JP2011113004A - 位相差フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ヘイズ及び耐衝撃性を改善した位相差フィルムを提供する。
【解決手段】固有複屈折値が正の樹脂Aと固有複屈折値が負の樹脂Bとを含む樹脂組成物p1からなるP1層と、P1層に接して設けられた熱可塑性樹脂組成物p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなる位相差フィルムであって、樹脂Aとして重量平均分子量が5,000〜10,000のポリフェニレンエーテルを用い、樹脂Bとして重量平均分子量が130,000〜300,000のポリスチレン系樹脂を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は位相差フィルムに関する。
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力などの特徴をもち、テレビジョン、パーソナルコンピューターなどに広く用いられている。液晶表示装置は、通常、光入射側偏光板、液晶セル、および光出射側偏光板をこの順に備える液晶パネルと、光入射側偏光板の光入射側から光を照射する光源とを備えて構成されている。この際、光入射側偏光板の透過軸と、光出射側偏光板の透過軸とは、互いに直交するように配置されている。このような液晶表示装置では、液晶セルに電圧を印加することにより液晶分子の配向を変化させ、透過する光の量を調節することで、画面に画像を表示させている。
液晶表示装置には、画質の向上等を目的として位相差フィルムを設け、光学補償を行なうようにすることがある。例えば、上述した2枚の偏光板を、その透過軸が上下方向と左右方向を指して直交するように配置した液晶表示装置では、上下左右方向から画面を眺めた場合には十分なコントラストが得られる。しかしながら、上下左右から外れた方向、すなわち斜め方向から画面を眺めた場合には、光入射側偏光板の透過軸と光出射側偏光子の透過軸が、見かけ上、直交ではなくなるために、直線偏光が完全に遮断されずに光漏れが発生し、コントラストが低下する。そこで、コントラストの低下を防止するために、2枚の偏光板の間に位相差フィルムを配置して光学補償を行う試みがなされている。このような位相差フィルムとしては、位相差フィルムの面内の屈折率をnx,ny(nx≧ny、nxとnyはその方向が互いに直交する)とし、位相差フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合に、nz>nx≧nyの関係、すなわち、厚み方向のレターデーションRthが負である関係を満たす、いわゆるポジティブレターダーが用いられる。
しかし、従来の位相差フィルムでは波長に応じた位相差の制御が困難であったため、可視域の全体において均質な光学補償効果を得ることは困難であった。そこで、波長が長くなるにつれてその位相差値が大きくなる、いわゆる逆波長分散型の位相差フィルムが提案されている。例えば、固有複屈折値が正の樹脂であるポリフェニレンエーテル(ポリフェニレンオキサイドと呼ばれることもある。)と、固有複屈折値が負の樹脂であるポリスチレンとを含む樹脂組成物からなる層を有する延伸フィルムが、逆波長分散型の位相差フィルムとして使用できることが知られている(特許文献1参照)。
特開2001−42121号公報
ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとを含む樹脂組成物からなる層を有する従来の位相差フィルムにおいては、位相差フィルムのヘイズが大きくなったり、耐衝撃性が低くなったりすることがある。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものであって、ヘイズ及び耐衝撃性を改善した位相差フィルムを提供することを目的とする。
上述した課題を解決して目的を達成するために、本発明者は鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとを含む樹脂組成物からなる層において、低分子量のポリフェニレンエーテルを用いることにより、層内における樹脂の分散性を向上させて、位相差フィルムのヘイズを低くしたり、耐衝撃性を向上させたりできることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔3〕を要旨とする。
〔1〕 固有複屈折値が正の樹脂Aと固有複屈折値が負の樹脂Bとを含む樹脂組成物p1からなるP1層と、前記P1層に接して設けられた熱可塑性樹脂組成物p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなる位相差フィルムであって、
前記樹脂Aが重量平均分子量が5,000〜10,000のポリフェニレンエーテルであり、
前記樹脂Bが重量平均分子量が130,000〜300,000のポリスチレン系樹脂である、位相差フィルム。
〔2〕 〔1〕に記載の位相差フィルムであって、
前記熱可塑性樹脂組成物p2が、メタクリル酸エステル重合体(イ)と粒子(ロ)とを含有し、
前記粒子(ロ)が、メタクリル樹脂からなる外層および架橋構造を有するゴムからなる内層を有する、位相差フィルム。
〔3〕 〔1〕又は〔2〕に記載の位相差フィルムであって、
波長478nmの光における面内方向のレターデーションRe478、波長550nmの光における面内方向のレターデーションRe550、および波長800nmの光における面内方向のレターデーションRe800が、Re478<Re550<Re800の関係を満たす、位相差フィルム。
本発明によれば、ヘイズ及び耐衝撃性を改善した位相差フィルムを実現できる。
図1は、可視域(400〜700nm)における、波長と、樹脂組成物p1を構成する樹脂Aおよび樹脂Bの各位相差の絶対値との関係を示す図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
〔1.概要〕
本発明の位相差フィルムは、固有複屈折値が正の樹脂Aと固有複屈折値が負の樹脂Bとを含む樹脂組成物p1からなるP1層と、前記P1層に接して設けられた熱可塑性樹脂組成物p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなる位相差フィルムである。また、本発明の位相差フィルムは、樹脂Aとして重量平均分子量が低いポリフェニレンエーテルを有し、樹脂Bとして重量平均分子量が大きいポリスチレン系樹脂を用いている。
樹脂組成物p1において樹脂の分散性が低くなって偏りが生じると、位相差フィルムのヘイズが上昇したり、位相差フィルムの位置により発現する位相差が均一でなくなったり、偏った樹脂の塊(ダマ)を起点としてクラッキングが生じやすくなったりする傾向がある。しかし、本発明の位相差フィルムでは、重量平均分子量が低いポリフェニレンエーテルを用いることにより樹脂組成物p1における樹脂の分散性を容易に高めることができるので、樹脂の偏りによるヘイズの上昇、位相差の不均一およびクラッキングの発生を防止して、光学特性を位置によらず均一にしたり耐衝撃性を向上させたりできる。さらに、前記の樹脂のダマが輝点となって画質が低下することも防止できる。
〔2.樹脂組成物p1〕
樹脂組成物p1は、固有複屈折値が正の樹脂Aと、固有複屈折値が負の樹脂Bとを含む樹脂組成物である。
〔2−1.固有複屈折値が正の樹脂A〕
固有複屈折値が正の樹脂Aとしては、ポリフェニレンエーテルを用いる。ただし、前記ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、通常5,000以上、好ましくは5,500以上、より好ましくは6,000以上とし、且つ、通常10,000以下、好ましくは9,000以下、より好ましくは8,000以下とする。このように重量平均分子量が低いポリフェニレンエーテルを固有複屈折値が正の樹脂Aとして用いることにより、樹脂組成物p1において固有複屈折値が正の樹脂Aと固有複屈折値が負の樹脂Bとを高いレベルで均一に混合することが可能となり、P1層における樹脂の分散性を高めることが可能となる。
