JP5324988B2 - フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
[2] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
[3] 前記補強層がファイバー層であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4] 前記ファイバー層の厚みが0.1mm〜5mmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[5] 前記補強層がゴム層であり、かつ、該ゴム層の表面強度を前記ゴムロールの表面強度よりも10%〜100%高くすることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[6] 前記溶融物を挟圧する直前における前記第一挟圧面の表面温度を、前記溶融物が前記第一挟圧面または前記第二挟圧面の少なくとも一方から剥離した直後における前記第一挟圧面の表面温度よりも5℃〜50℃低くなるように冷却しながら製膜することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[7] 前記溶融物を、20MPa〜300MPaで挟圧することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[8] 前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くなるように制御し、かつ、 下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5%〜20%であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
移動速度差(%)=100×(第一挟圧面の速度−第二挟圧面の速度)
/第一挟圧面の速度 式(I)
[9] 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
[11] [10]に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[12] [10]に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
また、従来よりも高い圧力でメルトを挟圧することで大きなRe、Rthおよびγを同時に発現させることができることについても本発明者らは近年見出しているが、このような高い圧力で製膜すると特許文献1〜3に記載の方法では金属ベルト、金属スリーブが変形し、これに由来する光学むらが発現してしまう。本発明の好ましい態様によれば、このような高い圧力で製膜した場合であっても、ロングラン製膜時に光学むらが少ないフィルムを製造することができる。
本発明のフィルムは、後述する本発明のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする。以下、本発明のフィルムの詳細な特徴について説明する。
上記の方法で得たフィルムは下記物性を有することが好ましい。本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含有し、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[0°]と、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[−40°]が、下記式(II)および(III)を共に満たすことが好ましい。
0nm<Re[0°]≦300nm 式(II)
0nm<γ≦300nm 式(III)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(III’)
0nm<Re[0°]≦ 300nm 式(V)
20nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦ 200nm 式(VI)
0nm<Rth≦ 300nm 式(VII)
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。本発明のフィルムは、上記測定法で測定した場合、傾斜方位は、進相軸、もしくは遅相軸のいずれかとなる。例えば、傾斜方位が遅相軸の場合、フィルムの遅相軸とフィルム法線を含む面内において、Re[+40°]とRe[−40°]を測定すると、|Re[+40°]−Re[−40°]|>0となり、フィルムの進相軸とフィルム法線を含む面内において、Re[+40°]とRe[−40°]を測定すると、|Re[+40°]−Re[−40°]|は実質0となる。ここで,実質0とは、KOBRAの測定精度を考慮し、具体的には5nm以下である。一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムや、溶液製膜法で作成したフィルム、また一軸または二軸延伸されたフィルムは、遅相軸、もしくは進相軸のどちらを傾斜方位として測定しても、|Re[+40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
本発明のフィルムでは、z軸をフィルムの厚み方位、x軸をフィルム傾斜方位、y軸をx軸、z軸と直交する方位とし、nyはフィルムy軸方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されているが、例えば、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値および平均屈折率naveの値および膜厚値dから、以下の数式(B)を用いて計算することが出来る。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
