JP4696220B2 - 点火プラグ - Google Patents

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Description

本発明は、例えば筒内直噴式のエンジンに用いられる点火プラグに関する。
例えば、自動車のガソリンエンジンに用いられる点火プラグでは、碍子に付着するカーボンなどの導電成分の堆積を防ぐための構造として、平行接地電極と、複数のサブ接地電極を備える構造が提案されている。
平行接地電極と各サブ接地電極とは、中心電極の回りに配置されている。各サブ接地電極は、中心電極の側周面と対向している。この種の点火プラグでは、中心電極とサブ接地電極との間で火花放電を行うことによって、付着したカーボンなどの導電成分を焼き切っている
平行接地電極の先端とサブ接地電極の先端とは、同一平面内には、位置していない。(例えば、特許文献1参照。)。
また、点火プラグの寿命を延ばすために、接地電極を複数備える構造が採用されている。点火プラグが複数の接地電極を備えることによって、1つの接地電極が火花放電によって消耗してくると、別の接地電極で火花放電が行われるようになる。このため、点火プラグの寿命が延びる。
これら各接地電極の先端は、中心電極の側面と対向している。それゆえ、各接地電極と中心電極との間で行われる火花放電は、点火プラグの軸線を垂直に横切る平面内で行われる。また、各接地電極の先端は、略同一平面内に位置している(例えば、特許文献2参照。)。
特開2001―110546号公報 特開平4―196080号公報
一方、インジェクタを用いて燃焼室内に燃料を直接噴霧する筒内直噴式のエンジンにおいて、インジェクタが点火プラグに向かって燃料を直接的に噴霧するスプレーガイド式のエンジンでは、噴射された燃料が気化して、点火プラグ近傍に最適な混合気を形成し、この混合気に点火して燃焼させる構造であるが、噴霧された燃料は、接地電極にぶつかることによって拡散して空気との混合/気化が促進されて中心電極の周辺に滞留する。このように滞留した燃料に点火プラグによって点火される。
燃料を安定して燃焼させるための点火時期は、上記した燃料の滞留状態によって変化する。つまり、燃料の滞留状態によっては、燃料を安定して燃焼させるための点火時期の自由度が比較的大きくなったり、短くなったりする。燃料の滞留状態は、インジェクタに対する接地電極の姿勢によって変化する。
しかし、接地電極の姿勢を制御することは、難しい。この点について、具体的に説明する。点火プラグには、ねじ部が形成されている。このねじ部がシリンダヘッドに螺合することによって、点火プラグは、エンジン本体に固定される。
それゆえ、接地電極の姿勢は、点火プラグとエンジン本体との螺合状態によって変化するので、インジェクタに対する接地電極の姿勢を制御することは、難しい。
さらに、多気筒エンジンでは、インジェクタに対する接地電極の姿勢が、各気筒によって異なることが考えられる。
インジェクタに対する接地電極の姿勢が、各気筒によって異なる場合は、各燃焼室によって、点火時期の自由度が異なることになる。
このような場合、採用される点火タイミングは、各燃焼室における安定して燃料が燃焼する点火時期の自由度のうちの共通期間になる。
それゆえ、多気筒エンジンでは、燃料を安定して燃焼するための点火時期の自由度が小さくなる傾向にあるので、燃料を安定して燃焼させることが難しくなると考えられる。
このため、接地電極の姿勢によって燃料の滞留状態が変わることを抑制するには接地電極を複数設けることが考えられる。
特許文献1に開示されている点火プラグでは、平行接地電極の先端とサブ接地電極の先端は、同一平面上に位置していない。つまり、噴射された燃料が平行接地電極に当たった場合の燃料拡散の状態と、噴射された燃料がサブ接地電極に当たった場合の燃料の拡散の状態とは、異なることが考えられる。
それゆえ、特許文献1に開示されている点火プラグでは、点火プラグの姿勢によって、燃料の拡散の状態が異なることが考えられる。
また、特許文献2で開示されている点火プラグでは、各接地電極の先端は同一平面上に位置しているが、これら接地電極と中心電極との間で行われる火花放電は、中心電極の軸線を横切る方向で行われる。それゆえ、中心電極は、各接地電極と同一平面上に位置することとなり、接地電極に噴霧がぶつかる場合、必然的に中心電極にも噴霧がぶつかってしまう。このような場合、絶縁抵抗が低下して、火花放電が行いにくくなったり、点火プラグがかぶったりすることが考えられるので、好ましくない。
したがって、本発明の目的は、燃料を安定して燃焼させることができる点火プラグを提供することにある。