なお、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒にして温度30℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、標準ポリスチレン換算の値を採用するものとする。
ポリフェニレンエーテルとしては、通常、主鎖にフェニレンエーテル骨格を有する重合体(ポリマー)を用いる。中でも、下記式(I)で表される構造単位を含む重合体が好ましい。
Figure 2011113004
式(I)中、Qは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、第一または第二低級アルキル基(例えば炭素数7個以下のアルキル基)、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、または、ハロ炭化水素オキシ基(ただし、そのハロゲン原子と酸素原子とを少なくとも2つの炭素原子が分離している基)を表す。中でも、Qとしてはアルキル基及びフェニル基が好ましく、特に炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。
式(I)中、Qは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第一または第二低級アルキル基(例えば炭素数7個以下のアルキル基)、フェニル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、または、ハロ炭化水素オキシ基(ただし、そのハロゲン原子と酸素原子とを少なくとも2つの炭素原子が分離している基)を表す。中でも、Qとしては水素原子が好ましい。
式(I)で表される構造単位を含む重合体は、1種類の構造単位を有する単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、2種類以上の構造単位を有する共重合体(コポリマー)であってもよい。
式(I)で表される構造単位を含む重合体が単独重合体である場合、当該単独重合体の好ましい例を挙げると、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を有する単独重合体が挙げられる。
式(I)で表される構造単位を含む重合体が共重合体である場合、当該共重合体の好ましい例を挙げると、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせて有するランダム共重合体が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位以外の構造単位を有していてもよい。この場合、ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位とそれ以外の構造単位とを有する共重合体となる。ただし、ポリフェニレンエーテル中のフェニレンエーテル単位以外の構造単位の比率は、本発明の効果を著しく損なわない程度に少なくすることが好ましく、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が前記の範囲に収まる限り、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いるようにしてもよい。
ポリフェニレンエーテルの製造方法に制限は無く、例えば、特開平11−302529号公報に記載の方法により製造できる。
〔2−2.固有複屈折値が負の樹脂B〕
固有複屈折値が負の樹脂Bとしては、ポリスチレン系樹脂を用いる。ただし、前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、通常130,000以上、好ましくは140,000以上、より好ましくは150,000以上とし、且つ、通常300,000以下、好ましくは270,000以下、より好ましくは250,000以下とする。上述した低分子量のポリフェニレンエーテルはポリフェニレンエーテル単独ではフィルムとして成形が困難なほど分子量が低いため、ポリスチレン系樹脂として高分子量のものを組み合わせることにより、樹脂組成物p1からなるP1層を成膜できるようにしている。
ポリスチレン系樹脂としては、通常、スチレン又は置換スチレンの単独重合体又は共重合体を用いる。置換スチレンとしては、例えば、メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等のアルキルスチレン;クロロスチレン等のハロゲン化スチレン;クロロメチルスチレン等のハロゲン置換アルキルスチレン;メトキシスチレン等のアルコキシスチレンなどが挙げられる。中でもポリスチレン系樹脂としては、置換基を有しないスチレンの単独重合体が好ましい。
また、ポリスチレン系樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、スチレン単位及び置換スチレン単位以外の構造単位を有していてもよい。この場合、ポリスチレン系樹脂は、スチレン単位又は置換スチレン単位とそれ以外の構造単位とを有する共重合体となる。ただし、ポリスチレン系樹脂中のスチレン単位及び置換スチレン単位以外の構造単位の比率は、本発明の効果を著しく損なわない程度に少なくすることが好ましく、通常25重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
また、ポリスチレン系樹脂としては、力学的強度の向上と熱収縮性の抑制の観点から、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂を用いることが好ましい。シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂とは、ベンゼン環が交互に規則的に配列した結晶性のポリスチレン系樹脂であり、別タイプのポリスチレン(アタクチック型)に比べて、低比重であり、耐加水分解性、耐熱性及び耐薬品性等に優れる。
ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が前記の範囲に収まる限り、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いるようにしてもよい。
ポリスチレン系樹脂の製造方法に制限は無く、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法などにより製造できる。
樹脂組成物p1が含む樹脂Aと樹脂Bとの混合比(重量比)は、本発明の位相差フィルムに発現させる光学特性に応じて適切に設定すればよい。通常は、混合する樹脂の波長分散特性に応じて適切な値を設定するようにするが、樹脂Aと樹脂Bとの合計量を100重量%とした場合の樹脂Aの量は、20重量%以上が好ましく、22重量%以上がより好ましく、また、30重量%以下が好ましく、28重量%以下がより好ましい。
〔2−3.樹脂組成物p1に係るその他の事項〕
本発明の効果を著しく損なわない限り、樹脂組成物p1は、前記の樹脂A及び樹脂B以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、樹脂組成物p1は、上述した樹脂A及び樹脂B以外にも樹脂を含んでいてもよい。その例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリルサルホン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノルボルネン樹脂、棒状液晶ポリマー、ポリアリーレンエーテル樹脂などが挙げられる。なお、これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で用いてもよい。また、本発明の効果を著しく損なわない限り、前記の樹脂に含まれる構造単位がポリフェニレンエーテル又はポリスチレン系樹脂のポリマー鎖に共重合成分として含まれていてもよい。
ただし、樹脂A及び樹脂B以外の樹脂の量は、樹脂A及び樹脂Bの合計量を100重量部として、15重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下が特に好ましい。
