JP2011248045A - 楕円偏光板セット及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液晶セルの両側に配置される楕円偏光板の位相差値に経時的な差が生じにくく、光漏れやコントラストの低下が生じにくい楕円偏光板セット及び液晶パネル並びに液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶セル3の背面側に配置される第1の楕円偏光板10と、液晶セル3の視認側に配置される第2の楕円偏光板20とを備えた液晶用楕円偏光板セット30であって、第1の楕円偏光板10は、少なくとも第1の1/4波長板11と、第1の偏光フィルム13で積層されており、第2の楕円偏光板20は、少なくとも第2の1/4波長板21と、第2の偏光フィルム23で積層されている。第1の1/4波長板11と第2の1/4波長板21は、いずれもポリプロピレン系樹脂からなり、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値の経時変化がほぼ同じである。1/4波長板11,21は、材料、製膜方法、延伸方向がほぼ同じ条件で製造されることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、楕円偏光板セット及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置に関し、特に、ポリプロピレン系樹脂製の1/4波長板を有する楕円偏光板セット及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置に関する。
携帯電話,携帯情報端末,コンピュータ用のモニター,テレビなどの情報用表示デバイスとして、液晶表示装置(LCD)が使用されている。近年、消費電力が少なく、低電圧で駆動し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が急速に普及してきている。液晶技術の進展に伴い、さまざまなモードの液晶表示装置が提案されており、応答速度やコントラスト、狭視野角といった液晶表示装置に特有の問題点が解消されつつある。しかしながら、液晶表示装置は、依然として陰極線管(CRT)に比べて視野角が狭いことが指摘されており、視野角拡大のための各種試みがなされている。
例えば、携帯電話等に代表される反射型や半透過反射型液晶表示装置には、位相差フィルムを直線偏光板に所定の角度で貼り合わせた楕円偏光板が使用されている。一般に、位相差フィルムとして、1/4波長板や、1/4波長板と1/2波長板とを組み合わせて広帯域で1/4波長板として機能する複合位相差板が用いられている。このような位相差フィルムとしては、例えば、特開平5−100114号公報(特許文献1)に開示されたようなポリカーボネート系樹脂の延伸フィルムや、特開平11−149015号公報(特許文献2)に開示されたような環状ポリオレフィン樹脂の延伸フィルムが用いられている。
最近では、液晶表示装置の薄型化への要求が高まるに伴い、偏光板に代表される光学部材にも、これを構成する光学フィルムの薄膜化が強く求められている。その要求に適した薄膜の位相差フィルムを得る方法としては、横一軸延伸を採用することができる。しかしながら、上述したポリカーボネート系樹脂や環状ポリオレフィン系樹脂では、薄膜で、かつ光学的に完全一軸性を実現するのに必要な高倍率の延伸を行うと、フィルムがその高倍率延伸に耐えられずに破断するため、前記の薄膜完全一軸品が得られないという問題があった。
一方、例えば、特開2009−134257号公報(特許文献3)には、ポリプロピレン系樹脂を用いて位相差フィルムを製造することが開示されている。ポリプロピレン系樹脂を用いると、高倍率で横一軸延伸することが可能であり、薄膜で、かつ光学的に完全一軸性の位相差フィルムを得ることができる。しかし、ポリプロピレン系樹脂製の位相差フィルムは、製造後の面内位相差値Rが経時的に上昇しやすいという特性があり、実用に適用しにくい面があった。さらに、同じポリプロピレン系樹脂製の位相差フィルムであっても、その材料や製造方法などの違いによって面内位相差値Rの経時変化の程度が異なるという特性もあり、実用化をより困難にしていた。
ところで、通常の液晶表示装置では、液晶セルの両面に楕円偏光板がセットで配置される。例えば、特許文献3にも、液晶セルの視認側と背面側(バックライト側)のそれぞれに楕円偏光板をセットで配置することが開示されている。液晶セルの視認側と背面側に配置される楕円偏光板の1/4波長板は、表示性能の低下防止やコントラスト比の向上など種々の観点から、通常、異なる材料や製造方法で製造された異なる種類のものが適宜選択される。例えば、特開2010−079183号公報(特許文献4)には、環境温度や湿度が変化した場合に、液晶セルの両側に配置される位相差フィルムのR/Rth変化を相殺することで、表示性能の変化を抑える技術が開示されている。この特許文献の実施例では、リア側(バックライト側)に配置される位相差フィルムとしてセルロースアシレートフィルムをバンド流延して得られたフィルムが、フロント側(視認側)に配置される位相差フィルムとして脂環式オレフィン系樹脂を二軸延伸して得られたフィルムがそれぞれ用いられている。
特開平5−100114号公報(段落0015,0020,0021) 特開平11−149015号公報(段落0032,0033) 特開2009−134257号公報(請求項1〜10、段落0065、0066、図3,4) 特開2010−079183号公報(請求項1、段落0057〜0073)
このように、液晶セルの両側に配置される1/4波長板は、通常、異なる材料や製造方法で製造されたものが使用される。しかしながら、上述したとおりポリプロピレン系樹脂製の1/4波長板は、材料や製造方法などの違いにより面内位相差値の経時変化に差が生じやすいという特性がある。このため、面内位相差値の経時特性が異なる1/4波長板を液晶セルの両側に配置した液晶表示装置では、液晶セルの視認側と背面側との間で面内位相差値に経時的な差が生じやすいという不都合があった。したがって、液晶表示装置の長期使用により、例えば黒表示の際の光漏れが生じたり、コントラストが低下したりするという問題があった。
本発明の目的は、液晶セルの両側に配置される楕円偏光板の面内位相差値に経時的な差が生じにくく、その結果、光漏れやコントラストの低下など光学特性の低下が生じにくい楕円偏光板セットを提供することにある。また、本発明の他の目的は、このような楕円偏光板セットを備えた液晶パネルや液晶表示装置を提供することにある。
発明者らは、上述したとおり通常は異なる種類で構成される液晶セル両側の1/4波長板を、あえて同じ種類とすることで、液晶セルの両側で1/4波長板の面内位相差値の経時的な変化をほぼ同等とした。これにより、液晶セル両側の1/4波長板の面内位相差値に経時的な差を生じにくくすることができることを認識し、以下の発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題は、本発明の楕円偏光板セットによれば、液晶セルの背面側に配置される第1の楕円偏光板と、前記液晶セルの視認側に配置される第2の楕円偏光板とを備えた楕円偏光板セットであって、前記第1の楕円偏光板は、少なくとも第1の1/4波長板を有する第1の位相差層と、第1の偏光フィルムで積層されており、前記第2の楕円偏光板は、少なくとも第2の1/4波長板を有する第2の位相差層と、第2の偏光フィルムで積層されており、前記第1の1/4波長板と前記第2の1/4波長板は、いずれもポリプロピレン系樹脂からなり、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値の経時変化がほぼ同じであることにより解決される。
また、前記第1の1/4波長板と前記第2の1/4波長板は、材料、製膜方法及び延伸方法がほぼ同じ条件で製造されることが好ましい。
このとき、前記第1の1/4波長板と前記第2の1/4波長板は、いずれも100℃以上170℃以下の温度で、倍率1.3倍以上に固定端延伸されており、100℃で150時間保持することによるヘイズ値の変化が%表示のヘイズ値の差で0.5ポイント以下であると好適である。
また、前記第1の楕円偏光板と前記第2の楕円偏光板のいずれか一方は、偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが35〜55°の角度で交差しており、もう一方の楕円偏光板は、偏光フィルムと1/4波長板の遅相軸と125〜145°の角度で交差していることが好ましい。
さらに、前記第1の位相差層は、前記液晶セル側に配置された前記第1の1/4波長板と前記第1の偏光フィルム側に配置された第1の1/2波長板とで構成され、前記第2の位相差層は、前記液晶セル側に配置された前記第2の1/4波長板と前記第2の偏光フィルム側に配置された第2の1/2波長板とで構成され、前記第1の1/2波長板と前記第2の1/2波長板は、いずれもポリプロピレン系樹脂からなり、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値の経時変化がほぼ同じであることが好ましい。
この場合、前記第1の1/2波長板と前記第2の1/2波長板は、材料、製膜方法及び延伸方法がほぼ同じ条件で製造されると好適である。
また、前記第1の1/2波長板と前記第2の1/2波長板は、いずれも100℃以上170℃以下の温度で、倍率1.3倍以上に固定端延伸されており、100℃で150時間保持することによるヘイズ値の変化が%表示のヘイズ値の差で0.5ポイント以下であることが好ましい。
この場合、前記第1の楕円偏光板と前記第2の楕円偏光板のいずれか一方は、偏光フィルムの吸収軸と1/2波長板の遅相軸とが5〜25°、偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが65〜85°の角度で交差しており、もう一方の楕円偏光板は、偏光フィルムの吸収軸と1/2波長板の遅相軸とが155〜175°、偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが95〜115°の角度で交差していると好適である。
上記課題は、本発明の液晶パネルによれば、上記いずれかに記載された楕円偏光板セットと、液晶セルとを備え、前記第1の楕円偏光板、前記液晶セル及び前記第2の楕円偏光板がこの順で配置され、前記第1の楕円偏光板は前記第1の位相差層を前記液晶セル側に、前記第2の楕円偏光板は前記第2の位相差層を前記液晶セル側に向けて配置されていることにより解決される。
また、上記課題は、バックライトと、光拡散板と、上記に記載の液晶パネルとをこの順で備え、前記液晶パネルは、前記第1の楕円偏光板を前記光拡散板側に向けて配置されることにより解決される。
