JPH1187015A

JPH1187015A - 層状燃焼方式エンジン用スパークプラグ

Info

Publication number: JPH1187015A
Application number: JP25768297A
Authority: JP
Inventors: Yoshihiro Matsubara; 佳弘松原; Hiroshi Ono; 浩史大野
Original assignee: NGK Spark Plug Co Ltd
Current assignee: Niterra Co Ltd
Priority date: 1997-09-05
Filing date: 1997-09-05
Publication date: 1999-03-30

Abstract

(57)【要約】【課題】発火部における内部フラッシュオーバーが発
生し難く、広範囲の使用条件で混合気中に正規の火花放
電を発生できる。【解決手段】先端が燃焼室内にある中心電極３と、中
心電極３を保持する絶縁体と、シリンダに取り付けられ
て絶縁体を固持する主体金具８とからなる。中心電極３
は、絶縁体内に挿入される円柱部３０と、円柱部３０の
後端側に接続し円柱部３０よりも外径が大きく絶縁体内
に係止される鍔部とからなる。中心電極３の先端部３１
は先端に向かって先細りの略円錐台状の段差部３３と、
この段差部３３の先端面３９に接合し先端面３９と同径
の円板状の耐火花消耗性部材の貴金属チップ３４とから
なる。円柱部３０と段差部３３との境界３６が、段差部
３３の基部として絶縁体の先端面６３よりも外側に位置
するとともに、この境界３６に周方向に丸みＲを付与し
ている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、層状燃焼方式を採
用するくすぶりの非常に生じ易いエンジンにおいても高
電圧印加時に絶縁体の先端面から奥方へのフラッシュオ
ーバーを効果的に抑制するように改良を加えたスパーク
プラグに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、混合気中で火花放電を発生させる
スパークプラグは、棒状の中心電極が筒状の絶縁体に挿
入され、中心電極の先端部が絶縁体の先端面から突出
し、接地電極を取り付けた主体金具が絶縁体を固着する
構造を有する。そして、中心電極の先端部と接地電極と
の間の放電ギャップで火花放電を行わさせている。この
構成を有するスパークプラグには、図７に示すように着
火性を向上させるため中心電極の先端側を円柱部１００
と該円柱部１００の先端側に接続し先端に向かって先細
りの略円錐台形状の段差部１０１と段差部１０１の先端
面に接続し先端に至る小円柱部１０２を有するものが知
られている。さらに、斯かる小円柱部がＰｔ−Ｉｒ合金
等の貴金属材料からなるものが知れている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】この中心電極の円柱部
１００と段差部１０１との境界１０３が、凸状の鋭角的
に突出していると、該境界１０３が絶縁体の先端面１０
４よりも外側に有る場合は特に、この境界１０３での等
電界曲線の分布密度が高くなり、勢い境界１０３の位置
での電界強度は大きくなる。このため、中心電極の先端
部と接地電極との間の正規の放電ギャップでの火花放電
よりも、同図８に記号ＦＯで示すように境界１０３より
絶縁体の奥方へフラッシュオーバーを起こし易かった。

【０００４】特に、燃焼室内に直接燃料を噴射するエン
ジン（以下筒内噴射エンジンともいう）においては、く
すぶりを生じ易く、フラッシュオーバーを起こし易かっ
た。即ち、筒内噴射エンジンにおいてはその特徴の一つ
に、圧縮行程において燃料を噴射することによってスパ
ークプラグの発火部近傍に濃混合気を形成しスパークプ
ラグによる燃焼をさせる行程を有する（以下「層状燃焼
方式」ともいう）という点が挙げられる。これによっ
て、燃焼室内部のトータルとしての混合比を薄くするこ
とができ、低燃費化を図ることができる。この層状燃焼
方式では燃料噴射タイミングを圧縮行程の所定の点火時
期近くに設定し、点火プラグ近傍の濃混合気によって燃
焼させるようにしたもので、例えば特開平４−１８３９
２２号公報、及び特開昭５８−１７８８３５号公報に開
示されている。このような層状燃焼方式では、上述した
ようにスパークプラグの発火部近傍の混合気は非常に濃
く設定されており、しかも燃焼温度がそれほど高くなら
ないのでスパークプラグにカーボン汚損によるくすぶり
を生じる場合がある。

