JP5324904B2 - 偏光板の製造方法、偏光板、および液晶表示装置 - Google Patents
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しかしながら、これらの文献に記載された方法で製造されたフィルムを偏光板保護フィルムとして用い、偏光子と直接ロールtoロールで貼り合せて偏光板を製造した場合、得られる偏光板は斜めから見た時に光漏れするという問題があり、該偏光板を組み込んだ液晶表示装置は視野角が狭いという問題もあった。
さらに、特許文献2および3に記載された方法で製造されたフィルムは傾斜構造が依然として小さいという問題が解決されていなかった。例えば、特許文献3では、光軸傾斜が±0.3度の極めて小さいフィルムが開示されている。特許文献4ではその実施例で光軸が11.5〜18.2°傾斜した光学フィルムが開示されているが、光軸傾斜角度と液晶ディスプレイの光学補償との関係については何ら記載されていない。また、特許文献4は正の複屈折性樹脂フィルムに対して溶融物にせん断応力を付与して製膜した後、縦方向に延伸することを開示しているが、得られた位相差フィルムの遅相軸と傾斜方位が直交できないため、広い視野角を実現するのは困難である。さらに、金属ロールと硬度の低い弾性ロールを用いて圧力を加えてせん断応力を加える場合、どのように製造条件を変更しても傾斜構造が大きいフィルムを得ることができなかった。そのため、実際に、透過型のTNやECB、OCB液晶ディスプレイの光学補償を行うには、傾斜構造が大きく、偏光板補償機能と液晶セルの視野角を両方補償できるような遅相軸と傾斜方位が直交する位相差フィルムを有する偏光板が望まれていた。
一般的に、負の複屈折性樹脂の溶融物に対してせん断応力を付与して製膜する場合、主鎖の配向方向は予測できると考えられていた。一方、負の複屈折性樹脂中、負の固有複屈折性を示す構造である側鎖の運動性は高いため、溶融物に対してせん断応力を付与して製膜を行うと側鎖が様々な方向に向く可能性が高いと考えられていた。側鎖の向く方向によって得られるフィルムの傾斜方位と配向方向が変わるため、特に側鎖が一様に同じ方向を向くことは予想されておらず、整然と側鎖が並び、かつ得られるフィルムの遅相軸と傾斜方位が直交することは予想できないものであった。
さらに、本発明者は偏光板保護フィルムを偏光板に組み込んだ際、実用上偏光板保護フィルム自体の前記傾斜構造の経時安定性にも、偏光板の視野角補償能および、斜めから見たときの光漏れが影響を受けることを見出した。そこで、傾斜構造の経時安定性の改善についても検討した結果、本発明の偏光板の製造方法において製造された偏光板保護フィルムは、従来達成できていなかった傾斜構造の経時安定性についても大幅に改良できることが判明した。
[2] 前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に溶融押出しされた溶融物をバンク形成させながら通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99に制御する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 式(I)
[3] 前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、前記挟圧装置の第一挟圧面の表面温度と第二挟圧面の表面温度との間に0.1℃〜50℃の温度差を与える工程を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の偏光板の製造方法。
[4] 前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、前記フィルム状に成形された溶融物を、Tg−10℃〜Tg−100℃のキャストロールを用いて搬送する工程を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法(但し、前記Tgは前記負の複屈折性樹脂のガラス転移温度を表す。)。
[5] 前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
[6] 前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、前記溶融物を20〜500MPaの圧力で挟圧する工程を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
[7] 少なくとも1方向に前記偏光板保護フィルムAを延伸する工程を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
[8] 前記偏光板保護フィルムAが負の複屈折性樹脂であり、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、およびポリビニルアセタール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
[9] 前記貼合工程が、前記偏光板保護フィルムAと、帯状の前記偏光子と、帯状の偏光板保護フィルムBとをこの順に、各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて重ね合わせて、貼り合せる工程を有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
[10] 前記偏光板保護フィルムBがセルロースアシレートフィルムまたはアクリルフィルムであることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
[11] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法で製造されたことを特徴とする偏光板。
[12] 前記偏光板保護フィルムAの遅相軸と、前記偏光板保護フィルムAの傾斜方位が直交していることを特徴とする[11]に記載の偏光板。
[13] TNモード用、OCBモード用またはECBモード用であることを特徴とする[11]または[12]に記載の偏光板。
[14] [11]〜[13]のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明の偏光板は、本発明の偏光板の製造方法で製造されたことを特徴とする。具体的には、本発明の偏光板は、偏光子の一方の面に前記偏光板保護フィルムAを有する。前記偏光板保護フィルムAの遅相軸と、前記偏光板保護フィルムAの傾斜方位が直交していることが、偏光子とロールtoロールで加工した際の視野角補償能および斜めから見たときの光漏れ改善の観点から好ましい。
本発明の偏光板は、前記偏光子のもう一方の面に偏光板保護フィルムBを有することが好ましい。
本発明の偏光板には、前記偏光板保護フィルムAが用いられる。
また、前記偏光板保護フィルムAには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理、アルカリ水溶液のケン化処理等の方法が挙げられる。
以下、前記偏光板保護フィルムAを詳細に説明する。
前記偏光板保護フィルムAは、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位と反対側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe[−40°]が、下記式(II)を共に満たすことが好ましい。
10nm<γ≦300nm 式(II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II')
20nm≦Re[0°]≦300nm 式(III)
50nm≦Re[0°]≦200nm (IV)
40nm≦γ≦250nm (V)
