JP4077244B2 - Vaモード用光学フィルムと積層偏光板、及びそれを用いた画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、VAモード用光学フィルム、該VAモード用光学フィルムを積層した光学補償層一体型の積層偏光板、およびそれらを用いた液晶表示装置、自発光型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種液晶表示装置の光学補償用の二軸位相差板は、ポリマーフィルム延伸技術を用いて作製されてきた。例えば、ロール間引張り延伸法、ロール間圧縮延伸法、テンター横一軸延伸法などがある(特開平3−33719号公報)。また、場合によっては、フィルムの強度の関係で、異方性を持つような条件で二軸延伸することによって位相差板を得る方法もある(特開平3−24502号公報)。また、正の光学異方性をもつ一軸延伸高分子フィルムと、面内の位相差の値が小さい負の光学異方性をもつ二軸延伸高分子フィルムとを併用し、光学補償板として配設することを特徴とする液晶表示装置も開示されている(特開平4−194820号公報)。この他に、ポリイミドをフィルム化して負の複屈折フィルムを作製する方法もある(特表平8−511812号公報)。
【0003】
上記に示すような延伸技術等を用い、nx≧ny>nzの特性をもたせた位相差フィルムを作製し、これを駆動セルと偏光子の間に配置することによって、液晶セルを視角補償した液晶表示装置を形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に示される延伸技術では、精密な延伸操作が必要であり、延伸倍率及び軸などの延伸条件の詳細な設定や、精密な制御を必要とする。また、ボーイング現象を解決する必要もある。さらに延伸するためには、フィルムにある程度の厚みがないと延伸することができないため、延伸された位相差フィルムや液晶表示装置が厚型化する問題点がある。また、上記の特表平8−511812号公報では、ポリイミドを用いた一軸性位相差板が開示されているが、この場合は0nm≒(nx−ny)・dの特性を有する負の複屈折性位相差板しか作製できない問題点がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、均一、透明で負の複屈折性を有し、極めて優れた光学的性質を有するVAモード用光学フィルム、これを積層した積層偏光板、およびそれらを用いた液晶表示装置、自発光型表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、ポリアリールエーテルケトンを、基材上に塗工し、得られるVAモード用光学フィルムであって、当該VAモード用光学フィルムが下記の式(1)から(3)を全て満たし、かつ複屈折率が0.0005〜0.1の範囲にあるVAモード用光学フィルムを提供するものである。
nx>ny>nz (1)
3nm≦(nx−ny)・d (2)
(nx−nz)/(nx−ny)>1 (3)
(式(1)から(3)において、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚である。)
【0007】
本発明のVAモード用光学フィルムの作製に前記の方法を用いることにより、図4に示すように、フィルムの厚さ方向の軸に対して垂直方向に延び、かつ、このフィルムの厚み内に含まれる複数の軸に沿った屈折率のうち最大値を示す方向に延びる軸を主軸とし、この主軸方向の屈折率をnx、この主軸と厚さ方向の軸の双方に垂直な軸に沿った方向の屈折率をny、厚さ方向の軸に沿った方向の屈折率をnzとし、厚さをdとしたとき、式(1)で表される特性;nx>ny>nzを有し、式(2)の関係;3nm≦(nx−ny)・dと、式(3)の関係;(nx−nz)/(nx−ny)>1と、を全て満たす二軸性位相差板を容易に得ることができる。上記の式(2)及び式(3)の関係を満たすことにより、二軸位相差板が形成される。
【0008】
また、本発明のVAモード用光学フィルムにおいては、その片面又は両面に粘着層もしくは接着層を有することが好ましい。これにより、他の光学層や液晶セル等の他部材との接着が容易になるとともに、位相差板の剥離を防止することができる。
【0009】
さらに、本発明は、前記VAモード用光学フィルムの少なくとも一層と、偏光子又は偏光板とを積層してなることを特徴とする積層偏光板を提供するものである。
【0010】
またさらに、本発明は、前記VAモード用光学フィルム又は前記積層偏光板を、液晶セルの少なくとも片側に配置したことを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。このVAモード用光学フィルムを液晶セルと偏光板の間に配置することにより、液晶表示装置の薄型化を図ることができる。
【0011】
また本発明は、前記VAモード用光学フィルム又は前記積層偏光板を用いたことを特徴とする自発光型表示装置を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のVAモード用光学フィルムは、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーを、基材上に塗工し、得られるVAモード用光学フィルムであって、当該VAモード用光学フィルムは下記の式(1)から(3)を全て満たし、かつ複屈折率が0.0005〜0.1の範囲にある。
