(第1の実施形態)
本実施形態におけるプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返すプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続シート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、その領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。なお、単位画像といわずに単に画像という場合もある。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置など、インクを用いて画像を形成するプリント装置に広く適用可能である。
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置の内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。排出部12は、ソータ部11を含んで排出処理を行なうユニットを指す。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。斜行矯正部3では、搬送されるシートにループが形成される。
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するシート処理部である。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲に亘ってインクジェット方式の複数のノズルが配列されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本実施形態ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタ18を備えたユニットである。カッタ部6はさらに、シート上に記録されているカットマークを光学的に検出するカットマークセンサとシートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱19が設けられている。ゴミ箱19は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱19に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などを採用したプリントヘッドを用いて文字やコードをプリントすることにより行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知する線さ21が設けられている。センサ21の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートは巻き取りのときとは逆順に送り出されてデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。シート供給部1を第1のシート供給部とすると、反転部9は第2のシート供給部とみなすことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置(「排出分岐位置」と呼ぶ。)には可動フラッパを有する経路切り替え機構が設けられている。
ソータ部11を含む排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは排出部12が有する複数のトレイに排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲んだ範囲)13aは、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示するディスプレイや音声発生器などの出力部を含む。
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリンタドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
次に、本実施形態のプリント時のプリント装置の基本動作について説明する。プリント動作は、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
片面プリントモードでは、シート供給部1から連続シートが供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理された後、そのシートの表面(第1面)に対し、プリント部4がプリントを行う。連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントすることにより、複数の画像がシートの長手方向に沿って並べて形成されていく。プリントされたシートは検査部5を経てカッタ部6に送られ、ここで単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送されて乾燥される。その後、乾燥されたカットシートは、排出搬送部10を経由してソータ部11の排出部12に順次排出され、積載されていく。一方、最後の単位画像の切断では、プリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻され、ロールR1またはR2に巻き取られる。このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。
一方、両面プリントモードでは、表面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導かれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、反転部9での巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この送り戻し(バックフィード)によって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。このように、両面プリントにおいては、シートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。なお、上記プリントシーケンスは、カッタ部で切断し、排出部にシートを1枚ずつ排出する構成には限らない。例えばシートを切断せずに、プリント後にプリント物をロールに巻きつける構成であってもよい。
続いて、本実施形態で定義するシートに発生する「汚れ」について図11、図12、図13を用いて説明する。
ここで述べる「汚れ」とは、インクを吐出するためのプリントヘッド部14の不具合などによって、プリント対象であるシートの中のインクを吐出すべきではない部分に付着したインク、すなわち予期しない部分に付着したインクを意味する。なお、本実施形態で定義する「汚れ」の種類に関しては後に説明する。本実施形態においてCPU201(図2参照)は、シートのプリントすべき場所にインクを吐出し得るようにプリントヘッド部14を制御する。本実施形態におけるプリント装置では、図12に示すように、プリントヘッド部14に対してシートが搬送される。搬送されるシートの表面にプリントヘッド部14の各プリントヘッドに設けられたインク吐出部(ノズルともいう)の端部(吐出口)からインクを吐出してプリントを行う。
プリント動作が正常に行われた場合、プリントヘッド部14の各プリントヘッドの吐出口が形成されている面(吐出面)を図13(a)に示す。図示のように、正常にプリント動作が行われている場合には、各プリントヘッドの吐出面にインクが付着しておらず、インクの吐出は適正に行なわれる。これに対し、インク吐出部に関する不具合が生じる場合には吐出面に汚れが発生する。インク吐出部に発生する不具合としては、例えば、インク吐出部から不用意にインクが滴下してしまう、いわゆるインクボタ落ちがある。このインクボタ落ちは、インク吐出部の吐出口付近に付着した紙粉にインクが吸収されて溜まり、最終的に自重によって吐出面から落下する現象である。また、CPU201によってインク吐出部におけるインク吐出量を制御する際に不具合が発生し、プリント物からインクが溢れたままシートが搬送されてしまうことがある。この場合、溢れたインクがシートの搬送経路に付着したり、プリント物が不完全な乾燥状態で搬送されてインクが搬送経路に付着したりしてシートに汚れが発生する。
