本発明において用いるCIELAB系表色系は、国際照明委員会(CIE)が規定した規格であり、JIS Z8729にも規定され、色を数値化して表現するのに有用な手段として一般的に用いられている。CIELAB系表色系の立体概念図を図1に示す。図1において、横軸のa*及びb*はそれぞれ色相を表す。色相とは、赤、黄、緑、青、紫等、色あいを尺度化したものである。本発明では、赤−緑方向の色相をa*とし、黄−青方向の色相をb*とする。縦軸のL*は明度を表す。明度とは、色相に関係なく比較でき、色の明るさの度合いを示す。c*は、彩度であり、下記式により求められ、色の鮮やかさの度合いを示している。
色相角度h*は、図2に示すように、a*−b*座標において、色相(a*,b*)と原点とを結ぶ直線と、正のa*軸とがなす角度であり、正のa*軸から反時計回りの方向において、前記直線と正のa*軸とがなす角度である。このため、色相角度0.0と色相角度360.0とは同じ色相角度を意味する。また、本発明において、例えば色相角度が330.0〜30.0にあると示す場合、色相角度330.0〜360.0の領域と色相角度0.0〜30.0の領域とを合わせた領域を示す。色相角度は、明度とは無関係に特定の色相を表すことができる。
次に、本発明におけるトナーの反射分光光度測定の方法を述べる。尚、本発明の測定方法を用いると、トナーに含有される着色剤の種類やその含有量、トナー中における着色剤の分散状態、及び、結着樹脂の色、その他の添加剤の色に由来し、トナーが固有に有する発色特性を正確に測定することができる。
具体的な測定方法としては、非イオン性界面活性剤の水溶液に一定濃度になるようにトナーを十分に分散する。このトナー分散液から一定量を計りとり、白色度が95〜120、孔径0.2〜1.0μmのフィルターでこれを濾過し、フィルター上に一定量のトナー層が形成されるようにする。このトナー層上部に透明の薄いガラス板A(光学顕微鏡観察用のカバーガラス)を載せる。これを1〜2mmのガラス板B(光学顕微鏡観察用のスライドガラス)上に載せ、さらにトナー層上部に載せた薄いガラスAの上から、金属製のおもりを載せて一定の荷重をかける。これを、150℃に保持したホットプレートで15秒間加熱して測定用サンプルを得る。この測定用サンプルを用い、波長380nm〜730nmまでの範囲を10nm間隔で測定可能な反射分光光度計を用い、トナーを付着させていない前記フィルターに前記ガラス板Aを載せたサンプルをリファレンスとして、上記サンプルの各波長における吸光度を測定する。
上記の方法によると、トナーが溶融する際に前記ガラス板Aに吸着して均一なトナー層を形成するため、トナーの定着性や粒子径、形状といった違いに依らず、トナーの発色特性を安定して測定することが可能である。
さらに具体的な測定方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。
電気伝導率0.03〜0.08×104S/mのイオン交換水に、非イオン性界面活性剤(例えば、和光純薬社製コンタミノンNを用いることができる)を3質量%の濃度で溶解した水溶液をつくる。
後述の方法によりトナーの真密度を測定し、これをρT(g/cm3)とする。トナーを0.02×ρT(g)を計りとり、これに上記水溶液250gを静かに添加して混合液を作成する。この際、水溶液が泡立たないようにする。超音波洗浄機(例えば、UT−205S(シャープ社製)を用いることが出来る)を用い、前記混合液を10分間分散処理し、混合液中でトナーが十分に分散したトナー分散液を作成する。
適合フィルター径25mm(内径18mm)のフィルターホルダーに、白色度が95〜120、孔径0.2〜1.0μmの親水性メンブレンフィルター(例えば、セルロースエステルタイプメンブレンフィルター A080047(孔径0.80μm)、東洋濾紙(株)社製を用いることができる)をセットする。前記トナー分散液を8ml計りとり、このフィルターホルダーに静かに投入する。この際、トナー分散液が泡立たないようにする。次いで、アスピレーター(例えば、アスピレーターSP30;マルコス・メファー社製 等を用いることができる)の如き吸引装置を用い、前記トナー分散液を吸引濾過する。10分間吸引を続けた後、フィルターをフィルターホルダーから丁寧に取り出し、40℃で3日間フィルターを乾燥して、フィルター上に、トナーが担持されたサンプルを得る。
厚さ1〜2mm、縦76mm、横26mmのガラス板B(例えば、松浪硝子工業(株)社製 スライドガラス S1112等 を用いることができる)に上記サンプルを載せ、更に、トナー層上部に、厚さ0.12〜0.17mm、縦18mm、横18mmの薄いガラス板A(例えば、松浪硝子工業(株)社製 カバーガラス CT18189等 を用いることができる)を静かに載せる。更に、薄いガラス板A上部に、約0.54N/cm2の圧力がかかるようにおもり(例えば、縦22mm、横22mm、高さ42mmの真鍮を用いることが出来る)を乗せる。この状態で、150℃に保持したホットプレート上で15秒間静置して加熱して測定用サンプルを得る。この際、静置加熱後はおもりやガラス板Bを即座にサンプルから離し、サンプルがなるべく早く常温に戻るようにする。これとは別に、上記と同じメンブレンフィルターに薄いガラス板Aを載せ、前記サンプルと同様にしてリファレンス用サンプルとする。
反射分光光度測定としては、市販の反射分光光度計を用いることができる。具体的には、例えば、SpectroScan Transmission(GretagMacbeth社製)を用い、装置の校正時に上記リファレンスサンプルの測定をした後、測定用サンプルを測定することで、各波長におけるトナーの吸光度、L*、c*、h*を求めることができる。以下に具体的な測定条件を示す。
<測定条件>
観測光源 :D50
観測視野 :2°
濃 度 :DIN NB
白色基準 :Pap
フィルター:No(無し)
測定モード:Reflectance
上記測定条件により測定されるCIE Lch(ab)(前記のL*、c*、h*相当)、Spectrum D(波長380nm〜730nmまでの各波長における吸光度に相当)の値より、所望のデータを用いる。
先ず、シアントナーに関して記載する。
本発明のシアントナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、該シアントナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系による色相角h*の値(h* C)が210.0〜270.0にあり、波長470nmにおける吸光度(AC470)が0.300以下、波長620nmにおける吸光度(AC620)が1.500以上であり、波長670nmにおける吸光度(AC670)とAC620との比(AC620/AC670)が1.00〜1.25にある。
本発明において、シアントナーの前記反射分光光度測定によるh* Cが210.0〜270.0であることは、該トナーがシアン色のトナーであることを示している。h* Cが210.0未満であると、緑色に近い色を意味し、h* Cが270.0を越える場合には、紫色に近いことを意味する。また、AC470、AC620、及び、AC620/AC670は、シアンの特性吸収波長における発色特性を示す。
h* Cが上記範囲にあるシアントナーにおいて、AC620が大きいほど隠ぺい力が大きいシアントナーであることを示し、少ないトナー量でも高い画像濃度を有するシアン画像を形成可能であることを示す。AC470が小さいほど発色性に優れるシアントナーであることを示し、トナー量が同じ場合に、より明度が大きいシアン画像を形成可能であることを示す。また、AC620/AC670は色味に関与し、これらが上記範囲にあることで、二次色においても発色特性が良好に発現され、良好な色空間を有するフルカラー画像が形成可能となる。
シアントナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAC470が大きい値になりやすいが、AC470が0.300を越える場合、十分な画像濃度が得られる場合であっても画像の明度が低下し、くすんだ画像となる。このため、フルカラー画像を形成した場合に表現可能な色空間が小さくなる。AC620が1.500未満の場合、画像濃度が十分に得られないか、紙上のトナー量を増やす必要があるため、画像表面の凹凸低減、画像解像度の向上、トナー消費量の低減といった、本発明の効果が得られない。また、シアントナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAC620/AC670が小さい値になりやすいが、AC620/AC670が1.25を越える場合、黄色の強いシアントナーとなり、二次色の表現能力は、紫色近傍の色域が小さくなる。AC620/AC670が1.00未満の場合、赤色の強いシアントナーとなり、二次色の表現能力は、緑色近傍の色域が小さくなる。
本発明によると、前記AC620の値は大きい方が紙上のトナー量を低減でき、本発明の効果が大きくなるため好ましい。しかしながら、マゼンタトナー、イエロートナー、ブラックトナーといった他のカラートナーと組み合わせてフルカラー画像を形成する場合のカラーバランスや、着色剤の発色効率、材料コストから考慮すると、前記AC620の値は2.300以下であることが好ましい。前記AC620の範囲として、1.550〜2.200にあることがより好ましく、さらには、1.650〜2.200にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.800〜2.100である。
前記AC470の値は小さい方が発色特性として優れ、明度、彩度がより大きい画像を形成可能であるため好ましい。しかしながら、マゼンタトナー、イエロートナーといった他のカラートナーと組み合わせてフルカラー画像を形成する場合のカラーバランスや、着色剤の発色効率、材料コストから考慮すると、前記AC470の値は0.050以上であることが好ましい。前記AC470の範囲として、0.050〜0.250にあることがより好ましく、さらには、0.080〜0.250にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.100〜0.200である。
前記AC620/AC670の値としては、1.00〜1.20にあることがより好ましく、さらには、1.03〜1.18にあることが好ましく、特に好ましい範囲としては、1.05〜1.10である。カラーバランスが良好となり、表現可能な画像の色空間の増加と、解像度の向上、画像の表面凹凸低減とのバランスが特に好ましくなる。
上記AC470、AC620及び、AC670は、トナーに含有せしめる着色剤の種類や添加量、トナー中における該着色剤の存在状態、及び、その他の添加剤等の存在状態、添加剤の色等によって制御できる。
前記AC670は、1.300〜2.100にあることが好ましい。トナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAC670が大きい値になりやすい。AC670が2.100を越える場合、赤色の強いシアントナーとなりやすく、二次色の表現能力は、緑色近傍の色域が小さくなりやすい。AC670が1.300未満の場合、黄色の強いシアントナーとなりやすく、二次色の表現能力は、紫色近傍の色域が小さくなりやすい。このため、AC670の値としては、1.350〜2.000にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.600〜1.950である。カラーバランスが特に好ましく、表現可能な画像の色空間が特に大きくなる。
上記と同様の理由により、波長420nmにおける吸光度(AC420)が、0.250〜0.600にあることが好ましい。AC420が0.600を越える場合、黄色の強いシアントナーとなりやすく、AC420が0.250未満の場合、赤色の強いシアントナーとなりやすい。このため、AC420の範囲としては、0.300〜0.550にあることが好ましく、特に好ましい範囲としては、0.380〜0.550である。
本発明のシアントナーは、前記反射分光光度測定において、波長710nmにおける吸光度(AC710)とAC670との比(AC710/AC670)が、1.00〜1.30にあることが好ましい。トナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAC710/AC670が小さい値となりやすいが、AC710/AC670が上記範囲にあることで、二次色を形成した場合の発色効率がより良好となる。AC710/AC670が1.00未満の場合、二次色の画像明度が低下しやすくなる。AC470/AC670が1.30を越える場合、二次色の彩度が低下する場合がある。前記AC710/AC670の範囲としては、1.00〜1.20にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.01〜1.08である。
本発明のシアントナーは、前記反射分光光度測定において、L*の値(L* C)が35.0〜60.0にあることが好ましい。画像の明度が増大し、表現できる画像の色空間が拡大し、画像品質が更に良好になる。L* Cが35.0未満であると、他のトナーと組み合わせてフルカラー画像を形成した場合、表現できる色空間が小さくなる場合がある。L* Cが60.0を越える場合には、画像濃度が得られにくくなる。紙上のトナー量を増やした場合には、画像解像度が低下しやすく、また、画像の凹凸が大きくなって画像品位が低下しやすい。このため、上記L* Cは、40.0〜56.0にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、42.0〜50.0である。
本発明のシアントナーは、前記反射分光光度測定において、CIELAB表色系によるc*の値(c* C)が55.0〜75.0にあることが好ましい。表現できる画像の色空間が拡大し、紙上のトナー量を更に低減することが可能となる。c* Cが55.0未満であると、画像濃度が得られにくくなる。紙上のトナー量を増やした場合には、画像解像度が低下しやすく、また、画像の凹凸が大きくなって画像品位が低下しやすい。c* Cが75.0を越える場合には、他のトナーと組み合わせてフルカラー画像を形成した場合、カラーバランスが崩れやすくなる。このため、上記c* Cは、60.0〜75.0にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、63.0〜70.0である。
本発明のシアントナーは、105℃における粘度(ηC105)が500〜100000Pa・s、120℃における粘度(ηC120)が100〜20000Pa・s、ηC105とηC120との比(ηC105/ηC120)が3.0〜50.0にあることが好ましい。
本発明において、ηC105、ηC120、及び、ηC105/ηC120は、トナーの溶融特性を示す。ηC105、ηC120が小さいほど低温で溶融変形しやすいことを示し、ηC105/ηC120が1.0に近いほど、温度変化に対する溶融粘度の変化が小さいことを示す。
本発明のシアントナーは、通常よりも高い発色特性を有するため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しても、従来と同等の画像濃度、画像色域を達成することが可能となる。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、定着過程においてトナーがある程度の粘性を保持していないと、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ちやすくなる。或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、画像を構成する結着樹脂も少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーは、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることが好ましい。
本発明によると、紙上のトナー量を少なくして画像を形成する場合、定着工程において、紙に含有される水分の影響を受けやすい。このため、本発明においては、水の沸点を超える温度である105〜120℃におけるトナーの溶融粘度変化を制御することが好ましい。上記ηC105が100000Pa・sを越える場合や、ηC120が20000Pa・sを越える場合、紙上のトナー量を低減して使用すると、低温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。ηC105が500Pa・s未満の場合やηC120が100Pa・s未満の場合には、紙上のトナー量を低減して使用すると、高温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーが紙に染み込み画像の色域が低下、画像部に紙の繊維が目立ち画像品位が低下しやすくなる。
また、前記ηC105/ηC120が50.0を越える場合には、トナーが紙に染み込み、画像の彩度が低下し、又は、画像部に紙の繊維が目立ち、画像品位が低下しやすくなる。両面印刷の場合において裏面に表面の画像が浮き出てしまうといった課題が生じる場合がある。さらに、高温オフセットが発生しやすくなる。ηC105/ηC120が3.0未満では、低温オフセットが発生しやすくなるか、または、定着工程でトナーが十分に溶融変形しないため、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。さらに、定着工程における紙の進行方向に対し、紙の先端部と後半部とで、画像のグロスや色域に差を生じやすく、画像品位を低下しやすい。
このため、前記ηC105の値は、500〜50000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、1000〜30000Pa・sにあることが特に好ましい。同様に、前記ηC120の値は、100〜10000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、400〜5000Pa・sにあることが特に好ましい。また、前記ηC105/ηC120は、3.0〜25.0にあることがより好ましく、さらには、5.0〜20.0にあることが特に好ましい。
本発明のシアントナーは、示差走査熱量計(DSC)による最大吸熱ピークを60〜140℃に有することが好ましい。該吸熱ピークは、トナーに含有されるワックスの融点に由来するが、定着工程におけるトナーの溶融変形は、画像部に存在するトナーがワックスの融点以上に加熱された時点から著しく促進される。このため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着工程におけるワックスの融解挙動の影響を受けやすい。また、定着工程において、オイル塗布機構を有さないか、僅かな量のオイルしか塗布しない定着プロセスを用いる場合において、紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、紙上に存在するトナーが少ないため、画像を構成するトナー層に含有されるワックスも少なくなる。このため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しようとした場合、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。前記最大吸熱ピークの温度が60℃未満であると、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に多く溶け込みやすく、トナーの溶融粘度が低下しやすい。これにより、前記ηC105やηC120の値が小さくなりやすく、また、前記ηC105/ηC120の値が大きくなりやすい。また、定着工程においてワックスが溶融した際、該ワックスの一部が結着樹脂に溶け込み、トナーの離型性能が低下しやすい。このため、トナー消費量を低減して使用する場合に、高温オフセットが著しく発生しやすくなる。一方、最大吸熱ピークが140℃を越える場合には、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に溶け込む量が著しく小さく、ワックスによる可塑効果が得られにくい。これにより、前記ηC105やηC120の値が大きくなりやすく、また、前記ηC105/ηC120の値が小さくなりやすい。また、最大吸熱ピークが140℃を越えるようなワックスは結晶性が大きいため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着画像中に混入するワックス結晶の影響が大きく、表現できる画像の色域が低下しやすくなる。このため、前記最大吸熱ピークは、60〜95℃に有することがより好ましく、更には、65℃〜90℃に有することが好ましい。
上記と同様の理由により、本発明のシアントナーが有する最大吸熱ピークは、その半値幅が0.5〜20.0℃にあることが好ましい。加えて、紙上のトナー量を小さくした場合、該半値幅が20.0℃を越えると、通紙方向の前半部と後半部とで画像にグロスむらや濃度むらが発生しやすくなる。該半値幅が0.5℃未満である場合、通紙方向の後半部にオフセットが発生しやすくなる。このため、該半値幅は、1.0〜15.0℃にあることがより好ましく、2.0〜10.0℃にあることが特に好ましい。
本発明のシアントナーは、前記反射分光特性を発現するために好適な着色剤、及び、添加量を用いることができる。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し、8〜18質量部にあることが好ましい。ランニングコスト低減の目的には、トナーに含有される着色材料はなるべく少ない方が好ましいが、着色剤の含有量が8質量部未満であると、十分な発色特性が得られない場合がある。また、着色剤の含有量が18質量部を越える場合には、表現できる画像の色空間が低減する場合がある。
本発明のシアントナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として、抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分の酸価(AC1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分の酸価(AC2)の関係が下記式1を満足することが好ましい。
AC1>AC2 (式1)
現像器内においてトナーは、トナー担持体や静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いシアントナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。このため、本発明のトナーは、従来にも増して、トナーの帯電特性を精密に制御することが好ましい。本発明において、トナー粒子の表面層に、トナー粒子の内部よりも高い酸価を有する樹脂層を設け、トナー粒子の内部に含有される着色剤がトナー表面に露出することを抑制することが好ましい。また、トナー粒子の表面層に高い酸価を有する樹脂層を設けることで、該酸価に由来する極性基が帯電助剤として作用すると考えられ、帯電不良が発生しにくくなる。本発明のシアントナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分、即ち、その主成分がトナー表面層を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AC1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分、即ち、その主成分がトナー核体部分を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AC2)とが、前記式1を満足する場合、第1の成分がトナー表面層を形成することにより、トナー表面へ着色剤が露出することが抑制され、また、酸価の大きい樹脂がトナー表面に多く存在することにより、トナーの帯電性がさらに良好になる。
前記AC1は、3.0〜50.0mgKOH/gにあることが好ましい。AC1が3.0mgKOH/g未満であると、高酸価成分がトナー表面に存在することによる帯電性向上の効果が小さくなりやすい。AC1が50.0mgKOH/gを越える場合、該成分の酸価に由来する極性基と、着色剤に含有される極性基とが相互作用し、トナーの発色特性が低下する場合がある。このため、前記AC1は、5.0〜30.0mgKOH/gにあることが特に好ましい。また、同様の理由により、AC1とAC2との差(AC1−AC2)は、0.5〜30.0mgKOH/gにあることが好ましく、さらには、2.0〜20.0にあることが好ましい。
上記AC1及びAC2は、酸価の異なる2種類以上の樹脂を用い、トナー中における該樹脂の存在状態を制御することにより制御可能である。具体的には、(1)スルホン酸基やカルボン酸基を有する荷電制御樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい荷電制御樹脂をトナーに添加する方法、(2)スルホン酸基やカルボン酸基を有する樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい樹脂を用い、トナー表面近傍に、該樹脂を有する被覆層を形成する方法、(3)スルホン酸基やカルボン酸基を有する高酸価の結着樹脂と、スルホン酸基やカルボン酸基を有する低酸価の結着樹脂を用い、相分離等の方法により、トナーの中心部から表面に近づくほど高酸価の結着樹脂の存在確立を大きくする方法、などを用いることができる。
本発明のシアントナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶成分を60.0乃至97.0質量%含有し、該THF可溶成分は、スルホン酸基に由来する硫黄元素を0.010〜1.500質量%含有することが好ましい。本発明のトナーは、通常よりも発色特性に優れ、トナー使用量を少なく用いることが可能となる。現像されるトナーの量を少なくするために、トナーの帯電特性としては、通常よりも大きく設定することが好ましい。しかし、トナーに荷電制御剤を多量に添加せしめると、トナーの発色特性が低下する場合がある。本発明のトナーは、THF可溶成分が所定量のスルホン酸基を含有することで、トナーの発色特性を低下させることなく、トナーの帯電特性を向上することができる。また、スルホン酸基はトナーに含有される結着樹脂、その他添加剤と、水素結合やイオン結合といった相互作用が働きやすく、トナーの発色特性を特に良好に発現することが可能となる。一方で、スルホン酸基の極性により、トナーに含有されるTHF可溶成分の含有量が少なくなる場合がある。さらに、通常よりもトナーの使用量を少なくして画像を形成する場合、耐オフセット性能、グロス均一性、耐しみ込み性が低下しやすくなる。該THF可溶成分の含有量が60.0質量%未満であると、トナーの発色特性が低下しやすい。該THF可溶成分の含有量が97.0質量%を越える場合、耐オフセット性能、グロス均一性能、耐しみ込み性能が低下しやすい。また、前記硫黄元素の含有量が0.010質量%未満の場合、発色特性の向上が小さくなる場合がある。また、現像に使用されるトナーの量が増大し、ドット再現性能が低下する場合がある。前記硫黄元素の含有量が1.500質量%を越える場合、スルホン酸基と着色剤との相互作用が増大し、発色特性が低下する場合がある。また、トナー担持体、静電荷像担持体との吸着性が大きくなり、ドット再現性能が低下する場合がある。尚、上記THF可溶成分の含有量は、70.0乃至95.0質量%にあることがより好ましく、75.0乃至95.0質量%にあることがさらに好ましく、80.0乃至93.0質量%にあることが特に好ましい。また、上記スルホン酸基に由来する硫黄元素の含有量としては、0.010乃至0.500質量%にあることがより好ましく、0.010乃至0.150質量%にあることが更に好ましく、0.020乃至0.100質量%にあることが特に好ましい。
本発明のマゼンタトナーに関して記載する。
本発明のマゼンタトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、該マゼンタトナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系による色相角h*の値(h* M)が330.0〜30.0にあり、波長570nmにおける吸光度(AM570)が1.550以上、波長620nmにおける吸光度(AM620)が0.250以下であり、波長450nmにおける吸光度(AM450)とAM570との比(AM570/AM450)が1.80〜3.50にある。
本発明において、マゼンタトナーの前記反射分光光度測定によるh* Mが330.0〜30.0にあることは、該トナーがマゼンタ色のトナーであることを示している。h* Mが330.0未満であると、紫色に近い色を意味し、h* Mが30.0を越える場合には、オレンジ色に近い色を意味する。また、AM570、AM620、及び、AM570/AM450は、マゼンタの特性吸収波長における発色特性を示す。
