明 細 書 スパークプラグ 技術分野
本発明は、 内燃機関用スパークプラグに関する。 背景技術
従来のスパークプラグには、 碍子の先端面から突出するように配設された中心電 極と、 この中心電極の端面に平行に一端が配設され、 他端が主体金具に接合された 平行接地電極とを備え、 その中心電極と平行接地電極との間のギヤップに火花放電 させて燃料混合ガスに着火するものがある。
また、 燃料混合ガスの着火性を向上させるため、 特開平 5— 3 2 6 1 0 7号公報 及び特開平 7— 1 3 0 4 5 4号公報には、 中心電極の端面に平行に対向する接地電 極の他に、 中心電極の側周面に端面が対向した補助接地電極を設けたスパークブラ グが提案されている。 これらの補助接地電極を配設するのは、 その端面と中心電極 の側周面との間のギャップに飛火させることが目的ではなく、 補助接地電極の存在 により平行接地電極と中心電極の間の電界分布を改善し、 より低い放電電圧で平行 接地電極と中心電極の間のギヤップに飛火させることにより着火性を向上させるこ とに目的がある。 このため、 これらのスパークプラグは構造的に見て、 補助接地電 極の端面の端縁を必ずしも碍子の先端面の近傍に位置させるものではなかった。 さらに、 特開平 9 _ 1 9 9 2 6 0号公報には、 中心電極の端面に対向する平行接 地電極の他に、 碍子の端面の近傍に補助接地電極を設けたものも提案されている。 しかしながら、 上記特開平 5— 3 2 6 1 0 7号公報及び特開平 7— 1 3 0 4 5 4 号公報に記載のスパークプラグはいずれも、 いわゆる 「くすぶり (carbon
foul ing) 」 が生ずると、 所定位置での火花放電が生じにくくなるという問題点があ つた。 内燃機関が所定温度において、 その所定回転数以上で回っている定常運転時 は、 スパークプラグの碍子の脚長部は適度に温度が上昇し、 燃焼室内部に位置する 碍子の端面近傍の表面温度は 5 0 0 °C程度に上昇する。 この程度に温度が上昇する と、 碍子の表面に付着したカーボンは燃焼して消失するので、 碍子の表面は清浄に 保たれる。 このため 「くすぶり」 による問題は生じない。 一方、 内燃機関の温度が 極端に低く、 その回転数も低い低負荷運転時には、 碍子の表面の温度が上がらず碍 子の表面にカーボンが付着蓄積して、 「くすぶり」 の状態になる。 これがさらに進 むと、 中心電極と接地電極との絶縁が低下して火花放電が不能になり、 エンジンス トールにいたる。
また、 上記特開平 9— 1 9 9 2 6 0号公報記載のスパークプラグは、 平行接地電 極から中心電極までの距離 (気中ギャップ) 、 補助接地電極から中心電極までの距 離 (セミ沿面ギャップ) 、 及び補助接地電極の端面から碍子の側周面までの距離 (碍子ギャップ) の関係は明らかにされていない。
さらに、 特開昭 5 9 - 7 1 2 7 9号公報には碍子の側周面に対向して接地電極を 配設したセミ沿面放電型スパークブラグが開示されている。 このセミ沿面放電型ス パークプラグでは、 火花が碍子の表面に沿って走るため碍子の表面に付着したカー ボンは焼き切られ、 「くすぶり」 の問題は小さい。 しかし、 火花が絶えず碍子の表 面に沿って走るため碍子表面が火花による損傷を受けるという、 いわゆる 「チャン ネリング」 の問題が生じる。 このため、 スパークプラグの寿命が短いという問題点 があった。
そこで、 本発明は、 「くすぶり」 に強く、 かつ、 着火性にも優れ、 かつチャンネ リングを減少させたスパークプラグを提供することを目的とする。 発明の開示
上記の目的を達成するため、 本発明のスパークブラグは以下の基本構造を有する c すなわち、 本発明のスパークプラグは、 中心貫通孔を有する碍子と、 中心貫通孔に 保持され碍子の端部に配設された中心電極と、 碍子の端部を自身の端面から突出す るように保持する主体金具と、 その主体金具の先端面に一端が接合され他端の側面 が中心電極の端面に平行に配設された平行接地電極と、 主体金具に一端が接合され 他端が中心電極の側周面及び 又は碍子の側周面に対向するように配設された複数 のセミ沿面放電接地電極とを備えたものであって、 平行接地電極と中心電極の端面 とにより気中ギャップ (α ) が形成されているとともに、 セミ沿面放電接地電極の 端面と、 中心電極の側周面との間にセミ沿面ギャップ (/3 ) が形成されている。 さ らに、 本発明のスパークプラグにおいては、 セミ沿面放電接地電極の端面と、 この 端面と対向する碍子の側周面との間に碍子ギャップ (γ ) が形成されており、 気中 ギャップ (α ) の距離 ct とセミ沿面ギャップ (i3 ) の距離 ] 3 とが、 ひぐ β の関係 を満足させるようにする。 また、 気中ギャップ (ct ) の距離ひ と碍子ギャップ ( γ ) の距離 γ とが、 α > Ί の関係を満足する。 なお、 本明細書においては、 発明 の構成要素としてのギャップを示す参照符号 (ひ、 βヽ y ) を、 ギャップの大きさ 示す符号として用いている場合がある。 この場合、 構成要素としてのギャップを示 す場合には、 それぞれ G a、 G β、 の参照符号を用い、 各ギャップの大きさを α、 β、 γにて表すことも可能であるが、 本明細書では記載の煩雑化を避けるため に両者に共通の参照符号を用いた。
このような関係を満足させると、 セミ沿面ギャップ (J3 ) の距離 j3 より気中ギヤ ップ (α ) の距離ひ の方が小さい (ひく ]3 ) から、 「くすぶり」 の状態ではない正 常時には、 平行接地電極との間の気中ギャップ (ひ) で火花放電が生じる。 一方、 気中ギャップ (ひ) の距離 α より碍子ギャップ (γ ) の距離 γ は小さい (γ < α ) 。 従って、 碍子の先端面がカーボンにより汚損された 「くすぶり」 の状態にな ると、 セミ沿面放電接地電極の端縁と中心電極の側周面の間に、 碍子の端面に沿つ
てセミ沿面放電と称する火花放電が生ずる。 セミ沿面放電による火花は碍子ギヤッ プ (γ ) を飛んだ後、 碍子の表面に沿って走る (電圧極性が反転している場合はこ の逆) 。 何回かセミ沿面放電を繰り返すと碍子の先端面に堆積したカーボンが焼き 切られて碍子の表面は清浄な状態に戻り、 再び碍子表面の絶縁が回復して 「くすぶ り」 が解消され、 火花放電はセミ沿面ギャップ (/3 ) から気中ギャップ (ひ) に戻 る。 なお、 本明細書においてセミ沿面ギャップ ( β ) の距離 /5 とは、 図 2に示され るように、 碍子の端面と同一平面上に位置する中心電極側周面とセミ沿面放電接地 電極との距離を、 スパークプラグの軸線に対して直角方向に測定した場合の最小距 離を言う。 また、 碍子ギャップ (γ ) の距離 γ とは、 碍子とセミ沿面放電接地電極 との最短距離を言う。
上記基本構造を有したスパークプラグでは、 殆どの時間において平行接地電極と の間の気中ギャップ (α ) で火花放電が生じ、 碍子の表面がカーボンにより汚損さ れた 「くすぶり」 の状態の時にのみセミ沿面放電接地電極との間のセミ沿面ギヤッ プ (j3 ) でセミ沿面放電が生じて燃焼室の混合ガスに着火する。 かかるスパークプ ラグは、 殆どの時間を気中ギャップ (α ) での火花放電で混合ガスに着火するから 着火性に優れる。 また、 セミ沿面放電により碍子の表面に堆積したカーボンを焼き 切る自己清浄作用を備えるから、 このスパークプラグは 「くすぶり」 に対して極め て強い。 さらに、 セミ沿面放電が生じる頻度は低くなり、 その放電時間がごく短時 間で終了するから火花による 「チャンネリング」 の量は著しく減少するとともに、 チャンネリングは殆ど発生しなくなるため、 このスパークプラグの耐久寿命は十分 に長くなる。
なお、 図 2 3に示すように、 セミ沿面放電接地電極 (1 2 , 1 2 ) を 2本有する場 合における本発明のスパークプラグ (1 0 0 ) を直噴式内燃機関 (1 5 0 ) に取り 付ける際には、 インテークバルブ (2 0 1 ) とェキゾ一ストバルブ (2 0 3 ) の中 間方向にセミ沿面放電接地電極 (1 2, 1 2 ) を位置させると良い。
図 2 3に示す例では、 シリンダヘッド (S) に取り付けられたスパークプラグ (1 00) の中心軸線 (O) を含む仮想的な基準面 (S P) と、 同じく中心軸線 (O) を含んで基準面 (S P) と直交する仮想的な補助基準面 (C S P) を考えた とき、 基準面 (S P) に関して片側にインテークバルブ (20 1 , 20 1) 力 反 対側にェキゾーストバルブ (203, 20 3) 力 それぞれ基準面 (S P) からの 距離が略等しくなる位置関係にて配置されている。 なお、 インテークバルブ (20 1, 20 1) とェキゾ一ストバルブ (203, 203) とは、 それぞれ補助基準面 (CS P) の両側に各 1の都合 2つずつが配置されている。 そして、 セミ沿面放電 接地電極 (1 2) は、 主体金具 (5) への取付基端位置が補助基準面 (C S P) よ りも基準面 (S P) に近くなるように、 ここでは略基準面 (S P) 上に位置するよ うに配置されている。 また、 平行接地電極 (1 1) は、 主体金具 (5) への取付基 端位置が基準面 (S P) よりも補助基準面 (C S P) に近くなるように、 ここでは 略補助基準面 (C S P) 上に位置するように配置されている。
上記のようなスパークプラグ (1 00) の取付方向は、 一般的な平行接地電極の みを持つスパークプラグの取付方向とは異なる。 すなわち、 内燃機関 (1 50) の 燃焼室 (CR) 内部における吸気の流れ方向はインテークバルブ (20 1) 力、らェ キゾース トバルブ (203) に向かう方向に流れるのであるが、 本発明者らが検討 したところによると、 キヤビティがピストン (P) の中央部を含むインテークバル ブ側に偏芯して存在することによる縦方向の流れ (タンブル) と、 ピス トン (P) が上昇することによって燃焼室 (CR) 壁面周囲からキヤビティ方向に生じる横方 向の流れ (スキッシュ) とを考慮する必要のある直噴式内燃機関に適用される本発 明のスパークプラグ (1 00) では、 セミ沿面放電接地電極 (1 2) の着火性を確 保できる方向に向けることが重要であることがわかった。 そこで、 上記のような位 置関係にてスパークプラグ (1 00) を取り付ければ、 燃焼室壁面に近い位置に存 在するためにスキッシュの影響を受けやすいセミ沿面放電接地電極 (1 2) による
火花は吸気の流れに対して垂直に近くなる方向に飛火する形となる。
特に、 平行接地電極 (1 1) に対して両側 90° の位置に 2個のセミ沿面放電接 地電極 (1 2, 1 2) を持つタイプのスパークプラグ (1 00) では、 平行接地電 極 (1 1) の主体金具 (5) への溶接部をインテークバルブ (20 1) 側に向ける ことが特に効果的である。 即ち、 平行接地電極 (1 1) が主体金具 (5) に溶接さ れていない方向をェキゾ一ス トバルブ (20 3) の方向に向けると良い。 平行接地 電極 (1 1) による火花は、 タンブルとスキッシュとの両方の影響を受けるため、 スパークブラグの斜め先端側から吸気の流れを受けることになる。 この吸気の流れ は、 相当に大きな流れであるため、 逆方向に向けられた場合には、 火花の発生中に 火花が平行接地電極 (1 1) の存在しない位置にまで流されて途切れ易くなる。 こ のように位置させることによって、 たとえ火花が流されても平行接地電極 (1 1) が存在するために途中で途切れ難くなり着火性の低下が起こりにくくなる。
なお、 インテークバルブ (20 1 , 20 1) 及びェキゾーストバルブ (203, 203) を各 2個有するタイプの内燃機関 (即ち、 4バルブ内燃機関) では、 互い に向かい合うインテークノくノレブ (2 0 1, 20 1) とェキゾ一ストバルブ ( 20 3 2 0 3) の対で上記の考えを当てはめれば良い。 つまり、 次のように考えれば良い 一般に 4バルブ内燃機関では、 内燃機関の前方向から見ると三角屋根状をしたペン トルーフタイプのシリンダヘッド (S) の片側 (すなわち、 基準面 (S P) に関し ていずれか一方の側) にインテークバルブ 2個 (20 1, 20 1) 、 他方の側に ェキゾ一ストバルブ 2個 (20 3, 20 3) が配置されている。 また、 補助基準面 (C S P) に関して同じ側にあるインテークバルブ (20 1) 及ぴェキゾース トバ ルブ (20 3) 同士は、 基準面 (S P) を挟んで互いに向かい合う形となる。 そし て、 中心軸線 (O) に関して、 これら互いに向かい合うインテークバルブ及びェキ ゾーストバルブの対 (20 1, 203) の中間の角度位置に各セミ沿面放電接地電 極 (1 2, 1 2) が位置するように、 スパークプラグ (1 00) を取り付ければよ
いのである。
次に、 上記のような基本構造をもつスパークプラグについて本発明者らが検討し たところによると、 火花の発生位置は電極間距離の単純な大小関係で一義的に決定 されるものではなく、 条件によっては距離が大きい場所でも火花を生じる場合があ ることがわかった (以下、 本明細書では、 これを 「反転飛火現象」 と称する) 。 こ うした反転飛火現象が起こると、 「くすぶり」 が生じた場合、 本来期待されるべき 碍子ギャップ での飛火ではなく、 主体金具の先端面と碍子との間で火花を生 じてしまう不具合 (以下、 本明細書において、 これを 「金具/碍子飛火」 と称する) などを生ずる。 本発明に係るスパークプラグのいくつかの構成は、 反転飛火現象に 基づく金具/碍子飛火等の不具合の具体的な解決手段を与えるものである。
例えば金具/碍子飛火を防止できることは、 特に層状燃焼方式の直噴式内燃機関に おいて効果が非常に大きい。 即ち、 直噴式内燃機関では主体金具の先端面と碍子と の間で火花を生じることによって、 着火性が低下しやすい。 これは、 火花の発生す る位置が大きく影響しているものと考えられる。 つまり、 層状燃焼方式の内燃機関 では、 燃焼室内の濃混合気の層が非常に狭い範囲にあり、 その範囲を外れると混合 気は非常に薄くなる。 そして、 該濃混合気層に対して確実に火花を飛ばせるか否か 力 S、 混合気への正常な着火の成否の鍵を握ることになる。 すなわち、 濃混合気層が スパークブラグの正規の火花放電ギヤップである中心電極と接地電極との間に到達 した際に、 該位置で確実に火花を生じることができれば、 この火花によって混合気 に着火することができる。
しかし、 既に説明した通り、 濃混合気層は非常に狭い範囲でしか形成されないの で、 正規の火花放電ギャップで火花が生じず、 例えば金具/碍子飛火のように、 正規 の火花放電ギャップ以外の位置 (すなわち、 燃焼室の壁面近傍) で火花が生じてし まうと、 この位置での混合気は非常に薄いため、 火花が生じているにもかかわらず 混合気に着火しないという現象、 即ち、 失火が起こってしまうのである。 このよう
な燃焼室の壁面近傍のような位置で火花が生じてしまうと、 その燃焼サイクルでは 失火となるため、 内燃機関の出力が低下するとともに、 未燃焼の混合気が排気管か ら排出されるためェミッション規制を満足できなくなるおそれがある。 さらに、 未 燃焼のガスは排気管から排出されきらずに燃焼室の壁面に付着し、 同時にスパーク プラグにも付着することになるため、 碍子が燃料で濡れた状態になって次サイクル での火花発生をさらに生じ難くする。
