JP6303275B2 - 位相差フィルム積層体、位相差フィルム積層体の製造方法、位相差フィルム、製造方法、及び用途 - Google Patents

位相差フィルム積層体、位相差フィルム積層体の製造方法、位相差フィルム、製造方法、及び用途 Download PDF

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Description

本発明は、位相差フィルム積層体及びその製造方法、並びに、その位相差フィルム積層体を用いた位相差フィルムの製造方法及び用途に関する。
液晶表示装置等の表示装置において、例えばレターデーション(位相差)の補正等のために、位相差フィルムが用いられることがある。この位相差フィルムとしては、樹脂によって形成された長尺の延伸前フィルムを延伸し、当該フィルムに含まれる分子を配向させて得られる延伸フィルムが、簡便に製造でき、好ましい。
前記のような延伸フィルムからなる位相差フィルムについては、従来から多くの検討がなされている。例えば、特許文献1〜4のような技術が知られている。
位相差フィルムとしては、用途に応じ、波長分散性が様々に調節されたものが求められる。例えば、特許文献1〜3では、延伸フィルムとして、逆波長分散性を有する位相差フィルムを製造する技術が記載されている。ここで、逆波長分散性とは、位相差フィルムを透過する光の波長が長くなるにつれて、その光に与えられる面内方向のレターデーションが大きくなる性質のことを意味する。
国際公開第2010/074166号 特開2011−113004号公報 特開2010−78905号公報 特開平7−266414号公報
近年、液晶表示装置等の表示装置において、薄型化の要求が更に高くなっている。このため、位相差フィルムも、従来よりも更に薄くすることが求められている。
ところが、一般にフィルムを薄くすると強度が低くなり、破れ易くなる。特に、延伸フィルムからなる位相差フィルムにおいては、延伸前フィルムを延伸する工程において当該フィルムが容易に破れる傾向がある。そのため、従来の技術を用いて厚みが薄い位相差フィルムを製造しようとしても、安定した製造は難しかった。
また、逆波長分散性を有する位相差フィルムにおいては、例えばポリスチレンのような、負の固有複屈折値を有する材料を用いることがある。ところが、負の固有複屈折値を有する材料には、強度が低いものが多い。そのため、逆波長分散性を有する位相差フィルムは、薄型の位相差フィルムを安定して製造することが特に困難であった。
逆波長分散性を有する位相差フィルムを破れ難くする観点からは、例えば、ポリスチレンのように強度が低い材料と、別の強度が高い材料とを混合した組成物を用いることが考えられる。ところが、強度が高い材料を混合すると、相対的にポリスチレン等の負の固有複屈折値を有する材料の割合が低下するので、所望のレターデーションを得るためには位相差フィルムの厚みを厚くすることになり、薄型化が困難になる。
さらに、ポリスチレン等の負の固有複屈折値を有する材料と、強度が高い材料とを共に押し出し成形する場合、所望の押し出し温度が異なり、その結果、樹脂内に結晶化が発生して透明度を損なったり、樹脂内に熱分解による異物が発生して外観上の性状を損ねる場合があった。
また、例えば、位相差フィルムを複層構造にして、強度が低い層と強度が高い層とを組み合わせることにより、位相差フィルムを破れ難くすることも考えられる。ところが、複層構造にすると、層の数が増える分だけ厚みが厚くなるので、この場合も薄膜化は困難になる。
従って、本発明の目的は、従来よりも薄く良好な透明度及び外観上の性状を有する位相差フィルムを安定して製造しうる位相差フィルム積層体及びその製造方法、並びに、その位相差フィルム積層体を用いて製造された位相差フィルム及びその用途を提供することにある。
本発明者らは前記の課題を解決するべく検討した結果、ポリフェニレンエーテルと、所定の構造を有するポリスチレン系重合体とを所定の重量比で組み合わせた樹脂p1からなるP1層と、前記P1層に接して設けられたアクリル樹脂又は脂環式構造含有重合体を含む樹脂p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムは、強度が高く、延伸しても破れ難いことを見出した。また、この延伸前フィルムは、延伸することにより、P1層において十分なレターデーションが発現することを見出した。さらに、ポリスチレン系重合体として特定のものを用いた場合には、製品の透明度及び外観上の性状を良好なものとしうることを見出した。さらに、前記の延伸前フィルムを延伸した延伸フィルム(即ち、位相差フィルム積層体)から、P1層とP2層とを容易に剥がすことができることを見出した。本発明者はこれらの知見に基づき、前記の延伸フィルムからP2層を剥がすことにより、P1層を備える薄い位相差フィルムを得ることが可能であることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 正の固有複屈折値を有するポリフェニレンエーテル及び負の固有複屈折値を有するシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む樹脂p1からなるP1層と、前記P1層に接して設けられたアクリル樹脂又は脂環式構造含有重合体を含む樹脂p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなる位相差フィルム積層体であって、
前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系重合体との量比が「ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体」の重量比で25/75〜50/50であり、
前記ポリスチレン系重合体は、スチレン又はスチレン誘導体であるスチレン類単量体の2種類以上の共重合体であり、融点が200〜260℃であることを特徴とする位相差フィルム積層体。
〔2〕 〔1〕に記載の位相差フィルム積層体において、前記ポリスチレン系重合体の融点が230〜250℃であることを特徴とする位相差フィルム積層体。
〔3〕 前記「ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体」の重量比が35/65〜45/55であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の位相差フィルム積層体。
〔4〕 前記ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が15,000〜100,000であり、
前記ポリスチレン系重合体の重量平均分子量が130,000〜300,000である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体。
〔5〕 前記位相差フィルム積層体から前記P2層を除いた層部分において、波長450nmの光における面内方向のレターデーションRe450、波長550nmの光における面内方向のレターデーションRe550、及び波長650nmの光における面内方向のレターデーションRe650が、Re450<Re550<Re650の関係を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体。
〔6〕 前記位相差フィルム積層体から前記P2層を除いた層部分において、波長550nmの光におけるレターデーションRe550が110nm以上150nm以下である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体からP2層を剥離してなる位相差フィルム。
〔8〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体の製造方法であって、
正の固有屈折値を有するポリフェニレンエーテル、及び負の固有屈折値を有しシンジオタクチック構造を有しスチレン又はスチレン誘導体であるスチレン類単量体の2種類以上の共重合体であり融点が200〜260℃であるポリスチレン系重合体を含み、前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系重合体との量比が「ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体」の重量比で25/75〜50/50である樹脂p1、並びにアクリル樹脂又は脂環式構造含有重合体を含む樹脂p2を共押出して、延伸前フィルム積層体を得る工程と、
前記延伸前フィルムを延伸する工程とを有する、位相差フィルム積層体の製造方法。
〔9〕 前記延伸を、樹脂p1のガラス転移温度Tgに対し、Tg−20℃〜Tg+20℃のフィルム温度で行う、〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体から、P2層を剥離する、位相差フィルムの製造方法。
〔11〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体を備える表示装置。
〔12〕 〔7〕に記載の位相差フィルムを備える表示装置。
本発明の位相差フィルム積層体及びその製造方法によれば、従来よりも薄く良好な透明度及び外観上の性状を有する本発明の位相差フィルムを安定して製造しうる。
本発明の表示装置は、容易に製造でき、薄く、表示装置の透明度及び外観上の性状が良好なものとしうる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において、(メタ)アクリルといった表現は、アクリル、メタクリル又はこれらの組み合わせを意味する。例えば、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの組み合わせを意味する。また、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はこれらの組み合わせを意味する。
