基、式中nは1〜6の整数である。)で示されるジカルボン酸等が挙げられる。
その他の一般式(I)、(III)中のV,X又はZとして用いられるジカルボン酸類として、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸などを併用することができる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記一般式(V)、(VI)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、式中Yで表される2価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成する、ジアミン由来(但し前記Uを形成するジヒドロキシジアミン以外)の残基である。このYとしては2価の芳香族基又は脂肪族基が好ましく、炭素原子数としては4〜40のものが好ましく、炭素原子数4〜40の2価の芳香族基がより好ましい。
このようなジアミン類としては、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物、この他にもシリコーン基の入ったジアミンとして、市販品である商品名「LP−7100」、「X−22−161AS」、「X−22−161A」、「X−22−161B」、「X−22−161C」及び「X−22−161E」(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
((b)成分:感光剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記ポリベンゾオキサゾール前駆体とともに(b)感光剤を含む。この感光剤とは、光に反応して、その組成物から形成された膜の現像液に対する機能を有するものである。本発明で(b)成分として用いられる感光剤に特に制限はないが、光により酸又はラジカルを発生するものであることが好ましい。
ポジ型の場合は、(b)感光剤は、光により酸を発生するもの(光酸発生剤)であることがより好ましい。光酸発生剤は、ポジ型においては、光の照射により酸を発生し、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。そのような光酸発生剤としてはo−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、o−キノンジアジド化合物が感度が高く好ましいものとして挙げられる。
上記o−キノンジアジド化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物などとを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。前記o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',3'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3',4',5'−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
前記アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが使用できる。
前記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とは、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間とされる。
上記反応の反応溶媒としては,ジオキサン,アセトン,メチルエチルケトン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては,炭酸ナトリウム,水酸化ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,トリメチルアミン,トリエチルアミン,ピリジンなどがあげられる。
また、一般式(I)、(V)中のU,V,X,Yで示される構造においてアクリロイル基、メタクリロイル基のような光架橋性基を有する基がある場合は、(b)成分(感光剤)として、ラジカルを発生するもの、即ち光重合開始剤を用いることでネガ型感光性樹脂組成物として用いることができる。このネガ型感光性樹脂組成物は、光の照射による架橋反応によって光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を低下させる機能を有するものである。
本発明の感光性樹脂組成物において、(b)成分(感光剤)の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、8〜40重量部がより好ましい。
((c)成分:溶剤)
本発明に使用される(c)成分(溶剤)としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
これらの溶剤は単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、使用する溶剤の量は特に制限はないが、一般に組成物中の溶剤の割合が20〜90重量%となるように調整されることが好ましい。
((d)成分:熱酸発生剤)
本発明において、さらに、(d)成分として熱酸発生剤(熱潜在酸発生剤)を使用することができる。熱酸発生剤を使用すると、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒として効率的に働くので好ましい。また、本発明の約280℃の以下での脱水閉環率が高い特定の樹脂に、この熱酸発生剤を併用することにより、脱水環化反応をさらに低温化できるので、低温での硬化でも硬化後の膜の物性が、高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる。
上記熱酸発生剤(熱潜在酸発生剤)から発生する酸としては、強酸が好ましく、具体的には、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸等が好ましい。これらの酸は、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する際の触媒として効率的に働く。これに対して、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸や硝酸が出るような酸発生剤では、発生した酸の酸性度が弱く、さらに加熱で揮発し易いこともあって、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には殆ど関与しないと考えられ、本発明の十分な効果が得られにくい。
これらの酸は、熱酸発生剤として、オニウム塩としての塩の形やイミドスルホナートのような共有結合の形で本発明の感光性樹脂組成物に添加される。
上記オニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩のようなジアリールヨードニウム塩、ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩のようなジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリメチルスルホニウム塩のようなトリアルキルスルホニウム塩、ジメチルフェニルスルホニウム塩のようなジアルキルモノアリールスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩のようなジアリールモノアルキルヨードニウム塩等が好ましい。
