JP2019185017A - 偏光子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた光学特性を有する偏光子が得られる偏光子の製造方法を提供すること。【解決手段】ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、染色工程、架橋工程、および延伸工程を施した後に、洗浄工程と乾燥工程を順に施して得られる偏光子の製造方法であって、前記乾燥工程は、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に0.1N/mm以上1N/mm以下の張力をかけつつ、前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する工程を含み、かつ前記ポリビニルアルコール系フィルムは、前記洗浄工程後の総延伸倍率をxと定義し、かつ前記乾燥工程後の総延伸倍率をyと定義した場合、式(1):y≧0.7x+1.77(式(1)中、xは5.6以上であり、yは7以下である。)であることの条件を満たす偏光子の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、偏光子の製造方法に関する。
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種画像表示装置に用いる偏光子としては、高透過率と高偏光度を兼ね備えていることから、染色処理された(二色性物質を含有する)ポリビニルアルコール系フィルムが用いられている。当該偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムに、浴中にて、例えば、膨潤、染色、架橋、延伸等の各処理を施した後に、洗浄処理を施してから、乾燥することにより製造される。また前記偏光子は、通常、その片面または両面にトリアセチルセルロース等の保護フィルムが接着剤を用いて貼合された偏光フィルムとして用いられている。
偏光子は、良好な光学特性を有するものが求められ、このような偏光子の製造方法としては、例えば、乾燥工程でポリビニルアルコール系フィルムの水分率を制御する製造方法(特許文献1)、また、乾燥工程でポリビニルアルコール系フィルムの幅方向を拘束しながら乾燥する工程を有する製造方法が知られている(特許文献2)。
特開2009−163202号公報 特開2014−146035号公報
上記のような特許文献で開示された偏光子は、良好な光学特性を有するが、市場では、偏光子を有する画像表示装置の高性能化に伴い、より高い光学特性を有する偏光子が求められている。
以上のような事情に鑑み、本発明は、優れた光学特性を有する偏光子が得られる偏光子の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、染色工程、架橋工程、および延伸工程を施した後に、洗浄工程と乾燥工程を順に施して得られる偏光子の製造方法であって、前記乾燥工程は、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に0.1N/mm以上1N/mm以下の張力をかけつつ、前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する工程を含み、かつ前記ポリビニルアルコール系フィルムは、前記洗浄工程後の総延伸倍率をxと定義し、かつ前記乾燥工程後の総延伸倍率をyと定義した場合、式(1):y≧0.7x+1.77(式(1)中、xは5.6以上であり、yは7以下である。)であることの条件を満たす偏光子の製造方法、に関する。
本発明の偏光子の製造方法における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本発明の偏光子の製造方法は、前記乾燥工程が、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に0.1N/mm以上1N/mm以下の張力をかけつつ、前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する工程を含み、かつ前記ポリビニルアルコール系フィルムは、前記洗浄工程後の総延伸倍率をxと定義し、かつ前記乾燥工程後の総延伸倍率をyと定義した場合、式(1):y≧0.7x+1.77(式(1)中、xは5.6以上であり、yは7以下である。)であることの条件を満たす製造方法である。偏光子の製造方法において、上記の特許文献2のように、乾燥工程において、ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向や縦方向(搬送方向)に張力をかけることは知られているが、本発明の偏光子の製造方法では、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に一定の値の張力をかけながら乾燥することで、偏光子の配向性向上が確認でき、得られる偏光子の光学特性が向上することが見出された。とくに、偏光子の製造方法において、前記洗浄工程後の総延伸倍率(x)前記乾燥工程後の総延伸倍率(y)が、上記の式(1)の関係を満たす場合に、より配向性が向上するため、優れた光学特性を有する偏光子が得られる。
本発明の偏光子の製造方法を示す概念図である。
<偏光子の製造方法>