本発明の楕円偏光板セットによれば、液晶セルの両側に配置される1/4波長板の面内位相差値の経時変化がほぼ同じであるため、液晶セルの両側で面内位相差値に経時的な差が生じにくい。したがって、黒表示の際に光漏れが少なく、高いコントラストを維持することができる。
第1の実施形態に係る液晶表示装置の断面模式図である。 第1の実施形態の液晶パネルを分解した状態を示した斜視図である。 第1の実施形態における偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸との関係を示した説明図である。 第2の実施形態に係る液晶表示装置の断面模式図である。 第2の実施形態の液晶パネルを分解した状態を示した斜視図である。 第2の実施形態における偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板及び1/2波長板の遅相軸との関係を示した説明図である。
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明する部材や配置等によって限定されず、これらの部材等は本発明の趣旨に沿って適宜改変することができる。
<第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態に係る楕円偏光板セット、液晶パネル、液晶表示装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の液晶表示装置1は、液晶セル3と、この液晶セル3の背面側(リア側)に配置される第1の楕円偏光板10と、液晶セル3の視認側(フロント側)に配置される第2の楕円偏光板20と、第1の楕円偏光板10側に配置されるバックライト5と、このバックライト5と第1の楕円偏光板10との間に配置される光拡散板7と、を備えている。
第1の楕円偏光板10と第2の楕円偏光板20は、本発明の楕円偏光板セットを構成している。液晶セル3と第1の楕円偏光板10と第2の楕円偏光板20は、本発明の液晶パネル30を構成している。なお、この図では、層構成の理解を容易にするために、液晶セル3と第1の楕円偏光板10の間、液晶セル3と第2の楕円偏光板20の間、バックライト5と光拡散板7、第1の楕円偏光板10と光拡散板7の間にスペースを空けた状態で液晶表示装置1を表示しているが、実際にはこれらの部材間は密着した状態となっている。
図1,図2に示すように、第1の楕円偏光板10は、第1の1/4波長板11(第1の位相差層)と、第1の偏光フィルム13と、第1の保護フィルム15とがこの順に積層された層構成を有している。第1の楕円偏光板10は、第1の1/4波長板11を液晶セル3側に向けて、第1の保護フィルム15をバックライト5側に向けて配置されている。第2の楕円偏光板20は、第2の1/4波長板21(第2の位相差層)と、第2の偏光フィルム23と、第2の保護フィルム25とがこの順に積層された層構成を有している。第2の楕円偏光板20は、第2の1/4波長板21を液晶セル3側に向けて、第2の保護フィルム25を外側(視認側)に向けて配置されている。
[1/4波長板(位相差層)]
第1の1/4波長板11(第1の位相差層)と第2の1/4波長板21(第2の位相差層)はいずれも、面内に配向した樹脂フィルムを少なくとも1枚含み、光学異方性を有する波長板である。1/4波長板は、可視光の波長領域(380〜780nm)のいずれかの光に対してほぼ1/4波長(90°)の位相差を示す位相差フィルムであり、直線偏光と円偏光を相互に変換する機能を有するとともに、液晶セル3内部の液晶などの視野角を補償する機能を有している。
1/4波長板11,21の面内位相差値Rは、いずれも10〜300nm程度の範囲から適宜選択することが可能であり、好ましくは70〜160nmであり、より好ましくは80〜150nmである。この面内位相差値Rは、液晶表示装置1の種類や目的に応じて、楕円偏光の楕円率や長軸方位角などを考慮して適宜決定することができる。1/4波長板11,21の位相差軸の公差は、液晶表示装置1の正面コントラストの観点から、中心値±5nm以内、好ましくは±3nm以内である。
1/4波長板11,21は、いずれもポリプロピレン系樹脂を含む位相差フィルムで構成されている。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体で構成されてもよく、ポリプロピレンと他のコモノマーとの共重合体であってもよい。
プロピレンに共重合されるコモノマーとしては、例えば、エチレンや炭素原子数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。この場合、α−オレフィンの具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上C);1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上C);1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上C);1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上C);1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン(以上C);1−ノネン(C);1−デセン(C10);1−ウンデセン(C11);1−ドデセン(C12);1−トリデセン(C13);1−テトラデセン(C14);1−ペンタデセン(C15);1−ヘキサデセン(C16);1−ヘプタデセン(C17);1−オクタデセン(C18);1−ノナデセン(C19)等。このうち、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが好ましい。共重合性の観点からは、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、とりわけ1−ブテンや1−ヘキセンが好適である。
共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。好ましい共重合体として、プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体が挙げられる。プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体において、エチレンユニットの含量や1−ブテンユニットの含量は、例えば、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により赤外線(IR)スペクトル測定を行うことで求めることができる。
位相差フィルムとしての透明度や加工性を上げる観点からは、プロピレンを主体とし、任意の不飽和炭化水素とのランダム共重合体にするのが好ましく、中でもエチレンとの共重合体が好ましい。共重合体とする場合、プロピレン以外の不飽和炭化水素類の共重合割合は、1〜10重量%の範囲内にするのが有利であり、より好ましい共重合割合は3〜7重量%の範囲内である。プロピレン以外の不飽和炭化水素類のユニットを1重量%以上とすることで、位相差フィルムの加工性や透明性が上がるため好ましい。一方、その割合が10重量%を超えると、樹脂の融点が下がり、耐熱性が悪くなるため好ましくない。なお、二種類以上のコモノマーとポリプロピレンとの共重合体とする場合には、その共重合体に含まれるすべてのコモノマーに由来するユニットの合計含量が1〜10重量%であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、プロピレンと他の共重合性コモノマーとを共重合する方法によって製造することができる。公知の重合用触媒としては、例えば、以下の触媒を挙げることができる。
(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒
(2)マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系
(3)メタロセン系触媒等
これら触媒系の中でも、(2)に示す触媒系が一般的である。より具体的には、有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、テトラエチルジアルモキサン等が好ましい。また、電子供与性化合物としては、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン等が好ましい。
一方、(1)に示す固体触媒成分としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載の触媒系が挙げられる。また、(3)に示すメタロセン系触媒としては、例えば、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、特許第2668732号公報等に記載の触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンのような炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法等によって製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。なお、耐熱性の点から、シンジオタクチックか、あるいはアイソタクチックが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜200g/10分、特に0.5〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。なお、このMFRの値は、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定される値である。MFRがこの範囲にあるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負荷をかけることなく均一なフィルム状物を得ることができる。
このポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加物が配合されていてもよい。添加物としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、酸化防止剤としては、例えば1分子中にフェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤等を用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば2−ヒドロキシベンゾフェノン系やヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系のような紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線遮断剤等が挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリン酸のような高級脂肪酸、それらの塩等が挙げられる。造核剤としては、例えばソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンのような高分子系造核剤等が挙げられる。アンチブロッキング剤としては、無機系、有機系を問わず球状やそれに近い形状の微粒子を使用できる。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
[位相差フィルムの製造方法]
位相差フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を含む樹脂材料をフィルム状に成型して未延伸フィルムに製膜し、この未延伸フィルムを所定の延伸方向に延伸処理することで製造することができる。未延伸フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を任意の方法で製膜して長尺状の未延伸フィルムとしたものである。製膜方法としては、例えば、溶融樹脂からの押出成形法や、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延した後で溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法等が挙げられる。これにより、実質的に面内位相差がないポリプロピレン系樹脂の長尺状の未延伸フィルムを得ることができる。なお、これらの製膜方法のうち、生産性の観点からは溶融樹脂からの押出成形法が好ましい。
以下、この押出成形法について詳細に説明する。この押出成型法では、まずポリプロピレン系樹脂を押出機中でスクリューの回転によって溶融混練し、続いてTダイからシート状に押し出す。押し出される溶融状シートの温度は、180〜300℃の範囲内とすることが好ましく、230〜270℃の範囲内とすることがより好ましい。溶融状シートの温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られる未延伸フィルムの厚みが不均一になりやすい。その結果、この未延伸フィルムを用いて製造した位相差フィルムに位相差ムラが生じやすくなる。また、溶融状シートの温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすくなり、シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりする場合があるため好ましくない。
押出機は、単軸押出機であっても二軸押出機であってもよい。例えば、単軸押出機の場合は、L/Dが24〜36程度、圧縮比が1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ、マドック型の混練部分を有するタイプ等のスクリューを用いることができる。ここで、L/Dとは、スクリューの長さLと直径Dの比を意味する。また、圧縮比とは、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積と樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積との比(前者/後者)を意味する。ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36で、圧縮比が2.5〜3.5であるバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を抑制するために、押出機内は窒素雰囲気か真空にすることが好ましい。さらに、ポリプロピレン系樹脂が劣化したり分解したりすることで生じる揮発ガスを取り除くため、押出機の先端に1〜5mmφのオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。オリフィスの押出機先端部分の樹脂圧力を高めるとは、先端での背圧を高めることを意味しており、これにより押出の安定性を向上させることができる。用いるオリフィスの直径は、より好ましくは2〜4mmφである。
押出に使用されるTダイは、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましい。また、Tダイのリップ部分は、溶融したポリプロピレン系樹脂との摩擦係数が小さくなるようめっきやコーティングされ、更にリップ先端を0.3mmφ以下に研磨してシャープなエッジ形状とすることが好ましい。摩擦係数が小さくなるめっきとしては、タングステンカーバイド系やフッ素系の特殊めっき等が挙げられる。このようなTダイを用いることにより、目ヤニの発生を抑制でき、同時にダイラインを抑制できるので、外観の均一性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。
Tダイは、マニホールドがコートハンガー形状であって、かつ以下の条件(1)又は(2)を満たすことが好ましく、更には条件(3)又は(4)を満たすことがより好ましい。
(1)Tダイのリップ幅が1500mm未満:Tダイの厚み方向長さ>180mm
(2)Tダイのリップ幅が1500mm以上:Tダイの厚み方向長さ>220mm
(3)Tダイのリップ幅が1500mm未満:Tダイの高さ方向長さ>250mm
(4)Tダイのリップ幅が1500mm以上:Tダイの高さ方向長さ>280mm
このような条件を満たすTダイを用いることにより、Tダイ内部での溶融状ポリプロピレン系樹脂の流れを整えることができ、かつリップ部分でも厚みムラを抑えながら押し出すことができる。このため、より厚み精度に優れ、より均一な位相差を有する未延伸フィルムを得ることができる。
さらには、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプやリーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。これにより、ポリプロピレン系樹脂の吐出量を一定に制御し、未延伸フィルムの膜厚のバラツキ範囲を低減させることができる。
Tダイから押し出された溶融状シートは、金属製冷却ロール(チルロールやキャスティングロールともいう)とタッチロールとの間に挟圧させて冷却固化することで、所望の未延伸フィルムを得ることができる。タッチロールは、金属製冷却ロールの周方向に圧接して回転する弾性体を備えた部材である。このタッチロールは、ゴム等の弾性体がそのまま表面となっているものでもよいし、弾性体ロールの表面を金属スリーブの外筒で被覆したものでもよい。表面が弾性体となっているタッチロールを用いる場合は、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとタッチロールの間に熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを介在させて挟圧することもできる。一方、外筒で被覆したタッチロールを用いる場合は、通常、金属製冷却ロールとタッチロールの間に、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを直接挟んで冷却する。
上述のような金属製冷却ロールとタッチロールとで挟んで溶融状シートを冷却固化させる場合、金属製冷却ロールとタッチロールのいずれも予め表面温度を低くしておき、溶融状シートを急冷する必要がある。両ロールの表面温度は、例えば0〜30℃の範囲に調整することが好ましい。これらの表面温度が30℃を超えると、溶融状シートの冷却固化に時間がかかるため、ポリプロピレン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られる位相差フィルムが透明性に劣るため好ましくない。両ロールの表面温度は、好ましくは30℃未満、更に好ましくは25℃未満である。反対に、両ロールの表面温度が0℃を下回ると、金属製冷却ロールの表面に結露して水滴が付着し、得られる位相差フィルムの外観を悪化させやすくなるため好ましくない。
金属製冷却ロールの表面は未延伸フィルムの表面に転写されるため、金属製冷却ロールの表面に凹凸があると、得られる位相差フィルムの厚み精度を低下させる場合がある。したがって、金属製冷却ロールの表面は可能な限り鏡面状態とすることが好ましい。具体的には、金属製冷却ロールの表面の粗度は、最大高さの標準数列で表して0.3S以下であることが好ましく、更には0.1〜0.2Sであることがより好ましい。
また、金属製冷却ロールの回転ムラに由来する未延伸フィルムの膜厚のバラツキ範囲を低減するため、精密減速機を備えたモータを設置することが好ましい。精密減速機を設置することで、金属製冷却ロールの回転ムラを回転速度の±0.5%以内に調整することが可能となり、長尺方向の膜厚のバラツキ範囲を低減することができる。
タッチロールの弾性体の表面硬度は、JIS K 6301に規定されるスプリング式硬さ試験(A形)の測定値で65〜80であることが好ましく、更には70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度の弾性体を用いることにより、溶融状シートにかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ未延伸フィルムの成型時に金属製冷却ロールとタッチロールとの間に溶融状シートのバンク(樹脂溜り)が生じにくい。
溶融状シートを挟圧するときの圧力(線圧)は、金属製冷却ロールに対してタッチロールを押し付ける圧力により決まる。線圧は、50〜300N/cmとするのが好ましく、100〜250N/cmとするのがより好ましい。線圧をこの範囲にすることにより、バンクを形成することなく、一定の線圧を維持しながら未延伸フィルムを製造することが容易となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとともに熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを挟圧する場合、この二軸延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂と強固に熱融着しない樹脂であればよい。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル等を挙げることができる。これらの中でも、湿度や熱等による寸法変化の少ないポリエステルが最も好ましい。この場合の二軸延伸フィルムの厚みは、通常、5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
