JP2017035812A - ノズル板及びその製造方法、並びに液体吐出ヘッド及び画像形成装置 - Google Patents

ノズル板及びその製造方法、並びに液体吐出ヘッド及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ワイピング耐久性が優れ、良好な吐出安定性を得ることが可能な撥水膜を有するノズル板の提供。【解決手段】一方の面に複数の剥離防止孔が配されたノズル基板と、前記ノズル基板の一方の面上に配された撥水膜と、を有し、前記撥水膜の一部が、前記剥離防止孔に収容され、前記複数の剥離防止孔の少なくともいずれかが、前記ノズル基板における一方の面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さのほうが大きい開口狭小孔である。【選択図】図3D

Description

本発明は、ノズル板及びその製造方法、並びに前記ノズル板を備える液体吐出ヘッド、及び前記液体吐出ヘッドを備える画像形成装置に関する。
従来より、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、又はこれらの複合機等の画像形成装置として、例えば、液体吐出ヘッドを有する液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。
前記液体吐出ヘッドは、ノズル板に穿設された複数のノズル孔からインクを液滴として吐出するため、前記ノズル板のインク液滴が吐出される液体吐出面の表面特性がインク液滴の吐出安定性に大きな影響を与える。そこで、前記ノズル板の前記液体吐出面に撥水膜を配し、前記ノズル孔の周縁近傍へのインクの付着を防止することにより、インク液滴の吐出安定性を向上させることが行われている。
更に、機械的に吐出安定度を向上させるため、前記液体吐出記録方式の画像形成装置は、前記ノズル板の前記液体吐出面に付着したインクをブレードでワイピングして除去するクリーニング手段を備えている。
近年では、高速印刷の要求に応じるため、記録用メディアへの浸透性を高めた表面張力の低いインクが開発され、従来から前記撥水膜の材料として用いられていたテフロン(登録商標)(PTFE)では、撥水性が十分ではなくなった。
このため、前記撥水膜の材料として、より撥水性の高いパーフルオロポリエーテル(PFPE)を用いることが提案されている(特許文献1参照)。
しかし、前記PFPEは常温で固体ではなく、その塗膜は非常に薄いため、ワイピング動作により撥水性がすぐに低下してしまい、ワイピング耐久性に問題がある。
そこで、常温で固体である、エーテル結合を含むヘテロ環状構造を有するフッ素ポリマーを含有した撥水膜を有するインクジェット記録ヘッドが提案されている(特許文献2参照)。前記撥水膜を前記ノズル基板上に配したところ、表面張力の低いインクに対しても高い撥水性を示すが、前記フッ素ポリマーと金属との密着性が低いので、ワイピング動作により前記ノズル基板から前記撥水膜が剥離しやすいという問題がある。
本発明は、ワイピング耐久性が優れ、良好な吐出安定性を得ることが可能な撥水膜を有するノズル板を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明のノズル板は、一方の面に複数の剥離防止孔が配されたノズル基板と、
前記ノズル基板の一方の面上に配された撥水膜と、を有し、
前記撥水膜の一部が、前記剥離防止孔に収容され、
前記複数の剥離防止孔の少なくともいずれかが、前記ノズル基板における一方の面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さの方が大きい開口狭小孔である。
本発明によれば、ワイピング耐久性が優れ、良好な吐出安定性を得ることが可能な撥水膜を有するノズル板を提供することができる。
図1は、本発明のノズル板の一例を示す概略平面図である。 図2は、図1に示すノズル板のノズル孔近傍の断面の一例を示す拡大断面図である。 図3Aは、本発明のノズル基板のノズル孔を設ける前の状態の一例を示す概略断面図である。 図3Bは、図3Aに示すノズル基板にノズル孔を設けた状態の一例を示す概略断面図である。 図3Cは、図3Bに示すノズル基板の液体吐出面に剥離防止孔が形成された状態の一例を示す概略断面図である。 図3Dは、図3Cに示すノズル基板の液体吐出面に撥水膜が形成された状態の一例を示す概略断面図である。 図4は、ノズル孔を設ける際に用いるパンチの一例を示す拡大断面図である。 図5は、本発明の剥離防止孔形成工程の一例を示す説明図である。 図6Aは、剥離防止孔の一例を示す概略断面図である。 図6Bは、剥離防止孔の一例を示す概略断面図である。 図6Cは、剥離防止孔の一例を示す概略断面図である。 図7Aは、SUS304冷延鋼板における剥離防止孔形成工程時の電流密度と孔食発生電位の関係を示す説明図である。 図7Bは、SUS430冷延鋼板における剥離防止孔形成工程時の電流密度と孔食発生電位の関係を示す説明図である。 図8は、液体吐出面に剥離防止孔が形成されたノズル板の一例を示す断面写真である。 図9は、本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す概略断面図である。 図10は、本発明の画像形成装置の一例を示す斜視図である。 図11は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
(ノズル板)
本発明のノズル板は、ノズル基板と、撥水膜とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
<ノズル基板>
前記ノズル基板は、ノズル孔を有し、一方の面に複数の剥離防止孔が配されていれば、その形状、大きさ、材質、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル基板は、前記一方の面としての、前記ノズル孔から液体が吐出される「液体吐出面」と、前記液体吐出面とは反対側に位置する「液室接合面」とを有する。
前記撥水膜は、前記ノズル基板の前記剥離防止孔を有する前記液体吐出面に形成されている。
前記ノズル基板の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形、正方形、菱形、円形、楕円形などが挙げられる。また、前記ノズル基板の断面形状としては、例えば、平板状、プレート状などが挙げられる。
前記ノズル基板の大きさとしては、特に制限はなく、前記ノズル板の大きさに応じて適宜選択することができるが、長さが20mm以上100mm以下、幅が10mm以上50mm以下、平均厚みが0.02mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
前記ノズル基板の材質としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、鉄合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
前記ステンレス鋼とは、JIS G 0203:2000の番号4201に記載されるように、Cr含有量が10.5質量%以上の鋼である。
前記ステンレス鋼としては、例えば、JIS G 4305:2005、JIS G 4312:1991に規定される鋼種、これらの鋼種等をベースとして他の合金元素を添加し、各種特性の改善を図ったステンレス鋼などが挙げられる。具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼などが挙げられる。
前記オーステナイト系ステンレス鋼は、Crの含有量が10.5質量%以上35質量%以下、かつNiの含有量が5質量%以上30質量%以下であるステンレス鋼であり、Crの含有量としては11質量%以上30質量%以下が好ましい。前記オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS303Se、SUS304、SUS304L、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS316N、SUS316LN、SUS316J1、SUS316J1L、SUS317、SUS317L、SUS317J1、SUS321、SUS347、SUSXM7、SUSXM15J1、SUS329J1などが挙げられる。これらの中でも、耐腐食性が高く多種のインクに適応する点で、SUS316Lが好ましい。
前記フェライト系ステンレス鋼は、Crの含有量が10.5質量%以上35質量%以下であるステンレス鋼であり、Crの含有量としては15質量%以上30質量%以下が好ましい。前記フェライト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS405、SUS410L、SUS430、SUS430F、SUS434、SUS447J1、SUSXM27などが挙げられる。
前記マルテンサイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS403、SUS410、SUS410J1、SUS416、SUS420J1、SUS420F、SUS431、SUS440A、SUS440B、SUS440C、SUS440Fなどが挙げられる。
前記析出硬化系ステンレス鋼としては、例えば、SUS630、SUS631などが挙げられる。
−複数の剥離防止孔−
前記複数の剥離防止孔としては、少なくともいずれかが開口狭小孔であれば、その形状、大きさ、数、配列、間隔などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記剥離防止孔の形状としては、前記剥離防止孔を形成する前の状態における前記ノズル基板の前記液体吐出面を基準面としたとき、前記基準面よりも窪んだ形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、平面視における前記剥離防止孔の形状としては、略円形状であることが好ましい。
前記液体吐出面の面積における前記複数の剥離防止孔の開口面の面積比率としては、10%以上80%以下が好ましく、20%以上60%以下がより好ましい。前記開口面の面積比率が好ましい範囲であると、前記液体吐出面における前記撥水膜の密着性が向上する点で有利である。