本実施形態の装置では、シートに汚れが発生した場合に、プリントヘッド部14に対して回復処理を行う回復部を備えている。回復処理とは、前記プリントヘッド部14のインク吐出部の目詰まりや、インク溜まりなどを解消あるいは良化するために、プリントヘッド部14のインク吐出部の吐出性能を維持・回復させるための処理を言う。例えば、インク吐出部の目詰まりを解消するために内部のインクを吐出(排出)させる予備吐出や、同様の効果を得るためにインク吐出部の内部からインクを吸引する吸引回復などがある。この他、プリントヘッド部14の各プリントヘッドの吐出面に付着したインクをブレードなどによって払拭するクリーニングも回復処理の一つである。なお、回復処理は、上述の処理に限らず、同様の効果を持つ処理であれば他の処理を用いることも可能である。例えば、吸引回復処理に代えて、プリントヘッド内に正圧を印加し、その正圧によって吐出口から強制的にインクを排出させる加圧回復処理なども適用可能である。
図11は、本実施形態におけるプリント装置によって形成され得るプリント物の状態を示す図である。ここで、図11(a)は、図13(a)に示したような汚れのない吐出面のプリントヘッドで適正にプリント動作が実施され、インク汚れのない正常なプリント物が得られた状態を示す図である。図示のプリント物には、画像・余白・画像・余白・・・というように、画像と余白が繰り返されるプリントパターンがプリントされる。なお、ここでいう画像は、単位画像を意味し、その画像を形成するデータは図2に示すRAM203あるいはHDD204にビットマップ展開される2値のデータであり、以下、このデータをプリントデータと称す。
図11(b)〜(f)は、プリント物に生じる汚れの例を示す図である。本実施形態では、図11(b),(c),(d)に示す3種類のクラスに分類される汚れをそれぞれ定義すると共に、後に説明する搬送路上の汚れとインクボタ落ちによる汚れ以外の汚れは判別不能汚れとみなす。
図11(b)は、図2の実線で示した搬送経路に汚れが発生し、その汚れがプリント物に付着した場合のプリント物を示す図である。なお、ここでいう搬送経路とはシート供給部1から排出部12にシートを搬送するために設けられた経路を指す。この種類の汚れは図11(b)で示される黒い部分のようにシートの長手方向に沿って直線状に延びる汚れになる。この汚れはプリントヘッド部14に対する回復処理では回復できない汚れである。前述のように、本実施形態の回復処理は、プリントヘッド部14のインク吐出部でのインクの排出および吐出面の払拭などを行う処理であり、搬送経路の汚れを除去する処理ではない。プリントヘッド部14に対する回復処理では、シートにインクを吐出しつつ(予備吐出を行いつつ)、シートの搬送を行う処理を含んでいる。そのため、プリントヘッド部14に対する回復処理を行うと、シートに付着した汚れが搬送路の別の部分に付着してしまう可能性がある。つまり、搬送経路の一部に付着したインク汚れがシートの移動に伴って搬送経路全体に拡大し、後のプリント物が搬送路に付着した汚れを引きずってしまい、同様の汚れが発生してしまう可能性がある。
2つ目の汚れは図11(c)で示される汚れであり、この汚れの原因はプリントヘッド部14のインク吐出部からのインクのボタ落ちによって形成される汚れである。この汚れはプリントヘッド部14において、図13(b)に示されるような黒丸の部分に原因があると考えられる。インクやインク吐出部の加湿状態や乾燥状態などによって、インク吐出部の部分から正常にインクが吐出されず、インク吐出部やインク吐出部に付着した紙粉にインクが溜まり、そのインクが自重によって不用意に落下してくることが原因である。この汚れは、図11(c)に示すように間隔を置いて点在するインクの汚れになる。プリントヘッド部14のインク吐出部に本実施形態の回復処理を施すことによって、回避できる可能性のある汚れである。従って、プリントヘッド部14に対する回復処理、つまり予備吐出、ワイピング処理および吸引回復処理を実行すれば、汚れを発生させる原因を解消あるいは良化させ得る可能性がある。
3つ目の汚れは図11(d)で示される判別不能の汚れである。この汚れは、様々な要因(搬送経路のゆがみ、インクのボタ落ち、搬送路の汚れ、シートに元からついていた汚れなど)が考えられ、原因の特定が難しい。そのため、本実施形態では判別不能の汚れと判定する。この汚れは、原因が明らかではないため、前述したプリントヘッド部14に対する回復処理では解消できない汚れである。
また図11(e)で示される汚れは、通常のプリントパターンに形成された場合には、汚れの種類を判別できないが、白紙領域を一定の長さプリントした場合にインクのボタ落であると判定できる汚れの例を示している。具体的には、画像が黒一色のパターンであり、汚れのインク色も黒であった場合である。この場合、後で説明する余白に汚れが生じていることは検出できるが、画像上に生じた汚れは検出することができない。また、このように余白に生じた汚れを検出できたとしても、その汚れが直線状に延びるものであるのか、間隔をおいて形成されたものであるのか、を判定できない。つまり、通常の画像部分と余白部分とを繰り返すプリントパターンを形成する場合には、仮に直線状に延びる汚れが形成されていたとしても、画像部分では汚れを判定できず、余白部分のみで汚れの存在を判定することとなる。従って、余白部分で検出された汚れが直線状に画像部分にも及んでいるのか、あるいは余白部分に形成されている汚れと画像部分に形成されている汚れとの間に汚れの存在しない部分があるのかを判定することができないことがある。これに対し、一定長さの白紙領域を含んだプリントパターンを定め、ここに形成される汚れの検出を行うことで、その汚れの形状が判定される例を示している。図では、余白に形成された汚れが、インクのボタ落ちによる汚れであると判定できる例を示している。なお、プリントパターンは図11に示すものに限定されない。例えば余白のないプリント物、つまり画像のみのプリント物を形成するプリントパターンを用いることも可能である。
次に、本実施形態の汚れ検出手法を説明するために、プリントスケジュールに従った動作シーケンスの詳細を説明する。本実施形態のプリント装置において、図1に示す検査部5は上述の通り、シートの搬送方向から見てプリントヘッド部14近傍の下流側に設けられている。そのためプリントヘッド部14からシートにインクが吐出されて画像がプリントされた後、その画像がプリントされたプリント物を光学的に読み取り、シートに形成されている画像を検査することができる。本実施形態における検査部5では、CCDなどのイメージセンサを用いて、前段のプリントヘッド部14でプリントされた画像を読取り、2値のビットマップデータ(読取り画像データ)を生成する。生成された画像データは、RAMあるいはHDに格納される。
図3は、本実施形態における制御部13により制御されるプリント動作の全体シーケンスを示すフローチャートである。プリントの指令に基づいて、ステップS301では、シートにプリントを行うためにシート供給部1からシートの供給を行う。続いてステップS302ではプリントヘッド部14でプリント対象のシートに対するプリントを開始する。ここで実行するプリントとは、画像、カットマークをシートに形成することを指す。
ステップS303では検査部5を用いて汚れ検出を行う。汚れ検出とは、前述したように、プリント物の本来プリントすべきではない部分に、プリントされた部分があるかどうかの判定、および本来プリントされるべき画像とことなる画像がプリントされているか否かの判定を行うことによって行う。例えば余白部分であれば、本来何もプリントされた部分が存在しないはずであるが、ここにプリントされた部分が存在すれば、そのプリントされた部分は汚れと判定できる。また、画像部分であれば、正常な画像を記録するための画像データとシートにプリントされた画像を読み取って得た画像データとの差分を取り、その差分が一定以上であれば汚れが存在すると判定する。この汚れ検出については、後に、図4の汚れ検出フローに従ってより詳細に説明する。この汚れ検出の判定処理はコントローラ13a(判定部)が司る。判定部は、画像を記録するための画像データと、画像の形成されたシートのプリント面を検査部5(画像読取部)で読み取って得た画像データと、を比較しての汚れ部分の形状から汚れの種類を判定する。
