JP6330367B2 - 光学積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学積層体の製造方法に関する。
液晶表示装置は、高画質、薄型、軽量、低消費電力などの特徴をもち、例えばテレビジョン、パーソナルコンピューター、カーナビゲーターなどに広く用いられている。液晶表示装置は、通常、液晶セルの上下に透過軸が直交するように2枚の偏光子を備え、液晶セルに電圧を印加することにより液晶分子の配向を変化させて画面に画像を表示させるようになっている。その中でもツイステッドネマチックモードの液晶表示装置では、電圧印加時に液晶分子が垂直配向状態となり、黒表示となる構成が多い。また、インプレーンスイッチング(IPS)モードの液晶表示装置では、電圧無印加時に液晶分子が一定の方向に配向し、電圧印加時に配向方向が45°回転して、白表示となる構成が多い。
2枚の偏光子の透過軸が上下方向と左右方向を指して直交するように配置された液晶表示装置では、上下左右方向から画面を見るときは、十分なコントラストが得られる。しかし、上下左右から外れた方向から画面を斜めに見ると、入射側偏光子の透過軸と出射側偏光子の透過軸とが見かけ上直交でなくなるために、直線偏光が完全に遮断されずに光洩れが発生し、十分な黒が得られず、コントラストが低下することがある。このために、液晶表示装置に光学補償手段を設けて、画面のコントラストの低下を防止する試みがなされている。
特許文献1で用いられているようなスチレン系樹脂は、高い透明性を有し、負の固有複屈折値を有することなどから、所望の光学特性を発現するために有効な材料と考えられる。しかしながら、スチレン系樹脂を用いたフィルムは一般に非常に脆く、また所望の光学特性を発現させるために延伸する際の連続搬送中に破断やしわが生じることが多かった。このため、スチレン系樹脂を用いたフィルムは延伸加工性が良好でなく、加工後に得られる延伸フィルムの耐久性が低かった。
そこで、前記のような延伸加工性及び耐久性を改善するための技術が、特許文献2および特許文献3において提案されている。
特開2007−72201号公報 国際公開第2009/069469号 特開2011−76026号公報
省スペース化やコスト削減の観点から、光学用途に使用されるフィルムには薄膜化が要求される。ところが、本発明者の検討によれば、上記特許文献記載の技術では得られる延伸フィルムの厚みを十分に薄くすることができず、延伸時や搬送時にフィルムが破断したり、皺が生じたりする場合があることが分かった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、厚みが薄く、搬送性及び耐久性に優れる光学積層体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決して目的を達成するために鋭意検討した結果、透明な樹脂からなる樹脂層aと、固有複屈折が負である樹脂からなる樹脂層bと、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂からなる樹脂層cとを、この順に備え、前記樹脂層aと前記樹脂層cの厚さの比が特定の範囲にある延伸前フィルムを共延伸し、次いで、前記樹脂層cが延伸されてなる層を剥離することで上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
かくして本発明によれば、下記[1]〜[7]が提供される。
[1] 透明な樹脂Aからなる樹脂層aと、
固有複屈折が負である樹脂Bからなる樹脂層bと、
脂環式構造を有する重合体を含む樹脂Cからなる樹脂層cとを、この順に備え、
前記樹脂層aと前記樹脂層cの厚さの比が1/8〜1/4である延伸前フィルムを、
共延伸することにより、
前記樹脂層aが延伸されて形成される樹脂層Aと、
前記樹脂層bが延伸されて形成される樹脂層Bと、
前記樹脂層cが延伸されて形成される樹脂層Cとを、この順に備える延伸フィルムを得る延伸工程、および、
前記延伸フィルムから前記樹脂層Cを剥離する剥離工程を含む、
光学積層体の製造方法。
[2] 波長550nmの光で測定した前記樹脂層Aの面内レターデーション及び前記樹脂層Bの面内レターデーションをそれぞれReA、ReBとしたとき、|ReA|<|ReB|を満たす、[1]記載の製造方法。
[3] |ReA|が20nm以下である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記樹脂A及び前記樹脂Bのガラス転移温度をそれぞれTgA(℃)、TgB(℃)としたとき、TgB>TgA+20(℃)である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記樹脂Aがメタクリル重合体を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記樹脂Bがスチレン系重合体を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記樹脂A、前記樹脂Bおよび前記樹脂Cを共押出することにより前記延伸前フィルムを得ることを含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、製造工程におけるフィルムの破断、皺及びカールの発生が抑制されるので、厚みが薄く、耐久性に優れる光学積層体を製造することができる。
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