また、例えば、樹脂組成物p1は、配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例を挙げると、滑剤;層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤:染料及び顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。なお、配合剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で用いてもよい。
配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めることができ、例えば本発明の位相差フィルムの全光線透過率を85%以上に維持できる範囲である。
上述した中でも、配合剤としては、可撓性及び耐候性を向上させることができる点で、滑剤及び紫外線吸収剤が好ましい。
滑剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウムなどの無機粒子;ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどの有機粒子が挙げられる。中でも、滑剤としては有機粒子が好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。好適な紫外線吸収剤としては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられ、特に好適なものとしては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが挙げられる。
樹脂組成物p1のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上であり、また、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。ガラス転移温度をこのような範囲にすることにより、位相差フィルムとして使用した際にバックライトの熱による寸法変化を抑制できる。
樹脂組成物p1の荷重たわみ温度Tsは、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、特に好ましくは100℃以上である。荷重たわみ温度を上記範囲内とすることにより、配向緩和を低減でき、延伸による製造方法により本発明の位相差フィルムを容易に得ることができる。
荷重たわみ温度Tsにおける樹脂組成物p1の破断伸度は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることが特に好ましい。破断伸度がこの範囲にある樹脂組成物p1であれば、延伸により安定的に位相差フィルムを作製できる。
なお、破断伸度は、JISK7127記載の試験片タイプ1Bの試験片を用いて、引っ張り速度100mm/分によって求めることができる。
〔3.熱可塑性樹脂組成物p2〕
熱可塑性樹脂組成物p2は、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂を含む。また、熱可塑性樹脂組成物p2は、1種類の熱可塑性樹脂を単独で含む樹脂自体であってもよく、2種類以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物であってもよく、1種類以上の熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂以外の成分とを含む樹脂組成物であってもよい。ただし、熱可塑性樹脂組成物p2は、通常、本発明の位相差フィルムの全光線透過率を85%以上に維持できる程度に透明である。
熱可塑性樹脂組成物p2は、耐衝撃性に優れることが好ましい。上述した樹脂組成物p1が低分子量のポリフェニレンエーテルを含むので、P1層は脆くなりやすい傾向がある。したがって、本発明に位相差フィルム及び延伸前フィルムでは、耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂組成物p2からなるP2層をP1層に積層することにより、フィルムの強度を高めて耐衝撃性を向上させることが好ましい。
前記の観点から、熱可塑性樹脂組成物p2は、熱可塑性樹脂であるメタクリル酸エステル重合体(イ)を含有することが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂組成物p2は、メタクリル酸エステル重合体(イ)と、メタクリル樹脂からなる外層および架橋構造を有するゴムからなる内層を有する粒子(ロ)とを含有することがより好ましい。
メタクリル酸エステル重合体(イ)は、メタクリル酸エステル(M1)を主成分とする重合体である。メタクリル酸エステル重合体(イ)の例を挙げると、メタクリル酸エステルの単独重合体や、メタクリル酸エステルとその他の単量体との共重合体が挙げられる。
メタクリル酸エステル(M1)としては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。共重合体とする場合にメタクリル酸エステルと共重合するその他の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
前記メタクリル酸エステル重合体(イ)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと、アクリル酸エステル(M2)と、必要に応じてこれらに共重合可能なビニル基を有する化合物(M3)とを含む単量体の重合により得られる熱可塑性樹脂であることが好ましい。なお、本明細書において単に「単量体」というときは、ある単量体1種類からなる場合のみならず、複数の単量体が混合された状態、いわゆる単量体混合物も包含するものとする。
前記メタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
前記アクリル酸エステル(M2)としては、通常はアクリル酸アルキルが用いられ、そのアルキル基は、炭素数1〜8程度でよい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
メタクリル酸アルキル(M1)及び/又はアクリル酸エステル(M2)に共重合可能な、前記ビニル基を有する化合物(M3)とは、従来からメタクリル樹脂の分野で知られている各種単量体が使用でき、例えば、スチレンのような芳香族ビニル化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などが挙げられる。
なお、これらの単量体は、それぞれ、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記メタクリル酸エステル重合体(イ)は、前記メタクリル酸エステル(M1)50重量%〜100重量%、より好ましくは50重量%〜99.9重量%、さらに好ましくは50重量%〜99.5重量%と、前記アクリル酸エステル(M2)0重量%〜50重量%、より好ましくは0.1重量%〜50重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜50重量%と、これらに共重合可能な前記ビニル基を有する化合物(M3)0重量%〜49重量%とからなる単量体を重合させて得られるものが好適である。
なお、メタクリル酸エステル重合体(イ)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
メタクリル酸エステル重合体(イ)の重量平均分子量は、通常10000以上、好ましくは15000以上、より好ましくは20000以上であり、通常300000以下、好ましくは250000以下、より好ましくは200000以下である。
前記メタクリル酸エステル重合体(イ)の重合方法は特に限定されず、例えば、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の重合方法で合成できる。また、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適な延伸前フィルムへの成形性を示す粘度を得るために、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類及び組成に応じて、適宜決定すればよい。
