JP4469489B2 - スパークプラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の着火装置として用いられるスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスパークプラグは、絶縁碍子の先端面から下方に突出するようにされた中心電極と、この中心電極に対向して配設され一端が主体金具に接合された平行接地電極とを備え、中心電極と平行接地電極との間の気中ギャップに火花放電させて燃料混合ガスに着火するものが一般的である。
【0003】
また、気中ギャップでの着火性を向上させるため、特開平5−326107号公報及び特開平7−130454号公報には、中心電極の端面に対向する平行接地電極の他に、中心電極の側周面に対向した補助接地電極を設けたものが提案されている。これらの補助接地電極は補助接地電極と中心電極との間のギャップに飛火させることが目的ではなく、補助接地電極の存在により平行接地電極と中心電極の間の電界分布を改善し、より低い放電電圧で平行接地電極と中心電極の間のギャップに飛火させ着火性を向上させようとするものである。このため、これらのスパークプラグは構造的に見て、補助接地電極の端面の端縁が必ずしも絶縁碍子の先端面の近傍に位置するものではなかった。
【0004】
さらに、特開平9−199260号公報には、中心電極の端面に対向する平行接地電極の他に、絶縁碍子の先端面の近傍に補助接地電極を設けたものが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平5−326107号公報及び特開平7−130454号公報に記載の従来のスパークプラグはいずれも、いわゆる「くすぶり」に弱いという問題点があった。内燃機関が所定温度において所定回転数以上で回っている定常運転時は、スパークプラグの絶縁碍子の下方部分である脚長部は適度に温度が上昇し、燃焼室内部に位置する絶縁碍子の先端面近傍の表面温度は500゜C程度に上昇する。この程度に温度が上昇すると、絶縁碍子の表面に付着したカーボンは焼き浄められるため、絶縁碍子の表面は清浄に保たれる。このため「くすぶり」は生じない。しかしながら、内燃機関の温度が極端に低く、回転数も低い低負荷の場合は、絶縁碍子の表面の温度が上がらず絶縁碍子の表面に燃焼によるカーボンが付着蓄積して、いわゆる「くすぶり」の状態になる。これがさらに進むと、中心電極と接地電極との絶縁が低下して火花放電が不能になり、エンジンストールにいたる。
【0006】
また、上記特開平9−199260号公報記載の従来のスパークプラグは、平行接地電極若しくは補助接地電極から中心電極までの距離(主気中ギャップ若しくはセミ沿面ギャップ)、及び補助接地電極の端面から絶縁碍子の側周面までの距離(セミ沿面碍子ギャップ)の関係は明らかにされていない。
【0007】
さらに、特開昭59−71279号公報には絶縁碍子の側周面に対向して接地電極を配設したセミ沿面プラグが開示されている。このプラグでは、火花が絶縁碍子の表面に沿って走るため絶縁碍子の表面に付着したカーボンは焼き切られ、「くすぶり」の問題はあまり生じない。しかし、火花が絶えず絶縁碍子の表面に沿って走るため絶縁碍子表面が火花による損傷を受ける、いわゆる「チャンネリング」の問題が生じる。このため、スパークプラグの寿命が短いという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、「くすぶり」に強く、かつ、着火性にも優れたスパークプラグを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
上記の目的を達成するため、本発明のスパークプラグは以下の基本構造を有する。すなわち、本発明のスパークプラグは、中心貫通孔を有する絶縁碍子と、中心貫通孔に保持され絶縁碍子の先端部に配設された中心電極と、絶縁碍子の先端部を自身の先端面から突出するように保持する主体金具と、その主体金具の先端面に一端が接合され他端が中心電極の先端面に対向するように配設された平行接地電極とを備え、平行接地電極と中心電極の先端面とにより主気中ギャップ(α)が形成されている。また、主体金具に一端が接合され他端が中心電極の側周面若しくは絶縁碍子の側周面に対向するように配設された複数のセミ沿面接地電極を備え、セミ沿面接地電極の他端の端面と、この端面と対向する中心電極の側周面との間にセミ沿面ギャップ(β)が形成されている。そして、セミ沿面接地電極の端面と、この端面と対向する絶縁碍子の側周面との間にセミ沿面碍子ギャップ(γ)が形成されており、主気中ギャップ(α)の距離αとセミ沿面ギャップ(β)の距離βとが、α<βの関係を満足する。また、主気中ギャップ(α)の距離αとセミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γとが、α>γの関係を満足する。
【0010】
このように形成すると、セミ沿面ギャップ(β)の距離βより主気中ギャップ(α)の距離αの方が小さい(α<β)から、「くすぶり」の状態ではない正常時には、平行接地電極との間の主気中ギャップ(α)で火花放電が生じる。一方、主気中ギャップ(α)の距離αよりセミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γは小さい(γ<α)。従って、絶縁碍子の先端面が燃焼により生じたカーボンにより汚損された「くすぶり」の状態になると、セミ沿面接地電極の端縁と中心電極の側周面の間に、絶縁碍子の先端面の沿面を経由して火花放電が生じる(以下、セミ沿面放電と称する)。セミ沿面放電の火花はセミ沿面碍子ギャップ(γ)を飛んだ後、絶縁碍子の表面に沿って走る(電圧極性が反転している場合はこの逆)。何回かセミ沿面放電を繰り返すと絶縁碍子の先端面に堆積したカーボンが焼き切られて絶縁碍子の表面は清浄な状態に戻り、再び絶縁碍子表面の絶縁が回復して「くすぶり」が解消され、火花放電はセミ沿面ギャップ(β)から主気中ギャップ(α)に戻る。なお、本明細書においてセミ沿面ギャップ(β)の距離βとは、絶縁碍子の先端面の位置における中心電極の側周面とセミ沿面接地電極とのスパークプラグの軸線に対して垂直方向の最小距離を言う。また、セミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γとは、絶縁碍子とセミ沿面接地電極との最短距離を言う。
【0011】
上記基本構造を有したスパークプラグでは、殆どの時間において平行接地電極との間の主気中ギャップ(α)で火花放電が生じ、絶縁碍子の表面がカーボンにより汚損された「くすぶり」の状態の時にのみセミ沿面接地電極との間のセミ沿面ギャップ(β)でセミ沿面放電が生じて燃焼室の混合ガスに着火する。殆どの時間を主気中ギャップ(α)での火花放電で混合ガスに着火するから着火性に優れる。また、セミ沿面放電は絶縁碍子の表面に堆積したカーボンを焼き切る自己清浄作用を備えるから、このスパークプラグは「くすぶり」に極めて強い。さらに、セミ沿面放電が生じる頻度は低くその放電時間がごく短時間で終了するから火花による「チャンネリング」の作用は弱くなり、チャンネリングは殆ど発生しない。このため、このスパークプラグの寿命は十分に長い。
【0012】
なお、図23に示すように、セミ沿面接地電極(12,12)を2本有する場合における本発明のスパークプラグ(100)を直噴式内燃機関(150)に取り付ける際には、インテークバルブ(201)とエキゾーストバルブ(203)の中間方向にセミ沿面接地電極(12,12)を位置させると良い。
【0013】
図23に示す例では、シリンダヘッド(S)に取り付けられたスパークプラグ(100)の中心軸線(O)を含む仮想的な基準面(SP)と、同じく中心軸線(O)を含んで基準面(SP)と直交する仮想的な補助基準面(CSP)を考えたとき、基準面(SP)に関して片側にインテークバルブ(201,201)が、反対側にエキゾーストバルブ(203,203)が、それぞれ基準面(SP)からの距離が略等しくなる位置関係にて配置されている。なお、インテークバルブ(201,201)とエキゾーストバルブ(203,203)とは、それぞれ補助基準面(CSP)の両側に各1の都合2つずつが配置されている。そして、セミ沿面接地電極(12)は、主体金具(5)への取付基端位置が補助基準面(CSP)よりも基準面(SP)に近くなるように、ここでは略基準面(SP)上に位置するように配置されている。また、平行接地電極(11)は、主体金具(5)への取付基端位置が基準面(SP)よりも補助基準面(CSP)に近くなるように、ここでは略補助基準面(CSP)上に位置するように配置されている。
【0014】
上記のようなスパークプラグ(100)の取付方向は、一般的な平行接地電極のみを持つスパークプラグの取付方向とは異なる。すなわち、内燃機関(150)の燃焼室(CR)内部における吸気の流れ方向はインテークバルブ(201)からエキゾーストバルブ(203)に向かう方向に流れるのであるが、本発明者らが検討したところによると、キャビティがピストン(P)の中央部を含むインテークバルブ側に偏芯して存在することによる縦方向の流れ(タンブル)と、ピストン(P)が上昇することによって燃焼室(CR)壁面周囲からキャビティ方向に生じる横方向の流れ(スキッシュ)とを考慮する必要のある直噴式内燃機関に適用される本発明のスパークプラグ(100)では、セミ沿面接地電極(12)の着火性を確保できる方向に向けることが重要であることがわかった。そこで、上記のような位置関係にてスパークプラグ(100)を取り付ければ、燃焼室壁面に近い位置に存在するためにスキッシュの影響を受けやすいセミ沿面接地電極(12)による火花は吸気の流れに対して垂直に近くなる方向に飛火する形となる。
【0015】
特に、平行接地電極(11)に対して両側90゜の位置に2個のセミ沿面接地電極(12,12)を持つタイプのスパークプラグ(100)では、平行接地電極(11)の主体金具(5)への溶接部をインテークバルブ(201)側に向けることが特に効果的である。即ち、平行接地電極(11)が主体金具(5)に溶接されていない方向をエキゾーストバルブ(203)の方向に向けると良い。平行接地電極(11)による火花は、タンブルとスキッシュとの両方の影響を受けるため、スパークプラグの斜め先端側から吸気の流れを受けることになる。この吸気の流れは、相当に大きな流れであるため、逆方向に向けられた場合には、火花の発生中に火花が平行接地電極(11)の存在しない位置にまで流されて途切れ易くなる。このように位置させることによって、たとえ火花が流されても平行接地電極(11)が存在するために途中で途切れ難くなり着火性の低下が起こりにくくなる。
【0016】
なお、インテークバルブ(201,201)及びエキゾーストバルブ(203,203)を各2個有するタイプの内燃機関(即ち、4バルブ内燃機関)では、互いに向かい合うインテークバルブ(201,201)とエキゾーストバルブ(203,203)の対で上記の考えを当てはめれば良い。つまり、次のように考えれば良い。一般に4バルブ内燃機関では、内燃機関の前方向から見ると三角屋根状をしたペントルーフタイプのシリンダヘッド(S)の片側(すなわち、基準面(SP)に関していずれか一方の側)にインテークバルブ2個(201,201)が、他方の側にエキゾーストバルブ2個(203,203)が配置されている。また、補助基準面(CSP)に関して同じ側にあるインテークバルブ(201)及びエキゾーストバルブ(203)同士は、基準面(SP)を挟んで互いに向かい合う形となる。そして、中心軸線(O)に関して、これら互いに向かい合うインテークバルブ及びエキゾーストバルブの対(201,203)の中間の角度位置に各セミ沿面接地電極(12,12)が位置するように、スパークプラグ(100)を取り付ければよいのである。
【0017】
次に、上記のような基本構造をもつスパークプラグについて本発明者らが検討したところによると、火花の発生位置は電極間距離の単純な大小関係で一義的に決定されるものではなく、条件によっては距離が大きい場所でも火花を生じる場合があることがわかった(以下、本明細書では、これを「反転飛火現象」と称する)。こうした反転飛火現象が起こると、「くすぶり」が生じた場合、本来期待されるべきセミ沿面碍子ギャップ(γ)での飛火ではなく、主体金具の先端面と絶縁碍子との間で火花を生じてしまう不具合(以下、本明細書において、これを「金具/碍子飛火」と称する)などを生ずる。本発明に係るスパークプラグのいくつかの構成は、反転飛火現象に基づく金具/碍子飛火等の不具合の具体的な解決手段を与えるものである。
【0018】
例えば金具/碍子飛火を防止できることは、特に層状燃焼方式の直噴式内燃機関において効果が非常に大きい。即ち、直噴式内燃機関では主体金具の先端面と絶縁碍子との間で火花を生じることによって、着火性が低下しやすい。これは、火花の発生する位置が大きく影響しているものと考えられる。つまり、層状燃焼方式の内燃機関では、燃焼室内の濃混合気の層が非常に狭い範囲にあり、その範囲を外れると混合気は非常に薄くなる。そして、該濃混合気層に対して確実に火花を飛ばせるか否かが、混合気への正常な着火の成否の鍵を握ることになる。すなわち、濃混合気層がスパークプラグの正規の火花放電ギャップである中心電極と接地電極との間に到達した際に、該位置で確実に火花を生じることができれば、この火花によって混合気に着火することができる。
【0019】
しかし、既に説明した通り、濃混合気層は非常に狭い範囲でしか形成されないので、正規の火花放電ギャップで火花が生じず、例えば金具/碍子飛火のように、正規の火花放電ギャップ以外の位置(すなわち、燃焼室の壁面近傍)で火花が生じてしまうと、この位置での混合気は非常に薄いため、火花が生じているにもかかわらず混合気に着火しないという現象、即ち、失火が起こってしまうのである。このような燃焼室の壁面近傍のような位置で火花が生じてしまうと、その燃焼サイクルでは失火となるため、内燃機関の出力が低下するとともに、未燃焼の混合気が排気管から排出されるためエミッション規制を満足できなくなるおそれがある。さらに、未燃焼のガスは排気管から排出されきらずに燃焼室の壁面に付着し、同時にスパークプラグにも付着することになるため、絶縁碍子が燃料で濡れた状態になって次サイクルでの火花発生をさらに生じ難くする。
【0020】
従って、反転飛火現象ひいては金具/碍子飛火を防止して、主気中ギャップ(α)若しくはセミ沿面ギャップ(β)で確実に火花を発生させることができれば、「くすぶり」を生じた場合においてもセミ沿面接地電極で火花を生じることにより「くすぶり」を焼き切ることができるようになる。また、直噴式内燃機関であってもセミ沿面接地電極で火花を生じるのであれば濃混合気内であることから着火性の低下を抑制することができる。しかしながら、前述の特開平9−199260号公報を始めとする従来技術においては、こうした観点からのスパークプラグの改良に関する具体的な提案は何らなされていなかった。
【0021】
以上を前提として、以下、本発明のスパークプラグのさらに詳細な各構成について説明する。
まず、前記した基本構成に加え、
主気中ギャップ(α)がα≦1.1mmであり(1−▲1▼);
セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり(1−▲2▼);
主体金具の先端面の位置における絶縁碍子と主体金具との径差δがδ≧3.6mm(1−▲3▼);
であることを前提条件とする。
【0022】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、前記基本構造を有するスパークプラグにおいて、主気中ギャップ(α)、セミ沿面碍子ギャップ(γ)及び絶縁碍子と主体金具との径差(δ)が上記(1−▲1▼)〜(1−▲3▼)の関係を満たすことで、例えば「くすぶり」が生じた場合であっても前記した反転飛火現象ひいては金具/碍子飛火が効果的に抑制され、セミ沿面碍子ギャップ(γ)での火花を確実に生じえることを初めて実験的に実証し、上記前提条件に至ったものである。
【0023】
