JP5324988B2 - フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明はフィルムの製造方法に関する。また、該製造方法で作成されたフィルム、並びに該フィルムを有する偏光板、液晶表示装置にも関する。
近年、液晶ディスプレイ市場の隆盛に伴い、様々なフィルムが開発されている。例えば、特許文献1〜3には、液晶用の傾斜型位相差フィルムを製造する方法として、2つのロール間に周速差を与えて製膜し、厚み方向に傾斜構造を形成する方法が開示されている。
例えば、特許文献1ではゴムロールの上に金属スリーブを被せたロールと、金属ロールとの間に熱可塑性樹脂の溶融物(以下、メルトとも言う)を押出し、挟圧し、製膜する方法が記載されている。また、特許文献2および3では2本のゴムロールの間に渡した金属ベルトと、金属ロールとの間にメルトを押出し、挟圧し、製膜する方法が記載されている。
一方、フィルムの製造方法の分野においては、製造コストを抑える観点から、均質なフィルムをロングラン製膜により製造することが求められている。特に、液晶表示装置用のフィルムなどの光学フィルム分野においては光学特性の均一性が液晶表示装置の性能に大きく影響を及ぼすため、ロングラン製膜時においても光学特性が均一なフィルムの製造方法が近年求められてきている。
しかしながら、特許文献1〜3には、ロングラン製膜時における光学特性の均一化について検討をしておらず、ロングラン製膜時においても光学むらが少ないフィルムを得る具体的な方法について、何ら開示されていなかった。
特開2003−25414号公報 特開2007−237495号公報 特開2007−38646号公報
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、本発明の第一の目的は、傾斜構造を有し、ロングラン製膜時においても光学むらが少ないフィルムおよびその製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく特許文献1〜3に記載のフィルムの製造方法で80μm以下の薄手製膜においてロングラン製膜することを検討した。しかしながら、得られるフィルムは光学均一性に乏しく、実用レベルの均質なフィルムを得ることはできないことが判明した。特に、500時間以上のロングラン製膜時には、著しく光学むらが発生することが判明した。また、800mm以上に広幅化した際、よりさらにロングラン製膜時の光学むらが顕在化することが判明した。
そこで本発明者らが上記課題を解決すべくさらに鋭意検討した結果、第一挟圧面と第二挟圧面の間にメルトを挟んで固化するフィルムの製造方法において、一方の挟圧面がゴムロールとその挟圧面を構成する金属部材との間に補強層を具備している挟圧装置を用いることにより、ロングラン製膜時における金属部材の変形や劣化、ゴムロールの変形や劣化を抑えることが可能となることを見出した。その結果、ロングラン製膜時においても、光学むらの発生が少ないフィルムを得られることを見出した。すなわち、下記製造方法およびその方法で作成されたフィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面が、少なくとも2つのゴムロールと、該少なくとも2つのゴムロールの外部に配置された金属ベルトとを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属ベルトとの間に補強層を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
[2] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
[3] 前記補強層がファイバー層であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4] 前記ファイバー層の厚みが0.1mm〜5mmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[5] 前記補強層がゴム層であり、かつ、該ゴム層の表面強度を前記ゴムロールの表面強度よりも10%〜100%高くすることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[6] 前記溶融物を挟圧する直前における前記第一挟圧面の表面温度を、前記溶融物が前記第一挟圧面または前記第二挟圧面の少なくとも一方から剥離した直後における前記第一挟圧面の表面温度よりも5℃〜50℃低くなるように冷却しながら製膜することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[7] 前記溶融物を、20MPa〜300MPaで挟圧することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[8] 前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くなるように制御し、かつ、 下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5%〜20%であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
移動速度差(%)=100×(第一挟圧面の速度−第二挟圧面の速度)
/第一挟圧面の速度 式(I)
[9] 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
[11] [10]に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[12] [10]に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、液晶ディスプレイに使用した場合に十分な光学補償を実現できるフィルムおよびその製造方法を提供することができる。詳しくは、傾斜構造を有し、ロングラン製膜時においても光学むらが発生し難いフィルムを得ることができる。上記光学特性を有するフィルムは、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、十分な光学補償を実現できる。例えば、TNモードの液晶ディスプレイでは、視野角度が狭いため、通常、光学補償を実現する液晶組成物からなる光学補償層が設けられた光学補償フィルム(例えば、WVフィルム(富士フィルム製))が偏光子に積層されて使用されるが、本発明のフィルムを使用した場合には、液晶組成物からなる光学補償層を利用しなくても、従来の液晶組成物からなる光学補償層を有する光学補償フィルムを利用したものよりも簡便に視野角補償を行うことができる。また、本発明のフィルムの製造方法により、本発明のフィルムを提供することができる。
また、従来よりも高い圧力でメルトを挟圧することで大きなRe、Rthおよびγを同時に発現させることができることについても本発明者らは近年見出しているが、このような高い圧力で製膜すると特許文献1〜3に記載の方法では金属ベルト、金属スリーブが変形し、これに由来する光学むらが発現してしまう。本発明の好ましい態様によれば、このような高い圧力で製膜した場合であっても、ロングラン製膜時に光学むらが少ないフィルムを製造することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向を意味する。
[フィルム]
本発明のフィルムは、後述する本発明のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする。以下、本発明のフィルムの詳細な特徴について説明する。
(面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth)
上記の方法で得たフィルムは下記物性を有することが好ましい。本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含有し、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[0°]と、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[−40°]が、下記式(II)および(III)を共に満たすことが好ましい。
0nm<Re[0°]≦300nm 式(II)
0nm<γ≦300nm 式(III)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(III’)
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