【０００５】ところで、スパークプラグは、カーボン等
が絶縁碍子に付着しても、火花清浄作用により、カーボ
ンを焼き切ったり飛ばしたりして汚損の進行を防止し、
絶縁抵抗（ＭΩ値）の低下を抑えることができる。

【０００６】しかし、筒内噴射エンジンのような層状燃
焼方式の場合には、火花清浄作用が追いつかず、カーボ
ン汚損が進行する。カーボン汚損が進行すると、絶縁抵
抗（ＭΩ値）が低下し、フラッシュオーバーを起こし易
く、エンジン不調（エンジンストール、アイドル不調、
ドライバビリティ不良、始動不良）に陥る場合がある。

【０００７】本発明の目的は、くすぶりを生じ易い層状
燃焼方式を採用するエンジンであっても、フラッシュオ
ーバーを起こし難く、広範囲の使用条件で混合気中に正
規の火花放電を発生できるスパークプラグの提供にあ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明では、棒状の中心
電極と、前記中心電極を内部に保持する絶縁体と、前記
絶縁体を内部に保持する主体金具と、前記中心電極の先
端部との間に気中の放電ギャップを形成する接地電極を
有する層状燃焼方式エンジン用スパークプラグにおい
て、前記中心電極は、先細り段差部を有するとともに、
該先細り段差部の先端面に耐火花消耗性部材を備え、前
記中心電極の円柱部と前記先細り段差部との境界には、
周方向に丸みが付与された構成を採用している。

【０００９】本発明の層状燃焼方式エンジン用スパーク
プラグにおいては、前記中心電極の円柱部と前記先細り
段差部との境界は、前記絶縁体の先端面よりも内側に位
置していることが望ましい。

【００１０】また、本発明の層状燃焼方式エンジン用ス
パークプラグにおいては、前記丸みはＲが０．１ｍｍ以
上であることが望ましい。

【００１１】また、本発明の層状燃焼方式エンジン用ス
パークプラグにおいては、前記中心電極と同軸で、中心
角が１１０°以下である円錐面に前記中心電極の前記先
端部が内接するとともに、前記絶縁体の先端外周が内接
していることが望ましい。

【００１２】また、本発明では、棒状の中心電極と、前
記中心電極を内部に保持する絶縁体と、前記絶縁体を内
部に保持する主体金具と、前記中心電極の先端部との間
に気中の放電ギャップを形成する接地電極を有する層状
燃焼方式エンジン用スパークプラグにおいて、前記中心
電極は、先細り段差部を有するとともに、前記先細り段
差部の先端面に前記先細り段差部の先端面と同径で前記
中心電極の先端に至る小円柱部を備え、前記接地電極の
先端部が前記小円柱部の側面に対向し、前記中心電極の
円柱部と前記先細り段差部との境界には、周方向に丸み
が付与されていることを特徴とする。

【００１３】本発明の層状燃焼方式エンジン用スパーク
プラグにおいては、前記中心電極の円柱部と前記先細り
段差部との境界は、前記絶縁体の先端面よりも内側に位
置していることが望ましい。

【００１４】さらに、本発明の層状燃焼方式エンジン用
スパークプラグにおいては、前記丸みはＲが０．１ｍｍ
以上であることが望ましい。

【００１５】さらに、本発明の層状燃焼方式エンジン用
スパークプラグにおいては、前記中心電極と同軸で、中
心角が１１０°以下である円錐面に前記中心電極の前記
先端部が内接するとともに、前記絶縁体の先端外周が内
接していることが望ましい。

【００１６】さらには、本発明の層状燃焼方式エンジン
用スパークプラグにおいては、前記中心電極の前記先端
部は、前記接地電極の先端に対向する部位に耐火花消耗
性部材として貴金属材料が用いられていてもよい。