従って、 反転飛火現象ひいては金具/碍子飛火を防止して、 気中ギャップ (ひ) 若 しくはセミ沿面ギャップ (0 ) で確実に火花を発生させることができれば、 「くす ぶり」 を生じた場合においてもセミ沿面放電接地電極で火花を生じることにより 「くすぶり」 を焼き切ることができるようになる。 また、 直噴式内燃機関であって もセミ沿面放電接地電極で火花を生じるのであれば濃混合気内であることから着火 性の低下を抑制することができる。 すなわち、 この発明は、 通常の内燃機関用とし て使用する場合はもちろんのこと、 直噴型内燃機関用としても使用することが可能 であり、 特に直噴型内燃機関に適用した場合に、 「くすぶり」 の抑制と 「チャンネ リング」 の減少、 及び中心電極の側面での消耗を減少させる効果を一層顕著に発揮 することができるのである。 しかしながら、 前述の特開平 9— 1 9 9 2 6 0号公報 を始めとする従来技術においては、 こうした観点からのスパークプラグの改良に関 する具体的な提案は何らなされていなかった。
以上を前提として、 以下、 本発明のスパークプラグのさらに詳細な各構成につい て説明する。
まず、 第一の構成は、 前記した基本構成に加え、
気中ギャップ (ひ) 力 S ひ ^ 1 . l m mであり (1ー①) ; 碍子ギャップ (Ύ ) が 0 . 5 mm≤y≤ 0 . 7 mmであり ( 1—②) ; 主体金具の先端面の位置における碍子と主体金具との径差 δ が δ≥ 3 . 6 mm ( 1ー③) ;
であることを特徴とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、 前記基本構造を有するスパークプラグにお いて、 気中ギャップ (α ) 、 碍子ギャップ (γ ) 及び碍子と主体金具との径差
( δ ) が上記 (1—①) 〜 (1—®) の関係を満たすことで、 例えば 「くすぶり」 が生じた場合であっても前記した反転飛火現象ひレ、ては金具/碍子飛火が効果的に抑 制され、 碍子ギャップ (γ ) での火花を確実に生じえることを初めて実験的に実証 し、 上記第一の構成の発明を完成するに至ったものである。
気中ギャップ (α ) の大きさは、 要求される着火性のレベルや混合気の空燃比な どに応じて、 設計上種々の値に設定されうる。 また、 碍子ギャップ (γ ) も α > γ の関係を充足する必要があるので、 気中ギャップ (α ) の大きさに応じて適宜の範 囲に設定される。 そして、 上記第一の構成のスパークプラグにおいては、 気中ギヤ ップ (ひ) と碍子ギャップ ( ) とを (1—①) 及び (1—②) の範囲内に設定さ れることを前提とする。 そして、 この前提のもとにおいて、 主体金具先端面の位置 における碍子と主体金具との径差 δ を (1ー③) の範囲のものとすることが上記第 一の構成の要旨である。 すなわち、 径差 (δ ) をこのように設定することで、 「く すぶり」 を生じた場合においても、 セミ沿面放電接地電極で火花を生じれば碍子へ の汚損付着物を焼き切ることができる。 また、 直噴式内燃機関であってもセミ沿面 放電接地電極で火花を生じるのであれば、 濃混合気内であることから着火性の低下 を抑制することができる。 なお、 気中ギャップ (α ) の距離 α は、 無制限に小さく することはできず、 着火性確保及び汚損時など導電性の異物が付着したときの短絡 防止等を考慮して、 例えば 0 . 6 mm以上は確保することが有効である (これは、 本発明の他の構成に係るスパークプラグにおいても同様である) 。 また、 径差
( δ ) についても、 無制限に大きくすることはできず、 主体金具 ·中心電極の強度 確保及び碍子の耐電圧性確保等を考慮して、 例えば 5 . 4 mm以下にする有効であ り、 望ましくは、 5 . O mm以下にすると良い (これは、 本発明の他の構成に係る
スパークプラグにおいても同様である) 。
第二の構成に係るスパークプラグは、 前記した基本構成に加え、
気中ギャップ (α) は 0. 8mm≤ a≤ l . 0 mmであり ( 2—①) 、 碍子ギャップ (V) が 0. 5mm≤y≤ 0. 7 mmであり (2—②) 、 気中ギャップ (CK) と碍子ギャップ (γ) とが 0. 2mm≤ (α-γ) ≤ 0. 4 mm (2—③) 、
であることを特徴とする。 なお、 該第二の構成の発明は、 第一の構成の発明と組 み合わせることができる。
該構成のスパークプラグにおいては、 火花を発生電圧の低減を目的として、 気中 ギャップ (ひ) が幾分狭い (2—①) のような範囲に設定され、 碍子ギャップ
(γ) は (2—②) の範囲 (前記した第一の構成と同様) に設定する。 このとき、 気中ギャップ (α) と碍子ギャップ (γ) との関係 (α— Τ/) を上記 (2—③) の 範囲に設定することによって、 反転飛火現象ひいては金具/碍子飛火を効果的に抑制 できるようになる。 また、 新たな効果としては、 特に直噴式内燃機関においては、 失火が発生しない噴射終了時期の領域を広くすることができる。
一般に内燃機関では、 気中ギャップ (《) が広くなるほど着火性が向上する。 し かし、 気中ギャップ (α) が広くなると放電電圧が上昇することになる。 直嘖式内 燃機関では、 非常に 「くすぶり」 が生じ易いため、 通常の運転時でも 「くすぶり」 が発生する。 このような 「くすぶり」 が発生した状態では、 放電電圧が高いことは 失火を生じる可能性がより高くなる。 つまり、 直噴式内燃機関では、 クランク角に おけるスパークプラグに火花を発生させる点火時期、 及び燃料噴射の終了時期のそ れぞれについて、 失火を生じることのない範囲が広いほど着火性が良いとされてい る。
直噴式内燃機関では、 噴射直後の濃混合気領域が燃焼室内を徐々に移動しながら 拡散していくため、 燃料噴射の終了時期が早いほど、 スパークプラグで火花を発生
させる時において濃混合気領域が拡散して薄くなる傾向にある。 従って、 薄い混合 気領域で着火することが必要になるが、 混合気が薄いために同じギヤップ間隙であ つても放電電圧が上昇する。 一方、 上述したようにスパークプラグは通常 「くすぶ り」 の状態にあるため、 混合気が薄いことによる放電電圧の上昇とも相俟って、 主 体金具と碍子との間で火花、 すなわち金具/碍子飛火が発生しやすくなり、 この結果 失火を生じやすくなる。 また、 逆に燃料噴射の終了時期が遅いほど濃混合気中で火 花を発生させることになる。 この状態では安定して燃焼を生じるのであるが、 混合 気が濃いために、 たとえ安定して燃焼していても、 より 「くすぶり」 を生じ易くな る。 この結果、 主体金具と碍子との間で火花を発生してしまい、 失火を生じる可能 性がある。
すなわち、 本発明者が検討したところによると、 一般的な内燃機関では、 気中ギ ヤップ (ひ) が広いほど着火性が良くなるのであるが、 直噴式内燃機関では、 ギヤ ップが広いために放電電圧が上昇し、 却つて着火性が低下するという現象が生じる ことがわかった。 上記第二の構成の発明では、 気中ギャップ (ひ) と碍子ギャップ ( y ) を (2—①) に示す適度な範囲に設定するとともに、 気中ギャップ (ひ) と 碍子ギャップ (γ ) との関係を (2—②) に示す範囲に適切に設定することで、 主 体金具の先端面と碍子との間で火花が発生することを抑制し、 安定燃焼領域を広く することができるのである。
なお、 安定燃焼領域を広くすることが望ましいのは以下の理由による。 即ち、 直 噴式内燃機関では、 点火時期と燃料噴射時期とを運転条件に対して一定になるよう に制御するのであるが、 スロットル開度の急激な変化等を行なうと、 制御とスパー クプラグ回りの雰囲気変化とが整合しない場合が生じる。 このような状態では、 燃 料噴射時期にずれが生じたり、 点火時期にずれが生じたり等の過渡的な現象等によ りスパークプラグ回りの混合気が薄くなつたり、 濃くなつたりすることがある。 燃 料の噴射時期と点火時期とが離れる傾向になると、 混合気が薄い状態になるため、
放電電圧が上昇する。 また、 噴射時期と点火時期とが近づく傾向になると、 更に濃 い混合気中で火花が発生することになるためくすぶりがより進むことになる。 この ため、 特性的に安定燃焼領域が広いスパークプラグを用いることによって、 このよ うな過渡的な現象に対しても失火を生じることなく良好な燃焼を確保できる。
なお、 中心電極の先端部が縮径されているとともに、 碍子の先端部を軸線方向前 方側から平面視した場合の中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅は、 2 . 2 mm以下であって、 かつ、 中心電極の先端面における外径の 2倍以上にする ことが望ましい。 このような寸法関係に設定することで、 放電電圧を低減させるこ とができるとともに、 着火性を確保しつつ燃料が中心電極と接地電極との間で保持 されてしまう、 いわゆるブリッジを生じにくくすることができる。
第三の構成は、 前記した基本構成に加え、
気中ギャップ (α ) 力 S α≤ 0 . 9 mmであり (3—0)) 、
碍子ギャップ (y ) が 0 . 5 mm≤Y≤ 0 . 7 mmであり (3—②) 、 主体金具の先端面の位置における碍子と主体金具との径差 δ 力 2 . 8 mm以上 ( 3—③) 、
であることを特徴とする。 該第三の構成は、 第一又は第二の構成の少なくともい ずれかと組み合わせることができる。
上記第三の構成のスパークプラグにおいては、 気中ギャップ (α ) と碍子ギヤッ プ (γ ) とを (3—①) 及び (3—②) の範囲内に設定されることを前提とする。 気中ギャップ (α ) は、 第二の構成と同様の理由により、 第一の構成における (1 ー①) よりも狭い範囲を選択している。 そして、 この前提のもとにおいて、 主体金 具先端面の位置における碍子と主体金具との径差 (δ ) を (3—③) の範囲に設定 することで、 「くすぶり」 を生じた場合においても、 セミ沿面放電接地電極で火花 を生じれば碍子への汚損付着物を焼き切ることができる。 また、 直噴式内燃機関で あってもセミ沿面放電接地電極で火花を生じるのであれば濃混合気内であることか
ら着火性の低下を抑制することができる。
第四の構成は、 前記した基本構成に加え、
該気中ギャップ (α ) 力 1 mmであり (4—①) 、
該碍子ギャップ (γ ) I 0 . 5 mm≤ y≤0 . 7 mmであり (4—②) 、 かつ、 前記セミ沿面放電接地電極の配設個数が 3個以上であること (4ー③) 、 を特徴とする。 該第四の構成は、 前記第一乃至第三の構成の少なくともいずれか と組み合わせることができる。
上記第四の構成のスパークプラグにおいては、 気中ギャップ (α ) と碍子ギヤッ プ (γ ) との設定範囲 (4—①) 及び (4ー②) は、 前記した第一の構成における ( 1—①) 及び (1—©) と同じである。 そして、 第一の構成と異なる点は、 前記 径差 (δ ) とは別の手段、 具体的には、 セミ沿面放電接地電極の配設個数が 3個以 上となすことにより、 前記した反転飛火現象ひいては金具/碍子飛火の発生頻度の減 少を図る点にある。
すなわち、 セミ沿面放電接地電極の配設個数が増えるということは、 セミ沿面放 電接地電極で火花が発生する確率が高められることを意味する。 従って、 セミ沿面 放電接地電極が少なければ金具/碍子飛火が生じてしまうようなスパークブラグ回り の雰囲気条件になったとしても、 主体金具の先端面に近い位置に有るセミ沿面放電 接地電極をより多くすることによって、 「くすぶり」 を生じた場合においてもセミ 沿面放電接地電極で火花を確実に生じさせることができ、 「くすぶり」 による汚損 付着物を焼き切ることができる。 また、 直噴式内燃機関であってもセミ沿面放電接 地電極で火花を生じるのであれば濃混合気内であることから着火性の低下を抑制す ることができる。
なお、 スパークプラグを内燃機関に装着した場合に、 吸気バルブから燃焼室内に 吸入されてくる比較的低温度の吸入空気によって、 碍子の先端部は冷却されるので あるが、 セミ沿面放電接地電極の数が増加するに従って、 碍子の先端部がセミ沿面
放電接地電極の陰に隠れてしまい冷却され難くなることがある。 これは、 プレイグ 二ッションを誘起する原因ともなるので、 これを考慮してセミ沿面放電接地電極の 配設個数は 4個以下にすることが望ましい。 なお、 該第四の構成においても、 前記 第一の構成における前記径差 δ の数値範囲 (1ー③) を満足するように構成するこ とが可能である。
第五の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、
碍子の先端部に直管状部を有し、 碍子の軸線方向において先端部の位置する側を 前方側としたときに、 直管状部の後端位置に対しセミ沿面放電接地電極の端面の後 端側縁が一致しているか又は前方側にあり、 先端面の高さ位置とセミ沿面放電接地 電極の端面の後端側縁の高さ位置との軸線方向における段差 Ε (単位: mm) と、 碍子の先端面から側周面に至る曲面の曲率半径 R (単位: mm) との差が、 R— E ≤0 . 1 mmである (5—①) であることを特徴とする。 該第五の構成は、 前記第 一乃至第四の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。 ここで、 段 差 Eは、 碍子の中心軸線方向において、 先端側に向かう方向を正方向として定義す る。 従って、 碍子の先端面の高さ位置がセミ沿面放電接地電極端面の後端側縁の高 さ位置よりも先端側 (前方側) にあるとき、 段差 Eは正の数となり、 逆の場合は負 の数となる。
該第五の構成によると、 セミ沿面放電接地電極の後端側縁から中心電極に向かう 火花が、 碍子の先端部に遮られることによってセミ沿面放電接地電極の火花発生位 置から中心電極に向けて直線上に火花が発生せず、 碍子の周方向に曲げられる。 こ の結果、 火花の発生毎に火花の放電経路が替わるため、 碍子の先端面を這っていく 火花の範囲が広がり、 チャンネリングを低減することができるとともに、 広い範囲 で 「くすぶり」 を火花清浄できる。
また、 碍子の周方向に曲げられる飛火は放電経路が長くなって火花発生電圧が高 くなるので、 そのような飛火を回避しょうとして、 セミ沿面放電接地電極の後端側
縁よりも、 碍子へのアタックが柔らかい前端縁側での飛火が増える傾向となる。 こ のため、 これもチャンネリング抑制に寄与する形となる。 また、 前端縁側での飛火 は着火性の向上にも有効であり、 失火等の不具合を効果的に抑制することができる。 特に、 前記した段差 E、 つまり、 中心軸線方向におけるセミ沿面放電接地電極端面 と碍子側周面とのラップ長さが小さレ、場合には、 セミ沿面放電接地電極の後端側縁 側での火花が、 飛火距離が比較的小さくなるためどうしても起こりやすくなる。 し かしながら、 碍子の先端面から側周面に至る曲面の曲率半径 Rとの間に、 前記した ( 5—①) の関係が成立するように調整することで、 前端縁側での飛火頻度を増や すことができ、 チャンネリング抑制あるいは着火性の向上に寄与する。 具体的には、 段差 Eの長さが 0 . 5 mm以下の、 ラップ長さの小さいスパークプラグにおいて本 構成は特に波及効果が大きい。 Eの値の下限値は、 セミ沿面放電が不能とならない 範囲で適宜定められ、 例えば図 4のように負の数となる場合、 その絶対値が気中ギ ヤップ α よりも小さくなるように設定される。
また、 本構成では碍子に直管状部を形成する。 碍子の先端部を直管状にすること で、 内燃機関内での燃焼サイクルの際に先端部に受けた熱が碍子の主体金具との保 持部に向かうことを抑制する作用があるため、 碍子の先端温度を上昇しやすくする ことができる。 従って、 通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であって も、 碍子の先端部温度を上昇しやすくすることができ、 「くすぶり」 によって堆積 したカーボン等の汚損付着物を焼き切ることが容易になる。 また、 このような構成 であれば、 碍子の先端部の熱ボリュームが小さいことから、 吸気管から吸入されて きた比較的低温度のガスによって碍子の冷却が行われやすい。 このため、 内燃機関 内での燃焼サイクルの際に、 プレイダニッシヨンが発生するほどの温度上昇は生じ にくくなる。
なお、 直管状部の後端位置よりもセミ沿面放電接地電極の端面の後端側縁が後方 側にあると、 ギャップの寸法設定が困難になるので、 直管状部の後端位置に対しセ