前記メタクリル酸エステル重合体(イ)と共に熱可塑性樹脂組成物p2に含まれる前記粒子(ロ)は、メタクリル樹脂からなる外層および架橋構造を有するゴムからなる内層を有する。なお、粒子(ロ)が外層及び内層を「有する」とは、粒子(ロ)が外層及び内層のみからなることを意味するものではなく、それ以外の層をさらに有していてもよい。例えば後述するように内層の内側にさらに芯内層をも有することができる。
粒子(ロ)の外層を構成するメタクリル樹脂とは、メタクリル酸またはメタクリル酸エステル構造を繰り返し単位として有する重合体であり、好ましくは、前記メタクリル酸エステル重合体(イ)を構成する重合体と同様のものが挙げられ、より好ましくは、前記メタクリル酸エステル(M1)50重量%〜100重量%と、前記アクリル酸エステル(M2)0重量%〜50重量%と、前記ビニル基を有する化合物(M3)0重量%〜49重量%とからなる単量体組成物(ii)を重合してなるものが挙げられる。
なお、粒子(ロ)の外層を構成するメタクリル樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子(ロ)の内層を構成する架橋構造を有するゴムとしては、各種の弾性共重合体からなるゴムを用いることができる。また、粒子(ロ)の内層を構成するゴムは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、粒子(ロ)の内層を構成するゴムとしては、好ましくは、アクリル酸アルキル単量体(m1)50重量%〜99.9重量%と、炭素−炭素二重結合を一分子中に1個有する単官能単量体(m2)0重量%〜49.9重量%と、炭素−炭素二重結合を一分子中に少なくとも2個有する多官能単量体(m3)0.1重量%〜10重量%との共重合体(i−1)が挙げられる。
前記アクリル酸アルキル(m1)としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜8のものが挙げられる。なかでも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのような、アルキル基の炭素数4〜8のものが好ましい。なお、アクリル酸アルキル(m1)は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
必要に応じて用いられる、前記炭素−炭素二重結合を一分子中に1個有する単官能化合物(m2)としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル、スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等のビニルシアン化合物などが、好適なものとして挙げられる。なお、単官能化合物(m2)は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記炭素−炭素二重結合を一分子中に少なくとも2個有する多官能化合物(m3)としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート等のグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多塩基酸のポリアルケニルエステル、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。中でも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステル及び多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましい。なお、多官能化合物(m3)は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、多官能化合物(m3)は、架橋性を有することが好ましい。
粒子(ロ)は、好ましくは、前記架橋構造を含むゴムを少なくとも表層に有する芯粒子(ロ−1)100重量部の存在下で、前記単量体組成物(ii)10〜400重量部を重合して調製することができる。なお、芯粒子(ロ−1)は、その全てが前記架橋構造を含むゴムから形成されていてもよい。具体的には、芯粒子(ロ−1)100重量部の存在下に、前記単量体組成物(ii)通常10〜400重量部、好ましくは20〜400重量部、より好ましくは20〜200重量部を重合させることにより、単量体組成物(ii)による重合層を芯粒子(ロ−1)の表面に少なくとも1層結合させた構成にすることができる。単量体組成物(ii)の量が上記範囲内であると、芯粒子(ロ−1)の凝集が生じにくくなり、位相差フィルムとした際の透明性が良好となる。単量体組成物(ii)の量が上記範囲から外れると、粒子(ロ)を分散させたメタクリル酸エステル重合体の組成物全体の流動性の低下が起こり、P2層の成膜が困難となるおそれがある。また、この重合の際、反応条件を調節して、粒子(ロ)の内層の平均粒子径が0.05μm以上0.3μm以下となるようにすることができる。
粒子(ロ)は、例えば、前記共重合体(i−1)を構成する上記単量体成分(m1)〜(m3)を、乳化重合法等により少なくとも一段の反応で重合させて、共重合体(i−1)を少なくともその表層に有する芯粒子(ロ−1)を得て、この芯粒子(ロ−1)の存在下で単量体組成物(ii)を、乳化重合法等により少なくとも一段の反応で重合させて、製造することができる。このような複数段階の重合により、単量体組成物(ii)は芯粒子(ロ−1)にグラフト共重合され、グラフト鎖を有する架橋弾性共重合体となった粒子(ロ)を製造することができる。すなわち、この粒子(ロ)は、アクリル酸アルキルをゴムの主成分として含む多層構造を有するグラフト共重合体となる。
粒子(ロ)は、その内層の内側に芯内層をさらに有し、該芯内層が、メタクリル酸エステル(M4)70重量%〜100重量%と、ビニル基を有する化合物(M5)0重量%〜30重量%との(共)重合体(i−2)からなることが、さらに好ましい。このように粒子(ロ)が3層以上の構造を有すると、位相差フィルムの弾性率、表面平滑性、表面硬度などが改善されるためである。前記の3層以上の構造を有する粒子(ロ)は、例えば、前記(共)重合体(i−2)を構成する単量体を最初に重合させ、得られる重合体の存在下で上記の共重合体(i−1)を構成する単量体を重合させ、さらに得られる芯粒子(ロ−1)の存在下で、上記の単量体組成物(ii)を重合させることにより、得ることができる。
前記メタクリル酸エステル(M4)としては、メタクリル酸アルキル、特にメタクリル酸メチルが有利である。必要に応じて用いられるビニル基を有する化合物(M5)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル;スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のビニルシアン化合物などが挙げられる。また、前記ビニル基を有する化合物(M5)は、共重合性の架橋性物質であることが好ましい。このような物質としては、前記共重合体(i−1)を構成する成分である多官能化合物(m3)と同様の化合物を用いることができる。なお、メタクリル酸エステル(M4)及びビニル基を有する化合物(M5)は、それぞれ、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記のような3層構造の粒子は、例えば、特公昭55−27576号公報(米国特許明細書第3,793,402号)に開示されている。特に同公報の実施例3に記載のものは、好ましい組成の一つである。
また、粒子(ロ)を前記のような少なくとも3層からなる多層構造の粒子とする場合、外層としてグラフトさせる単量体組成物(ii)は、前記共重合体(i−1)及び前記(共)重合体(i−2)の合計100重量部に対して、10〜400重量部用いることが好ましい。