Δγ={(60℃、相対湿度90%の環境下で500時間経過後のγ)−(60℃、相対湿度90%の環境下で500時間経過前のγ)}/(60℃、相対湿度90%の環境下で500時間経過前のγ)
本発明において、前記偏光板保護フィルムAのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|、すなわちγを求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、γ≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが前記偏光板保護フィルムAの特徴である。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値が正である場合は、遅相軸がTD方向に向く。Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値が負である場合は、遅相軸がMD方向に向く。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
前記xは偏光板保護フィルムAの傾斜方位であり、yはフィルム面内で傾斜方位と直交する方向であり、zはフィルム厚み方向である。
前記偏光板保護フィルムAでは、nyはy方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の屈折率、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されているが、例えば、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値および平均屈折率naveの値および膜厚値dから、以下の数式(B)を用いて計算することが出来る。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
前記偏光板保護フィルムAは、25℃における破断伸びが5〜200%であることがフィルムの脆性および取り扱い性の向上の観点から好ましい。
前記破断伸びは、10〜180%であることがより好ましく、15〜180%であることが特に好ましい。
偏光板保護フィルムAの25℃における破断伸びは次の方法に従って測定する。試料10mm×150mmを、25℃、相対湿度65%、2時間調湿し、東洋ボールドウィン製万能引張試験機STM T50BPを用い、23℃で60%RHの雰囲気中、初期試料長100mm、10%/分での延伸処理により応力歪み曲線を測定し、破断伸びを求める。10回繰り返し測定し、平均値を破断伸びとして求める。
前記偏光板保護フィルムAは負の複屈折性樹脂を含む。
前記負の複屈折性樹脂とは、分子が一軸性の延伸配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂のことをいう。
本発明で用いられる負の複屈折性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されず、公知の負の複屈折性樹脂を用いることができる。前記偏光板保護フィルムAを溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂(但し、正の複屈折性樹脂、すなわち分子が一軸性の延伸配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなる樹脂、を除く)、セルロースアシレート系樹脂(但し、正の複屈折性樹脂であるものを除く)、マレイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン類等のスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂(但し、正の複屈折率樹脂であるものを除く)などを選択するのが好ましい。
前記偏光板保護フィルムAは1種の前記負の複屈折性樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。また、1種単独で負の複屈折性を有する樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上をブレンドした場合に負の複屈折性を示す場合は、2種以上を併用してもよい。前記負の複屈折性樹脂が、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂と、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂からなるポリマーブレンドの場合、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂の、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂に対する配合割合としては、両者の固有複屈折値の絶対値の大きさや、成形温度における複屈折性の発現性等により異なる。また、前記ポリマーブレンドは、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂と、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂以外に、その他の成分を含有していてもよい。該成分は、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば相溶化剤などが好適に挙げられる。前記相溶化剤は、ブレンド時に相分離が生じてしなう場合等に好適に使用することができ、該相溶化剤を使用することによって、前記単独で負の複屈折性樹脂である樹脂と、単独で正の複屈折性樹脂である樹脂との混合状態を良好にすることができる。
前記偏光板保護フィルムAは、フィルム全体に対して、前記単独で負の複屈折性樹脂である樹脂を30質量%〜100質量%含むことが好ましく、40質量%〜100質量%含むことがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。また、前記偏光板保護フィルムAに含まれる樹脂全体に占める、単独で負の複屈折性樹脂である樹脂の割合は、30質量%〜100 質量%であることが好ましく、40質量%〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
前記偏光板保護フィルムAでは、負の複屈折性樹脂がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、環状オレフィン系樹脂(好ましくは付加重合体)およびポリカーボネート系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂およびマレイミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましいい。また、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・(メタ)アクリロニトリル共重合体、スチレン・(メタ)アクリレート共重合体、スチレン・マレイミド共重合体、ビニルエステル・マレイミド共重合体、又はオレフィン・マレイミド共重合体などの樹脂を含むことが好ましい。
これに対し、正の固有複屈折性を示すセルロースアシレート系樹脂、正の固有複屈折性を示す環状オレフィン系樹脂、正の固有複屈折性を示すポリカーボネート系樹脂などを用いて2つのロールでせん断変形を付与する製膜法によって製造した場合、遅相軸が傾斜方位を向き、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン−アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」、「XSR9251」などを用いることができる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを重合して得られる樹脂を挙げることができる。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