ステップS304では、ステップS303での汚れ検出フローによってシート上の汚れが検出され、かつその汚れを発生させる原因を取り除くための回復処理がなされたか否かの判定を行う。具体的には、後に説明する汚れ検出のフローにおいて、その後のプリントを中止すべきかどうかを判定するためのプリント中止フラッグ(FLAG)が立っている(ON)か否かを判定する。プリント中止フラッグがONの場合は、汚れが検出され、かつ、その汚れの発生原因を取り除くための回復処理が行われていない状態あるため、プリントを中止すべき状態となっている。
また、プリント中止FLAGが降りている(OFFになっている)場合は、汚れが検出されなかった、または、汚れが検出されたがその汚れの発生原因が解消されていない状況にある、と判定する。このステップS304での判定は、前述したプリント中止FLAGがONであるかOFFであるかを判定する。一方、ステップS304において判定結果がNOであった場合、つまりプリント中止FLAGがOFFである場合は、プリントを行うべきプリントデータが残っており、汚れが検出されていない、もしくは汚れを発生させる原因が解消している状態にある。従って、プリントに関する動作を継続しても状況が悪化することはないため、ステップS305ではシートの排出動作を行う。次にステップS306ではプリントを行うべきプリントデータが残っているか否かの判定を行う。ここで、判定結果がYesの場合、つまりプリント中止FLAGがONの場合は、汚れが検出されると共にその汚れを発生させる原因が未だ解消されていない状態にある。従って、この状態では汚れが拡大して状況を悪化させる可能性があるため、今はプリントを行うべきではないとの判定を下す。また、シートの搬送動作についても汚れを拡大させる可能性があるため、排紙も行なわず、フローを終了する。
なお、ステップS305において排紙されるシートは、プリントが終了したシートであり、カッタ部6でロール紙状のシートを1枚単位にカットしたものである。しかしながら、前述のように、カットせずに連続したシートの形態で排紙を行うようにすることも可能である。
また、排紙が行なわれてもなお、プリントすべきデータが残っていれば、プリントを続行することが必要である。そこで、ステップS306においてプリントすべきデータがまだ残っているか否かの判定を行い、プリントすべきデータは残っておらず、判定結果がNoである場合には、全てのデータのプリントが終了したと判定できるためプリントを終了し、このフローを終了する。また、判定結果がYesの場合はステップS302に移行しプリントを続行する。以上のシーケンスに従いプリントが実行される。
続いて本実施形態の汚れ検出処理について図4、図6、図7、図8、図10および図11を用いて説明する。
まず本実施形態の汚れ検出のフローを、図4を用いて説明する。
本実施形態では前述したようにプリントパターンを画像、余白の繰り返しのパターンとしており、余白と画像上では汚れの検出処理を変えなければならない。そこで図4ステップS401では、まず、今検査している部分が余白部分であるか、画像であるかの判定を行う。この検査は図2に示す検査部5に設けたイメージセンサを用いて、シートのプリントされた面を読み取ることで行う。検査している部分が余白部分であると判定されれば、余白の汚れ検出フローに移行する。また検査している部分が余白部分でなければ、現在検査している部分は画像であるため、画像の汚れ検出フローを行う。すなわち、ステップS401において判定結果がYesの場合は、現在検査している部分は余白であるため、ステップS402の余白の汚れ検出フローに移行する。また、ステップS401において判定結果がNoである場合は、今検査している部分が画像部分であるため、ステップS409に移行する。
ステップS402では、余白に汚れがあるかどうかの検出処理を行う。余白とは、本来、何もプリントをしない部分、つまりインクが付着しない部分である。従って、検査部5によって余白にインクが付着している部分が検出された場合、それは汚れと判定できる。図6はこの検出処理を示すフローチャートである。ここに示すフローチャートでは、まず、ステップS601において余白にインクが付着した部分があるかどうかの判定を行う。ここで判定結果がYesであった場合、つまりインク付着部分が検出された場合、汚れフラッグ(汚れFLAG)をONにするためにステップS602に移行し、その後、図4ステップS403に移行する。汚れFLAGとは、汚れが検出されたか記憶するためのFLAGである。ステップS601において判定結果がNoの場合、つまり、インク付着部分が検出されなかった場合、汚れは存在しないので、このフローを終了し、図4のステップS403に移行する。
一方、図4のステップS409では、画像に付着しているインク汚れの検出処理を行う。図7はこの画像におけるインク汚れ検出処理を示すフローチャートである。
図7ステップS701では、本来プリントすべき画像と実際にプリントされた画像とを比較し、両画像の間に差分が存在するか否かを判定する。具体的には本来プリントすべき画像の2値のプリントデータと実際にプリントされた画像を読み取って得られた2値のプリントデータ(読取データ)との排他的論理和を取る。この排他的論理和を取った結果で、差分があるかどうかが判定できる。その判定はステップS702で行う。
ステップS702において差分の有無の判定を行い、この判定結果がYesの場合、つまり差分があった場合は、プリントすべき画像とプリントされた画像とに違いがあるため、何らかの汚れが発生したと判定できる。よって、ステップS703において前述の汚れFLAGをONにし、その後、図4に示すステップS403に移行する。一方、ステップS702において判定結果がNoである場合、つまり、プリントすべき画像とプリントされた画像とに差分がないと判定された場合には、汚れは検出されなかったと判定できる。そのため、このフローを終了し、図4に示すステップS403に移行する。
図4に示すステップS403では、汚れが検出されたか否かを判定するために、汚れFLAGがONであるか否かの判定を行う。判定結果がYesの場合、つまり、前述のステップS402もしくはステップS409において汚れが検出された場合、ステップS404に移行し、汚れの種類を特定するため汚れが直線状であるか否かの判定を行う。ステップS403において、判定結果がNoの場合、つまり、ステップS402、ステップS409のいずれにおいても汚れが検出されなかった場合には、汚れの種類の判別および回復処理を行う必要がないので、汚れ検出フローを終了する。
ここで、シートに生じる複数種類の汚れの各々に対するフラッグ(FLAG)について説明する。本実施形態の検出フローでは、汚れに対する回復処理の優先度を決めるために汚れの重みづけを行う。そのため、汚れの検出段階では、それぞれの汚れをFLAGで管理する。本実施形態においての汚れのFLAGは3種類ある。1つ目は、判別不能の汚れが発生した場合にONにする判別不能FLAGである。2つ目は、搬送経路にインクによる汚れが付着し、その汚れがプリント物に付着する、前述したように搬送路上の汚れが発生した場合にONにする搬送路上汚れFLAGである。3つ目は、前述したようにプリントヘッド部14からの予期せぬインクの落下による汚れである、インクボタ落ち汚れが発生した場合にONにする、インクボタ落ちFLAGである。本実施形態では上記3種類のFLAGを設ける。
ステップS404、ステップS410では、汚れの種類を特定するために汚れの形状を分析する。ステップS404では、汚れが直線状であるか判定を行う。なお、直線状の汚れ(第1の汚れ)の例は図11(b)に示す。搬送路上の汚れはシートに付着すると図11(b)のように直線状になる。そのため、検査部5によって検査された結果、シートのプリント面に直線状の汚れがあるという結果が出た場合は、搬送路上に汚れが発生していると判定できる。また、汚れが直線状ではないと判定された場合は、本実施形態では、インクボタ落ち汚れもしくは判別できない汚れである、と汚れの種類を絞り込むことができる。ステップS404において、汚れが直線状であるか否かの判定結果がYesであれば、直線状の汚れであり、これは搬送路上に汚れが生じていると判定できるので、ステップS405において前述の搬送路上汚れFLAGをONにし、ステップS406に移行する。また、ステップS404における判定結果がNoであれば、搬送路上に生じた汚れではないと判定できるのでステップS410に移行する。