h* Mが上記範囲にあるマゼンタトナーにおいて、AM570が大きいほど隠ぺい力が大きいマゼンタトナーであることを示し、少ないトナー量でも高い画像濃度を有するマゼンタ画像を形成可能であることを示す。また、AM620が小さいほど発色性に優れるマゼンタトナーであることを示し、より彩度が大きいマゼンタ画像を形成可能であることを示す。また、AM570/AM450はトナーの色味を示し、これらの値が上記範囲にあることで、二次色においても発色特性が良好に発現され、良好な色空間を有するフルカラー画像が形成可能となる。
マゼンタトナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAM620が大きい値になりやすいが、AM620が0.250を越える場合、十分な画像濃度が得られる場合であっても画像の明度が低下し、くすんだ画像となる。AM570が1.550未満の場合、画像濃度が十分に得られないか、紙上のトナー量を増やす必要があるため、画像表面の凹凸低減、画像解像度の向上、トナー消費量の低減といった、本発明の効果が得られない。また、マゼンタトナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAM570/AM450が小さい値になりやすいが、AM570/AM450が1.80未満の場合、黄色の強いマゼンタトナーとなり、二次色の表現能力は、紫色近傍の色域が小さくなる。AM570/AM450が3.50を越える場合、青色の強いマゼンタトナーとなり、二次色の表現能力は、赤色近傍の色域が小さくなる。
本発明によると、前記AM570の値は大きい方が紙上のトナー量を低減でき、本発明の効果が大きくなるため好ましい。しかしながらが、シアントナー、イエロートナー、ブラックトナーといった他のカラートナーと組み合わせてフルカラー画像を形成する場合のカラーバランスや、着色剤の発色効率、材料コストから考慮すると、前記AM570の値は2.300以下であることが好ましい。前記AM570の範囲としては、1.600〜2.200にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.800〜2.200である。
前記AM620の値は小さい方が発色特性として優れ、明度、彩度がより大きい画像を形成可能であるため好ましい。しかしながら、シアントナー、イエロートナー、ブラックトナーといった他のカラートナーと組み合わせてフルカラー画像を形成する場合のカラーバランスや、着色剤の発色効率、材料コストから考慮すると、前記AM620の値は0.050以上であることが好ましい。前記AM620の範囲としては、0.050〜0.200にあることがより好ましく、さらには、0.100〜0.174にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.150〜0.170である。
前記AM570/AM450の範囲としては、2.00〜3.20にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、2.20〜2.70である。カラーバランスが特に好ましく、表現可能な画像の色空間が特に大きくなる。
上記AM620、AM570、及びAM570/AM450は、トナーに含有せしめる着色剤の種類や添加量、トナー中における該着色剤の存在状態、及び、その他の添加剤等の存在状態、添加剤の色等によって制御できる。
前記AM450は、0.400〜1.100にあることが好ましい。トナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAM450が大きくなりやすい。AM450が1.100を越える場合、黄色の強いマゼンタトナーとなりやすく、二次色の表現能力は、紫色近傍の色域が小さくなりやすい。AM450が0.400未満の場合、青色の強いマゼンタトナーとなりやすく、二次色の表現能力は、赤色近傍の色域が小さくなりやすい。このため、AM450の範囲としては、0.560〜1.000にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.700〜0.950である。
上記と同様の理由により、本発明のトナーは、波長490nmにおける吸光度(AM490)が0.600〜1.500にあることが好ましい。AM490が0.600未満の場合、青色の強いトナーとなりやすく、AM490が1.500を越える場合には、黄色の強いトナーとなりやすい。このため、AM490の範囲としては、0.800〜1.400にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.900〜1.360である。
本発明のトナーは、前記反射分光光度測定において、波長550nmにおける吸光度(AM550)とAM570との比(AM570/AM550)が0.98〜1.20にあることが好ましい。トナーに含有される着色剤を増やすとAM570/AM550が小さい値となりやすい。AM570/AM550が0.98未満にあると、明度の小さい画像となりやすい。AM570/AM550が1.20を越える場合には、彩度の小さい画像となりやすい。このため、AM570/AM550の範囲としては、0.98〜1.10にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.98〜1.06である。
本発明のマゼンタトナーは、前記反射分光光度測定において、L*の値(L* M)が35.0〜55.0にあることが好ましい。表現できる画像の色空間が拡大し、画像品質が更に良好になる。L* Mが35.0未満であると、他のトナーと組み合わせてフルカラー画像を形成した場合、表現できる色空間が小さくなる場合がある。L* Mが55.0を越える場合には、画像濃度が得られにくくなる。紙上のトナー量を増やした場合には、画像解像度が低下しやすく、また、画像の凹凸が大きくなって画像品位が低下しやすい。このため、上記L* Mは、40.0〜52.0にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、40.0〜49.0である。
本発明のマゼンタトナーは、前記反射分光光度測定において、CIELAB表色系によるc*の値(c* M)が70.0〜85.0にあることが好ましい。表現できる画像の色空間が拡大し、紙上のトナー量を更に低減することが可能となる。c* Mが70.0未満であると、画像濃度が得られにくくなる。紙上のトナー量を増やした場合には、画像解像度が低下しやすく、また、画像の凹凸が大きくなって画像品位が低下しやすい。c* Mが85.0を越える場合には、他のトナーと組み合わせてフルカラー画像を形成した場合、カラーバランスが崩れやすくなる場合がある。このため、上記c* Mは、75.0〜85.0であることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、77.0〜82.0である。
本発明のマゼンタトナーは、105℃における粘度(ηM105)が500〜100000Pa・s、120℃における粘度(ηM120)が100〜20000Pa・s、ηM105とηM120との比(ηM105/ηM120)が3.0〜50.0にあることが好ましい。
本発明において、ηM105、ηM120、及び、ηM105/ηM120は、トナーの溶融特性を示す。ηM105、ηM120が小さいほど低温で溶融変形しやすいことを示し、ηM105/ηM120が1.0に近いほど、温度変化に対する溶融粘度の変化が小さいことを示す。
本発明のマゼンタトナーは、通常よりも高い発色特性を有するため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しても、従来と同等の画像濃度、画像色域を達成することが可能となる。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、定着過程においてトナーがある程度の粘性を保持していないと、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ち、或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、画像を構成する結着樹脂も少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーは、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることが好ましい。
本発明によると、紙上のトナー量を少なくして画像を形成する場合、定着工程において、紙に含有される水分の影響を受けやすい。このため、本発明においては、水の沸点を超える温度である105〜120℃におけるトナーの溶融粘度変化を制御することが好ましい。上記ηM105が100000Pa・sを越える場合や、ηM120が20000Pa・sを越える場合、紙上のトナー量を低減して使用すると、低温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。ηM105が500Pa・s未満の場合やηM120が100Pa・s未満の場合には、紙上のトナー量を低減して使用すると、高温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーが紙に染み込み画像の色域が低下、画像部に紙の繊維が目立ち画像品位が低下しやすくなる。
また、前記ηM105/ηM120が50.0を越える場合には、トナーが紙に染み込み、画像の彩度が低下し、又は、画像部に紙の繊維が目立ち、画像品位が低下しやすくなる。両面印刷の場合において裏面に表面の画像が浮き出てしまうといった課題が生じる場合がある。さらに、高温オフセットが発生しやすくなる。ηM105/ηM120が3.0未満では、低温オフセットが発生しやすくなるか、または、定着工程でトナーが十分に溶融変形しないため、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。さらに、定着工程における紙の進行方向に対し、紙の先端部と後半部とで、画像のグロスや色域に差を生じやすく、画像品位を低下しやすい。
このため、前記ηM105の値は、500〜50000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、1000〜30000Pa・sにあることが特に好ましい。同様に、前記ηM120の値は、100〜10000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、400〜5000Pa・sにあることが特に好ましい。また、前記ηM105/ηM120は、3.0〜25.0にあることがより好ましく、さらには、5.0〜20.0にあることが特に好ましい。
本発明のマゼンタトナーは、示差走査熱量計(DSC)による最大吸熱ピークを60〜140℃に有することが好ましい。該吸熱ピークは、トナーに含有されるワックスの融点に由来するが、定着工程におけるトナーの溶融変形は、画像部に存在するトナーがワックスの融点以上に加熱された時点から著しく促進される。このため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着工程におけるワックスの融解挙動の影響を受けやすい。また、定着工程において、オイル塗布機構を有さないか、僅かな量のオイルしか塗布しない定着プロセスを用いる場合において、紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、紙上に存在するトナーが少ないため、画像を構成するトナー層に含有されるワックスも少なくなる。このため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しようとした場合、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。前記最大吸熱ピークの温度が60℃未満であると、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に多く溶け込みやすく、トナーの溶融粘度が低下しやすい。これにより、前記ηM105やηM120の値が小さくなりやすく、また、前記ηM105/ηM120の値が大きくなりやすい。また、定着工程においてワックスが溶融した際、該ワックスの一部が結着樹脂に溶け込み、トナーの離型性能が低下しやすい。このため、トナー消費量を低減して使用する場合に、高温オフセットが著しく発生しやすくなる。一方、最大吸熱ピークが140℃を越える場合には、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に溶け込む量が著しく小さく、ワックスによる可塑効果が得られにくい。これにより、前記ηM105やηM120の値が大きくなりやすく、また、前記ηM105/ηM120の値が小さくなりやすい。また、最大吸熱ピークが140℃を越えるようなワックスは結晶性が大きいため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着画像中に混入するワックス結晶の影響が大きく、表現できる画像の色域が低下しやすくなる。このため、前記最大吸熱ピークは、60〜95℃に有することがより好ましく、更には、65℃〜90℃に有することが好ましい。
上記と同様の理由により、本発明のマゼンタトナーが有する最大吸熱ピークは、その半値幅が0.5〜20.0℃にあることが好ましい。加えて、紙上のトナー量を小さくした場合、該半値幅が20.0℃を越えると、通紙方向の前半部と後半部とで画像にグロスむらや濃度むらが発生しやすくなる。該半値幅が0.5℃未満である場合、通紙方向の後半部にオフセットが発生しやすくなる。このため、該半値幅は、1.0〜15.0℃にあることがより好ましく、2.0〜10.0℃にあることが特に好ましい。
本発明のマゼンタトナーは、前記反射分光特性を発現するために好適な着色剤、及び、添加量を用いることができる。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し、8〜18質量部にあることが好ましい。ランニングコスト低減の目的には、トナーに含有される着色材料はなるべく少ない方が好ましいが、着色剤の含有量が8質量部未満であると、十分な発色特性が得られない場合がある。また、着色剤の含有量が18質量部を越える場合には、表現できる画像の色空間が低減する場合がある。
本発明のマゼンタトナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として、抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分の酸価(AM1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分の酸価(AM2)の関係が下記式3を満足することが好ましい。
AM1>AM2 (式3)
現像器内においてトナーは、トナー担持体や静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いマゼンタトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。このため、本発明のトナーは、従来にも増して、トナーの帯電特性を精密に制御することが好ましい。本発明において、トナー粒子の表面層に、トナー粒子の内部よりも高い酸価を有する樹脂層を設け、トナー粒子の内部に含有される着色剤がトナー表面に露出することを抑制することが好ましい。また、トナー粒子の表面層に高い酸価を有する樹脂層を設けることで、該酸価に由来する極性基が帯電助剤として作用すると考えられ、帯電不良が発生しにくくなる。本発明のマゼンタトナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分、即ち、その主成分がトナー表面層を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AM1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分、即ち、その主成分がトナー核体部分を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AM2)とが、前記式3を満足する場合、第1の成分がトナー表面層を形成することにより、トナー表面へ着色剤が露出することが抑制され、また、酸価の大きい樹脂がトナー表面に多く存在することにより、トナーの帯電性がさらに良好になる。
前記AM1は、3.0〜50.0mgKOH/gにあることが好ましい。AM1が3.0mgKOH/g未満であると、高酸価成分がトナー表面に存在することによる帯電性向上の効果が小さくなりやすい。AM1が50.0mgKOH/gを越える場合、該成分の酸価に由来する極性基と、着色剤に含有される極性基とが相互作用し、トナーの発色特性が低下する場合がある。このため、前記AM1は、5.0〜30.0mgKOH/gにあることが特に好ましい。また、同様の理由により、AM1とAM2との差(AM1−AM2)は、0.5〜30.0mgKOH/gにあることが好ましく、さらには、2.0〜20.0にあることが好ましい。
上記AM1及びAM2は、酸価の異なる2種類以上の樹脂を用い、トナー中における該樹脂の存在状態を制御することにより制御可能である。具体的には、(1)スルホン酸基やカルボン酸基を有する荷電制御樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい荷電制御樹脂をトナーに添加する方法、(2)スルホン酸基やカルボン酸基を有する樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい樹脂を用い、トナー表面近傍に、該樹脂を有する被覆層を形成する方法、(3)スルホン酸基やカルボン酸基を有する高酸価の結着樹脂と、スルホン酸基やカルボン酸基を有する低酸価の結着樹脂を用い、相分離等の方法により、トナーの中心部から表面に近づくほど高酸価の結着樹脂の存在確立を大きくする方法、などを用いることができる。
本発明のマゼンタトナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶成分を60.0乃至97.0質量%含有し、該THF可溶成分は、スルホン酸基に由来する硫黄元素を0.010〜1.500質量%含有することが好ましい。本発明のトナーは、通常よりも発色特性に優れ、トナー使用量を少なく用いることが可能となる。現像されるトナーの量を少なくするために、トナーの帯電特性としては、通常よりも大きく設定することが好ましい。しかし、トナーに荷電制御剤を多量に添加せしめると、トナーの発色特性が低下する場合がある。本発明のトナーは、THF可溶分が所定量のスルホン酸基を含有することで、トナーの発色特性を低下させることなく、トナーの帯電特性を向上することができる。また、スルホン酸基はトナーに含有される結着樹脂、その他添加剤と、水素結合やイオン結合といった相互作用が働きやすく、トナーの発色特性を特に良好に発現することが可能となる。一方で、スルホン酸基の極性により、トナーに含有されるTHF可溶成分の含有量が少なくなる場合がある。さらに、通常よりもトナーの使用量を少なくして画像を形成する場合、耐オフセット性能、グロス均一性能、耐しみ込み性能が低下しやすい。該THF可溶成分の含有量が60.0質量%未満であると、トナーの発色特性が低下しやすい。該THF可溶成分の含有量が97.0質量%を越える場合、耐オフセット性能、グロス均一性能、耐しみ込み性能が低下しやすい。また、前記硫黄元素の含有量が0.010質量%未満の場合、発色特性の向上が小さくなる場合がある。また、現像に使用されるトナーの量が増大し、ドット再現性能が低下する場合がある。前記硫黄元素の含有量が1.500質量%を越える場合、スルホン酸基と着色剤との相互作用が増大し、発色特性が低下する場合がある。また、トナー担持体、静電荷像担持体との吸着性が大きくなり、ドット再現性能が低下する場合がある。尚、上記THF可溶成分の含有量は、70.0乃至95.0質量%にあることがより好ましく、75.0乃至95.0質量%にあることがさらに好ましく、80.0乃至93.0質量%にあることが特に好ましい。また、上記スルホン酸基に由来する硫黄元素の含有量としては、0.010乃至0.500質量%にあることがより好ましく、0.010乃至0.150質量%にあることが更に好ましく、0.020乃至0.100質量%にあることが特に好ましい。
本発明のイエロートナーに関して記載する。
本発明のイエロートナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、該イエロートナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系による色相角h*の値(h* Y)が75.0〜120.0にあり、波長450nmにおける吸光度(AY450)が1.600以上、波長470nmにおける吸光度(AY470)が1.460以上、波長510nmにおける吸光度(AY510)が0.500以下にある。
本発明において、イエロートナーの前記反射分光光度測定によるh* Yが75.0〜120.0であることは、該トナーがイエロー色のトナーであることを示している。h* Yが75.0未満であると、オレンジ色に近い色を意味し、h* Yが120.0を越える場合には、黄緑色に近い色を意味する。また、AY450、AY470、及び、AY510は、イエローの特性吸収波長における発色特性を示す。
h* Yが上記範囲にあるイエロートナーにおいて、AY450、及び、AY470が大きいほど隠ぺい力が大きいイエロートナーであることを示し、少ないトナー量でも高い画像濃度を有するイエロー画像を形成可能であることを示す。また、AY510が小さいほど発色性に優れるイエロートナーであることを示し、二次色においても発色特性が良好に発現され、良好な色空間を有するフルカラー画像が形成可能となる。
イエロートナーに含有される着色剤の添加量を増やすと、AY510が大きい値になりやすいが、AY510が0.500を越える場合、十分な画像濃度が得られる場合であっても画像の彩度が低下し、くすんだ画像となる。このため、フルカラー画像を形成した場合に表現可能な色空間が小さくなる。一方、AY450が1.600未満の場合、又は、AY470が1.460未満の場合、画像濃度が十分に得られないか、紙上のトナー量を増やす必要があるため、画像表面の凹凸低減、画像解像度の向上、トナー消費量の低減といった、本発明の効果が得られない。
本発明によると、前記AY450の値は大きい方が紙上のトナー量を低減でき、本発明の効果が大きくなるため好ましい。しかしながら、シアントナー、マゼンタトナー、ブラックトナーといった他のカラートナーと組み合わせてフルカラー画像を形成する場合のカラーバランスや、着色剤の発色効率、材料コストから考慮すると、前記AY450の値は2.300以下であることが好ましい。前記AY450の範囲としては、1.650〜2.200にあることがより好ましく、さらには、1.700〜2.200にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.780〜2.100である。
同様に、前記AY470の値は2.200以下であることが好ましい。前記AY470の範囲としては、1.500〜2.100にあることがより好ましく、さらには、1.650〜2.000にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.700〜1.980である。
前記AY510の値は小さい方が発色特性として優れ、明度、彩度がより大きい画像を形成可能であるため好ましい。しかしながら、シアントナー、イエロートナーといった他のカラートナーと組み合わせてフルカラー画像を形成する場合のカラーバランスや、着色剤の発色効率、材料コストから考慮すると、前記AY510の値は0.020以上であることが好ましい。前記AY510の範囲としては、0.050〜0.350にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.150〜0.320である。
本発明のイエロートナーは、前記反射分光光度測定において、490nmにおける吸光度(AY490)とAY470との比(AY470/AY490)が1.20〜2.10にあることが好ましい。トナーに含有される着色剤の添加量を増やすとAY470/AY490が小さい値になりやすい。AY470/AY490が1.20未満の場合、赤色の強いイエロートナーとなりやすく、二次色の表現能力は、緑色近傍の色域が小さくなりやすい。AY470/AY490が2.10を越える場合、緑色の強いイエロートナーとなりやすく、二次色の表現能力は、赤色近傍の色域が小さくなりやすい。このため、AY470/AY490の範囲としては、1.30〜1.90にあることがより好ましく、さらには、1.30〜1.60にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.40〜1.52である。
本発明のイエロートナーは、前記反射分光光度測定において、L*の値(L* Y)が85.0〜100.0にあることが好ましい。表現できる画像の色空間が拡大し、画像品質が更に良好になる。L* Yが85.0未満であると、画像の明度が低下し、表現できる色空間が小さくなる場合がある。L* Yが100.0を越える場合には、他のトナーと組み合わせてフルカラー画像を形成した場合、カラーバランスが崩れやすくなる場合がある。このため、上記L* Yは、90.0〜100.0であることがより好ましく、90.0〜95.0であることがさらに好ましく、91.0〜93.0であることが特に好ましい。
本発明のイエロートナーは、前記反射分光光度測定において、CIELAB表色系によるc*の値(c* Y)が95.0〜130.0にあることが好ましい。表現できる画像の色空間が拡大し、紙上のトナー量を更に低減することが可能となる。c* Yが90.0未満であると、画像の彩度が低下しやすくなり、紙上のトナー量を増やす必要が生じる場合がある。c* Yが130.0を越える場合には、他のトナーと組み合わせてフルカラー画像を形成した場合、カラーバランスが崩れやすくなる場合がある。このため、上記c* Yは、103.0〜125.0であることがより好ましく、103.0〜118.0であることがさらに好ましく、108.0〜118.0であることが特に好ましい。
本発明のイエロートナーは、105℃における粘度(ηY105)が500〜100000Pa・s、120℃における粘度(ηY120)が100〜20000Pa・s、ηY105とηY120との比(ηY105/ηY120)が3.0〜50.0にあることが好ましい。
本発明において、ηY105、ηY120、及び、ηY105/ηY120は、トナーの溶融特性を示す。ηY105、ηY120が小さいほど低温で溶融変形しやすいことを示し、ηY105/ηY120が1.0に近いほど、温度変化に対する溶融粘度の変化が小さいことを示す。
画像形成装置の高速化、低消費エネルギー化のために、トナーは低温定着性に優れることが好ましい。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、定着過程においてトナーがある程度の粘性を保持していないと、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ちやすくなる。或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。また、紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、該トナーに含有されることで紙上に存在する結着樹脂が少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーとしては、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることと、好適な溶融特性を有することが好ましい。
本発明によると、紙上のトナー量を小さくした場合、定着工程において、紙に含有される水分の影響を受けやすい。このため、本発明においては、水の沸点を超える温度である105〜120℃におけるトナーの溶融粘度変化を制御することが好ましい。上記ηY105が100000Pa・sを越える場合や、ηY120が20000Pa・sを越える場合、紙上のトナー量を低減して使用すると、低温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。ηY105が500Pa・s未満の場合やηY120が100Pa・s未満の場合には、紙上のトナー量を低減して使用すると、高温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーが紙に染み込み、画像の色域が低下、画像部に紙の繊維が目立ち画像品位が低下しやすくなる。
また、ηY105/ηY120が50.0を越える場合には、トナーが紙に染み込み、画像の彩度が低下し、又は、画像部に紙の繊維が目立ち、画像品位が低下しやすくなる。両面印刷の場合において裏面に表面の画像が浮き出てしまうといった課題が生じる場合がある。さらに、高温オフセットが発生しやすくなる。ηY105/ηY120が3.0未満では、低温オフセットが発生しやすくなるか、または、定着工程でトナーが十分に溶融変形しないため、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。さらに、定着工程における紙の進行方向に対し、紙の先端部と後半部とで、画像のグロスや色域に差を生じやすく、画像品位を低下しやすい。