粒子(ロ)は、その内層の平均粒径が、通常0.05μm以上であり、通常0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下である。粒子(ロ)の内層の平均粒径がこの範囲にあると、P2層の製膜性が安定するとともに、延伸前フィルム及び位相差フィルム自体の柔軟性及び取扱い性の面で優れる。粒子(ロ)の内層の平均粒径があまり小さいと、延伸前フィルム及び位相差フィルムの柔軟性が損なわれ、取扱い性が低下する傾向がある。一方、粒子(ロ)の内層の平均粒径があまり大きいと、表面平滑性が低下し、位相差フィルムの透明感が損なわれる可能性がある。なお、メタクリル樹脂からなる外層をも含めた粒子(ロ)の平均粒径は、好ましくは0.07μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、通常0.5μm以下、好ましくは0.45μm以下である。
粒子(ロ)の内層の平均粒径は、乳化重合における乳化剤の添加量や単量体の仕込み量などを調節することによって、適切な値に設定することができる。なお、粒子(ロ)の内層の平均粒径は、粒子(ロ)をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面を酸化ルテニウムにより染色し、染色された粒子の直径を電子顕微鏡で観察することにより求めることができる。すなわち、粒子(ロ)は、外層のメタクリル樹脂が、混合するメタクリル樹脂と混和して染色されず、架橋構造を有するゴムからなる内層のみが染色されるので、電子顕微鏡などで観察することで、粒子(ロ)の内層の粒子径を求めることができる。
メタクリル酸エステル重合体(イ)と粒子(ロ)とを含有する熱可塑性樹脂組成物p2において、熱可塑性樹脂組成物p2の全量を100重量%とした場合に、前記粒子(ロ)の量は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下とする。粒子(ロ)の量がこのような範囲であると、位相差フィルムが脆くなることがなくなり、P2層の製膜性を向上させたり、延伸前フィルムを破断させることなく延伸したりすることができる。粒子(ロ)の量が少なすぎると、フィルム化するのが困難になるおそれがあり、またその量が多すぎると、位相差フィルムの透明性や表面硬度が失われるおそれがある。また、メタクリル酸エステル重合体(イ)の割合は、通常20〜99重量%であるが、メタクリル酸エステル重合体(イ)及び粒子(ロ)以外の他の添加剤を含む場合は、その割合を適宜調整することができる。
熱可塑性樹脂組成物p2は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などが挙げられる。なお、添加剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。なかでも紫外線吸収剤は、より優れた耐候性を与える点で好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例を挙げると、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を挙げると、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4′−クロロベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。さらに、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤の具体例を挙げると、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが挙げられる。
なお、紫外線吸収剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
紫外線吸収剤を配合する場合、その量は、メタクリル酸エステル重合体(イ)及び粒子(ロ)の合計100重量部を基準に、通常0.1重量部以上であり、好ましくは0.3重量部以上、また好ましくは2重量部以下である。
熱可塑性樹脂組成物p2のガラス転移温度は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。熱可塑性樹脂組成物p2のガラス転移温度が40℃未満では、得られる位相差フィルムの耐熱性が低くなる可能性がある。熱可塑性樹脂組成物p2のガラス転移温度は、例えば熱可塑性樹脂組成物p2としてメタクリル酸エステル重合体(イ)を含む組成物を用いる場合には、メタクリル酸エステルと共重合される他の単量体の種類と量を変化させることにより、適宜設定できる。なお、メタクリル酸メチルの単独重合体のガラス転移温度は約106℃であるので、メタクリル酸エステルとしてメタクリル酸メチルを用いる場合、メタクリル酸エステル重合体(イ)のガラス転移温度は、通常106℃以下となる。
さらに、樹脂組成物p1のガラス転移温度をTg(p1)とし、熱可塑性樹脂組成物p2のガラス転移温度をTg(p2)とした場合、Tg(p2)はTg(p1)よりも低いことが好ましく、Tg(p1)>Tg(p2)+10℃の関係を満たすことがより好ましい。このような関係を満たすことにより、延伸前フィルムを延伸した際にP1層が破断することなく、良好な位相差フィルムを得ることができる。なお、熱可塑性樹脂組成物p2は2以上のガラス転移温度を示す場合があるが、その場合、高い方のガラス転移温度の値を前記のTg(p2)とする。
熱可塑性樹脂組成物p2の溶融粘度は、好ましくは400Pa・s以上、より好ましくは450Pa・s以上であり、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは900Pa・s以下である。ここで溶融粘度とは、温度250℃、剪断速度150sec−1により測定した値をいう。このような溶融粘度を有することにより、延伸時の破断などが起こりにくくなり、延伸時及び製品の使用時における強度をさらに向上させることができる。
〔3.延伸前フィルム〕
本発明に係る延伸前フィルムは、樹脂組成物p1からなるP1層と、熱可塑性樹脂組成物p2からなるP2層とを有するフィルムである。延伸前フィルムを延伸することにより、延伸フィルムとして本発明の位相差フィルムを得ることができるようになっている。
延伸前フィルムはP1層とP2層とをそれぞれ少なくとも1層有する。したがって、延伸前フィルムは、例えば、P1層及びP2層をこの順で備えるフィルムであってもよく、P2層、P1層及びP2層をこの順で備えるフィルムであってもよいが、なかでもP2層、P1層及びP2層をこの順で備えることが好ましい。延伸前フィルム及び本発明の位相差フィルムの強度を強くして耐衝撃性を向上させるためである。
延伸前フィルムにおいて、少なくとも1層のP2層は、P1層に接する。ここでP1層とP2層とが接するとは、P1層とP2層との間に粘着剤層及び接着剤層が存在せず、P1層とP2層とが直接に接していることを表す。P1層は低分子量のポリフェニレンエーテルを樹脂Aとして含む樹脂組成物p1からなる層であるため強度が弱いが、P1層に接するようにP2層を設けたことにより、P2層によってP1層の強度を補い、延伸前フィルム及び本発明の位相差フィルムの強度を高めるようになっている。
延伸前フィルムは、通常、等方性の原反フィルムであるが、一旦延伸処理を施したフィルムを延伸前フィルムとして、この一旦延伸処理を施した延伸前フィルムにさらに、本発明に係る延伸前フィルムへの延伸処理を施すようにしてもよい。
延伸前フィルムにおいて、P1層の厚みは通常10μm以上300μm以下であり、P2層の厚みは通常10μm以上400μm以下である。P1層及びP2層の厚みを前記範囲の下限以上とすることによって十分な位相差及び機械的強度を得ることができ、上限以下とすることによって柔軟性及びハンドリング性を良好なものとすることができる。
延伸前フィルムの製造方法は、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;各樹脂層の材料を順次流延し積層させる共流延法;ドライラミネーションなどのフィルムラミネーション成形法;及び樹脂フィルム表面に樹脂溶液をコーティングする等のコーティング成形法などの公知の方法が挙げられる。なかでも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点で、共押出成形法が好ましい。押出し温度は、使用する樹脂組成物p1及び熱可塑性樹脂組成物p2に応じて適宜選択され得る。