これらが好ましいのは、分解開始温度が150〜250℃の範囲にあり、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して効率的に分解するためである。これに対してトリフェニルスルホニウム塩は、本発明の熱酸発生剤としては望ましくない。トリフェニルスルホニウム塩は熱安定性が高く、一般に分解温度が300℃を超えているため、280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際しては分解が起きず、環化脱水の触媒としては十分に働かないと考えられるためである。
以上の点から、熱酸発生剤としてのオニウム塩としては、例えば、アリールスルホン酸、カンファースルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸又はアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩、ジアルキルモノアリールスルホニウム塩又はジアリールモノアルキルヨードニウム塩が保存安定性、現像性の点から好ましい。さらに具体的には、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度180℃、5%重量減少温度185℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩(1%重量減少温度151℃、5%重量減少温度173℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度255℃、5%重量減少温度278℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩(1%重量減少温度186℃、5%重量減少温度214℃)、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩(1%重量減少温度154℃、5%重量減少温度179℃)、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、カンファースルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、エタンスルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩等を好ましいものとして挙げることができる。
また、上記イミドスルホナートとしては、ナフトイルイミドスルホナートが望ましい。これに対して、フタルイミドスルホナートは、熱安定性が悪いために、硬化反応よりも前に酸が出て、保存安定性等を劣化させるので望ましくない。ナフトイルイミドスルホナートの具体例としては、例えば、1,8−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度189℃、5%重量減少温度227℃)、2,3−ナフトイルイミドトリフルオロメチルスルホナート(1%重量減少温度185℃、5%重量減少温度216℃)などを好ましいものとして挙げることができる。
また、上記(d)成分(熱酸発生剤)として、下記の化学式(VII)に示すように、R12C=N−O−SO2−Rの構造を持つ化合物(1%重量減少温度204℃、5%重量減少温度235℃)を用いることもできる。ここで、Rとしては、例えば、p−メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基等のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。また、上記R1としては、シアノ基、R2としては、例えば、メトキシフェニル基、フェニル基等が挙げられる。
Figure 0005741641
また、上記(d)成分(熱酸発生剤)として、下記の化学式(VIII)に示すように、アミド構造−HN−SO2−Rをもつ化合物(1%重量減少温度104℃、5%重量減少温度270℃)を用いることもできる。ここでRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、メチルフェニル基、フェニル基等のアリール基、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル等のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。また、−HN−SO2−Rの結合する基としては、例えば、2,2,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや2,2,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジ(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が挙げられる。
Figure 0005741641
また、本発明で用いる(d)成分(熱酸発生剤)としては、オニウム塩以外の強酸と塩基から形成された塩を用いることもできる。このような強酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸が好ましい。塩基としては、例えば、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンのようなアルキルピリジン、2−クロロ−N−メチルピリジンのようなN−アルキルピリジン、ハロゲン化−N−アルキルピリジン等が好ましい。さらに具体的には、p−トルエンスルホン酸のピリジン塩(1%重量減少温度147℃、5%重量減少温度190℃)、p−トルエンスルホン酸のL−アスパラギン酸ジベンジルエステル塩(1%重量減少温度202℃、5%重量減少温度218℃)、p−トルエンスルホン酸の2,4,6−トリメチルピリジン塩、p−トルエンスルホン酸の1,4−ジメチルピリジン塩などが保存安定性、現像性の点から好ましいものとして挙げられる。これらも280℃以下でのポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応に際して分解し、触媒として働くことができる。
(d)成分(熱酸発生剤)の配合量は、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、0.2〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部がさらに好ましい。
[その他の成分]
本発明による感光性樹脂組成物において、上記(a)〜(d)成分に加えて、(1)溶解促進剤、(2)溶解阻害剤、(3)密着性付与剤、(4)界面活性剤又はレベリング剤などの成分を配合しても良い。
((1)溶解促進剤)
本発明においては、さらに、(a)成分であるベース樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を促進させる溶解促進剤、例えばフェノール性水酸基を有する化合物を含有させることができる。フェノール性水酸基を有する化合物は、加えることでアルカリ水溶液を用いて現像する際に露光部の溶解速度が増加し感度が上がり、また、パターン形成後の膜の硬化時に、膜の溶融を防ぐことができる。