このため、前記ηY105の値としては500〜50000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、1000〜30000Pa・sにあることが特に好ましい。同様に、前記ηY120の値としては100〜10000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、100〜5000Pa・sにあることが特に好ましい。また、前記ηY105/ηY120は、3.0〜25.0にあることがより好ましく、さらには、5.0〜20.0にあることが特に好ましい。
さらに、本発明のイエロートナーは、示差走査熱量計(DSC)による最大吸熱ピークを60〜140℃に有することが好ましい。該吸熱ピークは、トナーに含有されるワックスの融点に由来するが、定着工程におけるトナーの溶融変形は、画像部に存在するトナーがワックスの融点以上に加熱された時点から著しく促進される。このため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着工程におけるワックスの融解挙動の影響を受けやすい。また、定着工程において、オイル塗布機構を有さないか、僅かなオイルしか塗布しない定着プロセスを用いる場合において、紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、紙上に存在するトナーが少ないため、該トナーに含有されることで紙上に存在するワックスも少なくなる。このため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しようとした場合、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。前記最大吸熱ピークの温度が60℃未満であると、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に多く溶け込み、トナーの溶融粘度が低下しやすい。これにより、前記ηY105やηY120の値が小さくなりやすく、また、前記ηY105/ηY120の値が大きくなりやすく、トナーが紙に染み込み、画像の彩度が低下し、あるいは画像部に紙の繊維が目立ち、画像品位が低下しやすくなる。また、定着工程においてワックスが溶融した際、該ワックスの一部が結着樹脂に溶け込み、離型性能が低下しやすい。このため、トナー消費量を低減して使用する場合に、高温オフセットが著しく発生しやすくなる。一方、最大吸熱ピークが140℃を越える場合には、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に溶け込む量が著しく小さく、ワックスによる可塑効果が得られにくい。このため、トナーの定着性能が低下し、定着工程でトナーが十分に溶融変形しないため、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下しやすくなる。また、最大吸熱ピークが140℃を越えるようなワックスは結晶性が大きいため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着画像中に混入するワックス結晶の影響が大きく、表現できる画像の色域が低下しやすくなる。このため、前記最大吸熱ピークは、60〜95℃に有することがより好ましく、更には、65℃〜85℃に有することが好ましい。
上記と同様の理由により、本発明のイエロートナーが有する最大吸熱ピークは、その半値幅が0.5〜20.0℃にあることが好ましい。紙上のトナー量を小さくした場合、該半値幅が20.0℃を越えると、通紙方向の前半部と後半部とで画像にグロスむらや濃度むらが発生しやすくなる。また、該半値幅が0.5℃未満である場合、オフセットが発生しやすくなる。このため、該半値幅としては、1.0〜15.0℃であることがより好ましく、特には2.0〜10.0℃であることが好ましい。
本発明のイエロートナーは、結着樹脂100質量部に対し、着色剤を8〜18質量部含有することが好ましい。ランニングコスト低減の目的には、トナーに含有される着色材料はなるべく少ない方が好ましいが、着色剤の含有量が8質量部未満であると、十分な発色特性が得られない場合がある。また、着色剤の含有量が18質量部を越える場合には、表現できる画像の色空間が低減してしまう場合がある。
本発明のイエロートナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として、抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分の酸価(AY1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分の酸価(AY2)の関係が下記式5を満足することが好ましい。
AY1>AY2 (式5)
現像器内においてトナーは、トナー担持体や静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いイエロートナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。このため、本発明のトナーは、従来にも増して、トナーの帯電特性を精密に制御することが好ましい。本発明において、トナー粒子の表面層に、トナー粒子の内部よりも高い酸価を有する樹脂層を設け、トナー粒子の内部に含有される着色剤がトナー表面に露出することを抑制することが好ましい。また、トナー粒子の表面層に高い酸価を有する樹脂層を設けることで、該酸価に由来する極性基が帯電助剤として作用すると考えられ、帯電不良が発生しにくくなる。本発明のイエロートナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分、即ち、その主成分がトナー表面層を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AY1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分、即ち、その主成分がトナー核体部分を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AY2)とが、前記式5を満足する場合、第1の成分がトナー表面層を形成することにより、トナー表面へ着色剤が露出することが抑制され、また、酸価の大きい樹脂がトナー表面に多く存在することにより、トナーの帯電性がさらに良好になる。
前記AY1は、3.0〜50.0mgKOH/gにあることが好ましい。AY1が3.0mgKOH/g未満であると、高酸価成分がトナー表面に存在することによる帯電性向上の効果が小さくなりやすい。AY1が50.0mgKOH/gを越える場合、該成分の酸価に由来する極性基と、着色剤に含有される極性基とが相互作用し、トナーの発色特性が低下する場合がある。このため、前記AY1は、5.0〜30.0mgKOH/gにあることが特に好ましい。また、同様の理由により、AY1とAY2との差(AY1−AY2)は、0.5〜30.0mgKOH/gにあることが好ましく、さらには、2.0〜20.0にあることが好ましい。
上記AY1及びAY2は、酸価の異なる2種類以上の樹脂を用い、トナー中における該樹脂の存在状態を制御することにより制御可能である。具体的には、(1)スルホン酸基やカルボン酸基を有する荷電制御樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい荷電制御樹脂をトナーに添加する方法、(2)スルホン酸基やカルボン酸基を有する樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい樹脂を用い、トナー表面近傍に、該樹脂を有する被覆層を形成する方法、(3)スルホン酸基やカルボン酸基を有する高酸価の結着樹脂と、スルホン酸基やカルボン酸基を有する低酸価の結着樹脂を用い、相分離等の方法により、トナーの中心部から表面に近づくほど高酸価の結着樹脂の存在確立を大きくする方法、などを用いることができる。
本発明のイエロートナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶成分を60.0乃至97.0質量%含有し、該THF可溶成分は、スルホン酸基に由来する硫黄元素を0.010〜1.500質量%含有することが好ましい。本発明のトナーは、通常よりも発色特性に優れ、トナー使用量を少なく用いることが可能となる。現像されるトナーの量を少なくするために、トナーの帯電特性としては、通常よりも大きく設定することが好ましい。しかし、トナーに荷電制御剤を多量に添加せしめると、トナーの発色特性が低下する場合がある。本発明のトナーは、THF可溶成分が所定量のスルホン酸基を含有することで、トナーの発色特性を低下させることなく、トナーの帯電特性を向上することができる。また、スルホン酸基はトナーに含有される結着樹脂、その他添加剤と、水素結合やイオン結合といった相互作用が働きやすく、トナーの発色特性を特に良好に発現することが可能となる。一方で、スルホン酸基の極性により、トナーに含有されるTHF可溶成分の含有量が少なくなる場合がある。さらに、通常よりもトナーの使用量を少なくして画像を形成する場合、耐オフセット性能、グロス均一性能、耐しみ込み性能が低下しやすくなる。該THF可溶成分の含有量が60.0質量%未満であると、トナーの発色特性が低下しやすい。該THF可溶成分の含有量が97.0質量%を越える場合、耐オフセット性能、グロス均一性能、耐しみ込み性能が低下しやすい。また、前記硫黄元素の含有量が0.010質量%未満の場合、発色特性の向上が小さくなる場合がある。また、現像に使用されるトナーの量が増大し、ドット再現性能が低下する場合がある。前記硫黄元素の含有量が1.500質量%を越える場合、スルホン酸基と着色剤との相互作用が増大し、発色特性が低下する場合がある。また、トナー担持体、静電荷像担持体との吸着性が大きくなり、ドット再現性能が低下する場合がある。尚、上記THF可溶成分の含有量は、70.0乃至95.0質量%にあることがより好ましく、75.0乃至95.0質量%にあることがさらに好ましく、80.0乃至93.0質量%にあることが特に好ましい。また、上記スルホン酸基に由来する硫黄元素の含有量としては、0.010乃至0.500質量%にあることがより好ましく、0.010乃至0.150質量%にあることが更に好ましく、0.020乃至0.100質量%にあることが特に好ましい。
本発明のブラックトナーに関して記載する。
本発明のブラックトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、該ブラックトナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系によるc*の値(c* K)が20.0以下にあり、波長600nmにおける吸光度(AK600)が1.610以上、波長460nmにおける吸光度(AK460)とAK600との比(AK600/AK460)が0.970〜1.035にある。
本発明において、ブラックトナーの前記反射分光光度測定によるc* Kが20.0以下であることは、該トナーが黒色のトナーであることを示している。c* Kが20.0を越える場合、赤色や青色、その他の色が強いことを意味する。
c* Kが上記範囲にあるブラックトナーにおいて、AK600が大きいほど隠ぺい力が大きいブラックトナーであることを示し、少ないトナー量でも高い画像濃度を有するブラック画像を形成可能であることを示す。また、AK600/AK460はトナーの色味を示し、この値が上記範囲にあることで、二次色、三次色においても発色特性が良好に発現され、良好な色空間を有するフルカラー画像が形成可能となる。
ブラックトナーに含有される着色剤の添加量を増やすと、AK600が大きい値になりやすいが、一方で、AK600/AK460が1.000から大きく離れた値となりやすい。AK600/AK460が0.970未満の場合、赤色の強いブラックトナーとなり、カラートナーとブラックトナーとで形成された二次色或いは三次色において、濃紺色近傍の色空間が小さくなる。また、紙上のトナー量を低減して用いる場合、赤色が特に目立つようになる。AK600/AK460が1.035を越える場合、青色の強いブラックトナーとなり、カラートナーとブラックトナーとで形成された二次色或いは三次色において、濃茶色近傍の色空間が小さくなる。また、紙上のトナー量を低減して用いる場合、青色が特に目立つようになる。AK600が1.610未満であると、画像濃度が十分に得られないか、紙上のトナー量を増やす必要があるため、画像表面の凹凸低減、ドット再現性の向上といった、本発明の効果が得られない。
本発明によると、前記AK600の値は大きい方が紙上のトナー量を低減でき、本発明の効果が大きくなるため好ましい。しかしながら、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーといった他のカラートナーと組み合わせてフルカラー画像を形成する場合のカラーバランスや、着色剤の発色効率、材料コストから考慮すると、前記AK600の値は2.100以下であることが好ましい。前記AK600の範囲としては、1.610〜1.930にあることがより好ましく、さらには、1.650〜1.930にあることがより好ましく、さらには、1.700〜1.920にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.750〜1.900である。
前記AK600/AK460の範囲としては、0.980〜1.033にあることがより好ましく、さらには、0.990〜1.030にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.998〜1.025である。
上記、AK600、及び、AK600/AK460は、トナーに含有せしめる着色剤の種類や添加量、トナー中における該着色剤の存在状態、及び、その他の添加剤等の存在状態、添加剤の色などによって制御できる。
本発明のブラックトナーは、前記反射分光光度測定において、波長670nmにおける吸光度(AK670)とAK460との比(AK460/AK670)が0.960〜1.070にあることが好ましい。トナーに含有される着色剤の添加量を増やすと、AK460/AK670が1.000から大きく離れた値となりやすい。AK460/AK670が0.960未満の場合、赤色の強いブラックトナーとなりやすく、カラートナーとブラックトナーとで形成された二次色或いは三次色において、濃紺色近傍の色空間が小さくなりやすい。また、紙上のトナー量を低減して用いる場合、赤色が特に目立つ場合がある。AK460/AK670が1.070を越える場合、青色の強いブラックトナーとなりやすく、カラートナーとブラックトナーとで形成された二次色或いは三次色において、濃茶色近傍の色空間が小さくなりやすい。また、紙上のトナー量を低減して用いる場合、青色が特に目立つ場合がある。このため、上記AK460/AK670の範囲としては、0.970〜1.050にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、0.975〜1.025である。
前記AK460は1.600〜1.940にあることが好ましい。AK460が前記範囲にあることで、ブラックトナーの隠ぺい力と、カラートナーとブラックトナーを組み合わせた場合のカラーバランスとの関係が特に良好に発現される。AK460が1.600未満の場合、紙上のトナー量を低減して用いる場合、濃茶色近傍の色空間が小さくなる場合がある。AK460が1.940を越える場合、紙上のトナー量を低減して用いる場合、濃紺色近傍の色空間が小さくなりやすい。このため、AK460の範囲としては、1.650〜1.940にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.700〜1.900である。
同様に、前記AK670は1.580〜1.940にあることが好ましい。AK670が前記範囲にあることで、ブラックトナーの隠ぺい力と、カラートナーとブラックトナーを組み合わせた場合のカラーバランスとの関係が特に良好に発現される。AK670が1.580未満の場合、紙上のトナー量を低減して用いる場合、濃紺色近傍の色空間が小さくなる場合がある。AK670が1.940を越える場合、紙上のトナー量を低減して用いる場合、濃茶色近傍の色空間が小さくなりやすい。このため、AK670の範囲としては、1.640〜1.920にあることがより好ましく、特に好ましい範囲としては、1.700〜1.900である。
本発明のブラックトナーは、前記反射分光光度測定において、CIELAB表色系によるa*の値(a* K)が−2.00〜0.50にあり、b*の値(b* K)が−2.00〜2.00にあることが好ましい。トナー消費量を低減した場合に、表現できる画像の色空間が更に拡大し、画像品質が更に良好になる。a* Kが−2.00未満の場合、トナー消費量を低減した場合に、暗い赤色、暗いマゼンタ色、暗い紫色といった部分の色空間が小さくなる場合ある。また、a* Kが0.50を越える場合、暗い青色、暗いシアン色、暗い緑色といった部分の色空間が小さくなる場合がある。このため、a* Kの範囲としては、−1.65〜0.10にあることが好ましい。
同様に、b* Kが−2.00未満の場合、暗いマゼンタ色、暗い青色、暗いシアン色といった部分の色空間が小さくなる場合があり、b* Kが2.00を越える場合、暗い緑色、暗い黄色、暗い赤色といった部分の色空間が小さくなる場合がある。このため、b* Kの範囲としては、−1.70〜1.50にあることがより好ましく、−1.50〜1.20にあることが特に好ましい。
本発明のブラックトナーは、105℃における粘度(ηK105)が500〜100000Pa・s、120℃における粘度(ηK120)が100〜20000Pa・s、ηK105とηK120との比(ηK105/ηK120)が3.0〜50.0にあることが好ましい。
本発明において、ηK105、ηK120、及び、ηK105/ηK120は、トナーの溶融特性を示す。ηK105、ηK120が小さいほど低温で溶融変形しやすいことを示し、ηK105/ηK120が1.0に近いほど、温度変化に対する溶融粘度の変化が小さいことを示す。
本発明のブラックトナーは、通常よりも高い発色特性を有するため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しても、従来と同等の画像濃度、画像色域を達成することが可能となる。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、定着過程においてトナーがある程度の粘性を保持していないと、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ちやすくなる。或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、画像を構成する結着樹脂も少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーは、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることが好ましい。
本発明によると、紙上のトナー量を少なくして画像を形成する場合、定着工程において、紙に含有される水分の影響を受けやすい。このため、本発明においては、水の沸点を超える温度である105〜120℃におけるトナーの溶融粘度変化を制御することが好ましい。上記ηK105が100000Pa・sを越える場合や、ηK120が20000Pa・sを越える場合、紙上のトナー量を低減して使用すると、低温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。ηK105が500Pa・s未満の場合やηK120が100Pa・s未満の場合には、紙上のトナー量を低減して使用すると、高温オフセットが発生しやすくなる。また、トナーが紙に染み込み画像の色域が低下、画像部に紙の繊維が目立ち画像品位が低下しやすくなる。
また、前記ηK105/ηK120が50.0を越える場合には、トナーが紙に染み込み、画像の彩度が低下し、又は、画像部に紙の繊維が目立ち、画像品位が低下しやすくなる。両面印刷の場合において裏面に表面の画像が浮き出てしまうといった課題が生じる場合がある。さらに、高温オフセットが発生しやすくなる。ηK105/ηK120が3.0未満では、低温オフセットが発生しやすくなるか、または、定着工程でトナーが十分に溶融変形しないため、トナーの発色特性が十分に発現されず、表現できる画像の色域が低下する場合がある。さらに、定着工程における紙の進行方向に対し、紙の先端部と後半部とで、画像のグロスや色域に差を生じやすく、画像品位を低下しやすい。
このため、前記ηK105の値は、500〜50000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、1000〜30000Pa・sにあることが特に好ましい。同様に、前記ηK120の値は、100〜10000Pa・sにあることがより好ましく、さらには、400〜5000Pa・sにあることが特に好ましい。また、前記ηK105/ηK120は、3.0〜25.0にあることがより好ましく、さらには、5.0〜20.0にあることが特に好ましい。
本発明のブラックトナーは、示差走査熱量計(DSC)による最大吸熱ピークを60〜140℃に有することが好ましい。該吸熱ピークは、トナーに含有されるワックスの融点に由来するが、定着工程におけるトナーの溶融変形は、画像部に存在するトナーがワックスの融点以上に加熱された時点から著しく促進される。このため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着工程におけるワックスの融解挙動の影響を受けやすい。また、定着工程において、オイル塗布機構を有さないか、僅かな量のオイルしか塗布しない定着プロセスを用いる場合において、紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、紙上に存在するトナーが少ないため、画像を構成するトナー層に含有されるワックスも少なくなる。このため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しようとした場合、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。前記最大吸熱ピークの温度が60℃未満であると、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に多く溶け込みやすく、トナーの溶融粘度が低下しやすい。これにより、前記ηK105やηK120の値が小さくなりやすく、また、前記ηK105/ηK120の値が大きくなりやすい。また、定着工程においてワックスが溶融した際、該ワックスの一部が結着樹脂に溶け込み、トナーの離型性能が低下しやすい。このため、トナー消費量を低減して使用する場合に、高温オフセットが著しく発生しやすくなる。一方、最大吸熱ピークが140℃を越える場合には、定着工程においてワックスが溶融する際、結着樹脂に溶け込む量が著しく小さく、ワックスによる可塑効果が得られにくい。これにより、前記ηK105やηK120の値が大きくなりやすく、また、前記ηK105/ηK120の値が小さくなりやすい。また、最大吸熱ピークが140℃を越えるようなワックスは結晶性が大きいため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着画像中に混入するワックス結晶の影響が大きく、表現できる画像の色域が低下しやすくなる。このため、前記最大吸熱ピークは、60〜95℃に有することがより好ましく、更には、65℃〜90℃に有することが好ましい。
上記と同様の理由により、本発明のブラックトナーが有する最大吸熱ピークは、その半値幅が0.5〜20.0℃にあることが好ましい。加えて、紙上のトナー量を小さくした場合、該半値幅が20.0℃を越えると、通紙方向の前半部と後半部とで画像にグロスむらや濃度むらが発生しやすくなる。該半値幅が0.5℃未満である場合、通紙方向の後半部にオフセットが発生しやすくなる。このため、該半値幅は、1.0〜15.0℃にあることがより好ましく、2.0〜10.0℃にあることが特に好ましい。
本発明のブラックトナーは、前記反射分光特性を発現するために好適な着色剤、及び、添加量を用いることができる。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し、8〜18質量部にあることが好ましい。ランニングコスト低減の目的には、トナーに含有される着色材料はなるべく少ない方が好ましいが、着色剤の含有量が8質量部未満であると、十分な発色特性が得られない場合がある。また、着色剤の含有量が18質量部を越える場合には、表現できる画像の色空間が低減する場合がある。
本発明のブラックトナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として、抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分の酸価(AK1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分の酸価(AK2)の関係が下記式7を満足することが好ましい。
AK1>AK2 (式7)
現像器内においてトナーは、トナー担持体や静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いブラックトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。このため、本発明のトナーは、従来にも増して、トナーの帯電特性を精密に制御することが好ましい。本発明において、トナー粒子の表面層に、トナー粒子の内部よりも高い酸価を有する樹脂層を設け、トナー粒子の内部に含有される着色剤がトナー表面に露出することを抑制することが好ましい。また、トナー粒子の表面層に高い酸価を有する樹脂層を設けることで、該酸価に由来する極性基が帯電助剤として作用すると考えられ、帯電不良が発生しにくくなる。本発明のブラックトナーは、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分において、該可溶成分の全質量を基準として抽出開始から20質量%までの第1の可溶成分、即ち、その主成分がトナー表面層を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AK1)と、20質量%を越え100質量%までの第2の可溶成分、即ち、その主成分がトナー核体部分を形成する樹脂と考えられる成分の酸価(AK2)とが、前記式7を満足する場合、第1の成分がトナー表面層を形成することにより、トナー表面へ着色剤が露出することが抑制され、また、酸価の大きい樹脂がトナー表面に多く存在することにより、トナーの帯電性がさらに良好になる。
前記AK1は、3.0〜50.0mgKOH/gにあることが好ましい。AK1が3.0mgKOH/g未満であると、高酸価成分がトナー表面に存在することによる帯電性向上の効果が小さくなりやすい。AK1が50.0mgKOH/gを越える場合、該成分の酸価に由来する極性基と、着色剤に含有される極性基とが相互作用し、トナーの発色特性が低下する場合がある。このため、前記AK1は、5.0〜30.0mgKOH/gにあることが特に好ましい。また、同様の理由により、AK1とAK2との差(AK1−AK2)は、0.5〜30.0mgKOH/gにあることが好ましく、さらには、2.0〜20.0にあることが好ましい。
上記AK1及びAK2は、酸価の異なる2種類以上の樹脂を用い、トナー中における該樹脂の存在状態を制御することにより制御可能である。具体的には、(1)スルホン酸基やカルボン酸基を有する荷電制御樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい荷電制御樹脂をトナーに添加する方法、(2)スルホン酸基やカルボン酸基を有する樹脂の中で、結着樹脂よりも酸価の大きい樹脂を用い、トナー表面近傍に、該樹脂を有する被覆層を形成する方法、(3)スルホン酸基やカルボン酸基を有する高酸価の結着樹脂と、スルホン酸基やカルボン酸基を有する低酸価の結着樹脂を用い、相分離等の方法により、トナーの中心部から表面に近づくほど高酸価の結着樹脂の存在確立を大きくする方法、などを用いることができる。
