JP2011056796A - 光学フィルムの製造方法、及び光学フィルム、偏光板、液晶表示板用光学補償フィルムおよび液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルムの製造方法、及び光学フィルム、偏光板、液晶表示板用光学補償フィルムおよび液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な大きさの傾斜構造を有し、面状が良好で、光学特性のMD方向ムラが小さい光学フィルムの提供。
【解決手段】挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程を含む光学フィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くし、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面との間の圧力を20MPa以上に制御し、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面によって該フィルムに1m幅あたり3000〜30000Nのせん断応力を付与するように制御し、前記第一挟圧面および前記第二挟圧面をそれぞれ遊星タイプの減速機を介して連結される駆動モーターによって駆動させる光学フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は光学フィルムの製造方法に関する。また、該製造方法で作成された光学フィルム、並びに該光学フィルムを有する偏光板、液晶表示板用光学補償フィルムおよび液晶表示装置にも関する。
近年、液晶ディスプレイ市場の隆盛に伴い、様々なフィルムが開発され、例えば、特許文献1〜3には、傾斜型位相差フィルムが開示されている。
例えば、特許文献1には、周速度の異なる2つのロール間にフィルムを通すことで、該フィルムにせん断力を付与し、光軸が傾斜したフィルムを作成する方法と、TN型液晶ディスプレイへの応用が記載されている。しかし、該文献に記載の方法では、フィルムの光学特性のバラツキが大きいこと、フィルム表面に接触傷が付き易い等の問題があった。これに対し、特許文献2および3では、ゴムロールと周速の異なってもよい金属ロールの2つのロール間に、熱可塑性樹脂を含む組成物の溶融物を通し、該溶融物に対してせん断力を付与して製膜することで、フィルムの光学特性のバラツキやフィルム表面への接触傷等の問題点を解決できる傾斜構造を有するフィルムが開示されている。ここで、一般的にフィルム製膜時に用いるキャスティングロールは、得られるフィルムの品質を安定させるために、回転むらが少なく、高精度で制御されることが好ましい(例えば、特許文献4参照)。一方、2つのロールを駆動するモーターは、製造コストの観点からは駆動モーターにとって高効率の回転数の範囲で駆動させる必要があるが、フィルム製膜時におけるロールの回転数は高くし過ぎると面状の問題等が発生するため、減速機をロールと駆動モーターの間に設ける必要がある。このような駆動モーターに接続される減速機としては、歯車、伝動ベルト、ウォーム歯車などを利用した減速機などを挙げることができる。従来、フィルムの製膜分野では、これらの減速機の中でも、精密級ウオーム減速機が装置サイズがコンパクトなことから一般的に好ましく用いられていた。遊星歯車や遊星ローラーなど遊星タイプの減速機は原理的にロールの速度ムラが改善されることは知られており、塗布ロール装置や、特許文献6に記載されるようなロール内部にヒーターを内蔵する圧延装置等に用いられていた。しかしながら、チルロールとタッチロールを用いる溶融製膜装置の場合には、溶融ポリマーを効率的に冷却するための熱媒・冷媒循環装置と駆動系との両方の連結がロールに求められることから、遊星歯車や遊星ローラーなど遊星タイプの減速機は、ロールを閉じた時に、減速機同士が干渉する問題があり用いられることが無かった。溶融膜装置干渉については、シュミットカップリングを用いたり、あるいは装置干渉を回避可能な長い連結継軸を用いたりすることや、モーターを左右逆に取り付けたりすることにより回避可能であるが、駆動部とロールの連結構造を複雑にすることによる新たな速度ムラの発生や、装置構成が複雑になることが懸念され用いられることがなかった。このような状況は周速度の異なる2つのロールで光学フィルムを製膜(例えば、特許文献2、3および5参照)する場合でも同様であり、実際、2つのロールを駆動するモーターに用いられる減速機について詳細な検討はなされていなかったのが現状である。特に周速度の異なる2つのロールでフィルムを製膜する場合は、上記の事情に加えてウォーム減速機がコンパクトなサイズで高トルクに対応出来る観点から非常に好ましく用いられていたという事情もあり、遊星タイプの減速機を用いる試みはなされていなかった。すなわち、いずれの特許文献においても、溶融製膜法タッチロールにおいて、2つのロールを駆動するモーターに遊星タイプの減速機を用いることは開示されていなかった。
特開平6−222213号公報 特開2003−25414号公報 特開2007−38646号公報 特開2004−90464号公報 特開平11−138634号公報 特開平7−151915号公報
しかし、本発明者が検討した結果、液晶ディスプレイに単に光軸が傾斜した光学フィルムを使用しただけでは、光学補償の効果は十分ではないことがわかった。例えば、特許文献2および3の実施例1の方法に従ってフィルムを作成したところ、得られたフィルムは位相差の傾斜構造の発現量が小さい上、依然として光学特性のMD方向ムラが近年求められるレベルまで改善されていないという問題があることが判明した。
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、本発明の第一の目的は、十分な大きさの傾斜構造を有し、面状が良好で、光学特性のMD方向ムラが小さい光学フィルムおよびその製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、該フィルムを用いた偏光板、液晶表示板用光学補償フィルムおよび液晶表示装置を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決すべくさらに鋭意検討を続けた結果、挟圧装置の両狭圧面を遊星タイプの減速機を介して連結された駆動モーターによって駆動し、狭圧面によって付与される圧力およびフィルム1mあたりのせん断応力を本発明の製造方法の範囲内に制御することで、面状が良好で、十分な大きさの傾斜構造を有し、驚くべきことに光学特性のMD方向ムラまでも改良されたフィルムを製膜できることを見出した。
異なる速度で2つの挟圧面を移動させて熱可塑性樹脂の溶融物に従来に比して大きな圧力および大きなせん断応力を加えたときに得られるフィルムの面状および光学特性ムラを改良するには、このように遊星タイプの減速機を用いることが必要となる。これは、第一に一方の挟圧面に連結された減速機およびモーターには正(順)方向の負荷がかかるが、もう一方の挟圧面に連結された減速機およびモーターには負(逆)方向の負荷がかかることに起因するためである。また、第二に、大きなせん断応力(トルク)が必要とされるため、製造コストの観点からなるべく大きな減速比としつつ、回転精度を保つ必要性のためである。例えば、通常の歯車を用いた場合、負方向の負荷がかかると逆回転させる力が生じて回転精度が落ち、大きなトルクをかけるとバックラッシの影響等からも回転精度が落ちる。伝動ベルトを用いた場合も、負方向の負荷がかかると逆回転させる力が生じてベルト張力が不安定になり、また大きなトルクをかけたときも同様にベルト張力が不安定になるため回転精度が落ちる。ウォーム減速機を用いた場合は、負方向の負荷がかかった時に逆回転させる力がモーターにかかることを通常に歯車に比べて抑制することができることが知られているが、本発明者が挟圧面間に移動速度差をつけて従来に比して大きな圧力および大きなせん断応力を加えてフィルムを製膜したところ、予想外に得られるフィルムの光学特性のMD方向ムラが悪かった。このような検討から、バックラッシの影響等から回転精度が落ちることを予測し、さらに、本発明者はバックラッシの影響を抑制した精密級ウォーム減速機を用いて前述の条件でフィルムを製膜したが、同様に得られるフィルムの光学特性のMD方向ムラは依然として満足いくレベルではなかった。
