JP2021005098A - 円偏光板、広帯域λ/4板、及び、有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

円偏光板、広帯域λ/4板、及び、有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる円偏光板を提供する。【解決手段】偏光フィルムと、偏光フィルムの吸収軸に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、偏光フィルムの吸収軸に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板と、をこの順に備え、|Reh(400)/Reh(550)−Req(400)/Req(550)|が、0.10以下であり、λ/2板及びλ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、λ/2板及びλ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzであり、λ/2板及びλ/4板が、延伸フィルムである、円偏光板。【選択図】図1

Description

本発明は、円偏光板及び広帯域λ/4板、並びに、それを備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
従来、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、適宜「有機EL表示装置」ということがある。)には、表示面における外光の反射を低減するため、円偏光板が設けられることがあった。このような円偏光板としては、一般に、偏光フィルム及びλ/4板を組み合わせたフィルムが用いられる。しかし、従来のλ/4板は、実際には、特定の狭い波長範囲の光でしか略1/4波長の位相差を達成できないものがほとんどであった。そのため、円偏光板によって特定の狭い波長範囲の外光の反射は低減できるが、それ以外の外光の反射を低減することは難しかった。
これに対し、近年、λ/4板とλ/2板とを組み合わせた広帯域λ/4板が提案されている(特許文献1〜6参照)。
国際公開第2003/102639号 特開2005−284024号公報 特開2000−284126号公報 特開2001−004837号公報 特開2003−014931号公報 特開2003−195041号公報
特許文献1〜6に記載されたような広帯域λ/4板によれば、広い波長範囲の光で略1/4波長の位相差を達成できるので、広い波長範囲において外光の反射を低減できる円偏光板を実現できる。
ところで、偏光フィルムと広帯域λ/4板とを組み合わせた円偏光板では、偏光フィルムの吸収軸、λ/2板の遅相軸、及び、λ/4板の遅相軸という光軸の方向を、これらの光軸が所定の角度をなすように調整することが求められる。
しかし、正面方向以外の傾斜方向から円偏光板を見た場合、前記の光軸がなす見かけ上の角度が、所定の角度からずれることがある。そのため、従来の円偏光板は、正面方向においては外光の反射を低減できるが、正面方向以外の傾斜方向においては外光の反射を効果的に低減できないことがあった。特に、広帯域λ/4板を備える円偏光板は、λ/4板だけでなくλ/2板も備えるので、光軸の数が従来の円偏光板よりも多くなっている。そのため、広帯域λ/4板を備える円偏光板では、見かけ上の光軸のずれが、λ/2板を備えない従来の円偏光板よりも大きくなり、傾斜方向における外光の反射を低減する能力に劣る傾向があった。
本発明は上述した課題に鑑みて創案されたもので、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる円偏光板;正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる円偏光板を実現しうる広帯域λ/4板;並びに、前記の円偏光板又は広帯域λ/4板を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
本発明者は前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4をこの順に備える円偏光板において、下記(1)〜(3)を組み合わせることにより、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できることを見い出した。
(1)偏光フィルムの吸収軸とλ/2板の遅相軸とがなす角度を所定の範囲に収め、且つ、偏光フィルムの吸収軸とλ/4板の遅相軸とがなす角度を所定の角度に収める。
(2)λ/2板の波長分散とλ/4板の波長分散とを略一致させる。
(3)λ/2板及びλ/4板の一方の屈折率をnz≧nx>nyにし、且つ、λ/2板及びλ/4板の他方の屈折率をnx>ny≧nzにする。
このような知見に基づいて、本発明は完成された。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕 偏光フィルムと、
前記偏光フィルムの吸収軸に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、
前記偏光フィルムの吸収軸に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板と、をこの順に備え、
前記λ/2板の波長分散と前記λ/4板の波長分散とが略一致しており、
面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内の進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzで表した場合、前記λ/2板及び前記λ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、前記λ/2板及び前記λ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzである、円偏光板。
〔2〕 波長400nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(400)、
波長550nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(550)、
波長400nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(400)、及び
波長550nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、
下記式(A):
|Reh(400)/Reh(550)−Req(400)/Req(550)|<1.00
を満たす、〔1〕記載の円偏光板。
〔3〕 前記λ/2板及び前記λ/4板の一方のNZ係数が、−0.5〜0.0であり、
前記λ/2板及び前記λ/4板の他方のNZ係数が、1.0〜1.3である、〔1〕又は〔2〕記載の円偏光板。
〔4〕 前記λ/2板及び前記λ/4板の片方が、ポリフェニレンエーテル及びシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む樹脂からなる層を備える、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の円偏光板。
〔5〕 前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系重合体との重量比が、30/70より大きく、40/60より小さい、〔4〕記載の円偏光板。
〔6〕 前記λ/2板及び前記λ/4板の片方が、環状オレフィン重合体を含む樹脂からなる層を備える、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の円偏光板。
〔7〕 前記円偏光板が、長尺のフィルムであって、
前記偏光フィルムの吸収軸が、前記円偏光板の長手方向にある、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の円偏光板。
〔8〕 基準方向に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、
前記基準方向に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板とを備え、
前記λ/2板の波長分散と前記λ/4板の波長分散とが略一致しており、
面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内の進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzで表した場合、前記λ/2板及び前記λ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、前記λ/2板及び前記λ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzである、広帯域λ/4板。
〔9〕 前記広帯域λ/4板が、長尺のフィルムであって、
前記λ/2板及び前記λ/4板が、斜め延伸を含む製造方法により製造されたものである、〔8〕記載の広帯域λ/4板。
〔10〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の円偏光板、又は、〔8〕若しくは〔9〕記載の広帯域λ/4板を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
本発明によれば、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる円偏光板;正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる円偏光板を実現しうる広帯域λ/4板;並びに、前記の円偏光板又は広帯域λ/4板を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る円偏光板の分解斜視図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
以下の説明において、フィルムの屈折率nxは、別に断らない限り、そのフィルムの面内の遅相軸方向の屈折率を表す。この屈折率nxは、通常、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率となる。
以下の説明において、フィルムの屈折率nyは、別に断らない限り、そのフィルムの面内の進相軸方向の屈折率を表す。この屈折率nyは、通常、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって前記nxの方向に直交する方向の屈折率を表す。
以下の説明において、フィルムの屈折率nzは、別に断らない限り、そのフィルムの厚み方向の屈折率を表す。
これらの屈折率nx、ny及びnzの測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
フィルムの面内位相差Reは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向の位相差Rthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。さらに、フィルムのNZ係数は、別に断らない限り、(nx−nz)/(nx−ny)で表される値である。ここで、dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
以下の説明において、固有複屈折値が正であるとは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなることを意味する。また、固有複屈折値が負であるとは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなることを意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する。
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
以下の説明において、あるフィルムの正面方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面の法線方向を意味し、具体的には前記主面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
以下の説明において、あるフィルムの傾斜方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には前記主面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
以下の説明において、長尺のフィルムの長手方向は、通常は製造ラインにおけるフィルムの流れ方向と平行である。
以下の説明において、「偏光板」、「λ/2板」及び「λ/4板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
以下の説明において、複数のフィルムを備える部材における各フィルムの光軸(吸収軸及び遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記のフィルムを厚み方向から見たときの角度を表す。
以下の説明において、フィルムの遅相軸及び進相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸及び進相軸を表す。
[1.円偏光板の層構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る円偏光板の分解斜視図である。図1では、λ/2板120の表面に、偏光フィルム110の吸収軸111を投影した軸112を一点鎖線で示す。また、図1では、λ/4板130の表面に、偏光フィルム110の吸収軸111を投影した軸113を一点鎖線で示す。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る円偏光板100は、偏光フィルム110と、λ/2板120と、λ/4板130とを、当該円偏光板100の厚み方向においてこの順に備える。
偏光フィルム110は、吸収軸111を有する偏光板であり、吸収軸111と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収し、これ以外の偏光を透過させうる機能を有する。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。
λ/2板120は、所定の位相差を有する光学部材である。このλ/2板120は、偏光フィルム110の吸収軸111に対して所定の角度θhをなす方向に、当該λ/2板120の面内方向に平行な遅相軸121を有する。
λ/4板130は、λ/2板120とは異なる所定の位相差を有する光学部材である。このλ/4板130は、偏光フィルム110の吸収軸111に対して所定の角度θqをなす方向に、当該λ/4板130の面内方向に平行な遅相軸131を有する。
このような構造を有する円偏光板100では、λ/2板120及びλ/4板130を含む層部分が、広い波長範囲において当該層部分を透過する光にその光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えうる広帯域λ/4板140となる。そのため、円偏光板100は、広い波長範囲において、右円偏光及び左円偏光の一方の光を吸収し、残りの光を透過させうる円偏光板として機能できる。