本発明の偏光子の製造方法は、ポリビニルアルコール系フィルムに、任意の膨潤工程と、少なくとも、染色工程、架橋工程、および延伸工程を施した後に、洗浄工程と乾燥工程を順に施して得られる偏光子の製造方法であって、前記乾燥工程は、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に0.1N/mm以上1N/mm以下の張力をかけつつ、前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する工程を含み、かつ前記ポリビニルアルコール系フィルムは、前記洗浄工程後の総延伸倍率をxと定義し、かつ前記乾燥工程後の総延伸倍率をyと定義した場合、式(1):y≧0.7x+1.77(式(1)中、xは5.6以上であり、yは7以下である。)であることの条件を満たす偏光子の製造方法である。
本発明の偏光子の製造方法の概念を図1にて説明する。図1において、図面左側に、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム(原反PVA系フィルム)Fがロール状に配置されており、フィードロール8によって図面右方向に搬送される。ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムFは、通常、膨潤処理槽1にて膨潤工程、染色処理槽2にて染色工程、架橋処理槽3にて架橋工程、延伸処理槽4にて延伸工程、洗浄処理槽5にて洗浄工程、乾燥処理部6にて乾燥工程が施され、得られた偏光子F1がロール状で回収される。
前記ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムは、可視光領域において透光性を有し、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を分散吸着するものを特に制限なく使用できる。また、通常、原反として用いる、PVA系フィルムは、厚さが10〜300μm程度であることが好ましく、20〜100μm程度であることがより好ましく、幅が100〜5000mm程度であることが好ましい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムの材料としては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が挙げられる。前記ポリビニルアルコールの誘導体としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール;エチレン、プロピレン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、およびそのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したもの等が挙げられる。前記ポリビニルアルコールは、平均重合度が100〜10,000程度であることが好ましく、1,000〜10,000程度であることがより好ましく、2,000〜4,500程度であることがさらに好ましい。また、前記ポリビニルアルコールは、ケン化度が80〜100モル%程度であることが好ましく、95モル%〜99.95モル程度であることがより好ましい。なお、前記平均重合度および前記ケン化度は、JIS K 6726に準じて求めることができる。
前記ポリビニルアルコール系フィルムには、可塑剤や界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。前記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の、ポリオールおよびその縮合物等が挙げられる。前記添加剤の使用量は、特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム中、20重量%以下程度が好適である。
図1に示すように、上記の各工程の処理槽(処理部)の前後には、フィードロール8と、第1〜第6ピンチロール(10、20、30、40、50、60)がそれぞれ配置されている。フィードロール8および第1〜第6ピンチロール(10、20、30、40、50、60)では、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムの搬送が行われ、さらに、第1〜第5ピンチロール(10、20、30、40、50)では、各処理槽で使用する処理液の液切り処理も行われる。
上記のフィードロール8および第1〜第6ピンチロールは、不図示のモータと連動して回転駆動する駆動ロール(02、12、22、32、42、52、62)と、この駆動ロールに連動して回転する従動ロール(01、11、21、31、41、51、61)を有して構成されている。また、図1の前記駆動ロールと前記従動ロールの位置関係は逆でもよく、両方のロールが駆動ロールとして構成されていてもよい。また、フィードロール8および第1〜第6ピンチロールにおける2つのロール(一対のロール)は、上記のポリビニルアルコール(PVA)系フィルムの搬送や、上記の液切り処理が行われる態様であれば、水平方向で配置されていてもよく、垂直方向で配置されていてもよく、所定角度で傾斜して配置されていてもよい。
本発明の偏光子の製造方法は、前記乾燥工程が、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に0.1N/mm以上1N/mm以下の張力をかけつつ、前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する工程を含む。前記張力は、偏光子の光学特性を向上させる観点から、0.15N/mm以上であることが好ましく、0.2N/mm以上であることがさらに好ましい。そして、延伸時の搬送安定性のため、0.8N/mm以下であることが好ましく、0.7N/mm以下であることがより好ましく、0.6N/mm以下であることがさらに好ましい。なお、前記張力は、図1に示すように、ガイドロール7に設けられた不図示のテンションコントローラーにより検出することができ、第5ピンチロール(50)の周速と第6ピンチロール(60)の周速の速度を調整することで設定できる。通常、前記張力を上げるには、第5ピンチロール(50)の周速よりも、第6ピンチロール(60)の周速が早くなるように制御すればよい。前記周速は、サーボモーターからつながるエンコーダで検出でき、後述する各ロールの周速も同様に検出できる。