主気中ギャップ(α)の大きさは、要求される着火性のレベルや混合気の空燃比などに応じて、設計上種々の値に設定されうる。また、セミ沿面碍子ギャップ(γ)もα>γの関係を充足する必要があるので、主気中ギャップ(α)の大きさに応じて適宜の範囲に設定される。そして、上記第一の構成のスパークプラグにおいては、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とを(1−▲1▼)及び(1−▲2▼)の範囲内に設定されることを前提とする。そして、この前提のもとにおいて、主体金具先端面の位置における絶縁碍子と主体金具との径差δを(1−▲3▼)の範囲のものとすることが上記の要旨である。すなわち、径差(δ)をこのように設定することで、「くすぶり」を生じた場合においても、セミ沿面接地電極で火花を生じれば絶縁碍子への汚損付着物を焼き切ることができる。また、直噴式内燃機関であってもセミ沿面接地電極で火花を生じるのであれば、濃混合気内であることから着火性の低下を抑制することができる。なお、主気中ギャップ(α)の距離αは、無制限に小さくすることはできず、着火性確保及び汚損時など導電性の異物が付着したときの短絡防止等を考慮して、例えば0.6mm以上は確保することが有効である(これは、本発明の他の構成に係るスパークプラグにおいても同様である)。また、径差(δ)についても、無制限に大きくすることはできず、主体金具・中心電極の強度確保及び絶縁碍子の耐電圧性確保等を考慮して、例えば5.4mm以下にする有効であり、望ましくは、5.0mm以下にすると良い(これは、本発明の他の構成に係るスパークプラグにおいても同様である)。
【0024】
第一の構成に係るスパークプラグは、前記した基本構成、前提条件に加え、
主気中ギャップ(α)は0.8mm≦α≦1.0mmであり(2−▲1▼)、
セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり(2−▲2▼)、
主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とが0.2mm≦(α−γ)≦0.4mm(2−▲3▼)、
であることを特徴とする。
【0025】
該構成のスパークプラグにおいては、火花を発生電圧の低減を目的として、主気中ギャップ(α)が幾分狭い(2−▲1▼)のような範囲に設定され、セミ沿面碍子ギャップ(γ)は(2−▲2▼)の範囲(前記した前提条件と同様)に設定する。このとき、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)との関係(α−γ)を上記(2−▲3▼)の範囲に設定することによって、反転飛火現象ひいては金具/碍子飛火を効果的に抑制できるようになる。また、新たな効果としては、特に直噴式内燃機関においては、失火が発生しない噴射終了時期の領域を広くすることができる。
【0026】
一般に内燃機関では、主気中ギャップ(α)が広くなるほど着火性が向上する。しかし、主気中ギャップ(α)が広くなると放電電圧が上昇することになる。直噴式内燃機関では、非常に「くすぶり」が生じ易いため、通常の運転時でも「くすぶり」が発生する。このような「くすぶり」が発生した状態では、放電電圧が高いことは失火を生じる可能性がより高くなる。つまり、直噴式内燃機関では、クランク角におけるスパークプラグに火花を発生させる点火時期、及び燃料噴射の終了時期のそれぞれについて、失火を生じることのない範囲が広いほど着火性が良いとされている。
【0027】
直噴式内燃機関では、噴射直後の濃混合気領域が燃焼室内を徐々に移動しながら拡散していくため、燃料噴射の終了時期が早いほど、スパークプラグで火花を発生させる時において濃混合気領域が拡散して薄くなる傾向にある。従って、薄い混合気領域で着火することが必要になるが、混合気が薄いために同じギャップ間隙であっても放電電圧が上昇する。一方、上述したようにスパークプラグは通常「くすぶり」の状態にあるため、混合気が薄いことによる放電電圧の上昇とも相俟って、主体金具と絶縁碍子との間で火花、すなわち金具/碍子飛火が発生しやすくなり、この結果失火を生じやすくなる。また、逆に燃料噴射の終了時期が遅いほど濃混合気中で火花を発生させることになる。この状態では安定して燃焼を生じるのであるが、混合気が濃いために、たとえ安定して燃焼していても、より「くすぶり」を生じ易くなる。この結果、主体金具と絶縁碍子との間で火花を発生してしまい、失火を生じる可能性がある。
【0028】
すなわち、本発明者が検討したところによると、一般的な内燃機関では、主気中ギャップ(α)が広いほど着火性が良くなるのであるが、直噴式内燃機関では、ギャップが広いために放電電圧が上昇し、却って着火性が低下するという現象が生じることがわかった。この発明では、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)を(2−▲1▼)に示す適度な範囲に設定するとともに、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)との関係を(2−▲2▼)に示す範囲に適切に設定することで、主体金具の先端面と絶縁碍子との間で火花が発生することを抑制し、安定燃焼領域を広くすることができるのである。
【0029】
なお、安定燃焼領域を広くすることが望ましいのは以下の理由による。即ち、直噴式内燃機関では、点火時期と燃料噴射時期とを運転条件に対して一定になるように制御するのであるが、スロットル開度の急激な変化等を行なうと、制御とスパークプラグ回りの雰囲気変化とが整合しない場合が生じる。このような状態では、燃料噴射時期にずれが生じたり、点火時期にずれが生じたり等の過渡的な現象等によりスパークプラグ回りの混合気が薄くなったり、濃くなったりすることがある。燃料の噴射時期と点火時期とが離れる傾向になると、混合気が薄い状態になるため、放電電圧が上昇する。また、噴射時期と点火時期とが近づく傾向になると、更に濃い混合気中で火花が発生することになるためくすぶりがより進むことになる。このため、特性的に安定燃焼領域が広いスパークプラグを用いることによって、このような過渡的な現象に対しても失火を生じることなく良好な燃焼を確保できる。
【0030】
なお、中心電極の先端部が縮径されているとともに、絶縁碍子の先端部を軸線方向前方側から平面視した場合の中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅は、2.2mm以下であって、かつ、中心電極の先端面における外径の2倍以上にすることが望ましい。このような寸法関係に設定することで、放電電圧を低減させることができるとともに、着火性を確保しつつ燃料が中心電極と接地電極との間で保持されてしまう、いわゆるブリッジを生じにくくすることができる。
【0031】
第二の構成は、前記した基本構成に加え、
主気中ギャップ(α)がα≦0.9mmであり(3−▲1▼)、
セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり(3−▲2▼)、
主体金具の先端面の位置における絶縁碍子と主体金具との径差δが、2.8mm以上(3−▲3▼)、
であることを特徴とする。該第二の構成は、第一の構成と組み合わせることができる。
【0032】
上記第二の構成のスパークプラグにおいては、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とを(3−▲1▼)及び(3−▲2▼)の範囲内に設定されることを前提とする。主気中ギャップ(α)は、第一の構成と同様の理由により、第一の構成における(1−▲1▼)よりも狭い範囲を選択している。そして、この前提のもとにおいて、主体金具先端面の位置における絶縁碍子と主体金具との径差(δ)を(3−▲3▼)の範囲に設定することで、「くすぶり」を生じた場合においても、セミ沿面接地電極で火花を生じれば絶縁碍子への汚損付着物を焼き切ることができる。また、直噴式内燃機関であってもセミ沿面接地電極で火花を生じるのであれば濃混合気内であることから着火性の低下を抑制することができる。
【0033】
第三の構成は、前記した基本構成に加え、
該主気中ギャップ(α)がα≦1.1mmであり(4−▲1▼)、
該セミ沿面碍子ギャップ(γ)が、0.5mm≦γ≦0.7mmであり(4−▲2▼)、
かつ、前記セミ沿面接地電極の配設個数が3個以上であること(4−▲3▼)、
を特徴とする。該第三の構成は、前記第一又は第二の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0034】
上記第三の構成のスパークプラグにおいては、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)との設定範囲(4−▲1▼)及び(4−▲2▼)は、前記した第一の構成における(1−▲1▼)及び(1−▲2▼)と同じである。そして、第一の構成と異なる点は、前記径差(δ)とは別の手段、具体的には、セミ沿面接地電極の配設個数が3個以上となすことにより、前記した反転飛火現象ひいては金具/碍子飛火の発生頻度の減少を図る点にある。
【0035】
すなわち、セミ沿面接地電極の配設個数が増えるということは、セミ沿面接地電極で火花が発生する確率が高められることを意味する。従って、セミ沿面接地電極が少なければ金具/碍子飛火が生じてしまうようなスパークプラグ回りの雰囲気条件になったとしても、主体金具の先端面に近い位置に有るセミ沿面接地電極をより多くすることによって、「くすぶり」を生じた場合においてもセミ沿面接地電極で火花を確実に生じさせることができ、「くすぶり」による汚損付着物を焼き切ることができる。また、直噴式内燃機関であってもセミ沿面接地電極で火花を生じるのであれば濃混合気内であることから着火性の低下を抑制することができる。
【0036】
なお、スパークプラグを内燃機関に装着した場合に、吸気バルブから燃焼室内に吸入されてくる比較的低温度の吸入空気によって、絶縁碍子の先端部は冷却されるのであるが、セミ沿面接地電極の数が増加するに従って、絶縁碍子の先端部がセミ沿面接地電極の陰に隠れてしまい冷却され難くなることがある。これは、プレイグニッションを誘起する原因ともなるので、これを考慮してセミ沿面接地電極の配設個数は4個以下にすることが望ましい。なお、該第三の構成においても、前記第一の構成における前記径差δの数値範囲(1−▲3▼)を満足するように構成することが可能である。
【0037】
第五の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、
絶縁碍子の先端部に直管状部を有し、絶縁碍子の軸線方向において先端部の位置する側を前方側としたときに、直管状部の後端位置に対しセミ沿面接地電極の端面の後端側縁が一致しているか又は前方側にあり、先端面の高さ位置とセミ沿面接地電極の端面の後端側縁の高さ位置との軸線方向における段差E(単位:mm)と、絶縁碍子の先端面から側周面に至る曲面の曲率半径R(単位:mm)との差が、R−E≦0.1mmである(5−▲1▼)であることを特徴とする。該第五の構成は、前記第一乃至第三の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。ここで、段差Eは、絶縁碍子の中心軸線方向において、先端側に向かう方向を正方向として定義する。従って、絶縁碍子の先端面の高さ位置がセミ沿面接地電極端面の後端側縁の高さ位置よりも先端側(前方側)にあるとき、段差Eは正の数となり、逆の場合は負の数となる。
【0038】
該第五の構成によると、セミ沿面接地電極の後端側縁から中心電極に向かう火花が、絶縁碍子の先端部に遮られることによってセミ沿面接地電極の火花発生位置から中心電極に向けて直線上に火花が発生せず、絶縁碍子の周方向に曲げられる。この結果、火花の発生毎に火花の放電経路が替わるため、絶縁碍子の先端面を這っていく火花の範囲が広がり、チャンネリングを低減することができるとともに、広い範囲で「くすぶり」を火花清浄できる。
【0039】
また、絶縁碍子の周方向に曲げられる飛火は放電経路が長くなって火花発生電圧が高くなるので、そのような飛火を回避しようとして、セミ沿面接地電極の後端側縁よりも、絶縁碍子へのアタックが柔らかい前端縁側での飛火が増える傾向となる。このため、これもチャンネリング抑制に寄与する形となる。また、前端縁側での飛火は着火性の向上にも有効であり、失火等の不具合を効果的に抑制することができる。特に、前記した段差E、つまり、中心軸線方向におけるセミ沿面接地電極端面と絶縁碍子側周面とのラップ長さが小さい場合には、セミ沿面接地電極の後端側縁側での火花が、飛火距離が比較的小さくなるためどうしても起こりやすくなる。しかしながら、絶縁碍子の先端面から側周面に至る曲面の曲率半径Rとの間に、前記した(5−▲1▼)の関係が成立するように調整することで、前端縁側での飛火頻度を増やすことができ、チャンネリング抑制あるいは着火性の向上に寄与する。具体的には、段差Eの長さが0.5mm以下の、ラップ長さの小さいスパークプラグにおいて本構成は特に波及効果が大きい。Eの値の下限値は、セミ沿面放電が不能とならない範囲で適宜定められ、例えば図4のように負の数となる場合、その絶対値が主気中ギャップαよりも小さくなるように設定される。
【0040】
また、本構成では絶縁碍子に直管状部を形成する。絶縁碍子の先端部を直管状にすることで、内燃機関内での燃焼サイクルの際に先端部に受けた熱が絶縁碍子の主体金具との保持部に向かうことを抑制する作用があるため、絶縁碍子の先端温度を上昇しやすくすることができる。従って、通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、絶縁碍子の先端部温度を上昇しやすくすることができ、「くすぶり」によって堆積したカーボン等の汚損付着物を焼き切ることが容易になる。また、このような構成であれば、絶縁碍子の先端部の熱ボリュームが小さいことから、吸気管から吸入されてきた比較的低温度のガスによって絶縁碍子の冷却が行われやすい。このため、内燃機関内での燃焼サイクルの際に、プレイグニッションが発生するほどの温度上昇は生じにくくなる。
【0041】
なお、直管状部の後端位置よりもセミ沿面接地電極の端面の後端側縁が後方側にあると、ギャップの寸法設定が困難になるので、直管状部の後端位置に対しセミ沿面接地電極の端面の後端側縁はこれと一致しているか又は前方側となるよう位置関係を設定する。他方、直管状部の長さが必要以上に長くなりすぎると、セミ沿面接地電極にて発生する火花が直管状部に沿って大きく後方側に垂れ下がりやすくなり、着火性が損なわれてしまう不具合につながる場合がある。また、直管状部の長さは最低0.5mm以上確保されていないと、ギャップの寸法設定が困難になるとともに、上記の効果が十分に得られなくなる場合がある。直管状部の長さは、望ましくは0.5mm以上1.5mm以下の範囲で設定することが望ましい。
【0042】
第六の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、
このスパークプラグが適用されるスパークプラグのJIS規格(JIS:B8031)若しくは当該JIS規格中に対応表示されるISO規格(ISO1910、ISO2704、ISO2346、ISO/DIS8479、ISO2705、ISO2344、ISO2345、ISO2347、ISO3412)の中で定められたA寸法よりも先端側に突出する絶縁碍子の突出量Fが、3.0mm≦F≦5.0mm(6−▲1▼)であることを特徴とする。該第六の構成は、前記第一乃至第五の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0043】
上記第六の構成によると、絶縁碍子の突出量Fを(6−▲1▼)の範囲とすることで、混合気への着火性が向上するとともに、絶縁碍子の先端温度を上昇させることができる。また火花発生位置と比較して、主体金具の先端面と絶縁碍子との間の位置では、混合気の濃度が非常に薄くなるが、絶縁碍子の突出量Fを(6−▲1▼)の範囲とすることで、このように混合気が薄くなる主体金具の先端面と絶縁碍子との間において、火花が発生するのに必要な電圧が上昇し、この位置での火花発生を更に抑えることができる。この結果、失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲を広くすることができる。
【0044】
第七の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、
主気中ギャップ(α)が、α≦1.1mmであり(7−▲1▼)、
セミ沿面碍子ギャップ(γ)が、0.5mm≦γ≦0.7mmであり(7−▲2▼)、
