JP5408923B2 - 熱可塑性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は熱可塑性フィルムの製造方法に関する。また、該製造方法で作成された熱可塑性フィルム、並びに該熱可塑性フィルムを有する偏光板、液晶表示装置にも関する。
近年、液晶ディスプレイ市場の隆盛に伴い、様々なフィルムが開発されている。例えば、特許文献1〜3には、傾斜型位相差フィルムが開示されている。
例えば、特許文献1には、フィルムを製膜した後、周速度の異なる二つのロール間にフィルムを通すことで該フィルムにせん断力を付与し、フィルムの厚み方向の光軸を傾斜させたフィルムを作成する方法と、TN型液晶ディスプレイへの応用が記載されている。しかし、前記文献1では溶融物に対して適用することも示唆していなかった。
これに対し、特許文献2では、製膜中にダイから押出したメルトを金属でコートしたゴムロールと金属ロールで挟み、これらに周速差を与えることで光軸を傾斜させたフィルムが開示されている。また、特許文献3では、製膜中にダイから押出したメルトをゴムで表面を被覆した金属ロールとゴムで被覆していないロールで挟み、これらに周速差を与えることで光軸を傾斜させたフィルムが開示されている。
しかし、液晶ディスプレイに単に光軸が傾斜したフィルムを使用しただけでは、光学補償の効果は十分ではない。例えば、特許文献3ではその実施例で光軸が11.5〜18.2°傾斜した光学フィルムが開示されているが、光軸傾斜角度と液晶ディスプレイの光学補償との関係については何ら記載されていない。また、実際に、透過型のTNやECB液晶ディスプレイや、半透過型のECB液晶ディスプレイの光学補償を行うには、液晶セルのリタデーションを補償できるまでもの大きな位相差を有する、さらに位相差の傾斜構造の大きなフィルムが望まれていた。
しかしながら、フィルムの熱寸法変化率を制御した位相差の傾斜構造の大きなフィルムは従来知られていなかった。また、これらの文献においても熱寸法変化率については検討されていない。
また、位相差の傾斜構造の大きなフィルムの製造方法分野において、特定の温度下で張力をかけながら熱処理を行う工程についても従来知られておらず、そのような工程の必要性も検討されていなかった。
特開平6−22213号公報 特開2003−25414号公報 特開2007−38646号公報
本発明者らが前記特許文献1〜3に記載の製造方法で製造したフィルムを液晶表示装置に用いたところ、液晶表示装置の対角線状に表示むらが発生することが判明した。
一方、このような熱寸法変化率は延伸フィルムの場合において顕著に発生することは従来から知られていたが、2つのロールで挟んで周速差を与えることによりズリ(剪断力)を加えて成膜した位相差の傾斜構造の大きな未延伸フィルムにおいては、詳しく検討されてこなかった。また、従来このような製造方法ではズリを加えて製膜した時点、すなわち未延伸フィルムでは熱収縮は発生しないと考えられていた。これに対し、本発明者は、ズリを加えて製造された未延伸フィルムにおいても熱収縮が発生するという新規課題を見出した。また、さらなる検討の結果、前記特許文献1〜3に記載の製造方法では得られるフィルムの熱寸法変化率が大きいという問題があることを見出した。
前記新規課題に対し、本発明者らは位相差の傾斜構造の大きなフィルムの熱寸法変化率を改善することで、大きな位相差の傾斜構造を有し、かつ、液晶表示装置に使用した際に対角線状に表示むらの発生が抑制された熱可塑性フィルムを製造できることを見出した。
本発明の第一の目的は、大きな位相差の傾斜構造を有し、熱寸法変化率が改善されており、かつ、液晶表示装置に使用した際に対角線状に表示むらの発生しない熱可塑性フィルムおよびその製造方法を提供することにある。本発明の第二の目的は、該フィルムを用いた偏光板と、該フィルムを用いた対角線状に表示むらの発生が抑制された液晶表示装置とを提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法において、
前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くし、
さらにフィルム状に成形した溶融物をTg−15℃〜Tg+30℃の温度下においてフィルム幅1m当たり0.5〜15kgf/mの搬送張力で搬送する工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
[2] 前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする[1]に記載のフィルムの製造方法。
[3] 下記式(A)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が1〜40%であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
式(A)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
[4] 前記挟圧装置によって該溶融物にかかる圧力が21〜350MPaであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[5] 前記溶融押出しされた溶融物を互いに周速の異なるチルロールとタッチロール間を通過させてフィルム状に成形する工程において、フィルム状溶融物の幅を1〜4mとすることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[6] 製膜速度10〜50m/分で製膜することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[7] 前記タッチロールが厚み6〜45mmの金属ロールであることを特徴とする[2]〜[6]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[8] フィルム状に成形した後のフィルムを少なくとも1方向に1.05〜4倍延伸する工程を含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の製造方法で製膜されたことを特徴とする記載の熱可塑性フィルム。
[10] 105℃24時間経過前後の熱寸法変化率が0〜0.5%であり、下記式(I)および(II)式を満足する熱可塑性フィルム。
50nm≦Re[0°]≦300nm 式(I)
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおける正面方向のレターデーションを表す。)
40nm≦γ≦300nm 式(II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