さらに、本発明の偏光子の製造方法は、前記ポリビニルアルコール系フィルムが、前記洗浄工程後の総延伸倍率をx(単位:倍)と定義し、かつ前記乾燥工程後の総延伸倍率をy(単位:倍)と定義した場合、式(1):y≧0.7x+1.77(式(1)中、xは5.6以上であり、yは7以下である。)であることの条件を満たす。前記ポリビニルアルコール系フィルムが、上記のような関係式を満たすことにより、偏光子の配向性が向上することから、得られる偏光子の光学特性が向上する。前記洗浄工程後の総延伸倍率(x)は、偏光子の光学特性を向上させる観点から、5.7以上であることが好ましく、5.8以上であることがより好ましい。また、前記乾燥工程後の総延伸倍率(y)は、延伸時の搬送安定性の観点から、6.8以下であることが好ましく、6.6以下であることがより好ましい。なお、前記洗浄工程後の総延伸倍率(x)は、フィードロール8における繰り出し周速と第5ピンチロール(50)における巻き取り周速の周速比(巻き取り周速/繰り出し周速)により算出でき、また、前記乾燥工程後の総延伸倍率(y)は、フィードロール8における繰り出し周速と第6ピンチロール(60)における巻き取り周速の周速比(巻き取り周速/繰り出し周速)により算出できる。また、乾燥工程では、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、水分が蒸発することにより、搬送方向に縮む力も働くため、前記ポリビニルアルコール系フィルムに一定の張力がかかっていても、前記乾燥工程後の総延伸倍率(y)が、前記洗浄工程後の総延伸倍率(x)よりも、小さくなる場合もある。
また、本発明の偏光子の製造方法は、偏光子の光学特性を向上させる観点から、前記ポリビニルアルコール系フィルムが、式(2):y≦0.7x+1.94(式(2)中、xおよびyは、前記式(1)と同様である。)であることの条件を満たすことが好ましく、式(3):y≦0.7x+1.84(式(3)中、xおよびyは、前記式(1)と同様である。)であることの条件を満たすことがより好ましい。
また、前記膨潤工程における延伸倍率は、フィードロール8における繰り出し周速と第1ピンチロール(10)における巻き取り周速の周速比(巻き取り周速/繰り出し周速)により算出できる。前記染色工程における延伸倍率は、第1ピンチロール(10)における繰り出し周速と第2ピンチロール(20)の巻き取り周速の周速比(巻き取り周速/繰り出し周速)により算出できる。前記架橋工程における延伸倍率は、第2ピンチロール(20)における繰り出し周速と第3ピンチロール(30)の巻き取り周速の周速比(巻き取り周速/繰り出し周速)により算出できる。前記延伸工程における延伸倍率は、第3ピンチロール(30)における繰り出し周速と第4ピンチロール(40)における巻き取り周速の周速比(巻き取り周速/繰り出し周速)により算出できる。なお、処理槽(処理部)間に配置されるピンチロールが1つの場合は、当該ピンチロールにおける巻き取り周速と繰り出し周速は同じ値となる。
前記膨潤工程における延伸倍率は、1.5〜3.0倍程度であることが好ましく、1.8〜2.6程度であることがより好ましい。前記染色工程における延伸倍率は、1.1〜2.0倍程度であることが好ましく、1.1〜1.6倍程度であることがより好ましい。前記架橋工程における延伸倍率は、1.1〜1.7倍程度であることが好ましく、1.1〜1.4倍程度であることがより好ましい。前記延伸工程における延伸倍率は、1.2〜1.9倍程度であることが好ましく、1.5〜1.9倍程度であることがより好ましい。
以下、各処理工程における各処理浴等について説明する。
前記膨潤工程は、本発明の偏光子の製造方法における任意工程であり、ポリビニルアルコール系フィルムを、膨潤浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系フィルムの表面の汚れやブロッキング剤等を除去でき、また、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラを抑制できる。前記膨潤浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。前記膨潤浴は、常法に従って、界面活性剤、アルコール等が適宜に添加されていてもよい。
前記膨潤浴の温度は、10〜60℃程度であることが好ましく、15〜45℃程度であることがより好ましい。また、前記膨潤浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤の程度が膨潤浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5〜300秒間程度であることが好ましく、10〜200秒間程度であることがより好ましい。前記膨潤工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
前記染色工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを、染色浴(ヨウ素溶液)に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素または二色性染料等の二色性物質を吸着・配向させることができる。前記ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であることが好ましく、ヨウ素および溶解助剤としてヨウ化物を含有する。なお、前記ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、前記偏光子中の前記カリウムの含有量を制御する観点から、ヨウ化カリウムが好適である。