これに対し、本発明者が従来高トルクに対応するには減速機サイズが大型となり、装置干渉の問題から光学フィルムの製膜分野、特に2つのロールで挟圧して光学フィルムを製膜する際に用いられていなかった遊星タイプの減速機を採用し、装置干渉を回避可能な長い連結継軸を用いて前述の条件でフィルムを製膜したところ、驚くべきことに得られるフィルムの面状と光学特性のMD方向ムラを同時に改善できることを見出した。このような結果はウォーム減速機(および精密級ウォーム減速機)と遊星タイプの減速機を比較したときの従来の知見、すなわち、ウォーム減速機の方が設備サイズがコンパクトなため、継軸長を極めて短く出来る観点から非常に好ましく用いられていたことからも予測できないものであった。また、従来熱媒・冷媒循環装置と駆動系の両方の連結がロールに求められるため、装置干渉が問題となるという事情から光学フィルムの製膜分野、特に2つのロールで挟圧して光学フィルムを製膜する際に用いられてこなかった遊星タイプの減速機を用いて上記のような好ましい特性の光学フィルムが得られることについても予測できないことであった。本発明は、このように従来用いられていなかった遊星タイプの減速機を用いることで、初めて前述の製造条件で良好な特性の光学フィルムを製膜できたことを見出したものである。
すなわち、下記製造方法およびその方法で作成されたフィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程を含む光学フィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くし、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面との間の圧力を20MPa以上に制御し、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面によって該フィルムに1m幅あたり3000〜30000Nのせん断応力を付与するように制御し、前記第一挟圧面および前記第二挟圧面をそれぞれ遊星タイプの減速機を介して連結される駆動モーターによって駆動させる光学フィルムの製造方法。
[2] 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする[1]に記載の光学フィルムの製造方法。
[3] 前記減速機が遊星ローラー減速機であり、かつ、該遊星ローラー減速機をメカロス変動防止制御することを特徴とする、[1]または[2]に記載の光学フィルムの製造方法。
[4] 前記メカロス変動防止制御を、±5℃以内の温度調節設備により行うことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[5] 前記駆動モーターを定格出力の20%〜80%で駆動させることによって、前記せん断応力を付与することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[6] 前記第一挟圧面および前記第二挟圧面がロール外筒平均肉厚10mm以上の一対の金属製ロールであり、かつ、該一対のロールによって挟圧される前記フィルムのニップ長が0mmより大きく2mm以内であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[7] 前記一対のロールが、剛性素材外筒厚み/ロール直径の比が1/80以上であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[8] 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂またはアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
[9] フィルム法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、傾斜方位とフィルム法線を含む面内において該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が、以下の関係式(I)および(II)を満たし、かつRe[0°]のフィルムMD方向のムラと|Re[+40°]−Re[−40°]|のフィルムMD方向のムラがともに3nm以内であることを特徴とする光学フィルム。
60nm≦Re[0°]≦300nm (I)
40nm≦γ≦300nm (II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (II’)
[10] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルム。
[11] [9]または[10]に記載の光学フィルムを基材に用いたことを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
[12] [9]または[10]に記載の光学フィルム、あるいは、[11]に記載の液晶表示板用光学補償フィルムを少なくとも1つ用いたことを特徴とする偏光板。
[13] [9]または[10]に記載の光学フィルム、あるいは、[11]に記載の液晶表示板用光学補償フィルムを少なくとも1つ用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、液晶ディスプレイに使用した場合に十分な光学補償を実現できるフィルムおよびその製造方法を提供することができる。詳しくは、傾斜構造を有し、面状が良好で、光学特性のMD方向ムラが改良されたフィルムを得ることができる。さらに、本発明によれば、従来技術以上に傾斜構造の大きなフィルムも作成できる。上記光学特性を有するフィルムは、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、十分な光学補償を実現できる。例えば、TNモードの液晶ディスプレイでは、視野角度が狭いため、通常、光学補償を実現する液晶組成物からなる光学補償層が設けられた光学補償フィルム(例えば、WVフィルム(富士フィルム製))が偏光子に積層されて使用されるが、本発明のフィルムを使用した場合には、液晶組成物からなる光学補償層を利用しなくても、従来の液晶組成物からなる光学補償層を有する光学補償フィルムを利用したものよりも簡便に視野角補償を行うことができる。また、本発明のフィルムの製造方法により、本発明のフィルムを提供することができる。
本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向を意味する。
[フィルム]
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、後述する本発明の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする。
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとしてより好ましく用いることができ、液晶表示板用光学補償フィルムとしてより特に好ましく用いることができる。また、本発明のフィルムは積層構造とすることもできる。以下、本発明のフィルムについて詳細に説明する。
(面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth)
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含み、フィルム法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が、以下の関係式(I)および(II)を満たし、かつRe[0°]のフィルムMD方向のムラと|Re[+40°]−Re[−40°]|のフィルムMD方向のムラがともに3nm以内であることが、フィルムを液晶表示装置に組み込んだ際の視野角補償能を向上させる観点から好ましい。
60nm≦Re[0°]≦300nm (I)
40nm≦γ≦300nm (II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (II’)
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
本発明のフィルムは、Re[0°]が65〜280nmであることが好ましく、より好ましくは70〜200nmであり、さらに好ましくは75〜150nmである。
本発明のフィルムは、γが45〜250nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましく、さらに好ましくは55〜150nmである。
さらに、本発明のフィルムは、下記式(III)および(IV)を同時に満たすことが好ましい。
75nm≦Re[0°]≦150nm (III)
55nm≦γ≦150nm (IV)
前記Re[0°]および前記γが前記好ましい範囲のフィルムをTNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。さらに、本発明のフィルムは後述する各種光学特性のフィルムMD方向のムラが小さいため、液晶ディスプレイの光学補償に用いた場合に、色ムラが極めて少ないという利点を有する。