(式(II)および(II’)中、Re[+40°]は該法線に対して+40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して−40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表す。ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である。)
[11] 厚みが10〜90μmであることを特徴とする[9]または[10]に記載の熱可塑性フィルム
[12] 厚み方向のレターデーションRthが40〜300nmであることを特徴とする請求項[9]〜[11]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルム。
[13] 前記熱可塑性フィルムがポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂の少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする[9]〜[12]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルム。
[14] [9]〜[13]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを少なくとも1方向に1.05〜4倍延伸されてなることを特徴とする熱可塑性フィルム。
[15] [9]〜[14]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[16] [9]〜[14]のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明の熱可塑性フィルムは、大きな位相差の傾斜構造を有し、かつ、液晶表示装置に使用した際に対角線状に表示むらが発生せず良好な視覚特性を達成できる。また、本発明の熱可塑性フィルムは高熱環境下における熱寸法変化率が低くなるように制御されており、液晶表示装置に使用した際の対角線状の表示むらの経時による発生がさらに抑制される。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向を意味する。
また、「本発明の熱可塑性フィルム」を「本発明のフィルム」ということがあり、「本発明の熱可塑性フィルムの製造方法」を「本発明の製造方法」ということがある。
本明細書中において、ガラス転移温度のことをTgともいう。
[熱可塑性フィルム]
本発明の熱可塑性フィルムは、大きな位相差の傾斜構造を有し、かつ、液晶表示装置に使用した際に対角線状に表示むらが発生せず良好な視覚特性を達成できることを特徴とする。以下、本発明の熱可塑性フィルムについて説明する。
(熱寸法変化率)
本発明のフィルムは、105℃24時間経過前後の熱寸法変化率が0〜0.5%であり、より好ましくは0〜0.3%、さらに好ましくは0〜0.2%である。前記熱寸法変化率を小さくすると、液晶上のガラス基板に貼り付けた際に経時によって発生するフィルムの収縮による応力で発現するフィルムのレターデーションむらを低減でき、対角線状の表示むらを低減できる。
従来、延伸熱可塑性フィルム分野などの他の熱可塑性フィルム分野では、80℃24時間における熱寸法変化率を検討されてきたが、本発明では105℃24時間という従来に比べて強い条件下でも熱寸法変化率が十分に小さい。
熱寸法変化率が0.5%以下であれば、収縮応力による表示むらが発生しにくく好ましい。一方、
0%以上であると、フィルムの緩和処理が強すぎない程度であり、形成したフィルム中の配向構造によるγ、ReおよびRthが低下しにくいため、好ましい。
(面内方向のレターデーションRe)
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含有し、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、該法線に対して+40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[−40°]が、以下の式(I)および式(II)を共に満たすことを特徴とする。
50nm≦Re[0°]≦300nm 式(I)
40nm≦γ≦300nm 式(II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
本発明のフィルムは好ましくは下記式(III)および(IV)をともに満足するものである。
70nm≦Re[0°]≦250nm 式(III)
60nm≦γ≦250nm 式(IV)
さらに好ましくは下記式(V)および(VI)をともに満足するものである。
100nm≦Re[0°]≦200nm 式(V)
80nm≦γ≦180nm 式(VI)
ここでγが大きいことは、斜めから覗いた時の左右でReが異なることを意味し、すなわちフィルム中に厚み方向から見た際に傾斜構造が形成されたことを意味する。この傾斜構造が液晶表示装置中の液晶配向と相補し視野角を改善する効果を有する。γが40〜300nmであれば液晶表示装置に組み込んだ場合の視野角が改善するため好ましい。ここで、視野角が減少した領域、すなわち斜めから観察した際にコントラストが低下して画像が見え難くなった領域が存在しなければ、このような対角線状の表示むらが視認されにくくなる。このため、上記範囲にすることで表示むらの視認性をも低下させることができることとなり好ましい。
γ、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
γおよびRe[0°]のバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には、±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることがさらに好ましい。また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、表示ムラの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
上記光学特性値は、以下の方法により測定することができる。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、|Re[+40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
(膜厚方向のレターデーションRth)