【００１７】加えて、本発明の層状燃焼方式エンジン用
スパークプラグにおいては、前記耐火花消耗性部材とし
ての前記貴金属材料は、Ｐｔ、Ｉｒ、Ｐｔ合金、Ｉｒ合
金あるいは、これらにＹ₂Ｏ₃を含ませた合金のうち少
なくとも一つからなることが望ましい。

【００１８】

【発明の作用および効果】本発明では、中心電極の円柱
部と先細り段差部との境界を絶縁体の先端面より外部に
位置させるとともに、この境界の周りには所定のＲを有
する丸みを付与したことから、この境界における等電界
曲線の分布状態が緩やかで比較的粗になり、この結果、
中心電極における段差部の境界から絶縁体の段座に至る
間の電位が、正規の放電ギャップ間の電位よりも常に高
くなるので、高電圧印加の点火時においても、正規の火
花放電を生じ、絶縁体の先端面から奥方へのフラッシュ
オーバーを効果的に抑制できるものである。また、中心
電極の先端部は、前記中心電極と同軸で、中心角が１１
０°以下である円錐面に中心電極の先端が内接するとと
もに、絶縁体の先端外周が内接するようにしている。

【００１９】このように構成した理由は、以下の利点を
有するからである。フラッシュオーバーの抑制のために
は放電電圧を低減させる必要があり、その一手法とし
て、中心電極の先端部と絶縁体の先端外周とに内接する
円錐面の中心角を１１０°以下にして絶縁体の先端外周
の径寸法を小さくすることが有効であることを見出し
た。この知見に基づいて構成することにより、高電圧を
印加して点火する際には絶縁体の外方における等電界曲
線が粗になり、もってフラッシュオーバーを効果的に抑
制できる。

【００２０】さらには、中心電極の先端部の接地電極の
先端に対向する部位に耐火花消耗性部材としてＰｔ、Ｉ
ｒ、Ｐｔ合金、Ｉｒ合金あるいは、これらにＹ₂Ｏ₃を
含ませた合金のうち少なくとも一つを設けたので、電極
の消耗を抑制でき長寿命化に寄与できる。

【００２１】

【発明の実施の形態】次に、本発明の層状燃焼方式エン
ジン用スパークプラグを、図１および図２に示す第１の
実施形態に基づき説明する。本実施形態の層状燃焼方式
エンジン用スパークプラグは平行電極型であり、自動車
の内燃機関用で各シリンダに取り付けられて使用され
る。層状燃焼方式エンジン用スパークプラグ１は、図１
に示すように点火コイルの２次コイルに電気的に接続し
先端が燃焼室（図示しない）内にある中心電極３と、中
心電極３を保持する絶縁体６と、シリンダに取り付けら
れて絶縁体６を内部に固持する主体金具８とからなる。

【００２２】鋼材よりなるハウジングである主体金具８
の先端面には、中心電極３の先端部と対向し放電ギャッ
プＧを形成する接地電極２が抵抗溶接等の接合手段を用
いて接合されている。そして主体金具８の外周には、内
燃機関の各シリンダヘッドに取り付けるための雄ねじ部
８２および締付け用レンチ等の工具を係合させるための
六角部８３が形成されている。

【００２３】中心電極３は、耐熱性、耐食性に優れたニ
ッケル合金よりなる電極母材内に熱伝導性に優れる導電
性金属よりなる芯材を封入し、冷間押出し成形により一
体形成される。中心電極３は、絶縁体６の軸孔６０内に
挿入される円柱部３０と、円柱部３０の後端部に接続し
円柱部３０よりも外径が大きく絶縁体６の軸孔６０内に
係止される鍔部３５とからなる。

【００２４】先端部３１は、円柱部３０に一体成形され
先端部に向かって、例えば略円錐台状に形成された先細
り段差部３３と、この段差部３３の先端面３９に接合し
先端面３９と同径の円板状の耐火花消耗性部材としての
貴金属チップ３４とからなる。なお、貴金属チップ３４
は、Ｐｔ、Ｉｒ、Ｐｔ合金、Ｉｒ合金、あるいは、これ
らにＹ₂Ｏ₃などの酸化物を含んだ合金のうち少なくと
も一つからなり、レーザ溶接、抵抗溶接等により先細り
段差部３３の先端面３９に接合している。また、貴金属
チップ３４の代りに耐火花消耗性を有する高クロムチッ
プ或いはクロムにセラミック粉末を分散したクロム合金
等を用いてもよい。これにより電極の消耗を抑制でき長
寿命化に寄与できるものである。