前記開口面の面積比率は、例えば、前記ノズル基板をエポキシ樹脂等で包埋して切断したサンプルの切断面を、透過電子顕微鏡(JEM−2100、日本電子株式会社製)を用いて、倍率5,000倍で、図8に示すようなデジタル画像として記録し、得られたデジタル画像を、画像処理ソフト(Photoshop、adobe社製)を用いて画像処理を行い、得られた処理画像について「計測」コマンドにより、前記剥離防止孔の開口長さと前記剥離防止孔の開口ではない前記液体吐出面の長さとの比などから求めることができる。
−−開口狭小孔−−
前記開口狭小孔は、前記ノズル基板における前記液体吐出面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さの方が大きい剥離防止孔である。
前記開口狭小孔の開口の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましい。前記開口狭小孔の開口の長さが好ましい範囲であると、前記液体吐出面上に塗布した後の前記撥水膜の算術平均表面粗さ(Ra)に影響することなく、前記液体吐出面における前記撥水膜の密着性が向上する点で有利である。
前記開口狭小孔の最大長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以下が好ましく、0.5μm以上4μm以下がより好ましい。前記開口狭小孔の最大長さが好ましい範囲であると、前記ノズル基板の前記液体吐出面に対する前記撥水膜の密着性が向上する点で有利である。
前記開口狭小孔の深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。前記開口狭小孔の深さが好ましい範囲であると、前記ノズル基板の前記液体吐出面に対する前記撥水膜の密着性が向上する点で有利である。
前記開口狭小孔における前記開口の長さ、前記最大長さ、及び深さの測定方法としては、例えば、前述した前記開口面の面積比率の求め方の例と同様に、まず、前記ノズル基板をエポキシ樹脂等で包埋する。次に、前記開口狭小孔の中心を通る直径部分で切断したサンプルの切断面を、透過電子顕微鏡(JEM−2100、日本電子株式会社製)を用いて、倍率5,000倍で、図8に示すようなデジタル画像として記録する。次に、得られたデジタル画像を、画像処理ソフト(Photoshop、adobe社製)を用いて画像処理を行う。得られた処理画像について、「計測」コマンドにより任意の前記開口狭小孔の前記開口の長さ、前記最大長さ、又は深さを測定することができる。
前記剥離防止孔における前記開口狭小孔の個数比率としては、50%以上が好ましく、66.7%以上がより好ましい。前記開口狭小孔の個数比率が好ましい範囲であると、前記ノズル基板の前記液体吐出面に対する前記撥水膜の密着性が向上する点で有利である。
前記開口狭小孔のうち、隣り合った前記開口狭小孔は、前記ノズル基板の内部で連通する場合がある。この場合、前記開口面の面積としては、連通する前記開口狭小孔の開口面の面積の和とし、前記開口の長さとしては、連通する前記開口狭小孔の開口の長さの和とする。
また、隣り合った前記開口狭小孔が前記ノズル基板の内部で連通する場合、前記最大長さとしては、連通する前記開口狭小孔の最大長さとなる。
このような特異な形状をもつ剥離防止孔は、後述する剥離防止孔形成工程により粗面化処理を行うことで得られる。
−ノズル孔−
前記ノズル孔としては、その数、配列、間隔、開口形状、開口の大きさ、開口の断面形状などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル孔の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数の前記ノズル孔が、前記ノズル基板の長さ方向に沿って等間隔に並んで配列されている態様などが挙げられる。
前記ノズル孔の配列は、吐出する液体(インク)の種類に応じて適宜選定することができるが、1列〜複数列が好ましく、1列〜4列がより好ましい。
前記1列当たりの前記ノズル孔の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10個〜10,000個が好ましく、50個〜500個がより好ましい。
隣接する前記ノズル孔の中心間の最短距離である間隔(ピッチ)Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、21μm〜169μmが好ましい。換言すると、前記ノズル孔の数、及び前記間隔(ピッチ)Pは、150dpi(ピッチは169μm)〜1,200dpi(ピッチは21μm)の範囲が好ましく、例えば、300dpiの場合にはピッチは84μmである。
前記ノズル孔の開口形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、楕円形、四角形などが挙げられる。これらの中でも、インク液滴を吐出する点から、円形が好ましい。
前記ノズル孔の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上30μm以下であることが好ましい。
−撥水膜−
前記撥水膜は、前記ノズル基板の一方の面上に配され、一部が前記剥離防止孔に収容されていれば、その形状、構造、材質、平均厚みなどについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体吐出面上のみに配置されることが好ましい。
「撥水」の意味合いは、ワイピング動作後に前記液体吐出面がインクで濡れない状態を指しており、そのためにはある程度接触角が高い方(例えば、30°以上)がその性質を表現するのに合致している。前記接触角は、純水をインクに代えてJIS R 3257に準拠して測定することができる。
前記撥水膜の材質としては、フッ素ポリマーが好ましい。前記撥水膜の材質が、前記フッ素ポリマーであると、水性インク、油性インク、溶剤インク等に対する撥水性に優れている点で有利である。
−フッ素ポリマー−
前記フッ素ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エーテル結合を含むヘテロ環状構造を有していることが好ましく、常温で固体であるとより好ましい。
前記フッ素ポリマーが、エーテル結合を有するヘテロ環状構造を有しており、更に常温で固体であると、記録用メディアへの浸透性が高めて表面張力を30mN/m以下と低くするなどの改善を行ったインク等に対しても撥水性に優れる点で有利である。
なお、本明細書において、常温とは、10℃以上35℃以下の範囲の温度をいう。
また、前記ヘテロ環状構造とは、化学構造式でヘテロ原子を1個〜2個含む5員環〜8員環の有機化合物の構造である。前記ヘテロ原子とは、炭素以外の原子であり、具体的には、酸素、窒素、硫黄、燐などが挙げられ、特に酸素が化学的安定性、安全性の観点から好適に用いられる。
前記撥水膜は、常温で固体の前記フッ素ポリマーを含有することにより、ワイピング動作に対する耐摩耗性が高く、撥水性を長期にわたり維持することが可能である。
また、前記撥水膜は、前記PTFEをはじめとする他の撥水材料と比べて極めて撥水性が高く、記録用メディアへの浸透性を高めた濡れ性の高いインクに対しても良好な撥水性を有する。
前記フッ素ポリマーとしては、膜強度、膜の均一性、及び前記ノズル基板との密着性などの点から、特に非晶質ポリマーを用いることが好ましい。
前記フッ素ポリマーとしては、例えば、米国特許第3,418,302号公報、米国特許第3,978,030号公報、特開昭63−238111号公報、特開昭63−238115号公報、特開平1−131214号公報、特開平1−131215号公報等に記載されているフッ素ポリマーが好適に用いられる。
これらの中でも、下記構造式(1)〜(8)に示すようなヘテロ環構造を有するフッ素ポリマーが代表的である。ただし、本発明の内容はこれらのみに限定されるものではない。
[構造式(1)]
ただし、前記構造式(1)中nは、重合度を表す整数である。
[構造式(2)]
ただし、前記構造式(2)中nは、重合度を表す整数である。
[構造式(3)]
ただし、前記構造式(3)中nは、重合度を表す整数である。
[構造式(4)]
ただし、前記構造式(4)中nは、重合度を表す整数である。
[構造式(5)]
ただし、前記構造式(5)中nは、重合度を表す整数である。
[構造式(6)]
ただし、前記構造式(6)中nは、重合度を表す整数である。
[構造式(7)]
ただし、前記構造式(7)中nは、重合度を表す整数である。
[構造式(8)]
ただし、前記構造式(8)中nは、重合度を表す整数である。
更に、前記構造式(1)〜(8)に示すフッ素ポリマーは、前記ノズル基板との密着性、Tg、溶媒への溶解性などをコントロールするために、主鎖中に下記構造式(9)に示す構造を導入してもよい。前記構造は以下のコモノマーと共重合することにより得られる。
CF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOF、
CF=CF−O−CFCFCFCOOCH
CF=CF−CFCF(CF)−O−CFCFSO
[構造式(9)]
前記構造式(9)において、R、R、Rは、各々H、F、Cl、又はRf(フッ素含有アルキル基)であり、Xは、H、F、Cl、Rf、又はRfである。
ただし、Rfは、酸、エステル、アルコール、アミン、アミド等の官能基を末端に有するフッ素含有有機置換基であり、Rfは、フッ素含有アルキル基、フッ素含有エーテルである。
以上に示したような特定の化学構造を有し、前記フッ素ポリマーとして適している市販品としては、例えば、サイトップCTX−105、サイトップCTX−805(いずれも、旭硝子株式会社製)、テフロン(登録商標)AF1600(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、種々のインクに対する撥水性の点から、テフロン(登録商標)AF1600が好ましい。
−撥水膜の平均厚み−
前記撥水膜の平均厚みとは、前記剥離防止孔の開口部から前記撥水膜の表面までの距離であり、前記剥離防止孔の内部に侵入している前記撥水膜は、前記撥水膜の平均厚みには算入しない。
