WO2006006682A1 - 液体吐出ヘッド及びその製造方法、画像形成装置、液体吐出ヘッドのノズル部材、撥インク膜形成方法、液体吐出ヘッド、カートリッジ、及び液体吐出記録装置 - Google Patents

Abstract

　ノズル板３は、ノズル４となるノズル穴３４を形成したＮｉ金属プレートからなるノズル基材３１の吐出面側表面にシリコーン樹脂層からなる撥水層３２を形成してなり、ノズル基材３１と撥水層３２であるシリコーン樹脂層との間には酸化膜がなく、他方、ノズル基材３１のノズル穴３４の壁面３４ａには自然酸化膜又はノズル基材３１の接液性を向上するために別途形成した耐接液膜としての酸化膜３５が形成されている。

Description

明 細 書

液体吐出ヘッド及びその製造方法、画像形成装置、液体吐出ヘッドのノ ズル部材、撥インク膜形成方法、液体吐出ヘッド、カートリッジ、及び液体吐出記 録装置

技術分野

[0001] 本発明は、液体吐出ヘッド及びその製造方法、画像形成装置、特に表面に撥水層 を有する液体吐出ヘッド及びその製造方法、液体吐出ヘッドを備えた画像形成装置 と、液体吐出ヘッドのノズル部材、撥インク膜形成方法、液体吐出ヘッド、カートリッジ 、及び液体吐出記録装置に関する。

背景技術

[0002] プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、液体吐出ヘッドを 記録ヘッドに用いて、記録紙等の被記録媒体 (以下「用紙」と称するが、材質を紙に 限定するものではなぐ記録媒体、転写紙、転写材、被記録材などとも称される。 )に 記録液としてのインク滴を吐出して記録 (画像形成、印写、印字、印刷なども同義語 である。）を行なうものである。

[0003] ところで、液体吐出ヘッドはノズル力 液滴を吐出させて記録を行うため、ノズルの 形状、精度力 Sインク滴の噴射特性に大きな影響を与える。また、ノズル孔を形成して いるノズル形成部材の表面の特性もインク滴の噴射特性に影響を与えることが知ら れている。例えば、ノズル形成部材表面のノズル孔周辺部にインクが付着して不均一 なインクだまりが発生すると、インク滴の吐出方向が曲げられたり、インク滴の大きさに ノ ツキが生じたり、インク滴の飛翔速度が不安定になる等の不都合が生じることが 知られている。

[0004] そこで、一般に、液体吐出ヘッドにお!、ては、液滴吐出側表面に撥インク層（膜)、 撥水層などを形成するようにして ヽる。

[0005] 例えば、特許文献 1にはフッ素系撥水膜を形成することが記載されて 、る。特許文 献 2にはシリコーン油をプラズマ重合して撥インク性の薄膜を形成する処理方法及び この方法により撥インク性のへキサメチルジシロキサン等の薄膜を有する液体吐出へ ッドのノズルプレートことが、特許文献 3にはフッ素榭脂重合膜またはシリコーン榭脂 重合膜の撥インク膜を形成した後、酸素および水分を除 ヽた不活性な雰囲気下で加 熱処理して、撥インク膜内に含まれる液体原料を蒸発させ、撥インク膜を硬化させる ことが記載されている。

[0006] また、撥水膜を形成する方法として、特許文献 4にはノズル裏側カゝら表面に向かつ て気体を放出した状態を維持しながらノズル表面を撥水撥油材料を溶解した溶液へ 浸漬して、その後気体を放出しながらノズル表面を溶液より離し、放置して撥水撥油 膜を塗布する方法及び液体吐出記録ヘッドのノズルプレートを撥水撥油材料が溶か された溶液に浸漬してノズルプレート表面に撥水撥油膜を形成し、その後このノズル プレートの裏側から紫外線を照射する方法、プラズマガス処理する方法が記載され ている。

特許文献 1：特開 2001— 232799号公報

特許文献 2：特開 2003 - 72085号公報

特許文献 3：特開 2003 - 72086号公報

特許文献 4：特許第 3379119号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0007] 上述したように、撥水層としてはフッ素榭脂を用いたヘッドにあっては、具体的には

、金属製ノズルプレート表面に Ni— PTFEの共析めっきを施し加熱処理することによ り PTFEの薄膜を形成する方法、フッ素系撥水剤を金属又は榭脂製のノズル板 (基 材)表面にコーティングする方法などが採用されている。

[0008] このようなフッ素榭脂を撥水層とするノズル形成部材の場合、従来公知の表面張力

30mNZmを越える染料インク、顔料インクでは良好な撥水性 (撥インク性)を持たせ ることが可能である。

[0009] し力しながら、本発明者に実験によると、 30mNZm以下の表面張力の低いインク や、フッ素系化合物を添加したインクを用いた場合に、十分な撥水性 (撥インク性)が 顕現しな!、と!/ヽぅ課題があることが確認された。 [0010] 一方、上述したように、シリコーン榭脂皮膜を撥水膜とするヘッドにあっては、具体 的には、液状のシリコーン榭脂材料を真空蒸着する方法、シリコーンオイルをプラズ マ重合することにより形成する方法などが行なわれている。

[0011] しカゝしながら、これらのシリコーン榭脂皮膜を形成する方法を用いた場合、成膜時 に真空処理をする必要があり、設備が大掛力りでコストが高くなる。また、真空蒸着や プラズマ重合では、成膜時間が長ぐ形成される皮膜が非常に薄いため、ピンホール 等の欠陥を生じやすい。さらに、真空蒸着やプラズマ重合等の方法では、シリコーン 榭脂皮膜を厚くすることが困難であり、ヘッドの維持回復動作として行なわれるノズル 面 (ノズル形成部材の液滴吐出側面）のワイピンクやインクに対する十分な耐久性を 確保することが難し 、と 、う課題が生じて 、る。

[0012] さら〖こ、上述した特許文献 4に記載されているように、ノズル孔から気体を噴射させ た状態で、ノズル板を、撥インク剤を溶解した溶液に浸漬してノズル板表面に撥イン ク層を形成する方法にあっては、気体を噴射させたまま溶液に浸漬するため、溶液 中に気泡が発生してしまうことになり、溶液が常温で硬化するタイプの場合、大気中 に溶液を放置しなければならず、液の状態を維持しつづけることが困難となり、溶液 の粘度変化により撥インク層の膜厚制御が不能になってしまうという課題がある。

[0013] し力しながら、上述した特許文献 1, 2のものは、撥インク膜におけるノズル孔周囲の エッジ部分 (開口部分縁端近傍)の形状を最適化することにつ!/ヽてまで考慮されたも のではなかった。

[0014] すなわち、一般的にはノズル孔部分をマスクして撥水層を形成したり、ノズル板表 面に撥水層を形成して力もノズル孔部分の撥水層を除去することとなる。これらの場 合、ノズル孔周囲のエッジ部分の撥インク膜は、図 1 (a)に示すように、開口部の中心 線に垂直な平面での断面積がノズル板力 離れるにつれて小さくなり尖鋭端 (尖形 部分)を有する形状となる。

[0015] また、特許文献 3における撥水撥油膜を形成した後で裏側力も紫外線を照射する 方法、プラズマガス処理する方法においても、開口部での断面積がノズル板力 離 れるにつれて小さくなり尖鋭端を有する形状となってしまう。

[0016] こうした図 1 (a)に示すような形状のノズル面をゴムなどの材料で形成されたワイパ 一 207でワイビングすると、図 1 (b)に示すようにエッジ部にもワイパーが当るため、ェ ッジ部の撥インク膜が剥離しやすくなつてしまう虞があった。

[0017] また、図 1 (c)に示すように、インクの充填時、撥インク膜 201'とノズル板 2との境界 部分にメニスカス Pが形成される場合と、撥インク膜 201'尖端部にメニスカス Qが形 成される場合とがありうる。このため、インクの噴射安定性にばらつきが発生してしまう 虞があった。

[0018] そこで、本発明者は、別途、デイスペンサを用いてノズル形成部材の表面の所望の 部分だけに均一に液状のシリコーン榭脂を塗布して撥水層を形成する方法を発明し た。ところが、この方法によって形成したシリコーン榭脂層にインクを充填したところ、 経時滴にインクに触れた部分カゝらシリコーン榭脂層が剥離すること、ノズル形成部材 の表面に付着したインクの除去及びメニスカスの形成のために行なうワイビングによ つてもシリコーン榭脂層の剥離が生じ易くなることが確認された。

[0019] そのため、本発明は上記のシリコーン榭脂層の剥離の原因を解明し、本件発明を 完成するに至ったのである。

[0020] すなわち、本発明は上記の課題と知見に基づいてなされたものであり、シリコーン 榭脂層と基材との密着性を向上したノズル形成部材を備える液体吐出ヘッド、その 製造方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。

[0021] また、液体吐出ヘッドの基材表面に形成される撥インク膜の開口部縁端から開口 部近傍の部分力 Sワイビングによっても剥離を生じにくい形状であり、噴射安定性にも 優れる形状に形成された液体吐出ヘッドのノズル部材、撥インク膜形成方法、液体 吐出ヘッド、カートリッジ、および液体吐出記録装置を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段

[0022] 上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、撥水層がシリコーン 榭脂からなり、ノズル基材の液滴吐出側表面と撥水層との間には酸ィ匕膜がなぐノズ ル基材のノズル穴内壁面には酸ィ匕膜がある構成としたものである。

[0023] 本発明に係る液体吐出ヘッドは、撥水層がシリコーン榭脂からなり、ノズル基材の 液滴吐出側表面と撥水層との間の酸ィ匕膜の厚みがノズル基材のノズル穴内壁面の 酸化膜の厚みよりも薄 、構成としたものである。 [0024] これらの本発明に係る液体吐出ヘッドにぉ 、ては、ノズル基材が Niで形成されて!ヽ ることが好ましい。また、記録液はフッ素系化合物を含む記録液であることが好ましく 、記録液は動的表面張力が 30mNZm以下で、 pH = 8〜： L 1の範囲内にある記録液 であることが好ましぐ記録液には溶出防止剤が添加されていることが好ましい。

[0025] 本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、本発明に係る液体吐出ヘッドを製造 する方法であって、ノズル基材に大気中でシリコーン榭脂の撥水層を形成する構成 としたものである。