〔4.位相差フィルム〕
本発明の位相差フィルムは、本発明に係る延伸前フィルムを延伸してなるフィルムである。延伸前フィルムを延伸することにより、通常、P1層において位相差が発現し、延伸によりP1層で発現した位相差により、逆波長分散性が発現するようになっている。以下、P1層における位相差の発現について、図を用いて説明する。
図1は、可視域(400〜700nm)における、波長と、樹脂組成物p1を構成する樹脂Aおよび樹脂Bの各位相差の絶対値との関係を示す図であり、線LAは樹脂Aの波長分散特性を示し、線LBは樹脂Bの波長分散特性を示している。
図1に示す樹脂組成物p1においては、固有複屈折値が正の樹脂Aの波長分散性が、固有複屈折値が負の樹脂Bの波長分散性よりも大きくなっているものとする。さらに、図1に示す樹脂組成物p1では、低波長側では樹脂Aの配向による影響より樹脂Bの配向による影響がやや大きく、かつ、長波長側に向かうにつれて樹脂Bの配向による影響がより大きく現れるように、その配合等が調整されているものとする。
ところで、P1層を延伸することにより発現する位相差は、前記の樹脂Aの配向により発現する位相差と樹脂Bの配向により発現する位相差との和になる。そうすると、本例の延伸前フィルムを延伸した場合には、400〜700nmの全範囲において樹脂Aよりも樹脂Bの影響が大きく現れるようにすることができることから、位相差フィルムの厚み方向の屈折率nzを面内の各屈折率nx,nyよりも大きくしたり、厚み方向のレターデーションRthを負の値にしたりできるようになっている。また、長波長側に向かうにつれて、樹脂Bの影響が大きくなるように調整してあるため、逆波長分散性の位相差フィルムを得ることができるようになっている。
延伸の操作としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸)や、テンターを用いて横方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸)、縦一軸延伸と横一軸延伸とを順に行う方法(逐次二軸延伸)等とすることができる。
また、延伸の回数は、1回でもよく、2回以上であってもよい。
本発明の位相差フィルムにおいては、P1層において発現する位相差を有効に活用して所望の光学特性を得る観点から、延伸によってP2層で発現する位相差の絶対値は小さいことが好ましく、P2層では位相差を発現しないことがより好ましい。具体的には、P2層の面内方向のレターデーションは1nm超10nm未満であることが好ましい。
したがって、熱可塑性樹脂組成物p2のガラス転移温度をTg(p2)とすると、延伸前フィルムの延伸温度は、Tg(p2)より高いことが好ましく、Tg(p2)よりも20℃〜60℃高いことがより好ましい。また、この際の延伸倍率は、1.1倍〜6倍にすることが好ましい。このような条件で延伸を行うことにより、P2層の面内方向のレターデーションを上記範囲に調整することができる。
延伸前フィルムを延伸した延伸した延伸フィルムとして、本発明の位相差フィルムは得られる。したがって、本発明の位相差フィルムは、P1層を延伸した層及びP2層を延伸した層を備えることになる。このため、例えば延伸前フィルムがP2層、P1層及びP2層をこの順に備える3層構造の複層フィルムであった場合には、同様に、熱可塑性樹脂組成物p2からなる層、樹脂組成物p1からなる層、及び、熱可塑性樹脂組成物p2からなる層をこの順に備える位相差フィルムが得られる。
位相差フィルム並びにそれに含まれるP1層を延伸した層及びP2層を延伸した層の厚みに制限は無いが、P1層を延伸した層の平均厚みは通常5μm以上、好ましくは8μm以上であり、通常300μm以下、好ましくは90μm以下である。また、P2層を延伸した層の平均厚みは、通常3μm以上、好ましくは4μm以上であり、通常400μm以下、好ましくは90μm以下である。
なお、位相差フィルムにおける各層の厚みは、以下の手順で測定すればよい。まず、位相差フィルムの幅方向に50mm間隔で反射分光膜厚計を操作して、位相差フィルムの各層の厚みを測定する。次に、この操作を位相差フィルムの流れ方向に50mm間隔で、長さ1000mmにわたって行う。そして全測定結果を平均して各層の厚みとする。
位相差フィルムがP2層、P1層及びP2層をこの順に備える3層構造の延伸前フィルムを延伸してなるフィルムである場合、2層存在するP2層の平均厚みは、位相差フィルムの反り等を防止するために、ほぼ同じ平均厚みとすることが好ましい。
本発明の位相差フィルムは、波長478nmの光における面内方向のレターデーションRe478、波長550nmの光における面内方向のレターデーションRe550、および波長800nmの光における面内方向のレターデーションRe800が、Re478<Re550<Re800の関係を満たすことが好ましい。これにより、本発明の位相差フィルムは逆波長分散性を有することになるため、可視域全体における光学補償効果を均質にすることができる。
また、これに関し、Re478/Re550が0.95以下であることが好ましく、0.90以下であることがより好ましい。また、Re800/Re550が1.05以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましい。
なお、各測定波長における面内方向のレターデーション(Re478、Re550及びRe800)は、|nx−ny|×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値である。また、厚み方向のレターデーションは、{|nx+ny|/2−nz}×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxの方向に直交する方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値である。
本発明の位相差フィルムは、波長400〜700nmの全域における厚み方向のレターデーションRthが負の値であることが好ましく、より好ましくはRthが−30nm以下であり、特に好ましくはRthが−50nm以下である。これにより、本発明の位相差フィルムを備えた液晶表示装置を斜め方向から観察した場合であっても、一対の偏光板間の光漏れを抑えることができ、コントラストを向上できる利点がある。
本発明の位相差フィルムは、光学フィルムに適する観点から、その全光線透過率が85%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。ここで、前記全光線透過率は、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
本発明の位相差フィルムのヘイズは好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、本発明の位相差フィルムを組み込んだ表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
本発明の位相差フィルムは、ΔYIが5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。このΔYIが上記範囲にあると、着色がなく視認性を良好にできる。ここで、ΔYIはASTM E313に準拠して、日本電飾工業社製「分光色差計 SE2000」を用いて同様の測定を5回行い、その算術平均値として求める。
本発明の位相差フィルムは、JIS鉛筆硬度でHBまたはそれ以上の硬さを有することが好ましい。このJIS鉛筆硬度の調整は、樹脂の種類の変更や樹脂の層厚の変更などによって行うことができる。JIS鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に準拠して、各種硬度の鉛筆を45°傾けて、上から500g重の荷重をかけてフィルム表面を引っ掻き、傷が付きはじめる鉛筆の硬さである。
