JP2009220471A - 液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液滴を吐出させるノズル孔が形成されたノズル板を有し、ノズル孔が連通する液室内の液体を加圧してノズル孔から液体を吐出させる液体吐出ヘッドにおいて、ノズル板表面上の吐出側(16)に、チタン(11)あるいはチタン酸化膜が形成され、チタンあるいはチタン酸化膜上にシリコン酸化膜(12)が形成され、シリコン酸化膜上に撥水層(13)が形成され、ノズル板表面上の液室側(17)とノズル孔内壁に、シリコン酸化膜(12)が形成され、チタンあるいはチタン酸化膜は、シリコン酸化膜で覆われ、シリコン酸化膜とチタンあるいはチタン酸化膜の界面が接液面に露出していない構成とした。
【選択図】図3
Description
この不都合解決のために、ノズルの吐出側表面に撥水膜(撥インク膜)を形成することにより、ノズルの吐出側表面の均一性を高めることで、滴吐出特性の安定化を図っている。
かかる問題点の解決手段としては、撥水層の密着性確保のための下地層として、シリコン酸化膜、あるいはチタン(あるいはチタン酸化膜)/シリコン酸化膜積層を設けることが有効である。
特許文献1に開示された技術は、ノズル板にシリコン酸化膜を設け、シリコン酸化膜表面に撥インク層を設けている。
特許文献2は、ノズル板の吐出側の面に、チタン膜を形成し、チタン膜の表面にチタン酸化膜を形成し、チタン酸化膜表面に撥水撥油物質を形成している。
特許文献3は、金属部材からなるノズル形勢部材の吐出面側に、ポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂層、ポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂層上にシリコン酸化膜層、シリコン酸化膜層上にフッ素系撥水層を順次積層形成している。
また、特許文献2の場合は、撥水層をノズル内壁にまで回りこませて、界面を保護しているが、ノズル板液室側の一部やノズル内壁に撥水層が存在するため、吐出性能の低下、液充填性の低下の問題点がある。
前記ノズル板表面上の吐出側(図3の16)に、
チタン(チタン層11)あるいはチタン酸化膜が形成され、該チタンあるいはチタン酸化膜上にシリコン酸化膜(シリコン酸化膜層12)が形成され、該シリコン酸化膜上に撥水層(撥インク層13)が形成され、
前記ノズル板表面上の前記液室側(17)とノズル孔内壁に、
シリコン酸化膜(シリコン酸化膜層12)が形成され、
前記チタンあるいはチタン酸化膜は、前記シリコン酸化膜で覆われ、前記シリコン酸化膜とチタンあるいはチタン酸化膜の界面が接液面に露出していないことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
また、請求項3記載の発明は、前記ノズル孔内壁が、シリコン酸化膜(図4のシリコン酸化膜層12、18)で覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出ヘッドである。
また、請求項4記載の発明は、前記チタンあるいはチタン酸化膜の端部(図4の19)が、ノズル孔内壁内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッドである。
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液体吐出装置である。
請求項2記載の発明によれば、吐出面をブレードでワイピングを行い吐出面に負荷を加わった時、膜構成において、膜の端部をワイパーブレードでワイピングすると端部から剥がれが発生しやすい。シリコン酸化膜の端部はノズル孔内壁内にあるので、端部がワイピングブレードに接触することがない。そのため、ワイピングによる端部からの剥がれを防止することができ、耐久性の高い膜構成が実現できる。
請求項4記載の発明によれば、チタン層あるいはチタン酸化膜層の端部はノズル孔内壁内にあるので、端部がワイピングブレードに接触することがない。そのため、ワイピングによる端部からの剥がれを防止することができ、耐久性の高い膜構成が実現できる。
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5記載の耐久性の高い液体吐出ヘッドを搭載したので、長期間にわたり高画質の印字が可能な液体吐出装置が実現可能であり、メンテナンス回数などを低減することができる。
