JP3775172B2 - はんだ組成物およびはんだ付け物品 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、Pbを含有しないはんだ組成物ならびにはんだ付け物品に関するものであり、特に絶縁樹脂で被覆された金属線の被覆剥離とはんだ付けを同時に実施する場合に好適なはんだ組成物、ならびにはんだ付け物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コイル部品等の製造工程において、巻き線コイルを形成する導体が絶縁樹脂によって被覆されているため、この絶縁樹脂で被覆された金属線の被覆剥離とはんだ付けを同時に実施している。この場合、従来のPb含有率の高いSn−Pb系はんだ組成物を、400℃以上の高温で使用することが一般的に行われてきた。また近年、環境問題を配慮してPbを含まないSn,Cuを主成分とし、残部がAg,Bi,Sb,In等からなるはんだ組成物、いわゆるPbフリ−はんだ組成物が用いられる場合もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のSn−Pb系はんだ組成物は、毒性を有するPbを含んでいるため、その使用が制限されつつある。また、従来のいわゆるPbフリ−はんだ組成物は、Snが主成分であることから、上述の絶縁樹脂で被覆された金属線の被覆剥離とはんだ付けの両方を同時に行うと、剥き出しになった導体のCu成分がはんだ組成物に溶解する、いわゆる溶食現象が発生し、導体が断線するという問題点がある。本発明の目的は、上述の問題点を解消すべくなされたもので、Cuを主成分とする導体の溶食に関して従来のSn−Pb系はんだ組成物に近い特性を有する、Sn基のいわゆるPbフリ−はんだ組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のはんだ組成物は、Ni0.01重量%以上0.3重量%以下と、Cu2重量%を超えて2.5重量%以下と、Ge0.01〜0.5重量%と、残部Snとからなることを特徴とする。また、本発明のはんだ付け物品は、Cuを主成分とする導体と、前記導体に電気的かつ機械的に接合するように取り付けられた請求項1に記載のはんだ組成物と、からなることを特徴とする。
また、本発明のはんだ付け物品は、磁性体として機能する材料を含むセラミック素体と、前記セラミック素体上に設けられた一対の端子電極と、前記セラミック素体に巻き付けられたCuを芯材とする導体と、前記導体の一方端部が前記端子電極の一方に、電気的かつ機械的に接合するように取り付けられた請求項1に記載のはんだ組成物と、からなることを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のはんだ組成物におけるNi成分の構成割合は、はんだ組成物100重量%のうち0.01重量%以上0.3重量%以下であることを要する。すなわち、Ni成分の構成割合が0.01重量%を下回ると、Cu導体の溶食現象を低減させる本発明の効果が得られない。他方、Ni成分の構成割合が0.3重量%を上回ると、はんだ組成物の液相線温度が上昇し、同じ温度ではんだ付けした場合にブリッジ不良や外観不良が生じ、これを回避するために高い温度ではんだ付けすると、高熱による電子部品の特性不良が生じる恐れがある。
【0006】
本発明のはんだ組成物におけるCu成分の構成割合は、はんだ組成物100重量%のうちCu2重量%を超えて2.5重量%以下であることを要する。すなわち、Cu成分の構成割合が2重量%以下であると、Cu導体の溶食現象を低減させる本発明の効果が得られない。他方、Cu成分の構成割合が2.5重量%を上回ると、はんだ組成物の液相線温度が上昇し、同じ温度ではんだ付けした場合にブリッジ不良や外観不良が生じ、これを回避するために高い温度ではんだ付けすると、高熱による電子部品の特性不良が生じる恐れがある。
【0007】
本発明のはんだ組成物は、さらにGeを含有する。Ge成分の含有により、はんだが酸化皮膜を形成することを抑制する効果が見込まれる。具体的な構成割合としては、0.01〜0.5重量%の範囲内である。
【0008】