なお、以下の説明において、「樹脂層a」の符号「a」、「樹脂層b」の符号「b」、「樹脂層c」の符号「c」、「樹脂層A」の符号「A」、「樹脂層B」の符号「B」および「樹脂層C」の符号「C」は、当該符号が付された要素を他の要素と区別するための符号であり、要素の区別以外の意味を有するものではない。また、以下の説明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」を意味する。
本発明の光学積層体の製造方法は、樹脂層aと、樹脂層bと、樹脂層cとをこの順に備える延伸前フィルムを共延伸することにより、前記樹脂層aが延伸されて形成される樹脂層Aと、前記樹脂層bが延伸されて形成される樹脂層Bと、前記樹脂層cが延伸されて形成される樹脂層Cとを、この順に備える延伸フィルムを得る延伸工程、および、前記延伸フィルムから前記樹脂層Cを剥離する剥離工程を含む。
[延伸前フィルム]
本発明に用いられる延伸前フィルムを構成する樹脂層aは、透明な樹脂Aからなる層である。ここで樹脂が透明であるとは、厚み1mmの試験片を形成して測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である樹脂をいう。
樹脂Aとしては通常は熱可塑性樹脂を用いる。樹脂Aに含まれる重合体の例を挙げると、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリカーボネート重合体、ポリエステル重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリアリレート重合体、ポリイミド重合体、鎖状ポリオレフィン重合体、ポリエチレンテレフタレート重合体、ポリスルホン重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ジアセチルセルロース重合体、トリアセチルセルロース重合体、脂環式オレフィン重合体などを挙げられる。これらの中でも、樹脂Aとしては、脂環式オレフィン重合体及びメタクリル重合体が好ましく、メタクリル重合体がより好ましい。樹脂Aがメタクリル重合体であれば、本発明の製造方法で得られる光学積層体全体で光弾性を3×10−12/N以下にすることができ、額縁故障などを防止できる。
メタクリル重合体は、メタクリル酸アルキルエステル単位を主モノマー単位として含む重合体である。メタクリル重合体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体;アルキル基の水素がOH基、COOH基若しくはNH基などの官能基によって置換された炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体;又はメタクリル酸アルキルエステルと、スチレン、酢酸ビニル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステルなどのメタクリル酸アルキルエステル以外のエチレン性不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステルがメタクリル酸アルキルエステルとの共重合に好適である。好適なメタクリル重合体では、官能基によって置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位を、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99.9重量%、さらに好ましくは50〜99.5重量%含有し、アクリル酸アルキルエステル単位を好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜50重量%含有する。
樹脂Aに含まれる重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあることにより、得られる光学積層体の機械的強度及び成型加工性などが高度にバランスされる。
樹脂Aがメタクリル重合体を含む場合は、添加剤としてゴム粒子をさらに含むことが好ましい。樹脂Aにゴム粒子が含まれることにより、フィルムの搬送や巻取りの際のハンドリング性を高めることができる。
前記ゴム粒子としては、アクリル系のものが好ましい。アクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸アルキルエステルを主成分とし、多官能モノマーの存在下に重合させて得られるゴム弾性を有する粒子である。このようなゴム弾性を有する粒子が単層で形成されたものでもよいし、ゴム弾性層を少なくとも1層有する多層構造体であってもよい。多層構造のアクリル系ゴム粒子としては、上記の如きゴム弾性を有する粒子を核とし、その周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったもの、硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体を核とし、その周りを前記の如きゴム弾性を有するアクリル系重合体で覆ったもの、また硬質の核の周りを、ゴム弾性を有するアクリル系重合体で覆い、さらにその周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったものなどが挙げられる。これらのゴム粒子は、弾性層で形成される粒子の平均直径が通常50〜400nm程度の範囲にある。ゴム粒子の含有量は、メタクリル重合体100重量部あたり、通常5〜50重量部程度である。
樹脂Aには、上記のゴム粒子の他に、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含ませてもよい。これらの添加剤の量は、樹脂Aに含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。