[0026] ここで、ノズル穴を介して液滴吐出側表面と反対の面側から液滴吐出側表面側に 向うようにエアーを吹き付けた状態で、ノズル基材にデイスペンサでシリコーン榭脂を 塗布して撥水層を形成することが好ましい。また、ノズル基材に酸処理、プラズマ処 理又は紫外線照射処理による表面酸化膜の除去及び水酸基置換を行なった後、ノ ズル基材にシリコーン榭脂の撥水層を形成することが好ましい。

[0027] 本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、本発明に係る液体吐出ヘッドを製造 する方法であって、ノズル基材に酸処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理による 表面酸ィ匕膜の除去及び水酸基置換を行なった後、ノズル基材にシリコーン榭脂の撥 水層を形成する構成としたものである。

[0028] これらの本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法においては、常温硬化型の液状 シリコーンレジンを塗布して撥水層を形成することが好ましい。

[0029] 本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えて ヽるもので ある。

[0030] 上述の本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、撥水層がシリコーン榭脂からなり、ノ ズル基材の液滴吐出側表面と撥水層との間には酸化膜がなく、ノズル基材のノズル 穴内壁面には酸ィ匕膜がある構成とし、あるいは、撥水層がシリコーン榭脂からなり、ノ ズル基材の液滴吐出側表面と撥水層との間の酸ィ匕膜の厚みがノズル基材のノズル 穴内壁面の酸ィ匕膜の厚みよりも薄い構成としたので、シリコーン榭脂とノズル基材と の密着性が向上して、安定した撥水性が得られて、安定した滴吐出特性が得られる

[0031] 上述の本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法によれば、ノズル基材に大気中で シリコーン榭脂の撥水層を形成する構成としたので、撥水層を容易に低コストで形成 することができる。

[0032] 上述の本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法によれば、ノズル基材に酸処理、 プラズマ処理又は紫外線照射処理による表面酸化膜の除去及び水酸基置換を行な つた後、シリコーン榭脂の撥水層を形成する構成としたので、本発明に係る液体吐出 ヘッドを容易に得ることができる。

[0033] 上述の本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る液体吐出ヘッドを備え ているので、撥水性能が高ぐ優れた滴吐出特性が得られることから高画質画像を安 定して形成することができる。

[0034] また、上述の本発明の目的を達成するために、本発明の液体吐出ヘッドのノズル 部材は、液体吐出用の開口部が開設された液体吐出ヘッドの基材表面に撥インク膜 が形成されてなる液体吐出ヘッドのノズル部材であって、該撥インク膜の該開口部近 傍における当該開口部の中心線に垂直な平面での断面積が、基材表面から離れる につれて順次大きくなつていくよう形成されたことを特徴とする。

[0035] 上記した撥インク膜の開口部近傍における形状は、曲面形状であることが好ま ヽ

[0036] 上記した開口部の中心線を含む平面での断面における撥インク膜の当該開口部 近傍の曲線の曲率半径力 該撥インク膜の厚み以上であることが好ま 、。

[0037] 上記した開口部の中心線を含む平面での断面における撥インク膜の当該開口部 縁端から当該開口部近傍の曲線が略円弧曲線をなし、該円弧の曲率半径が、該撥 インク膜の厚み以上であることが好まし 、。

[0038] 上記した開口部の中心線を含む平面での断面における撥インク膜の当該開口部 縁端を通る接線が、当該端部を含むノズル部材表面からの角度が 90度未満であるこ とが好ましい。

[0039] 上記した液体吐出ヘッドの基材が金属または榭脂からなることが好ま U、。

[0040] 液体吐出ヘッドの液体吐出面の上記した撥インク膜に加えて、開口部内壁に予め 定められた深さまで開口部内壁の撥インク膜が形成されたことが好ましい。

[0041] 液体吐出ヘッドの液体吐出面の上記した撥インク膜は、開口部近傍以外における 厚みが 0. 1 μ m以上であることが好ましい。

[0042] 上記した撥インク膜の表面粗さ力 0. 2 μ m以下であることが好ま 、。

[0043] また、本発明の撥インク膜形成方法は、液体吐出用の開口部が開設された液体吐 出ヘッドの基材表面に撥インク膜を形成する方法であって、該液体吐出ヘッドの基 材における液体吐出面の反対側力 気体を噴射しながら、撥インク膜の材料を塗布 手段により塗布することを特徴とする。

[0044] また、上記方法は、液体吐出用の開口部が開設された液体吐出ヘッドの基材表面 に撥インク膜を形成する方法であって、該液体吐出ヘッドの基材の液体吐出面に撥 インク膜の材料を塗布手段により塗布し、開口部の予め定められた深さまで当該材 料が進入した時点で該液体吐出ヘッドの基材における液体吐出面の反対側力 気 体を噴射することを特徴としてもょ 、。

[0045] 上記した塗布手段の塗布可能幅が液体吐出ヘッドの基材表面における塗布対象 幅と略同一であり、塗布手段を一方向へ 1回平行移動させるのみで塗布が完了する ことが好ましい。

[0046] 上記した塗布手段はデイスペンサであり、該デイスペンサと液体吐出ヘッドの基材と の間隔をあらかじめ一定距離に保ったまま移動させることで塗布を行うことが好ましい

[0047] 上記した撥インク膜の材料は、シリコーン榭脂またはフッ素榭脂であることが好まし い。

[0048] 上記したシリコーン榭脂は室温硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一 であり、基材表面に塗布され、室温で大気中に放置することにより重合硬化して撥ィ ンク性の皮膜が形成されることが好まし 、。

[0049] 上記したシリコーン榭脂は加熱硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一 であり、基材表面に塗布され、加熱処理することにより硬化し撥インク性の皮膜を形 成することであってもよい。

[0050] 上記したシリコーン榭脂は紫外線硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ 一であり、基材表面に塗布され、紫外線を照射することにより硬化し撥インク性の皮 膜を形成することであってもよ 、。 [0051] 上記したシリコーン榭脂の粘度が lOOOcp (センチボイズ）以下であることが好まし ヽ

[0052] また、本発明の液体吐出ヘッドのノズル部材は、上述した第 2の態様としての撥イン ク膜形成方法により撥インク膜が形成されたことを特徴とする。

[0053] また、本発明の液体吐出ヘッドは、上述した第 1または第 3の態様としての液体吐 出ヘッドのノズル部材を備えて構成されたことを特徴とする。

[0054] また、本発明のカートリッジは、上述した第 4の態様としての液体吐出ヘッドを備え たことを特徴とする。

[0055] また、本発明の液体吐出記録装置は、上述した第 4の態様としての液体吐出ヘッド を備え、該液体吐出ヘッドを用いて画像形成を行うよう構成されたことを特徴とする。

[0056] 上記の液体吐出記録装置において、使用するインクの表面張力が 70mN/m以下の 液体であることが好ましい。

[0057] 上記したインクはフッ素系界面活性剤を含むことが好ま 、。

[0058] 上記したインクが顔料を含むことが好ま 、。

[0059] 上述の発明によれば、液体吐出ヘッドの基材表面に形成される撥インク膜の開口 部縁端から開口部近傍の部分を、ワイビングによっても剥離を生じにくい形状とする ことができると共に、噴射安定性にも優れる形状とすることができる。

発明の効果

[0060] 本発明によれば、シリコーン榭脂層と基材との密着性を向上したノズル形成部材を 備える液体吐出ヘッド、その製造方法及び画像形成装置を提供することができる。

[0061] また、液体吐出ヘッドの基材表面に形成される撥インク膜の開口部縁端から開口 部近傍の部分力 Sワイビングによっても剥離を生じにくい形状であり、噴射安定性にも 優れる形状に形成された液体吐出ヘッドのノズル部材、撥インク膜形成方法、液体 吐出ヘッド、カートリッジ、および液体吐出記録装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0062] [図 1]開口部縁端近傍に尖鋭端を含む従来の液体吐出ヘッドノズル板の断面図であ る。

[図 2]本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す分解斜視図である。 [図 3]同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。

[図 4]図 3の要部拡大図である。

圆 5]同ヘッドの液室短手方向に沿うバイピッチ構造の断面説明図である。

[図 6]同ヘッドの液室短手方向に沿うノーマルピッチ構造の断面説明図である。

[図 7]同ヘッドのノズル板の要部拡大断面説明図である。

[図 8]図 7の要部拡大断面拡大図である。

圆 9]同ヘッドの他の例を示す要部拡大断面説明図である。

圆 10]比較例のノズル板の説明に供する拡大断面説明図である。

圆 11]酸ィ匕膜の有無と撥水層の剥離の関係の実験結果の一例を示す説明図である 圆 12]インクの特性などに対する耐接液膜 (酸ィ匕膜)の有無とノズル基材の溶出の関 係の実験結果の一例を示す説明図である。

圆 13]本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一例の説明に供する断面説明図 である。

[図 14]本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成図である。

圆 15]同じく要部平面説明図である。

[図 16]本実施形態により作製した液体吐出ヘッドノズル板の断面図である。

圆 17]該断面図の形状特性を説明する図である。

圆 18]比較例の形状特性を説明する図である。

圆 19]本実施形態に係るディスペンサ 4を用いた塗布により撥インク膜を形成する構 成を示す図である。

[図 20] (a)が本実施形態、（b)が一般、それぞれの-一ドル先端形状と塗布動作との 関係を示す図である。

圆 21]本実施形態に係るディスペンサを用いて撥インク膜を形成する動作を示す図 である。

圆 22]開口部内壁の撥インク膜とインク吐出面の撥インク膜とを形成した場合の液体 吐出ヘッドノズル板の断面図である。

符号の説明 [0063] 1 流路形成部材

2 振動板

3 ノズル板 (ノズル形成部材）

4 ノズル

6 液室

12 圧電素子

31 ノズル基材

32 撥水層 (シリコーン榭脂層）

34 ノズル穴

35 酸化膜

36 自然酸化膜

50 デイスペンサ

103 キャリッジ

107 記録ヘッド

158 ワイパーブレード

201 撥インク膜 (例えば、シリコーン榭脂皮膜）

202 ノズル板（例えば、 Ni製）

203 インク

204 デイスペンサ（シリンジ）

205 ニードル

206 気体

207 ワイパー

発明を実施するための最良の形態

[0064] 以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。

実施例 1

[0065] 本発明に係る液体吐出ヘッドの第 1実施形態について図 2ないし図 6を参照して説 明する。なお、図 2は同ヘッドの分解斜視説明図、図 3は同ヘッドの液室長手方向に 沿う断面説明図、図 4は図 3の要部拡大図、図 5及び図 6は同ヘッドの液室短手方向 に沿う異なる例を示す断面説明図である。