前記の円偏光板100は、枚葉のフィルムであってもよいが、製造を効率的に行えることから、長尺のフィルムであることが好ましい。円偏光板100が長尺のフィルムである場合、偏光フィルム110の吸収軸111は、通常、当該円偏光板100の長手方向に平行である。
[2.偏光フィルム]
偏光フィルムは、通常は偏光子層を備え、必要に応じて偏光子層を保護するための保護フィルム層を備える。
偏光子層としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の適切なビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素及び二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものを用いうる。通常、偏光子層を製造するための延伸処理では、延伸前の長尺のフィルムを長手方向に延伸するので、得られる偏光子層においては当該偏光子層の長手方向に平行な吸収軸が発現しうる。この偏光子層は、吸収軸と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収しうるものであり、特に、偏光度に優れるものが好ましい。偏光子層の厚さは、5μm〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
偏光子層を保護するための保護フィルム層としては、任意の透明フィルムを用いうる。中でも、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる樹脂のフィルムが好ましい。そのような樹脂としては、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、複屈折が小さい点でアセテート樹脂、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、環状オレフィン樹脂が特に好ましい。
偏光フィルムとしては、円偏光板の形状に合わせて、枚葉の偏光フィルム及び長尺の偏光フィルムのいずれを用いてもよい。
長尺の偏光フィルムを用いる場合、その偏光フィルムの吸収軸は、当該偏光フィルムの長手方向に平行であることが好ましい。これにより、偏光フィルムは、当該偏光フィルムを備える長尺の円偏光板の長手方向に吸収軸を有することができる。これにより、通常は、長尺の偏光フィルム、長尺のλ/2板及び長尺のλ/4板を長手方向を平行にして貼り合せることによって長尺の円偏光板を製造できるので、円偏光板をロールトゥロール法によって製造することが可能になる。そのため、円偏光板の製造効率を高めることが可能となる。
前記の偏光フィルムは、例えば、偏光子層と保護フィルム層とを貼り合わせて製造しうる。貼り合わせの際には、必要に応じて、接着剤を用いてもよい。また、特に偏光フィルムを長尺のフィルムとして製造する場合には、長尺の偏光子層と長尺の保護フィルム層とを、その長手方向を平行にしてロールトゥロールにて貼り合わせて製造できるので、製造効率を高めることができる。さらに、枚葉の偏光フィルムを製造する場合には、前記の長尺の偏光フィルムを所定の形状にカットすることにより、枚葉の偏光フィルムを製造しうる。
[3.λ/2板]
λ/2板は、測定波長590nmにおいて、通常240nm以上通常300nm以下の面内位相差を有する光学部材である。λ/2板がこのような面内位相差を有することにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できる。そのため、本発明の円偏光板は、広い波長範囲において、右円偏光及び左円偏光の一方の光を吸収し、残りの光を透過させうる機能を発現できる。したがって、本発明の円偏光板により、正面方向及び傾斜方向の両方において、広い波長範囲の光の反射を低減することが可能となる。中でも、傾斜方向における外光の反射を特に効果的に低減するためには、測定波長590nmにおけるλ/2板の面内位相差は、好ましくは250nm以上であり、好ましくは280nm以下、より好ましくは265nm以下である。
λ/2板は、λ/4板の波長分散と略一致する波長分散を有する。ここで、ある位相差フィルムの波長分散とは、波長400nmでの面内位相差を波長550nmでの面内位相差で割った値で表される。よって、波長400nmにおけるλ/2板の面内位相差をReh(400)、波長550nmにおけるλ/2板の面内位相差をReh(550)、波長400nmにおけるλ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、波長550nmにおけるλ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、λ/2板の波長分散は「Reh(400)/Reh(550)」で表され、λ/4板の波長分散は「Req(400)/Req(550)」で表される。また、λ/2板の波長分散とλ/4板の波長分散とが略一致するとは、具体的には下記式(A):
|Reh(400)/Reh(550)−Req(400)/Req(550)|<1.00
を満たすことを言う。前記の|Reh(400)/Reh(550)−Req(400)/Req(550)|は、好ましくは0.60以下であり、より好ましくは0.10以下、特に好ましくは0.06以下である。このように略一致する波長分散を有するλ/2板とλ/4板とを組み合わせることにより、本発明の円偏光板の正面方向において外光の反射を効果的に低減できる。
本発明の円偏光板では、λ/2板及びλ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、λ/2板及びλ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzである。したがって、λ/4板の屈折率nx、ny及びnzがnz≧nx>nyを満たす場合、λ/2板の屈折率nx、ny及びnzはnx>ny≧nzを満たす。また、λ/4板の屈折率nx、ny及びnzがnx>ny≧nzを満たす場合、λ/2板の屈折率nx、ny及びnzはnz≧nx>nyを満たす。これにより、傾斜方向から円偏光板を見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれを補償できる。そのため、本発明の円偏光板が、傾斜方向における外光の反射を効果的に低減できる。
さらに、本発明の円偏光板では、λ/2板及びλ/4板の一方のNZ係数が−0.5〜0.0であることが好ましく、λ/2板及び前記λ/4板の他方のNZ係数が1.0〜1.3であることが好ましい。具体的には、λ/2板の屈折率nx、ny及びnzがnx>ny≧nzを満たす場合、λ/2板のNZ係数(NZh)は、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.1以下である。また、λ/2板の屈折率nx、ny及びnzがnz≧nx>nyを満たす場合、λ/2板のNZ係数(NZh)は、好ましくは−0.5以上、より好ましくは−0.3以上、特に好ましくは−0.2以上である。これにより、傾斜方向から円偏光板を見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれをより適切に補償できる。そのため、本発明の円偏光板が、傾斜方向における外光の反射を特に効果的に低減できる。
λ/2板は、偏光フィルムの吸収軸に対して所定の角度θhをなす方向に、当該λ/2板の遅相軸を有する。この際、前記の角度θhの範囲は、通常15°±5°である。λ/2板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θhを前記の範囲に収めることにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できるので、正面方向及び傾斜方向の両方で、本発明の円偏光板によって広い波長範囲の光の反射を低減することが可能となる。また、λ/2板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θhは、好ましくは15°±3°であり、より好ましくは15°±1°である。これにより、特に傾斜方向において、本発明の円偏光板による外光の反射低減を効果的に行うことができる。
λ/2板の全光線透過率は、好ましくは80%以上である。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
λ/2板のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
λ/2板の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。これにより、λ/2板の機械的強度を高めることができる。
[4.λ/4板]
λ/4板は、測定波長590nmにおいて、通常110nm以上通常154nm以下の面内位相差を有する光学部材である。λ/4板がこのような面内位相差を有することにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できる。そのため、本発明の円偏光板は、広い波長範囲において、右円偏光及び左円偏光の一方の光を吸収し、残りの光を透過させうる機能を発現できる。したがって、本発明の円偏光板により、正面方向及び傾斜方向の両方において、広い波長範囲の光の反射を低減することが可能となる。中でも、傾斜方向における外光の反射を特に効果的に低減するためには、測定波長590nmにおけるλ/4板の面内位相差は、好ましくは118nm以上であり、好ましくは138nm以下、より好ましくは128nm以下である。
本発明の円偏光板では、前述のように、λ/2板及びλ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、λ/2板及びλ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzである。したがって、λ/2板の屈折率nx、ny及びnzがnz≧nx>nyを満たす場合、λ/4板の屈折率nx、ny及びnzはnx>ny≧nzを満たす。また、λ/2板の屈折率nx、ny及びnzがnx>ny≧nzを満たす場合、λ/4板の屈折率nx、ny及びnzはnz≧nx>nyを満たす。これにより、傾斜方向から円偏光板を見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれを補償できる。そのため、本発明の円偏光板が、傾斜方向における外光の反射を効果的に低減できる。
さらに、本発明の円偏光板では、前述のように、λ/2板及びλ/4板の一方のNZ係数が−0.5〜0.0であることが好ましく、λ/2板及び前記λ/4板の他方のNZ係数が1.0〜1.3であることが好ましい。具体的には、λ/4板の屈折率nx、ny及びnzがnx>ny≧nzを満たす場合、λ/4板のNZ係数(NZh)は、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.1以下である。また、λ/4板の屈折率nx、ny及びnzがnz≧nx>nyを満たす場合、λ/4板のNZ係数(NZh)は、好ましくは−0.5以上、より好ましくは−0.3以上、特に好ましくは−0.2以上であり、好ましくは0.0以下である。これにより、傾斜方向から円偏光板を見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれをより適切に補償できる。そのため、本発明の円偏光板が、傾斜方向における外光の反射を特に効果的に低減できる。
λ/4板は、偏光フィルムの吸収軸に対して所定の角度θqをなす方向に、当該λ/4板の遅相軸を有する。この際、前記の角度θqの範囲は、通常75°±5°である。λ/4板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θqを前記の範囲に収めることにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できるので、正面方向及び傾斜方向の両方で、本発明の円偏光板によって広い波長範囲の光の反射を低減することが可能となる。また、λ/4板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θqは、好ましくは75°±3°、より好ましくは75°±1°である。これにより、特に傾斜方向において、本発明の円偏光板による外光の反射低減を効果的に行うことができる。
ここで、λ/4板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対して角度θqをなす向きは、λ/2板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対して角度θhをなす向きと同じである。したがって、例えば、円偏光板を厚み方向から見た場合、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が時計回りの向きで角度θhの角度をなすときには、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸は時計回りの向きで角度θqの角度をなす。また、例えば、円偏光板を厚み方向から見た場合、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りの向きで角度θhの角度をなすときには、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸は反時計回りの向きで角度θqの角度をなす。
λ/4板の全光線透過率は、好ましくは80%以上である。
λ/4板のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
λ/4板の厚みは、好ましくは40μm以上、より好ましくは45μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは75μm以下、特に好ましくは70μm以下である。λ/4板の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、所望の位相差の発現が容易にできる。また、上限値以下にすることにより、円偏光板の厚みを低減できる。
[5.λ/2板及びλ/4板として用いうる位相差フィルム]
上述した光学物性を有するλ/2板及びλ/4板としては、通常、樹脂層を備える位相差フィルムを用いる。中でも、大面積化が容易であり効率的な製造が可能であることから、λ/2板及びλ/4板として用いる位相差フィルムとしては、樹脂からなる延伸前フィルムを延伸して得られる延伸フィルムが好ましい。また、λ/2板及びλ/4板は、1層のみ備える単層構造のフィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。
λ/2板及びλ/4板を形成するための樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。また、これらの樹脂は、固有複屈折値が正の樹脂であってもよく、固有複屈折値が負の樹脂であってもよい。
固有複屈折値が正の樹脂は、通常、固有複屈折値が正の重合体を含む。この重合体の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;ノルボルネン重合体等の環状オレフィン重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。
