JP4798679B2 - 傾斜型位相差フィルムの製造方法、光学部材及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、液晶表示装置のコントラストや表示色の視角特性等の改善に好適な傾斜型位相差フィルムの製造方法、及びそれを用いた光学部材と液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
TN(ツイストネマチック)型やSTN(スーパーツイストネマチック)型等の液晶セルを用いたTFT型やMIM型等の液晶表示装置が、応答速度性や表示の高コントラスト性等に着目されてワードプロセツサやパーソナルコンピュータ等のOA機器などの種々の装置の表示手段として広く普及している。しかし見る角度(視角)、特に斜めからの視角におけるコントラストの低下や画面の着色化等による視認性の低下が大きい難点があり、その改善が強く要望されている。
【0003】
従来、前記視角特性の改善策として液晶セルに対し位相差板を配置する方式が知られていた(特開平4−229828号公報、特開平4−258923号公報)。しかしその位相差板では全方位における視角特性の改善が困難で、ある方位での改善効果に乏しい問題点があった。
【0004】
前記に鑑みて、屈折率楕円体の主屈折率方向を法線方向に対し傾斜させて液晶分子のチルトに対処しうるようにした傾斜型位相差板、又は押出成形ロッドを中心軸に対し斜め切断してなる主軸三方向の屈折率が全て異なる位相差板を用いる方式が提案されている(特開平6−75116公報、特開平6−174920公報)。しかしながら前者はその位相差板の形成が困難であり、後者は液晶表示装置等への適用に要する面積を有する位相差板が得られ難い問題点があった。
【0005】
一方、光軸が厚さ方向に対して傾斜する傾斜型位相差フィルムの製造方法としては、周速の異なるピンチロールを介した剪断力で延伸処理する方法が知られていた(特開平6−222213公報)。しかしながら周速差の管理が難しくて精度の維持が困難であり、付与できる剪断力や延伸配向の温度に乏しくて前記光軸の傾斜角度が小さく、かつその角度のバラツキが大きくて視角特性の改善効果に乏しく、またフィルム表面にロールとの接触傷が発生しやすくて液晶表示の品位を低下させる問題点などがあった。
【0006】
【発明の技術的課題】
本発明は、液晶表示装置における視認性の視角変化による低下を広範囲の方位で防止でき、品質に優れる大面積物も容易に安定して形成できる傾斜型位相差フィルムの製造方法を開発して、広い視角範囲でコントラストや白黒表示等の視認性に優れる液晶表示装置を得ることを課題とする。
【0007】
【課題の解決手段】
本発明は、表面を金属でコートしたゴムロールと金属ロールとからなり、それらロール表面の間に非対称な変形を生じさせる一対のロール間に、熱可塑性樹脂による透光性フィルムをその融点の50%以上の温度(℃)を有する状態で供給して通過させることにより、当該フィルムにおける光軸を厚さ方向に対して傾斜させる工程を少なくとも有することを特徴とする傾斜型位相差フィルムの製造方法、及びその方法による傾斜型位相差フィルムの1枚又は2枚以上と偏光板との積層体からなることを特徴とする光学部材、並びに前記方法による傾斜型位相差フィルムの1枚若しくは2枚以上又はそれと偏光板を液晶セルの少なくとも片側に有することを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、当該ロール間を通過させる際に異質ロールによる弾性率の相違、ないしロールの変形のしやすさの相違に基づいて一対のロール表面の間に非対称な変形を生じ、一対のロールを等速回転させた場合にもロールとの接触部分を介してフィルムに対し剪断力を負荷することができ、それによりフィルムの光軸を厚さ方向に対して傾斜させることができる。従ってロール間の速度管理が容易で処理精度を高度に維持でき、液晶表示装置等への適用が可能な大面積の傾斜型位相差フィルムも容易に安定して製造効率よく形成することができる。
【0009】
またフィルムを高温状態でロール間に供給でき、かつ大きい剪断力の負荷も容易であることより、光軸の傾斜角度を大きくすることも可能でその傾斜角度を容易に制御でき、その傾斜角のバラツキも小さくて品質に優れた傾斜型位相差フィルムを得ることができる。さらに両ロールとも金属表面を有することよりフィルム表面にロールとの接触傷が生じ難く、液晶表示装置等の表示品位も低下させ難い。
