JP5797305B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
これに対し、本発明者らが挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧して傾斜位相差構造を有するフィルムを作成する製造方法において挟圧装置間の圧力を上げることを検討したところ、驚くべきことに傾斜構造が大きく、従来知られていたフィルムとは異なる特殊な内部構造を有しているフィルムを作ることができることが判明した。さらに、本発明のフィルムは、従来の液晶塗布型の視野角補償フィルムに比べて、液晶ディスプレイに使用した場合に、正面コントラスト(以下、正面CRとも言う)を高くすることができるものであり、従来製造できていなかったフィルムであることが判明した。
すなわち、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記製造方法およびその方法で作成されたフィルム等が上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[2] 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程をさらに含み、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させることを特徴とする[1]に記載の光学フィルムの製造方法。
[3] 下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比が0.60〜0.99であることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルムの製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (I)
[4] 前記第一挟圧面および前記第二挟圧面の温度を、Tg−70℃〜Tg+10℃に制御することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
[5] 前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールを含んでおり、周速度の早いロールの表面を第一挟圧面とし、周速度が遅いロールの表面を第二挟圧面とすることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[6] 前記2つのロールのショア硬さが共に45HS以上であることを特徴とする[5]に記載の光学フィルムの製造方法。
[7] 前記2つのロールが共に金属ロールであることを特徴とする[5]または[6]に記載の光学フィルムの製造方法。
[8] 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[9] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法で製造され、かつ、厚みが200μm以下であることを特徴とする光学フィルム。
[10] 熱可塑性樹脂から構成される傾斜方位を有する光学フィルムであって、傾斜方位と厚み方向を面内に含む前記フィルムの切片を直交ニコルに配置された2枚の偏光板の間に配置し、前記偏光板の面に対して、垂直方向から光を照射しながら、直交ニコルに配置された2枚の偏光板を0°〜90°の範囲で回転させた時に、フィルム切片の一端から他端まで厚み方向へ向けて順に観測した場合に、最初に観測される消光位と最後に観測される消光位が3°を越えて異なることを特徴とする光学フィルム。
[11] 前記フィルム切片の複屈折が実質的に0でない部分で、前記消光位の変化が観測されることを特徴とする[10]に記載の光学フィルム。
[12] フィルム切片の一端から他端まで厚み方向へ向けて順に観測した場合に、複屈折の大きさが最大となる部分がフィルム内部に存在することを特徴とする[10]または[11]に記載の光学フィルム。
[13] フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が、下記式(II)および(III)を共に満たすことを特徴とする[10]〜[12]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
20nm≦Re[0°]≦300nm (II)
5nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
[14] 前記フィルムの膜厚方向のレターデーションRthが下記式(IV)を満たすことを特徴とする[10]〜[13]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
40nm≦Rth≦500nm (IV)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nx、ny、nzは、屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム厚みを表す。)
[15] 熱可塑性樹脂を含有し、下記式(V)〜(VII)を同時に満たすことを特徴とする[13]または[14]に記載の光学フィルム。
60nm≦Re[0°]≦200nm (V)
60nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦250nm (VI)
40nm≦Rth≦350nm (VII)
[16] 熱可塑性樹脂から構成される傾斜方位を有する光学フィルムであって、
フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が、下記式(VIII)および(IX)を共に満たすことを特徴とする光学フィルム。
60nm≦Re[0°]≦300nm (VIII)
40nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (IX)
[17] 膜厚方向のレターデーションRthが下記式(X)を満たすことを特徴とする[16]に記載の光学フィルム。
40nm≦Rth≦500nm (X)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nx、ny、nzは、屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム厚みを表す。)
[18] 下記式(XI)〜(XIII)を同時に満たすことを特徴とする[16]または[17]に記載の光学フィルム。