前記撥水膜の平均厚みとしては、1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。前記ノズル基板に形成された前記剥離防止孔が前記撥水膜の表面に影響することなく平滑な表面を得ることができる点で、1μm以上あれば十分であり、また材料コストの観点から薄い方が好ましい。
前記撥水膜の平均厚みの測定方法としては、例えば、前述した前記開口面の面積比率の求め方の例と同様に、まず、前記ノズル基板をエポキシ樹脂等で包埋し、切断したサンプルの切断面を、透過電子顕微鏡(JEM−2100、日本電子株式会社製)を用いて、倍率5,000倍で、デジタル画像として記録する。次に、得られたデジタル画像を、画像処理ソフト(Photoshop、adobe社製)を用いて画像処理を行う。得られた処理画像について、「計測」コマンドにより任意の前記撥水膜の平均厚みを測定することができる。
−撥水膜の膜表面における算術平均表面粗さ(Ra)−
前記撥水膜の膜表面における算術平均表面粗さ(Ra)としては、0.3μm以下であることが好ましい。前記Raが好ましい範囲であると、前記液体吐出面は極めて平滑になるため、ワイピング動作によるインク残りが少なくなり、耐摩耗性も優れる点で有利である。
なお、前記算術平均表面粗さ(Ra)は、次のように定義される。長さlの区間において粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、抜き取られた部分の平均線の方向をX軸とし、縦倍率の方向をY軸とする。粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式(1)によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
<式(1)>
前記撥水膜の膜表面における算術平均表面粗さ(Ra)は、例えば、JIS B 0601に従い、触針式表面形状測定装置(Dektak150、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて測定することができる。
なお、前記撥水膜の形成方法については、後述するノズル板の製造方法において詳細に説明する。
また、前記ノズル板としては、前記液体吐出面のみに前記剥離防止孔を有し、前記剥離防止孔を有する前記液体吐出面のみに前記撥水膜を有することが好ましい。
前記ノズル板が前記液体吐出面のみに前記撥水膜を有すると、前記液体吐出面から前記撥水膜の平均厚みに相当する深さの部分までが撥水性を示し、これより深い箇所においては前記ノズル基板の地肌が露出することになる。一般に、金属表面には自然酸化膜が形成されることにより親水性を呈することから、前記ノズル孔の内壁面における前記ノズル基板の地肌が露出している部分は親水性となる。したがって、前記液体吐出面から前記撥水膜の平均厚みに相当する前記ノズル孔の内壁面の位置を撥水性と親水性の境界位置とするノズル板を得ることができる。このことにより、吐出するインクのメニスカス位置が一定となり、良好な吐出性能を有するノズル板を製造することが可能となる点で有利である。
<液体>
前記液体としては、前記液体吐出ヘッドで吐出可能な液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インク、インクジェット用インク、光重合性インク、前処理液、定着処理液、レジスト、パターン形成材料などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット用インクが特に好ましい。
(ノズル板の製造方法)
本発明のノズル板の製造方法は、剥離防止孔形成工程と、撥水膜形成工程と、を含み、更に必要に応じて保護フィルム貼付工程などのその他の工程を含む。
<剥離防止孔形成工程>
前記剥離防止孔形成工程は、前記ノズル基板の一方の面に、複数の剥離防止孔を、かつ、前記複数の剥離防止孔の少なくともいずれかが、前記ノズル基板における一方の面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さの方が大きい開口狭小孔となるように形成させる工程である。
前記剥離防止孔形成工程では、前記ノズル基板を陽極とし、塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液中で、電解により前記ノズル基板の一方の面に前記剥離防止孔を形成する。
このようにすることで、前記フッ素ポリマーを含有する前記撥水膜がアンカー効果を得て、前記撥水膜が前記ノズル吐出面から剥離しにくくさせている。
一般に、金属板を粗面化する方法としては、各種研磨材による研磨、ショットブラスト、液体フォーミング、研削などの機械的表面研磨法、又は硝弗酸、塩化第二鉄などの腐食液による化学的表面腐食法が知られている。しかし、これらの方法による粗面粗さをいかに大きくしようと、前記撥水膜との密着性の向上には限界があり、特に密着性の低いフッ素ポリマーを十分に密着することは不可能であった。これは、前述のいずれの方法も処理条件を変えることにより粗面粗さの大小は調整できるものの、粗面形状まで変えることができないためである。
即ち、前述の方法において、その処理条件を変えても得られる粗面は図6A、図6Bに示すように、前記剥離防止孔の開口の長さaが前記剥離防止孔の最大長さbをよりも広く、かつ深さcと開口の長さaとの比も相対的に小さい粗面しか得られない。このため、この粗面上に塗布したフッ素ポリマーは十分なアンカー効果を得ることができず、経時によりフッ素ポリマーがノズル基板との界面から剥離し、ワイピング耐久性が低下する場合があった。
前記剥離防止孔形成工程としては、第1の電解工程と、第2の電解工程と、を含むようにすることが好ましい。
<<第1の電解工程>>
前記第1の電解工程は、前記ノズル基板を陽極とし、塩化ナトリウムを含む水溶液中で、前記ノズル基板の液体吐出面を電解する工程である。
前記第1の電解工程では、分布及び深さが均一な孔食を前記ノズル基板に発生させる。分布及び深さが均一な孔食を発生させるには、前記ノズル基板を構成する材質に応じて、塩化ナトリウム濃度及び電流密度を調整することが重要である。
なお、前記第1の電解工程及び前記第2の電解工程における陰極の材料としては、不溶性金属を用いることができる。
前記不溶性金属としては、例えば、白金、ジルコニウム、鉛などが挙げられる。これらの中でも、白金が好ましい。
−第1の電解工程における塩化ナトリウムの水溶液−
前記第1の電解工程における塩化ナトリウムの水溶液の塩化ナトリウム濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.02質量%以上2.0質量%以下が好ましい。
前記ノズル基板がステンレス鋼からなる場合には、塩化ナトリウム濃度が好ましい範囲であると、孔食発生電位が低くなり、孔食が発生しやすくなるとともに、陽極−陰極間の電位差が低い場合であっても孔食が発生しにくくなる。これにより、孔食が発生し易い部分のみに高密度で発生し、しかもその部分のみ孔食が進行してしまうため、不均一な孔食状態となりにくい点で有利である。
−第1の電解工程における電流密度−
前記第1の電解工程における電流密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20mA/cm以上100mA/cm以下が好ましい。
<<第2の電解工程>>
前記第2の電解工程は、前記ノズル基板を陽極とし、塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液中で、前記第1の電解工程により電解した前記ノズル基板の液体吐出面を、更に電解して前記剥離防止孔を形成する工程である。
前記第2の電解工程は、前記第1の電解工程により上昇したpHを下げ、pHの上昇により生じる金属水酸化物の沈澱を防止する工程である。
前記第1の電解工程により前記ノズル基板に対する孔食は、略々均一に発生して進行するが、孔食の進行に伴い、溶液中にCr、Fe、Niなどの金属の溶出が多くなり、pHも上昇する。金属の溶出が多くなると溶液のpHは、塩化ナトリウム単独液であるため、もともと高い上、更に金属の溶出により高くなるので、金属の水酸化物の沈澱が生じる。なお、Fe3+はpH約2で水酸化物となり、Fe2+及びCr3+は、pH約5.5で水酸化物となる。
このため、溶液中の組成は大きく変化して孔食の進行が停止し、あるいは表面に部分的に異常腐食が生じて縞絞様の発生が見られ、所期の目的を達することができないという問題がある。
そこで、前記第1の電解工程に用いた前記塩化ナトリウム水溶液のpHを下げることにより、あるいは前記塩化ナトリウム水溶液に溶出した金属を錯イオンにすることにより前述した問題の解決を図ったものである。
即ち、本発明者らは、前記第1の電解工程に用いた溶液のpHを下げる酸について種々検討した結果、塩酸が適切であることを見出した。
−第2の電解工程における塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液−
前記第2の電解工程における塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第2の電解工程における塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液の塩酸濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.03質量%〜3.0質量%であることが好ましい。前記塩酸濃度が好ましい範囲であると、孔食発生領域から全面腐食領域へと変化しにくく、孔食が相対的に進行する点で有利である。
前記第2の電解工程における塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液の塩化ナトリウム濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の電解工程における塩化ナトリウムの水溶液の塩化ナトリウム濃度と同様に、0.02質量%以上2.0質量%以下が好ましい。
また、前記第2の電解工程における塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液にクエン酸ナトリウムを加えることが好ましい。クエン酸ナトリウムを併用すると、前記第1の電解工程により塩化ナトリウムの水溶液に溶出した金属を錯イオンにすることができる点で有利である。