【0010】
前記の結果、光軸の傾斜に基づいて、図2に例示した如くフィルム面に対する法線(フィルム厚方向)として当該フィルム面内の光軸(遅相軸又は/及び進相軸)51の上に想定される法線面Aを基準とした左右において、同じ傾斜角θの透過光B、Cにおける複屈折光の位相差が相違する特性、すなわち位相差の非対称特性を示す傾斜型位相差フィルムを得ることができ、それを用いて液晶セルの複屈折性に基づく視角による視認性の変化を広範囲の方位にわたり高度に補償できて、広い視角範囲でコントラストや白黒表示等の視認性に優れる液晶表示装置を得ることができる。なお前記から明らかな如く、本発明において傾斜する光軸とは、フィルム面内にない主屈折率の方向、従ってフィルムの厚さ方向に対して傾斜する主屈折率の方向を意味する。
【0011】
【発明の実施形態】
本発明による製造方法は、表面を金属でコートしたゴムロールと金属ロールとの間に、熱可塑性樹脂による透光性フィルムをその融点の50%以上の温度を有する状態で供給して通過させることにより、当該フィルムにおける光軸を厚さ方向に対して傾斜させる工程を少なくとも有して、傾斜型位相差フィルムを得るためのものである。
【0012】
前記方法の実施は、例えば別途に形成した透光性フィルムを熱風やヒータ等の適宜な加熱手段で所定温度に加熱して当該ロール間に供給する方式などにても行いうるが、省エネルギー化等の点より好ましい方式は、溶融押出法にて透光性フィルムを連続成形しつつ、その成形フィルムが成形温度の50%以上の温度を維持するうちにそれを当該ロール間に供給する方式である。
【0013】
前記の連続成形方式による工程例を図1に示した。これによれば、熱可塑性樹脂を溶融押出法によるTダイ1を介し押出して透光性フィルム2に連続成形しつつ、その成形フィルム2を直下に配置した一対のピンチロール3、4の間に順次連続供給して通過させることにより、目的とする処理がなされて光軸が厚さ方向に対し傾斜した傾斜型位相差フィルム5が得られる。
【0014】
前記のピンチロールは、ゴム層31の表面を金属でコート32したゴムロール3と金属ロール4からなる。そのゴムロールとしては、例えばシリコーンゴム等の適宜なゴムからなるロールの表面に、金属ベルトを装着したもの、あるいは金属メッキ処理を施したものなどの適宜なものを用いうる。また金属ロールとしてもロール層の全体を金属で形成してなる適宜なものを用いうる。
【0015】
すなわち前記のゴムロールと金属ロールの組合せは、そのロール間を透光性フィルムが通過する際に、表面が変形しやすいゴムロールと変形しにくい金属ロールとに基づく変形のしやすさの相違により、ロール表面の間に非対称な変形を生じさせることを目的とする。その非対称な変形により透光性フィルムに剪断力を負荷してその光軸を厚さ方向に対し傾斜させることができる。従って当該組合せは、斯かる非対称な変形を生じうるものであればよい。
【0016】
なおゴムロールの表面に設ける金属コートは、金属ロールの使用と同様にその金属層による平滑な表面特性等を利用して、透光性フィルムがロール間を通過する際にその表面が傷付くことの防止を目的とする。従ってメッキ層等の薄膜にても目的を達成することができる。一般的な前記金属コートの厚さは、上記したゴムロールの易変形性の維持等の点より5μm〜10mm、就中10μm〜5mm、特に30μm〜3mmである。
【0017】
当該ゴムロールと金属ロールは、それらの間を通過する透光性フィルムに対して上記した剪断力が作用するようにピンチ式に配置される。そのロール間のギャップは、透光性フィルムの厚さに応じて適宜に決定される。一般には透光性フィルムの厚さの10〜300%、就中50〜200%、特に70〜150%のギャップとされる。なお当該ゴムロールと金属ロールの直径は、フィルム幅等に応じて適宜に決定でき、同じであってもよいし、相違していてもよい。一般的な直径は、10mm〜3m、就中30mm〜1m、特に50〜600mmである。
【0018】
当該ピンチロールによる処理は、その剪断力が有効に作用する温度の透光性フィルムないし成形フィルムに対して行う必要がある。一方、当該剪断力による光軸の傾斜化効果は、透光性フィルムないし成形フィルムがそのフィルム形態を維持しうる温度範囲において可及的に高温であるほど大きくなる。斯かる点より透光性フィルムを形成する熱可塑性樹脂の融点の50%以上の温度を有する状態で、ないし熱可塑性樹脂をフィルムに成形する際の成形温度の50%以上の温度を維持するうちに当該ピンチロール間に供給される。なお前記の融点は、溶融により流動性を示す最低温度を意味する。