絶縁碍子の軸線に平行な仮想平面に対し、該絶縁碍子を正射影にて表したとき、先端面を示す線を外方へ延長した第1の延長線と、絶縁碍子のセミ沿面ギャップ(β)部に臨む軸線を挟んだ両側の側周面を示す2本の線を先端面の方向へ延長した2本の第2の延長線との交点間の距離(以下、単に「絶縁碍子先端径」φD(単位:mm)という)とセミ沿面接地電極の幅との差ψ(単位:mm)が、ψ≦1.8mmである(7−▲3▼)、
ことを特徴とする。該第七の構成は、前記第一乃至第六の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0045】
絶縁碍子先端径φDとセミ沿面接地電極の幅との差ψを小さくすることによって、セミ沿面接地電極で発生する火花が絶縁碍子の後方側に大きく垂れ下がりやすくなることを防止することができる。この結果、失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲を広くすることができ、燃料リーン状態での着火性を向上させることができる。この差が大きくなると、セミ沿面接地電極と中心電極との間で火花が発生する際に、絶縁碍子の先端部外周を大きく回り込むことになる。これは、以下の理由によると考えられる。即ち、セミ沿面接地電極端面の後方角部から斜め後方に向けて火花が発生した場合に、その火花が絶縁碍子の先端部にぶつかった後に中心電極に達する。絶縁碍子の先端部にぶつかった際には、火花は斜め後方に向けて外周面に沿って這うことになり、その後、向きを変えて中心電極先端側周面方向に這うことになる。従って、絶縁碍子先端径とセミ沿面接地電極の幅との差が大きいと、絶縁碍子外周面に沿って斜め後方に火花が這う量が大きくなるため、火花が大きく垂れ下がるものと考えられる。
【0046】
第1の延長線及び2本の第2の延長線の交点間の距離と前記セミ沿面接地電極の幅との差ψが(7−▲3▼)の関係を満足するためには、第1の延長線と絶縁碍子のセミ沿面ギャップ(β)部に臨む側周面を示す線を先端面の方向へ延長した第2の延長線との交点から、第1の延長線と中心貫通孔の延長線との交点までの最短距離として定義された絶縁碍子先端肉厚ρが、
ρ≦0.9mm(7−▲4▼)となっていることが望ましい。
この関係を満足すると絶縁碍子先端肉厚を薄くすることができるため、電界強度が集中することによる放電電圧の低減が可能となるとともに、セミ沿面ギャップ(β)における放電電圧を抑えてチャンネリングの低減が可能となる。さらに、絶縁碍子先端の温度が上昇しやすくなるため、くすぶりの生じやすい直噴式内燃機関における自己清浄性を向上させる効果が大きい。また、絶縁碍子を全体に薄くすることができるため、特に径の小さいスパークプラグでは、主体金具と絶縁碍子との間隔を広く保つことができる。なお、絶縁碍子の肉厚が薄くなりすぎると、絶縁碍子の貫通を生じる恐れが大きくなってくるため、絶縁碍子先端肉厚ρをρ≧0.6mmとすることが望ましく、さらに望ましくはρ≧0.7とすると良い。
【0047】
第八の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、
中心電極が絶縁碍子の先端面から突出する量HをH≦1.25mm(8−▲1▼)となしたことを特徴とする。該第八の構成は、前記第一乃至第七の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0048】
特に直噴式内燃機関では、高速運転時にセミ沿面ギャップ(β)で火花が発生すると、失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲が狭くなってくる。しかし、上記第八の構成によれば、中心電極が絶縁碍子の先端面から突出する量Hを(8−▲1▼)のように選択することによって、正規火花放電ギャップである主気中ギャップ(α)の位置とセミ沿面接地電極による火花発生位置との差を更に小さくすることができる。従って、火花発生位置によって着火性の差が出やすい直噴式内燃機関であっても、「くすぶり」が生じた場合に発生するセミ沿面接地電極での火花位置で、十分な着火性を有する。なお、中心電極が絶縁碍子の先端面から突出する量Hは、H≦0.5mmとすることが、中心電極の周囲に形成される火花の伝播経路が分散しやすくなり、耐チャンネリング性と「くすぶり」に対する清浄性とを高めることができる。Hは負の数、すなわち中心電極が絶縁碍子の先端面から引っ込んでいてもよいが、この場合、H≧−0.3mmとなっていること(引っ込み深さが0.3mm以内であること)が、耐チャンネリング性及び「くすぶり」清浄性効果をさらに向上させる上で望ましい。
【0049】
第九の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、主気中ギャップ(α)、セミ沿面ギャップ(β)及びセミ沿面碍子ギャップ(γ)とが、α≦0.4×(β−γ)+γの関係(9−▲1▼)を満足することを特徴とする。該第九の構成は、前記第一乃至第八の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0050】
このように主気中ギャップ(α)、セミ沿面ギャップ(β)及びセミ沿面碍子ギャップ(γ)とが上記(9−▲1▼)の関係を満足することによって、前記反転飛火ひいては金具/碍子飛火の問題を効果的に抑制することができる。また、(9−▲1▼)の関係を満足するようにすることにより、実際の内燃機関に装着した場合のように、スパークプラグのギャップ周りの雰囲気ガスが流れを持っているような場合には、主体金具の先端面と絶縁碍子との間で火花がより発生しやすくなる、という点でも好都合であるといえる。
【0051】
上記第九の構成においては、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とは、(α−γ)≦0.4mmを満足することが望ましい。このような関係を満足することによって、チャンネリングに対して特に厳しい過給を行なう内燃機関や高圧縮比の内燃機関でのチャンネリングを低減することができる。ただし、α−γが0.2mmより小さくなると、セミ沿面接地電極側の放電頻度が下がり、「くすぶり」に対する清浄効果が損なわれる場合があるので、α−γは0.2mm以上であることが望ましい。
【0052】
一般に「くすぶり」を生じていない場合であっても、火花は主気中ギャップ(α)でのみ発生することはなく、セミ沿面碍子ギャップ(γ)でも発生することがある。そして、同一の条件で内燃機関を運転させていたとしても、スパークプラグのギャップ間における環境雰囲気にばらつきがあることから、ギャップ間で火花が発生するために必要な電圧にもばらつきが生じえる。従って、火花発生の必要電圧が、主気中ギャップ(α)においてセミ沿面碍子ギャップ(γ)よりも低い場合には、主気中ギャップ(α)で火花が発生する。
【0053】
一方、各ギャップで火花が発生するために必要な電圧にはばらつきがあるため、その電圧の最小値と最大値とを測定すると、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)との各々の電圧幅が一部オーバーラップすることがある。このオーバーラップする幅は各ギャップの間隙の大きさによってほぼ一義的に決定できる。そして、スパークプラグのギャップ間の環境雰囲気に応じて火花発生のための必要な放電電圧が上昇すると、オーバーラップする部分にまで電圧が上昇することになる。この場合、主気中ギャップ(α)で火花が発生するのか、セミ沿面碍子ギャップ(γ)で火花が発生するのかが確定しなくなる。従って、このように電圧が上昇したときにセミ沿面碍子ギャップ(γ)で火花が発生すると、その高い放電電圧のためにチャンネリングが生じやすくなる。
【0054】
そこで、主気中ギャップ(α)を狭くすることによってセミ沿面碍子ギャップ(γ)との差を小さくすると、主気中ギャップ(α)で火花が発生するに必要な電圧の最大値が低下するため、オーバーラップする部分が狭くなる。この結果、セミ沿面碍子ギャップ(γ)での不要な火花発生を抑えることができるとともに、セミ沿面碍子ギャップ(γ)で火花が発生するときの放電電圧も低くなることからチャンネリングも低減できる。また、主気中ギャップ(α)をα≦0.9mmに設定すると、火花発生のために必要な電圧を低く抑えることができることから、「くすぶり」が生じた場合に中心電極と主体金具間の絶縁抵抗値が低下しやすい、高熱価型プラグ(絶縁碍子の主体金具との保持部から絶縁碍子先端までの距離が短いプラグ)に対し特に有効な手法となる。
【0055】
第十の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、絶縁碍子の先端部を軸線方向前方側から平面視したときに、セミ沿面接地電極は少なくとも他端の端面において、絶縁碍子の中心貫通孔の先端開口径よりも大きな幅を有することを特徴とする。該第十の構成は、前記第一乃至第九の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0056】
上記の構成によると、セミ沿面接地電極は少なくとも先端面において、絶縁碍子の中心貫通孔の先端開口径(ひいては中心電極先端面ないし後述する貴金属チップの先端面の外径)よりも大きな幅を有するものとして構成されているので、絶縁碍子の先端面を這っていく火花の範囲がより広くなり、チャンネリングを低減することができるとともに、広い範囲で「くすぶり」を火花清浄できる。
【0057】
第十一の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、絶縁碍子には縮径された先端部をなす直管状部が形成され、また、該直管状部の軸線方向後方側に隣接して該直管状部よりも径大の膨らみ部が形成され、
直管状部の長さが1.5mm以下であり、
また、セミ沿面接地電極は、他端の端面の、絶縁碍子の軸線方向における後方側縁の中点と、該絶縁碍子の軸線とを含む仮想的な平面上において、セミ沿面碍子ギャップの大きさをγ(単位:mm)として、後方側縁の中点を中心とする(γ+0.1)mmの円を描いたときに、膨らみ部の全体が該円の外側に位置することを特徴とする。該第十一の構成は、前記第一乃至第十の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0058】
本構成でも長さを1.5mm以下(望ましくは0.5mm以上)の直管状部を設けている。その効果は、第五の構成で説明した通りである。そして、上記直管状部には、構造上、これよりも径大の膨らみ部が軸線方向後方側に隣接して形成される形となる。この膨らみ部の位置がセミ沿面接地電極の後方側縁に近くなりすぎると、該後方縁側からの火花が、膨らみ部における電界集中部(特にアール等が付与された段差縁部など)に向けて後方側に垂れ下がりやすくなり、ひいては着火性が損なわれやすくなる。
【0059】
そこで、上記第十一の構成では、セミ沿面接地電極の他端の端面(セミ沿面ギャップに対する放電面となる)の、絶縁碍子の軸線方向における後方側縁の中点と、該絶縁碍子の軸線とを含む仮想的な平面上において、セミ沿面碍子ギャップの大きさをγ(単位:mm)として、後方側縁の中点を中心とする(γ+0.1)mmの円を描いたときに、膨らみ部の全体が該円の外側に位置するようにした。このように、膨らみ部の位置を、セミ沿面接地電極の他端の端面の後方側縁よりも遠ざけることで、セミ沿面接地電極からの火花の垂れ下がりを効果的に抑制でき、着火性を良好に保つことができる。
【0060】
第十二の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、絶縁碍子の中心貫通孔が該絶縁碍子の先端部側にて縮径されていることを特徴とする。該第十二の構成は、前記第一乃至第十一の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。本発明のスパークプラグはセミ沿面接地電極を備えているために、このようにすれば、内燃機関内での燃焼サイクルの際に先端部に受けた熱が中心電極側に逃げる傾向が適度に抑制され、絶縁碍子の先端温度を上昇しやすくすることができる。従って、通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、絶縁碍子の先端部温度を上昇しやすくすることができ、「くすぶり」によって堆積したカーボンを焼き切ることが容易になる。また、これに伴って主体金具の先端面と絶縁碍子との間で火花が発生したり、更に保持部近傍で火花が発生したりすることを防止することができるため、直噴式内燃機関においても安定して燃焼する領域を広くとることができる。なお、この構成においては、後記する付加要件3を満たしているとなお望ましい。
【0061】
第十三の構成のスパークプラグにおいては、前記した基本構成に加え、絶縁碍子の軸線方向において先端部の位置する側を前方側とし、さらに、セミ沿面接地電極の、他端の端面の後方側縁の中点と軸線とを含む仮想的な平面に対し、軸線を含んで該平面と直交する平面を投影面として定め、該投影面への正射影にて表したときに、他端の端面は、投影面上にて軸線と後方側縁との交点をXとし、同じく前方側縁との交点をYとして、線分XYの中点を通って軸線と直交する基準線よりも前方側に位置する領域の面積S1が、後方側に位置する領域の面積S2よりも大きくなる形状を有してなることを特徴とする。該第十三の構成は、前記第一乃至第十二の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0062】
セミ沿面接地電極における飛火は、放電面となる他端の端面において、後端側よりも、絶縁碍子へのアタックが柔らかい前端側での飛火が増えたほうが、チャンネリング抑制及び着火性向上の観点において望ましい。そこで、上記のように、他端の端面の形状を、前端縁と後端縁との中間に位置する基準線を境界として、それよりも前方側に位置する領域の面積S1が、後方側に位置する領域の面積S2よりも大きくなるように設定することで、該他端の端面の先端側における飛火頻度を増やすことができ、チャンネリング抑制あるいは着火性の向上に寄与する。
【0063】
第十四の構成のスパークプラグにおいては、絶縁碍子の軸線方向において先端部の位置する側を前方側とし、さらに、セミ沿面接地電極の、他端の端面の後方側縁の中点と軸線とを含む仮想的な平面に対し、軸線を含んで該平面と直交する平面を投影面として定め、該投影面への正射影にて表したときに、他端の端面の外周縁には、投影面上にて軸線と後方側縁との交点をXとし、同じく前方側縁との交点をYとして、線分XYの中点を通って軸線と直交する基準線よりも後方側に位置する領域において少なくとも、角部が先端曲率半径又は面取り幅を0.2mm以上又はこの角部を形成する2辺部が90度より大きい角度を有することを特徴とする。該第十四の構成は、前記第一乃至第十三の構成の少なくともいずれかと組み合わせることができる。
【0064】
上記構成の主旨は、セミ沿面接地電極の放電面となる他端の端面において、後端側の飛火を抑制することにある。すなわち、先鋭な角部が存在すると火花発生の起点となりやすいが、これを前記した基準線よりも後方側に位置する領域から排除することで、他端の端面における後端側の飛火が抑制される。その結果、先端側における飛火頻度を増やすことができ、チャンネリング抑制あるいは着火性の向上に寄与する。また、後端縁の両端に上記のような先鋭な角部が形成されていると、ここを起点として火花が斜め外方下向きに大きく垂れ下がる形で飛ぶことがあり、着火性が著しく損なわれてしまう場合があるが、上記構成によればこうした位置からも先鋭な角部は当然排除されるから、該不具合も合わせて防止ないし抑制することができる。なお、本構成は、前記した第十三の構成と組み合わせると、チャンネリング抑制あるいは着火性の向上において一層効果的である。
【0065】
以下、以上説明した第一〜第十四の構成のスパークプラグ(組合せを含む)に、共通に付加可能な要件について説明する。
(付加要件1)
まず、絶縁碍子には、その先端部に直管状部を設けることができ、この直管状部が主体金具の先端面より後端側にまで延設されている構成とすることができる。このようにすれば、主体金具の先端面と絶縁碍子との径差を更に大きく保ちやすく、この位置での火花の発生を抑制しやすい。なお、ここでも、直管状部の長さは最大で1.5mmまでとすることが望ましい。この場合における、直管状部を設けることの作用・効果は第十一の構成にて説明したものと同様である。
【0066】
(付加要件2)