ミ沿面放電接地電極の端面の後端側縁はこれと一致しているか又は前方側となるよ う位置関係を設定する。 他方、 直管状部の長さが必要以上に長くなりすぎると、 セ ミ沿面放電接地電極にて発生する火花が直管状部に沿って大きく後方側に垂れ下が りやすくなり、 着火性が損なわれてしまう不具合につながる場合がある。 また、 直 管状部の長さは最低 0. 5 mm以上確保されていないと、 ギャップの寸法設定が困 難になるとともに、 上記の効果が十分に得られなくなる場合がある。 直管状部の長 さは、望ましくは 0. 5 mm以上 1. 5 mm以下の範囲で設定することが望ましい。 第六の構成のスパークブラグにおいては、 前記した基本構成に加え、
このスパークプラグが適用されるスパークプラグの J I S規格 ( J I S : B 8 0 3 1 ) 若しくは当該 J I S規格中に対応表示される I SO規格 (I S O I 9 1 0、 I S O 2 7 04, I S O 2 34 6 , I S O/D I S 8 4 7 9, I S O 2 7 0 5、 I S O 2 3 44, I S 02 34 5、 I S 02 34 7、 I S O 34 1 2 ) の中で定めら れた A寸法よりも先端側に突出する碍子の突出量 Fが、 3. 0mm≤ F≤ 5. 0 m m (6—①) であることを特徴とする。 該第六の構成は、 前記第一乃至第五の構成 の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
上記第六の構成によると、 碍子の突出量 Fを (6—①) の範囲とすることで、 混 合気への着火性が向上するとともに、 碍子の先端温度を上昇させることができる。 また火花発生位置と比較して、 主体金具の先端面と碍子との間の位置では、 混合気 の濃度が非常に薄くなるが、 碍子の突出量 Fを (6—①) の範囲とすることで、 こ のように混合気が薄くなる主体金具の先端面と碍子との間において、 火花が発生す るのに必要な電圧が上昇し、 この位置での火花発生を更に抑えることができる。 こ の結果、 失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲を広くすることができる。
第七の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、
気中ギャップ (α) 力 α≤ 1. 1 mmであり ( 7—①) 、
碍子ギャップ (γ) 力 0. 5mm≤ y≤ 0. 7 mmであり ( 7—②) 、
碍子の軸線に平行な仮想平面に対し、 該碍子を正射影にて表したとき、 先端面を 示す線を外方へ延長した第 1の延長線と、 碍子のセミ沿面ギャップ ( ) 部に臨む 軸線を挟んだ両側の側周面を示す 2本の線を先端面の方向へ延長した 2本の第 2の 延長線との交点間の距離 (以下、 単に 「碍子先端径」 4> D (単位: mm) という) とセミ沿面放電接地電極の幅との差 φ (単位: mm) 力 φ≤ 1 · 8 mmである (7 —③) 、
ことを特徴とする。 該第七の構成は、 前記第一乃至第六の構成の少なくともいず れかと組み合わせることができる。
碍子先端径 とセミ沿面放電接地電極の幅との差 φ を小さくすることによって、 セミ沿面放電接地電極で発生する火花が碍子の後方側に大きく垂れ下がりやすくな ることを防止することができる。 この結果、 失火を生じない燃料噴射終了時期の範 囲を広くすることができ、 燃料リーン状態での着火性を向上させることができる。 この差が大きくなると、 セミ沿面放電接地電極と中心電極との間で火花が発生する 際に、 碍子の先端部外周を大きく回り込むことになる。 これは、 以下の理由による と考えられる。 即ち、 セミ沿面放電接地電極端面の後方角部から斜め後方に向けて 火花が発生した場合に、 その火花が碍子の先端部にぶっかった後に中心電極に達す る。 碍子の先端部にぶっかった際には、 火花は斜め後方に向けて外周面に沿って這 うことになり、 その後、 向きを変えて中心電極先端側周面方向に這うことになる。 従って、 碍子先端径とセミ沿面放電接地電極の幅との差が大きいと、 碍子外周面に 沿って斜め後方に火花が這う量が大きくなるため、 火花が大きく垂れ下がるものと 考えられる。
第 1の延長線及び 2本の第 2の延長線の交点間の距離と前記セミ沿面放電接地電 極の幅との差 が (7—③) の関係を満足するためには、 第 1の延長線と碍子のセ ミ沿面ギャップ (/3 ) 部に臨む側周面を示す線を先端面の方向へ延長した第 2の延 長線との交点から、 第 1の延長線と中心貫通孔の延長線との交点までの最短距離と
して定義された碍子先端肉厚 p 力
p≤ 0 . 9 mm ( 7—④) となっていることが望ましい。
この関係を満足すると碍子先端肉厚を薄くすることができるため、 電界強度が集 中することによる放電電圧の低減が可能となるとともに、 セミ沿面ギャップ ( β ) における放電電圧を抑えてチャンネリングの低減が可能となる。 さらに、 碍子先端 の温度が上昇しやすくなるため、 くすぶりの生じやすい直噴式内燃機関における自 己清浄性を向上させる効果が大きい。 また、 碍子を全体に薄くすることができるた め、 特に径の小さいスパークプラグでは、 主体金具と碍子との間隔を広く保つこと ができる。 なお、 碍子の肉厚が薄くなりすぎると、 碍子の貫通を生じる恐れが大き くなつてくるため、 碍子先端肉厚 ρ を 0 . 6 mmとすることが望ましく、 さら に望ましくは Ρ≥ 0 . 7とすると良い。
第八の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、
中心電極が碍子の先端面から突出する量 Hを H≤ 1 . 2 5 mm ( 8—①) となした ことを特徴とする。 該第八の構成は、 前記第一乃至第七の構成の少なくともいずれ かと組み合わせることができる。
特に直噴式内燃機関では、 高速運転時にセミ沿面ギャップ (3 ) で火花が発生す ると、 失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲が狭くなつてくる。 し力 し、 上記第 八の構成によれば、 中心電極が碍子の先端面から突出する量 Hを (8—①) のよう に選択することによって、 正規火花放電ギャップである気中ギャップ (α ) の位置 とセミ沿面放電接地電極による火花発生位置との差を更に小さくすることができる ( 従って、 火花発生位置によつて着火性の差が出やすレ、直噴式内燃機関であつても、
「くすぶり」 が生じた場合に発生するセミ沿面放電接地電極での火花位置で、 十分 な着火性を有する。 なお、 中心電極が碍子の先端面から突出する量 Ηは、 Η≤ 0 . 5 mmとすること力 中心電極の周囲に形成される火花の伝播経路が分散しゃすく なり、 耐チャンネリング性と 「くすぶり」 に対する清浄性とを高めることができる c
Hは負の数、 すなわち中心電極が碍子の先端面から引っ込んでいてもよいが、 この 場合、 H≥— 0. 3mmとなっていること (引っ込み深さが 0. 3mm以内である こと) 力 耐チャンネリング性及び 「くすぶり」 清浄性効果をさらに向上させる上 で望ましい。
第九の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、 気中ギヤッ プ (ひ) 、 セミ沿面ギャップ (J3) 及び碍子ギャップ (γ) とが、 α ^ Ο. 4 X
(β - y ) + の関係 (9—①) を満足することを特徴とする。 該第九の構成は、 前記第一乃至第八の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
このように気中ギャップ (ひ) 、 セミ沿面ギャップ (β ) 及び碍子ギャップ
(γ) とが上記 (9—①) の関係を満足することによって、 前記反転飛火ひいては 金具/碍子飛火の問題を効果的に抑制することができる。 また、 (9ー①) の関係を 満足するようにすることにより、 実際の内燃機関に装着した場合のように、 スパー クプラグのギヤップ周りの雰囲気ガスが流れを持っているような場合には、 主体金 具の先端面と碍子との間で火花がより発生しゃすくなる、 という点でも好都合であ るといえる。
上記第九の構成においては、 気中ギャップ (α) と碍子ギャップ (γ) とは、 (a - y ) ≤ 0. 4 mmを満足することが望ましい。 このような関係を満足するこ とによって、 チャンネリングに対して特に厳しい過給を行なう内燃機関や高圧縮比 の内燃機関でのチャンネリングを低減することができる。 ただし、 α— γ が 0. 2 mmより小さくなると、 セミ沿面放電接地電極側の放電頻度が下がり、 「くすぶ り」 に対する清浄効果が損なわれる場合があるので、 ひ _ γ は 0. 2 mm以上であ ることが望ましい。
一般に 「くすぶり」 を生じていない場合であっても、 火花は気中ギャップ (ひ) でのみ発生することはなく、 碍子ギャップ (γ ) でも発生することがある。 そして, 同一の条件で内燃機関を運転させていたとしても、 スパークプラグのギャップ間に
おける環境雰囲気にばらつきがあることから、 ギヤップ間で火花が発生するために 必要な電圧にもばらつきが生じえる。 従って、 火花発生の必要電圧が、 気中ギヤッ プ (α ) において碍子ギャップ (γ ) よりも低い場合には、 気中ギャップ (ひ) で 火花が発生する。
一方、 各ギャップで火花が発生するために必要な電圧にはばらつきがあるため、 その電圧の最小値と最大値とを測定すると、 気中ギャップ (ο と碍子ギャップ
( γ ) との各々の電圧幅が一部オーバーラップすることがある。 このオーバーラッ プする幅は各ギャップの間隙の大きさによってほぼ一義的に決定できる。 そして、 スパークプラグのギヤップ間の環境雰囲気に応じて火花発生のための必要な放電電 圧が上昇すると、 オーバーラップする部分にまで電圧が上昇することになる。 この 場合、 気中ギャップ (α ) で火花が発生するのか、 碍子ギャップ (γ ) で火花が発 生するのかが確定しなくなる。 従って、 このように電圧が上昇したときに碍子ギヤ ップ (γ ) で火花が発生すると、 その高い放電電圧のためにチャンネリングが生じ やすくなる。
そこで、 気中ギャップ (α ) を狭くすることによって碍子ギャップ (V ) との差 を小さくすると、 気中ギャップ (α ) で火花が発生するに必要な電圧の最大値が低 下するため、 オーバーラップする部分が狭くなる。 この結果、 碍子ギャップ (γ ) での不要な火花発生を抑えることができるとともに、 碍子ギャップ (γ ) で火花が 発生するときの放電電圧も低くなることからチャンネリングも低減できる。 また、 気中ギャップ (α ) を α≤ 0 . 9 mmに設定すると、 火花発生のために必要な電圧 を低く抑えることができることから、 「くすぶり」 が生じた場合に中心電極と主体 金具間の絶縁抵抗値が低下しやすい、 高熱価型プラグ (碍子の主体金具との保持部 から碍子先端までの距離が短いプラグ) に対し特に有効な手法となる。
第十の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、 碍子の先端 部を軸線方向前方側から平面視したときに、 セミ沿面放電接地電極は少なくとも他
端の端面において、 碍子の中心貫通孔の先端開口径よりも大きな幅を有することを 特徴とする。 該第十の構成は、 前記第一乃至第九の構成の少なくともいずれかと組 み合わせることができる。
上記の構成によると、 セミ沿面放電接地電極は少なくとも先端面において、 碍子 の中心貫通孔の先端開口径 (ひいては中心電極先端面ないし後述する貴金属チップ の先端面の外径) よりも大きな幅を有するものとして構成されているので、 碍子の 先端面を這っていく火花の範囲がより広くなり、 チャンネリングを低減することが できるとともに、 広い範囲で 「くすぶり」 を火花清浄できる。
第十一の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、 碍子には 縮径された先端部をなす直管状部が形成され、 また、 該直管状部の軸線方向後方側 に隣接して該直管状部よりも径大の膨らみ部が形成され、
直管状部の長さが 1 . 5 mm以下であり、
また、 セミ沿面放電接地電極は、 他端の端面の、 碍子の軸線方向における後方側 縁の中点と、 該碍子の軸線とを含む仮想的な平面上において、 碍子ギャップの大き さを γ (単位: mm) として、 後方側縁の中点を中心とする (γ + 0 . 1 ) mmの 円を描いたときに、 膨らみ部の全体が該円の外側に位置することを特徴とする。 該 第十一の構成は、 前記第一乃至第十の構成の少なくともいずれかと組み合わせるこ とができる。
本構成でも長さを 1 . 5 mm以下 (望ましくは 0 . 5 mm以上) の直管状部を設 けている。 その効果は、第五の構成で説明した通りである。 そして、 上記直管状部に は、 構造上、 これよりも径大の膨らみ部が軸線方向後方側に隣接して形成される形 となる。 この膨らみ部の位置がセミ沿面放電接地電極の後方側縁に近くなりすぎる と、 該後方縁側からの火花が、 膨らみ部における電界集中部 (特にアール等が付与 された段差縁部など) に向けて後方側に垂れ下がりやすくなり、 ひいては着火性が 損なわれやすくなる。
そこで、 上記第十一の構成では、 セミ沿面放電接地電極の他端の端面 (セミ沿面 ギャップに対する放電面となる) の、 碍子の軸線方向における後方側縁の中点と、 該碍子の軸線とを含む仮想的な平面上において、 碍子ギヤップの大きさを (単 位: mm) として、 後方側縁の中点を中心とする (γ + 0 . 1 ) mmの円を描いた ときに、 膨らみ部の全体が該円の外側に位置するようにした。 このように、 膨らみ 部の位置を、 セミ沿面放電接地電極の他端の端面の後方側縁よりも遠ざけることで、 セミ沿面放電接地電極からの火花の垂れ下がりを効果的に抑制でき、 着火性を良好 に保つことができる。
第十二の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、 碍子の中 心貫通孔が該碍子の先端部側にて縮径されていることを特徴とする。 該第十二の構 成は、 前記第一乃至第十一の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができ る。 本発明のスパークプラグはセミ沿面放電接地電極を備えているために、 このよ うにすれば、 内燃機関内での燃焼サイクルの際に先端部に受けた熱が中心電極側に 逃げる傾向が適度に抑制され、 碍子の先端温度を上昇しやすくすることができる。 従って、 通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、 碍子の先端 部温度を上昇しやすくすることができ、 「くすぶり」 によって堆積したカーボンを 焼き切ることが容易になる。 また、 これに伴って主体金具の先端面と碍子との間で 火花が発生したり、 更に保持部近傍で火花が発生したりすることを防止することが できるため、 直嘖式内燃機関においても安定して燃焼する領域を広くとることがで きる。 なお、 この構成においては、 後記する付加要件 3を満たしているとなお望ま しい。
第十三の構成のスパークプラグにおいては、 前記した基本構成に加え、 碍子の軸 線方向において先端部の位置する側を前方側とし、 さらに、 セミ沿面放電接地電極 の、 他端の端面の後方側縁の中点と軸線とを含む仮想的な平面に対し、 軸線を含ん で該平面と直交する平面を投影面として定め、 該投影面への正射影にて表したとき
に、 他端の端面は、 投影面上にて軸線と後方側縁との交点を Xとし、 同じく前方側 縁との交点を Yとして、 線分 X Yの中点を通って軸線と直交する基準線よりも前方 側に位置する領域の面積 S 1 、 後方側に位置する領域の面積 S 2よりも大きくな る形状を有してなることを特徴とする。 該第十三の構成は、 前記第一乃至第十二の 構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