本発明の点火プラグは、プラグ本体と、中心電極と、接地電極と、噴霧制御側柱と、を備える。前記中心電極は、前記プラグ本体に設けられる。前記中心電極は、前記プラグ本体の軸線上に配置される。前記接地電極は、前記プラグ本体において前記中心電極の回りに設けられる。前記接地電極は、前記プラグ本体の軸線方向に前記中心電極の先端と対向する対向部を有する。前記噴霧制御側柱は、前記プラグ本体において前記中心電極の回りに少なくとも1つ設けられる。前記軸線方向の前記接地電極の先端と、前記軸線方向の前記噴霧制御側柱の先端とを、前記軸線を垂直に横切る略同一平面上に位置させる。前記中心電極の周方向に沿う前記接地電極の幅と、前記中心電極の周方向に沿う前記噴霧制御側柱の幅とは、略同じ幅とする。前記接地電極と前記噴霧制御側柱とを、前記中心電極回りに、略等間隔に配置する。
このような構成によれば、噴射された燃料は、接地電極また噴霧制御側柱のいずれかに当たることによって拡散して、中心電極の周囲に滞留するようになる。
それゆえ、点火プラグは、例えば筒内直噴式であってインジェクタから噴射された燃料に直接点火するスプレーガイド式のエンジンにも効果的に用いられるようになる。
さらに、接地電極と噴霧制御側柱とが等間隔離間して配置されるので、燃料の拡散状態は、燃料の点火プラグへ向かう方向に対する点火プラグの姿勢、例えば筒内直噴式であってインジェクタから噴射された燃料に直接点火するスプレーガイド式のエンジンの場合ではインジェクタに対する点火プラグの姿勢、によって大きく変化することが抑制される。
したがって、点火プラグの姿勢の変化によって生じる燃料の拡散のばらつきが抑制される。
本発明の好ましい形態では、点火プラグは、前記噴霧制御側柱を3つ備える。
本発明の点火プラグの姿勢の変化によって生じる燃料の拡散のばらつきが抑制されるので、燃料が安定して燃焼されるようになる。
本発明の第1の実施形態に係る点火プラグを、図1から図9を用いて説明する。本実施形態の点火プラグ10は、例えば、自動車のレシプロ式ガソリンエンジン20に用いられる。エンジン20は、多気筒エンジンである。また、エンジン20は、筒内直噴式エンジンである。
図1は、エンジン20の1つの燃焼室30の近傍の断面図を示している。図1に示すように、エンジン20は、シリンダブロック21と、シリンダヘッド22と、などを備えている。
シリンダブロック21には、複数のシリンダ23が形成されている。シリンダ23には、ピストン24が収容されている。ピストン24は、図示しないコンロッドを介してクランクシャフトに連結されている。ピストン24は、燃焼ガスの圧力エネルギを受けてシリンダ23内を往復動する。クランクシャフトは、ピストン24の往復動によって、回転する。
シリンダブロック21において、シリンダ23の近傍には、ウォータージャケット25が形成されている。ウォータージャケット25内には、冷却水が流動している。
シリンダヘッド22は、シリンダブロック21の上端面21aに固定されている。シリンダヘッド22において、シリンダ23と重なる部位には、燃焼凹部22bが形成されている。燃焼凹部22bは、例えば屋根型である。燃焼凹部22bは、上端面21aに開口するシリンダ23の開口を覆っている。
燃焼凹部22bと、ピストン24の外面と、シリンダ23の内面とによって規定される空間は、燃焼室30となっている。
シリンダヘッド22には、吸気通路26と排気通路27とが形成されている。吸気通路26の一端は、燃焼凹部22b内に開口している。吸気通路26において燃焼凹部22b側の開口端は、吸気口26aになっている。吸気口26aには、吸気バルブ28が設けられている。
排気通路27の一端は、燃焼凹部22b内に開口している。排気通路27において燃焼凹部22b側の開口端は、排気口27aになっている。排気口27aには、排気バルブ29が設けられている。
また、シリンダヘッド22には、燃料Fを噴霧するインジェクタ40と、点火プラグ10とが設けられている。エンジン20は、インジェクタ40から噴霧された燃料Fに点火プラグ10が直接点火するスプレーガイド式である。
インジェクタ40は、噴射口41を有している。インジェクタ40は、噴射口41が燃焼凹部22bの頂点部分22cの近傍から燃焼凹部22b内に臨むように、シリンダヘッド22の頂点部分22cの近傍に取り付けられている。
点火プラグ10は、燃焼凹部22bの頂点部分22cの近傍において、インジェクタ40を避けた位置に取り付けられている。本実施形態では、点火プラグ10は、インジェクタ40に対して、図中右にずれた位置に配置されている。
点火プラグ10は、プラグ本体51と、中心電極52(図中点線で示されている。)と、接地電極53と、複数の噴霧制御側柱と、を備えている。
プラグ本体51は、シリンダヘッド22などの、点火プラグ10が固定される相手部材に支持される部分の概念である。プラグ本体51は、略円柱状である。
プラグ本体51は、例えば、プラグハウジング54や図示しない中軸や碍子55(点線で示す)などを備えている。中軸は、プラグハウジング54内に収容される。中軸は、プラグハウジング54内に電流を導く。碍子55は、プラグハウジング54内に収容されるとともに、一部がプラグハウジング54の一端から出ている。