【００２５】端子電極４は、導電性金属（例えば軟鋼）
により一体成形される。端子電極４は、丸棒状の軸部４
０と、軸部４０の一端に形成され絶縁体６の後端部に当
接する軸部４０より径大の円環をなす鍔状の係止部４３
と、係止部４３に形成され２次コイルに接続する端子部
４４とからなる。軸部４０は、絶縁体６及び導電性ガラ
スシール材５２との密着を高めるため、先端側の外周に
ねじを形成した先端ねじ部４１を有する。

【００２６】中心電極３は、先端が燃焼室内に突出する
ように絶縁体６の軸孔６０内に設けられ、また、２次コ
イルに接続する端子電極４が軸孔６０内の中心電極３の
後端部に配されている。中心電極３と端子電極４との間
には、モノリシック抵抗体粉末５１が導電性ガラスシー
ル材５２に挟持されて軸孔６０内に封着されている。絶
縁体６は、主体金具８との間に滑石粉末７によって気密
状態に固定されている。絶縁体６は、酸化アルミニウム
（Ａｌ₂Ｏ₃：アルミナ）を主成分とするもので、焼結
助剤を添加して焼成してなるセラミックス焼結体であ
る。また、絶縁体６には先部部から後端部に至る軸方向
の軸孔６０が貫通している。

【００２７】この軸孔６０に中心電極３が挿入されると
ともに、段部６６に鍔部３５が当接し、軸孔６０内の中
心電極３の鍔部３５上に導電性ガラスシール材５２及び
モノリシック抵抗体粉末５１、さらに導電性ガラスシー
ル材５２が充填され、端子電極４が挿入されて加熱・圧
縮されて、これらが絶縁体６の軸孔６０内に一体に封着
される。

【００２８】そして、絶縁体６は、軸孔６０の後端部に
挿入された端子電極４の軸部４０を覆うコルゲーション
部６１と、軸孔６０に挿入された中心電極３を覆い燃焼
室内の混合気に晒される脚長部６２と、コルゲーション
部６１と脚長部６２との間に形成され主体金具８と係合
する径大の係合部６７とからなる。

【００２９】コルゲーション部６１の外周には、端子電
極４と主体金具８との間のフラッシュオーバーの発生電
圧を上げるための段が設けられている。そして、主体金
具８の内腔に設けた段部８４に絶縁体６の段座６８を
係止し、内腔とコルゲーション部６１との間の空所に滑
石粉末７を配して主体金具８の後端部８５を内方に加締
めて絶縁体６が固定される。

【００３０】そして、図２（ａ）に示すように、中心電
極３の円柱部３０と先細り段差部３３との境界３６は、
曲率半径が０．１ｍｍあるいは、それ以上となる周方向
に丸みＲを形成するとともに、この境界３６は絶縁体６
の先端面６３よりも、例えば０．５ｍｍだけ絶縁体６の
外側に位置する。また、中心電極３の先端部３７と接地
電極２の先端２１との間には所定の放電ギャップＧが形
成されている。この場合、境界３６としては、図２
（ｂ）に示すように、先細り段差部３３の外側面に沿う
延長面Ｌ１と円柱部３０の外側面に沿う延長面Ｌ２とが
交わって形成された円を基準面とし、この基準面と先端
部３１の外周面との交わるところを境界３６と見做す。
ここで、中心電極３における先細り段差部３３を略円錐
台状に形成したので、この先細り段差部３３に大きな容
積を確保でき、もって中心電極３の後端部への熱引き性
を向上でき、中心電極３の先端部が過度に加熱される不
具合を回避し得る。

