JP2011048025A - フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】Rthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいフィルムを提供する。
【解決手段】厚み方向のレターデーションRthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいことを特徴とするフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明はフィルムおよびその製造方法に関する。また、該フィルムを有する偏光板および液晶表示装置にも関する。
液晶表示装置用の位相差フィルムにおいては、得られたフィルムと偏光子とをロールtoロールで加工し、製造コストを低下させることが求められている。
VA液晶等用の各種位相差膜は、液晶装置に組み込む時の利便性(偏光子とロールtoロールでの簡便に貼り合わせられる)から横方向(TD方向)に遅相軸を持たせることが好ましく、さらに厚み方向のレターデーション(以下、Rthとも言う)が正であることが必要である。
このため正の複屈折を持ったフィルム(セルロースエステル系樹脂フィルムやノルボルネン系樹脂フィルムなど)を、横方向に延伸することが知られている(特許文献1および2参照)。しかし横延伸には高価なテンターを必要とするため、製造コスト上の問題があった。さらにこのような樹脂を用いたフィルムを横延伸すると横方向に分子配向するため横方向(TD)の熱膨張係数は小さくなるが、逆にMD方向の熱膨張係数が大きくなる。即ち複屈折の小さい方向(MD)で寸法変化が大きくなり、液晶表示板に貼り付けた際寸法変化に伴う応力が光弾性を引き起こし複屈折のズレが生じる。もともと複屈折の小さなMD方向は、この位相差のずれの割合が大きく(ずれた複屈折/元の複屈折)、これが画像むらとなりやすいという問題もあった。
したがって、Rthが正であり、かつ、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいフィルム、および該フィルムを簡便かつ安価に製造する方法が求められていた。
一方、TN液晶用位相差膜としてフィルムの厚み方向の光軸を傾斜させるフィルムの製造方法が知られている。
例えば特許文献3ではノルボルネンフィルムを製膜中に周速の異なる2本のロール間を通し(以下、移動速度差延伸とも言う)、さらにMD方向に延伸することでズリを与えて光軸を傾斜させている。しかしこのようなフィルムは(未延伸フィルム、延伸フィルムとも)Rthは正であるが、遅相軸がMDに向いていた。そのため、偏光子と貼り合せる際にフィルムを回転させることが必要であり、ロールtoロールの貼り合せが困難であった。また、移動速度差延伸を行うことで光軸を傾斜させることが特許文献4に記載されている。しかし該文献に記載の方法にしたがって正の複屈折性樹脂を用いて製造したフィルムも特許文献3と同様、Rthが正であることと、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいこととを両立できなかった。
特開2007−256637号公報 特開2006−235085号公報 特開2007−38646号公報 特開2003−25414号公報
本発明はフィルムおよびその製法に関し、Rthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいフィルムを提供することを第1の目的とする。また、本発明の第2の目的は、該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らが、特許文献3および4に記載の方法において、負の複屈折性樹脂を用いて移動速度差延伸を行うことを検討したところ、遅相軸はTD方向に向くこと、すなわち遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きくなることは判明したが、Rthは負となり例えばTNモード用液晶表示装置用には直接使用できないことがわかった。
さらに、一般の負の複屈折性樹脂に対して挟圧装置を用いて高線圧を付与した場合、Rthは負となってしまい、例えばTNモード用液晶表示装置用には直接使用できないことがわかった。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記製造方法およびその方法で作成されたフィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 厚み方向のレターデーションRthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいことを特徴とするフィルム。
[2] 遅相軸がフィルム幅方向にあることを特徴とする[1]のフィルム(ただし、「フィルム幅方向」とは、フィルム長手方向に直交する方向を表す)。
[3] 下記(I)式および(II)式を満足することを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルム。
30nm≦Re[0°]≦300nm (I)式
30nm≦Rth≦300nm (II)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[4] 下記(III)式を満足することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルム。
30nm≦γ≦300nm (III)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (III)’式
(式(III)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[5] 負の複屈折性樹脂と、該負の複屈折性樹脂に対して1〜30質量%の板状化合物とを含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
[6] 下記式(IV)を満たす負の複屈折性樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
25%≦A≦75%・・・式(IV)
(式(IV)中、Aは前記負の複屈折性樹脂中における、単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーの重合比を表す。)
[7] 負の複屈折性樹脂を含み、該負の複屈折性樹脂が芳香族基からなる負の複屈折性に寄与する基を少なくとも1つ含む側鎖と主鎖とを有し、前記主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基が原子数4〜23の置換または無置換の鎖状有機連結基を介して連結していることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
[8] 前記負の複屈折性樹脂が、スチレン、アクリル、メタクリルおよびアクリロニトリルから選ばれるモノマーユニットを30モル%以上の重合比で含むことを特徴とする[5]〜[7]のいずれか一項に記載のフィルム。
[9−0] 負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が、少なくとも下記条件(1)、条件(2)、条件(3)のいずれか一つの条件を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法。
条件(1):前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が、負の複屈折性樹脂と該負の複屈折性樹脂に対して1〜30質量%の板状化合物とを含有する。
条件(2):前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が、下記式(IV)を満たす。
25%≦A≦75%・・・式(IV)
(式(IV)中、Aは前記負の複屈折性樹脂中における、単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーの重合比を表す。)
条件(3):前記負の複屈折性樹脂が芳香族基からなる負の複屈折性に寄与する基を少なくとも1つ側鎖と主鎖とを有し、前記主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基が原子数4〜23の置換または無置換の鎖状有機連結基を介して連結している。
[9] 負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が、負の複屈折性樹脂と該負の複屈折性樹脂に対して1〜30質量%の板状化合物とを含有することを特徴とするフィルムの製造方法。
[10] 負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、前記負の複屈折性樹脂が下記式(IV)を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法。
25%≦A≦75%・・・式(IV)
(式(IV)中、Aは前記負の複屈折性樹脂中における、単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーの重合比を表す。)
[11] 負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、前記負の複屈折性樹脂が芳香族基からなる負の複屈折性に寄与する基を少なくとも1つ含む側鎖と主鎖とを有し、前記主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基が原子数4〜23の置換または無置換の鎖状有機連結基を介して連結していることを特徴とするフィルムの製造方法。
[12] 前記移動速度差延伸工程を含むことを特徴とする[9]〜[11]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[13] 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程を含み、
溶融押出しされた負の複屈折性樹脂を含有する組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする[9]〜[12]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[14] 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が負の複屈折性樹脂と溶媒とを含有する組成物であり、該負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから支持体上に流延する工程を含み、流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする[9]〜[12]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[15] 前記流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を乾燥させ、残留溶媒存在下で支持体から剥ぎ取る工程を含み、剥ぎ取った負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする[14]に記載のフィルムの製造方法。
[16] 前記挟圧工程において、前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物を30〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする[9]〜[15]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[17] 前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする[9]〜[16]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}/(第一挟圧面の移動速度)
[18] 前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであることを特徴とする[9]〜[17]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[19] 前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする[18]に記載のフィルムの製造方法。