本発明は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の被記録媒体に対して「記録」を行うプリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる発明である。
なお、「記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、全面あるいはパターン等の意味を持たない画像を被記録媒体に付与することをも意味し、画像形成、印写、印字、印刷も同義語で使用する。
図1に示すように、ノズル板1は、ノズル孔2が穿設された基板表面3に設けられた、図示省略の下地膜と、該下地膜上に設けられた撥水膜(図示省略)とからなる。
次に、第1の実施例のノズル板の製造方法を説明する。
図2(a)〜(f)、図3(g)〜(j)は、第1の実施例のノズル板1Aの製造工程を示す図である。
図2(a):シリコン基板5に導電層となるチタン膜7を成膜する。
図2(b):厚さ1μmのレジストパターン8を、フォトリソ技術により形成する。
図2(c):チタン膜7を導電層として、電鋳によりニッケル9を30μmの厚さで成長させる。このとき、レジストパターン8よりもニッケル9の厚さに相当する分だけ、内側にニッケル9が入りこむ。その結果として、ニッケル9が開口された部分がノズル孔2となる。レジストパターン8は、最終的なノズル径とニッケルの入り込み量を加味して大きさを設計する。
図2(e):ノズル板1aの吐出側16に、撥水層の下地層となるチタン層11を10nmスパッタにより成膜する。
図2(f):続いて、下地層の2層目となるシリコン酸化膜層12を100nmスパッタにより成膜する。
なお、上記のダイキン工業社製「オプツールDSX」は、「アルコキシシラン末端変性パーフルオロポリエーテル」と称されることもある。
図3(i):DFRを貼り付けていない側(液室側17)にO2プラズマを照射し、裏側に回りこんだ撥インク層13を除去する。
図3(j):保護材14aを剥がしてノズル板1Aが完成する。
これに対し本実施例では、撥水層の下地層となるチタン層11は、基材であるニッケル9とシリコン酸化膜層12との中間層となり、ニッケル9とシリコン酸化膜層12の密着層として機能する。また撥インク層は、シリコン酸化膜と強固な結合を得ることができ、基材/チタン層/シリコン酸化膜層/撥水層という積層構造とすることにより、強固な密着性を確保できる。
本実施例では、ニッケル9上にチタン層を設けたが、チタン酸化膜層を用いても同様にニッケルとシリコン酸化膜層の密着層として用いることができる。
チタン層と基材界面、あるいはチタン層とシリコン酸化膜界面の密着性はよいが、液に対しては弱く、界面に液が触れると剥離が生じるという問題点があった。
これに対して、本実施例によれば、チタンあるいはチタン酸化膜を撥水層と密着性の高いシリコン酸化膜で覆って、シリコン酸化膜とチタン(あるいはチタン酸化膜)界面の露出をなくし、界面に液が触れることがないため、界面の剥離の問題がなくなる。
前記工法(第1の実施例)で作製したノズル板では、保護材14がノズル孔内に入り込むため、撥水層13はノズル孔内にも入り込んだ構成となる。実際には5〜10μm程度入り込むが、液室側の面やノズル孔の液室側には撥水層は除去されているので、吐出性能や液充填性には影響しない。
また、凹部は、ノズル孔周辺部へのワイピングブレードの当たりによるダメージを緩和させ、あるいは、紙ジャムなどで、紙が直接ノズル面に接触した場合に、ノズル孔周辺に当たりづらくするという効果も合わせもつ。
また、その真空蒸着は、図2(e)でのチタン膜11および図2(f)でのSiO2膜(シリコン酸化層)12の成膜から、一連の成膜をそのまま真空チャンバー内で実施することで、更によい効果が得られる。チタン膜11あるいはSiO2膜12を形成後、一旦真空チャンバーからワークを取り出した場合は、不純物などが表面に付着することにより密着性が損なわれるものと考えられる。
しかし、本実施例では、シリコン酸化膜12の端部15はノズル孔内壁内にあるので、端部15がワイピングブレードに接触することがない。そのため、ワイピングによる端部からの剥がれを防止することができ、耐久性の高い膜構成が実現できる。
次に、第2の実施例のノズル板の製造方法を説明する。
図4(a)〜(e)は、第2の実施例のノズル板1Bの製造工程の後半を示す図である。
本実施例では、吐出側のチタン層11とシリコン酸化膜層12を形成するところまでは、前記第1の実施例の図2(a)〜(f)と同じである。
続いての工程を、図4(a)〜(e)を参照しつつ説明する。
図4(b):その後、前記第1の実施例と同様に、吐出側16に撥インク層13を真空蒸着により成膜する。