60nm≦Re[0°]≦200nm (XI)
60nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦250nm (XII)
40nm≦Rth≦350nm (XIII)
[19] 残留溶媒を実質含まないことを特徴とする[9]〜[18]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[20] 膜厚が100μm以下であることを特徴とする[9]〜[19]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[21] 偏光子と、[9]〜[20]のいずれか一項に記載の光学フィルムとを有することを特徴とする偏光板。
[22] [9]〜[20]のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
[23] [9]〜[20]のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
[24] [9]〜[20]のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
(面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth)
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含有し、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、+40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して−40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が、下記式(II)および(III)を共に満たすことを特徴とする。
20nm≦Re[0°]≦300nm (II)
5nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
さらに、本発明のフィルムは、厚み方向のレターデーションRthが40〜500nmであることが好ましく、より好ましくは40〜350nm、さらに好ましくは40〜300nmである。
またさらに、本発明のフィルムは、下記式(V)〜(VII)を同時に満たすことが好ましい。
60nm≦Re[0°]≦200nm (V)
60nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦250nm (VI)
40nm≦Rth≦350nm (VII)
|Re[+40°]−Re[−40°]|、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
また, 波長550nmにおけるフィルム面内のレターデーションRe[0°](550nm)と波長450nmにおけるフィルム面内のレターデーションRe[0°](450nm)の差、すなわちRe[0°](550nm)−Re[0°](450nm)の値は、−10〜60nmであることが好ましく、0〜50nmであることがより好ましく、10〜40nmであることが特に好ましい。
Re[0°]は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて、レターデーション値を11点測定し、そのレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を回転軸として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
また、式(A)において、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
Rthは、前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS、INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定できる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、Re[θ°]、Rth及び屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、測定波長550nmでの値である。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
本明細書において、フィルムのRthは傾斜方位において、KOBRA21ADH、又は、WRが算出したものである。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム中央部の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。また、本発明では上記10点の平均値をRe[0°]、Re[+40°]、Re[−40°]とする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
本発明のフィルムは熱可塑性樹脂から構成される傾斜方位を有する光学フィルムであって、傾斜方位と厚み方向を面内に含む前記フィルムの切片を直交ニコルに配置された2枚の偏光板の間に配置し、前記偏光板の面に対して垂直方向から光を照射しながら、直交ニコル配置された2枚の偏光板を0°〜90°の範囲で回転させた時に、フィルム切片の一端から他端まで厚み方向へ向けて順に観測した場合に、最初に観測される消光位と最後に観測される消光位が3°を越えて異なることが特徴である。
ここで、本明細書中、前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離とは、フィルム切片の一端から厚み方位への距離を表す。
また、消光位とは、前記フィルム切片を直交ニコル下で0°〜90°の範囲で回転させて輝度の変化を観測した際に、最も暗くなる状態の角度のことを言う。
また、本発明のフィルムは上記の条件で観測した場合に観測される消光位が、膜厚方向の距離に対して急激に変化することも好ましい。例えば、膜厚1μm当たりに、消光位が0.2°以上変化することも好ましく、より好ましくは膜厚1μm当たりに、消光位が1°以上変化することも好ましく、特に好ましくは膜厚1μm当たりに、消光位が5°以上変化することが好ましい。