また、塩酸を加えていない塩化ナトリウムの水溶液にクエン酸ナトリウムを加えてもあまり効果はなく、塩酸と併用することにより塩化ナトリウムの水溶液の老化を防ぎ、塩酸のみを加えた場合より塩化ナトリウムの水溶液を長く使用できる点で有利である。クエン酸ナトリウム濃度としては、塩酸濃度が0.03質量%以上3.0質量%以下の場合、15質量%以下が好ましい。
−第2の電解工程における電流密度−
前記第2の電解工程における電流密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20mA/cm以上100mA/cm以下が好ましい。
<撥水膜形成工程>
前記撥水膜形成工程は、前記複数の剥離防止孔が形成された前記ノズル基板の一方の面上に、前記撥水膜の一部が前記開口狭小孔に収容されるようにして前記撥水膜を形成する工程である。
前記撥水膜を形成する方法としては、例えば、前記フッ素ポリマーを溶剤に溶解して塗工液とし、前記塗工液からなる膜を前記液体吐出面に転写する方法、前記塗工液を前記液体吐出面に直接塗布する方法などが挙げられる。
前記塗工液を前記液体吐出面に転写する方法としては、例えば、前記塗工液をシリコーンゴムなどの平滑な面にスピンコートにより薄く塗布し、そこに前記ノズル基板を押圧して、膜を転写する方法などが挙げられる。
前記塗工液からなる膜を前記液体吐出面に直接塗布する方法としては、例えば、アニロックスロールコーターなどを用いる方法などが挙げられる。
前記塗工液は、前記フッ素ポリマーを含有し、更に必要に応じて溶剤、その他の成分を含有する。
前記塗工液の粘度としては、25℃で100mP・s以下が好ましい。前記塗工液の粘度が100mP・s以下であると、前記開口狭小孔の内部にまで前記塗工液を侵入させることができる点で有利である。
前記塗工液におけるフッ素ポリマー濃度としては、0.1質量%以上6質量%以下が好ましく、1質量%以上3質量%以下がより好ましい。前記フッ素ポリマー濃度が好ましい範囲であると、前記塗工液の粘度が低くなりやすい点で有利である。
前記溶剤としては、例えば、アフルード(旭硝子株式会社製)、フロリナート(登録商標)(スリーエムジャパン株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、例えば、アミノ基を含むシランカップリング剤などが挙げられる。前記塗工液における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2質量%程度が好ましい。
前記塗工液の塗工量としては、前記ノズル基板に前記剥離防止孔が前記フッ素ポリマーの表面に反映することなく平滑となる量を塗布することが好ましい。
前記ノズル基板に前記塗工液を塗工した後、前記溶剤を乾燥させてから前記フッ素ポリマーのガラス転移点Tg以上の温度でベーク処理することにより、緻密で表面が平滑な前記フッ素ポリマーからなる撥水膜を形成することができる。
なお、前記撥水膜形成工程としては、少なくとも前記液体吐出面に対して、SiO層を形成する処理、及びシランカップリング剤を付与する処理を含むことで、撥水膜とノズル基板の密着性をより高めることもできる。
前記SiO層を形成する方法としては、スパッタリングによる方法が好ましい。
前記シランカップリング剤を付与する方法としては、ディッピングによる方法が好ましい。前記ディッピングの条件としては、例えば、浸漬時間、引上げ速度などを調整する。
前記シランカップリング剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、KBE−903(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ノズル孔形成工程、保護フィルム貼付工程などが挙げられる。
−保護フィルム貼付工程−
前記保護フィルム貼付工程は、前記液体吐出面のみに前記剥離防止孔を形成する場合、前処理として前記液室接合面及び前記ノズル孔の内壁面にフィルムなどの保護膜を貼り付ける工程である。
本発明のノズル板の製造方法は、前記保護フィルム貼付工程を含むことが好ましい。
前記保護フィルム貼付工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル孔の内壁面に保護膜を形成する方法としては、例えば、ドライフィルムレジストを熱圧着により前記ノズル孔の中に一定量浸入させることなどが挙げられる。また、前記ノズル基板に感光性樹脂をディッピングなどにより塗布し、前記液室接合面の側から光照射して硬化させた後、未硬化の感光性樹脂を洗浄することで、前記ノズル孔の内壁面に保護膜を形成するようにしてもよい。
−ノズル孔形成工程−
前記ノズル孔形成工程は、前記ノズル基板にノズル孔を形成する工程である。
前記ノズル孔を形成する方法としては、例えば、電鋳、切削加工、レーザー加工、放電加工、プレス加工などが挙げられる。これらの中でも、パンチを用いたプレス加工が好ましい。前記ノズル孔を形成する方法としてパンチを用いたプレス加工を用いると、多数のパンチを直列に並べて、多数個のノズル孔を一度に前記ノズル基板に形成することが可能である点で有利である。
(液体吐出ヘッド)
本発明の液体吐出ヘッドは、ワイピング動作によるノズル孔の周縁近傍の撥水膜の減少による前記ノズル孔の周縁近傍の撥水性の低下を防止でき、前記ノズル孔の周縁近傍のワイピング耐久性が高いノズル板を有する液体吐出ヘッドを提供するものである。
本発明の液体吐出ヘッドとしては、本発明のノズル板を有していれば特に制限はなく、その他の部材については、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。
前記その他の部材としては、例えば、加圧室、刺激発生手段、流路ユニット、アクチュエータユニット、フレームなどが挙げられる。
−加圧室−
前記加圧室は、前記ノズル板に設けられた前記ノズル孔に個別に対応して配置され、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などと称することもある。
−刺激発生手段−
前記刺激発生手段は、液体(インク)に印加する刺激を発生する手段である。
前記刺激発生手段における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生手段としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
前記刺激が「熱」の場合、前記液体吐出ヘッド内の液体(インク)に対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。前記熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記ノズル板の前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記液体吐出ヘッド内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル孔1から前記液体(インク)を液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加して液体(インク)を飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
−流路ユニット−
前記流路ユニットは、液体(インク)を供給するインク供給源に連通する複数の圧力室を有する。
−アクチュエータユニット−
前記アクチュエータユニットは、前記圧力室の容積を変化させるために配置される。前記アクチュエータユニットは、液体(インク)を吐出するためのエネルギー発生手段であるアクチュエータを備える。
前記アクチュエータとしては、例えば、圧電アクチュエータ、サーマルアクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、及び静電アクチュエータなどが挙げられる。前記圧電アクチュエータは、圧電素子でもよい。前記サーマルアクチュエータは、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するアクチュエータである。前記形状記憶合金アクチュエータは、温度変化による金属相変化を用いるアクチュエータである。前記静電アクチュエータは、静電力を用いるアクチュエータである。
−フレーム−
前記フレームは、前記流路ユニットと前記アクチュエータユニットを支持するために設けられる。
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、インク収容手段と、液体吐出ヘッドと、クリーニング手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
前記画像形成装置としては、インクジェット記録方式による各種画像形成装置、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などが挙げられる。
<インク収容手段>
前記インク収容手段は、インクジェット用インクを収容する手段であり、例えば、タンク、インクカートリッジなどが挙げられる。
前記インクカートリッジは、前記インクジェット用インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好適である。
<液体吐出ヘッド>
前記液体吐出ヘッドは、前記インクジェット用インクに刺激を印加し、前記インクを飛翔させて画像を記録用メディアに記録する手段である。
前記液体吐出ヘッドとしては、本発明の前記液体吐出ヘッドが用いられる。
−インクジェット用インク−
前記インクジェット用インクとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、特開2008−260926号公報、特開2008−38156号公報、特開2005−161834号公報などに開示されているインクなどが挙げられる。
−記録用メディア−
前記記録用メディアとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、OHPシート、フィルムなどが挙げられる。
<クリーニング手段>