Ge成分の構成割合が0.01重量%を下回ると、Ge成分を含有することによる上述の効果、すなわち、はんだが酸化皮膜を形成することを抑制する効果が得られない。他方、Ge成分の構成割合が0.5重量%を上回ると、液相線温度を上昇させる問題から、作業性の低下を招く恐れがある。
【0009】
なお、本発明のはんだ組成物に、上述の成分以外に不可避不純物として、例えばPbやNa等が混入していることを妨げない。
【0010】
本発明によるはんだ付け物品の一つの実施形態について、図1に基づいて詳細に説明する。
【0011】
はんだ付け物品1は、セラミック素体2と、端子電極3,3と、導体4と、はんだ組成物5,5と、からなる。セラミック素体2は、例えば磁性体として機能する材料を含み、例えば素体の一方主面の中央部近傍に形成部を備えた凹型形状を備えている。端子電極3,3は、例えばセラミック素体2の長さ方向の端部に形成されており、端子電極形成用の導電性ペーストが塗布され焼付けられてなる。導体4は、例えばCuを芯材とした金属線からなり、絶縁樹脂により被覆され、セラミック素体2の長さ方向に対して直行する方向に巻き付けられてコイル状をなしている。金属線4の端部4a,4bは、それぞれ端子電極3,3の一方に接触するように延びており、本発明のはんだ組成物5によって端部4a,4bを被覆する絶縁樹脂が溶解され、かつ端子電極3,3と端部4a,4bは電気的かつ機械的に接合されている。
【0012】
本発明によるはんだ付け物品の他の実施形態について、図2に基づいて詳細に説明する。
【0013】
はんだ付け物品11は、セラミック素体12と、端子電極13,13と、はんだ組成物14,14と、導体15,15と、外装樹脂16とからなる。セラミック素体12は、セラミックグリーンシートを焼成した円板型の焼結体からなる。端子電極13,13は、セラミック素体12の両主面に形成された一対の電極膜からなる。はんだ組成物14,14は、端子電極13,13と導体15,15をそれぞれ電気的かつ機械的に接合するように端子電極13,13上に形成されている。外装樹脂16は、セラミック素体12と端子電極13,13とはんだ組成物14,14を覆うように形成されている。
【0014】
セラミック素体12は、例えば誘電体,絶縁体,半導体,圧電体,磁性体として機能する材料を含むもの等を適宜用いることができる。
【0015】
なお、図1に示したセラミック素体12の形状は円板型であるが、セラミック素体12の形状は特に円板型に限定されることなく、端子電極13,13を形成するのに十分な面を備えるのであれば、例えば角板型等を適宜用いることができる。端子電極13,13は、セラミック素体12の両主面に形成された電極膜であり、例えば、無電解Niメッキにより形成される場合、メッキ浴中の還元剤成分の種類によりNiPあるいはNiB合金等の層として膜形成され、Agを導電成分とする厚膜電極である場合、Agペーストが印刷または塗布され乾燥された後に焼付けられて膜形成される。
【0016】
なお、端子電極の形状ならびに大きさは、本発明の実施形態に限定されることなく、例えば、セラミック素体12の両主面の全体に形成、あるいは任意の形状のギャップ幅を取って形成することができ、何れの場合においても本発明の効果が得られる。また、端子電極の層数は、本発明の実施形態に限定されることなく、例えば、第1層の端子電極上にさらに第2層の端子電極を形成してもよく、また何層形成されていても構わない。
【0017】
はんだ組成物14,14の材質、形状ならびに大きさは、本発明の実施形態に限定されることなく、例えば、端子電極13,13の全体に形成、あるいは端子電極13,13上の任意の一部分であってもよく、何れの場合であっても構わない。
【0018】
導体15,15の材質、形状ならびに大きさは、本発明の実施形態に限定されることなく、例えば、CuまたはCuを主成分とする合金等からなる金属線を芯材として、必要に応じて金属線の表面にSn,Cu,Pd,Au,Fe,Sn−Cu,Sn−Ag,Sn−Ag−Cuメッキを施した線形状の導体等を適宜用いることができるが、Cuを主成分とする金属線を芯材として、絶縁樹脂によって金属線の表面が被覆された導体の場合、はんだ付け時に絶縁樹脂が溶解され、Cu芯材が剥き出しとなるためSn基はんだ組成物に溶食されやすいが、本発明のはんだ組成物を用いることによりこの溶食が抑制されるため、本発明の効果が顕著となる。