セミ沿面放電接地電極における飛火は、 放電面となる他端の端面において、 後端 側よりも、 碍子へのアタックが柔らかい前端側での飛火が増えたほうが、 チャンネ リング抑制及び着火性向上の観点において望ましい。 そこで、 上記のように、 他端 の端面の形状を、 前端縁と後端縁との中間に位置する基準線を境界として、 それよ りも前方側に位置する領域の面積 S 1が、 後方側に位置する領域の面積 S 2よりも 大きくなるように設定することで、 該他端の端面の先端側における飛火頻度を増や すことができ、 チャンネリング抑制あるいは着火性の向上に寄与する。
第十四の構成のスパークプラグにおいては、 碍子の軸線方向において先端部の位 置する側を前方側とし、 さらに、 セミ沿面放電接地電極の、 他端の端面の後方側縁 の中点と軸線とを含む仮想的な平面に対し、 軸線を含んで該平面と直交する平面を 投影面として定め、 該投影面への正射影にて表したときに、 他端の端面の外周縁に は、 投影面上にて軸線と後方側縁との交点を Xとし、 同じく前方側縁との交点を Y として、 線分 X Yの中点を通って軸線と直交する基準線よりも後方側に位置する領 域において少なくとも、 角部が先端曲率半径又は面取り幅を 0 . 2 mm以上又はこ の角部を形成する 2辺部が 9 0度より大きい角度を有することを特徴とする。 該第 十四の構成は、 前記第一乃至第十三の構成の少なくともいずれかと組み合わせるこ とができる。
上記構成の主旨は、 セミ沿面放電接地電極の放電面となる他端の端面において、 後端側の飛火を抑制することにある。 すなわち、 先鋭な角部が存在すると火花発生 の起点となりやすいが、 これを前記した基準線よりも後方側に位置する領域から排
除することで、 他端の端面における後端側の飛火が抑制される。 その結果、 先端側 における飛火頻度を増やすことができ、 チャンネリング抑制あるいは着火性の向上 に寄与する。 また、 後端縁の両端に上記のような先鋭な角部が形成されていると、 ここを起点として火花が斜め外方下向きに大きく垂れ下がる形で飛ぶことがあり、 着火性が著しく損なわれてしまう場合があるが、 上記構成によればこうした位置か らも先鋭な角部は当然排除されるから、 該不具合も合わせて防止ないし抑制するこ とができる。 なお、 本構成は、 前記した第十三の構成と組み合わせると、 チャンネ リング抑制あるいは着火性の向上において一層効果的である。
以下、 以上説明した第一〜第十四の構成のスパークプラグ (組合せを含む) に、 共通に付加可能な要件について説明する。
(付加要件 1 )
まず、 碍子には、 その先^部に直管状部を設けることができ、 この直管状部が主 体金具の先端面より後端側にまで延設されている構成とすることができる。 このよ うにすれば、 主体金具の先端面と碍子との径差を更に大きく保ちやすく、 この位置 での火花の発生を抑制しやすい。 なお、 ここでも、 直管状部の長さは最大で 1 . 5 mmまでとすることが望ましい。 この場合における、 直管状部を設けることの作 用 ·効果は第十一の構成にて説明したものと同様である。
(付加要件 2 )
また、 中心電極の母材の先端部に融点 1 6 0 0 °C以上の貴金属又は貴金属合金で 形成された貴金属チップを接合することができる。 この場合、 この接合部が碍子の 中心貫通孔内で接合されている構造とすることができる。 このように接合部を碍子 の中心貫通孔内で接合することによって、 気中ギャップ (ct ) で火花が発生すると きのみならず、 セミ沿面ギャップ (]3 ) で火花が発生する場合においてもセミ沿面 放電接地電極と貴金属チップとの間で火花が発生する。 従って、 いずれのギャップ で火花が発生したとしても耐久性が向上する。 貴金属合金としては、 P t、 I rの
他に、 P t— I r、 I r一 Rh、 I r _P t、 I r一 Y 2 O 3等の P t合金や I r合 金等の 1600°C以上の融点を持つものが好ましい。
(付加要件 3)
また、 碍子が主体金具と係止されて保持される保持部よりも先端側における、 中 心貫通孔の最小径 (D3) は、 D3≤2. 1 mmとすることが望ましい。 このよう に碍子の内径を狭くすることによって、 中心電極外径も小さくなる。 このため、 内 燃機関内での燃焼サイクルの際に先端部に受けた熱を中心電極側に若干逃げ難くす るため、 碍子の先端温度を上昇しやすくすることができる。 従って、 通常の運転時 に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、 碍子の先端部温度を上昇しやすく することができ、 「くすぶり」 によって堆積したカーボンを焼き切ることが容易に なる。 また、 これに伴って主体金具の先端面と碍子との間で火花が発生したり、 更 に保持部近傍で火花が発生したりすることを防止することができるため、 直噴式内 燃機関においても安定して燃焼する領域を広くとることができる。 ただし、 チャン ネリング防止の観点から、 D3≥0. 8 mmとすることが望ましい。
(付加要件 4)
また、 前述の貴金属チップを使用する場合は、 この貴金属チップと中心電極母材 との接合部側の外径が気中ギャップ (α) を形成する先端側の外径よりも大に構成 することができる。 このように構成することにより、 セミ沿面ギャップ (/3) で火 花が発生した場合であっても、 貴金属チップが中心電極母材から脱落することを防 止することができる。 すなわち、 セミ沿面ギャップ (β ) で火花発生した場合には、 貴金属チップの側面とセミ沿面放電接地電極との間で火花が発生することになる。 この位置で頻繁に火花が発生することになると、 碍子の先端面近傍での貴金属チッ プが消耗し、 貴金属チップ先端部よりも細くなつてしまう。 このようにセミ沿面ギ ヤップ ( ) での火花発生が繰り返されると、 ついには貴金属チップの先端部が脱 落してしまうことがある。 しかし、 上記のように接合部側を径大にすることによつ
て、 このような現象を抑えることができる。
更に、 貴金属チップの先端部は接合部側と比べて径が小さいため、 気中ギャップ ( α ) で火花が発生する際の放電電圧を低減させることができ、 ひいては着火性を 向上させることができる。 また、 特に直噴式内燃機関では安定燃焼領域を広くする ことができる。 なお、 貴金属チップの径大にした部分は、 碍子の先端面よりも内部 にあってもよい。 この場合には、 セミ沿面ギャップ (]3 ) で火花が発生した場合に 碍子の先端面を這う火花は、 更に碍子の中心貫通孔の内壁を這って貴金属チップの 径大にした部分に至る。 従って、 径大部が碍子の中心貫通孔内部にあつたとしても 火花は径大部とセミ沿面放電接地電極との間で発生するため上述したような効果を 生じることになる。
(付加要件 5 )
また、 貴金属チップ外径と碍子の中心貫通孔内径との径差の最小値は、 0 . 2 m m以下とすることができる。 これにより、 中心電極母材の火花放電による消耗を抑 えることがより容易になる。 上述したように、 セミ沿面ギャップ (/3 ) で火花が発 生した場合には、 碍子の中心貫通孔内壁を火花が這うことになる。 この時、 貴金属 チップ外径と碍子の中心貫通孔内径との径差が大きくなると、 火花が貴金属チップ に飛ばずに更に奥深く入り込んで中心電極母材にまで至る場合がある。 中心電極母 材は貴金属チップと比較して耐火花消耗性は低いため、 急速に消耗しやすく、 チッ プの脱落に至る場合がある。 従って、 この径差を小さくすることによって、 中心電 極母材に火花が至る現象を抑えることができ、 耐久性が向上する。 なお、 ここでい う 「径差の最小値」 とは、 次のような径差の代表値としての意義を持つものである ( すなわち、 貴金属チップ外径と中心貫通孔内径とが軸線方向に一様な場合には、 上 記径差も軸線方向において略一様となる。 しかしながら、 貴金属チップ外径と中心 貫通孔内径とのいずれかが軸線方向において一様でない場合 (例えば中心貫通孔に 僅かなテーパが形成されている場合) は、 該軸線方向における最小値を径差の代表
値として採用する。 図面の簡単な説明
図 1は、 第 1の実施の形態に係るスパークプラグの部分断面図。
図 2 ( a ) は、 第 1態様のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図 であり、 図 2 ( b ) 、 (c ) は、 セミ沿面放電接地電極 1 2の面 P Pへの投影を説 明する図。
図 3は、 第 2態様のスパークブラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
図 4は、 第 3態様のスパークブラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。 図 5は、 このスパークプラグが適用されるスパークプラグの J I S規格 (J I S B 8 0 3 1 ) 若しくは当該 J I S規格中に対応表示される I S O規格の中で定め られた A寸法よりも先端側に突出する前記碍子の突出量 (F ) と安定燃焼する噴射 終了時期との関係を示すグラフ図。
図 6は、 第 4態様のスパークブラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
図 7は、 中心電極 2の碍子 1の先端面 1 Dからの突出量と安定燃焼する噴射終了 時期との関係を示すグラフ図。
図 8は、 縦軸に気中ギャップ (ひ) の距離ひ、 横軸に碍子ギャップ (γ ) の距離 γ をとり、 主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との間で火花が発生し始めた点をプロ ットしたグラフ図。
図 9は、 気中ギャップ (α ) と碍子ギャップ (γ ) との差 (ひ _ γ ) と安定燃焼 する噴射終了時期との関係を示すグラフ図。
図 1 0は、 第 5態様のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。 図 1 1は、 中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅 Wと中心電極先端 径との比に対する放電電圧の関係を示すグラフ図。
図 1 2は、 燃料ブリッジ試験機の概要を示す図。
図 1 3は、 燃料プリッジ試験の結果を示す図。
図 1 4は、 中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅 Wと中心電極先端 径との比に対する着火性の関係を示すグラフ図。
図 1 5は、 碍子先端径とセミ沿面放電接地電極の幅との差 <> と安定燃焼する噴射 終了時期との関係を示すグラフ図。
図 1 6は、 碍子の、 主体金具と係止されて保持される保持部よりも先端部におけ る中心貫通孔の最小径 (D 3 ) と、 安定燃焼する噴射終了時期との関係を示すダラ フ図。
図 1 7は、 第 2の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部 分断面図。
図 1 8は、 第 3の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部 分断面図。
図 1 9は、 第 4の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部 分断面図。
図 2 0は、 第 5の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部 分断面図。
図 2 1は、 第 6の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部 分断面図。
図 2 2は、 第 7の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部 分断面図。
図 2 3は、 直噴型エンジンへのスパークプラグの取付形態の一例を示す説明図。 図 2 4は、 セミ沿面放電接地電極を 3個設け、 平行接地電極内に良熱伝導材を配 置したスパークプラグの一例を示す要部側面図。
図 2 5は、 セミ沿面放電接地電極を 3個設けたスパークブラグの一例を示す底面 図。
図 2 6は、 図 2のスパークプラグの底面図。
図 2 7は、 図 2 6において、 セミ沿面放電接地電極の端面を円筒面状とした例を 示す底面図。
図 2 8は、 中心電極先端面と碍子先端面との種々の関係を例示して示す模式図。 図 2 9は、 碍子の直管状部を 2段に形成したスパークプラグの一例を示す要部正 面部分断面図。
図 3 0は、 平行接地電極に貴金属チップを接合したスパークプラグの一例を示す 要部側面図。
図 3 1は、 碍子の直管状部とセミ沿面ギヤップとの種々の位置関係を例示して示 す模式図。
図 3 2は、 セミ沿面放電接地電極におけける種々の火花発生形態と電極先端面形 状との関係を示す説明図。
図 3 3は、 セミ沿面放電接地電極の端面形状の第一の改善例を示す側面図及び正 面図。
図 3 4は、 セミ沿面放電接地電極の端面形状の第二の改善例を示す側面図及び正 面図。
図 3 5は、 セミ沿面放電接地電極の端面形状の第三、 第四及び第五の改善例を示 す側面図。
図 3 6は、 セミ沿面放電接地電極の端面形状の第六及び第七の改善例を示す説明 図。 発明を実施するための最良の形態
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図 1は第 1の実施の形態に係るスパークプラグ 1 0 0の部分断面図である。 周知 のように、 アルミナ等からなる碍子 1は、 その後端部に沿面距離を稼ぐためのコル
ゲーシヨン 1 Aを、 先端部に内燃機関の燃焼室に曝される脚長部 1 Bを備え、 その 軸中心には中心貫通孔 1 Cを備えている。 中心貫通孔 1 Cには、 貴金属チップを有 する場合にはインコネル (商標名) 、 貴金属チップを持たない場合には、 耐火花消 耗性の確保のため、 9 5質量%ニッケル (残部例えばクロム、 マンガン、 シリコン、 アルミ、 鉄) 、 ニッケル含有率が 8 5質量%以上のニッケル系金属等からなる中心 電極 2が保持され、 中心電極 2は碍子 1の先端面から突出するようにされている。 中心電極 2は中心貫通孔 1 Cの内部に設けられたセラミック抵抗 3を経由して上 方の端子金具 4に電気的に接続されている。 端子金具 4には図示しない高圧ケープ ルが接続され高電圧が印加される。 上記碍子 1は主体金具 5に囲まれ保持部 5 1及 びかしめ部 5 Cによって支持されている。 主体金具 5は低炭素鋼材で形成され、 ス パークプラグレンチと嵌合する 6角形部 5 Aと、 ねじの呼びが例えば M l 4 Sのね じ部 5 Bとを備えている。 主体金具 5はそのかしめ部 5 Cにより碍子 1にかしめら れ、 主体金具 5と碍子 1がー体にされる。 かしめによる密閉を完全なものとするた め、 主体金具 5と碍子 1との間に板状のパッキング部材 6とワイャ状のシール部材 7 , 8が介在され、 シール部材 7, 8の間にはタルク (滑石) 9の粉末が充填され ている。 また、 ねじ部 5 Bの後端、 即ち、 主体金具 5の座面 5 2にはガスケット 1 0が嵌挿されている。
主体金具 5の先端面 5 Dには、 少なくとも表層部をなす母材がニッケル合金から なる平行接地電極 1 1が溶接により接合されている。 平行接地電極 1 1は中心電極 2の先端面と軸方向に対向し、 中心電極 2と平行接地電極 1 1とで気中ギャップ
( α ) を形成している。 また、 6角径部 5 Αの対辺寸法は 1 6 mmであり、 主体金 具 5の座面 5 2から先端面 5 Dまでの長さは例えば 1 9 mmに設定されている。 こ の寸法設定は、 J I S : B 8 0 3 1に規定されている 1 4 mm小形六角形の、 A 寸法が 1 9 mmのスパークプラグの基準寸法である。 なお、 図 2 4に示すように、 平行接地電極 1 1は、 その先端部の温度を低減させ、 火花消耗を抑えるために、 内