以下の説明において、MD方向(machine direction)は、製造ラインにおけるフィルムの流れ方向であり、通常は長尺のフィルムの長尺方向に一致する方向を表す。さらに、TD方向(traverse direction)は、フィルム面に平行な方向であって、MD方向に垂直な方向であり、通常は長尺のフィルムの幅方向に一致する方向を表す。
以下の説明において、「レターデーション」とは、別に断らない限り、面内方向のレターデーション(面内方向の位相差)のことを意味する。ここで、各測定波長における面内方向のレターデーションは、|nx−ny|×dで表される値である。また、厚み方向のレターデーションは、{|nx+ny|/2−nz}×dで表される値である。前記の式において、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表し、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
[1.位相差フィルム積層体]
本発明の位相差フィルム積層体は、樹脂p1からなるP1層と、P1層に接して設けられた樹脂p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなる複層構造のフィルムである。
[1−1.樹脂p1]
樹脂p1は、正の固有複屈折値を有するポリフェニレンエーテル及び負の固有複屈折値を有しシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む。ここで、固有複屈折値が正であるとは、延伸方向の屈折率が延伸方向に垂直な方向の屈折率よりも大きくなることを意味する。また、固有複屈折値が負であるとは、延伸方向の屈折率が延伸方向に垂直な方向の屈折率よりも小さくなることを意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算することもできる。
ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル又はフェニレンエーテル誘導体を重合して形成される構造単位を有する重合体である。通常は、フェニレンエーテル骨格を有する構造単位(以下、適宜「フェニレンエーテル単位」という。)を主鎖に有する重合体を、ポリフェニレンエーテルとして用いる。ただし、フェニレンエーテル単位におけるベンゼン環には、本発明の効果を著しく損なわない限り、置換基を有していてもよい。
中でも、ポリフェニレンエーテルとしては、下記式(I)で表されるフェニレンエーテル単位を含む重合体が好ましい。
Figure 0006303275
式(I)において、Qは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、低級アルキル基(例えば炭素数7個以下のアルキル基)、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、または、ハロ炭化水素オキシ基(ただし、そのハロゲン原子と酸素原子とを少なくとも2つの炭素原子が分離している基)を表す。中でも、Qとしてはアルキル基及びフェニル基が好ましく、特に炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。
式(I)において、Qは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基(例えば炭素数7個以下のアルキル基)、フェニル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、または、ハロ炭化水素オキシ基(ただし、そのハロゲン原子と酸素原子とを少なくとも2つの炭素原子が分離している基)を表す。中でも、Qとしては水素原子が好ましい。
ポリフェニレンエーテルは、1種類の構造単位を有する単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、2種類以上の構造単位を有する共重合体(コポリマー)であってもよい。
式(I)で表される構造単位を含む重合体が単独重合体である場合、当該単独重合体の好ましい例を挙げると、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位(「−(C(CH−O)−」で表される構造単位)を有する単独重合体が挙げられる。
式(I)で表される構造単位を含む重合体が共重合体である場合、当該共重合体の好ましい例を挙げると、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位(「−(CH(CH−O−)−」で表される構造単位)と組み合わせて有するランダム共重合体が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位以外の構造単位を含んでいてもよい。この場合、ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位とそれ以外の構造単位とを有する共重合体となる。ただし、ポリフェニレンエーテルにおけるフェニレンエーテル単位以外の構造単位の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない程度に少なくすることが好ましい。具体的には、ポリフェニレンエーテルにおけるフェニレンエーテル単位の含有量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
ポリフェニレンエーテルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、通常15,000以上、好ましくは25,000以上、より好ましくは35,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは85,000以下、より好ましくは70,000以下である。重量平均分子量を、前記範囲の下限値以上にすることによりP1層の強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、ポリフェニレンエーテルの分散性を高めてポリフェニレンエーテルとスチレン系重合体とを高いレベルで均一に混合することが可能となる。
ここで、重量平均分子量は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として温度135℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、標準ポリスチレン換算の値を採用する。
ポリフェニレンエーテルの製造方法に制限は無く、例えば、特開平11−302529号公報に記載の方法により製造してもよい。
樹脂p1が含むポリスチレン系重合体は、スチレン類単量体の2種類以上の共重合体である。スチレン類単量体とは、スチレン、又はスチレン誘導体である。即ち、ポリスチレン系重合体は、スチレン類単量体を重合して形成される構造単位(以下、適宜「スチレン類単位」という。)を含む重合体である。
スチレン誘導体とは、例えば、スチレンのベンゼン環またはα位若しくはβ位に置換基が置換したものが挙げられる。
スチレン類の例をとしては、スチレン、アルキルスチレン、ハロゲン化スチレン、ハロゲン化アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ビニル安息香酸エステル、及びこれらの水素化重合体が挙げられる。
アルキルスチレンの例としては、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、フェニルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルスチレンが挙げられる。
ハロゲン化スチレンの例としては、クロロスチレン、ブロモスチレン、及びフルオロスチレンが挙げられる。
ハロゲン化アルキルスチレンの例としては、クロロメチルスチレンが挙げられる。
アルコキシスチレンの例としては、メトキシスチレン及びエトキシスチレンが挙げられる。
スチレン類単量体の中でも、特に、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレンが好ましい。
樹脂p1が含むポリスチレン系重合体は、シンジオタクチック構造を有するものである。ここで、ポリスチレン系重合体がシンジオタクチック構造を有する、とは、ポリスチレン系重合体の立体化学構造がシンジオタクチック構造となっていることをいう。また、シンジオタクチック構造とは、炭素−炭素結合で形成される主鎖に対して、側鎖であるフェニル基が、フィッシャー投影式において、交互に反対方向に位置する立体構造のことをいう。
ポリスチレン重合体のタクティシティー(tacticity:立体規則性)は、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量されうる。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合により示すことができる。一般に、例えば、連続する構成単位が2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドとなる。この場合、前記シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体とは、ラセミダイアッドで通常75%以上、好ましくは85%以上のシンジオタクティシティーを有するか、若しくは、ラセミペンタッドで通常30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有することをいう。
ポリスチレン系重合体は、スチレンと、1種類以上のスチレン誘導体との共重合体であってもよく、2種類以上のスチレン誘導体の共重合体であってもよく、スチレンと、1種類以上のスチレン誘導体と、スチレン類単量体以外の単量体との共重合体であってもよく、2種類以上のスチレン誘導体と、スチレン類単量体以外の単量体との共重合体であってもよい。