【0019】
また、端子電極13,13に接合される導体15の数は、本発明の実施形態に限定されることなく、1つの端子電極13に2本以上の導体15を接合しても構わない。
【0020】
外装樹脂16は、例えば、エポキシ樹脂やシリコン樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されることなく、絶縁性,耐湿性,耐衝撃性,耐熱性等に優れるものであれば代表的な樹脂を適宜用いることができる。なお、外装樹脂16は必ずしも備えている必要はなく、また何層形成されていても構わない。
【0021】
なお、本発明のはんだ付け物品は、上述の実施形態に限定されることなく、Cuを主成分とする導体と、導体に電気的かつ機械的に接合するように取り付けられた本発明のはんだ組成物と、からなるはんだ付け物品全般に対して向けられる。
【0022】
【実施例】
まず、表1に示す構成割合からなるはんだ組成物を準備し、それぞれ実施例1、参考例1〜13ならびに比較例1〜7のはんだ組成物とした。
【0023】
次いで、コンデンサとして機能する、8mmφのチタン酸バリウムを主成分とするセラミック素体を準備し、このセラミック素体の両主面全体にAgペーストを塗布し乾燥させ焼付けて、端子電極を形成した。
【0024】
次いで、導体として1mmφの99.99%軟Cu金属線を準備し、金属線の端部が上述のセラミック素体の端子電極に接した状態で、それぞれ実施例1、参考例1〜13ならびに比較例1〜7のはんだ組成物中に浸漬してはんだ付けして、それぞれ実施例1、参考例1〜13ならびに比較例1〜7のはんだ組成物を用いた試料を得た。
【0025】
なお、はんだ付け条件は、400℃,450℃,500℃でそれぞれ行ない、浸漬時間は5sec、導体の浸漬深さは10mm、浸漬速度は10mm/secとした。また、フラックスには、ロジン25重量%IPA溶液を用いた。そこで、実施例1、参考例1〜13ならびに比較例1〜7のはんだ組成物を用いた試料について、400℃,450℃,500℃ではんだ付けした場合の導体のCuの溶食速度、400℃ではんだ付けした場合のはんだ付き性を測定し、評価を加えた。なお、Cuの溶食速度については、はんだ付け後の導体の断面をエメリー紙で面出しして、バフで鏡面研磨した後、金属顕微鏡で導体の直径を測定し、次式によって求めた。
【0026】
Cuの溶食速度(μm/sec)=(1000−残留する導体の直径(μm))/2/5。
【0027】
また、はんだ付き性については、はんだ付け後の導体の側面部を画像処理によってはんだ付着面積を求め、浸漬面積に対するはんだの付着している面積の比を算出した。
【0028】
また、評価については、本発明の範囲のうち特に優れる試料については「◎」、次に優れる本発明の範囲の試料については「○」、比較例の試料のうちCuの溶食速度あるいははんだ付き性が劣るものについては「×」とした。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から明らかであるように、ならびにSn94.5重量%−Cu5重量%−Ni0.5重量%からなる参考例7のはんだ組成物を用いた試料、Sn94.85重量%−Cu5重量%−Ni0.15重量%からなる参考例6のはんだ組成物を用いた試料は、はんだ付き性が92〜95%で十分許容できる範囲内であり、かつ500℃ではんだ付けした場合のCuの溶食速度がそれぞれ1.87μm/sec,0.57μm/secであり、比較例として挙げたSn30重量%−Pb70重量%からなる比較例7のはんだ組成物を用いた試料と比較して、Cuの溶食速度については優れる結果が得られた。
【0031】
また、参考例6および7のはんだ組成物を用いた試料を除いて、Ni0.01重量%以上0.5重量%以下と、Cu2重量%を超えて5重量%以下と、残部Snとからなり、Pbを含有しない参考例1〜5のはんだ組成物を用いた試料も、Cuの溶食速度がSn97.5重量%−Cu2.5重量%からなる比較例1のはんだ組成物と比較すると、Niを含有する効果、すなわち、Cu導体の溶食現象を低減させる本発明の効果が得られていることが分かる。
【0032】