前記染色浴中、ヨウ素の濃度は、0.01〜1重量%程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量%程度であることがより好ましい。前記染色浴中、前記ヨウ化物の濃度は、0.01〜10重量%程度であることが好ましく、0.05〜5重量%程度であることがより好ましい。
前記染色浴の温度は、10〜50℃程度であることが好ましく、15〜45℃程度であることがより好ましい。また、前記染色浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの染色の程度が染色浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10〜300秒間程度であることが好ましく、20〜240秒間程度であることがより好ましい。前記染色工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
前記架橋工程は、前記染色工程にて染色されたポリビニルアルコール系フィルムを、ホウ素化合物を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬する処理工程であり、ホウ素化合物によりポリビニルアルコール系フィルムが架橋して、ヨウ素分子または染料分子が当該架橋構造に吸着できる。前記ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂等が挙げられる。前記架橋浴は、水溶液が一般的であるが、例えば、水との混和性のある有機溶媒および水の混合溶液であってもよい。また、前記架橋浴は、前記偏光子中のカリウムの含有量を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。
前記架橋浴中、前記ホウ素化合物の濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、1.5〜10重量%程度であることがより好ましく、2〜5重量%程度であることがより好ましい。また、前記架橋浴にヨウ化カリウムを使用する場合、前記架橋浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、1.5〜10重量%程度であることがより好ましい。
前記架橋浴の温度は、20〜70℃程度であることが好ましく、30〜60℃程度であることがより好ましい。また、前記架橋浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの架橋の程度が架橋浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5〜300秒間程度であることが好ましく、10〜200秒間程度であることがより好ましい。前記架橋工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
前記延伸工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを、少なくとも一方向に所定の倍率に延伸する処理工程である。一般には、ポリビニルアルコール系フィルムを、搬送方向(長手方向)に1軸延伸する。前記延伸の方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。前記延伸工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。前記延伸工程は、偏光子の製造において、いずれの段階で行われてもよい。
前記湿潤延伸法における処理浴(延伸浴)は、通常、水、または水との混和性のある有機溶媒および水の混合溶液等の溶媒を用いることができる。前記延伸浴は、前記偏光子中のカリウムの含有量を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。前記延伸浴にヨウ化カリウムを使用する場合、当該延伸浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、2〜10重量%程度であることがより好ましい。また、前記処理浴(延伸浴)には、架橋度を向上するために前記ホウ素化合物を含むことができ、この場合、当該延伸浴中、前記ホウ素化合物の濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、1.5〜10重量%程度であることがより好ましい。
前記延伸浴の温度は、25〜80℃程度であることが好ましく、40〜75℃程度であることがより好ましい。また、前記延伸浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸の程度が延伸浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10〜800秒間程度であることが好ましく、30〜500秒間程度であることがより好ましい。なお、前記湿潤延伸法における延伸処理は、前記膨潤工程、前記染色工程、前記架橋工程、および前記洗浄工程のいずれか1つ以上の処理工程とともに施してもよい。
前記乾式延伸法としては、例えば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等が挙げられる。