【0019】
図1の例では室温において、当該ピンチロール3、4をTダイ1の直下に配置することで前記した成形温度の50%以上の温度が達成されている。当該ピンチロール間に供給する透光性フィルムないし成形フィルムの好ましい温度は、融点又は成形温度の55〜95%、就中60〜90%、特に65〜85%である。なおピンチロールは、それを透光性フィルムないし成形フィルムが通過する間に、それに付与した処理が固定化されるように冷却ロールであること、就中、透光性フィルムの融点又は成形フィルムの成形温度の45%以下、特に40%以下、さらには35%以下に冷却するロールであることが好ましい。
【0020】
ピンチロールによる処理に際し、当該ゴムロールと金属ロールは、等速回転させてもよいし、周速を相違させて回転させてもよい。前者の等速回転方式は速度管理が容易で品質の均一化に有利であり、剪断力の大きさも溶融時の粘性の低いフィルムの使用や平板ベルトの応用で容易に制御することができる。一方、後者の方式では、ロールの変形による剪断力に加えて、周速差による剪断力も作用させることができ、より大きい剪断力の作用下に光軸を傾斜させることができてその傾斜角度の拡大に有利である。
【0021】
透光性フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、光透過性の適宜なものを用いることができ特に限定はない。ちなみにその例としてはポリカーボネートやポリアリレート、ポリスルホンやポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやポリイミド、ポリエーテルスルホンやポリビニルアルコール、ポリエチレンないしポリプロピレンの如きポリオレフィンやセルロース系ポリマー、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、ポリアミドやポリノルボルネンなどがあげられる。
【0022】
光透過率が70%以上、就中80%以上、特に85%以上の透光性フィルムを形成しうる熱可塑性樹脂が好ましい。また溶融押出法で均質なフィルムが得られやすく、溶融粘度の低い熱可塑性樹脂が好ましい。さらに延伸方式や厚さ方向配向方式等による配向処理が可能な透光性フィルムを形成しうる熱可塑性樹脂が好ましい。なお溶融押出法を適用する方式では、溶融粘度の低いものが好ましい。なお透光性フィルムは、溶融押出法のほか、例えば流延法等のキャスティング法などの適宜な方式で形成したものであってよい。
【0023】
ピンチロールに供する透光性フィルムの厚さは、目的とする傾斜型位相差フィルムの位相差特性などにより適宜に決定することができる。一般的な厚さは5〜500μm、就中10〜350μm、特に20〜200μmである。なお位相差は、フィルム厚方向に透過する複屈折の屈折率差(△n)とフィルム厚(d)の積(△n×d)として求めることができる。
【0024】
液晶表示の視角特性の改善、特に方位の広さなどの点より好ましく用いうる傾斜型位相差フィルムは、図2においてその遅相軸又は進相軸の一方又は両方の光軸51の上に想定される法線面Aを基準とした傾斜角θが40度であるときに基づく当該法線面の左右の斜め透過光B、Cにおける複屈折による位相差の差が10nm以上、就中15〜1000nm、特に20〜200nmのものである。斯かる位相差の差が10nm未満では視角特性の改善効果、特に方位の拡大効果に乏しい場合がある。また表示ムラの発生防止やコントラストの低下防止などの点より好ましい傾斜型位相差フィルムは、位相差の最大値と最小値の差が10nm以下、就中7nm以下、特に5nm以下のものである。
【0025】
前記において位相差の調整に際しては必要に応じ当該ピンチロール間を通過させた透光性フィルムに対して、自由端や固定端による縦若しくは横の一軸延伸方式や二軸延伸方式、又は厚さ方向配向方式等の適宜な配向処理方式の1種又は2種以上を施してその位相差を制御することもできる。なお前記の厚さ方向配向方式としては、処理対象のフィルムに熱収縮性フィルムを接着して加熱下にその熱収縮性フィルムの収縮力を作用させて処理対象フィルムの厚さ方向の屈折率を変化させる方式などがあげられる。
【0026】