(光学特性のフィルムMD方向のムラ)
本発明のフィルムは、Re[0°]のフィルムMD方向のムラが、3nm以下である。前記Re[0°]のフィルムMD方向のムラは、フィルムのMD方向に50mm間隔で20点のサンプリングを行なったときの測定値の最大値と最小値の差から求めることができる。なお、本明細書中、Re[0°]のフィルムMD方向のムラのことを、Re[0°]の短周期変動とも言う。Re[0°]のフィルムMD方向のムラは、2.5nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。
本発明のフィルムは、γのフィルムMD方向のムラが、3nm以下である。前記γのフィルムMD方向のムラは、フィルムのMD方向に50mm間隔で20点のサンプリングを行なったときの測定値の最大値と最小値の差から求めることができる。なお、本明細書中、γのフィルムMD方向のムラのことを、γの短周期変動とも言う。γのフィルムMD方向のムラは、2.5nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。
本発明のフィルムは、製膜開始から0時間後と24時間後のフィルム各々をMD方向に50mm間隔で20点のサンプリングを行ない、40点においてRe[0°]を測定した値の最大値と最小値の差(以下、Re[0°]の経時変化ムラとも言う)が、3nm以下であることが好ましい。前記Re[0°]の経時変化ムラは、2.5nm以下であることがより好ましい。
本発明のフィルムは、製膜開始から0時間後と24時間後のフィルム各々をMD方向に50mm間隔で20点のサンプリングを行ない、40点においてγを測定した値の最大値と最小値の差(以下、γの経時変化ムラとも言う)が、3nm以下であることが好ましい。前記γの経時変化ムラは2.5nm以下であることがより好ましい。
本明細書において、Re[0°]およびRthは、光学異方性層、フィルム、積層体等の、フィルム状の測定対象物の、面内のレターデーション(nm)、及び厚み方向のレターデーション(nm)を表す。
Re[0°]は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて、レターデーション値を11点測定し、そのレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を回転軸として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 2011056796
なお、式中、Re[θ]は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
また、式(A)および(B)において、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がない測定対象物の場合には、以下の方法により、Rthが算出される。
Rthは、前記Reを、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS、INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定できる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、Re[θ°]、Rth及び屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、測定波長550nmでの値である。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルム法線方向から測定した(傾斜角度0°での)波長550nmにおけるレターデーション値、該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した(傾斜角度40度での)レターデーション値および該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した(傾斜角度−40度での)レターデーション値を表す。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)フィルム法線に対して各仮傾斜方位側へ40°又は−40°傾いた方向からRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、各仮傾斜方位の|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
すなわち、本明細書において、「傾斜方位を有する」とは、|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位が存在することを言う。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、|Re[40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nmを超える位相差を発現することとなる。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム中央部の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。また、本発明では上記10点の平均値をRe[0°]、Re[+40°]、Re[−40°]とする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
(膜厚)
前記フィルムの膜厚は、200μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。本発明のフィルムの製造方法では、このような薄手のフィルムを作成できる。
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系樹脂を含むことがより好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂は、2つのロールでせん断変形を付加した場合、遅相軸が傾斜方位を向き、|Re[40°]―Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができ、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、|Re[40°]―Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができる。
本発明のフィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正または負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることが出来る。
本発明に使用可能な環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られたノルボルネン系樹脂が含まれる。また、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なセルロースアシレート系樹脂の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基および芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選択される1種または2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基およびプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。前記CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
本発明の製造方法を含む溶融押出し法によりフィルムを作製する場合は、用いるセルロースアシレートは、以下の式(S−1)および(S−2)を満足することが好ましい。以下の式を満足するセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
前記式(S−1)および(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式(S−3)および(S−4)を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。
式(S−3)2.3≦X+Y≦2.95
式(S−4)1.0≦Y≦2.95
下記式(S−5)および(S−6)を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