前記洗浄工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを、洗浄浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系フィルムの表面等に残存する異物を除去できる。前記洗浄浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。また、前記偏光子中の前記カリウムの含有量を制御する観点から、前記洗浄浴にヨウ化カリウムを使用することが好ましく、この場合、前記洗浄浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1〜10重量%程度であることが好ましく、2〜4重量%程度であることがより好ましく、1.6〜3.8重量%程度であることがさらに好ましい。
前記洗浄浴の温度は、5〜50℃程度であることが好ましく、10〜40℃程度であることがより好ましく、15〜30℃程度であることがさらに好ましい。また、前記洗浄浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの洗浄の程度が洗浄浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、1〜100秒間程度であることが好ましく、2〜50秒間程度であることがより好ましく、3〜20秒間程度であることがさらに好ましい。前記膨潤工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
前記乾燥工程は、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に0.1N/mm以上1N/mm以下の張力をかけつつ、前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する工程を含み、前記洗浄工程にて洗浄されたポリビニルアルコール系フィルムを、乾燥して偏光子を得る工程であり、乾燥により所望の水分率を有する偏光子が得られる。前記乾燥は、任意の適切な方法で行われ、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥が挙げられる。前記偏光子は、水分率が12〜25重量%程度であることが好ましく、13〜20重量%程度であることがより好ましい。なお、偏光子の水分率は、100mm角のサイズに切り出された試料の、初期重量、および120℃で2時間乾燥後の乾燥重量に基づいて、下記式により算出される。
水分率(重量%)={(初期重量−乾燥重量)/初期重量}×100
前記乾燥の温度は、20〜150℃程度であることが好ましく、25〜100℃程度であることがより好ましい。また、前記乾燥の時間は、偏光子の乾燥の程度が乾燥の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、30〜600秒間程度であることが好ましく、60〜300秒間程度であることがより好ましい。前記乾燥工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
前記偏光子は、厚みが、1〜30μm程度であることが好ましく、5〜25μm程度であることがより好ましい。とくに、厚みが10μm以下の偏光子を得るためには、特開2009−098653号公報、特開2013−238640号公報等に開示された、前記ポリビニルアルコール系フィルムとして、熱可塑性樹脂基材上に製膜されたポリビニルアルコール系フィルムを含む積層体を用いる薄型の偏光子の製造方法が適用できる。
<偏光フィルム>
得られた偏光子は、通常、常法に従って、その少なくとも一方の面に透明保護フィルムが貼り合わされて偏光フィルムとして用いられる。前記透明保護フィルムは、特に制限されず、従来より偏光フィルムに用いられている各種の透明保護フィルムを用いることができる。前記透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロール等のセルロールエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物があげられる。
前記透明保護フィルムを、前記偏光子の両面に貼り合わせる場合、その両面の透明保護フィルムは、同じものであってもよく、異なっていてもよい。
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。前記透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
前記位相差板としては、例えば、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等が挙げられる。位相差板の厚さは特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。なお、位相差を有しない透明保護フィルムに前記位相板を貼り合わせて使用してもよい。
前記透明保護フィルムは、表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等が挙げられる。
前記透明保護フィルムの偏光子を貼り合わせない面には、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。なお、ハードコート処理や反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレアを目的とした処理等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
前記透明保護フィルムには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等の任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。