[20] [9]〜[11]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法において、前記挟圧装置が2本のロールからなる第1のニップロールであり、前記縦延伸工程を含み、該縦延伸工程が、前記挟圧工程でフィルム状に成形された負の複屈折性樹脂を含有する組成物を、前記第1のニップロールよりもフィルム搬送方向の下流側に設置された2本のロールからなる第2のニップロール間を通過させ、前記第2のニップロールの周速度を前記第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程であることを特徴とするフィルムの製造方法。
[21] 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程を含み、溶融押出しされた負の複屈折性樹脂を含有する組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする[9]〜[11]および[20]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[22] 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が負の複屈折性樹脂と溶媒とを含有する組成物であり、該負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから支持体上に流延する工程を含み、流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする[9]〜[11]および[20]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[23] 前記流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を乾燥させ、残留溶媒存在下で支持体から剥ぎ取る工程を含み、剥ぎ取った負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする[22]に記載のフィルムの製造方法。
[24] 該縦延伸工程の延伸倍率が1.05倍〜3倍であることを特徴とする[20]〜[23]のいずれか一項に記載のフィルム。
[25] 前記縦延伸工程において、前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、下記式(VI)で定義されるニップロールを構成する2本のロールの各周速度間の周速度差が0.01〜10%となるように制御することを特徴とする[20]〜[24]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(VI)
周速度差(%)=100×{(速い方のロールの周速度)−(遅い方のロールの周速度)}/(速い方のロールの周速度)
[26] 請求項9〜25のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
[27] 偏光子と、少なくとも1枚の[1]〜[8]および[26]のいずれか一項に記載のフィルムを使用したことを特徴とする偏光板。
[28] [1]〜[8]および[26]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、液晶表示板に貼り付けた際に、もともと複屈折の小さなMD方向における寸法変化およびそれに伴う応力が小さく、複屈折のズレがMD方向で小さいフィルムを提供することができる。このような特性を有する本発明のフィルムを用いた液晶表示装置は画像むらが少ない。
さらに、本発明の好ましい態様では、遅相軸が実質的にTD方向にある。上記本発明の好ましい態様によれば、遅相軸と傾斜方位が直交しており、偏光子とロールtoロールで加工でき、液晶表示装置に使用した場合に十分な光学補償を実現できるフィルムを提供することができる。詳しくは、上記光学特性を有するフィルムは、遅相軸と傾斜方位が直交しているため、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、液晶セル中の傾斜した液晶分子を十分に光学的に補償できる。例えば、TNモードの液晶ディスプレイでは、視野角度が狭いため、通常、光学補償を実現する液晶組成物からなる光学補償層が設けられた光学補償フィルムが偏光子に積層されて使用されるが、本発明のフィルムを使用した場合には、液晶組成物からなる光学補償層を利用しなくても、従来の液晶組成物からなる光学補償層を有する光学補償フィルムを利用したものよりも簡便に視野角補償を行うことができる。また、位相差フィルムの傾斜方位と直交する方向に遅相軸を有する場合、偏光板の視野角補償機能を有し、斜めから見た時の偏光板の光漏れを低減できる。
また、本発明のフィルムの製造方法により、横延伸工程を省くことができ、本発明のフィルムを低い製造コストにて提供することができる。
本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向を意味する。
[フィルム]
本発明のフィルムは、厚み方向のレターデーションRthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいことを特徴とする。以下、本発明のフィルムについて説明する。
<熱膨張係数>
本発明のフィルムは、遅相軸の熱膨張係数が進相軸の熱膨張係数より大きく、(遅相軸の熱膨張係数)/(進相軸の熱膨張係数)の値が1.05〜2であることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.8、さらに好ましくは1.1〜1.5である。これにより液晶表示板に組み込んだ際に発生する熱寸法変化による位相差むらに由来する画像むらを低減できる。即ち、いかなる理論に拘泥するものでもないが、位相差の小さい方向の熱膨張係数が小さいことで、以下のように表示むらを低減できる。
i)ガラス基板等に貼り合わせた場合、ガラスとのフィルムの熱膨張係数の差に由来する伸張応力が発生し、これが位相差変化を引き起こす。
ii)進相軸方向はレターデーションが小さく、この伸張差に由来するレターデーション差の割合が大きく影響し易い。このため進相軸方向の熱膨張係数を小さくすることで有効にレターデーションむらに由来する画像むらを低減できる。
<遅相軸>
本発明のフィルムは、遅相軸がフィルム幅方向(TD方向)にあることが好ましい。本明細書中、遅相軸がTD方向であるとは、TD方向の屈折率(ny)がMD方向の屈折率(nx)より大きいことを示す。また、本明細書中において、遅相軸が「フィルム幅方向にある」とは、フィルム遅相軸が実質的にTD方向にあることを意味する。実質的にTD方向とは、TD方向に対し±15°以内をさし、より好ましくは±10°以内、さらに好ましくは±5°以内を指す。遅相軸がフィルム幅方向にあることにより液晶標示板に貼り合せる際にロールtoロールでの貼り合せが可能となり、製造コストを低下させることができる。
<面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth>
本発明のフィルムのRthは正であり、好ましくは30nm〜300nm、より好ましくは50nm〜250nm、さらに好ましくは70nm〜200nmである。Rthが正であれば、液晶表示板に組み合わせた際の補償能が向上し、コントラストが良好となり、さらに画像むらが発生しにくい。
本発明のフィルムは、下記式(I)を満たすことが好ましい。
30nm≦Re[0°]≦300nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
正面方向のレターデーション(Re)が上記範囲内であると、液晶表示装置に組み込んだ場合に補償能が向上し、視野角が広くなり、色ずれも発生しにくくなる。前記Re[0°]は、より好ましくは50nm≦Re[0°]≦250nm、さらに好ましくは70nm≦Re[0°]≦200nmである。
本発明のフィルムは、下記(III)式を満足することが好ましい。
30nm≦γ≦300nm (III)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (III)’式
(式(III)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
前記γは好ましくは、50nm≦γ≦250nmであり、さらに好ましくは、70nm≦γ≦200nmである。
前記γが大きいことは、斜めから測定したReが例えば左側と右側とで異なることを意味し、フィルム中に厚み方向から見た際に傾斜構造が形成されたことを意味する。この傾斜構造が液晶表示装置中の液晶配向を相補し視野角を改善する効果を有する。
γが前記の好ましい範囲であると、液晶表示装置に組み込んだ場合のコントラストが顕著に改善され、画像むらが抑制される。
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
γ、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
Re[0°]、γのバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には、±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることがさらに好ましい。
また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、表示ムラの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
上記光学特性値は、以下の方法により測定することができる。
本明細書において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルム法線方向から測定した(傾斜角度0°での)波長550nmにおけるレターデーション値、該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した(傾斜角度40度での)レターデーション値および該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した(傾斜角度−40度での)レターデーション値を表す。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)フィルム法線に対して各仮傾斜方位側へ40°又は−40°傾いた方向からRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、各仮傾斜方位の|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
すなわち、本明細書において、「傾斜方位を有する」とは、|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位が存在することを言う。
本明細書において、フィルムのRthは傾斜方位において、KOBRA21ADH、又は、WRが算出したものである。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム中央部の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。また、本発明では上記10点の平均値をRe[0°]、Re[+40°]、Re[−40°]とする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
本明細書において、Re[0°]およびRthは、光学異方性層、フィルム、積層体等の、フィルム状の測定対象物の、面内のレターデーション(nm)、及び厚み方向のレターデーション(nm)を表す。
Re[0°]は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて、レターデーション値を11点測定し、そのレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を回転軸として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 2011048025
なお、式中、Re[θ]は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
また、式(A)および(B)において、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がない測定対象物の場合には、以下の方法により、Rthが算出される。
Rthは、前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS、INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定できる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、Re[θ°]、Rth及び屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、測定波長550nmでの値である。