ステップS410では、前ステップまでで汚れが検出されたが、直線状の汚れではないと判定されているので、続いて、間隔を空けて付着している汚れであるか否かの判定を行う。シートに付着した汚れ同士に間隔があれば、プリントヘッド部14からの予期せぬインクの落下が原因の前述したインクボタ落ちであると判定できる。なお、間隔を置いた汚れ(第2の汚れ)の例は図11(c)に示す。ステップS410において、判定結果がYesであれば、余白部分に付着しているのは間隔を置いた汚れであり、その汚れはインクボタ落ちによって生じた汚れであると判定できる。よって、ステップS411においてインクボタ落ちFLAGをONにし、ステップS406に移行する。判定結果がNoであれば、搬送路上の汚れではなく、またインクボタ落ち汚れでもないと判定できるのでステップS412に移行する。
ステップS412では、前ステップまでで汚れが検出されたが、直線状もしくは間隔を空けた汚れではないと判定されているので、検出した汚れが判別不能な汚れであると暫定的に判定された場合である。本実施形態では判別不能な汚れであると暫定的に判別された回数(以下、判別不能回数という)が一定回数以上となった場合に、真に判別不能な汚れであるとの判定を下すようにしており、ここでは判定不能回数を加算し、ステップS413に移行する。
ステップS413では前述の判別不能回数が一定回数以下か否かの判定を行う。なお、判別不能な汚れ(第3の汚れ)の例は図11(d)に示す。後に説明するが、この汚れの検出処理では、汚れの種類が判別できない汚れが検出された場合、汚れの再検出を行う。しかし、再検出を行う際にシートの搬送を行うため、シートに付着した汚れが、さらに搬送経路の別の場所に付着し、汚れが機械全体に拡大する恐れがあるので、検出を何度も行うことは望ましくない。そのため、再検出を行う回数に制限を設ける。その回数を超えれば判別不能の汚れであると決定する。これにより、種類を判別できない汚れであるか否かをより確実に検出することができ、かつ無駄な検出による状況の悪化を軽減することができる。ステップS413での判定結果がNo、つまり判別不能回数が一定より多い場合には、ステップS416に移行し判別不能FLAGをONにする。また、ステップS423での判定結果がYesの場合、つまり、判別不能回数が一定数以下の場合は、ステップS414に移行する。
ステップS414では、前ステップまでに汚れの種類が特定できなかったため、前述したような一定の長さの白紙領域に対するプリントを行う。この後、ステップS415に移行し、プリントを行った白紙領域に対して再び汚れ検出を行う。この処理で検出できる汚れの例を、図11(e)に示す。図11(e)では、画像が黒一色のパターンであり、汚れのインク付着色も黒であった場合である。この場合画像部分では本来の画像は黒で、実際にプリントされた画像も黒であるため、汚れと画像の区別がつかず、結果的に汚れを検出することはできない。また、余白部分の検出においてはプリントがあれば、何らかの汚れが発生していると判定できる。しかし、余白のみに図11(e)のような汚れが検出された場合、その汚れは、隣接する汚れ同士に間隔が空いている汚れであるのか、画像部分と余白部分とに跨った直線状の汚れなのか判定できない。そこで、一定の長さ白紙領域をプリントし、そこに対して汚れ検出を行うことで、黒いインクが間隔を空けて付着するインクボタ落ちによる汚れであると判定できる。
シートに付着した汚れの検出・特定を一度終えた後、ステップS406では検出していない汚れが無いかどうかを判定する。検出していない汚れがあるということは、複数の汚れが同時に発生している場合であり、まだ特定できていない汚れが1つ以上あるということである。ステップS406において判定結果がNoの場合は、複数の汚れが同時に発生し、かつ、まだ特定できていない汚れがあると判定された場合である。この場合はステップS404に戻り再び汚れの特定を行う。ステップS406の判定結果がYesであれば、特定できていない汚れはないので、ステップS407に移行する。ステップS407では、どの汚れに対する回復処理が優先されるべきか、汚れの処理優先度を決める。またその結果に基づいて、ステップS408において回復処理を行う。
前述したようにシートに付着した汚れの種類に応じて、その汚れの原因を回復するために必要な回復処理があり、また、回復処理を実行してしまうと状況が悪化してしまう可能性のある汚れがある。そのため、ステップS407では、検出された汚れに対する回復処理の優先度を決めるために重みづけを行う。図8はその重みづけ処理のためのフローチャートである。本実施形態では、汚れに対する回復処理の優先度の高さは、次の(1),(2),(3)の順位で定められている。
(1)原因を特定できない判別不能の汚れに対する処理。
(2)本実施形態のプリントヘッド部14に対する回復処理では回復できず、プリントヘッド部14に対する回復処理を行うと状況が悪化する可能性がある搬送路上汚れ。
(3)原因は特定できており、本実施形態のプリントヘッド部14に対する回復処理で回復する可能性のあるインクボタ落ち汚れ。
図8に示すステップS801では、検出・特定した汚れに判別不能汚れが存在するかどうか判定する(ステップS801)。この判定は、判別不能汚れが検出されたかどうかを判別するための判別不能汚れFLAGがONになっているか否かによって行う。判別不能汚れは前述したように、原因が特定できないため、プリントヘッド部14に対する回復処理を行うと状況が悪化してしまう可能性があり、最も重い汚れである。ステップS801での判定結果がYesの場合は、この判別不能汚れが検出されたことになるため、ステップS802に移行し、判別不能汚れを最も優先的に処理すべき汚れとして扱う。また、ステップS801での判定結果がNoの場合は、判別不能汚れが検出されなかったことになるため、次に優先されるべき搬送路上の汚れが検出されたかどうかの判定を行うためにステップS803に移行する。
ステップS803では、前述した搬送路上の汚れが存在するか否かを判定する。この判定は、搬送路上に汚れが検出されたか否かを示す搬送路上汚れFLAGがONになっているか否かを判定することによって行う。搬送路上汚れは、プリントヘッド部14に対する回復処理を行うと状況が悪化する可能性があるため、2番目に重い汚れである。ステップS803における判定結果がYesの場合は、この搬送路上汚れが検出されたことになり、汚れに対して2番目に優先して実施されるべき処理となる。このため、ステップS804に移行し、搬送路上汚れを、優先的に処理する汚れとして扱う。また、ステップS804における判定結果がNoの場合は、搬送路上汚れが検出されず、残る汚れの種類はインクボタ落ち汚れのみであるため、ステップS805に移行してインクボタ落ち汚れを優先的に処理する汚れとして扱う。このように汚れの種類に応じて、その汚れに対する処理の重みづけを行う。
処理の重みづけフローが終了すると、検出された汚れに応じて回復処理を行う。以下、この回復処理について説明する。
図4に示すように、ステップS407において前述の重み付け処理が終了すると、ステップS408に移行し、回復処理を行う。図10はその回復処理を実施するためのフローチャートを示している。プリントヘッド部14に対する回復処理とは、前述したように、吸引回復処理や、プリントヘッド部14の吐出面を払拭するワイピング処理などのインク吐出部に対して行う回復処理である。そのため、これらの回復処理を判別不能汚れや搬送路上汚れに対して実行しても意味は無く、逆効果になることもある。例えば検出された汚れが搬送路上汚れだった場合、ワイピング回復などを行うべく、シートを搬送した場合、シートに付着した汚れの原因である搬送路についたインクを、シートが引きずってしまう。その結果、機械の広範囲に汚れが拡大し、状況が悪化してしまうことがある。よって、本実施形態では判別不能汚れや搬送路上汚れが検出された場合にはプリントヘッド部14に対する前述の回復処理は行わない。