本発明の位相差フィルムは、長尺のフィルムとすることが、製造効率の観点から好ましい。長尺のフィルムとは、幅方向の寸法に対して長い(例えば10倍以上、といった長さの)長さ方向を有するフィルムであり、このようなフィルムは製造ラインにおいて、長さ方向に連続的に製造工程を行なうことにより得られる。特に、以下に説明する延伸前フィルムを長尺のフィルムとして調製し、これをさらに延伸するという工程で本発明の位相差フィルムを製造する場合、これらの工程の一部または全部をインラインで簡便且つ効率的に行なうことが可能である。
本発明の位相差フィルムは、熱収縮率が0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましい。熱収縮率は、位相差フィルムに張力を掛けない状態で、120℃の雰囲気下で30分放置した場合の収縮率として表すことができる。なお、前記の収縮率は、延伸フィルムである位相差フィルムの延伸方向に沿った収縮率を測定する。
本発明の位相差フィルムにおいては、P1層とP2層との間の層間剥離強度は、1.3N/25mm以上であることが好ましい。ここで、層間剥離強度は、JIS K−6854−2に準拠して、引張速度100mm/分で180度剥離により測定された値である。このような層間剥離強度を有することにより、耐久性の高い位相差フィルムとすることができる。
本発明の位相差フィルムは、その少なくとも片面に直径0.001〜0.1μmの突起を有し、この突起の個数が50〜500個/30μmであることが好ましい。このような突起を有することにより、位相差フィルム表面の滑り性が向上し、位相差フィルムのハンドリング性を向上させることができる。前記のような突起は、例えば、熱可塑性樹脂組成物p2として粒子(ロ)を含む組成物を用い、その熱可塑性樹脂組成物p2からなるP2層が位相差フィルムの少なくとも片方の表面に露出するようにすればよい。
〔5.用途等〕
本発明の位相差フィルムは、例えば、液晶表示装置用の光学フィルムとして用いることができる。例えば、本発明の位相差フィルムは、光学補償フィルムとして液晶表示装置に設けることができる。
液晶表示装置は、通常、光入射側偏光板、液晶セル及び光出射側偏光板がこの順に配置された液晶パネルと、液晶パネルに光を照射する光源とを備える。本発明の位相差フィルムを、例えば液晶セルと光入射側偏光板との間、及び/又は、液晶セルと光出射側偏光板との間に配置することで、液晶表示装置の視認性を大幅に向上できる。
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げることができる。
液晶表示装置において、本発明の位相差フィルムは液晶セルまたは偏光板に貼り合わせるようにしてもよい。また、本発明の位相差フィルムは、2枚の偏光板のそれぞれに貼り合わせるようにしてもよい。さらに、本発明の位相差フィルムを2枚以上用いるようにしてもよい。なお、貼り合わせには公知の接着剤を用いることができる。
偏光板は、例えば、偏光子とその両面に貼り合わせられた保護フィルムとからなるものを用いることができる。この際、保護フィルムに代えて本発明の位相差フィルムを偏光子に直接貼り合せ、位相差板及び保護フィルムの両方の機能を有する層として本発明の位相差フィルムを用いることもできる。かかる構成をとることにより、保護フィルムが省略されて、液晶表示装置の薄型化、軽量化、低コスト化に貢献することができる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において量を規定する「部」は、特に断らない限り「重量部」を表す。
〔評価方法〕
(1)レターデーションRe478、Re550及びRe800の測定方法
レターデーションRe478、Re550及びRe800は、自動複屈折計(王子計測機器株式会社製 KOBLA−21ADH)で測定した。
(2)ヘイズの測定方法
ヘイズは、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH−2000)で測定した。
(3)耐衝撃性の評価方法
用意した位相差フィルムから直径40mmのサイズに積層フィルムを切り出し、5.5gの金属球を高さを変えて落として、積層フィルムの割れた高さを記録した。
前記の操作を20回繰り返して行い、JIS K7211−01に記載された方法で50%破壊高さを算出した。50%破壊高さが、13cm以上であれば「良」、13cm未満であれば「不良」とした。
(4)ガラス転移温度Tgの測定方法
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(セイコーインストルメンツ社製EXSTAR6220)を用いて測定した。
(5)重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnの測定方法
テトラヒドロフランを溶媒にして30℃にてGPCで測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
〔用意したポリフェニレンエーテルの説明〕
(1)PPE1
SABICイノベーティブプラスチックス社製のポリフェニレンエーテル(品名SA120、Mw=6300、Mw/Mn=2.7)を用意した。この樹脂を、以下、適宜「PPE1」と略称する。
(2)PPE2
アルドリッチ社製のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)(アルドリッチ社カタログNo.18178−1、Mw=55000、Mw/Mn=2.4)を用意した。この樹脂を、以下、適宜「PPE2」と略称する。
〔製造例1:ポリスチレン系樹脂PS1の合成〕
十分に乾燥し窒素置換した、撹拌装置を備えたステンレス鋼製反応器に、脱水シクロヘキサン960部、スチレンモノマー240部及びジブチルエーテル3.81部を仕込み、40℃で撹拌しながらn−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)0.65部を添加して重合を開始した。同条件下で3時間重合を行った後、イソプロピルアルコール1.26部を添加して反応を停止させた。得られた樹脂はポリスチレンであり、以下、適宜記号「PS1」と略称する。
製造されたポリスチレンPS1の重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、Mw=180,000、Mw/Mn=1.04であった。
〔製造例2:ポリスチレン系樹脂PS2の合成〕
n−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)の添加量を0.85部としたこと以外は製造例1と同様にして、ポリスチレンを得た。得られたポリスチレンを、以下、適宜「PS2」と略称する。
製造されたポリスチレンPS2の重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、Mw=80,000、Mw/Mn=1.05であった。
〔製造例3:ポリスチレン系樹脂PS3の合成〕
n−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)の添加量を0.45部としたこと以外は製造例1と同様にして、ポリスチレンを得た。得られたポリスチレンを、以下、適宜「PS3」と略称する。
製造されたポリスチレンPS3の重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、Mw=400,000、Mw/Mn=1.05であった。
〔製造例4:熱可塑性樹脂組成物p2の製造〕
(1)ゴム粒子の製造
特公昭55−27576号公報の実施例3に記載の方法で、ゴム粒子を製造した。ゴム粒子は、球形三層構造を有し、芯層が、メタクリル酸メチルおよび少量のメタクリル酸アリルからなる架橋重合体であり、中間層が、アクリル酸ブチル、スチレンおよび少量のメタクリル酸アリルからなる架橋重合体であり、殻層が、メタクリル酸メチルおよび少量のアクリル酸エチルからなる重合体である。
また、得られたゴム粒子の数平均粒子径は0.19μmであった。
(2)メタクリル樹脂組成物の製造方法