本発明に使用することのできるフェノール性水酸基を有する化合物に特に制限はないが、フェノール性水酸基を有する低分子化合物としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、ビスフェノールA、B、C、E、F及びG、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール、2,6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’−[1−[4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’−エチリジントリスフェノール、4−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−2−エトキシフェノール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、2,2’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4’,4’’−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリジン)トリスフェノール、4,4’,4’’,4’’’−(1,4−フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ビス[(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェニル]−フェニル]エチリデン]ビス[2,6−ビス(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェノールなどを挙げることができる。
上記フェノール性水酸基を有する低分子化合物は、分子量が大きくなると露光部の溶解促進効果が小さくなるので、中でも分子量が1,500以下の化合物が好ましく、このようなものとして、下記一般式(VIV)に挙げられるものが、露光部の溶解促進効果と膜の硬化時の溶融を防止する効果のバランスに優れ特に好ましい。
Figure 0005741641
(式中、Xは単結合又は2価の有機基を示し、各Rは各々独立にアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnは各々独立に1又は2であり、p及びqは各々独立に0〜3の整数である。)
上記フェノール性水酸基を有する化合物の成分の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がより好ましい。
((2)溶解阻害剤)
本発明においては、さらに、(a)成分であるベース樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物である溶解阻害剤を含有させることができる。具体的には、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等である。
これらは、発生する酸が揮発し易いこともあり、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化脱水反応には関与しない。しかし、効果的に溶解阻害を起こし、残膜厚や現像時間をコントロールするのに役立つ。上記成分(溶解阻害剤)の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(a)成分であるベース樹脂100重量部に対して0.01〜50重量部が好ましく、0.01〜30重量部がより好ましく、0.1〜20重量部がさらに好ましい。
((3)密着性付与剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等の密着性付与剤を含むことができる。
上記有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
これらの密着性付与剤を用いる場合は、(a)成分(ベース樹脂)100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。
((4)界面活性剤又はレベリング剤)
また、本発明の感光性樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させたりするために、適当な界面活性剤又はレベリング剤を添加することができる。
このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R−08」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
[パターン硬化膜の製造方法]
次に、本発明によるパターン硬化膜の製造方法について説明する。本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述した感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程、前記露光後の感光性樹脂膜を現像してパターン樹脂膜を得る現像工程、及び前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程を経て、ポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜を得ることができる。以下、各工程について説明する。
(感光性樹脂膜形成工程)
まず、この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、前記本発明の感光性樹脂組成物をスピンナーなどを用いて回転塗布後、ホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。これにより、感光性樹脂組成物の被膜である感光性樹脂膜が得られる。
(露光工程)
次に、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射することにより露光を行う。
(現像工程)
現像工程では、活性光線が露光した感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去することによりパターン硬化膜が得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ケイ酸ナトリウム,アンモニア,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像後得られたパターン樹脂膜を加熱処理することにより、オキサゾール環や他の官能基を有する耐熱性のポリオキサゾールのパターン硬化膜を形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、280℃以下、望ましくは120〜280℃、より望ましくは、160〜250℃である。
また、加熱処理は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等を用いて行う。また、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が感光性樹脂組成物膜の酸化を防ぐことができるので望ましい。上記加熱温度範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができる。従って、本発明のパターンの製造方法を用いることによって、デバイスが歩留り良く製造できる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。
また、本発明の加熱処理としては、通常の窒素置換されたオーブンを用いる以外に、マイクロ波硬化装置や周波数可変マイクロ波硬化装置を用いることもできる。これらを用いることにより、基板やデバイスの温度は、例えば220℃以下に保ったままで、感光性樹脂組成物膜のみを効果的に加熱することが可能である。
例えば、特許第2587148号明細書及び特許第3031434号明細書では、マイクロ波を用いたポリイミド前駆体の脱水閉環が検討されている。また米国特許第5738915号明細書では、マイクロ波を用いてポリイミド前駆体薄膜を脱水閉環する際に、周波数を短い周期で変化させて照射することにより、ポリイミド薄膜や基材のダメージを避ける方法が提案されている。