図10に示すステップS1001では、前ステップS407で決定された優先的に処理を行うべき汚れに基づいて、その汚れがプリントヘッド部14に対する回復処理で処理可能かどうかの判定を行う。前述のように、判別不能汚れや搬送路上汚れが生じた場合に回復処理を行うと状況が悪化してしまう可能性がある。このため、プリントヘッド部14に対する回復処理を行うべきか否かの判定を行い、判定結果がYesの場合は、優先処理の汚れはプリントヘッド部14からのインクボタ落ちによる汚れであると判定する。このインクボタ落ちによる汚れの発生は、プリントヘッド部14に対する回復処理によって解消することができる。従って、ステップS1002ではプリントヘッド部14に対する回復処理を行う。本実施形態においてプリントヘッド部14に対する回復処理を行うことが必要となる汚れの種類は、インクボタ落ち汚れの場合のみである。このため判定結果がNoの場合には、プリントヘッド部14に対する回復処理を行うことにより状況が悪化してしまう可能性がある。その場合は、何らかのユーザ操作などが必要になる可能性があるので、ステップS1003において図1に示す操作部15にエラー通知を行う。
ステップS1004では、このままプリントを行うと状況が悪化する場合があり、汚れの原因が回復するまでプリントを中止させることが必要となる。このため、前述したプリント中止FLAGをONにし、その後、図3に示すプリントフローに戻り処理を続行する。
ここまでフローチャートの各ステップを説明したが、次に、本実施形態を用いて図11(b)〜図11(f)に示す5つのプリント物における汚れ検出、および検出した汚れに対する回復処理などを実施するフローを説明する。
まず、図11(b)に示すプリント物に対する汚れ検出を説明する。この図のプリント物の汚れは搬送路上の汚れである。搬送路上汚れとは前述したように、図2の実線部で示されたシート搬送経路にインクが付着し、そのインクがさらにシートに付着した場合に発生する汚れである。汚れの形状としては直線状になることが多い(図11(b)参照)。この汚れが発生した場合の、図4に示す汚れ検出フロー、図6に示す余白の汚れ検出フロー、図7に示す画像の汚れ検出フロー、図8に示す処理の重みづけフロー、図10に示す回復フローについて説明する。
図4におけるステップS401では、現在検査しているシートの部分が余白部分であるか否かの判定を行う。現在検査している部分が画像であった場合は、ステップS409に移行し、画像の汚れ検出を行う。また余白部分であればステップS402に移行し余白部分の汚れ検出を行う。前述のステップS401では、搬送方向の先頭が最初の検査対象になる。ここでは、プリント物が図11(b)に示すものであり、搬送方向の先頭は余白であるので検査部5の検査よって余白がまず検査される。よって、ステップS401の判定結果はYesとなり、ステップS402に移行し、余白部分の汚れ検出を行うため、図6に示す余白部分の汚れ検出フローに移行する。
図6のフローでは、まず、ステップS601においてプリントがあるか判定する。図11(b)では最初の余白部分にインク付着部分があるため、検査部5がこのインク付着部分を検知する。従って、ステップS601の判定結果はYesとなり、ステップS602に移行して汚れFLAGをONにする。ここで余白の検出フローは終了し、図4のステップ403に移行する。図4ステップS403では、汚れFLAGがONか否かの判定を行う。前ステップで汚れが検出され汚れFLAGはONになっているので、ステップS403の判定結果はYesとなり、ステップS404に移行する。ステップS404では汚れが直線状か否かを判定する。図11(b)では直線状の汚れが付着しているので判定結果はYesとなり、ステップS405に移行して搬送路上汚れFLAGをONにする。
続いてステップS406に移行し、判別していない汚れが存在しないか否かの判定を行う。図11(b)では直線状の汚れしか発生していないため、判定結果はYesとなり、ステップS407に移行する。ステップS407では優先的に処理すべき汚れを決定すべく、汚れに対する処理の重みづけ処理を、図8のフローチャートに従って行う。
図8は図4に示すステップS407の処理の重みづけ処理を示すフローチャートである。図8に示すステップS801では、判別不能FLAGがONになっているか否かの判定を行う。図11(b)に示すシートには直線状の汚れしか存在しないため、判定結果はNoになり、ステップS803に移行する。ステップS803では搬送路上汚れFLAGがONになっているか否かの判定を行う。前述のステップS405において搬送経路上汚れFLAGがONになっているのでこの判定結果はYesとなり、ステップS804に移行する。図11(b)に示すシートには、搬送経路上汚れよりも優先度の高い汚れは検出されなかったのでステップS804において、優先処理の汚れを搬送経路上の汚れとする。これで処理の重みづけフローは終了し、図4のステップS408へ移行し、図10に示すフローチャートに従って回復処理を実行する。
図10に示す回復処理では、まず、ステップS1001において検出された汚れの発生を、本実施形態で定義する回復処理で防止できるか否かを判定する。搬送路上の汚れは、前述したように、本実施形態のクリーニングなどの回復処理では解消することはできず、悪化してしまう恐れがある。このため、判定結果はNoとなりステップS1003に移行する。ステップS1003では、前ステップS1001における回復処理において処理不可能であると判定されているため、図1に示す操作部15にエラーを通知する。その後ステップS1004に移行する。
ステップS1004ではプリント中止FLAGをONにする。プリント中止FLAGとは前述したように、プリントすべきデータが残っていてもプリントを中止させるために使用するFLAGである。プリントを中止させる理由としては、そのままプリントを行うと汚れが拡大する恐れがあることが挙げられる。搬送路上汚れは、インクが搬送路に付着し、シート搬送時のシートがその部分を通過することで、シートにそのインクが直線状に付着する汚れである。この汚れの原因が回復できないままプリントを続ける(搬送を続ける)と、シートに付着したインクによる汚れが、搬送路の別の部分に再び付着してしまう可能性がある。そのため搬送路上汚れが検出された場合はプリントを中止させるべく、プリント中止FLAGをONにする。これにより、プリント物が図11(b)の場合の汚れの検出、種類の特定、および回復処理が終了する。
続いて、図11(c)のプリント物に対する処理を説明する。
図11(c)に示すプリント物についても、汚れ検出処理、処理の重みづけ処理、および回復処理を行う。まず、図4に示すステップS401において、検査部5が検査しているシートの部分が余白部分であるか、画像部分であるかを判定する。ここでは、先頭から検査をしていくので、まず画像部分が検査される。従ってステップS401の判定の後、ステップS409に移行し、その画像部分に汚れが存在するか否かの判定を図7のフローチャートに従って行う。
図7に示すステップS701では、汚れのない正常な画像と実際にプリントされた画像との比較を行う。本実施形態では差分を取るために排他的論理和を使用する。ここで、正常な画像は図11(a)に示す画像部分であり、図11(c)の最初の画像部分との間には差分が発生する。そのため、本ステップにおいて排他的論理和の結果は1になる。ステップS702では、ステップS701の比較結果に基づいて正常な画像と実際にプリントされた画像との間に差分が発生しているか否かの判定を行う。今回はステップS701において比較した結果、排他的論理和が1になり、差分が発生している。従って判定結果はYesとなり、ステップS703に移行し、汚れFLAGをONにする。これにより画像部分の汚れ検出フローは終了し、図4に示すステップS403に移行する。
図4に示すステップS403では汚れFLAGがONになっているか否かの判定を行う。ステップS703で汚れFLAGをONにしているので、判定結果はYesとなり、ステップS404に移行する。ステップS404では、検出された汚れが直線状であるか否かの判定を行う。今回は図11(c)に示す例であるので汚れは直線状ではない。従って、判定結果はNoとなり、ステップS410に移行する。ステップS410では、検出された汚れが間隔の空いた汚れか否かの判定を行う。図11(c)に示す例では、汚れ同士には間隔が空いている。よって判定結果はYesとなり、ステップS411に移行し、インクボタ落ちFLAGをONにする。続いてステップS406に移行する。