また、本発明のフィルムは前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離によって、0°を超えて90°未満の範囲内の異なる角度、または0°から90°未満の範囲内の異なる角度に消光位が複数存在することが好ましい。さらに5°以上90°未満の範囲内の異なる角度に消光位が観測されることがより好ましく、5°以上85°未満の範囲内の異なる角度に消光位が観測されることが特に好ましい。
(1)フィルムを5mm(傾斜方位と平行)×10mm(傾斜方位と直交)にサンプリングする。
(2)上記サンプルフィルムについて、傾斜方位と平行な一方の端部の面をミクロトーム(ライカ社製RM2265)にて平滑化を行う。
(3)平滑化を行った面から傾斜方位と直交方向に500μm離れた面を、傾斜方位と平行にカミソリ(日新EM社製片刃トリミング用カミソリ)にて切り、フィルムの傾斜方位と厚み方向を面内に含むフィルム切片を作成する。
(4)該フィルム切片を用いて、フィルム厚み方向の消光の変化(直交ニコル下で最も暗くなる状態)を、2つの偏光板が直交ニコルに配置された偏光顕微鏡(NIKON社製エクリプスE600POL)にて観察する。具体的には、該フィルム切片を前記2枚の偏光板と平行になるように配置し、該2つの偏光板を直交ニコルに配置された状態に固定し、直交ニコル配置された2枚の偏光板を0°〜90°の範囲で5°ごとに回転させ、消光の変化を観察する。
なお、偏光顕微鏡による観察に用いる光源は特に制限はないが、白色光源を用いることが好ましい。また、消光位の観測は直交ニコルで行われる限り特に制限ないか、直交ニコルで偏光顕微鏡によって観測した画像を基に、消光位を決定することが好ましい。また、前記フィルム切片は、前記2枚の偏光板のそれぞれの吸収軸を含む面と、平行に配置される。
図6中、黒で塗りつぶした部分は直交ニコル下で最も暗くなることを表し、点の密度が小さくなると輝度が大きくなること表す。中央(B)の図は従来の延伸フィルムの切片を観察したイメージ図であり、厚み方向で均一に消光が変化しており、且つ、0°と90°に消光位が存在する。また、右(C)は特開平6-222213号公報、特開2007-38646号公報の方法を基に作成した従来の傾斜配向フィルムの切片を観察したイメージ図であり、厚み方向で均一に消光が変化しており、約15°に消光位が存在している。これらに対し、左(A)は本発明のフィルムであり、驚くべきことに厚み方向で均一に消光が変化しておらず、0°〜90°の範囲において消光位が複数存在する。
(i) 0°〜90°まで1°刻みに観察された偏光顕微鏡画像を厚み方向に20分割(例えば、100μmの膜厚であれば5μm)で分割を行い、片側の表面から順に層に分ける。
(ii) 0°〜90°の観察された画像を、前記各層ごとに輝度の変化を測定し、0°〜90°の範囲で、最も暗くなるときの角度、すなわち消光位を決定する。
(iii) 少なくとも2つの層の消光位が3°を越えて異なるか否かを判定する。
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂から構成されるフィルムであって、フィルム傾斜方位と直交する方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるサーキュラーレターダンスが5nm以上であることを特徴とする。光学フィルムのサーキュラーレターダンスは、フィルムを特定の測定波長においてAXOMETRICS社(米国)のミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて傾斜方位と直交する方向(y軸)とフィルム法線(z軸)を含む面内で光学特性の傾斜角依存性を測定することにより算出される。
フィルムの消偏光度は、JOURNAL OF APPLIED PHYSICS, 98, 016106 (2005)の式(2)を用いて定義される。具体的には、偏光板の間に、フィルム面内の遅相軸が偏光板の吸収軸に平行になるようにフィルムを挿入し、前記偏光板の面に対して垂直方向から光を照射させ、偏光板を直交ニコル配置と平行ニコル配置にした時のそれぞれの配置下における輝度を測定し、得られた結果を以下の式に当てはめることで求められる。
消偏光度=2×(直交ニコル化での輝度)/(平行ニコル下での輝度) (式)
つまり、この消偏光度が大きいと、直交ニコルに配置された偏光板から光が漏れていることを意味し、液晶ディスプレイに用いた際にはコントラスト低下を引き起こす。後述する実施例に示すが、驚くべきことに、従来の液晶塗布型の視野角補償フィルムに比べて、本発明のフィルムは消偏光度が1〜2桁小さく、液晶ディスプレイに用いた際には、コントラストを50%以上上げられることが分かった。消偏光度は、実質的には、1.0×10-4〜1.0×10-6であることが好ましく、より好ましくは、1.0×10-4〜5.0×10-5であり、0であることが最も好ましい。
上述した傾斜構造およびサーキュラーリターダンスに加え、このように消偏光度が小さいことで液晶ディスプレイの視野角補償とコントラストの向上を両立して達成できることも、従来のフィルムと異なる本発明のフィルムの特徴の1つである。
本発明のフィルムは、残留溶媒を実質的に含まないことが好ましく、フィルム重量に対する残留溶媒量が0.01質量%未満であることが、フィルムの消偏光度を低下させる観点からより好ましい。残留溶媒量は特に好ましくは0.008質量%未満であり、より特に好ましくは0.005質量%未満である。本明細書中、溶媒とは25℃において液体であり、かつ、分子量が20〜200の分子を指す。
残留溶媒量の測定について、特に制限はないが、例えばフィルムを測定用の溶媒に溶解させて、GCにより測定することができる。測定用のフィルムを溶解させる溶媒としては、前記熱可塑性樹脂を溶解するものであれば特に制限は無く、例えば、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、アクリル系フィルムであれば酢酸メチル、ジクロロメタン、アセトンなどが使用でき、シクロオレフィン(COC、COP)系フィルムであれば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が使用できる。
本発明のフィルムは、表面粗さRaが200nm以下であることが、偏光板との密着性、消偏光度の低減の観点から好ましい。表面粗さRaは100nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが特に好ましい。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(以下、Tgとも言う)が、−30〜230℃であることが好ましく、50〜200℃であることがより好ましく、60〜170℃であることが特に好ましい。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