マレイミドおよびその誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(2)で表される単位構造を含む樹脂を挙げることができる。
mおよびnはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0であることがより好ましい。
前記マレイミド系樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、マレイミドおよびその誘導体単位を30モル%以上含むものが好ましく、マレイミドおよびその誘導体単位の単独重合体であることがより好ましい。
前記環状オレフィン系樹脂は、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよいが、開環重合によって得られる樹脂であることが好ましい。
また、前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系重合体であることが好ましく、開環系ノルボルネン系重合体であることも好ましい。
前記環状オレフィン系樹脂が側鎖に少なくとも1つの芳香環構造を有する環状オレフィン樹脂である場合、該芳香環構造は単数または複数の置換基を有していてもよく、置換基を複数有する場合は置換基どうしが互いに結合してさらに環構造を形成していてもよい。また、側鎖の立体構造についても特に制限はなく、前記芳香環構造がエキソ型で結合していても、エンド型で結合していてもよい。
前記環状オレフィン系樹脂が側鎖に少なくとも1つの環構造を有するスピロ型環状オレフィン樹脂である場合、該環構造は芳香性であっても、芳香性でなくてもよい。また、前記環構造は単数または複数の置換基を有していてもよく、置換基を複数有する場合は置換基どうしが互いに結合してさらに環構造を形成していてもよく、特に置換基どうしが互いに結合して芳香環構造を形成していてもよい。前記官能基としては、酸素原子を含む官能基(例えばカルボニル基、エステル基、オキシ基など)を有することも好ましい。また、側鎖の立体構造についても特に制限はない。
開環重合によって得られる負の複屈折性を示す環状オレフィン系樹脂としては、特開2003−292639号公報、特開2006−189474号公報、特開2008−52119号公報に記載されているものが挙げられる。
また、上記一般式(4)で表される繰り返し単位が該ポリカーボネート全体の71〜98モル%を占め、上記一般式(5)で表される繰り返し単位が29〜2モル%を占める樹脂であってもよい。
前記偏光板保護フィルムAは、上記負の複屈折性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記負の複屈折性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記負の複屈折性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
前記偏光板保護フィルムAは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記負の複屈折性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
前記偏光板保護フィルムAは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、負の複屈折性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
前記偏光板保護フィルムAは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
前記偏光板保護フィルムAは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、前記偏光板保護フィルムAを溶融製膜法で製造する場合は、用いる負の複屈折性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の負の複屈折性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。前記偏光板保護フィルムAには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
前記偏光板保護フィルムAは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における負の複屈折性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、負の複屈折性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、負の複屈折性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
前記偏光板保護フィルムAは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、特に負の複屈折性を向上させる光学調整剤が好ましい。このような添加剤はとしては、例えば、特開2006−52329号、特開2007−65184号、2008−15118号、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
本発明の偏光板の前記偏光板保護フィルムBには、公知の偏光板用の偏光板保護フィルムが用いられる。前記偏光板保護フィルムBがセルロースアシレートフィルムまたはアクリルフィルムであることが好ましい。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記偏光板保護フィルムAの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板の製造方法は、偏光板保護フィルムAを製造する工程と、偏光子の一方の面に前記偏光板保護フィルムAを貼合する貼合工程とを含む偏光板の製造方法であって、前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、負の複屈折性樹脂を含む組成物の溶融物を挟圧装置挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて帯状のフィルム状に成型する工程と、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする工程とを有し、前記貼合工程が、前記偏光板保護フィルムAと帯状の前記偏光子とを各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて重ね合わせて、貼り合せる工程を有することを特徴とする。
本明細書中、「各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて、重ね合わせて貼り合わせる」ことを「ロールtoロールで貼り合わせる」とも言う。ここで、典型的には「ロールtoロールで貼り合わせる」という用語は、ロールから巻きだされたフィルムを一度も幅方向に切断することなく他のフィルムと貼合してロールに再度巻き取ることを表すことがある。しかしながら、本明細書中における「ロールtoロールで貼り合わせる」という用語は、上記典型的な態様に限定されるものはなく、フィルムを一度も幅方向に切断することなく他のフィルムと貼合することを広く意味し、ロールからフィルムを巻きだす工程や、最終的にロールに巻き取る工程は必須ではない。そのため、製造した各帯状のフィルムをオンラインで連続的に互いに貼り合わせる態様も、一度各帯状のフィルムを一度ロールに巻き取ったあと互いに貼り合わせる態様も、最終的にロールに巻き取らずにそのまま切断して偏光板を作成する態様も含む。