プラグ本体51の先端側には、ねじ部56が形成されている。ねじ部56には、雄ねじが形成されている。シリンダヘッド22には、ねじ部56と螺合するように、雌ねじ部が形成されている。雌ねじ部22dには、雌ねじが形成されている。
図2は、プラグ本体51の先端側を示す斜視図である。中心電極52は、プラグ本体51内に収容されている。図1に示すように、中心電極52は、碍子55によって囲まれている。図1と図2とに点線で示すように、中心電極52の先端部52aは、プラグ本体51から出ている。中心電極52の中心は、プラグ本体51の軸線C上に配置されている。
接地電極53は、プラグ本体51の先端に設けられている。接地電極53は、中心電極52の周囲に設置されており、プラグ本体51の軸線Cに沿って、延びている。
図3は、点火プラグ10の先端部10aを一部切り欠いて示している。図3に示すように、接地電極53の先端部53aは、プラグ本体51の軸線方向Aに中心電極52と向かい合うように、プラグ本体51の内側に向かって折れ曲がっている。接地電極53の先端部53aは、本発明で言う、対向部である。接地電極53の先端部53aと中心電極52との間で、火花放電が行われる。
図2に示すように、本実施形態では、複数の噴霧制御側柱の一例として、第1の噴霧制御側柱61と第2の噴霧制御側柱62と第3の噴霧制御側柱63とを備えている。
第1の噴霧制御側柱61は、接地電極53と図中時計回り方向O1に隣り合う。第2の噴霧制御側柱62は、接地電極53と図中反時計周り方向O2に隣り合う。第3の噴霧制御側柱63は、第1の噴霧制御側柱61と第2の噴霧制御側柱62との間であって接地電極53の反対側に配置されている。
接地電極53と第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63とは、中心電極52の周方向に、互いに等間隔離間して配置されている。つまり、接地電極53と第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63とは、中心電極52まわりに90度の間隔で離間して配置されている。
第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の形状は、同じであってよいので、第3の噴霧制御側柱63を代表して説明する。図3に示すように、第3の噴霧制御側柱63は、プラグ本体51の軸線Cに沿って延びている。第3の噴霧制御側柱63の先端部60は、プラグ本体51の内側に向かって折れ曲がっている。第3の噴霧制御側柱63の先端部60は、接地電極53の先端部53aに接触しないように考慮されている。
第1,2の噴霧制御側柱61,62の先端部60も、第3の噴霧制御側柱63の先端部60と同様に折れ曲がっている。
図2に示すように、中心電極52の周方向に沿う第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の幅W1と、中心電極52の周方向に沿う接地電極53の幅W2とは、略同じである。また、図3に示すように、プラグ本体51の軸線Cに沿う接地電極53の長さL2と、プラグ本体51の軸線Cに沿う第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の長さL1とは、略同じである。
それゆえ、接地電極53の先端53bと、第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の先端60aとは、プラグ本体51の軸線Cを垂直に横切る第1の仮想平面71内に略位置する。
つぎに、点火プラグ10の姿勢について、具体的に説明する。図4は、シリンダ23側からインジェクタ40と点火プラグ10とを見た斜視図である。なお、図4中では、吸気バルブ28や排気バルブ29などの部品は、省略されている。
図4に示すように、第2の仮想平面72と第3の仮想平面73とを設定する。第2の仮想平面72は、インジェクタ40の噴射口41の中心と軸線Cとを通る。第3の仮想平面73は、プラグ本体51の軸線Cを通って第2の仮想平面72と垂直な面である。
第2の仮想平面72と第3の仮想平面73とによって区画される第1の仮想領域81と第2の仮想領域82と第3の仮想領域83と第4の仮想領域84とを設定する。
第1の仮想領域81は、図中、左上の領域である。第2の仮想領域82は、図中、左下の領域である。第3の仮想領域83は、図中、右上の領域である。第4の仮想領域84は、図中、右下の領域である。
点火プラグ10は、ねじ部56が雌ねじ部22dに螺合することによって、シリンダヘッド22に固定されている。