前記熱可塑性樹脂の熱分解温度(Td)は300℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることが特に好ましい。
後述する押出温度における前記熱可塑性樹脂の溶融粘度は、10〜10000Pa・sであることが好ましく、100〜5000Pa・sであることがより好ましく、100〜3000Pa・sであることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂のTg+100℃におけるHCrとの剥離荷重は120N以下であることが好ましく、100N以下であることがより好ましく、80N以下であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂のTg〜(Tg+100)℃における複屈折の発現時間は、2秒以下であることが好ましく、1秒以下であることがより好ましく、0.5秒以下であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂のTg〜(Tg+100)℃における複屈折の緩和時間は、0.5秒以上であることが好ましく、1秒以上であることがより好ましく、2秒以上であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂の25℃における熱伝導率は、0.01〜10W/m・kであることが好ましく、0.1〜10W/m・kであることがより好ましく、0.1〜1W/m・kであることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂の25℃における表面張力は、10〜60mN/mであることが好ましく、20〜50mN/mであることがより好ましく、25〜50mN/mであることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂の固有複屈折の絶対値は、0.001〜0.2であることが好ましく、0.001〜0.11であることがより好ましく、0.002〜0.05であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂の屈折率は、1.35〜1.77であることが好ましく、1.40〜1.65であることがより好ましく、1.45〜1.60であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂の全光線透過率(試験法:ISO 13468−2)は、70〜95%であることが好ましく、80〜95%であることがより好ましく、90〜95%であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂のフィルムヘイズは、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂に含まれる直径50μm以上の異物は200個/cm2以下であることが好ましく、100個/cm2以下であることがより好ましく、50個/cm2以下であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂の弾性率は、500〜10000MPaであることが好ましく、1000〜80000MPaであることがより好ましく、1500〜7000MPaであることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂の破断伸度は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、4%以上であることが特に好ましい。
溶融押出し法を利用して作製する場合は、該樹脂の融点Tmと熱分解温度Tdが、Tm<Tdを満たす熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのがより好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
本発明のフィルム中、前記熱可塑性樹脂の濃度は、フィルム厚み方向において均一であることが好ましい。また、後述する添加剤を本発明のフィルムが含む場合、該添加剤の濃度はフィルム厚み方向において均一であることが好ましい。このように本発明のフィルムの組成が全体として均一であることが、フィルムの消偏光度が低下し、液晶ディスプレイに用いた場合、正面CRが向上するため好ましい。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]−Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができる。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
前記式(S−1)および(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式(S−3)および(S−4)を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。
式(S−3)2.3≦X+Y≦2.95
式(S−4)1.0≦Y≦2.95
下記式(S−5)および(S−6)を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
式(S−5)2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6)2.0≦Y≦2.9
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン-アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4、619、956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4、839、405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2、2、6、6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
このような重合性液晶化合物としては、例えば、特開2001−328973号公報の[0008]〜[0034]、特開2006−227630号公報の[0017]、特開2007−248780号公報の[0014]〜[0097]に記載のものを挙げることができる。