第一挟圧面と第二挟圧面の間にメルトを挟んで固化して製膜する際、特開2003−25414号公報、特開2007−237495号公報、特開2007−38646号公報などに記載の製造方法でロングラン製膜を行うと、光学むらが発生する。これらのロングラン運転での光学むらを解析した結果、以下の機構で発現することがわかった。すなわち、第一挟圧面と第二挟圧面の間にメルトを挟んで固化して製膜する際、粘弾性体であるメルトが第一挟圧面と第二挟圧面の間の押圧やせん断力により変形する。この際、第一挟圧面と第二挟圧面に僅かな変形や強度むらがあると、メルトに加わる応力に不均一性が発生し、これが光学むらとなる。この際、メルトは粘弾性体のためクッションの役割を演じ、これが厚いときは第一挟圧面、第二挟圧面の変形や強度むらを吸収できるが、薄くなるとこれらを吸収できず光学むらとなり易い。実際、80μm以下のような薄手フィルムを製造する際において、特に光学むらが顕在化した。このような第一挟圧面と第二挟圧面のうち、変形や強度むらを発生し易いのが金属スリーブを被せたロールや金属ベルトからなるほうの挟圧面である。従来、これらの金属ベルトや金属スリーブは柔らかく変形し易いよう(第二挟圧面との接触面積を増やし均一にタッチさせることで均一性を確保するため)、2mm以下の薄手の金属を使用していた。このため、高温のメルトに対し長時間使用していると、熱による劣化や、変形を起こしやすかった。特に800mm以上の広幅になると変形を起こしやすかった。このような挟圧面の変形がメルトに転写され、光学むらを引き起こしていた。
また、本発明では、金属ベルト、金属スリーブを巻いたロールとして、磨耗性および駆動性の改良(スリップ防止)の観点からゴムロールを使用する。
すなわち、本発明のフィルムの製造方法の第1の態様は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面が、少なくとも2つのゴムロールと、該少なくとも2つのゴムロールの外部に配置された金属ベルトとを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属ベルトとの間に補強層を有することを特徴とする。
本発明のフィルムの製造方法の第2の態様は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有することを特徴とする。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
本発明の製造方法で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、γ>0のフィルムを作成することができる。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
前記式(S−1)および(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式(S−3)および(S−4)を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。
式(S−3)2.3≦X+Y≦2.95
式(S−4)1.0≦Y≦2.95
下記式(S−5)および(S−6)を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
式(S−5)2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6)2.0≦Y≦2.9
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン−アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
本発明の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含むが、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含んでも、含まなくてもよい。
溶融押出ししない場合、例えば熱可塑性樹脂組成物と溶媒とを支持体上に流延し、溶液製膜によって前記熱可塑性樹脂組成物をフィルム化し、それを前記挟圧工程に供して、せん断力を付与して製膜する方法をおこなってもよい。
本発明の製造方法は、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含み、溶融押出しされた組成物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形することが、より得られるフィルムのRe[0°]のバラツキを抑える観点から好ましい。また、熱可塑性樹脂を含有する組成物を供給する供給手段としては特に制限はないが、例えば、ダイから溶融押出しされることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
本発明の製造方法において、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置間に供給する際に供給手段としてダイを用いる場合、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
次に、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、好ましくは冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合における熱可塑性樹脂組成物の温度(以下、挟圧温度とも言う)は、(Tg+20℃)〜Tg+120℃である。前記挟圧温度がTg+20℃以上であると熱可塑性樹脂組成物の粘度が十分低くなるため、成形性が良好となり得られるフィルムの光学特性のバラツキ、特にRe[0°]のバラツキを抑制することができる。一方、前記挟圧温度がTg+120℃以下であると、挟圧装置の挟圧面との温度差が十分小さくでき、Re[0°]のバラツキおよび得られるフィルムの鱗状ムラを顕著に改善することができる。前記挟圧温度は、Tg+20〜Tg+120℃であることが好ましく、Tg+30〜Tg+100℃であることがより好ましく、Tg+50〜Tg+100℃であることが特に好ましい。
ダイから熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、前記挟圧温度はいわゆる吐出温度(供給手段出口の樹脂温度、例えばダイ出口の樹脂温度)と異なり、前記挟圧温度は前記吐出温度よりも約20〜100℃低い。例えば溶融物に対してせん断力を付与して製膜する方法を行う場合は供給手段出口からの吐出温度を上記範囲に制御し、後述するエアーギャップにおける保温とエアーギャップの距離を制御することで前記挟圧温度を達成できる。
