JP2004004641A - 光学フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents

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矢野 周治
Hiroe Maeda
前田 洋恵
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Abstract

【課題】広範囲にわたり高いコントラスト比を有する見やすい表示を実現可能であって、安定した位相差値を確保できる光学フィルムを提供すること。
【解決手段】偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板の片面に、偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が直交または平行となるように積層した光学フィルムにおいて、前記位相差フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さd(nm)とした場合に、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz値が、0.4〜0.6を満足し、かつ面内位相差Re=(nx−ny)×dが、200〜350nmでを満足し、透明保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有してなることを特徴とする光学フィルム。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板と位相差フィルムを積層した光学フィルムに関する。また本発明は、前記光学フィルムを用いた液晶表示装置、PDP、CRT等の画像表示装置に関する。特に本発明の光学フィルムは、いわゆるIPSモードで動作する液晶表示装置に適している。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶表示装置としては、正の誘電率異方性を有する液晶を、相互に対向する基板間にネジレ水平配向したいわゆるTNモードの液晶表示装置が主として使われている。しかし、TNモードではその駆動特性上、黒表示をしようとしても基板近傍の液晶分子により複屈折が生じる結果、光漏れが生じてしまい、完全な黒表示を行うことが困難であった。これに対し、IPSモードの液晶表示装置は、非駆動状態において液晶分子が基板面に対して略平行なホモジニアス配向を有するため、光は液晶層を、その偏光面をほとんど変化させること無く通過し、その結果基板の上下に偏光板を配置することにより非駆動状態でほぼ完全な黒色表示が可能である。
【0003】
しかしながら、IPSモードではパネル法線方向においてはほぼ完全な黒色表示ができるものの、法線方向からズレた方向からパネルを観察する場合、液晶セルの上下に配置する偏光板の光軸方向からズレた方向では偏光板の特性上避けられない光漏れが発生する結果、視野角が狭くなるという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、斜め方向から観察した場合に生じる偏光板の幾何学的な軸ズレを、位相差フィルムにより補償した偏光板が用いられている。このような効果を得られる偏光板は、たとえば、特開平4−305602号公報や特開平4−371903号公報に開示されている。しかし、従来知られている位相差フィルムでは充分な広視野角を実現し難い。
【0005】
前記特開平4−305602号公報に記載の偏光板では、偏光子の保護フィルムとして位相差フィルムが使用されている。しかしながら、当該偏光板は、通常の使用環境では良好な視野角特性が得られるものの、高温度下や高湿度下では偏光子の寸法変化により直接積層されている保護フィルムも変形する。そのため、保護フィルムに用いている位相差フィルムの位相差値が所望の値からずれてしまい、その効果を安定に保つことがができないという問題点があった。
【0006】
一方、特開平4−371903号公報では、保護フィルムとして一般的に用いられいるトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を適用した偏光板に位相差フィルムが積層されている。この場合には、位相差フィルムに直接応力が加わらないことから、位相差フィルムの位相差値は安定である。しかし、TACフィルムには無視できない位相差値が存在するため、軸ズレを補償する位相差フィルムの設計が困難である。また上記と同様、高温度下や高湿度下での偏光子の寸法変化によりTACフィルムの位相差値の変化が発生し、所望の目的を達成することができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、偏光板と位相差フィルムを積層した光学フィルムであって、画像表示装置に適用した場合に、広範囲にわたり高いコントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な光学フィルムであって、高温度下や高湿度下においても安定した位相差値を確保できる光学フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、前記光学フィルムを用いた広範囲にわたり高いコントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にIPSモードで動作する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す光学フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板の片面に、偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が直交または平行となるように積層した光学フィルムにおいて、
前記位相差フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さd(nm)とした場合に、
Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz値が、0.4〜0.6を満足し、
かつ面内位相差Re=(nx−ny)×dが、200〜350nmを満足し、
透明保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有してなることを特徴とする光学フィルム、に関する。
【0011】
上記本発明の光学フィルムは、偏光板をクロスニコル状態で配置した場合に、光軸からズレた方向での光漏れを、上記特定の位相差フィルムにより解消することができる。特にIPSモードの液晶表示装置において、液晶層の斜め方向におけるコントラストの低下を補償する機能を有する。位相差フィルムは前記Nz値が0.4〜0.6であり、かつ面内位相差が200〜350nmである。Nz値は補償機能の点から0.45以上、さらには0.48以上であるの好ましい。一方、Nz値は0.55以下、さらには0.52以下であるのが好ましい。面内位相差Reは補償機能の点から230nm以上、さらには250nm以上であるの好ましい。一方、面内位相差Reは300nm以下、さらには280nm以下であるのが好ましい。位相差フィルムの厚さdは特に制限されないが、通常40〜100μm程度、好ましくは50〜70μmである。