【００３１】〔実施形態の作用および効果〕このよう
に、中心電極３の円柱部３０と先細り段差部３３との境
界３６に丸みＲを形成したので、図２（ｄ）に示す境界
が鋭角的である従来の場合の等電界曲線とは異なり、図
２（ｃ）に示すように境界３６における等電界曲線Ｅｑ
の分布が比較的ゆるやかな粗の状態となる。従って、境
界３６への電界の集中現象が緩和され、中心電極３にお
ける先細り段差部３３の境界３６から絶縁体６の段座６
８に至る間の電位が、正規の放電ギャップ間の電位より
も常に高くなる。この結果、図３のＲ−ＦＯ関係のグラ
フに示すように、境界３６への丸みＲの形成によりフラ
ッシュオーバー発生電圧が２ｋＶ以上向上でき、フラッ
シュオーバーを効果的に抑制できる。図３によれば、境
界３６に丸みＲを有する層状燃焼方式エンジン用スパー
クプラグＡ、Ｃが従来のスパークプラグＢに比べてフラ
ッシュオーバー抑制上、有利であることが分かる。

【００３２】〔失火試験〕また、図４には失火試験を行
った結果を示す。本試験では、１８００ｃｃ直列４気筒
ＤＯＨＣ方式を採用し燃焼室内に直接燃料を噴射するエ
ンジンであり、層状燃焼方式をとる４０ｋｍ／ｈ相当で
走行した場合の失火状態を調べたものである。Ａ１及び
Ａ２は図８に示す従来のスパークプラグを当該エンジン
に装着した場合の試験結果を表し、Ｂ１及びＢ２は本実
施形態のスパークプラグを当該エンジンに装着した場合
の試験結果を表す。この棒グラフの白抜き部分は中心電
極と接地電極間の絶縁抵抗値が５０ＭΩ以上（１０００
ボルトメガー）を示す試験開始からの経過時間を表し、
黒色部分は失火を生じる割合が１時間あたり５回以上１
０回以下の経過時間を表したものである。本実施形態の
層状燃焼方式エンジン用スパークプラグでは、失火を生
じ難いことが分かる。

【００３３】〔実施形態の効果〕本実施形態の層状燃焼
方式エンジン用スパークプラグは、失火を生じ難く、高
い放電電圧までフラッシュオーバーを発生することなく
使用できる。即ち、失火を生じた場合にはスパークプラ
グ周りに形成された濃混合気は充分に燃焼せずにスパー
クプラグ周りに堆積し、カーボン汚損を生ずる。このカ
ーボン汚損が進行すると更にフラッシュオーバーを発生
しやすくなり、失火の回数が増加するようになる。特に
接地電極、中心電極の消耗が進行し、正規の放電ギャッ
プで放電するために必要な放電電圧が高くなってくると
よりフラッシュオーバーを起こし易くなる。このため、
高放電電圧が要求される電極の消耗時や高い燃焼室内圧
力のエンジンでも使用できる。

【００３４】〔第２実施形態〕次に、本発明の層状燃焼
方式エンジン用スパークプラグを、図５および図６に示
す第２実施形態に基づき説明する。本実施形態の層状燃
焼方式エンジン用スパークプラグは、第１実施形態のス
パークプラグ１と次の点で相違する。

【００３５】中心電極３の円柱部３０と先細り段差部３
３との境界３６を絶縁体６の先端面６３よりも外部に位
置させながらも、この境界３６に丸みＲを形成したもの
において、中心電極３の先端３７と絶縁体６の先端外周
６４とに内接する円錐面を形成し、図５（ａ）に示すよ
うに、この円錐面の中心角θが１１０°または望ましく
は１００°以下をなすように形成されている。この場
合、便宜上、中心角θは円錐面を中心軸を通る平面で切
断して得られた三角形断面の頂角を採用している。この
中心角θの放電電圧に対する特性を図６に示す。このよ
うに、本実施形態では、中心電極３の先端３７と絶縁体
６の先端外周６４とにそれぞれ内接する円錐面の中心角
θが１１０°以下であるように構成した。これにより絶
縁体６の先端外周６４の径寸法が比較的小で済み、図５
（ｂ）に示すように、等電界曲線Ｅｑの分布が外方に引
き延ばされる事が防がれ、もって比較的低い放電電圧で
正規の火花放電を発生し得るようになるため、絶縁体６
の先端面６３から奥方へのフラッシュオーバーを効果的
に抑制できる。