[0066] この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板で形成した流路板 1と、この流路 板 1の下面に接合した振動板 2と、流路板 1の上面に接合したノズル形成部材である ノズル板 3とを有し、これらによってインク滴を吐出するノズル 4が連通路 5を介して連 通する加圧液室 6、流体抵抗部 8、流体抵抗部 7を介して液室 6と連通する連通部 9 を形成し、連通部 9に振動板 2に形成した供給口 10を介して後述するフレーム部材 1 7に形成した共通液室 8から記録液 (例えばインク）を供給する。

[0067] そして、液室 6の壁面を形成する振動板 2の面外側 (液室 6と反対面側）に、各加圧 液室 6に対応して、振動板 2に形成した連結部 11を介して圧力発生手段としての積 層型圧電素子 12の上端部を接合し、この積層型圧電素子 12の下端部は支持基板 13に接合して固定している。なお、支持基板 13は圧電素子 12の各列毎に分割した 構成とすることちでさる。

[0068] この圧電素子 12は、圧電材料層 14と内部電極 15a、 15bとを交互に積層したもの である。この場合、圧電素子 12の圧電方向として d33方向の変位を用いて液室 6内 インクを加圧する構成とすることも、圧電素子 12の圧電方向として d31方向の変位を 用いて加圧液室 6内インクを加圧する構成とすることもできる。

[0069] また、流路板 1及び振動板 2の周囲は例えばエポキシ系榭脂或いはポリフエ-レン サルファイトで射出成形により形成したフレーム部材 17に接着接合し、このフレーム 部材 17と支持基板 13とは図示しない部分を接着剤などで相互に固定している。そし て、このフレーム部材 17には前述した共通液室 8を形成するとともに、この共通液室 8に外部力 記録液を供給するための図示しない供給路 (連通管）を形成し、この供 給路は更に図示しない記録液カートリッジなどの記録液供給源に接続される。

[0070] さらに、圧電素子 12には駆動信号を与えるために半田接合又は ACF (異方導電 性膜)接合若しくはワイヤボンディングで FPCケーブル 18を接続し、この FPCケープ ル 18には各圧電素子 12に選択的に駆動波形を印加するための駆動回路 (ドライバ I C) 19を実装している。

[0071] ここで、流路板 1は、例えば結晶面方位（110)の単結晶シリコン基板を水酸ィ匕カリ ゥム水溶液 (KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすること で、連通路 5、加圧液室 6となる貫通穴、流体抵抗部 7、連通部 9などを構成する溝部 をそれぞれ形成している。

[0072] 振動板 2はニッケル (Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクト口フォーミング 法 (電铸)で製造している。この振動板 2は加圧液室 6に対応する部分を、変形を容 易にするための薄肉部とし、中央部には圧電素子 12と接合するための連結部 11を 設けている。

[0073] なお、液室短手方向（ノズル 4の並び方向）では、図 5に示すように、圧電素子 12と 支柱部 22を交互に配置したバイピッチ構造とすることもできるし、あるいは、図 6に示 すように、支柱部 22を設けな ゾーマルピッチ構造とすることもできる。

[0074] ノズル板 3は、ニッケル (Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクト口フォーミ ング法 (電铸)で製造している。このノズル板 3には各加圧室 6に対応して直径 10〜3 5 /z mのノズル 4を形成し、流路板 1に接着剤接合している。そして、このノズル板 3の 液滴吐出側面（吐出方向の表面：吐出面、又は液室 6側と反対の面）には、後述する ようにシリコーン榭脂によって形成した撥水層を設けて 、る。

[0075] このように構成した液体吐出ヘッドにぉ 、ては、例えば押し打ち方式で駆動する場 合には、図示しない制御部力も記録する画像に応じて複数の圧電素子 2に 20〜50 Vの駆動パルス電圧を選択的に印加することによって、パルス電圧が印加された圧 電素子 12が変位して振動板 2をノズル板 3方向に変形させ、液室 6の容積 (体積)変 ィ匕によって液室 6内の液体を加圧することで、ノズル板 3のノズル 4力 液滴が吐出さ れる。そして、液滴の吐出に伴って液室 6内の圧力が低下し、このときの液流れの慣 性によって液室 6内には若干の負圧が発生する。この状態の下において、圧電素子 12への電圧の印加をオフ状態にすることによって、振動板 2が元の位置に戻って液 室 6が元の形状になるため、さらに負圧が発生する。このとき、図示しない液タンクに 通じる液供給パイプ力 入った液は、液室 6内に充填され、次の駆動パルスの印加 に応じて液滴がノズル 4から吐出される。

[0076] 次に、この液体吐出ヘッドのノズル板 3の詳細について図 7及び図 8を参照して説 明する。なお、図 7は同ノズル板 3の 1つのノズル部分の拡大断面説明図、図 8は同ノ ズル板の更に要部拡大断面説明図（なお、分かりやすくするための一部の断面ハツ チングは省略している。以下、同じ。）である。

[0077] このノズル板 3は、ノズル 4となるノズル穴 34を形成した Ni金属プレートからなるノズ ル基材 31の吐出面側表面に直接シリコーン榭脂層からなる撥水層 32を形成してな る。なお、ノズル基材 31としては、 Ni金属プレートで説明している力 これに限るもの ではない。ただし、特に金属材料カゝらなるノズル基材を用いる場合に本発明は効果 的である。

[0078] ここで、シリコーン榭脂層（撥水層 32)の膜厚は例えば 0. 1 μ πι〜10 /ζ mの範囲内 とすることで、耐ワイビング性及び撥水性を確保できるとともに、成膜も容易になる。と した。このシリコーン榭脂層（撥水層 32)の表面粗さ Raは、 0. 2以下にすることが良 好な撥水性を得る上で好ましい。また、撥水層 32を形成するためのシリコーン榭脂と しては、常温硬化型の液状シリコーンレジンを用いることで大気中での塗布が可能に なる。特に、加水分解作用を伴う液状シリコーンレジンを用いることが好ましい。

[0079] そして、このノズル板 3においては、図 8に示すように、ノズル基材 31と撥水層 32で あるシリコーン榭脂層との間には酸ィ匕膜がなぐ直接シリコーン榭脂皮膜を前記膜厚 でノズル基材 31表面に形成し、他方、ノズル基材 31のノズル穴 34の壁面 34aには 酸ィ匕膜 35を有している。この酸ィ匕膜 35は自然酸ィ匕膜又はノズル基材 31の接液性を 向上するために別途形成した耐接液膜としての酸ィ匕膜の 、ずれであっても良!、。

[0080] この場合、例えば、ノズル基材 31の表面に耐接液膜としての酸ィ匕膜を形成する場 合には、酸ィ匕処理を行なってノズル基材 31の表面全面に酸ィ匕膜 (耐接液膜) 35を形 成した後、ノズル基材 31の吐出面側表面の酸ィ匕膜を除去する処理を行なう。このとき 、単に酸ィ匕膜を除去するだけでなぐ後述するように、ノズル基材 31に、酸処理、ブラ ズマ処理又は紫外線照射処理に施して、表面酸化膜の除去及び水酸基置換を行な つた後、ノズル基材 31にシリコーン榭脂を塗布して撥水層を形成することで、シリコー ン榭脂層 32とノズル基材 31との密着性を確実に向上することができる。また、ノズル 基材 31表面に形成される自然酸化膜を除去する場合にも同様に酸処理等を行なう ことが好ましい。

[0081] このように、ノズル板 3のノズル基材 31と撥水層 32であるシリコーン榭脂層との間に 酸ィ匕膜が介在しないことによって、ノズル基材 31の吐出面側表面とシリコーン榭脂層 である撥水層 32との密着強度が高くなり、大気中でシリコーン榭脂を塗布して撥水層 32を形成した場合でも、ノズル基材 31の吐出面側表面とシリコーン榭脂層である撥 水層 32との十分な密着強度が得られ、安定した撥水性を維持することができる。言 V、換えれば、ノズル板 3のノズル基材 31と撥水層 32であるシリコーン榭脂層との間に 酸ィ匕膜が介在しない構成とすることによって、シリコーン榭脂を大気中で塗布して撥 水層を形成できるので、撥水層の形成を容易に行なうことができて、ヘッドの製造コス トを低減することができる。

[0082] 次に、この液体吐出ヘッドのノズル板 3の他の例について図 9を参照して説明する。

なお、図 9は図 8と同様なノズル板の要部拡大断面説明図である。

[0083] このノズル板 3は、ノズル 4となるノズル穴 34を形成した Ni金属プレートからなるノズ ル基材 31の吐出面側表面にシリコーン榭脂層からなる撥水層 32を形成していること は、上記図 8の例と同様である。

[0084] そして、この例のノズル板 3においては、図 9に示すように、ノズル基材 31と撥水層 3 2であるシリコーン榭脂層との間には自然酸ィ匕膜 36が残存して 、るが、この残存して V、る自然酸ィ匕膜 36の厚み tlはノズル穴 34の壁面 34aの酸ィ匕膜 35 (自然酸化膜又 はノズル基材 31の接液性を向上するために別途形成した耐接液膜としての酸ィ匕膜） の厚み t2よりも薄くなるようにして 、る。

[0085] つまり、前述したように、ノズル基材 31に酸処理、プラズマ処理又は紫外線照射処 理などを施して、表面酸化膜の除去及び水酸基置換を行なった後、ノズル基材 31に シリコーン榭脂を塗布して撥水層を形成した場合でも、時間的な経過によって、ノズ ル基材 31の表面に自然酸ィ匕膜 36が生じることがあるが、この自然酸ィ匕膜 36がノズ ル基材 31の表面を完全に覆ってしまう前に、シリコーン榭脂を塗布して撥水層を形 成することによって、前記の例と同様にノズル基材 31の吐出面側表面とシリコーン榭 脂層である撥水層 32との高い密着強度を得ることができる。

[0086] この場合、ノズル基材 31のノズル穴 34内壁面にはシリコーン榭脂層を形成しない ので、酸ィ匕膜 35が自然酸ィ匕膜であっても更に成長して、ノズル基材 31と撥水層 32 であるシリコーン榭脂層との間に残存した自然酸ィ匕膜 36よりも厚みが厚くなるか、ノ ズル基材 31のシリコーン榭脂層を形成した面の単位面積当りの自然酸ィ匕膜 36よりも ノズル基材 31のノズル内壁面 34aの単位面積当りの酸化膜 35の方が大きくなる。