部に母材 1 1 bよりも熱伝導性の良好な材料 (例えば C uや純 N i又はその複合材 料等) からなる良熱伝導材 1 1 aを有していても良い。 ここまでは従来のスパーク プラグと同じである。
この実施の形態に係るスパークプラグ 1 0 0では、 平行接地電極 1 1とは別に、 複数のセミ沿面放電接地電極 1 2を備えている。 セミ沿面放電接地電極 1 2は少な くとも表層部をなす母材 1 2 b (図 2 ( a ) 参照) がニッケル合金からなり、 その 一端が主体金具 5の先端面 5 Dに溶接により接合され、 他端の端面 1 2 Cが中心電 極 2の側周面 2 A若しくは脚長部 1 Bの側周面 1 Eに対向するように配設されてい る。 図 2 6に示すように、 2個のセミ沿面放電接地電極 1 2はそれぞれ平行接地電 極 1 1から 9 0 ° ずれた位置に配設され、 セミ沿面放電接地電極 1 2同士は略 1 8 0 ° ずれた位置に配設されている。 また、 図 2 6は、 碍子 1の先端部を軸線 3 0の 方向前方側から平面視した状態を表しているが、 セミ沿面放電接地電極 1 2は他端 の端面 1 2 Cにおいて、 碍子 1の中心貫通孔 1 Cの先端開口径よりも大きな幅を有 するものとなっている。 図 2に示すように、 各セミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cと中心電極 2の側周面 2 Aとの間にはセミ沿面ギャップ ( β ) がそれぞれ形成 され、 各セミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cと脚長部 1 Βの側周面 1 Εとの間 で碍子ギャップ (γ ) がそれぞれ形成されてレ /、る。
なお、 図 2 6においては、 セミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cは平面状に形 成されているが、 碍子 2の側周面に沿って略一様な間隔のセミ沿面ギヤップが形成 されるよう、 図 2 7に示すように、 端面 1 2 Cを、 例えば打抜加工等により碍子 2 の軸線 (3 0 :図 2 ) を中心とする円筒面状に形成することもできる。
なお、 セミ沿面放電接地電極 1 2も平行接地電極 1 1と同様に、 内部に C uや純 N i又はその複合材料等からなる良熱伝導材 1 2 aを有していても良い。 この場合、 セミ沿面放電接地電極 1 2は、 表層部を形成する母材 1 2 bと、 内層部を形成する とともに母材 1 2 bよりも熱伝導性の良好な材料からなる良熱伝導材 1 2 aとを有
するものとなる。
図 2 ( a ) は、 第 1の実施の形態のうち、 第 1態様のスパークプラグの中心電極 2、 平行接地電極 1 1、 セミ沿面放電接地電極 1 2の近傍を拡大して示す部分断面 図であり、 図 2 ( b ) はセミ沿面放電接地電極 1 2を拡大して示す説明図である。 該図では、 中心電極 2の先端面と平行接地電極 1 1との間の気中ギャップ (α ) の 距離を o、 碍子 1の先端面 1 Dの位置における中心電極 2の側周面 2 Aとセミ沿面 放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cとの間のセミ沿面ギャップ ( β ) の距離を β とする c また、 セミ沿面放電接地電極 1 2と碍子 1とを中心軸線 3 0に沿って切断した場合 の、 碍子 1の先端面 1 Dを示す線を外方へ延長した第 1の延長線 3 1と、 碍子 1の セミ沿面ギャップ 部近傍の側周面 1 Eを示す線を先端面 1 Dの方向へ延長し た第 2の延長線 3 2と、 セミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cを示す線を先端側 へ延長した第 3の延長線 3 3とを描いている。 そして、 第 1の延長線 3 1および第 2の延長線 3 2の交点 P 1から、 第 1の延長線 3 1および第 3の延長線 3 3の交点 P 2までの距離を碍子ギャップ ( ) の距離 V とすると、 この γ は、 碍子 1とセ ミ沿面放電接地電極 1 2との最短距離を表している。 そして、 これら ひ、 β、 Ύ と の間には aぐ β及び < α の関係がある。
このように設定することにより、 碍子 1の表面の絶縁が高い正常時には、 平行接 地電極 1 1との間の気中ギャップ (α ) で放電させることができ、 碍子 1の表面の 絶縁が低下した 「くすぶり」 時には、 セミ沿面放電接地電極 1 2との間のセミ沿面 ギャップ ( ) で放電させることができる。 また、 碍子 1の先端面 1 Dとセミ沿面 放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cの後端側縁 1 2 Bとの段差を E、 碍子 1の主体金具 5の先端面 5 Dからの突き出し量を F、 中心電極 2の碍子 1の先端面 1 Dからの突 き出し量を Hとする。 なお、 本実施の形態における碍子 1の主体金具 5の先端面 5 Dからの突き出し量 Fは、 このスパークプラグが適用される J I S規格 (J I S : B 8 0 3 1 ) 若しくは当該 J I S規格中に対応表示される I S O規格の中で定めら
れた A寸法よりも先端側に突出する碍子の突出量に相当する。
また、 碍子 1の先端部には、 直管状部 1 0 2 (中心軸線 3 0を中心とする直円筒 状の外周面を有する部分) が形成されており、 主体金具 5の先端面 5 Dよりも後端 側にまで延設されている。 このように構成することによって、 主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との径差を更に大きく保ちやすく、 この位置での火花の発生を抑制し やすい。 また、 碍子 1の先端部が直管状になっていることから、 内燃機関内での燃 焼サイクルの際に先端部に受けた熱を碍子 1の主体金具 5との保持部 5 1方向に若 干逃げ難くする作用があるため、 碍子 1の先端温度を上昇しやすくすることができ る。 従って、 通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、 碍子 1 の先端部温度を上昇しやすくすることができ、 「くすぶり」 によって堆積したカー ボンを焼き切ることが容易になる。 また、 このような構成であれば、 碍子 1の先端 部の熱ボリュームが小さいことから、 吸気管から吸入されてきた比較的低温度のガ スによって碍子の冷却が行われやすい。 このため、 内燃機関内での燃焼サイクルの 際に、 プレイダニッシヨンが発生するほどの温度上昇は生じ難い。 なお、 セミ沿面 放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cの後方側縁は、 直管状部 1 0 2の後方側縁よりも前 方側にある。
また、 本実施形態では特に説明のない限り、 碍子 1の突き出し量 Fは 3 . O mm とし、 中心電極 2の元径 D 2を 2 . O mmとした。 なお、 セミ沿面放電接地電極 1 2には、 幅が 2 . 2 mmで厚さが 1 . 0 mmのものを用いており、 平行接地電極 1 1には、 幅が 2 . 5 m mで厚さが 1 . 4 mmのものを用いている。
碍子 1の先端面 1 Dの高さ位置と、 セミ沿面放電接地電極 1 2の、 端面 1 2 Cの 後端側縁 1 2 Bの高さ位置との段差 Eには、 セミ沿面放電接地電極 1 2の高さ位置 により以下のような 3種類がある。 即ち、 第 1番目は、 図 2 ( a ) に示すようにセ ミ沿面放電接地電極 1 2の後端側縁 1 2 Bおよび先端側縁 1 2 A (図 2 ( b ) ) が 碍子 1の先端面 1 Dよりも後端側にある場合である。 第 2番目は、 図 3に示すよう
な、 第 1の実施形態のうち、 第 2態様のスパークプラグのセミ沿面放電接地電極 1 2の後端側縁 1 2 Bのみが碍子 1の先端面 1 Dよりも後端側にある場合、 そして、 第 3番目は、 図 4に示すような、 第 1の実施の形態のうち、 第 3態様のスパークプ ラグのセミ沿面放電接地電極 1 2の後端側縁 1 2 Bが碍子 1の先端面 1 Dよりも先 端側にある場合である。
レ、ずれにしても、 セミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cの後端側縁 1 2 Bおよ び先端側縁 1 2 Aの一方が、 碍子 1の先端面 1 D近傍の高さ位置にあることが好ま しい。 すなわち、 段差 Eは小さい方が好ましい。 これは、 セミ沿面放電は鋭角で電 界の集中するセミ沿面放電接地電極 1 2の後端側縁 1 2 Bおよび先端側縁 1 2 Aか ら火花が飛ぶと考えられるから、 後端側縁 1 2 Bおよび先端側縁 1 2 Aから飛ぶ火 花を碍子 1の先端面 1 Dに近づけ、 碍子 1の表面に堆積したカーボンを焼き切る自 己清浄作用を強めるためである。
上記のスパークブラグ 1 0 0は、 「課題を解決するための手段及び作用 ·効果」 の欄にて説明した種々の構成のいずれとなすかに応じて、 各部の寸法あるいは寸法 関係が適宜に定められる。 以下、 その具体的な構成を、 その作用 ·効果を裏付ける ための実験結果とともに詳細に説明する。
(実験 1 :第一の構成; α≤ 1 . 1 mm , 0 . 5 mm≤ γ≤0 . 7 mm, δ≥ 3 . 6 mmとする根拠)
気中ギャップ (ο; ) を α = 1 . 1 mmとし、 また、 セミ沿面放電接地電極 1 2を 図 2 6のように 2個設け、 碍子ギャップ (γ ) をいずれも γ = 0 . 6 mm, セミ沿 面ギャップ ( P ) をいずれも ]3 = 1 . 6 mmに設定するとともに、 主体金具 5の保 持部 5 1よりも先端側の部分の内径を種々変更したスパークプラグを用意した。 表 1は、 これらスパークプラグを用いて、 主体金具 5の先端面 5 Dの位置における碍 子 1と主体金具 5との径差 (δ ) を種々に変化させたときの、 主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との間で火花放電する現象 (金具/碍子飛火) の割合を調べた結果を示
す。 なお、 実験は、 1 8 0 Occ直列 4気筒の直噴式内燃機関を用いた自動車を使用 してシフトレバ一を Dレンジに入れ、 アイ ドリング 6 0 0 r p mにて行った。 また. スパークプラグの点火時期は上死点前 (以下 「BTDC」 という) 1 5° 、 燃料噴 射終了時期は BTDC 3 0° に固定した。 さらに結果は、 金具/碍子飛火の発生が 1 分間あたり 3回以上となったものを X、 1回から 2回となったものを△、 金具/碍子 飛火が全く起こらなかったものを〇にて評価判定した。
主体金具 5の先端面 5 Dの位置において、 碍子 1と主体金具 5との径差 (δ) 力 S 3. 4mm以下の場合には、 この位置で火花が少なくとも 1回以上発生した。 従つ て、 径差を 3. 6 mm以上にすることによって、 「くすぶり」 が生じた場合であつ ても主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との間で火花を生じることなく、 碍子ギヤッ プ (y) で火花を生じさせることができることがわかる。 金具/碍子飛火を防止する ことによる効果、 特に層状燃焼方式の直噴式内燃機関における効果は既に説明した 通りである。
(実験 2 :第三の構成; α≤ 0. 9 mm, 0. 5mm≤ 7≤ 0. 7 mm, δ≥ 2. 8 mmとする根拠)
主体金具 5の先端面 5 Dの位置における碍子 1と主体金具 5との径差 (δ ) を 2 8 mmとし、 また、 セミ沿面放電接地電極を 2個設け、 碍子ギャップ (γ) をいず れも γ = 0. 6 mm, セミ沿面ギャップ (β ) をいずれも β = 1. 6 mmに設定す るとともに、 気中ギャップ (α) を種々設定したスパークプラグを用意した。 これ らスパークプラグを用いた以外は、 実験 1と全く同じ条件にて試験を行ない、 同様
に評価判定した。 表 2にその結果を示す。
これによると、 気中ギャップ (ひ) 力 ≥ l . Ommの場合には、 主体金具 5 の先端面 5 Dの位置において金具/碍子飛火が少なくとも 1回以上発生していること がわかる。 従って、 気中ギャップ (α) を α≤ 0· 9mmにすることによって、
「くすぶり」 が生じた場合であっても金具/碍子飛火を生じることなく、 碍子ギヤッ プ (γ) で火花を生じさせることができることがわかる。
(実験 3 :第四の構成;セミ沿面放電接地電極を 3個以上とする根拠)
気中ギャップ (ct) を c = l . 1 mm, 主体金具 5の先端面 5 Dの位置における 碍子 1と主体金具 5との径差 (δ ) を 2. 8mmとし、 碍子ギャップ (γ) を γ = 0. 6 mm、 セミ沿面ギャップ (β) を β = 1. 6 mmに設定するとともに、 該ギ ャップを有するセミ沿面放電接地電極 1 2の配設個数を種々変化させたスパークプ ラグを用意した。 これらスパークプラグを用いた以外は、 実験 1と全く同じ条件に て試験を行ない、 同様に評価判定した。 表 3にその結果を示す。
該結果によると、 実験 1では良好な結果が得られなかった、 気中ギャップ (α) が ct = l . 1 mmであって径差 δ が 2. 8 mmの条件においても、 セミ沿面放電接
地電極 1 2の数を 3個以上に増やすと、 主体金具 5の先端面 5 Dの位置における金 具/碍子飛火が効果的に抑制されていることがわかる。 従って、 セミ沿面放電接地電 極 12の数を 3個以上にすることによって、 「くすぶり」 が生じた場合であっても 金具/碍子飛火を生じることなく、 碍子ギャップ (γ) で火花を生じさせることがで きることがわかる。 図 24には、 図 2のスパークプラグ 100に対し、 第三のセミ 沿面放電接地電極 12 (—点鎖線にて表している) を追加した態様を示している。 また、 図 25は、 その平面図であり、 3つのセミ沿面放電接地電極 12と平行接地 電極 1 1とが、 碍子 30の中心軸線の周りに略 90° の間隔にて配置されている。
(実験 4 :第五の構成;碍子の先端面の高さ位置とセミ沿面放電接地電極の端面後 端側縁の高さ位置との段差 Εと、 碍子の先端面から側周面に至る曲面の曲率半径 R との差を R— E≤0. 1mmとする根拠)
図 2のスパークプラグにおいて、 平行接地電極 1 1をなくし、 セミ沿面放電接地 電極 1 2を 2個設け、 碍子ギャップ (γ) をいずれも γ = 0. 6 mm, セミ沿面ギ ヤップ (β) をいずれも ]3 = 1. 6 mmに設定するとともに、 碍子 1の先端面 1 D の高さ位置とセミ沿面放電接地電極 12の端面 12 Cの後端側縁 12 Bの高さ位置 との段差 Eと、 碍子 1の先端面 1 Dから側周面 1 Eに至る曲面の曲率半径 Rとを 種々設定したものを用意した。 これらスパークプラグの耐チャンネリング性を評価 するために、 以下の実験を行なった。 すなわち、 スパークプラグをチャンバに取り 付け、 チャンバ内を 0. 6MP aに加圧するとともに、 フルトランジスタ電源によ り 1秒間に 60回の火花を発生させる動作を 1 O OHr,継続した。 そして、 動作終 了後のスパークプラグのチャンネリング深さを測定するとともに、 チャンネリング 溝深さが、 0. 2mm未満のものを軽度 (〇) 、 0. 2〜0. 4mmのものを中度
(△) 、 0. 4mmを超えるものを重度 (X) として評価判定した。 該結果を表 4 に示す。
表 4