式(S−5)2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6)2.0≦Y≦2.9
セルロースアシレート系樹脂の質量平均重合度および数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、および数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート系樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)および(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
本発明に使用可能なポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報、特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン-アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
Figure 2011056796
前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂であることが好ましく、高透明性、複屈折発現性および耐熱性の観点からノルボルネン系樹脂であることがより好ましく、付加重合系のノルボルネン系樹脂であることが特に好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
(添加剤)
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
安定化剤:
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO-412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
紫外線吸収剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
光安定化剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
可塑剤:
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
微粒子:
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
光学調整剤:
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
[フィルムの製造方法]
本発明のフィルムの製造方法は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程を含む光学フィルムの製造方法であって、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くし、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面との間の圧力を20MPa以上に制御し、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面によって該フィルムに1m幅あたり3000〜30000Nのせん断応力を付与するように制御し、前記第一挟圧面および前記第二挟圧面をそれぞれ遊星タイプの減速機を介して連結される駆動モーターによって駆動させることを特徴とする。このような特定の範囲の挟圧面間圧力、フィルムへのせん断応力を付与し、遊星タイプの減速機を介して連結される駆動モーターによって該挟圧面を駆動することが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、20〜500MPaの高圧を均一にかけられることから、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することができる。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
<熱可塑性樹脂組成物の溶融物の供給>
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程(以下、挟圧工程とも言う)を含むが、前記挟圧工程に熱可塑性樹脂を含有する溶融樹脂を供給手段から供給する。その際、熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物(メルト)を供給する手段に特に制限はない。例えば、メルトの具体的な供給手段として、熱可塑性樹脂組成物を溶融してフィルム状に押出す押出機を用いる態様でもよく、押出機およびダイを用いる態様でもよく、熱可塑性樹脂を一度固化してフィルム状とした後に加熱手段により溶融してメルトを形成し、製膜工程に供給する態様でもよい。
本発明のフィルムの製造方法は、前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことが、より得られる光学特性のフィルムMD方向のムラを抑える観点から好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融押出しする場合、溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
押出機を用いて溶融押出しを行う場合、次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させることが好ましい。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機と前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これにより前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂が前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)に連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。また前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
前記供給手段がダイである場合、ダイ出口部分のクリアランス(以下、リップギャップとも言う)は一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。具体的には、0.04〜3mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることがより好ましく、0.4〜1.5mmであることが特に好ましい。
本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってから前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)から出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
<キャスト>
次に、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に、任意の供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
本発明の製造方法では、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過する溶融物にかける圧力が20MPa以上であり、35〜500MPaであることが好ましく、50〜300MPaであることがより好ましく、さらに好ましくは、25〜200MPaであり、特に好ましくは30〜150MPaである。
(挟圧面の移動速度比)
本発明の製造方法では、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする。さらに、下記式で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99に調製し、溶融樹脂が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。挟圧装置の移動速度比は、0.60〜0.99とすることが好ましく、0.75〜0.98とすることがより好ましい。
(式):
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度