本発明による傾斜型位相差フィルムは、その単層物や同種又は異種の積層物などとして液晶セルの視野角拡大やコントラスト向上などを目的とした複屈折による位相差の補償などに好ましく用いうる。その実用に際しては必要に応じて、例えば傾斜型位相差フィルムの片面又は両面に粘着層を設けたものや、偏光板や他の位相差板と積層したもの、あるいは等方性の透明な樹脂層やガラス層等からなる保護層と積層したものなどの適宜な形態の光学部材として適用することもできる。
【0027】
図3に前記した偏光板等との積層体からなる光学部材10を例示した。5が傾斜型位相差フィルム、7が他の位相差板、9が偏光板であり、6、8は接着層である。光学部材の形成に際しては1枚又は2枚以上の傾斜型位相差フィルム、さらには1枚又は2枚以上の他の位相差板を用いることができる。傾斜型位相差フィルムや他の位相差板の2枚以上の使用は、補償効果の向上などを目的とする。
【0028】
傾斜型位相差フィルムと積層する偏光板としては適宜なものを用いうる。ちなみにその例としてはポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルム等からなる偏光フィルムなどがあげられる。
【0029】
また偏光板は、偏光フィルムの片側又は両側に透明保護層を有するものであってもよい。さらに偏光板は、反射層等を有する反射型のものなどであってもよい。反射型の偏光板は、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化をはかりやすいなどの利点を有する。
【0030】
前記の透明保護層は、ポリマーの塗布層や保護フィルムの積層物などとして適宜に形成でき、その形成には透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーなどが好ましく用いられる。その例としてはポリエステル系樹脂やアセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂やポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂やポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型、ないし紫外線硬化型の樹脂などがあげられる。透明保護層は、微粒子の含有によりその表面が微細凹凸構造に形成されていてもよい。
【0031】
また反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明樹脂層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式で行うことができ、例えば必要に応じマット処理した保護フィルム等の透明樹脂層の片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設したものや、前記透明樹脂層の微粒子含有による表面微細凹凸構造の上に蒸着方式やメッキ方式等の適宜な方式で金属反射層を付設したものなどがあげられる。
【0032】
また傾斜型位相差フィルムと積層されることのある、上記したその他の位相差板、すなわち本発明による傾斜型位相差フィルム以外のものとしては、面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnzとしたとき、nx>ny=nz、nx=nz>ny、nx=ny>nz、nx=ny<nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、又はnz>nx>ny等の屈折率関係を満足するものなどの適宜なものを用いうる。
【0033】
ちなみに前記位相差板の例としては、上記した熱可塑性樹脂等の適宜なポリマーからなるフィルムを上記した一軸や二軸等の延伸方式又は厚さ方向配向方式等の適宜な配向処理方式の1種又は2種以上を施してなる複屈折性フィルム、ディスコティック系やネマチック系等の液晶化合物のコーティング膜を有する複屈折性フィルムなどがあげられる。なお遅相軸方向の屈折率をnx、進相軸方向のそれをnyとしたとき、前記のnx=ny>nzやnx=ny<nz等の特性を示すものは一軸延伸による光学楕円体などとして、またnx>ny>nz等の特性を示すものは二軸延伸フィルムなどとして得ることができる。さらにnx>nz>nyやnz>nx>ny等の特性を示すものは厚さ方向配向方式等を適用して得ることができる。
【0034】