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の熱可塑性樹脂組成物着地点までの距離)は、エアーギャップ間における熱可塑性樹脂組成物の保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
前記供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の着地点とは、供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物が初めて第一挟圧面あるいは第二挟圧面に接触(着地)する地点を指す。また前記第一挟圧面と第二挟圧面の隙間の中点とは、第一挟圧面と第二挟圧面の隙間が最も狭くなった所の第一挟圧面表面と第二挟圧面表面の中点を指す。
なお、熱可塑性樹脂組成物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
遮蔽部材と熱可塑性樹脂組成物の幅方向端部との隙間は、挟圧面の表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
本発明の製造方法では、エアーギャップでの熱可塑性樹脂組成物の保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中での熱可塑性樹脂組成物の冷却を抑制でき、熱可塑性樹脂組成物の温度を好ましい範囲に制御した状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
移動速度差(%)=100×(第一挟圧面の速度−第二挟圧面の速度)
/第一挟圧面の速度 式(I)
なお、挟圧面がロールである場合、ロールの周速度を用いて周速差を計算し、移動速度差とする。ここで云う周速差とはタッチロール、それと対峙する冷却(チル)ロールの周速について下記式で表される。
周速差(%)=100×{(速い方の周速度)−(遅い方の周速度)}
/(速い方の周速度)
以下において、本発明の製造方法で用いられる第一挟圧面および第二挟圧面の具体的な構成について説明する。本発明の製造方法では、下記構成の挟圧面を用いることで光学むらを低減することができ、特に80μm以下の薄手フィルムや800mm以上の幅広フィルムをロングラン製膜する場合でも光学むらの小さいフィルムを製造することができる。
なお、本明細書では、挟圧装置が前記熱可塑性樹脂組成物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の熱可塑性樹脂供給手段に最も近いキャスティングロール、すなわち挟圧装置の第二挟圧面のことをチルロールともいう。
本発明の製造方法の第一の態様では、前記第一挟圧面が、少なくとも2つのゴムロールと、該少なくとも2つのゴムロールの外部に配置された金属ベルトとを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属ベルトとの間に補強層を有する。本発明の製造方法の第二の態様では、前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有する。
また、金属ベルトや金属スリーブは外側から冷却しても内側から冷却してもよいが、外側から冷却することがより好ましい。これはメルトと接触するのが金属ベルトや金属スリーブの外側であり、金属ベルトや金属スリーブの外側の熱劣化をより抑制したいためである。
このような冷却方法としては、溶融樹脂の接触していない金属ベルトあるいは金属スリーブの表面部分に液体や気体の冷媒を接触させて温度を下げてもよく、例えば冷風をあてても、冷却ロールや冷却ベルトを接触させてもよい。また金属スリーブや金属ベルトを巻きつけるゴムロールを中空にして中に冷媒(気体や液体)を循環させて冷却してもよい。さらに、ゴムロール表面に溝を切ったり、表面に微細な孔をあけて、そこで放熱させることで冷却させることも好ましい。この時、ゴムロールと金属スリーブ、金属ベルトの間に空間を設け、その空間に積極的に冷媒を通し冷却してもよい。
挟圧面には常に溶融状態の高温(例えば、200℃近傍)の樹脂が接触しており、熱劣化し易い状況にある。このため金属ベルトあるいは金属スリーブが酸化し磨耗してゆく。このような磨耗により金属ベルトあるいは金属スリーブの強度が変化し、挟圧した際に圧着ムラを発生し光学むらを生じる。
このような表面硬度を達成するにはゴムに無機微粒子を添加するのが好ましく、具体的にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等を挙げることができる。また、無機微粒子の好ましい添加量は3重量%〜50%重量、より好ましくは5重量%〜45重量%、さらに好ましくは10重量%〜40重量%である。なお、このようなゴムロールと補強層としてのゴム層とは、完全に非連続的な二層となるように形成してもよく、表面に無機微粒子等を添加して連続的に組成が変化するような一層として形成してもよい。すなわち、本発明の趣旨によれば、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層としてゴム層を設ける場合、ゴムロールとゴム層とは一体化していてもよく、明確に分離できる必要はない。
前記第一挟圧面のゴムロールのゴム材料としては、NBRゴム、ジエン系加硫ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を用いることができる。具体的には特開2007−161870号、同2001−247214号、特開平9−42274号、同6−200923号、同5−239224号各公報等に記載のゴムを使用することができる。
前記第一挟圧面は、第一挟圧面に使用する金属ベルトあるいは金属スリーブの内側に耐摩耗性が0.05以下の複層ゴムロールを有することが好ましい。前記ゴムロールの耐摩耗性は0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、前記第二挟圧面としてロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記第二挟圧面のショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