nx>ny>nz (1)
3nm≦(nx−ny)・d (2)
(nx−nz)/(nx−ny)>1 (3)
(式(1)から(3)において、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚である。)
【0013】
なお、本発明において、複屈折率(△n)は次式で定義される。
△n=(nx−nz)・d/厚み
【0014】
VAモード用光学フィルムの複屈折率(△n)の値が、0.0005未満の場合は厚型の位相差板となり、0.1を越える場合は薄型の位相差板となり位相差制御が困難となるため、生産性に優れた薄型の二軸性位相差板を得るためには、△nの値は好ましくは0.001〜0.08の範囲であり、特に好ましくは0.005〜0.05の範囲であるのがよい。
【0015】
VAモード用光学フィルムの厚みは、特に限定されないが、液晶表示装置の薄型化を図りつつ、視角補償機能に優れ、かつ均質なフィルムを提供する観点より、好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜20μmであるのがよい。
【0016】
本発明のVAモード用光学フィルムを形成する場合、材料として、ポリアリールエーテルケトンを用いる。このポリマーは、耐熱性、耐薬品性に優れ、剛性に富み、透明性に優れる等の理由から、二軸性位相差板の材料として適している。
【0017】
前記のポリアリールエーテルケトンは、特に限定はなく、本発明のVAモード用光学フィルム特性を満足しうるものであれば、従来公知のポリマー材料を適宜使用でき、単独で又は任意の組み合せで用いることができる。これらのポリマーの分子量は、特に限定はないが、重量平均分子量(Mw)として10,000〜1,000,000の範囲が好ましく、さらに好ましくは20,000〜800,000の範囲であるのがよい。
【0018】
前記ポリアリールエーテルケトンは、透明で、ガラス転移温度が高いために耐熱性の高いVAモード用光学フィルムを得ることが可能である。本発明でいうポリアリールエーテルケトンとは、繰り返し単位中にエーテル基(−O−)とケトン基(C(=O))を有し、それらがアリール基で連結されているものを言い、その一般式は次式(I)で表される。
【0019】
【化4】
(式中、Fはフッ素原子であり、A’はハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、xおよびyは0〜4の整数であり、mは0又は1である。また、nは重合度を表し、R1は一般式(II)で表される基である。)
【0020】
【化5】
(式中、zおよびx’は0〜4の整数であり、sは0又は1であり、R2は2価の芳香族基である。A’及びFは(I)と同様である。)
【0021】
なかでも、一般式(I)において、好ましくはy=0のものであり、より好ましくはy=0かつx’=0のものである。
【0022】
また、上記の一般式(II)において、2価の芳香族基(R2)は、下記の6種のいずれかであることが好ましい。
【化6】
【0023】
このような好ましいポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記の構造式(IV)または(V)で表されるようなものが挙げられる。
【0024】
【化7】
【0025】
VAモード用光学フィルムは、上記のポリアリールエーテルケトン単独で構成されていても良いし、ポリアリールエーテルケトンの特性を失わない範囲で他の樹脂、例えばポリエーテルスルホン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカルボジイミド、組成の異なるポリエーテルケトンなどから選ばれる樹脂を1種以上配合したブレンド物で構成されていても良いし、2種以上の繰り返し単位からなるポリアリールエーテルケトン共重合体でも良い。
【0026】
本発明のVAモード用光学フィルムを作製する場合、例えば一方向に収縮性をもたせた基材上に、ポリアリールエーテルケトン材料を塗工し、乾燥することによって、基材の面内の収縮差を利用して、塗工したポリマー材料に面内の屈折率差をもたせることができる。また、一方向に応力を加えた基材上で薄層化する方法や、一方向から風などを吹き付け基材上で薄層化する方法でもよい。あるいは異方性をもたせた基材上にポリマー材料を塗工する方法など、種々の方法を適用することができる。
【0027】
前記においてポリマーの塗工は、加熱溶融方式によってもよく、又溶媒に溶解させてポリマー溶液としたものを塗工することもできる。製造効率及び光学異方性制御の観点から、ポリマー溶液を塗工する方法が好ましく、ポリアリールエーテルケトンを溶剤に溶かした溶液を基材に塗布し、塗膜を乾燥させることにより製造することができる。
【0028】