ただし、ポリスチレン系重合体がスチレン類単位とスチレン類単位以外の構造単位とを含む共重合体である場合、ポリスチレン系重合体中のスチレン類単位以外の構造単位の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない程度に少なくすることが好ましい。具体的には、ポリスチレン系重合体におけるスチレン類単位の含有量は、通常80重量%以上、好ましくは83重量%以上、より好ましくは85重量%以上である。通常は、スチレン類単位の量をこのような範囲にすることで、製造される位相差フィルムに所望のレターデーションを発現させることができる。
ポリスチレン重合体における2種類以上のスチレン類単位のうちの、それぞれの単位の割合は、好ましくは5重量%、より好ましくは10重量%以上であり、且つ好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
ポリスチレン系重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。即ち、ポリスチレン系重合体は、構造単位の異なる複数の重合体の混合物であってもよい。
ポリスチレン系重合体の重量平均分子量は、通常130,000以上、好ましくは140,000以上、より好ましくは150,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは270,000以下、より好ましくは250,000以下である。このような重量平均分子量とすると、ポリスチレン系重合体のガラス転移温度を高めて、位相差フィルムの耐熱性を安定して改善することができる。
ポリスチレン系重合体のガラス転移温度は、通常85℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上である。このようにポリスチレン系重合体のガラス転移温度を高めることにより、樹脂p1のガラス転移温度を効果的に高め、ひいては位相差フィルムの耐熱性を安定して改善することができる。また、位相差フィルム積層体の製造を安定して容易に行う観点から、ポリスチレン系重合体のガラス転移温度は、通常160℃以下、好ましくは155℃以下、より好ましくは150℃以下である。
ポリスチレン系重合体の融点は、200〜260℃である。ポリスチレン系重合体の融点は、好ましくは230℃以上、より好ましくは220℃以上であり、一方好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。ポリスチレン系重合体の融点を前記範囲内とすることにより、樹脂p1及びp2を積層体に成形する際に、樹脂内での結晶化、熱分解による異物の発生等を抑制することができ、ひいては良好な外観上の性状及び光学的性能を有するフィルムを得ることができる。
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体は、例えば、不活性炭化水素溶媒中又は溶媒の不存在下において、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン類を重合することにより製造しうる(特開昭62−187708号公報参照)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については、例えば、特開平1−46912号公報に記載の方法により製造しうる。さらに、これらの水素化重合体は、例えば特開平1−178505号公報記載の方法により製造しうる。
樹脂p1において、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体との量比は、「ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体」の重量比で、25/75〜50/50である。かかる重量比は、好ましくは35/65以上、より好ましくは36.5/63.5以上、さらにより好ましくは38/62以上であり、一方好ましくは45/55以下、より好ましくは43.5/56.5以下、さらにより好ましくは42/58以下である。ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体との比率を前記範囲内とすることにより、ポリフェニレンエーテルの量を相対的に増やして、樹脂p1の強度を高めたり、P1層からP2層を剥がし易くしたりできる。また、ポリフェニレンエーテルが有する正の固有複屈折値と、ポリスチレン系重合体が有する負の固有複屈折値とがバランスされて、逆波長分散性を発現させることができる。さらに、ポリフェニレンエーテルの分散性を高めて、ポリフェニレンエーテルとスチレン系重合体とを高いレベルで均一に混合することが可能となる。特に、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体の重量比を36.5/63.5から45/55とすることにより、良好な逆波長分散を容易に達成することが可能となる。
本発明の効果を著しく損なわない限り、樹脂p1は、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、樹脂p1は、上述したポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体以外にも重合体を含んでいてもよい。ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体以外の重合体の量は、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体の合計量を100重量部として、15重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下が特に好ましい。
また、例えば、樹脂p1は、配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例を挙げると、層状結晶化合物;微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤:染料及び顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。また、配合剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めうる。例えば位相差フィルムの全光線透過率を85%以上に維持できる範囲である。
上述した中でも、配合剤としては、可撓性及び耐候性を向上させることができる点で、微粒子及び紫外線吸収剤が好ましい。
微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウムなどの無機粒子;ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどの有機粒子が挙げられる。中でも、有機粒子が好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。好適な紫外線吸収剤の例としては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられ、特に好適なものとしては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが挙げられる。
樹脂p1のガラス転移温度は、通常115℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。樹脂p1はポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体を組み合わせて含むので、ポリスチレン系重合体のみを含む樹脂と比べて、ガラス転移温度を向上させることができる。ガラス転移温度がこのように高いことにより、樹脂p1の配向緩和を低減することができるので、耐熱性に優れた位相差フィルムを実現できる。また、樹脂p1のガラス転移温度の上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
樹脂p1は、通常、ヘイズが小さい。これは、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレン系重合体の分散性が優れるために、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体とを容易に混練できるからである。具体的なヘイズの範囲は、位相差フィルムに求められる透明性の程度に応じて設定してもよい。例えば厚み1mmでの樹脂p1のヘイズの値は、通常10%以下、好ましくは5%以下であり、理想的には0%である。
[1−2.樹脂p2]
樹脂p2は、アクリル樹脂又は脂環式構造含有重合体を含む樹脂である。
[1−2−1.アクリル樹脂]
アクリル樹脂は、アクリル重合体を含む樹脂である。アクリル重合体とは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体の重合体を意味する。アクリル重合体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルなどの単独重合体及び共重合体が挙げられる。アクリル樹脂は強度が高く硬いため、P2層によってP1層を適切に保護できるので、位相差フィルム積層体の強度を高めることができる。
アクリル重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルを重合して形成される構造単位を含む重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール又はシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましく、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものがより好ましい。炭素数を前記のように小さくすることにより、位相差フィルム積層体の破断時の伸びを大きくすることができる。