この結果から、 気中ギャップ (α ) とセミ沿面ギャップ ( β ) とが、 α < ]3 であ り、 かつ、 気中ギャップ (ct ) と碍子ギャップ (γ ) とが、 a〉y のとき、 R— E ≤0 . 1 mmに設定することで、 チャンネリングを効果的に低減できることがわか る。 これは、 セミ沿面放電接地電極 1 2の後端側縁 1 2 Bから中心電極 2に向かう 火花が、 碍子 1の先端部に遮られることによってセミ沿面放電接地電極 1 2の火花 発生位置から中心電極 2に向けて直線上に火花が発生せず、 碍子 1の周方向に曲げ られるからであると考えられる。 この結果、 火花の発生毎に火花の放電経路が替わ るため、 碍子 1の先端面 1 Dを這っていく火花の範囲が広がり、 チャンネリングを 低減することができるとともに、 広い範囲で 「くすぶり」 を火花清浄できる。 なお, 本発明のスパークプラグは本来、 平行接地電極 1 1を備えているものであるが、 こ ' れをそのまま用いると、 汚損が進行しない限りセミ沿面放電接地電極 1 2側での飛 火が生じず、 仮に発生しても汚損堆積物が焼き切られれば飛火が途切れてしまうの で、 チャンネリング評価には非常な長時間を有する。 従って、 セミ沿面放電接地電 極 1 2側のチャンネリング挙動を加速して調べるために、 敢えて平行接地電極 1 1 を取り除いた状態での評価を行なった。
また、 Eの値を 0 . 1〜0 . 7 mmの範囲にて選択し、 さらに各 Eの値について、 R— Eを 0 . 2 mmにした場合のチャンネリング溝深さ δ θ (mm) と、 R— Eを 0 mmとした場合のチャンネリング溝深さ δ ΐ (mm) とを測定し、
λ = δ 0- δ ΐ (mm)
にて表されるチャンネリング改善幅え を算出して、 R— Eを 0. 2mmから 0mm へと縮小することによりどの程度チャンネリングが改善されるかを見積もった。 結 果を表 5に示す。
表 5
これを見てもわかるとおり、 段差 Eの長さが 0. 5mm以下のとき、 特にチャン ネリング効果が大きいことがわかる。
(実験 5 :第六の構成;碍子 1の突出量 (F) を、 3. 0mm≤ F≤ 5. 0 mmと する根拠)
気中ギャップ (α) を l mm、 主体金具 5の先端面 5 Dの位置における 碍子 1と主体金具 5との径差 ( δ ) を 2. 8 mmとし、 セミ沿面放電接地電極 1 2 を 2個設け、 碍子ギャップ (γ) をいずれも γ = 0. 6 mm, セミ沿面ギャップ (β) をいずれも ] 3 = 1. 6 mmに設定するとともに、 このスパークプラグが適用 されるスパークプラグの J I S規格 ( J I S B 8 0 3 1 ) 若しくは当該 J I S 規格中に対応表示される I S O規格の中で定められた A寸法よりも先端側に突出す る碍子 1の突出量 (F) を種々設定したスパークプラグを用意した。 そして、 これ らスパークプラグを実験 1と同様に、 1 8 0 Occ直列 4気筒の直噴式内燃機関を用 いた自動車に取り付けてシフトレバーを Dレンジに入れ、 アイドリング 6 0 0 r p mにて運転を行った。 また、 スパークプラグの点火時期は BTDC 1 5° に固定し た。 そして、 各碍子 1の突出量 (F) の場合における、 1分間あたりの失火発生頻 度が略ゼロとなる噴射終了時期の幅 (燃焼安定領域) を測定した。 直嘖式内燃機関
ではこの幅が着火性の良否を定める尺度になる。
図 5は、 その結果を示すものであるが、 碍子 1の突出量 (F) を、 3. Omm≤ F≤ 5. 0mmとすることによって、 失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲 (す なわち、 安定燃焼領域の幅) を広くすることができることがわかる。 なお、 図 6に 示すような、 第 1の実施の形態のうち、 第 4態様のスパークプラグの主体金具 5の ねじ部 5 Bより先端部分 5 Eを延長させたェクステンドシェルタイプのスパークプ ラグの場合においても、 同様の結果を得ている。 ただし、 この場合においては、 碍 子 1の突出量 (F) は、 主体金具 5の先端面 5 Dからの寸法ではなく、 先端部分 5 Eが延長された長さ、 即ち、 J I S規格中に定められた A寸法より先端側の長さ、 を更に加えた長さになる。
(実験 6 :第八の構成;中心電極 2の碍子 1からの突出量 (H) を、 (H) ≤ 1. 2 5 mmとする根拠)
気中ギャップ (α) を α= 1. 1mmとし、 セミ沿面放電接地電極 1 2を 2個設 け、 碍子ギャップ (γ) をいずれも γ = 0. 6 mmに設定し、 セミ沿面ギャップ ( 3) をいずれも = 1. 6mmに設定し、 中心電極径を φ 2. 5mmに設定する とともに、 碍子 1の先端面 1 Dから突出する中心電極 2の突出量 (H) を種々設定 したスパークプラグを用意した。 そして、 これらスパークプラグを用いて実験 5と 同様の自動車を用い、 安定燃焼領域を測定した結果を示す。 ただし、 走行条件はァ ィ ドリングではなく 1 00 kmZhの定地走行条件 (高速運転を想定) とした。 ま た、 スパークプラグの点火時期は BTDC 25° に固定した。 他の条件は実験 5と 同様であり、 各中心電極 2の突出量 (H) の場合において、 1分間あたりの失火発 生頻度が略ゼ口となる噴射終了時期の幅を測定した。 結果を図 7に示している。
この結果から、 気中ギャップ (c ) とセミ沿面ギャップ (i3) とが、 α < β であ り、 かつ、 気中ギャップ ( と碍子ギャップ (γ) とが、 α〉γ であり、 中心電 極が碍子の先端面から突出する量 (Η) を、 H≤ l . 2 5mmとすることによって、
高速運転時にセミ沿面ギャップ (J3) で火花が発生しても、 失火を生じない燃料噴 射終了時期の範囲を広くすることができる。 従って、 火花発生位置によって着火性 の差が出やすい直噴式内燃機関であっても、 「くすぶり」 が生じた場合に発生する セミ沿面放電接地電極 1 2での火花位置で、 十分な着火性を有する。 なお、 Hの値 は、 ここでは図 28 (a) に示すように正の値の場合を示したが、 同図 (b) に示 すように Hがほとんどゼロとなる (すなわち、 中心電極 2の先端面あるいは後述す る貴金属チップの先端面が、 碍子 1の先端面と略面一となる) 形であってもよいし、 さらには (c) に示すように、 Hが負の数となる (つまり、 先端面が碍子 1の先端 面よりも引っ込んでいる) 形となっていてもよい。 この場合、 耐チャンネリング性 及び 「くすぶり」 清浄性効果をさらに向上させる観点において、 _0. 3mm H ≤ 0. 5となっていればさらによレ、。
(実験 7 :第九の構成; α≤ 0. 4 X (J3— γ) +γ とする根拠)
セミ沿面ギャップ (]3) を 1. 6 mmに設定し、 種々の大きさの気中ギャップ (α) を有する平行接地電極 1 1と、 同一寸法の種々の碍子ギャップ (γ) を有す る 2つのセミ沿面放電接地電極 1 2, 1 2を設けた各種スパークプラグを作製した c そして、 該スパークプラグをチャンバに取り付け、 チャンバ内を 1. OMP aに加 圧した状態で火花の発生する方向を観察する机上試験を行ない、 主体金具 5の先端 面 5 Dと碍子 1との間で火花が発生するか否かを調べた。 なお、 火花はフルトラン ジスタ電源により 1秒間に 6 0回の割合で発生させ、 測定時間は 1分間とした。
以上の結果を図 8に示す。 図中で、 直線 1 0 1は、 主体金具 5の先端面 5 Dと碍 子 1との間で火花が発生するか否かの境界を示す。 この直線より上の領域 A Aでは、 主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との間で火花が発生し、 下の領域 BBでは、 発生 しなかったことを示している。 直線 1 0 1は、 次の式 (1) で表され、 主体金具 5 の先端面 5 Dと碍子 1との間で火花が発生するか否かを示す境界線となる。
α = 0. 4 Χ (β - y ) + y ■■ ·■ (1)
- 従って、 主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との間で火花が発生しないためには、 下記式 (2) の条件が必要であることが分かる。
α≤ 0. 4 X (j3 -γ) + y ··■· (2)
この結果から、 気中ギャップ (α) とセミ沿面ギャップ (i3) とが、 α< ]3 であ り、 かつ、 気中ギャップ (α) と碍子ギャップ (γ) とが、 α >γ であり、 気中ギ ヤップ (ひ) 、 セミ沿面ギャップ (]3) 及び碍子ギャップ (γ) とが、 α≤ 0. 4 X (β - y ) + y とすることによって、 主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との間で の火花の発生を抑制することができる。 また、 実際の内燃機関に装着した場合のよ うに、 スパークプラグのギヤップ周りの雰囲気ガスが流れを持っているような場合 には、 主体金具の先端面と碍子との間で火花がより発生しやすくなるため、 α≤ 0 3 X (/3 -γ) +γ であることがより好ましい。
(実験 8 : (α-γ) ≤0. 4 mmに設定することの根拠)
種々の大きさの気中ギャップ (c ) を有する平行接地電極 1 1と、 同一寸法の 種々の碍子ギャップ (γ) を有する 2つのセミ沿面放電接地電極 1 2, 1 2を設け た各種スパークプラグを作製した。 これらスパークプラグの耐チャンネリング性を 評価するために、 以下の実験を行なった。 すなわち、 スパークプラグを、 2500 c c直列 6気筒ターボチャージャ式の内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフト レバーを Dレンジに入れ、 3 500 r pmで、 インテークマ二ホールド内における 圧力が、 + 70 k P aの条件にて 1 0 OH r運転継続した。 そして、 動作終了後の スパークプラグのチャンネリング深さを測定するとともに、 チャンネリング溝深さ 力 S、 0. 2mm未満のものを軽度 (〇) 、 0. 2〜0. 4mmのものを中度 (△) 0. 4 mmを超えるものを重度 (X) として評価判定した。 該結果を表 6に示す。
表 6
この結果から、 気中ギャップ (α) と碍子ギャップ (γ) とは、 (α _ γ) ≤ 0 4 mmに設定することで、 チヤンネリングを低減することができることが分かる。 このような関係を満足することによって、 チャンネリングに対して特に厳しい、 過 給を行なう内燃機関や高圧縮比の内燃機関でのチャンネリングを低減することがで きることがわかる。
(実験 9 :第二の構成; 0. 2mm≤ (a ~ y) ≤ 0. 4mmとする根拠) 中心電極 2の径を φ 2. 5mm、 主体金具 5の先端面 5 Dの位置における碍子 1 と主体金具 5との径差 (δ ) を 2. 8mmとし、 セミ沿面放電接地電極 1 2を 2個 設け、 碍子ギャップ (γ) をいずれも γ = 0. 6mm、 セミ沿面ギャップ (β) を いずれも ]3 = 1. 6 mmに設定し、 気中ギャップ (α) と碍子ギャップ (γ) との 関係を種々設定したスパークプラグを用意した。 そして、 これらスパークプラグを 1 8 0 Occ直列 4気筒の直噴式内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバー を Dレンジに入れ、 アイ ドリング 6 0 0 r pmにて運転を行った。 また、 スパーク プラグの点火時期は BTDC 1 5° に固定した。 そして、 α— γ の各値について、 1分間あたりの失火発生頻度が略ゼロとなる噴射終了時期の幅 (燃焼安定領域) を 測定した。 結果を図 9に示す。
この結果から、 気中ギャップ ) が 0. 8mm≤ a≤ l . Ommであり、 碍子 ギャップ (γ) カ 0. 5mm≤ y≤ 0. 7 mmであり、 (ひ一 力 0. 2 ram≤
(α - γ) ≤ 0. 4mmを満たす場合に、 噴射終了時期の領域を広くできることが わかる。
(実験 1 0 ;平行接地電極の幅を 2. 2 mm以下、 中心電極先端面における外径の 2倍以上とする根拠)
碍子 1の内部における中心電極 2の太径部での径を φ 2. 2mm、 気中ギャップ (α) を形成する中心電極 2の縮径部先端面における外径を φ 0. 6mm、 気中ギ ヤップ (α) を 1. l mm、 主体金具 5の先端面 5 Dの位置における碍子 1と主体 金具 5との径差 (δ ) を 2. 8 mmとし、 セミ沿面放電接地電極 1 2を 2個設け、 碍子ギャップ (T ) をいずれも γ = 0. 6mm、 セミ沿面ギャップ ( β ) をいずれ も β = 1. 6 mmに設定した。 そして、 碍子 1の軸線方向前方側から平面視した場 合の中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅 Wを種々設定したスパーク プラグを用意した。 なお、 平行接地電極 1 1の先端部を、 第 1の実施の形態のうち. 図 1 0に示す第 5態様のスパークプラグ 2 0 5の様にテーパ状にカツトしてあり、 中心点 Oの位置における平行接地電極 1 1の幅 Wは、 そのテーパ状のカツ i l k の挟み角 Θ を一定にした状態で、 平行接地電極全体 1 1の幅を変更することによつ て設定した。 そして、 これらスパークプラグを用いて以下の試験を行った。 まず、 2 0 0 Occ直列 6気筒の内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバーを Nレ ンジに入れ、 アイ ドリング 6 00 r pmから急激にアクセルを踏み込んで 3 0 0 0 r pm以上になるまでレーシングを行った。 そして、 Wと中心電極 2の先端面にお ける外径との比の各値について、 放電電圧の最大値を測定した。 結果を図 1 1に示 す。
この結果から、 気中ギャップ (ct) が 0. 8 mm≤ o;≤ l . 0 mmであり、 碍子 ギャップ (γ) 力 s0. 5mm≤ γ≤ 0. 7 mmであり、 (α— γ) 力 s 0. 2mm≤ (α - γ) ≤ 0. 4 mmを満たすとともに、 平行接地電極の幅を中心電極先端面に おける外径の 2倍以上にすることによって、 平行接地電極における放電電圧を十分
に低減することができることがわかる。 従って、 必要以上にセミ沿面放電接地電極 1 2, 1 2で火花放電が発生することを抑制することができる。
次に、 下記に示す燃料ブリッジテス トを行った。 本実験においては、 内燃機関に 一般に用いられるガソリンの替わりに水を用いた。 この理由は、 燃料ブリッジは一 般に非常に温度の低い状態、 即ち、 燃料の粘度が低下した状態での、 火花放電ギヤ ップで生じたプリッジの切れやすさが問題になるためである。 水の常温における粘 度がガソリンの約一 4 0°Cにおける粘度とほぼ同等であることが分かっているため, 本発明の主目的である燃料ブリッジの切れやすさを確認するためには、 最も手近な 代替材である。 まず、 図 1 2に示すような燃料プリッジ試験機 5 0 0のアーム 5 0 1に各試料 S Pを装着し、 火花放電ギャップ間にスポイ トを用いて水を約 0. 0 5 m l付着させた。 そして、 アーム 5 0 1を 3 0° 傾けた後に各 5回自由落下させて, その間にブリッジが切れたか否かを落下させる毎に観察した。 そして、 各試験品を 各 3本行った。 なお、 1本の試験品は試験終了まで水の補充を行わなかった。
試験結果を図 1 3に示す。 〇は、 ブリッジが切れたことを示し、 Xは、 ブリッジ が切れなかったことを示す。 この試験の結果、 気中ギャップ (ct) が 0. 8 mm ≤ α≤ 1. Ommであり、 碍子ギャップ (γ) が 0. 5πιιη≤ γ ^ 0. 7 mmであ り、 (α _ γ) が 0. 2mm≤ ( ~ y) ≤ 0. 4 mmを満たすとともに、 平行接 地電極の幅を 2. 2mm以下にすることによって、 ブリッジの発生を十分に低減す ることができることがわかる。