それゆえ、インジェクタ40に対する接地電極53と各噴霧制御側柱60,61,62,63との姿勢は、点火プラグ10の取り付け具合、つまりシリンダヘッド22に対する点火プラグ10の回転具合によって変化する。
インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢には、以下に説明する第1の姿勢と、第2の姿勢とがある。
第1の姿勢について説明する。ここで、第1から第4の仮想線91,92,93,94を設定する。
第1の仮想線91は、中心電極52の周方向に沿う接地電極53の幅の中心から、第1の仮想平面71と軸線Cとの交点Pに向かう線である。第2の仮想線92は、中心電極52の周方向に沿う第1の噴霧制御側柱61の幅の中心から、交点Pに向かう線である。第3の仮想線93は、中心電極52の周方向に沿う第2の噴霧制御側柱62の幅の中心から交点Pに向かう線である。第4の仮想線94は、中心電極52の周方向に沿う第3の噴霧制御側柱63の幅の中心から交点Pに向かう線である。
それゆえ、第1の仮想線91と第4の仮想線94とは、同一直線上にある。第2の仮想線92と第3の仮想線93とは、同一直線上にある。
第1の姿勢とは、第1から第4の仮想線91,92,93,94が、第2,3の仮想平面71,72上にある状態である。
それゆえ、第1の姿勢の一例としては、図4に示すように、第1の仮想線91と第4の仮想線94とが、第2の仮想平面72と重なり、第2の仮想線92と第3の仮想線93とが第3の仮想平面73と重なる。
または、図示していないが、第1の姿勢としては、点火プラグ10が、図4の状態から軸線C回りに90度ずつ回転した状態がある。その一例として、第2の仮想線92と第3の仮想線93とが第2の仮想平面72上に位置し、第1の仮想線91と第4の仮想線94とが第3の仮想平面73上に位置する場合などがある。
図4は、上記に説明された第1の姿勢のうち、接地電極53に対して第3の噴霧制御側柱63がインジェクタ40側に位置しており、かつ第1,4の仮想線91,94が第2の仮想平面72上に位置している状態である。
第2の姿勢とは、第1から第4の仮想線91,92,93,94が、第1から第4の仮想領域81,82,83,84内に1つずつ配置される状態である。
図5は、シリンダ23側からインジェクタ40と点火プラグ10とを見た斜視図であって、第2の姿勢の一例を示している。図5では、吸気バルブ28や排気バルブ29などの部品は、省略されている。
図5では、第1の仮想線91が第3の仮想領域83内に位置し、第2の仮想線92が第4の仮想領域84内に位置し、第3の仮想線93が第1の仮想領域81内に位置し、第4の仮想線94が第2の仮想領域82内に位置している。
第2の姿勢の他の例としては、第1の仮想線91が第1の仮想領域81内に位置し、第3の仮想線93が第2の仮想領域82内に位置し、第4の仮想線94が第4の仮想領域84内に位置し、第2の仮想線92が第3の仮想領域83内に位置するような状態である。
図5に示された第2の姿勢は、第2の仮想平面72と第3の仮想線93とのなす角度αは、略45度である。第2の仮想平面72と第4の仮想線94とのなす角度βは、略45度である。第2の仮想平面72と第1の仮想線91とのなす角度θは、略45度である。第2の仮想平面72と第2の仮想線92とのなす角度γは、略45度である。
なお、第1から第4の仮想線91,92,93,94において、隣り合うどうしは、互いに直交する。それゆえ、第2の姿勢では、第1,2の仮想領域81,82内において、第1から第4の仮想線91,92,93,94のうちいずれか1つと第2の仮想平面72とのなす角度は、45度以内となる。
例えば、図5において、第3の仮想線93と第2の仮想平面72とのなす角度αが例えば50度となると、第4の仮想線94と第2の仮想平面72とのなす角度βは、40度となる。同様に、第3の仮想線93と第2の仮想平面72とのなす角度αが例えば80度となる場合は、第4の仮想線94と第2の仮想平面72とのなす角度βは、10度となる。
このように、第2の姿勢では、第1,2の仮想領域81,82内において、第1から第4の仮想線91,92,93,94のうちいずれか1つと第2の仮想平面72とのなす角度は、45度以内となる。
図5に示すように、第2の姿勢において各仮想線91,92,93,94と第2の仮想平面72とのなす角度が45度である状態を、第3の姿勢とする。
第2の姿勢は、第1から第4の仮想線91,92,93,94が、それぞれ1つずつ、第1から第4の仮想領域81,82,83,84のいずれかに配置される状態である。
それゆえ、接地電極53の一部または第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63のうちいずれかの一部は、中心電極52よりもインジェクタ40側に位置する。つまり、第1,2の仮想領域81,82内に接地電極53または噴霧制御側柱61,62,63いずれかの一部が位置することによって、これら一部は、点火プラグ10よりもインジェクタ40側に位置することになる。