また、一般に前記偏光板保護フィルムAおよびB、偏光子はそれぞれ帯状のフィルムとして連続的に製造されるが、生産性の観点からそれぞれのフィルムの長手方向の長さ(製膜する長さ)は、幅方向の長さに対してかなり長くなる。
このように、ロールtoロールで貼り合わせることができると、帯状フィルムから偏光板サイズに切り出して貼り合わせる場合に比べ、連続生産が容易となり、顕著に偏光板の製造コストは低くなる。なお、従来、遅相軸と傾斜方位が直交するフィルムを偏光子とロールtoロールで貼り合わせて偏光板を製造する方法は知られておらず、検討すらされていなかった。
本発明は、遅相軸と傾斜方位が直交するフィルムと偏光子とをロールtoロールで貼り合せる工程を有することを特徴とする。詳しくは、このような負の複屈折性樹脂を含む組成物の溶融物を挟圧装置挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させてフィルム状に成型する工程と、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする工程によって得られた偏光板保護フィルムAを前記偏光子とロールtoロールで貼り合せる工程を有することが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。上述したとおり、本発明では偏光板保護フィルムAの材料として負の複屈折性樹脂を用いることを検討したところ、驚くべきことに傾斜構造が大きく、遅相軸がフィルム幅方向を向き、傾斜方位がフィルム搬送方向を向くという特性を有するフィルムを得ることができることを見出した。また、該フィルムと偏光子とを直接ロールtoロールにて貼り合せた本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んだところ、視野角を大幅に広げられ、斜めから見たときの光漏れも改善されることを見出した。本発明では、偏光板保護フィルムAの材料として負の複屈折性樹脂を用いることを検討したところ、従来の予想に反して驚くべきことに、負の複屈折性樹脂の側鎖が一様に同じ方向を向いて整然と並び、かつ得られるフィルムの遅相軸と傾斜方位が直交することを見出した。
さらに、光学特性(レターデーション)の発現を大きくするために、本発明の偏光板の製造方法は、少なくとも1方向に前記偏光板保護フィルムAを延伸する工程を含むことも好ましい。
まず、偏光板保護フィルムAを製造する工程について説明する。
本発明の偏光板の製造方法は、負の複屈折性樹脂を含む組成物の溶融物(以下、メルトともいう)を挟圧装置挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて帯状のフィルム状に成型する工程と、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする工程とを有することを特徴とする。
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、メルトへの挟圧を均一にかけられることから、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。
以下、前記偏光板保護フィルムAの製造方法について詳細に説明する。
従来の公知技術では、例えば、特許文献3(特開2007−237495号公報)に、バンクが発生すると、バンクが厚み方向につぶされることにより視野角が狭くなるという問題点が生じるため、好ましくないことを記載されている。本発明では、負の複屈折性樹脂が製膜時、前述のようなバンクを形成しながら、前記第一挟圧面と第二挟圧面との間に移動速度差を与えてせん断を応力を付与する製膜を行うことで、驚くべきことに、傾斜構造が大きく、遅相軸がフィルム幅方向を向き、傾斜方位がフィルム搬送方向を向いた前記偏光板保護フィルムAを得ることができることも見出した。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、負の複屈折性樹脂を含有する組成物(「負の複屈折性樹脂組成物」という場合がある)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧して帯状のフィルム状に成形する工程を含むが、前記挟圧工程に負の複屈折性樹脂を含有する溶融樹脂を供給手段から供給する。その際、前記組成物の溶融物(メルト)を供給する手段に特に制限はない。例えば、メルトの具体的な供給手段として、前記組成物を溶融してフィルム状に押出す押出機を用いる態様でもよく、押出機およびダイを用いる態様でもよく、前記組成物を一度固化してフィルム状とした後に加熱手段により溶融してメルトを形成し、製膜工程に供給する態様でもよい。
本発明のフィルムの製造方法は、前記組成物をダイから溶融押出しする工程を含むことが、より得られるフィルムの光学特性のムラを抑える観点から好ましい。また、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程を含むことが、より得られるフィルムの光学特性のムラを抑える観点から好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融押出しする場合、溶融押出しをする前に、負の複屈折性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の負の複屈折性樹脂(例えば、デルペット980N、DayLark D332、ポリイミレックスPSX0371、ポリイミレックスPAS1460、ポリイミレックス PML203)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。前記負の複屈折性樹脂としては前記偏光板保護フィルムAに含まれる負の複屈折性樹脂として説明したものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。また、添加剤についても同様である。
前記負の複屈折性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってから前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)から出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
次に、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に、任意の供給手段から供給された負の複屈折性樹脂組成物の溶融物をバンク形成しながら通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、好ましくは冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。前記偏光板保護フィルムAの製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法は、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する従来の方法に加え、前記挟圧装置の第一挟圧面の表面温度と第二挟圧面の表面温度との間に0.1℃〜50℃の温度差を与えることが、前記メルト表裏の温度差分布を付けし、せん断応力を前記溶融物に与える際に、傾斜構造を大きくすることができる観点から、好ましい。
前記温度差は傾斜構造を大きくするおよび良好な面状を維持する観点から1〜40℃であることが好ましく、より好ましくは5〜30℃である。温度差が0.1℃未満では、負の複屈折性フィルムの傾斜構造が大きくならず、一方温度差を50℃を越えると、フィルムの面状悪化の恐れがある。