固有複屈折値が負の樹脂は、通常、固有複屈折値が負の重合体を含む。この重合体の例を挙げると、スチレン類化合物の単独重合体、並びに、スチレン類化合物と任意のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;ポリアクリロニトリル重合体;ポリメチルメタクリレート重合体;あるいはこれらの多元共重合ポリマー;などが挙げられる。また、スチレン類化合物に共重合させうる前記任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエンが好ましいものとして挙げられる。
前記の重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。
また、前記の重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。例えば、固有複屈折値が正の重合体と、固有複屈折値が負の重合体とを組み合わせて用いてもよい。
中でも、λ/2板及びλ/4板の片方として固有複屈折値が正の樹脂を含む層を備える位相差フィルムを用い、λ/2板及びλ/4板のもう片方として固有複屈折値が負の樹脂を含む層を備える位相差フィルムを用いることが好ましい。特に、λ/2板及びλ/4板の片方として、ポリフェニレンエーテル及びシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む樹脂からなる層を備える位相差フィルムを用いることが好ましく、また、λ/2板及びλ/4板のもう片方として、環状オレフィン重合体を含む樹脂からなる層を備える位相差フィルムを用いることが好ましい。以下、「ポリフェニレンエーテル及びシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む樹脂」を、適宜、「ブレンド樹脂p1」ということがある。また、「環状オレフィン重合体を含む樹脂」を、適宜「環状オレフィン樹脂」ということがある。環状オレフィン樹脂は、波長分散が小さい。また、ブレンド樹脂p1は、ポリフェニレンエーテルとシンジオタクチックポリスチレンの混合比率により、波長分散を調節することが可能である。よって、λ/2板及びλ/4板の片方として、ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムを用い、λ/2板及びλ/4板のもう片方として、環状オレフィン樹脂からなる層を備える位相差フィルムを用いることにより、λ/2板およびλ/4板の両者の波長分散を容易に略一致させることができる。したがって、本発明の円偏光板の光学特性を更に向上させることができる。
〔5.1.ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルム〕
ブレンド樹脂p1は、当該ブレンド樹脂p1が含む重合体の種類及び量に応じて、その固有複屈折値の符号(正及び負)を調整しうる。通常、ブレンド樹脂p1として、負の固有複屈折値を有するものを用いる。ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムは、λ/2板として用いてもよいが、λ/4板として用いることが好ましい。また、ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムの屈折率は、nz≧nx>nyを満たしていてもよく、nx>ny≧nzを満たしていてもよい。ブレンド樹脂p1では、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体との量比を調整することにより、当該ブレンド樹脂p1の波長分散を高い自由度で調整することができる。
ポリフェニレンエーテルは、通常、正の固有複屈折値を有する重合体である。このポリフェニレンエーテルは、フェニルエーテル又はフェニルエーテル誘導体を重合して形成される構造を有する構造単位を含む。通常は、フェニレンエーテル骨格を有する構造単位を主鎖に有する重合体を、ポリフェニレンエーテルとして用いる。以下、「フェニレンエーテル骨格を有する構造単位」を、適宜「フェニレンエーテル単位」という。ただし、フェニレンエーテル単位におけるベンゼン環には、本発明の効果を著しく損なわない限り、置換基を有していてもよい。
中でも、ポリフェニレンエーテルとしては、下記式(I)で表されるフェニレンエーテル単位を含む重合体が好ましい。
Figure 2021005098
式(I)において、Qは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、低級アルキル基(例えば炭素数7個以下のアルキル基)、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、または、ハロ炭化水素オキシ基(ただし、そのハロゲン原子と酸素原子とを少なくとも2つの炭素原子が分離している基)を表す。中でも、Qとしてはアルキル基及びフェニル基が好ましく、特に炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。
式(I)において、Qは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基(例えば炭素数7個以下のアルキル基)、フェニル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、または、ハロ炭化水素オキシ基(ただし、そのハロゲン原子と酸素原子とを少なくとも2つの炭素原子が分離している基)を表す。中でも、Qとしては水素原子が好ましい。
ポリフェニレンエーテルは、1種類の構造単位を有する単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、2種類以上の構造単位を有する共重合体(コポリマー)であってもよい。
式(I)で表される構造単位を含む重合体が単独重合体である場合、当該単独重合体の好ましい例を挙げると、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位(「−(C(CH−O)−」で表される構造単位)を有する単独重合体が挙げられる。
式(I)で表される構造単位を含む重合体が共重合体である場合、当該共重合体の好ましい例を挙げると、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位(「−(CH(CH−O−)−」で表される構造単位)と組み合わせて有するランダム共重合体が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位以外の任意の構造単位を含んでいてもよい。この場合、ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位と任意の構造単位とを有する共重合体となる。ただし、ポリフェニレンエーテルにおける任意の構造単位の量は、本発明の効果を著しく損なわない程度に少なくすることが好ましい。具体的には、ポリフェニレンエーテルにおけるフェニレンエーテル単位の量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
ポリフェニレンエーテルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、好ましくは15,000以上、より好ましくは25,000以上、特に好ましくは35,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは85,000以下、特に好ましくは70,000以下である。重量平均分子量を前記範囲の下限値以上にすることにより、ブレンド樹脂p1からなる層の強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、ポリフェニレンエーテルの分散性を高められるので、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体とを高いレベルで均一に混合することが可能となる。
ここで、重量平均分子量は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として温度135℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、標準ポリスチレン換算の値を採用しうる。
ポリフェニレンエーテルの製造方法に制限は無く、例えば、特開平11−302529号公報に記載の方法により製造しうる。
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体は、通常、負の固有複屈折値を有する重合体である。このポリスチレン系重合体は、スチレン類化合物を重合して形成される構造単位を含む。以下、「スチレン類化合物を重合して形成される構造単位」を、適宜「スチレン類単位」という。スチレン類化合物の例としては、スチレン及びスチレン誘導体が挙げられる。スチレン誘導体の例としては、スチレンのベンゼン環またはα位に置換基が置換したものが挙げられる。
スチレン類化合物の具体例を挙げると、スチレン;メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等のアルキルスチレン;クロロスチレン等のハロゲン化スチレン;クロロメチルスチレン等のハロゲン置換アルキルスチレン;メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;などが挙げられる。中でもスチレン類化合物としては、置換基を有しないスチレンが好ましい。また、スチレン類化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ブレンド樹脂p1が含むポリスチレン系重合体としては、シンジオタクチック構造を有するものを用いる。ここで、ポリスチレン系重合体がシンジオタクチック構造を有する、とは、ポリスチレン系重合体の立体化学構造がシンジオタクチック構造となっていることをいう。また、シンジオタクチック構造とは、炭素−炭素結合で形成される主鎖に対して、側鎖であるフェニル基が、フィッシャー投影式において、交互に反対方向に位置する立体構造のことをいう。
ポリスチレン系重合体のタクティシティー(tacticity:立体規則性)は、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量されうる。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構造単位の存在割合により示すことができる。一般に、例えば、連続する構造単位が2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドとなる。この場合、前記シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体とは、ラセミダイアッドで好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上のシンジオタクティシティーを有するか、若しくは、ラセミペンタッドで好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有することをいう。
ポリスチレン系重合体の例としては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、及びこれらの水素化重合体、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリ(アルキルスチレン)としては、例えばポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソピルスチレン)、ポリ(t−ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)などが挙げられる。
ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、例えば、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などが挙げられる。
ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、例えば、ポリ(クロロメチルスチレン)などが挙げられる。
ポリ(アルコキシスチレン)としては、例えば、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)などが挙げられる。
これらのうち特に好ましいポリスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−t−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン、及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
また、ポリスチレン系重合体は、1種類の構造単位のみを有する単独重合体であってもよく、2種類以上の構造単位を有する共重合体であってもよい。また、ポリスチレン系重合体が共重合体である場合、2種類以上のスチレン類単位を含む共重合体であってもよく、スチレン類単位とスチレン類単位以外の構造単位とを含む共重合体であってもよい。ただし、ポリスチレン系重合体がスチレン類単位とスチレン類単位以外の構造単位とを含む共重合体である場合、ポリスチレン系重合体中のスチレン類単位以外の構造単位の量は、本発明の効果を著しく損なわない程度に少なくすることが好ましい。具体的には、ポリスチレン系重合体におけるスチレン類単位の量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは83重量%以上、特に好ましくは85重量%以上である。通常は、スチレン類単位の量をこのような範囲にすることで、ブレンド樹脂p1からなる層に所望の位相差を容易に発現させることができる。
ポリスチレン系重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリスチレン系重合体の重量平均分子量は、通常130,000以上、好ましくは140,000以上、より好ましくは150,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは270,000以下、より好ましくは250,000以下である。このような重量平均分子量とすると、ポリスチレン系重合体のガラス転移温度を高めて、ブレンド樹脂p1からなる層の耐熱性を安定して改善することができる。
ポリスチレン系重合体のガラス転移温度は、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上、特に好ましくは95℃以上である。このようにポリスチレン系重合体のガラス転移温度を高めることにより、ブレンド樹脂p1のガラス転移温度を効果的に高め、ひいてはブレンド樹脂p1からなる層の耐熱性を安定して改善することができる。また、λ/2板又はλ/4板として用いうる位相差フィルムの製造を安定して容易に行う観点から、ポリスチレン系重合体のガラス転移温度は、好ましくは160℃以下、より好ましくは155℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体は、例えば、不活性炭化水素溶媒中又は溶媒の不存在下において、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン類化合物を重合することにより製造しうる(特開昭62−187708号公報参照)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については、例えば、特開平1−146912号公報に記載の方法により製造しうる。さらに、これらの水素化重合体は、例えば特開平1−178505号公報記載の方法により製造しうる。