<膜厚>
フィルムの膜厚は、100μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。本発明のフィルムの製造方法では、このような薄手のフィルムを作成でき、従来技術との差異点の一つである。
<熱可塑性樹脂>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、Rthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きい限り特に限定されないが、負の複屈折性樹脂を含むことが、上記特性を達成しやすい観点から好ましい。
(負の複屈折性樹脂)
前記負の複屈折性樹脂とは、分子が一軸性の延伸配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂のことをいう。
これらの負の複屈折性樹脂は、分極の大きな側鎖が主鎖(高分子の分子軸)に直交する方向に存在していることが特徴であり、この分極が主鎖の分極を上回るため、分子軸と直交方向に複屈折が発現する。即ち延伸方向に分子軸が並ぶため、その直交方向に複屈折が発現する。しかし、一般的な負の複屈折性樹脂の場合、これらの側鎖は嵩高く、その結果フィルム平面内に並んで配置できず、平面とは垂直方向に並んで配置する。即ち断面(厚み)方向から見ると、側鎖の分極はフィルム面に対し垂直配向しており、この結果厚み方向の屈折率(nz)が増大し面内の複屈折(nx−ny)より増大し、Rth=(nx−ny)/2−nzは負となる。
本発明のフィルムは1種の前記負の複屈折性樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。また、1種単独で負の複屈折性を有する樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上をブレンドした場合に負の複屈折性を示す場合は、2種以上を併用してもよい。前記負の複屈折性樹脂が、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂と、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂からなるポリマーブレンドの場合、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂の、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂に対する配合割合としては、両者の固有複屈折値の絶対値の大きさや、成形温度における複屈折性の発現性等により異なる。また、前記ポリマーブレンドは、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂と、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂以外に、その他の成分を含有していてもよい。該成分は、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば相溶化剤などが好適に挙げられる。前記相溶化剤は、ブレンド時に相分離が生じてしなう場合等に好適に使用することができ、該相溶化剤を使用することによって、前記単独で負の複屈折性樹脂である樹脂と、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂との混合状態を良好にすることができる。
本発明のフィルムを溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂(但し、正の複屈折性樹脂、すなわち分子が一軸性の延伸配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなる樹脂、を除く)、セルロースアシレート系樹脂(但し、正の複屈折性樹脂であるものを除く)、マレイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン類等のスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリビニルアセタール系樹脂などを選択するのが好ましい。また、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、スチレン・(メタ)アクリレート共重合体、スチレン・マレイミド共重合体、ビニルエステル・マレイミド共重合体、又はオレフィン・マレイミド共重合体などの樹脂を含むことが好ましい。これら以外にも、ポリビニルナフタレン、スチレンと無水マレイン酸の交互共重合体、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体、スチレンとラウリルマレイミドとの交互共重合体、スチレンとフェニルマレイミドとの交互共重合体およびスチレンとシクロヘキシルマレイミドとの交互共重合体も好ましい。
本発明のフィルムは、Rthを正とするため、下記(1)〜(3)のいずれかの負の複屈折樹脂を含有することが好ましい。
(1)板状化合物の添加
本発明の好ましい態様(1)では、本発明のフィルムが、負の複屈折性樹脂と、該負の複屈折性樹脂に対して1〜30質量%の板状化合物とを含むことが好ましい。
負の複屈折性樹脂の中に面配向し易い化合物を添加することが、特に得られるフィルムのRthを正にするために有効である。このような化合物として板状化合物を挙げることができる。前記板状化合物とは、扁平な構造の分子であり、フィルム面に平行に並ぶ化合物のことを言う。例えば、一つの分子中に2つ以上の芳香環を有する化合物やポルフィリン化合物などが含まれる。このような扁平な化合物はフィルム面に平行に並ぶため、フィルム面内に複屈折を増大させる効果があり、Rthを増加させることができる。
前記板状化合物として下記に記載の化合物のうち、芳香環を2つ以上含む化合物を挙げることができる。
特許第3155465号公報に記載の[化1]に記載の化合物。
特許第4084519号公報に記載の[化1]に記載の化合物。
特許第3734211号公報に記載の[化1]〜[化9]の化合物。
特開2006−176736号公報に記載の[化1]〜[化7]の化合物。
特開2008−79548号公報に記載の[化1]〜[化3]の化合物。
特開平9−21914号公報に記載の[化1]〜[化163]の化合物。
前記板状化合物のうち、より好ましくは200℃、30分での熱重量減少が10%以下のものであり、より好ましくは3%以下のものである。
これらの板状化合物の添加量は、負の複屈折性樹脂に対して1質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは2質量%〜25質量%、さらに好ましくは3質量%〜20質量%である。これらの範囲内であれば、本発明のフィルムのRe[0°]、Rth、γを好ましい範囲に制御することができる。
また、本発明の好ましい態様(1)における負の複屈折性樹脂は、後述の負の複屈折樹脂を使用することがより好ましい。
(2)側鎖密度を下げた負の複屈折性樹脂
本発明の好ましい態様(2)では、本発明のフィルムが、下記式(IV)を満たす負の複屈折性樹脂を含むことが、特に得られるフィルムのRthを正にするために好ましい。
25%≦A≦75%・・・式(IV)
(式(IV)中、Aは前記負の複屈折性樹脂中における、単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーの重合比を表す。)
単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーは、かさ高い構造の負の複屈折性に寄与する基を含む側鎖を有する。本発明のフィルムでは、負の複屈折性樹脂中、かさ高い構造である側鎖の間隔を空けることで、かさ高い側鎖がフィルム平面に平行に並び易くなる。即ち単独で重合させたときに負の複屈折を示すモノマーのみで構成するより、この分率を好ましくは25モル%〜75モル%、より好ましくは、30モル%〜70モル%、特に好ましくは40モル%〜65モル%、さらに好ましくは45%〜60%にすることで単独で重合させたときに負の複屈折性を示すモノマー間に隙間を与えることができる。例えば、スチレンやアクリルといった単独で重合させたときに負の複屈折性を示すモノマーに、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブチレン等のビニル基を有し、単独で重合させたときに負の複屈折性を示さないモノマーを共重合させ、スチレンやアクリルの側鎖間隔を上げることができる。
これらの範囲内であれば、本発明のフィルムのRe[0°]、Rth、γを好ましい範囲に制御することができる。
また、単独で重合させたときに負の複屈折性を示すモノマーと、単独で重合させたときに負の複屈折性を示さないモノマーとは、ランダム共重合であってもブロック共重合であっても構わないが、ランダム共重合であることが好ましい。
(3)側鎖の鎖状有機連結基を長くした負の複屈折性樹脂
本発明の好ましい態様(3)では、本発明のフィルムが、負の複屈折性樹脂を含み、該負の複屈折性樹脂が芳香族基からなる負の複屈折性に寄与する基を少なくとも1つ含む側鎖と主鎖とを有し、前記主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基が原子数4〜23の置換または無置換の鎖状有機連結基を介して連結していることが、特に得られるフィルムのRthを正にするために、好ましい。
主鎖と側鎖の間を一般的な負の複屈折性樹脂よりも長くすることで側鎖を動き易くし、側鎖がフィルム面に垂直に立つのを防止できる。その結果、フィルムのRthを正にすることができる。
前記置換または無置換の鎖状有機連結基は原子数4〜23が好ましく、
より好ましくは5〜22、さらに好ましくは7〜20である。また、有機連結基の構造としては、アルキレン基、カルボニル基、−CO(=O)−、−OCO−、−CONH−、−OCOO−、−O−、−S−、−NH−、置換または無置換のアリーレン基、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アリーレンオキシ基、アリーレンオキシカルボニル基、アルキレンオキシカルボニル基および、これらを組み合わせた基などを挙げることができる。また、前記鎖状有機連結基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基などを挙げることができる。なお、前記鎖状有機連結基の原子数とは、主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基とを結ぶ鎖状有機連結基のうち、直鎖部分の原子のみの原子数を意味し、分枝している部分の原子やその他の置換基を構成する原子は前記原子数に含まれない。
前記負の複屈折性に寄与する基としては、フェニル基、ナフチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基、ニトリル基、ビフェニル基、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
このような側鎖の鎖状有機連結基を長くした負の複屈折性樹脂の例として、ベンジルメタクリレート等を挙げることができる。
負の複屈折性樹脂中における、側鎖の鎖状有機連結基を長くしたモノマーの重合比は、15〜100%であることが好ましく、25〜95%であることがより好ましく、30〜90%であることが特に好ましい。
また、(3)の側鎖の鎖状有機連結基を長くした負の複屈折性樹脂を用いる場合、さらに前記(1)に記載した板状化合物を併用して用いてもよい。用いる板状化合物の種類の好ましい範囲と、添加量の好ましい範囲は、(1)における各好ましい範囲と同様である。
このような(1)〜(3)の好ましい態様において、前記負の複屈折性樹脂が、スチレン、アクリル、メタクリルおよびアクリロニトリルから選ばれるモノマーユニットを25モル%以上の重合比で含むことが、延伸方向と直交方向に遅相軸を形成し遅相軸方向の熱膨張係数を進相軸方向の熱膨張係数より大きくし易く好ましい。
前記負の複屈折性樹脂は、スチレン、アクリル、メタクリルおよびアクリロニトリルから選ばれるモノマーユニットを30モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは40モル%〜95モル%、さらに好ましくは50モル%〜90モル%である。
本発明のフィルムは、フィルム全体に対して、前記単独で負の複屈折性樹脂である樹脂を30質量%〜100質量%含むことが好ましく、40質量%〜100質量%含むことがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。また、本発明のフィルムに含まれる樹脂全体に占める、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂の割合は、30質量%〜100質量%であることが好ましく、40質量%〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる樹脂について説明する。