(吐出温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(供給手段の出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、エアーギャップ間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
(ライン速度)
本発明の製造方法では、エアーギャップでのメルトの保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が例えば5m/分以上であることが好ましく、7m/分以上であることがより好ましく、8m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
本発明の製造方法では、前記溶融物の幅は特に制限はなく、例えば200〜2000mmとすることができる。
(挟圧面)
本発明の製造方法では、前記第一挟圧面および前記第二挟圧面は、挟圧面の材質は本発明の製造方法の条件を満たすことが可能な限り特に制限はないが、金属製の挟圧面を用いことが好ましい。前記挟圧面に用いられる金属としては特に制限はないが、ステンレスであることが好ましく、表面をメッキ処理されていることも好ましい。前記メッキ処理についても特に制限はないが、例えばHCrメッキされていることが好ましい。また、前記第一挟圧面および前記第二挟圧面は剛性であることが好ましい。
なお、本明細書において挟圧面が「剛性」であるとは、挟圧面の材質のみによって判断されるものではなく、挟圧面表面部分に用いられる剛性素材の厚みと挟圧面を支持する構造の厚みとの比率を勘案して決定されるものであり、たとえば挟圧面が円柱形の支持ロールによって駆動されている場合、剛性素材外筒厚み/支持ロール直径の比が例えば1/80程度以上であることを表す。また、挟圧面がその他の機構によって支持および駆動されている場合も、挟圧面が円柱形の支持ロールによって駆動されている場合と同程度である。なお、本明細書において、挟圧装置の挟圧面(またはロール)が「金属製かつ剛性」であるとは、少なくとも全ての表面が金属であり、かつ、挟圧装置の挟圧面とその支持部分全体を勘案して(またはロール)「剛性」であることを表す。
また、前記挟圧面が芯部(例えばロール)と外筒(ロール1つに巻きつけてあるスリーブや、2つ以上のロールに巻きつけてあるベルト等)を有し、前記外筒の平均肉厚が、ともに0.3mm以上であることが、線圧の不均一化防止の観点から好ましい。前記外筒の平均肉厚は、ともに2〜45mmであることがレターデーションを大きく発現し、かつ|Re[40°]−Re[−40°]|の値を大きくする観点からより好ましく、外筒の平均肉厚が10mm以上であることが レターデーションのTD方向の均一性の観点から特に好ましく、ともに5〜35mmであることがより特に好ましい。さらに、ロール外筒肉厚が10mm以上の一対のロールであることが レターデ−ションの発現と|Re[40°]−Re[−40°]|の両立の観点から好ましい。
また、前記外筒は金属製であることが好ましい。
前記第一挟圧面および前記第二挟圧面の10点平均粗さRzは、15nm〜250nmであることが好ましく、20nm〜150nmであることがより好ましく、20nm〜100nmであることが特に好ましい。両挟圧面の10点平均粗さRzが250nm以下であれば、得られるフィルムのヘイズを0.01〜0.5%に制御することができる。両挟圧面の10点平均粗さRzが15nm以上であれば、得られるフィルムのヘイズ値を前記範囲に制御しつつ、さらに|Re[40°]−Re[−40°]|のバラツキを抑えることができ、フィルムにダンムラが発生することを防止することができる。
本明細書において、挟圧面の10点平均粗さRzとは、挟圧面の任意の10箇所の測定場所を選び、各測定場所における挟圧面の最も高い部分の高さと最も低い部分の高さの差を求め、10箇所の値を平均したものである。
(せん断応力)
本発明の製造方法では、前記挟圧装置によってフィルム(メルト)1m幅あたり3000〜30000Nのせん断応力を与える。このような範囲のせん断応力を溶融物に与えると、光学特性の発現性がよく、面状や光学特性のフィルムMD方向のムラも良好な本発明のフィルムを得ることができる。前記せん断応力は、フィルム(メルト)1m幅あたり5000〜28000Nであることがより好ましく、フィルム(メルト)1m幅あたり8000〜25000Nであることが特に好ましい。
前記フィルム1m幅あたりのせん断応力は、挟圧装置を構成する各挟圧面を駆動するときにおけるメカロスを考慮して計算により求める。具体的な計算方法を、例としてある熱可塑性樹脂のメルトを、周速度比0.962のタッチロールとチルロール間を通過させ、圧力50MPaで挟圧して製膜する場合を挙げて説明する。
(1)まず、等周速度でタッチロールとチルロールを駆動して50MPaを両ロール間に加えてメルトを製膜し、そのときのタッチロール側駆動モーターの出力を測定した値T0[(%):モーター定格トルク出力に対する%]をメカロスとする。なお、T0の値は、経時変化を測定する際も常に製膜開始直後の値を採用する。
(2)次に、チルロールのタッチロールに対する周速度比を0.962に設定してタッチロールとチルロールを駆動し、50MPaを両ロール間に加えてメルトを製膜する。このとき、周速度の速いタッチロール側の駆動モーターの出力は、さらに上昇することとなり、このときのタッチロール側の駆動モーターの出力をT1(%)とする。
(3)上記(1)および(2)で得られたT0、T1の値を用いて、下記式からある熱可塑性樹脂のメルトを周速度比0.962、圧力50MPaとして製膜する際のせん断応力を計算する。
式:
せん断応力(N)=
{モーターの定格トルク出力(N・m)×(T1−T0)×減速比}/ロール半径(m)
(4)フィルム1m幅あたりのせん断応力は、前記モーター出力合計の値を用いて、下式の条件に基づいて換算して求めた。
せん断応力(N)/フィルム幅(m)=フィルム1m幅あたりのせん断応力(N/m)
(挟圧面の駆動)
前記好ましい範囲の圧力およびせん断応力を得るために、本発明の製造方法では、前記第一挟圧面および前記第二挟圧面をそれぞれ遊星タイプの減速機を介して連結される駆動モーターによって駆動(移動)させる。遊星タイプ以外の一般的な減速機としては、ウォーム減速機や、超精密ウォーム減速機などを挙げることができるが、本発明では遊星タイプの減速機を用いることで、せん断応力の変動を顕著に改善することができる。本発明の製造方法におけるフィルム1m幅あたりに付与されるせん断応力の変動は、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが特に好ましい。なお、前記せん断応力の変動とは、モータートルクを製膜開始直後から24時間連続計測し、下記式(a)および(b)でそれぞれ計算される値AまたはBのうち、大きい値のことを言う。
式(a):
A=|{(モーター出力合計の瞬間最大値/モーター出力合計の平均値)−1}×100|
式(b):
B=|{(モーター出力合計の瞬間最小値/モーター出力合計の平均値)−1}×100|
前記遊星タイプの減速機としては、例えば、遊星ローラー減速機や遊星歯車減速機を挙げることができるが、本発明の製造方法では前記減速機が遊星ローラー減速機であることが、せん断応力の変動が小さい観点から、好ましい。このような遊星ローラー減速機としては、出力やトルクが継時的に変化しても減速比が変動せず、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はなく、公知の遊星ローラー減速機を用いることができる。具体的な遊星ローラー減速機としては、例えば、三菱重工社製、三菱遊星ローラー減・増速機(商品名)を挙げることができる。また、減速機とロール回転軸はトルクの変動を小さくする点から直結させることが好ましいが、装置の干渉の問題からシュミットカップリング等による連結を行なうことも出来る。
本発明の製造方法では、前記減速機が遊星ローラー減速機であり、かつ、該遊星ローラー減速機をメカロス変動防止制御することがせん断応力の変動が小さい観点から好ましい。
前記メカロス変動防止制御の方法としては特に制限はなく、この分野における公知の方法を採用することができるが、±5℃以内の温度調節設備によりメカロス変動防止制御を行うことが経時的なせん断応力の変動が小さい観点から、好ましい。前記温度調節設備は、±3℃以内の温度調節が可能であることがより好ましく、±2℃以内の温度調節が可能であるであることが特に好ましい。
前記温度調節設備としては、例えば、ファンによる空冷あるいは、温度制御された媒体の循環による温度制御などを挙げることができ、その中でも、減速機内部の潤滑脂の温度を測定し、一定温度に制御する方法を用いることが好ましい。