本発明のフィルムにおいて、γは40〜300nmであることが好ましく、60〜250nmであることがより好ましく、80〜180nmであることが特に好ましい。γは左右から覗いた時のレターデーション(Re)が異なり、フィルム法線を中心に左右で配向(レターデーション)が異なり、即ち配向が傾斜していることを示す。γが大きいと、傾斜構造の傾きが大きいことを意味し、この構造が液晶表示装置中の液晶配向を相補し視野角を改善する効果を有する。γが好ましい範囲であれば、液晶表示装置に組み込んだ場合に液晶補償能が改善される。
また、本発明のフィルムは、面内方向のレターデーションRe[0°]が50〜300nmであることが好ましく、Re[0°]が70〜250nmであり、さらに好ましくは、100〜200nmである。Re[0°]が好ましい範囲であれば、液晶表示装置に組み込んだ場合に液晶補償能が改善される。
さらに、本発明のフィルムは、厚み方向のレターデーションRthが40〜300nmであることが好ましく、より好ましくは50〜200nm、さらに好ましくは50〜150nmである。Rthは厚み方向と面内方向の屈折率の差であり、好ましい範囲内にすることで、斜め方向の表示むらが少なくすることができる。
またさらに、本発明のフィルムは、下記式(V)〜(VII)を同時に満たすことが好ましい。
0nm<Re[0°]≦ 300nm 式(V)
20nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦ 200nm 式(VI)
0nm<Rth≦ 300nm 式(VII)
このようにRe[0°]、γ、Rthが本発明の好ましい範囲内であれば、液晶表示装置の補償能が改善され、画像が見え易くなる。光学むらが視認され易くなるのは、液晶表示装置の補償能が不十分で画像が見え難くなったときであるため、上記光学特性を好ましい範囲にすることが好ましい。
γ、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、特にTNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
本発明のフィルムの膜厚は、100μm以下である。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、80μm以下であることが好ましく、25〜75μmであることがより好ましく、30〜70μmであることが特に好ましい。本発明のフィルムの製造方法では、このような薄手のフィルムを作成でき、従来技術との差異点の一つである。
Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には、±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることがさらに好ましい。また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、表示ムラの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
上記光学特性値は、以下の方法により測定することができる。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。本発明のフィルムは、上記測定法で測定した場合、傾斜方位は、進相軸、もしくは遅相軸のいずれかとなる。例えば、傾斜方位が遅相軸の場合、フィルムの遅相軸とフィルム法線を含む面内において、Re[+40°]とRe[−40°]を測定すると、|Re[+40°]−Re[−40°]|>0となり、フィルムの進相軸とフィルム法線を含む面内において、Re[+40°]とRe[−40°]を測定すると、|Re[+40°]−Re[−40°]|は実質0となる。ここで,実質0とは、KOBRAの測定精度を考慮し、具体的には5nm以下である。一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムや、溶液製膜法で作成したフィルム、また一軸または二軸延伸されたフィルムは、遅相軸、もしくは進相軸のどちらを傾斜方位として測定しても、|Re[+40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
Rthは、屈折率楕円体がβ°一様傾斜したことを仮定し、屈折率楕円体の各方位の屈折率nx、ny、nzを数値計算し、下記数式(A)に代入して、求めることができる。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
本発明のフィルムでは、z軸をフィルムの厚み方位、x軸をフィルム傾斜方位、y軸をx軸、z軸と直交する方位とし、nyはフィルムy軸方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されているが、例えば、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値および平均屈折率naveの値および膜厚値dから、以下の数式(B)を用いて計算することが出来る。
Figure 0005324988
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、数式(B)中のβは、屈折率楕円体が一様傾斜したことを仮定した場合の傾斜角度を表し、傾斜型位相差フィルムの構造を単純に把握するときに使用される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
[フィルムの製造方法]
第一挟圧面と第二挟圧面の間にメルトを挟んで固化して製膜する際、特開2003−25414号公報、特開2007−237495号公報、特開2007−38646号公報などに記載の製造方法でロングラン製膜を行うと、光学むらが発生する。これらのロングラン運転での光学むらを解析した結果、以下の機構で発現することがわかった。すなわち、第一挟圧面と第二挟圧面の間にメルトを挟んで固化して製膜する際、粘弾性体であるメルトが第一挟圧面と第二挟圧面の間の押圧やせん断力により変形する。この際、第一挟圧面と第二挟圧面に僅かな変形や強度むらがあると、メルトに加わる応力に不均一性が発生し、これが光学むらとなる。この際、メルトは粘弾性体のためクッションの役割を演じ、これが厚いときは第一挟圧面、第二挟圧面の変形や強度むらを吸収できるが、薄くなるとこれらを吸収できず光学むらとなり易い。実際、80μm以下のような薄手フィルムを製造する際において、特に光学むらが顕在化した。このような第一挟圧面と第二挟圧面のうち、変形や強度むらを発生し易いのが金属スリーブを被せたロールや金属ベルトからなるほうの挟圧面である。従来、これらの金属ベルトや金属スリーブは柔らかく変形し易いよう(第二挟圧面との接触面積を増やし均一にタッチさせることで均一性を確保するため)、2mm以下の薄手の金属を使用していた。このため、高温のメルトに対し長時間使用していると、熱による劣化や、変形を起こしやすかった。特に800mm以上の広幅になると変形を起こしやすかった。このような挟圧面の変形がメルトに転写され、光学むらを引き起こしていた。
なお、本明細書中では、複数のロール間に渡して使用するものを「ベルト」とし、一本のロールの表面に被せたものを「外筒(またはスリーブ)」として区別する。
また、本発明では、金属ベルト、金属スリーブを巻いたロールとして、磨耗性および駆動性の改良(スリップ防止)の観点からゴムロールを使用する。
このような金属スリーブを被せたゴムロールや、複数のゴムロール間に渡した金属ベルトを一方の挟圧面として用いるフィルムの製造方法において、本発明は以下のように補強層を設けることで、ロングラン製膜時の光学むらを少なくしたことが特徴である。
すなわち、本発明のフィルムの製造方法の第1の態様は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面が、少なくとも2つのゴムロールと、該少なくとも2つのゴムロールの外部に配置された金属ベルトとを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属ベルトとの間に補強層を有することを特徴とする。
本発明のフィルムの製造方法の第2の態様は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有することを特徴とする。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
(熱可塑性樹脂)