本発明のフィルムの製造方法は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程を含むフィルムの製造方法であって、前記挟圧装置によって該溶融物にかかる圧力が20〜500MPaであり、かつ、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする。このような大きな圧力をかけることが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。このような条件で製膜することにより、下記式(II)および(III)を満たすことを特徴の1つとする本発明のフィルムを得ることができる。
20nm≦Re[0°]≦300nm (II)
5nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速度が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、20〜500MPaの高圧を均一にかけられることから、互いに周速度が異なる2つのロールであることが好ましい。ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、まず、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を溶融押出しする。挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程(以下、挟圧工程とも言う)を含むが、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物(以下、メルトとも言う)を供給する手段に特に制限はない。例えば、メルトの具体的な供給手段として、熱可塑性樹脂組成物を溶融してフィルム状に押出す押出機を用いる態様でもよく、押出機およびダイを用いる態様でもよく、熱可塑性樹脂を一度固化してフィルム状とした後に加熱手段により溶融してメルトを形成し、製膜工程に供給する態様でもよい。
本発明のフィルムの製造方法は、前記熱可塑性樹脂を含有する組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物とも言う)をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことが、より得られるフィルムの光学特性のムラを抑える観点から好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融押出しする場合、溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。前記熱可塑性樹脂としては本発明のフィルムに含まれる熱可塑性樹脂として説明したものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってから前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)から出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
次に、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に、供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (I)
2つの挟圧面の移動速度比が0.60以上であれば、得られるフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]の差の絶対値は大きくなり、前記式(III)を満たすことができ好ましい。移動速度比が0.60以上であれば、得られるフィルムの表面に傷が付きにくく好ましい。前記2つの挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99にすると、フィルム表面に傷が付き難く、平滑性が良好なフィルムを安定的に製造することができるため好ましい。
本発明の製造方法では、吐出温度(供給手段の出口での熱可塑性樹脂組成物の溶融物温度)は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の溶融物の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の溶融物が劣化しにくい。
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、エアーギャップ間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
本発明の製造方法では、エアーギャップでのメルトの保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を熱可塑性樹脂組成物の溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
前記挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールを含んでいる場合、周速度の早いロールの表面を第一挟圧面とし、周速度が遅いロールの表面を第二挟圧面とする。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の前記熱可塑性樹脂組成物供給手段(例えば、ダイ)に最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
前記メルトの着地点とは、供給手段から押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。
本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
本発明のフィルムは単層フィルムであることが、フィルムの張り合わせ工程の削減や積層界面での光の反射を抑制する観点から好ましいが、本発明のフィルムにさらに機能層を積層することで、積層フィルムとすることもできる。本発明のフィルムが2以上の層からなる積層フィルムである場合、すべての層が前記液晶性重合化合物を含まないことが、低消偏光度化の観点から好ましい。
本発明のフィルムにさらに光学異方性層を付与した積層フィルムとすることもできる。本発明に用いることができる光学異方性層については特に制限はないが、例えば、特開2001−328973号公報の[0008]〜[0034]、特開2006−227630号公報の[0017]、特開2007−248780号公報の[0014]〜[0097]に記載のものを挙げることができる。