なお、負の複屈折性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、前記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99に制御し、溶融樹脂が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与する。挟圧装置の挟圧面どうしの移動速度比は、0.75〜0.98とすることが好ましく、0.85〜0.95とすることがより好ましい。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、前記溶融物を挟圧する際に加える圧力に特に制限はないが、前記溶融物を20〜500MPaの圧力で挟圧することが、前記γを本発明における好ましい範囲まで発現させる観点から好ましい。前記圧力は、25〜300MPaであることが前記γに加えてRe[0°]を本発明における好ましい範囲まで発現させる観点からより好ましく、30〜200MPaであることが特に好ましい。挟圧面によって前記溶融物に加えられる圧力は、例えば2つのロールを用いる場合は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。その他の挟圧装置の場合も同様または類似の方法によって測定することができる。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、吐出温度(供給手段の出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段のダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、エアーギャップ間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、前記挟圧装置のメルトを狭圧する箇所を通過した以降において前記フィルム状の溶融物を、Tg−100℃〜Tg−10℃のキャストロールを用いて搬送することが、60℃、相対湿度90%の環境下で500時間経過前後のγの変化率Δγを小さくさせる観点から好ましい。すなわち、挟圧装置を構成するキャストロール(チルロール)を除き、1本〜6本の金属製剛性キャストロールを連続的に配置することが好ましく、より好ましくは2〜4本を用い、搬送方向の下流側に従い徐冷することが好ましい。挟圧装置を構成するキャストロール(チルロール)を除き、すべてのキャストロールの温度が前記の範囲であることが好ましい。前記キャストロールの温度は、Tg−100℃〜Tg−15℃であることがより好ましく、Tg−40℃〜Tg−15℃であることが特に好ましい。これにより、せん断応力を付与して形成されるフィルムの残留ひずみを取り除くことで、寸法変化や高温高湿の環境下で光学特性の変化が起こり難く、安定な傾斜構造を維持することができる。また、表面温度分布を制御できるキャストロールを用いて前記フィルム状に成形された溶融物を、Tg−10℃〜Tg−100℃で搬送してもよい。このような特殊な装置としては、例えば、従来公知の挟圧装置に加熱手段(装置)と冷却手段(装置)を好適な位置にさらに設置したフィルム製造装置や、特開2006−256159号公報に記載のロールを挙げることができる。
前記挟圧装置がロールである場合、その挟圧装置を構成するキャストロール(チルロール)を除く、前記搬送キャストロールの直径は、好ましくは50〜5000mmであり、より好ましくは100〜2000mmであり、さらに好ましくは150〜1000mmである。ロールの間隔は、面間で0.3〜300mmが好ましく、より好ましくは1〜100mm、さらに好ましくは3〜30mmである。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、エアーギャップでのメルトの保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
供給された前記溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の前記熱可塑性樹脂組成物供給手段(例えば、ダイ)に最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた前記偏光板保護フィルムAの製造方法の好ましい態様を説明する。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
前記2つのロールの周速比を0.60〜0.99にすると、傾斜構造を有し、傾斜方位が遅相軸と直交したフィルムを得ることができる。また、フィルム表面に傷が付き難く、平滑性が良好なフィルムを安定的に製造することができる。
前記偏光板保護フィルムAを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロールであり、速いロールがタッチロールであることが好ましい。
その際、2つのロールの温度は、前記負の複屈折性樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、はTg−50℃〜Tg+60℃、より好ましくはTg−40℃〜Tg+30℃、さらに好ましくはTg−30℃〜Tg+20℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、前記偏光板保護フィルムAを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
前記偏光板保護フィルムAの製造方法では、特に、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール以外のキャスティングロールの温度が、Tg−100℃〜Tg−10℃であることが好ましく、Tg−100℃〜Tg−15℃であることがより好ましく、Tg−40℃〜Tg−15℃であることが特に好ましい。
さらに、上記方法により製膜した後、前記偏光板保護フィルムAを延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 縦延伸
(b) 縦延伸→緩和処理
(c) 縦延伸→横延伸
(d) 縦延伸→横延伸→緩和処理
(e) 横延伸
(f) 横延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
前記偏光板保護フィルムAの製造方法は、光学特性の発現範囲を広げる観点から少なくとも1方向に延伸する工程を含むことが好ましく、これらの組合せの中で好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。また、本発明の偏光板の製造方法は、偏光板保護フィルムAの遅相軸と傾斜方位を直交させる観点、および製造コストを低下させる観点から、縦延伸工程を含むことがより好ましく、横延伸工程を含まずに縦延伸工程を含むことが好ましく、縦延伸工程のみを含むことがより特に好ましい。また、さらに製造コストを低下させる必要がある場合は、本発明の偏光板の製造方法は、偏光板保護フィルムAを延伸する工程を含まなくてもよい。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
延伸温度は、Tg−20℃〜Tg+30℃が好ましく、Tg−15℃〜Tg+20℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+10℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+10)℃、より好ましく(Tg−20)℃〜(Tg+5)℃、さらに好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg+3)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