本発明の製造方法で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂は、2つのロールでせん断変形を付加した場合、遅相軸が傾斜方位を向き、γ>0のフィルムを作成することができ、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、γ>0のフィルムを作成することができる。
本発明のフィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正または負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることが出来る。
本発明に使用可能な環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られたノルボルネン系樹脂が含まれる。また、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なセルロースアシレート系樹脂の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基および芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選択される1種または2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基およびプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。前記CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
本発明の製造方法を含む溶融押出し法によりフィルムを作製する場合は、用いるセルロースアシレートは、以下の式(S−1)および(S−2)を満足することが好ましい。以下の式を満足するセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
前記式(S−1)および(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式(S−3)および(S−4)を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。
式(S−3)2.3≦X+Y≦2.95
式(S−4)1.0≦Y≦2.95
下記式(S−5)および(S−6)を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
式(S−5)2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6)2.0≦Y≦2.9
セルロースアシレート系樹脂の質量平均重合度および数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、および数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート系樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)および(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
本発明に使用可能なポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報、特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン−アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
Figure 0005324988
前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂であることが好ましく、高透明性、複屈折発現性および耐熱性の観点からノルボルネン系樹脂であることがより好ましく、付加重合系のノルボルネン系樹脂であることが特に好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
(添加剤)
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
安定化剤:
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO-412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
紫外線吸収剤:
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
光安定化剤:
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
可塑剤:
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
微粒子:
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
光学調整剤:
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
(熱可塑性樹脂組成物の供給)
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含むが、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含んでも、含まなくてもよい。
溶融押出ししない場合、例えば熱可塑性樹脂組成物と溶媒とを支持体上に流延し、溶液製膜によって前記熱可塑性樹脂組成物をフィルム化し、それを前記挟圧工程に供して、せん断力を付与して製膜する方法をおこなってもよい。
本発明の製造方法は、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含み、溶融押出しされた組成物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形することが、より得られるフィルムのRe[0°]のバラツキを抑える観点から好ましい。また、熱可塑性樹脂を含有する組成物を供給する供給手段としては特に制限はないが、例えば、ダイから溶融押出しされることが好ましい。
溶融物に対してせん断力を付与して製膜する方法を行う場合、溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。なお、これらの樹脂はペレット化することが好ましく、この時上記添加剤を加えることも好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
溶融物に対してせん断力を付与して製膜する方法を行う場合、次に、乾燥したペレットを、1軸あるいは2軸の押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させることが好ましい。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。ダイの押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、180℃〜300℃で混練し溶融することが好ましく、200℃〜280℃で混練し溶融することがより好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は3μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmが好ましく、さらに好ましくは3μm〜15μmである。また、50メッシュから500メッシュのフィルターを用いることが好ましい。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けて定流量化することが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
ダイ出口部分のクリアランス(以下、リップギャップとも言う)は一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。0.1〜30mmであることが好ましく、0.2〜20mmであることがより好ましく、0.3〜15mmであることが特に好ましい。
本発明の製造方法において、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置間に供給する際に供給手段としてダイを用いる場合、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
<挟圧工程>