樹脂Aのガラス転移温度TgAは、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、樹脂Aのガラス転移温度TgAの上限値は、通常140℃以下である。
樹脂層aの厚さは、好ましくは2〜15μm、より好ましくは5〜10μmである。樹脂層aの厚さがこの範囲であると、フィルムの搬送や巻取りの際のハンドリング性に優れ、かつ、本発明の製造方法で得られる光学積層体の厚さを薄いものとできる。
本発明に用いられる延伸前フィルムを構成する樹脂層bは、固有複屈折が負である樹脂Bからなる層である。固有複屈折値が負の樹脂Bとは、分子の配向方向の屈折率が他の方向の屈折率よりも小さい樹脂のことであり、例えば、それを用いた成形体を延伸した場合に延伸方向の屈折率が最も小さくなる樹脂である。固有複屈折値(Δn)とは、下記式[1]により算出される値である。
[1] Δn=(2π/9)(Nd/M){(na+2)/na}(α1−α2)
(式[1]において、πは円周率、Nはアボガドロ数、dは密度、Mは分子量、naは平均屈折率、α1は高分子の分子鎖軸方向の分極率、α2は高分子の分子鎖軸と垂直な方向の分極率を表す。)
樹脂Bとしては通常は熱可塑性樹脂を用いる。樹脂Bに含まれる重合体の例を挙げると、スチレン系重合体、ポリアクリロニトリル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体、あるいはこれらの多元共重合ポリマーなどが挙げられる。前記のスチレン系重合体は、スチレン単位構造を繰り返し単位の一部又は全部として有する重合体であり、例えば、ポリスチレン;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン系単量体と、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル等のその他の単量体との共重合体などが挙げられる。これらの中でも位相差発現性が高いという観点からスチレン系重合体が好ましく、中でもポリスチレン、スチレンとN−フェニルマレイミドとの共重合体又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。
なお、これらの重合体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂Bに含まれる重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあることにより、本発明の光学積層体の機械的強度及び成型加工性などが高度にバランスされる。
樹脂Bには、必要に応じて、樹脂Aと同様に公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含ませてもよい。これらの添加剤の量は、樹脂Bに含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。
樹脂Bのガラス転移温度TgBは、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、中でも好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度TgBがこのように高いことにより、樹脂Bの配向緩和を低減することができる。また、ガラス転移温度TgBの上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
樹脂Aのガラス転移温度TgA(℃)と、樹脂Bのガラス転移温度TgB(℃)との差は、TgB>TgA+8(℃)であることが好ましく、TgB>TgA+20(℃)であることがより好ましく、TgB>TgA+24(℃)であることがさらに好ましい。また、通常、TgB<TgA+50(℃)である。
また、樹脂Aのビカット軟化温度をTegA(℃)、樹脂Bのビカット軟化温度をTegB(℃)とした場合、TegB>TegA+15(℃)であることが好ましく、TegB>TegA+20(℃)であることがより好ましく、TegB>TegA+25(℃)であることがさらに好ましい。また、通常、TegB<TegA+50℃である。
本発明に用いる延伸前フィルムを共延伸するとき、温度TgB(℃)付近で延伸すると、得られる延伸フィルムにおいて樹脂Bの複屈折特性を十分かつ均一に発現させることができる。このとき、樹脂Bのガラス転移温度TgB及びビカット軟化温度TegBを前記のように樹脂Aのガラス転移温度TgA及びビカット軟化温度TegAよりも高くしておくと、樹脂層aは、そのガラス転移温度TgA又はビカット軟化温度TegAよりも高い温度で延伸されることになるので、重合体はほとんど配向せず、実質的に無配向の状態にできる。
樹脂層bの厚さは、好ましくは10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。樹脂層bの厚さがこの範囲であると、延伸前フィルムを延伸することにより、厚さが薄く、かつ高い光学補償機能を有する光学積層体を得ることができる。
通常、樹脂層aと樹脂層bとは、他の層を介さずに直接に接するが、本発明の効果を著しく損なわない限り、例えば接着層等の層を介して間接的に接するようになっていてもよい。