[0087] このように、ノズル板 3のノズル基材 31と撥水層 32であるシリコーン榭脂層との間の 酸ィ匕膜 36の厚みがノズル穴 34の壁面 34aの酸ィ匕膜 35 (自然酸化膜又はノズル基材 31の接液性を向上するために別途形成した耐接液膜としての酸ィ匕膜)の厚みよりも 薄くなるようにすることで、ノズル基材 31の吐出面側表面とシリコーン榭脂層である撥 水層 32との密着強度が高くなり、大気中でシリコーン榭脂を塗布して撥水層 32を形 成した場合でも、ノズル基材 31の吐出面側表面とシリコーン榭脂層である撥水層 32 との十分な密着強度が得られ、安定した撥水性を維持することができる。言い換えれ ば、シリコーン榭脂を大気中で塗布して撥水層を形成できるので、撥水層の形成を 容易に行なうことができて、ヘッドの製造コストを低減することができる。

[0088] これに対し、図 10 (a)に示すようにノズル基材 31の吐出面側表面にも酸ィ匕膜 35を 形成した後にシリコーン榭脂を塗布して撥水層 32を形成した場合には、同図（b)に 示すように、吐出面をワイパーブレード 40でワイビングしたときに、ノズル穴 34に臨む 撥水層 32の周囲部分 32aが剥離し易くなり、安定した撥水性を維持することができな くなる。

[0089] また、本発明に係る液体吐出ヘッドと上記図 10で説明した液体吐出ヘッドにっ ヽ てインク浸漬に対する撥水層 32の密着性にっ 、て実験を行なったところ、図 11に示 すように、ノズル基材 31の吐出面側表面にも酸ィ匕膜 35が有る場合には、初期では 撥水層 32の剥離は見られな力つた力 インクに浸漬すると剥離が生じたのに対し、本 発明に係る液体吐出ヘッドのようにノズル基材 31の吐出面側表面に酸ィ匕膜 35がな い場合 (酸ィ匕膜がない場合及び自然酸ィ匕膜 36が有る場合)には、初期でもインク〖こ 浸漬した後も撥水層 32の剥離は生じな力つた。これにより、本発明に係る液体吐出 ヘッドでは撥水層 32とノズル基材 31との密着強度が高くなつていることが確認された

[0090] 次に、使用するインクとの関係について説明する。

[0091] ノズル基材 31を Niで形成した場合とインクとの関係について実験を行なった。この 結果、図 11に示すように、ノズル内壁面 34aに耐接液膜としての酸ィ匕膜 35を形成し ない場合には、インク pH = 3 (酸性側）のときには酸化膜 35があれば多少の Niの溶 出が見られ、酸ィ匕膜 35がないと多くの Niの溶出が見られた。これに対し、インク pH = 9 (アルカリ側）のときには酸ィ匕膜 35があれば Niの溶出はなぐ酸ィ匕膜 35がない場 合でも Niの溶出は少しになることが確認された。さらに、インクに Niの溶出防止剤を 添加したところ、酸ィ匕膜 35がない場合でも Niの溶出は見られな力つた。

[0092] このことから、本発明に係る液体吐出ヘッドは、記録液 (インク）として、 pH = 8〜l l の範囲内にあるアルカリ性を示す記録液を用いることで、インク基材の溶出を低減す ることができ、好ましくは、記録液には溶出防止剤が添加されていることで、確実にィ ンク基材の溶出を防止できる。

[0093] つまり、本発明に係る液体吐出ヘッドにあっては、上述したように、ノズル基材とシリ コーン榭脂層の撥水層との間の酸ィ匕膜が存在しないか、相対的に薄い自然酸ィ匕膜 が存在する程度にするので、ノズル内壁面には接液膜としての酸ィ匕膜を形成しな ヽ 方が酸ィ匕膜除去処理を簡単にするために好ましい。し力しながら、ノズル内壁面に接 液膜としての酸ィ匕膜を形成しないことによって、ノズル基材が Niなどの場合、インク組 成によっては、ノズル基材 Niがインク中に溶出しやすくなることから、 pH = 8〜： L 1の 範囲内にあるアルカリ性を示す記録液を用いたり、あるいは、溶出防止剤が添加され た記録液を用いることによってインク基材の溶出を低減することが好ましいのである。

[0094] さらに、本発明に係る液体吐出ヘッドはフッ素系化合物を含む記録液に対して良 好な撥水性を得ることができる。つまり、フッ素系化合物（例えば界面活性剤）を含む 記録液を用いる場合、フッ素系榭脂の撥水層を形成しても、十分な撥水性が得られ ないことが確認された。これに対して、シリコーン榭脂の撥水層を用いることで、フッ素 系化合物を含む記録液に対しても十分は撥水性が得られる。

[0095] この場合、記録液にフッ素系化合物を含有することで動的表面張力を 30mNZm 以下にすることができる。動的表面張力が 30mNZm以下の低い表面張力の記録 液を用いることで用紙に対するインクの浸透速度が早くなり、特に、顔料系インクを用 いた場合の乾燥時間の短縮ィ匕を図れる。

[0096] 次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一例について図 13を参照して説 明する。

[0097] 先ず、図 13 (a)に示すように、 Ni電铸で形成したノズル基材 31の表面には自然酸 化膜又は接液膜としての酸ィ匕膜 35が形成されるので、図 13 (b)に示すように、酸処 理を行なって、表面の酸ィ匕膜 35を除去するとともに、表面に水酸基置換を行なった 後、図 13 (c)に示すように、ノズル基材 31のノズル穴 34を介して吐出面側と反対の 面側から吐出面側に向うようにエアー 51を吹き付けた状態で、ノズル基材 31にディ スペンサ 50によって液状シリコーンレジンを塗布して、シリコーン榭脂皮膜 52を形成 し、シリコーン榭脂皮膜 52を硬化させて図 13 (d)に示すように撥水層 32を形成する

[0098] このように、酸処理を行なって酸ィ匕膜除去を行なうことによって、ノズル基材 31の吐 出面側表面に酸ィ匕膜がない状態で大気中でシリコーン榭脂を塗布して撥水層 32を 形成することができる。この場合、酸処理カゝらシリコーン榭脂の塗布までの間に、大気 に晒されることでノズル基材 31の表面には自然酸ィ匕膜 36が生じることもある力 薄い 自然酸化膜であれば、前述したようにシリコーン榭脂とノズル基材との密着強度が得 られる。

[0099] なお、酸化膜除去処理としては、プラズマ処理、紫外線照射処理などによっても行 なうことができる力 酸処理が最も簡単であり、低コストで行なうことができる。

[0100] 次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えた本発明に係る画像形成装置の一例に ついて 14及び図 15を参照して説明する。なお、図 14は同画像形成装置の全体構 成を説明する側面説明図、図 15は同装置の要部平面説明図である。

[0101] この画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイド口 ッド 101とガイドレール 102とでキャリッジ 103を主走査方向に摺動自在に保持し、主 走査モータ 104で駆動プーリ 106Aと従動プーリ 106B間に架け渡したタイミングべ ルト 105を介して図 14で矢示方向（主走査方向）に移動走査する。

[0102] このキャリッジ 103には、例えば、ブラック（K)、シアン（C)、マゼンタ（M)、イェロー

(Y)の各色の記録液の液滴 (インク滴）を吐出する独立した 4個の本発明に係る液体 吐出ヘッド 107k、 107c, 107m, 107yで構成した記録ヘッド 107を主走査方向に 沿う方向に配置し、液滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、ここでは独立 した液体吐出ヘッドを用いて 、るが、各色の記録液の液滴を吐出する複数のノズル 列を有する 1又は複数のヘッドを用いる構成とすることもできる。また、色の数及び配 列順序はこれに限るものではな！/、。

[0103] 記録ヘッド 107を構成する本発明に係る液体吐出ヘッドとしては、加圧液室内のィ ンクを加圧する圧力発生手段として圧電素子などの電気機械変換素子を用いてイン ク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク 滴を吐出させる 、わゆるピエゾ型のもの、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用い て記録液の膜沸騰を利用するいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成 する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって 振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静 電型のもの、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金ァクチユエータなど を使用できる。

[0104] キャリッジ 103には、記録ヘッド 107に各色のインクを供給するための各色のサブタ ンク 108を搭載している。このサブタンク 108にはインク供給チューブ 109を介して図 示しな 、メインタンク (インクカートリッジ)からインクが補充供給される。

[0105] 一方、給紙カセット 110などの用紙積載部 (圧板） 111上に積載した被記録媒体（ 用紙） 112を給紙するための給紙部として、用紙積載部 111から用紙 112を 1枚ずつ 分離給送する半月コロ (給紙ローラ） 113及び給紙ローラ 113に対向し、摩擦係数の 大きな材質力もなる分離パッド 114を備え、この分離パッド 114は給紙ローラ 113側 に付勢されている。

[0106] そして、この給紙部力も給紙された用紙 112を記録ヘッド 107の下方側で搬送する ための搬送部として、用紙 112を静電吸着して搬送するための搬送ベルト 121と、給 紙部からガイド 115を介して送られる用紙 112を搬送ベルト 121との間で挟んで搬送 するためのカウンタローラ 122と、略鉛直上方に送られる用紙 112を略 90° 方向転 換させて搬送ベルト 121上に倣わせるための搬送ガイド 123と、押さぇ部材 124搬送 ベルト 121側に付勢された先端加圧コロ 125とを備えている。また、搬送ベルト 121 表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ 126を備えている。

[0107] ここで、搬送ベルト 121は、無端状ベルトであり、搬送ローラ 127とテンションローラ 1 28との間に掛け渡されて、副走査モータ 131からタイミングベルト 132及びタイミング ローラ 133を介して搬送ローラ 127が回転されることで、図 14のベルト搬送方向（副 走査方向）に周回するように構成している。なお、搬送ベルト 121の裏面側には記録 ヘッド 107による画像形成領域に対応してガイド部材 129を配置している。

[0108] また、搬送ローラ 127の軸には、スリット円板 134を取り付け、このスリット円板 134の スリットを検知するセンサ 135を設けて、これらのスリット円板 134及びセンサ 135によ つてエンコーダ 136を構成している。

[0109] 帯電ローラ 126は、搬送ベルト 121の表層に接触し、搬送ベルト 121の回動に従動 して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各 2. 5Nをかけている。

[0110] また、キャリッジ 103の前方側には、スリットを形成したエンコーダスケール 142を設 け、キャリッジ 103の前面側にはエンコーダスケール 142のスリットを検出する透過型 フォトセンサからなるエンコーダセンサ 143を設け、これらによって、キャリッジ 103の 主走査方向位置を検知するためのェンコーダ 144を構成して 、る。