図4(c):撥インク層13を成膜した側(吐出側16)に、保護材14bを貼り付ける。ここでは保護材14bとして、耐熱性のダイシングテープを用いた。
図4(d):保護材14bを貼り付けていない側(液室側17)にO2プラズマを照射し、裏側に回りこんだ撥インク層13を除去する。
図4(e):保護材14bを剥がして、ノズル板1Bが完成する。
また、本実施例では、液室側17の面にもシリコン酸化膜層18が形成されている。ノズル板1は、別に作製した液室と接着接合するが、シリコン酸化膜表面は接着剤と強固な結合が可能であり、接合強度の確保、接合耐久信頼性が高くなる。
前述したように吐出面16をブレードでワイピングを行う。この時のワイピングにより、吐出面に負荷が加わる。膜構成において、膜の端部をワイパーブレードでワイピングすると端部から剥がれが発生しやすい。
本実施例では、チタン層11あるいはチタン酸化膜層の端部19はノズル孔内壁内にあるので、端部19がワイピングブレードに接触することがない。そのため、ワイピングによる端部からの剥がれを防止することができ、耐久性の高い膜構成が実現できる。
そのため、チタン層の端部19は完全にシリコン酸化膜で覆われており、より確実にチタンあるいはチタン酸化膜の端部が保護され、非常に信頼性の高いノズル板を実現することができる。
なお、撥インク膜としては、前記フッ素系撥水材(商品名:オプツールDSX)以外に、シリコーン系撥水材など別の撥水剤も用いることができる。
次に、第3の実施例のノズル板の製造方法を説明する。
図5(a)〜(f)、図6(g)〜(j)は、第3の実施例のノズル板1Cの製造工程を示す図である。
図5(a):厚さ50μmのSUS材20を用意する。本実施例ではステンレス(SUS316)を用いた。
図5(b):図のようにテーパー部23とストレート部24を持つパンチ21によりプレス加工する。
図5(c):プレス加工で生じた凸部分25を研磨することにより開口して、ノズル板1cが形成される。
図5(d):ノズル板1cの吐出側に、撥水層の下地層となるチタン層11を10nmスパッタにより成膜する。
図5(e):続いて、下地層の2層目となるシリコン酸化膜層12を100nmスパッタにより成膜する
図5(f):液室側にシリコン酸化膜層18を100nmの厚さスパッタで成膜する。
図6(h):前記同様に、吐出側16に、保護材14cを貼り付ける。
図6(i):保護材14cを貼り付けていない側(液室側17)にO2プラズマを照射し、裏側に回りこんだ撥水層13を除去する。
図6(j):保護材14cを剥がしてノズル板1Cが完成する。
図7(a)〜(c)は、各種のノズル孔内壁形状の変形例を示すノズル板の断面図である。
前記第1〜第3の実施例では、ノズル孔内壁形状がラウンド形状のもの(第1と第2の実施例)、ストレート部とテーパー部を持つもの(第3の実施例)を例としたが、他の形状においても本発明は適用可能である。
図7(a)は、ストレート形状(1D1)、図7(b)はテーパー形状(1D2)、図7(c)は段差形状(1D3)の例である。ノズル内壁形状は、ここに示したものに限らず他種のものに適用可能である。
次に、本発明のノズル板を用いた液体吐出ヘッドを図8に基づいて説明する。
図8に示すように、液体吐出ヘッドLHは、流路ユニット31とアクチュエータユニット32を、フレーム33を介して一体に固定して構成されている。流路ユニット31は、ノズル板1、チャンバープレート35、および振動板36を積層し、アクチュエータユニット32の圧力発生手段である個々の圧電振動子37の伸縮により、圧力室38を縮小、膨張させてインク滴を吐出するように構成されている。
振動板36は、圧電振動子37の先端に当接する凸部42と、弾性変形可能なダイヤフラム部43と各圧力室38に、対向するように設けられている。また、フレーム33に設けられた共通液室41からの液供給口45が形成されている。また、共通液室41に面する領域にも、上述のダイヤフラム部43と同様のダイヤフラム部44が構成されている。
振動板36は、圧延製金属板48に、圧電振動子37の変位により弾性変形が可能で、インクに対する耐蝕性を備えた、例えばポリイミド(PI)やポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の高分子フィルム49を積層して構成されている。要所に貫通孔からなる位置決め孔を穿設されており、ダイヤフラム部43、44を形成すべき領域をエッチングして圧延製金属板48により凸部42を形成されている。