ステップS406では判定していない汚れがないか否かの判定を行う。図11(c)に示す例では、間隔の空いた汚れしか検出されなかったので判定結果はYesとなり、ステップS407に移行し、処理の重みづけを行う。ステップS407では、図8に示す処理フローチャートに従って処理の重みづけを行う。図8のステップS801では、判別不能FLAGがONかどうかの判定を行う。図11(c)の例では、判別不能汚れは検出されていないので判定結果はNoとなり、ステップS803に移行する。ステップS803では搬送路上汚れFLAGがONになっているか判定を行う。ここでは、搬送路上汚れは検出されていないので判定結果はNoとなり、ステップS805に移行する。図11(c)の例では、インクボタ落ち汚れしか検出されていないので、ステップS805において優先処理される汚れをインクボタ落ち汚れとする。処理の重みづけフローはこれで終了し、図4におけるステップS408の回復処理フローに移行する。
ステップS408では、検出された汚れに対する回復処理を図10に示すフローチャートに従って行う。図10のステップS1001において、プリントヘッド部14に対する回復処理で汚れの原因が回復できるか否かの判定を行う。インクボタ落ち汚れの原因は前述したように、プリントヘッド部14のインク吐出部の不具合によるもので、プリントヘッド部14に対する回復処理で回復する可能性がある。よって図11(c)のプリント物の場合には、ステップS1001の判定結果はYesとなり、ステップS1002に移行する。ステップS1002ではプリントヘッド部14に対する回復処理を行う。ここでいう回復処理とはプリントヘッド部14の吐出面を払拭するワイピングやノズルからインクを強制的に吸引する吸引回復である。この処理により、インクボタ落ち汚れの原因は解消でき、汚れ検出、汚れの種類の特定、および汚れに対する回復処理は終了する。
続いて、図11(d)に示すプリント物に対する処理を説明する。
このプリント物についても、前述のプリント物と同様に、汚れ検出、処理の重みづけ、汚れに対する回復処理などを行う。まず汚れの検出から説明する。
図4のステップS401において、検査部5が検査している部分が余白部分であるか画像部分であるかを判定する。図11(d)に示すプリント物では、まず余白部分が検査される。よってこのステップS401の判定結果はYesとなり、ステップS402に移行する。
ステップS402では図6に示すフローチャートに基づいて余白部分の汚れ検出を行う。図6において、ステップS601では余白部分に汚れがあるかどうか判定する。図11(d)は余白にインク付着部分(汚れ)があるので判定結果はYesとなり、ステップS602に移行して汚れFLAGをONにする。続いて図4のステップS403に移行する。
図4ステップS403では汚れFLAGがONか否かの判定を行う。ステップS601、S602においてインク付着部(汚れ)が検出され、汚れFLAGがONになっているので判定結果はYesとなり、ステップS404に移行する。ステップS404では汚れが直線状か否かを判定する。図11(d)のプリント物では汚れは直線状になっていない。よってステップS404の判定結果はNoとなり、ステップS410に移行する。ステップS410では汚れに間隔があるか否かを判定する。図11(d)の記録物に形成されている汚れは連続的であり、間隔を置いて形成されていないので判定結果はNoとなり、ステップS412に移行する。
ステップS412では汚れの種類を判別できない回数(判別不能回数)の値を1つ加算する。例えば、初めて判別不能であると判別された場合には、ステップS412における判別回数は1になる。続いてステップS413に移行する。本実施形態では、一定数以下という基準を1回とする。つまり2回検出を行っても、汚れが判別できない場合は判別不能汚れと判定する。ステップS413では、判別不能回数が一定数以下か判定を行う。この例において判別不能回数は1であり、一定値以下であるので判定結果はYesとなり、ステップS414に移行する。
ステップS414では、一定の長さの白紙領域を形成する。すなわち、プリントヘッド部14に対しインク吐出を行わずにシートを一定の長さ移動させる。この理由としては、今回の汚れ検出では汚れの種類を判別できなかったが、白紙領域を通過させることで汚れの種類を特定できる可能性があるからである。例えば、この余白形成の後、画像がプリントされれば、画像に対して汚れ検出を行う。その場合、種類は特定できていないが、画像の直前で汚れが検出されているので、画像にも汚れが発生し、成果物としては失敗作になる可能性がある。また画像に汚れが発生し、検出を行おうとしても、画像の色と汚れの色とが全く同じだった場合には、汚れが発生していないと判定される可能性がある。これが白紙領域であれば、単純にインク付着部があるかどうかだけを判定することで汚れが発生しているかを判定できる。よって汚れの種類が判別不能だった場合は白紙領域を形成する。白紙領域とは、何も画像をプリントしない領域である。続いてステップS415において、この白紙領域に対して再び汚れ検出を行うためステップS401に移行する。
ステップS401では、検査している部分が余白部分であるか否かの判定を行ない、白紙領域であるため判定結果はYesとなる。続いてステップS402において余白の汚れ検出を行う。この余白の汚れ検出は、図6に示すフローチャートに基づいて行う。図11(d)に示すプリント物にはインク付着部分が存在するため、ステップS601の判定結果はYesとなり、ステップS602において汚れFLAGをONにする。続いてステップS403では汚れFLAGがONかどうか判定を行う。ここでは、図6に示すステップS602において汚れFLAGをONにしているので判定結果はYesとなる。ステップS404では、汚れが直線状か否かを判定する。図11(d)では白紙領域の検出を行っても直線とは判定できないため、ステップS404の判定結果はNoとなり、ステップS410に移行する。
ステップS410では形成される汚れが間隔を置いて形成されているか否かを判定する。しかし、図11(d)では間隔の空いている汚れとは判定できないため、ステップS410の判定結果はNoとなり、ステップS412に移行する。ステップS412では、前ステップまでで、汚れの種類が特定できなかったため、前述の判別不能回数を加算する。今回は2回目の検出なので、判別不能回数は2になる。
続いてステップS413に移行し、判別不能回数が一定数以下であるか否かの判定を行う。前述の通り、本実施形態では、一定数以下という基準を1回としている。つまり2回検出を行っても、汚れの種類を判別できない場合は判別不能汚れと判定する。このステップにおいては判別不能回数が2になっているので一定値を上回る。よってステップS413の判定結果はNoとなり、ステップS416に移行する。ステップS416では判別不能汚れが検出されたことを記憶するため、判別不能FLAGをONにし、処理の重みづけを行うためステップS407に移行する。
ステップS407では、図8のフローチャートに従って処理の重みづけを行う。ステップS801では判別不能汚れFLAGがONであるか否かの判定を行う。前述のステップS416で判別不能汚れFLAGをONにしているので判定結果はYesとなり、ステップS802に移行する。ステップS802では、今回の汚れ検出で検出された汚れの中で優先される汚れを判別不能汚れと決定し、処理の重みづけフローを終了する。
続いて図4のステップS408で行う汚れに対する回復処理に移行する。図10はこの回復処理を行うためのフローチャートである。図10においてステップS1001では、プリントヘッド部14に対する回復処理で、汚れの原因が回復できるか否かを判定する。今回検出された判別不能汚れは、原因の特定ができないため、プリントヘッド部14に対する回復処理では回復しない。そのため、判定結果はNoとなり、ステップS1003に移行する。