このようにして製膜した後、熱可塑性樹脂組成物を通過させる第一挟圧面と第二挟圧面(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+50℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+35℃がより好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.05〜5倍、より好ましく1.1〜3倍である。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。 本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
(1)金属ベルトあるいは金属スリーブの磨耗量
各製膜条件において、金属ベルト、金属スリーブの製膜開始前の質量をW(i)を測定し、500時間製膜後の質量をW(f)とし、100×(W(i)−W(f))/W(i)を磨耗量とした。
金属ベルト、金属スリーブを200℃において張力20kg/mを掛けて20m/分で直径5cmの金属ロール上を搬送し、金属ベルト、金属スリーブにクラックが発生し始める時間を高温耐久走行時間とした。
アクロン型磨耗試験機(上島製作所(株)製)にて回転砥石にて回転ゴムサンプルを、回転砥石の回転方向に対して15度の角度になるように取り付け、サンプルが1000回転した後のゴムの磨耗減量(体積換算)を測定し、初期重量に対する比率(磨耗量/初期重量)をゴムロールの耐摩耗性とした。
JIS K6253に従い、JIS A型硬度計を用いゴムロールの最外層から最内層まで等間隔で10点測定した。最外層の硬度(Ho)と10点の平均硬度(Hav)から、100×(Ho−Hav)/Havを計算し、得られた値をゴムロールの表面硬度とした。
<1>金属ベルト・金属スリーブ
・特開2002−241984号公報の実施例1に従いニッケルベルトを作成し、この上に特開平5−87123号公報実施例記載のように銅メッキを1mm厚で行い、さらにその上に電解クロムメッキを30ミクロン付与した。全層の厚みは表1記載に記載した。
この内側に特開2004−204357の実施例と同様にして炭素繊維(三菱レイヨン(株)製パイリフィルHPX40)を表1の厚みだけ巻きつけエポキシ樹脂で固め、ファイバー層を形成した。
直径150mm、幅1.8mの中空金属ロールの上に下記ゴム層を付け、直径が300mmのゴムロールを得た。なお、中空部にTg−10℃の冷媒を循環させて温度調節した。
さらに一部の水準(表1、表2に記載)は深さ5mmの溝を5mm間隔でロール幅全域にわたって削りだした。
<2−1>単層ゴムロール:特開2001−247214号公報の実施例中に、比較例として記載されているNBRゴムのゴムロールを使用した。
<2−2>多層ゴムロール:シランカップリング処理を行ったシリカを、上記単層のNBRゴムロールの表層部(全厚みの30%)に、表1記載の量だけ添加して混練した。なお、内層部(全厚みの70%)は、上記単層のNBRゴムロールである。
[製造例1] 付加重合型ノルボルネン樹脂COCのペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、付加重合型ノルボルネン樹脂COC、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のTgは130℃であった。
環状オレフィン系樹脂として、開環重合型ノルボルネン樹脂COP−1を国際公開WO98/14499号公報の実施例1に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のTgは136℃であった。
環状オレフィン系樹脂として、開環重合型ノルボルネン樹脂COP−2を特開2007−38646号公報の実施例1に記載の樹脂(a−1)を該実施例に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のTgは130℃であった。
ポリカーボネート系樹脂PCとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用い、これを常法に従ってペレット化した。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
アクリル系樹脂として、特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル系化合物を得た。これを常法に従ってペレット化した。
セルロースアセテートプロピオネートとして、樹脂CAP−1を特開2008−87398号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、ペレット化した。得られたCAP−1の組成は、アセチル化度1.95、プロピオニル化度0.7、全アシル置換度2.65であった。
セルロースアセテートプロピオネートとして、樹脂CAP−2を特開2008−50562号公報の表3に記載の実施例101を該実施例に記載の方法に従って製造し、ペレット化した。得られたCAP−1の組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.55、全アシル置換度2.7であった。
(製膜)
熱可塑性樹脂として下記表1に記載の樹脂を100℃において2時間以上乾燥し、アクリル以外は260℃で、アクリルは230℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し、T−ダイから押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを押出し温度(吐出温度)、アクリル以外は260℃で、アクリルは230℃で、幅1500mm、リップギャップ1mmのダイから押出した。この後、メルト(溶融樹脂)は第一挟圧面と第二挟圧面で挟まれる中央部分に落とされ、これを第一挟圧面、第二挟圧面の間で挟圧し、固化し製膜するが、下記のように第一挟圧面に金属ベルトまたは金属スリーブを巻きつけたゴムロールを用いた。