前記クリーニング手段は、前記液体吐出ヘッドに用いられる前記ノズル板の前記撥水膜をブレードでワイピングする手段である。
前記ブレードとしては、その大きさ、材質、形状、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ブレードの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ブレードの材質としては、例えば、前記ノズル板の前記撥水膜の表面をワイピング動作する観点から、ゴム、エラストマーなどが挙げられる。
前記ブレードの形状としては、ワイピング動作ができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状などが挙げられる。
<その他の手段>
前記その他の手段としては、例えば、制御手段などが挙げられる。前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
次に、本発明におけるノズル板及びその製造方法、並びに液体吐出ヘッド及び画像形成装置の一例について図面を参照して説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
図1は、本発明のノズル板の一例を示す概略平面図である。
図1に示すように、薄板形状であるノズル板2には、複数のノズル孔1が列状に設けられている。なお、ノズル板2の寸法の範囲としては、例えば、長さ20mm以上100mm以下、幅10mm以上50mm以下、平均厚み0.02mm以上0.1mm以下とすることができる。
図2は、図1に示すノズル板におけるノズル孔の一例を示す拡大断面図である。
図2に示すように、ノズル板2には、ノズル基板8の液体吐出面13上に、撥水性を有し、平均厚みを一定とした撥水膜4が形成されている。
撥水膜4は、ノズル孔1に相当する位置に、ノズル孔1と同形状の貫通孔を有する。
次に、本発明におけるノズル板の製造方法の一例について図面を参照して説明する。
図3Aは、本発明のノズル基板のノズル孔を設ける前の状態の一例を示す概略断面図である。
図3Aにおいて、ノズル基板8としては、例えば、長さ30mm、幅15mm、平均厚み0.05mmとすることができる。
このノズル基板8の液室接合面6側に、図4に示すパンチ20の円筒状の先端部分21を押し当ててプレス加工することによりノズル孔1を設ける。
図4は、ノズル孔を設ける際に用いるパンチの一例を示す拡大断面図である。
図4において、パンチ20は、炭化タングステンに代表される超硬材料からなり、円筒状の先端部分21と、円錐状の後端部分22とを有する。
先端部分21は、図2に示す液室接合面6側からプレス加工によりノズル基板8にノズル孔1を形成するのに好適である形状を有する。
先端部分21の高さとしては、ノズル孔1を設けるノズル基板8の平均厚みに応じて変更することができ、例えば、10μm以上200μm以下とすることができる。
先端部分21の直径としては、例えば、15μm以上25μm以下とすることができる。
後端部分22の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、 ここでは、先端部分21の長さを10μm、直径を20μmとし、後端部分22の直径を40μmとする。
図3Bは、図3Aに示すノズル基板にノズル孔を設けたノズル基板の一例を示す概略断面図である。
図3Bに示すように、図4に示すパンチ20を用いたプレス加工により、ノズル基板8にはノズル孔1が形成されている。形成されたノズル孔1は、例えば、液体吐出面13側の直径が20μm、液室接合面6側の直径が40μm、円筒状開口部7の高さが10μmである。
なお、図3Bでは1つのノズル孔1を例示するが、複数のパンチ20を列状に並べてプレス加工することにより、複数のノズル孔1を一度に形成することが可能である。
なお、ノズル孔1を設けた際に、ノズル基板8の液体吐出面13側にいわゆる「バリ」が生じた場合は、液体吐出面13側の研磨又は化学的なエッチングなどによりバリを除去するのが好ましい。
図3Cは、図3Bに示すノズル基板の液体吐出面に剥離防止孔が形成された状態の一例を示す概略断面図であり、前記剥離防止孔形成工程により液体吐出面13を電解し、粗面化した状態を示している。
前記剥離防止孔形成工程は、例えば、図5に示すような構成で行われる。まず、塩化ナトリウムを含む水溶液302中で、ステンレス鋼であるノズル基板8を陽極とし、白金板301を陰極として、電源303によりノズル基板8と白金板301との間にE(V)の電圧が印加されて電解する前記第1の電解工程を行う。次に、塩化ナトリウム及び塩酸を含む水溶液中、又は塩化ナトリウム、塩酸及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液中で、前記第1の電解工程と同様に電解する前記第2の電解工程によりノズル基板8に前記剥離防止孔を形成する。前記剥離防止孔は、図6Cに示すような形状となることが好ましい。
例えば、ステンレス鋼の代表的鋼種であるSUS304及びSUS430冷延鋼板(平均厚み1.0mm)を陽極とした場合では以下のようになる。
図7Aは、SUS304冷延鋼板における剥離防止孔形成工程時の電流密度と孔食発生電位の関係を示す説明図である。
図7Bは、SUS430冷延鋼板における剥離防止孔形成工程時の電流密度と孔食発生電位の関係を示す説明図である。
図7A及び図7Bは、SUS304冷延鋼板及びSUS430冷延鋼板をそれぞれ陽極、白金板を陰極として液温40℃の塩化ナトリウム水溶液中で電解した場合の電流密度と孔食発生電位の関係を塩化ナトリウム濃度別に示している。なお、図7A中及び図7B中のa、b、c、dは、それぞれ塩化ナトリウム水溶液の塩化ナトリウム濃度を1.5質量%、1.0質量%、0.1質量%、0.02質量%とした場合の電流密度と孔食発生電位の関係を示す。
図7Aに示すように、SUS304冷延鋼板の場合には、塩化ナトリウム濃度が1.0質量%を超えると低い電位で孔食が発生することにより、孔食が発生し易い部分のみに高密度で発生し、しかもその部分のみ孔食が進行してしまうため、不均一な孔食状態となる。
一方、塩化ナトリウム濃度を0.1質量%未満とすると、孔食発生電位が高くなり、孔食が発生しにくくなる。
図7Bに示すように、SUS430冷延鋼板の場合には、前記SUS304冷延鋼板と同様に、低い電位で孔食が発生することにより、進行して孔食状態が不均一となる塩化ナトリウム濃度はSUS304冷延鋼板より低くなり、0.5質量%を超える濃度まで低下する。
同様に孔食の発生と進行が起りにくくなる塩化ナトリウム濃度も低下し、0.05質量%未満となる。
このことより、ステンレス鋼の鋼種に応じて塩化ナトリウム濃度を変える必要があることが分かる。
また、電流密度においてもステンレス鋼の鋼種に応じて変える必要がある。即ち、塩化ナトリウム水溶液中に直流電流を流すと、塩化ナトリウム水溶液中の溶存酸素が活性化し、孔食を含めその進行が助長される。このため、ステンレス鋼の鋼種との関係において、電流密度が小さいと、溶存酸素の活性化が不十分となり、孔食の進行に時間がかかる。一方、電流密度が大きいと、孔食が発生し易い部分のみに高密度で発生し、しかもその部分のみ孔食が進行してしまうとともに、孔食反応の増大に伴う液温の上昇も相埃って孔食状態の不均一さが一層増大してしまう。
そこで、本発明者らは、SUS316などのような、SUS304より更に高級な鋼種から、SUS410などのような、SUS430より更に低級な鋼種まで、ステンレス鋼の鋼種全体の電解条件を検討した。その結果、前記液体吐出面に前記剥離防止孔を形成する電解工程においては塩化ナトリウム水溶液の塩化ナトリウム濃度を0.02質量%〜2.0質量%とし、かつ電流密度を20mA/cm以上100mA/cm以下とする電解条件が好ましいことが分かった。
前述の方法により表面に前記剥離防止孔を形成したステンレス鋼からなるノズル基板の断面写真を図8に示した。図6Cに示したように、開口の長さに対し、最大長さの方が大きくなっているのがわかる。
図3Dは、図3Cに示すノズル基板の液体吐出面に撥水膜が形成された状態の一例を示す概略断面図である。
図3Dに示すように、撥水膜4は、液体吐出面13の前記開口狭小孔を埋め、表面が平滑となるように形成される。
次に、本発明における液体吐出ヘッドの一例について図面を参照して説明する。
図9は、本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す説明図である。
図9に示すように、流路ユニット31と、アクチュエータユニット32とをフレーム33を介して一体に固定して構成されている。
流路ユニット31は、ノズル板2、チャンバープレート35、及び振動板36を積層し、アクチュエータユニット32の圧力発生手段である個々の圧電振動子37の伸縮により圧力室38を縮小、膨張させてインク液滴を吐出するように構成されている。
ノズル板2には、圧力室38に連通する複数のノズル孔1が穿設されており、またチャンバープレート35には圧力室38、流体抵抗部34が形成されている。
振動板36は、圧電振動子37の先端に当接する凸部42と、弾性変形可能な第1のダイヤフラム部43と各圧力室38に対向するように設けられている。
また、フレーム33に設けられた共通液室41からの液体供給口45が形成されている。 また、共通液室41に面する領域にも上述の第1のダイヤフラム部43と同様の第2のダイヤフラム部44が構成されている。
流路ユニット31は、ステンレス製チャンバープレート35とノズル板2と振動板36を接合したものである。
振動板36は、圧延製金属板48に、圧電振動子37の変位により弾性変形が可能で、インクに対する耐蝕性を備えた例えば、ポリイミド(PI)やポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の高分子フィルム49を積層して構成されている。要所に貫通孔からなる位置決め孔が穿設されており、第1のダイヤフラム部43、第2のダイヤフラム部44を形成すべき領域をエッチングして圧延製金属板48により凸部42を形成されている。
ノズル孔1は、圧力室38に対応して直径10μm以上30μm以下の大きさで形成されている。
また、ノズル板2の液体吐出面には、液体との撥水性を確保するため、撥水膜を形成している。