周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射した場合は定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。さらに基板として電子部品のように金属配線を含む場合は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると、金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させる際に照射するマイクロ波の周波数は0.5〜20GHzの範囲であるが、実用的には1〜10GHzの範囲が好ましく、さらに2〜9GHzの範囲がより好ましい。
照射するマイクロ波の周波数は連続的に変化させることが望ましいが、実際は周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくく、その時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
照射するマイクロ波の出力は、装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10〜2000Wの範囲であり、実用上は100〜1000Wがより好ましく、100〜700Wがさらに好ましく、100〜500Wが最も好ましい。出力が10W以下では被加熱体を短時間で加熱することが難しく、2000W以上では急激な温度上昇が起こりやすいので好ましくない。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体をマイクロ波により脱水閉環する温度は、先に述べたとおり、脱水閉環後のポリベンゾオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けるためにも低い方が好ましい。本発明において脱水閉環する温度は、280℃以下が好ましく、250℃以下がさらに好ましく、220℃以下がより好ましく、220℃以下が最も好ましい。なお、基材の温度は赤外線やGaAsなどの熱電対といった公知の方法で測定する。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させる際に照射するマイクロ波はパルス状に入/切させることが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、ポリベンゾオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けることができる点で好ましい。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は条件によって異なるが、概ね10秒以下である。
本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれかを選択することができる。
このようにして、本発明の感光性樹脂組成物を層として有する基材に、前述の条件でマイクロ波を照射して本発明の感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環すれば、マイクロ波による低温での脱水閉環プロセスによっても熱拡散炉を用いた高温での脱水閉環膜の物性と差がないポリオキサゾールが得られる。
[半導体装置の製造工程]
次に、本発明によるパターンの製造方法の一例として、半導体装置の製造工程を図面に基づいて説明する。図1〜図5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図であり、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。
これらの図において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。前記半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜層4としてのポリイミド樹脂等の膜が形成される(第1の工程、図1)。
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、マスクとして前記層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出するように窓6Aが設けられる(第2の工程、図2)。この窓6Aの層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられている。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程、図3)。
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程、図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
次に、表面保護膜8を形成する。図1〜図5の例では、この表面保護膜を次のようにして形成する。すなわち、前記本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、このパターン樹脂膜を加熱して表面保護膜層8としてのポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜とする(第5の工程、図5)。この表面保護膜層(ポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜)8は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
本発明では、従来は350℃前後の高温を必要としていた上記ポリベンゾオキサゾール膜を形成する加熱工程において、280℃以下の低温の加熱を用いて硬化が可能である。280℃以下の硬化においても、本発明の感光性樹脂組成物は環化脱水反応が十分に起きることから、その膜物性(伸び、吸水率、重量減少温度、アウトガス等)が300℃以上で硬化したときに比べて物性変化は小さいものとなる。したがって、プロセスが低温化できることから、デバイスの熱による欠陥を低減でき、信頼性に優れた半導体装置(電子部品)を高収率で得ることができる。
なお、上記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
[電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、上述した感光性樹脂組成物を用いて上記パターン硬化膜の製造方法によって形成されるパターン硬化膜を有する。ここで、電子部品としては、半導体装置や多層配線板、各種電子デバイス等を含む。特に、耐熱性の低いMRAM(磁気抵抗メモリ:Magnet Resistive Random Access Memory)が好ましいものとして挙げられる。
また、上記パターン硬化膜は、具体的には、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明による電子部品は、前記感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。例えば、本発明の感光性樹脂組成物は、MRAMの表面保護膜用として好適である。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(合成例1) ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92gを添加し、攪拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、マロン酸ジクロリド5.64gを10分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを、純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は11,500、分散度は1.7であった。
(合成例2)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをスクシン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は20,400、分散度は1.8であった。