【0012】
また偏光板の透明保護フィルムは熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有している。熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、耐熱性、耐湿性、耐候性に優れており、これ主成分として含有する透明性フィルムは、高温度下や高湿度下において偏光子が寸法変化し、その応力を受けた場合にも安定した位相差値を確保できる。すなわち、高温度、高湿度の環境下においても位相差が生じにくく、特性変化の少ない光学フィルムを得ることができる。
【0013】
前記光学フィルムにおいて、透明保護フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さd(nm)とした場合に、
面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz)×d)が、30nm以下であることが好ましい。
【0014】
透明保護フィルムの面内位相差は20nm以下、より好ましくは10nm以下であり、かつ厚み方向位相差は30nm以下、より好ましくは20nm以下である。このように、偏光子の透明保護フィルムの残留位相差を小さくすることにより、積層する位相差フィルムの設計が容易になるとともに、位相差フィルムによる補償効果の高い光学フィルムを得ることができる。透明保護フィルムの厚さdは特に制限されないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0015】
さらに本発明は、前記光学フィルムを用いたことを特徴とする画像表示装置、に関する。
【0016】
また本発明は、画像表示装置がIPSモードの液晶表示装置であり、
視認側のセル基板には前記光学フィルムが配置され、
視認側と反対側のセル基板には、偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板が配置されており、かつ、電圧無印加状態において液晶セル内の液晶物質の異常光屈折率方向と当該偏光板の吸収軸が平行状態にあることを特徴とする液晶表示装置、に関する。
【0017】
また本発明は、画像表示装置がIPSモードの液晶表示装置であり、
視認側のセル基板には偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板が配置され、
視認側と反対側のセル基板には、前記光学フィルムが配置されており、かつ、電圧無印加状態において液晶セル内の液晶物質の異常光屈折率方向と当該光学フィルムの吸収軸が直交状態にあることを特徴とする液晶表示装置、に関する。
【0018】
前記IPSモードの液晶表示装置において、偏光板の透明保護フィルムが、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有してなることが好ましい。
【0019】
前記IPSモードの液晶表示装置において、透明保護フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さd(nm)とした場合に、
面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz)×d)が、30nm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の画像表示装置としては、IPSモードの液晶表示装置が好適である。前記本発明の偏光板と特定位相差値の位相差フィルムを積層した光学フィルムをIPSモードの液晶セルのいずれか一方の表面に配置することにより、IPSモードの液晶表示装置おいて従来生じていた黒表示時の光漏れを低減することができる。かかるIPSモードの液晶表示装置は、全方位にわたり高いコントラスト比を有し、広視野角で見やすい表示を実現可能である。
【0021】
特に、前記液晶セル表面に配置する偏光板の透明保護フィルムとして、前記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を主成分として含有する透明保護フィルムを用いた場合には、広視野角で、安定した位相差を確保できる液晶表示装置を得るうえで好適である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明の光学フィルムおよび画像表示装置を図面を参照しながら説明する。図1に示す通り、本発明の光学フィルムは、偏光子1aの両面に透明保護フィルム1bを積層してなる偏光板1の片面に、位相差フィルム2が積層されている。偏光板1の吸収軸と位相差フィルム2の遅相軸は直交または平行となるように積層されている。偏光板1の吸収軸と位相差フィルム2の遅相軸は、積層時における連続貼り合わせ工程の点から平行して積層するのが好ましい。
【0023】
位相差フィルムとしては、前記Nz値および面内位相差Re値を満足するものを特に制限なく使用することができる。たとえば、高分子ポリマーフィルムの複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルムなどがあげられる。
【0024】
高分子ポリマーとしては、たとえば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリノルボルネン等の脂環式ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。位相差フィルムは、高分子ポリマーフィルムを面方向に二軸に延伸する方法、面方向に一軸または二軸に延伸し、厚さ方向にも延伸する方法等により厚さ方向の屈折率を制御することにより得られる。また高分子ポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理して傾斜配向させる方法等により得られる。
【0025】
液晶性ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶性ポリマーの配向フィルムは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより、液晶ポリマーを配向させたもの、特に傾斜配向させたものが好ましい。
【0026】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0027】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0028】
前記偏光子の両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を使用する。かかる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有する透明保護フィルムは、前述の通り、偏光子の寸法変化による応力を受けた場合にも位相差が生じにくい。
【0029】
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、シクロオレフィンを主骨格とてなり、炭素−炭素二重結合を実質的に有しないものである。熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0030】