ブレンド樹脂p1に含まれるポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体とは、(i)互いに波長分散が異なり、(ii)固有複屈折値の符号が異なり、且つ、(iii)相溶可能である。そのため、ポリフェニレンエーテルの量とポリスチレン系重合体の量との重量比を調整することにより、そのブレンド樹脂p1からなる層の波長分散を調整できる。正面方向及び傾斜方向の両方において円偏光板が外光の反射を低減する能力を高めるためには、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体との重量比(「ポリフェニレンエーテルの量」/「ポリスチレン系重合体の量」)は、所定の範囲に収めることが好ましい。この重量比の具体的な範囲は、好ましくは30/70より大きく、より好ましくは32/68以上、特に好ましくは34/66以上であり、好ましくは40/60より小さく、より好ましくは38/62以下、特に好ましくは37/63以下である。本発明の円偏光板がλ/2板及びλ/4板として、ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムと環状オレフィン重合体を含む樹脂からなる層を備える位相差フィルムとを組み合わせて備える場合に、重量比(「ポリフェニレンエーテルの量」/「ポリスチレン系重合体の量」)を前記の範囲に収めることで、外光の反射を特に効果的に低減できる。
ブレンド樹脂p1からなる層の波長分散を調整できる仕組みは、下記の通りと推察される。ただし、本発明は下記の推測に制限されるものでは無い。
ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体とは、相溶可能である。そのため、ブレンド樹脂p1からなる層を延伸した場合、ポリフェニレンエーテルの配向により発現する位相差と、ポリスチレン系重合体の配向により発現する位相差とが合成されて、ブレンド樹脂p1からなる層の全体としての位相差が生じる。ここで、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体とは、その固有複屈折値の符号が異なる。そのため、ブレンド樹脂p1からなる層の全体としての位相差の値は、ポリフェニレンエーテルの配向により発現する位相差と、ポリスチレン系重合体の配向により発現する位相差との差として現れる。また、ブレンド樹脂p1からなる層を延伸した場合に発現する位相差の波長分散については、ポリフェニレンエーテルの波長分散と、ポリスチレン系重合体の波長分散との間には、差がある。具体的には、ポリフェニレンエーテルの波長分散の方が、通常は、ポリスチレン系重合体の波長分散よりも大きい。そのため、ポリフェニレンエーテルの量とポリスチレン系重合体の量との比を適切に調整することにより、ポリフェニレンエーテルの配向により発現する位相差の大きさとポリスチレン系重合体の配向により発現する位相差の大きさとのバランスを調整できるので、ブレンド樹脂p1からなる層の全体として発現する位相差の値を、波長毎に調整できる。したがって、ブレンド樹脂p1からなる層においてポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体との重量比を調整することにより、ブレンド樹脂p1からなる層の波長分散を調整できるものと推察される(特開2012−226996号公報参照)。
ブレンド樹脂p1においてポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体の合計が占める割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体の合計の割合を前記範囲にすることにより、ブレンド樹脂p1からなる層が適切な光学特性を発現しうる。
ブレンド樹脂p1は、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体以外の任意の成分を含みうる。
例えば、ブレンド樹脂p1は、上述したポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体以外にも重合体を含んでいてもよい。ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体以外の重合体の量は、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体の合計量を100重量部として、15重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下が特に好ましい。
例えば、ブレンド樹脂p1は、配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例を挙げると、層状結晶化合物;微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤:染料及び顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。また、配合剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めうる。例えばブレンド樹脂p1からなる層の全光線透過率を85%以上に維持できる範囲である。
上述した中でも、配合剤としては、耐候性を向上させることができる点で、紫外線吸収剤が好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。好適な紫外線吸収剤の例としては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられ、特に好適なものとしては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが挙げられる。
ブレンド樹脂p1のガラス転移温度は、好ましくは115℃以上、より好ましくは118℃以上、さらにより好ましくは120℃以上である。ブレンド樹脂p1はポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体を組み合わせて含むので、ポリスチレン系重合体のみを含む樹脂と比べて、ガラス転移温度を高めることができる。ガラス転移温度がこのように高いことにより、ブレンド樹脂p1の配向緩和を低減することができるので、耐熱性に優れたλ/2板又はλ/4板を実現できる。また、ブレンド樹脂p1のガラス転移温度の上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムは、ブレンド樹脂p1からなる層に組み合わせて、任意の層を備えうる。ブレンド樹脂p1からなる層に組み合わせる任意の層としては、任意の樹脂からなる層を用いうる。例えば、ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムは、(メタ)アクリル重合体を含む(メタ)アクリル樹脂からなる保護層を備えうる。ブレンド樹脂p1からなる層は機械的強度が低い傾向があるが、(メタ)アクリル樹脂からなる保護層が機械的強度に優れるので、ブレンド樹脂p1からなる層と保護層とを組み合わせることにより、成形時及び延伸時においてブレンド樹脂p1からなる層の破損を抑制することができる。さらに、保護層により、通常は、ブレンド樹脂p1からなる層の成分のブリードアウトを抑制することができる。
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を重合して形成される構造を有する構造単位を含む重合体である。
(メタ)アクリル重合体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルなどの単独重合体及び共重合体が挙げられる。
中でも、(メタ)アクリル重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルを重合して形成される構造単位を含む重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの中でも、(メタ)アクリル酸とアルカノール又はシクロアルカノールとから誘導されるものが好ましく、(メタ)アクリル酸とアルカノールとから誘導されるものがより好ましい。さらに、前記のアルカノール又はシクロアルカノールの1分子当たりの炭素原子数は、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜8個である。アルカノール又はシクロアルカノールの1分子当たりの炭素原子数を前記のように小さくすることにより、フィルムの破断時の伸びを大きくすることができる。
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
さらに、前記の(メタ)アクリル酸エステルは、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、水酸基、ハロゲン原子等の置換基を有しうる。このような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル重合体において、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を重合して形成される構造を有する構造単位の量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体のみの重合体であってもよく、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体とこれに共重合可能な任意の単量体との共重合体でもよい。任意の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、並びに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、およびオレフィン単量体などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよい。その具体例としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどが挙げられる。
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体に共重合可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、(メタ)アクリル重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの(メタ)アクリル重合体のうち、ポリメタクリレートが好ましく、中でもポリメチルメタクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル重合体の量は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。(メタ)アクリル重合体の量を前記範囲にすることにより、保護層の機械的強度を効果的に高めることができる。
(メタ)アクリル樹脂は、ゴム粒子を含んでいてもよい。ゴム粒子を含むことにより、(メタ)アクリル樹脂の可撓性を高め、耐衝撃性を向上させることができる。また、ゴム粒子によって保護層の表面に凹凸が形成され、当該保護層の表面における接触面積が減少するので、通常は、保護層の表面の滑り性を高めることができる。
ゴム粒子を形成するゴムとしては、例えば、アクリル酸エステル重合体ゴム、ブタジエンを主成分とする重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム等が挙げられる。アクリル酸エステル重合体ゴムとしては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を単量体単位の主成分とするものが挙げられる。これらの中でも、ブチルアクリレートを主成分としたアクリル酸エステル重合体ゴム及びブタジエンを主成分とする重合体ゴムが好ましい。
また、ゴム粒子には、2種類以上のゴムが含まれていてもよい。また、それらのゴムは、均一に混ぜ合わせられていてもよいが、層状になったものであってもよい。ゴムが層状になったゴム粒子の例としては、ゴム弾性成分からなるコアと、硬質樹脂層(シェル)とが、コア−シェル構造で層を形成している粒子が挙げられる。前記のコアにおいて、ゴム弾性成分としては、例えば、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとスチレンとをグラフト化したゴム弾性成分が挙げられる。また、硬質樹脂層(シェル)としては、例えば、ポリメチルメタクリレート及びメチルメタクリレートの一方又は両方とアルキルアクリレートとの共重合体からなる硬質樹脂層が挙げられる。
ゴム粒子は、数平均粒子径が、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、0.3μm以下であることが好ましく、0.25μm以下であることがより好ましい。数平均粒子径を前記範囲内とすることにより、保護層の表面に適度な凹凸を形成して、位相差フィルムの滑り性を向上させることができる。
ゴム粒子の量は、(メタ)アクリル重合体100重量部に対して、好ましくは5重量部以上であり、好ましくは50重量部以下である。ゴム粒子の量を前記範囲内とすることにより位相差フィルムの耐衝撃性を高めてハンドリング性を向上させることができる。
(メタ)アクリル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、(メタ)アクリル重合体及びゴム粒子以外の成分を含んでいてもよい。例えば、(メタ)アクリル重合体以外に任意の重合体を含んでいてもよい。ただし、本発明の利点を顕著に発揮させる観点からは、任意の重合体の量は少ないことが好ましい。任意の重合体の具体的な量は、例えば(メタ)アクリル重合体100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。中でも、任意の重合体を全く含まないことが特に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、例えば配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例としては、ブレンド樹脂p1が含みうる配合剤と同様の例が挙げられる。配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めうる。