次に、 下記に示す着火性テス トを行った。 この試験は、 2 0 0 0cc直列 6気筒の エンジンを用いた自動車を使用してシフトレバーを Dレンジに入れ、 T O kmZh の定地走行条件 (均質リーンバーン燃焼状態を想定) で行った。 このエンジン条件 で、 1 %失火が発生したときの AZFの値を着火限界と判断した。 この試験の結果 を、 図 1 4に示す。 この結果から、 この試験の結果、 気中ギャップ (α) が 0. 8 mm≤ α≤ 1. Ommであり、 碍子ギャップ (γ) 力 S 0. 5 mm≤ γ≤ 0. 7 mm
であり、 (α— γ) が 0. 2mm (α_γ) ≤ 0. 4 mmを満たすとともに、 平 行接地電極の幅を 2. 2mm以下にすることによって、 ブリッジの発生を十分に低 減することができることがわかる。
以上の試験結果から、 気中ギャップ (α) が 0. 8mm≤a≤ l . Ommであり 碍子ギャップ (γ) が 0. 5mm≤y≤ 0. 7mmであり、 (α_γ) が 0. 2m m≤ (α-y) ≤ 0. 4 mmを満たすとともに、 平行接地電極の幅を 2. 2 mm以 下であって、 かつ、 中心電極先端面における外径の 2倍以上にすることによって、 燃料ブリッジを生ずることなく平行接地電極における放電電圧を十分に低減するこ とができ、 その結果、 優れた着火性を有することがわかる。
(実験 1 1 :第七の構成; α≤ 1. 1 mm、 0. 5 mm≤ γ≤ 0. 7 mm、 φ≤ 1 8 mmとする根拠)
碍子 1の内部における中心電極 2の太径部での径を ψ 2. 2mm、 気中ギャップ (α) を形成する中心電極 2の縮径部先端面における外径を φ 0. 6 mm、 気中ギ ヤップ (α) を 1. lmm、 主体金具 5の先端面 5 Dの位置における碍子 1と主体 金具 5との径差 (δ) を 2. 8 mmとし、 幅 2. 2 mmのセミ沿面放電接地電極 1 2を 2個設け、 碍子ギャップ ( ) をいずれも γ = 0. 6mm、 セミ沿面ギャップ (β) をいずれも = 1. 6mmに設定した。 そして、 碍子先端径 を変更する ことによってセミ沿面放電接地電極 1 2の幅との差 φ を種々設定したスパークブラ グを用意した。 そして、 これらスパークプラグを用いて実験 6と同様の条件に設定 した自動車を用い、 安定燃焼領域を測定した結果を図 1 5に示す。
この結果から、 1 mmであり、 0. 5mm≤ y≤0. 7 mmであり、 φ≤ 1. 8mmとすることによって、 失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲 (す なわち、 安定燃焼領域の幅) を広くすることができ、 燃料リーン状態での着火性を 向上させることができることがわかる。 このような現象は、 以下の理由によるもの と考えられる。 即ち、 碍子先端径とセミ沿面放電接地電極 1 2の幅との差が大きく
なると、 セミ沿面放電接地電極 12と中心電極 2との間で火花が発生する際に、 碍 子 1の先端部外周を大きく回り込むことになる。 セミ沿面放電接地電極 1 2端面の 後方角部から斜め後方に向けて火花が発生した場合に、 その火花が碍子 1の先端部 にぶつかった後に中心電極 2に達する。 碍子 1の先端部にぶっかった際には、 火花 は斜め後方に向けて外周面に沿って這うことになり、 その後、 向きを変えて中心電 極 1先端側周面方向に這うことになる。 従って、 碍子 1先端径とセミ沿面放電接地 電極 12の幅との差が大きいと、 碍子 1外周面に沿って斜め後方に火花が這う量が 大きくなるため、 火花が大きく垂れ下がるものと考えられる。
(実験 12 :付加要件 3 ;碍子の先端部における中心貫通孔の最小径 (D3) を、 D 3≤ 2. 1mmとする根拠)
主体金具 5の先端面 5 Dの位置における碍子 1と主体金具 5との径差 (δ) を δ =2. 8 mm, 気中ギャップ ( α ) を α = 1. 1mmとし、 セミ沿面放電接地電極 12を 2個設け、 碍子ギャップ (γ) をいずれも γ = 0. 6mm、 セミ沿面ギヤッ プ (β) をいずれも ]3 = 1. 6mmに設定するとともに、 碍子 1が主体金具 5の保 持部 51よりも先端側における中心貫通孔の最小径 (D 3) を種々設定したスパー クプラグを作製した。 なお、 中心電極 2の外径は中心貫通孔の径に応じて種々変更 する。 これらスパークプラグを、 実験 1と同様に 180 Occ直列 4気筒の直噴式内 燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバーを Dレンジに入れ、 アイドリング 600 r pmにて運転を行った。 また、 スパークプラグの点火時期は B TD C 1 5° に固定した。 そして、 D 3の各値について、 1分間あたりの失火発生頻度が略 ゼロとなる噴射終了時期の幅 (燃焼安定領域) を測定した。 結果を図 16に示す。 この結果から、 碍子 1の中心貫通孔の最小径を φ 2. 1 mm以下にすることによつ て、 アイ ドリング運転時における安定燃焼領域を広くとることができることがわか る。
また、 上記スパークプラグについてはプレデリバリ汚損試験を行った。 試験条件
は以下の通りである。 すなわち、 排気量 3 0 0 0 c cの 6気筒直噴式内燃機関を用 いた自動車にスパークプラグを取り付ける。 そして、 該自動車を一 1 0 ° Cの低温 試験室に置き、 J I S D 1 6 0 6の低負荷適合性試験で規定されている運転パター ンにより、 低速で数回寸動させる所定の運転パターンを 1サイクルとして 1 0 ΜΩ に到達するまでのサイクル数を測定した。 以上の結果を表 7に示す。
表 7
この結果によると、 碍子 1の中心貫通孔の最小径を Ψ 2 . 1 mm以下にすること によって、 プレデリバリ汚損テストにおいても問題を生じることが非常に少なくな る、 1 Ο Μ Ω に到達するサイクル数を 1 0サイクル以上にすることができることが わ力 ^ "る。
以上 2種類の評価結果から、 碍子 1が主体金具 5と係止されて保持される保持部 5 1よりも先端側における中心貫通孔の最小径 (D 3 ) を、 1 mmとす ることによって、 直噴式内燃機関であっても安定燃焼領域を広くとることができ、 さらにプレデリバリ汚損試験においても問題を生じにくくなることが示された。 碍 子 1の内径を狭くすることによって中心電極 2の外径も小さくなり、 燃焼サイクル の際に碍子先端部に受けた熱が中心電極 2側に逃げることが適度に抑制されるため, 碍子 1の先端温度を上昇しやすくする。 従って、 通常の運転時に温度の上がり難い 直噴式内燃機関であっても、 碍子 1の先端部温度を上昇しやすくすることができ、
「くすぶり」 によって堆積したカーボンを焼き切ることが容易になる。 また、 これ に伴って主体金具 5の先端面 5 Dと碍子 1との間で火花が発生したり、 更に保持部 近傍で火花が発生したりすることを防止することができるため、 直嘖式内燃機関に おいても安定して燃焼する領域を広くとることができるようになる。 なお、 図 1 7 に示すような、 第 2の実施の形態である、 中心電極 2の先端部のみを縮径したタイ プのスパークプラグ 2 0 0の場合においても、 同様の結果を得ている。
次に、 本発明における他の実施の形態について図面を参照して説明する。 なお、 以下の実施の形態では、 上記の実施の形態に比して碍子 1、 主体金具 5と中心電極 2の形状以外は変更ないので説明を省略し、 異なる部分のみ説明する。 これらの説 明は、 図 1 8〜図 2 2に示す部分断面図により、 中心電極 2、 平行接地電極 1 1、 セミ沿面放電接地電極 1 2及び主体金具 5 '先端の近傍を拡大する形で行なう。
まず、 図 1 8に示す第 3の実施の形態のスパークプラグ 2 1 0では、 主体金具 5 ' の先端部を内径側に縮径することによって、 先端面 5 D 'の面積が広くなっている。 主体金具 5 'の先端部をこの様な形状にすることによつて燃料が主体金具 5 'の内部 にまで入り込むことを抑制することができる。 直噴式内燃機関では、 燃料噴射ノズ ルがビストンの方向を向いているため、 一度ビストンにぶっかって跳ね返つてきた 燃料がタンブルとスキッシュによる吸気の流れの影響を受けながらスパークプラグ の斜め先端側から近づいてくる。 この角度で燃料がくると主体金具の内部に入り込 みやすい。 従って、 本実施形態のように主体金具 5 'の先端部を内径側に縮径するこ とで燃料が内部にまで入り込むことを抑制しやすくなる。 また、 先端面 5 D ' の面 積が広くなることから、 本発明のように複数の接地電極を持つスパークプラグにと つて溶接を容易にできるとともに、 接地電極の厚みを厚くすることができる。 更に. 主体金具 5 'の保持部 5 1 'より先端側を広くとることができるので、 保持部 5 1 '近 傍で火花が発生することを抑制することができる。 このように主体金具 5 'の先端部 を縮径するときの縮径部の内径は、 碍子 1との径差 δ ί 気中ギャップ (α ) に対
して、 δ≥ 2 . 6 Xひ の関係を満足する程度にすると良い。
図 1 9に示す第 4の実施の形態のスパークプラグ 2 2 0では、 中心電極 2 'の電極 母材先端が碍子 1の先端面 1 Dよりも先端側で縮径されてその先端に貴金属チップ 2 1 'が全周レーザ溶接により接合されている。 なお、 碍子 1の先端面 1 Dを示す線 を外方へ延長した第 1の延長線 3 1がセミ沿面放電接地電極 1 2の先端面 1 2 Cに 位置するような位置関係にセミ沿面放電接地電極 1 2が設定されている。 また、 本 実施形態では、 例えば中心電極母材の径は φ 1 . 8 mmであり、 その先端に φ 0 . 8 111111の 1 r _ 5質量%P tチップが接合されている。 更に、 本実施例の場合のセ ミ沿面ギヤップ ( /3 ) の距離 β は、 碍子 1の先端面 1 Dの位置における中心電極 2 の外径、 即ち、 中心電極母材が縮径される前の基径とセミ沿面放電接地電極 1 2と の本スパークプラグの軸線方向に対して垂直方向の距離となる。
図 2 0に示す第 5の実施の形態のスパークプラグ 2 3 0では、 中心電極 2 'の電極 母材先端が縮径されて、 その先端に貴金属チップ 2 1 'が全周レーザ溶接により接合 されている。
他方、 図 2 1に示す第 6の実施の形態のスパークプラグ 2 4 0では、 中心電極 2 ' の電極母材先端は縮径されておらず、 先端に略凸状の形状をした貴金属チップ 2 1 ' が全周レーザ溶接により接合されている。 また、 レーザ溶接部 2 1 2の先端が碍子 1の先端面 1 Dとほぼ同一面に位置しそいる。 なお、 本実施形態では、 例えば中心 電極母材の径は φ 1 . 8 mmであり、 その先端に先端側の径が φ 0 . 6 mm, 径大 部 2 1 1 'の径が φ 1 . 8 mmの I r一 2 0質量0 /0 Rhチップが接合されている。 そ して、 碍子 1の中心貫通孔内径が φ 1 . 9 mmに設定されている。 更に、 本実施例 の場合のセミ沿面ギャップ W の距離 /3 は、 碍子 1の先端面 1 Dの位置における 中心電極 2の外径、 即ち、 貴金属チップ 2 1 'の径大部 2 1 とセミ沿面放電接地 電極 1 2との本スパークプラグの軸線方向に対して垂直方向の距離になる。 このよ うに構成することにより、 セミ沿面ギャップ (i3 ) で火花が発生した場合であって
も、 貴金属チップ 2 が中心電極母材から脱落することを防止することができる。 セミ沿面ギャップ (]3 ) で火花が発生した場合には、 貴金属チップ 2 1 'の側面とセ ミ沿面放電接地電極 1 2との間で火花が発生することになる。 この位置で頻繁に火 花が発生することになると、 碍子 1の先端面 1 D近傍での貴金属チップ 2 1 'が消耗 したとしても、 貴金属チップ 2 先端部よりも細くなつてしまうことがなく、 貴金 属チップ 2 1 'の先端部が脱落してしまうことを防止できる。 更に、 先端部は径が細 いため、 気中ギャップ (α ) で火花が発生する際の放電電圧を低減させることがで きる。 このため、 着火性が向上する。 また、 特に直噴式内燃機関では安定燃焼領域 を広くすることができる。
図 2 2に示す第 7の実施の形態のスパークプラグも、 同様に中心電極 2 'の電極母 材先端は縮径されておらず、 先端に略凸状の形状をした貴金属チップ 2 が全周レ 一ザ溶接により接合されている。 この実施形態では、 貴金属チップ 2 1 'の径大部 2 1 1 'が碍子 1の先端面 1 Dよりも内部に位置している。 なお、 本実施形態では、 例 えば中心電極母材の径は φ 1 . 8 mmであり、 その先端に先端側の径が φ 0 . 6 m m、 径大部 2 1 の径が φ 1 . 8 11 111の 1 ]:ー2 0質量%1 11チップが接合されて いる。 そして、 碍子 1の中心貫通孔内径が φ 1 . 9 mmに設定されているため、 碍 子 1の中心貫通孔内径と貴金属チップ 2 1 '外径との径差は、 0 . 1 mmに設定され ている。 更に、 本実施例の場合のセミ沿面ギャップ ( β ) の距離 ]3 は、 碍子 1の先 端面 1 Dの位置における中心電極 2の外径、 即ち、 貴金属チップ 2 1 'の貴金属チッ プ 2 の細径部とセミ沿面放電接地電極 1 2との距離になる。
セミ沿面ギャップ (]3 ) で火花が発生した場合に碍子 1の先端面 1 Dを這う火花 は、 更に碍子 1の中心貫通孔の内壁を這って貴金属チップ 2 の径大部 2 1 1 'に 至る。 従って、 径大部 2 1 が碍子 1の中心貫通孔内部にあつたとしても火花は径 大部 2 1 1 'とセミ沿面放電接地電極 1 2との間で発生するため、 貴金属チップ 2 1 'の先端部が脱落してしまうことを防止できる。 更に、 先端部は径が細いため、 気中
ギャップ (α ) で火花が発生する際の放電電圧を低減させることができる。 このた め、 着火性が向上する。 また、 特に直噴式内燃機関では安定燃焼領域を広くするこ とができる。 そして、 貴金属チップ 2 1 '外径と碍子 1の中心貫通孔内径との径差の 最小値が 0 . 1 mmであるため、 中心電極 2 '母材の火花放電による消耗を抑えるこ とがより容易になる。 これは、 以下の理由によるものであると考えられる。 即ち、 セミ沿面ギャップ (/3 ) で火花が発生した場合には、 碍子 1の中心貫通孔内壁を火 花が這うことになる。 この時、 貴金属チップ 2 1 '外径と碍子 1の中心貫通孔内径と の径差が大きくなると、 火花が貴金属チップ 2 に飛ばずに更に奥深く入り込んで 中心電極 2 '母材にまで至る場合がある。 中心電極 2 '母材は貴金属チップ 2 1 'と比 較して耐火花消耗性は低いため、 急速に消耗しやすく、 チップの脱落に至る場合が ある。 従って、 この径差を小さくすることによって、 中心電極 2 '母材に火花が至る 現象を抑えることができ、 耐久性が向上するのである。
なお、 図 3 0に示すように、 平行接地電極 1 1の気中ギャップに面する位置にも 貴金属チップ 5 0を溶接接合することができる。 該スパークプラグ 2 7 0は、 図 9 のスパークプラグ 2 2 0において、 平行接地電極 1 1にも貴金属チップ 5 0を設け た例を示している。 貴金属チップ 5 0の材質は、 平行接地電極 1 1側の貴金属チッ プ 2 1 ' と同様のものを使用できる。 他方、 中心電極 2側が負となる電圧極性にて スパークプラグを使用する場合、 平行接地電極 1 1側においては中心電極 2側と比 較して火花消耗が若干緩やかであるので、 中心電極 2側よりもやや融点の低い貴金 属チップ 5 0を使用することも可能である (例えば、 中心電極 2側の貴金属チップ 2 1 ' がイリジウム合金である場合、 平行接地電極 1 1側の貴金属チップ 5 0を白 金あるいは白金合金にて構成できる) 。