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
さらに、前記の(メタ)アクリル酸エステルは、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、例えば水酸基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体のみの重合体であってもよく、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体とこれに共重合可能な単量体との共重合体でもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、並びに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、およびオレフィン単量体などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよい。その具体例としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどが挙げられる。
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられる。
アクリル重合体が共重合可能な単量体を含む場合、当該アクリル重合体における(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を重合して形成される構造単位の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
また、アクリル重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらのアクリル重合体のうち、ポリメタクリレートが好ましく、中でもポリメチルメタクリレートがより好ましい。
アクリル樹脂は、ゴム粒子を含んでいてもよい。ゴム粒子を含むことにより、アクリル樹脂の可撓性を高め、位相差フィルム積層体の耐衝撃性を向上させることができる。また、ゴム粒子によってP2層の表面に凹凸が形成され、当該P2層の表面における接触面積が減少するので、通常は、P2層の表面の滑り性を高めることができる。
ゴム粒子を形成するゴムとしては、例えば、アクリル酸エステル重合体ゴム、ブタジエンを主成分とする重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム等が挙げられる。アクリル酸エステル重合体ゴムとしては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を単量体単位の主成分とするものが挙げられる。これらの中でも、ブチルアクリレートを主成分としたアクリル酸エステル重合体ゴム及びブタジエンを主成分とする重合体ゴムが好ましい。
また、ゴム粒子には、2種類以上のゴムが含まれていてもよい。また、それらのゴムは、均一に混ぜ合わせられていてもよいが、層状になったものであってもよい。ゴムが層状になったゴム粒子の例としては、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとスチレンとをグラフト化したゴム弾性成分からなるコアと、ポリメチルメタクリレート及びメチルメタクリレートの一方又は両方とアルキルアクリレートとの共重合体からなる硬質樹脂層(シェル)とが、コア−シェル構造で層を形成している粒子が挙げられる。
ゴム粒子は、数平均粒子径が、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、0.3μm以下であることが好ましく、0.25μm以下であることがより好ましい。数平均粒子径を前記範囲内とすることにより、P2層の表面に適度な凹凸を形成して、位相差フィルム積層体の滑り性を向上させることができる。
ゴム粒子の量は、アクリル重合体100重量部に対して、好ましくは5重量部以上であり、好ましくは50重量部以下である。ゴム粒子の量を前記範囲内とすることにより位相差フィルム積層体の耐衝撃性を高めてハンドリング性を向上させることができる。
また、アクリル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、アクリル重合体及びゴム粒子以外の成分を含んでいてもよい。例えば、アクリル重合体以外に他の重合体を含んでいてもよい。ただし、本発明の利点を顕著に発揮させる観点からは、樹脂p2においてアクリル重合体以外の重合体の量は少ないことが好ましい。アクリル重合体以外の重合体の具体的な量は、例えばアクリル重合体100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。中でも、全く含まないことが特に好ましい。
また、アクリル樹脂は、例えば配合剤などを含んでいてもよい。配合剤の例としては、樹脂p1が含んでいてもよい配合剤と同様の例が挙げられる。なお、配合剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めることができる。
アクリル樹脂のガラス転移温度は、通常90℃以上、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常145℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下である。アクリル樹脂のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより樹脂ペレットを高温で乾燥する時のブロッキングを抑制できるので、水分の混入を防止でき、また、上限値以下にすることにより溶融押出で成形する際の温度を低くでき、フィルムに異物が混入することを防止できる。
[1−2−2.脂環式構造含有重合体を含む樹脂]
脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有重合体中の、脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、P2層の耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体の例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、好適である。
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。ここで「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
脂環式構造含有重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、位相差フィルム積層体の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は通常1.2以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.7以下である。分子量分布が3.5を超えると低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、高温曝露時の緩和が短時間で大きくなることが推定され、フィルムの安定性が低下するおそれがある。一方、分子量分布が1.2を下回るようなものは重合体の生産性の低下とコスト増につながり、実用性という観点からはあまり現実的でない。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下である。ガラス転移温度が130℃を下回ると高温下における耐久性が悪化する可能性があり、150℃を上回るものは、耐久性は向上するが通常の延伸加工が困難となる可能性がある。
脂環式構造含有重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、フィルムの性質の経時変化を小さくすることができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。脂環式構造含有重合体における飽和吸水率は、例えば、脂環式構造含有重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、脂環式構造含有重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;微粒子;界面活性剤などの添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、脂環式構造含有重合体を含む樹脂に含まれる脂環式構造含有重合体の量は、一般的には50重量%〜100重量%、または70重量%〜100重量%である。
[1−3.延伸前フィルム]
延伸前フィルムは、P1層とP2層とを有する複層構造のフィルムである。延伸前フィルムとしては、通常、等方性の原反フィルムを用いる。ただし、延伸処理を施したフィルムを延伸前フィルムとして用い、これにさらに延伸処理を施して位相差フィルム積層体を製造してもよい。
P1層は、樹脂p1からなる層である。延伸前フィルムは、P1層を2層以上備えていてもよいが、通常は1層だけを備える。
P1層の厚みは、延伸されたP1層を備える位相差フィルムにおいて、所望のレターデーションが発現するように適切な厚みに設定する。延伸前フィルムにおけるP1層の具体的な厚みは、十分なレターデーション及び機械的強度を得る観点からは、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上であり、柔軟性及びハンドリング性を良好にする観点からは、好ましくは800μm以下、より好ましくは600μm以下である。