本発明に用いられる延伸前フィルムを構成する樹脂層cは、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂Cからなる層である。脂環式構造を有する重合体とは、主鎖及び側鎖の一方又は両方に脂環式構造を有する重合体である。脂環式構造を有する重合体を含む樹脂は、透明性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などに優れる。このため、樹脂層cで樹脂層bを保護することにより、樹脂層bの破損等を安定して防止できる。また、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂は可撓性が高いため、延伸前フィルムおよびこれを延伸してなる延伸フィルムの耐衝撃性を改善することもできる。さらに、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂は、通常は固有複屈折が負である樹脂Bとの親和性が低いので、樹脂層bが延伸されて形成される樹脂層Bと、樹脂層cが延伸されて形成される樹脂層Cとの接着性も低い。このため、樹脂層Cは樹脂層Bから容易に剥離させることが可能であるので、本発明の製造方法において、延伸フィルムからC層を剥離させて光学積層体を製造する場合に、C層を剥離させる際にB層が破損することを安定して防止できる。
前記の脂環式構造を有する重合体の中でも、機械強度および耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環構造としては、例えば、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度および耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。
脂環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4個以上、好ましくは5個以上であり、通常30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下であるときに、機械強度、耐熱性、及び基材の成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造を有する重合体における、脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、通常100重量%以下である。脂環式構造を有する重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が前記範囲にあると、透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造を有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン構造を有する単量体(以下、ノルボルネン系単量体という)の単独重合体またはノルボルネン系単量体と他の単量体との共重合体である。具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体若しくはノルボルネン系単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン系単量体の付加重合体若しくはノルボルネン系単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。なお、「(共)重合」とは、重合及び共重合のことを意味する。
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。なお、ノルボルネン系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ここで、ノルボルネン構造を有する単量体が有する置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。さらに、一つの単量体に置換する置換基の数も、1個でもよく、2個以上でもよい。極性基の種類としては、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。透湿度が小さい位相差フィルム積層体を得るためには、極性基の量が少ない方が好ましく、極性基を持たないことがより好ましい。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。なお、これらの他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン系単量体の開環重合体、および、ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。なお、これらの他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン系単量体の付加重合体、および、ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
上述したノルボルネン系重合体の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位X及びYの含有量が、ノルボルネン系重合体の繰り返し単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる光学積層体を得ることができる。
脂環式構造を有する重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
脂環式構造を有する重合体の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(但し、重合体樹脂がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量Mwがこのような範囲にあるときに、本発明の位相差フィルム積層体の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ、好適である。また、本発明の位相差フィルム積層体からの剥離が容易である。