[0111] さらに、記録ヘッド 107で記録された用紙 112を排紙するための排紙部として、搬 送ベルト 121から用紙 112を分離するための分離部と、排紙ローラ 152及び排紙コ口 153と、排紙される用紙 112をストックする排紙トレイ 154とを備えている。

[0112] また、背部には両面給紙ユニット 155が着脱自在に装着されている。この両面給紙 ユニット 155は搬送ベルト 121の逆方向回転で戻される用紙 112を取り込んで反転さ せて再度カウンタローラ 122と搬送ベルト 121との間に給紙する。

[0113] さらに、図 14に示すように、キャリッジ 103の走査方向の一方側の非印字領域には 、記録ヘッド 107のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構 156を配 置している。

[0114] この維持回復機 156は、記録ヘッド 107の各ノズル面をキヤビングするための各キ ヤップ 157と、ノズル面をワイビングするためのブレード部材であるワイパーブレード 1 58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出 を行なうときの液滴を受ける空吐出受け 159などを備えている。

[0115] このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙 112が 1枚ずつ分 離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙 112はガイド 115で案内され、搬送ベル ト 121とカウンタローラ 122との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド 123で 案内されて先端加圧コロ 125で搬送ベルト 121に押し付けられ、略 90° 搬送方向を 転換される。

[0116] このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ 126に対してプラス 出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬 送ベルト 121が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向 に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、 マイナス交互に帯電した搬送ベルト 121上に用紙 112が給送されると、用紙 112が 搬送ベルト 121に静電力で吸着され、搬送ベルト 121の周回移動によって用紙 112 が副走査方向に搬送される。

[0117] そこで、キャリッジ 103を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記 録ヘッド 107を駆動することにより、停止している用紙 112にインク滴を吐出して 1行 分を記録し、用紙 112を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用 紙 112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、 用紙 112を排紙トレイ 154に排紙する。

[0118] また、両面印刷の場合には、表面 (最初に印刷する面）の記録が終了したときに、 搬送ベルト 121を逆回転させることで、記録済みの用紙 112を両面給紙ユニット 155 内に送り込み、用紙 112を反転させて (裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタ ローラ 122と搬送ベルト 121との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同 様に搬送ベル 121上に搬送して裏面に記録を行つた後、排紙トレイ 154に排紙する また、印字 (記録)待機中にはキャリッジ 103は維持回復機構 155側に移動されて、 キャップ 157で記録ヘッド 107のノズル面がキヤッビングされて、ノズルを湿潤状態に 保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ 157で記録へッ ド 107をキヤッビングした状態でノズル力も記録液を吸引し（「ノズル吸引」又は「ヘッド 吸引」という。）し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作 によって記録ヘッド 107のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパー ブレード 158でワイビングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係し ないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによつて、記録ヘッド 107の安定した吐 出性能を維持する。

[0119] このように、この画像形成装置は本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、 維持回復機構 155のワイパーブレード 158によってワイビングを行なっても撥水層 32 が剥離することがなぐ長期わたって安定した十分な撥水性を維持することができて、 安定した滴吐出特性が得られるので、高画質画像を安定して形成することができる。

[0120] なお、上記各実施形態では本発明に係る画像形成装置としてプリンタ構成で説明 したが、これに限るものではなぐ例えば、プリンタ Zファックス Zコピア複合機などの 画像形成装置に適用することができる。また、インク以外の液体である記録液を用い る場合にち適用することがでさる。

実施例 2

[0121] 図 16、図 17は、本発明により作成した液体吐出（インクジェット）ヘッドノズル板の断 面図である。本実施形態では、液体吐出ヘッドの基材であるノズル板 202が Niの電 铸により作製され、その表面に膜厚 0. ： m以上のシリコーン榭脂皮膜である撥イン ク膜 201が形成されており、その表面粗さは Ra=0. 2以下にすることが好ましい。ま た、撥インク膜 201の膜厚は 0. 5 m以上であることがより好ましい。

[0122] インク 203の充填時には、図 17 (c)に示すように、シリコーン榭脂皮膜による撥イン ク膜 201とノズル板 202の境界部分にメニスカス (液面） Pが形成される。

[0123] ノズル板 202の開口部は、図 17中に一点鎖線で示す中心線に垂直な平面による 断面が、この中心線を中心とした略円形となるよう開設されている。また、ノズル板 20 2におけるインク吐出面に形成された撥インク膜 201は、この中心線に垂直な平面に よる開口部分の断面積がノズル板 202から離れるにつれて順次大きくなつていくよう 形成されている。

[0124] より詳細には、撥インク膜 201の開口部分は、図 17 (a)に示すように、ノズル板 202 の開口部縁端力も開口部近傍の曲線が曲率半径 rのラウンド形状となっている。この 曲率半径 rは、撥インク膜 201の開口部分近傍以外における厚み d以上であることが 好ましい。

[0125] この厚み dは、撥インク膜 201の開口部分であるラウンド部分以外の部分における 厚みであり、好ましくは撥インク膜の最大厚みであってょ 、。

[0126] このように、ノズル板 202の開口部と連接される撥インク膜 201の開口部分力 略尖 鋭端のな 、形状 (尖形部分のな 、なめらかな曲線)で、弓 Iっ掛力り部分のな 、曲線に なって 、ることにより、ゴムなどの材料で形成されたワイパーでワイビングした場合で あっても、尖形部分力 Sワイパーに引っ掛力つて撥インク膜 201がノズル板 202から剥 離すると ヽつたことのな ヽようすることができる。

[0127] また、図 17 (b)に示すように、ノズル板 202の開口部の中心線を含む平面での断面 における、撥インク膜 201の開口部分縁端を通る接線は、この開口部分縁端に連接 されるノズル板 202の開口部縁端を含むノズル板 202表面力もの角度 Θ力 0度未 満となって!/、ることが好まし!/、。

[0128] このように、撥インク膜 201の開口部分縁端での接線とノズル板表面 202との角度

Θが 90度未満であることにより、図 17 (c)に示すように、撥インク膜 201とノズル板 20

2との境界部分にメニスカス (液面) Pが安定的に形成され、他の部分にメニスカス Pが 形成される可能性を大きく減らすことができる。

[0129] このことにより、メニスカスの形成面を安定させることができるため、本ノズル板 202 を含む液体吐出ヘッドを用いた画像形成装置で画像形成を行う際のインクの噴射安 定性を良好なものとすることができる。

[0130] 本実施形態で用いるシリコーン榭脂としては、室温硬化型の液状シリコーンレジン が望ましぐ特に加水分解反応を伴うものが好ましい。下記の実施例では東レ 'ダウコ 一-ング株式会社製の SR2411を用いた。

[0131] 下記の表 1は、本実施形態での液体吐出ヘッドでの撥インク膜 201における、ノズ ル板 202の開口部縁端から開口部縁端近傍の形状と、ノズル周囲のインク溜まり、ェ ッジ剥離、噴射安定性に関して評価した結果である。

[0132] [表 1]

エッジ形状 インク溜まり エッジ剥離 噴射安定性 尖鋭端あり 一部発生 発生 良好

Θ≤90°C なし なし 良好 尖鋭端 Θ >90°C なし なし 不良

なし

(ラウンド

形状） r≥d なし なし 良好 r<d なし 一部発生 不良

撥インク膜 201のエッジ部（開口部分縁端近傍）に略尖鋭端が含まれる形状の物で は、ノズル周囲にインク溜まりが見られ、ワイビングによるエッジの剥離が発生した。

[0133] ラウンド形状のものでは、何れもインク溜まりは発生しな力つた力 比較例として図 1 8 (a)に例示するような r〈dのもので一部エッジの剥離が発生し、図 18 (b)に例示する ような Θ〉90度のものでは液滴の噴射が不安定な結果であった。

[0134] すなわち、図 18 (c)に示すように、 r〈dのものや、 0 >90度のものでは、インク 203の 充填時に、撥インク膜 201とノズル板 202の境界部分にメニスカス (液面) Pが形成さ れる場合と、撥インク膜 201 'における開口部分中心に向けての凸部（開口部分にお ける中心線に垂直な断面積が最も小さくなる部分）にメニスカス Qが形成される場合と がありうる。このため、こうしたノズル板 202を含む液体吐出ヘッドを用いた画像形成 装置で画像形成を行う際のインクの噴射安定性にばらつきが発生してしまうこととな つた o

[0135] 次に、上述した本実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル部材の製造方法につい て説明する。

[0136] 図 19は、本実施形態に係るディスペンサ 204を用いた塗布により、シリコーン榭脂 を塗布して撥インク膜 201を形成する構成を示す図である。

[0137] Ni電铸によるノズル 202のインク吐出面側にシリコーン溶液を塗布するためのディス ペンサ 204が配置され、ノズル板 202と-一ドル 205先端とが予め定められた一定の 距離間隔を保ったままとなるように、ニードル 205先端力もシリコーンを吐出しながら デイスペンサ 204を走査することにより、上述した図 16、図 17に示したようにノズル板 202のインク吐出面に選択的にシリコーン榭脂皮膜を形成することができた。

[0138] 本実施形態で使用したシリコーン榭脂は、常温硬化型シリコーンレジン SR2411 (東 レ 'ダウコーユング株式会社製)粘度：10mP_a'_sを用いた。ただし、ノズル孔及びノズ ル板裏面に若干のシリコーンの周り込みが見られた。このようにして選択的に形成し たシリコーン榭脂皮膜の厚さは 1. であり、表面粗さ（Ra)は 0. 18 /z mであった

[0139] 本実施形態に係る-一ドル 205先端の塗布口は、図 20 (a)に示すように、塗布対 象であるノズル板 202への塗布幅だけの幅が確保されている。このことにより、デイス ペンサ 204を塗布方向に 1回走査するだけで、塗布対象全体への塗布を完了させる ことができる。

[0140] すなわち、塗布動作のための走査方向を 1方向のみとすることができ、図 20 (b)の ように方向を変えたり、反対方向に走査したりといった必要を無くすることができる。

[0141] ここで一般の-一ドル 205の先端は、図 20 (b)に示すように、塗布対象であるノズ ル板 202への塗布幅よりはるかに狭いため、塗布対象全体への塗布を完了させるた めには、塗布動作のための走査方向を 90度変えて移動させたり、反対方向に走査し たりして複数方向に走査する必要があり、塗布対象全体への均一な厚みでの塗布が 困難であった。

[0142] 本実施形態によれば、ニードル 205先端の塗布口の幅が塗布対象であるノズル板 202への塗布幅だけ確保されることにより、塗布対象全体に渡って塗布する厚みを 均一とすることができ、精度のよい表面仕上がりとすることができる。