なお、前記駆動モーターとしては特に制限はなく、公知のタッチロール製膜用のロールを駆動する駆動モーターなどを用いることができる。
本発明の製造方法では、前記駆動モーターを定格出力の20%〜80%で駆動させることによって、本発明の製造方法で規定する範囲のせん断応力を付与することが、せん断応力変動を小さくする観点から好ましい。前記駆動モーターは、定格出力の25〜75%で駆動させることがより好ましく、定格出力の30〜70%で駆動させることが特に好ましい。
また、前記挟圧面の移動速度の継時的な変動は、1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.6%以下であることが特に好ましい。なお、前記挟圧面の移動速度の継時的な変動は、フィルムのMD方向40cm以上上記範囲であることが好ましく、100cm以上上記範囲であることがより好ましく、1000cm以上上記範囲であることが特に好ましい。
(ニップ長)
本発明の製造方法では、前記第一挟圧面と前記第二挟圧面との間で挟圧される前記溶融物の挟圧装置通過方向の長さ(以下、ニップ長、とも言う)が、0mmより大きく2mm以内であることが好ましい。このように前記ニップ長を短くすることで、挟圧装置間で線圧を受ける部分が面接触から線接触に近づけることができ、高線圧を前記溶融物にかけることができる。また、このようなニップ長とすることで、得られるフィルムのRe[0°]のフィルムMD方向のムラや、γのフィルムMD方向のムラを小さくすることができる。
前記ニップ長は、0.3〜1.8mmであることがより好ましく、0.5〜1.5mmであることが特に好ましい。
(2つのロールを用いたキャスト)
前記供給された熱可塑性樹脂の溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。
なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャストロールを複数有している場合、最上流の前記熱可塑性樹脂組成物供給手段(例えば、ダイ)に最も近いキャストロールのことをチルロールという。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
本発明の製造方法では、前記供給手段から押し出された溶融物の着地点に特に制限はなく、該供給手段から押出されたメルトの着地点と、該タッチロールと該キャストロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。 前記メルトの着地点とは、供給手段から押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
前記2つのロール(例えば、タッチロールやキャストロール)の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
本発明の製造方法では、前記2つのロールのそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
互いに異なる周速で回転している2つのロール間のロール圧力の好ましい範囲は、前記挟圧面間の圧力における好ましい範囲と同様である。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記2つのロールの表面の材質は金属であることが好ましく、前記ショア硬さを達成する観点から、好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、前記2つのロールの表面の材質は金属であるときは、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくい。さらに、前記2つのロールは剛性であることが好ましい。なお、本明細書において挟圧面もしくはロールが「剛性」であるとは、例えばロールの場合であれば剛性素材外筒厚み/ロール直径の比が1/80程度以上であることを表し、タッチロールの一部に剛性材料を用いている場合であっても、必ずしも挟圧面もしくはタッチロールが「剛性」であるとは限らない。また、ロールが「弾性」であるとは、剛性素材外筒厚み/ロール直径の比が1/80程度未満であることを表し、例えばタッチロールの一部に剛性材料を用いている場合を含むことがある。すなわち、タッチロール内部に弾性体層のように剛性材料を全く含まない層が厚く形成されているようなロールは、たとえ表面や内部に剛性材料層が形成されていたとしても全体としては弾性変形しうるので、弾性ロールに含まれることがある。また、芯部がゴムで表面が剛性材料であるロール(外筒として、表面金属リングを有するロール)の場合、表面の金属は変形しないが、回転軸と表面金属リングの中心がずれるため、上記剛性素材外筒厚み/ロール直径の比が1/80程度以上でない限り、弾性ロールに含まれることがある。
一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、前記本発明の製造条件を達成できれば特に制限なく用いることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
本発明の製造方法では、前記2つのロールが少なくとも芯部と外筒を有し、前記2つのロールの外筒の平均肉厚が、ともに0.3mm以上であることが、ロールたわみによる線圧の不均一化防止の観点から好ましい。前記2つのロールの外筒の平均肉厚は、ともに2〜45mmであることがレターデーションを大きく発現し、かつ|Re[40°]−Re[−40°]|の値を大きくする観点からより好ましく、ともに5〜35mmであることが特に好ましい。さらに、前記第一挟圧面および前記第二挟圧面がロール外筒肉厚が10mm以上の一対のロールであり、かつ、該一対のロールによって挟圧される前記フィルムのニップ長が0mmより大きく2mm以内であることがより特に好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、前記2つのロールとして、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が200〜1500mm、より好ましくは300〜1000mm、特に好ましくは350〜800mm、より特に好ましくは350〜600mm、さらに好ましくは350〜500mmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、Re[40°]とRe[−40°]の差が大きなフィルムを、しかもRe[0°]、Re[40°]およびRe[−40°]のバラツキを抑制しつつ製造することができる。また、ロールのたわみも低減できるため好ましい。なお、本発明の製造方法では、前記2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
本発明の製造方法では、前記2つのロールが、互いに異なる周速で駆動される。前記2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]およびγのフィルムMD方向のムラを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロールの周速度比を調整することで、溶融樹脂が2つのロールを通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。2つのロールの周速比は、0.60〜0.99とすることが好ましく、0.75〜0.98とすることがより好ましい。ここで、2つのロールの周速比とは、遅いロールの周速度/速いロールの周速度を意味する。
2つのロールの周速比が0.60以上であれば、得られるフィルムのγは大きくなり、前記式(II)を満たし易くなるため好ましい。周速比が0.60以上であれば、得られるフィルムの表面に傷が付きにくく好ましい。前記2つのロールの周速比を0.60〜0.99にすると、フィルム表面に傷が付き難く、平滑性が良好なフィルムを安定的に製造することができるため好ましい。
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
さらにγを大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、はTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。2つのロール表面温度はバンクの安定性の点から、遅いロールの温度を高温にすることが好ましい。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
(保温・加温)