前記以外の透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0031】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面(前記塗布層を設けない面)には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0032】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0033】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0034】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0035】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等が用いられる。
【0036】
前記位相差フィルムと偏光板の積層法は特に制限されず、粘着剤層等により行うことができる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0037】
光学フィルムや粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0038】
本発明の光学フィルムはIPSモードの液晶表示装置に好適に用いられる。IPSモードの液晶表示装置は、液晶層を狭持する一対の基板と、前記一対の基板の一方に形成された電極群と、前記基板間に挟持された誘電異方性を有する液晶組成物質層と、前記一対の基板の対向に形成されて前記液晶組成物質の分子配列を所定の方向に配列させるための配向制御層および前記電極群に駆動電圧を印加するための駆動手段とを具備した液晶セルを有する。前記電極群は前記配向制御層および前記液晶組成物質層の界面に対して、主として平行な電界を印加するごとく配置された配列構造を有している。
【0039】
図2、図3に示すように本発明の光学フィルム3は液晶セルの視認側または光入射側に配置される。光学フィルム3は、位相差フィルム2側を液晶セル4側とするのが好ましい。光学フィルム3の配置された液晶セル4の反対側には偏光板1が配置される。セル基板4の両側に配置した偏光板1の吸収軸と光学フィルム3(偏光板1)の吸収軸は直交状態に配置されている。偏光板1は光学フィルム3に用いたものと同様の偏光子1aの両面に透明保護フィルム2bを積層したものが用いられる。
【0040】
図2のように、光学フィルム3をIPSモードの液晶セル4の視認側に配置する場合には、視認側と反対側(光入射側)のセル基板4には、偏光板1を電圧無印加状態において液晶セル4内の液晶物質の異常光屈折率方向と偏光板1の吸収軸が平行状態になるように配置するのが好ましい。
【0041】
また図3のように、光学フィルム3をIPSモードの液晶セル4の光入射側に配置する場合には、視認側のセル基板4には偏光板1を配置し、電圧無印加状態において液晶セル4内の液晶物質の異常光屈折率方向と光学フィルム3の吸収軸が直交状態になるように配置するのが好ましい。
【0042】
前記光学フィルム、偏光板は、実用に際して他の光学層を積層して用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)などの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0043】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0044】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0045】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0046】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0047】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0048】
楕円偏光板は液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄等)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0049】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0050】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0051】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの(3M社製、D−BEF等)、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの(日東電工社製、PCF350やMerck社製、Transmax等)如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0052】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0053】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0054】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0055】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0056】
前記光学層を積層した光学フィルム、偏光板は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0057】
液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。液晶表示装置は、一般に必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明において前記光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、前記例示のIPSモードの他、例えばVA型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0058】
液晶表示装置は、照明システムあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。さらには液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0059】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0060】
位相差フィルム、屈折率nx、ny、nzを自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)により計測し、Nz、面内位相差Reを算出した。また、透明保護フィルムについて同様に計測し、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthを算出した。