(合成例3)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをグルタル酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は12,800、分散度は1.7であった。
(合成例4)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをアジピン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は29,300、分散度は1.9であった。
(合成例5)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをスベリン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は36,900、分散度は2.0であった。
(合成例6)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをセバシン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は33,100、分散度は2.0であった。
(合成例7)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをドデカン二酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は31,600、分散度は2.0であった。
(合成例8)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをジメチルマロン酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は22,200、分散度は1.8であった。
(合成例9)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをヘキサフルオログルタル酸ジクロリドに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーVIVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は10,700、分散度は1.6であった。
(合成例10)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをグルタル酸ジクロリドに、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は16,400、分散度は1.6であった。
(合成例11)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをスベリン酸ジクロリドに、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は33,400、分散度は2.0であった。
(合成例12)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをセバシン酸ジクロリドに、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は28,800、分散度は1.9であった。
(合成例13)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをドデカン二酸ジクロリドに、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は24,300、分散度は1.9であった。
(合成例14)
合成例1で使用したマロン酸ジクロリドをジメチルマロン酸ジクロリドに、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXIVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は29,100、分散度は1.9であった。
(合成例15)
合成例3で使用したグルタル酸ジクロリドの50mol%を4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに置き換えた以外は合成例3と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は34,800、分散度は2.0であった。
(合成例16)
合成例8で使用したジメチルマロン酸ジクロリドの50mol%を4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに置き換えた以外は合成例8と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXVIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は36,200、分散度は2.0であった。
(合成例17)
合成例6で使用したセバシン酸ジクロリドの40mol%を4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに置き換えた以外は合成例6と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXVIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は45,100、分散度は2.0であった。
(合成例18)
合成例7で使用したドデカン二酸ジクロリドの40mol%を4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに置き換えた以外は合成例7と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXVIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は41,800、分散度は2.0であった。
(合成例19)
合成例8で使用したジメチル酸ジクロリドの50mol%を4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリドに、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンに置き換えた以外は合成例8と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXVIVとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は36,200、分散度は2.0であった。
(合成例20)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g、N−メチルピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル12.64gを滴下し、30分間反応させて、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.31gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン8.53gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXXとする)を得た。標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は17,900、分散度は1.5であった。
(合成例21)