樹脂Cは、粒子を含んでいてもよい。脂環式構造を有する重合体を含む樹脂が粒子を含むことにより、樹脂層cおよび樹脂層Cの表面に凹凸が形成され、当該層の表面における接触面積が減少する。このため、樹脂層cおよび樹脂層Cの表面の滑り性を高めることができ、ひいては本発明の製造方法におけるフィルムのハンドリング性を向上させることが可能である。
粒子としては、無機粒子、有機粒子のいずれを用いてもよい。無機粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、シリカが好ましい。シリカの粒子は、透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、本発明の位相差フィルム積層体の外観を良好に保つことができるからである。また、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂への分散性および分散安定性が良好だからである。
粒子の平均一次粒子粒径は、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、通常1.0μm以下、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。なお、粒子の平均一次粒子粒径は、レーザー回折法で測定された粒度分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(メジアン径D50)として測定できる。
樹脂Cが含む粒子の量は、脂環式構造を有する重合体を100重量部として、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
樹脂Cには、必要に応じて、樹脂Aと同様に公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含ませてもよい。これらの添加剤の量は、樹脂Cに含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。
樹脂Cのガラス転移温度TgCの下限は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、上限は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
樹脂Aのガラス転移温度TgA(℃)と、樹脂Bのガラス転移温度TgB(℃)と、樹脂Cのガラス転移温度TgC(℃)の関係は、TgB≧TgC≧TgAであることが好ましい。
また、樹脂Aのビカット軟化温度TegA(℃)と、ビカット軟化温度TegB(℃)と、樹脂Cのビカット軟化温度TegC(℃)の関係は、TegB≧TegC≧TgeAであることが好ましい。
本発明に用いる延伸前フィルムを共延伸するとき、温度TgB(℃)付近で延伸すると、得られる延伸フィルムにおいて樹脂Bの複屈折特性を十分かつ均一に発現させることができる。このとき、樹脂Cのガラス転移温度TgC(℃)及びビカット軟化温度TegC(℃)を前記のように、樹脂Bのガラス転移温度TgB(℃)及びビカット軟化温度TegB(℃)以下、かつ樹脂Aのガラス転移温度TgA(℃)及びビカット軟化温度TegA(℃)以上としておくと、共延伸時にフィルムの破断等を防止でき、安定に延伸を行うことができる。
本発明の光学積層体の製造方法においては、後述する延伸フィルムから、樹脂層cが延伸されて形成される樹脂層Cを剥離することになる。このため、通常は、光学積層体は樹脂層Cを備えないので、樹脂層Cのレターデーションは位相差フィルムのレターデーションに影響を与えない。したがって、樹脂層cの厚さは、樹脂層aおよび樹脂層bとは異なり、レターデーションの発現性に制限されること無く設定しうる。樹脂層cの厚さは、好ましくは20〜60μm、より好ましくは30〜50μmである。樹脂層cの厚さがこの範囲であると、フィルムの延伸時や搬送時にフィルムが破損等することを抑制できる。
また、樹脂層aと樹脂層cの厚さの比は、1/8〜1/4であり、3/20〜1/5であることが好ましい。樹脂層aと樹脂層cの厚さの比がこの範囲であると、フィルムの両面にかかる応力のバランスを取ることができるので、フィルムの延伸時や搬送時にフィルムがカールしたり、破損したりすることを抑制できる。
通常、樹脂層bと樹脂層cとは、他の層を介さずに直接に接する。樹脂層bが延伸されて形成される樹脂層Bと、樹脂層cが延伸されて形成される樹脂層Cとの接着性が低いことを利用して、後述する剥離工程において樹脂層Cを容易に剥離できるようにするためである。
延伸前フィルムは、長尺のフィルムであることが好ましい。ここで「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。また、長尺の延伸前フィルムの幅は、好ましくは300〜2,000mmである。
延伸前フィルムは、その製法によって特に制限されない。製法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法;共流延法;及び樹脂フィルム表面に樹脂溶液をコーティングする等のコーティング成形法;などの方法が挙げられる。中でも、共押出成形法は、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、好ましい。
共押出成形法を採用する場合、延伸前フィルムは、例えば、前記の樹脂Aと、前記の樹脂Bと、前記の樹脂Cとを共押し出しすることにより得られる。共押出成形法としては、共押出Tダイ法が好ましい。また、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式およびマルチマニホールド方式があるが、厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式が特に好ましい。