つぎに、点火プラグ10の動作を説明する。図6は、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢が図4に示された第1の姿勢であるときに、インジェクタ40から燃料Fが噴霧された状態を示す平面図である。図6は、点火プラグ10の先端を軸線C方向から見ている。
図4と図6とに示すように、インジェクタ40は、点火プラグ10に向かって燃料Fを噴射する。図6に示すように、インジェクタ40から噴射された燃料Fのうち燃料F1は、主に第1,2の噴霧制御側柱61,62に当たることによって拡散して空気との混合が促進された後、運動エネルギを失って中心電極52の周辺に滞留する。
なお、図中、Xで示される範囲は、燃料F1と空気とが混合されて滞留している範囲を示している。
なお、インジェクタ40の噴射口41は、噴射された燃料Fが主に接地電極53の先端部53aまたは第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の先端部60に当たるように設定されている。それゆえ、燃料F1が滞留する範囲Xは、図3に示すように、軸線C方向に中心電極52の先端と接地電極53の先端部53aとの間に位置するようになる。
そして、中心電極52と接地電極53の先端部53aとの間で火花放電が飛ばされることによって、燃料Fと空気との混合気は、着火される。
図7は、燃料Fの安定燃焼領域を示すグラフである。安定燃焼領域とは、燃料Fが安定して燃焼するための点火時期の範囲である。つまり、インジェクタ40の噴射時期に対する点火プラグ10の点火時期が、安定燃焼領域によって囲まれる範囲内であれば、燃料Fを安定して燃焼する。
上記に示したように、燃料Fは、第2,3の噴霧制御側柱62,63当たることによって空気との混合が促進されて中心電極52の周囲に滞留するので、第1の姿勢では、燃料Fが噴霧されてから点火するまでの期間を比較的広くすることができる。したがって、図7に示すように、第1の姿勢の安定燃焼領域101は、比較的広くなる。
図8は、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢が図5に示された第3の姿勢であるときに、インジェクタ40から燃料Fが噴霧された状態を示す平面図である。図8は、点火プラグ10の先端を軸線C方向から見ている。
図8に示すように、図5に示された第3の姿勢では、インジェクタ40から噴射された燃料Fのうち燃料F1は、主に、第2,3の噴霧制御側柱62,63に当たることによって、拡散して空気との混合が促進される。そして、噴射された燃料Fは、第2,3の噴霧制御側柱62,63に当たることによって運動エネルギを失って、中心電極52の周囲に滞留する。
それゆえ、第3の姿勢では、燃料Fが中心電極52の周囲に滞留するので、燃料Fが噴射されてから点火するまでの期間を比較的広くすることができる。それゆえ、図7に示すように、第3の姿勢の安定燃焼領域103は、比較的広くなる。この場合、第3の姿勢では、燃料Fを安定して燃焼するための点火時期は、第1の姿勢の安定燃焼領域101よりも広い。
図9は、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢が、第2の姿勢であってかつ第3の仮想線93と第2の仮想平面72とがなす角度αが例えば50度である場合において、インジェクタ40から燃料Fが噴射された状態を、点火プラグ10の軸線C方向から見た平面図である。
図9に示すように、第3の姿勢を除く第2の姿勢であっても、インジェクタ40から噴射された燃料Fの内燃料F1は、第2,3の噴霧制御側柱62,63に当たることによって、拡散されて空気との混合が促進される。そして、運動エネルギを失った燃料Fは、中心電極52の周囲に滞留する。
それゆえ、図7に示すように、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢が第3の姿勢を除く第2の姿勢である場合の安定燃焼領域102の境界は、第1の姿勢の安定燃焼領域101の境界と第3の姿勢の安定燃焼領域103の境界との間に位置する。それゆえ、この状態の安定燃焼領域102は、比較的広い。
上記のように、本実施形態では、第1の姿勢の安定燃焼領域101が最も狭くなる。それゆえ、インジェクタ40に対する各点火プラグ10の姿勢がそれぞれ異なる場合、例えば1つの点火プラグ10が第1の姿勢であって、他の1つの点火プラグ10の姿勢が第3の姿勢であって、さらに他の1つの点火プラグ10の姿勢が第3の姿勢を除く第2の姿勢である場合であっても、第1の姿勢の安定燃焼領域101は、各点火プラグ10に共通な安定燃焼領域となる。