この方法において、Tダイのリップから溶融状シートが金属製冷却ロールとタッチロールとで挟圧されるまでの距離(エアギャップ)を200mm以下とすることが好ましく、160mm以下とすることがより好ましい。Tダイから押し出された溶融状シートは、リップからロールまでの間に引き伸ばされて配向が生じやすくなるが、エアギャップを短くすることで、配向のより小さい未延伸フィルムを得ることができる。エアギャップの下限値は、使用する金属製冷却ロールの径とタッチロールの径と使用するリップの先端形状により決定され、通常、50mm以上である。
この方法で未延伸フィルムを製造するときの加工速度は、溶融状シートを冷却固化するために必要な時間により決定される。使用する金属製冷却ロールの径が大きくなると、溶融状シートがその金属製冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、600mmφの金属製冷却ロールを用いる場合、加工速度は最大で5〜20m/分程度となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧された溶融状シートは、両ロールとの接触により冷却固化する。そして、必要に応じて端部をスリットした後、巻取り機に巻き取られてロール状の未延伸フィルムとなる。この際、未延伸フィルムを使用するまでの間、その表面を保護するために、その片面や両面に別の熱可塑性樹脂からなる表面保護フィルムを貼り合わせた状態で巻き取ってもよい。上述した熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムとともに溶融状シートを金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧した場合には、その二軸延伸フィルムを一方の表面保護フィルムとすることもできる。
この工程で用いる長尺状の未延伸フィルムは、その幅方向に連続的に測定した膜厚プロファイルにおける凸部膜厚の平均値と凹部膜厚の平均値との差(膜厚分布)が、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。ここで、「幅方向」とは、未延伸フィルムの面内において長尺方向に対して垂直な方向を意味する。「長尺方向」とは、機械方向(Machine Direction)を意味する。ここで、機械方向とは、未延伸フィルムが押出成形法によって製膜される場合はその未延伸フィルムが押し出される方向であるか、又はキャスト法によって製膜される場合はその未延伸フィルムが流延される方向である。
また、「凸部膜厚」とは、膜厚プロファイルに現れる膜厚の凸と凹の繰り返しのうち、各凸部における最大膜厚(各凸部の頂点における膜厚)を指す。一方、「凹部膜厚」とは、膜厚プロファイルに現れる膜厚の凸と凹の繰り返しのうち、各凹部における最小膜厚(各凹部の最底点における膜厚)を指す。ここでいう膜厚プロファイルとは、未延伸フィルムの任意の一点より幅方向に沿って1300mmの範囲の距離で連続的に測定された膜厚をいう。膜厚プロファイルの測定方法としては、未延伸フィルムの膜厚を連続的に測定できる手段であれば特に限定されないが、通常、接触式連続厚み計を用いて行われる。接触式連続厚み計としては、例えば、厚み計KG601B(アンリツ社製)を用いることができる。
なお、凸部膜厚の平均値と凹部膜厚の平均値との差が1μmを超える未延伸フィルムを用いると、得られる位相差フィルムの最大位相差値と最小位相差値の平均値との差も大きくなる。また、未延伸フィルムの膜厚は、特に制限されないが、10〜130μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。膜厚が130μmを超えると、延伸後に所望の位相差が得られにくくなる。また、膜厚が10μmを下回ると、延伸後の位相差フィルムにシワ等が発生しやすくなり、巻取りや貼合時の取扱い性に劣る場合がある。
延伸フィルム(位相差フィルム)は、上記工程で得られた未延伸フィルムに一軸延伸、二軸延伸など公知の延伸方向で延伸処理を施すことで製造することができる。特に、以下に記載する固定端延伸(製造方法1)が好ましく、横一軸延伸(製造方法2)により延伸フィルムを製造することがより好ましい。以下、この2種類の製造方法について詳細に説明する。
(製造方法1:固定端延伸)
位相差フィルムは、上記未延伸フィルムを直接、固定端延伸することにより、あるいは、未延伸フィルムに対して、他の延伸処理と固定端延伸とを施すことにより得ることができる。ここで、固定端延伸とは、未延伸フィルムの両端を固定しておき、固定された両端間の距離を広げながら未延伸フィルムに熱を与えることにより、広げた方向に未延伸フィルムを延伸する方法である。
他の延伸処理と固定端延伸とを施す製造方法の好ましい例としては、未延伸フィルムに対して自由端延伸と固定端延伸とを逐次的に施すことが挙げられる。ただし、この例に限定されるものではなく、後述する特定条件の固定端延伸処理がなされる限りにおいて、未延伸フィルムに対し任意の延伸処理を施すことができる。すなわち、固定端延伸と他の延伸処理とを組み合わせる場合、これらがどのような順序であっても、高温環境下における透過率と透明性の低下が生じにくい延伸フィルム(位相差フィルム)を得ることができる。ただし、ブリードを一層効果的に抑制する観点から、上記条件での固定端延伸が最終の延伸処理であることが好ましい。
光学的に均一性が高い延伸フィルムが得られやすいことから、固定端延伸としては固定端横延伸が好ましい。代表的な固定端横延伸の方法としては、テンター法が挙げられる。テンター法は、フィルム幅方向の両端をチャックで固定したフィルムを、チャック間隔を広げながらオーブン中で延伸する方法である。
通常、固定端横延伸は以下の工程を有する。
(i)ポリプロピレン系樹脂の融点付近の温度で未延伸フィルムを予熱する予熱工程;
(ii)予熱された未延伸フィルムを横方向(フィルムの幅方向)に固定端延伸する延伸工程;
(iii)横方向に延伸された延伸フィルムを熱固定する熱固定工程。
テンター法に用いる延伸機(テンター延伸機)としては、予熱工程を行なうゾーン、延伸工程を行なうゾーン、熱固定工程を行なうゾーンにおいて、それぞれの温度を独立に調節できる機構を備えたものが好ましい。このようなテンター延伸機を用いて固定端横延伸を行なうことにより、光学的に均一性が高い延伸フィルムを得ることができる。上記(i)〜(iii)の工程のうち、最も重要な工程は(ii)の工程であり、(i)と(iii)の工程は、高温環境下における透過率と透明性の低下が抑制された延伸フィルムを得るために適宜付加される。
(i)予熱工程
本工程は、固定端延伸を行なう延伸工程(ii)の前に行われる工程であり、未延伸フィルムを延伸するのに十分な温度まで加熱する工程である。予熱工程での予熱温度は、オーブンの予熱工程を行なうゾーンにおける雰囲気温度を意味し、ポリプロピレン系樹脂からなる未延伸フィルムの融点付近の温度が好ましい。具体的には、90〜180℃の範囲内の温度、好ましくは110〜160℃の範囲内の温度で予熱を行なう。予熱温度が90℃に満たないと、未延伸フィルムに熱が十分に与えられず、続く延伸工程(ii)で未延伸フィルムが固定端横延伸されるときに応力が不均一にかかり、得られる延伸フィルムの光学的な均一性に不利な影響を及ぼす場合がある。また、予熱温度が180℃を超えると、必要以上に熱が未延伸フィルムに与えられるため、未延伸フィルムが部分的に溶融してドローダウンする(下に垂れる)場合がある。テンター延伸機の予熱工程を行なうゾーンが2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの予熱温度は同じでもよいし、異なっていてもよい。
予熱工程での未延伸フィルムの滞留時間は、10〜120秒であることが好ましく、より好ましくは30〜90秒、更に好ましくは30〜60秒である。滞留時間とは、未延伸フィルムがテンター延伸機の予熱工程を行なうゾーン内に存在する時間を意味する。予熱工程での滞留時間が10秒に満たないと、未延伸フィルムに熱が十分に与えられず、続く延伸工程(ii)で未延伸フィルムが固定端横延伸されるときに応力が不均一にかかり、得られる延伸フィルムの光学的な均一性に不利な影響を及ぼす場合がある。また、滞留時間が120秒を超えると、必要以上に熱が未延伸フィルムに与えられるため、未延伸フィルムが部分的に溶融してドローダウンする場合がある。
(ii)延伸工程
予熱された未延伸フィルムは、本工程で横方向(フィルムの幅方向)に固定端延伸される。ここで、本工程における延伸温度は100℃以上170℃以下、好ましくは110℃以上160℃以下とされ、かつ、延伸倍率は1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上としている。これにより、得られる延伸フィルムは、高温環境下に晒されたときの透過率と透明性の低下が抑制される。具体的には、得られた延伸フィルムを100℃で150時間保持することによるヘイズ値の変化が%表示のヘイズ値の差で0.5ポイント以下、更には0.3ポイント以下とすることができる。
ここで、「ヘイズ値の変化が%表示のヘイズ値の差で0.5ポイント以下」とは、この延伸フィルムを100℃で150時間保持したときに、この保持後の延伸フィルムが示すヘイズ値(単位%)と、保持前の延伸フィルムが示すヘイズ値(単位%)との差が0.5以下であることを意味する。なお、ヘイズ値は、JIS K 7105に準拠して測定される。
ここで、延伸温度とは、オーブンの延伸工程を行なうゾーンにおける雰囲気温度を意味する。また、延伸倍率とは、未延伸フィルムの延伸方向における長さに対する固体端延伸後の延伸フィルムの延伸方向における長さの比を意味する。テンター延伸機を用いた固定端横延伸における延伸倍率は、テンター延伸機入口におけるチャックにて固定された未延伸フィルム両端間の距離に対するテンター延伸機出口におけるチャックにて固定された延伸フィルム両端間の距離の比である。延伸温度や延伸倍率が上記範囲を超えると、高温環境下に晒されたときのヘイズ値が顕著に増加するため好ましくない。
延伸工程(ii)における延伸温度は、上記範囲内であれば特に制限されず、たとえば、上記範囲内に属する一定温度であってもよいし、あるいは、上記範囲内において延伸温度を徐々に若しくは段階的に変化させてもよい。また、テンター延伸機の延伸工程を行なうゾーンが2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの延伸温度は同じでもよいし、異なっていてもよい。