上記単層または複層ゴムロールのうち、下記表1に記載のゴムロールを2本用意し、この間に長さ80cmの表1に記載の幅1500mm、電鋳法で調整したニッケル製の金属ベルトを巻きまわし、これをTg−5℃の第二挟圧面(直径300mm、幅1800mm、ステンレス製の中空ロール)に表1に記載のタッチ圧で挟圧した。この時、表1記載のように第二挟圧面と接している反対側の外側から金属ベルトに冷却ロール(ステンレス製、直径20cm)を接触させて、冷媒液の温度を変えることで、メルトが接触している部分の温度より、樹脂が第二挟圧面に接触する直前の温度を表1の記載の温度だけ冷却した。なお、樹脂が接触している部分の温度とは、樹脂が第一挟圧面から離れた直後の温度(T1)を表す。この温度と樹脂が第二挟圧面に接触する直前の温度(T2)の差、T1−T2(単位:℃)が表1に記載した冷却温度である。
上記単層または複層のうち、下記表1に記載のゴムロールの上に、長さ80cmの表2に記載の幅1500mm、電鋳法で調製したニッケル製の金属ベルトを1周巻きつけた。これをTg−5℃の第二挟圧面(直径300mm、幅1800mm、ステンレス製の中空ロール)に表2に記載の圧力で挟圧した。第二挟圧面と接触している反対側の金属スリーブに外側から冷却ロール(ステンレス製、直径10cm)を3本接触させて、この中の冷媒液の温度を変えることで、樹脂が接触している部分の温度より表2に記載の温度だけ冷却した。なお、冷却温度は金属ベルトと同様にして測定した。
いずれも金属ベルト方式で製膜を行った。比較例2は、特開2007−38646号公報の実施例3に準じて実施したものである。比較例3は、比較例2のタッチベルトを用いたまま、本発明の好ましい製膜条件としたものである。本発明26は、比較例3を本発明の補強層を備えたタッチベルトとし、冷却条件を変更したものである。
いずれも金属スリーブ方式で製膜を行った。比較例102は、特開2003−25414号公報の実施例1に準じて実施したものである。比較例103は、比較例102のタッチロールを用いたまま、本発明の好ましい製膜条件としたものである。本発明126は、比較例103を本発明の補強層を備えたタッチロールとし、冷却条件を変更したものである。
上記方法で得られた各実施例および比較例のフィルムのγ、Re[0°]、Rthを本明細書に記載の方法で、KOBRAにて測定した。
また光学むらは、クロスニコルに配置した偏光板の間にサンプルフィルムを挿入し、目視で確認できる明度むらを「光学むら」とし、サンプルフィルムの全面積中に占める明度むらが生じた面積の割合を表1および表2に示した。このような光学むらが液晶表示板に使用した際に表示むらとなって現れる。
表2は金属スリーブ方式における各実施例および比較例の結果であり、表1と同様の傾向の効果が得られたことがわかった。
以上より、本発明の製造方法で製造されたフィルムは、傾斜構造を有し、ロングラン製膜時においても光学むらが少ないことがわかった。
これらの各実施例および比較例のフィルムを視野角補償フィルムとして、1対の偏光板と液晶板の間に設置した。液晶表示装置としてTN、ECB、OCB、VA、IPSモードの液晶層について検討したところ、いずれも良好な視野角補償性能を発現した。
Claims (11)
- 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、
前記第一挟圧面が、少なくとも2つのゴムロールと、該少なくとも2つのゴムロールの外部に配置された金属ベルトとを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属ベルトとの間に補強層を有しており、
前記補強層はファイバー層であるか、ゴムロールより10〜100%表面強度が高いゴム層であることを特徴とするフィルムの製造方法。 - 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形するフィルムの製造方法であって、
前記第一挟圧面が、ゴムロールと、該ゴムロールの外部に配置された金属外筒とを含み、かつ、前記ゴムロールと前記金属外筒との間に補強層を有しており、
前記補強層はファイバー層であるか、ゴムロールより10〜100%表面強度が高いゴム層であることを特徴とするフィルムの製造方法。 - 前記補強層がファイバー層であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
- 前記ファイバー層の厚みが0.1mm〜5mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記補強層がゴム層であり、かつ、該ゴム層の表面強度を前記ゴムロールの表面強度よりも10%〜100%高くすることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
- 前記溶融物を挟圧する直前における前記第一挟圧面の表面温度を、前記溶融物が前記第一挟圧面または前記第二挟圧面の少なくとも一方から剥離した直後における前記第一挟圧面の表面温度よりも5℃〜50℃低くなるように冷却しながら製膜することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記溶融物を、20MPa〜300MPaで挟圧することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くなるように制御し、かつ、
下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5%〜20%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
移動速度差(%)=100×(第一挟圧面の速度−第二挟圧面の速度)/第一挟圧面の速度 式(I) - 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によりフィルムを製造し、製造したフィルムと偏光子を積層することを特徴とする偏光板の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によりフィルムを製造し、製造したフィルムを液晶表示装置内に組み込むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
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