また、Ni0.01重量%以上0.5重量%以下と、Cu2重量%を超えて5重量%以下と、さらにAg,In,Bi,Zn,Sb,Ge,Pから選ばれる元素と、残部Snとからなり、Pbを含有しない実施例1および参考例8〜13のはんだ組成物を用いた試料も、500℃ではんだ付けした場合におけるCuの溶食速度が1.4〜3.9μm/secで、はんだ付き性も90〜100%であり、何れも比較例1のはんだ組成物と比較して、Niを含有する効果、すなわち、Cu導体の溶食現象を低減させる本発明の効果が得られていることが分かる。
【0033】
なお、参考例11のはんだ組成物を用いた試料は、Cuの溶食速度については、従来例として挙げたSn30重量%−Pb70重量%からなる比較例7のはんだ組成物を用いた試料よりも、優れる結果が得られた。
【0034】
これに対してまた、Cu成分の含有量が少なくNiを含有しないSn99.3重量%−Cu0.7重量%からなる比較例2のはんだ組成物を用いた試料は、500℃ではんだ付けした場合のCuの溶食速度も6.0μm/secを上回り、高く劣ることが分かる。
【0035】
また、Cu成分の含有量が多くNiを含有しないSn93重量%−Cu7重量%からなる比較例3のはんだ組成物を用いた試料は、はんだ付き性が69%で低く劣ることが分かる。
【0036】
また、Ni成分を含有せずAg成分を含有するSn95.75重量%−Cu0.75重量%−Ag3.5重量%からなる比較例4のはんだ組成物を用いた試料は、500℃ではんだ付けした場合のCuの溶食速度が6.3μm/secで高く劣ることが分かる。
【0037】
また、Cu成分およびNi成分を含有せずAg成分を含有するSn96.5重量%−Ag3.5重量%からなる比較例5はんだ組成物を用いた試料は、500℃ではんだ付けした場合のCuの溶食速度が8.3μm/secで高く劣ることが分かる。
【0038】
また、Ni成分を含有せずAg成分およびBi成分を含有するSn95.5重量%−Cu0.5重量%−Ag2.0重量%−Bi2.0重量%からなる比較例6はんだ組成物を用いた試料は、500℃ではんだ付けした場合のCuの溶食速度が6.8μm/secで高く劣ることが分かる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、Ni0.01重量%以上0.3重量%以下と、Cu2重量%を超えて2.5重量%以下と、Ge0.01〜0.5重量%と、残部Snとからなり、Pbを含有しないことを特徴とすることで、Cuを主成分とする導体の溶食に関して従来のSn−Pb系はんだ組成物に近い特性を有し、また、Ge成分の含有により、はんだが酸化皮膜を形成することを抑制する効果が見込まれる、いわゆるPbフリ−はんだ組成物が得られる。
【0040】
本発明のはんだ付け物品は、Cuを主成分とする導体と、導体に電気的かつ機械的に接合するように取り付けられた本発明のはんだ組成物と、からなることを特徴とすることで、Cuを主成分とする導体がはんだ組成物によって溶食されることが抑制され、導体が断線する恐れが低減するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る一つの実施形態のはんだ付け物品の斜視図である。
【図2】 本発明に関わる他の実施形態のはんだ付け物品の破断図である。
【符号の説明】
1 はんだ付け物品
2 セラミック素体
3 端子電極
4 導体
5 はんだ組成物
Claims (3)
- Ni0.01重量%以上0.3重量%以下と、Cu2重量%を超えて2.5重量%以下と、Ge0.01〜0.5重量%と、残部Snとからなることを特徴とする、はんだ組成物。
- Cuを主成分とする導体と、前記導体に電気的かつ機械的に接合するように取り付けられた請求項1に記載のはんだ組成物と、からなることを特徴とする、はんだ付け物品。
- 磁性体として機能する材料を含むセラミック素体と、
前記セラミック素体上に設けられた一対の端子電極と、
前記セラミック素体に巻き付けられたCuを芯材とする導体と、
前記導体の一方端部が前記端子電極の一方に、電気的かつ機械的に接合するように取り付けられた請求項1に記載のはんだ組成物と、からなることを特徴とする、はんだ付け物品。
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