本発明のブラックトナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶成分を60.0乃至97.0質量%含有し、該THF可溶成分は、スルホン酸基に由来する硫黄元素を0.010〜1.500質量%含有することが好ましい。本発明のトナーは、通常よりも発色特性に優れ、トナー使用量を少なく用いることが可能となる。現像されるトナーの量を少なくするために、トナーの帯電特性としては、通常よりも大きく設定することが好ましい。しかし、トナーに荷電制御剤を多量に添加せしめると、トナーの発色特性が低下する場合がある。本発明のトナーは、THF可溶成分が所定量のスルホン酸基を含有することで、トナーの発色特性を低下させることなく、トナーの帯電特性を向上することができる。また、スルホン酸基はトナーに含有される結着樹脂、その他添加剤と、水素結合やイオン結合といった相互作用が働きやすく、トナーの発色特性を特に良好に発現することが可能となる。一方で、スルホン酸基の極性により、トナーに含有されるTHF可溶成分の含有量が少なくなる場合がある。さらに、通常よりもトナーの使用量を少なくして画像を形成する場合、耐オフセット性能、グロス均一性能、耐しみ込み性能が低下しやすくなる。該THF可溶成分の含有量が60.0質量%未満であると、トナーの発色特性が低下しやすい。該THF可溶成分の含有量が97.0質量%を越える場合、耐オフセット性能、グロス均一性能、耐しみ込み性能が低下しやすい。また、前記硫黄元素の含有量が0.010質量%未満の場合、発色特性の向上が小さくなる場合がある。また、現像に使用されるトナーの量が増大し、ドット再現性能が低下する場合がある。前記硫黄元素の含有量が1.500質量%を越える場合、スルホン酸基と着色剤との相互作用が増大し、発色特性が低下する場合がある。また、トナー担持体、静電荷像担持体との吸着性が大きくなり、ドット再現性能が低下する場合がある。尚、上記THF可溶成分の含有量は、70.0乃至95.0質量%にあることがより好ましく、75.0乃至95.0質量%にあることがさらに好ましく、80.0乃至93.0質量%にあることが特に好ましい。また、上記スルホン酸基に由来する硫黄元素の含有量としては、0.010乃至0.500質量%にあることがより好ましく、0.010乃至0.150質量%にあることが更に好ましく、0.020乃至0.100質量%にあることが特に好ましい。
次に、本発明の効果を最大限に発揮するに好ましいトナーの構成について述べる。
本発明のシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、ブラックトナーは、重量平均粒子径(D4)が1.5〜7.5μm、該D4と個数平均粒子径(D1)との比(D4/D1)が1.00〜1.40にあることが好ましい。D4が7.5μmを越える場合、本発明のトナーのように発色特性に優れるトナーでは、トナーの隠ぺい力が大きすぎるため、十分な画像濃度が得られる場合には画像の明度、彩度が小さくなる場合がある。また、トナー一粒の現像不良、転写不良、定着不良といった影響が画像品位に与える影響が大きく、連続印字時において、ハーフトーン部ではガサつきが目立つようになり、ベタ画像部では掠れた画像となりやすい。定着工程において過度にトナーをつぶした場合、ドットやラインが太り、画像データに対する忠実性が低下しやすい。一方、D4が1.5μm未満のトナーの場合においては、転写不良を発生しやすく、紙上のトナー量を少なくした場合、画像欠陥が著しく生じやすい。また、紙に転写されたトナーが紙の繊維に潜り込みやすく、紙上のトナー量を低減した場合に、定着工程において紙にトナーが染み込みやすい。このため、本発明のトナーは、D4が2.5〜6.5μmであることがより好ましく、さらには、2.5〜6.0μmであることが好ましく、特には、3.0〜5.5μmであることが望ましい。D4/D1が1.40を越える場合にも、上記D4が7.5μmを越える場合や、D4が1.5μm未満の場合と同様の現象が起きやすい。このため、D4/D1は、1.00〜1.25にあることがより好ましく、さらには、1.00〜1.20にあることが好ましい。
本発明の各色トナーは、重量平均粒子径(D4)の2倍を越える粒子径を有するトナーの含有率が25質量%以下にあることが好ましい。紙上のトナー量を小さくして用いる場合、トナーの平均粒子径から大きく外れた粒子径を有するトナーの影響が大きくなりやすい。D4の2倍を越える粒子径を有するトナーの含有率が25.0質量%を越えるような場合、画像部にミクロな濃度ムラが発生しやすく、画像の彩度、明度が低下しやすい。粗大粒子の転写不良や飛びちりが発生した場合にも画像不良として目立ちやすく、ドットやラインの再現性が低下しやすい。このため、本発明の各色トナーは、D4の2倍を越える粒子径を有するトナーの含有率が15.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の各色トナーは、個数平均粒子径(D1)の1/2未満の粒子径を有するトナーの含有率が30.0個数%以下にあることが好ましい。D1の1/2未満の粒子径を有するトナーの含有率が30.0個数%を越える場合、静電オフセットや部材汚染が発生しやすい。このようなトナーに含有される微小粒子は転写不良を起こしやすく、紙上のトナー量を小さくした場合に画像欠陥が顕著となる。また、紙に転写されたトナーが紙の繊維に潜り込みやすく、十分な画像濃度の画像を形成するためには、過剰量のトナーが必要となる。このため、本発明のトナーは、D1の1/2未満の粒子径を有するトナーの含有率が20.0個数%であることがより好ましく、10.0個数%以下であることが更に好ましい。
本発明の各色トナーは、各色それぞれのトナーの真密度をρT(g/cm3)としたとき、最大吸熱ピークの吸熱量(Q)が(1.0×ρT)J/cm3〜(20.0×ρT)J/cm3にあることが好ましい。該吸熱量は、トナーに含有されるワックスの含有量を示す指標となる。ランニングコスト低減の目的には、トナーに含有されるワックスは少ない方が好ましく、上記Qの値としてはなるべく小さい方が好ましい。しかし、紙上のトナー量を小さくして用いるためには、Qが(1.0×ρT)J/cm3未満であると、定着工程において、紙上に存在するワックスが少なくなるため、十分な離型性能が得られず、オフセットが発生しやすくなる。一方、Qが(20.0×ρT)J/cm3を越える場合には、トナーの吸熱量が大きいため、紙上のトナー量を小さくして用いる場合、低温オフセットが発生しやすくなる。さらに、画像部のトナーに含有されるワックスの結晶により、トナー層に含有される着色剤の発色が遮られ、画像の彩度が低下する場合がある。このため、前記Q範囲としては、(4.0×ρT)J/cm3〜(15.0×ρT)J/cm3であることがより好ましく、(6.0×ρT)J/cm3〜(10.0×ρT)J/cm3であることが特に好ましい。
同様の理由により、本発明の各色トナーは、結着樹脂100質量部に対し、ワックスを3.0〜20.0質量部含有することが好ましく、4.0〜15.0質量部であることがより好ましく、5.0〜13.0質量部であることがさらに好ましい。
本発明の各色トナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布において、分子量3000〜5000の成分を3.0〜40.0面積%含有することが好ましい。現像器内においてトナーは、トナー担持体や静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。一方で、上述のような着色力の高いトナーを用い、紙上のトナー量を少なくして用いる場合、低温オフセット及び高温オフセットが発生しやすく、または、定着工程において紙にトナーが染み込みすぎ、画像グロス及び画像色域が低下しやすい。このため、トナーの主成分となる結着樹脂の分子量は、通常よりも精密に制御することが好ましい。分子量3000〜5000の成分の含有量が40.0面積%を越える場合、結着樹脂の結晶性が高くなるため、現像器内でトナーが割れやすく、連続印字時においてトナーの現像性が低下しやすくなる。分子量3000〜5000の成分の含有量が3.0面積%未満であると、定着性が低下し低温オフセットが発生しやすくなる。また、ワックスと結着樹脂との親和性が小さくなるため、トナー中における結着樹脂とワックスとの界面を基点として、トナーが割れやすくなる。このため、分子量3000〜5000の成分の含有量としては、5.0〜40.0面積%であることがより好ましく、8.0〜35.0面積%にあることが特に好ましい。
上記と同様の理由により、本発明の各色トナーは、前記THF可溶成分のGPCによる分子量分布において、分子量300〜800の成分を0.3〜8.0面積%含有することが好ましい。分子量300〜800の成分の含有量が8.0面積%を越える場合、現像器内でトナーが割れやすく、連続印字時においてトナーの現像性が低下しやすくなる。また、トナーが紙に染み込みすぎて、画像グロス、画像彩度が低下しやすくなる。分子量300〜800の成分の含有量が0.3面積%未満の場合、定着性が低下し低温オフセットが発生しやすくなる。また、ワックスと結着樹脂との親和性が小さくなるため、トナー中における結着樹脂とワックスとの界面を基点として、トナーが割れやすくなる。このため、分子量300〜800の成分の含有量としては、0.3〜5.0面積%であることがより好ましく、0.5〜3.5面積%にあることが特に好ましい。
上記分子量3000〜5000の成分の含有量、及び、分子量300〜800の成分の含有量は、トナーに含有される結着樹脂、その他添加剤に含有される上記分子量の成分の含有量によって制御できる。また、混練時や重合反応時の加熱条件、冷却条件、或いは、減圧条件により制御できる。表面改質装置により加熱条件、冷却条件等を制御することにより調整することもできる。
結着樹脂、その他添加剤として用いる樹脂の製造時に、トルエン、キシレンといった該樹脂を溶解し得る溶媒を添加することも好ましい方法である。反応系の粘度を低下させることで重合反応を早急に進行させ、分子量3000〜5000の成分の含有量を好適に調整することができる。また、重合反応の後半おいて固化しないため、重合反応を十分に進行させることができ、分子量300〜800の成分の含有量を好適に調整することができる。
重合法によりトナー粒子を製造する場合、重合開始剤の添加量、重合反応中の加熱温度、重合反応後の加熱工程及び減圧工程などにより、上記分子量の成分の含有量を調整することができる。これらの方法と、前記の溶媒を添加する方法をあわせて用いることも好ましい。
いわゆる溶解懸濁法といった湿式造粒法、混練粉砕法に代表される乾式造粒法、スプレードライなど溶媒に溶解させた樹脂を乾燥することにより造粒する方法など、樹脂を原材料とする製造方法によりトナー粒子を製造する場合、該樹脂を製造した後、メタノール、エタノールなどの低級アルコールを有する溶媒で洗浄することも好ましい。樹脂に含有される分子量3000〜5000の成分の含有量を増大しようとすると、これに合わせて、分子量300〜800の成分の含有量も大きくなりやすい。そのような樹脂を上記低級アルコールを有する溶媒で洗浄することにより未反応のモノマーやオリゴマーの含有量を低減でき、分子量300〜800の成分の含有量を好適に調整することができる。
本発明の各色トナーは、平均円形度が0.940〜0.995にあることが好ましい。現像器内においてトナーは、トナー担持体や静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。平均円形度が0.940未満であると、トナーの凸部が欠けやすく、連続印字時に画像不良が発生しやすくなる。一方、平均円形度が0.995を越える場合には、クリーニング不良による画像欠陥が発生しやすくなる。このため、平均円形度は0.955〜0.990にあることがより好ましく、特に好ましくは、0.965〜0.988である。
また、同様の理由により、本発明の各色トナーは、円形度の標準偏差が0.005〜0.045であることが好ましい。本発明のトナーは、紙上のトナー量を低減できるように、通常のトナーと比較して、トナー1個の発色力が大きい。このため、平均円形度の値から大きく外れた円形度を有するトナーの影響を受けやすいためである。
本発明に用いられるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
本発明において特に好ましく用いられるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。例えば、オレフィンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量のオレフィンポリマー;石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロプシュワックス;高分子量のオレフィンポリマーを熱分解して得られるオレフィンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。
炭化水素系ワックスの構成材料としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用して一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの[例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物];ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンなどのアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素;パラフィンワックスが、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。
ワックスの分子量としては、メインピークが分子量350〜2,000の領域にあることがより好ましい。重量平均分子量としては400〜3000にあることが好ましく、数平均分子量としては300〜1800であることが好ましい。このような分子量をもたせることによりトナーに好ましい熱特性を付与することができる。ワックスの分子量は、使用するワックスの種類やワックスの製造条件によって調整することが可能である。
本発明において、好ましいトナーの製造工程としては、微細に分散した着色剤組成物を得るための第一の混練工程(所謂マスターバッチ処理)を経て、第二の混練工程時に第一の混練物として他の材料とともに添加される。本発明におけるワックスは、前記第二の混練工程時にバインダーその他の材料と共に同時添加しても良いが、着色剤をトナー中により微分散させ、低濃度域における粒状感を改善するためには、予めワックス分散剤の状態で樹脂組成物中に添加するのが好ましい。
ワックス分散剤は、ワックスと、ワックス分散媒体とを含み、ワックス分散媒体は、ポリオレフィンとビニル系重合体との反応物であり、ポリオレフィンにビニル系重合体をグラフトさせたものであることがより好ましい。また、得られたワックス分散剤を適切な配合比にてポリエステル樹脂と予め溶融混合せしめたワックス分散剤マスターバッチの形態にすると、前記第二の混練工程において着色剤の分散が良化するので、更に好ましい。
以下、ワックス分散剤について詳しく述べる。
ワックス分散剤としては、一種又は二種以上のビニルモノマーを用いて合成されたビニル重合体とポリオレフィンとを少なくとも有するワックス分散媒体を有するものが良い。
さらに、前記ワックス分散剤をポリエステル樹脂中に溶融混合させたものを「ワックス分散剤マスターバッチ」として、トナー製造時の第二の混練工程として添加することが良い。
ワックス分散媒体として用いる、ビニルモノマーとしては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;等が挙げられる。
また、前記ビニルモノマーとしては、例えばマレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
また、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレン等ヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
その中でも特に、スチレンと窒素を含有するアクリル酸エステル或いはメタクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
ビニルモノマーを用いて合成されたビニル重合体とポリオレフィンとを少なくとも有するワックス分散媒体のGPCによる分子量分布においては、重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000であり、数平均分子量(Mn)が1,500〜15,000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2〜40であることが、以下に示す理由により好ましい。
ワックス分散媒体の重量平均分子量(Mw)が5,000未満の場合、又は数平均分子量(Mn)が1,500未満の場合、又は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2未満の場合、トナーの保存安定性能に影響を及ぼす場合がある。
ワックス分散媒体の重量平均分子量(Mw)が100,000を超える場合、又は数平均分子量(Mn)が15,000を超える場合、又は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が40を超える場合、ワックス分散剤中に微分散されたワックスが定着溶融時に迅速に溶融トナー表面に移行できず、ワックスの効果を十分に発現されない場合がある。
ワックス分散剤媒体に含まれる前記ポリオレフィンは、DSCによって測定される昇温時の吸熱曲線において、最大吸熱ピークの極大値が80〜140℃にあることが好ましい。
前記ポリオレフィンの最大吸熱ピークの極大値が80℃未満、もしくは140℃を超える場合、いずれもビニルモノマーを用いて合成された共重合体との枝別れ構造(グラフト)が損なわれるために、炭化水素系ワックスの微分散が行われず、トナー化した際における炭化水素系ワックスの偏析が生じ、結果として白抜け等の画像不良が発生することがある。前記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられるが、その中でも特に、低密度のポリエチレンを用いることが反応の効率上、最も好ましい。
本発明の各色トナーは、該トナーに含有されるテトラヒドロフラン(THF)可溶成分の酸価が0.1〜50.0mgKOH/gにあることが好ましい。本発明のトナーは着色剤の含有量が多いため、トナー中における着色剤の分散性が低下しやすい。しかしながら、結着樹脂の酸価が上記範囲にあることで、着色剤の分散性が向上し、トナーの発色特性と定着性が向上する。
本発明のシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、ブラックトナーに用いられる結着樹脂としては、従来電子写真用の結着樹脂として知られる各種の樹脂が用いられる。その中でも(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、及び(e)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(f)ポリエステル樹脂、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、ビニル系共重合体との混合物のいずれかから選択される樹脂を主成分とすることが好ましい。
結着樹脂としてポリエステル系の樹脂を用いる場合は、多価アルコールと多価カルボン酸、もしくは多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等が原料モノマーとして使用できる。
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
多価カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等が挙げられる。
それらの中でも、特に、下記一般式(1)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、二価のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸および、これらの無水物やエステル化合物が挙げられる。
三価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、全モノマー基準で0.1〜1.9mol%が好ましい。さらに結着樹脂として、主鎖中にエステル結合を有し、多価アルコールと多塩基酸との重縮合体であるポリエステルユニットと、不飽和炭化水素基を有する重合体であるビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂を用いる場合、さらに良好なワックス分散性と、低温定着性、耐オフセット性の向上が期待できる。本発明に用いられるハイブリッド樹脂とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合した樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成する樹脂であり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)である。
ビニル系重合体を生成するためのビニル系モノマーとしては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明の各色トナーにおいて、結着樹脂のビニル系重合体ユニットは、ビニル基を二個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
本発明に用いられるハイブリッド樹脂には、ビニル系重合体ユニット成分及びポリエステルユニットの一方の中、又は両方の中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステルユニットを構成するモノマーのうちビニル系重合体ユニットと反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーのうちポリエステルユニットと反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの反応生成物を得る方法としては、それぞれのユニットと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明のビニル系重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
本発明の各色トナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1) ハイブリッド樹脂成分には、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って合成されるエステル化合物を用いることができる。
(2) ビニル系重合体製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及びポリエステルのいずれか一方との反応、又は両方との反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3) ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマーとのいずれか一方又は両方との反応により製造される。
(4) ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)のいずれか一方又は両方を添加することによりハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5) ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)のいずれか一方又は両方を添加して、付加重合及び縮重合反応の少なくともいずれか一方を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
(6) ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットには複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
なお、本発明の各色トナーに含有される結着樹脂には、上記ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物、上記ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、上記ポリエステル樹脂と上記ハイブリッド樹脂に加えてビニル系重合体の混合物を使用しても良い。
本発明の各色トナーは、テトラヒドロフラン(THF)不溶分を5〜90質量%有することが好ましい。より好ましくは5〜70質量%であり、更に好ましくは5〜50質量%である。保存安定性能、現像安定性能と低温定着性能のバランスが更に向上するためである。
本発明においてトナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ダイカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が利用できる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が利用できる。その中でも特に、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸アルミニウムが帯電量の立ち上がりが速く、好ましい。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は結着樹脂100質量部に対し総量で0.5〜10質量部が好ましい。
中でも、スルホン酸基とアミド結合とを有し、該スルホン酸基とアミド結合との間に、炭素数1〜12のアルキル基、エーテル基、アリール基を有し、アミドスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、下記一般式(2)に示されるアミドスルホン酸基を有する化合物が挙げられる。
アミドスルホン酸基を有する化合物として、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドと他のビニルモノマーとの共重合体も好ましく例示される。好ましいスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドとしては、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、そのアルカリ塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸メチルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸エチルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸プロピルエステル、下記一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
前記アミドスルホン酸基を有する化合物がアミドスルホン酸基を有する樹脂である場合、該樹脂におけるアミドスルホン酸基を含有するモノマー単位の含有量は、1.0〜30.0mol%であることが好ましい。
前記アミドスルホン酸基を含有するモノマー単位が適量存在する樹脂を含有するトナー粒子は、トナーの帯電のバランスや、内添物質の分散のバランスを適切に調整することができる。前記樹脂におけるアミドスルホン酸基を含有するモノマー単位の含有量が、1mol%未満であると、スルホン酸基の効果が十分に発揮されない場合がある。一方、該含有量が30mol%を越えると帯電が不均一となりやすく、カブリ等が発生しやすくなる。
本発明の各色トナーにおいて、アミドスルホン酸化合物の含有量は、トナー全体に対して0.5〜15.0質量%であることが好ましい。トナー中にアミドスルホン酸化合物を適量存在させることによって、トナーの帯電や内添物質の分散のバランスを適切に調整することができる。該含有量が0.5質量%未満であるとスルホン酸基の効果が十分に発揮されない場合がある。一方、該含有量が15.0質量%を越えるとトナー中のスルホン酸基の存在量が多くなりすぎ、他の内添物質の効果が小さくなってしまう場合がある。
本発明において、トナー粒子に対して外添される添加剤としては、公知のものが利用できるが、特に、流動性向上剤が外添されていることが画質向上、高温環境下での保存性の点で好ましい。流動性向上剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粉体が好ましい。前記無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
疎水化剤としては、シラン化合物、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカツプリング剤の如きカップリング剤が挙げられる。
具体的に例えばシラン化合物としては、一般式(4)で表されるものが好ましい。例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。その処理量は、無機微粉体100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部である。
本発明において、前記流動化剤の表面の疎水化処理に特に好適なのは、一般式(5)で示されるアルキルアルコキシシランである。前記アルキルアルコキシシランにおいて、nが4より小さいと、処理は容易となるが疎水化度が低く、好ましくない。nが12より大きいと、疎水性が十分になるが、酸化チタン微粒子同士の合一が多くなり、流動性付与能が低下しやすい。mは3より大きいと、前記アルキルアルコキシシランの反応性が低下して疎水化を良好に行いにくくなる。より好ましくは、アルキルアルコキシシランはnが4〜8であり、mが1〜2であるのが良い。アルキルアルコキシシランの処理量も、無機微粉体100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部が良い。