次に、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、好ましくは冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。
(挟圧温度)
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合における熱可塑性樹脂組成物の温度(以下、挟圧温度とも言う)は、(Tg+20℃)〜Tg+120℃である。前記挟圧温度がTg+20℃以上であると熱可塑性樹脂組成物の粘度が十分低くなるため、成形性が良好となり得られるフィルムの光学特性のバラツキ、特にRe[0°]のバラツキを抑制することができる。一方、前記挟圧温度がTg+120℃以下であると、挟圧装置の挟圧面との温度差が十分小さくでき、Re[0°]のバラツキおよび得られるフィルムの鱗状ムラを顕著に改善することができる。前記挟圧温度は、Tg+20〜Tg+120℃であることが好ましく、Tg+30〜Tg+100℃であることがより好ましく、Tg+50〜Tg+100℃であることが特に好ましい。
ダイから熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、前記挟圧温度はいわゆる吐出温度(供給手段出口の樹脂温度、例えばダイ出口の樹脂温度)と異なり、前記挟圧温度は前記吐出温度よりも約20〜100℃低い。例えば溶融物に対してせん断力を付与して製膜する方法を行う場合は供給手段出口からの吐出温度を上記範囲に制御し、後述するエアーギャップにおける保温とエアーギャップの距離を制御することで前記挟圧温度を達成できる。
前記第一挟圧面および前記第二挟圧面の温度は、フィルムは剥ぎ取り時に発生する面状故障(剥ぎ取りダン)を解消する観点から、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−30℃〜Tg+5℃に設定する。制御手段としては、公知の方法を用いることができる。
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の熱可塑性樹脂組成物着地点までの距離)は、エアーギャップ間における熱可塑性樹脂組成物の保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
本発明のフィルムの製造方法では、前記供給手段の出口から挟圧装置の熱可塑性樹脂組成物の着地点に特に制限はなく、例えば溶融製膜の場合、供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の着地点と、第一挟圧面と第二挟圧面とが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。
前記供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の着地点とは、供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物が初めて第一挟圧面あるいは第二挟圧面に接触(着地)する地点を指す。また前記第一挟圧面と第二挟圧面の隙間の中点とは、第一挟圧面と第二挟圧面の隙間が最も狭くなった所の第一挟圧面表面と第二挟圧面表面の中点を指す。
また、本発明の製造方法では、供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物を、第一挟圧面および第二挟圧面の少なくとも一方に接触する直前まで、熱可塑性樹脂組成物を保温し、幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、前記エアーギャップの少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、前記熱可塑性樹脂組成物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、熱可塑性樹脂組成物の幅方向の温度分布を抑制することができる。熱可塑性樹脂組成物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
なお、熱可塑性樹脂組成物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
前記遮蔽部材は、例えば、第一挟圧面および第二挟圧面の両端部よりも内側で、且つ熱可塑性樹脂組成物の供給手段(例えば、ダイ)の幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、供給手段の側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、供給手段の放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、供給手段側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材と熱可塑性樹脂組成物の幅方向端部との隙間は、挟圧面の表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
よりRe[0°]、γのロングラン製膜時の光学むらをなくす方法として、熱可塑性樹脂組成物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、熱可塑性樹脂組成物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
(ライン速度)
本発明の製造方法では、エアーギャップでの熱可塑性樹脂組成物の保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中での熱可塑性樹脂組成物の冷却を抑制でき、熱可塑性樹脂組成物の温度を好ましい範囲に制御した状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
本発明の製造方法では、前記挟圧工程において、20MPa〜300MPaの圧力で前記熱可塑性樹脂組成物を挟圧することが好ましく、25MPa〜200MPaで挟圧することがより好ましく、30MPa〜150MPaで挟圧することが特に好ましい。このように圧力で前記組成物を挟圧することによって、挟圧装置間を通過する組成物に適度なせん断力を加えることができ、得られるフィルムの光学むらを抑制することができる。また、前記組成物を20〜300MPaで挟圧することで、傾斜構造、すなわちγがより大きくなり、好ましい。なお、挟圧装置間の圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製、(中圧)プレスケール等)を挟圧装置間に通すことで測定することが出来る。また、圧力が前記好ましい範囲内であれば、得られるフィルムのRe[0°]、γ、Rthが前記好ましい範囲内になるように制御することができる。
本発明の製造方法では、前記範囲の挟圧面間の圧力を加圧するために、例えばタッチロールを用いる場合はタッチロールのシリンダー設定値を適宜変更することができる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や挟圧面の材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。また、タッチベルトを用いる態様でも同様の制御を行い、前記範囲の挟圧面間の圧力を加圧することができる。
本発明の製造方法では、前記挟圧装置の第一挟圧面の移動速度と第二挟圧面の移動速度とは等速であっても、互いに異なる速度で駆動されていてもよいが、互いに異なる移動速度で駆動されることが好ましい。前記挟圧面は、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、光学むらを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
本発明の製造方法では、前記挟圧装置の第一挟圧面の移動速度を第二挟圧面の移動速度よりも速くし、下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差を0.5%〜20%に制御し、熱可塑性樹脂組成物が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。挟圧装置の移動速度差は、1%〜15%とすることが好ましく、1.5%〜10%とすることがより好ましい。移動速度差が前記好ましい範囲内であれば、得られるフィルムのRe[0°]、γ、Rthが前記好ましい範囲内になるように制御することができる。
移動速度差(%)=100×(第一挟圧面の速度−第二挟圧面の速度)
/第一挟圧面の速度 式(I)