本発明のフィルムは、膜厚方向のレターデーションが40〜300nmであることが好ましく、50nm〜200nmであることがより好ましく、50nm〜150nmであることが特に好ましい。Rthが40〜300nmであれば液晶表示装置に組み込んだ場合の視野角が改善するため好ましい。ここで、視野角が減少した領域、すなわち斜めから観察した際にコントラストが低下して画像が見え難くなった領域が存在しなければ、このような対角線状の表示むらが視認されにくくなる。このため、上記範囲にすることで表示むらの視認性をも低下させることができ、好ましい。
前記Rthは、屈折率楕円体がβ°一様傾斜したことを仮定し、屈折率楕円体の各方位の屈折率nx、ny、nzを数値計算し、下記数式(A)に代入して、求めることができる。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
本発明のフィルムでは、nyはフィルム幅方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されているが、例えば、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値および平均屈折率naveの値および膜厚値dから、以下の数式(B)を用いて計算することが出来る。
Figure 0005408923
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、数式(B)中のβは、屈折率楕円体が一様傾斜したことを仮定した場合の傾斜角度を表し、傾斜型位相差フィルムの構造を単純に把握するときに使用される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
(膜厚)
本発明のフィルムの膜厚は、10〜90μmであることが好ましく、20μm〜80μmであることがより好ましく、25μm〜70μmであることが特に好ましい。前記膜厚が90μm以下であればフィルムの弾性が高くなりすぎず、収縮応力も増加し過ぎず、液晶表示板に貼りつけた際にレターデーションむらが大きくなりすぎないため、対角線状の表示むらも大きくなりにくく好ましい。一方、10μm以上であれば液晶上のガラスに貼り付ける際の張力でフィルムが伸ばされることに由来するレターデーションむらが発生しにくくなり、対角線状の表示むらが減少するため好ましい。
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂は、2つのロールでせん断変形を付加した場合、遅相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]―Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができ、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]―Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができる。
本発明のフィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正または負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることが出来る。
本発明に使用可能な環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られたノルボルネン系樹脂が含まれる。また、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なセルロースアシレート系樹脂の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基および芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選択される1種または2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基およびプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。前記CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
本発明の製造方法を含む溶融押出し法によりフィルムを作製する場合は、用いるセルロースアシレートは、以下の式(S−1)および(S−2)を満足することが好ましい。以下の式を満足するセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
前記式(S−1)および(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式(S−3)および(S−4)を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。
式(S−3)2.3≦X+Y≦2.95
式(S−4)1.0≦Y≦2.95
下記式(S−5)および(S−6)を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
式(S−5)2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6)2.0≦Y≦2.9
セルロースアシレート系樹脂の質量平均重合度および数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、および数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート系樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)および(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
本発明に使用可能なポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報、特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えばスチレン-アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−無水マレイン酸系樹脂がフィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
Figure 0005408923
前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂であることが好ましく、高透明性、複屈折発現性および耐熱性の観点からノルボルネン系樹脂であることがより好ましく、付加重合系のノルボルネン系樹脂であることが特に好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