(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、特に好ましくは100℃以上であり、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下、特に好ましくは135℃以下である。(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、樹脂ペレットを高温で乾燥する時のブロッキングを抑制できるので、水分の混入を防止でき、また、上限値以下にすることにより、溶融成形法で成形する際の温度を低くでき、位相差フィルムに異物が混入することを防止できる。
λ/2板又はλ/4板として用いうる、ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムの製造方法に特に制限は無い。ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムは、例えば、(a)ブレンド樹脂p1からなる層を備える延伸前フィルムを用意する第一工程と、(b)用意された延伸前フィルムを延伸してブレンド樹脂p1からなる層に所望の位相差を発現させる第二工程と、を含む製造方法によって製造しうる。
(a)第一工程では、ブレンド樹脂p1からなる層を備える延伸前フィルムを用意する。延伸前フィルムは、例えば、溶融成形法又は溶液流延法等のフィルム製造方法によって製造しうる。溶融成形法のより具体的な例としては、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた位相差フィルムを得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単に延伸前フィルムを製造できる観点から押出成形法が特に好ましい。
また、例えば、ブレンド樹脂p1からなる層と保護層とを備える延伸前フィルムのように、延伸前フィルムを2層以上の層を備える複層フィルムとして製造する場合、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形方法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法;ある層に対してそれ以外の層を構成する樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの方法を用いうる。中でも、製造効率が良く、延伸前フィルムに溶媒などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形方法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
通常、延伸前フィルムは、長尺の樹脂フィルムとして得られる。延伸前フィルムを長尺の樹脂フィルムとして用意することにより、それを延伸して得られる位相差フィルムからなるλ/2板及びλ/4板、並びに、製品である円偏光板を長尺のフィルムとして製造することができる。長尺のフィルムは製造ラインにおいて長手方向に連続的に搬送しながら製造工程を行なうことができる。このため、位相差フィルムを製造する場合に各工程の一部または全部をインラインで行うことが可能であるので、製造を簡便且つ効率的に行なうことできる。
(a)第一工程で延伸前フィルムを用意した後で、(b)その延伸前フィルムを延伸する第二工程を行う。通常、(b)第二工程での延伸により、ブレンド樹脂p1からなる層に所望の位相差が発現するので、λ/2板又はλ/4板として用いうる所望の位相差フィルムが延伸フィルムとして得られる。
(b)第二工程における延伸方法は、延伸により発現させたい光学特性に応じて適切なものを任意に採用しうる。例えば、ロール間の周速の差を利用して長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸);テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸);縦一軸延伸と横一軸延伸とを順に行う方法(逐次二軸延伸);延伸前フィルムを斜め方向に延伸する方法(斜め延伸);等が挙げられる。これらの延伸の回数は、1回でもよく、2回以上でもよい。また、前記の延伸は、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
これらの延伸方法の中でも、一方向にのみ延伸する一軸延伸が好ましい。一軸延伸により、位相差フィルムの一軸性を高めることができる。ここで一軸性とは、一方向に延伸して得られるフィルムに近い光学特性を発現しうる性質を示す。固有複屈折値が正の樹脂からなる層を延伸した場合に発現するNZ係数は、延伸後の層の一軸性が高いほど、1.0に近くなる傾向がある。また、固有複屈折値が負の樹脂からなる層を延伸した場合に発現するNZ係数は、延伸後の層の一軸性が高いほど、0.0に近くなる傾向がある。そのため、一軸性が高い位相差フィルムは、λ/2板及びλ/4板にとって好適なNZ係数を得やすいので、当該位相差フィルムをλ/2板又はλ/4板として備える円偏光板の傾斜方向における外光の反射を低減する能力を高めやすい。
(b)第二工程における延伸方向は、延伸により発現させたい遅相軸の方向に応じて設定しうるものであり、特に延伸前フィルムが長尺のフィルムである場合には、延伸方向は斜め方向が好ましい。具体的には、延伸前フィルムの長手方向に対して15°±5°又は75°±5°の角度をなす方向に延伸することが好ましい。このように延伸を斜め方向に行うことにより、位相差フィルムの斜め方向に遅相軸を発現させることができる。そのため、得られた位相差フィルムの長手方向に対して15°±5°の角度をなす方向、及び、得られた位相差フィルムの長手方向に対して75°±5°の角度をなす方向のような斜め方向に、遅相軸を容易に発現させることができる。したがって、斜め方向に延伸を行うことにより、所望のλ/2板及びλ/4板を容易に製造できる。また、このように長手方向に対して15°±5°又は75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有する長尺のλ/2板及びλ/4板は、長手方向に吸収軸を有する長尺の偏光フィルムと貼り合わせる際、λ/2板の長手方向、λ/4板の長手方向及び偏光フィルムの長手方向を平行にすることで、各層の光軸の方向を適切に調整できる。そのため、本発明の円偏光板を容易に製造することができる。
延伸倍率は、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上、特に好ましくは1.5倍以上であり、好ましくは8.0倍以下、より好ましくは6.0倍以下、特に好ましくは5.0倍以下である。(b)第二工程における延伸倍率を前記範囲に収めることにより、所望の光学特性を有する位相差フィルムを延伸フィルムとして得ることができる。
(b)第二工程における延伸温度は、好ましくは「Tgp1−20℃」以上、より好ましくは「Tgp1−5℃」以上であり、好ましくは「Tgp1+20℃」以下、より好ましくは「Tgp1+10℃」以下である。ここでTgp1は、ブレンド樹脂p1のガラス転移温度を表す。延伸温度を前記の範囲にすることにより、ブレンド樹脂p1からなる層に含まれる分子を安定して配向させることができるので、所望の光学特性を有する位相差フィルムを延伸フィルムとして容易に得ることができる。
(b)第二工程で延伸処理を行うことにより、所望の位相差を有するブレンド樹脂p1からなる層を備えた位相差フィルムが延伸フィルムとして得られる。この位相差フィルムはそのままλ/2板又はλ/4板として用いてもよい。また、位相差フィルムがブレンド樹脂p1からなる層以外の任意の層(保護層等)を備える場合は、必要に応じて、当該任意の層を剥離する(c)第三工程を行ってもよい。例えば、上述した(メタ)アクリル樹脂からなる保護層は、通常、(b)第二工程での延伸によっては位相差が発現しない。そのため、位相差フィルムから保護層を隔離することにより、所望の位相差を損なうことなく、位相差フィルムの厚みを薄くすることができる。
さらに、ブレンド樹脂p1からなる層を備えた位相差フィルムを製造する場合は、前述した工程以外の工程を更に行ってもよい。
例えば、延伸される前に延伸前フィルムに対して予熱処理を施す工程を行ってもよい。延伸前フィルムを加熱する装置としては、例えば、オーブン型加熱装置、ラジエーション加熱装置、又は液体中に浸すための温浴槽などが挙げられる。中でもオーブン型加熱装置が好ましい。予熱工程における加熱温度は、好ましくは「延伸温度−40℃」以上、より好ましくは「延伸温度−30℃」以上であり、好ましくは「延伸温度+20℃」以下、より好ましくは「延伸温度+15℃」以下である。ここで、延伸温度とは、加熱装置の設定温度を意味する。
また、例えば、得られた延伸後の位相差フィルムに対して固定化処理を施す工程を行ってもよい。固定処理における温度は、好ましくは室温以上、より好ましくは「延伸温度−40℃」以上であり、好ましくは「延伸温度+30℃」以下、より好ましくは「延伸温度+20℃」以下である。
〔5.2.環状オレフィン樹脂からなる層を備える位相差フィルム〕
環状オレフィン樹脂は、通常、正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂である。環状オレフィン樹脂からなる層を備える位相差フィルムは、λ/4板として用いてもよいが、λ/2板として用いることが好ましい。また、環状オレフィン樹脂からなる層を備える位相差フィルムの屈折率は、nz≧nx>nyを満たしていてもよく、nx>ny≧nzを満たしていてもよい。環状オレフィン樹脂は、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れる。
環状オレフィン樹脂は、環状オレフィン重合体を含む樹脂である。また、環状オレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。環状オレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、環状オレフィン樹脂からなる層の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
環状オレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。環状オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、環状オレフィン樹脂からなる層の透明性及び耐熱性が良好となる。
環状オレフィン重合体の中でも、シクロオレフィン重合体が好ましい。シクロオレフィン重合体とは、シクロオレフィン単量体を重合して得られる構造を有する重合体である。また、シクロオレフィン単量体は、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。重合性の炭素−炭素二重結合の例としては、開環重合等の重合が可能な炭素−炭素二重結合が挙げられる。また、シクロオレフィン単量体の環構造の例としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらを組み合わせた多環等が挙げられる。中でも、得られる重合体の誘電特性及び耐熱性等の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィン単量体が好ましい。
上記のシクロオレフィン重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;並びに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む層を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
単環の環状オレフィン系重合体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物を挙げることができる。
環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、環状オレフィン樹脂からなる層の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、前記のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにおいて、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いてもよい。
環状オレフィン重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、環状オレフィン樹脂からなる層の安定性を高めることができる。
環状オレフィン樹脂における環状オレフィン重合体の割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。重合体の割合を前記範囲にすることにより、環状オレフィン樹脂からなる層が十分な耐熱性及び透明性を得られる。
環状オレフィン樹脂は、環状オレフィン重合体に加えて、配合剤を含みうる。配合剤の例を挙げると、ブレンド樹脂p1が含みうる配合剤と同様の例が挙げられる。また、配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
環状オレフィン樹脂のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。環状オレフィン樹脂のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、高温環境下における環状オレフィン樹脂からなる層の耐久性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、延伸処理を容易に行える。
環状オレフィン樹脂は、光弾性係数の絶対値が、好ましくは10×10−12Pa−1以下、より好ましくは7×10−12Pa−1以下、特に好ましくは4×10−12Pa−1以下である。これにより、得られる位相差フィルムの面内位相差のバラツキを小さくすることができる。ここで、光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。
環状オレフィン樹脂からなる層を備える位相差フィルムは、環状オレフィン樹脂からなる層以外に任意の層を備えうる。しかし、通常、位相差フィルムは、環状オレフィン樹脂からなる層のみを備える単層構造を有する。
λ/2板又はλ/4板として用いうる、環状オレフィン樹脂からなる層を備える位相差フィルムの製造方法に特に制限は無い。環状オレフィン樹脂からなる層を備える位相差フィルムは、例えば、(d)環状オレフィン樹脂からなる層を備える延伸前フィルムを用意する第四工程と、(e)用意された延伸前フィルムを延伸して環状オレフィン樹脂からなる層に所望の位相差を発現させる第五工程と、を含む製造方法によって製造しうる。
(d)第四工程では、環状オレフィン樹脂からなる層を備える延伸前フィルムを用意する。延伸前フィルムの製造方法としては、例えば、ブレンド樹脂p1からなる層を備える延伸前フィルムの製造方法の説明で挙げたフィルム製造方法と同様のフィルム製造方法が挙げられる。
通常、延伸前フィルムは、長尺の樹脂フィルムとして得られる。延伸前フィルムを長尺の樹脂フィルムとして用意することにより、位相差フィルムを製造する場合に各工程の一部または全部をインラインで行うことが可能であるので、製造を簡便且つ効率的に行なうことできる。
(d)第四工程で延伸前フィルムを用意した後で、(e)その延伸前フィルムを延伸する第五工程を行う。通常、(e)第五工程での延伸により、環状オレフィン樹脂からなる層に所望の位相差が発現するので、λ/2板又はλ/4板として用いうる所望の位相差フィルムが延伸フィルムとして得られる。