[延伸工程]
延伸工程では、前記の延伸前フィルムを共延伸することにより、延伸フィルムを得る。共延伸により、前記樹脂層a、前記樹脂層bおよび前記樹脂層cは延伸されて、それぞれ樹脂層A、樹脂層Bおよび樹脂層Cが形成される。したがって、前記延伸フィルムは、樹脂層Aと、樹脂層Bと、樹脂層Cとを、この順に備える。
共延伸により、得られる延伸フィルムに所望の光学特性が発現する。共延伸における総延伸倍率は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上である。ここで、総延伸倍率とは、一方向のみに延伸する延伸処理においては当該一方向への延伸倍率の事をいい、二方向以上の延伸方向に延伸する延伸処理においては各延伸方向への延伸倍率の積のことをいう。
延伸前フィルムを延伸する方法は特に制限はなく、従来公知の方法を適用し得る。具体的には、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法、テンターを用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔が開かれて縦方向の延伸と同時にガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後にその両端部がクリップ把持してテンターを用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機や、横又は縦方向に左右等速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにして、移動する距離が同じで延伸角度θを固定できるようにした若しくは移動する距離が異なるようにしたテンター延伸機を用いて斜め延伸する方法:が挙げられる。
延伸前フィルムの延伸温度は、前記樹脂Bのガラス転移温度をTgB(℃)に対し、TgB−10〜TgB+20(℃)が好ましく、TgB−5〜TgB+15(℃)の範囲であることがより好ましい。延伸前フィルムにおいて、前記樹脂Aのガラス転移温度TgAを前記樹脂Bのガラス転移温度TgBより低くし、かつ延伸温度を上記の範囲とすることにより、前記樹脂層aが延伸されて形成される樹脂層Aの面内レターデーション|ReA|と、前記樹脂層bが延伸されて形成される樹脂層Bの面内レターデーション|ReB|との間で、|ReA|<|ReB|の関係を満たすことができる。また、|ReA|を20nm以下とすることができる。|ReA|および|ReB|がこれらの関係を満たすことにより、本発明の製造方法で得られる光学積層体を位相差フィルム等に用いた場合、良好な光学的特性を得ることができる。なお、面内レターデーションReとは、面内の遅相軸方向の屈折率nxと、面内で前記遅相軸に直交する方向の屈折率nyとの差に、フィルム(又は各層)の平均厚みDを乗算した値、すなわち、Re=(nx−ny)×Dである。また、A層及びB層が2層以上存在する場合、前記のA層の面内レターデーション|ReA|及びB層の面内レターデーション|ReB|とは、各A層及びB層の面内レターデーションの合計を指す。さらに、レターデーションの評価は、特に断らない限り、波長550nmの光に対して行なうものとする。
[剥離工程]
前記延伸工程で得られた延伸フィルムから、樹脂層Cを剥離することにより、光学積層体が得られる。樹脂層Bを構成する樹脂Bと、樹脂層Cを構成する樹脂Cとの親和性が低いため、樹脂層Bから樹脂層Cは容易に剥離する。これを利用して、樹脂層Aおよび樹脂層Bを備える薄い光学積層体を安定して製造することができる。
[光学積層体]
本発明の製造方法で得られる光学積層体は、前記樹脂層Aおよび樹脂層Bをそれぞれ少なくとも1層ずつ備えるものであり、その特性は特に限定されないが、樹脂層Aの面内レターデーション|ReA|と、樹脂層Bの面内レターデーション|ReB|との間で、|ReA|<|ReB|の関係を満たすことが好ましい。|ReA|<|ReB|とすることにより、光学的に調整を行った樹脂層Bの光学特性を効果的に利用することができる。
樹脂層Aは、実質的に無配向な層であることが好ましい。実質的に無配向とは、樹脂層A内において直交するx方向とy方向の屈折率nBxとnByの差が小さく、樹脂層A内において直交するx方向とy方向の屈折率をそれぞれnAx、nAy、樹脂層Aの厚みをdA、樹脂層Bの厚みをdBとしたとき、|(nAx−nAy)×dA|+|(nBx−nBy)×dB|の値が|(nBx−nBy)×dB|の値の1.1倍以下であることをいう。
|ReA|は、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。また、|ReB|は、好ましくは20nm以上140nm以下であり、より好ましくは40nm以上90nm以下である。|ReA|および|ReB|がこの範囲であることにより、光学積層体に所望の光学補償機能を十分に発揮させることができる。
本発明の製造方法で得られる光学積層体の厚さは、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。本発明の製造方法によれば、このように厚さが薄くても優れた耐久性及び光学均一性を有する光学積層体を得られるという顕著な利点を有する。そのため、光学積層体を液晶表示装置等に用いた場合に、光学用パネルの軽量化及び薄膜化が可能であり、材料を削減できるので製造コストを下げることが可能である。