(添加剤)
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
安定化剤:
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO-412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
紫外線吸収剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
光安定化剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定か剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
可塑剤:
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
微粒子:
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
光学調整剤:
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
[熱可塑性フィルムの製造方法]
本発明の製造方法は、 熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物(以下、メルトともいう)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法において、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くし、さらにフィルム状に成形した溶融物をTg−15℃〜Tg+30℃の温度下においてフィルム幅1m当たり0.5〜15kgf/mの搬送張力で搬送する工程を含むことを特徴とする。特に、本発明の製造方法は、フィルム状に成形した溶融物をTg−15℃〜Tg+30℃の温度下においてフィルム幅1m当たり0.5〜15kgf/mの張力で搬送する低張力熱処理工程に特徴を有する。前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、21〜350MPaの高圧を均一にかけられることから、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
なお、ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。
(溶融押出し)
本発明の製造方法では、まず、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を溶融押出しする。溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。
本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
<キャスト>
次に、熱可塑性樹脂の溶融物をダイからフィルム状に押し出し、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
本発明の製造方法では、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する際、挟圧装置間の圧力を21〜350MPaかけることが好ましい。前記圧力は21〜350MPaであることが好ましく、24〜210MPaであることがより好ましく、28〜140MPaであることが特に好ましい。前記挟圧装置間の圧力が21MPa以上であれば、γが本発明の範囲の下限を超えるため好ましく、熱寸法変化率も本発明の範囲の下限を超えるため好ましい。即ち、前記挟圧装置間の圧力が21MPa以上であれば、周速差の効果(ズリ)をフィルム(メルト)に十分伝播できる。この結果配向構造(傾斜構造)が十分大きく、γ、熱寸法変化率が本発明の範囲となる。前記挟圧装置間の圧力が350MPa以下であればこの逆の効果が同様に発生し、γ、熱寸法変化率が本発明の範囲の上限におさまるため好ましい。
本発明の製造方法では、下記式(A)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が1〜40%であることが好ましい。
式(A)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
さらに、本発明の製造方法では、挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差を与えることで、溶融樹脂が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造する。挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差は1〜40%であることが好ましく、1%〜30%であることがより好ましく、3%〜25%であることが特に好ましく、4%〜20%であることがより特に好ましい。前記周速差が1%〜40%であればγおよび熱寸法変化率を本発明のフィルムの範囲に制御でき、好ましい。
(吐出温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(ダイ出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、エアーギャップ(ダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、ダイと挟圧装置間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
(2つのロールを用いたキャスト)
前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流のダイに最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
本発明のアクリルフィルムの製造方法では、前記ダイから押し出された溶融物の着地点に特に制限はなく、該ダイから押出されたメルトの着地点と、該タッチロールと該キャストロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。
前記メルトの着地点とは、ダイから押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
(ロール)
前記2つのロールの表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