また、中心電極の母材の先端部に融点1600℃以上の貴金属又は貴金属合金で形成された貴金属チップを接合することができる。この場合、この接合部が絶縁碍子の中心貫通孔内で接合されている構造とすることができる。このように接合部を絶縁碍子の中心貫通孔内で接合することによって、主気中ギャップ(α)で火花が発生するときのみならず、セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生する場合においてもセミ沿面接地電極と貴金属チップとの間で火花が発生する。従って、いずれのギャップで火花が発生したとしても耐久性が向上する。貴金属合金としては、Pt、Irの他に、Pt−Ir、Ir−Rh、Ir−Pt、Ir−Y2O3等のPt合金やIr合金等の1600℃以上の融点を持つものが好ましい。
【0067】
(付加要件3)
また、絶縁碍子が主体金具と係止されて保持される保持部よりも先端側における、中心貫通孔の最小径(D3)は、D3≦2.1mmとすることが望ましい。このように絶縁碍子の内径を狭くすることによって、中心電極外径も小さくなる。このため、内燃機関内での燃焼サイクルの際に先端部に受けた熱を中心電極側に若干逃げ難くするため、絶縁碍子の先端温度を上昇しやすくすることができる。従って、通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、絶縁碍子の先端部温度を上昇しやすくすることができ、「くすぶり」によって堆積したカーボンを焼き切ることが容易になる。また、これに伴って主体金具の先端面と絶縁碍子との間で火花が発生したり、更に保持部近傍で火花が発生したりすることを防止することができるため、直噴式内燃機関においても安定して燃焼する領域を広くとることができる。ただし、チャンネリング防止の観点から、D3≧0.8mmとすることが望ましい。
【0068】
(付加要件4)
また、前述の貴金属チップを使用する場合は、この貴金属チップと中心電極母材との接合部側の外径が主気中ギャップ(α)を形成する先端側の外径よりも大に構成することができる。このように構成することにより、セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生した場合であっても、貴金属チップが中心電極母材から脱落することを防止することができる。すなわち、セミ沿面ギャップ(β)で火花発生した場合には、貴金属チップの側面とセミ沿面接地電極との間で火花が発生することになる。この位置で頻繁に火花が発生することになると、絶縁碍子の先端面近傍での貴金属チップが消耗し、貴金属チップ先端部よりも細くなってしまう。このようにセミ沿面ギャップ(β)での火花発生が繰り返されると、ついには貴金属チップの先端部が脱落してしまうことがある。しかし、上記のように接合部側を径大にすることによって、このような現象を抑えることができる。
【0069】
更に、貴金属チップの先端部は接合部側と比べて径が小さいため、主気中ギャップ(α)で火花が発生する際の放電電圧を低減させることができ、ひいては着火性を向上させることができる。また、特に直噴式内燃機関では安定燃焼領域を広くすることができる。なお、貴金属チップの径大にした部分は、絶縁碍子の先端面よりも内部にあってもよい。この場合には、セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生した場合に絶縁碍子の先端面を這う火花は、更に絶縁碍子の中心貫通孔の内壁を這って貴金属チップの径大にした部分に至る。従って、径大部が絶縁碍子の中心貫通孔内部にあったとしても、火花は径大部とセミ沿面接地電極との間で発生するため上述したような効果を生じることになる。
【0070】
(付加要件5)
また、貴金属チップ外径と絶縁碍子の中心貫通孔内径との径差の最小値は、0.2mm以下とすることができる。これにより、中心電極母材の火花放電による消耗を抑えることがより容易になる。上述したように、セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生した場合には、絶縁碍子の中心貫通孔内壁を火花が這うことになる。この時、貴金属チップ外径と絶縁碍子の中心貫通孔内径との径差が大きくなると、火花が貴金属チップに飛ばずに更に奥深く入り込んで中心電極母材にまで至る場合がある。中心電極母材は貴金属チップと比較して耐火花消耗性は低いため、急速に消耗しやすく、チップの脱落に至る場合がある。従って、この径差を小さくすることによって、中心電極母材に火花が至る現象を抑えることができ、耐久性が向上する。なお、ここでいう「径差の最小値」とは、次のような径差の代表値としての意義を持つものである。すなわち、貴金属チップ外径と中心貫通孔内径とが軸線方向に一様な場合には、上記径差も軸線方向において略一様となる。しかしながら、貴金属チップ外径と中心貫通孔内径とのいずれかが軸線方向において一様でない場合(例えば中心貫通孔に僅かなテーパが形成されている場合)は、該軸線方向における最小値を径差の代表値として採用する。
【0071】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は第1の実施の形態に係るスパークプラグ100の部分断面図である。周知のように、アルミナ等からなる絶縁碍子1は、その後端部に沿面距離を稼ぐためのコルゲーション1Aを、先端部に内燃機関の燃焼室に曝される脚長部1Bを備え、その軸中心には中心貫通孔1Cを備えている。中心貫通孔1Cには、貴金属チップを有する場合にはインコネル(商標名)、貴金属チップを持たない場合には、耐火花消耗性の確保のため、95質量%ニッケル(残部例えばクロム、マンガン、シリコン、アルミ、鉄)、ニッケル含有率が85質量%以上のニッケル系金属等からなる中心電極2が保持され、中心電極2は絶縁碍子1の先端面から突出するようにされている。
【0072】
中心電極2は中心貫通孔1Cの内部に設けられたセラミック抵抗3を経由して上方の端子金具4に電気的に接続されている。端子金具4には図示しない高圧ケーブルが接続され高電圧が印加される。上記絶縁碍子1は主体金具5に囲まれ保持部51及びかしめ部5Cによって支持されている。主体金具5は低炭素鋼材で形成され、スパークプラグレンチと嵌合する6角形部5Aと、ねじの呼びが例えばM14Sのねじ部5Bとを備えている。主体金具5はそのかしめ部5Cにより絶縁碍子1にかしめられ、主体金具5と絶縁碍子1が一体にされる。かしめによる密閉を完全なものとするため、主体金具5と絶縁碍子1との間に板状のパッキング部材6とワイヤ状のシール部材7,8が介在され、シール部材7,8の間にはタルク(滑石)9の粉末が充填されている。また、ねじ部5Bの後端、即ち、主体金具5の座面52にはガスケット10が嵌挿されている。
【0073】
主体金具5の先端面5Dには、少なくとも表層部をなす母材がニッケル合金からなる平行接地電極11が溶接により接合されている。平行接地電極11は中心電極2の先端面と軸方向に対向し、中心電極2と平行接地電極11とで主気中ギャップ(α)を形成している。また、6角径部5Aの対辺寸法は16mmであり、主体金具5の座面52から先端面5Dまでの長さは例えば19mmに設定されている。この寸法設定は、JIS:B 8031に規定されている14mm小形六角形の、A寸法が19mmのスパークプラグの基準寸法である。なお、図24に示すように、平行接地電極11は、その先端部の温度を低減させ、火花消耗を抑えるために、内部に母材11bよりも熱伝導性の良好な材料(例えばCuや純Ni又はその複合材料等)からなる良熱伝導材11aを有していても良い。ここまでは従来のスパークプラグと同じである。
【0074】
この実施の形態に係るスパークプラグ100では、平行接地電極11とは別に、複数のセミ沿面接地電極12を備えている。セミ沿面接地電極12は少なくとも表層部をなす母材12b(図2(a)参照)がニッケル合金からなり、その一端が主体金具5の先端面5Dに溶接により接合され、他端の端面12Cが中心電極2の側周面2A若しくは脚長部1Bの側周面1Eに対向するように配設されている。図26に示すように、2個のセミ沿面接地電極12はそれぞれ平行接地電極11から90゜ずれた位置に配設され、セミ沿面接地電極12同士は略180゜ずれた位置に配設されている。また、図26は、絶縁碍子1の先端部を軸線30の方向前方側から平面視した状態を表しているが、セミ沿面接地電極12は他端の端面12Cにおいて、絶縁碍子1の中心貫通孔1Cの先端開口径よりも大きな幅を有するものとなっている。図2に示すように、各セミ沿面接地電極12の端面12Cと中心電極2の側周面2Aとの間にはセミ沿面ギャップ(β)がそれぞれ形成され、各セミ沿面接地電極12の端面12Cと脚長部1Bの側周面1Eとの間でセミ沿面碍子ギャップ(γ)がそれぞれ形成されている。
【0075】
なお、図26においては、セミ沿面接地電極12の端面12Cは平面状に形成されているが、絶縁碍子2の側周面に沿って略一様な間隔のセミ沿面ギャップが形成されるよう、図27に示すように、端面12Cを、例えば打抜加工等により絶縁碍子2の軸線(30:図2)を中心とする円筒面状に形成することもできる。
【0076】
なお、セミ沿面接地電極12も平行接地電極11と同様に、内部にCuや純Ni又はその複合材料等からなる良熱伝導材12aを有していても良い。この場合、セミ沿面接地電極12は、表層部を形成する母材12bと、内層部を形成するとともに母材12bよりも熱伝導性の良好な材料からなる良熱伝導材12aとを有するものとなる。
【0077】
図2(a)は、第1の実施の形態のうち、第1態様のスパークプラグの中心電極2、平行接地電極11、セミ沿面接地電極12の近傍を拡大して示す部分断面図であり、図2(b)はセミ沿面接地電極12を拡大して示す説明図である。該図では、中心電極2の先端面と平行接地電極11との間の主気中ギャップ(α)の距離をα、絶縁碍子1の先端面1Dの位置における中心電極2の側周面2Aとセミ沿面接地電極12の端面12Cとの間のセミ沿面ギャップ(β)の距離をβとする。また、セミ沿面接地電極12と絶縁碍子1とを中心軸線30に沿って切断した場合の、絶縁碍子1の先端面1Dを示す線を外方へ延長した第1の延長線31と、絶縁碍子1のセミ沿面ギャップ(β)部近傍の側周面1Eを示す線を先端面1Dの方向へ延長した第2の延長線32と、セミ沿面接地電極12の端面12Cを示す線を先端側へ延長した第3の延長線33とを描いている。そして、第1の延長線31および第2の延長線32の交点P1から、第1の延長線31および第3の延長線33の交点P2までの距離をセミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γとすると、このγは、絶縁碍子1とセミ沿面接地電極12との最短距離を表している。そして、これらα、β、γとの間にはα<β及びγ<αの関係がある。
【0078】
このように設定することにより、絶縁碍子1の表面の絶縁が高い正常時には、平行接地電極11との間の主気中ギャップ(α)で放電させることができ、絶縁碍子1の表面の絶縁が低下した「くすぶり」時には、セミ沿面接地電極12との間のセミ沿面ギャップ(β)で放電させることができる。また、絶縁碍子1の先端面1Dとセミ沿面接地電極12の端面12Cの後端側縁12Bとの段差をE、絶縁碍子1の主体金具5の先端面5Dからの突き出し量をF、中心電極2の絶縁碍子1の先端面1Dからの突き出し量をHとする。なお、本実施の形態における絶縁碍子1の主体金具5の先端面5Dからの突き出し量Fは、このスパークプラグが適用されるJIS規格(JIS:B8031)若しくは当該JIS規格中に対応表示されるISO規格の中で定められたA寸法よりも先端側に突出する絶縁碍子の突出量に相当する。
【0079】
また、絶縁碍子1の先端部には、直管状部102(中心軸線30を中心とする直円筒状の外周面を有する部分)が形成されており、主体金具5の先端面5Dよりも後端側にまで延設されている。このように構成することによって、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との径差を更に大きく保ちやすく、この位置での火花の発生を抑制しやすい。また、絶縁碍子1の先端部が直管状になっていることから、内燃機関内での燃焼サイクルの際に先端部に受けた熱を絶縁碍子1の主体金具5との保持部51方向に若干逃げ難くする作用があるため、絶縁碍子1の先端温度を上昇しやすくすることができる。従って、通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、絶縁碍子1の先端部温度を上昇しやすくすることができ、「くすぶり」によって堆積したカーボンを焼き切ることが容易になる。また、このような構成であれば、絶縁碍子1の先端部の熱ボリュームが小さいことから、吸気管から吸入されてきた比較的低温度のガスによって絶縁碍子の冷却が行われやすい。このため、内燃機関内での燃焼サイクルの際に、プレイグニッションが発生するほどの温度上昇は生じ難い。なお、セミ沿面接地電極12の端面12Cの後方側縁は、直管状部102の後方側縁よりも前方側にある。
【0080】
また、本実施形態では特に説明のない限り、絶縁碍子1の突き出し量Fは3.0mmとし、中心電極2の元径D2を2.0mmとした。なお、セミ沿面接地電極12には、幅が2.2mmで厚さが1.0mmのものを用いており、平行接地電極11には、幅が2.5mmで厚さが1.4mmのものを用いている。
【0081】
絶縁碍子1の先端面1Dの高さ位置と、セミ沿面接地電極12の、端面12Cの後端側縁12Bの高さ位置との段差Eには、セミ沿面接地電極12の高さ位置により以下のような3種類がある。即ち、第1番目は、図2(a)に示すようにセミ沿面接地電極12の後端側縁12Bおよび先端側縁12A(図2(b))が絶縁碍子1の先端面1Dよりも後端側にある場合である。第2番目は、図3に示すような、第1の実施形態のうち、第2態様のスパークプラグのセミ沿面接地電極12の後端側縁12Bのみが絶縁碍子1の先端面1Dよりも後端側にある場合、そして、第3番目は、図4に示すような、第1の実施の形態のうち、第3態様のスパークプラグのセミ沿面接地電極12の後端側縁12Bが絶縁碍子1の先端面1Dよりも先端側にある場合である。
【0082】
いずれにしても、セミ沿面接地電極12の端面12Cの後端側縁12Bおよび先端側縁12Aの一方が、絶縁碍子1の先端面1D近傍の高さ位置にあることが好ましい。すなわち、段差Eは小さい方が好ましい。これは、セミ沿面放電は鋭角で電界の集中するセミ沿面接地電極12の後端側縁12Bおよび先端側縁12Aから火花が飛ぶと考えられるから、後端側縁12Bおよび先端側縁12Aから飛ぶ火花を絶縁碍子1の先端面1Dに近づけ、絶縁碍子1の表面に堆積したカーボンを焼き切る自己清浄作用を強めるためである。
【0083】
上記のスパークプラグ100は、「課題を解決するための手段及び作用・効果」の欄にて説明した種々の構成のいずれとなすかに応じて、各部の寸法あるいは寸法関係が適宜に定められる。以下、その具体的な構成を、その作用・効果を裏付けるための実験結果とともに詳細に説明する。
【0084】
(実験1:第一の構成;α≦1.1mm、0.5mm≦γ≦0.7mm、δ≧3.6mmとする根拠)
主気中ギャップ(α)をα=1.1mmとし、また、セミ沿面接地電極12を図26のように2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定するとともに、主体金具5の保持部51よりも先端側の部分の内径を種々変更したスパークプラグを用意した。表1は、これらスパークプラグを用いて、主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)を種々に変化させたときの、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花放電する現象(金具/碍子飛火)の割合を調べた結果を示す。なお、実験は、1800cc直列4気筒の直噴式内燃機関を用いた自動車を使用してシフトレバーをDレンジに入れ、アイドリング600rpmにて行った。また、スパークプラグの点火時期は上死点前(以下「BTDC」という)15゜、燃料噴射終了時期はBTDC30゜に固定した。さらに結果は、金具/碍子飛火の発生が1分間あたり3回以上となったものを×、1回から2回となったものを△、金具/碍子飛火が全く起こらなかったものを○にて評価判定した。
【0085】
【表1】
【0086】