本発明のフィルムの上に反射防止層を付与することで、本発明の反射防止フィルムが得られる。反射防止層は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層と、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(高屈折率層、および中屈折率層)とを(透明)支持体上に設けて成る。本発明に用いることができる反射防止層については特に制限はないが、例えば特開2007−65635号公報の[0011]〜[0150]、特開2008−262187号公報の[0015]〜[0028]や[0073]〜[0207]、特開2008−268939号公報の[0009]〜[0201]に記載される反射防止層を好ましく用いることができる。
なお、以下に記載される実施例20、21は、それぞれ参考例20、21と読み替えることとする。
環状オレフィン共重合体として、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は136℃であった。
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)を特開2006−348123号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAPの組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.60、全アシル置換度2.75、数平均重合度DPn=118で、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は137℃であった。
ポリカーボネートとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
アクリル系樹脂として、スチレン-アクリル系共重合体である旭化成ケミカルズ社製の「デルペット980N」のペレットを用いた。なお、「デルペット980N」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は123℃であった。
(フィルムの作製)
環状オレフィン共重合体TOPAS#6013のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥し、260℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを表1に記載の押出し温度(吐出温度)で幅450mm、リップギャップ1mmのダイから押出した。
この後、キャストロールとチルロールで挟圧した部分の中央(図7参照)にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅1800mm、直径400mmのHCrメッキされた金属製キャストロール(チルロール)に、下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅200mm、直径350mmのHCrメッキされた金属製タッチロールを接触させた。タッチ圧力は、プレスケール(富士フィルム社製)をメルトのない状態で、2つのロールに挟みこむことで測定し、その値を製膜時にメルトに付加する圧力とした。なお、圧力測定の際のロール温度は25℃、ロール速度は共に5m/分とした。タッチロールおよびチルロールは下記表1に記載のショア硬度のものを用いた。これらのロールを用い、タッチロール速度、チルロール速度および周速比を下記表1に記載の条件に設定して製膜した。
なお、タッチロール、チルロールの温度はTg−5℃とし、ダイとメルト着地点の距離を200mmと設定した。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅は200mmとし、製膜速度5m/分(チルロール速度)で450m巻き取った。製膜後のフィルムの厚みは100μmとし、実施例1のフィルムを作製した。
得られた実施例1のフィルム中央部の互いに2mm以上離れた任意の10点の位置でサンプリングを行い、KOBRAを用いて、フィルム傾斜方位にあおった、レターデーション値Re[+40°]とRe[−40°]を測定し、その平均値を表1に記載した。同様に、ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて、フィルム傾斜方位と直交する方向にあおったCRe[+40°]を表1にあわせて記載した。なお、実施例1のフィルムの傾斜方位は、フィルムの長手方向であった。
(フィルムの消偏光度)
得られた実施例1のフィルムを10×10cmにサンプリングし、偏光板の間に、サンプルフィルムを、その面内の遅相軸が、偏光板の吸収軸に平行になるように挿入し、前記偏光板の面に対して垂直方向から光を照射させ、偏光板を直交ニコル配置と平行ニコル配置にした時の輝度より、以下の式を用いて計算した。
消偏光度=2×(直交ニコル化での輝度)/(平行ニコル下での輝度) (式)
得られた実施例1のフィルム300mgを溶媒(フィルムを溶解するものであれば特に限定されないが、本実施例ではCAP、スチレン−アクリルおよびPCについてはジクロロメタンを用い、環状オレフィンについてはn−ヘキサンを用いた)30mlに溶解した。このフィルム溶解液をガスクロマトグラフィー(GC)を用い、下記条件で測定した。
カラム:DB−WAX(0.25mmφ×30m、膜厚0.25μm)
カラム温度:50℃
キャリアーガス:窒素
分析時間:15分間
サンプル注入量:1μl
あらかじめ測定しておいた検量線から、実施例1のフィルムの残留溶媒量を求めた。その結果を下記表1に示す。
得られた実施例1のフィルムの表面粗さRaを、以下の方法に従って求めた。その結果を下記表1に示す。
フィルムを10×10cmにサンプリングし、レーザー干渉計F601(フジノン(株)社製)を用いて、Ra値を求めた。
実施例1のフィルム切片の消光位を、0°〜90°まで1°刻みで回転させながら、偏光顕微鏡(NIKON社製エクリプスE600POL)にて観測し、観察された偏光顕微鏡画像を厚み方向に20分割して片側の表面から順に層に分け、図3に実施例1のフィルムの移動速度の速い第一挟圧面(タッチロール)に接していた側の面(下記図4におけるフィルム下側表面)からの膜厚方向への距離と、消光位の関係をまとめた。図3から分かるように、本発明のフィルムは、厚み方向に沿って消光位が変化する特別な内部構造を形成している。また、図3より、本発明のフィルムはフィルム下側表面から60〜80μmの距離において、消光位が急激に変化していることがわかった。