そして、振動板36の面外側(圧力室38と反対面側)に各圧力室38に対応して圧力発生手段としての圧電振動子37を接合している。
これらの振動板36と圧力振動子37によって振動板36の可動部分である第1のダイヤフラム部43を変形させる圧電型アクチュエータを構成している。
前記液体吐出ヘッドでは、圧電振動子37を溝加工(スリット加工)によって分断することなく形成する。また、圧電振動子37の一端面には各圧電振動子37に駆動波形を与えるためのFPCケーブル50を接続している。
なお、圧電振動子37の圧電方向としてd33方向(電極面に直交する外側方向)の変位を用いて圧力室38内の液体を加圧する構成とすることもできる。また、圧電振動子37の圧電方向としてd31方向(電極面に直交する内側方向)の変位を用いて圧力室内の液体を加圧する構成とすることもできる。本実施形態ではd33方向の変位を用いた構成をとっている。
ベース部材51は、金属材料で形成することが好ましい。ベース部材51の材質(材料)が金属であれば、圧電振動子37の自己発熱による蓄熱を防止することができる。圧電振動子37とベース部材51は接着剤により接着接合しているが、チャンネル数が増えると、圧電振動子37の自己発熱により100℃近くまで温度が上昇し、接合強度が著しく低下することになる。また、自己発熱によりヘッド内部の温度上昇が発生し、液体温度が上昇するが、液体の温度が上昇すると、液体粘度が低下し、噴射特性に大きな影響を与える。したがって、ベース部材51を金属材料で形成して圧電振動子37の自己発熱による蓄熱を防止することで、これらの接合強度の低下、液体粘度の低下による噴射特性の劣化を防止することができる。
また、FPCケーブル50には、各チャンネル(各圧力室38に対応する)を駆動する駆動波形(電気信号)を印加するためのドライバIC52を複数搭載している。
更に、振動板36の周囲にはフレーム33を接着剤で接合している。そして、このフレーム33には、ドライバIC52と少なくともベース部材51を挟んで反対側に配置されるように、圧力室38に外部から液体を供給するための共通液室41を形成している。この共通液室41は、振動板36の液体供給口45を介して流体抵抗部34及び圧力室38に連通している。
共通液室41には、第2のダイヤフラム部44によってダンパー室53が形成され、液体吐出によって共通液室41内に発生する圧力波を減衰させ、液体吐出を安定させる。
圧電振動子37は、圧電層(圧電材料層)54と、内部電極55A及び内部電極55Bとを交互に積層した構成を有する。更に、圧電振動子37は、両端面に共通側外部電極56と個別側外部電極57とを設けた状態で、スリット加工(溝加工)を施して溝を入れることにより、複数の圧電振動子を形成している。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、圧電振動子37の駆動部に対して選択的に20V以上50V以下の駆動パルス電圧を印加することによって、パルス電圧が印加された駆動部が積層方向に伸びてダイヤフラム部をノズル方向に変形させる。その結果、圧力室38の容積又は体積変化によって圧力室38内の液体が加圧され、ノズル孔1からインク液滴が吐出(噴射)される。
次に、本発明における画像形成装置の一例について図面を参照して説明する。
本発明のノズル板2は、インクジェット記録方式による各種画像形成装置、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などに好適に使用することができる。
以下、後述する実施例でも用いたインクジェット画像形成装置について図10及び図11を参照して説明する。
図10は、本発明の画像形成装置の一例である画像形成装置101の斜視図である。
図11は、本発明の画像形成装置の一例である画像形成装置101の断面図である。
図10に示すように、画像形成装置101は、給紙トレイ102と、排紙トレイ103と、インクカートリッジ装填部104とを有する。給紙トレイ102は、画像形成装置101に装着され、用紙が装填される。排紙トレイ103は、画像形成装置101に装着され、画像が記録(形成)された用紙をストックする。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ200の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。111は上カバー、112は前カバーの前面である。
画像形成装置101内には、図11に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とで、キャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって移動走査する。
キャリッジ133には、記録ヘッド134の複数のインク吐出口を、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク液滴吐出方向を下方に向けて装着している。記録ヘッド134は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク液滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる。
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電アクチュエータ、サーマルアクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、静電アクチュエータなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどが使用できる。圧電アクチュエータは、圧電素子でもよい。サーマルアクチュエータは、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するアクチュエータである。形状記憶合金アクチュエータは、温度変化による金属相変化を用いるアクチュエータである。静電アクチュエータは、静電力を用いるアクチュエータである。
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部104に装填された本発明のインクカートリッジ200から、本発明のインクセットに係るインクが供給されて補充される。
一方、給紙トレイ102の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、給紙コロ143(半月コロ)及び分離パッド144を備える。給紙コロ143は、用紙積載部141から用紙142を1枚毎に分離して給送する。分離パッド144は、給紙コロ143に対向して設けられ、摩擦係数の大きな材質からなる。この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部は、搬送ベルト151と、カウンタローラ152と、搬送ガイド153と、押さえ部材154と、先端加圧コロ155とを備える。搬送ベルト151は、用紙142を静電吸着して搬送する。カウンタローラ152は、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送する。搬送ガイド153は、略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせる。押さえ部材154は、先端加圧コロ155を搬送ベルト151側に付勢する。また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
搬送ベルト151は無端状ベルトであり、搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。搬送ベルト151の表層は、例えば、抵抗制御を行っていない平均厚み40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面である。搬送ベルト151の裏層は、表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行う中抵抗層及びアース層を有している。搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材161が配置されている。なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、分離爪171と、排紙ローラ172と、排紙コロ173とが備えられている。分離爪171は、搬送ベルト151から用紙142を分離する。排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配されている。
画像形成装置101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度、カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
このインクジェット画像形成装置においては、給紙部から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ156によって搬送ローラ157が帯電されており、用紙142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク液滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。
そして、サブタンク135内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ200から所要量のインクがサブタンク135に補給される。
このインクジェット画像形成装置においては、インクカートリッジ200中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ200における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ200は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、画像形成装置101の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは画像形成装置101の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ200の交換を容易に行うことができる。