[0143] 図 21は、本実施形態に係るディスペンサ 204を用いた塗布動作を示す図である。

基本構成は上述した図 19と同様である力 ノズル板 202のノズル孔（開口部）から気 体 206を噴射しながらシリコーンを塗布する。この気体 206としては、塗布するシリコ ーンと化学反応を起こしにくい気体であれば各種のものを用いてよぐ例えば空気で あってもよい。 [0144] このように気体 206をノズル孔から噴射しながら塗布を行うことにより、ノズル板 202 のノズル孔を除くノズル表面だけにシリコーン榭脂皮膜を形成することができる。

[0145] また、上述のように気体 206を噴射しないで同様のシリコーン榭脂を用いて塗布し、 予め定められた深さまでシリコーン榭脂が進入した後、ノズル 202から気体 206を噴 射させると、図 22に示すように、ノズル内壁の所望の深さ（たとえば数/ z m程度)まで シリコーン榭脂の撥インク層を形成することができる。

[0146] すなわち、上述したインク吐出面の撥インク膜 201に加えて、ノズル板 202の開口 部縁端から予め定められた深さまでごく薄い撥インク膜 201a (開口部内壁の撥インク 膜)を形成することができる。

[0147] このようにして作製したノズル板の撥インク膜 201に対して、 EPDMゴム (ゴム硬度 5 0度）を用いてワイビングを実施した。その結果、 1000回のワイビングに対してもノズ ル板の撥インク膜 201は、良好な撥インク性を維持することができた。また撥インク膜 が形成されたノズル部材を、 70°Cのインクに 14日間浸漬処理した。その結果、その 後も初期と変わらない撥インク性を維持することができた。

[0148] 本実施形態によるシリコーン榭脂の撥インク膜 201を形成したノズル板 (S1)と、従 来品の Ni/PTFEの共析めっきを施し 350°C · 60minの加熱処理をしたノズル板（C1)と を用いて、各インクに対する撥インク性との比較を表 2に示す。撥インク性を調べるた めのインクの条件は、表面張力： 20mN/mと、 35mN/mであり、フッ素系界面活性剤を 含有するものと、含有しないものとした。用いたフッ素系界面活性剤は、商品名： FS-3 00 (デュポン社製)であった。本発明では、使用するフッ素系界面活性剤の表面張力 が低いことが好ましいが、たとえば、 70mN/mであることが好ましぐより好ましくは 50 mN/mであり、さらに好ましくは、 15〜50mN/mであり、特に好ましくは、 15〜40mN/ mである。このようにすると、紙などの記録媒体に対してインクの濡れ性が向上し、高 画質の印刷物を得ることができる。

[0149] [表 2] インクの表面張力 20 35

(mN/m)

フッ素系界面 有り 無し 有り 無し 活性剤の有無

S1

(シリコーン樹脂） 〇 〇 〇 O

C1 X X X 〇

(フッ素樹脂）

表 2に示すように、従来のノズル C1では、表面張力が 20mN/mで、かつ、フッ素系 界面活性剤を含有するインクに対して、撥インク性が得られな力つた。これに対し、本 実施形態により作製したノズル板 S1では、上記したインク全てを用いて試験したところ 、これらのインクの全てに対して良好な撥インク性を得ることができた。

[0150] 本実施形態に係る撥インク膜 201を構成する撥水性材料としては、フッ素原子を有 する有機化合物、特にフルォロアルキル基を有する有機物、ジメチルシリキサン骨格 を有する有機ケィ素化合物等が使用できる。

[0151] フッ素原子を有する有機化合物としては、フルォロアルキルシラン、フルォロアルキ ル基を有するアルカン、カンボン酸、アルコール、ァミン等が望ましい。具体的には、 フルォロアルキルシランとしては、ヘプタデカフルオロー 1、 1、 2、 2—テトラハイド口 デシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルォ口一 1、 1、 2、 2—テトラハイド口トリクロォ シラン；フルォロアルキル基を有するアルカンとしては、ォクタフルォロシクロブタン、 ノ ーフノレオロメチノレシクロへキサン、ノ ーフノレオロー n—へキサン、ノ ーフノレオロー n 一ヘプタン、テトラデカフルオロー 2—メチルペンタン、パーフルォロドデカン、パーフ ルォロオイコサン；フルォロォアルキル基を有するカルボン酸としては、パーフルォロ デカン酸、パーフルォロオクタン酸；フルォロアルキル基を有するアルコールとしては 、 3、 3、 4、 4、 5、 5、 5—へプタフルオロー 2—ペンタノール；フルォロアルキル基を有 するァミンとしては、ヘプタデカフルオロー 1、 1、 2、 2—テトラハイド口デシルァミン等 が挙げられる。ジメチルシロキサン骨格を有する有機ケィ素化合物としては、 a , w— ビス（3—ァミノプロピル）ポリジメチルシロキサン、 a , w—ビス（3—グリシドキシプロピ ル）ポリジメチルシロキサン、 a , w—ビス（ビュル）ポリジメチルシロキサン等が挙げら れる。

[0152] また、別の撥水性材料として、シリコン原子を有する有機化合物、特にアルキルシロ キサン基を有する有機化合物が使用できる。

[0153] アルキルシロキサン基を有する有機化合物としては、含アルキルシロキサンェポキ シ榭脂組成物を構成する分子中にアルキルシロキサン基、及び環状脂肪族エポキシ 基を 2個以上有する含アルキルシロキサンエポキシ榭脂としては、例えば、一般式 (a )及び (b)で表される構造単位を含む高分子化合物 (A)が挙げられる。

[0154] [化 1]

(a) (b)

上記式中、 x= 1〜50、y=2〜100、 n =2〜100の整数 R!及び R₂：独立して、—H又は一 CH ₃

R₃及び R₄ :独立して、 CH₃又は一^〉

R₅ : -CH₂―、 -CH₂ CH₂―、 - CH₂ CH -

CH,

上記一般式 (a)及び (b)のような構造を有する高分子化合物 (A)は、他の撥水性 化合物と併用する際にバインダーとしての機能も果たす。つまり、撥インク性の組成 物の塗布適性を高め、溶剤蒸発後の乾燥性を高める乾燥塗膜としての作業性を向 上させる機會ち与免ることがでさる。

[0155] このように、本実施形態ではデイスペンサ 204を用いて塗布により撥インク膜 201を 形成するため、撥インク膜 201の材料として、空気中、常温で硬化してしまうもの、す なわち空気中に常温では長時間放置できな 、材料であっても使用することができる。

[0156] また、上述のように、撥インク膜 201の材料はフッ素榭脂であってもシリコーン榭脂 であってもよい。

[0157] 以上のように、本実施形態の液体吐出ヘッドは、ノズル板 202のインク吐出面側に 撥インク膜 201が形成され、その撥インク膜 201の開口部分、すなわちノズル板 202 の開口部縁端カゝら開口部縁端近傍が、ラウンド形状となるよう形成されている。

[0158] このため、ワイビングなどの外力に対してノズルエッジ部（撥インク膜 201の開口部 分)が保護される形状となっており、耐久性の強い液体吐出ヘッドとすることができる

[0159] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドは、ノズル板 202表面に形成される撥イン ク膜 201のラウンド部の曲率半径 rが、撥インク膜 201の開口部分以外の厚さ d以下 であるため、撥インク膜 201の開口部分縁端近傍での剥離が生じにくぐまた、噴射 安定性の良い液体吐出ヘッドとすることができる。

[0160] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドは、ノズルエッジ部を通るラウンド部の接線 の傾き Θ力 0度以下であるため、吐出したインク滴が撥インク膜 1に触れず噴射安 定性の良 、液体吐出ヘッドとすることができる。

[0161] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドは表面に形成する撥インク膜 201の厚さ d が 10 m以下であるため、非常に密着性の良い耐久性のあるノズルとすることができ る。

[0162] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル板に形成される撥インク膜 201が ふつ素榭脂であってもよいため、ワイビング時のインク拭き残りが生じにくぐ安定した 噴射特性を得ることができる。

[0163] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル板に形成される撥インク膜 201が シリコーン榭脂であってもよいため、インクの移動性が良ぐノズル周囲に付着したィ ンクが容易にノズル孔に引き寄せられ、常にノズル孔周囲を綺麗に保つことができ、 安定した噴射特性を得ることができる。

[0164] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル板基材が金属であってもよいため 、非常に剛性のょ 、安定した液体吐出ヘッドとすることができる。 [0165] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル板基材が榭脂であってもよ!/、ため 、表面の撥インク膜 201との密着性が非常によぐ耐久性に優れた液体吐出ヘッドと することができる。

[0166] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法では大気中で撥インク膜 201 の形成を行うことができるため、安価な設備で容易に撥インク膜 201の形成ができる

[0167] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法では、デイスペンサにより撥ィ ンク膜の材料を塗布するため、必要な場所に必要な量の榭脂を塗布することができ、 形成する撥インク膜の膜厚 dを自在かつ精密に調整することができると共に、非常に 安価に撥インク膜 201を形成することができる。

[0168] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法ではノズル基材のノズル孔を 介してノズル基材の裏面側力 表面側に向けて気体を噴射させながら表面にデイス ペンサで榭脂を塗布するため、撥インク膜 201によるノズル孔の埋まりを防止すること ができ、非常に安価に歩留り良く撥インク膜 201を形成することができる。

[0169] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法ではノズル基材表面にデイス ペンサで榭脂を塗布した後にノズル孔を介してノズル基材の裏面側カゝら表面側に向 けて気体を噴射するため、任意の深さまでノズル孔内壁に榭脂膜を塗布することが でき、非常に安価に歩留り良く撥インク膜 201を形成することができる。

[0170] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル部材を備えた液体吐出ヘッドによ れば、ヘッドクリーニングなどでのワイビングによっても撥インク膜の剥離が生じにくい 上に、噴射安定性にも優れるため、高画質かつ高耐久性の液体吐出ヘッドを提供す ることがでさる。

[0171] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドを備えたカートリッジによれば、ヘッドタリー ユングなどでのワイビングによってもヘッド部分の撥インク膜の剥離が生じにくい上に 、噴射安定性にも優れるため、高画質かつ高耐久性の液体吐出ヘッドを備えたもの とすることができる。