一方、各点火プラグ10の姿勢がどのような姿勢であっても、噴霧された燃料Fは、接地電極53または第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63に当たることによって、拡散して中心電極52の周囲に滞留するので、噴霧制御側柱が存在しない1接地電極プラグに比べ非常に大きい安定燃焼領域を備え、第1から第3の姿勢の安定燃焼領域101,102,103は、互いにそれほど大きく異なることはない。
つまり、第1から第3の状態では、多少の違いはあるものの安定燃焼領域に多きな違いはないので、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢がどのような状態であっても、安定燃焼領域、すなわち燃焼条件は、大きく異ならない。
このように構成される点火プラグ10は、第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63を備えている。接地電極53と第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63とは、互いに等間隔離間して配置されている。接地電極53と第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の先端53b,60aは、プラグ本体51の軸線Cを横切る第1の仮想平面71内に位置する。
それゆえ、インジェクタ40から噴射された燃料Fは、中心電極52に直接当たることなく接地電極53と第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63とのいずれかに当たることによって、拡散して空気との混合が促進される。そして、燃料Fは、運動エネルギを失って中心電極52の周囲に滞留する。
つまり、点火プラグ10が噴霧制御側柱を備えていない場合、噴射された燃料Fは、接地電極53に当たることによって拡散するが、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢によっては、接地電極53に当たって拡散された燃料Fが中心電極52の周囲に滞留しないことがありえる。例え燃料Fが中心電極52の周囲に滞留したとしても滞留する量が少なく安定燃焼領域が非常に小さくなる。
しかし、上記のような場合であっても、点火プラグ10が第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63を備えることによって、燃料Fは、第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63に当たって拡散されて、中心電極52の周囲に滞留するようになる。
それゆえ、燃料Fの着火性が向上するとともに、安定燃焼領域が広くなる。さらに、燃料の拡散状態や安定燃焼領域は、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢の変化に関わらず大きく変化しなくなるので、燃料Fは、安定して燃焼される。
また、点火プラグ10が第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63を備えている。そして、接地電極53と第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63とは、互いに90度離間して中心電極52の周方向に配置されている。
それゆえ、インジェクタ40に対する点火プラグ10の姿勢は、第1の姿勢または第2の姿勢のどちらかになり、点火プラグ10の姿勢による燃焼条件の変化に大きな違いが生じなくなる。そして、各点火プラグ10の共通する安定燃焼領域は、例えば第1の姿勢の安定燃焼領域101と同じになる。第1の姿勢の安定燃焼領域101は、広い。したがって、多気筒を有するエンジン20であっても、共通する安定燃焼領域を広くすることができるので、燃料Fは、安定して燃焼される。
また、接地電極53の先端部53aは、軸線C方向に中心電極52と対向するように、プラグ本体51の内側に折り曲がっている。そして、中心電極52は、接地電極53の先端部53aとので軸線C方向に火花放電を行う。
それゆえ、中心電極52の先端と接地電極53の先端部53aとの間に燃料Fが滞留すればよいので、点火プラグ10の軸線C方向の取り付け誤差は、中心電極52の先端と接地電極53の先端部53aとの間に規定される空間によって吸収される。さらに、接地電極53の先端と噴霧制御側柱61,62,63の先端とが隔離しているため、中心電極52の先端と接地電極53の先端部53aとの間に規定される空間の調整が容易に行える。また、接地電極53の先端である火花放電面積が大きくなると冷却損失が大となり、着火性が悪化するが、接地電極53の先端と噴霧制御側柱61,62,63の先端とが隔離しているため、火花放電面積が大きくなることなく着火性の悪化を招くことがない。