前記2つのロールのそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
本発明の製造方法では、互いに異なる周速で回転しているタッチロールとチルロールの間にタッチ圧をかけることが好ましい。前記タッチ圧は21〜350MPaであることが好ましく、24〜210MPaであることがより好ましく、28〜140MPaであることが特に好ましい。前記タッチ圧が21MPa以上であれば、γが本発明の範囲の下限を超えるため好ましく、熱寸法変化率も本発明の範囲の下限を超えるため好ましい。即ち、タッチ圧が21MPa以上であれば、周速差の効果(ズリ)をフィルム(メルト)に十分伝播できる。この結果配向構造(傾斜構造)が十分大きく、γ、熱寸法変化率が本発明の範囲となる。タッチ圧が350MPa以下であればこの逆の効果が同様に発生し、γ、熱寸法変化率が本発明の範囲の上限におさまるため好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記タッチロールの材質は、金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、2つのロールの材質が金属であると、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。さらに、本発明の製造方法において高速条件で搬送した場合はタッチロールが歪み易くなるが、金属ロールであれば剛性が十分であるため歪みにくく、タッチむらが発生しにくく、局部的に大きな熱寸法変化率の所も発生しにくくなる。また、製膜幅を広幅化するとタッチロールを押さえつける力が大きくなり、これによりタッチロールが歪み易くなるが、同様に金属ロールであれば剛性が十分であるため歪みにくく、タッチむらが発生しにくく、局部的に大きな熱寸法変化率の所も発生しにくくなる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
前記タッチロールの厚みは6mm〜45mmであることが好ましく、10mm〜40mmであることがより好ましく、15mm〜35mmであることが特に好ましい。タッチロールの厚みが6mm以上であれば、ロールが撓みにくく、タッチムラが発生しにくくなり、最終的に得られるフィルムに局所的な熱寸法収縮率の大きな部分が発生しにくくなるために好ましい。45mm以下であれば、ロールが剛直すぎず、メルトの厚みむら等に応じて適宜微妙に変形できるためタッチがムラが発生しにくくなり、最終的に得られるフィルムに局所的な熱寸法収縮率の大きな部分が発生しにくくなるために好ましい。
従来金属製のタッチロールとしては、特開平11−235747号公報のように2〜5mmと薄いものや、カレンダーロールのように厚み50mm以上のものが広く用いられていた。本発明の製造方法では、従来用いられてこなかった範囲の厚みのロールを用いることで本発明の効果が得られることを見出したことに特徴がある。
さらに、このような範囲の厚みのタッチロールを用いることにより、製膜速度の向上と製膜幅を広くすることもできるため好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物を通過させるタッチロールとチルロールの周速差を調整することで、溶融樹脂が2つのロールを通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造する。タッチロールとチルロールの周速差は1〜40%であることが好ましく、1%〜30%であることがより好ましく、3%〜25%であることが特に好ましく、4%〜20%であることがより特に好ましい。前記周速差が1%〜40%であればγおよび熱寸法変化率を本発明のフィルムの範囲に制御でき、好ましい。なお、本明細書中における周速差は、周速が速いロールを100%としたときのパーセンテージで表したものである。
本発明のフィルムを得るためには、前記二つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、前記2つのロールとして、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が350〜600nm、より好ましくは350〜500nmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、Re[+40°]とRe[−40°]の差が大きなフィルムを、しかもRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、前記2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
本発明の製造方法では、前記2つのロールが、互いに異なる周速で駆動される。前記2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
さらにRe[40°]とRe[−40°]の差を大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、はTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
(メルト幅)
本発明の製造方法では、前記フィルム状の溶融物の幅は1m〜4mであることが好ましく、1.2m〜3.5mであることがより好ましく、1.4m〜3mであることが特に好ましい。前記フィルム状の溶融物の幅をこのような範囲の広幅とすることで、前記低張力熱処理工程を効果的に行うことができる。すなわち、前記幅が1m以上であれば、搬送張力を大きくできるため、搬送中に搬送張力がぶれにくくなり、熱寸法変化率のむらが生じにくくなり好ましい。前記幅が4m以下であれば、搬送中に空気を巻き込みばたつきにくく、搬送張力にむらが発生しにくくなり、熱寸法変化率のむらが生じにくくなり好ましい。
なお、傾斜構造が大きい熱可塑性フィルム分野ではこのような広幅製膜は周知ではなく、例えば前記特開2007−38646号公報では0.65m以下のメルト幅で製造を行っている。
また、本発明の製造方法では、ダイから溶融押出しされ2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物を保温し、幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、溶融物のダイと2つのロールとの間の通路の少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