前記偏光子と前記透明保護フィルムとの貼り合わせるためには、通常、接着剤が用いられる。前記接着剤としては、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等が挙げられる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。前記接着剤としては、上記の他、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。また、前記接着剤には、金属化合物フィラー等を含有させることができる。
前記接着剤の塗布は、前記透明保護フィルム、前記偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。前記偏光子と前記透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。前記乾燥工程の後には、必要に応じ、紫外線や電子線を照射することができる。前記接着剤層の厚さは、特に制限されないが、30〜5000nm程度であることが好ましく、100〜1000nm程度であることがより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
<偏光子の製造>
重合度が2,400、ケン化度が99.9モル%、厚さが45μm、幅が3390mmのポリビニルアルコールフィルムを用意した。当該ポリビニルアルコールフィルムに、前記図1に示すような製造方法にて、以下に示す各工程を施した。具体的には、ポリビニルアルコールフィルムを、27℃の膨潤浴(水浴)中に70秒間浸漬して膨潤しながら搬送方向に膨潤工程の延伸倍率が2.210倍になるように延伸した(膨潤工程)。続いて、得られたポリビニルアルコールフィルムを、30℃の染色浴(ヨウ素濃度が8重量%である水溶液)中で45秒間浸漬して染色しながら搬送方向に染色工程の延伸倍率が1.176倍になるように延伸した(染色工程)。次いで、染色したポリビニルアルコールフィルムを、40℃の架橋浴(ホウ酸濃度が4重量%、ヨウ化カリウム濃度が3重量%である水溶液)中で43秒間浸漬して搬送方向に架橋工程の延伸倍率が1.296倍になるように延伸した(架橋工程)。さらに、得られたポリビニルアルコールフィルムを、60℃の延伸浴(ホウ酸濃度が3重量%、ヨウ化カリウム濃度が5重量%である水溶液)中で31秒間浸漬して搬送方向に延伸工程の延伸倍率が1.786倍になるように延伸した(延伸工程)。さらに、得られたポリビニルアルコールフィルムを、27℃の洗浄浴(ヨウ化カリウム濃度が5.5重量%である水溶液)中で10秒間浸漬して搬送方向に洗浄工程後の総延伸倍率(x)が6.020倍になるように延伸した(洗浄工程)。洗浄したポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に0.29N/mmの張力をかけつつ、55℃で1分間乾燥して、搬送方向に乾燥工程後の総延伸倍率(y)が6.075倍になるように偏光子を作製した。偏光子の厚みは17μmであり、偏光子の水分率は15重量%であった。
なお、上記の各延伸倍率および上記の総延伸倍率は、上述したように、フィードロールおよび各ピンチロールにおける周速比(巻き取り周速/繰り出し周速)から算出できる。当該周速は、小数点以下3桁まで設定することができ、周速の設定値とのズレが発生した時は、三菱電機製のサーボモーターからつながるエンコーダによって異常を感知できるシステムとなっている。
<偏光フィルムの作製>
接着剤として、下記の、ラジカル重合性化合物(a)12重量部、ラジカル重合性化合物(b)35重量部、ラジカル重合性化合物(c)40重量部、オリゴマー化合物(d)10重量部、光重合開始剤(e)2重量部および光増感剤(f)1重量部の割合で混合して50℃で1時間撹拌し活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。第1透明保護フィルム(アクリルフィルム、東洋鋼鈑社製)および第2透明保護フィルム(COPフィルム、日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)の各々の貼合面に、上記活性エネルギー線硬化型接着剤を、MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、厚み0.7μmになるように塗工し、上記偏光子Xの両面にロール機で貼り合わせた。その後、貼り合わせた透明保護フィルム側(両側)から、活性エネルギー線照射装置により上記可視光線を両面に照射して活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥して、偏光子の両側に透明保護フィルムを有する偏光フィルムを得た。
上記のラジカル重合性化合物(a)は、HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)、KJケミカルズ社製;ラジカル重合性化合物(b)は、ACMO(アクロイルモルフォリン)、KJケミカルズ社製;ラジカル重合性化合物(c)は、ライトアクリレート 1,9ND−A(1,9−ノナンジオールジアクリレート)、共栄社化学社製;オリゴマー化合物(d)は、ARUFON UG−4010(エポキシ基変性アクリルオリゴマー)、東亞合成社製;光重合開始剤(e)は、Omnirad907(2−メチル−1−(4―メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパンー1−オン)、IGM Resins B.V.社製;光増感剤(f)は、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)、日本化薬社製;を示す。