なお、挟圧面がロールである場合、ロールの周速度を用いて周速差を計算し、移動速度差とする。ここで云う周速差とはタッチロール、それと対峙する冷却(チル)ロールの周速について下記式で表される。
周速差(%)=100×{(速い方の周速度)−(遅い方の周速度)}
/(速い方の周速度)
前記熱可塑性樹脂組成物が先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
本発明の製造方法では、フィルムの幅は特に制限はなく、例えば200〜2000mmとすることができる。
(挟圧面の具体的な構成)
以下において、本発明の製造方法で用いられる第一挟圧面および第二挟圧面の具体的な構成について説明する。本発明の製造方法では、下記構成の挟圧面を用いることで光学むらを低減することができ、特に80μm以下の薄手フィルムや800mm以上の幅広フィルムをロングラン製膜する場合でも光学むらの小さいフィルムを製造することができる。
なお、本明細書では、挟圧装置が前記熱可塑性樹脂組成物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の熱可塑性樹脂供給手段に最も近いキャスティングロール、すなわち挟圧装置の第二挟圧面のことをチルロールともいう。
前記挟圧面の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
本発明の製造方法では、前記挟圧面のそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
前記挟圧面の一方が弾性であり、もう一方が剛性である場合、第一挟圧面と第二挟圧面間を通過させる際に挟圧面の弾性率の相違または変形のしやすさの相違に基づいて各挟圧面表面の間に非対称な変形を生じる。そのため、第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差をつけずに等速で移動させた場合にもフィルムに対しせん断力を負荷することができ、傾斜構造を付与することができる。この場合挟圧面間の速度管理が容易で処理精度を高度に維持できるため、必要に応じてこのような構成を用いてもよい。さらに両挟圧面とも金属表面を有することが、挟圧面表面の凹凸を小さくし、フィルムの表面に傷が付きにくできる観点から好ましい。
また、第一挟圧面と第二挟圧面がロールである場合、それぞれの直径は、フィルム幅等に応じて適宜に決定でき、同じであっても相違していてもよい。
挟圧面が「剛性」であるとは、たとえば挟圧面がロールである場合、剛性素材外筒厚み/ロール直径の比が例えば1/80以上程度であることを表し、例えばロールの一部に剛性材料を用いている場合であっても、必ずしも挟圧面もしくはロールが「剛性」であるとは限らない。また、ロールが「弾性」であるとは、剛性素材外筒厚み/ロール直径の比が1/80未満程度であることを表し、例えばロールの一部に剛性材料を用いている場合を含むことがある。すなわち、ロール内部に弾性体層のように剛性材料を全く含まない層が厚く形成されているようなロールは、たとえ表面や内部に剛性材料層が形成されていたとしても全体としては弾性変形しうるので、弾性ロールに含まれる。また、芯部がゴムで表面が薄い剛性材料であるロール(外筒として、薄い表面金属リングを有するロール)の場合も、表面の金属は変形しないが、回転軸と表面金属リングの中心がずれるため、弾性ロールに含まれる。また、挟圧面が金属ベルトである場合も、剛性素材外筒厚みと、駆動用のゴムロール直径との比率を用いて同様に剛性か弾性かを決定することができる。
前記第一挟圧面や第二挟圧面がロールである場合、ロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報、特開2003−25414号公報記載のものを利用できる。
さらに、本発明の製造方法では、前記第一挟圧面や第二挟圧面がロールである場合、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径200〜1500mm、より好ましくは、300mm〜1000mm、特に好ましくは350mm〜800mm、より特に好ましくは350〜600mm、さらに好ましくは350〜500mmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、γが大きなフィルムを、しかもロングラン製膜時の光学むらの発生を抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、前記ロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
さらにγを大きくするために、第一挟圧面の表面温度と第二挟圧面の表面温度の間に温度差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
(第一挟圧面)
本発明の製造方法の第一の態様では、前記第一挟圧面が、少なくとも2つのゴムロールと、該少なくとも2つのゴムロールの外部に配置された金属ベルトとを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属ベルトとの間に補強層を有する。本発明の製造方法の第二の態様では、前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有する。
本発明の製造方法では、前記補強層がファイバー層であることが、金属ベルトまたは金属外筒が張力等で伸びて変形するのを抑制し、金属疲労を発現しにくくする観点から好ましい。例えば金属ベルト、金属スリーブの内側にファイバーで裏打ち(補強)を行うことができる。前記ファイバーの厚みは0.1mm〜5mmが好ましく、より好ましくは0.3mm〜4mm、さらに好ましくは0.5mm〜3mmである。前記好ましい範囲の下限値以上であれば補強が十分であり、高温耐久走行時間が十分改良される。一方、前記好ましい範囲の上限値以下であればロールの変形に沿ってファイバー層も変形し易くなるため歪が発生せず、高温耐久性が低下したり、挟圧むらが発生したりすることを抑制することができる。そのため、光学むらの発生を抑制することができる。前記ファイバー層のファイバーとしては、本発明の趣旨に反しない限り特に制限なく公知のファイバー(繊維)を用いることができる。前記ファイバーとしては、例えば、グラスファイバー、カーボン(炭素)繊維、黒鉛繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維等が挙げられる。この中でも特に炭素繊維が好ましく、三菱レイヨン製パイロフィルHRX40、住友ハーキュレス製マグナマイトAS4、ペトカ製カーボニック等を使用できる。これらの繊維はエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂で固定することが好ましい。具体的には、特開平6−117430号、同5−87123号、同6−210763号、同6−239509号、同6−328593号、同7−276538号、同8−309925号、同9−20993号、特開2004−25802号、同2004−204357号各公報に記載の方法を使用できる。これらは金属スリーブでのファイバー補強に関するものであるが、金属ベルトにおいても同様に使用できる。
本発明の製造方法では、溶融物を挟圧する直前における前記第一挟圧面の表面温度を、前記溶融物が前記第一挟圧面または前記第二挟圧面の少なくとも一方から剥離した直後における前記第一挟圧面の表面温度よりも5℃〜50℃低くなるように冷却しながら製膜することが、金属ベルトあるいは金属外筒(金属スリーブ)の磨耗量を減らす観点から好ましい。溶融物を挟圧する直前における前記第一挟圧面の表面温度を、前記溶融物が前記第一挟圧面または前記第二挟圧面の少なくとも一方から剥離した直後における前記第一挟圧面の表面温度よりも10℃〜45℃低くなるように冷却ことがより好ましく、15℃〜40℃低くなるように冷却ことが特に好ましい。前記好ましい範囲の下限値以上であれば冷却効果が十分であり後述する金属ベルトまたは金属外筒の磨耗量が減少し、好ましい。一方前記好ましい範囲の上限値以下であれば金属ベルトまたは金属外筒上でメルトが急冷されて収縮することがなく、収縮応力により金属ベルト、金属スリーブの表面に微細な傷が発生することを抑制でき、磨耗量を減少させることができ好ましい。
また、金属ベルトや金属スリーブは外側から冷却しても内側から冷却してもよいが、外側から冷却することがより好ましい。これはメルトと接触するのが金属ベルトや金属スリーブの外側であり、金属ベルトや金属スリーブの外側の熱劣化をより抑制したいためである。