さらに、実施例1のフィルムについて、2枚の偏光板を10°回転させた場合と60°、70°、80°回転させた場合における、フィルム切片の消光位を偏光顕微鏡(NIKON社製エクリプスE600POL)にて撮影し、図4の(A)〜(D)にまとめた。2枚の偏光板を10°回転させた場合(A)では、フィルム下側表面から約80μmの部分で消光している一方、それ以外の部分では消光していないことが分かった。一方、2枚の偏光板を60°回転させた場合(B)では、フィルム下側表面から約5μmの部分で消光している一方、それ以外の部分では消光しておらず、2枚の偏光板を70°回転させた場合(C)では、約35μmの部分で、2枚の偏光板を80°回転させた場合(D)では、約70μmの部分で消光している一方、それ以外の部分では消光していないことが分かった。
以上より、実施例1のフィルムは、フィルム切片の下側表面から上側表面へ向けて順に観測した場合に、最初に観測される消光位と最後に観測される消光位が3°を越えて異なっていることを確認した。また、干渉色図表と照らし合わせて複屈折の大きさを測定した結果、従来の塗布型フィルムと異なり(従来の塗布型フィルムは厚み方向の複屈折の大きさは一定)、複屈折の大きさが最大となる部分がフィルム内部に存在することが分かった。
用いた樹脂と製膜条件を下記表1に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例の光学フィルムを得た。各実施例および比較例の光学フィルムの光学特性を下記表1に示す。なお、比較例4で用いたゴムロールのショア硬度は、JIS Z 2246に基づく測定方法では測定不能であり、20HS以下であった。
また、実施例2〜21のフィルム厚み方向の、消光位、複屈折の大きさを実施例1と同様の方法で確認し、いずれも、フィルム切片の下側表面から上側表面へ向けて順に観測した場合に、最初に観測される消光位と最後に観測される消光位が3°を越えて異なっていることを確認した。一方、比較例1及び2のフィルムは、フィルム切片の下側表面から上側表面へ向けて順に観測した場合に、最初に観測される消光位と最後に観測される消光位が3°以下しか異なっていないことを確認した。なお、実施例、比較例のフィルムの傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向であった。また、フィルム面内の遅相軸は、実施例20、実施例21、比較例7はフィルム幅手方向で、その他のフィルムはフィルム長手方向であった。
一方、比較例1および2は、タッチ圧力を本発明の製造方法の下限値以下としたものであり、得られたフィルムの位相差の傾斜構造は小さく位相差フィルムとして不十分な性能であった。さらに、比較例1のフィルムについて、図3にフィルムの移動速度の速い第一挟圧面(タッチロール)に接していた側の面(下記図4におけるフィルム下側表面)からの膜厚方向への距離と、消光位の関係をまとめた。また、2枚の偏光板を10°回転させた場合と60°、70°、80°回転させた場合における、フィルム切片の消光位を偏光顕微鏡(NIKON社製エクリプスE600POL)にて撮影し、図4の(a)〜(d)にまとめた。図3および図4について、実施例1のフィルムと対比すると、比較例1のフィルムは、図3から読み取れるように、消光位は83〜86°にあり、フィルム切片の下側表面から上側表面へ向けて順に観測した場合に、最初に観測される消光位と最後に観測される消光位の差は3°以下であり、ほぼ単一に傾斜したフィルムであることが分かった。
さらに、実施例1〜7および19のフィルムでは厚み方向に20分割したフィルムの5〜15分割目の部分に最大消光位の位置が観測された。また、実施例1〜7および19のフィルムでは厚み方向に20分割したフィルムの5〜15分割目の部分に複屈折の最大値の位置が観測された。その他の実施例のフィルムでは厚み方向に20分割したフィルムの3〜18分割目の部分に最大消光位の位置および複屈折の最大値の位置が観測された。
比較例3は、タッチ圧力を本発明の製造方法の上限値以上としたものであり、タッチロールおよびキャストロール(チルロール)が歪み製膜不能となった。比較例4は、タッチロールとしてゴムロールを用い、シリンダー圧力を10KNとしたものであるが、タッチ圧力は1MPaまでしか上がらずにゴムロールが変形し、製膜不能となった。比較例5〜7は樹脂の種類を変更し、タッチ圧力を本発明の製造方法の下限値以下としたものであり、得られたフィルムの位相差の傾斜構造は位相差フィルムとして不十分な性能であった。さらに比較例1〜7のフィルムはいずれもサーキュラーレターデーションが実質的に0nmであった。
実施例のフィルムと比較例のフィルムの内部構造が大きく異なる理由は、タッチ圧力に由来すると考えられる。すなわち、実施例のフィルムはタッチ圧力を高くすることで、ロール間にバンクを積極的に形成させ、バンクの流動配向を用いて、位相差を発現させる。そのため、バンクの流速に起因した特殊な内部構造が発現する。一方、比較例のフィルムはタッチ圧力が低いため、バンクは殆ど形成されず、異周速ロールに起因した単純ずり変形のみが樹脂に付与され、ほぼ単一傾斜の位相差フィルムが作成されると考えられる。
また、比較例8は、周速比を本発明の上限以上としたものであり、傾斜方位を有さないフィルムが作成されることを確認した。
さらに、タッチロール及びチルロールの温度を、本発明の好ましい範囲の上限以上であるTg+15℃に変更した以外は実施例1と同様にして製膜を行い、特殊な内部構造を有するフィルムを作成したが、剥離ダン故障が発生した。次に、タッチロール及びチルロールの温度を、本発明の好ましい範囲の下限以下であるTg−75℃に変更した以外は実施例1と同様にして、製膜を行い、特殊な内部構造を有するフィルムを作成したが、横ダンが発生した。次に、周速比を本発明の好ましい範囲の下限以下である0.56に変更した以外は実施例1と同様にして製膜を行い、特殊な内部構造を有するフィルムを作成したが、フィルム全面にスリキ故障が発生したと共に、金属ロールの表面にもスリキ故障が発生した。次に、ロールのショア硬度を本発明の好ましい範囲の下限以下である25HSに変更した以外は実施例1と同様にして、製膜を行い、特殊な内部構造を有するフィルムを作成したが、製膜中にロールが凹んだため、連続製膜適正が低いことを確認した。
特開平6−222213号公報に記載の方法で傾斜配向フィルムを作成し比較例9のフィルムとした。なお、比較例9のフィルムの膜厚は、100μmである。