P2層は、樹脂p2からなる層である。延伸前フィルムはP2層を1層のみ備えていてもよいが、2層以上備えることが好ましい。特に好ましい例を挙げると、第一のP2層と、P1層と、第二のP2層とをこの順に備える延伸前フィルムが挙げられる。このような延伸前フィルムは、強度が高いP2層によってP1層を両側から挟みこむようにして保護できるので、P1層からのブリードアウトを効果的に防止できる。ここでP1層からのブリードアウトとは、P1層に含まれる一部の成分(例えば配合剤)がP1層の表面に染み出す現象をいう。
位相差フィルムを製造する際には、位相差フィルム積層体からP2層を剥がすことになる。このため、通常は、位相差フィルムはP2層を備えないので、P2層のレターデーションは位相差フィルムのレターデーションに影響を与えない。したがって、P2層の厚みは、P1層とは異なり、レターデーションの発現性に制限されること無く設定しうる。延引前フィルムにおける具体的なP2層の厚みの範囲は、P1層の厚みに対し好ましくは0.3倍以上、より好ましくは0.5倍以上であり、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下である。延伸前フィルムが複数のP2層を有している場合は、それぞれの層が単層で前記範囲内の厚みを有することが好ましい。
P1層とP2層とは、他の層を介さずに直接に接する。P1層またはP2層を2層以上備える場合、P1層とP2層との組み合わせのうち少なくとも1組において直接に接することが好ましいが、全ての組において直接に接することが特に好ましい。P2層がP1層から剥がれやすいことを利用して、位相差フィルムを製造するときに、位相差フィルム積層体のP1層からP2層を剥がす操作を容易に行なうためである。
また通常、延伸前フィルムは、長尺のフィルムとして用意される。延伸前フィルムを長尺のフィルムとすることにより、位相差フィルム積層体も長尺のフィルムとして製造することができる。ここで、フィルムが「長尺」とは、その幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。長尺のフィルムは製造ラインにおいて、長尺方向に連続的に搬送しながら製造工程を行なうことができる。このため、位相差フィルムを製造する場合に、各工程の一部または全部をインラインで行うことが可能であるので、製造を簡便且つ効率的に行なうことできる。
延伸前フィルムにおいて、P1層の厚みのばらつきは全面で1μm以下であることが好ましい。これにより、位相差フィルムの色調のばらつきを小さくできる。また、位相差フィルムの長期使用後の色調変化を均一にできるようになる。
P1層の厚みのばらつきを全面で1μm以下とするためには、例えば共押出成形法を用いる場合には、(1)押出機内に目開きが20μm以下のポリマーフィルターを設ける;(2)ギヤポンプを5rpm以上で回転させる;(3)ダイス周りに囲い手段を配置する;(4)エアギャップを200mm以下とする;(5)フィルムを冷却ロール上にキャストする際にエッジピニングを行う;および(6)押出機として二軸押出機又はスクリュー形式がダブルフライト型の単軸押出機を用いる;を行うようにしてもよい。
P1層の厚みは、市販の接触式厚み計を用いて、フィルムの総厚を測定し、次いで厚み測定部分を切断し断面を光学顕微鏡で観察して、各層の厚み比を求めて、その比率より計算できる。また以上の操作をフィルムの長尺方向及び幅方向において一定間隔毎に行い、厚みの平均値Taveおよびばらつきを求めることができる。
ここで、厚みのばらつき(μm)は、Tave−Tmin、及びTmax−Taveのうちの大きい方をいう。また、Taveは上記で測定した測定値の算術平均値を表し、Tmaxは測定した厚みTの内の最大値を表し、Tminは最小値を表す。
また、延伸前フィルム中の残留溶剤の含有量は少なくすることが好ましい。そのための手段としては、(1)原料となる樹脂の残留溶剤を少なくする;(2)延伸前フィルムを成形する前に樹脂を予備乾燥する;などの手段が挙げられる。予備乾燥は、例えば樹脂をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などで行われる。乾燥温度は100℃以上が好ましく、乾燥時間は2時間以上が好ましい。予備乾燥を行うことにより、延伸前フィルムに含まれる残留溶剤を低減させることができ、さらに押し出されたシート状の樹脂の発泡を防ぐことができる。
延伸前フィルムの製造方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法;共流延法;及び樹脂フィルム表面に樹脂溶液をコーティングする等のコーティング成形法;などの方法が挙げられる。中でも、共押出成形法は、製造効率や、延伸前フィルムに溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、好ましい。
共押出成形法を採用する場合、延伸前フィルムは、例えば、樹脂p1と樹脂p2とを共押し出しすることにより得られる。共押出成形法には、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられるが、なかでも共押出Tダイ法が好ましい。また、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式およびマルチマニホールド方式があるが、厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式が特に好ましい。
共押出Tダイ法を採用する場合、Tダイを有する押出機における樹脂の溶融温度は、樹脂p1及び樹脂p2のガラス転移温度よりも、80℃高い温度以上にすることが好ましく、100℃高い温度以上にすることがより好ましく、また、180℃高い温度以下にすることが好ましく、150℃高い温度以下にすることがより好ましい。押出機での溶融温度を前記範囲の下限値以上にすることにより樹脂の流動性を十分に高くでき、上限値以下とすることにより樹脂が劣化を防止できる。
押出成形法ではダイスの開口部から押出されたシート状の溶融樹脂を冷却ドラムに密着させる。溶融樹脂を冷却ドラムに密着させる方法は、特に制限されず、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
冷却ドラムの数は特に制限されないが、通常は2本以上である。また、冷却ドラムの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。またダイスの開口部から押出された溶融樹脂の冷却ドラムへの通し方も特に制限されない。
冷却ドラムの温度により、押出されたシート状の樹脂の冷却ドラムへの密着具合が変化する。冷却ドラムの温度を上げると密着はよくなるが、温度を上げすぎるとシート状の樹脂が冷却ドラムから剥がれずに、ドラムに巻きつく不具合が発生するおそれがある。そのため、冷却ドラムの温度は、好ましくはダイスから押し出されてドラムに接触する層の樹脂のガラス転移温度をTgとすると、(Tg+30)℃以下、さらに好ましくは(Tg−5)℃〜(Tg−45)℃の範囲にする。そうすることにより滑りやキズなどの不具合を防止することができる。
[1−4.延伸]
延伸前フィルムを延伸することにより、本発明の位相差フィルム積層体が得られる。比較的強度が低いP1層に接して、強度が高いP2層が設けられているので、延伸前フィルム全体の強度は高くなっている。このため、延伸による破断を生じることなく延伸前フィルムを延伸できる。また、P1層がP2層で保護されるため、P1層とP2層との境界においてはP1層の成分がブリードアウトを生じることはない。したがって、インラインで位相差フィルム積層体を安定的に製造できるので、長尺の位相差フィルム積層体の効率的な製造が可能になる。
延伸の操作としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸);テンターを用いて幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸);縦一軸延伸と横一軸延伸とを順に行う方法(逐次二軸延伸);延伸前フィルムの長尺方向に対して斜め方向に延伸する方法(斜め延伸);等を採用してもよい。なかでも、斜め延伸を採用すると、P1層において通常は斜め方向に遅相軸が発現するので、長尺の位相差フィルムから矩形の製品を切り出す際の無駄が少なく、大面積の位相差フィルムを効率よく製造できるから、好ましい。ここで「斜め方向」とは、平行でもなく、垂直でもない方向を意味する。
斜め延伸の具体的な方法の例としては、テンター延伸機を用いた延伸方法を挙げることができる。かかるテンター延伸機としては、例えば、延伸前フィルムの左右(すなわち水平に搬送される延伸前フィルムをMD方向から観察した際のフィルム幅方向両端の左右)において、異なる速度の送り力、引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機が挙げられる。また、例えば、TD方向又はMD方向に左右等速度の送り力、引張り力又は引取り力を付加し左右移動する距離が同じで軌道を非直線とすることにより斜め方向の延伸を達成しうるテンター延伸機も挙げられる。さらに、例えば、移動する距離を左右で異なる距離とすることにより斜め方向の延伸を達成しうるテンター延伸機も挙げられる。
延伸を斜め方向に行う場合、延伸前フィルムの長尺方向に対して延伸方向がなす角度が、40°以上50°以下となる方向に延伸することが好ましい。これにより、長尺方向に対して40°以上50°以下の範囲に配向角を有する位相差フィルムが得られる。ここで「配向角」とは、位相差フィルムの長尺方向と、当該位相差フィルムの面内の遅相軸とがなす角である。