流動化剤の疎水化処理は一種類単独で行っても良いし、二種類以上を併用しても良い。例えば一種類の疎水化剤単独で疎水化処理を行っても良いし、二種類の疎水化剤で同時に、又は一種類の疎水化剤で疎水化処理を行った後、別の疎水化剤で更に疎水化処理を行っても良い。
流動化剤は、トナー粒子100質量部に対して0.01〜5質量部添加することが好ましく、0.05〜3質量部添加することがより好ましい。
本発明に用いることができるシアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。特に好適に利用できる着色剤としては、具体的には、C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、又は下記一般式(6)で示される構造を有する銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、22254、C.I.ピグメントバイオレット19が特に好ましい。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、176、180、181、191が好適に用いられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラックや、公知の金属酸化物、或いは、前述のシアン着色剤、マゼンタ着色剤、イエロー着色剤を組み合わせて用いることができる。金属酸化物としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素などの元素を含む金属酸化物が挙げられる。四三酸化鉄、γ−酸化鉄、鉄チタン複合酸化物、鉄アルミ複合酸化物の如き酸化鉄を主成分とするものが好ましい。上記金属酸化物は、トナーの帯電性コントロールの点からケイ素、アルミニウム、ナトリウムの如き金属元素を含有していてもよい。上記金属酸化物は、窒素吸着法によるBET比表面積が2〜30m2/g、特に3〜28m2/gであることが好ましく、モース硬度が5〜7であることが好ましい。
金属酸化物の形状としては、8面体、6面体、球体、針状、鱗片状などが挙げられる。8面体、6面体、球体の如く異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。金属酸化物の平均粒径としては0.05〜1.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.6μmであり、さらには0.1〜0.4μmが好ましい。
これらの着色剤を混合することによって、各トナーに好適な反射分光特性を調整することが可能である。
本発明のように着色力が高いトナーは2種以上の着色剤を混合して用いられることが、連続印字時におけるトナーの帯電性を良好に保持するためには好ましい。
帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上のため、シリカ微粉体、アルミナ微粉体、チタニア微粉体あるいはその複酸化物の微粉体の中から選ばれることが好ましい。特に、シリカ微粉体が良い。シリカはケイ素ハロゲン化物やアルコキシドの蒸気相酸化により生成される乾式シリカ及びアルコキシド、水ガラス等から製造される湿式シリカが使用可能である。表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。乾式シリカにおいては、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンの如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらを使用しても良い。
本発明の各色トナーの平均円形度は、後述する表面改質装置を用いることによっても調整することが可能である。
本発明の各色トナーは混練粉砕法の如き乾式製法の他、懸濁重合法、凝集融着法、溶解懸濁法、分散重合法などの湿式製法で製造することができる。
混練粉砕法の具体的な製造方法としては、結着樹脂、着色剤、ワックス、及び任意の材料を溶融混練し、これを冷却して粉砕し、必要に応じて粉砕物分級処理を行い、これに必要に応じて前記流動化剤を混ぜることによって製造することが可能である。
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも樹脂、着色剤を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
更に、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、一軸又は二軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型二軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製二軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
そして一般的には上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等で粉砕される。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
必要に応じて、表面改質工程で表面改質及び球形化処理を、例えば奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステム、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムを用いて行うことができる。
本発明においては、粉砕工程で機械式粉砕を用いず、エアージェット式粉砕機にて粉砕した後、分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理とを行う装置を用いてトナー粒子を得ることが好ましい。表面改質と分級とは別々に行っても良く、このような場合では必要に応じて風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いても良い。更に、外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
図7は、本発明に使用する表面改質装置の一例を示す。
図7に示す表面改質装置では、ケーシング55と、冷却水或いは不凍液を通水できるジャケット(図示しない)と、所定の粒径よりも大きい粒子と所定の粒径以下の微粒子とを分ける分級手段である分級ロータ41と、粒子に機械的な衝撃を与えて前記粒子の表面を処理する表面処理手段である分散ロータ46と、分散ロータ46の外周に対して所定の間隔を有して周設されるライナ44と、分級ロータ41で分けられた粒子のうちの所定の粒径より大きい粒子を分散ロータ46に案内する案内手段であるガイドリング49と、分級ロータ41で分けられた粒子のうちの所定の粒径以下の微粒子を装置の外に排出する排出手段である微粉回収用排出口42と、分散ロータ46で表面を処理された粒子を分級ロータ41に送る粒子循環手段である冷風導入口45と、被処理粒子をケーシング55内に導入するための原料供給口43と、表面を処理された粒子をケーシング55内から排出するための開閉自在な粉体排出口47及び排出弁48とを有する。
分級ロータ41は、円筒状のロータであり、ケーシング55内の一端面側に設けられている。微粉回収用排出口42は、分級ロータ41の内側の粒子を排出するように、ケーシング55の一端部に設けられている。原料供給口43は、ケーシング55の周面の中央部に設けられている。冷風導入口45は、ケーシング55の周面の他端面側に設けられている。粉体排出口47は、ケーシング55の周面で原料供給口43に対向する位置に設けられている。排出弁48は、粉体排出口47を自在に開閉する弁である。
冷風導入口45と、原料供給口43及び粉体排出口47との間には、分散ロータ46及びライナ44が設けられている。ライナ44は、ケーシング55の内周面に沿って周設されている。分散ロータ46は、図8に示すように、円盤と、この円盤の周縁に、円盤の法線に沿って配置される複数の角型ディスク50とを有する。分散ロータ46は、ケーシング55の他端面側に設けられており、かつライナ44と角型ディスク50との間に所定の間隔が形成される位置に設けられている。ケーシング55の中央部にはガイドリング49が設けられている。ガイドリング49は、円筒体であり、分級ロータ41の外周面の一部に被さる位置から、かつ分級ロータ41の近傍まで延出するように設けられている。ガイドリング49は、ケーシング55内に、ガイドリング49の外周面とケーシング55の内周面とに挟まれた空間である第一の空間51と、ガイドリング49の内側の空間である第二の空間52とに分けられる。
なお、分散ロータ46は、角型ディスク50の代わりに円柱状のピンを有していても良い。ライナ44は、本実施の形態では角型ディスク50に対向する表面に多数の溝が設けられているものとするが、表面に溝を有さないものであっても良い。また、分級ロータ41の設置方向は、図7に示したように縦型でも構わないし、横型でも構わない。また、分級ロータ41の個数は、図7に示したように単体でも構わないし、複数でも構わない。
以上のように構成してなる表面改質装置では、排出弁48を閉とした状態で原料供給口43から微粉砕品を投入すると、投入された微粉砕品は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ロータ41で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は、分級ロータ41の周面を通過して分級ロータ41の内側に導かれ、装置外へ連続的に排出除去される。所定粒径以上の粗粉は、遠心力によりガイドリング49の内周(第二の空間52)に沿いながら分散ロータ46により発生する循環流にのり、角型ディスク50とライナ44との隙間(以下、「表面改質ゾーン」とも言う)へ導かれる。表面改質ゾーンに導かれた粉体は、分散ロータ46とライナ44間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。
表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング49の外周(第一の空間51)に沿いながら分級ロータ41に運ばれ、分級ロータ41により、さらに微粉は機外へ排出され、粗粉は、循環流にのり、再度第二の空間52に戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。このように、図7の表面改質装置では、分級ロータ41による粒子の分級と、分散ロータ46による粒子の表面の処理とが繰り返される。一定時間経過後、排出弁48を開とし、排出口47より表面改質粒子を回収する。
上記、微粉砕品の投入から排出弁開放までの時間(サイクルタイム)と分散ロータの回転数を調整することが、トナーの平均円形度とトナーの表面におけるワックスの存在量とをコントロールする上で好ましい。平均円形度を上げるには、サイクルタイムを長くするか、分散ロータの周速を上げるのが効果的である。また表面離型剤量を低く抑えようとするなら、逆にサイクルタイムを短くするか、周速を下げることが有効である。その中でも特に分散ロータの周速がある一定以上にならないと効率的に粉砕物を球形化できないため、サイクルタイムを長くして球形化しなければならい。トナーの表面におけるワックスの存在量とトナーの平均円形度を適切に調整する観点から、前記周速は1.2×105mm/sec以上が好ましく、前記サイクルタイムは5〜60秒であることが好ましい。
本発明において、湿式製法によりトナーを製造する場合、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易なため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛の如き燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜20質量部を単独で又は2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。平均粒径が5μm以下である様な、より微粒化されたトナーを目的とする場合には、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムが挙げられる。
これらの無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。
前記懸濁重合法では、例えば重合性単量体中に低軟化物質からなる離型剤、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解又は分散せしめて重合性単量体組成物を生成し、通常の撹拌機、ホモミキサー又はホモジナイザーにより前記重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中に分散して重合性単量体組成物の液滴粒子を前記水相中に生成し、重合を行い、必要に応じてろ過、洗浄、乾燥、分級等を行う。
前記懸濁重合法では、好ましくは重合性単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように、撹拌速度及び時間を調整し、造粒する。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、かつ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度である。
本発明のトナーは、一成分系現像剤として使用することも可能であり、本発明のトナーとキャリアとを有する二成分系現像剤としても使用可能である。
二成分系現像剤として用いる場合には、本発明の各色のトナーと、体積分布基準の50%粒径(D50)が10.0〜50.0μmにあるキャリアとを有する現像剤として用いることが好ましい。
現像器内においてトナーは、キャリアや静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。特にキャリアからのストレスは、その影響が大きく、トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。キャリアのD50が50.0μmを越える場合、キャリアに担持されたトナーのうち、現像に供されるトナーの割合が低下するため、現像器内でトナーが割れやすくなる。また、紙上のトナー量を少なくして用いる場合において、画像中のドットやラインが欠けたり、ベタ画像部が掠れたりしやすい。キャリアのD50が10.0μm未満であると、現像器内において現像剤がパッキングされやすく、トナーが割れやすくなる。本発明のトナーのように着色力が大きいトナーと用いる場合、トナーが欠けて生じた微粉が帯電性に与える影響が大きいため、連続印字において画像不良が生じやすくなる。このため、前記キャリアのD50としては、10.0〜45.0μmにあることがより好ましく、さらには、15.0〜40.0μmにあることが好ましく特には15.0〜35.0μmにあることが望ましい。
上記と同様の理由により、二成分現像剤に含有されるキャリアは、前記体積分布において、D50の2倍を越える粒子径を有するキャリアの含有量が25.0%以下であることが好ましい。該キャリアの含有量が25.0%を越える場合、キャリアに担持されたトナーのうち、現像に供されるトナーの割合が低下するため、現像器内でトナーが割れやすくなる。また、紙上のトナー量を少なくして用いる場合において、画像中のドットやラインが欠けたり、ベタ画像部が掠れたりしやすい。このため、前記含有量は、15.0%以下であることがより好ましく、さらには、10.0%以下であることが好ましい。
また、二成分現像剤に含有されるキャリアは、前記体積分布において、D50の1/2未満の粒子径を有するキャリアの含有量が30.0%以下であることが好ましい。該キャリアの含有量が30.0%を越える場合、現像器内において現像剤がパッキングされやすく、トナーが割れやすくなる。本発明のトナーのように着色力が大きいトナーと用いる場合、トナーが欠けて生じた微粉が帯電性に与える影響が大きいため、連続印字において画像不良が生じやすくなる。このため、該含有量は、20.0%以下であることがより好ましく、さらには、15.0%以下であることが好ましい。
上記キャリアの体積分布基準の50%粒径(D50)、D50の2倍を越える粒子径を有するキャリアの含有量、D50の1/2未満の粒子径を有するキャリアの含有量は、測定範囲がサブミクロンから数百ミクロンの測定レンジを持つものであれば、乾式または湿式のレーザー回折式の粒度分布計を用いて測定することができる。具体的には、例えば、レーザー回折式粒度分布測定器SALD−3000(島津製作所製)を用いて測定することができる。
発明に用いることができるキャリアとしては、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、及び、クロム元素等から選ばれる元素単独または複合フェライト状態で構成されるキャリアを用いることができる。キャリアの形状として、球状、扁平または不定形があり、そのいずれのものも用いることができる。さらにキャリア表面状態の微細構造(たとえば表面凹凸性)をもコントロールすることが好ましい。一般的には、上記無機酸化物を焼成、造粒することにより、キャリアコア粒子を生成した後、樹脂でコーティングする方法が用いられている。キャリアのトナーへの負荷を軽減する意味合いから、無機酸化物と樹脂を混練後、粉砕、分級して得られる低密度分散キャリアや、さらには、直接無機酸化物とモノマーとの混練物を水系媒体中にて重合せしめて形成された真球状のキャリアを用いることも好ましい。
上記キャリアの表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、特に好ましい。その方法としては、樹脂を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて、該溶液または懸濁液をキャリアに塗布し付着せしめる方法、単に樹脂粉体とキャリアとを混合して付着させる方法が適用できる。
キャリア表面の被覆材料としてはトナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは単独或は複数で用いられる。上記被覆材料の処理量は、キャリアコア粒子に対し0.01〜30質量%(好まくは0.05〜20質量%)が好ましい。
前記キャリアは、10000/4π(kA/m)(10000エルステッド)の磁界下で測定される磁化の強さ(σ10000)が、25〜100Am2/kgにあることが好ましい。現像器内においてトナーは、キャリアや静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。特にキャリアからのストレスは、その影響が大きく、トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。キャリアのσ10000が100Am2/kgを越える場合、現像剤磁気ブラシ中でトナーへ与えるストレスが大きく、現像器内でトナーが割れやすくなる。キャリアのσ10000が25Am2/kg未満の場合、トナーが割れたことによりキャリアに付着した僅かな微粉によっても帯電性が低下しやすく、連続印字時における画像濃度の安定性が低下しやすくなる。このため、前記σ10000は、40〜90Am2/kgにあることが好ましく、さらには、50〜70Am2/kgにあることが特に好ましい。
前記キャリアの磁化の強さ(σ10000)は、含有される磁性体の種類及び量を適宜選択することにより、調整することができる。
前記キャリアの磁化の強さ(σ10000)は、例えば振動磁場型磁気特性自動記録装置BHV−30(理研電子(株)製)を用いて測定することができる。具体的な測定手段としては、円筒状のプラスチック容器にキャリアを十分に密に充填し、一方で10000/4π(kA/m)(10000エルステッド)の外部磁場を作り、この状態で容器に充填されたキャリアの磁化モーメントを測定する。さらに、該容器に充填したキャリアの実際の質量を測定して、キャリアの磁化の強さ(Am2/kg)を求める。
前記キャリアは、その平均円形度(Cc)が0.750〜0.990にあることが好ましい。平均円形度(Cc)は、キャリアの丸さの形状を表す係数であり、粒子の最大径と計測した粒子投影面積から求められる。平均円形度が1.000であれば、全てのキャリアが真球であることを示し、数値が小さくなるほど細長い、あるいは不定形な形状であることを示す。現像器内においてトナーは、キャリアや静電荷像担持体、その他部材との機械的ストレスにより、ダメージを受けやすい。特にキャリアからのストレスは、その影響が大きく、トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉が前記部材に付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。前記Ccが0.750未満であると、キャリアの凸部に存在するトナーに応力が集中しやすく、トナーが割れやすい。前記Ccが0.990を越える場合、現像器内において現像剤がパッキングされやすく、トナーが割れやすくなる。このため、前記Ccは0.800〜0.990にあることが好ましく、さらには、0.850〜0.980にあることが好ましく、特には、0.870〜0.950にあることが望ましい。
また、上記と同様の理由により、体積基準による前記キャリアの円形度分布の変動係数(Ccv)が、0.5〜20.0%にあることが好ましい。該変動係数が大きいほど、キャリアの形状に変化が大きいことを示す。Ccvが20.0%を越える場合、キャリアの凸部に存在するトナーに応力が集中しやすく、トナーが割れやすい。前記Ccvが0.5未満の場合、現像器内において現像剤がパッキングされやすく、トナーが割れやすくなる。このため、前記Ccvは0.5〜15.0%にあることが好ましく、0.5〜12.0%にあることがより好ましく、1.0〜10.0%にあることが特に好ましい。尚、変動係数Ccvは、下式より求められる。
変動係数Ccv(%)=(円形度の標準偏差/D50)×100
前記平均円形度Cc、及び円形度分布の変動係数Ccvは、例えば、マルチイメージアナライザー(ベックマン・コールター社製)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、約1%NaCl水溶液とグリセリンとを、50体積%:50体積%で混合した溶液を電解液として用いる。ここでNaCl水溶液は、一級塩化ナトリウムを用いて調製されればよく、例えばISOTON(登録商標)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)を用いることができる。グリセリンは、特級あるいは一級の試薬であればよい。
電解液(約30ml)に、分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン塩酸)を、0.1〜1.0mlを加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料が懸濁された電解液を、超音波分散器で約1分間分散処理して、分散液を得る。
アパーチャーとして200μmアパーチャー、20倍のレンズを用いて、以下の測定条件で円相当径および円形度を算出する。
測定フレーム内平均輝度:220〜230、測定フレーム設定:300、SH(スレシュホールド):50、2値化レベル:180
ガラス測定容器に電解液、および前記分散液を入れて、測定容器中のキャリアの濃度を5〜10体積%とする。ガラス測定容器内容物を最大撹拌スピードで撹拌する。サンプルの吸引圧を10kPaにする。キャリア比重が大きく沈降しやすい場合は、測定時間を15〜30分とする。また、5〜10分ごとに測定を中断して、サンプル液の補充および電解溶液−グリセリン混合溶液の補充を行う。
測定個数は2000個とする。測定終了後、本体ソフトにより、粒子画像画面でピンぼけ画像、凝集粒子(複数同時測定)などの除去を行う。
キャリアの円形度および円相当径は、下記式で算出される。
ここで、「Area」とは二値化されたキャリア粒子像の投影面積であり、「MaxLength」とは該キャリア粒子像の最大径と定義される。円相当径は、「Area」を真円の面積としたときの真円の直径で表される。円相当径は、4〜100μmを256分割され、体積基準で対数表示して用いる。
前記キャリアは、真比重が2.0〜6.0g/cm3にあることが好ましい。現像器内においてトナーは、キャリアとの機械的ストレスにより、ダメージを受けやすく、トナーの一部が欠け、又は、破断されて微粉が生じる場合がある。この微粉がキャリアに付着してトナーの帯電性を変化させ、あるいは直接紙を汚染して画像品位を低下させる場合がある。特に、本発明のトナーのように着色力の高いトナーは、僅かな微粉の付着によっても着色剤に由来する帯電性の影響を受けやすく、また、紙に付着した場合の汚染の度合いが大きくなりやすい。キャリアの真比重が6.0g/cm3を越える場合、現像剤磁気ブラシ中でトナーへ与えるストレスが大きく、現像器内でトナーが割れやすくなる。キャリアの真比重が2.0g/cm3未満の場合、トナーが割れたことによりキャリアに付着した僅かな微粉によっても帯電性が低下しやすく、連続印字時における画像濃度の安定性が低下しやすくなる。このため、前記真比重は、2.0〜5.5g/cm3にあることが好ましく、さらには、2.0〜5.0g/cm3にあることが好ましく、特には、2.5〜4.3g/cm3にあることが好ましい。
キャリアの真比重は、後述するが、例えば、乾式自動密度計オートピクノメータ(ユアサアイオニクス社製)を用いて測定することができる。
前記キャリアは、バインダー樹脂と磁性体とを有する磁性微粒子分散型樹脂キャリアが好ましい。上記バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。前述の物性を好適に達成でき、本発明のように着色力の大きいトナーを用いた場合に、該トナーが含有する着色剤の影響を小さくすることが可能となる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、アセトグアナミン樹脂、フラン樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独でも2種以上を混合しても構わないが、少なくともフェノール樹脂を含有していることが好ましい。
本発明における複合体粒子を構成するバインダー樹脂と磁性微粒子との割合は、質量基準において、バインダー樹脂:磁性微粒子=1:99〜1:50であることが好ましい。
本発明の二成分現像剤が有するキャリアは必要により、カップリング剤或いは樹脂によって被覆されてもよい。
被覆する樹脂は、公知の樹脂であればいずれも用いることができ、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。モノマーから重合して得られる重合体でもかまわない。耐久性や耐汚染性を考慮すればシリコーン樹脂が好ましい。被覆樹脂の処理量は、キャリアコア100質量部に対し、好ましくは、0.01〜3.0質量部、さらに好ましくは、0.1〜2.0質量部であることが、上記特性を得るのに好ましい。
特には、複合体粒子のバインダー樹脂としてフェノール樹脂、磁性微粒子の親油化処理剤としてエポキシ基含有シランカップリング剤、複合体粒子(キャリアコア)の被覆樹脂としてシリコーン樹脂を用る。そして、シリコーン樹脂中にアミノ基を含有するシランカップリング剤を含有させるか、或いは複合体粒子を樹脂被覆する前の前処理剤としてアミノ基を含有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。このような構成とすることにより、フェノール樹脂中に適度に吸着している水分によって、アミノ基を含有するシランカップリング剤が加水分解し、フェノール樹脂の水酸基と水素結合しつつ、自己縮合し、あるいはシリコーン樹脂中の残存シラノール基と縮合し強固な被覆を形成すると同時に、アミノ基と磁性微粒子の親油化処理剤のエポキシ基とが反応し、シリコーン樹脂の密着性が向上し、被覆樹脂の欠落などが抑制されるようになる。
次に、前記磁性微粒子分散型樹脂キャリアの製造方法について述べる。
複合体粒子は、磁性微粒子(必要に応じて非磁性無機化合物微粒子)をバインダー樹脂を構成するモノマーに分散させ、開始剤或いは触媒を添加し、例えば水系媒体中に分散して重合する、所謂、重合法や、磁性微粒子を含有したバインダー樹脂を粉砕する、所謂、混練粉砕法等によって製造することが出来る。キャリアの粒径を容易に制御し、シャープな粒度分布にするために重合法が好ましい。
バインダー樹脂としてフェノール樹脂を用いた複合体粒子の製造は、例えば、水性媒体中にフェノール類とアルデヒド類と親油化処理を行った磁性微粒子を分散させ、塩基性触媒を添加して反応させる方法が挙げられる。フェノール類とともにロジンの如き天然樹脂や、桐油、亜麻仁油の如き乾性油を混合して反応させる、所謂、変性フェノール樹脂を形成させる方法も挙げられる。