[偏光フィルムの光学特性の評価]
上記で得られた偏光フィルムの単体透過率(Ts)および偏光度(P)を測定した。上記単体透過率及び偏光度は、分光光度計(日本分光製、製品名「V7100」)を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光子の平行透過率(H)及び直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H−H90)/(H+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。また、波長410nmの直交透過率(%)も同時に測定を実施した。結果を表1に示す。
前記単体透過率は、40%以上であることが好ましく、43%以上であることがさらに好ましく、43.1%以上であることがさらに好ましい。また、前記偏光度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましく、99.9%以上であることがよりさらに好ましく、99.99%以上であることがよりさらに好ましい。また、波長410nmの直交透過率は、0.1%以下であることが好ましく、0.06%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることがさらに好ましい。
<偏光子の製造および偏光フィルムの作製>
<実施例2〜14、比較例1〜4>
延伸工程の延伸倍率、洗浄工程後の総延伸倍率(x)、乾燥工程後の総延伸倍率(y)、乾燥工程の張力を表1および表2に記載の値になるように調整したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を製造し、偏光フィルムを作製した。なお、延伸倍率、総延伸倍率の影響により、各処理液への浸漬時間、乾燥時間は実施例1とはわずかに異なる。
上記で得られた実施例2〜14および比較例1〜4の偏光フィルムを用い、上記の[偏光フィルムの光学特性の評価]における評価を行った。結果を表1および表2に示す。
Figure 2019185017
Figure 2019185017
上記の実施例で得られた偏光フィルムにおける単体透過率(%)および波長410nmの直交透過率(%)と、比較例で得られた偏光フィルムにおける単体透過率(%)および波長410nmの直交透過率(%)と対比すると、実施例の偏光フィルムのほうが、比較例のものよりも、単体透過率(%)が高く、かつ波長410nmの直交透過率(%)が低い傾向にあるため、光学特性に優れていることがいえる。とくに、同程度の単体透過率(%)を有する実施例および比較例の偏光フィルムで比較した場合、実施例の偏光フィルムが波長410nmの直交透過率(%)が低いことは明らかであり、光学特性に優れていることがいえる。
また、上記の実施例で得られた偏光フィルムにおける単体透過率(%)および偏光度(%)と、比較例で得られた偏光フィルムにおける単体透過率(%)および偏光度(%)と対比すると、実施例の偏光フィルムのほうが、比較例のものよりも、単体透過率(%)が高く、かつ偏光度(%)が高い傾向にあるため、光学特性に優れていることがいえる。とくに、同程度の単体透過率(%)を有する実施例および比較例の偏光フィルムで比較した場合、実施例の偏光フィルムは偏光度(%)が高いことは明らかであり、光学特性に優れていることがいえる。
F ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム
F1 偏光子
1 膨潤処理槽
2 染色処理槽
3 架橋処理槽
4 延伸処理槽
5 洗浄処理槽
6 乾燥処理部
7 ガイドロール
8 フィードロール
01、11、21、31、41、51、61 従動ロール
02、12、22、32、42、52、62 駆動ロール
10 第1ピンチロール
20 第2ピンチロール
30 第3ピンチロール
40 第4ピンチロール
50 第5ピンチロール
60 第6ピンチロール

Claims (4)

  1. ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、染色工程、架橋工程、および延伸工程を施した後に、洗浄工程と乾燥工程を順に施して得られる偏光子の製造方法であって、
    前記乾燥工程は、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向に0.1N/mm以上1N/mm以下の張力をかけつつ、前記ポリビニルアルコール系フィルムを乾燥する工程を含み、かつ
    前記ポリビニルアルコール系フィルムは、前記洗浄工程後の総延伸倍率をxと定義し、かつ前記乾燥工程後の総延伸倍率をyと定義した場合、
    式(1):y≧0.7x+1.77
    (式(1)中、xは5.6以上であり、yは7以下である。)であることの条件を満たすことを特徴とする偏光子の製造方法。
  2. 前記式(1)中、yは6.3以下であることを特徴とする請求項1記載の偏光子の製造方法。
  3. 前記ポリビニルアルコール系フィルムは、
    式(2):y≦0.7x+1.94
    (式(2)中、xおよびyは、前記式(1)と同様である。)であることの条件を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の偏光子の製造方法。
  4. 前記ポリビニルアルコール系フィルムは、重合度が2,000以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偏光子の製造方法。
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