前記偏光子の製造方法としては、従来公知の方法が適用できる。例えば、前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
本発明の製造方法は、前記貼合工程が、前記偏光板保護フィルムAと帯状の前記偏光子とを各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて重ね合わせて、貼り合わせる工程を含む。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に前記偏光板保護フィルムAの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、前記偏光板保護フィルムB、偏光子および前記偏光板保護フィルムAの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。
本発明の偏光板の製造方法においては、前記偏光板保護フィルムAが偏光子と直接貼合される。
また、本発明の偏光板の製造方法では、製造コストを下げる観点から、前記偏光板保護フィルムAと帯状の前記偏光子とを各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて重ね合わせて(ロールtoロールで)貼り合わせて製造する。TN、OCB、ECB等の透過型液晶パネルにおいて、広い視野角を実現するためには用いる位相差フィルムの遅相軸と傾斜方位が直交することが好ましい。前記偏光板保護フィルムAは延伸工程を含まずに製造された場合であっても遅相軸と傾斜方位が直交しているため、従来公知の位相差フィルムに対して横延伸工程を実施してからフィルムと偏光子とを貼り合わせるよりも安価かつ容易に本発明の偏光板を製造できる。
前記偏光板保護フィルムAと帯状の前記偏光子とをロールtoロールで貼り合わせる方法は、例えば接着剤を用いて、前記偏光板保護フィルムAを製造する工程における偏光板保護フィルムAの長手方向(MD)のロール状フィルムを巻き出し、染色延伸した偏光子フィルムの一方の面と直接オンラインで、ロールtoロールで貼り合わせることができる。
また、前記偏光板保護フィルムBと前記偏光子とをロールtoロールで貼り合わせる方法は、接着剤を用いて、ロール状偏光板保護フィルムBを巻出し、染色延伸した偏光子フィルムの前記偏光板保護フィルムAを貼り合せる側とは反対側の面と直接オンラインでロールtoロールで貼り合わせることができる。このとき、偏光板保護フィルムAと前記偏光子と前記偏光板保護フィルムBは、すべて同時に貼り合せても、順に貼り合せてもよい。好ましくは、染色延伸した偏光子フィルムの両面に接着剤を適用し、ロール状偏光板保護フィルムAを巻出したものと偏光子の一方の面に、ロール状偏光板保護フィルムBを巻出したものを偏光子の他方の面に同時に貼り合せる方法である。すなわち、本発明の偏光板の製造方法は、前記貼合工程が、前記偏光板保護フィルムAと、帯状の前記偏光子と、帯状の偏光板保護フィルムBとをこの順に、各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて重ね合わせて、貼り合せる工程を有することが製造コストを下げる観点からより好ましい。
本発明の偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
スチレン−無水マレイン酸系樹脂として、ノバケミカル社製の「Dylark D332」のペレットを用いた。なお、「Dylark D332」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は130℃であった。
アクリロニトリル−スチレン共重合体として、日本触媒(株)製の「ポリイミレックスPAS1460」のペレットを用いた。なお、「ポリイミレックスPAS1460」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該共重合体樹脂のガラス転移点は167℃であった。
アクリル系樹脂として、スチレン−アクリル系共重合体である旭化成ケミカルズ社製の「デルペット980N」のペレットを用いた。なお、「デルペット980N」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は123℃であった。
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂として、新日鉄化学(株)社製のエスチレンMS600(商品名、メタクリル酸メチル/スチレン=6/4共重合樹脂)のペレット40質量部、および日本触媒(株)製のメタクリル酸メチル−スチレン−N−フェニルマレイミドの共重合樹脂「ポリイミレックスPML203」のペレット60質量部を用いて混合し、2軸押出機で窒素下混練押出しを行い、樹脂組成物のペレットを得た。樹脂組成物のTgは、118℃であった。混合樹脂は、負の固有複屈折性を示す。
重合度700、鹸化度98モル%のポリビニルアルコール樹脂100質量部を700質量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35重量%塩酸29質量部を加え、更にベンズアルデヒド50質量部を添加した。次いで、12℃まで冷却することにより、樹脂を析出させた。
次に、30分間保持した後、塩酸108質量部を加え45℃に昇温して6時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水洗後のポリビニルアセタール樹脂に水酸化ナトリウムを添加して分散液のpHを9に調整した。分散液を55℃で6時間保持した後、冷却した。このときの分散液のpHは8.5であった。次に、固形分に対し100倍量の蒸留水により分散液を水洗した後、分散液を50℃で5時間保持し、10倍量の蒸留水で水洗して、脱水した後に乾燥することにより、ガラス転移温度が132℃であるポリビニルアセタール樹脂を得た。2軸押出機で窒素下混練押出しを行い、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂について、JIS K 6729「ポリビニルホルマール試験方法」に準拠した方法で構成成分の比率を測定したところ、前記一般式(3)で表される構成単位pが40モル%、qが58.3モル%、rが1.7モル%であった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂は、負の固有複屈折性を示す。
比較用ポリカーボネート樹脂として、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は150℃であった。
(偏光板保護フィルムAの作製)
負の複屈折性樹脂として下記表1に記載の樹脂A−1のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥し、安定剤IRGANOX−1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を樹脂100重量部に対して0.6重量部を添加し、265℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、ろ過精度5μmのリーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。T−ダイ押出吐出温度が265℃で、幅1500mm、リップギャップ1mmのダイから押出した。