また、本発明の製造方法では、前記供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物が、前記供給手段から前記挟圧装置の挟圧面に達するまでの間、前記溶融物を加熱する工程または保温する工程のうち少なくとも一方の工程を含むことが好ましい。このようにしてメルト幅方向の温度分布(温度むら)を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、前記エアーギャップの少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、前記光学特性の発現量を満たし、かつ光学特性むらが少ない本発明のフィルムを作成しやすい効果がある。
また、溶融物を加熱する場合、特に加熱手段に制限はなく、例えば公知のヒーター等を用いることができる。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
前記遮蔽部材は、例えば、2つのロールの両端部よりも内側で、且つ熱可塑性樹脂組成物の供給手段(例えば、ダイ)の幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、供給手段の側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、供給手段の放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、供給手段側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
よりγのフィルムMD方向のムラを低減する方法として、前記溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
このようにして製膜した後、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(熱可塑性樹脂組成物の供給手段、例えばダイ、に近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。厚み出し加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/m幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/m幅である。
本発明の製造方法で得られるフィルムの未延伸時の膜厚は、200μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましく、80μm以下であることがより特に好ましい。
<延伸、緩和処理>
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側の周速を入口側の周速より速くすることで達成できる。この際、間の間隔(L)と延伸前のフイルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。
本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号公報に記載の方法である。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
[液晶表示板用光学補償フィルム]
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができ、上記のように偏光板や液晶表示装置に組み込むための液晶表示板用光学補償フィルムとしてより特に好ましく用いることができる。
(積層フィルム)
本発明のフィルムにさらに公知の光学異方性層を付与することで積層フィルムとすることもでき、積層フィルムとして、液晶表示板用光学補償フィルムに用いることもできる。すなわち、本発明のフィルムは、本発明のフィルムを基材として用いた液晶表示板用光学補償フィルムとしても好ましく用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
[製造例1] 環状オレフィン共重合体(付加重合型ノルボルネン樹脂COC)のペレットの製造
環状オレフィン共重合体(COC)として、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は130℃であった。
[製造例2] ポリカーボネートのペレットの製造
ポリカーボネート(PC)として、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は145℃であった。
[製造例3] セルロースアシレート系樹脂のペレットの製造
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)を特開2006−348123号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAPの組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.60、全アシル置換度2.75、数平均重合度DPn=118で、結晶性であり、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂の結晶化温度は200℃であった。また、当該樹脂のガラス転移点は135℃であった。
[製造例4] アクリル系樹脂のペレットの製造
アクリル系樹脂として、スチレン−アクリル系共重合体である旭化成ケミカルズ社製の「デルペット980N」のペレットを用いた。なお、「デルペット980N」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は123℃であった。
[実施例1]
(フィルムの作製)
下記表1に記載のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥し、260℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを押出し温度(吐出温度)260℃で、幅1900mm、リップギャップ1mmのダイから押出した。
この後、タッチロールとチルロールで挟圧した部分の中央にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、幅2000mm、直径400mmのHCrメッキされた金属製、ショア硬度60HSのチルロールに下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅2000mm、直径350mmのHCrメッキされた金属製、ショア硬度40HS、下記表1に記載のロール外筒厚みのタッチロールを接触させた。これらの挟圧面を用い、タッチロールの周速度を13.51m/分、チルロールの周速度を13m/分、タッチロールとチルロールの周速度比を下記表1に記載の条件、タッチ圧力を下記表1に記載の条件に設定して製膜した。タッチ圧力は、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を、メルトのない状態で等周速(5m/分)でともに25℃に制御した二つの挟圧面間に挟みこむことで測定し、その値を製膜時の圧力とした。また、減速機として下記表1に記載の遊星ローラー減速機(三菱重工社製)を用いて、下記表1に記載の範囲に減速機の温度変動を制御し、フィルム1mあたりのせん断応力を下記表に記載の値とし、これらの条件を達成できるように制御した。また、このときにタッチロール側およびチルロール側にそれぞれ用いた駆動モーターサーボモーターHC−SFS352(B)(三菱電機株式会社製)の出力は、駆動モーター定格出力に対し、それぞれ表1に記載の割合の出力とした。このとき、フィルム状の溶融物のニップ幅は、下記表1に記載の値であった。なお、前記減速機の温度変動は、ファンによる空冷により、減速機内部のオイル温度を一定にすることによって制御および測定した。なお、タッチロール、チルロールの温度は135℃とし、ダイとメルト着地点の距離を100mmと設定した。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であったが、ダイと両挟圧面間に遮風板を配置し、溶融物の保温をしながら製膜した。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅は1600mmとし、下記表1に記載の製膜速度(チルロール速度)で450m巻き取った。製膜後のフィルムの厚みは下記表1に記載の値とし、実施例1のフィルムを作製した。また、製膜開始から24時間後までの間におけるモータートルクを前述の測定法にしたがって測定および記録し、前記式(a)および(b)に従ってせん断応力変動を求め、あわせて表1に記載した。