光学積層体の平面形状並びに幅及び長さ等の寸法は、光学積層体の用途に応じて任意に設定できる。本発明の製造方法においては、好ましくは、前記の延伸フィルムが長尺のフィルムとして製造され、また当該長尺の延伸フィルムをロール状に巻回して保管及び運搬される。そして、ロール状に巻回された長尺の延伸フィルムは、連続的に引き出されながら樹脂層Cが剥離されて長尺の光学積層体とされ、長尺の偏光子等とロールトゥーロールで貼り合せて用いられることが好ましい。長尺のフィルムである場合の延伸フィルムおよび光学積層体の幅は、好ましくは30〜2,000mmである。
本発明の製造方法で得られる光学積層体は、複屈折の高度な補償が可能なので、それ単独で用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いてもよく、例えば液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などに適用してもよい。
液晶表示装置は、通常、光入射側偏光板と液晶セルと光出射側偏光板とがこの順で配置された液晶パネルを備える。前記の光学積層体を、例えば液晶セルと光入射側偏光板との間、及び/又は、液晶セルと光出射側偏光板との間に配置することで、液晶表示装置の視認性を大幅に向上させることができる。
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げられる。
前記の光学積層体は、液晶セルまたは偏光板に貼り合わせてもよい。例えば、光学積層体を偏光板の両面に貼り合わせてもよいし、片面にのみ貼り合わせてもよい。また、他の光学フィルムと貼り合せて用いてもよい。貼り合わせには公知の接着剤を用い得る。
偏光板は、通常、偏光子とその両面に貼り合わせられた保護フィルムとを備える。この際、保護フィルムに代えて、前記の光学積層体を偏光子に直接貼り合わせ、光学積層体を保護フィルムとして用いてもよい。この場合、保護フィルムが省略されるので、液晶表示装置の薄型化、軽量化、低コスト化を実現できる。
以下に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別に断らない限り重量基準である。
[評価方法]
実施例及び比較例において、評価は、下記の方法により行った。
(1)フィルム及び各層の厚さの測定
フィルムの総膜厚と各層の膜厚は、光学式干渉膜厚計(Filmetrics社製 F20)を用いて測定した。
(2)カールの評価
フィルムを50mm×50mmに切り出す。送風定温乾燥機(ADVANTEC社製)に110℃で2分間フィルムを入れ、取り出した後、カールの反りあがり量を定規で測定した。なお、フィルムが1回転以上したものは、1回転あたり15mmとした。
(3)延伸前フィルムの搬送性
延伸前フィルムを連続的に延伸機に供給する際に、フィルムに破断や折れ曲がりが生じなかったものをA、折れ曲がりが生じたものをBとして評価した。
(4)予熱シワ
フィルムを50mm×50mmに切り出す。送風定温乾燥機(ADVANTEC社製)に110℃で2分間フィルムを入れ、取り出した後、凹凸の生じている箇所の数を目視で数え、以下の基準で評価した。凹凸の個数が多いほど、縦延伸後のフィルムを横延伸に供する前の予熱段階でシワの発生が多いことを示す。
A:凹凸の個数が0である。
B:凹凸の個数が1である。
C:凹凸の個数が2以上である。
[実施例1]
3種3層(3種類の樹脂により3層からなるフィルムを形成するタイプのもの)の共押出成形用のフィルム成形装置を準備した。
透明な樹脂Aとして、メタクリル酸メチル重合体およびゴム粒子を含むメタクリル樹脂(住友化学社製「HT55Z」、ガラス転移温度108℃)のペレットを、ダブルフライト型のスクリューを備えた一軸押出機に投入して、溶融させた。
また、固有複屈折値が負である樹脂Bとして、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(NovaChemicals社製「Dylark D332」、ガラス転移温度131℃)のペレットを、ダブルフライト型のスクリューを備えた一軸押出機に投入して、溶融させた。
さらに、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂Cとして、ノルボルネン系重合体樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1060」、ガラス転移温度100℃)のペレットを、ダブルフライト型のスクリューを備えた一軸押出機に投入して、溶融させた。
溶融された260℃の樹脂Aを、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、マルチマニホールドダイ(ダイスリップの表面粗さRa=0.1μm)の第一のマニホールドに供給した。また、溶融された260℃の樹脂Bを、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、第二のマニホールドに供給した。さらに、溶融された260℃の樹脂Cを、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、第三のマニホールドに供給した。
樹脂A、樹脂Bおよび樹脂Cを、前記マルチマニホールドダイから260℃で同時に押し出しフィルム状にした。このようにフィルム状に共押出しされた溶融樹脂を、表面温度130℃に調整された冷却ロールにキャストし、次いで表面温度50℃に調整された2本の冷却ロール間に通して、樹脂Aからなる樹脂層a(厚さ7μm)、樹脂Bからなる樹脂層b(厚さ20μm)および樹脂Cからなる樹脂層c(厚さ40μm)をこの順に備える、厚さ67μmの3層構造の延伸前フィルムを得た。この延伸前フィルムのカール量は、5mmであった。