[0172] なお、このカートリッジは、液体吐出ヘッドにインク供給手段や、液体吐出記録装置 本体への取付手段を備えて交換用などに用いられるものであってよい。 [0173] また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドを備えた液体吐出記録装置は、上述した 本実施形態としての液体吐出ヘッドを搭載しているため、安価で耐久性に優れ、安 定した噴射性能を持った液体吐出記録装置とすることができる。

[0174] また、本実施形態に係る液体吐出記録装置は、表面張力の低いインクが使用でき るため、被着体 (例えば紙)へのインクの定着性が向上できる。

[0175] また、本実施形態に係る液体吐出記録装置は、使用するインクにフッ素系界面活 性剤を含有するものを使用できるため、発色性の良!ヽ画像形成が可能となる。

[0176] また、本実施形態に係る液体吐出記録装置は、顔料インクであってもよ!/、ため、普 通紙でも耐侯性、耐水性に優れた高画質の画像形成が可能となる。

[0177] ここで、従来では、液体吐出ヘッドのノズル板撥インク層としてはフッ素榭脂を用い る方法が知られていた。例えば、金属製ノズルプレート表面に Ni/PTFEの共析めっき を施し加熱処理することによりノズル板表面に PTFEの薄膜を形成する方法や、フッ 素系撥水剤を金属もしくは榭脂製のノズル板表面にコーティングする方法などがそ れである。これらフッ素榭脂を撥インク層としたノズル板の場合、従来公知の表面張 力 30mN/m程度以上の染料インク、顔料インクでは良好な撥インク性を持たせること が可能であった。しかし、 15〜30mN/mの表面張力の低いインクや、フッ素系界面活 性剤を添加したインクでは、十分な撥インク性を持たせる事が困難であった。

[0178] また、従来、液体吐出ヘッドのノズル板表面にシリコーン榭脂皮膜を形成することに より、インク移動性の良い撥インク層を形成する方法が示されていた。その方法として は液状のシリコーン榭脂材料を真空蒸着する方法や、シリコーンオイルをプラズマ重 合することにより形成する方法である。これらの方法では、成膜時に真空処理をする 必要があり、設備が大掛力りでコストが高くなる。また、真空蒸着やプラズマ重合等の 方法によりシリコーン榭脂皮膜を形成する場合、成膜時間が長く形成される皮膜が非 常に薄いため、ピンホール等の欠陥を生じやすいという問題がある。また、真空蒸着 やプラズマ重合等の方法では皮膜を厚くすることが困難であり、ワイピンクやインクに 対する十分な耐久性を確保することが難しかった。

[0179] また、従来、ノズル孔から気体を噴射させた状態で、ノズル板を撥インク剤を溶解し た溶液に浸漬してノズル板表面に撥インク層を形成する方法が示されて ヽるが、気 体を噴射させたまま溶液に浸漬するため、溶液中に気泡が発生してしまう。溶液が常 温で硬化するタイプの場合、大気中に溶液を放置しなければならず、液の状態を維 持しつづける事が困難となり、溶液の粘度変化により撥インク層の膜厚制御が不能に なってしまう。

[0180] こうした従来技術に対し、本実施形態の液体吐出ヘッドのノズル板撥インク層は、ノ ズル板表面に効率よく撥インク性を有する表面張力の低いシリコーン榭脂皮膜を均 一かつ平滑に形成しているため、 15〜30mN/mの表面張力の低いインクや、フッ素 系界面活性剤を添加したインクでも十分な撥インク性を持たせる事ができ、その皮膜 は持続性、耐久性に優れた撥インク性を保っため、長期にわたり印字品質の良い液 体吐出ヘッドを提供することができる。

[0181] また、本実施形態による液体吐出ヘッドのノズル板撥インク処理方法では液状シリ コーンをデイスペンサで予めノズル孔が形成されたノズル板の必要な場所に塗布す る手法により、ノズル板表面に均一かつ平滑なシリコーン榭脂皮膜を形成することを 特徴とする。シリコーン榭脂皮膜の厚さを 0. l /z m以上、よりこのましくは 0. 5 m以 上とすることにより、ワイビングに対する耐久性およびインク耐性を向上することができ る。

[0182] また、シリコーン榭脂の表面粗さを Ra=0. 2 μ m以下にすることで、ワイビング時の インクの拭き残しを低減することができる。平滑な表面を形成するため、材料となる液 状シリコーンの粘度は lOOOcp以下であることが望ましい。

[0183] また、本実施形態による液体吐出ヘッドのノズル板撥インク処理方法にお!、て、ノ ズル孔力 気体を噴射しながら上述のようにデイスペンサでのシリコーンコート（塗布） を行い、シリコーン榭脂を硬化させることでノズル板の表面のみに、シリコーン榭脂の 撥インク層を形成することができる。ノズル板表面にシリコーン榭脂をコーティングし てから、ノズル孔から気体を噴射させる事により、ノズル孔内壁の所望の深さまで撥ィ ンク層を形成する事も出来る。

[0184] また、本実施形態による液体吐出ヘッドのノズル板撥インク処理に用いる材料であ るシリコーン榭脂が、室温硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一であるこ とを特徴とする。これにより、コーティング後に室温の大気中に数分〜 1時間程放置 するだけで、耐久性のあるシリコーン榭脂皮膜を形成することができる。

[0185] また、本実施形態による液体吐出ヘッドのノズル板撥インク処理に用いる材料であ るシリコーン榭脂が、加熱硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一であるこ とを特徴とする。これにより、コーティング後に数十 °C〜百数十 °Cで数分〜数十分力口 熱処理することにより、耐久性のあるシリコーン榭脂皮膜を形成することができる。

[0186] また、本実施形態による液体吐出ヘッドのノズル板撥インク処理に用いる材料であ るシリコーン榭脂が、紫外線硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一であ ることを特徴とする。これにより、コーティング後に 500〜： LOOOmJ/cm²の紫外線を照 射することにより、耐久性のあるシリコーン榭脂皮膜を形成することができる。

[0187] このように、本実施形態での液体吐出ヘッドのノズル部材は、インク吐出面側にシリ コーン榭脂から形成された撥インク性層が形成されている液体吐出ヘッドのノズル部 材において、上記撥インク性層の厚さが 0. 1 m以上、より好ましくは 0. 5 m以上 であることを特徴とする。

[0188] こうしてインクの吐出面側に、均一かつ平滑にシリコーン榭脂を用いて層を 0. 1 m 以上形成している為、ワイビングに対する耐久性や、撥インク性に優れた液体吐出ノ ズルとすることができる。特に、シリコーン榭脂の持つ耐薬品性により耐インク性も向 上することができる。

[0189] また、上記撥インク性層の表面粗さ Ra力 0. 2 μ m以下であることを特徴とする。

[0190] このように表面粗さを Ra= 0. 2 m以下としているため表面性が良ぐワイビングな どの払拭によるインク残りが少ない。

[0191] また、上記シリコーン榭脂は、予めノズル孔が形成されたノズル板表面上にデイス ペンサを用いて塗布されることを特徴とする。

[0192] このように、液状のシリコーン榭脂をデイスペンサにより予めノズル孔が形成されたノ ズル板表面に塗布する為、ピンホールなどの欠陥の無 ヽ撥インク性皮膜をノズル板 の表面に選択的に効率良く形成することができる。

[0193] また、上記シリコーン榭脂の粘度が lOOOcp (センチボイズ)以下であることを特徴と する。

[0194] このように、液状シリコーンの粘度を lOOOcp以下としているため、表面性の良い撥 インク層を形成することができる。

[0195] また、上記ディスペンサを用いた塗布にぉ 、て、ノズル孔カも気体を噴射させなが らシリコーン榭脂をコーティングすることを特徴とする。

[0196] このように、ノズル孔カも気体を噴射させているため、液状シリコーンのコーティング 時に、ノズル内壁へのシリコーンの入り込みや裏面への周り込みを完全に防ぐことが できる。

[0197] また、上記ディスペンサを用いた塗布にぉ 、て、ノズル板表面にシリコーン榭脂をコ 一ティングし、ノズル孔の所望の深さまでシリコーンが浸透してから、ノズル孔から気 体を噴射することを特徴とする。

[0198] このように、液状シリコーンのコーティング後に、ノズル孔カも気体を噴射させている ため、ノズル内壁の所望の深さまでシリコーン榭脂がコーティングできる。

[0199] また、上記シリコーン榭脂は室温硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ 一であり、ノズル板表面に塗布され、室温で大気中に放置することにより重合硬化し て撥インク性の皮膜が形成されることを特徴とする。

[0200] このように、シリコーン材料として室温硬化型のシリコーンレジンもしくはシリコーンェ ラストマーを用 V、るため、ノズル表面へのコーティング後は常温の大気中に放置して おくだけで硬化し、耐久性に優れた撥インク性の良い皮膜を形成することができる。

[0201] また、上記シリコーン榭脂は加熱硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ 一であり、ノズル板表面に塗布され、加熱処理することにより硬化し撥インク性の皮膜 を形成することを特徴とする。

[0202] このように、シリコーン材料として加熱硬化型のシリコーンレジンもしくはシリコーンェ ラストマーを用いるため、ノズル表面へのコーティング後に熱処理を実施することによ り短時間で硬化し、耐久性に優れた撥インク性の良 、皮膜を形成することができる。

[0203] また、上記シリコーン榭脂は紫外線硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラスト マーであり、ノズル板表面に塗布され、紫外線を照射することにより硬化し撥インク性 の皮膜を形成することを特徴とする。

[0204] このように、シリコーン材料として紫外線硬化型のシリコーンレジンもしくはシリコーン エラストマ一を用いるため、ノズル表面へのコーティング後に紫外線を照射することに より短時間で硬化し、耐久性に優れた撥インク性の良い皮膜を形成することができる

[0205] また、本実施形態に係る液体吐出記録装置は、上述したノズル部材を使用して！/、 ることを特徴とする。

[0206] このように、本実施形態に係るノズル板を使用しているため、インク吐出時にインク 滴の直進性が良く吐出曲りを少なくすることができる。

[0207] また、上記した本発明に係る液体吐出記録装置にぉ 、て、使用するインクの表面 張力が 70mN/m以下の液体であることを特徴とする液体吐出記録装置である。

[0208] このように、表面張力の低いインクが使用できるため、被着体 (例えば紙)へのインク の定着性が向上できる。

[0209] また、上記インクはフッ素系界面活性剤を含むことを特徴とする。

[0210] このように、使用するインクにフッ素系界面活性剤を含有するため、発色性の良い 画像形成が可能となる。

[0211] また、上記のインクが顔料を含むことを特徴とする。

[0212] このように、顔料インクであるため普通紙でも耐侯性、耐水性に優れた高画質の画 像形成が可能となる。

[0213] なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定 されることなく、本発明の技術的思想に基づ 、て種々変形して実施することが可能で ある。