バインダー樹脂が、特にフェノール樹脂である場合には、適度な吸着水を保持しており、カップリング剤の加水分解が促進され、強固な被覆を形成することができるために好ましい。
バインダー樹脂としてエポキシ樹脂を用いた複合体粒子の製造は、例えば、水性媒体中にビスフェノール類とエピハロヒドリンと親油化処理を行った磁性微粒子を分散させ、アルカリ水性媒体中で反応させる方法が挙げられる。
バインダー樹脂として、メラミン樹脂を用いた複合体粒子の製造は、例えば、水性媒体中にメラミン類とアルデヒド類と、親油化処理を行った磁性微粒子を分散させ、弱酸性触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。
その他の熱硬化性樹脂を用いた複合体粒子の製造方法としては、例えば、親油化処理を行った磁性微粒子を種々の樹脂と混練した後、粉砕し、さらには球形化処理を行う方法等が挙げられる。
親油化処理を行った磁性微粒子とバインダー樹脂とからなる複合体粒子は、樹脂をより硬化させるために必要により熱処理を施すことも行なわれる。特に減圧下あるいは不活性雰囲気下で行うことが磁性微粒子の酸化防止のために好ましい。
複合体粒子のカップリング剤によって被覆処理する場合には、常法によりカップリング剤を水や溶剤に溶解したものに、複合体粒子を浸漬した後、濾過および乾燥する方法や、複合体粒子を撹拌しながらカップリング剤の水溶液や溶媒液をスプレーし、乾燥する方法が用いられる。特に複合体粒子の合一化を防止し、均一な被覆層を形成するために、撹拌しながら処理する方法が好ましい。
複合体粒子の表面を樹脂で被覆する場合には、樹脂の被覆は、周知の方法によって行えばよく、例えば、ヘンシェルミキサーや、ハイスピードミキサーの如き撹拌機を用いて複合体粒子と樹脂とを混合する方法、樹脂を含む溶剤中へ複合体粒子を含浸する方法、スプレードライヤーを用いて複合体粒子に樹脂を吹き付ける方法のいずれであってもよい。
次に、本発明のフルカラー画像形成方法について説明する。
本発明は、帯電している静電荷像担持体に静電荷像を形成する工程と、形成された静電荷像をトナーで現像してトナー画像を形成する工程と、形成されたトナー画像を転写材に転写する工程と、転写されたトナー画像を転写材に定着して定着画像を形成する工程とを含む画像形成方法であって、前記トナー画像を形成する工程は、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナーで現像して第一のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー以外の第二のトナーで現像して第二のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー及び第二のトナー以外の第三のトナーで現像して第三のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー、第二のトナー及び第三のトナー以外の第四のトナーで現像して第四のトナー画像を形成する工程とを含み、前記シアントナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するシアントナーであって、該シアントナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系による色相角h*の値(h* C)が210.0〜270.0にあり、波長470nmにおける吸光度(AC470)が0.300以下、波長620nmにおける吸光度(AC620)が1.500以上であり、波長670nmにおける吸光度(AC670)とAC620との比(AC620/AC670)が1.00〜1.25にあるフルカラー画像形成方法である。
このようなフルカラー画像形成方法によれば、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域を表現可能であり、且つ、画像表面の凹凸を低減した高品位画像が得られ、シアントナーの消費量を低減することでランニングコストの抑制が可能となる。さらに、静電荷像担持体上に現像されるトナー量を減らすことが可能となるため、転写工程におけるトナーの飛びちりを抑制することが可能となり、静電荷像に対して忠実なトナー画像を転写材上に形成することが可能となる。転写材上のトナー画像は、定着工程において変形が抑制され、静電荷像に対して忠実な定着画像を形成することが可能となる。また、転写材上のトナー量を低減することが可能となるため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に薄い紙を転写材として用いた場合においても、定着不良や定着器への紙の巻きつきを抑制し、画像の表面凹凸が小さい画像を形成可能となる。
この理由は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたシアントナーを用いるため、ある画像データに対し、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域、色空間を表現するために必要となる単位面積当たりのトナー量を、従来のシアントナーよりも少なくすることが可能となる。これにより、ある画像データに対し、静電荷像担持体上の単位面積当たりに現像されるシアントナーの量を少なくすることが可能となる。単位面積当たりのトナー量は少ないが、静電荷像担持体上に形成される静電荷像の面積は一定であるため、静電荷像担持体上にトナーを現像した際のトナー画像の高さを小さくすることが可能となる。本発明者らの検討によると、静電荷像担持体上のトナー画像の高さと、転写工程におけるトナーの飛び散り易さとは比例関係にある。このため、上記トナー画像の高さを小さくすることにより、トナーの飛びちりが抑制され、静電荷像担持体上のトナー画像を、より忠実に転写材へ転写することが可能となる。この効果は、中間転写体を介する画像形成方法の場合、さらに顕著となり、中間転写体を2回以上介する場合には、特に顕著となる。
一般に、転写材へ転写されたトナー画像は、定着工程を経て定着画像が形成される。本発明者らの検討によると、転写材上における未定着のトナー画像の高さと、定着工程におけるトナー画像の広がり易さとは比例関係にある。即ち、転写材上に高精細、高解像度のトナー画像を形成しても、トナー画像の高さが高い場合には、定着工程において、トナーの溶け広がり、若しくは、転がりにより、定着画像の解像度は低下する。本発明のフルカラー画像形成方法においては、転写材上におけるシアントナー画像の高さを小さくすることが可能なため、定着工程における溶け広がり、転がりといった現象が抑制されるため、転写材上の未定着のトナー画像に対して忠実な定着トナー画像を形成することが可能となる。
これらの効果は、接触式、非接触式の定着工程に関わらず効果が発現される。該定着工程が加熱定着方式である場合に、特に効果的であり、加熱加圧方式の定着工程の場合には、トナーの転がりが抑制され効果が著しい。
前記定着工程が接触式、特に加熱加圧方式の場合、転写材として用いた紙が、定着工程において定着器に巻きつく現象を防止するために、ある程度は紙自身が有する弾性力を利用する。即ち、紙上に現像されたトナーが定着器の定着部材と接触して溶融する際、定着部材とトナーとの間に働く力よりも、トナーと紙との間に働く力の方が大きいため、紙の弾性率によってトナーが定着部材から引き剥がされて定着画像が得られる。このため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に紙の厚みが薄く弾性率の小さい紙を転写材として用いた場合においては、紙の弾性率が十分に得られないため、定着部材とトナーとの間に働く力の方が大きくなり、トナーと紙とが定着部材に巻きつく現象が発生しやすい。
本発明の画像形成方法は、シアントナーの真密度をρTCとしたとき、CIELAB表色系による(L*=53.9、a*=−37.0、b*=−50.1)の画像データ(ジャパンカラーとして規格されるシアンベタ画像)に対し、転写材上に現像されるトナー量をM1C(mg/cm2)としたとき、下記式9で示される着色係数ACが3.0〜12.0にあることが好ましい。
AC=AC620/(M1C×ρTC) (式9)
上記着色係数ACは、どの程度の発色特性を有するトナーを用い、該トナーをどのくらい使用して画像を形成するかという、画像形成方法としての着色特性を示すものと考えられる。本発明者らの検討によると、トナーの発色特性を示すAC620が大きいほど、画像を形成するトナー量は少なくすることが好ましく、ACが大きいほど着色効率のよい画像形成方法といえる。ACが3.0未満の場合、現像されるトナー量に対しトナーの有する発色特性が小さすぎて画像濃度が不十分となる場合がある。また、画像濃度は十分であっても、現像されるトナー量が多すぎて画像解像度が低下する場合がある。一方、ACが12.0を越える場合、トナーの有する発色特性が大きすぎ、画像解像度は十分であっても、着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。また、色空間は十分であっても、画像を形成するトナーの量が少なすぎるため、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。このため、前記のAC範囲としては、3.0〜11.0にあることがより好ましく、さらには、4.0〜11.0にあることが好ましく、特には、6.0〜11.0にあることが好ましい。
本発明のシアントナーは、AC620が特定の範囲にあり、通常よりも高い発色特性を有する。このため、ACが3.0〜12.0といったトナー使用量が少ない状態で画像を形成しても、従来と同等の画像濃度、画像色域を達成することが可能となる。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ちやすくなる。或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、画像を構成する結着樹脂も少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーは、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることが好ましい。
前記トナー画像を形成する工程は、トナー担持体によりトナーを現像部へ搬送する工程と、該現像部において、静電荷像を該トナーで現像する工程とを有し、該搬送する工程におけるトナー担持体上のトナーの帯電量の絶対値(Qc)(mC/kg)とAC620との比(Qc/AC620)が22.0〜50.0にあることが好ましい。本発明は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたシアントナーを用いるが、トナーの有する発色特性と帯電量の関係から、静電潜像に対し現像されるトナー量を制御することが好ましい。即ち、Qc/AC620が上記範囲の中で、用いるトナーのAC620が大きいほどQcの値が大きくし、画像データに対し現像に使用されるトナー量を少なくすることが好ましい。トナーの発色効率をさらに向上させることが可能となり、画像解像度が向上する。また、発色特性に優れたトナーは、僅かなトナー飛散によっても画像不良として目立ちやすいため、トナーの発色特性が優れるほどトナーの帯電量を大きくし、トナー飛散などの画像不良を抑制することが好ましい。さらに、トナーの発色特性が優れるほど、ドット画像、ライン画像等のエッジ部の乱れが目立ちやすいが、トナーの発色特性に合わせた一定の範囲にトナーの帯電量が保持されている場合に、エッジ部の乱れが抑制され、画像解像度の低下が抑制されやすい。該Qc/AC620が22.0未満の場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が小さすぎ、現像されるトナー量が多くなり、画像濃度が十分であっても画像解像度が低下する場合がある。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が大きすぎ、画像解像度が十分であっても着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。該Qc/AC620が50.0を越える場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が大きく、現像されるトナー量が少なすぎて、画像濃度が十分であっても、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が小さく、画像解像度が十分であっても画像濃度や画像色域が不十分となる場合がある。このため、上記Qc/AC620は24.0〜45.0にあることがより好ましく、さらには、27.0〜44.6にあることが好ましく、30.0〜44.6にあることがさらに好ましい。
本発明の画像形成方法は、前記M1C(mg/cm2)が(0.10×ρTC)〜(0.40×ρTC)mg/cm2にあることが好ましい。トナー消費量が低減され、本発明の効果が良好に発現される。M1Cが(0.10×ρTC)mg/cm2未満であると、紙にトナーが染み込み、表現できる画像の色空間が低減する場合がある。また、画像を形成するトナーの個数が不足し、画像の均一性が低下する場合がある。M1Cが(0.40×ρTC)mg/cm2を越える場合、画像の解像度が低下しやすくなる。また、弾性率が小さい転写材を用いた場合に、定着工程における紙の巻きつきが発生しやすくなる。このため、上記M1Cの範囲としては、(0.12×ρTC)〜(0.35×ρTC)mg/cm2であることがより好ましく、(0.15×ρTC)〜(0.30×ρTC)mg/cm2であることが特に好ましい。
前記トナー画像を形成する工程では、シアン単色濃度20%の画像データに対して、静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HC20)と、シアン単色濃度80%の画像データに対して静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HC80)との比(HC80/HC20)が0.90〜1.30にあることが好ましい。本発明によると、画像解像度の向上がより効果的となり、グロスむらが抑制され、転写材の厚さに関わらず画像表面凹凸が抑制された画像が得られ、且つ、トナー消費量の低減が可能となる。本発明のように発色特性の優れるトナーを用いる場合、画像のある点において、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数により、該点における画像の色味が変動する影響が大きい。このため、本発明においては、画像濃度に関わらず各階調画像において、画像面に対し垂直方向に存在するトナー個数をなるべく揃えるような画像形成方法を用いることが好ましい。該HC80/HC20が0.90未満や1.30を越える場合、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数ムラにより、画像のハイライト部から中間階調部において色味変動による画像ムラの影響を受けやすくなる。特に、HC80/HC20が1.30を越える場合、高濃度階調部の解像度が低下しやすく、画像データに対する画像の再現性が低下しやすい。このため、該HC80/HC20は、0.95〜1.20にあることが好ましく、特には1.00〜1.15にあることが好ましい。このような画像形成は、画像領域の面積によって階調の表現を行う面積階調法による画作りを、低濃度領域から高濃度ベタ画像領域にいたるまで採用する画像形成方法において有効である。
本発明は、帯電している静電荷像担持体に静電荷像を形成する工程と、形成された静電荷像をトナーで現像してトナー画像を形成する工程と、形成されたトナー画像を転写材に転写する工程と、転写されたトナー画像を転写材に定着して定着画像を形成する工程とを含む画像形成方法であって、前記トナー画像を形成する工程は、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナーで現像して第一のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー以外の第二のトナーで現像して第二のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー及び第二のトナー以外の第三のトナーで現像して第三のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー、第二のトナー及び第三のトナー以外の第四のトナーで現像して第四のトナー画像を形成する工程とを含み、前記マゼンタトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するマゼンタトナーであって、該マゼンタトナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系による色相角h*の値(h* M)が330.0〜30.0にあり、波長570nmにおける吸光度(AM570)が1.550以上、波長620nmにおける吸光度(AM620)が0.250以下であり、波長450nmにおける吸光度(AM450)とAM570との比(AM570/AM450)が1.80〜3.50にあるフルカラー画像形成方法である。
このようなフルカラー画像形成方法によれば、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域を表現可能であり、且つ、画像表面の凹凸を低減した高品位画像が得られ、マゼンタトナーの消費量を低減することでランニングコストの抑制が可能となる。さらに、静電荷像担持体上に現像されるトナー量を減らすことが可能となるため、転写工程におけるトナーの飛びちりを抑制することが可能となり、静電荷像に対して忠実なトナー画像を転写材上に形成することが可能となる。転写材上のトナー画像は、定着工程において変形が抑制され、静電荷像に対して忠実な定着画像を形成することが可能となる。また、転写材上のトナー量を低減することが可能となるため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に薄い紙を転写材として用いた場合においても、定着不良や定着器への紙の巻きつきを抑制し、画像の表面凹凸が小さい画像を形成可能となる。
この理由は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたマゼンタトナーを用いるため、ある画像データに対し、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域、色空間を表現するために必要となる単位面積当たりのトナー量を、従来のマゼンタトナーよりも少なくすることが可能となる。これにより、ある画像データに対し、静電荷像担持体上の単位面積当たりに現像されるマゼンタトナーの量を少なくすることが可能となる。単位面積当たりのトナー量は少ないが、静電荷像担持体上に形成される静電荷像の面積は一定であるため、静電荷像担持体上にトナーを現像した際のトナー画像の高さを小さくすることが可能となる。本発明者らの検討によると、静電荷像担持体上のトナー画像の高さと、転写工程におけるトナーの飛び散り易さとは比例関係にある。このため、上記トナー画像の高さを小さくすることにより、トナーの飛びちりが抑制され、静電荷像担持体上のトナー画像を、より忠実に転写材へ転写することが可能となる。この効果は、中間転写体を介する画像形成方法の場合、さらに顕著となり、中間転写体を2回以上介する場合には、特に顕著となる。
一般に、転写材へ転写されたトナー画像は、定着工程を経て定着画像が形成される。本発明者らの検討によると、転写材上における未定着のトナー画像の高さと、定着工程におけるトナー画像の広がり易さとは比例関係にある。即ち、転写材上に高精細、高解像度のトナー画像を形成しても、トナー画像の高さが高い場合には、定着工程において、トナーの溶け広がり、若しくは、転がりにより、定着画像の解像度は低下する。本発明のフルカラー画像形成方法においては、転写材上におけるマゼンタトナー画像の高さを小さくすることが可能なため、定着工程における溶け広がり、転がりといった現象が抑制されるため、転写材上の未定着のトナー画像に対して忠実な定着トナー画像を形成することが可能となる。
これらの効果は、接触式、非接触式の定着工程に関わらず効果が発現される。該定着工程が加熱定着方式である場合に、特に効果的であり、加熱加圧方式の定着工程の場合には、トナーの転がりが抑制され効果が著しい。
前記定着工程が接触式、特に加熱加圧方式の場合、転写材として用いた紙が、定着工程において定着器に巻きつく現象を防止するために、ある程度は紙自身が有する弾性力を利用する。即ち、紙上に現像されたトナーが定着器の定着部材と接触して溶融する際、定着部材とトナーとの間に働く力よりも、トナーと紙との間に働く力の方が大きいため、紙の弾性率によってトナーが定着部材から引き剥がされて定着画像が得られる。このため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に厚みが薄く弾性率の小さい紙を転写材として用いた場合においては、紙の弾性率が十分に得られないため、定着部材とトナーとの間に働く力の方が大きくなり、トナーと紙とが定着部材に巻きつく現象が発生しやすい。
本発明の画像形成方法は、マゼンタトナーの真密度をρTMとしたとき、CIELAB表色系による(L*=47.0、a*=75.0、b*=−6.0)の画像データ(ジャパンカラーとして規格されるマゼンタベタ画像)に対し、転写材上に現像されるトナー量をM1M(mg/cm2)としたとき、下記式10で示される着色係数AMが3.0〜12.0にあることが好ましい。
AM=AM570/(M1M×ρTM) (式10)
上記着色係数AMは、どの程度の発色特性を有するトナーを用い、該トナーをどのくらい使用して画像を形成するかという、画像形成方法としての着色特性を示すものと考えられる。本発明者らの検討によると、トナーの発色特性を示すAM570が大きいほど、画像を形成するトナー量は少なくすることが好ましく、AMが大きいほど着色効率のよい画像形成方法といえる。AMが3.0未満の場合、トナーの有する発色特性が小さすぎて画像濃度が不十分となる場合がある。また、画像濃度は十分であっても、画像形成に使用されるトナー量が多すぎて画像解像度が低下する場合がある。一方、AMが12.0を越える場合、トナーの有する発色特性が大きすぎ、画像解像度は十分であっても、着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。また、色空間は十分であっても、画像を形成するトナーの量が少なすぎるため、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。このため、前記のAM範囲としては、3.0〜11.0にあることがより好ましく、さらには、4.0〜11.0にあることが好ましく、6.0〜11.0にあることが特に好ましい。
本発明のマゼンタトナーは、AM570が特定の範囲にあり、通常よりも高い発色特性を有する。このため、AMが3.0〜12.0といったトナー使用量が少ない状態で画像を形成しても、従来と同等の画像濃度、画像色域を達成することが可能となる。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ちやすくなる。或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、画像を構成する結着樹脂も少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーは、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることが好ましい。
前記トナー画像を形成する工程は、トナー担持体によりトナーを現像部へ搬送する工程と、該現像部において、静電荷像を該トナーで現像する工程とを有し、該搬送する工程におけるトナー担持体上のトナーの帯電量の絶対値(QM)(mC/kg)とAM570との比(QM/AM570)が22.0〜50.0にあることが好ましい。本発明は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたマゼンタトナーを用いるが、トナーの有する発色特性と帯電量の関係から、静電潜像に対し現像されるトナー量を制御することが好ましい。即ち、QM/AM570が上記範囲の中で、用いるトナーのAM570が大きいほどQMの値を大きくし、画像データに対し現像に使用されるトナー量を少なくすることが好ましい。トナーの発色効率をさらに向上させることが可能となり、画像解像度が向上する。また、発色特性に優れたトナーは、僅かなトナー飛散によっても画像不良として目立ちやすいため、トナーの発色特性が優れるほどトナーの帯電量を大きくし、トナー飛散などの画像不良を抑制することが好ましい。さらに、トナーの発色特性が優れるほど、ドット画像、ライン画像等のエッジ部の乱れが目立ちやすいが、トナーの発色特性に合わせた一定の範囲にトナーの帯電量が保持されている場合に、エッジ部の乱れが抑制され、画像解像度の低下が抑制されやすい。該QM/AM570が22.0未満の場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が小さすぎ、現像されるトナー量が多くなり、画像濃度が十分であっても画像解像度が低下する場合がある。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が大きすぎ、画像解像度が十分であっても着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。該QM/AM570が50.0を越える場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が大きく、現像されるトナー量が少なすぎて、画像濃度が十分であっても、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が小さく、画像解像度が十分であっても画像濃度や画像色域が不十分となる場合がある。このため、上記QM/AM570は23.0〜45.0にあることがより好ましく、さらには、26.0〜44.0にあることが好ましく、特には、30.0〜44.0にあることが望ましい。
本発明の画像形成方法は、前記M1Mmg/cm2が(0.10×ρTM)〜(0.40×ρTM)mg/cm2であることが好ましい。トナー消費量が低減され、本発明の効果が良好に発現される。M1Mが(0.10×ρTM)mg/cm2未満であると、紙にトナーが染み込み、表現できる画像の色空間が低減する場合がある。また、画像を形成するトナーの個数が不足し、画像の均一性が低下する場合がある。M1Mが(0.40×ρTM)mg/cm2を越える場合、画像の解像度が低下しやすくなる。また、弾性率が小さい転写材を用いた場合に、定着工程における紙の巻きつきが発生しやすくなる。このため、上記M1Mの範囲としては、(0.12×ρTM)〜(0.35×ρTM)mg/cm2であることがより好ましく、(0.15×ρTM)〜(0.30×ρTM)mg/cm2であることが望ましい。
前記トナー画像を形成する工程では、マゼンタ単色濃度20%の画像データに対して、静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HM20)と、マゼンタ単色濃度80%の画像データに対して静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HM80)との比(HM80/HM20)が0.90〜1.30にあることが好ましい。本発明によると、画像解像度の向上がより効果的となり、グロスむらが抑制され、転写材の厚さに関わらず画像表面凹凸が抑制された画像が得られ、且つ、トナー消費量の低減が可能となる。本発明のように発色特性の優れるトナーを用いる場合、画像のある点において、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数により、該点における画像の色味が変動する影響が大きい。このため、本発明においては、画像濃度に関わらず各階調画像において、画像面に対し垂直方向に存在するトナー個数をなるべく揃えるような画像形成方法を用いることが好ましい。該HM80/HM20が0.90未満や1.30を越える場合、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数ムラにより、画像のハイライト部から中間階調部において色味変動による画像ムラの影響を受けやすくなる。特に、HM80/HM20が1.30を越える場合、高濃度階調部の解像度が低下しやすく、画像データに対する画像の再現性が低下しやすい。このため、該HM80/HM20は、0.95〜1.20にあることが好ましく、特には1.00〜1.15にあることが好ましい。このような画像形成は、画像領域の面積によって階調の表現を行う面積階調法による画作りを、低濃度領域から高濃度ベタ画像領域にいたるまで採用する画像形成方法において有効である。