(e)第五工程における延伸方法としては、例えば、ブレンド樹脂p1からなる層を備える延伸前フィルムと同様の延伸方法が挙げられる。また、これらの延伸の回数は、1回でもよく、2回以上でもよい。さらに、延伸方法は、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。中でも、延伸方法としては、一方向にのみ延伸する一軸延伸が好ましい。これにより、環状オレフィン樹脂からなる層の一軸性を高めることができるため、λ/2板及びλ/4板にとって好適なNZ係数を得やすいので、円偏光板の傾斜方向における外光の反射を低減する能力を高めやすい。
(e)第五工程における延伸方向は、延伸により発現させたい遅相軸の方向に応じて設定しうるものであり、特に斜め方向が好ましい。具体的には、延伸前フィルムの長手方向に対して15°±5°又は75°±5°の角度をなす方向に延伸することが好ましい。このように延伸を斜め方向に行うことにより、ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムと同様に、所望の方向に遅相軸を容易に発現させることができるので、所望のλ/2板及びλ/4板を容易に製造できる。さらに、斜め方向への延伸により得られる長尺のλ/2板及びλ/4板は、ブレンド樹脂p1からなる層を備える位相差フィルムと同様に、長手方向に吸収軸を有する長尺の偏光フィルムと貼り合わせる際、λ/2板の長手方向、λ/4板の長手方向及び偏光フィルムの長手方向を平行にすることで、各層の光軸の方向を適切に調整できる。そのため、本発明の円偏光板を容易に製造することができる。
(e)第五工程における延伸倍率は、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上、特に好ましくは1.5倍以上であり、好ましくは8.0倍以下、より好ましくは6.0倍以下、特に好ましくは5.0倍以下である。(e)第五工程における延伸倍率を前記範囲に収めることにより、所望の光学特性を有する位相差フィルムを延伸フィルムとして容易に得ることができる。
(e)第五工程における延伸温度は、好ましくは「TgCOP−20℃」以上、より好ましくは「TgCOP−10℃」以上であり、好ましくは「TgCOP+20℃」以下、より好ましくは「TgCOP+10℃」以下である。ここで、TgCOPは、環状オレフィン樹脂のガラス転移温度を表す。(e)第五工程における延伸温度を前記の範囲にすることにより、環状オレフィン樹脂からなる層に含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有する位相差フィルムを延伸フィルムとして容易に得ることができる。
(e)第五工程で延伸処理を行うことにより、所望の位相差を有する環状オレフィン樹脂からなる層を備えた位相差フィルムが延伸フィルムとして得られる。この位相差フィルムはそのままλ/2板又はλ/4板として用いてもよい。また、ブレンド樹脂p1からなる層を備えた位相差フィルムの製造方法と同様に、更に別の工程を行ってもよい。
〔5.3.位相差フィルムの物性〕
上述した位相差フィルムが含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下であり、理想的にはゼロである。揮発性成分の量を少なくすることにより、位相差フィルムの寸法安定性が向上し、位相差等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。このように揮発性成分の量を少なくするための方法としては、例えば、延伸前フィルムを溶融成形法によって製造することが挙げられる。
ここで、揮発性成分とは、フィルム中に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、フィルム中に含まれる分子量200以下の物質の合計として、フィルムをクロロホルムに溶解させてガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
位相差フィルムの飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であり、理想的にはゼロである。位相差フィルムの飽和吸水率が前記範囲であると、位相差等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
ここで、飽和吸水率は、フィルムの試験片を23℃の水中に24時間浸漬し、増加した質量の、浸漬前フィルム試験片の質量に対する百分率で表される値である。
[6.任意の層]
本発明の円偏光板は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板以外に、任意の層を備えうる。
例えば、本発明の円偏光板は、傷つき防止のための保護フィルム層を備えうる。また、例えば、本発明の円偏光板は、偏光フィルムとλ/2板との接着、並びに、λ/2板とλ/4板との接着のために、接着層又は粘着層を備えうる。
[7.円偏光板の物性]
本発明の円偏光板は、光を反射しうる面に設けた場合に、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる。特に、本発明の円偏光板は、可視領域の広い波長範囲において、外光の反射を効果的に低減できる点で、有用である。
一般に、ある基準方向に対して角度θ(λ/4)をなす遅相軸を有するλ/4板と、前記基準方向に対して角度θ(λ/2)をなす遅相軸を有するλ/2板とを組み合わせた複層フィルムが式C:「θ(λ/4)=2θ(λ/2)+45°」を満たす場合、この複層フィルムは、広い波長範囲において当該複層フィルムを透過する光にその光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えうる広帯域λ/4板となる(特開2007−004120号公報参照)。本発明の円偏光板では、λ/2板及びλ/4板が式Cに表されるのに近い関係を満たすことにより、λ/2板とλ/4板とを含む部分が広帯域λ/4板として機能しうる。そのため、本発明の円偏光板は広い波長範囲において円偏光を吸収できるので、外光の反射を効果的に低減できる。
また、本発明の円偏光板では、λ/2板及びλ/4板の一方において厚み方向に大きな屈折率nzが発現している。この厚み方向の屈折率nzにより、上述したように、円偏光板を傾斜方向から見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれを補償できる。そのため、正面方向だけでなく傾斜方向においても、本発明の円偏光板は広い波長範囲において円偏光を吸収できるので、外光の反射を効果的に低減できる。
[8.円偏光板の製造方法]
本発明の円偏光板は、上述した偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を貼り合わせることにより、製造できる。この際、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板は、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸が所望の角度をなすように、光軸を合わせて貼り合わせを行う。例えば、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を枚葉のフィルムに切り出し、切り出した枚葉の偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を光軸を合わせて貼り合わせることで、円偏光板が得られる。
また、例えば、当該偏光フィルムの長手方向に吸収軸を有する長尺の偏光フィルムと、当該λ/2板の長手方向に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有する長尺のλ/2板と、当該λ/4板の長手方向に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有する長尺のλ/4板とを貼り合わせて円偏光板を製造する場合には、これらの偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を長手方向を平行にして貼り合せることにより、円偏光板を製造できる。この場合、円偏光板をロールトゥロール法によって製造できる。そのため、この円偏光板は、枚葉の偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を貼り合せる方法とは異なり、複雑な光軸合わせの工程が不要であるので、効率の良い製造を実現できる。
貼り合わせの際、必要に応じて、接着剤又は粘着剤を用いうる。接着剤又は粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等のものが挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び透明性の観点から、アクリル系のものが好ましい。
また、必要に応じて、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を貼り合わせる前、又は、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を貼り合わせた後に、保護層等の任意の層を剥がしてもよい。
[9.広帯域λ/4板]
本発明の広帯域λ/4板は、上述した本発明の円偏光板における偏光フィルム以外の部分と同様の構造を有する光学部材である。したがって、本発明の広帯域λ/4板は、上述したように、略一致する波長分散を有するλ/2板及びλ/4板を備え、これらのλ/2板及びλ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、λ/2板及びλ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzである。そして、λ/2板は、ある基準方向に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有し、且つ、λ/4板は、前記の基準方向に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有する。前記の基準方向は、本発明の円偏光板における偏光フィルムの吸収軸の方向に相当する。
本発明の広帯域λ/4板は、少なくとも下記の利点を得ることができる。
・本発明の広帯域λ/4板は、広い波長範囲において、当該広帯域λ/4板を正面方向に透過する光に、その光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えられる。
・本発明の広帯域λ/4板は、広い波長範囲において、当該広帯域λ/4板を傾斜方向に透過する光に、その光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えられる。
・したがって、本発明の広帯域λ/4板は、偏光フィルムと組み合わせることにより、正面方向及び傾斜方向の両方において広い波長範囲の光の反射を低減できる円偏光板を実現できる。
本発明の広帯域λ/4板は、長尺のフィルムであることが好ましい。このような長尺の広帯域λ/4板は、長尺のλ/2板及び長尺のλ/4板を、長手方向を平行にして貼り合せることにより製造できるので、ロールトゥロール法による製造が可能であり、効率の良い製造を実現できる。また、このような長尺の広帯域λ/4板を製造する場合には、長尺のλ/2板及び長尺のλ/4板が、斜め延伸を含む製造方法により製造されていることが好ましい。斜め延伸は、延伸前フィルムを斜め方向に延伸することを表す。このように斜め延伸を含む製造方法によって製造された長尺のλ/2板は、そのλ/2板の長手方向に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を発現させやすい。また、斜め延伸を含む製造方法によって製造された長尺のλ/4板は、そのλ/4板の長手方向に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を発現させやすい。そのため、広帯域λ/4板を製造する際に複雑な光軸合わせの工程が不要であるので、効率の良い製造を実現できる。
[10.有機エレクトロルミネッセンス表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、本発明の円偏光板、又は、本発明の広帯域λ/4板を備える。
本発明の有機EL表示装置が円偏光板を備える場合、通常、有機EL表示装置は表示面に円偏光板を備える。これにより、円偏光板は有機EL表示装置の反射防止フィルムとして機能しうる。即ち、有機EL表示装置の表示面に、円偏光板を、偏光フィルム側の面が視認側に向くように設けることにより、装置外部から入射した光が装置内で反射して装置外部へ出射することを抑制することができ、その結果、表示装置の表示面のぎらつきを抑制しうる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが偏光フィルムを通過し、次にそれがλ/2板及びλ/4板を通過することにより円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子中の反射電極等)により反射され、再びλ/4板及びλ/2板を通過することにより、入射した直線偏光の偏光軸と直交する方向に偏光軸を有する直線偏光となり、偏光フィルムを通過しなくなる。これにより、反射防止の機能が達成される。
また、本発明の有機EL表示装置が広帯域λ/4板を備える場合、有機EL表示装置は任意の位置に広帯域λ/4板を備えうる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(位相差の測定方法)
位相差計(王子計測社製「KOBRA−21ADH」)を用いて、フィルムの幅方向に50mm間隔の複数の地点で、面内位相差及び厚み方向の位相差を測定した。これらの地点での測定値の平均値を計算し、この平均値を、当該フィルムの面内位相差及び厚み方向の位相差とした。この際、測定は、400nm、550nm及び590nmの波長でそれぞれ行った。
(NZ係数の測定方法)
位相差計(王子計測社製「KOBRA−21ADH」)を用いて、フィルムの幅方向に50mm間隔の複数の地点で、当該フィルムのNZ係数を測定した。これらの地点での測定値の平均値を計算し、この平均値を当該フィルムのNZ係数とした。この際、測定波長は590nmとした。
(目視による評価方法)
平面状の反射面を有するミラーを用意した。このミラーを、反射面が水平で且つ上向きになるように置いた。このミラーの反射面上に、偏光フィルム側が上向きになるように円偏光板を貼り付けた。
その後、晴れた日に日光で円偏光板を照らした状態で、ミラー上の円偏光板を目視で観察した。観察は、円偏光板の、
(i)極角0°、方位角0°の正面方向と、
(ii)極角45°、方位角0°〜360°の傾斜方向と
の両方で行った。
(i)正面方向での観察では、日光の反射がほとんど気にならず、円偏光板が黒く見えるかどうかを評価した。
また、(ii)傾斜方向での観察では、方位角によって反射率及び色味が変化しないかどうかを評価した。
前記の目視評価を、5人の観察者が行い、全ての実施例及び比較例の結果を順位づけした。順位づけした結果を得点順に並べ、その点数のレンジの中で上位グループからA、B、C、D及びEの順に評価した。