【００３６】〔実施形態の効果〕本実施形態の層状燃焼
方式エンジン用スパークプラグは、高い放電電圧までフ
ラッシュオーバーを発生することなく使用できる。この
ため、高放電電圧が要求される高い燃焼室内圧力まで使
用できる。

【００３７】〔第３実施形態〕次に、本発明の層状燃焼
方式エンジン用スパークプラグを、図７に示す第３実施
形態に基づき説明する。本実施形態のスパークプラグ１
０は、多極型の層状燃焼方式エンジン用スパークプラグ
であり第１実施形態の層状燃焼方式エンジン用スパーク
プラグ１と次の点で相違する。

【００３８】中心電極３の先端部３１は、略円錐台状に
形成された先細り段差部３３と、この段差部３３の先端
径と同径の小円柱部３８とを先端側に形成し、主体金具
８には複数の接地電極１４を設け、小円柱部３８の先端
側面に接地電極１４の先端部１５を対向させる。また小
円柱部３８は、接地電極１４の先端部１５が対向する位
置に、第１実施形態と同様な白金等の薄い円板状の貴金
属チップ３４を公知のレーザ溶接、塑性加工により設け
ている。そして、先細り段差部３３の境界３６を、同様
に絶縁体６の先端面６３より外部に位置させている。こ
の場合、図５（ａ）に示す円錐面の中心角θの幾何学的
関係となるように構成してもよい。また、この実施例と
は逆に境界３６を絶縁体６の先端面６３から奥方に引込
むように絶縁体６の内側に位置させてもよい。この事情
は、上記の第１および第２実施形態についても同様に適
用できるものである。

【００３９】〔実施形態の効果〕本実施形態の層状燃焼
方式エンジン用スパークプラグは、第１実施形態の効果
に加えて、特にディストリビュータレスイグナイタ（Ｄ
ＬＩ）式点火装置を備えた内燃機関に用いられ、燃焼室
において高い放電電圧までフラッシュオーバーを発生す
ることなく使用できる。このため、高放電電圧が要求さ
れる高い燃焼室内圧力まで使用できる。

【００４０】

【発明の効果】高い放電電圧までフラッシュオーバーが
発生しないことから、混合気中に中心電極と接地電極と
の間の正規の放電ギャップで火花放電を発生できるた
め、内燃機関の着火性を高めることができる。特に、層
状燃焼方式を採用する筒内噴射エンジンにおいて有効で
ある。しかも、境界３６に丸みＲを形成するだけで済む
ので、簡素な構造で部材点数の増加を招かずコスト的に
有利である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態の層状燃焼方式エンジン
用スパークプラグの正面半断面図である。

【図２】（ａ）は図１の層状燃焼方式エンジン用スパー
クプラグの発火部の要部拡大断面図で、（ｂ）は境界の
基準面を定義するための概略図であり、（ｃ）は等電界
曲線を示すための概略図で、（ｄ）は従来における電界
曲線分布を示すための概略図である。

【図３】本発明に係る層状燃焼方式エンジン用スパーク
プラグＡ、Ｃをフラッシュオーバー発生電圧との関係で
比較したグラフである。

【図４】失火試験の結果を表すグラフである。

【図５】（ａ）は本発明の第２実施形態の絶縁体の先端
部の拡大正面図で、（ｂ）は等電界曲線を示すための概
略図である。

【図６】放電電圧と円錐面の中心角θの関係を示すグラ
フである。

【図７】本発明の第３実施形態の層状燃焼方式エンジン
用スパークプラグの発火部の要部拡大断面図である。

【図８】従来のスパークプラグの中心電極および絶縁体
の先端部の拡大断面図である。

【符号の説明】

１、１０層状燃焼方式エンジン用スパークプラグ２接地電極３中心電極６絶縁体８主体金具３０円柱部３１先端部３３段差部３４貴金属チップ（耐火花消耗性部材）３６境界３７中心電極の先端３８小円柱部３９段差部の先端面６２脚長部（絶縁体）６３脚長部の先端面６４脚長部の先端外周Ｇ放電ギャップＲ丸み