ポリアリールエーテルケトンを溶解させる溶媒としては、ポリアリールエーテルケトンを溶解できるものであれば特に制限はない。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールなどのアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどを単独あるいは混合して使用することが可能である。ポリマー溶液として塗工する場合は、粘度の点より、溶媒100重量部に対して、上記ポリマーを5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部を混合させて用いるのがよい。
【0029】
また塗工処理は、スピンコート法やロールコート法、フローコート法やプリント法、ディップコート法や流延成膜法、バーコート法やグラビア印刷法等の適宜な方法で行うことができる。塗工に際しては、必要に応じポリマー層の重畳方式なども採ることができる。
【0030】
塗工後、自然乾燥(風乾)又は60〜250℃で加熱することにより、基材上に前記ポリマーを固定化して、基材上にポリマー層を形成する。得られたVAモード用光学フィルムは、支持基材との一体物として積層体の形態で用いてもよいし、ポリマー層を基材から剥離してVAモード用光学フィルムとして用いてもよい。なお、ポリマー層の形成に際しては、安定剤や可塑剤や金属類などからなる種々の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0031】
前記基材としては、適宜な材料を用いることができるが、透明性に優れるポリマーからなるフィルムなどが好ましい。そのポリマーの例としては、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、液晶ポリマー系等を挙げることができる。
【0032】
前記基材は、単層物であってもよいし、例えば強度や耐熱性、ポリマーの密着性の向上等の種々の目的で異種ポリマーをラミネートしたフィルムなどの如く複層物であってもよい。また複屈折による位相差を生じないものであってもよいし、複屈折による位相差を生じるものであってもよい。
【0033】
複屈折による位相差を生じる透明基材は、例えば延伸フィルムなどとして得ることができ、厚さ方向の屈折率が制御されたものなどであってもよい。その制御は、例えばポリマーフィルムを熱収縮性フィルムとの接着下に加熱延伸する方式などにより行うことができる。
【0034】
前記基材の厚さは、使用目的等に応じて適宜決定することができるが、強度や薄層化などの点より、好ましくは5〜500μmであり、さらに好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmの範囲であるのがよい。なお、ポリマー層は、透明基材の片面又は両面に1層又は2層以上設けることができる。
【0035】
次に、本発明のVAモード用光学フィルム(複屈折フィルム)を少なくとも一層と、偏光板とを積層してなる積層偏光板について説明する。
【0036】
本発明で用いる偏光板は、特に限定されないが、その基本的な構成は、二色性物質含有のポリビニルアルコール系偏光フィルム等からなる偏光子の片側又は両側に、適宜の接着層、例えばビニルアルコール系ポリマー等からなる接着層を介して、保護層となる透明保護フィルムを接着したものからなる。
【0037】
偏光子(偏光フィルム)としては、例えばポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系ポリマーよりなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適宜な処理を適宜な順序や方式で施してなり、自然光を入射させると直線偏光を透過する適宜なものを用いることができる。ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルム等からなる偏光フィルムなどでもよい。中でも、ヨウ素又は二色性染料を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムが好ましい。特に、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。偏光フィルムの厚さは、1〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0038】
偏光子(偏光フィルム)の片側又は両側に設ける透明保護層となる保護フィルム素材としては、適宜な透明フィルムを用いることができる。中でも、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーからなるフィルム等が好ましく用いられる。そのポリマーの例としては、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂等があげられるが、これに限定されるものではない。偏光特性や耐久性などの点より、特に好ましく用いることができる透明保護フィルムは、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。透明保護フィルムの厚さは、任意であるが一般には偏光板の薄型化などを目的に500μm以下、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは5〜150μmとされる。なお、偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で異なるポリマー等からなる透明保護フィルムとすることもできる。