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン−アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
また、本発明に使用可能なスチレン系樹脂の立体構造は、アタクチック、アイソタクチックおよびシンジオタクチックのいずれであってもよい。
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを重合して得られる樹脂を挙げることができる。
Figure 2011048025
前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
本発明に使用可能なマレイミド系樹脂とは、主成分として、マレイミドおよびその誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のマレイミド系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
マレイミドおよびその誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(2)で表される単位構造を含む樹脂を挙げることができる。
Figure 2011048025
一般式(2)において、R11は水素原子、芳香族環または非芳香族環で形成される複素環 基、または炭素数1〜30の置換または無置換のアルキル基を表す。
12〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくは珪素原子を含む連結基、または炭素数1〜30の置換または無置換のアルキル基を表し、水素原子もしくは炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
mおよびnはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0であることがより好ましい。
前記一般式(2)で表されるマレイミド系樹脂の単位構造の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2011048025
前記マレイミド系樹脂としては、Rがフェニル基、ナフチル基、ハロゲン系元素、カルボン酸、カルボン酸エステル、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数1〜8の分岐状アルキル基により置換されたフェニル基又はナフチル基を有することが好ましく、熱安定性に優れる点でN−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミドなどがより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であってもよい。
前記マレイミド系樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、マレイミドおよびその誘導体単位を30モル%以上含むものが好ましく、マレイミドおよびその誘導体単位の単独重合体であることがより好ましい。
前記負の複屈折性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100℃〜185℃であり、さらに好ましくは110℃〜170℃であり、特に好ましくは120℃〜150℃である。Tgが90℃以上あれば、熱安定性の良好なフィルムが得られやすくなり、185℃以下であれば、成形加工性に優れる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じたDSC法により求めることができる。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
(添加剤)
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
安定化剤:
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO-412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
紫外線吸収剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
光安定化剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
可塑剤:
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
微粒子:
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
光学調整剤:
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
[フィルムの製造方法]
<<負の複屈折性樹脂を含有する組成物の種類>>
本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、以下の3通りの方法で製造することを特徴とする。
(I)負の複屈折性樹脂を含有する組成物に板状化合物を添加する方法
本発明の製造方法(I)は、負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が、負の複屈折性樹脂と該負の複屈折性樹脂に対して1〜30質量%の板状化合物とを含有することを特徴とする。
(II)側鎖密度を下げた負の複屈折性樹脂を用いる方法
本発明の製造方法(II)は、負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、前記負の複屈折性樹脂が下記式(IV)を満たすことを特徴とする。
25%≦A≦75%・・・式(IV)
(式(IV)中、Aは前記負の複屈折性樹脂中における、単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーの重合比を表す。)
(III)側鎖の鎖状有機連結基を長くした負の複屈折性樹脂を用いる方法
本発明の製造方法(III)は、負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する装置挟圧工程を含み、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、前記負の複屈折性樹脂が芳香族基からなる負の複屈折性に寄与する基を少なくとも1つ含む側鎖と主鎖とを有し、前記主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基が炭素数4〜23の置換または無置換の鎖状有機連結基を介して連結していることを特徴とする。
このような負の複屈折性樹脂を含有する組成物に対し、挟圧装置によって第一挟圧面と第二挟圧面に移動速度差を付与するか縦延伸を実施して製膜することが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。これにより、Rthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいフィルムを製造することができる。さらに、本発明の好ましい態様では、負の複屈折性樹脂を含有する組成物にせん断力を付与し、位相差の傾斜構造を有するフィルムも製造することができる。
本発明の製造方法では、本発明のフィルムの説明部において記載した負の複屈折性樹脂を用いることができ、好ましい範囲も同様である。すなわち、本発明のフィルムの好ましい態様(1)で用いた負の複屈折性樹脂を本発明の製造方法(I)に用いることができ、本発明のフィルムの好ましい態様(2)で用いた負の複屈折性樹脂を本発明の製造方法(II)に用いることができ、本発明のフィルムの好ましい態様(3)で用いた負の複屈折性樹脂を本発明の製造方法(III)に用いることができる。
以下、本発明の製造方法について、詳細に説明する。なお、以下に記載する説明は、特に明記しない限りにおいて、本発明の製造方法(I)〜(III)に共通する。
<<製膜方法>>
(a)溶融製膜
本発明の製造方法の好ましい態様(a)では、溶融製膜法を用いることができる。すなわち、本発明の製造方法は、前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程を含み、溶融押出しされた負の複屈折性樹脂を含有する組成物(以下、メルトとも言う)を用いて前記挟圧工程を行うことが好ましい。
本発明の製造方法では、通常の溶融製膜法によって製膜できる。即ち、負の複屈折性樹脂(ペレット)を乾燥した後、例えば1軸、2軸混練機を用い200℃〜300℃で融解した後、好ましくは濾過した後ダイから膜状に押出す。これを冷却ドラム上で固化し巻き取る。この際、前記板状化合物を添加することが好ましく、前記負の複屈折性樹脂と前記板状化合物を別個に混練押出機に投入してもよく、予め前記負の複屈折性樹脂と前記板状化合物をペレット化した後、混練押出機に投入してもよい。板状化合物以外に安定剤、UV吸収剤、可塑剤、微粒子等を添加してもよい。
具体的には特開2008−201981号、特開2008−80651号、特開2008−37091号、特開2007−326359号、特開2007−237727号、特開2006−11361号、特開2003−170484号各公報等の製膜法を利用できる。
(b)溶液製膜
本発明の製造方法の好ましい態様(b)では、溶液製膜法を用いることができる。すなわち、本発明の製造方法では、前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が負の複屈折性樹脂と溶媒とを含有する組成物(以下、ドープとも言う)であり、該負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから支持体上に流延する工程を含み、流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、前記流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を乾燥させ、残留溶媒存在下で支持体から剥ぎ取る工程を含み、剥ぎ取った負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことがより好ましい。
本発明の製造方法では、通常の溶液製膜法によって製膜できる。即ち負の複屈折性樹脂を乾燥した後、溶媒に混合し、好ましくは10〜30質量%の濃厚溶液(ドープ)を作る。これを好ましくは濾過、脱泡した後ドラム、バンド等の支持体上に流延する。さらに、好ましくは固化したものを剥ぎ取り、乾燥する。この際、前記板状化合物を添加することが好ましく、前記板状化合物は予め負の複屈折性樹脂と一緒に混合しドープとしてもよく、負の複屈折性樹脂のドープとは別に溶解したものをダイから流延する前にドープと混合してもよい。
具体的には特開2000−84960号、特開2003−53749号、特開2004−66683号、特開2004−322535号、特開2006−283013号、特開2007−79561号、特開2007−178504号各公報等の製膜法を利用できる。
(フィルム幅)
溶液製膜または溶融製膜したフィルムの幅は1m〜4mが好ましく、より好ましくは1.2m〜3.5m、さらに好ましくは1.4m〜3mである。
<<フィルム成形方法>>
本発明の製造方法では、溶液製膜であるか溶融製膜であるかによらず、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程により前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物(以下、負の複屈折性樹脂組成物とも言う)を延伸し、フィルム状に成形することで本発明のフィルムを製造することができる。
(A)移動速度差付与工程
前記移動速度差延伸工程は、負の複屈折性樹脂組成物を固化する前に行うのが好ましく、溶融製膜では溶融した負の複屈折性樹脂組成物が固化する前、特に該樹脂のガラス転移温度Tg以上において行うことができる。
一方、溶液製膜では残留溶媒存在下、支持体上から剥ぎ取り前、あるいは剥ぎ取った後に実施できる。好ましい残留溶媒量は固形分に対し30質量%〜300質量%、より好ましくは50質量%〜250質量%、さらに好ましくは70質量%〜200質量%である。即ち、支持体上で、支持体と搬送速度の異なるロールやベルトと接触させ周速差を与えてもよく、剥ぎ取り後、乾燥完了前の間に後述のタッチロールとチルロールで挟んで周速差を与えてもよい。
以下、本発明の製造方法における移動速度差延伸工程について、詳細に説明する。
(負の複屈折性樹脂組成物の供給)