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】棒状の中心電極と、前記中心電極を内部に保持する絶縁体と、前記絶縁体を内部に保持する主体金具と、前記中心電極の先端部との間に気中の放電ギャップを形
成する接地電極を有し、圧縮行程において燃料を噴射す
ることによってスパークプラグの発火部近傍に濃混合気
を形成しスパークプラグによる燃焼をさせる行程を含む
（以下「層状燃焼方式」という）エンジン用スパークプ
ラグにおいて、前記中心電極は、先細り段差部を有するとともに、該段
差部の先端面に耐火花消耗性部材を備え、前記中心電極の円柱部と前記先細り段差部との境界に
は、周方向に丸みが付与されていることを特徴とする層
状燃焼方式エンジン用スパークプラグ。
【請求項２】請求項１に記載の層状燃焼方式エンジン
用スパークプラグにおいて、前記中心電極の円柱部と前
記先細り段差部との境界は、前記絶縁体の先端面よりも
内側に位置していることを特徴とする層状燃焼方式エン
ジン用スパークプラグ。
【請求項３】請求項１または請求項２に記載の層状燃
焼方式エンジン用スパークプラグにおいて、前記丸みは
Ｒが０．１ｍｍ以上であることを特徴とする層状燃焼方
式エンジン用スパークプラグ。
【請求項４】請求項１乃至請求項３のいずれかに記載
の層状燃焼方式エンジン用スパークプラグにおいて、前
記中心電極と同軸で、中心角が１１０°以下である円錐
面に前記中心電極の前記先端部が内接するとともに、前
記絶縁体の先端外周が内接していることを特徴とする層
状燃焼方式エンジン用スパークプラグ。
【請求項５】棒状の中心電極と、前記中心電極を内部に保持する絶縁体と、前記絶縁体を内部に保持する主体金具と、前記中心電極の先端部との間に気中の放電ギャップを形
成する接地電極を有する層状燃焼方式エンジン用スパー
クプラグにおいて、前記中心電極は、先細り段差部を有するとともに、前記
段差部の先端側に前記先細り段差部の先端面と同径で前
記中心電極の先端に至る小円柱部を備え、前記接地電極の先端部が前記小円柱部の側面に対向し、前記中心電極の円柱部と前記先細り段差部との境界に
は、周方向に丸みが付与されていることを特徴とする層
状燃焼方式エンジン用スパークプラグ。
【請求項６】請求項５に記載の層状燃焼方式エンジン
用スパークプラグにおいて、前記中心電極の円柱部と前
記先細り段差部との境界は、前記絶縁体の先端面よりも
内側に位置していることを特徴とする層状燃焼方式エン
ジン用スパークプラグ。
【請求項７】請求項５または請求項６に記載の層状燃
焼方式エンジン用スパークプラグにおいて、前記丸みは
Ｒが０．１ｍｍ以上であることを特徴とする層状燃焼方
式エンジン用スパークプラグ。
【請求項８】請求項５乃至請求項７のいずれかに記載
の層状燃焼方式エンジン用スパークプラグにおいて、前
記中心電極と同軸で、中心角が１１０°以下である円錐
面に前記中心電極の前記先端部が内接するとともに、前
記絶縁体の先端外周が内接していることを特徴とする層
状燃焼方式エンジン用スパークプラグ。
【請求項９】請求項１乃至請求項８のいずれかに記載
の層状燃焼方式エンジン用スパークプラグにおいて、前記中心電極の前記先端部は、前記接地電極の先端部に
対向する部位に耐火花消耗性部材として貴金属材料が用
いられていることを特徴とする層状燃焼方式エンジン用
スパークプラグ。
【請求項１０】請求項９に記載の層状燃焼方式エンジ
ン用スパークプラグにおいて、前記耐火花消耗性部材としての前記貴金属材料は、Ｐ
ｔ、Ｉｒ、Ｐｔ合金、Ｉｒ合金あるいは、これらにＹ₂
Ｏ₃を含ませた合金のうち少なくとも一つからなること
を特徴とする層状燃焼方式エンジン用スパークプラグ。