延伸工程(ii)でのフィルムの滞留時間は、10〜1000秒が好ましく、30〜300秒であることがより好ましい。滞留時間とは、フィルムがテンター延伸機の延伸工程を行なうゾーン内に存在する時間を意味する。延伸工程での滞留時間が10秒に満たないと、急延伸により延伸応力が強くなり、得られる延伸フィルムの光学的な均一性に不利な影響を及ぼす場合がある。また、滞留時間が1000秒を超えると、生産性が落ちる問題がある。
(iii)熱固定工程
本工程は、延伸工程(ii)で延伸された延伸フィルムの光学的特性の安定性を効果的に確保するために実施される。この工程では、延伸工程(ii)における延伸フィルムの幅をそのまま保持した状態で、所定の熱固定温度のゾーンに通過させる。熱固定工程での熱固定温度は、オーブンの熱固定工程を行なうゾーンにおける雰囲気温度を意味する。熱固定温度は、好ましくは60〜180℃の範囲内、より好ましくは80〜160℃の範囲内である。熱固定温度が60℃に満たないと、最終的に得られる延伸フィルムの熱安定性が不十分となる場合がある。また、熱固定温度が180℃を超えると、必要以上に熱が延伸フィルムに与えられるため、延伸フィルムが部分的に溶融してドローダウンする場合がある。なお、テンター延伸機の熱固定工程を行なうゾーンが2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの熱固定温度は同じでもよいし、異なっていてもよい。
熱固定工程での延伸フィルムの滞留時間は、10〜120秒であることが好ましく、より好ましくは30〜90秒、更に好ましくは30〜60秒である。滞留時間とは、延伸フィルムがテンター延伸機の熱固定工程を行なうゾーン内に存在する時間を意味する。熱固定工程での滞留時間が10秒に満たないと、最終的に得られる延伸フィルムの熱安定性が不十分となる場合がある。また、滞留時間が120秒を超えると、生産性が落ちる問題がある。
(iv)熱緩和工程
固定端横延伸は、更に熱緩和工程を有してもよい。この熱緩和工程は、テンター法においては、通常、延伸工程(ii)と熱固定工程(iii)との間で行なわれ、熱緩和のゾーンは、他のゾーンから独立して温度設定が可能なように設けられるのが通例である。具体的には、熱緩和工程は、延伸工程(ii)において未延伸フィルムを所定の幅に延伸した後、残留歪を取り除くために、通常、チャックの間隔を延伸終了時の間隔より0.5〜7%程度狭くして行なわれる。
このようにして製造される延伸フィルムは、位相差フィルムとして機能する。上述した製造方法で製造された位相差フィルムは、高温環境下に晒されたときの透過率と透明性の低下がほとんど生じない。具体的には、100℃で150時間保持することによるヘイズ値の変化が%表示のヘイズ値の差で0.5ポイント以下、更には0.3ポイント以下であるポリプロピレン系樹脂フィルムが得られる。位相差フィルムの透過率と透明性の低下の原因として、高温環境下ではポリプロピレン系樹脂フィルムからブリード物が発生することが挙げられるが、上記の製造方法で製造した位相差フィルムでは高温環境下でのブリードの発生が抑制される。このため、高温環境下に晒されたときに位相差フィルムの透過率や透明性の低下がほとんど生じないと考えられる。
この位相差フィルムを液晶表示装置に適用することにより、高温環境下における液晶表示装置の表示性能を向上させることができる。このヘイズ値の変化が0.5ポイントを超えると、液晶表示装置の輝度が低下したり、更には正面コントラストが低下したりする場合があるため好ましくない。
(自由端延伸)
上述のように、固定端延伸される未延伸フィルムは、自由端延伸などの他の延伸処理が施されたものであってもよい。自由端延伸としては、自由端一軸延伸が好ましく用いられ、より好ましくは自由端縦一軸延伸が用いられる。自由端縦一軸延伸とは、一対の延伸ローラ間には未延伸フィルムを支持したり、未延伸フィルムに接触したりする搬送ローラ、支持用平板、支持用ベルト等の部材がなく、未延伸フィルムが幅方向に自由に収縮・拡張できる状態で縦延伸することをいう。
自由端縦一軸延伸方法としては、二つ以上のロールの回転速度差により未延伸フィルムを延伸する方法や、ロングスパン延伸法が挙げられる。ロングスパン延伸法とは、二対のニップロールとその間に配置されたオーブンを有する縦延伸機を用い、このオーブン中で未延伸フィルムを加熱しながら、上記二対のニップロールの回転速度差により延伸する方法である。これらの方法の中でも、光学的に均一性が高いフィルムが得られやすいことから、ロングスパン縦延伸法が好ましく、エアーフローティング方式のオーブンを用いたロングスパン縦延伸法がより好ましい。エアーフローティング方式のオーブンとは、内部に未延伸フィルムを導入した際に、未延伸フィルムの両面に上部ノズルと下部ノズルから熱風を吹き付けることが可能な構造を有するオーブンである。通常、エアーフローティング方式のオーブンには、複数の上部ノズルと下部ノズルがフィルムの流れ方向に交互に設置されており、未延伸フィルムは、上部ノズルと下部ノズルのいずれにも接触しない状態でオーブン内を通過することにより延伸される。
自由端縦一軸延伸における延伸温度(上記エアーフローティング方式のオーブンを用いる場合は、オーブン中の雰囲気温度)は、未延伸フィルムの融点付近の温度が好ましい。具体的には100℃〜170℃の範囲内の温度、好ましくは115℃〜155℃の範囲内の温度で自由端縦一軸延伸を行なう。自由端縦一軸延伸温度が100℃に満たないと、未延伸フィルムに熱が十分に与えられず、未延伸フィルムが延伸されるときに応力が不均一にかかり、得られる自由端縦一軸延伸フィルムの軸精度や位相差の均一性に不利な影響を及ぼす場合がある。また、自由端縦一軸延伸温度が170℃を超えると、必要以上に熱が未延伸フィルムに与えられるため、未延伸フィルムが部分的に溶融してドローダウンする場合がある。なお、オーブンが2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの延伸温度は同じでもよいし、異なっていてもよい。
自由端縦一軸延伸の延伸倍率は、1.1〜2倍であることが好ましい。この範囲の縦延伸倍率を採用することにより、その後の固定端横延伸工程を経て、光学的な均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
上述した工程で得られる位相差フィルムの膜厚は、特に制限されないが、5〜25μmが好ましく、8〜20μmがより好ましい。膜厚が25μmを超えると、薄膜化の効果が十分に現れない場合がある。また、膜厚が5μmを下回ると、位相差フィルムにシワ等が発生しやすくなり、巻取りや貼合時の取扱い性に劣る場合がある。
この位相差フィルムにおいて、面内の位相差値Rは、10〜400nmが好ましく、80〜300nmがより好ましい。厚み方向の位相差値Rthは、28〜240nmが好ましい。また、N係数は、0.9〜3.0の範囲であり、0.95〜2.0がより好ましい。これらの範囲から、適用される液晶表示装置1に要求される特性に合わせて、適宜選択すればよい。本実施形態の位相差フィルムは1/4波長板11,21として機能することから、面内位相差値Rは上述したとおり10〜300nm程度の範囲から適宜選択することが可能であり、好ましくは80〜150nmである。
なお、位相差フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をn、面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率をn、厚み方向の屈折率をn、厚みをdとしたときに、面内の位相差値R、厚み方向の位相差値Rth、N係数は、それぞれ下式(I)、(II)、(III)で定義される。
=(n−n)×d (I)
th=〔(n+n)/2−n〕×d (II)
=(n−n)/(n−n) (III)
また、これらの式(I)、(II)、(III)から、N係数と面内の位相差値Rと厚み方向の位相差値Rthとの関係は、次の式(IV)で表すことができる。
=Rth/R+0.5 (IV)
(製造方法2:横一軸延伸)
次に、位相差フィルムの他の製造方法について説明する。この製造方法では、以下の工程(A)〜(E)を経ることで、他の方法で製造した場合と比較して、面内位相差値Rの経時変化がより小さい位相差フィルムを製造することが可能となる。以下、この製造方法について詳細に説明する。
まず、長尺状の未延伸フィルムを、温度110〜140℃、滞留時間10〜120秒の範囲内で予熱する(工程(A))。なお、この工程(A)と後述する工程(B)、(C)からなる一連の処理を、本明細書においては「横一軸延伸」と呼ぶ。横一軸延伸とは、ロールから巻き出される長尺状の未延伸フィルムを幅方向(横方向)に延伸することをいう。代表的な横一軸延伸の方法としては、テンター法が挙げられる。テンター法は、フィルム幅方向の両端をチャックで固定した未延伸フィルムを、オーブン中でチャック間隔を広げて延伸する方法である。テンター法に用いる延伸機(テンター延伸機)は、通常、予熱工程(工程(A))を行うゾーン、延伸工程(工程(B))を行うゾーン、熱固定工程(工程(C))を行うゾーンにおいて、それぞれの温度を独立に調節できる機構を備えている。このようなテンター延伸機を用いて横一軸延伸を行うことにより、軸精度に優れ、かつ均一な位相差を有する位相差フィルムを得ることができる。
<工程(A)>
工程(A)(予熱工程)は、未延伸フィルムを延伸するのに十分な温度まで加熱する工程である。予熱工程での予熱温度は、未延伸フィルムの融点付近の温度、具体的には110〜140℃であり、好ましくは120〜135℃である。この予熱温度が110℃に満たないと、未延伸フィルムに熱が十分に与えられず、続く延伸工程(工程(B))で未延伸フィルムが横延伸されるときに応力が不均一にかかり、位相差フィルムの軸精度や位相差の均一性に不利な影響を及ぼす場合がある。また、予熱温度が140℃を超えると、必要以上に熱が未延伸フィルムに与えられるため、未延伸フィルムが部分的に溶融してドローダウンする場合がある。
この予熱工程での滞留時間は、10〜120秒であり、好ましくは30〜90秒、更に好ましくは30〜60秒である。滞留時間とは、テンター延伸機の予熱工程を行うゾーン内に未延伸フィルムが存在する時間を意味する。この滞留時間が10秒に満たないと、未延伸フィルムに熱が十分に与えられず、続く延伸工程(工程(B))で未延伸フィルムが横延伸されるときに応力が不均一にかかり、位相差フィルムの軸精度や位相差の均一性に不利な影響を及ぼす場合がある。また、滞留時間が120秒を超えると、必要以上に熱が未延伸フィルムに与えられるため、未延伸フィルムが部分的に溶融してドローダウンする場合がある。
<工程(B)>