本発明は、帯電している静電荷像担持体に静電荷像を形成する工程と、形成された静電荷像をトナーで現像してトナー画像を形成する工程と、形成されたトナー画像を転写材に転写する工程と、転写されたトナー画像を転写材に定着して定着画像を形成する工程とを含む画像形成方法であって、前記トナー画像を形成する工程は、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナーで現像して第一のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー以外の第二のトナーで現像して第二のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー及び第二のトナー以外の第三のトナーで現像して第三のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー、第二のトナー及び第三のトナー以外の第四のトナーで現像して第四のトナー画像を形成する工程とを含み、前記イエロートナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するイエロートナーであって、該イエロートナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系による色相角h*の値(h* Y)が75.0〜120.0にあり、波長450nmにおける吸光度(AY450)が1.600以上、波長470nmにおける吸光度(AY470)が1.460以上、波長510nmにおける吸光度(AY510)が0.500以下にあるフルカラー画像形成方法である。
このようなフルカラー画像形成方法によれば、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域を表現可能であり、且つ、画像表面の凹凸を低減した高品位画像が得られ、イエロートナーの消費量を低減することでランニングコストの抑制が可能となる。さらに、静電荷像担持体上に現像されるトナー量を減らすことが可能となるため、転写工程におけるトナーの飛びちりを抑制することが可能となり、静電荷像に対して忠実なトナー画像を転写材上に形成することが可能となる。転写材上のトナー画像は、定着工程において変形が抑制され、静電荷像に対して忠実な定着画像を形成することが可能となる。また、転写材上のトナー量を低減することが可能となるため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に薄い紙を転写材として用いた場合においても、定着不良や定着器への紙の巻きつきを抑制し、画像の表面凹凸が小さい画像を形成可能となる。
この理由は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたイエロートナーを用いるため、ある画像データに対し、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域、色空間を表現するために必要となる単位面積当たりのトナー量を、従来のイエロートナーよりも少なくすることが可能となる。これにより、ある画像データに対し、静電荷像担持体上の単位面積当たりに現像されるイエロートナーの量を少なくすることが可能となる。単位面積当たりのトナー量は少ないが、静電荷像担持体上に形成される静電荷像の面積は一定であるため、静電荷像担持体上にトナーを現像した際のトナー画像の高さを小さくすることが可能となる。本発明者らの検討によると、静電荷像担持体上のトナー画像の高さと、転写工程におけるトナーの飛び散り易さとは比例関係にある。このため、上記トナー画像の高さを小さくすることにより、トナーの飛びちりが抑制され、静電荷像担持体上のトナー画像を、より忠実に転写材へ転写することが可能となる。この効果は、中間転写体を介する画像形成方法の場合、さらに顕著となり、中間転写体を2回以上介する場合には、特に顕著となる。
一般に、転写材へ転写されたトナー画像は、定着工程を経て定着画像が形成される。本発明者らの検討によると、転写材上における未定着のトナー画像の高さと、定着工程におけるトナー画像の広がり易さとは比例関係にある。即ち、転写材上に高精細、高解像度のトナー画像を形成しても、トナー画像の高さが高い場合には、定着工程において、トナーの溶け広がり、若しくは、転がりにより、定着画像の解像度は低下する。本発明のフルカラー画像形成方法においては、転写材上におけるイエロートナー画像の高さを小さくすることが可能なため、定着工程における溶け広がり、転がりといった現象が抑制されるため、転写材上の未定着のトナー画像に対して忠実な定着トナー画像を形成することが可能となる。
これらの効果は、接触式、非接触式の定着工程に関わらず効果が発現される。該定着工程が加熱定着方式である場合に、特に効果的であり、加熱加圧方式の定着工程の場合には、トナーの転がりが抑制され効果が著しい。
前記定着工程が接触式、特に加熱加圧方式の場合、転写材として用いた紙が、定着工程において定着器に巻きつく現象を防止するために、ある程度は紙自身が有する弾性力を利用する。即ち、紙上に現像されたトナーが定着器の定着部材と接触して溶融する際、定着部材とトナーとの間に働く力よりも、トナーと紙との間に働く力の方が大きいため、紙の弾性率によってトナーが定着部材から引き剥がされて定着画像が得られる。このため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に紙の厚みが薄く弾性率の小さい紙を転写材として用いた場合においては、紙の弾性率が十分に得られないため、定着部材とトナーとの間に働く力の方が大きくなり、トナーと紙とが定着部材に巻きつく現象が発生しやすい。
本発明の画像形成方法は、イエロートナーの真密度をρTYとしたとき、CIELAB表色系による(L*=88.0、a*=−6.0、b*=95.0)の画像データ(ジャパンカラーとして規格されるイエローベタ画像)に対し、転写材上に現像されるトナー量をM1Y(mg/cm2)としたとき、下記式11で示される着色係数AYが3.0〜12.0にあることが好ましい。
AY=AY450/(M1Y×ρTY) (式11)
上記着色係数AYは、どの程度の発色特性を有するトナーを用い、該トナーをどのくらい使用して画像を形成するかという、画像形成方法としての着色特性を示すものと考えられる。本発明者らの検討によると、トナーの発色特性を示すAY450が大きいほど、画像を形成するトナー量は少なくすることが好ましく、AYが大きいほど着色効率のよい画像形成方法といえる。AYが3.0未満の場合、現像されるトナー量に対しトナーの有する発色特性が小さすぎて画像濃度が不十分となる場合がある。また、画像濃度は十分であっても、現像されるトナー量が多すぎて画像解像度が低下する場合がある。一方、AYが12.0を越える場合、トナーの有する発色特性が大きすぎ、画像解像度は十分であっても、着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。また、色空間は十分であっても、画像を形成するトナーの量が少なすぎるため、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。このため、前記のAY範囲としては、3.0〜11.0にあることがより好ましく、さらには、4.0〜11.0にあることが好ましく、特には、6.0〜11.0にあることが望ましい。
本発明のイエロートナーは、AY450が特定の範囲にあり、通常よりも高い発色特性を有する。このため、AYが3.0〜12.0といったトナー使用量が少ない状態で画像を形成しても、従来と同等の画像濃度、画像色域を達成することが可能となる。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ちやすくなる。或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、画像を構成する結着樹脂も少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーは、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることが好ましい。
前記トナー画像を形成する工程は、トナー担持体によりトナーを現像部へ搬送する工程と、該現像部において、静電荷像を該トナーで現像する工程とを有し、該搬送する工程におけるトナー担持体上のトナーの帯電量の絶対値(QY)(mC/kg)とAY450との比(QY/AY450)が22.0〜50.0にあることが好ましい。本発明は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたイエロートナーを用いるが、トナーの有する発色特性と帯電量の関係から、静電潜像に対し現像されるトナー量を制御することが好ましい。即ち、QY/AY450が上記範囲の中で、用いるトナーのAY450が大きいほどQYの値を大きくし、画像データに対し現像に使用されるトナー量を少なくすることが好ましい。トナーの発色効率をさらに向上させることが可能となり、画像解像度が向上する。また、発色特性に優れたトナーは、僅かなトナー飛散によっても画像不良として目立ちやすいため、トナーの発色特性が優れるほどトナーの帯電量を大きくし、トナー飛散などの画像不良を抑制することが好ましい。さらに、トナーの発色特性が優れるほど、ドット画像、ライン画像等のエッジ部の乱れが目立ちやすいが、トナーの発色特性に合わせた一定の範囲にトナーの帯電量が保持されている場合に、エッジ部の乱れが抑制され、画像解像度の低下が抑制されやすい。該QY/AY450が22.0未満の場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が小さすぎ、現像されるトナー量が多くなり、画像濃度が十分であっても画像解像度が低下する場合がある。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が大きすぎ、画像解像度が十分であっても着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。該QY/AY450が50.0を越える場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が大きく、現像されるトナー量が少なすぎて、画像濃度が十分であっても、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が小さく、画像解像度が十分であっても画像濃度や画像色域が不十分となる場合がある。このため、上記QY/AY450は23.0〜45.0にあることがより好ましく、さらには、27.0〜45.0にあることが好ましく、特には、30.0〜45.0にあることが望ましい。
本発明の画像形成方法は、前記M1Ymg/cm2が(0.10×ρTY)〜(0.40×ρTY)mg/cm2にあることが好ましい。トナー消費量が低減され、本発明の効果が良好に発現される。M1Yが(0.10×ρTY)mg/cm2未満であると、紙にトナーが染み込み、表現できる画像の色空間が低減する場合がある。また、画像を形成するトナーの個数が不足し、画像の均一性が低下する場合がある。M1Yが(0.40×ρTY)mg/cm2を越える場合、画像の解像度が低下しやすくなる。また、弾性率が小さい転写材を用いた場合に、定着工程における紙の巻きつきが発生しやすくなる。このため、上記M1Yの範囲としては、(0.12×ρTY)〜(0.35×ρTY)mg/cm2であることがより好ましく、(0.15×ρTY)〜(0.30×ρTY)mg/cm2であることが望ましい。
前記トナー画像を形成する工程では、イエロー単色濃度20%の画像データに対して、静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HY20)と、イエロー単色濃度80%の画像データに対して静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HY80)との比(HY80/HY20)が0.90〜1.30にあることが好ましい。本発明によると、画像解像度の向上がより効果的となり、グロスむらが抑制され、転写材の厚さに関わらず画像表面凹凸が抑制された画像が得られ、且つ、トナー消費量の低減が可能となる。本発明のように発色特性の優れるトナーを用いる場合、画像のある点において、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数により、該点における画像の色味が変動する影響が大きい。このため、本発明においては、画像濃度に関わらず各階調画像において、画像面に対し垂直方向に存在するトナー個数をなるべく揃えるような画像形成方法を用いることが好ましい。HY80/HY20が0.90未満や1.30を越える場合、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数ムラにより、画像のハイライト部から中間階調部において色味変動による画像ムラの影響を受けやすくなる。特に、HY80/HY20が1.30を越える場合、高濃度階調部の解像度が低下しやすく、画像データに対する画像の再現性が低下しやすい。このため、該HY80/HY20は、0.95〜1.20にあることが好ましく、特には1.00〜1.15にあることが好ましい。このような画像形成は、画像領域の面積によって階調の表現を行う面積階調法による画作りを、低濃度領域から高濃度ベタ画像領域にいたるまで採用する画像形成方法において有効である。
本発明は、帯電している静電荷像担持体に静電荷像を形成する工程と、形成された静電荷像をトナーで現像してトナー画像を形成する工程と、形成されたトナー画像を転写材に転写する工程と、転写されたトナー画像を転写材に定着して定着画像を形成する工程とを含む画像形成方法であって、前記トナー画像を形成する工程は、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナーで現像して第一のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー以外の第二のトナーで現像して第二のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー及び第二のトナー以外の第三のトナーで現像して第三のトナー画像を形成する工程と、ブラックトナーとシアントナーとマゼンタトナーとイエロートナーとから選択される第一のトナー、第二のトナー及び第三のトナー以外の第四のトナーで現像して第四のトナー画像を形成する工程とを含み、前記ブラックトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するブラックトナーであって、該ブラックトナーは、反射分光光度測定において、CIELAB表色系によるc*の値(c* K)が20.0以下にあり、波長600nmにおける吸光度(AK600)が1.610以上、波長460nmにおける吸光度(AK460)とAK600との比(AK600/AK460)が0.970〜1.035にあるフルカラー画像形成方法である。
このようなフルカラー画像形成方法によれば、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域を表現可能であり、且つ、画像表面の凹凸を低減した高品位画像が得られ、ブラックトナーの消費量を低減することでランニングコストの抑制が可能となる。さらに、静電荷像担持体上に現像されるトナー量を減らすことが可能となるため、転写工程におけるトナーの飛びちりを抑制することが可能となり、静電荷像に対して忠実なトナー画像を転写材上に形成することが可能となる。転写材上のトナー画像は、定着工程において変形が抑制され、静電荷像に対して忠実な定着画像を形成することが可能となる。また、転写材上のトナー量を低減することが可能となるため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に薄い紙を転写材として用いた場合においても、定着不良や定着器への紙の巻きつきを抑制し、画像の表面凹凸が小さい画像を形成可能となる。
この理由は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたブラックトナーを用いるため、ある画像データに対し、従来と同等、若しくは、それ以上の画像色域、色空間を表現するために必要となる単位面積当たりのトナー量を、従来のブラックトナーよりも少なくすることが可能となる。これにより、ある画像データに対し、静電荷像担持体上の単位面積当たりに現像されるブラックトナーの量を少なくすることが可能となる。単位面積当たりのトナー量は少ないが、静電荷像担持体上に形成される静電荷像の面積は一定であるため、静電荷像担持体上にトナーを現像した際のトナー画像の高さを小さくすることが可能となる。本発明者らの検討によると、静電荷像担持体上のトナー画像の高さと、転写工程におけるトナーの飛び散り易さとは比例関係にある。このため、上記トナー画像の高さを小さくすることにより、トナーの飛びちりが抑制され、静電荷像担持体上のトナー画像を、より忠実に転写材へ転写することが可能となる。この効果は、中間転写体を介する画像形成方法の場合、さらに顕著となり、中間転写体を2回以上介する場合には、特に顕著となる。
一般に、転写材へ転写されたトナー画像は、定着工程を経て定着画像が形成される。本発明者らの検討によると、転写材上における未定着のトナー画像の高さと、定着工程におけるトナー画像の広がり易さとは比例関係にある。即ち、転写材上に高精細、高解像度のトナー画像を形成しても、トナー画像の高さが高い場合には、定着工程において、トナーの溶け広がり、若しくは、転がりにより、定着画像の解像度は低下する。本発明のフルカラー画像形成方法においては、転写材上におけるブラックトナー画像の高さを小さくすることが可能なため、定着工程における溶け広がり、転がりといった現象が抑制されるため、転写材上の未定着のトナー画像に対して忠実な定着トナー画像を形成することが可能となる。
これらの効果は、接触式、非接触式の定着工程に関わらず効果が発現される。該定着工程が加熱定着方式である場合に、特に効果的であり、加熱加圧方式の定着工程の場合には、トナーの転がりが抑制され効果が著しい。
前記定着工程が接触式、特に加熱加圧方式の場合、転写材として用いた紙が、定着工程において定着器に巻きつく現象を防止するために、ある程度は紙自身が有する弾性力を利用する。即ち、紙上に現像されたトナーが定着器の定着部材と接触して溶融する際、定着部材とトナーとの間に働く力よりも、トナーと紙との間に働く力の方が大きいため、紙の弾性率によってトナーが定着部材から引き剥がされて定着画像が得られる。このため、新聞折り込み広告用紙の如き、従来よりも特に紙の厚みが薄く弾性率の小さい紙を転写材として用いた場合においては、紙の弾性率が十分に得られないため、定着部材とトナーとの間に働く力の方が大きくなり、トナーと紙とが定着部材に巻きつく現象が発生しやすい。
本発明の画像形成方法は、ブラックトナーの真密度をρTKとしたとき、CIELAB表色系による(L*=13.2、a*=1.3、b*=1.9)の画像データ(ジャパンカラーとして規格されるブラックベタ画像)に対し、転写材上に現像されるトナー量をM1K(mg/cm2)としたとき、下記式12で示される着色係数AKが3.0〜12.0にあることが好ましい。
AK=AK600/(M1K×ρTK) (式12)
上記着色係数AKは、どの程度の発色特性を有するトナーを用い、該トナーをどのくらい使用して画像を形成するかという、画像形成方法としての着色特性を示すものと考えられる。本発明者らの検討によると、トナーの発色特性を示すAK600が大きいほど、画像を形成するトナー量は少なくすることが好ましく、AKが大きいほど着色効率のよい画像形成方法といえる。AKが3.0未満の場合、現像されるトナー量に対しトナーの有する発色特性が小さすぎて画像濃度が不十分となる場合がある。また、画像濃度は十分であっても、現像されるトナー量が多すぎて画像解像度が低下する場合がある。一方、AKが12.0を越える場合、トナーの有する発色特性が大きすぎ、画像解像度は十分であっても、着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。また、色空間は十分であっても、画像を形成するトナーの量が少なすぎるため、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。このため、前記のAK範囲としては、3.0〜11.0にあることがより好ましく、さらには、4.0〜11.0にあることが好ましく、特には、6.0〜11.0にあることが望ましい。
本発明のブラックトナーは、AK600が特定の範囲にあり、通常よりも高い発色特性を有する。このため、AKが3.0〜12.0といったトナー使用量が少ない状態で画像を形成しても、従来と同等の画像濃度、画像色域を達成することが可能となる。しかし、画像を形成するトナー層の厚みを薄くしてトナー消費量を低減しようとする場合、トナーが紙に染み込み、画像部に紙の繊維が目立ちやすくなる。或いは、画像彩度が低下するといった現象により画像品位が低下しやすくなる。紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、画像を構成する結着樹脂も少なくなるため、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。そこで、本発明のトナーは、ある程度は低温定着性に優れるが、高温においても適度な粘性を保持していることが好ましい。
前記トナー画像を形成する工程は、トナー担持体によりトナーを現像部へ搬送する工程と、該現像部において、静電荷像を該トナーで現像する工程とを有し、該搬送する工程におけるトナー担持体上のトナーの帯電量の絶対値(QK)(mC/kg)とAK600との比(QK/AK600)が22.0〜50.0にあることが好ましい。本発明は、特定の反射分光特性を有し、従来よりも発色特性に優れたブラックトナーを用いるが、トナーの有する発色特性と帯電量の関係から、静電潜像に対し現像されるトナー量を制御するが好ましい。即ち、QK/AK600が上記範囲の中で、用いるトナーのAK600が大きいほどQKの値を大きくし、画像データに対し現像に使用されるトナー量を少なくすることが好ましい。トナーの発色効率をさらに向上させることが可能となり、画像解像度が向上する。また、発色特性に優れたトナーは、僅かなトナー飛散によっても画像不良として目立ちやすいため、トナーの発色特性が優れるほどトナーの帯電量を大きくし、帯電不良によるトナー飛散を特に抑制することが好ましい。さらに、トナーの発色特性が優れるほど、ドット画像、ライン画像等のエッジ部の乱れが目立ちやすいが、トナーの発色特性に合わせた一定の範囲にトナーの帯電量が保持されている場合に、エッジ部の乱れが抑制され、画像解像度の低下が抑制されやすい。該QK/AK600が22.0未満の場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が小さすぎ、現像されるトナー量が多くなり、画像濃度が十分であっても画像解像度が低下する場合がある。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が大きすぎ、画像解像度が十分であっても着色剤の発色効率が低下し、表現可能な色空間が低下する場合がある。該QK/AK600が50.0を越える場合、トナーの発色特性に対するトナーの帯電量が大きく、現像されるトナー量が少なすぎて、画像濃度が十分であっても、ハイライト部のガサつき、ライン画像のエッジ部の乱れ等が目立ちやすくなる。また、トナーの帯電量に対するトナーの発色特性が小さく、画像解像度が十分であっても画像濃度や画像色域が不十分となる場合がある。このため、上記QK/AK600は23.0〜50.0にあることがより好ましく、さらには、30.0〜50.0にあることが好ましく、特には、36.0〜50.0にあることが望ましい。
本発明の画像形成方法は、前記M1Kmg/cm2が(0.10×ρTK)〜(0.40×ρTK)mg/cm2にあることが好ましい。トナー消費量が低減され、本発明の効果が良好に発現される。M1Kが(0.10×ρTK)mg/cm2未満であると、紙にトナーが染み込み、表現できる画像の色空間が低減する場合がある。また、画像を形成するトナーの個数が不足し、画像の均一性が低下する場合がある。M1Kが(0.40×ρTK)mg/cm2を越える場合、画像の解像度が低下しやすくなる。また、弾性率が小さい転写材を用いた場合に、定着工程における紙の巻きつきが発生しやすくなる。このため、上記M1Kの範囲としては、(0.12×ρTK)〜(0.35×ρTK)mg/cm2であることがより好ましく、(0.15×ρTK)〜(0.30×ρTK)mg/cm2であることが望ましい。
前記トナー画像を形成する工程では、ブラック単色濃度20%の画像データに対して、静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HK20)と、ブラック単色濃度80%の画像データに対して静電荷像担持体上に形成されるトナー画像のトナー層の平均高さ(HK80)との比(HK80/HK20)が0.90〜1.30にあることが好ましい。本発明によると、画像解像度の向上がより効果的となり、グロスむらが抑制され、転写材の厚さに関わらず画像表面凹凸が抑制された画像が得られ、且つ、トナー消費量の低減が可能となる。本発明のように発色特性の優れるトナーを用いる場合、画像のある点において、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数により、該点における画像の色味が変動する影響が大きい。このため、本発明においては、画像濃度に関わらず各階調画像において、画像面に対し垂直方向に存在するトナー個数をなるべく揃えるような画像形成方法を用いることが好ましい。該HK80/HK20が0.90未満や1.30を越える場合、画像面に対して垂直方向に存在するトナーの個数ムラにより、画像のハイライト部から中間階調部において色味変動による画像ムラの影響を受けやすくなる。特に、HK80/HK20が1.30を越える場合、高濃度階調部の解像度が低下しやすく、画像データに対する画像の再現性が低下しやすい。このため、該HK80/HK20は、0.95〜1.20にあることが好ましく、特には1.00〜1.15にあることが好ましい。このような画像形成は、画像領域の面積によって階調の表現を行う面積階調法による画作りを、低濃度領域から高濃度ベタ画像領域にいたるまで採用する画像形成方法において有効である。
次に、本発明に好ましい画像形成装置を示す。
(1)画像形成装置例
図3は、電子写真法によりフルカラーの画像を形成するための画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図3の画像形成装置は、フルカラー複写機又フルカラープリンタとして使用される。フルカラー複写機の場合は、図3に示すように、上部にデジタルカラー画像リーダ部、下部にデジタルカラー画像プリンター部を有する。
画像リーダ部において、原稿101を原稿台ガラス102上に載せ、露光ランプ103により露光走査することにより、原稿101からの反射光像をレンズ104によりフルカラーセンサ105に集光し、カラー色分解画像信号を得る。カラー色分解画像信号は、増幅回路(図示せず)を経てビデオ処理ユニット(図示せず)にて処理を施され、デジタル画像プリンター部に送出される。
画像プリンター部において、像担持体である感光ドラム106は、たとえば有機光導電体を有する感光層を有し、矢印方向に回転自在に担持されている。感光ドラム106の回りには、前露光ランプ107、コロナ帯電器108、レーザー露光光学系109、電位センサ110、色の異なる4個の現像器111Y、111C、111M、111K、ドラム上光量検知手段112、転写装置113およびクリーニング器114が配置されている。
レーザー露光光学系において、リーダ部からの画像信号は、レーザー出力部(図示せず)にてイメージスキャン露光の光信号に変換され、変換されたレーザー光がポリゴンミラー109aで反射され、レンズ109bおよびミラー109cを介して、感光ドラム106の面上に投影される。
プリンター部は、画像形成時、感光ドラム106を矢印方向に回転させ、前露光ランプ107で除電した後に感光ドラム106を帯電器108により一様にマイナス帯電させて、分解色ごとに光像Eを照射し、感光ドラム106上に静電荷像を形成する。
次に、所定の現像器を作動させて感光ドラム106上の静電荷像を現像し、感光ドラム106上にトナーによるトナー画像を形成する。現像器111Y、111C、111M、111Kは、それぞれの偏心カム115Y、115C、115M、115Kの動作により、各分解色に応じて択一的に感光ドラム106に接近して、現像を行う。
転写装置は、転写ドラム113a、転写帯電器113b、記録材を静電吸着するための吸着帯電器113cおよびこれと対向する吸着ローラ113g、そして内側帯電器113d、外側帯電器113e、分離帯電器113hを有している。転写ドラム113aは、回転駆動可能に軸支され、その周面の開口域に転写材を担持する転写材担持体である転写シート113fが、円筒上に一体的に張設されている。転写シート113fにはポリカーボネートフィルムの如き樹脂フィルムが使用される。
転写材はカセット116a、116bまたは116cから転写シート搬送系を通って転写ドラム113aに搬送され、転写ドラム113a上に担持される。転写ドラム113a上に担持された転写材は、転写ドラム113aの回転にともない感光ドラム106と対向した転写位置に繰り返し搬送され、転写位置を通過する過程で転写帯電器113bの作用により、転写材上に感光ドラム106上のトナー画像が転写される。