本発明の製造方法では、まず、負の複屈折性樹脂を含有する組成物(メルトまたはドープ)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含むが、前記挟圧工程において、負の複屈折性樹脂を含有する組成物を溶融押出しする工程を含んでも、含まなくてもよい。溶融押出ししない場合、例えば負の複屈折性樹脂組成物と溶媒とを支持体上に流延し、溶液製膜によって前記負の複屈折性樹脂組成物をフィルム化し、それを前記挟圧工程に供してもよい。すなわち、上記のとおり、溶融製膜であっても溶液製膜であってもよい。その中でも、本発明の製造方法は、溶融製膜であることが好ましい。
溶融製膜を行う場合、溶融押出しをする前に、負の複屈折性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の負の複屈折性樹脂(例えば、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。
前記負の複屈折性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には3mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは5mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
溶融製膜を行う場合、次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成されることが好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。ダイの押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、負の複屈折性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
負の複屈折性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。具体的には、0.04〜3mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることがより好ましく、0.4〜1.5mmであることが特に好ましい。
本発明の製造方法において、負の複屈折性樹脂組成物を挟圧装置間に供給する際に供給手段としてダイを用いる場合、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
<挟圧工程>
次に、負の複屈折性樹脂を含有する組成物を供給手段(例えば、ダイ)から押し出しし、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、好ましくは冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と負の複屈折性樹脂を含有する組成物が先に剥離し、その後もう一方の面と負の複屈折性樹脂を含有する組成物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。
本発明の製造方法の好ましい態様において移動速度差延伸工程を含む場合、第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
本発明の製造方法では、挟圧装置間に圧力を30MPa〜500MPa付与することが好ましく、より好ましくは35〜300MPa、さらに好ましくは40〜200MPa。このような圧力とすることで、メルトまたはドープを強く押しつけて分子配向を促し、上述の熱膨張係数、Re[0°]、γを達成できる。タッチ圧が30MPa〜500MPaであれば、本発明のより好ましい熱膨張係数、Re[0°]、Rth、γを達成することができる。
なお、挟圧装置間の圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を挟圧装置間に通すことで測定することが出来る。
本発明の製造方法では、前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することが好ましい。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}/(第一挟圧面の移動速度)
これによりメルトまたはドープにMD方向に分子配向を促すことができる。移動速度差は0.5%〜20%が好ましく、より好ましくは1%〜15%、さらに好ましくは2%〜10%である。
移動速度差がこの範囲内であれば、本発明の熱膨張係数、Re[0°]、Rth、γを達成することができる。
(負の複屈折性樹脂組成物の温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(供給手段出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
本発明の製造方法では、負の複屈折性樹脂組成物が挟圧装置の挟圧面に接する際の温度は130℃〜300℃であることが好ましく、より好ましくは140℃〜250℃であり、さらに好ましくは150℃〜220℃である。
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、エアーギャップ(供給手段出口から挟圧装置の負の複屈折性樹脂組成物着地点までの距離)は、ダイと挟圧装置間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
(ライン速度)
本発明の製造方法では、エアーギャップでのメルトの保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
(挟圧装置)
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。
この中でも、圧力を均一にかけられることから、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。
(2つのロールを用いた挟圧工程)
前記負の複屈折性樹脂組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール)や、2本のロールからなる1対のニップロール)間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記負の複屈折性樹脂組成物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流のダイに最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
本発明のフィルムの製造方法では、前記供給手段の出口から供給された負の複屈折性樹脂組成物の着地点に特に制限はなく、供給手段から供給された負の複屈折性樹脂組成物の着地点と、該タッチロールと該キャストロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。
前記供給手段から供給された負の複屈折性樹脂組成物の着地点とは、ダイから押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
前記2つのロール(例えば、タッチロールやキャスティングロール)の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
本発明の製造方法では、前記2つのロールのそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
前記2つのロール間のロール圧力の好ましい範囲は、前記挟圧装置の説明における挟圧装置の挟圧面間において負の複屈折性樹脂組成物に挟圧する圧力の好ましい範囲と同様である。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記2つのロールの材質は、金属であることが前記ショア硬さを達成する観点から好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、2つのロールの材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。また、2つのロールの材質が金属製且つ剛性である場合、ロール間の圧力を容易に高くすることができ、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、特に制限なく用いることができるが、前記ロール圧力を達成できることが好ましい。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
本発明の製造方法では、前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることが好ましい。前記ロールの外筒厚みは6mm〜45mm、より好ましくは10mm〜40mm、さらに好ましくは15mm〜35mmの金属ロールが好ましい。このようなロールはタッチロールであることが好ましい。金属製外筒厚みが6〜45mmであれば本発明の熱膨張係数、Re[0°]、Rth、γのより好ましい領域を達成することができる。従来金属製のタッチロールは特開平11−235747号公報のように2〜5mmと薄いものか、カレンダーロールのように厚み50mm以上が主流であり、今回はこの間の新規な厚みのロールを用いたことが特徴でもある。
さらに、本発明の製造方法では、負の複屈折性樹脂組成物を通過させる2つのロールの周速度差を調整することで、負の複屈折性樹脂組成物が2つのロールを通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。2つのロールの周速度差の好ましい範囲は、前記挟圧装置の説明における挟圧面の移動速度差の好ましい範囲と同様である。ここで、2つのロールの周速度差とは、下記式で表される。
周速度差(%)=100×{(速い方のロールの周速度)−(遅い方のロールの周速度)}/(速い方のロールの周速度)
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(供給された負の複屈折性樹脂組成物がタッチ部の内圧でタッチ部入口側に押出され形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、負の複屈折性樹脂組成物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、周速度差付与工程を2つのロールで行う場合、前記2つのロールとして、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が350〜600nm、より好ましくは350〜500nmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、γが大きなフィルムを、しかもRe[0°]、γのバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、前記2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
本発明の製造方法では、前記2つのロールが、互いに異なる周速で駆動される。前記2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]、γのバラツキを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
さらにγを大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、好ましくはTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
なお、負の複屈折性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
また、本発明の製造方法では、供給手段から供給された負の複屈折性樹脂組成物を、2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物を保温し、幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、前記エアーギャップの少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、該負の複屈折性樹脂組成物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。負の複屈折性樹脂組成物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、負の複屈折性樹脂組成物の温度が高い状態、すなわち、粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、負の複屈折性樹脂組成物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