工程(A)に続いて、予熱された未延伸フィルムを3〜10倍の延伸倍率で横一軸延伸する(工程(B))。横一軸延伸は、テンター延伸機の予熱工程を行うゾーンを通過した未延伸フィルムを、引き続き延伸工程を行うゾーンに通過させることにより行うことができる。延伸工程での延伸温度は、工程(A)における予熱温度より低いことが好ましい。予熱された未延伸フィルムを予熱工程よりも低い温度で延伸することにより、未延伸フィルムを均一に延伸できるようになる。その結果、光軸と位相差の均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。なお、延伸温度とは、テンター延伸機の延伸工程を行うゾーンにおける雰囲気温度を意味する。
延伸温度は、100℃〜140℃の範囲であり、予熱工程(工程(A))における予熱温度より5〜20℃低いことが好ましく、7〜15℃低いことがより好ましい。また、延伸倍率は、光軸を発現させる方向(遅相軸となる方向)で3〜10倍程度の範囲から、必要とする面内位相差値Rに合わせて適宜選択すればよく、好ましくは3〜7倍の範囲である。このときの延伸倍率を3倍以上とすることにより、後述するN係数を0.9〜1.1の範囲とすることができる。一方、延伸倍率が10倍を越えると、面内位相差値Rの均一性が損なわれる場合がある。
<工程(C)>
工程(B)に続いて、得られた延伸フィルムを熱固定温度60〜135℃、滞留時間10〜120秒の範囲内で熱固定する(工程(C))。延伸フィルムの熱固定は、テンター延伸機の延伸工程を行うゾーンを通過した延伸フィルムを、引き続き熱固定工程を行うゾーンに通過させることにより行うことができる。なお、熱固定温度とは、テンター延伸機の熱固定工程を行うゾーンにおける雰囲気温度を意味する。また、滞留時間とは、延伸フィルムがテンター延伸機の熱固定工程を行うゾーン内に存在する時間を意味する。この熱固定工程は、延伸フィルムの面内位相差値Rや光軸等光学的特性の安定性を効果的に確保するために実施する。この工程では、延伸工程における延伸フィルムの幅をそのまま保持した状態で、所定の熱固定温度のゾーンに通過させる。
熱固定温度は、上述したとおり60〜135℃であり、特に80〜100℃が好ましい。熱固定温度が60℃に満たないと、熱安定性に劣るため、例えば、高温環境下で面内位相差値Rの変動が生じる場合がある。また、135℃を超えると、必要以上の熱が延伸フィルムに加わり、面内位相差値変動の抑制効果が現れにくくなるため、高温環境下だけでなく常温下でも面内位相差値変動が過大になる場合がある。
<工程(D)>
工程(C)に続いて、熱固定された延伸フィルムに対して下記式(1)、(2)をともに満たす条件で4分間以上熱処理する。
y≧−15x+80 (1)
y≦−7.5x+130 (2)
式(1)、(2)中、xは0〜4の実数であり、熱処理の時間(単位:分)を示し、yは熱処理の温度(℃)を示す。
本発明者らは、位相差フィルムの製造後における面内位相差値Rの経時変化量と、熱処理工程における熱処理温度と熱処理時間との関係について検討を行った。その結果、熱固定工程(工程(C))を経た延伸フィルムに対して、それぞれ一定範囲内の熱処理温度と熱処理時間で熱処理を施すことで、面内位相差値Rの経時変化が十分に抑制された位相差フィルムを得ることができることが分かった。
熱処理工程(工程(D))における熱処理時間(滞留時間)に対する熱処理温度の変化は、式(1)と(2)を満たす範囲内であれば特に制限されるものではない。例えば、式(1)と(2)を満たす特定温度の一定値であってもよいし、傾斜した温度勾配であってもよい。また、熱処理装置の温度設定区域に対応した段階的な温度変化であってもよい。
熱処理の温度が式(1)と(2)で制限される範囲未満であると、製造された位相差フィルムの面内位相差値変動が十分抑制されず、面内位相差値Rが安定しない場合がある。また、熱処理の温度が式(1)と(2)で制限される上限を越えると、面内位相差値変動の抑制効果が現れにくくなり、逆に常温下や高温環境下ともに面内位相差値変動が過大になる場合がある。さらに、延伸フィルムの滞留時間(すなわち熱処理時間)が4分に満たないと、製造された位相差フィルムの面内位相差値変動が十分抑制されず、面内位相差値Rが安定しない場合がある。また、8分を超えると、面内位相差値変動の抑制効果が現れにくくなり、逆に常温下や高温環境下ともに面内位相差値変動が過大になる場合がある。
熱処理工程(工程(D))は、熱固定工程(工程(C))後、引き続き熱処理装置へ通じて行う。また、熱固定工程後、一旦ロール状に巻き取った後、再度横延伸機へ通じて行うこともできる。この場合、熱処理工程のための装置が省略できるため、位相差フィルムの製造に必要な設備費の観点から好ましい。
なお、「製造後における面内位相差値変動」とは、位相差フィルムの製造直後(後述する工程(E)終了直後)における位相差フィルムの面内位相差値(nm)と、製造後50日経過した位相差フィルムの面内位相差値(nm)との差の絶対値と定義される。位相差フィルムの面内位相差値Rは、位相差測定装置を用いて、測定波長590nmにて測定される値である。「製造後における面内位相差値の経時変化が十分に抑制された」とは、上述のように定義される製造後における面内位相差値変動が2.0nm以下であることをいい、好ましくは1.0nm以下、更に好ましくは0.5nm以下である。製造後における面内位相差値変動が2.0nm以下であれば、その位相差フィルムを用いた液晶表示装置1の表示性能が安定する。逆に、製造後における面内位相差値変動が2.0nmを超えると、その位相差フィルムを用いた液晶表示装置1の表示性能がばらつき、その商品価値を低下させる場合がある。
熱処理工程(C)における熱処理条件は、上記式(1)と下記式(3)をともに満たすものであることが好ましい。
y≦−15x+120 (3)
上記式(3)中、xは0〜4の実数であり、熱処理の時間(単位:分)を示し、yは熱処理の温度(℃)を示す。
式(1)と(3)を同時に満たす条件で熱処理を行うことによって、さらに、面内位相差値Rの経時変化が抑制されるという効果が奏される。
<工程(E)>
上述した熱処理が施された後の延伸フィルムは、通常、ロール状に巻き取られる。この延伸フィルムを温度20〜25℃、相対湿度50〜60%の環境下に7日間以上養生する(工程(E))。ロール状延伸フィルムをこの時間以上養生することにより、面内位相差値Rを更に安定化させることができる。こうして養生することで、面内位相差値変動の安定した位相差フィルムを得ることができる。
[偏光フィルム]
第1の偏光フィルム13と第2の偏光フィルム23は、いずれも直線偏光フィルムであり、ある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する方向の振動面を有する直線偏光を透過させる機能を有する。偏光フィルム13,23の種類は特に限定されず、公知の偏光フィルムを用いることが可能である。偏光フィルム13,23として、例えばポリビニルアルコールやエチレン・酢酸ビニル共重合体などの樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料を配向させたものを使用することができる。偏光フィルム13,23の製造方法は、公知の手法を採用することが可能であり、例えば、上述した樹脂フィルムをヨウ素や二色性色素で染色したのち、樹脂フィルムを一軸延伸し、ホウ酸処理を施す方法が挙げられる。
[保護フィルム]
第1の保護フィルム15と第2の保護フィルム25は、それぞれ偏光フィルム13,23の表面を保護するためのフィルムである。保護フィルム15,25は、透明樹脂で形成されるフィルムであれば特に限定されない。透明樹脂の例としては、メタクリル酸メチル系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂(メタクリル系樹脂とアクリル系樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン系共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテフタレート系樹脂、ポリエチレンテフタレート系樹脂に代表されるポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂等が挙げられる。
保護フィルム15,25の厚みは、通常、20〜200μmであり、好ましくは20〜120μmである。保護フィルム15,25の厚みが20μm未満であるとハンドリングしにくくなり、反対に厚みが120μmを超えると楕円偏光板10,20が厚くなりすぎる。保護フィルム15,25は、透明性に優れているものを用いることが好ましい。具体的には、JIS K 7105に準拠して測定される全ヘイズ値が10%以下のものが好ましく、7%以下がより好ましい。全へイズ値が10%以上では、白輝度が低下し、画面が暗くなるため好ましくない。液晶モジュールの組立工程における擦り傷防止の観点からハードコート処理を、プリズムシートとカラーフィルターの干渉によるモアレ低減の観点からアンチグレア処理を保護フィルム15,25に施してもよい。
[楕円偏光板の積層方法]
第1の1/4波長板11(第1の位相差層)と第2の1/4波長板21(第2の位相差層)は、いずれもポリプロピレン系樹脂を含み、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値Rの経時変化がほぼ同じである。ここで、「同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値Rの経時変化がほぼ同じ」とは、−50〜110℃の範囲内の任意の温度のもとで両波長板を同じ温度条件においたときに、製造後から任意時点で測定した面内位相差値Rの変化量の差が10nm以内であり、好ましくは5nm以内、より好ましくは3nm以内であることを意味する。例えば、両波長板を80℃の温度条件におき、1000時間経過した後の面内位相差値Rの変化量の差が上記の範囲内にあることが好ましい。本実施形態では、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値Rの経時変化がほぼ等しい波長板として、材料、製膜方法、延伸方向がほぼ同じ条件で製造された波長板を使用している。
ここで、材料がほぼ同じであるとは、ポリプロピレン系樹脂やその他の添加物の配合比がほぼ同じであり、上述したポリプロピレン系樹脂の重合方法や重合温度などがほぼ同じ条件で製造された樹脂材料を意味している。また、ポリプロピレン系樹脂が共重合体の場合は、プロピレンと他のコモノマーとの重合組成比がほぼ同一であることを意味している。また、製膜方法がほぼ同じであるとは、樹脂材料を未延伸フィルムに製膜する方法がほぼ同じであることを意味する。なお、製膜方法としては、上述したとおり押出成形法や溶剤キャスト法などから適宜選択することができる。さらに、延伸方向がほぼ同じであるとは、未延伸フィルムの延伸方向が同じであることを意味している。なお、延伸方向としては、上述したとおり一軸延伸、二軸延伸などを適宜選択することができる。ここで、延伸処理としては、上述した工程(A)〜(E)が好ましく、したがって延伸方向としては、上述した工程(C)の横一軸延伸が好適である。