上記した偏光板等との積層は、液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層する方式にても行いうるが、予め積層して光学部材として用いることにより品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置の製造効率を向上させうる利点などがある。なお積層には例えばアクリル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリウレタン系、ポリエーテル系やゴム系等の透明な粘着剤などの適宜な接着剤を用いることができ、その種類について特に限定はない。傾斜型位相差フィルム等の光学特性の変化を防止する点より、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時問を要しないものが望ましい。また加熱や加湿条件下に剥離等を生じないものが好ましい。
【0035】
前記の点より(メタ)アクリル酸ブチルや(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルや(メタ)アクリル酸の如きモノマーを成分とする重量平均分子量が10万以上で、ガラス転移温度が0℃以下のアクリル系ポリマーからなるアクリル系粘着剤が特に好ましく用いうる。アクリル系粘着剤は、透明性や耐候性や耐熱性などに優れる点よりも好ましい。なお屈折率が異なるものを積層する場合には、反射損の抑制などの点より中間の屈折率を有する接着剤等が好ましく用いられる。
【0036】
傾斜型位相差フィルム等への粘着層の付設は、粘着剤を塗工して乾燥処理する方式や、セパレータ上に設けた粘着層を移着する方式などの適宜な方式にて行うことができる。そのセパレータは、そのまま接着して傾斜型位相差フィルム等を実用に供するまでの間、粘着層の汚染等を防止する保護カバーとして利用することもできる。粘着層は、液晶セル等の被着体への接着を目的として光学部材に設けることもできる。
【0037】
なお粘着層等の接着層には、必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また微粒子を含有させて光拡散性を示す接着層とすることもできる。
【0038】
傾斜型位相差フィルムと偏光板の積層に際して、それらの進相軸や透過軸等の光軸の配置角度については特に限定はなく、適宜に決定することができる。ちなみにSTN型の液晶セルに適用する場合には、45度等の斜め交差角で配置する場合が多く、TN型の液晶セルに適用する場合には平行又は直交の交差角に配置する場合が多い。
【0039】
上記した傾斜型位相差フィルムや偏光板、他の位相差板や接着層などの各素材には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収能をもたせることもできる。
【0040】
本発明による傾斜型位相差フィルム又は光学部材を用いての液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学補償用の傾斜型位相差フィルム、及び必要に応じての偏光板や照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による傾斜型位相差フィルムの1枚又は2枚以上を光学補償に用いて、それを必要に応じ偏光板や他の位相差板と共に液晶セルの少なくとも片側に設ける点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。
【0041】
従って液晶セルの片側又は両側に偏光板を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいはフロントライト又は/及び反射板を用いてなる透過型や反射型、あるいは反射・透過両用型などの適宜な液晶表示装置を形成することができる。偏光板を用いた液晶表示装置の場合、光学補償用の傾斜型位相差フィルムやその他の位相差板は、液晶セルと偏光板、特に視認側の偏光板との間に配置することが補償効果の点などより好ましい。その配置に際しては、上記の光学部材としたものを用いることもできる。
【0042】
前記において液晶表示装置の形成部品は、積層一体化されていてもよいし、分離状態にあってもよい。また液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板やアンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板などの適宜な光学素子を適宜に配置することができる。かかる素子は、傾斜型位相差フィルムと積層してなる上記した光学部材の形態にて液晶表示装置の形成に供することもできる。