【0039】
保護層に用いられる透明保護フィルムは、本発明の目的を損なわない限り、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理などを施したものであってもよい。ハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばシリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り性等に優れる硬化皮フィルムを、透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。
【0040】
一方、反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止フィルムなどの形成により達成することができる。また、スティッキング防止は隣接層との密着防止を目的に、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止などを目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式等による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。
【0041】
前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化アンチモン等が挙げられ、導電性を有する無機系微粒子を用いてもよく、また、架橋又は未架橋のポリマー粒状物等からなる有機系微粒子等を用いることもできる。透明微粒子の使用量は、透明樹脂100重量部あたり2〜70重量部、とくに5〜50重量部が一般的である。
【0042】
透明微粒子配合のアンチグレア層は、透明保護フィルムそのものとして、あるいは透明保護フィルム表面への塗工層等として設けることができる。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視角補償機能など)を兼ねるものであってもよい。なお、上記の反射防止層やスティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、それらの層を設けたシートなどからなる光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0043】
偏光子と保護層である透明保護フィルムとの接着処理は、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤等を介して行うことができる。これにより、湿度や熱の影響で剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れるものとすることができる。かかる接着層は、水溶液の塗工乾燥層等として形成されるものであるが、その水溶液の調製に際しては必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。特に、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、ポリビニルアルコールからなる接着剤を用いることが好ましい。
【0044】
偏光板とVAモード用光学フィルムとを積層して積層偏光板を形成する場合、両者を接着層や粘着層等の適宜な接着手段を用いて積層することができるが、これに限定されるものではない。例えば、偏光板の保護層として用いられるトリアセチルセルロース等のポリマーフィルムを基材として用い、この上にポリマー層を形成することも可能である。その後、トリアセチルセルロース等のポリマーフィルムを偏光子と接着し、偏光子の他方にはトリアセチルセルロース等のポリマーフィルムのみを接着すれば良い。このような方法で積層する場合には、VAモード用光学フィルム支持基材を偏光板の片側の保護フィルムとして使用できる。
【0045】
図1は、本発明のVAモード用光学フィルム(複屈折フィルム)と偏光子を積層してなる光学補償層一体型偏光板の構成を示す図である。図1に示すように、複屈折フィルム(1)は、必要に応じ粘着層を介して偏光子(2)を接着した状態で光学補償一体型偏光板として実用に供することもできる。図例の場合、偏光子(2)の外側に保護フィルム(3)が接着されている。
【0046】
図2に示すように、必要に応じ粘着層を介して偏光板(11)を接着した状態で光学補償一体型偏光板として実用に供することもできる。図例の偏光板の場合、偏光子(2)の両側に保護フィルム(3)が接着されている。かかる偏光子や偏光板等との一体化により、取り扱い作業性がより向上し、また液晶表示装置等の組み立て工程を簡易化することができる。
【0047】
積層に用いられる接着剤(粘着剤)としては、特に限定はなく、例えばアクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な感圧接着剤など、適宜な接着剤を用いることができる。VAモード用光学フィルム等の光学特性の変化を防止する点より、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。また加熱や加湿条件下に剥離等を生じないものが好ましく用いられる。