(フィルムの光学特性)
得られた実施例1のフィルムの光学特性を前述の方法で測定した。得られた結果を下記表1に記載した。なお、本発明のフィルムのRe[40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向である。
(フィルムの面状)
実施例1のフィルムの面状を以下の基準に従って測定し、評価した。
○:フィルム表面に蛍光灯のあかりを映し、20cm×20cmのフィルム20枚あたりの目視にて視認できる歪みが1個以下のもの。
×:フィルム表面に蛍光灯のあかりを映し、20cm×20cmのフィルム20枚あたりの目視にて視認できる歪みが2個以上のもの。
得られた結果を、表1に記載した。
[実施例2〜10、比較例1〜5]
用いた樹脂と製膜条件を下記表1に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のフィルムを得た。なお、精密級ウォーム減速機は三菱重工株式会社製のDUHW125(減速比50)を用い、ウォーム減速機は三菱重工株式会社製のSUHW125(減速比50)を用い、遊星歯車減速機はセイサ株式会社製のコンパワー遊星歯車減速機DP−1070(減速比50)を用いた。また、実施例7および比較例5は減速機を温度調節せずに製膜したものである。
各実施例および比較例のフィルムの各種光学特性および面状の評価結果を下記表1に示す。
Figure 2011056796
表1から、実施例1〜10のフィルムは、いずれもRe[0°]およびγが良好であり、Re[0°]のフィルムMD方向のムラおよびγのフィルムMD方向のムラが小さく、面状も良好であることがわかった。
一方、比較例1はタッチロールとしてゴムロールに金属スリーブ(なお、表1中、ロール外筒厚みは金属スリーブの厚みを表す)を装着させたものを用いたものであり、圧力、フィルム1m幅あたりのせん断応力が本発明の範囲を外れる条件となり、Re[0°]およびγが本発明の範囲外であった。比較例2はタッチロールとしてゴムロールを用いたものであり、圧力、フィルム1m幅あたりのせん断応力が本発明の範囲を外れる条件となり、Re[0°]およびγが本発明の範囲外であった。比較例3はフィルム1m幅あたりのせん断応力を本発明の範囲を外れる条件としたものであり、得られたフィルムは面状が悪かった。比較例4は、減速機として精密級ウォーム減速機を用いたものであり、Re[0°]のフィルムMD方向のムラおよびγのフィルムMD方向のムラが大きかった。比較例5はウォーム減速機を用いたものであり、Re[0°]のフィルムMD方向のムラおよびγのフィルムMD方向のムラが大きかった。比較例6は挟圧面間の圧力を本発明の範囲を外れる条件としたものであり、得られたフィルムはRe[0°]およびγが本発明の範囲外な上、Re[0°]のフィルムMD方向のムラが大きく、面状も悪かった。比較例7はフィルム1m幅あたりのせん断応力を本発明の範囲を外れる条件としたものであり、γが本発明の範囲外であった。
以上より、本発明のフィルムは、Re[0°]およびγが良好であり、Re[0°]のフィルムMD方向のムラおよびγのフィルムMD方向のムラが小さく、面状も良好であることがわかった。さらに、本発明のフィルムはRe[0°]の短周期変動やγの短周期変動のみならず、それぞれの経時変化ムラも3nm以下であり良好であった。また、本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。
[実施例101、比較例101]
(偏光板の作製)
作成した実施例1のフィルムおよび比較例1のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、本発明1または比較例1のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1のフィルムを用いた偏光板PL1および比較例1のフィルムを用いたPL2をそれぞれ2枚ずつ作製した。
(半透過型ECBモード液晶表示装置の作製と評価)
次に、上記偏光板を用いてECB型の半透過型液晶表示装置を作製した。使用した液晶セルは、液晶材料としてZLI−1695(Merck社製)を用い、液晶層厚は反射電極領域(反射表示部)で2.4μm、透過電極領域(透過表示部)で4.9μmとした。液晶層の基板両界面のプレチルト角は2度であり、液晶セルのΔndは、反射表示部で略150nm、透過表示部で略320nmであった。
この液晶セルの上下に、上記作製した2種の偏光板を、図1に示すように配置した。偏光板P1およびP2中の矢印はそれぞれの吸収軸を、位相差フィルム中の矢印はそれぞれの遅相軸を、ECBセルの矢印はそれぞれの対向面に施されたラビング処理のラビング方向を示す。ここで、12時方向が0°、時計回りが+である。
本発明の実施例である液晶表示装置LCD1について、白黒表示時のコントラスト比が10以上の視野角度を求めたところ、LCD1は左右上下のいずれの方向も視野角度280°以上を達成していた。一方、比較例1のフィルムを用いたLCD2は、コントラスト比10以上の視野角度が、上下左右のいずれの方向も260°未満であった。
このように、本発明のフィルムを用いると、液晶表示装置に組み込んだ場合、大きな視野角補償を行うことができる。

Claims (13)

  1. 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程を含む光学フィルムの製造方法であって、
    前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くし、
    前記第一挟圧面と前記第二挟圧面との間の圧力を20MPa以上に制御し、
    前記第一挟圧面と前記第二挟圧面によって該フィルムに1m幅あたり3000〜30000Nのせん断応力を付与するように制御し、
    前記第一挟圧面および前記第二挟圧面をそれぞれ遊星タイプの減速機を介して連結される駆動モーターによって駆動させる、光学フィルムの製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記減速機が遊星ローラー減速機であり、かつ、該遊星ローラー減速機をメカロス変動防止制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記メカロス変動防止制御を、±5℃以内の温度調節設備により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記駆動モーターを定格出力の20%〜80%で駆動させることによって、前記せん断応力を付与することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記第一挟圧面および前記第二挟圧面がロール外筒平均肉厚10mm以上の一対の金属製ロールであり、かつ、該一対のロールによって挟圧される前記フィルムのニップ長が0mmより大きく2mm以内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記一対のロールが、剛性素材外筒厚み/ロール直径の比が1/80以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂またはアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が、以下の関係式(I)および(II)を満たし、かつRe[0°]のフィルムMD方向のムラと|Re[+40°]−Re[−40°]|のフィルムMD方向のムラがともに3nm以内であることを特徴とする光学フィルム。
    60nm≦Re[0°]≦300nm (I)
    40nm≦γ≦300nm (II)
    γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (II’)
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルム。
  11. 請求項9または10に記載の光学フィルムを基材に用いたことを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
  12. 請求項9または10に記載の光学フィルム、あるいは、請求項11に記載の液晶表示板用光学補償フィルムを少なくとも1つ用いたことを特徴とする偏光板。
  13. 請求項9または10に記載の光学フィルム、あるいは、請求項11に記載の液晶表示板用光学補償フィルムを少なくとも1つ用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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