【0043】
本発明による傾斜型位相差フィルムやそれを用いた光学部材は、コントラストの向上や表示色の改善などの、液晶セルの複屈折による位相差の補償を目的にTN型やSTN型等の複屈折を示す液晶セルを用いたTFT型やMIM型等の種々の表示装置に好ましく用いうる。その場合、光学補償用の傾斜型位相差フィルムとしては液晶セルの複屈折による位相差を広い視角範囲にわたり補償するものが好ましく用いられる。
【0044】
【実施例】
実施例1
溶融押出法により図3に準じてTダイを介し成形温度280℃で厚さ150μmの透明ポリカーボネートフィルムを成形しつつ、それを直径300mmのシリコーンゴムロールの表面に厚さ2mmの金属ベルトを装着してなるゴムロールと直径300mmの金属ロールからなり、ロール間のギャップを200μmとした120℃のピンチロール間に約200℃で供給し通過冷却させて、厚さ120μmの傾斜型位相差フィルムを連続して得た。
【0045】
比較例1
厚さ100μmの透明ポリカーボネートフィルムを160℃の雰囲気下、前後に配置した周速の異なる金属ロール間を通過させて1.15倍に延伸処理し、位相差フィルムを得た。
【0046】
比較例2
厚さ100μmの透明ポリカーボネートフィルムを駆動系を有して周速の異なる一対の金属ロールからなるピンチロール間に供給して剪断処理し、傾斜型位相差フィルムを得た。なおロールの一方は、表面温度150℃、周速2.8m/分、他方は表面温度150℃、周速1.9m/分の条件とした。
【0047】
評価試験
実施例、比較例で得た(傾斜型)位相差フィルムについて、下記の特性を調べた。
位相差
正面方向及び進相軸上に想定される法線面に対し±40度(左右)傾斜した遅相軸方向に透過する複屈折光の位相差を調べた(オーク社製、ADR−100XY)。
【0048】
バラツキ
100mm角内における正面方向の位相差を10mm間隔で100点測定し、その最大値と最小値の差を求めた。
【0049】
傷
外観を目視観察して傷の有無を調べた。
【0050】
前記の結果を次表に示した。
【0051】
表より、実施例1では法線面を基準とした左右の斜め透過光の位相差の差が大きくて非対称性に優れると共に、正面方向の位相差のバラツキが小さく、品質も良好であることが判る。これに対し比較例1では当該左右の斜め透過光に位相差の差は生じず、通常の一軸延伸物の特性を示し、比較例2では当該左右の斜め透過光の位相差の差が小さい上に、正面方向の位相差のバラツキが大きく、ロールとの接触による傷付きのあることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造工程例の説明図
【図2】位相差特性の説明斜視図
【図3】光学部材例の断面図
【符号の説明】
1:Tダイ
3:ゴムロール
32:表面の金属コート
4:金属ロール
5:傾斜型位相差フィルム
10:光学部材
7:他の位相差板
9:偏光板
Claims (4)
- 表面を金属でコートしたゴムロールと金属ロールとからなり、それらロール表面の間に非対称な変形を生じさせる一対のロール間に、熱可塑性樹脂による透光性フィルムを溶融押出法によりTダイから供給して直下に配置した前記ロール間を通過させることにより、当該フィルムにおける光軸を厚さ方向に対して下記の条件で傾斜させる工程を少なくとも有することを特徴とする傾斜型位相差フィルムの製造方法。
(条件)
フィルムの正面方向および進相軸上に想定される垂直な面に対し傾斜角θが+40度と−40度の斜め透過光における複屈折による位相差の差が10nm以上である。 - 請求項1において、前記金属ロールの直径が50〜600mmである傾斜型位相差フィルムの製造方法。
- 請求項1又は2において、前記一対のロールが等速回転するものである傾斜型位相差フィルムの製造方法。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、当該ロール間を通過させた透光性フィルムに対して、縦若しくは横の一軸延伸方式又は厚さ方向配向方式の少なくとも一方式を適用する配向処理工程を有する傾斜型位相差フィルムの製造方法。
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