ステップS1003において、判別不能汚れが発生していることを操作部15にて表示し、ユーザに通知する。次に、ステップS1004においてプリント中止FLAGをONにする。プリント中止FLAGとは前述したように、プリントすべきデータが残っていてもプリントを中止させるために使用するFLAGである。プリントを中止させる理由としては、そのままプリントを行うと汚れが拡大する恐れがあることが挙げられる。搬送路上汚れは、インクが搬送路に付着し、シート搬送時にシートがその部分を通過することで、シートにそのインクが直線状に付着する汚れである。この汚れの原因が回復できないままプリントを続ける(搬送を続ける)と、シートに付着したインクによる汚れが、搬送路の別の部分に再び付着してしまう可能性がある。そのため搬送路上汚れが検出された場合はプリントを中止させるべく、プリント中止FLAGをONにする。以上により、プリント物が図11(d)の場合の汚れの検出、汚れの種類の特定、および回復処理は終了する。
次にプリント物が図11(e)であった場合について説明する。この場合についても、前述の他のプリント物の場合と同様に、汚れ検出、およびその汚れに対する回復処理について説明する。この図11(e)は黒一色の画像をプリントしたときに同じ色のインクボタ落ちが発生した例を示している。
図4のステップS401において、現在検査している部分が余白部分であるか、画像部分であるかを判定する。図11(e)に示すプリント物では先頭が画像であり、現在検出を行っているのは画像であるので、判定結果はNoとなり、ステップS409へと移行し、ここで、図7に示すフローチャートに基づき画像の汚れ検出を行う。
図7は画像の汚れ検出のフローチャートである。図7に示すステップS701では正常な画像と実際にプリントされた画像とを比較する。図11(e)に示すプリント物には、実際には汚れが発生しているが、前述のようにプリント画像が黒一色であり、汚れの色も同じ色なので画像の汚れ検出では差分が検知できない。よって続くステップS702では差分がないと判定されるので、ステップS702の判定結果はNoとなり、画像の汚れ検出のフローは終了し、図4ステップS403に移行する。ステップS403では汚れFLAGがONになっているか判定を行う。前ステップの画像の汚れ検出において、汚れは認められず、汚れFLAGはONになっていないので、ステップS403の判定結果はNoとなり、汚れ検出フローを終了する。
次に、検査部5を通る部分について汚れ検出を行う。図4ステップS401では検査している部分が余白部分であるか否かの判定を行う。図11(e)に示すプリント物において、2番目に検査される部分は余白部分なので、判定結果はYesとなりステップS402に移行し、ここで図6のフローチャートに従って余白汚れ検出を行う。図6ステップS601では検査した部分にインク付着物(汚れ)があるか否かの判定を行う。図11(e)に示すプリント物には汚れが存在するので、ステップS601の判定結果はYesとなり、ステップS602において汚れFLAGをONにして図4のステップS403に移行する。
ステップS403において汚れFLAGがONになっているかの判定を行う。ここでは、ステップS602において汚れFLAGをONにしているので、判定結果はYesとなり、ステップS404に移行する。ステップS404では、検出された汚れが直線状であるか判定を行う。図11(e)に示すプリント物では、汚れは直線状にはなっていない。よって判定結果はNoとなり、ステップS410に移行する。ステップS410では、検出された汚れが間隔の空いた汚れであるか、連続した汚れであるかの判定を行う。図11(e)に示すプリント物では、余白部分のみでは汚れに間隔が空いているかどうかを判定できない。よってステップS410の判定結果はNoとなり、ステップS412に移行する。ステップS412では判別不能回数を加算する。ここでは初めて判別不能と判定されるため、このステップにおいて判別回数は1になる。続いてステップS413に移行する。本実施形態では、一定数以下という基準を1回とする。つまり2回検出を行っても、汚れの種類が判別できない場合は判別不能汚れと判定する。
ステップS413では、判別不能回数が一定数以下か否かの判定を行う。ここでは初めての検出なので、判定結果はYesとなり、ステップS414に移行する。ステップS414では、プリントヘッド部14に対して一定の長さの白紙領域を通過させる。この理由は図11(c)の例でも述べたように、汚れ検出では汚れの種類を判別できない場合でも、白紙領域を通過させることで汚れの種類を特定できる可能性があるからである。図11(e)に示すプリント物のように、汚れが発生している部分の色と汚れの色が同一色であった場合にも有効である。続いてステップS415において、この白紙領域に対して再び汚れ検出を行うためステップS401に移行する。
前述のように、ステップS401では検査している部分が余白部分かどうかの判定を行い、ここでは白紙領域についての検査を行っているので判定結果はYesとなる。続いてステップS402において余白の汚れ検出を行う。このステップS402ではインク汚れが存在するので、図6のステップS601の判定結果はYesとなり、ステップS602において、汚れFLAGをONにする。続いてステップS403では汚れFLAGがONであるか否かの判定を行う。これは図6のステップS602において汚れFLAGをONにしているので判定結果はYesとなる。
ステップS404では、汚れが直線状か判定する。図11(e)では白紙領域の検出を行っても直線とは判定できないため、ステップS404の判定結果はNoとなり、ステップS410に移行する。ステップS410では汚れが間隔をおいて形成されているか否かの判定を行う。今回は白紙領域に対しての検出であり、図11(e)の例では、汚れが間隔をおいて形成されていると判定できるので、ステップS410の判定結果はYesとなり、ステップS411に移行する。ステップS411ではインクボタ落ちFLAGをONにし、ステップS406に移行する。
ステップS406では判別していない汚れがないか否かの判定を行う。ここでは、間隔をおいて形成されている汚れしか検出されなかったので判定結果はYesとなり、ステップS407に移行し、図8のフローチャートに従って処理の重みづけを行う。図8において、ステップS801では判別不能FLAGがONか否かの判定を行う。本例では、判別不能汚れは検出されていないので判定結果はNoとなり、ステップS803に移行する。ステップS803では搬送路上汚れFLAGがONになっているか判定を行う。ここで、搬送路上汚れは検出されていないので判定結果はNoとなりステップS805に移行し、優先的に処理すべき汚れをインクボタ落ち汚れとする。処理の重みづけフローはこれで終了し、図4ステップS408の回復処理フローに移行する。
図10は検出された汚れに対する回復処理を行うフローチャートである。ステップS1001では、プリントヘッド部14に対する回復処理で汚れの原因が解消できるか否かの判定を行う。インクボタ落ち汚れの原因は前述したように、プリントヘッド部14のインク吐出部の不具合によるもので、プリントヘッド部14に対する回復処理で回復する可能性がある。よってプリント物が図11(e)の場合は、ステップS1001の判定結果はYesとなり、ステップS1002に移行し、ここでプリントヘッド部14に対する回復処理を行う。この回復処理により、インクボタ落ち汚れの原因は解消され、汚れ検出、汚れの種類の特定、および汚れに対する回復処理は終了する。このように通常のプリントパターンで一度判別できなかった汚れに対して、白紙領域を形成し、再度汚れ検出を行うことで、汚れの種類を特定できる場合がある。
次に、図11(f)に示すプリント物に対する処理を説明する。ここに示すプリント物は、搬送路上汚れとインクボタ落ち汚れが同時に発生した場合に形成されたプリント物となっている。このプリント物についても、他のプリント物と同様に汚れ検出、およびその汚れに対する回復処理などについて説明する。図4ステップS401において、現在検査しているシートの部分が余白部分であるか否かの判定を行う。図11(f)に示すプリント物では先頭が余白部分であるため、判定結果はYesとなり、ステップS402に移行し、ここで図6のフローチャートに示す余白の汚れ検出を行う。
余白に対しての汚れ検出であるため、図6のステップS601では、インク付着物(汚れ)が存在するか否かの判定を行う。図11(f)では余白にプリントがあるので、判定結果はYesとなり、ステップS602に移行し、汚れFLAGをONにする。続いて図4に示すステップS403に移行する。図4ステップS403では汚れFLAGがONか否かの判定を行う。前ステップS601、S602においてプリントが検出され、汚れFLAGをONにしているので判定結果はYesとなりステップS404に移行する。ステップS404では汚れが直線状であるか否かの判定を行う。図11(f)のプリント物では直線状の汚れが付着しているので判定結果はYesとなり、ステップS405に移行し、搬送路上汚れFLAGをONにする。