延伸する際のフィルム温度は、樹脂p1のガラス転移温度をTg(℃)とすると、Tg−20〜Tg+20℃であることが好ましく、Tg−15〜Tg+2℃であることがより好ましく、Tg−13〜Tg−2℃であることがさらに好ましい。また、延伸倍率は、例えば1.2〜3倍としてもよい。
なお、延伸の回数は、1回でもよく、2回以上であってもよい。
また、延伸前フィルムから位相差フィルム積層体を製造する際には、上述した以外の工程を行ってもよい。
例えば、延伸される前に延伸前フィルムに対して予熱処理を施してもよい。延伸前フィルムを加熱する手段としては、例えば、オーブン型加熱装置、ラジエーション加熱装置、又は液体中に浸すことなどが挙げられる。中でもオーブン型加熱装置が好ましい。予熱工程における加熱温度は、通常は延伸温度−40℃以上、好ましくは延伸温度−30℃以上であり、通常は延伸温度+20℃以下、好ましくは延伸温度+15℃以下である。なお延伸温度とは、加熱装置の設定温度を意味する。
また、例えば、得られた位相差フィルム積層体に対して固定化処理を施してもよい。固定処理における温度は、通常は室温以上、好ましくは「延伸温度−40℃」以上であり、通常「延伸温度+30℃」以下、好ましくは「延伸温度+20℃」以下である。
さらに、必要に応じて、位相差フィルム積層体の保護及び取り扱い性の向上のため、例えばマット層、ハードコート層、反射防止層、防汚層等の他のフィルムを貼り合せてもよい。
[1−5.位相差フィルム積層体の物性等]
位相差フィルム積層体は、P1層とP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなり、従って、延伸されたP1層及びP2層を備える(以下においては、文脈上明らかな場合は、延伸前のものであっても延伸後のものであっても、それぞれ単にP1層及びP2層という。)。P1層においては、延伸されたことにより、レターデーションが発現する。この際、P1層において発現したレターデーションは通常は逆波長分散性を有する。
逆波長分散性を発現する仕組みは、次の通りと推察される。
波長400nm〜700nmの可視領域においては、通常、正の固有複屈折値を有するポリフェニレンエーテルの波長分散性が、負の固有複屈折値を有するポリスチレン系重合体の波長分散性よりも大きくなっている。さらに、樹脂p1では、低波長側ではポリフェニレンエーテルの配向による影響よりもポリスチレン系重合体の配向による影響がやや大きく、かつ、長波長側に向かうにつれてポリスチレン系重合体の配向による影響がより大きく現れるように、その配合等が調整されている。
ここで、延伸前フィルムを延伸することにより発現するレターデーションは、通常、ポリフェニレンエーテルが配向することにより発現するレターデーションと、ポリスチレン系重合体が配向することにより発現するレターデーションとの和になる。そうすると、前記のように長波長側に向かうにつれて、ポリスチレン系重合体の影響が大きくなるように調整してあれば、P1層において逆波長分散性を発現させることができる。
P1層において逆波長分散性を有するレターデーションが発現するので、位相差フィルム積層体からP2層を除いた層部分においては、通常、Re450<Re550<Re650の関係が満たされる。ここで、位相差フィルム積層体からP2層を除いた層部分において、Re450は、波長450nmの光における面内方向のレターデーションを表し、Re550は、波長550nmの光における面内方向のレターデーションを表し、Re650は、波長650nmの光における面内方向のレターデーションを表す。これにより、通常、逆波長分散性を有する位相差フィルムを製造できる。
ただし、本発明の位相差フィルム積層体は、逆波長分散性を有するものに限定されず、設計上の要請に応じて、フラットな波長分散性を有するもの、又は順波長分散性を有するものであってもよい。波長分散性の調整は、例えば、樹脂p1におけるポリフェニレンエーテルとポリスチレン系重合体の重量比を調整することにより行いうる。
位相差フィルム積層体からP2層を除いた層部分において、測定波長550nmにおける面内方向のレターデーションは、110nm以上150nm以下であることが好ましい。これにより、本発明に係る位相差フィルムを1/4波長板として機能させることができ、例えば円偏光板等に適用することができる。
また、通常は、位相差フィルム積層体においてP2層にもレターデーションは発現する。しかし、位相差フィルムとして使用するときにはP2層は剥がされるので、P2層のレターデーションは本発明に係る位相差フィルムのレターデーションには影響しない。したがって、位相差フィルム積層体においてはP2層のレターデーションに制限されること無く自由にP2層の構成を設定することができるので、P2層の厚みを厚くして、位相差フィルム積層体の強度を強くすることができる。また、前記のように使用時にはP2層は剥がされるので、P2層を厚くしても位相差フィルムの薄膜化を妨げることは無い。通常、位相差フィルム積層体におけるP2層の厚みは、通常50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下である。
[2.位相差フィルム]
位相差フィルム積層体から、P2層を剥離することにより、本発明の位相差フィルムが得られる。P1層を構成する樹脂p1と、P2層を構成する樹脂p2との親和性が低いため、P1層からP2層は容易に剥離する。これを利用して、P1層を備える薄い位相差フィルムを安定して製造することができる。
本発明の位相差フィルムはP1層を備えるので、当該位相差フィルムのレターデーションは、逆波長分散性を有するものとしうる。本発明の位相差フィルムの具体的なレターデーションの範囲は、通常、位相差フィルム積層体からP2層を除いた層部分のレターデーションの範囲として上述したのと同様の範囲となる。
さらに、こうして製造される本発明の位相差フィルムはP2層を備える必要が無いので、厚みを薄くすることができる。具体的な厚みの範囲は、位相差フィルムに求められるレターデーションの値に応じて設定しうるものであり、通常400μm以下、好ましくは350μm以下、より好ましくは300μm以下である。なお、下限に特段の制限は無いが、通常25μm以上である。
本発明の位相差フィルムは、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定できる。
本発明の位相差フィルムのヘイズは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、位相差フィルムを組み込んだ表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
本発明の位相差フィルムは、ΔYIが5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。このΔYIが上記範囲にあると、着色がなく視認性が良好となる。ΔYIは、ASTM E313に準拠して、日本電色工業社製「分光色差計 SE2000」を用いて測定する。同様の測定を五回行い、その算術平均値にして求める。
本発明の位相差フィルムは、P1層の厚みのばらつきが、全面で1μm以下であることが好ましい。これにより、位相差フィルムを備える表示装置の色調のばらつきを小さくできる。また、長期使用後の色調変化を均一にできるようになる。これを実現するには、延伸前フィルムにおいて、P1層の厚みのばらつきを全面で1μm以下にすればよい。
本発明の位相差フィルムは、60℃、90%RH、100時間の熱処理によって、長尺方向及び幅方向において収縮するものであってもよいが、その収縮率は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。収縮率がこのように小さいことにより、高温高湿環境下でも位相差フィルムが収縮応力によって変形して、表示装置から剥離することを防止できる。
通常、本発明の位相差フィルムは、その幅方向の寸法を、例えば1000mm〜2000mmとしうる。また、本発明の位相差フィルムは、その長尺方向の寸法に制限は無く、長尺のフィルムであることが好ましい。
本発明の位相差フィルムが長尺のフィルムである場合、位相差フィルムは、長尺方向に対して40°以上50°以下の範囲に配向角を有することが好ましい。本発明の位相差フィルムを矩形の形状のフィルム片として製品にする場合、当該矩形の辺方向に対して斜め方向に遅相軸を有するものが求められることが多い。このような場合に、配向角が長尺方向に対して40°以上50°以下の範囲にあれば、長尺の位相差フィルムから矩形の製品を切り出すときに、長尺方向に対して平行又は直交する向きに辺を有する矩形のフィルム片を切り出せばよくなるので、製造効率が良く、また大面積化も容易である。
本発明の位相差フィルムには、本発明の効果を著しく損なわない限り、P1層に加え、任意の層を備えていてもよい。
例えば、位相差フィルムの表面に、位相差フィルムの滑り性を良くするマット層、ハードコート層、反射防止層、防汚層等を設けてもよい。
[3.表示装置]
本発明の表示装置は、前記本発明の位相差フィルム積層体、又は前記本発明の位相差フィルムを備える。
本発明の表示装置は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などの表示装置としうる。
液晶表示装置は、通常、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板がこの順に配置された液晶パネルと、液晶パネルに光を照射する光源とを備える。本発明の位相差フィルム又は本発明の位相差フィルム積層体を、例えば液晶セルと光源側偏光板との間、液晶セルと視認側偏光板との間などに配置することで、液晶表示装置の視認性を大幅に向上できる。
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げることができる。
液晶表示装置において、本発明の位相差フィルム又は本発明の位相差フィルム積層体は液晶セルまたは偏光板に貼り合わせるようにしてもよい。また、本発明の位相差フィルム又は本発明の位相差フィルム積層体は、2枚の偏光板のそれぞれに貼り合わせるようにしてもよい。さらに、本発明の位相差フィルム又は本発明の位相差フィルム積層体を2枚以上用いるようにしてもよい。貼り合わせには接着剤を用いてもよい。