主体金具5の先端面5Dの位置において、絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)が3.4mm以下の場合には、この位置で火花が少なくとも1回以上発生した。従って、径差を3.6mm以上にすることによって、「くすぶり」が生じた場合であっても主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花を生じることなく、セミ沿面碍子ギャップ(γ)で火花を生じさせることができることがわかる。金具/碍子飛火を防止することによる効果、特に層状燃焼方式の直噴式内燃機関における効果は既に説明した通りである。
【0087】
(実験2:第二の構成;α≦0.9mm、0.5mm≦γ≦0.7mm、δ≧2.8mmとする根拠)
主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)を2.8mmとし、また、セミ沿面接地電極を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定するとともに、主気中ギャップ(α)を種々設定したスパークプラグを用意した。これらスパークプラグを用いた以外は、実験1と全く同じ条件にて試験を行ない、同様に評価判定した。表2にその結果を示す。
【0088】
【表2】
【0089】
これによると、主気中ギャップ(α)が、α≧1.0mmの場合には、主体金具5の先端面5Dの位置において金具/碍子飛火が少なくとも1回以上発生していることがわかる。従って、主気中ギャップ(α)をα≦0.9mmにすることによって、「くすぶり」が生じた場合であっても金具/碍子飛火を生じることなく、セミ沿面碍子ギャップ(γ)で火花を生じさせることができることがわかる。
【0090】
(実験3:第三の構成;セミ沿面接地電極を3個以上とする根拠)
主気中ギャップ(α)をα=1.1mm、主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)を2.8mmとし、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をβ=1.6mmに設定するとともに、該ギャップを有するセミ沿面接地電極12の配設個数を種々変化させたスパークプラグを用意した。これらスパークプラグを用いた以外は、実験1と全く同じ条件にて試験を行ない、同様に評価判定した。表3にその結果を示す。
【0091】
【表3】
【0092】
該結果によると、実験1では良好な結果が得られなかった、主気中ギャップ(α)がα=1.1mmであって径差δが2.8mmの条件においても、セミ沿面接地電極12の数を3個以上に増やすと、主体金具5の先端面5Dの位置における金具/碍子飛火が効果的に抑制されていることがわかる。従って、セミ沿面接地電極12の数を3個以上にすることによって、「くすぶり」が生じた場合であっても金具/碍子飛火を生じることなく、セミ沿面碍子ギャップ(γ)で火花を生じさせることができることがわかる。図24には、図2のスパークプラグ100に対し、第三のセミ沿面接地電極12(一点鎖線にて表している)を追加した態様を示している。また、図25は、その平面図であり、3つのセミ沿面接地電極12と平行接地電極11とが、絶縁碍子30の中心軸線の周りに略90゜の間隔にて配置されている。
【0093】
(実験4:第五の構成;絶縁碍子の先端面の高さ位置とセミ沿面接地電極の端面後端側縁の高さ位置との段差Eと、絶縁碍子の先端面から側周面に至る曲面の曲率半径Rとの差をR−E≦0.1mmとする根拠)
図2のスパークプラグにおいて、平行接地電極11をなくし、セミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定するとともに、絶縁碍子1の先端面1Dの高さ位置とセミ沿面接地電極12の端面12Cの後端側縁12Bの高さ位置との段差Eと、絶縁碍子1の先端面1Dから側周面1Eに至る曲面の曲率半径Rとを種々設定したものを用意した。これらスパークプラグの耐チャンネリング性を評価するために、以下の実験を行なった。すなわち、スパークプラグをチャンバに取り付け、チャンバ内を0.6MPaに加圧するとともに、フルトランジスタ電源により1秒間に60回の火花を発生させる動作を100Hr継続した。そして、動作終了後のスパークプラグのチャンネリング深さを測定するとともに、チャンネリング溝深さが、0.2mm未満のものを軽度(○)、0.2〜0.4mmのものを中度(△)、0.4mmを超えるものを重度(×)として評価判定した。該結果を表4に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
この結果から、主気中ギャップ(α)とセミ沿面ギャップ(β)とが、α<βであり、かつ、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とが、α>γのとき、R−E≦0.1mmに設定することで、チャンネリングを効果的に低減できることがわかる。これは、セミ沿面接地電極12の後端側縁12Bから中心電極2に向かう火花が、絶縁碍子1の先端部に遮られることによってセミ沿面接地電極12の火花発生位置から中心電極2に向けて直線上に火花が発生せず、絶縁碍子1の周方向に曲げられるからであると考えられる。この結果、火花の発生毎に火花の放電経路が替わるため、絶縁碍子1の先端面1Dを這っていく火花の範囲が広がり、チャンネリングを低減することができるとともに、広い範囲で「くすぶり」を火花清浄できる。なお、本発明のスパークプラグは本来、平行接地電極11を備えているものであるが、これをそのまま用いると、汚損が進行しない限りセミ沿面接地電極12側での飛火が生じず、仮に発生しても汚損堆積物が焼き切られれば飛火が途切れてしまうので、チャンネリング評価には非常な長時間を有する。従って、セミ沿面接地電極12側のチャンネリング挙動を加速して調べるために、敢えて平行接地電極11を取り除いた状態での評価を行なった。
【0096】
また、Eの値を0.1〜0.7mmの範囲にて選択し、さらに各Eの値について、R−Eを0.2mmにした場合のチャンネリング溝深さδ0(mm)と、R−Eを0mmとした場合のチャンネリング溝深さδ1(mm)とを測定し、
λ=δ0−δ1(mm)
にて表されるチャンネリング改善幅λを算出して、R−Eを0.2mmから0mmへと縮小することによりどの程度チャンネリングが改善されるかを見積もった。結果を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
これを見てもわかるとおり、段差Eの長さが0.5mm以下のとき、特にチャンネリング効果が大きいことがわかる。
【0099】
(実験5:第六の構成;絶縁碍子1の突出量(F)を、3.0mm≦F≦5.0mmとする根拠)
主気中ギャップ(α)をα=1.1mm、主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)を2.8mmとし、セミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定するとともに、このスパークプラグが適用されるスパークプラグのJIS規格(JIS B 8031)若しくは当該JIS規格中に対応表示されるISO規格の中で定められたA寸法よりも先端側に突出する絶縁碍子1の突出量(F)を種々設定したスパークプラグを用意した。そして、これらスパークプラグを実験1と同様に、1800cc直列4気筒の直噴式内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバーをDレンジに入れ、アイドリング600rpmにて運転を行った。また、スパークプラグの点火時期はBTDC15゜に固定した。そして、各絶縁碍子1の突出量(F)の場合における、1分間あたりの失火発生頻度が略ゼロとなる噴射終了時期の幅(燃焼安定領域)を測定した。直噴式内燃機関ではこの幅が着火性の良否を定める尺度になる。
【0100】
図5は、その結果を示すものであるが、絶縁碍子1の突出量(F)を、3.0mm≦F≦5.0mmとすることによって、失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲(すなわち、安定燃焼領域の幅)を広くすることができることがわかる。なお、図6に示すような、第1の実施の形態のうち、第4態様のスパークプラグの主体金具5のねじ部5Bより先端部分5Eを延長させたエクステンドシェルタイプのスパークプラグの場合においても、同様の結果を得ている。ただし、この場合においては、絶縁碍子1の突出量(F)は、主体金具5の先端面5Dからの寸法ではなく、先端部分5Eが延長された長さ、即ち、JIS規格中に定められたA寸法より先端側の長さ、を更に加えた長さになる。
【0101】
(実験6:第八の構成;中心電極2の絶縁碍子1からの突出量(H)を、(H)≦1.25mmとする根拠)
主気中ギャップ(α)をα=1.1mmとし、セミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mmに設定し、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定し、中心電極径をφ2.5mmに設定するとともに、絶縁碍子1の先端面1Dから突出する中心電極2の突出量(H)を種々設定したスパークプラグを用意した。そして、これらスパークプラグを用いて実験5と同様の自動車を用い、安定燃焼領域を測定した結果を示す。ただし、走行条件はアイドリングではなく100km/hの定地走行条件(高速運転を想定)とした。また、スパークプラグの点火時期はBTDC25゜に固定した。他の条件は実験5と同様であり、各中心電極2の突出量(H)の場合において、1分間あたりの失火発生頻度が略ゼロとなる噴射終了時期の幅を測定した。結果を図7に示している。
【0102】
この結果から、主気中ギャップ(α)とセミ沿面ギャップ(β)とが、α<βであり、かつ、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とが、α>γであり、中心電極が絶縁碍子の先端面から突出する量(H)を、H≦1.25mmとすることによって、高速運転時にセミ沿面ギャップ(β)で火花が発生しても、失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲を広くすることができる。従って、火花発生位置によって着火性の差が出やすい直噴式内燃機関であっても、「くすぶり」が生じた場合に発生するセミ沿面接地電極12での火花位置で、十分な着火性を有する。なお、Hの値は、ここでは図28(a)に示すように正の値の場合を示したが、同図(b)に示すようにHがほとんどゼロとなる(すなわち、中心電極2の先端面あるいは後述する貴金属チップの先端面が、絶縁碍子1の先端面と略面一となる)形であってもよいし、さらには(c)に示すように、Hが負の数となる(つまり、先端面が絶縁碍子1の先端面よりも引っ込んでいる)形となっていてもよい。この場合、耐チャンネリング性及び「くすぶり」清浄性効果をさらに向上させる観点において、−0.3mm≦H≦0.5となっていればさらによい。
【0103】
(実験7:第九の構成;α≦0.4×(β−γ)+γとする根拠)
セミ沿面ギャップ(β)を1.6mmに設定し、種々の大きさの主気中ギャップ(α)を有する平行接地電極11と、同一寸法の種々のセミ沿面碍子ギャップ(γ)を有する2つのセミ沿面接地電極12,12を設けた各種スパークプラグを作製した。そして、該スパークプラグをチャンバに取り付け、チャンバ内を1.0MPaに加圧した状態で火花の発生する方向を観察する机上試験を行ない、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花が発生するか否かを調べた。なお、火花はフルトランジスタ電源により1秒間に60回の割合で発生させ、測定時間は1分間とした。
【0104】
以上の結果を図8に示す。図中で、直線101は、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花が発生するか否かの境界を示す。この直線より上の領域AAでは、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花が発生し、下の領域BBでは、発生しなかったことを示している。直線101は、次の式(1)で表され、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花が発生するか否かを示す境界線となる。
α=0.4×(β−γ)+γ ‥‥(1)
従って、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花が発生しないためには、下記式(2)の条件が必要であることが分かる。
α≦0.4×(β−γ)+γ ‥‥(2)
【0105】
この結果から、主気中ギャップ(α)とセミ沿面ギャップ(β)とが、α<βであり、かつ、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とが、α>γであり、主気中ギャップ(α)、セミ沿面ギャップ(β)及びセミ沿面碍子ギャップ(γ)とが、α≦0.4×(β−γ)+γとすることによって、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間での火花の発生を抑制することができる。また、実際の内燃機関に装着した場合のように、スパークプラグのギャップ周りの雰囲気ガスが流れを持っているような場合には、主体金具の先端面と絶縁碍子との間で火花がより発生しやすくなるため、α≦0.3×(β−γ)+γであることがより好ましい。
【0106】
(実験8:(α−γ)≦0.4mmに設定することの根拠)
種々の大きさの主気中ギャップ(α)を有する平行接地電極11と、同一寸法の種々のセミ沿面碍子ギャップ(γ)を有する2つのセミ沿面接地電極12,12を設けた各種スパークプラグを作製した。これらスパークプラグの耐チャンネリング性を評価するために、以下の実験を行なった。すなわち、スパークプラグを、2500cc直列6気筒ターボチャージャ式の内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバーをDレンジに入れ、3500rpmで、インテークマニホールド内における圧力が、+70kPaの条件にて100Hr運転継続した。そして、動作終了後のスパークプラグのチャンネリング深さを測定するとともに、チャンネリング溝深さが、0.2mm未満のものを軽度(○)、0.2〜0.4mmのものを中度(△)、0.4mmを超えるものを重度(×)として評価判定した。該結果を表6に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
この結果から、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)とは、(α−γ)≦0.4mmに設定することで、チャンネリングを低減することができることが分かる。このような関係を満足することによって、チャンネリングに対して特に厳しい、過給を行なう内燃機関や高圧縮比の内燃機関でのチャンネリングを低減することができることがわかる。
【0109】
(実験9:第一の構成;0.2mm≦(α−γ)≦0.4mmとする根拠)
中心電極2の径をφ2.5mm、主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)を2.8mmとし、セミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定し、主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)との関係を種々設定したスパークプラグを用意した。そして、これらスパークプラグを1800cc直列4気筒の直噴式内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバーをDレンジに入れ、アイドリング600rpmにて運転を行った。また、スパークプラグの点火時期はBTDC15゜に固定した。そして、α−γの各値について、1分間あたりの失火発生頻度が略ゼロとなる噴射終了時期の幅(燃焼安定領域)を測定した。結果を図9に示す。
【0110】