メタクリル酸アルキルエステル重合体樹脂(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル(質量比)=97.8/2.2)70部と、前記ゴム粒子30部とを混練して、熱可塑性樹脂組成物p2としてメタクリル酸アルキルエステル重合体樹脂組成物(以下、適宜「PMMA樹脂組成物」と略称する。ゴム粒子30%含有)を得た。
〔実施例1〕
樹脂Aに相当するPPE1を25重量部と、樹脂Bに相当するPS1を75重量部とを、二軸押出機で混練し、PPE樹脂組成物1のペレットを作製した。
用意したPPE樹脂組成物1(a層)とPMMA樹脂組成物(b層)とを、280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の3層構造で、30/80/30(μm)の厚みを有する延伸前フィルムを得た。
この延伸前フィルムを、使用したPPE樹脂組成物1のガラス転移温度よりも5℃高い延伸温度で、延伸倍率1.5倍、延伸速度10m/分で縦一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
得られた位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。その結果を表1に示す。
〔実施例2〕
樹脂Aに相当するPPE1を30重量部と、樹脂Bに相当するPS1を70重量部とを、二軸押出機で混練し、PPE樹脂組成物2のペレットを作製した。
用意したPPE樹脂組成物2を用い、延伸前フィルムの延伸温度をPPE樹脂組成物2のガラス転移温度よりも5℃高い温度に変更したこと以外は実施例1と同様の要領で位相差フィルムを製造した。
得られた位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。その結果を表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1と同様にして作製したPPE樹脂組成物1のペレットを用いて、PPE樹脂組成物1を280℃で押出成形することにより、P1層の単層構造で、130μmの厚みを有する延伸前フィルムを得た。
この延伸前フィルムを、実施例1と同様の条件で縦一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
得られた位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。その結果を表1に示す。
〔比較例2〕
PPE2を25重量部と、PS1を75重量部とを、二軸押出機で混練し、PPE樹脂組成物3のペレットを作製した。
用意したPPE樹脂組成物3(a層)とPMMA樹脂組成物(b層)とを、280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の3層構造で、30/80/30(μm)の厚みを有する延伸前フィルムを得た。
この延伸前フィルムを、使用したPPE樹脂組成物3のガラス転移温度よりも5℃高い延伸温度で、延伸倍率1.5倍、延伸速度10m/分で縦一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
得られた位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。その結果を表1に示す。
〔比較例3〕
PS1の代わりにPS2を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPPE樹脂組成物4を得、PPE樹脂組成物1の代わりにPPE樹脂組成物4を用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差フィルムを製造した。
得られた位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。その結果を表1に示す。
〔比較例4〕
PS1の代わりにPS3を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPPE樹脂組成物5を得、PPE樹脂組成物1の代わりにPPE樹脂組成物5を用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差フィルムを製造した。
得られた位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2011113004
表1から分かるように、実施例1,2においては、ヘイズが低く、耐衝撃性に優れ、且つ逆波長分散性を有する位相差フィルムが得られている。
これに対し、比較例1の位相差フィルムは、ヘイズ及び逆波長分散性については良好であるものの、耐衝撃性に劣る。これは、比較例1の位相差フィルムはPPE樹脂組成物1からなる層のみを有する単層構造のフィルムであるため、PMMA樹脂組成物からなる層による補強作用が得られず、低分子量のPPE1を含むPPE樹脂組成物1の強度に劣る傾向が位相差フィルムにそのまま反映されたためと推察される。
また、比較例2の位相差フィルムは、ヘイズ及び波長分散性が良好でなく、また、耐衝撃性に劣る。これは、固有複屈折値が正の樹脂として使用したPPE2が高分子量の樹脂であったために、PPE樹脂組成物3において樹脂が良好に分散しなかったためと推察される。樹脂の分散性が良好でない場合、PPE樹脂組成物3からなる層には一方の樹脂が偏ったダマが多量に生じ、当該ダマに起因するフィッシュアイによってヘイズが高くなったり、フィッシュアイを起点としてクラッキングが生じやすくなったりしたものと考えられる。また、樹脂の偏りが生じることにより、フィルムの位置ごとに固有複屈折値が正の樹脂と負の樹脂との比率がぶれて、期待した位相差が発現せず逆波長分散性が発現しなかったものと考えられる。
さらに、比較例3の位相差フィルムは、ヘイズ及び逆波長分散性については良好であるものの、耐衝撃性に劣る。これは、固有複屈折値が負の樹脂として使用したPS2が低分子量の樹脂であったため、PPE1の分子量が低いこととあいまってPPE樹脂組成物4が過度に脆くなり、PMMA樹脂組成物からなる層による補強を行なっても位相差フィルムに十分な耐衝撃性が得られなかったためと推察される。
また、比較例4の位相差フィルムは、ヘイズ及び波長分散性が良好でなく、また、耐衝撃性に劣る。これは、固有複屈折値が負の樹脂として使用したPS3が過度に高分子量の樹脂であったために、PPE樹脂組成物3において樹脂が良好に分散しなかったためと推察される。
本発明の位相差フィルムは、例えば光学補償フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の光学フィルムとして使用でき、特に液晶表示装置の光学補償フィルムに好適である。

Claims (3)

  1. 固有複屈折値が正の樹脂Aと固有複屈折値が負の樹脂Bとを含む樹脂組成物p1からなるP1層と、前記P1層に接して設けられた熱可塑性樹脂組成物p2からなるP2層とを有する延伸前フィルムを延伸してなる位相差フィルムであって、
    前記樹脂Aが重量平均分子量が5,000〜10,000のポリフェニレンエーテルであり、
    前記樹脂Bが重量平均分子量が130,000〜300,000のポリスチレン系樹脂である、位相差フィルム。
  2. 請求項1に記載の位相差フィルムであって、
    前記熱可塑性樹脂組成物p2が、メタクリル酸エステル重合体(イ)と粒子(ロ)とを含有し、
    前記粒子(ロ)が、メタクリル樹脂からなる外層および架橋構造を有するゴムからなる内層を有する、位相差フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の位相差フィルムであって、
    波長478nmの光における面内方向のレターデーションRe478、波長550nmの光における面内方向のレターデーションRe550、および波長800nmの光における面内方向のレターデーションRe800が、Re478<Re550<Re800の関係を満たす、位相差フィルム。
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