,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンに置き換えた以外は合成例20と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXXIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は13,700、分散度は1.5であった。
(合成例22)
合成例20で使用した4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸をイソフタル酸に置き換えた以外は合成例20と同様の条件にて合成を行った。得られたポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーXXIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は21,600、分散度は1.6であった。
(GPC法による重量平均分子量の測定条件)
測定装置;検出器 株式会社日立製作所社製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所社製L6000
株式会社島津製作所社製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min、検出器:UV270nm
ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
(実施例1〜19及び比較例1〜3)
前記合成例1〜22で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体10.0gをN−メチルピロリドン15gに溶解して得た樹脂溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間乾燥し、膜厚12μmの塗膜(A)を得た。この塗膜を光洋サーモシステム社製イナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに200℃で1時間又は350℃で1時間加熱して硬化膜(200℃で加熱した硬化膜(B)、350℃で加熱した硬化膜(C))を得た。これらの塗膜(A)及び硬化膜(B)、(C)の赤外吸収スペクトルを測定し、1540cm-1付近のC−N伸縮振動に起因するピークの吸光度を求めた。赤外吸収スペクトルの測定は、測定装置として「FTIR‐8300」(商品名、株式会社島津製作所製)を使用した。塗膜(A)の脱水閉環率を0%、硬化膜(C)の脱水閉環率を100%として、次の式から硬化膜(B)の脱水閉環率を算出した。
Figure 0005741641
(透過率の測定)
前記合成例1〜22で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体およびポリイミド前駆体10.0gをN−メチルピロリドン15gに溶解して得た樹脂溶液をシリコンウエハ上にスピンコートしてホットプレート上120℃で3分間乾燥し、膜厚10μmの塗膜を得た。この塗膜の透過率を紫外可視分光光度計(日立製作所社製、商品名「U−3310」)により10μm膜厚における波長365nm(i線)の透過率を測定した。
上記の式を利用して得た各ポリマーの200℃における脱水閉環率および10μm膜厚のi線透過率を表1に示した。
Figure 0005741641
以上の結果から、実施例1〜19のポリマーでは、200℃での脱水閉環率が50%を超えて90%近くに達し、比較例1〜3の芳香族ポリベンゾオキサゾールの脱水閉環率15〜26%に比べて非常に高かった。さらに実施例2〜18のポリマーは10μm膜厚のi線透過率が70%以上と非常に高かった。
(実施例20〜38及び比較例4〜6)
(感光特性評価)
前記(a)成分であるポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対し、(b)、(c)成分及びその他の添加成分を表2に示した所定量にて配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
Figure 0005741641
表中、BLOはγ−ブチロラクトンを表し、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表し、NMPはN−メチルピロリドンを表し、BLO/PGMEAは両者を混合して用いたことを表す。()内はポリマー100重量部に対する添加量を重量部で示した。
また、表2中、B1、D1、D2、D3、D4は、それぞれ下記の化学式(X)、(XI)に示す化合物である。
Figure 0005741641
Figure 0005741641
前記感光性樹脂組成物の溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚10〜15μmの塗膜を形成し、日立製作所製LD5010iを用いてi線(365nm)露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしパターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。その結果を表3に示した。
Figure 0005741641
以上の結果から、ポリマーI〜XVIVを用いた実施例20〜38の感光組成物は比較例4〜6と同様に高感度で解像度5μmまたは3μmのポジパターンが描画できることが分かった。
次に、前記感光性樹脂組成物の溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。その後、前記塗膜を光洋サーモシステム社製イナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに320℃で1時間、200℃で1時間、または180℃で1時間加熱して硬化膜を得た。次に4.9%フッ酸水溶液を用いて、この硬化膜を剥離し、水洗、乾燥した後、ガラス転移点(Tg)、破断伸び、弾性率、誘電率、5%重量減少温度といった膜物性を調べた。Tgはセイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6000を用い、昇温速度5℃/minにて熱膨張の変曲点より求めた。破断伸びおよび弾性率は島津製作所社製オートグラフAGS−100NHを用いて引っ張り試験より求めた。熱分解温度はセイコーインスツルメンツ社製TG/DTA6300を用いて、窒素ガス200mL/minフロー下、昇温速度10℃/minの条件により測定し、重量の減少が5%に到達した温度を熱分解の温度とした。誘電率は硬化膜上にアルミニウム被膜を真空蒸着装置(アルバック社製)で形成し、この試料の電荷容量を、LFインピーダンスアナライザー(横河電機社製:商品名「HP4192A」)に、誘電体テスト・フィクスチャー(横河電機製:商品名「HP16451B」)を接続した装置を用いて使用周波数10kHzの条件で測定した。電荷容量の測定値を下式計算式により比誘電率を算出した。
Figure 0005741641
また、前記と同様の方法で硬化膜の脱水閉環率を測定した。これら諸物性の測定結果を表4、5に示した。
Figure 0005741641
Figure 0005741641
以上のように、本発明の感光性樹脂組成物である実施例20〜38の樹脂組成物は、比較例4〜6の樹脂組成物に比べて180℃および200℃硬化でのTg、破断伸びが、320℃で硬化した時に比べて変化が小さく、遜色のない膜物性を有することが確認された。
5%重量減少温度に関しては、320℃で硬化したときよりも180℃、および200℃で硬化したときの方が、低い値となったが、比較例4〜6の樹脂組成物に比べて180℃硬化では230℃以上、200℃硬化では300℃以上と高い値であった。