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る点火プラグ10を、図10と図11とを用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の形状が、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。
この点について、具体的に説明する。図10は、本実施形態の点火プラグ10の先端側を示す斜視図である。図11は、本実施形態の点火プラグ10の先端部10aの一部を切り欠いて示す断面図である。
図10と図11とに示すように、本実施形態の第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63の先端部60は、プラグ本体51の内側に折れ曲がることなく、プラグ本体51の軸線Cに沿って延びている。
本実施形態であっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
つぎに、本発明の第3の実施形態に係る点火プラグ10を、図12を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、接地電極53および噴霧制御側柱61,62,63の形状が第1の実施形態と異なる。この点について、具体的に説明する。
図12は、本実施形態の点火プラグ10の先端部10aの一部を切り欠いて示す断面図である。図12に示すように、本実施形態の接地電極53および噴霧制御側柱61,62,63は、プラグ本体51の内側に向かって傾いて延びている。それゆえ、接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63とは、プラグ本体51の軸線Cに対して所定の傾きを有している。
なお、図1に示すように、点火プラグ10は、インジェクタ40に対して図中右側に配置されている。そして、接地電極53と各噴霧制御側柱61,62,63とは、噴霧口41よりも図中下側に位置している。
それゆえ、燃料Fは、図12中に矢印Dで示すように、噴霧制御側柱63側から接地電極53に向かって斜めに噴霧される。矢印Dは、燃料Fの進む方向である。
上記のように接地電極53および噴霧制御側柱61,62,63が軸線Cに対して傾きを有することによって、噴霧された燃料Fのうち、接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63とに当たる量は、少なくなる。
言い換えると、軸線Cに対する接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63との傾きを調整することによって、燃料Fのうち、これら接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63とに当たる量を調整することができる。
つまり、軸線Cに対する接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63の傾きを調整することによって、燃料Fの流れる方向D内での、接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63の姿勢が変改する。この姿勢の変化によって、燃料Fのうち接地電極52と噴霧制御側柱61,62,63に当たる量が調整される。
例えば、中心電極52の周辺に滞留する燃料Fが多い場合、軸線Cに対する接地電極53および噴霧制御側柱61,62,63の傾きを調整することによって、これら接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63に当たる燃料Fの量を調整する。
具体的には、図12に示されるように、接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63をプラグ本体51の内側に向かって傾かせる。このようにすると、燃料Fのうち接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63とに当たる量は、少なくなる。
燃料Fのうち、接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63とに当たる量が少なくなると、中心電極52に周囲に滞留する燃料の量が少なくなる。
本実施形態では、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。さらに、軸線Cに対する接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63の傾きを調整することによって、中心電極52の周囲に滞留する燃料の量を調整することができる。それゆえ、燃料Fの燃焼状態をより向上することができる。