(シミュレーションによる反射率の計算方法)
シミュレーション用のソフトウェアとしてシンテック社製「LCD Master」を用いて、各実施例及び比較例で製造された円偏光板をモデル化し、反射率を計算した。
シミュレーション用のモデルでは、平面状の反射面を有するミラーの前記反射面に、λ/4板側でミラーに接するように円偏光板を貼り付けた構造を設定した。したがって、このモデルでは、厚み方向において、偏光フィルム、λ/2板、λ/4板及びミラーがこの順に設けられた構造が設定された。
そして、前記のモデルにおいて、D65光源から円偏光板に光を照射したときの反射率を、前記円偏光板の(i)正面方向及び(ii)傾斜方向において計算した。ここで、(i)正面方向では、極角0°、方位角0°の方向の反射率を計算した。また、(ii)傾斜方向では、極角45°において、方位角0°〜360°の範囲で方位角方向に5°ずつ計算を行い、その計算値の平均を当該モデル化された円偏光板の傾斜方向での反射率として採用した。
[製造例1.シクロオレフィン樹脂からなる延伸前フィルムの製造]
単層のフィルム成形装置を用意した。シクロオレフィン樹脂R1(日本ゼオン社製「ZEONOR1420」、ガラス転移温度140℃)のペレットを、フィルム成形装置のダブルフライト型のスクリューを備えた一軸押出機に投入して260℃で溶融し、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、260℃に温調されたダイ(ダイスリップの表面粗さRa:0.1μm)から押し出し、フィルム状に成形した。成形されたフィルム状の溶融樹脂を、表面温度110℃に調整されたキャストロールにキャストし、次いで表面温度50℃に調整された2本の冷却ロール間に通した。樹脂はキャストロール上で冷却固化して、延伸前フィルムが得られた。この際、キャストロールの回転速度を調整することにより、厚み50μmの延伸前フィルムPF−1、厚み100μmの延伸前フィルムPF−2、及び、厚み200μmの延伸前フィルムPF−3を製造した。
[製造例2.ブレンド樹脂p1からなる層を備えた延伸前フィルムの製造]
(ブレンド樹脂の製造)
シンジオタクチックポリスチレン(出光興産社製「130−ZC」、ガラス転移温度98℃、結晶化温度140℃)70重量部と、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)(アルドリッチ社カタログNo.18242−7)30重量部とを、2軸押出機で混錬し、透明な樹脂R2のペレットを得た。得られた樹脂R2のガラス転移温度は125℃であった。
また、シンジオタクチックポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)との混合比率を64重量部と36重量部にしたこと以外は、樹脂R2と同様の製造方法を行うことにより、樹脂ペレットR3(ガラス転移温度134℃)を得た。
さらに、シンジオタクチックポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)との混合比率を60重量部と40重量部にしたこと以外は、樹脂R2と同様の製造方法を行うことにより、樹脂ペレットR4(ガラス転移温度141℃)を得た。
また、シンジオタクチックポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)との混合比率を58重量部と42重量部にしたこと以外は、樹脂R2と同様の製造方法を行うことにより、樹脂ペレットR5(ガラス転移温度145℃)を得た。
(延伸前フィルムの製造)
ダブルフライト型のスクリューを備えた一軸押出機を備える、二種二層の共押出成形用のフィルム成形装置(2種類の樹脂によって2層構造のフィルムを成形しうるタイプの成形装置)を準備した。樹脂R3のペレットを、前記のフィルム成形装置の一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。また、耐衝撃性ポリメチルメタクリレート樹脂R6(住友化学社製「スミペックスHT55X」)のペレットを、前記のフィルム成形装置のもう一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。
溶融された290℃の樹脂R3を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、マルチマニホールドダイ(ダイスリップの表面粗さRa:0.1μm)の一方のマニホールドに供給した。また、溶融された260℃の樹脂R6を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、前記マルチマニホールドダイのもう一方のマニホールドに供給した。
樹脂R3及び樹脂R6をマルチマニホールドダイから280℃で同時に押し出して、フィルム状に成形した。成形されたフィルム状の溶融樹脂を、表面温度110℃に調整されたキャストロールにキャストし、次いで表面温度50℃に調整された2本の冷却ロール間に通した。樹脂はキャストロール上で冷却固化して、樹脂R3からなる層及び樹脂R6からなる層を備える延伸前フィルムが得られた。この際、キャストロールの回転速度を調整することにより、樹脂R3からなる層(厚さ50μm)と樹脂R6からなる層(厚さ50μm)とを備える延伸前フィルムPF−4(厚さ100μm)、及び、樹脂R3からなる層(厚さ100μm)と樹脂R6からなる層(厚さ100μm)とを備える延伸前フィルムPF−5(厚さ200μm)を製造した。
また、樹脂R3の代わりに樹脂R2を用いたこと以外は延伸前フィルムPF−4の製造方法と同様の方法により、樹脂R2からなる層(厚さ50μm)と樹脂R6からなる層(厚さ50μm)とを備える延伸前フィルムPF−6(厚さ100μm)を製造した。
樹脂R3の代わりに樹脂R4を用いたこと以外は延伸前フィルムPF−4の製造方法と同様の方法により、樹脂R4からなる層(厚さ100μm)と樹脂R6からなる層(厚さ100μm)とを備える延伸前フィルムPF−7(厚さ200μm)を得た。
樹脂R3の代わりにスチレン−マレイン酸共重合体を含む樹脂R7(ノヴァ・ケミカル社製「Dylark D332」、ガラス転移温度130℃)のペレットを用いたこと以外は延伸前フィルムPF−5の製造方法と同様の方法により、樹脂R7からなる層(厚さ50μm)と樹脂R6からなる層(厚さ50μm)とを備える延伸前フィルムPF−8(厚さ100μm)を得た。
樹脂R3の代わりに樹脂R5を用いたこと以外は延伸前フィルムPF−5の製造方法と同様の方法により、樹脂R5からなる層(厚さ200μm)と樹脂R6からなる層(厚さ100μm)とを備える延伸前フィルムPF−9(厚さ300μm)を得た。
[実施例1]
(1−i.偏光フィルムの製造)
ヨウ素で染色した、ポリビニルアルコール樹脂製の長尺の延伸前フィルムを用意した。この延伸前フィルムを、当該延伸前フィルムの幅方向に対して90°の角度をなす長手方向に延伸して、長尺の偏光フィルムを得た。この偏光フィルムは、当該偏光フィルムの長手方向に吸収軸を有し、当該偏光フィルムの幅方向に透過軸を有していた。
(1−ii.λ/2板の製造)
延伸前フィルムPF−2を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸して、λ/2板HF−1を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度140℃〜150℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが260nmとなるように調整した。
(1−iii.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−4を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸し、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R3からなるλ/4板QF−1を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度134℃〜144℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが130nmとなるように調整した。
(1−iv.貼り合わせ)
粘着剤の層として、光学用透明粘着シート(日東電工社製「LUCIACS CS9621T」)を用意した。この粘着シートを用いて、前記の偏光フィルム、λ/2板HF−1、及び、λ/4板QF−1を、この順で貼り合わせた。これにより、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−1を得た。この円偏光板POL−1を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。なお、λ/2板及びλ/4板を、偏光フィルムや粘着シートと貼り合わせる際には、偏光フィルムの吸収軸に対する、λ/2板の遅相軸の方向及びλ/4板の遅相軸の方向が、それぞれθh、θqとなるように、λ/2板HF−1及びλ/4板QF―1を枚葉のフィルムに切り出した。以下の実施例及び比較例も同様に枚葉のフィルムに切り出した。
円偏光板POL−1について、上述した方法で評価を行った。
[実施例2]
(2−i.λ/2板の製造)
延伸前フィルムPF−3を、横延伸機で、長手方向に対して90°の角度をなす幅方向に延伸して、λ/2板HF−2を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率4.0倍において、延伸温度140℃〜150℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが260nmとなるように調整した。
(2−ii.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−5を、横延伸機で長手方向に対して90°の角度をなす幅方向に延伸し、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R3からなるλ/2板QF−2を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率2.5倍において、延伸温度134℃〜144℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが130nmとなるように調整した。
(2−iii.貼り合わせ)
λ/2板HF−1の代わりにλ/2板HF−2を使用し、更に、λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−2を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−2を得た。この円偏光板POL−2を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−2について、上述した方法で評価を行った。
[実施例3]
(3−i.λ/2板の製造)
延伸前フィルムPF−5を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸して、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R3からなるλ/2板HF−3を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度134℃〜144℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが260nmとなるように調整した。
(3−ii.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−1を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸して、λ/4板QF−3を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度140℃〜150℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが130nmとなるように調整した。
(3−iii.貼り合わせ)
λ/2板HF−1の代わりにλ/2板HF−3を使用し、更に、λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−3を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−3を得た。この円偏光板POL−3を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−3について、上述した方法で評価を行った。
[実施例4]
(4−i.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−6を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸し、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R2からなるλ/4板QF−4を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度125℃〜135℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが129nmとなるように調整した。
(4−ii.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−4を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−4を得た。この円偏光板POL−4を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−4について、上述した方法で評価を行った。
[実施例5]
(5−i.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−7を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸し、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R4からなるλ/4板QF−5を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度141℃〜151℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが132nmとなるように調整した。
(5−ii.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−5を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−5を得た。この円偏光板POL−5を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−5について、上述した方法で評価を行った。
[実施例6]
(6−i.貼り合わせ)