この結果から、主気中ギャップ(α)が0.8mm≦α≦1.0mmであり、セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり、(α−γ)が0.2mm≦(α−γ)≦0.4mmを満たす場合に、噴射終了時期の領域を広くできることがわかる。
【0111】
(実験10;平行接地電極の幅を2.2mm以下、中心電極先端面における外径の2倍以上とする根拠)
絶縁碍子1の内部における中心電極2の太径部での径をφ2.2mm、主気中ギャップ(α)を形成する中心電極2の縮径部先端面における外径をφ0.6mm、主気中ギャップ(α)を1.1mm、主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)を2.8mmとし、セミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定した。そして、絶縁碍子1の軸線方向前方側から平面視した場合の中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅Wを種々設定したスパークプラグを用意した。なお、平行接地電極11の先端部を、第1の実施の形態のうち、図10に示す第5態様のスパークプラグ205の様にテーパ状にカットしてあり、中心点Oの位置における平行接地電極11の幅Wは、そのテーパ状のカット11kの挟み角θを一定にした状態で、平行接地電極全体11の幅を変更することによって設定した。そして、これらスパークプラグを用いて以下の試験を行った。まず、2000cc直列6気筒の内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバーをNレンジに入れ、アイドリング600rpmから急激にアクセルを踏み込んで3000rpm以上になるまでレーシングを行った。そして、Wと中心電極2の先端面における外径との比の各値について、放電電圧の最大値を測定した。結果を図11に示す。
【0112】
この結果から、主気中ギャップ(α)が0.8mm≦α≦1.0mmであり、セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり、(α−γ)が0.2mm≦(α−γ)≦0.4mmを満たすとともに、平行接地電極の幅を中心電極先端面における外径の2倍以上にすることによって、平行接地電極における放電電圧を十分に低減することができることがわかる。従って、必要以上にセミ沿面接地電極12,12で火花放電が発生することを抑制することができる。
【0113】
次に、下記に示す燃料ブリッジテストを行った。本実験においては、内燃機関に一般に用いられるガソリンの替わりに水を用いた。この理由は、燃料ブリッジは一般に非常に温度の低い状態、即ち、燃料の粘度が低下した状態での、火花放電ギャップで生じたブリッジの切れやすさが問題になるためである。水の常温における粘度がガソリンの約−40℃における粘度とほぼ同等であることが分かっているため、本発明の主目的である燃料ブリッジの切れやすさを確認するためには、最も手近な代替材である。まず、図12に示すような燃料ブリッジ試験機500のアーム501に各試料SPを装着し、火花放電ギャップ間にスポイトを用いて水を約0.05ml付着させた。そして、アーム501を30゜傾けた後に各5回自由落下させて、その間にブリッジが切れたか否かを落下させる毎に観察した。そして、各試験品を各3本行った。なお、1本の試験品は試験終了まで水の補充を行わなかった。
【0114】
試験結果を図13に示す。○は、ブリッジが切れたことを示し、×は、ブリッジが切れなかったことを示す。この試験の結果、主気中ギャップ(α)が0.8mm≦α≦1.0mmであり、セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり、(α−γ)が0.2mm≦(α−γ)≦0.4mmを満たすとともに、平行接地電極の幅を2.2mm以下にすることによって、ブリッジの発生を十分に低減することができることがわかる。
【0115】
次に、下記に示す着火性テストを行った。この試験は、2000cc直列6気筒のエンジンを用いた自動車を使用してシフトレバーをDレンジに入れ、70km/hの定地走行条件(均質リーンバーン燃焼状態を想定)で行った。このエンジン条件で、1%失火が発生したときのA/Fの値を着火限界と判断した。この試験の結果を、図14に示す。この結果から、この試験の結果、主気中ギャップ(α)が0.8mm≦α≦1.0mmであり、セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり、(α−γ)が0.2mm≦(α−γ)≦0.4mmを満たすとともに、平行接地電極の幅を2.2mm以下にすることによって、ブリッジの発生を十分に低減することができることがわかる。
【0116】
以上の試験結果から、主気中ギャップ(α)が0.8mm≦α≦1.0mmであり、セミ沿面碍子ギャップ(γ)が0.5mm≦γ≦0.7mmであり、(α−γ)が0.2mm≦(α−γ)≦0.4mmを満たすとともに、平行接地電極の幅を2.2mm以下であって、かつ、中心電極先端面における外径の2倍以上にすることによって、燃料ブリッジを生ずることなく平行接地電極における放電電圧を十分に低減することができ、その結果、優れた着火性を有することがわかる。
【0117】
(実験11:第七の構成;α≦1.1mm、0.5mm≦γ≦0.7mm、ψ≦1.8mmとする根拠)
絶縁碍子1の内部における中心電極2の太径部での径をφ2.2mm、主気中ギャップ(α)を形成する中心電極2の縮径部先端面における外径をφ0.6mm、主気中ギャップ(α)を1.1mm、主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)を2.8mmとし、幅2.2mmのセミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定した。そして、絶縁碍子先端径φDを変更することによってセミ沿面接地電極12の幅との差ψを種々設定したスパークプラグを用意した。そして、これらスパークプラグを用いて実験6と同様の条件に設定した自動車を用い、安定燃焼領域を測定した結果を図15に示す。
【0118】
この結果から、α≦1.1mmであり、0.5mm≦γ≦0.7mmであり、ψ≦1.8mmとすることによって、失火を生じない燃料噴射終了時期の範囲(すなわち、安定燃焼領域の幅)を広くすることができ、燃料リーン状態での着火性を向上させることができることがわかる。このような現象は、以下の理由によるものと考えられる。即ち、絶縁碍子先端径とセミ沿面接地電極12の幅との差が大きくなると、セミ沿面接地電極12と中心電極2との間で火花が発生する際に、絶縁碍子1の先端部外周を大きく回り込むことになる。セミ沿面接地電極12端面の後方角部から斜め後方に向けて火花が発生した場合に、その火花が絶縁碍子1の先端部にぶつかった後に中心電極2に達する。絶縁碍子1の先端部にぶつかった際には、火花は斜め後方に向けて外周面に沿って這うことになり、その後、向きを変えて中心電極1先端側周面方向に這うことになる。従って、絶縁碍子1先端径とセミ沿面接地電極12の幅との差が大きいと、絶縁碍子1外周面に沿って斜め後方に火花が這う量が大きくなるため、火花が大きく垂れ下がるものと考えられる。
【0119】
(実験12:付加要件3;絶縁碍子の先端部における中心貫通孔の最小径(D3)を、D3≦2.1mmとする根拠)
主体金具5の先端面5Dの位置における絶縁碍子1と主体金具5との径差(δ)をδ=2.8mm、主気中ギャップ(α)をα=1.1mmとし、セミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定するとともに、絶縁碍子1が主体金具5の保持部51よりも先端側における中心貫通孔の最小径(D3)を種々設定したスパークプラグを作製した。なお、中心電極2の外径は中心貫通孔の径に応じて種々変更する。これらスパークプラグを、実験1と同様に1800cc直列4気筒の直噴式内燃機関を用いた自動車に取り付けてシフトレバーをDレンジに入れ、アイドリング600rpmにて運転を行った。また、スパークプラグの点火時期はBTDC15゜に固定した。そして、D3の各値について、1分間あたりの失火発生頻度が略ゼロとなる噴射終了時期の幅(燃焼安定領域)を測定した。結果を図16に示す。この結果から、絶縁碍子1の中心貫通孔の最小径をφ2.1mm以下にすることによって、アイドリング運転時における安定燃焼領域を広くとることができることがわかる。
【0120】
また、上記スパークプラグについてはプレデリバリ汚損試験を行った。試験条件は以下の通りである。すなわち、排気量3000ccの6気筒直噴式内燃機関を用いた自動車にスパークプラグを取り付ける。そして、該自動車を−10゜Cの低温試験室に置き、JISD1606の低負荷適合性試験で規定されている運転パターンにより、低速で数回寸動させる所定の運転パターンを1サイクルとして10MΩに到達するまでのサイクル数を測定した。以上の結果を表7に示す。
【0121】
【表7】
【0122】
この結果によると、絶縁碍子1の中心貫通孔の最小径をφ2.1mm以下にすることによって、プレデリバリ汚損テストにおいても問題を生じることが非常に少なくなる、10MΩに到達するサイクル数を10サイクル以上にすることができることがわかる。
【0123】
以上2種類の評価結果から、絶縁碍子1が主体金具5と係止されて保持される保持部51よりも先端側における中心貫通孔の最小径(D3)を、D3≦2.1mmとすることによって、直噴式内燃機関であっても安定燃焼領域を広くとることができ、さらにプレデリバリ汚損試験においても問題を生じにくくなることが示された。絶縁碍子1の内径を狭くすることによって中心電極2の外径も小さくなり、燃焼サイクルの際に碍子先端部に受けた熱が中心電極2側に逃げることが適度に抑制されるため、絶縁碍子1の先端温度を上昇しやすくする。従って、通常の運転時に温度の上がり難い直噴式内燃機関であっても、絶縁碍子1の先端部温度を上昇しやすくすることができ、「くすぶり」によって堆積したカーボンを焼き切ることが容易になる。また、これに伴って主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花が発生したり、更に保持部近傍で火花が発生したりすることを防止することができるため、直噴式内燃機関においても安定して燃焼する領域を広くとることができるようになる。なお、図17に示すような、第2の実施の形態である、中心電極2の先端部のみを縮径したタイプのスパークプラグ200の場合においても、同様の結果を得ている。
【0124】
次に、本発明における他の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では、上記の実施の形態に比して絶縁碍子1、主体金具5と中心電極2の形状以外は変更ないので説明を省略し、異なる部分のみ説明する。これらの説明は、図18〜図22に示す部分断面図により、中心電極2、平行接地電極11、セミ沿面接地電極12及び主体金具5'先端の近傍を拡大する形で行なう。
【0125】
まず、図18に示す第3の実施の形態のスパークプラグ210では、主体金具5'の先端部を内径側に縮径することによって、先端面5D'の面積が広くなっている。主体金具5'の先端部をこの様な形状にすることによって燃料が主体金具5'の内部にまで入り込むことを抑制することができる。直噴式内燃機関では、燃料噴射ノズルがピストンの方向を向いているため、一度ピストンにぶつかって跳ね返ってきた燃料がタンブルとスキッシュによる吸気の流れの影響を受けながらスパークプラグの斜め先端側から近づいてくる。この角度で燃料がくると主体金具の内部に入り込みやすい。従って、本実施形態のように主体金具5'の先端部を内径側に縮径することで燃料が内部にまで入り込むことを抑制しやすくなる。また、先端面5D’の面積が広くなることから、本発明のように複数の接地電極を持つスパークプラグにとって溶接を容易にできるとともに、接地電極の厚みを厚くすることができる。更に、主体金具5'の保持部51'より先端側を広くとることができるので、保持部51'近傍で火花が発生することを抑制することができる。このように主体金具5'の先端部を縮径するときの縮径部の内径は、絶縁碍子1との径差δが、主気中ギャップ(α)に対して、δ≧2.6×αの関係を満足する程度にすると良い。
【0126】
図19に示す第4の実施の形態のスパークプラグ220では、中心電極2'の電極母材先端が絶縁碍子1の先端面1Dよりも先端側で縮径されてその先端に貴金属チップ21'が全周レーザ溶接により接合されている。なお、絶縁碍子1の先端面1Dを示す線を外方へ延長した第1の延長線31がセミ沿面接地電極12の先端面12Cに位置するような位置関係にセミ沿面接地電極12が設定されている。また、本実施形態では、例えば中心電極母材の径はφ1.8mmであり、その先端にφ0.8mmのIr−5質量%Ptチップが接合されている。更に、本実施例の場合のセミ沿面ギャップ(β)の距離βは、絶縁碍子1の先端面1Dの位置における中心電極2の外径、即ち、中心電極母材が縮径される前の基径とセミ沿面接地電極12との本スパークプラグの軸線方向に対して垂直方向の距離となる。
【0127】
図20に示す第5の実施の形態のスパークプラグ230では、中心電極2'の電極母材先端が縮径されて、その先端に貴金属チップ21'が全周レーザ溶接により接合されている。
【0128】
他方、図21に示す第6の実施の形態のスパークプラグ240では、中心電極2'の電極母材先端は縮径されておらず、先端に略凸状の形状をした貴金属チップ21'が全周レーザ溶接により接合されている。また、レーザ溶接部212の先端が絶縁碍子1の先端面1Dとほぼ同一面に位置している。なお、本実施形態では、例えば中心電極母材の径はφ1.8mmであり、その先端に先端側の径がφ0.6mm、径大部211'の径がφ1.8mmのIr−20質量%Rhチップが接合されている。そして、絶縁碍子1の中心貫通孔内径がφ1.9mmに設定されている。更に、本実施例の場合のセミ沿面ギャップ(β)の距離βは、絶縁碍子1の先端面1Dの位置における中心電極2の外径、即ち、貴金属チップ21'の径大部211'とセミ沿面接地電極12との本スパークプラグの軸線方向に対して垂直方向の距離になる。このように構成することにより、セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生した場合であっても、貴金属チップ21'が中心電極母材から脱落することを防止することができる。セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生した場合には、貴金属チップ21'の側面とセミ沿面接地電極12との間で火花が発生することになる。この位置で頻繁に火花が発生することになると、絶縁碍子1の先端面1D近傍での貴金属チップ21'が消耗したとしても、貴金属チップ21'先端部よりも細くなってしまうことがなく、貴金属チップ21'の先端部が脱落してしまうことを防止できる。更に、先端部は径が細いため、主気中ギャップ(α)で火花が発生する際の放電電圧を低減させることができる。このため、着火性が向上する。また、特に直噴式内燃機関では安定燃焼領域を広くすることができる。
【0129】
図22に示す第7の実施の形態のスパークプラグも、同様に中心電極2'の電極母材先端は縮径されておらず、先端に略凸状の形状をした貴金属チップ21'が全周レーザ溶接により接合されている。この実施形態では、貴金属チップ21'の径大部211'が絶縁碍子1の先端面1Dよりも内部に位置している。なお、本実施形態では、例えば中心電極母材の径はφ1.8mmであり、その先端に先端側の径がφ0.6mm、径大部211'の径がφ1.8mmのIr−20質量%Rhチップが接合されている。そして、絶縁碍子1の中心貫通孔内径がφ1.9mmに設定されているため、絶縁碍子1の中心貫通孔内径と貴金属チップ21'外径との径差は、0.1mmに設定されている。更に、本実施例の場合のセミ沿面ギャップ(β)の距離βは、絶縁碍子1の先端面1Dの位置における中心電極2の外径、即ち、貴金属チップ21'の貴金属チップ21'の細径部とセミ沿面接地電極12との距離になる。
【0130】
セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生した場合に絶縁碍子1の先端面1Dを這う火花は、更に絶縁碍子1の中心貫通孔の内壁を這って貴金属チップ21'の径大部211'に至る。従って、径大部211'が絶縁碍子1の中心貫通孔内部にあったとしても火花は径大部211'とセミ沿面接地電極12との間で発生するため、貴金属チップ21'の先端部が脱落してしまうことを防止できる。更に、先端部は径が細いため、主気中ギャップ(α)で火花が発生する際の放電電圧を低減させることができる。このため、着火性が向上する。また、特に直噴式内燃機関では安定燃焼領域を広くすることができる。そして、貴金属チップ21'外径と絶縁碍子1の中心貫通孔内径との径差の最小値が0.1mmであるため、中心電極2'母材の火花放電による消耗を抑えることがより容易になる。これは、以下の理由によるものであると考えられる。即ち、セミ沿面ギャップ(β)で火花が発生した場合には、絶縁碍子1の中心貫通孔内壁を火花が這うことになる。この時、貴金属チップ21'外径と絶縁碍子1の中心貫通孔内径との径差が大きくなると、火花が貴金属チップ21'に飛ばずに更に奥深く入り込んで中心電極2'母材にまで至る場合がある。中心電極2'母材は貴金属チップ21'と比較して耐火花消耗性は低いため、急速に消耗しやすく、チップの脱落に至る場合がある。従って、この径差を小さくすることによって、中心電極2'母材に火花が至る現象を抑えることができ、耐久性が向上するのである。
【0131】
なお、図30に示すように、平行接地電極11の主気中ギャップに面する位置にも、貴金属チップ50を溶接接合することができる。該スパークプラグ270は、図9のスパークプラグ220において、平行接地電極11にも貴金属チップ50を設けた例を示している。貴金属チップ50の材質は、平行接地電極11側の貴金属チップ21’と同様のものを使用できる。他方、中心電極2側が負となる電圧極性にてスパークプラグを使用する場合、平行接地電極11側においては中心電極2側と比較して火花消耗が若干緩やかであるので、中心電極2側よりもやや融点の低い貴金属チップ50を使用することも可能である(例えば、中心電極2側の貴金属チップ21’がイリジウム合金である場合、平行接地電極11側の貴金属チップ50を白金あるいは白金合金にて構成できる)。
【0132】
平行接地電極11とセミ沿面接地電極12とは、表層部をなす母材をいずれもニッケル又はニッケル合金にて構成できる。この場合、両電極11,12において、使用する母材の材質を異ならせることも可能である。すなわち、平行接地電極11の母材を、ニッケルを主成分とする第一のニッケル系母材金属にて構成し、セミ沿面接地電極12の母材を、ニッケルを主成分とする第二のニッケル系母材金属にて構成できる。
【0133】
例えば、図30(セミ沿面接地電極12の形態は図2あるいは図19と同じ;符号をこれらの図から援用する)では、セミ沿面接地電極12の他端の端面部12Cに貴金属チップが溶接されず、かつ該端面部の全体が第二のニッケル系母材金属からなる一方、平行接地電極11の少なくとも表層部11bが第一のニッケル系母材金属にて構成され、中心電極2との対向面に貴金属チップ50が溶接されている。この場合、第二のニッケル系母材金属のニッケル含有率よりも低くすることができる。すなわち、平行接地電極11側は貴金属チップ50が溶接してあるので、母材の火花消耗はそれほど問題とならない。他方、セミ沿面接地電極12側は、平行接地電極11側と比較すれば飛火頻度は高くないので、貴金属チップを省略してコスト削減を図るとともに、この場合は母材表面そのものが放電面となることから、そのニッケル含有率の向上により火花消耗抑制を図ろうという思想である。この場合、第二のニッケル系母材金属のニッケル含有率は、85質量%以上であることが望ましい。例えば、第一のニッケル系母材金属をインコネル600(商標名)とし、第二のニッケル系母材金属を95質量%ニッケル合金(残部クロム、マンガン、シリコン、アルミ、鉄等)にて構成することができる。
【0134】
(その他の実施の形態)
以上説明した各実施の形態ではセミ沿面接地電極12を2極としたが、セミ沿面接地電極12は単極であっても良いし3極以上の多極としても良い。しかしながら、単極では絶縁碍子1の端面の全周に渡って火花でカーボンを焼き切るのが難しく、火花清浄性が悪くなるので、セミ沿面接地電極12は2極から4極が好ましいと考える。また、セミ沿面接地電極12の位置は、多くの実施形態でセミ沿面接地電極12の先端面12Cの全面が絶縁碍子1の直管状部102に対向する例を説明したが、絶縁碍子1の先端面1Dを示す線を外方へ延長した第1の延長線31がセミ沿面接地電極12の先端面12Cに位置するような位置関係に設定してもよい。さらに、絶縁碍子1の先端内部において中心電極の縮径(いわゆるサーモ)されていないスパークプラグについて説明したが、1段または2段以上に縮径されているスパークプラグであっても良い。
【0135】
また、図29のスパークプラグ260は、階段状の縮径部を経て直管状部102Bを形成した例である。図23あるいは図29に示すスパークプラグ100,260においては、いずれも絶縁碍子1の先端部に直管状部102あるいは102Bが形成されている。直管状部102あるいは102Bの軸線30の向きにおける長さは、いずれも0.5〜1.5mmである。これらの構成では、直管状部102あるいは102Bの後方に、図31(c)に示すようなテーパ状の膨らみ部105、あるいは図31(a)に示すような階段状の膨らみ部102Aが隣接形成される形となる。
【0136】
上記の膨らみ部がセミ沿面接地電極12の端面12Cの後方側縁12Bに近づきすぎると、ここからの火花が後方側に垂れ下がる形で発生しやすくなる。例えば、図32(a)に示すように、階段状の膨らみ部102Aのアール付与された移行部102Tには電界が集中しやすく、セミ沿面接地電極12の後方側縁12Bからの火花SP3はこの移行部102Tを目指して放出される結果、後方側に垂れ下がり、絶縁碍子1の側周面後方部を大きく回り込む形で飛火することになる。このような火花が着火性を悪化させることは明らかである。
【0137】
そこで、図31に示すように、セミ沿面接地電極12の端面12Cの、絶縁碍子2の軸線30の方向における後方側縁12Bの中点と、該絶縁碍子2の軸線30とを含む仮想的な平面上において、セミ沿面ギャップの大きさをγ(単位:mm)として、後方側縁12Aの中点を中心とする(γ+0.1)mmの円Ckを描いたときに、膨らみ部102Aの全体が該円Ckの外側に位置するようにすれば、図32のSP3のような火花の垂れ下がりを効果的に防止することができる。なお、図31(b)に示すように、膨らみ部102Aの移行部102Tを円Ckに倣う傾斜面とすれば、図31(a)のように移行部102Tが直管状部102Bの外周面から垂直に立ち上がる形態と比較して、直管状部102B自体の長さを短くすることができ、また、移行部102Tに電界集中しやすい小角度の縁部を生じにくくなるので、火花の垂れ下がり防止に一層効果的である。
【0138】
上記の効果を確認するために、以下の実験を行なった。
(実験13)
図3のスパークプラグにおいて、絶縁碍子1の直管状部102の形態を、図31(c)に示すタイプのもの(タイプA)及び(a)に示すタイプのもの(タイプB)を種々用意した。これらスパークプラグは、いずれも平行接地電極11をなくし、セミ沿面接地電極12を2個設け、セミ沿面碍子ギャップ(γ)をいずれもγ=0.6mm、セミ沿面ギャップ(β)をいずれもβ=1.6mmに設定するとともに、絶縁碍子1の先端面1Dの高さ位置とセミ沿面接地電極12の端面12Cの後端側縁12Bの高さ位置との段差Eは0.9mmとした。そして、直管状部(102あるいは102B)の長さを、表8に示す0.9〜1.8mmの種々の値とした。なお、表8には、前記した半径(γ+0.1)mmの円の範囲内に、膨らみ部105あるいは102Aが存在しているものを「*」、存在していないものを「◎」で表している。これらのスパークプラグを用いて、以下の実験を行なった。すなわち、スパークプラグをチャンバに取り付け、チャンバ内を0.6MPaに加圧するとともに、フルトランジスタ電源により1秒間に1回の火花を発生させる動作を1分間継続した。そして、その間の火花発生状況をビデオ撮影し、その画像を解析することにより、セミ沿面接地電極12の端面12Cの後方側縁12Bから発生した火花の、該後方側縁12Bから軸線30の方向における最大垂れ下がり長さLを求め、その長さが2.5mm以内に収まっているものを良好(○)、そうでないものを不良(×)として評価した。以上の結果を表8に示す。
【0139】
【表8】
【0140】
すなわち、直管状部の長さが1.5mm以下であるか、あるいは前記した半径(γ+0.1)mmの円内に膨らみ部が存在していない場合に、火花の垂れ下がりが効果的に抑制されていることがわかる。
【0141】
次に、セミ沿面接地電極12の端面12Cからの火花の発生形態は、該端面12Cの形状を工夫することによっても改善することが可能である。まず、端面12Cの形態を規定するに際しては、以下のような幾何学的な定義を行なう。すなわち、図2(b)において、軸線30の方向において絶縁碍子1の先端部の位置する側を前方側とし、これと反対側を後方側とする。さらに、セミ沿面接地電極12の、端面12Cの後方側縁12Bの中点M1と軸線30とを含む仮想的な平面VPに対し、軸線30を含んで該平面VPと直交する平面を投影面PPとして定める。そして、該投影面PPへの端面12Cの正射影を12NP(以下、端面正射影12NPと記載する)とする。なお、図26に示すように、端面12Cが投影面PPと平行な場合は、図2(b)に示すように、正射影12NPは端面12Cと幾何学的に合同となる。他方、図21に示すように、端面12Cを平面となす代わりに円弧状面となした場合には、端面12Cの形状は曲面であるものの図2(c)に示すように、その端面正射影12NPの形状は、図2(b)に示す場合と基本的に相違しない。
【0142】
セミ沿面接地電極12を、例えば長方形状の軸断面を有する線状部材を曲げ加工して作ったものである場合、図32(b)に示すように、その端面正射影12NPの形状も長方形状のものとなる。このとき、投影面PP上にて軸線30と後方側縁12Bとの交点をXとし、同じく前方側縁12Aとの交点をYとして、線分XYの中点Qを通って軸線30と直交する基準線RLを引いたとき、該基準線RLよりも前方側に位置する領域(以下、前方側領域FAという)の面積S1は、同じく後方側に位置する領域(以下、後方側領域RAという)の面積S2と略等しくなる。なお、投影面PP上での議論においては、「‥の正射影」とその都度称することは煩雑であるので、これを省略し、単に「後方側縁12B」、「前方側縁12A」等と称する。
【0143】
端面正射影12NPがこのような形状となる端面12Cの場合、前方側領域FAと後方側領域RAとでは、単位時間あたりの火花の発生頻度は略等しくなる。例えば、図32(c)に示すように、領域DWにおいて何らかの理由により局所的に火花消耗が遅れた場合を想定すると、消耗から取り残された領域DWのギャップ間隔は他の領域よりも小さくなるから、以降は領域DWでの火花放電が逆に生じやすくなる。該事実から因果律的に考えれば、セミ沿面接地電極12は、局所的なギャップ間隔異常がなるべく生じないように、放電面となる端面12Cの全体にわたって一様に消耗すること、換言すれば単位面積/単位時間あたりの火花発生頻度が、端面12Cの全面に渡って略均等でなければならない。従って、基準線RLに関して二分される端面正射影12NPの2つの領域、すなわち前方側領域FAと後方側領域RAとの面積S1とS2とが等しいので、各領域FAとRAとで発生する単位時間あたりの火花発生頻度も略等しくなるのである。その結果、前方側領域FAも後方側領域RAも略同じ頻度で火花が発生するのであるから、チャンネリング抑制や着火性改善の効果は期待できない。
【0144】
そこで、図33においては、端面正射影NPにおける前方側領域FAの面積S1が後方側領域RAの面積S2よりも大となるような、端面12Cの形状が選択されている。このようなセミ沿面接地電極12は、面積が増えた分だけ前方側領域FAでの単位時間あたりの火花SPの発生頻度が高くなり、絶縁碍子1へのアタックが柔らかい前方側領域FAが増加するので、チャンネリング抑制及び着火性改善を効果的に図ることができるようになる。図33では、平行対辺のうち短辺が後方側縁12Bとなる台形状の形状が採用されている。また、火花SPの発生頻度を矢印の長さにより模式的に表している。他方、図34は、後方側縁12Bが弧と一致する弓形ないし半月状の形状とした例であり、S1>S2が成り立っていることは明らかである。
【0145】
次に、セミ沿面接地電極12が、図32(b)に示すような長方形状の端面12Cを有しているとき、その角部、特に後方側縁12Bの両端の角部が図に示すようなピン角になっていると、ここを起点として火花SP3が斜め外方下向きに放出されやすくなる。このような火花SP3は、図32(a)に示すように、絶縁碍子1の軸線方向に沿って大きく垂れ下がる形で飛ぶことがあり、着火性が著しく損なわれてしまう不具合につながる。特に、直管部102Bの基端部に、鋭い階段状の移行部102Tが形成されている場合は、火花SP3は電界集中しやすい稜線部を目指して大きく回りこむ形になるため、垂れ下がりは一層甚だしくなり、着火性が大きく損なわれてしまう不具合につながる。
【0146】
そこで、図35に示すように、少なくとも後方側領域RAにおいて、角部の先端曲率半径又は面取り幅が0.2mm以上若しくはこの角部を形成する2辺部が90度を超える角度をなすように形成されており端面正射影12NPにおいて先鋭な角部が現われないような、端面12Cの形状を選択することで、後方側領域RAからの上記のような垂れ下がりを伴う火花の発生を効果的に抑制することができる。また、火花発生の起点となりやすい先鋭な角部を後方側領域RAから排除することにより、該領域側での火花発生頻度自体も低減される。
【0147】
図35(a)は、直線状の後方側縁12Bの両端に生ずる角部(2辺部のなす角度は略90℃)RC1,RC2を、先端曲率半径が0.2mm以上(例えば上限1.0mm程度まで)のアール状部とした例である。また、図35(b)は、角部RC1,RC2を幅0.2mm以上の面取り部となした例である。この場合、面取り部の両端に1ずつの角部が生じることになるが、これらの角部は、2辺部がいずれも鈍角となり、敏感な火花発生起点部とはなりにくいので、先端曲率半径は0.2mm未満となっていても差し支えない。
【0148】
なお、図35(a)及び(b)においては、後方側縁12Bの両端に生ずる角部RC1,RC2にのみアール状部あるいは面取り部を形成している。その結果、前方側領域FAの面積S1は後方側領域RAの面積S2よりも多少は大きくなり、S1>S2とする効果も多少は生ずることとなる。ただし、図35(c)に示すように、前方側縁12Aの両端に生ずる角部FC1,FC2も含めた4つの角部の全てにアール状部(面取り部でもよい)を形成し、S1とS2とを略等しくすることももちろん可能である。また、図33の構成は、端面正射影12NPが略等脚台形状となっており、後方側縁12Bの両端に生ずる角部RC1,RC2はいずれも鈍角であるから、先鋭な角部を排除する効果も生ずる。また、図34の構成においても、後方側縁12Bが、先鋭な角部が本質的に生じない円弧状に形成されているので、先鋭な角部は同様に排除されているといえる。
【0149】
図36(a)は、図33の台形状の端面12Cにおいて、各角部をそれぞれアール状となした例であり、S1>S2とする効果と先鋭な角部排除の効果が一層理想的に達成される形となる。この場合、(b)に示すように、端面12Cが図27のような円筒面状とされる場合、端面12Cを展開してみれば明らかなように、後方側縁12Bの両端の角部RC1,RC2は二辺間角度がさらに大きくなり、火花発生抑制効果を一層顕著なものとすることができる。
【0150】
なお、図33〜図36に示す、いずれの形状のセミ沿面接地電極12も、所望とする端面正射影形状と略同じ軸断面を有する線状部材の曲げ加工により形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るスパークプラグの部分断面図。
【図2】図2(a)は第1態様のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図であり、図2(b)、(c)はセミ沿面接地電極12の面PPへの投影を説明する図。