トナー画像は、感光体から直接転写材へ転写されても良く、また、感光体上のトナー画像を中間転写体へ転写し、中間転写体からトナー画像を転写材へ転写しても良い。
上記の画像形成工程を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)について繰り返し、転写ドラム113a上の転写材上に4色のトナー画像を重ねたカラー画像が得られる。
このようにして4色のトナー画像が転写された転写材は、分離爪117a、分離押上げコロ117bおよび分離帯電器113hの作用により、転写ドラム113aから分離して加熱加圧定着器100に送られ、そこで加熱加圧定着することによりトナーの混色、発色および転写材への固定が行なわれて、フルカラーの定着画像とされたのちトレイ118に排紙され、フルカラー画像の形成が終了する。
本発明における2値化手法について説明する。
階調再現の2値化手法としては多くの方法が提案されている。通常最も多く用いられる方法としてディザ法(Dither Method)と濃度パターン法(Dot Pattern Method)がある。ディザ法は図9(a)に示されるように読み取った入力信号の1画素を、2値記録の1画素に対応させる。
濃度パターン法は図9(c)に示されるように、読み取った入力信号の1画素を、複数の記録画素に対応させる。
両者の中間に位置する手法として図9(b)に示されるように読み取った入力信号の1画素を、m×mのマトリックス内の部分マトリックス(L×L)へ対応させる方法がある。この部分画素への対応において、L=1のときディザ法、L=mのときが濃度パターン法に相当し、任意の値をとることにより出力画像サイズを変化し得る。
この様な2値化手法を用い各色のディザパターンを形成する。各色のディザパターンには、図10に示すとおり、a×aの画素からなる基本網点(基本セル)を適当にずらして配置することにより、スクリーン角を持った網点ドットを作ることができる。ずらす値(変位ベクトル)をu=(a、b)とすると、得られるスクリーン角θは、下記式より求められる。
θ=tan−1(b/a)
かかる変位ベクトルuの値をa、bを用いて網点の1周期に相当する正方閾値マトリックスサイズ(N)は、下記式より求められる。
N=LCM(a、b)×(b/a+a/b)
ただしLCM(a、b)はaとbの最小公倍数を表す。所望の角度のディザパターンを実現させ、且つ、ハードウェアの負担を軽減する意味でも、なるべく小さいマトリックスサイズを用いることが好ましい。
本発明において、各色に異なるスクリーン角を設ける効果としては、各色の位置がずれた場合でも色の一様性を保て、また、モアレ縞の発生を抑えることなどが挙げられる。特にモアレ縞の発生については、各色のスクリーン角の組み合わせに大きく影響を受ける。本発明において好ましいスクリーン角の組み合わせとしては、イエローを0°としたとき、シアン(またはマゼンタ)14〜22°、ブラック41〜49°、マゼンタ(またはシアン)68〜76°である。特に、イエローを0°としたとき、シアン(またはマゼンタ)16〜20°、ブラック43〜47°、マゼンタ(またはシアン)69〜73°であることが好ましい。
図12に、本発明に好ましく用いることができるディザパターン格子点の配置の一例を示す。イエロー(0°、150線)、シアン(18.43°、189線)、ブラック(45.00°、122線)、マゼンタ(71.57°、189線)となっている。
また、上述のパルス幅変調方式(PWM方式)に位相差を設けて、スクリーン角を設けることが好ましい。
また、本発明で用いられるディザパターン形成手法は、多値出力することも可能であり、複数のディザマトリックスパターンを備え、入力画素値と各ディザマトリックスパターンの閾値とを比較し、閾値を越えたときのマトリックスパターンの階調を出力すれば良い。このときのレーザーパルスの点灯幅は、階調により制御されるが、そのときの点灯位置は画素中の“中央、左、右”と、マトリックスパターン内の画素位置や周辺画素の影響を考慮して設定可能である。
本発明におけるラスタライズ画像の周長の求め方は、多値画像の中間調画素も1画素と考えて求めるものである。上記、点灯位置の変更により、ドットが1画素内で“中央、左、右“と位置が変わることもあるが、出力解像度(例えば、600dpi、1200dpi)を基本単位として、中間調画素についても1画素と換算して考える。
本発明において、網点の大きさを変える網点ディザ方式、網点の大きさを変えずに網点の個数を変える拡散ディザ方式を用いることができる。
本発明において、拡散ディザ方式を用いることがより好ましい。網点方式での画像濃度は網点の面積比で決定される。即ち、網点の面積が多いほど、画像濃度は高くなるが、拡散ディザ方式を用いることにより、フルカラー画像を形成した際に、表現可能な色空間を大きくすることが可能となる。本発明は発色特性の高いトナーを用いるが、各色トナーがそれぞれ発色特性の高いトナーである場合、転写材上において上層に存在するトナーの影響により、下層に存在するトナーの発色効率は低下しやすい。このため、前記拡散ディザ方式を用いることにより各色トナー層の重なり部分をより減少することが可能となり、トナーの発色特性を最大限に発現することが可能となる。また、発色特性の高いトナーで細線画像を形成する場合、細線を形成する各網点の切れ目やエッジ部が目立ちやすくなるが、拡散ディザ方式を用いることで細線再現性が向上し、高解像度化が可能となる。また、トナー使用量を低減することが可能となる。
本発明の画像形成方法における加熱定着方法として、フィルム定着方式を用いることが好ましい。具体的には、例えばSURF定着方式、IHF定着方式が挙げられる。即ち、回転する耐熱性フィルムで囲まれた加熱体、加圧部材としての加圧ローラを少なくとも有する加熱加圧手段を使用し、加圧ローラと耐熱フィルムを挟ませてニップ部を形成させ、該ニップ部のフィルムと加圧ローラとの間に記録材を狭持搬送して定着画像を形成する定着方法が好ましい。本発明のように発色特性の高いトナーを、使用量を低減して用いる場合、定着工程において、紙の如き転写材にトナーがしみ込み、画像品位が低下する場合がある。ニップ部においてトナーに加えられる圧力を小さくし、ニップ幅を大きくすることが可能なフィルム定着方式が好ましい。
図4は、SURF定着方式を実現する定着装置の一例を示す。この定着装置は、加熱装置4と、これに対向して設けられる加圧ローラ10とを有する。加熱装置4は、フッ素樹脂等をコートしたポリイミドからなる厚さ50μm前後の円筒状の耐熱性フィルム5と、その内部に加熱体であるセラミックヒータ7と、このヒータに接触させて配接し加熱温度を調節するサーミスタ等の温度検知素子6とを有する。加圧ローラ(加圧部材)10は、アルミニウム合金製の芯金9と、その周面外側にシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の、離型性及び耐熱性に優れる樹脂組成物で被覆したゴムローラ8とを有する。
加圧ローラ10は、セラミックヒータ(加熱手段)7の加熱面に向けて、例えば不図示のバネ等の付勢手段によって付勢して設けられている。耐熱性フィルム5は、セラミックヒータの加熱面上を通る無端形状の軌道(図示の形態では円形の軌道)を移動自在に設けられている。耐熱性フィルム5は、セラミックヒータ7と加圧ローラ10とに挟まれており、加圧ローラ10との間にニップ部を形成している。このニップ部に、未定着トナー画像を有する記録材を導入することにより、記録材上のトナーが融け、記録材に定着トナー画像が形成される。
図5は、IHF定着方式を実現する定着装置の一例を示す。この定着装置は、定着ベルト11と、これに対向して設けられる加圧ローラ(加圧部材)12とを有する。定着ベルト11は、金属導体20と、その表面を被覆するフッ素樹脂等の弾性層19とを有する。定着ベルト11の内部には、励磁コイル13が同心円状に配置されている。また定着ベルト11の内部には、磁性体で形成され磁界を遮断する磁界遮断部材であるコア14が配置されている。加圧ローラ12は、アルミニウム合金の中空芯金21と、その周面外側を被覆する表面離型性耐熱弾性層22とを有する。
コア14は、扇形の断面形状の一対のホルダ15によって支持されている。ホルダ15は、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、フェノール樹脂等の耐熱性樹脂で形成されている。励磁コイル13は、断面が「T」の字型の形状のコア14の中央突起部から、定着ローラ内周面に沿わせるような構造になるように、ホルダ15の表面に沿って導線を巻きつけることにより形成されている。
定着ベルト11の表面には、温度センサ16が当接するように配置されている。また未定着のトナー画像を有する記録材を定着ベルト11と加圧ローラ12との圧接部(ニップ部)へ案内する位置には、搬送ガイド17が配置されている。また定着装置の後方には、分離爪18が設けられている。分離爪18は、定着ベルト11の表面に当接又は近接して配置されて、紙等の記録材が定着ベルト11へ巻き付くことを防止する。
加圧ローラ12は、定着ベルト11(コア14)に向けて、例えば不図示のバネ等の付勢手段によって付勢して設けられている。定着ベルト11は、励磁コイル13に面して通る無端形状の軌道(図示の形態では円形の軌道)を移動自在に設けられている。定着ベルト11は、加圧ローラ12との対向部においてコア14と加圧ローラ12とに挟まれており、加圧ローラ12との間にニップ部を形成している。このニップ部に、未定着トナー画像を有する記録材を導入することにより、記録材上のトナーが融け、記録材に定着トナー画像が形成される。
励磁コイル13は、高周波電流を流すことにより高周波磁界を発生し、この磁界により定着ベルト11に誘導渦電流を発生させ、定着ベルト自体の表皮抵抗によって定着ベルト11をジュール発熱させる。本装置においては、励磁コイル及び該励磁コイルに高周波電流を流す一連の装置が加熱手段といえる。定着ベルト11の温度は、温度センサ16の検出信号をもとに励磁コイル13への電力供給を増減させることで一定温度になるように自動制御される。
また、励磁コイル13に、磁性体からなるコア14を組み合わすことで、高周波磁界の発生を効率的に行うことができる。特に図5に示す形態のように、断面形状が「T」の字型のコアを用いた場合、高周波磁束の効果的な集中や、発熱部位以外への磁界の遮蔽効果により、定着装置として必要な熱量を低電力で発生させることができる。
弾性層19の材料として、フッ素樹脂やシリコーン樹脂が挙げられる。具体的には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、プロピレン/テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
弾性層19の厚さは、画像を印刷する場合に記録材の凹凸あるいはトナー層の凹凸に加熱面が追従できないことによる光沢ムラを予防するために、10〜500μmが好ましい。
弾性層19の厚さが10μm未満では、弾性部材としての機能が発揮されず、定着時の圧力分布が不均一となることによって、特にフルカラー画像定着時に二次色の未定着トナーを十分に加熱定着することができずに定着画像のグロスにおいてムラを生じるだけでなく、溶融不十分なことによってトナーの混色性が悪化し、高精細なフルカラー画像が得られず好ましくない。また、弾性層19の厚さが500μmを超えると、定着時の熱伝導性が阻害され、定着面での熱追従性が低下することにより、クイックスタート性が低下するだけでなく、定着ムラを生じやすくなるため好ましくない。
次に、本発明のトナーに関する各物性の測定に方法を以下に示す。
(トナーの真密度の測定)
トナーの真密度は、気体置換型ピクノメータを用いる方法により測定することができる。測定原理は、一定体積の試料室(体積V1)と比較室(体積V2)との間に遮断弁を設け、予め質量(M0(g))を測定したのちサンプルを試料室に入れる。試料室及び比較室内をヘリウムの如き不活性ガスで充満し、そのときの圧力をP1とする。遮断弁を閉じ、試料室のみ不活性ガスを加える。そのときの圧力をP2とする。遮断弁を開き、試料室と比較室とを接続したときの系内の圧力をP3とする。下記式Aにより、サンプルの体積(V0(cm3))を求めることができる。下記式Bにより、トナーの真密度ρT(g/cm3)を求めることができる。
V0=V1−[V2/{(P2−P1)/(P3−P1)−1}] (式A)
ρT=M0/V0 (式B)
例えば、乾式自動密度計アキュピック1330(島津製作所(株)社製)により測定することができる。この際、10cm3の試料容器を用い、試料前処理としてはヘリウムガスパージを最高圧19.5psig(134.4kPa)で10回行う。この後、容器内圧力が平衡に達したか否かの圧力平衡判定値として、試料室内の圧力の振れが0.0050psig/minを目安とし、この値以下であれば平衡状態とみなして測定を開始し、真密度を自動測定する。測定は5回行い、その平均値を求めて真密度(g/cm3)とする。
(105℃におけるトナーの粘度(η105)、120℃におけるトナーの粘度(η120)の測定)
105℃及び120℃におけるトナーの粘度は、定荷重細管押し出し式のレオメーターを用いて測定することができる。これは、溶融物が細管を通過するときの押し出し抵抗を測定することによって、溶融物の粘度を測定する方法である。
測定原理は、シリンダ内に充填したサンプルを加熱し、ピストンによりサンプル上部から一定圧力Pを加える。サンプルがある温度以上に加熱されると、シリンダの底部に設けられた細管を通してサンプルが押し出される。その時の流出量Q(cm3/s)と圧力とから、下記式により、各温度におけるトナーの粘度η(Pa・s)を求めることができる。
流出量Q=A×(S2―S1)/((t2−t1)×10)
ここで、式中、S1、S2、t1、t2、Aはそれぞれ、
S1:時間t1(s)におけるピストン位置(mm)
S2:時間t2(s)におけるピストン位置(mm)
A :ピストンの断面積(cm2)
を示す。
粘度η=π×D4×P/(128000×L×Q)
ここで、式中、P、D、Lはそれぞれ、
P:圧力(Pa)
D:細管の直径(mm)
L:細管の長さ(mm)
を示す。
具体的には、例えばフローテスターCFT−500D(株式会社島津製作所製)を用い、下記の条件で測定を行う。
・サンプル:トナーの真密度をρとしたとき、(1.5×ρ)gのトナーを秤量し、これを加圧成型器を用い、常温常圧環境下において200kgf(1960N)の荷重で2分間加圧成型し、直径約10mm、高さ約15mmの円柱状に成型してサンプルとする。
・シリンダ圧力:4.90×105(Pa)
・測定モード:昇温法
・昇温速度:4.0℃/分
ダイ長さは1.0mmとし、ダイ径を0.3mm、0.5mm、1.0mm、1.5mmの鏡面研磨されたダイを使用することで測定することができる。各ダイを用いた場合において、40℃〜200℃におけるトナーの粘度を測定し、105℃における粘度と、120℃における粘度とが一回の測定で求められた値を用いる。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるトナー、結着樹脂、ワックス等の分子量の測定)
トナーの結着樹脂及びワックス分散媒体の樹脂部分におけるGPCによる分子量分布は、下記の通り、測定対象の試料を(テトラヒドロフラン)THF溶媒に溶解させて得られたTHF可溶成分を用いて、GPCにより測定することによって求められる。
測定する試料の真密度をρとしたとき、試料(25×ρ)mgをTHF5mlに入れ、24時間放置する。これを、フィルター(ポアサイズ 0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマンサイエンスジャパン社製など)に通過させ、GPCの試料とする。上記の方法で調製された試料のGPCの測定は、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料溶液を約100μl注入して測定する。
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
(GPCによるワックス分子量の測定)
装置:GPC−150C(ウォーターズ社)
カラム:GMH−HT30cm、2連(東ソー社製)
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.1質量%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min
試料:0.15質量%のワックスを0.4ml注入
以上の条件で測定し、ワックスの分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式に基づいてポリエチレン換算することでワックスの分子量を算出する。
(ガラス転移点(Tg)、最大吸熱ピークの温度、吸熱量、及び、その半値幅の測定)
本発明において、ガラス転移点(Tg)、最大吸熱ピークの温度、吸熱量、及び、その半値幅の測定は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。DSCとしては、具体的には例えば、Q1000(TAインストルメンツ社製)が利用できる。測定方法は、アルミパンに試料4mgを精秤し、リファレンスパンとして空のアルミパンを用い、窒素雰囲気下、モジュレーション振幅1.0℃、周波数1/分で測定する。測定温度は、10℃で10分間保持した後、昇温速度1℃/分で10℃から180℃まで走査して得られたリバーシングヒートフロー曲線をDSC曲線とし、これを用いて中点法によりTgを求める。なお、中点法によって求められたガラス転移点とは、昇温時のDSC曲線において吸熱ピーク前の基線と吸熱ピーク後の基線の中線と、立ち上がり曲線での交点をもってガラス転移点とするものである(図6参照)。
トナーの最大吸熱ピークの温度、吸熱量、及び、その半値幅の測定は、上記と同様に測定して得られたリバーシングヒートフロー曲線において、吸熱ピーク前のベースラインの外挿線から該吸熱ピークが離脱する点と、吸熱ピーク終了後のベースラインの外挿線と該吸熱ピークが接する点とを結んだ直線と吸熱ピークとで囲まれる領域において、該吸熱ピークの極大値となる温度を、最大吸熱ピークの温度とする。該ピークに極大値が2つ以上存在する場合は、前記囲まれる領域において、前記結んだ直線と極大値との長さが長い極大値における温度を、最大吸熱ピークの温度とする。前記囲まれる領域が独立して2つ以上存在する場合にも、前記と同様にして結んだ直線と極大値との長さが長い極大値における温度を、最大吸熱ピークの温度とする。また、最大吸熱ピークの半値幅とは、上記により特定した最大吸熱ピークにおいて、前記と同様にして結んだ直線と極大値との長さの1/2となる点と、該極大値よりも低温側のDSC曲線とを結んだ線の温度幅を、最大吸熱ピークの半値幅とする。
吸熱量は、上記測定で得られたリバーシングヒートフロー曲線において、吸熱ピーク前のベースラインの外挿線から該吸熱ピークが離脱する点と、吸熱ピーク終了後のベースラインの外挿線と該吸熱ピークが接する点とを結んだ直線と吸熱ピークとで囲まれる領域の面積(融解ピークの積分値)より吸熱量(J/g)として求める。前記囲まれる領域が独立して2つ以上存在する場合には、それらを合計して吸熱量とする。
(トナー平均円形度の測定)
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出することができる。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中心値)をci、測定粒子数をmとすると、次式から算出される。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、トナー粒子の平均円形度を求める。
(トナーの重量平均粒子径(D4)、粒子径分布(D4/D1)、D4の2倍を越える粒子径を有するトナーの含有率、D1の1/2未満の粒子径を有するトナーの含有率)
測定装置としては、コールターマルチサイザーIIE(コールター社製)を用いる。電解液は、ISOTON(R)−II(1%塩化ナトリウム水溶液、コールターサイエンティフィックジャパン社製)を用いて測定する。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、体積、個数を測定して、重量平均粒径を算出する。
重量平均粒径が、6.0μmより大きい場合には、100μmアパーチャーを用いて、2〜60μmの粒子を測定し、重量平均粒径3.0〜6.0μmの場合は、50μmアパーチャーを用い、1〜30μmの粒子を測定し、重量平均粒径が3.0μm未満の場合には、30μmアパーチャーを用い、0.6〜18μmの粒子を測定する。
(テトラヒドロフラン(THF)可溶成分の回収方法、含有量の測定方法)
トナーのTHF不溶成分とは、THF溶媒に対して不溶性となった超高分子ポリマー成分(実質的に架橋ポリマー)の質量割合を示す。トナーのTHF可溶成分の含有量とは、以下のように測定された値をもって定義する。
トナー約1gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にセットする。溶媒としてTHF200mlを用い、80℃のオイルバスで12時間抽出し、抽出溶液を得る。該抽出溶液に含まれるTHFを留去した後、40℃で3日間真空乾燥し、THF可溶成分を秤量する(W2g)。トナーのTHF可溶成分の含有量は下記式から算出される。
また、上記により得られたTHF可溶成分を用い、トナーの分子量測定、スルホン酸基に由来する硫黄元素の測定に用いる。
(イソプロパノール可溶成分の回収方法)
トナー約2gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてイソプロパノール200mlを用いて12時間抽出し、可溶成分に含まれるイソプロパノールを留去し後乾燥して回収したサンプルを、イソプロパノールにより抽出される溶媒可溶成分100質量%とする。抽出時間を変化させて、抽出時間と抽出量との検量線を作成する。検量線に基づき、抽出量が20質量%に相当する時間で加熱を停止し、抽出液(抽出液1)が入ったフラスコを、新たなイソプロパノール200mlが入ったフラスコに付け替え、抽出を再開する。全抽出時間が12時間になった時点で加熱を停止し、抽出液(抽出液2)を回収する。抽出液1、及び、抽出液2に含まれる溶媒を留去し、それぞれ第一の溶媒可溶成分、第二の溶媒可溶成分を回収する。
(スルホン酸基に由来する硫黄元素の測定)
波長分散型蛍光X線「Axios advanced」(PANalytical(パナリティカル)社製)を用いて測定した。トナー約3gを、27mm測定用の塩化ビニル製リングに入れ、200kNでプレスし、試料を成型した。使用したトナー量と成形後の試料の厚みを測定し、含有量算出のための入力値として、トナー中に含有されるスルホン酸基に由来する硫黄元素の含有量を求めた。分析条件及び解析条件は下記に示す。
分析条件
・定量方法:ファンダメンタルパラメータ法
・分析元素:周期表におけるホウ素〜ウランまでの各元素について測定
・測定雰囲気:真空
・測定サンプル:固体
・コリメーターマスク径:27mm
・測定条件:各元素に最適な励起条件にあらかじめ設定された自動プログラムを用いた。
・測定時間:約20分
・その他は装置の推奨する一般値を用いた。
解析
・解析プログラム:UniQuant5
・解析条件:酸化物形態
・バランス成分:CH2
・その他は装置の推奨する一般値を用いた。
(酸価の測定方法)
酸価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。具体的には次のような方法によって試験を行う。
(1)試薬
(a)溶剤
エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1又は2+1)又はベンゼン−エチルアルコール混液(1+1又は2+1)で、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬として0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液
フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)0.1モル/リットル水酸化カリウム−エチルアルコール溶液
水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作
試料1〜2gを正しくはかりとり、これに溶剤100mlおよび指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これを0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
(3)計算式
次の式によって酸価を算出する。
ここで、式中、A、B、f、Sはそれぞれ、A:酸価、B:0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)、f:0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター、S:試料(g)を示す。
(トナーの帯電量)
トナーの帯電量の測定方法としては、トナーとキャリアとを有する二成分現像剤現像の場合には、現像スリーブの如きトナー担持体から採取した現像剤を、一成分現像剤の場合には、現像スリーブの如きトナー担持体から直接に、ブローオフ測定法によりトナーの帯電量を求める。ブローオフ測定法は、公知の方法によって測定することができる。
二成分現像剤の場合、本発明では、図11に示す帯電量測定装置で測定することが好ましい。
図11は二成分現像剤の摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。まず、底に目開き30μmのスクリーン201を有する金属製の測定容器202に、スリーブ上から採取した二成分現像剤0.5〜1.5gを入れ金属製の蓋203をする。このときの測定容器202全体の質量を秤りW1(g)とする。次に、吸引機204(測定容器202と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口205から吸引を行い風量調節弁206を調整して真空計207の圧力を4kPaとする。この状態で充分、好ましくは約2分間吸引を行ってトナーを吸引除去する。このときの電位計208の電位をV(ボルト)とする。ここで209はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また、吸引後の測定容器全体の質量を秤りW2(g)とする。このトナーの摩擦帯電量(mC/kg)は下記式の通り計算される。
成分現像剤摩擦帯電量(mC/kg)=C×V/(W1−W2)
一成分現像剤の場合、現像スリーブの如きトナー担持体上のトナーを、吸引式帯電量測定装置(210HS−2A トレックジャパン社製)により直接吸引して測定した。フィルターを取り付けたファラデーゲージの質量W3(kg)を測定し、トナー担持体上において約5cm2の面積に存在するトナーを全て吸引し、吸引後のファラデーゲージの質量W4(kg)を測定する。トナーの吸引による測定値q(mC)に基づいて、トナーの帯電量(mC/kg)は下式の如く算出される。
トナーの帯電量(mC/kg)=q/(W4−W3)
(静電荷像担持体上のトナー量、転写材上のトナー量)
上記トナーの帯電量測定における一成分現像剤の場合と同様にして、静電荷像担持体上のトナー、及び、定着前の転写材上のトナーを直接吸引して測定した。トナー担持体上において約5cm2の面積に存在するトナーを全て吸引した後、吸引した部分の面積A(cm2)を測定する。トナー量(mg/cm2)は下式の如く算出される。
トナー量(mg/cm2)=(W4−W3)/A
(画像のグロス測定)
画像のグロスは、市販の装置を用いることができる。具体的には、例えば、日本電色工業製のPG−3D(入射角θ=75°)を用いて測定することができる。標準サンプルによる校正としては、光沢度96.9の黒色ガラスを使用できる。
(画像の彩度c*、明度L*の測定)
画像の彩度c*、明度L*は、CIELAB表色系の規格に沿った市販の装置を用いることができる。具体的には、例えば、SpectroScan Transmission(GretagMacbeth社製)を用い、リファレンスとして非画像部を測定した後、画像部を測定することで、L*、a*、b*、c*、h*を求めることができる。以下に具体的な測定条件を示す。
測定条件
・観測光源 :D50
・観測視野 :2°
・濃 度 :DIN NB
・白色基準 :Pap
・フィルター:No(無し)
尚、測定装置が彩度c*を表示しない場合は、下記式により算出することができる。
(静電荷像担持体上に現像されたトナー層の高さ、定着紙上のトナー層の高さの測定)
静電荷像担持体上に現像されたトナー層の高さ、定着紙上のトナー層の高さは、市販の光学観察装置を用い、直接計測することにより求めることができる。具体的には、例えば、カラーレーザー顕微鏡(VK−9500 (株)キーエンス社製)を用いて測定することができる。測定面(静電荷像担持体、又は、定着紙の非画像部)から垂直方向の高さについて、トナー層の高さの極大値となる点と測定面との距離を測定する。ランダムに抽出した10点の高さを求め、その平均値をトナー層の高さとする。