偏光板は、例えば、偏光子とその両面に貼り合わせられた保護フィルムとからなるものを用いうる。この際、保護フィルムに代えて本発明の位相差フィルム又は本発明の位相差フィルム積層体を偏光子に直接貼り合せ、光学補償フィルム及び保護フィルムの両方の機能を有する層として本発明の位相差フィルム又は本発明の位相差フィルム積層体を用いてもよい。かかる構成をとることにより、保護フィルムが省略されて、液晶表示装置の薄型化、軽量化、低コスト化に貢献することができる。
さらに、例えば、本発明の位相差フィルム又は本発明の位相差フィルム積層体と円偏光フィルムとを組み合わせて輝度向上フィルムとし、この輝度向上フィルムを液晶表示装置に設けてもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲およびその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施しても良い。
また、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。
さらに、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧において行なった。
(破線の評価方法)
成膜した延伸前フィルム積層体50cm×50cmを観察し、フィルム面上に線状の凹凸の有無を確認した。線状の凹凸を確認できなければ「良」とし、線状の凹凸を確認できたときは、その本数を計上した。
(樹脂の結晶化の評価方法)
成膜した延伸前フィルム積層体の保護層を剥離し、フィルム面上およびフィルム内部に白濁した異物の有無を確認した。白濁した異物を確認できなければ「良」とし、白濁した異物を確認できたときを「不良」とした。
(配向角の測定方法)
AXOMETRICS社製エリプソメーター「AxoScan」を用いて、測定波長550nmにおいて、フィルムを幅方向に10等分した各点について遅相軸を測定し、その平均値と直交方向を配向角として算出した。
(Re450、Re550及びRe650並びに屈折率差Δnの測定方法)
AXOMETRICS社製エリプソメーター「AxoScan」を用いて測定波長450nmでの面内方向のレターデーションRe450(単位:nm)、測定波長550nmでの面内方向レターデーションRe550(単位:nm)、及び測定波長650nmでの面内方向のレターデーションRe650(単位:nm)並びに屈折率差Δn(即ちnx−nyの値)を、それぞれフィルムを幅方向に10等分した各点について測定し、その平均値として算出した。
[実施例1]
(1−1.樹脂p1の作製及び評価)
シンジオタクチックポリスチレン(出光興産社製「ザレック142ZE」、スチレン類単量体2種類のコポリマー、融点240℃、Mw180,000)60部と、ポリフェニレンエーテル(サビックイノベーティブプラスチックスジャパン社製「PPO640」、Mw43,000)40部とを、295℃において2軸押出機で混練し、透明な樹脂p1のペレットを作製した。
この樹脂p1のガラス転移温度Tgおよび融点Tmを測定したところ、Tg=134℃、Tm=237℃であった。
(1−2.延伸前フィルム積層体の製造)
前記樹脂p1のペレットを用いて、共押出成形により二種三層(2種類の樹脂により3層からなるフィルムを形成するタイプのもの)のフィルムを製造するために、フィルム成形装置を準備した。このフィルム成型装置は、ダブルフライト型のスクリューを備えた複数の一軸押出機を備える。
アクリル重合体及びゴム粒子を含むアクリル樹脂(住友化学社製「HT55Z」、ガラス転移温度108℃)のペレットを、フィルム成型装置の一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。
また、前記の樹脂p1のペレットを、フィルム成型装置の他方の一軸押出機に投入して、溶融させた。
溶融されたアクリル樹脂を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、フィルム成型装置のマルチマニホールドダイ(ダイスリップの表面粗さRa=0.1μm)の一方のマニホールドに供給した。
また、溶融された樹脂p1を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、フィルム成型装置の他方のマニホールドに供給した。
アクリル樹脂と樹脂p1とを、所望の厚みの樹脂層が得られるように押出し条件を調整しながら、前記マルチマニホールドダイから240℃で同時に押し出して、アクリル樹脂層/樹脂p1の層/アクリル樹脂層からなる3層構成のフィルム状にした。このようにフィルム状に共押し出しされた溶融樹脂を、表面温度115℃に調整された冷却ロールにキャストし、次いで表面温度120℃に調整された2本の冷却ロール間に通した。これにより、アクリル樹脂層(P2層)と、樹脂p1の層(P1層)と、アクリル樹脂層(P2層)とをこの順に備えた3層構造の延伸前フィルム積層体を得た(共押出工程)。
(1−3.延伸前フィルム積層体の評価)
この延伸前フィルム積層体について膜厚の測定を行い、アクリル樹脂層/樹脂p1の層/アクリル樹脂層の各膜厚を測定した結果、45μm/160μm/55μmとなった。
この延伸前フィルム積層体について、破線及び樹脂の結晶化の発生について、面状検査を目視にて行なった。その結果、破線、樹脂の結晶化ともに発生は確認できず、良好な面状のフィルム積層体を押出成膜することができた。
(1−4.位相差フィルム積層体の製造及び評価)
次いで、前記の延伸前フィルム積層体を、テンター延伸機を用いて、遅相軸がMD方向に対して50°傾いた方向になるように斜め延伸した。延伸時の温度は136℃、延伸倍率は2.0倍とした。これにより、総厚約120μmの長尺の位相差フィルム積層体を得た。
(1−5.位相差フィルムの製造)
得られた位相差フィルム積層体からP2層を手で剥離して、P1層のみからなる位相差フィルムを得た。手で容易に剥離できたので、剥離し易さは良好であった。
(1−6.位相差フィルムの評価)
この位相差フィルムの配向を確認したところ、配向角はMD方向に対して50°傾いていた。
また、得られた位相差フィルムについて、厚みを測定した結果70μmであった。また、上述した要領で面内方向のレターデーションRe450、Re550及びRe650並びに屈折率差Δnを測定した。結果を表1に示す。レターデーションは測定波長が長くなるほど大きくなる逆分散特性を示した。
[実施例2]
(2−1.樹脂p1の作製及び評価)
ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体の重量比を35/65に変えた他は実施例1の(1−1)と同様にして、透明な樹脂p1のペレットを得た。
この樹脂p1のガラス転移温度Tgおよび融点Tmを測定したところ、Tg=128℃、Tm=234℃であった。
(2−2.延伸前フィルム積層体の製造)
樹脂p1のペレットとして、実施例1の(1−1)で得たものに代えて、上記(2−1)で得たものを用いた他は、実施例1の(1−2)と同様にして、延伸前フィルム積層体を得た。
(2−3.延伸前フィルム積層体の評価)
この延伸前フィルム積層体について膜厚の測定を行い、アクリル樹脂層/樹脂p1の層/アクリル樹脂層の各膜厚を測定した結果、43μm/161μm/57μmとなった。
この延伸前フィルム積層体について、破線及び樹脂の結晶化の発生について、面状検査を目視にて行なった。その結果、破線、樹脂の結晶化ともに発生は確認できず、良好な面状のフィルム積層体を押出成膜することができた。
(2−4.位相差フィルム積層体の製造及び評価)
次いで、前記の延伸前フィルム積層体を、テンター延伸機を用いて、遅相軸がMD方向に対して50°傾いた方向になるように斜め延伸した。延伸時の温度は130℃、延伸倍率は2.0倍とした。これにより、総厚120μmの長尺の位相差フィルム積層体を得た。
(2−5.位相差フィルムの製造)
得られた位相差フィルム積層体からP2層を手で剥離して、P1層のみからなる位相差フィルムを得た。手で容易に剥離できたので、剥離し易さは良好であった。
(2−6.位相差フィルムの評価)
この位相差フィルムの配向を確認したところ、配向角はMD方向に対して50°傾いていた。
また、得られた位相差フィルムについて、厚みを測定した結果72μmであった。また、上述した要領で面内方向のレターデーションRe450、Re550及びRe650並びに屈折率差Δnを測定した。結果を表1に示す。レターデーションは測定波長にほとんど依存しないフラットな分散特性を示した。
[実施例3]
(3−1.樹脂p1の作製及び評価)
ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体の重量比を30/70に変えた他は実施例1の(1−1)と同様にして、透明な樹脂p1のペレットを得た。
この樹脂p1のガラス転移温度Tgおよび融点Tmを測定したところ、Tg=124℃、Tm=233℃であった。
(3−2.延伸前フィルム積層体の製造)
樹脂p1のペレットとして、実施例1の(1−1)で得たものに代えて、上記(3−1)で得たものを用いた他は、実施例1の(1−2)と同様にして、延伸前フィルム積層体を得た。
(3−3.延伸前フィルム積層体の評価)
この延伸前フィルム積層体について膜厚の測定を行い、アクリル樹脂層/樹脂p1の層/アクリル樹脂層の各膜厚を測定した結果、42μm/159μm/57μmとなった。
この延伸前フィルム積層体について、破線及び樹脂の結晶化の発生について、面状検査を目視にて行なった。その結果、破線、樹脂の結晶化ともに発生は確認できず、良好な面状のフィルム積層体を押出成膜することができた。
(3−4.位相差フィルム積層体の製造及び評価)