【図3】第2態様のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図4】第3態様のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図5】このスパークプラグが適用されるスパークプラグのJIS規格(JIS B 8031)若しくは当該JIS規格中に対応表示されるISO規格の中で定められたA寸法よりも先端側に突出する前記絶縁碍子の突出量(F)と安定燃焼する噴射終了時期との関係を示すグラフ図。
【図6】第4態様のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図7】中心電極2の絶縁碍子1の先端面1Dからの突出量と安定燃焼する噴射終了時期との関係を示すグラフ図。
【図8】縦軸に主気中ギャップ(α)の距離α、横軸にセミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γをとり、主体金具5の先端面5Dと絶縁碍子1との間で火花が発生し始めた点をプロットしたグラフ図。
【図9】主気中ギャップ(α)とセミ沿面碍子ギャップ(γ)との差(α−γ)と安定燃焼する噴射終了時期との関係を示すグラフ図。
【図10】第5態様のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図11】中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅Wと中心電極先端径との比に対する放電電圧の関係を示すグラフ図。
【図12】燃料ブリッジ試験機の概要を示す図。
【図13】燃料ブリッジ試験の結果を示す図。
【図14】中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅Wと中心電極先端径との比に対する着火性の関係を示すグラフ図。
【図15】絶縁碍子先端径とセミ沿面接地電極の幅との差ψと安定燃焼する噴射終了時期との関係を示すグラフ図。
【図16】絶縁碍子の、主体金具と係止されて保持される保持部よりも先端部における中心貫通孔の最小径(D3)と、安定燃焼する噴射終了時期との関係を示すグラフ図。
【図17】第2の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図18】第3の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図19】第4の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図20】第5の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図21】第6の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図22】第7の実施の形態に係るスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図23】直噴型エンジンへのスパークプラグの取付形態の一例を示す説明図。
【図24】セミ沿面接地電極を3個設け、平行接地電極内に良熱伝導材を配置したスパークプラグの一例を示す要部側面図。
【図25】セミ沿面接地電極を3個設けたスパークプラグの一例を示す底面図。
【図26】図2のスパークプラグの底面図。
【図27】図26において、セミ沿面接地電極の端面を円筒面状とした例を示す底面図。
【図28】中心電極先端面と絶縁碍子先端面との種々の関係を例示して示す模式図。
【図29】絶縁碍子の直管状部を2段に形成したスパークプラグの一例を示す要部正面部分断面図。
【図30】平行接地電極に貴金属チップを接合したスパークプラグの一例を示す要部側面図。
【図31】絶縁碍子の直管状部とセミ沿面ギャップとの種々の位置関係を例示して示す模式図。
【図32】セミ沿面接地電極におけける種々の火花発生形態と電極先端面形状との関係を示す説明図。
【図33】セミ沿面接地電極の端面形状の第一の改善例を示す側面図及び正面図。
【図34】セミ沿面接地電極の端面形状の第二の改善例を示す側面図及び正面図。
【図35】セミ沿面接地電極の端面形状の第三、第四及び第五の改善例を示す側面図。
【図36】セミ沿面接地電極の端面形状の第六及び第七の改善例を示す説明図。
【符号の説明】
1 絶縁碍子
1D 絶縁碍子の先端面
1E 絶縁碍子の側周面
2 中心電極
2′ 中心電極
2A 中心電極の側周面
5 主体金具
5D 主体金具の先端面
11 平行接地電極
12 セミ沿面接地電極
12' セミ沿面接地電極
12A 先端側縁
12B 後端側縁
12C セミ沿面接地電極の端面
21、21’、50 貴金属チップ
30 中心軸
31 第1の延長線
32 第2の延長線
33 第3の延長線
102 直管状部
(α) 主気中ギャップ
α 主気中ギャップの距離
(β) セミ沿面ギャップ
β セミ沿面ギャップの距離
(γ) セミ沿面碍子ギャップ
γ セミ沿面碍子ギャップの距離
φD 絶縁碍子先端径
D2 中心電極元径
D3 絶縁碍子の中心貫通孔の最小径
E セミ沿面接地電極の後端側縁と、絶縁碍子の前端面との段差
F 絶縁碍子の突き出し量
H 中心電極の突き出し量
P1 第1および第2の延長線の交点
P2 第1および第3の延長線の交点
W 中心電極の中心点の位置における平行接地電極の幅
Claims (25)
- 中心貫通孔を有する絶縁碍子と、前記中心貫通孔に保持され前記絶縁碍子の先端部に配設された中心電極と、前記絶縁碍子の先端部を自身の先端面から突出するように保持する主体金具と、その主体金具の前記先端面に一端が接合され他端が前記中心電極の先端面に対向するように配設された平行接地電極とを備え、前記平行接地電極と前記中心電極の先端面とにより主気中ギャップ(α)が形成されているとともに、前記主体金具に一端が接合され他端が前記中心電極の側周面若しくは前記絶縁碍子の側周面に対向するように配設された複数のセミ沿面接地電極を備え、前記セミ沿面接地電極の他端の端面と、この端面と対向する前記中心電極の側周面との間にセミ沿面ギャップ(β)が形成されており、かつ、前記セミ沿面接地電極の端面と、この端面と対向する前記絶縁碍子の側周面との間にセミ沿面碍子ギャップ(γ)が形成されており、前記主気中ギャップ(α)の距離α(単位:mm)と前記セミ沿面ギャップ(β)の距離β(単位:mm)とが、α<βの関係を満足し、かつ、該主気中ギャップ(α)の距離αと前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γ(単位:mm)とが、α>γの関係を満足し、
前記主気中ギャップ(α)は、0.8mm≦α≦1.0mmであり、前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)が、0.5mm≦γ≦0.7mmであり、該主気中ギャップ(α)と前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)とが、0.2mm≦(α−γ)≦0.4mmであり、
前記中心電極は先端部が縮径されているとともに、前記絶縁碍子の軸線方向前方側から平面視した場合の前記中心電極の中心点の位置における前記平行接地電極の幅Wは、2.2mm以下であって、かつ、前記中心電極の先端面における外径の2倍以上であることを特徴とするスパークプラグ。 - 前記主気中ギャップ(α)がα≦0.9mmであり、前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)が、0.5mm≦γ≦0.7mmであり、前記主体金具の前記先端面の位置における前記絶縁碍子と前記主体金具との径差δ(単位:mm)が、δ≧2.8mmである請求項1記載のスパークプラグ。
- 前記主気中ギャップ(α)がα≦1.1mmであり、前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)が、0.5mm≦γ≦0.7mmであり、かつ、前記セミ沿面接地電極の配設個数が3個以上である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁碍子の先端部に直管状部を有し、前記絶縁碍子の軸線方向において前記先端部の位置する側を前方側としたときに、前記直管状部の後端位置に対し前記セミ沿面接地電極の前記端面の後端側縁が一致しているか又は前方側にあり、前記先端面の高さ位置と前記セミ沿面接地電極の前記端面の後端側縁の高さ位置との前記軸線方向における段差E(単位:mm)と、前記絶縁碍子の前記先端面から側周面に至る曲面の曲率半径R(単位:mm)との差が、R−E≦0.1mmである請求項1ないし3のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記段差Eの値が0.5mm以下である請求項4に記載のスパークプラグ。
- 前記スパークプラグが適用されるスパークプラグのJIS規格(JIS:B8031)若しくは当該JIS規格中に対応表示されるISO規格の中で定められたA寸法よりも先端側に突出する前記絶縁碍子の突出量F(単位:mm)が、3.0mm≦F≦5.0mmである請求項1ないし5のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記平行接地電極は、表層部を形成する母材と、内層部を形成するとともに前記母材よりも熱伝導性の良好な材料からなる良熱伝導材とを有する請求項6に記載のスパークプラグ。
- 前記主気中ギャップ(α)が、α≦1.1mmであり、前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)が、0.5mm≦γ≦0.7mmであり、前記絶縁碍子の軸線に平行な仮想平面に対し、該絶縁碍子を正射影にて表したとき、先端面を示す線を外方へ延長した第1の延長線と、前記絶縁碍子の前記セミ沿面ギャップ(β)部に臨む前記軸線を挟んだ両側の側周面を示す2本の線を前記先端面の方向へ延長した2本の第2の延長線との交点間の距離(以下、単に「絶縁碍子先端径」φD(単位:mm)という)と前記セミ沿面接地電極の幅との差ψ(単位:mm)が、ψ≦1.8mmである請求項1ないし7のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記第1の延長線と前記絶縁碍子の前記セミ沿面ギャップ(β)部に臨む側周面を示す線を前記先端面の方向へ延長した第2の延長線との交点から、前記第1の延長線と前記中心貫通孔の延長線との交点までの最短距離(以下、単に「絶縁碍子先端肉厚」ρ(単位:mm)という。)が、ρ≦0.9mmである請求項8に記載のスパークプラグ。
- 前記中心電極が前記絶縁碍子の先端面から突出する量H(単位:mm)がH≦1.25mmである請求項1ないし9のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記中心電極が前記絶縁碍子の先端面から突出する量HがH≦0.5mmである請求項10に記載のスパークプラグ。
- 前記主気中ギャップ(α)、前記セミ沿面ギャップ(β)及び前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)とが、α≦0.4×(β−γ)+γの関係を満足する請求項1ないし11のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁碍子の先端部を軸線方向前方側から平面視したときに、前記セミ沿面接地電極は少なくとも前記他端の端面において、前記絶縁碍子の前記中心貫通孔の先端開口径よりも大きな幅を有する請求項1ないし12のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁碍子の前記中心貫通孔が該絶縁碍子の先端部側にて縮径されている請求項1ないし13のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁碍子には縮径された先端部をなす直管状部が形成され、また、該直管状部の軸線方向後方側に隣接して該直管状部よりも径大の膨らみ部が形成され、
前記直管状部の長さが1.5mm以下であり、
また、前記セミ沿面接地電極は、前記他端の端面の、前記絶縁碍子の軸線方向における後方側縁の中点と、該絶縁碍子の軸線とを含む仮想的な平面上において、前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離をγ(単位:mm)として、前記後方側縁の中点を中心とする(γ+0.1)mmの円を描いたときに、前記膨らみ部の全体が該円の外側に位置する請求項1ないし14のいずれかに記載のスパークプラグ。 - 前記絶縁碍子の軸線方向において前記先端部の位置する側を前方側とし、さらに、前記セミ沿面接地電極の、前記他端の端面の後方側縁の中点と前記軸線とを含む仮想的な平面に対し、前記軸線を含んで該平面と直交する平面を投影面として定め、該投影面への正射影にて表したときに、前記他端の端面は、前記投影面上にて前記軸線と後方側縁との交点をXとし、同じく前方側縁との交点をYとして、線分XYの中点を通って前記軸線と直交する基準線よりも前方側に位置する領域の面積S1が、後方側に位置する領域の面積S2よりも大きくなる形状を有してなる請求項1ないし15のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁碍子の軸線方向において前記先端部の位置する側を前方側とし、さらに、前記セミ沿面接地電極の、前記他端の端面の後方側縁の中点と前記軸線とを含む仮想的な平面に対し、前記軸線を含んで該平面と直交する平面を投影面として定め、該投影面への正射影にて表したときに、前記他端の端面の外周縁には、前記投影面上にて前記軸線と後方側縁との交点をXとし、同じく前方側縁との交点をYとして、線分XYの中点を通って前記軸線と直交する基準線よりも後方側に位置する領域において少なくとも、角部が先端曲率半径又は面取り幅が0.2mm以上となっているか又は角部を形成する2辺部が90度より大きい角度を有することを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁碍子の先端部に直管状部を有し、該直管状部は前記主体金具の先端面より後端側にまで延設されていることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記中心電極は、母材の先端部に融点1600℃以上の貴金属又は貴金属合金で形成された貴金属チップが接合されることによって構成されているとともに、該接合部が前記絶縁碍子の前記中心貫通孔内で接合されている請求項1ないし18のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁碍子が前記主体金具と係止されて保持される保持部よりも先端側における前記中心貫通孔の最小径D3(単位:mm)が、D3≦2.1mmである請求項1ないし19のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記貴金属チップは、前記接合部側の外径が先端側の外径よりも大に構成されている請求項20に記載のスパークプラグ。
- 前記貴金属チップ外径と前記絶縁碍子の中心貫通孔内径との径差の最小値が0.2mm以下である請求項20又は21に記載のスパークプラグ。
- 前記平行接地電極は、表層部を形成する母材と、内層部を形成するとともに前記母材よりも熱伝導性の良好な材料からなる良熱伝導材が配置されている請求項1ないし22のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記セミ沿面接地電極は、前記他端の端面部に貴金属チップが溶接されず、かつ該端面部の全体がニッケルを主成分とする第二のニッケル系母材金属からなる一方、前記平行接地電極の少なくとも表層部がニッケルを主成分とする第一のニッケル系母材金属にて構成されるとともに、前記中心電極との対向面に貴金属チップが溶接されてなり、さらに、前記第二のニッケル系母材金属のニッケル含有率が、前記第一のニッケル系母材金属のニッケル含有率よりも高くされた請求項1ないし23のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記第二のニッケル系母材金属のニッケル含有率が85質量%以上である請求項24に記載のスパークプラグ。
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