前記遮蔽部材は、例えば、2つのロールの両端部よりも内側で、且つダイの幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、ダイの側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、ダイの放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、ダイ側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、ダイの側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
よりRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキをなくす方法として、フィルム状の溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
このようにして製膜した後、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
本発明の製造方法では、製膜速度が10〜50m/分であることが好ましく、15〜40m/分であることがより好ましく、20〜35m/分であることが特に好ましい。このように高速で製膜すると、ダイとタッチロールでズリが加えられる時間が短く、残留歪が発生し難く、これに起因する熱寸法変化が発生し難く好ましい。詳しくは、前記製膜速度が50m/分以下であればダイから押出されたメルトがある程度放冷されてからタッチロール、冷却(チル)ロールに接触するため、その後タッチロールからメルトから剥離する際にタッチロールに粘着しにくくなり、熱寸法変化率抑制でき好ましい。その結果剥がす応力を下げることができ、得られたフィルムに残留歪を蓄えにくくなる。一方、前記製膜速度が10m/分以上であればタッチロール、チルロールに接触する際にメルトが放冷されすぎない程度の低温となっており、硬くなりすぎていない。そのため周速差で変形を与えるのに大きな力が必要とならず、得られたフィルムに残留歪を蓄えにくくなり、熱寸法変化率抑制でき好ましい。
巻き取り張力は、好ましくは2kgf/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5〜30kg/幅である。
本発明の製造方法で得られる光学フィルムの未延伸時の膜厚は、10〜90μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましく、25〜70μmであることが特に好ましい。
(延伸、緩和処理)
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側の周速を入口側の周速より速くすることで達成できる。この際、間の間隔(L)と延伸前のフイルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
本発明の製造方法では、フィルム状に成形した後のフィルムを少なくとも1方向に1.05倍〜4倍延伸することが好ましく、1.1倍〜3倍延伸することがより好ましく、1.2倍〜2.5倍延伸することが特に好ましい。延伸することで、得られたフィルムの熱寸法変化率の分布が全幅で均一になるため、好ましい。すなわち、熱寸法変化率が小さな部分も延伸で熱寸法変化率が大きくなり、全幅に渡り同じ熱寸法変化率となる。
また、延伸温度はTg−5℃〜Tg+50℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kgf/m〜20kgf/m、より好ましく1kgf/m〜16kgf/m、さらに好ましくは2kgf/m〜12kgf/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
(低張力熱処理工程)
本発明の製造方法は、フィルム状に成形した溶融物をTg−15℃〜Tg+30℃の温度下においてフィルム幅1m当たり0.5〜15kgf/mの搬送張力で搬送する低張力熱処理工程を含む。
前記低張力熱処理工程における熱処理温度は、Tg−10℃〜Tg+25℃であることが好ましく、Tg−5℃〜Tg+20℃であることがより好ましい。前記熱処理温度がTg+30℃以下であれば、低張力熱処理工程中に緩和が進みすぎず、形成した傾斜構造(γ)が低下しにくくなるため好ましい。一方、Tg−15℃以上であれば、内部の歪を効果的に開放することができ、熱寸法変化率を抑制することができ、好ましい。
前記低張力熱処理工程における搬送張力はフィルム幅1m当たり1〜12kgf/mであることが好ましく、1.5〜10kgf/mであることがより好ましい。前記搬送張力がフィルム幅1m当たり1kgf/m以上であれば、低張力熱処理工程中に緩和が進みすぎず、形成した傾斜構造(γ)が低下しにくくなるため好ましい。一方、フィルム幅1m当たり15kgf/m以下であれば、フィルム内部の歪を効果的に開放することができ、熱寸法変化率を抑制することができ、好ましい。
このような熱処理はフィルムに小さな張力しか加えないため、表裏の微妙な配向の差で形成された(タッチロールで周速差製膜した)フィルムに対しても、光学特性(γ)を変化させず、特に有効である。
本発明の製造方法において、前記低張力熱処理工程は、製膜したフィルムを延伸をする前に行っても、延伸した後に行ってもよいが、延伸の前に行うことが好ましい。さらに延伸前後両方で行うことも好ましい。延伸後に前記低張力熱処理工程を行うことにより、全幅に渡って均一な熱寸法変化率を達成でき、好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記光学フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。
本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号各公報に記載の方法である。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
[製造例1] 付加重合型ノルボルネン樹脂COCのペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、付加重合型ノルボルネン樹脂COC、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のTgは130℃であった。
[製造例2] 開環重合型ノルボルネン樹脂COP−1のペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、開環重合型ノルボルネン樹脂COP−1を国際公開WO98/14499号公報の実施例1に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のTgは136℃であった。