この後、キャストロールとタッチロールの間にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅1800mm、直径400mmの材質がハードクロムメッキ表面処理を施す炭素鋼製であるキャストロール(チルロール)に下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅1400mm、直径350mm、金属表層厚み30mmの材質がハードクロムメッキ表面処理を施す炭素鋼製であるタッチロールを接触させた。なお、該タッチロールがクラン量3mmである鼓状剛性ロールであった。タッチ圧力は、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を、メルトのない状態で等周速(5m/分)でともに25℃に制御した二つのロールに挟みこむことで測定し、その値を製膜時の圧力とした。タッチロールおよびチルロールはショア硬度65HSのものを用いた。また、メルトはキャストロールとタッチロールで挟まれる中央部分に落とした。ダイとメルト着地点の距離を110mmに設定した。これらのロールを用い、タッチロール周速度が速く、チルロール周速度が遅く、その周速度比を下記表1に記載の条件に設定し、下記表1に記載の搬送速度(チルロール速度)で製膜した。なお、チルロールの温度はTg−5℃とし、タッチロールの温度が下記表1に記載のチルロールとタッチロールの温度差より設定した。なお、チルロールの温度およびタッチロールの温度は、負の複屈折性樹脂含有組成物が挟圧される区間の挟圧開始部からそれぞれのロールに沿って1cm上方の部分において、各ロールの表面温度を測定した。なお、バンク形成の制御は製膜条件(挟圧装置間の隙間、製膜温度、速度、タッチ圧、ロール温度)により調整できる。バンク形成の有無を、CCDカメラを搭載したケーブル型内視鏡を用いて観察し、表1に記載した。また、バンク形成有無の判別は、上記のCCDカメラによる方法でバンク形成の有無を判断できない場合は、代わりに下記の簡便な方法で測定することができる。バンク形成される状態でタッチしていた場合にチルロールからタッチロールを約10cm/秒程度で引き離し、突然タッチ無しの状態に戻す。挟圧装置の隙間に溜まっていたバンクが一気に放出され、冷却後固化した後のフィルムにバンクの跡が縞状に残る。フィルムのタッチ無し状態にした部分の流れ方向において厚み変化が発生していた場合は、バンクが形成していたことを確認できる。また、製膜の雰囲気は25℃、50%であった。
この後、得られたフィルムはチルロール(第1のキャストロールでもある)によって搬送され、次に下記表1に記載の温度に設定した第2のキャストロール、さらに第2キャストロール表面温度より10℃低い第3キャストロールによって搬送された。その後、巻き取り直前にタッチされた部分のフィルム両端(各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅は1300mmとし、450m巻き取った。製膜後のフィルムの厚みは下記表1に記載の厚みとし、実施例1の偏光板保護フィルムAを作製した。
得られた実施例1のフィルムの光学特性も表1にあわせて記載した。なお、その他の実施例を含め、偏光板保護フィルムAのRe[+40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向である。
また、得られた実施例1の偏光板保護フィルムAを60℃、相対湿度90%の湿熱環境下で500時間経過させた際のγを測定した。湿熱環境下へ曝す前のγとの変化率Δγを計算し、得られた結果を下記表1に記載した。
用いた樹脂と製膜条件を下記表1に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例の偏光板保護フィルムAを得た。各実施例および比較例の偏光板保護フィルムAの光学特性を下記表1に示す。なお、参考例12では、押圧体としてタッチロールのかわりに、幅800mm、金属表層厚み20mm、挟圧部分の長さ30mmの材質がハードクロムメッキ表面処理を施す炭素鋼製であるタッチベルトを用いてフィルムを製造したものである。なお、各樹脂の製膜温度は以下の通りである。A−2樹脂の製膜温度が280℃、A−3樹脂の製膜温度が260℃、A−4樹脂の製膜温度が265℃、A−5樹脂の製膜温度が255℃、C−1樹脂の製膜温度が265℃である。
以上より、本発明の製造方法によれば、バンクを形成しながら、挟圧装置間の2つの挟圧面間の温度差を本発明の範囲として2つの挟圧面間に本発明の範囲の移動速度差を与えることで、遅相軸と傾斜方位を有し、さらに遅相軸と傾斜方位が直交しているフィルムを製造できることがわかった。
また、実施例1〜8、14および16〜18より、本発明の実施例1〜8、14および16〜18の偏光板保護フィルムAは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に偏光板に用いることができることがわかった。
(TNモード用偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%、KI濃度3質量%のヨウ素水溶液(30℃)中に60秒浸漬して染色し、次にホウ酸濃度4質量%、KI濃度3.5質量%の水溶液(55℃)中に60秒浸漬している間に元の長さの5.5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
これとは別に、ロール状のセルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)製、フジタックTD80UL)を偏光子の保護フィルムBとして用いた。濃度2.0モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬ケン化処理した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流し、105℃で乾燥した。
実施例1〜8、14、16〜18、参考例9〜13、15、比較例1および2のロール状未延伸の偏光板保護フィルムAの表面に接触角を30°以下になるようにコロナ放電処理を行い、偏光子の保護フィルムAとして使用した。
表面にコロナ放電処理した実施例1〜8、14、16〜18、参考例9〜13、15、比較例1および2のロール状未延伸フィルムと、上記ケン化処理したロール状フジタックTD80ULを、上記染色延伸した偏光子フィルムの両側にそれぞれ配置し、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、直接オンラインでロールtoロールで偏光子と貼り付け、乾燥後、偏光板保護フィルムA、偏光子、偏光板保護フィルムBがこの順に積層したロール状の偏光板を得た。
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC−20C1−S 、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに各実施例および比較例のフィルムを用いて作製した偏光板を、各実施例および比較例のフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。各実施例および比較例で採用した液晶表示パネルの構成を表1および図1〜図3に示す。なお、図2のパネル構成にした際に用いた二軸位相差膜は、富士フィルム製のVAZフィルム(遅相軸がTD方向に有する)を用いた。こうして得られた液晶表示装置を、ELDIM社製EZ−contrastにより白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上の視野角を測定した。測定された視野角から、以下の方法で表示視認性を評価し、得られた結果を上記表1に記載した。
○: 液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲が、正対方向に対し上下左右ともに60°以上。
△: 液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲が、正対方向に対し上下左右ともに40℃以上60°未満。