前記遮蔽部材は、例えば、2つのロールの両端部よりも内側で、且つ負の複屈折性樹脂組成物の供給手段(例えば、ダイ)の幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、供給手段の側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、供給手段の放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、供給手段の側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材と負の複屈折性樹脂組成物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、負の複屈折性樹脂組成物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
よりRe[0°]、γのバラツキをなくす方法として、負の複屈折性樹脂組成物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、負の複屈折性樹脂組成物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
このようにして製膜した後、負の複屈折性樹脂組成物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。厚みだし加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/m幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/m幅である。
本発明の製造方法において、製膜後のフィルムは厚みが10μm〜90μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜80μmであり、さらに好ましくは25μm〜70μmである。フィルムは厚みが90μm以下であれば、ズリ(移動速度差の勾配=フィルム表裏の移動速度差/フィルム厚み)を十分与えることができず、10μm以上であれば挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面とを精度良くタッチさせることができ、周速度差むらが発生し難く好ましい。
<延伸、緩和処理>
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(c)および(d)の工程である。
(B)縦延伸工程
本発明の製造方法では、前記(A)移動速度差延伸工程のかわりに、以下に記載する縦延伸工程を行ってもよく、本発明のフィルムを製造することができる。また、本発明の製造方法では、(A)移動速度差延伸工程のみであっても、(B)縦延伸工程のみであっても、両方を実施してもよい。(B)縦延伸工程のみを行う場合は上記の方法で溶融製膜または溶液製膜したフィルムを用いることができる。また、(A)移動速度差延伸工程を行った後に(B)縦延伸工程のみを行ってもよい。
すなわち、本発明のフィルムの製造方法の別の好ましい態様は、前記挟圧装置が2本のロールからなる第1のニップロールであり、前記縦延伸工程を含み、該縦延伸工程が、前記挟圧工程でフィルム状に成形された負の複屈折性樹脂を含有する組成物を、前記第1のニップロールよりもフィルム搬送方向の下流側に設置された2本のロールからなる第2のニップロール間を通過させ、前記第2のニップロールの周速度を前記第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程であることを特徴とする。
このように縦延伸することによっても、縦方向の分子配向を促し、縦(MD)方向の熱膨張係数を小さくできる。前記縦延伸工程は、負の複屈折性樹脂のガラス転移温度をTgとして、Tg−20℃〜Tg+50℃、より好ましくはTg−10℃〜Tg+40℃、さらに好ましくはTg−5℃〜Tg+30℃で延伸することが好ましい。また、前記縦延伸工程における縦延伸倍率は、1.05倍〜3倍であることが好ましく、より好ましくは1.1倍〜2.5倍、さらに好ましくは1.2倍〜2.2倍である。これらの延伸条件が上記範囲好ましいであれば、本発明のフィルムの熱膨張係数、Re[0°]、Rthを達成することができる。
縦延伸工程では、少なくとも2対以上のニップロールを用い、この間を加熱しながらフィルム搬送方向上流側に設置された2本のロールからなる第1のニップロールと、下流側に設置された2本のロールからなる第2のニップロールの周速度とを、前記第2のニップロールの周速度を上流側の第1のニップロールの周速より速くすることで実施できる。
このような縦延伸工程では、例えば、特開2007−301978号、特開2004−133323号、特開2005−264022、特開2005−330412号、特開2006−130884号、特開2007−121352号、特開2008−39808号、特開2008−93946号、特開2008−185726号各公報等のものを使用できる。
また、前記第1のニップロールと前記第2のニップロールの間の間隔(L)と延伸前のフイルム幅(W)を変えることで、厚み方向のレターデーションRthの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本発明では、得られるフィルムのRthが正となるように制御する以外に制限はなく、長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
2本のロールからなる前記第1のニップロールおよび前記第2のニップロールは、それを構成する2本のロールの配置に特に制限はないが、フィルムを安定して搬送しながら縦延伸を行う観点から、鉛直方向(上下方向)に2本のロールが配置され、それらの間を略水平にフィルム保持しながら搬送することが好ましい。
また、本発明の好ましい態様では、一対(例えば、2本のロールが上下に配置されている場合は上下)のニップロールに周速度差を与えたり、縦延伸工程中のフィルムの一方の表面の温度と反対側の表面の温度との間に温度差を与えることで、移動速度差延伸工程と同様にγを発現させることもできる。すなわち、本発明の製造方法では、以下の第1の態様または第2の態様で縦延伸工程を実施することが好ましい。
第1の態様:縦延伸のニップロール(例えば、対の上下のロール)に温度差を付与
本発明の製造方法の第1の態様は、縦延伸工程において前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロール(例えば、上下に配置されえた2本のロール)の各表面温度間に好ましくは0.1℃〜10℃の温度差を付与するように制御することを特徴とする。より好ましくは0.2℃〜7℃、さらに好ましくは0.3℃〜5℃の温度差を付与する。これにより延伸するフィルムの表裏に温度差を付与でき、フィルム表裏に弾性率の差を与えることができる。これにより、フィルムの表面と裏面に配向差を与えることができ、僅かなズリ(せん断応力)を与えることになる。このように僅かなズリを与えながら縦延伸することで、縦延伸に伴うγの減少を補うことができ、未延伸フィルムの持つ均一な傾斜構造の幅方向分布、すなわち遅相軸方向の均一なγの分布を維持できる。
また、このような2本のロールの温度制御の方法としては特に制限はなく、公知の方法で制御することができ、独立して制御することが好ましい。
第2の態様:縦延伸のニップロール(例えば、対の上下のロール)に周速度差を付与
本発明の製造方法では、前記縦延伸工程において、前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、下記式(VI)で定義されるニップロールを構成する2本のロール(例えば、上下に配置されえた2本のロール)の各周速度差が0.01〜10%となるように制御することが好ましい。
式(VI)
周速度差(%)=100×{(速い方のロールの周速度)−(遅い方のロールの周速度)}/(速い方のロールの周速度)
前記周速度差は、より好ましくは0.03%〜7%、さらに好ましくは0.05%〜5%の周速を与える。この周速度差が0.01%以上であることが、ニップロールへのフィルムの粘着に起因する横ダン(幅方向の筋)防止の観点から好ましい。一方、この周速度差が10%以下であることが、ニップロール上のフィルムのスリップに由来する擦り傷防止の観点から好ましい。
また、このような2本のロールの周速度制御の方法としては特に制限はなく、公知の方法で制御することができ、独立して制御することが好ましい。
これら縦延伸工程の第1の態様と第2の態様は単独で実施してもよいが、組み合わせて同時に実施することで相乗効果が得られ、より好ましい。また、その場合、第1の態様を実施するニップロールと、第2の態様を実施するニップロールが同じニップロールであっても、別のニップロールでもよいが、相乗効果をより得る観点から同じニップロールにおいて第1の態様および第2の態様を実施することが好ましい。
上流側の第1のニップロールと下流側の第2のニップロールの両方で温度差をつける場合、第1のニップロールにおいて付与する温度差の大きさと、第2のニップロールにおいて付与する温度差の大きさはどちらが大きくても構わないが、好ましくは、第1のニップロールの場合である。
また、上流側の第1のニップロールと下流側の第2のニップロールの両方で周速度差をつける場合、第1のニップロールにおいて付与する周速度差の大きさと、第2のニップロールにおいて付与する周速度差の大きさはどちらが大きくても構わないが、好ましくは、第1のニップロールの場合である。
また、前記縦延伸工程には少なくとも2つのニップロールを用いるが、本発明の趣旨に反しない限り、3つ以上のニップロールを用いてもよい。本発明の製造方法では、2つのニップロールを用いる態様が好ましい。
また、前記縦延伸工程は1段階で実施してもよく、多段階で実施してもよい。また、その場合、第1の態様のみを多段階で実施しても、第2の態様のみを多段階で実施しても、第1の態様と第2の態様を組み合わせて多段階で実施してもよい。本発明の製造方法では、1段階で実施することが好ましい。
前記縦延伸工程は、2つのニップロールを用いて、1段階で、本発明の第1の態様と第2の態様を同時に組み合わせて両方のニップロールで行うことが特に好ましい。
また、本発明の製造方法では、(A)移動速度差延伸工程のみであっても、(B)縦延伸工程のみであっても、両方を実施してもよい。
両方を実施する場合、(B)縦延伸工程において、前記温度差を付与する際は、前記(A)移動速度差延伸工程において第一挟圧面(高速側の挟圧面)に接していたフィルム面側のロールの温度を高温にすることが、せん断応力のかかる方向を挟圧工程と縦延伸工程で揃える観点から好ましい。また、(B)縦延伸工程において前記周速度差を付与する際は、前記挟圧工程において第一挟圧面(高速側の挟圧面)に接していたフィルム面側のロールの周速度を速くするのが、せん断応力のかかる方向を挟圧工程と縦延伸工程で揃える観点から好ましい。
また、好ましいニップロールの直径は30mm〜1500mmが好ましく、より好ましくは80mm〜1000mm、さらに好ましくは150mm〜700mmである。また、ニップロールを構成する2つのロールは直径が等しいことが得られるフィルムの均一化の観点から好ましい。
好ましいニップ圧は10kg/cm〜100kg/cmが好ましく、より好ましくは20kg/cm〜80kg/cm、さらに好ましくは25kg/cm〜70kg/cmである。
好ましい縦延伸の延伸速度(ニップロールの入口側(延伸前)の速度は5m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは10m/分〜80m/分、さらに好ましくは15m/分〜60m/分である。
このようにして縦延伸した後のフィルムの厚みは10μm〜90μmが好ましく、より好ましくは20μm〜80μm、さらに好ましくは25μm〜70μmである。
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。 本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号公報に記載の方法である。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
[光学補償フィルム]
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
<積層フィルム>
本発明のフィルムにさらに光学異方性層を付与することで積層フィルムとすることもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
《測定法》
(1)遅相軸
サンプルフィルムの幅方向中央部をMD方向に平行に3cm角にサンプリングする。これを25℃・相対湿度60%の環境下、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、配向遅相軸を測定する。
(2)熱膨張係数