このような冷却方法としては、溶融樹脂の接触していない金属ベルトあるいは金属スリーブの表面部分に液体や気体の冷媒を接触させて温度を下げてもよく、例えば冷風をあてても、冷却ロールや冷却ベルトを接触させてもよい。また金属スリーブや金属ベルトを巻きつけるゴムロールを中空にして中に冷媒(気体や液体)を循環させて冷却してもよい。さらに、ゴムロール表面に溝を切ったり、表面に微細な孔をあけて、そこで放熱させることで冷却させることも好ましい。この時、ゴムロールと金属スリーブ、金属ベルトの間に空間を設け、その空間に積極的に冷媒を通し冷却してもよい。
前記第一挟圧面に使用する金属ベルトあるいは金属外筒の磨耗量が0%〜1%であることが好ましく、より好ましくは0%〜0.8%、さらに好ましくは0%〜0.6%である。ここで云う磨耗量とは、金属ベルト、金属外筒の表面が削られ薄くなることを指す。
挟圧面には常に溶融状態の高温(例えば、200℃近傍)の樹脂が接触しており、熱劣化し易い状況にある。このため金属ベルトあるいは金属スリーブが酸化し磨耗してゆく。このような磨耗により金属ベルトあるいは金属スリーブの強度が変化し、挟圧した際に圧着ムラを発生し光学むらを生じる。
前記第一挟圧面は、従来よりも厚い金属ベルトまたは金属スリーブを有することが、第一挟圧面の強度を上げる観点から好ましい。前記金属ベルトまたは金属スリーブの厚みは2.5mm〜8mmが好ましく、より好ましくは3mm〜6mm、さらに好ましくは3.5mm〜5mmである。前記好ましい範囲の下限値以上であれば強度が十分であり、クラックが発生し難い。一方、前記好ましい範囲の上限値以下であれば金属ベルト、金属スリーブがロールに沿って変形しやすいためクラックが発生し難く、ロングラン製膜後における光学むらの発生を抑制することができる。
前記金属ベルトまたは金属スリーブの材質は、第一挟圧面の強度を上げる観点から主としてニッケルであることが好ましい。例えば前記金属ベルトはニッケルから電鋳法により作成するのが好ましく、この中に、周期表の2族〜5族に属する少なくとも一種の金属元素を質量分率で10〜10,000ppm含有させることで耐久性をより向上できる。さらにこの表面にはクロムメッキやタングステン溶射等で表面硬度を上げることも好ましい。さらにW、Ti、Cr、Zr、Mo,Si、Ta、V、Nb等の金属炭化物を溶射することも好ましい。具体的には特開平6−263301号、同9−034286号、特開2001−289282号、同2007−286616号、同2001−225134号、同2002−258648号、同2002−241984号各公報に記載のものを使用できる。金属スリーブも同様の方法で作ることができる。
前記第一挟圧面は、高温耐久走行時間が1000時間以上の金属ベルトあるいは金属スリーブを有することが、ロングラン製膜時の光学むらの発生を抑制する観点から好ましい。前記高温耐久走行時間は、1500時間以上であることがより好ましく、2000時間以上であることが特に好ましい。ここで、前記高温耐久走行時間とは、高温で張力を加えて走行させた時にクラックが発生し始める時間を示す。このようなクラックが表面に発生すると表面が凹凸になり、これがメルトに転写し光学むらを引き起こす。このように高温耐久走行時間とは金属ベルト、金属スリーブが破断する前兆であるクラックの発生のし易さを示す指標である。なお、このようなクラックは第一挟圧面の表面金属(金属ベルト、金属スリーブ)が張力により歪を受けたり、第二挟圧面(金属ロール等)に押し付けられ歪を受けることで金属疲労が増大し、微細なクラックとして発現する。このため、第一挟圧面が歪を受け難くすると、即ち第一挟圧面の強度を上げると、高温耐久走行時間が長くなり、ロングラン製膜時に光学むらが発生することを抑制することができる。
本発明の製造方法では、複数のロール上に金属ベルトを渡した第一挟圧面、またはロールに金属スリーブを被せた第一挟圧面を使用するが、ロールの駆動力を金属ベルトや金属スリーブに伝達し易くするために、ゴムを被覆したゴムロールを使用する。しかしゴムは熱で劣化し磨耗し易いため耐摩耗性が低く、磨耗により発生したゴムロール表面の凹凸が金属ベルト、金属スリーブを変形させ、挟圧の不均一や凹凸の転写が生じてしまう。そのためロングラン製膜時においてフィルムの不均一性を発現させ、光学むらを発生させ易いという問題があった。本発明の製造方法では、前記補強層がゴム層であり、かつ、該ゴム層の表面強度をゴムロールの表面強度よりも10%〜100%高くする構成とすることが、ゴムロールを補強して耐摩耗性を改善し、光学むらの発生を抑制する観点から好ましい。ゴムロールの表面硬度は内部より15%〜80%高くすることがより好ましく、20%〜60%高くすることが特に好ましい。このようにゴムロール内部を柔らかく変形し易くすることで、熱可塑性樹脂と第一挟圧面とが接触した際に接触圧むらを起こしにくくすることができ、光学むらを抑制できる。前記好ましい範囲の下限値以上であれば磨耗によりゴムロール表面に凹凸が発生しにくくなり、光学むらが抑制されるため好ましい。一方、前記好ましい範囲の上限値以下であればゴムロールが硬くなり過ぎず、第1挟圧面と均一に接触しできるため、光学むらの発生を抑制でき、好ましい。このような表面硬度を上げた層(補強層)の厚みは、全ゴムロールの厚み(内層の厚み+補強層の厚み)の5%〜70%であることが好ましく、より好ましくは10%〜60%、さらに好ましくは15%〜50%である。
このような表面硬度を達成するにはゴムに無機微粒子を添加するのが好ましく、具体的にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等を挙げることができる。また、無機微粒子の好ましい添加量は3重量%〜50%重量、より好ましくは5重量%〜45重量%、さらに好ましくは10重量%〜40重量%である。なお、このようなゴムロールと補強層としてのゴム層とは、完全に非連続的な二層となるように形成してもよく、表面に無機微粒子等を添加して連続的に組成が変化するような一層として形成してもよい。すなわち、本発明の趣旨によれば、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層としてゴム層を設ける場合、ゴムロールとゴム層とは一体化していてもよく、明確に分離できる必要はない。
前記第一挟圧面のゴムロールのゴム材料としては、NBRゴム、ジエン系加硫ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を用いることができる。具体的には特開2007−161870号、同2001−247214号、特開平9−42274号、同6−200923号、同5−239224号各公報等に記載のゴムを使用することができる。
前記第一挟圧面は、第一挟圧面に使用する金属ベルトあるいは金属スリーブの内側に耐摩耗性が0.05以下の複層ゴムロールを有することが好ましい。前記ゴムロールの耐摩耗性は0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることが特に好ましい。
(第二挟圧面)
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、前記第二挟圧面としてロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記第二挟圧面のショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記第二挟圧面の材質は、金属であることが前記ショア硬さを達成する観点から好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、第二挟圧面の材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールも、特に制限なく用いることができるが、前記挟圧圧力を達成できることが好ましい。
<搬送>
このようにして製膜した後、熱可塑性樹脂組成物を通過させる第一挟圧面と第二挟圧面(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。好ましい巻取り速度は10m/分〜70m/分であり、さらに好ましくは15m/分〜50m/分であり、さらに好ましくは20m/分〜40m/分である。
本発明の製造方法で得られるフィルムの未延伸時の膜厚は、100μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、30〜95μmであることがより好ましく、40〜90μmであることが特に好ましい。
<延伸、緩和処理>
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