比較例9のフィルムは、Re[0°]のバラツキが非常に大きく、また顕著な横ダンが発生し、実施例1のフィルムに比べて均一性が著しく悪かった。
さらに、比較例9のフィルムについて、図5に、2枚の偏光板を10°回転させた場合と60°、70°、80°回転させた場合における、フィルム切片の消光位を偏光顕微鏡(NIKON社製エクリプスE600POL)にて撮影し、(A)〜(D)にまとめた。図5について、特に実施例1のフィルムと対比したときに特徴的に異なる点を説明する。まず、比較例9のフィルムは、図5から読み取れるように、消光位は約60°にあり、フィルム切片の下側表面から上側表面へ向けて順に観測した場合に、最初に観測される消光位と最後に観測される消光位の差が小さく、ほぼ単一に傾斜したフィルムであることが分かる。
このように、本発明のフィルムは従来の方法で製造されたフィルムとは全く異なる内部構造を有していることが分かった。
また、実施例1〜21より、本発明のフィルムは特殊な内部構造を有するフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることを次に示す。
[比較例10]
作成した実施例1のフィルムおよび比較例1のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、本発明1または比較例1のフィルムを、本発明1または比較例1のフィルムのチルロール面がλ/2板と接するように貼合わせた。この様にして、実施例1のフィルムを用いた偏光板PL1および比較例1のフィルムを用いたPL2をそれぞれ2枚ずつ作製した。また、特開2002−311426号公報の実施例1の方法に従って、液晶塗布型のフィルム比較例10を作成し、上記実施例1の変わりに偏光板と貼り合せ、偏光板PL3を作成した。
次に、上記偏光板を用いてECB型の半透過型液晶表示装置を作製した。使用した液晶セルは、液晶材料としてZLI−1695(Merck社製)を用い、液晶層厚は反射電極領域(反射表示部)で2.4μm、透過電極領域(透過表示部)で4.9μmとした。液晶層の基板両界面のプレチルト角は2度であり、液晶セルのΔndは、反射表示部で略150nm、透過表示部で略320nmであった。
この液晶セルの上下に、上記作製した2種の偏光板を、図1に示すように配置した。偏光板P1およびP2中の矢印はそれぞれの吸収軸を、位相差フィルム中の矢印はそれぞれの遅相軸を、ECBセルの矢印はそれぞれの対向面に施されたラビング処理のラビング方向を示す。ここで、12時方向が0°、時計回りが+である。
このように、本発明のフィルムを用いると、液晶表示装置に組み込んだ場合、十分な視野角補償が行え、かつ正面CRが上昇することが分かった。
実施例1の光学フィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い低反射フィルムを作製し、液晶表示装置に組み込んだところ、良好な光学性能が得られた。
特開平9−127885号公報に従って、実施例1の光学フィルムと直線偏光板を、遅相軸と吸収軸の角度が45度になるように張り合わせ、反射防止フィルムを作成した。その反射防止フィルムを、有機EL表示装置に組み込み、反射防止機能を確認した。さらに、本発明のフィルムの特徴から、非対称な視野角性能を有することを確認した。
2 移動速度が遅い第二挟圧面側のフィルム表面
10 ダイ
11 タッチロール
12 チルロール
13 リップ調整ボルト
14 セルロースアシレート樹脂含有組成物
15 前方遮風板
16 後方遮風板
17 側面遮風板
Claims (8)
- 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程により下記式(II)、(III)および(IV)を満たす光学フィルムを製造する方法であって、
前記挟圧装置によって該溶融物にかかる圧力が25〜500MPaであり、かつ、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
20nm≦Re[0°]≦300nm (II)
(式中、Re[0°]は、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションを表す。)
5nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
(式中、Re[+40°]は、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションを表し、Re[−40°]は、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションを表す。)
40nm≦Rth≦500nm (IV)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nx、ny、nzは、屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム厚みを表す。) - 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程をさらに含み、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
- 下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比が0.60〜0.99であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (I) - 前記第一挟圧面および前記第二挟圧面の温度を、Tg−70℃〜Tg+10℃に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
- 前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールを含んでおり、周速度の早いロールの表面を第一挟圧面とし、周速度が遅いロールの表面を第二挟圧面とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記2つのロールのショア硬さが共に45HS以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記2つのロールが共に金属ロールであることを特徴とする請求項5または6に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
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