[0214] 例えば、ノズル板 202は、 Ni電铸によるものとして説明した力 撥インク膜の材料を 塗布できるものであれば、例えば SUS (Super Use Stainless)など各種の金属であつ てもよく、各種の榭脂であってもよい。

[0215] また、液体吐出ヘッドの基材表面に撥インク膜を形成するに当たって、まず基材 (ノ ズル板 2)表面の酸ィ匕膜を取り除いて力 撥インク膜の材料を塗布してもよぐ中間層 を形成して力も撥インク膜の材料を塗布してもよ!/、。

[0216] この中間層（プライマー）としては、例えば、東レ 'ダウコーユング株式会社製の「プ ライマー D」などを用いることができ、密着性も良好であることが確認されて！、る。

[0217] また、 Niストライクメツキなどにより基材表面の下地を荒くした後に撥インク膜の材料 を塗布してもよい。

[0218] 以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されるわけでは なぐ本発明の要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

産業上の利用可能性

[0219] 液体吐出ヘッド及びその製造方法、画像形成装置、特に表面に撥水層を有する液 体吐出ヘッド及びその製造方法、液体吐出ヘッドを備えた画像形成装置と、液体吐 出ヘッドのノズル部材、撥インク膜形成方法、液体吐出ヘッド、カートリッジ、及び液 体吐出記録装置に適用される。

Claims

請求の範囲

[1] 記録液の液滴を吐出するノズル穴を形成したノズル基材の液滴吐出側表面に撥水 層を形成したノズル形成部材を備える液体吐出ヘッドにぉ 、て、前記撥水層がシリコ ーン榭脂からなり、前記ノズル基材の液滴吐出側表面と前記撥水層との間には酸ィ匕 膜がなぐ前記ノズル基材のノズル穴内壁面には酸ィ匕膜があることを特徴とする液体 吐出ヘッド。

[2] 記録液の液滴を吐出するノズル穴を形成したノズル基材の液滴吐出側表面に撥水 層を形成したノズル形成部材を備える液体吐出ヘッドにぉ 、て、前記撥水層がシリコ ーン榭脂からなり、前記ノズル基材の液滴吐出側表面と前記撥水層との間の酸化膜 の厚みが前記ノズル基材のノズル穴内壁面の酸ィ匕膜の厚みよりも薄いことを特徴と する液体吐出ヘッド。

[3] 請求項 1又は 2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ノズル基材が Niで形成さ れて 、ることを特徴とする液体吐出ヘッド。

[4] 請求項 1乃至 3の 、ずれかに記載の液体吐出ヘッドにぉ 、て、前記記録液はフッ 素系化合物を含む記録液であることを特徴とする液体吐出ヘッド。

[5] 請求項 1乃至 4の 、ずれかに記載の液体吐出ヘッドにぉ 、て、前記記録液は動的 表面張力が 30mNZm以下で、 pH = 8〜： L 1の範囲内にある記録液であることを特 徴とする液体吐出ヘッド。

[6] 請求項 1乃至 5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記記録液には溶 出防止剤が添加されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。

[7] 請求項 1乃至 6の 、ずれかに記載の液体吐出ヘッドを製造する製造方法であって

、前記基材に大気中でシリコーン榭脂の撥水層を形成することを特徴とする液体吐 出ヘッドの製造方法。

[8] 請求項 7に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、前記ノズル基材のノズル 穴を介して前記液滴吐出側表面と反対の面側から前記液滴吐出側表面側に向うよう にエアーを吹き付けた状態で、前記ノズル基材にデイスペンサでシリコーン榭脂を塗 布して撥水層を形成することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。

[9] 請求項 7又は 8に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、前記ノズル基材に 酸処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理による表面酸化膜の除去及び水酸基置 換を行なった後、前記ノズル基材にシリコーン榭脂の撥水層を形成することを特徴と する液体吐出ヘッドの製造方法。

[10] 請求項 1乃至 6の 、ずれかに記載の液体吐出ヘッドを製造する製造方法であって

、前記ノズル基材に酸処理、プラズマ処理又は紫外線照射処理による表面酸ィヒ膜の 除去及び水酸基置換を行なった後、前記ノズル基材にシリコーン榭脂の撥水層を形 成することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。

[11] 請求項 7乃至 10のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、常温 硬化型の液状シリコーンレジンを塗布して前記撥水層を形成することを特徴とする液 体吐出ヘッドの製造方法。

[12] 記録液の液滴を吐出する液体吐出ヘッドを備えた画像形成装置において、請求項

1乃至 6の 、ずれか〖こ記載の液体吐出ヘッドを備えて ヽることを特徴とする画像形成 装置。

[13] 液体吐出用の開口部が開設された液体吐出ヘッドの基材表面に撥インク膜が形成 されてなる液体吐出ヘッドのノズル部材であって、

該撥インク膜の該開口部近傍における当該開口部の中心線に垂直な平面での断 面積が、前記基材表面力 離れるにつれて順次大きくなつていくよう形成されたこと を特徴とする液体吐出ヘッドのノズル部材。

[14] 前記撥インク膜の前記開口部近傍における形状は、曲面形状であることを特徴とす る請求項 13記載の液体吐出ヘッドのノズル部材。

[15] 前記開口部の中心線を含む平面での断面における前記撥インク膜の当該開口部 近傍の曲線の曲率半径が、該撥インク膜の厚み以上であることを特徴とする請求項 1

3または 14記載の液体吐出ヘッドのノズル部材。

[16] 前記開口部の中心線を含む平面での断面における前記撥インク膜の当該開口部 縁端から当該開口部近傍の曲線が略円弧曲線をなし、該円弧の曲率半径が、該撥 インク膜の厚み以上であることを特徴とする請求項 13または 14記載の液体吐出へッ ドのノズル部材。

[17] 前記開口部の中心線を含む平面での断面における前記撥インク膜の当該開口部 縁端を通る接線が、当該端部を含むノズル部材表面からの角度が 90度未満であるこ とを特徴とする請求項 13乃至 16いずれか 1項に記載の液体吐出ヘッドのノズル部材

[18] 前記液体吐出ヘッドの基材が金属または榭脂からなることを特徴とする請求項 13 力 17の何れ力 1項に記載の液体吐出ヘッドのノズル部材。

[19] 液体吐出ヘッドの液体吐出面の前記撥インク膜に加えて、前記開口部内壁に予め 定められた深さまで開口部内壁の撥インク膜が形成されたことを特徴とする請求項 1

3から 18の何れ力 1項に記載の液体吐出ヘッドのノズル部材。

[20] 液体吐出ヘッドの液体吐出面の前記撥インク膜は、開口部近傍以外における厚み が 0. 1 μ m以上であることを特徴とする請求項 13から 19の何れ力 1項に記載の液体 吐出ヘッドのノズル部材。

[21] 前記撥インク膜の表面粗さ力 0. 2 m以下であることを特徴とする請求項 13から

20の何れ力 1項に記載の液体吐出ヘッドのノズル部材。

[22] 液体吐出用の開口部が開設された液体吐出ヘッドの基材表面に撥インク膜を形成 する方法であって、

該液体吐出ヘッドの基材における液体吐出面の反対側から気体を噴射しながら、 前記撥インク膜の材料を塗布手段により塗布することを特徴とする撥インク膜形成方 法。

[23] 液体吐出用の開口部が開設された液体吐出ヘッドの基材表面に撥インク膜を形成 する方法であって、

該液体吐出ヘッドの基材の液体吐出面に前記撥インク膜の材料を塗布手段により 塗布し、前記開口部の予め定められた深さまで当該材料が進入した時点で該液体 吐出ヘッドの基材における前記液体吐出面の反対側から気体を噴射することを特徴 とする撥インク膜形成方法。

[24] 前記塗布手段の塗布可能幅が前記液体吐出ヘッドの基材表面における塗布対象 幅と略同一であり、前記塗布手段を一方向へ 1回平行移動させるのみで塗布が完了 することを特徴とする請求項 22又は 23記載の撥インク膜形成方法。

[25] 前記塗布手段はデイスペンサであり、該デイスペンサと前記液体吐出ヘッドの基材 との間隔をあらかじめ一定距離に保ったまま移動させることで塗布を行うことを特徴と する請求項 22乃至 24何れか 1項に記載の撥インク膜形成方法。

[26] 前記撥インク膜の材料は、シリコーン榭脂またはフッ素榭脂であることを特徴とする 請求項 22から 25の何れか 1項に記載の撥インク膜形成方法。

[27] 前記シリコーン榭脂は室温硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一であ り、前記基材表面に塗布され、室温で大気中に放置することにより重合硬化して撥ィ ンク性の皮膜が形成されることを特徴とする請求項 26記載の撥インク膜形成方法。

[28] 前記シリコーン榭脂は加熱硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一であ り、前記基材表面に塗布され、加熱処理することにより硬化し撥インク性の皮膜を形 成することを特徴とする請求項 26記載の撥インク膜形成方法。

[29] 前記シリコーン榭脂は紫外線硬化型の液状シリコーンレジンもしくはエラストマ一で あり、前記基材表面に塗布され、紫外線を照射することにより硬化し撥インク性の皮 膜を形成することを特徴とする請求項 26記載の撥インク膜形成方法。

[30] 前記シリコーン榭脂の粘度が lOOOcp (センチボイズ)以下であることを特徴とする請 求項 26乃至 29何れか 1項に記載の撥インク膜形成方法。

[31] 請求項 22から 30の何れか 1項に記載の撥インク膜形成方法により撥インク膜が形 成されたことを特徴とする液体吐出ヘッドのノズル部材。

[32] 請求項 13から 21の何れか 1項または 31に記載の液体吐出ヘッドのノズル部材を 備えて構成されたことを特徴とする液体吐出ヘッド。

[33] 請求項 32記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とするカートリッジ。

[34] 請求項 32記載の液体吐出ヘッドを備え、該液体吐出ヘッドを用いて画像形成を行 うよう構成されたことを特徴とする液体吐出記録装置。

[35] 請求項 34に記載の液体吐出記録装置において、使用するインクの表面張力が 70 mN/m以下の液体であることを特徴とする液体吐出記録装置。

[36] 前記インクはフッ素系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項 35記載の液体吐 出記録装置。

[37] 前記インクが顔料を含むことを特徴とする請求項 35又は 36記載の液体吐出記録 装置。