好ましい延伸温度はTg−10℃〜Tg+50℃、より好ましくはTg−5℃〜Tg+35℃であり、好ましい延伸倍率(延伸後の長さを延伸前の長さで割った値)は1.05倍〜5倍が好ましく、より好ましくは1.1倍〜3倍である。以下、横延伸と縦延伸それぞれについて、さらに好ましい態様を説明する。
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+50℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+35℃がより好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.05〜5倍、より好ましく1.1〜3倍である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側の周速を入口側の周速より速くすることで達成できる。この際、間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+50℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+35℃がより好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.05〜5倍、より好ましく1.1〜3倍である。
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。 本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号公報に記載の方法である。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
(測定法)
(1)金属ベルトあるいは金属スリーブの磨耗量
各製膜条件において、金属ベルト、金属スリーブの製膜開始前の質量をW(i)を測定し、500時間製膜後の質量をW(f)とし、100×(W(i)−W(f))/W(i)を磨耗量とした。
(2)金属ベルトあるいは金属スリーブの高温耐久走行時間
金属ベルト、金属スリーブを200℃において張力20kg/mを掛けて20m/分で直径5cmの金属ロール上を搬送し、金属ベルト、金属スリーブにクラックが発生し始める時間を高温耐久走行時間とした。
(3)ゴムロールの耐摩耗性
アクロン型磨耗試験機(上島製作所(株)製)にて回転砥石にて回転ゴムサンプルを、回転砥石の回転方向に対して15度の角度になるように取り付け、サンプルが1000回転した後のゴムの磨耗減量(体積換算)を測定し、初期重量に対する比率(磨耗量/初期重量)をゴムロールの耐摩耗性とした。
(4)ゴムロールの表面硬度
JIS K6253に従い、JIS A型硬度計を用いゴムロールの最外層から最内層まで等間隔で10点測定した。最外層の硬度(Ho)と10点の平均硬度(Hav)から、100×(Ho−Hav)/Havを計算し、得られた値をゴムロールの表面硬度とした。
(第一挟圧面の作成)
<1>金属ベルト・金属スリーブ
・特開2002−241984号公報の実施例1に従いニッケルベルトを作成し、この上に特開平5−87123号公報実施例記載のように銅メッキを1mm厚で行い、さらにその上に電解クロムメッキを30ミクロン付与した。全層の厚みは表1記載に記載した。
この内側に特開2004−204357の実施例と同様にして炭素繊維(三菱レイヨン(株)製パイリフィルHPX40)を表1の厚みだけ巻きつけエポキシ樹脂で固め、ファイバー層を形成した。
<2>ゴムロール
直径150mm、幅1.8mの中空金属ロールの上に下記ゴム層を付け、直径が300mmのゴムロールを得た。なお、中空部にTg−10℃の冷媒を循環させて温度調節した。
さらに一部の水準(表1、表2に記載)は深さ5mmの溝を5mm間隔でロール幅全域にわたって削りだした。
<2−1>単層ゴムロール:特開2001−247214号公報の実施例中に、比較例として記載されているNBRゴムのゴムロールを使用した。
<2−2>多層ゴムロール:シランカップリング処理を行ったシリカを、上記単層のNBRゴムロールの表層部(全厚みの30%)に、表1記載の量だけ添加して混練した。なお、内層部(全厚みの70%)は、上記単層のNBRゴムロールである。
(樹脂)
[製造例1] 付加重合型ノルボルネン樹脂COCのペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、付加重合型ノルボルネン樹脂COC、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のTgは130℃であった。
[製造例2] 開環重合型ノルボルネン樹脂COP−1のペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、開環重合型ノルボルネン樹脂COP−1を国際公開WO98/14499号公報の実施例1に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のTgは136℃であった。
[製造例3] 開環重合型ノルボルネン樹脂COP−2のペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、開環重合型ノルボルネン樹脂COP−2を特開2007−38646号公報の実施例1に記載の樹脂(a−1)を該実施例に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のTgは130℃であった。
[製造例4] ポリカーボネート系樹脂PCのペレットの製造
ポリカーボネート系樹脂PCとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用い、これを常法に従ってペレット化した。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
[製造例5] アクリル系樹脂のペレットの製造
アクリル系樹脂として、特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル系化合物を得た。これを常法に従ってペレット化した。
[製造例6] セルロースアシレート樹脂CAP−1のペレットの製造
セルロースアセテートプロピオネートとして、樹脂CAP−1を特開2008−87398号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、ペレット化した。得られたCAP−1の組成は、アセチル化度1.95、プロピオニル化度0.7、全アシル置換度2.65であった。
[製造例7] セルロースアシレート樹脂CAP−2のペレットの製造
セルロースアセテートプロピオネートとして、樹脂CAP−2を特開2008−50562号公報の表3に記載の実施例101を該実施例に記載の方法に従って製造し、ペレット化した。得られたCAP−1の組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.55、全アシル置換度2.7であった。
[実施例1〜25、27〜30、101〜125、127〜130、比較例1、4、101および104]
(製膜)
熱可塑性樹脂として下記表1に記載の樹脂を100℃において2時間以上乾燥し、アクリル以外は260℃で、アクリルは230℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し、T−ダイから押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを押出し温度(吐出温度)、アクリル以外は260℃で、アクリルは230℃で、幅1500mm、リップギャップ1mmのダイから押出した。この後、メルト(溶融樹脂)は第一挟圧面と第二挟圧面で挟まれる中央部分に落とされ、これを第一挟圧面、第二挟圧面の間で挟圧し、固化し製膜するが、下記のように第一挟圧面に金属ベルトまたは金属スリーブを巻きつけたゴムロールを用いた。
(A)金属ベルト方式:実施例1〜25、27〜30、比較例1および4
上記単層または複層ゴムロールのうち、下記表1に記載のゴムロールを2本用意し、この間に長さ80cmの表1に記載の幅1500mm、電鋳法で調整したニッケル製の金属ベルトを巻きまわし、これをTg−5℃の第二挟圧面(直径300mm、幅1800mm、ステンレス製の中空ロール)に表1に記載のタッチ圧で挟圧した。この時、表1記載のように第二挟圧面と接している反対側の外側から金属ベルトに冷却ロール(ステンレス製、直径20cm)を接触させて、冷媒液の温度を変えることで、メルトが接触している部分の温度より、樹脂が第二挟圧面に接触する直前の温度を表1の記載の温度だけ冷却した。なお、樹脂が接触している部分の温度とは、樹脂が第一挟圧面から離れた直後の温度(T1)を表す。この温度と樹脂が第二挟圧面に接触する直前の温度(T2)の差、T1−T2(単位:℃)が表1に記載した冷却温度である。