続いてステップS406に移行し、判別していない汚れがないか否かの判定を行う。図11(f)では直線状の汚れ以外にも汚れが発生しているので判定結果はNoとなってステップS404に戻り、その汚れに対して再び汚れの種類判別を行う。ステップS404では汚れが直線状か否かを判定する。図11(f)では直線状の汚れがついているが、この汚れについては既に判別されているので、もうひとつの汚れに対して判定を行う。この汚れは直線状ではないのでステップS410に移行する。ステップS410では汚れが間を置いて形成されているか否かの判定を行う。図11(f)の例では汚れが間を置いて形成されていると判定できるので、ステップS410の判定結果はYesとなり、ステップS411に移行する。ステップS411ではインクボタ落ちFLAGをONにし、ステップS406に移行する。ステップS406では判別していない汚れが存在しないか否かの判定を行う。図11(e)に示す例では、直線状の汚れと、間隔おいて形成される汚れの2種類のみ検出され、他の種類の汚れは検出されないため、ステップS406における判定結果はYesとなり、ステップS407に移行する。ステップS407では、図8に示すフローチャートに従って、処理の重みづけを行う。
まず、ステップS801では、判別不能FLAGがONであるか否かの判定を行う。図11(e)に示す例では、判別不能汚れは検出されていないので判定結果はNoとなり、ステップS803に移行する。ステップS803では搬送路上汚れFLAGがONになっているか否かの判定を行う。前述のステップS405において搬送路上汚れFLAGをONにしているので、ステップS803での判定結果はYesとなり、ステップS804に移行する。今回、インクボタ落ちも検出されたが、それよりも優先度の高い搬送路上の汚れが発生している。また、搬送路上汚れよりも優先度の高い汚れは検出されなかったのでステップS804においては、優先的に処理を行うべき汚れを搬送路上の汚れとする。これで処理の重みづけフローは終了し、図4に示すステップS408に移行し、ここで図10のフローチャートに従って回復処理を行う。
図10のステップS1001では、検出された汚れが本実施形態で定義する回復処理で解消可能であるか否かを判定する。検出された汚れの種類のうち、インクボタ落ちはヘッドに対するクリーニングなどの回復処理によって解消される可能性はある。しかし、搬送路上の汚れは、前述したように、本実施形態のクリーニングなどの回復処理では回復できず、悪化してしまう恐れがある。このため、ステップS1001での判定結果はNoとなりステップS1003に移行する。ステップS1003では、ステップS1001においてプリントヘッドに対するクリーニングでは処理不可能であると判定されているので、図2に示す操作部15にエラーを通知する。その後ステップS1004に移行する。
ステップS1004ではプリント中止FLAGをONにする。プリント中止FLAGとは前述したように、プリントすべきデータが残っていてもプリントを中止させるために使用するFLAGである。プリントを中止させる理由としては、そのままプリントを行うと汚れが拡大する恐れがあることが挙げられる。搬送路上汚れは、搬送路に付着したインクが、シート搬送時のシートがその部分を通過することで、シートにそのインクが直線状に付着する汚れである。この汚れの原因が回復できないままプリントを続ける(搬送を続ける)と、シートに付着したインクによる汚れが、搬送路の別の部分に再び付着してしまう可能性がある。そのため搬送路上汚れが検出された場合はプリントを中止させるべく、プリント中止FLAGをONにする。以上により、図11(f)に示すプリント物に対する汚れの検出、種類の特定、および回復処理は終了する。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態では、インクボタ落ち、搬送路上汚れ、および判別不能汚れ、以外の汚れにも対応し得るものとなっている。すなわち、本実施形態では実施形態1のように汚れの種類を限定せず、汚れの種類がN種類(Nは1以上)であった場合に対応可能なものとなっている。なお、本実施形態と上記第1の実施形態とは図4および図8においてのみ異なり、その他の構成、作用は同様である。よって、以下の説明では、上記第1の実施形態との差異を中心に説明する。
図3に示すステップS303の汚れ検出フローは、この第2の実施形態においては図5の検出フローチャートに従って実行される。なお、図5に示すステップS501、ステップS502、ステップS503、ステップS509は上記第1の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
ステップS504では、検出した汚れが汚れ種類1であるか否かの判定を行う。判定結果がYesであるならばステップS505にて汚れ種類1のFLAGをONにする。また判定結果がNoであればステップS510に移行する。ステップS510では、検出した汚れが汚れ種類2であるか否かの判定を行う。判定結果がYesであればステップS511において汚れ種類2のFLAGをONにする。また、判定結果がNoであるならばステップS512に移行する。
このように汚れ種類の判定を、汚れの種類の数だけ繰り返し、判定結果がYesならば該当するFLAGをONにする。
ステップS506では、第1の実施形態と同様に、検出していない汚れが無いか否かの判定を行う。判定結果がNoであれば、ステップS504から再び汚れの種類判別を行う。また、ステップS506における判定結果がYesであればステップS507へ移行し、ここで図9のフローチャートに従って処理の重みづけを行う。
図9において、ステップS901では汚れ種類1のFLAGがONであるか否かの判定を行う。判定結果がYesであれば、ステップS902において汚れ種類1の汚れを、優先的に処理すべき汚れとして扱い、ステップS903に移行する。ステップS902の判定結果がNoであれば、そのままステップS903に移行する。ステップS903では汚れ種類2のFLAGがONであるか否かの判定を行う。この判定結果がYesであればステップS904に移行し、逆に判定結果がNoであればステップS906に移行する。
ステップS904では今までに汚れFLAGがONになっているものがあったか否かの判定を行う。判定結果がYesであれば、ステップS905に移行する。また、判定結果がNoであればステップS910に移行し、汚れ種類2を優先的に処理すべき汚れとして扱いステップS906に移行する。
ステップS905では、その時点で、優先的に処理すべき汚れとして扱われている汚れの種類の方が、汚れ種類2より重い汚れかどうかの判定を行う。判定結果がYesであれば優先的に処理すべき汚れはそのままでステップS906に移行する。
上記処理を汚れFLAGがONになっている数だけ繰り返し、それによってどの汚れの種類が最も重い汚れであるかを判定し、その汚れを優先的に処理すべき汚れとして決定する。その後、図5に示すステップS508に移行し、回復処理を行う。このステップS508の処理は第1の実施形態と同じなので省略する。
以上のように、この第2の実施形態によれば、インクボタ落ちと搬送路上汚れ以外の汚れがあった場合にも、それらの汚れに対応することができる。
なお本発明は、予めカットされたカットシートあるいは、プリントヘッドに達する前の搬送経路においてロール紙から切り離されたカットシートに画像を形成するプリント装置にも適用可能である。また、本発明は、プリントヘッドをシートの搬送方向と交差する方向に移動させつつ記録を行う所謂シリアル型のプリント装置にも本発明は適用可能である。さらに、プリントしたロール紙を切断せず、プリント終了後のシートを全てロールに巻きつける、いわゆるロールTOロール形式のプリント装置にも適用可能である。この場合、プリント動作の途中で汚れが発生したとしても、本発明の汚れ検出装置およびこれを備えたプリント装置によれば、汚れの種類に応じて適正に回復処理が行うことが可能になるため、ロール紙、プリント物が無駄になることはなくなる。