この延伸前フィルムをテンター延伸機に供給し、延伸温度128℃、延伸倍率2.5倍でMD方向に延伸して、樹脂層aが延伸されてなる樹脂層A(厚さ2.8μm)、樹脂層bが延伸されてなる樹脂層B(厚さ8μm)および樹脂層cが延伸されてなる樹脂層C(厚さ16μm)をこの順に備える、厚さ26.8μmの延伸フィルムを得た。この延伸フィルムのカール量は、2mmであった。また、この延伸フィルムについて予熱シワの評価を行ったところ、評価2であった。この延伸フィルムからは容易に樹脂層Cを剥離することが可能で、厚さ10.8μmの光学積層体を得ることができた。結果を表1に示す。
[比較例1]
樹脂Cの押し出し量を変化させることで、樹脂層cの厚さを20μmとした以外は、実施例1と同様にして厚さ47μmの延伸前フィルムを得た。この延伸前フィルムのカール量は、2mmであった。
次いでこの延伸前フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層aが延伸されてなる樹脂層A(厚さ2.8μm)、樹脂層bが延伸されてなる樹脂層B(厚さ8μm)および樹脂層cが延伸されてなる樹脂層C(厚さ8μm)をこの順に備える、厚さ18.8μmの延伸フィルムを得た。この延伸フィルムのカール量は、15mmであった。また、この延伸フィルムについて予熱シワの評価を行ったところ、評価3であった。この延伸フィルムからは容易に樹脂層Cを剥離することが可能で、厚さ10.8μmの光学積層体を得ることができた。結果を表1に示す。
[比較例2]
樹脂Cの押し出し量を変化させることで、樹脂層cの厚さを60μmとした以外は、実施例1と同様にして厚さ87μmの延伸前フィルムを得た。この延伸前フィルムのカール量は、10mmであった。
次いでこの延伸前フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層aが延伸されてなる樹脂層A(厚さ2.8μm)、樹脂層bが延伸されてなる樹脂層B(厚さ8μm)および樹脂層cが延伸されてなる樹脂層C(厚さ24μm)をこの順に備える、厚さ34.8μmの延伸フィルムを得た。この延伸フィルムのカール量は、2mmであった。また、この延伸フィルムについて予熱シワの評価を行ったところ、評価1であった。この延伸フィルムからは容易に樹脂層Cを剥離することが可能で、厚さ10.8μmの光学積層体を得ることができた。結果を表1に示す。
Figure 0006330367
以上の実施例および比較例より明らかなように、本発明の製造方法によれば、延伸前フィルムおよび延伸フィルムのいずれもカールが抑制され、かつ予熱シワの発生も少ないので、厚さが薄い光学積層体を製造することができる。一方、樹脂層aと前記樹脂層cの厚さの比が本発明の範囲を外れると、比較例1では延伸フィルムのカールが大きく予熱シワも多い。また、比較例2では延伸前フィルムのカールが大きく、フィルム搬送時において、フィルムがロールに接した際に、カールしたフィルム端部が折れ曲がり、搬送性の不具合が生じた。

Claims (10)

  1. 透明な樹脂Aからなる樹脂層aと、
    固有複屈折が負である樹脂Bからなる樹脂層bと、
    脂環式構造を有する重合体を含む樹脂Cからなる樹脂層cとを、この順に備え、
    前記樹脂層aと前記樹脂層cの厚さの比が1/8〜1/4である延伸前フィルムを、
    共延伸することにより、
    前記樹脂層aが延伸されて形成される樹脂層Aと、
    前記樹脂層bが延伸されて形成される樹脂層Bと、
    前記樹脂層cが延伸されて形成される樹脂層Cとを、この順に備える延伸フィルムを得る延伸工程、および、
    前記延伸フィルムから前記樹脂層Cを剥離する剥離工程を含む、
    光学積層体の製造方法。
  2. 波長550nmの光で測定した前記樹脂層Aの面内レターデーション及び前記樹脂層Bの面内レターデーションをそれぞれReA、ReBとしたとき、|ReA|<|ReB|を満たす、請求項1記載の製造方法。
  3. 波長550nmの光で測定した前記樹脂層Aの面内レターデーションをReAとしたとき、|ReA|が20nm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記樹脂A及び前記樹脂Bのガラス転移温度をそれぞれTgA(℃)、TgB(℃)としたとき、TgB>TgA+20(℃)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記樹脂Aがメタクリル重合体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記樹脂Bがスチレン系重合体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記樹脂A、前記樹脂Bおよび前記樹脂Cを共押出することにより前記延伸前フィルムを得ることを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記樹脂層cの厚みが20μm〜60μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記延伸工程において、前記延伸前フィルムの延伸温度が、前記樹脂Bのガラス転移温度をTgB(℃)とすると、TgB−10〜TgB+20(℃)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記樹脂層Aが、実質的に無配向な層である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
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