(B)金属スリーブ方式:実施例101〜125、127〜130、比較例101および104
上記単層または複層のうち、下記表1に記載のゴムロールの上に、長さ80cmの表2に記載の幅1500mm、電鋳法で調製したニッケル製の金属ベルトを1周巻きつけた。これをTg−5℃の第二挟圧面(直径300mm、幅1800mm、ステンレス製の中空ロール)に表2に記載の圧力で挟圧した。第二挟圧面と接触している反対側の金属スリーブに外側から冷却ロール(ステンレス製、直径10cm)を3本接触させて、この中の冷媒液の温度を変えることで、樹脂が接触している部分の温度より表2に記載の温度だけ冷却した。なお、冷却温度は金属ベルトと同様にして測定した。
なお、いずれの実施例および比較例においてもタッチ圧力は、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を、メルトのない状態で等周速(5m/分)のともに25℃に設定した二つの挟圧面に挟みこむことで測定し、その値を製膜時の圧力とした。これらの挟圧面を用い、周速度差を下記表1および表2に記載の条件に設定し、ダイとメルト着地点の距離を100mmに設定した。また、いずれの実施例および比較例においても、搬送速度で20m/分とし、得られるフィルムの製膜幅を1500mmとなるように製膜した。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。
金属ベルト方式、金属スリーブ方式とも製膜幅は1.2m、表1または表2に記載の厚みで製膜し、両端5cmずつスリットし、高さ20μmのナーリングを付与して巻きつけた。これを連続して500時間製膜し、製膜前後の金属ベルト、金属スリーブの重量から磨耗量を測定した。また、500時間製膜した後に得られたフィルムを、各実施例および比較例のフィルムとした。
[実施例26、比較例2および3]
いずれも金属ベルト方式で製膜を行った。比較例2は、特開2007−38646号公報の実施例3に準じて実施したものである。比較例3は、比較例2のタッチベルトを用いたまま、本発明の好ましい製膜条件としたものである。本発明26は、比較例3を本発明の補強層を備えたタッチベルトとし、冷却条件を変更したものである。
[実施例126、比較例102および103]
いずれも金属スリーブ方式で製膜を行った。比較例102は、特開2003−25414号公報の実施例1に準じて実施したものである。比較例103は、比較例102のタッチロールを用いたまま、本発明の好ましい製膜条件としたものである。本発明126は、比較例103を本発明の補強層を備えたタッチロールとし、冷却条件を変更したものである。
(フィルムの評価)
上記方法で得られた各実施例および比較例のフィルムのγ、Re[0°]、Rthを本明細書に記載の方法で、KOBRAにて測定した。
また光学むらは、クロスニコルに配置した偏光板の間にサンプルフィルムを挿入し、目視で確認できる明度むらを「光学むら」とし、サンプルフィルムの全面積中に占める明度むらが生じた面積の割合を表1および表2に示した。このような光学むらが液晶表示板に使用した際に表示むらとなって現れる。
Figure 0005324988
Figure 0005324988
表1は金属ベルト方式の結果を示す。実施例1〜6は金属ベルトの冷却の効果を示し、実施例7〜9は金属ベルトの裏打ちに使用した炭素繊維層の効果を示した。実施例10〜13、29および30は金属ベルトの内側に使用したゴムロールの表面硬度の効果を示した。実施例14、15および比較例1は、炭素繊維層の厚みとゴムロールの表面強度を好ましい範囲とし、ゴムロールの放熱溝の付与を順次実施していったときの相乗効果を示す。実施例14〜25はタッチ製膜条件(タッチ圧、周速差)を変えてRe[0°]、Rth、γを変えたときの効果を示す。比較例2は先行技術文献(特開2007−38646号公報)をそのまま実施した場合を、比較例3は比較例2をより光学むらの出易い製膜条件(タッチ圧を高くし、周速差を大きくし、製膜厚みを薄くした条件、すなわち本発明の製膜条件)としたもののである。これらに対し、実施例26は、光学むらの特に発生し易い比較例3に対しても(すなわち低厚み、高タッチ圧条件下においても)、有効な光学むら抑制効果を示した。実施例27、28および比較例4は、金属ベルトの裏打ちに使用した炭素繊維層の効果を比較したものであり、本発明の条件では光学むらが顕著に抑制されることがわかった。なお、いずれの実施例および比較例で製造されたフィルムも、γが発現しており傾斜構造を有することがわかった。
表2は金属スリーブ方式における各実施例および比較例の結果であり、表1と同様の傾向の効果が得られたことがわかった。
以上より、本発明の製造方法で製造されたフィルムは、傾斜構造を有し、ロングラン製膜時においても光学むらが少ないことがわかった。
(偏光板の製造、液晶表示装置の製造)
これらの各実施例および比較例のフィルムを視野角補償フィルムとして、1対の偏光板と液晶板の間に設置した。液晶表示装置としてTN、ECB、OCB、VA、IPSモードの液晶層について検討したところ、いずれも良好な視野角補償性能を発現した。

Claims (11)

  1. 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、
    前記第一挟圧面が、少なくとも2つのゴムロールと、該少なくとも2つのゴムロールの外部に配置された金属ベルトとを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属ベルトとの間に補強層を有しており、
    前記補強層はファイバー層であるか、ゴムロールより10〜100%表面強度が高いゴム層であることを特徴とするフィルムの製造方法。
  2. 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、
    前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有しており、
    前記補強層はファイバー層であるか、ゴムロールより10〜100%表面強度が高いゴム層であることを特徴とするフィルムの製造方法。
  3. 前記補強層がファイバー層であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 前記ファイバー層の厚みが0.1mm〜5mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  5. 前記補強層がゴム層であり、かつ、該ゴム層の表面強度を前記ゴムロールの表面強度よりも10%〜100%高くすることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
  6. 前記溶融物を挟圧する直前における前記第一挟圧面の表面温度を、前記溶融物が前記第一挟圧面または前記第二挟圧面の少なくとも一方から剥離した直後における前記第一挟圧面の表面温度よりも5℃〜50℃低くなるように冷却しながら製膜することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  7. 前記溶融物を、20MPa〜300MPaで挟圧することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  8. 前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くなるように制御し、かつ、
    下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5%〜20%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
    移動速度差(%)=100×(第一挟圧面の速度−第二挟圧面の速度)/第一挟圧面の速度 式(I)
  9. 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によりフィルムを製造し、製造したフィルムと偏光子を積層することを特徴とする偏光板の製造方法
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によりフィルムを製造し、製造したフィルムを液晶表示装置内に組み込むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法
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