サンプルフィルムの幅方向中央部をMD方向、TD方向にそれぞれ3mm×35mmにサンプリングする。これを、25℃10%RHで3時間以上乾燥した後、チャック間25mmにセットする。測定チューブの中に乾燥窒素を流し30分間保持した後、張力0.04N、昇温速度3℃/分で30℃から100℃まで昇温しながら測定する。測定にはTA インスツルメンツ社製 2200型Thermal Analystを使用した。50℃から80℃の寸法変化を測定し、それらの直線の傾きから熱膨張係数(ppm/℃)を求める。
(3)Re[0°]、γ、Rth
明細書中に記載した方法に従い、これらの光学特性を測定した。なお、γ=0の場合は、長手方向を基準にした。
(4)タッチ圧
タッチ圧は、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を、メルトまたはドープのない状態で等周速(5m/分)でともに25℃に制御した二つのロールに挟みこむことで測定し、その値を挟圧時の圧力とした。
(樹脂)
下記表1および表2に、下記(1)〜(3)の分類のうち、用いた負の複屈折性樹脂の分類を記載した。
(1)1〜30質量%の板状化合物と併用する負の複屈折性樹脂(下記A〜Dを表1および表2に記載)
A)ラクトン系アクリル樹脂
特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成しラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル系化合物を得た。
B)MS樹脂(スチレン-メチルメタクリレート共重合体)
新日鉄化学(株)製エスチレンMS−600(Tg=100℃)
C)スチレン−マレイミド共重合体
特開2008−94912号公報[0023]に記載のスチレン47重量%、N-フェニルマレイミド51重量%、無水マレイン酸2重量%化合物を得た(Tg=120℃)
D)グルタル酸無水物含有アクリル系樹脂
特開2006−241197号公報[0097]〜[0098]に記載の(A−1)化合物。
(グルタル酸無水物=32質量%、メタクリル酸メチル=64質量%、メタクリル酸=4質量%、 Tg=138℃)
E)スチレン−アクリロニトリル共重合体
特開平5−257014号公報[実施例1]に記載の化合物a2
スチレン/アクリロニトリル=63/35(重量比) (Tg=85℃)
(2)側鎖密度を下げた負の複屈折性樹脂(下記イ〜ホを表1および表2に記載)
スチレン−エチレン共重合体を、特開平10−60051号公報[0051]に準じて合成し、下記化合物を得た。
イ)スチレン含有率=72モル%、エチレン含有率=28モル% (Tg=76℃)
ロ)スチレン含有率=68モル%、エチレン含有率=32モル% (Tg=70℃)
ハ)スチレン含有率=50モル%、エチレン含有率=50モル% (Tg=44℃)
ニ)スチレン含有率=32モル%、エチレン含有率=68モル% (Tg=19℃)
ホ)スチレン含有率=28モル%、エチレン含有率=72モル% (Tg=14℃)
ヘ)スチレン含有率=77モル%、エチレン含有率=23モル% (Tg=83℃)
ト)スチレン含有率=22モル%、エチレン含有率=78モル% (Tg=10℃)
(3)側鎖の鎖状有機連結基を長くした負の複屈折性樹脂(下記X〜Zを表1および表2に記載)
特開平7−28232号公報[0035]の実施例1に準じて合成し、下記化合物を得た。
X)メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=55/30/10/5 Tg=70℃)
Y)メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=40/20/45/5 Tg=90℃)
Z)メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=15/15/65/5 Tg=125℃)
また、下記のようにベンゾイルオキシエチルメタクリレートのオキシエチレンのユニット数(n)を変えたものを重合し、側鎖長を変えた樹脂を用意した。これらはメタクリル酸と所望のn数のアルキレングリコールと安息香酸から合成したモノマーを原料に用い、PMMAと同様にして重合できる。
Figure 2011048025
L):n数=0(有機連結基の原子数=3) Tg=95℃
M):n数=1(有機連結基の原子数=6) Tg=91℃
N):n数=3(有機連結基の原子数=12) Tg=89℃
O):n数=6(有機連結基の原子数=21)Tg=85℃
P):n数=7(有機連結基の原子数=24)Tg=78℃
(板状化合物)
下記a〜eのうち、用いた板状化合物を表1および表2に記載した。
・ディスコティック液晶化合物
a)特許第3734211号公報[化19]に記載のディスコティック液晶化合物
Figure 2011048025
b)特開平8−43625号公報[化1]のTE−3化合物
Figure 2011048025
c)特開平9−21914号公報[化4]記載の化合物
Figure 2011048025
・その他の板状化合物
d)特開2008−76548号公報[化4]の化合物
Figure 2011048025
e)特開2006−176736号公報[化55]A−12の化合物
Figure 2011048025
[実施例1〜49および比較例1〜7]
(製膜)
表1および表2に、(a)溶融製膜、(b)溶液製膜のうち、用いた製膜法を記載した。
(a)溶融製膜
表1および表2記載の樹脂に安定剤(チバガイギー社製イルガノックス1010)を該樹脂に対して0.3重量%添加し、表1および表2に示す板状化合物を混合し、2軸混練押出機を用い250℃で混練した。その後、水中にストランド状に押出し固化した後、裁断し、ペレットを作成した。
(b)溶液製膜
表1および表2に記載の樹脂および板状化合物をジクロロメタンに20質量%で溶解した後、5μmの濾剤で濾過してドープを得た。Tダイからドープをバンド上に押出したあと、残留溶媒量100%(対固形分)になったところでフィルムを剥ぎ取った。
(A−a)移動速度差延伸(溶融製膜)
実施例1〜42、49、比較例1〜5および7では、(a)で得られたペレットを乾燥して含水率を0.1質量%以下にした後、1軸混練押出機を用い250℃で溶融し、スタティックミキサー、300メッシュのブレーカープレート、ギアポンプ、5μmのリーフディスクフィルターをこの順に通してT−ダイから押出した。これを押出し温度(吐出温度)250℃で幅1300mm、リップギャップ0.8mmのダイから押出した。
この後、キャストロールとタッチロールで挟圧する部分の中央にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅1500mm、直径300mmのハードクロムを被覆したステンレススチール製キャストロール(チルロール)に下記表1および表2に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅1500mm、直径200mmの下記表1および表2に記載の材質のタッチロールを接触させた。また、タッチロールの外筒厚みを下記表1および表2に記載した。タッチロールおよびチルロールはショア硬度70HSのものを用いた。また、メルトはキャストロールとタッチロールで挟まれる中央部分に落とした。これらのロールを用い、タッチロール周速度をチルロール周速度よりも速くし、これらのロール間の周速度差を下記表1および表2に記載の条件に設定し、ダイとメルト着地点の距離を50mmに設定し、搬送速度(チルロール速度)15m/分で製膜した。なお、タッチロールの温度をTg−5℃、チルロールの温度をTg−10℃とした。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。この後、両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。トリミング後の製膜幅1.5mで3000m長巻き取った。
なお、実施例41で用いたタッチロールは、材質がシリコンゴムであり、ショア硬度は、55HSであった。
また、比較例7では、特開2007−38646号公報の実施例7に準じて正の複屈折性を示すノルボルネン樹脂(a−1)を製造したものを用い、タッチロールおよびチルロールとして該文献実施例1に記載のものを用いた。
また、実施例49は、特開2003−25414号公報の実施例の移動速度差延伸法を、該文献[0021]で例示していた負の複屈折性樹脂であるポリスチレンを用い、さらに板状化合物aを表1および表2に記載の条件で添加したものを用いたものである。
(A−b)移動速度差延伸(溶液製膜)
実施例43では、(b)で得られたフィルムを、表2に記載の条件でタッチロールおよびチルロールに周速度差を与えて延伸・製膜した。表2に記載の条件以外の条件は、(A−a)と同様である。実施例43のフィルムを160℃で乾燥し、残留溶媒量が0.3質量%以下にした後、両端をスリットし、ナーリング加工した後、幅1.5mで3000m長巻き取った。
(B−a)縦延伸(溶融製膜)
実施例22〜24および比較例7では、(A−a)または(A−b)において移動速度差延伸で得られたフィルムの両端のナーリング部を切り落とした。得られたフィルムを縦方向に表1および表2に記載の条件で縦延伸した。また、この際ニップロールを2対用いて縦延伸を行い、温度差および周速度差は、上流側のニップロールおよび下流側のニップロールの両方について下記表1および表2に記載の条件に制御した。また、延伸倍率は、(延伸後のフィルムの長さ)/(延伸前のフィルムの長さ)を計算し、下記表1および表2に記載した。なお、その他の条件については下記条件で行った。
ニップロールの直径:500mm
延伸速度(入口速度):20m/分
ニップ圧 :50kg/cm
縦延伸温度 :Tg+5℃
なお、挟圧工程で高速側のロール(タッチロール)に接していたフィルム面の側のニップロールを、高温および/または高速とした。
また、延伸後の厚みが80μmになるように製膜した。これの両端をスリットした後、再度ナーリングを付与し1.2m幅で3000m長ロールに巻き取った。
一方、実施例48では、(a)で得られたペレットを、乾燥して含水率を0.1質量%以下にした後、1軸混練押出機を用い250℃で溶融し、スタティックミキサー、300メッシュのブレーカープレート、ギアポンプ、5μmのリーフディスクフィルターをこの順に通してT−ダイから押出した。これをハードクロムメッキしたステンレス製冷却ロール上において冷却固化し、製膜した。得られたフィルムを縦方向に表2に記載の条件で縦延伸した。表2記載の条件以外の条件は、実施例22〜24および比較例7と同様である。
(B−b)縦延伸(溶液製膜)
実施例44〜47および比較例6では、(b)で剥ぎ取ったフィルムを、縦方向に表2に記載の条件で縦延伸した。表2記載した以外の条件は、実施例22〜24および比較例7と同様である。
(フィルムの特性評価)
各実施例をおよび比較例のフィルムの特性を上記の方法で評価した。なお、熱膨張係数の比は、(遅相軸方向の熱膨張係数)/(進相軸方向の熱膨張係数)の値を計算したものである。得られた結果を下記表1および表2に記載した。
(画像むら評価)
各実施例をおよび比較例のフィルムを液晶表示装置に組み込んだ際の熱収縮に起因する画像むらをシミュレートすべく、下記評価を行った。
作成した各実施例をおよび比較例の延伸フィルムをMD、TDに沿って30cm角に切り出し、これを粘着剤(特開2008−14988の実施例1に記載の粘着剤1)を使用してガラス板に貼り合せた。これを80℃の空気恒温槽に1日入れた。このような高温環境下においてフィルムは熱収縮する一方、ガラス板は熱収縮しないため、両者の寸法変化の差から収縮応力が発生し部分的に位相差にむらが発生することとなる。このようにして高温環境下で調製したガラス板に貼り付けた延伸フィルムを、直交配置した2枚の偏光板の間に入れた。さらにこの延伸フィルムを貼り付けたガラス板と偏光板の間に、テストパターン(0.5mmのライン&スペース)を印刷したガラス板を挿入する。これらを上から覗き、ライン&スペースにゆがみが発生しいている領域の面積を求め、全面積に占める割合を百分率で示した。その結果を下記表1および表2に示す。これが液晶表示板に使用したときの画像むらを反映する。なお、実用上、画像むらが20%以下であることが好ましい。
Figure 2011048025
Figure 2011048025