特に、第1の1/4波長板11と第2の1/4波長板21を同一ロットの位相差フィルムで製造することが好ましい。同一ロットの位相差フィルムは、材料、製膜方法、延伸方向が完全に同一の条件で製造されたものであるため、第1の1/4波長板11と第2の1/4波長板21は面内位相差値Rと波長分散性がほぼ完全に一致する。このため、液晶表示装置1を黒表示する際に、第1の1/4波長板11と第2の1/4波長板21との間の面内位相差値Rの違いによる光漏れを低減でき、高コントラストとすることができる。また、同一ロットの位相差フィルムであることから、第1の1/4波長板11と第2の1/4波長板21は面内位相差値Rの経時的な上昇量がほぼ完全に一致する。このため、両者の面内位相差値Rの間で経時的な差が生じにくい。したがって、液晶表示装置1を長期間使用しても黒表示する際の光漏れがほとんど生じず、長期にわたってコントラストを高い状態で維持することができる。
第1の楕円偏光板10は、第1の1/4波長板11、第1の偏光フィルム13、第1の保護フィルム15をこの順に貼合することで製造することができる。また、第2の楕円偏光板20は、第2の1/4波長板21、第2の偏光フィルム23、第2の保護フィルム25をこの順に貼合することで製造することができる。これらの部材間の貼合には、例えば感圧接着剤(粘着剤)を用いることができる。感圧接着剤としては、透明性や耐久性に優れたアクリル系ポリマーを主体とするものが好ましい。感圧接着剤層の厚みは、通常5〜50μmの範囲である。
ロール状に巻き取られた単一の位相差フィルムを所定方向に2枚切り出し、それぞれを第1の1/4波長板11と第2の1/4波長板21とすることができる。切り出した枚葉体の位相差フィルムは、感圧接着剤等を用いて偏光フィルムに貼合する。位相差フィルムと偏光フィルムの貼合方法としては、枚葉体の位相差フィルムと枚葉体の偏光フィルムを貼合するシート・トゥ・シート貼合や、ロール状の偏光フィルムに枚葉体の位相差フィルムを貼合するロール・トゥ・シート貼合が挙げられる。また、枚葉体の偏光フィルムをロール状の位相差フィルムに貼合するシート・トゥ・ロール貼合でもよい。
次に、図3を参照して、楕円偏光板10,20を構成する各層の貼合位置について説明する。図3(a)に示すように、第1の楕円偏光板10は、第1の1/4波長板11の遅相軸Sを基準に反時計回り方向を正として、第1の偏光フィルム13の吸収軸Aに至る角度θが125〜145°、好ましくはほぼ135°となるように配置する。なお、この角度θは、第1の偏光フィルム13の側から第1の1/4波長板11方向(図2のX1−X2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
一方、第2の楕円偏光板20側では、第2の1/4波長板21の遅相軸Sを基準に反時計回りを正として、第2の偏光フィルム23の吸収軸Aに至る角度θが35〜55°、好ましくはほぼ45°となるように配置する。なお、この角度θは、第2の偏光フィルム23の側から第2の1/4波長板21方向(図2のY1−Y2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
あるいは、図3(b)に示すように、第1の楕円偏光板10側では、第1の1/4波長板11の遅相軸Sを基準に反時計回り方向を正として、第1の偏光フィルム13の吸収軸Aに至る角度θが35〜55°、好ましくはほぼ45°となるように配置する。なお、この角度θは、第1の偏光フィルム13の側から第1の1/4波長板11方向(図2のX1−X2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
一方、第2の楕円偏光板20側では、第2の1/4波長板21の遅相軸Sを基準に反時計回りを正として、第2の偏光フィルム23の吸収軸Aに至る角度θが125〜145°、好ましくはほぼ135°となるように配置する。なお、この角度θは、第2の偏光フィルム23の側から第2の1/4波長板21方向(図2のY1−Y2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
第1の楕円偏光板10と第2の楕円偏光板20の液晶セル3への貼合は、感圧接着剤(粘着剤)を用いて行うことができる。このとき、第1の偏光フィルム13の吸収軸Aと第2の偏光フィルム23の吸収軸Aとのなす角度が直角(90°)となるよう、第1の楕円偏光板10と第2の楕円偏光板20とをクロスニコルに配置する。
このとき、第1の1/4波長板11の遅相軸Sと第2の1/4波長板21の遅相軸Sとの間の角度公差が±1.0°以内であり、かつ第1の1/4波長板11と第1の偏光フィルム13との間の貼合公差、第2の1/4波長板21と第2の偏光フィルム23との間の貼合公差がいずれも±2.0°以内であることが好ましい。角度公差と貼合公差がこれらの範囲を超えると、液晶表示装置1を黒表示したときに光漏れが生じやすく、コントラスト比が低下するため好ましくない。ここで、「波長板遅相軸の角度公差」とは、波長板の任意の箇所において、波長板遅相軸の測定値と設計値の差の範囲を指し。
「波長板と偏光フィルムの貼合公差」とは:貼合された楕円偏光板の任意の箇所において、波長板の遅相軸と偏光フィルムの吸収軸となす角度の測定値と設計値の差の範囲を指す。
保護フィルム15は、第1の偏光フィルム13上に接着剤等を用いて貼合する。保護フィルム15の貼合方法も、上述したシート・トゥ・シート貼合、ロール・トゥ・シート貼合など公知の方法を採用することができる。保護フィルム25についても同様の手法で第2の偏光フィルム23上に貼合する。こうして製造された楕円偏光板セット(第1の楕円偏光板10と第2の楕円偏光板20)を液晶セル3の両側にそれぞれ配置して液晶パネル30を製造する。楕円偏光板10,20は、いずれも感圧接着剤等を介して液晶セル3に貼合することができる。続いて、液晶パネル30の第1の楕円偏光板10側にバックライト5と光拡散板7を配置して液晶表示装置1を製造する。
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係る楕円偏光板セット、液晶パネル、液晶表示装置について説明する。図4に示すように、本実施形態の液晶表示装置1は、液晶セル3と、この液晶セル3の背面側(リア側)に配置される第1の楕円偏光板40と、液晶セル3の視認側(フロント側)に配置される第2の楕円偏光板50と、第1の楕円偏光板40側に配置されるバックライト5と、このバックライト5と第1の楕円偏光板40との間に配置される光拡散板7と、を備えている。
上述した第1の実施形態(図1〜3)のように、楕円偏光板に1/4波長板を1枚だけ用いた場合には、限られた波長範囲でしか完全楕円偏光が得られない場合が多い。このため、広い波長範囲で円偏光を得るための方法の1つに、1/4波長板と1/2波長板とを組み合わせる方法がある。本実施形態の位相差層は、1/4波長板と1/2波長板とが積層された構造を備えている。これにより、液晶表示装置1の楕円偏光を広帯域化することができ、波長特性を向上させることが可能となる。
第1の楕円偏光板40と第2の楕円偏光板50は、本発明の楕円偏光板セットを構成している。また、液晶セル3と第1の楕円偏光板40と第2の楕円偏光板50は、本発明の液晶パネル60を構成している。なお、この図では、層構成の理解を容易にするために、液晶セル3と第1の楕円偏光板40の間、液晶セル3と第2の楕円偏光板50の間、バックライト5と光拡散板7、第1の楕円偏光板40と光拡散板7の間にスペースを空けた状態で液晶表示装置1を表示しているが、実際にはこれらの部材間は密着した状態となっている。
図4,図5に示すように、第1の楕円偏光板40は、第1の位相差層47と、第1の偏光フィルム43と、第1の保護フィルム45とがこの順に積層された層構成を有している。第1の位相差層47は、液晶セル3側に配置される第1の1/4波長板41と、第1の偏光フィルム43側に配置される第1の1/2波長板42とがこの順に積層された層構成を備えている。第1の楕円偏光板40は、第1の1/4波長板41を液晶セル3側に向けて、第1の保護フィルム45をバックライト5側に向けて配置されている。
第2の楕円偏光板20は、第2の位相差層57と、第2の偏光フィルム53と、第2の保護フィルム55とがこの順に積層された層構成を有している。第2の位相差層57は、液晶セル3側に配置される第2の1/4波長板51と、第2の偏光フィルム53側に配置される第2の1/2波長板52とがこの順に積層された層構成を備えている。第2の楕円偏光板50は、第2の1/4波長板51を液晶セル3側に向けて、第2の保護フィルム55を外側(視認側)に向けて配置されている。
次に、液晶表示装置1を構成する各部材について説明する。なお、1/4波長板41,51、偏光フィルム43,53、保護フィルム45,55、液晶セル3、バックライト5、光拡散板7は、それぞれ第1の実施形態の1/4波長板11,21、偏光フィルム13,23、保護フィルム15,25、液晶セル3、バックライト5と同様であるため、詳細な説明は省略する。
[1/2波長板]
第1の1/2波長板42と第2の1/2波長板52はいずれも、面内に配向した樹脂フィルムを少なくとも1枚含み、光学異方性を有する波長板である。1/2波長板42,52は、可視光の波長領域(380〜780nm)のいずれかの光に対してほぼ1/2波長(180°)の位相差を示す位相差フィルムであり、直線偏光の向きを180°回転させる機能を有している。1/2波長板42,52はいずれも、ポリプロピレン系樹脂を含む位相差フィルムで構成されている。ポリプロピレン系樹脂の詳細については、上述した第1の実施形態の1/4波長板11,21と同様の材料を使用することができる。
1/2波長板42,52の面内位相差値Rは、いずれも通常240〜400nmであり、好ましくは200〜300nmである。この面内位相差値Rは、液晶表示装置1の種類や目的に応じて、楕円偏光の楕円率や長軸方位角などを考慮して適宜決定することができる。1/2波長板42,52の位相差軸の公差は、液晶表示装置1の正面コントラストの観点から、中心値±5nm以内、好ましくは±3nm以内である。