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット画像形成装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット画像形成装置にも同様に適用することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
<ノズル板の作製>
<<ノズル孔形成工程>>
長さ30mm、幅15mm、平均厚み0.5mmのSUS316L冷延鋼板からなるノズル基板に対し、前記液室接合面より、図4に示したパンチ20によりノズル孔の形成を行った。パンチ20の円筒状の先端部分21の寸法は、長さ10μm、直径20μmとし、前記液体吐出面に生じたいわゆる「バリ」は、研磨により除去した。
上記の工程により、図3Bに示すように、液体吐出面13側の直径が20μm、液室接合面6側の直径が40μm、円筒状開口部7の高さが10μmのノズル孔1を384個形成した。このようにして、384個のノズル孔1を設けたノズル基板を得た。
<<剥離防止孔形成工程>>
−ノズル基板1の作製−
図3Bに示すように、得られたノズル基板8の液体吐出面13にのみ前記剥離防止孔を形成するため、前処理として液室接合面6及びノズル孔1の内壁部には以下のように保護フィルム貼付工程を行った。
ノズル基板8の液室接合面6に、光を照射することにより硬化するドライフィルムレジストとしての感光性樹脂フィルム(ダイヤロンFRA305−38、三菱レイヨン株式会社製)を用いてラミネート加工を行った後、この感光性樹脂フィルムに4.0kgf/cmの圧力を加えつつ40℃以上70℃以下前後の温度で加熱して、ノズル孔1の内壁面に、液体吐出面13に達する深さのところまでフィルムの一部を入り込ませた。次に、液室接合面6から紫外線を照射して、液室接合面6及びノズル孔1の内壁面の前記感光性樹脂フィルムの全体を硬化させた。
前記保護フィルム貼付工程により液体吐出面13のみ露出させたノズル基板8を、図5に示した電解装置の陽極(アノード)として用い、陰極(カソード)用の対極板には白金板を用いた。
前記第1の電解工程として、0.2質量%の塩化ナトリウム水溶液中で50mA/cmの電流密度により5分間電解を行った。
前記第2の電解工程として、前記塩化ナトリウム水溶液に所定量の塩酸を加えて1質量%の塩酸濃度とし、50mA/cmの電流密度により更に30分間電解を行った。
このように、前記第1の電解工程及び前記第2の電解工程を経て、ノズル基板1を得た。
−−剥離防止孔の寸法測定、及び開口狭小孔の有無確認−−
得られたノズル基板1をエポキシ樹脂等で包埋し、前記剥離防止孔の中心を通る直径部分で切断した切断面を、透過電子顕微鏡(JEM−2100、日本電子株式会社製)を用いて、倍率5,000倍で、デジタル画像として記録した。得られたデジタル画像は、図8に示すように表され、画像処理ソフト(Photoshop、adobe社製)を用いて画像処理される。画像処理されたデジタル画像に基づき、「計測」コマンドにより前記剥離防止孔の開口の長さa、最大長さb、及び深さcを測定した。前記剥離防止孔の測定個数は任意の10個とし、それぞれの平均値を求めた。結果を表1−1に示した。なお、前記開口狭小孔の個数比率も表1−1に示した。
−ノズル基板2〜6の作製−
前記ノズル基板1の作製において、表1−1及び表1−2に示すように前記第1の電解工程及び前記第2の電解工程の電解条件を変えたこと以外は、ノズル基板1と同様にして、ノズル基板2〜6を作製し、ノズル基板1と同様に評価した。前記開口狭小孔の寸法測定の結果を表1−1及び表1−2に示した。
(実施例1)
<撥水膜形成工程>
前記開口狭小孔を形成したノズル基板1を、前記液室接合面に前記感光性樹脂フィルム(ダイヤロンFRA305−38)が貼られた状態で、スパッタリングにより前記液体吐出面に平均厚み5nmのSiO層を形成し、シランカップリング剤(KBE−903、信越化学工業株式会社製)の濃度が1質量%のエタノール溶液中にディッピング(浸漬時間1分間、引上げ速度10mm/s)によりシランカップリング剤を付与する処理を行った。
次に、テフロン(登録商標)AF1600(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を、溶剤としてバートレル(登録商標)スープリオン(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に溶解して、フッ素ポリマー濃度が3質量%の塗工液とした。この塗工液中に、シランカップリング剤を付与した処理を行ったノズル基板1をディッピングすることによりフッ素ポリマーを含有する撥水膜を塗工した。前記ディッピングは、ノズル基板1を前記塗工液に1分間浸漬した後、7mm/sの速度で引き上げた。ディッピング後のノズル基板1を、室温にて1分間乾燥した後、液室接合面6に貼られた前記ドライフィルムレジストを剥離し、更に剥離面に圧縮空気を当ててノズル孔から空気を吹き出すことにより穿孔した。その後、100℃のオーブンに1時間入れて前記溶剤を蒸発させて乾燥させ、更に、170℃のオーブンに10分間入れてベーキング処理し、ノズル板1を得た。
得られたノズル板1の撥水膜の平均厚みは、前述した前記開口狭小孔の前記開口の長さなどの求め方の例と同様に、まず、前記ノズル基板をエポキシ樹脂等で包埋し、切断したサンプルの切断面を、透過電子顕微鏡(JEM−2100、日本電子株式会社製)を用いて、倍率5,000倍で、デジタル画像として記録した。次に、得られたデジタル画像を、画像処理ソフト(Photoshop、adobe社製)を用いて画像処理を行った。得られた処理画像について、「計測」コマンドにより任意の前記撥水膜の平均厚みを測定した結果、3.0μmであった。
得られた撥水膜の膜表面における算術平均表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601に従い、触針式表面形状測定器(Dektak150、ブルカー・エイエックスエス株式会社)を用いて測定した結果、0.1μmであった。これらの測定結果を表2に示した。
なお、得られたノズル板1の前記液室接合面及びノズル孔の内壁面には、フッ素ポリマーが塗布されていないことを確認した。
また、ノズル板1を、前記溶剤であるバートレル(登録商標)スープリオン(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)に浸漬してフッ素ポリマーを溶解して前記開口狭小孔の形状を確認したところ、フッ素ポリマーを塗布する前と同様の形状を示しており、フッ素ポリマーの塗布により前記開口狭小孔の形状の変化がないことを確認した。
<評価>
作製した実施例1のノズル板1について、以下のように評価した。
<<吐出安定性評価>>
インクジェットプリンタ(IPSiO G515、株式会社リコー製)に、得られたノズル板1を搭載して、以下のようにして吐出安定性を評価した。
−吐出方向ズレ初期評価−
まず、初期評価として、得られたノズル板1にワイピング動作を行う前に、ノズルチェックパターンを印刷し、印刷されたノズルチェックパターンを目視観察することによりインクの吐出方向ズレの有無を以下の基準で評価した。結果を表3に示した。
[評価基準]
○:吐出方向ズレが確認できない
×:吐出方向ズレが確認できる
−吐出安定性評価−
次に、インクジェットプリンタの手動クリーニングを連続して行い、100回毎にノズルチェックパターンを印刷して吐出方向ズレの発生を吐出方向ズレ初期評価と同様の評価基準で確認した。
また、ワイピング回数は、インクジェットプリンタに要求される耐久寿命を考慮すれば5,000回以上まで問題が発生しなければ良好と判断できるため、以下の基準で評価した。結果を表3に示した。
[評価基準]
◎:20,000回以上
○:5,000回以上
×:5,000回未満
(実施例2〜6及び比較例1〜3)
実施例1において、表2に示すように、ノズル基板を代え、ディッピングの条件を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜3のノズル板を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表2及び表3に示した。
(参考例1)
実施例1において、表2に示すように、ノズル基板を代え、ディッピングの条件を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、参考例1のノズル板を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表2及び表3に示した。
表3の結果より、実施例1〜3においては、20,000回を超えるワイピング動作を行っても吐出安定性は良好であった。
比較例1〜3においては、前記第2の電解工程を行っていないため、撥水膜のノズル基板に対する密着力が低く、ワイピング動作の回数が少ない段階で撥水膜の界面剥離が発生し、ノズル孔近傍の界面にインクが付着したことにより吐出方向ズレが発生して吐出安定性が悪化した。
実施例4〜6においては、実施例1〜3と同様のノズル基板に、実施例1〜3よりも薄い撥水膜を形成したことにより、液体吐出面に形成した剥離防止孔の形状が撥水膜の形成後も影響したため、実施例1〜3に比べて撥水膜が薄いため、表面の平滑性がやや劣る結果となった。また、ワイピング動作による撥水膜の剥離は発生せず、プリンタとして要求される耐久寿命を満足することができた。ただし、ワイピング動作に対して撥水膜が摩耗しやすくなるとともに、撥水膜の表面剥離防止孔にインクの付着残りが発生して、徐々にクリーニング性が低下してノズル孔近傍にインクが残り、吐出方向ズレが発生した。このことから、ワイピング耐久性を向上させるためには、撥水膜の平均厚みを1μm以上として、ノズル基板の凹凸をフッ素ポリマーにより覆うことにより、算術平均表面粗さを0.3μm以下とし、より高い耐久性が得られると考えられる。