次いで、前記の延伸前フィルム積層体を、テンター延伸機を用いて、遅相軸がMD方向に対して50°傾いた方向になるように斜め延伸した。延伸時の温度は126℃、延伸倍率は2.0倍とした。これにより、総厚120μmの長尺の位相差フィルム積層体を得た。
(3−5.位相差フィルムの製造)
得られた位相差フィルム積層体からP2層を手で剥離して、P1層のみからなる位相差フィルムを得た。手で容易に剥離できたので、剥離し易さは良好であった。
(3−6.位相差フィルムの評価)
この位相差フィルムの配向を確認したところ、配向角はMD方向に対して50°傾いていた。
また、得られた位相差フィルムについて、厚みを測定した結果76μmであった。また、上述した要領で面内方向のレターデーションRe450、Re550及びRe650並びに屈折率差Δnを測定した。結果を表1に示す。レターデーションは測定波長が長くなるほど大きくなる順分散特性を示した。
[比較例1]
(C1−1.樹脂p1の作製及び評価)
シンジオタクチックポリスチレン(出光興産社製「ザレック130ZC」、スチレン類単量体1種類のホモポリマー、融点270℃、Mw180,000)60部と、ポリフェニレンエーテル(サビックイノベーティブプラスチックスジャパン社製「PPO640」、Mw43,000)40部とを、295℃において2軸押出機で混練し、透明な樹脂p1のペレットを作製した。
この樹脂p1のガラス転移温度Tgおよび融点Tmを測定したところ、Tg=133℃、Tm=273℃であった。
(C1−2.延伸前フィルム積層体の製造)
樹脂p1のペレットとして、実施例1の(1−1)で得たものに代えて、上記(C1−1)で得たものを用いたこと、及び同時押し出しの温度を280℃にしたこと以外は、実施例1の(1−2)と同様にして、延伸前フィルム積層体を得た。
(C1−3.延伸前フィルム積層体の評価)
この延伸前フィルム積層体について膜厚の測定を行い、アクリル樹脂層/樹脂p1の層/アクリル樹脂層の各膜厚を測定した結果、45μm/161μm/53μmとなった。
この延伸前フィルム積層体について、破線及び樹脂の結晶化の発生について、面状検査を目視にて行なった。その結果、破線の発生については確認することができなかったが、樹脂の結晶化については、フィルム端部にて樹脂の結晶化析出物を確認した。
(C1−4.位相差フィルム積層体の製造及び評価)
次いで、前記の延伸前フィルム積層体を、テンター延伸機を用いて、遅相軸がMD方向に対して50°傾いた方向になるように斜め延伸した。延伸時の温度は135℃、延伸倍率は2.0倍とした。これにより、総厚120μmの長尺の位相差フィルム積層体を得た。
(C1−5.位相差フィルムの製造)
得られた位相差フィルム積層体からP2層を手で剥離して、P1層のみからなる位相差フィルムを得た。手で容易に剥離できたので、剥離し易さは良好であった。
(C1−6.位相差フィルムの評価)
この位相差フィルムの配向を確認したところ、配向角はMD方向に対して50°傾いていた。
また、得られた位相差フィルムについて、厚みを測定した結果78μmであった。また、上述した要領で面内方向のレターデーションRe450、Re550及びRe650並びに屈折率差Δnを測定した。結果を表1に示す。レターデーションは測定波長が長くなるほど大きくなる逆分散特性を示した。
[比較例2]
(C2−1.延伸前フィルム積層体の製造)
同時押し出しの温度を300℃にしたこと以外は、比較例1の(C1−1)〜(C1−2)と同様にして、延伸前フィルム積層体を得た。
(C2−2.延伸前フィルム積層体の評価)
この延伸前フィルム積層体について膜厚の測定を行い、アクリル樹脂層/樹脂p1の層/アクリル樹脂層の各膜厚を測定した結果、45μm/161μm/53μmとなった。
この延伸前フィルム積層体について、破線及び樹脂の結晶化の発生について、面状検査を目視にて行なった。その結果、樹脂の結晶化の発生については確認することができなかったが、破線の発生については、50cm×50cmの範囲に7本の破線を確認した。
(C2−3.位相差フィルム積層体の製造及び評価)
次いで、前記の延伸前フィルム積層体を、テンター延伸機を用いて、遅相軸がMD方向に対して50°傾いた方向になるように斜め延伸した。延伸時の温度は135℃、延伸倍率は2.0倍とした。これにより、総厚120μmの長尺の位相差フィルム積層体を得た。
(C2−4.位相差フィルムの製造)
得られた位相差フィルム積層体からP2層を手で剥離して、P1層のみからなる位相差フィルムを得た。手で容易に剥離できたので、剥離し易さは良好であった。
(C2−5.位相差フィルムの評価)
この位相差フィルムの配向を確認したところ、配向角はMD方向に対して50°傾いていた。
また、得られた位相差フィルムについて、厚みを測定した結果70μmであった。また、上述した要領で面内方向のレターデーションRe450、Re550及びRe650並びに屈折率差Δnを測定した。結果を表1に示す。レターデーションは測定波長が長くなるほど大きくなる逆分散特性を示した。
Figure 0006303275
[検討]
上記実施例及び比較例の結果から明らかな通り、シンジオタクチックポリスチレン系重合体として所定の共重合体を用い、樹脂p1の融点が本願規定の範囲内である本願実施例においては、破線の発生及び樹脂の結晶化の発生の無い良好なフィルムが得られたのに対し、シンジオタクチックポリスチレン系重合体としてホモポリマーを用い、樹脂p1の融点が本願規定の範囲外である本願比較例においては、破線の発生又は樹脂の結晶化の発生が観察された。

Claims (12)

  1. 正の固有複屈折値を有するポリフェニレンエーテル及び負の固有複屈折値を有するシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む樹脂p1からなるP1層と、前記P1層に接して設けられたアクリル樹脂又は脂環式構造含有重合体を含む樹脂p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなる位相差フィルム積層体であって、
    前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系重合体との量比が「ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体」の重量比で25/75〜50/50であり、
    前記ポリスチレン系重合体は、スチレン又はスチレン誘導体であるスチレン類単量体の2種類以上の共重合体であり、融点が200〜260℃であり、
    前記ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が15,000〜100,000であることを特徴とする位相差フィルム積層体。
  2. 請求項1に記載の位相差フィルム積層体において、前記ポリスチレン系重合体の融点が230〜250℃であることを特徴とする位相差フィルム積層体。
  3. 前記「ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体」の重量比が35/65〜45/55であることを特徴とする請求項1又は2に記載の位相差フィルム積層体。
  4. 記ポリスチレン系重合体の重量平均分子量が130,000〜300,000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体。
  5. 前記位相差フィルム積層体から前記P2層を除いた層部分において、波長450nmの光における面内方向のレターデーションRe450、波長550nmの光における面内方向のレターデーションRe550、及び波長650nmの光における面内方向のレターデーションRe650が、Re450<Re550<Re650の関係を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体。
  6. 前記位相差フィルム積層体から前記P2層を除いた層部分において、波長550nmの光におけるレターデーションRe550が110nm以上150nm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体からP2層を剥離してなる位相差フィルム。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体の製造方法であって、
    正の固有屈折値を有するポリフェニレンエーテル、及び負の固有屈折値を有しシンジオタクチック構造を有しスチレン又はスチレン誘導体であるスチレン類単量体の2種類以上の共重合体であり融点が200〜260℃であるポリスチレン系重合体を含み、前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系重合体との量比が「ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系重合体」の重量比で25/75〜50/50であり、前記ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が15,000〜100,000である樹脂p1、並びにアクリル樹脂又は脂環式構造含有重合体を含む樹脂p2を共押出して、延伸前フィルム積層体を得る工程と、
    前記延伸前フィルムを延伸する工程とを有する、位相差フィルム積層体の製造方法。
  9. 前記延伸を、樹脂p1のガラス転移温度Tgに対し、Tg−20℃〜Tg+20℃のフィルム温度で行う、請求項8に記載の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体から、P2層を剥離する、位相差フィルムの製造方法。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体を備える表示装置。
  12. 請求項7に記載の位相差フィルムを備える表示装置。
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