【0048】
本発明のVAモード用光学フィルムは、各種位相差板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等と組合せて用いることもできる。位相差板としては、ポリマーを一軸延伸したもの、二軸延伸したもの、Z軸配向処理したもの、液晶性高分子を塗布したもの等が挙げられる。拡散制御フィルムは、視野角を制御するための拡散、散乱、屈折を利用したフィルムや、解像度に関わるギラツキ、散乱光等を制御する拡散、散乱、屈折を利用したフィルム等を用いることができる。輝度向上フィルムは、コレステリック液晶の選択反射とλ/4板を用いた輝度向上フィルムや、偏光方向による異方性散乱を利用した散乱フィルム等を用いることができる。また、ワイヤーグリッド型偏光子と組合せて用いてもよい。
【0049】
本発明によるVAモード用光学フィルムや積層偏光板は、各種液晶表示装置の形成などに好ましく用いることができるが、その適用に際しては、必要に応じ接着層や粘着層を介して、偏光板や反射板、半透過反射板、輝度向上フィルムなどの他の光学層の1層または2層以上を積層することができる。特に、偏光板と本発明のVAモード用光学フィルムを積層した積層偏光板は、光学補償機能を有する偏光板として用いられる。
【0050】
前記の反射板は、それを偏光板に設けて反射型偏光板を形成するためのものである。反射型偏光板は、通常液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)などを形成する。反射型偏光板は、バックライト等の光源の内蔵を省略でき、液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式など、適宜な方式にて行うことができる。その具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどが挙げられる。
【0051】
また、微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした上記の透明保護フィルムの上に、その微細凹凸構造を反映させた反射層を有する反射型偏光板なども挙げられる。表面微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点を有する。この透明保護フィルムのば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式など、適宜な方式にて金属を透明保護フィルムの表面に直接付設する方法などにより形成することができる。
【0052】
また、反射板は、上記した偏光板の透明保護フィルムに直接付設する方式に代えて、その透明保護フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。反射板の反射層は、通常、金属からなるので、その反射面がフィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などから好ましい。
【0053】
半透過型偏光板は、上記の反射型偏光板において、半透過型の反射層としたものであり、反射層で光を反射しかつ透過するハーフミラー等が挙げられる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成する。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0054】
さらに前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの(3M社製「D−BEF」等)、コレステリック液晶層、就中コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの(日東電工社製「PCF350」、Merck社製「Transmax」)の如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0055】
前記の2層又は3層以上の光学層を積層した光学部材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるものであるが、予め積層して光学部材としたものは、品質の安定性や組立作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させることができる利点がある。なお、積層には、接着層や粘着層等の適宜な接着手段を用いることができる。
【0056】
本発明のVAモード用光学フィルム(二軸性位相差板)や積層偏光板等には、他の光学層や液晶セル等の他部材と接着するための粘着層あるいは接着層を設けることもできる。その粘(接)着層は、アクリル系等の従来公知の粘着剤等を用いて適宜形成することができる。中でも、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層であることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等とすることもできる。粘(接)着層は必要に応じて必要な面に設ければよい。