第1の1/4波長板41と第2の1/4波長板51は、いずれもポリプロピレン系樹脂を含み、上記[楕円偏光板の積層方法]に記載した部分と同じように、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値Rの経時変化がほぼ同じである。同様に、第1の1/2波長板42と第2の1/2波長板52は、いずれもポリプロピレン系樹脂を含み、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値Rの経時変化がほぼ同じである。ここで、「同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値Rの経時変化」とは、上記[楕円偏光板の積層方法]に記載した部分と同じように定義される。本実施形態では、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値Rの経時変化がほぼ等しい波長板として、材料、製膜方法、延伸方向がほぼ同じ条件で製造された波長板を使用している。特に、同一ロットの位相差フィルムで製造することが好ましい。材料等が同じ条件の波長板や同一ロットの位相差フィルムについての詳細は、第1の実施形態で説明しているので、ここでは説明を省略する。
[楕円偏光板の積層方法]
第2の実施形態の楕円偏光板40,50の積層方法についても、第1の実施形態の楕円偏光板10,20の積層方法と基本的に同じである。相違点としては、第1の位相差層47として第1の1/4波長板41と第1の1/2波長板42とを積層し、第2の位相差層57として第2の1/4波長板51と第2の1/2波長板52とを積層する。1/4波長板と1/2波長板の積層方法としては、上述した感圧接着剤等を用いて貼合する方法が挙げられる。こうして製造された位相差層47,57に対して、第1の実施形態と同様に偏光フィルム43,53と保護フィルム45,55をそれぞれ積層し、楕円偏光板40,50を製造する。
次に、楕円偏光板40,50を構成する各層の貼合位置について説明する。図6(a)に示すように、第1の楕円偏光板40側では、第1の1/4波長板41の遅相軸S1を基準に反時計回り方向を正として、第1の偏光フィルム43の吸収軸Aに至る角度θ1が95〜115°、好ましくはほぼ105°となるように配置する。また、第1の1/2波長板42の遅相軸S2を基準に反時計回り方向を正として、第1の偏光フィルム43の吸収軸Aに至る角度θ2が155〜175°、好ましくはほぼ165°となるように配置する。なお、この角度θ1,θ2は、第1の偏光フィルム13の側から第1の1/4波長板41方向(図5のX1−X2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
一方、第2の楕円偏光板50側では、第2の1/4波長板51の遅相軸S1を基準に反時計回りを正として、第2の偏光フィルム53の吸収軸Aに至る角度θ1が65〜85°、好ましくはほぼ75°となるように配置する。また、第2の1/2波長板52の遅相軸S2を基準に反時計回りを正として、第2の偏光フィルム53の吸収軸Aに至る角度θ2が5〜25°、好ましくはほぼ15°となるように配置する。なお、この角度θ1,θ2は、第2の偏光フィルム53の側から第2の1/4波長板51方向(図5のY1−Y2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
あるいは、図6(b)に示すように、第1の楕円偏光板40側では、第1の1/4波長板41の遅相軸S1を基準に反時計回り方向を正として、第1の偏光フィルム43の吸収軸Aに至る角度θ1が65〜85°、好ましくはほぼ75°となるように配置する。また、第1の1/2波長板42の遅相軸S2を基準に反時計回り方向を正として、第1の偏光フィルム43の吸収軸Aに至る角度θ2が5〜25°、好ましくはほぼ15°となるように配置する。なお、この角度θ1,θ2は、第1の偏光フィルム43の側から第1の1/4波長板41方向(図5のX1−X2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
一方、第2の楕円偏光板50側では、第2の1/4波長板51の遅相軸S1を基準に反時計回りを正として、第2の偏光フィルム53の吸収軸Aに至る角度θ1が95〜115°、好ましくはほぼ105°となるように配置する。また、第2の1/2波長板52の遅相軸S2を基準に反時計回りを正として、第2の偏光フィルム53の吸収軸Aに至る角度θ2が155〜175°、好ましくはほぼ165°となるように配置する。なお、この角度θ1,θ2は、第2の偏光フィルム53の側から第2の1/4波長板51方向(図5のY1−Y2方向)をみたときの回転角度を基準としている。
第1の楕円偏光板40と第2の楕円偏光板50の液晶セル3への貼合は、感圧接着剤(粘着剤)を用いて行うことができる。このとき、第1の偏光フィルム43の吸収軸Aと第2の偏光フィルム53の吸収軸Aとのなす角度が直角(90°)となるよう、第1の楕円偏光板40と第2の楕円偏光板50とをクロスニコルに配置する。
このとき、第1の1/4波長板41の遅相軸S1と第2の1/4波長板51の遅相軸S1との間の角度公差、第1の1/2波長板42の遅相軸S2と第2の1/2波長板52の遅相軸S2の角度公差がいずれも±1.0°以内であることが好ましい。なおかつ、第1の1/4波長板41と第1の偏光フィル43との間の貼合公差、第2の1/4波長板51と第2の偏光フィルム53との間の貼合公差、第1の1/2波長板42と第1の偏光フィルム43との間の貼合公差、第2の1/2波長板52と第2の偏光フィルム53との間の貼合公差がいずれも±2.0°以内であることが好ましい。角度公差と貼合公差がこれらの範囲を超えると、液晶表示装置1を黒表示したときに光漏れが生じやすく、コントラスト比が低下するため好ましくない。なお、液晶パネル60や液晶表示装置1の製造方法については、第1の実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
1 液晶表示装置、3 液晶セル、5 バックライト、7 光拡散板、10 第1の楕円偏光板、11 第1の1/4波長板(第1の位相差層)、13 第1の偏光フィルム、15 第1の保護フィルム、20 第2の楕円偏光板、21 第2の1/4波長板(第2の位相差層)、23 第2の偏光フィルム、25 第2の保護フィルム、30 液晶パネル、40 第1の楕円偏光板、41 第1の1/4波長板、42 第1の1/2波長板、43 第1の偏光フィルム、45 第1の保護フィルム、47 第1の位相差層、50 第2の楕円偏光板、51 第2の1/4波長板、52 第2の1/2波長板、53 第2の偏光フィルム、55 第2の保護フィルム、57 第2の位相差層、A 偏光フィルムの吸収軸、S,S1 1/4波長板の遅相軸、S2 1/2波長板の遅相軸、θ,θ1 偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸とのなす角度、θ2 偏光フィルムの吸収軸と1/2波長板の遅相軸とのなす角度

Claims (10)

  1. 液晶セルの背面側に配置される第1の楕円偏光板と、前記液晶セルの視認側に配置される第2の楕円偏光板とを備えた楕円偏光板セットであって、
    前記第1の楕円偏光板は、少なくとも第1の1/4波長板を有する第1の位相差層と、第1の偏光フィルムで積層されており、
    前記第2の楕円偏光板は、少なくとも第2の1/4波長板を有する第2の位相差層と、第2の偏光フィルムで積層されており、
    前記第1の1/4波長板と前記第2の1/4波長板は、いずれもポリプロピレン系樹脂からなり、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値の経時変化がほぼ同じであることを特徴とする楕円偏光板セット。
  2. 前記第1の1/4波長板と前記第2の1/4波長板は、材料、製膜方法及び延伸方法がほぼ同じ条件で製造される請求項1に記載の楕円偏光板セット。
  3. 前記第1の1/4波長板と前記第2の1/4波長板は、いずれも100℃以上170℃以下の温度で、倍率1.3倍以上に固定端延伸されており、
    100℃で150時間保持することによるヘイズ値の変化が%表示のヘイズ値の差で0.5ポイント以下である請求項1又は2に記載の楕円偏光板セット。
  4. 前記第1の楕円偏光板と前記第2の楕円偏光板のいずれか一方は、偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが35〜55°の角度で交差しており、
    もう一方の楕円偏光板は、偏光フィルムと1/4波長板の遅相軸と125〜145°の角度で交差している請求項1〜3のいずれかに記載の楕円偏光板セット。
  5. 前記第1の位相差層は、前記液晶セル側に配置された前記第1の1/4波長板と前記第1の偏光フィルム側に配置された第1の1/2波長板とで構成され、
    前記第2の位相差層は、前記液晶セル側に配置された前記第2の1/4波長板と前記第2の偏光フィルム側に配置された第2の1/2波長板とで構成され、
    前記第1の1/2波長板と前記第2の1/2波長板は、いずれもポリプロピレン系樹脂からなり、同じ熱履歴を受けたときの面内位相差値の経時変化がほぼ同じである請求項1〜3のいずれかに記載の楕円偏光板セット。
  6. 前記第1の1/2波長板と前記第2の1/2波長板は、材料、製膜方法及び延伸方法がほぼ同じ条件で製造される請求項5に記載の楕円偏光板セット。
  7. 前記第1の1/2波長板と前記第2の1/2波長板は、いずれもポリプロピレン系樹脂からなる延伸フィルムにより構成され、
    前記延伸フィルムは、
    100℃以上170℃以下の温度で、倍率1.3倍以上に固定端延伸されており、
    100℃で150時間保持することによるヘイズ値の変化が%表示のヘイズ値の差で0.5ポイント以下である請求項5又は6に記載の楕円偏光板セット。
  8. 前記第1の楕円偏光板と前記第2の楕円偏光板のいずれか一方は、偏光フィルムの吸収軸と1/2波長板の遅相軸とが5〜25°、偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが65〜85°の角度で交差しており、
    もう一方の楕円偏光板は、偏光フィルムの吸収軸と1/2波長板の遅相軸とが155〜175°、偏光フィルムの吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが95〜115°の角度で交差している請求項5〜7のいずれかに記載の楕円偏光板セット。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載された楕円偏光板セットと、液晶セルとを備え、
    前記第1の楕円偏光板、前記液晶セル及び前記第2の楕円偏光板がこの順で配置され、
    前記第1の楕円偏光板は前記第1の位相差層を前記液晶セル側に、前記第2の楕円偏光板は前記第2の位相差層を前記液晶セル側に向けて配置されている液晶パネル。
  10. バックライトと、光拡散板と、請求項9に記載の液晶パネルとをこの順で備え、
    前記液晶パネルは、前記第1の楕円偏光板を前記光拡散板側に向けて配置されている液晶表示装置。
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