λ/2板HF−1の代わりにλ/2板HF−2を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−6を得た。この円偏光板POL−6を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−6について、上述した方法で評価を行った。
[実施例7]
(7−i.λ/2板の製造)
延伸前フィルムPF−3を、横延伸機で、長手方向に対して90°の角度をなす幅方向に延伸して、λ/2板HF−4を得た。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率3.0倍において、延伸温度140℃〜150℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが260nmとなるように調整した。
(7−ii.貼り合わせ)
λ/2板HF−1の代わりにλ/2板HF−4を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−7を得た。この円偏光板POL−7を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−7について、上述した方法で評価を行った。
[実施例8]
(8−i.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−2を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−8を得た。この円偏光板POL−8を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−8について、上述した方法で評価を行った。
[実施例9]
(9−i.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−5を、横延伸機で長手方向に対して90°の角度をなす幅方向に延伸し、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R3からなるλ/2板QF−6を得た。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率2.0倍において、延伸温度134℃〜144℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが130nmとなるように調整した。
(9−ii.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−6を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−9を得た。この円偏光板POL−9を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−9について、上述した方法で評価を行った。
[比較例1]
(10−i.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−3を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−10を得た。この円偏光板POL−10を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−10について、上述した方法で評価を行った。
[比較例2]
(11−i.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−8を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸し、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R7からなるλ/4板QF−7を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度130℃〜140℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが128nmとなるように調整した。
(11−ii.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−7を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−11を得た。この円偏光板POL−11を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−11について、上述した方法で評価を行った。
[比較例3]
(12−i.4/λ板)
厚さ25μm、幅500mm、長さ500mの光学的に等方性のロール状シクロオレフィン樹脂フィルムを、透明支持体として用意した。
ステロイド変性ポリアミック酸の希釈液を、透明支持体上に連続塗布し、厚さ0.5μmの垂直配向膜を形成した。次に、透明支持体の長手方向に対して45゜の角度をなす方向に、連続的に垂直配向膜のラビング処理を実施した。
前記の垂直配向膜の上に、下記表1に示す組成を有する塗布液を、バーコーターを用いて連続的に塗布して、塗布液の膜を形成した。この塗布液の膜を乾燥し、加熱によってディスコティック液晶性分子を配向させた後で、紫外線を照射してディスコティック液晶性分子を固定して、厚さ1.7μmの光学異方性層を得た。これにより、透明支持体及び光学異方性層を備えるλ/4板QF−8を得た。この際、ディスコティック液晶性分子は、透明支持体の長手方向に対して45゜の角度をなす方向に光軸(ダイレクタ)を有するようにホモジニアス配向をしていた。また、λ/4板QF−8は、光軸(ダイレクタ)に直交する方向(即ち、透明支持体の長手方向に対して45゜の角度をなす方向)に遅相軸を有していた。
Figure 2021005098
Figure 2021005098
Figure 2021005098
Figure 2021005098
Figure 2021005098
(12−ii.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−8を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−12を得た。この円偏光板POL−12を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表1に示す通りであった。
円偏光板POL−12について、上述した方法で評価を行った。
[比較例4]
(13−i.λ/4板の製造)
延伸前フィルムPF−9を、当該延伸前フィルムの長手方向に自由一軸延伸し、その後、樹脂R6からなる層を剥離して、樹脂R5からなるλ/4板QF−9を製造した。この際、延伸温度及び延伸倍率は、延伸倍率1.6倍において、延伸温度145℃〜155℃の範囲内で、測定波長590nmでの面内位相差Reが134nmとなるように調整した。
(13−ii.貼り合わせ)
λ/4板QF−1の代わりにλ/4板QF−9を使用したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−13を得た。この円偏光板POL−13を偏光フィルム側から見た場合において、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−13について、上述した方法で評価を行った。
[比較例5]
(14−i.貼り合わせ)
偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqを下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−14を得た。この円偏光θh、θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−14について、上述した方法で評価を行った。
[比較例6]
(15−i.貼り合わせ)
偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度θh、及び、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度θqを下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1の工程(1−iv.貼り合わせ)と同様にして、偏光フィルム、粘着シート、λ/2板、粘着シート及びλ/4板をこの順に備える円偏光板POL−15を得た。この円偏光θh、θqは、表2に示す通りであった。
円偏光板POL−15について、上述した方法で評価を行った。
[結果]
上述した実施例及び比較例の構成を下記の表2に示し、結果を表3に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
COP:環状オレフィン樹脂
PPE:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)
SPS:シンジオタクチックポリスチレン
SMA:スチレン−マレイン酸共重合体樹脂
Discotic LC:ディスコティック液晶性分子
Re:測定波長590nmでの面内位相差
Rth:測定波長590nmでの厚み方向の位相差
θh:偏光フィルム側から円偏光板を見た場合に、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸が反時計回りになす角度
θq:偏光フィルム側から円偏光板を見た場合に、偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸が反時計回りになす角度
NZh:λ/2板のNZ係数
NZq:λ/4板のNZ係数
Figure 2021005098
Figure 2021005098
100 円偏光板
110 偏光フィルム
111 偏光フィルムの吸収軸
112 偏光フィルムの吸収軸をλ/2板の表面に投影した軸
113 偏光フィルムの吸収軸をλ/4板の表面に投影した軸
120 λ/2板
121 λ/2板の遅相軸
130 λ/4板
131 λ/4板の遅相軸
140 広帯域λ/4板

Claims (10)

  1. 偏光フィルムと、
    前記偏光フィルムの吸収軸に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、
    前記偏光フィルムの吸収軸に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板と、をこの順に備え、
    波長400nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(400)、波長550nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(550)、波長400nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、波長550nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、|Reh(400)/Reh(550)−Req(400)/Req(550)|が、0.10以下であり、
    面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内の進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzで表した場合、前記λ/2板及び前記λ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、前記λ/2板及び前記λ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzであり、
    前記λ/2板及び前記λ/4板が、延伸フィルムである、円偏光板。
  2. |Reh(400)/Reh(550)−Req(400)/Req(550)|が、0.06以下である、請求項1記載の円偏光板。
  3. 前記λ/2板及び前記λ/4板の一方のNZ係数が、−0.5〜0.0であり、
    前記λ/2板及び前記λ/4板の他方のNZ係数が、1.0〜1.3である、請求項1又は2記載の円偏光板。
  4. 前記λ/2板及び前記λ/4板の片方が、ポリフェニレンエーテル及びシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む樹脂からなる層を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の円偏光板。
  5. 前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系重合体との重量比が、30/70より大きく、40/60より小さい、請求項4記載の円偏光板。
  6. 前記λ/2板及び前記λ/4板の片方が、環状オレフィン重合体を含む樹脂からなる層を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の円偏光板。
  7. 前記円偏光板が、長尺のフィルムであって、
    前記偏光フィルムの吸収軸が、前記円偏光板の長手方向にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の円偏光板。
  8. 基準方向に対して75°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、
    前記基準方向に対して15°±5°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板とを備え、
    波長400nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(400)、波長550nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(550)、波長400nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、波長550nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、|Reh(400)/Reh(550)−Req(400)/Req(550)|が、0.10以下であり、
    面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内の進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzで表した場合、前記λ/2板及び前記λ/4板の一方の屈折率がnz≧nx>nyであり、前記λ/2板及び前記λ/4板の他方の屈折率がnx>ny≧nzであり、
    前記λ/2板及び前記λ/4板が、延伸フィルムである、広帯域λ/4板。
  9. 前記広帯域λ/4板が、長尺のフィルムであって、
    前記λ/2板及び前記λ/4板が、斜め延伸を含む製造方法により製造されたものである、請求項8記載の広帯域λ/4板。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の円偏光板、又は、請求項8若しくは9記載の広帯域λ/4板を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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