【0057】
VAモード用光学フィルム(二軸性位相差板)や積層偏光板等に設けた粘(接)着層が表面に露出する場合には、その粘(接)着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的にセパレータにて仮着カバーすることが好ましい。セパレータは、上記の透明保護フィルム等に準じた適宜な薄葉体に、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤による剥離コートを設ける方式等により形成することができる。
【0058】
なお、上記のVAモード用光学フィルムや積層偏光板を構成する偏光子や透明保護フィルム、粘(接)着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式等の適宜な方式により紫外線吸収能を持たせたもの等であってもよい。
【0059】
本発明のVAモード用光学フィルムや積層偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができ、例えば、偏光板を液晶セルの片側又は両側に配置してなる反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであってよい。
【0060】
なお、本発明のVAモード用光学フィルムは、VA(Vertical Alighned)セルの光学補償に非常に優れているので、VAモードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして、最も好適に用いることができる。
【0061】
図3は、本発明のVAモード用光学フィルム(複屈折フィルム)を液晶セル(21)と偏光子(2)の間に配置した液晶表示装置の構成を示す図である。図3に示すように、その複屈折フィルム(1)を有する側に粘着層(図では省略)を介し液晶セル(21)を接着してなる実用形態とすることもできる。
【0062】
また、液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0063】
また、本発明のVAモード用光学フィルム(複屈折フィルム)や積層偏光板は、有機ELディスプレイ、PDP、FEDなどの自発光型表示装置にも、液晶表示装置と同様にして用いることができる。自発光型フラットディスプレイに設ける場合は、Δnd=λ/4にすることで、円偏光を得ることができ、反射防止フィルターとして利用できる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、VAモード用光学フィルムの特性は以下の方法で評価した。
【0065】
(位相差、配向軸精度の測定)位相差計(王子計測機器社製、KOBRA21ADH)を用いて測定した。
【0066】
(屈折率測定)王子計測機器社製KOBRA21ADHを用いて590nmにおける屈折率を測定した。
【0067】
(膜厚測定)アンリツ製デジタルマイクロメーターK−351C型を使用して測定した。
【0068】
(実施例1)上記の構造式(IV)で示される構造式のポリアリールエーテルケトンA(株式会社日本触媒製)にメチルイソブチルケトンを溶媒として用い15重量%に調製した溶液を、150℃で固定端横延伸にて1.3倍横延伸した厚さ75μmのトリアセチルセルロース上に塗布した。その後100℃で10min熱処理を行い、完全透明で平滑な厚さ10μmのフィルムを得た。このフィルムの特性を評価したところ、nx>ny>nzの複屈折層を持つ位相差板であった。
【0069】
(実施例2)実施例1と同様の溶液を用い、150℃で固定端横延伸にて1.3倍横延伸した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート上に塗布した。その後150℃で5min熱処理を行い、完全透明で剥離後平滑な厚さ6μmのフィルムを得た。このフィルムは、nx>ny>nzの複屈折層を持つ位相差板であった。
【0070】
(実施例3)実施例1と同様の溶液を用い、これをトリアセチルセルロース上に塗布した。その後100℃で10min熱処理を行い、完全透明で平滑な厚さ10μmのフィルムを得た。その後、トリアセチルセルロース上に形成されたフィルムを基材毎150℃の温度で10%縦一軸延伸した。得られたフィルムは、nx>ny>nzの複屈折層を持つ位相差板であった。
【0071】
(実施例4)上記の構造式(V)で示されるポリアリールエーテルケトンB(株式会社日本触媒製)にシクロヘキサノンを溶媒として用い15重量%に調製した溶液を、150℃で固定端横延伸にて1.3倍横延伸した厚さ75μmのトリアセチルセルロース上に塗布した。その後100℃で10min熱処理を行い、完全透明で平滑な厚さ3μmのフィルムを得た。このフィルムの特性を評価したところ、nx>ny>nzの複屈折層を持つ位相差板であった。
【0072】
(実施例5)上記の構造式(IV)で示される8F-PEKEK-6FBA(Mw:500,000)にメチルイソブチルケトンを溶媒として用い15重量%に調製した溶液を、150℃で固定端横延伸にて1.3倍横延伸した厚さ75μmのトリアセチルセルロース上に塗布した。その後100℃で10min熱処理を行い、完全透明で平滑な厚さ10μmのフィルムを得た。このフィルムの特性を評価したところ、nx>ny>nzの複屈折層を持つ位相差板であった。