表1および表2より、実施例1〜6および比較例1は負の複屈折樹脂に添加する板状化合物の量の効果を比較したものである。実施例7〜11は板状化合物の種類の効果を検討したものである。実施例12〜16は負の複屈折樹脂の種類の効果を検討したものである。実施例17〜21および比較例2および3は側鎖密度を下げた負の複屈折樹脂の効果を検討したものであり、具体的には、単独で重合させたときに負の複屈折を示すモノマーの共重合比を比較例3では22%、実施例17では28%、実施例18では32%、実施例19では50%、実施例20では68%、実施例21では72%、比較例2では77%とした。実施例22〜24は側鎖の鎖状有機連結基を長くした負の複屈折樹脂の共重合比の効果を検討したものである。実施例25〜27および比較例4および5は側鎖の鎖状有機連結基を長くした負の複屈折樹脂の有機連結基の原子数の効果を検討したものである。実施例28〜31は移動速度差延伸のタッチロールとチルロールの周速度差の効果を検討したものである。実施例32〜35は移動速度差延伸のタッチロールの外筒厚みの効果を検討したものである。実施例36〜39は移動速度差延伸のタッチ圧の効果を検討したものである。実施例40および41は移動速度差延伸のタッチロールの材質の効果を検討したものである。実施例42および43は移動速度差延伸における溶融製膜と溶液製膜の効果を検討したものである。実施例44〜48および比較例6は縦延伸法での延伸倍率の効果を比較したものである。
比較例7は特開2007−38646号公報の実施例7に準じて、該文献記載の正の複屈折樹脂である(a−1)を周速度差延伸した後、縦延伸したものであり、詳細な製造条件は表2に示した。
実施例49は、特開2003−25414号公報の実施例1において、該文献で例示する負の複屈折樹脂(ポリスチレン)を使用し、さらに本発明に準じて板状化合物を添加したときの効果を示した。
本発明の実施例のフィルムは画像むらが少ない上、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数よりも大きかった。また、本発明の実施例のフィルムは遅相軸がTD配向しており、ロールtoロールで偏光子と貼り合せて偏光板を作成することができ、工程適性に優れている。
(偏光板)
作成した実施例1〜49のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて各偏光フィルムを作製した。これらの偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、実施例1〜34のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1〜49のフィルムを用いた偏光板をそれぞれ2枚ずつ作製した。
(液晶表示板)
実施例1〜49のフィルムを視野角補償フィルムとして、1対の偏光板と液晶板の間に設置した。また、実施例1〜49のフィルムを用いた偏光板を液晶セルの上下に配置した。液晶表示板としてTN、ECB、OCB、VA、IPSモードのものを使用したところ、いずれも良好な視野角補償性能を発現した。

Claims (28)

  1. 厚み方向のレターデーションRthが正であり、遅相軸方向の熱膨張係数が進相軸方向の熱膨張係数より大きいことを特徴とするフィルム。
  2. 遅相軸がフィルム幅方向にあることを特徴とする請求項1のフィルム。
  3. 下記(I)式および(II)式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
    30nm≦Re[0°]≦300nm (I)式
    30nm≦Rth≦300nm (II)式
    (式(I)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
  4. 下記(III)式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
    30nm≦γ≦300nm (III)式
    γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (III)’式
    (式(III)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
  5. 負の複屈折性樹脂と、該負の複屈折性樹脂に対して1〜30質量%の板状化合物とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
  6. 下記式(IV)を満たす負の複屈折性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
    25%≦A≦75%・・・式(IV)
    (式(IV)中、Aは前記負の複屈折性樹脂中における、単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーの重合比を表す。)
  7. 負の複屈折性樹脂を含み、該負の複屈折性樹脂が芳香族基からなる負の複屈折性に寄与する基を少なくとも1つ含む側鎖と主鎖とを有し、前記主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基が原子数4〜23の置換または無置換の鎖状有機連結基を介して連結していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
  8. 前記負の複屈折性樹脂が、スチレン、アクリル、メタクリルおよびアクリロニトリルから選ばれるモノマーユニットを30モル%以上の重合比で含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のフィルム。
  9. 負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、
    前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、
    前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が、負の複屈折性樹脂と該負の複屈折性樹脂に対して1〜30質量%の板状化合物とを含有することを特徴とするフィルムの製造方法。
  10. 負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、
    前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、
    前記負の複屈折性樹脂が下記式(IV)を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法。
    25%≦A≦75%・・・式(IV)
    (式(IV)中、Aは前記負の複屈折性樹脂中における、単独で重合させたときにポリマーが負の複屈折を示すモノマーの重合比を表す。)
  11. 負の複屈折性樹脂を含有する組成物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程を含み、
    前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする移動速度差延伸工程または縦延伸工程の少なくとも一方を含み、
    前記負の複屈折性樹脂が芳香族基からなる負の複屈折性に寄与する基を少なくとも1つ含む側鎖と主鎖とを有し、前記主鎖と前記負の複屈折性に寄与する基が原子数4〜23の置換または無置換の鎖状有機連結基を介して連結していることを特徴とするフィルムの製造方法。
  12. 前記移動速度差延伸工程を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  13. 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程を含み、
    溶融押出しされた負の複屈折性樹脂を含有する組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  14. 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が負の複屈折性樹脂と溶媒とを含有する組成物であり、
    該負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから支持体上に流延する工程を含み、
    流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  15. 前記流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を乾燥させ、残留溶媒存在下で支持体から剥ぎ取る工程を含み、
    剥ぎ取った負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする請求項14に記載のフィルムの製造方法。
  16. 前記挟圧工程において、前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物を30〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする請求項9〜15のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  17. 前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
    式(V)
    移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}/(第一挟圧面の移動速度)
  18. 前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであることを特徴とする請求項9〜17のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  19. 前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする請求項18に記載のフィルムの製造方法。
  20. 請求項9〜11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法において、
    前記挟圧装置が2本のロールからなる第1のニップロールであり、
    前記縦延伸工程を含み、
    該縦延伸工程が、前記挟圧工程でフィルム状に成形された負の複屈折性樹脂を含有する組成物を、前記第1のニップロールよりもフィルム搬送方向の下流側に設置された2本のロールからなる第2のニップロール間を通過させ、前記第2のニップロールの周速度を前記第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程であることを特徴とするフィルムの製造方法。
  21. 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程を含み、
    溶融押出しされた負の複屈折性樹脂を含有する組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする請求項9〜11および20のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  22. 前記負の複屈折性樹脂を含有する組成物が負の複屈折性樹脂と溶媒とを含有する組成物であり、
    該負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから支持体上に流延する工程を含み、
    流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする請求項9〜11および20のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  23. 前記流延された負の複屈折性樹脂を含む組成物を乾燥させ、残留溶媒存在下で支持体から剥ぎ取る工程を含み、
    剥ぎ取った負の複屈折性樹脂を含む組成物を用いて前記挟圧工程を行うことを特徴とする請求項22に記載のフィルムの製造方法。
  24. 該縦延伸工程の延伸倍率が1.05倍〜3倍であることを特徴とする請求項20〜23のいずれか一項に記載のフィルム。
  25. 前記縦延伸工程において、前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、下記式(VI)で定義されるニップロールを構成する2本のロールの各周速度間の周速度差が0.01〜10%となるように制御することを特徴とする請求項20〜24のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
    式(VI)
    周速度差(%)=100×{(速い方のロールの周速度)−(遅い方のロールの周速度)}/(速い方のロールの周速度)
  26. 請求項9〜25のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
  27. 偏光子と、少なくとも1枚の請求項1〜8および26のいずれか一項に記載のフィルムを使用したことを特徴とする偏光板。
  28. 請求項1〜8および26のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
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