脱水閉環率に関して、実施例20〜38の樹脂組成物は180℃で硬化した時、脱水変化率が50%以上、200℃で硬化した時は既に70%以上と高かった。ポリベンゾオキサゾール骨格中のアルキル鎖長が7以上のポリマーを使用した実施例25〜26、31〜32および36〜37の樹脂組成物は、比較例4〜6の樹脂組成物に比べて、破断伸びが180℃、200℃、および320℃硬化では10%以上と非常に高かった。
さらに実施例25〜26および31〜32の樹脂組成物は、180℃、200℃、および320℃で硬化した時の弾性率がいずれも2.0GPa以下と低くかつ誘電率も3.0以下と低く、優れていた。
一方、比較例4〜6の樹脂組成物の200℃の硬化では、脱水閉環率が42%以下と環化脱水反応の進行が不十分のため、誘電率が3.8以上と高く、5%重量減少温度が266℃以下と低かった。同様に比較例4〜6の樹脂組成物は180℃の硬化では脱水閉環率が15%以下と環化不足であり、誘電率4.0以上、5%重量減少温度が200℃以下と低かった。
以上のように、本発明の感光性樹脂組成物は、さらに低温硬化プロセスで用いても耐熱性に優れ、良好な形状のパターン硬化膜が得られるため、電子部品、特に低温硬化が要求されるMRAMなどの製造に適している。
次に、実施例20〜38および比較例4〜6で調製した溶液に、さらに(d)成分(熱酸発生剤)を、表6に示したように、配合した。表6中、(d)成分のd1〜d4は、下記の化学式(XII)に示す化合物を使用した。これらの感光性樹脂組成物の溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚15μmの塗膜を形成した。その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに200℃で1時間、180℃で1時間または160℃で1時間加熱して硬化膜を得た。200℃、180℃及び160℃にて1時間熱硬化したときの脱水閉環率を測定した。さらにそれぞれの硬化膜についてアセトン、BLO:γ−ブチロラクトン、NMP:N−メチルピロリドンのそれぞれ室温で15分間堆積させたときの硬化膜の変化を観察した。それぞれの結果を併せて表6に示した。硬化膜にクラックが入ったものを×、クラック無しのものを○で表中に記した。
Figure 0005741641
Figure 0005741641
表6から明らかなように、熱酸発生剤を併用することで、実施例20〜38の樹脂組成物は180℃硬化時でも脱水閉環率は無添加時に比べて大きく上昇し、さらに、より低温でも70%以上と高い環化率を得ることができた。比較例4〜6の樹脂組成物は39%以下と不十分であった。また実施例20〜38の樹脂組成物は160℃の硬化でも既に環化率は20〜60%であり、比較例4〜6の樹脂組成物が10%以下であるのに対して高い環化率を示した。
次に、薬品耐性について、比較例4〜6の樹脂組成物はいずれの溶剤に対してクラックが生じるのに対し、実施例22〜24、及び29〜30の樹脂組成物はアセトン、または160℃で硬化させた時、NMPに対してクラックが生じたが、BLOに対しては優れた薬品耐性を示した。一方、実施例25〜26、および31〜32の樹脂組成物は160℃、180℃、および200℃の硬化においてアセトン、BLO、およびNMP全てに対して優れた薬品耐性を示した。
以上のように、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、半導体装置等電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に適している。
以上のように、本発明による感光性樹脂組成物は、低温でも高い脱水閉環率を持つ特定のポリベンゾオキサゾール感光性樹脂膜をベース樹脂とすることにより、硬化後の膜の物性が高温で硬化したものと遜色ない性能が得られる。また、本発明のパターン硬化膜の製造方法によれば、前記感光性樹脂組成物の使用により、感度、解像度、接着性に優れ、さらに低温硬化プロセスでも耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターン硬化膜が得られる。本発明の感光性樹脂組成物から得られるパターン硬化膜は、良好な形状と接着性、耐熱性に優れ、さらには低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品が得られる。従って、本発明の感光性樹脂組成物は、電子デバイス等の電子部品に有用であり、特に、磁気抵抗メモリに適している。
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜層

Claims (10)

  1. (a)一般式(IV):
    Figure 0005741641
    (式中、R1、R2は各々独立に水素、フッ素又は炭素数1〜6のアルキル基、U,W,Xは2価の有機基を示し、j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%であり、j=5モル%〜85モル%、k=15モル%〜95モル%である。nは7〜30の整数である。)で示されるA構造単位とB構造単位とからなるポリベンゾオキサゾール前駆体(但し、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンに基づく構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は除く)と、
    (b)感光剤と、
    (c)溶剤と、
    を含有してなることを特徴とする感光性樹脂組成物。
  2. 前記(b)成分が、光により酸又はラジカルを発生する感光剤であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. さらに(d)成分として加熱により酸を発生する熱酸発生剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
  4. さらに(e)成分として溶解阻害剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用い、その組成分である(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環して形成されたことを特徴とするポリベンゾオキサゾール膜。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する感光性樹脂膜形成工程と、前記感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する露光工程と、前記露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像してパターン樹脂膜を得る現像工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理してパターン硬化膜を得る加熱処理工程とを含むことを特徴とするパターン硬化膜の製造方法。
  7. 前記加熱処理工程が、前記パターン樹脂膜にマイクロ波をその周波数を変化させながらパルス状に照射するものであることを特徴とする請求項6に記載のパターン硬化膜の製造方法。
  8. 前記加熱処理工程における加熱処理温度が280℃以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載のパターン硬化膜の製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載のパターン硬化膜の製造方法により得られたパターン硬化膜を、層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として有することを特徴とする電子部品。
  10. 磁気抵抗メモリであることを特徴とする請求項9に記載の電子部品。
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