【0073】
(比較例1)△nが約0.002のポリノルボルネン系樹脂フィルム(JSR(株)製、ARTONフィルム)を、175℃で固定端横延伸にて1.3倍に延伸して、厚さ80μmのフィルムを得た。このフィルムの複屈折率を評価したところ、nx≧ny>nzの複屈折層を持つ位相差板であった。
【0074】
(比較例2)実施例1と同様の溶液を、実質的に延伸処理が施されていない厚さ80μmのトリアセチルセルロース上に塗工した。その後100℃で10分間熱処理を行い、トリアセチルセルロースからフィルムを剥離し、完全透明で平滑な厚さ4μmのフィルムを得た。このフィルムの複屈折率を評価したところ、nx≒ny>nzの複屈折層を持つ位相差板であった。
【0075】
上記の実施例及び比較例で得られたフィルムについて、nx、ny及びnzの値から、フィルムの複屈折率(△n)、(nx−ny)×d、(nx−nz)×d、(nx−nz)/(nx−ny)の値を算出した。その結果を表1にまとめて示す。
【0076】
【表1】
【0077】
以上の結果から、本発明のVAモード用光学フィルムは、nx>ny>nzで、(nx−ny)×dの値が3nm以上、(nx−nz)/(nx−ny)の値が1より大きく、比較例1の光学フィルムと比べて、薄型かつ配向軸精度に優れていることがわかる。また、比較例2では、薄型フィルムは得られるが、本発明の特性の位相差板は得られていない。
【0078】
次に、上記の実施例1で作製した二軸性位相差板と偏光板(日東電工(株)製、商品名「HEG1425DU」)を、アクリル系粘着剤を用いて積層して積層偏光板を得、これを液晶セルに対して偏光板が外側となるように接着して、液晶表示装置を作製した。その表示特性を調べたところ、正面と斜視の広い視角範囲でコントラストと表示の均質性に優れ、良好な表示品位であった。
【0079】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーを溶液状態にし、乾燥過程で配向させるだけで、3nm≦(nx−ny)・dと、(nx−nz)/(nx−ny)>1の関係とを満足する、複屈折率(△n)0.0005〜0.1のVAモード用光学フィルムを容易に得ることができる。得られたフィルムは薄層であり、nx>ny>nzの特性を持つ、均一・透明で極めて優れた光学的性質を有する二軸性位相差板となる。
【0080】
また、本発明の二軸性位相差板、又はこれと偏光板とを積層してなる積層偏光板を、液晶セルの少なくとも片側に配置することにより、正面と斜視の広い視角範囲で表示品位に優れる薄型の液晶表示装置や自発光型表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層偏光板(光学補償層一体型偏光板)の一例の断面模式図である。
【図2】本発明の積層偏光板(光学補償層一体型偏光板)の他の一例の断面模式図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明のVAモード用光学フィルムの軸方向を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・複屈折フィルム
2・・・・偏光子
3・・・・保護フィルム
11・・・・偏光板
21・・・・液晶セル
nx,ny,nz・・・・厚み方向をZ軸、Z軸に垂直な面内の延伸方向をX軸、X軸及びZ軸に垂直な方向をY軸としたときの、それぞれの軸方向の屈折率
Claims (7)
- ポリアリールエーテルケトンを、基材上に塗工し、得られるVAモード用光学フィルムであって、当該VAモード用光学フィルムが下記の式(1)から(3)を全て満たし、かつ複屈折率が0.0005〜0.1の範囲にあることを特徴とするVAモード用光学フィルム。
nx>ny>nz (1)
3nm≦(nx−ny)・d (2)
(nx−nz)/(nx−ny)>1 (3)
(式(1)から(3)において、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚である。) - その片面又は両面に粘着層もしくは接着層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のVAモード用光学フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のVAモード用光学フィルムの少なくとも一層と、偏光子又は偏光板とを積層してなることを特徴とする積層偏光板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のVAモード用光学フィルム又は請求項5に記載の積層偏光板を、液晶セルの少なくとも片側に配置したことを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のVAモード用光学フィルム又は請求項5に記載の積層偏光板を用いたことを特徴とする自発光型表示装置。
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