[製造例3] 開環重合型ノルボルネン樹脂COP−2のペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、開環重合型ノルボルネン樹脂COP−2を特開2007−38646号公報の実施例1に記載の樹脂(a−1)を該実施例に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のTgは130℃であった。
[製造例5] ポリカーボネート系樹脂PCのペレットの製造
ポリカーボネート系樹脂PCとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用い、これを常法に従ってペレット化した。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
[製造例5] アクリル系樹脂のペレットの製造
アクリル系樹脂として、特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル系化合物を得た。これを常法に従ってペレット化した。
[製造例6] セルロースアシレート樹脂CAP−1のペレットの製造
セルロースアセテートプロピオネートとして、樹脂CAP−1を特開2008−87398号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、ペレット化した。得られたCAP−1の組成は、アセチル化度1.95、プロピオニル化度0.7、全アシル置換度2.65であった。
[製造例7] セルロースアシレート樹脂CAP−2のペレットの製造
セルロースアセテートプロピオネートとして、樹脂CAP−2を特開2008−50562号公報の表3に記載の実施例101を該実施例に記載の方法に従って製造し、ペレット化した。得られたCAP−1の組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.55、全アシル置換度2.7であった。
[実施例1]
(熱可塑性フィルムの製膜)
前記付加重合型ノルボルネン樹脂COCのペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥し、260℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。ここで、ダイの温度はこれをダイから押出した。
この後、キャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側のキャストロール(チルロール)にタッチ圧力17.5MPaとなるようにシリンダーを設定し、タッチロールを接触させた。タッチロールは、金属製の厚み50mmのものを用いた。タッチロール温度はTg−5℃、すなわち125℃とし、チルロール温度はTg−10℃、すなわち120℃とした。これらのロールを用い、周速差を20%になるように設定して製膜した。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅0.8mとし、製膜速度8m/分で3000m巻き取った。製膜後のフィルムの厚みは100μmとした。なお、厚み30〜80μm、幅1〜2.5m、製膜速度10〜40m/分で実施したが、同様の結果が得られた。
(熱処理)
製膜後のフィルムをTg−15℃、すなわち115℃にて、フィルム幅1m当たりの搬送張力2kgf/mで熱処理を行った。得られたフィルムを実施例1のフィルムとした。
[実施例2〜44、比較例1〜5]
用いた樹脂、タッチロール厚み、タッチロール材質、タッチ圧、周速差、製膜幅、製膜速度、フィルム厚み、熱処理温度、熱処理搬送張力を下記表1または2に記載のとおりとした以外は実施例1にしたがって、実施例2〜42および比較例1〜4のフィルムを製造した。
比較例5では特開2007−38646号公報の実施例1を実施して比較例5のフィルムを製造した。また、実施例43および44は比較例5に本発明の熱処理を実施してそれぞれの実施例のフィルムを製造した。
(フィルム熱寸法変化率)
(1)各実施例および比較例のフィルムを幅方向に5等分した点において、MD方向、TD方向に下記のようにサンプリングした。
MD方向:MD25cm、TD5cm
TD方向:MD5cm、MD25cm
(2)25℃60%rhで3時間以上調湿した後、20cm基長のピンゲージで測長し、これを長さ=Lとした。
(3)前記サンプルフィルムを無張力下で、105℃24時間、空気恒温槽中に置いた。
(4)これを取り出し、25℃60%rhで3時間以上放置した後、20cm基長のピンゲージを用い測長し、これを長さ=L’とした。
(5)これらの値を用いて100×|L−L’|/Lを計算した。また、上記10点(2方向(MD,TD)×5点)で同様に測定し、この中の最大値を熱寸法変化率(%)とした。
(フィルムの評価)
各実施例および比較例のフィルムの熱寸法変化率および各種光学特性を下記表1および2に記載した。なお、光学特性の測定方法は前記のとおりであり、フィルムのRe[+40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向とした。また、γは前記式(II’)に基づく。
(偏光板の作製)
作成した各実施例および比較例のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、本発明1または比較例1のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1の光学フィルムを用いた偏光板PL1および比較例1の光学フィルムを用いたPL2をそれぞれ2枚ずつ作製した。これをガラス板に貼り付けた後、下記方法に従い黒表示の表示ムラを測定した。
(液晶表示板の対角線状表示ムラ評価)
得られた偏光板を105℃24時間放置後、さらに25℃相対湿度60%で3時間経過した。その後、真っ暗な部屋で上記クロスニコルに配置した際に光もれの発生している領域を目視で検出し、この領域の面積を偏光板の全面積で割り百分率で示した(クロスニコルとすることで、液晶表示板での黒表示を再現した)。このような測定は液晶表示板での黒表示の対角線状表示むらを反映しており、「液晶表示板の対角線状表示ムラ」として表し、得られた結果を下記表1および2に示した。なお、前記対角線状表示ムラは30%未満であることが実用上好ましく、20%未満であることがより好ましい。
(半透過型ECBモード液晶表示装置の作製)
次に、上記偏光板を用いてECB型の半透過型液晶表示装置を作製した。使用した液晶セルは、液晶材料としてZLI−1695(Merck社製)を用い、液晶層厚は反射電極領域(反射表示部)で2.4μm、透過電極領域(透過表示部)で4.9μmとした。液晶層の基板両界面のプレチルト角は2度であり、液晶セルのΔndは、反射表示部で略150nm、透過表示部で略320nmであった。