平行接地電極 1 1とセミ沿面放電接地電極 1 2とは、 表層部をなす母材をいずれ もエッケル又はエッケル合金にて構成できる。 この場合、 両電極 1 1, 1 2におい て、 使用する母材の材質を異ならせることも可能である。 すなわち、 平行接地電極
1 1の母材を、 ニッケルを主成分とする第一のニッケル系母材金属にて構成し、 セ ミ沿面放電接地電極 1 2の母材を、 ニッケルを主成分とする第二のニッケル系母材 金属にて構成できる。
例えば、 図 3 0 (セミ沿面放電接地電極 1 2の形態は図 2あるいは図 1 9と同 じ;符号をこれらの図から援用する) では、 セミ沿面放電接地電極 1 2の他端の端 面部 1 2 Cに貴金属チップが溶接されず、 力っ該端面部の全体が第二のニッケル系 母材金属からなる一方、 平行接地電極 1 1の少なくとも表層部 1 1 bが第一のニッ ケル系母材金属にて構成され、 中心電極 2との対向面に貴金属チップ 5 0が溶接さ れている。 この場合、 第二のニッケル系母材金属のエッケル含有率よりも低くする ことができる。 すなわち、 平行接地電極 1 1側は貴金属チップ 5 0が溶接してある ので、 母材の火花消耗はそれほど問題とならない。 他方、 セミ沿面放電接地電極 1 2側は、 平行接地電極 1 1側と比較すれば飛火頻度は高くないので、 貴金属チップ を省略してコスト削減を図るとともに、 この場合は母材表面そのものが放電面とな ることから、 そのニッケル含有率の向上により火花消耗抑制を図ろうという思想で ある。 この場合、 第二のニッケル系母材金属のニッケル含有率は、 8 5質量%以上 であることが望ましい。 例えば、 第一のニッケル系母材金属をインコネル 6 0 0
(商標名) とし、 第二のニッケル系母材金属を 9 5質量%ニッケル合金 (残部クロ ム、 マンガン、 シリコン、 アルミ、 鉄等) にて構成することができる。
(その他の実施の形態)
以上説明した各実施の形態ではセミ沿面放電接地電極 1 2を 2極としたが、 セミ 沿面放電接地電極 1 2は単極であっても良いし 3極以上の多極としても良い。 しか しながら、 単極では碍子 1の端面の全周に渡って火花でカーボンを焼き切るのが難 しく、 火花清浄性が悪くなるので、 セミ沿面放電接地電極 1 2は 2極から 4極が好 ましいと考える。 また、 セミ沿面放電接地電極 1 2の位置は、 多くの実施形態でセ ミ沿面放電接地電極 1 2の先端面 1 2 Cの全面が碍子 1の直管状部 1 0 2に対向す
る例を説明したが、 碍子 1の先端面 1 Dを示す線を外方へ延長した第 1の延長線 3 1がセミ沿面放電接地電極 1 2の先端面 1 2 Cに位置するような位置関係に設定し てもよい。 さらに、 碍子 1の先端内部において中心電極の縮径 (いわゆるサーモ) されていないスパークブラグについて説明したが、 1段または 2段以上に縮径され ているスパークプラグであっても良い。
また、 図 2 9のスパークプラグ 2 6 0は、 階段状の縮径部を経て直管状部 1 0 2 Bを形成した例である。 図 2 3あるいは図 2 9に示すスパークプラグ 1 0 0 , 2 6 0においては、 いずれも碍子 1の先端部に直管状部 1 0 2あるいは 1 0 2 Bが形成 されている。 直管状部 1 0 2あるいは 1 0 2 Bの軸線 3 0の向きにおける長さは、 いずれも 0 . 5〜1 . 5 mmである。 これらの構成では、 直管状部 1 0 2あるいは 1 0 2 Bの後方に、 図 3 1 ( c ) に示すようなテーパ状の膨らみ部 1 0 5、 あるい は図 3 1 ( a ) に示すような階段状の膨らみ部 1 0 2 Aが隣接形成される形となる c 上記の膨らみ部がセミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cの後方側縁 1 2 Bに近 づきすぎると、 ここからの火花が後方側に垂れ下がる形で発生しやすくなる。 例え ば、 図 3 2 ( a ) に示すように、 階段状の膨らみ部 1 0 2 Aのアール付与された移 行部 1 0 2 Tには電界が集中しゃすく、 セミ沿面放電接地電極 1 2の後方側縁 1 2 Bからの火花 S P 3はこの移行部 1 0 2 Tを目指して放出される結果、 後方側に垂 れ下がり、 碍子 1の側周面後方部を大きく回り込む形で飛火することになる。 この ような火花が着火性を悪化させることは明らかである。
そこで、 図 3 1に示すように、 セミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cの、 碍子 2の軸線 3 0の方向における後方側縁 1 2 Bの中点と、 該碍子 2の軸線 3 0とを含 む仮想的な平面上において、 セミ沿面ギャップの大きさを Ί (単位: mm) として、 後方側縁 1 2 Aの中点を中心とする (γ + 0 . 1 ) mmの円 C kを描いたときに、 膨らみ部 1 0 2 Aの全体が該円 C kの外側に位置するようにすれば、 図 3 2の S P 3のような火花の垂れ下がりを効果的に防止することができる。 なお、 図 3 1
(b) に示すように、 膨らみ部 102Aの移行部 102Tを円 Ckに倣う傾斜面と すれば、 図 31 (a) のように移行部 102Tが直管状部 102 Bの外周面から垂 直に立ち上がる形態と比較して、 直管状部 102 B自体の長さを短くすることがで き、 また、 移行部 102Tに電界集中しやすい小角度の縁部を生じにくくなるので、 火花の垂れ下がり防止に一層効果的である。
上記の効果を確認するために、 以下の実験を行なった。
(実験 13)
図 3のスパークプラグにおいて、 碍子 1の直管状部 102の形態を、 図 31
(c) に示すタイプのもの (タイプ A) 及び (a) に示すタイプのもの (タイプ B) を種々用意した。 これらスパークプラグは、 いずれも平行接地電極 1 1をなく し、 セミ沿面放電接地電極 1 2を 2個設け、 碍子ギャップ (γ) をいずれも γ = 0· 6 mm, セミ沿面ギャップ (]3) をいずれも ]3 = 1. 6 mmに設定するとともに、 碍子 1の先端面 1 Dの高さ位置とセミ沿面放電接地電極 1 2の端面 12 Cの後端側 縁 1 2 Bの高さ位置との段差 Eは 0. 9 mmとした。 そして、 直管状部 (102あ るいは 102B) の長さを、 表 8に示す 0. 9〜1. 8mmの種々の値とした。 な お、 表 8には、 前記した半径 (y + 0. 1) mmの円の範囲内に、 膨らみ部 105 あるいは 102 Aが存在しているものを 「*」 、 存在していないものを 「◎」 で表 している。 これらのスパークプラグを用いて、 以下の実験を行なった。 すなわち、 スパークプラグをチャンバに取り付け、 チャンバ内を 0. 6 MP aに加圧するとと もに、 フルトランジスタ電源により 1秒間に 1回の火花を発生させる動作を 1分間 継続した。 そして、 その間の火花発生状況をビデオ撮影し、 その画像を解析するこ とにより、 セミ沿面放電接地電極 12の端面 1 2 Cの後方側縁 12 Bから発生した 火花の、 該後方側縁 1 2 Bから軸線 30の方向における最大垂れ下がり長さ Lを求 め、 その長さが 2. 5mm以内に収まっているものを良好 (〇) 、 そうでないもの を不良 (X) として評価した。 以上の結果を表 8に示す。
表 8
すなわち、 直管状部の長さが 1. 5 mm以下であるか、 あるいは前記した半径 ( + 0. 1) mmの円内に膨らみ部が存在していない場合に、 火花の垂れ下がり が効果的に抑制されていることがわかる。
次に、 セミ沿面放電接地電極 1 2の端面 1 2 Cからの火花の発生形態は、 該端面 1 2 Cの形状を工夫することによつても改善することが可能である。 まず、 端面 1 2 Cの形態を規定するに際しては、 以下のような幾何学的な定義を行なう。 すなわ ち、 図 2 (b) において、 軸線 30の方向において碍子 1の先端部の位置する側を 前方側とし、 これと反対側を後方側とする。 さらに、 セミ沿面放電接地電極 1 2の, 端面 1 2 Cの後方側縁 1 2 Bの中点 M 1と軸線 30とを含む仮想的な平面 V Pに対 し、 軸線 30を含んで該平面 VPと直交する平面を投影面 P Pとして定める。 そし て、 該投影面 PPへの端面 1 2 Cの正射影を 1 2NP (以下、 端面正射影 1 2NP と記載する) とする。 なお、 図 26に示すように、 端面 1 2 Cが投影面 P Pと平行 な場合は、 図 2 (b) に示すように、 正射影 1 2NPは端面 1 2 Cと幾何学的に合 同となる。 他方、 図 2 1に示すように、 端面 1 2 Cを平面となす代わりに円弧状面
となした場合には、 端面 1 2 Cの形状は曲面であるものの図 2 (c) に示すように. その端面正射影 1 2 NPの形状は、 図 2 (b) に示す場合と基本的に相違しない。 セミ沿面放電接地電極 1 2を、 例えば長方形状の軸断面を有する線状部材を曲げ 加工して作ったものである場合、 図 3 2 (b) に示すように、 その端面正射影 1 2 NPの形状も長方形状のものとなる。 このとき、 投影面 P P上にて軸線 30と後方 側縁 1 2 Bとの交点を Xとし、 同じく前方側縁 1 2 Aとの交点を Yとして、 線分 X Yの中点 Qを通って軸線 30と直交する基準線 RLを引いたとき、 該基準線 R L りも前方側に位置する領域 (以下、 前方側領域 FAという) の面積 S 1は、 同じく 後方側に位置する領域 (以下、 後方側領域 RAという) の面積 S 2と略等しくなる ( なお、 投影面 P P上での議論においては、 「…の正射影」 とその都度称することは 煩雑であるので、 これを省略し、 単に 「後方側縁 1 2 B」 、 「前方側縁 1 2A」 等 と称する。
端面正射影 1 2NPがこのような形状となる端面 1 2 Cの場合、 前方側領域 FA と後方側領域 RAとでは、 単位時間あたりの火花の発生頻度は略等しくなる。 例え ば、 図 3 2 (c) に示すように、 領域 DWにおいて何らかの理由により局所的に火 花消耗が遅れた場合を想定すると、 消耗から取り残された領域 DWのギャップ間隔 は他の領域よりも小さくなるから、 以降は領域 DWでの火花放電が逆に生じやすく なる。 該事実から因果律的に考えれば、 セミ沿面放電接地電極 1 2は、 局所的なギ ヤップ間隔異常がなるべく生じないように、 放電面となる端面 1 2 Cの全体にわた つて一様に消耗すること、 換言すれば単位面積/単位時間あたりの火花発生頻度が、 端面 1 2 Cの全面に渡って略均等でなければならない。 従って、 基準線 RLに関し て二分される端面正射影 1 2NPの 2つの領域、 すなわち前方側領域 FAと後方側 領域 R Aとの面積 S 1と S 2とが等しいので、 各領域 F Aと RAとで発生する単位 時間あたりの火花発生頻度も略等しくなるのである。 その結果、 前方側領域 FAも 後方側領域 R Aも略同じ頻度で火花が発生するのであるから、 チャンネリング抑制
や着火性改善の効果は期待できない。
そこで、 図 3 3においては、 端面正射影 N Pにおける前方側領域 F Aの面積 S 1 が後方側領域 R Aの面積 S 2よりも大となるような、 端面 1 2 Cの形状が選択され ている。 このようなセミ沿面放電接地電極 1 2は、 面積が増えた分だけ前方側領域 F Aでの単位時間あたりの火花 S Pの発生頻度が高くなり、 碍子 1へのァタックが 柔らかい前方側領域 F Aが増加するので、 チャンネリング抑制及び着火性改善を効 果的に図ることができるようになる。 図 3 3では、 平行対辺のうち短辺が後方側縁 1 2 Bとなる台形状の形状が採用されている。 また、 火花 S Pの発生頻度を矢印の 長さにより模式的に表している。 他方、 図 3 4は、 後方側縁 1 2 Bが弧と一致する 弓形ないし半月状の形状とした例であり、 S 1 > S 2が成り立つていることは明ら かである。
次に、 セミ沿面放電接地電極 1 2が、 図 3 2 ( b ) に示すような長方形状の端面 1 2 Cを有しているとき、 その角部、 特に後方側縁 1 2 Bの両端の角部が図に示す ようなピン角になっていると、 ここを起点として火花 S P 3が斜め外方下向きに放 出されやすくなる。 このような火花 S P 3は、 図 3 2 ( a ) に示すように、 碍子 1 の軸線方向に沿って大きく垂れ下がる形で飛ぶことがあり、 着火性が著しく損なわ れてしまう不具合につながる。 特に、 直管部 1 0 2 Bの基端部に、 鋭い階段状の移 行部 1 0 2 Tが形成されている場合は、 火花 S P 3は電界集中しやすい稜線部を目 指して大きく回りこむ形になるため、 垂れ下がりは一層甚だしくなり、 着火性が大 きく損なわれてしまう不具合につながる。
そこで、 図 3 5に示すように、 少なくとも後方側領域 R Aにおいて、 角部の先端 曲率半径又は面取り幅が 0 . 2 mm以上若しくはこの角部を形成する 2辺部が 9 0 度を超える角度をなすように形成されており端面正射影 1 2 N Pにおいて先鋭な角 部が現われないような、 端面 1 2 Cの形状を選択することで、 後方側領域 八から の上記のような垂れ下がりを伴う火花の発生を効果的に抑制することができる。 ま
た、 火花発生の起点となりやすい先鋭な角部を後方側領域 R Aから排除することに より、 該領域側での火花発生頻度自体も低減される。
図 3 5 (a) は、 直線状の後方側縁 1 2 Bの両端に生ずる角部 (2辺部のなす角 度は略 9 0°C) RC 1 , RC 2を、 先端曲率半径が 0. 2 mm以上 (例えば上限 1. Omm程度まで) のアール状部とした例である。 また、 図 3 5 (b) は、 角部 RC 1, 〇2を幅0. 2 mm以上の面取り部となした例である。 この場合、 面取り部 の両端に 1ずつの角部が生じることになるが、 これらの角部は、 2辺部がいずれも 鈍角となり、 敏感な火花発生起点部とはなりにくいので、 先端曲率半径は 0. 2 m m未満となっていても差し支えない。
なお、 図 3 5 (a) 及び (b) においては、 後方側縁 1 2 Bの両端に生ずる角部 RC 1 , RC 2にのみアール状部あるいは面取り部を形成している。 その結果、 前 方側領域 F Aの面積 S 1は後方側領域 RAの面積 S 2よりも多少は大きくなり、 S 1 >S 2とする効果も多少は生ずることとなる。 ただし、 図 3 5 (c) に示すよう に、 前方側縁 1 2 Aの両端に生ずる角部 FC 1 , FC 2も含めた 4つの角部の全て にアール状部 (面取り部でもよい) を形成し、 S 1と S 2とを略等しくすることも もちろん可能である。 また、 図 3 3の構成は、 端面正射影 1 2 NPが略等脚台形状 となっており、 後方側縁 1 2 Bの両端に生ずる角部 RC 1, RC 2はいずれも鈍角 であるから、 先鋭な角部を排除する効果も生ずる。 また、 図 34の構成においても 後方側縁 1 2 B力 先鋭な角部が本質的に生じない円弧状に形成されているので、 先鋭な角部は同様に排除されているといえる。
図 36 (a) は、 図 3 3の台形状の端面 1 2 Cにおいて、 各角部をそれぞれァー ル状となした例であり、 S 1〉S 2とする効果と先鋭な角部排除の効果が一層理想 的に達成される形となる。 この場合、 (b) に示すように、 端面 1 2 Cが図 2 7の ような円筒面状とされる場合、 端面 1 2 Cを展開してみれば明らかなように、 後方 側縁 1 2 Bの両端の角部 RC 1 , RC 2は二辺間角度がさらに大きくなり、 火花発
生抑制効果を一層顕著なものとすることができる。
なお、 図 3 3〜図 3 6に示す、 いずれの形状のセミ沿面放電接地電極 1 2も、 所 望とする端面正射影形状と略同じ軸断面を有する線状部材の曲げ加工により形成で きる。