つぎに、本発明の第4の実施形態に係る点火プラグ10を、図13を用いて説明する。なお、第3の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、接地電極53および噴霧制御側柱61,62,63の形状が第3の実施形態と異なる。この点について、具体的に説明する。
図13は、本実施形態の点火プラグ10の先端部10aの一部を切り欠いて示す断面図である。図13に示すように、接地電極53および噴霧制御側柱61,62,63は、中心電極52の先端部52aよりも先に向かって、狭まるようになだらかに突出するように湾曲している。
上記のように、接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63の湾曲状態によって、燃料Fのうち、接地電極53と噴霧制御側柱61,62,63に当たる量が調整される。
本実施形態では、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。
なお、第1〜4の実施形態では、噴霧制御側柱は、3つ用いられているが、これに限定されない。例えば、3つや5つであってもよい。
なお、第1〜4の実施形態では、燃料Fは、第1から第3の噴霧制御側柱61,62,63に当たることによって拡散されたが、これに限定されない。例えば、第1から第3の姿勢であっても、軸線C回りに90度回転することによって、接地電極53の位置は、4パターン存在する。それゆえ、例えば、接地電極53が第1,2の仮想領域81,82に位置してもよい。この場合は、噴射された燃料Fは、接地電極53に当たって拡散されるようになる。
また、第1〜4の実施形態では、1つの接地電極53が用いられたが、これに限定されない。例えば複数の接地電極53が用いられてもよい。
本発明の第1の実施形態に係る点火プラグを備えるエンジンの燃焼室を示す断面図。 図1に示された点火プラグの先端側を示す斜視図。 図1に示された点火プラグの先端部を一部切り欠いて示す断面図。 図1に示された点火プラグの姿勢が第1の姿勢である場合に、インジェクタから燃料が噴霧された状態を、インジェクタの軸線方向に見た斜視図。 図1に示された点火プラグの姿勢が第3の姿勢である場合に、インジェクタから燃料が噴霧された状態を、インジェクタの軸線方向に見た斜視図。 インジェクタから噴霧された燃料が図4に示された中心電極の周囲に滞留している状態を、点火プラグの軸線方向から見た平面図。 点火プラグの安定燃焼領域を示すグラフ。 インジェクタから噴霧された燃料が図5に示された中心電極の周囲に滞留している状態を、点火プラグの軸線方向から見た平面図。 図1に示された点火プラグの姿勢が第3の姿勢を除く第2の姿勢である場合に、インジェクタから噴霧された燃料が中心電極の周囲に滞留している状態を、点火プラグの軸線方向から見た平面図。 本発明の第2の実施形態に係る点火プラグの先端側を示す斜視図。 図10に示された点火プラグの先端部の一部を切り欠いて示す断面図。 本発明の第3の実施形態に係る点火プラグの先端部の一部を切り欠いて示す断面図。 本発明の第4の実施形態に係る点火プラグの先端部の一部を切り欠いて示す断面図。
符号の説明
10…点火プラグ、51…プラグ本体、52…中心電極、53…接地電極、53a…先端部(対向部)、53b…先端(接地電極の先端)、61…。第1の噴霧制御側柱、62…第2の噴霧制御側柱、63…第3の噴霧制御側柱、60a…先端(噴霧制御側柱の先端)。

Claims (2)

  1. プラグ本体と、
    前記プラグ本体に設けられる中心電極であって、前記プラグ本体の軸線上に配置される中心電極と、
    前記プラグ本体において前記中心電極の回りに設けられる接地電極であって、前記プラグ本体の軸線方向に前記中心電極の先端と対向する対向部を有する接地電極と、
    前記プラグ本体において前記中心電極の回りに少なくとも1つ設けられる噴霧制御側柱と、
    を具備し、
    前記軸線方向の前記接地電極の先端と、前記軸線方向の前記噴霧制御側柱の先端とは、前記軸線を垂直に横切る略同一平面上に位置するとともに、前記中心電極の周方向に沿う前記接地電極の幅と、前記中心電極の周方向に沿う前記噴霧制御側柱の幅とは、略同じ幅とし
    前記接地電極と前記噴霧制御側柱とは、前記中心電極回りに、略等間隔に配置されることを特徴とする点火プラグ。
  2. 前記噴霧制御側柱は、3つ用いられることを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ。
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