この液晶セルの上下に、上記作製した偏光板のうち代表例として実施例4、9、14、18、26および30の偏光板について、図1に示すように配置した。偏光板中の矢印はそれぞれの吸収軸を、位相差フィルム中の矢印はそれぞれの遅相軸を、ECBセルの矢印はそれぞれの対向面に施されたラビング処理のラビング方向を示す。ここで、12時方向が0°、時計回りが+である。
Figure 0005408923
Figure 0005408923
表1および表2より、熱処理工程を実施しなかった比較例5(特開2007−38646号公報の実施例1に相当)では、γ、Re、Rth、熱寸法変化率および対角線状表示ムラが最も悪かった。熱処理工程の温度をTg−16℃とした比較例1では、γ、Re、Rth、熱寸法変化率および対角線状表示ムラが悪く、熱処理工程の温度をTg+31℃とした比較例2では、γ、Reおよび対角線状表示ムラが悪かった。熱処理工程の搬送張力をフィルム幅1m当たり0.4kgf/mとした比較例3や、フィルム幅1m当たり16kgf/mとした比較例4では、ともにγ、Re、Rth、熱寸法変化率および対角線状表示ムラが悪かった。
一方、本発明の製造方法の熱処理工程を経て得られた実施例1〜44のフィルムはいずれも比較例1〜5よりも顕著に良好なγ、Re、Rthおよび熱寸法変化率を示し、液晶表示装置に組み込んだ際の対角線状表示ムラもいずれも顕著に良好であった。また、実施例43および44と比較例5の比較から、本発明の製造方法の条件で熱処理工程することにより、良好なγ、Re、Rth、熱寸法変化率および対角線状表示ムラを達成できることがわかった。また、各実施例について厚み30〜80μm、幅1〜2.5m、製膜速度10〜40m/分とした以外はそれぞれ各実施例と同様の条件とした場合も、同様の結果が得られた。
以上より、熱寸法変化は延伸フィルムの場合だけでなく、未延伸のズリ製膜フィルムにおいても発生しており、本発明の製造方法によれば顕著に熱寸法変化を抑制した熱可塑性フィルムを製造できることが判明した。
[実施例101〜108、比較例101〜103]
(熱可塑性フィルムの製膜および熱処理)
また、開環重合型ノルボルネン樹脂COP−2(特開2007−38646号公報の実施例1の樹脂(a−1))を用いた以外は実施例37と同様の製膜条件および熱処理条件とし、本発明の原反フィルムAを得た。
(延伸)
実施例37のフィルムをTg+10℃、すなわち140℃において、縦方向に下記表3に記載の条件で延伸し、実施例101〜105のフィルムを得た。一方、比較例5のフィルム(特開2007−38646号公報の実施例1のフィルム)を用い、特開2007−38646号公報実施例5〜7の条件で延紳し、比較例101〜103のフィルムを得た。これに対し本発明の原反フィルムAを用いた以外はそれぞれ比較例101〜103と同様にして、実施例106〜108のフィルムを得た。さらに、実施例101〜105のフィルムに対して延伸後に、さらに原反フィルムで行った条件と同じ条件で熱処理を行ったが、これらについても良好な結果が得られた。
(評価)
延伸後の各実施例および比較例のフィルムについてγ、Re、Rth、熱寸法変化率を求めた。また、実施例1と同様にして液晶表示装置に延伸後のフィルムを組み込み、対角線状表示ムラを求めた。これらの結果を下記表3に示す。
Figure 0005408923
表3より、延伸工程を経て得られた実施例101〜108のフィルムはいずれも良好なγ、Re、Rthおよび熱寸法変化率を示し、液晶表示装置に組み込んだ際の対角線状表示ムラもいずれも良好であった。また、延伸倍率を1.05〜4倍とした実施例102〜104では、さらに熱寸法変化率および対角線状表示ムラが改善された。一方、比較例101〜103では、γ、Re、Rthおよび熱寸法変化率がいずれも悪く、液晶表示装置に組み込んだ際の対角線状表示ムラも実用上問題があった。これに対し、原料樹脂を比較例101〜103と同様として本発明の製造方法を実施した実施例106〜108は、比較例101〜103よりも顕著に良好な結果を得た。
なお、横方向に延伸したものも同様の結果を得た。
以上より、低張力熱処理工程を含む本発明の製造方法によれば、延伸工程単独の場合よりも顕著に良好なγ、Re、Rthおよび熱寸法変化率を示す熱可塑性フィルムを得ることができ、液晶表示装置に組み込んだ際の対角線状表示ムラも良好となることがわかった。
図1は、本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程とを含む、膜厚が25μm〜70μmのフィルムの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂は、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂のうちの少なくとも1種であり、
    前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くし、
    下記式(A)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差を1〜40%とし、
    式(A)
    Figure 0005408923
    前記第一挟圧面と前記第二挟圧面による挟圧により溶融物にかかる圧力を28〜140MPaとし、
    さらにフィルム状に成形した未延伸の溶融物をTg−15℃〜Tg+30℃の温度下においてフィルム幅1m当たり0.5〜15kgf/mの搬送張力で搬送する工程を含むフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
  2. 前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 前記溶融押出しされた溶融物を互いに周速の異なるチルロールとタッチロール間を通過させてフィルム状に成形する工程において、フィルム状溶融物の幅を1〜4mとすることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  4. 前記タッチロールが厚み6〜45mmの金属ロールであることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  5. 製膜速度10〜50m/分で製膜することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法。
  6. フィルム状に成形した後のフィルムを少なくとも1方向に1.05〜4倍延伸する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムの製造方法
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