そして、振動板36の面外側(圧力室38と反対面側)に各圧力室38に対応して圧力発生手段としての圧電振動子37を接合している。これらの振動板36と圧力振動子37によって、振動板36の可動部分であるダイヤフラム部43を変形させる圧電型アクチュエータを構成している。
この液体吐出ヘッドLHでは、圧電振動子37を溝加工(スリット加工)によって分断することなく形成する。また、圧電振動子37の一端面には各圧電振動子(後述の複数の圧電振動子)に駆動波形を与えるためのFPCケーブル50を接続している。
さらに、振動板36の周囲にはフレーム33を接着剤で接合している。そして、このフレーム33には、ドライバIC52と少なくともベース部材51を挟んで反対側に配置されるように、圧力室38に外部から液体を供給するための共通液室41を形成している。この共通液室41は、振動板36の液体供給口45を介して流体抵抗部34および圧力室38に連通している。
共通液室41には、ダイヤフラム部44によってダンパー室53が形成され、液体吐出によって共通液室41内に発生する圧力波を減衰させ、液体吐出を安定させる。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、圧電振動子37の駆動部に対して選択的に20〜50Vの駆動パルス電圧を印加することによって、パルス電圧が印加された駆動部が積層方向に伸びてダイヤフラム部43をノズル方向に変形させ、圧力室38の容積/体積変化によって圧力室38内の液体が加圧され、ノズル孔2から液滴が吐出(噴射)される。
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例について図9(a),(b)を参照して説明する。図9(a)はインクジェット記録装置の外観斜視図、図9(b)はインクジェット記録装置の機構部の側面図である。
図9(a),(b)に示すように、このインクジェット記録装置IJは、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明を実施したインクジェットヘッドからなる液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納し、装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
2…ノズル孔
3…表面基板
5…シリコン基板
7…チタン膜
8…レジストパターン
9…ニッケル
10…凹部
11…チタン層
12,18…シリコン酸化膜層
13…撥インク層
14a,14b…保護材
16…吐出側
17…液室側
15,19…端部
LH…液体吐出ヘッド
IJ…インクジェット記録装置
Claims (6)
- 液滴を吐出させるノズル孔が形成されたノズル板を有し、前記ノズル孔が連通する液室内の液体を加圧して前記ノズル孔から液体を吐出させる液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル板表面上の吐出側に、
チタンあるいはチタン酸化膜が形成され、該チタンあるいはチタン酸化膜上にシリコン酸化膜が形成され、該シリコン酸化膜上に撥水層が形成され、
前記ノズル板表面上の前記液室側とノズル孔内壁に、
シリコン酸化膜が形成され、
前記チタンあるいはチタン酸化膜は、前記シリコン酸化膜で覆われ、前記シリコン酸化膜とチタンあるいはチタン酸化膜の界面が接液面に露出していないことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記チタンあるいはチタン酸化膜を覆ったシリコン酸化膜の端部が、ノズル孔内壁内にあることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
- 前記ノズル孔内壁が、シリコン酸化膜で覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出ヘッド。
- 前記チタンあるいはチタン酸化膜の端部が、ノズル孔内壁内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
- 前記チタンあるいはチタン酸化膜の端部は、前記ノズル板表面上に吐出側に形成したシリコン酸化膜と、前記ノズル板表面上の前記液室側とノズル孔内壁に形成したシリコン酸化膜とが一体化していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
- 請求項1〜5のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液体吐出装置。
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