参考例1においては、明らかな吐出方向ズレは発生しなかったが、ドットの大きさにばらつきが確認された。ノズル孔を顕微鏡により観察すると、ノズル基板に設けられたときのノズル孔の径よりも撥水膜を形成した後のノズル孔の径が小さくなっていた。これは、撥水膜の平均厚みや圧縮空気による穿孔がノズル径に影響したことが原因であった。よって、ノズル基板によるノズル径のサイズを維持するためには、撥水膜の平均厚みは15μm未満とする必要があることが分かった。
インクジェットのノズル板を製造するにあたり、ステンレス鋼からなるノズル基板に剥離防止孔を形成してフッ素ポリマーからなる撥水膜の密着性を向上させる技術において、一般的な粗面化技術である電解工程、酸処理、サンドブラスト法では、剥離防止孔の形状が図6Bに示すような形状になった。このため、ノズル基板と撥水膜を強固に固着するには至らず、ワイピング動作の繰り返しによって撥水膜が剥離した。これに対し、実施例1〜6に示したように、2段階の電解工程を行うことで図6Cに示すような特異な形状の剥離防止孔を形成することにより、密着性の低いフッ素ポリマーにおいても強固なアンカー効果を得ることができ、ワイピング動作による撥水膜の剥離を回避できることが分かった。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 一方の面に複数の剥離防止孔が配されたノズル基板と、
前記ノズル基板の一方の面上に配された撥水膜と、を有し、
前記撥水膜の一部が、前記剥離防止孔に収容され、
前記複数の剥離防止孔の少なくともいずれかが、前記ノズル基板における一方の面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さの方が大きい開口狭小孔であることを特徴とするノズル板である。
<2> 前記剥離防止孔における前記開口狭小孔の個数比率が、50%以上である前記<1>に記載のノズル板である。
<3> 前記開口狭小孔の開口の長さが、7μm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のノズル板である。
<4> 前記開口狭小孔の最大長さが、10μm以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載のノズル板である。
<5> 前記開口狭小孔の深さが、0.5μm以上10μm以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載のノズル板である。
<6> 前記撥水膜が、エーテル結合を含むヘテロ環状構造を有するフッ素ポリマーを含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のノズル板である。
<7> 前記ノズル基板の一方の面の面積における、前記複数の剥離防止孔の開口面の面積比率が、10%以上80%以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載のノズル板である。
<8> 前記撥水膜の膜表面における算術平均表面粗さ(Ra)が、0.3μm以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載のノズル板である。
<9> 前記撥水膜の平均厚みが、1μm以上10μm以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載のノズル板である。
<10> 前記ノズル基板が、ステンレス鋼からなる前記<1>から<9>のいずれかに記載のノズル板である。
<11> 前記ステンレス鋼が、SUS316Lである前記<1>から<10>のいずれかに記載のノズル板である。
<12> 前記複数の剥離防止孔の少なくとも2つの前記剥離防止孔が、前記ノズル基板の内部で連通する前記<1>から<11>のいずれかに記載のノズル板である。
<13> ノズル基板の一方の面上に撥水膜を有するノズル板の製造方法であって、
前記ノズル基板の一方の面に、複数の剥離防止孔を、かつ、前記複数の剥離防止孔の少なくともいずれかが、前記ノズル基板における一方の面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さの方が大きい開口狭小孔となるように形成させる剥離防止孔形成工程と、
前記複数の剥離防止孔が形成された前記ノズル基板の一方の面上に、前記撥水膜の一部が前記開口狭小孔に収容されるようにして前記撥水膜を形成させる撥水膜形成工程と、
を含むことを特徴とするノズル板の製造方法である。
<14> 前記剥離防止孔形成工程が、前記ノズル基板を陽極とし、塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液中で、電解により前記ノズル基板の一方の面に前記剥離防止孔を形成する前記<13>に記載のノズル板の製造方法である。
<15> 前記剥離防止孔形成工程が、前記第1の電解工程と、前記第2の電解工程と、を含む前記<14>に記載のノズル板の製造方法である。
<16> 前記第1の電解工程が、0.02質量%〜2.0質量%の塩化ナトリウムの水溶液中で、20mA/cm〜100mA/cmの電流密度により行われ、
前記第2の電解工程が、0.03質量%〜3.0質量%の塩酸及び0.02質量%〜2.0質量%の塩化ナトリウムを含む水溶液中で、20mA/cm〜100mA/cmの電流密度により行われる前記<15>に記載のノズル板の製造方法である。
<17> 前記第2の電解工程における塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液が、更にクエン酸ナトリウムを含む前記<16>に記載のノズル板の製造方法である。
<18> 前記塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液における前記クエン酸ナトリウムの含有量が、15質量%以下である前記<17>に記載のノズル板の製造方法である。
<19> 前記<1>から<12>のいずれかに記載のノズル板を有することを特徴とする液体吐出ヘッドである。
<20> 前記<19>に記載の液体吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする画像形成装置である。
前記<1>から<12>のいずれかに記載のノズル板は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、ワイピング耐久性が優れ、良好な吐出安定性を得ることが可能な撥水膜を有するノズル板を提供することを目的とする。
前記<13>から<18>のいずれかに記載の前記ノズル板の製造方法は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、前記ノズル板の製造方法は、ワイピング耐久性が優れ、良好な吐出安定性を得ることが可能な撥水膜を有するノズル板を効率よく製造することができるノズル板の製造方法を提供することを目的とする。
前記<19>に記載の液体吐出ヘッドは、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、前記液体吐出ヘッドは、長期にわたって吐出安定性が良好な液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
前記<20>に記載の画像形成装置は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、前記画像形成装置は、長期にわたって良好な画像品質を維持できる画像形成装置を提供することを目的とする。
特開2003−19803号公報 特許第2975190号公報
1 ノズル孔
2 ノズル板
4 撥水膜
6 液室接合面
7 円筒状開口部
8 ノズル基板
13 液体吐出面
20 パンチ

Claims (10)

  1. 一方の面に複数の剥離防止孔が配されたノズル基板と、
    前記ノズル基板の一方の面上に配された撥水膜と、を有し、
    前記撥水膜の一部が、前記剥離防止孔に収容され、
    前記複数の剥離防止孔の少なくともいずれかが、前記ノズル基板における一方の面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さの方が大きい開口狭小孔であることを特徴とするノズル板。
  2. 前記剥離防止孔における前記開口狭小孔の個数比率が、50%以上である請求項1に記載のノズル板。
  3. 前記開口狭小孔の開口の長さが、7μm以下である請求項1から2のいずれかに記載のノズル板。
  4. 前記開口狭小孔の最大長さが、10μm以下である請求項1から3のいずれかに記載のノズル板。
  5. 前記開口狭小孔の深さが、0.5μm以上10μm以下である請求項1から4のいずれかに記載のノズル板。
  6. 前記撥水膜が、エーテル結合を含むヘテロ環状構造を有するフッ素ポリマーを含有する請求項1から5のいずれかに記載のノズル板。
  7. ノズル基板の一方の面上に撥水膜を有するノズル板の製造方法であって、
    前記ノズル基板の一方の面に、複数の剥離防止孔を、かつ、前記複数の剥離防止孔の少なくともいずれかが、前記ノズル基板における一方の面と直交する少なくともいずれかの断面において、前記剥離防止孔の開口の長さよりも、前記開口の長さ方向と平行に位置する前記剥離防止孔の最大長さの方が大きい開口狭小孔となるように形成させる剥離防止孔形成工程と、
    前記複数の剥離防止孔が形成された前記ノズル基板の一方の面上に、前記撥水膜の一部が前記開口狭小孔に収容されるようにして前記撥水膜を形成させる撥水膜形成工程と、
    を含むことを特徴とするノズル板の製造方法。
  8. 前記剥離防止孔形成工程が、前記ノズル基板を陽極とし、塩酸及び塩化ナトリウムを含む水溶液中で、電解により前記ノズル基板の一方の面に前記剥離防止孔を形成する請求項7に記載のノズル板の製造方法。
  9. 請求項1から6のいずれかに記載のノズル板を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
  10. 請求項9に記載の液体吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする画像形成装置。
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