×: 液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲が、正対方向に対し上下左右ともに40℃未満。
表1より、前記偏光板保護フィルムAを用いた本発明の偏光板は、TN液晶表示装置に組み込んだ場合、表示視認性が良好であることがわかった。さらに、本発明の偏光板は黒表示時の斜め方向から見た光漏れが少ない。また、ロールtoロールで偏光子を貼り合わせた際にこのような特性を得ることができたことがわかり、高価な装置を用いることが必要な横延伸工程を含まないという観点から、このような特性を持つ偏光板の製造コストを顕著に下げることができることがわかった。
実施例1の製膜後の未延伸フィルムを、2対のロール間にTg+2℃温度で加熱しながら、1.2倍縦延伸した。得られた延伸フィルムの厚みが74μm、遅相軸がTD方向に向き、傾斜方位がMD方向に有し、Re[0°]=140nm、Re[40°]=198nm、Re[−40°]=49nm、γ=149nm、Δγ=0.4%であった。前記未延伸の実施例1フィルムと同じように、ロールtoロールで偏光板を作成し、これを前記同様にTN型液晶パネルに評価したところ、液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲が、正対方向に対し上下左右ともに60°以上であることを確認した。未延伸のフィルムと比べ、レターデーション値が向上することが分かった。
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が反平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを2.8μmに設定した。正の誘電率異方層を持つネマチック液晶材料を用いて注入し、液晶セルのΔnd LC を300nmとした(Δnは液晶材料の屈折率異方性)ECBセルを作製した。作製した液晶表示装置をバックライト上に配置し、ECBセルに55Hz矩形波で電圧を印加した。
作製したECBセルを挟むように、各実施例および比較例で作製した偏光板2枚を、図1と図3に示すパネル構成(パネルセルは作製したECBセルである)に貼り合わせ、同様な傾向が得られた。
このように、前記偏光板保護フィルムAを用いた本発明の偏光板は、ECBモード液晶表示装置に組み込んだ場合、大きな視野角補償を行うことができる。さらに、本発明の偏光板は黒表示時の斜め方向から見た光漏れが少ない。また、ロールtoロールで偏光子を貼り合わせた際にこのような特性を得ることができたことがわかり、高価な装置を用いることが必要な横延伸工程を含まないという観点から、このような特性を持つ偏光板の製造コストを顕著に下げることができることがわかった。
2a 偏光子の吸収軸
2b 偏光子の吸収軸(MD方向)
3a、3b 各実施例の偏光板保護フィルムAおよび比較例1のフィルム
4 各実施例および比較例1のフィルムの面内遅相軸方向(TD方向)
5 各実施例のフィルムの傾斜方位(MD方向)
6 液晶セル
7 二軸位相差膜
8a、8b 比較例2のフィルム
9 比較例2のフィルムの面内遅相軸方向(MD方向)
10 比較例2のフィルムの傾斜方位(MD方向)
Claims (11)
- 偏光板保護フィルムAを製造する工程と、
偏光子の一方の面に前記偏光板保護フィルムAを貼合する貼合工程と、を含む偏光板の製造方法であって、
前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、負の複屈折性樹脂を含む組成物の溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に通過させて帯状のフィルム状に成型する工程と、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする工程とを有し、
前記貼合工程が、前記偏光板保護フィルムAと帯状の前記偏光子とを各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて重ね合わせて、貼り合せる工程を有し、
前記偏光板保護フィルムAは下記式(II’)で表されるγが60〜250nmであり、
前記負の複屈折性樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、負の複屈折性を示す環状オレフィン系樹脂および負の複屈折性を示すポリカーボネート系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであり、
前記2つのロールの材質が金属であり、
前記2つのロール間のロール圧力を25〜300MPaにすることを特徴とする偏光板の製造方法。
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II')
(式(II’)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位と反対側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。) - 前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、
負の複屈折性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、
挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に溶融押出しされた溶融物をバンク形成させながら通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、
下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99に制御する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 式(I) - 前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、前記挟圧装置の第一挟圧面の表面温度と第二挟圧面の表面温度との間に0.1℃〜50℃の温度差を与える工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板の製造方法。
- 前記偏光板保護フィルムAを製造する工程が、前記フィルム状に成形された溶融物を、Tg−10℃〜Tg−100℃のキャストロールを用いて搬送する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法(但し、前記Tgは前記負の複屈折性樹脂のガラス転移温度を表す。)。
- 少なくとも1方向に前記偏光板保護フィルムAを延伸する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
- 前記貼合工程が、前記偏光板保護フィルムAと、帯状の前記偏光子と、帯状の偏光板保護フィルムBとをこの順に、各帯状のフィルムの長手方向どうしを一致させて重ね合わせて、貼り合せる工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
- 前記偏光板保護フィルムBがセルロースアシレートフィルムまたはアクリルフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法で製造されたことを特徴とする偏光板。
- 前記偏光板保護フィルムAの遅相軸と、前記偏光板保護フィルムAの傾斜方位が直交していることを特徴とする請求項8に記載の偏光板。
- TNモード用、OCBモード用またはECBモード用であることを特徴とする請求項8または9に記載の偏光板。
- 請求項8〜10のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
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