【0061】
実施例1
(透明保護フィルム)
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン(株)製,ZEONOR1600R)を一軸押出し機に供給したの後、275〜290℃で押出して、厚さ50μmの透明保護フィルムを得た。透明保護フィルムの面内位相差Reは4nm、厚み方向位相差Rthは20nmであった。
【0062】
(偏光板)
前記透明保護フィルムをポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて延伸したフィルム(偏光子:20μm)の両面に接着剤を用いて積層して偏光板を作製した。
【0063】
(光学フィルム)
ポリカーボネートフィルムを延伸することにより、厚さ60μm、面内位相差Reが260nm、Nz=0.5の位相差フィルムを得た。この位相差フィルムと前記偏光板を、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行状態となるように粘着剤を用いて積層し、光学フィルムを作製した。
【0064】
(液晶表示装置)
図2に示すように、光学フィルムの位相差フィルム側を、IPSモードの液晶セルの視認側の面になるように粘着剤で積層した。一方、液晶セルの反対側の面には偏光板を粘着剤で積層して液晶表示装置を作製した。視認側の偏光板は電圧無印加時に液晶セル内の液晶組成物の異常光屈折率方向と偏光板の吸収軸が直交となるように積層した。また偏光板の吸収軸と光学フィルムの吸収軸は直交するように配置した。
【0065】
(評価)
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=35であった。コントラスト比の測定は、EZ Contrast(ELDIM社製)を用いて行った。また、この液晶表示装置を60℃、95%RHの条件下に200時間投入した後、黒表示の面内ムラを目視に確認したところ、殆どムラが観測されなかった。
【0066】
実施例2
(透明保護フィルム)
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(JSR(株)製,ARTON)を塩化メチレンに溶解した溶液を得た。当該溶液を用いてキャティング法により、厚さ40μmの透明保護フィルムを得た。透明保護フィルムの面内位相差Reは4nm、厚み方向位相差Rthは22nmであった。
【0067】
(偏光板)
前記透明保護フィルムをポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて延伸したフィルム(偏光子:20μm)の両面に接着剤を用いて積層して偏光板を作製した。
【0068】
(光学フィルム)
実施例1で作成したポリカーボネート製の位相差フィルムと前記偏光板を、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行状態となるように粘着剤を用いて積層し、光学フィルムを作製した。
【0069】
(液晶表示装置)
図2に示すように、光学フィルムの位相差フィルム側を、IPSモードの液晶セルの視認側の面になるように粘着剤で積層した。一方、液晶セルの反対側の面には偏光板を粘着剤で積層して液晶表示装置を作製した。視認側の偏光板は電圧無印加時に液晶セル内の液晶組成物の異常光屈折率方向と偏光板の吸収軸が直交となるように積層した。また偏光板の吸収軸と光学フィルムの吸収軸は直交するように配置した。
【0070】
(評価)
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=35であった。また、この液晶表示装置を60℃、95%RHの条件下に200時間投入した後、黒表示の面内ムラを目視に確認したところ、殆どムラが観測されなかった。
【0071】
比較例1
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて延伸したフィルム(偏光子:20μm)の両面に、透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを接着剤を用いて積層して偏光板を作製した。トリアセチルセルロースフィルムは厚さ80μm、面内位相差Reは4nm、厚み方向位相差Rthは45nmであった。
【0072】
この偏光板を、実施例1と同様のIPSモードの液晶セルの両面に粘着剤で積層して液晶表示装置を作製した。また液晶セルの両面に配置した偏光板は偏光軸が互いに直交するように配置した。
【0073】
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=9であった。
【0074】
比較例2
実施例1で用いた偏光板を、実施例1と同様のIPSモードの液晶セルの両面に粘着剤で積層して液晶表示装置を作製した。また液晶セルの両面に配置した偏光板は偏光軸が互いに直交するように配置した。
【0075】
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=20であった。
【0076】
比較例3
実施例1で作成したポリカーボネート製の位相差フィルムを、その遅相軸が偏光子の吸収軸と平行になるように直接偏光子に積層することにより偏光光学フィルムを作製した。このようにして作製した偏光光学フィルムを、実施例1と同様に、位相差フィルム側をIPSモードの液晶セルの視認側の面になるように粘着剤で積層した。一方、反対側の面には実施例1で用いた偏光板を粘着剤で積層して、液晶表示装置を作製した。
【0077】
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=50であった。また、この液晶表示装置を60℃、95%RHの条件下に200時間投入した後、黒表示の面内ムラを目視に確認したところ、偏光板の収縮により引き起こされる位相差フィルムの位相差値の変化によるムラが観測された。
【0078】
比較例4
実施例1で作成した偏光板に、ポリカーボネートフィルムを延伸することにより得られた、面内位相差100nm、Nz=0.5の位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行状態になるように粘着剤を用いて積層することにより偏光光学フィルムを作製した。このようにして作製した偏光光学フィルムを、実施例1と同様に、位相差フィルム側をIPSモードの液晶セルの視認側の面になるように粘着剤で積層した。一方、反対側の面には実施例1で用いた偏光板を粘着剤で積層して、液晶表示装置を作製した。
【0079】
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=15であった。
【0080】
比較例5
実施例1で作成した偏光板に、ポリカーボネートフィルムを延伸することにより得られた、面内位相差260nm、Nz=1.0の位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行状態になるように粘着剤を用いて積層することにより偏光光学フィルムを作製した。このようにして作製した偏光光学フィルムを、実施例1と同様に、位相差フィルム側をIPSモードの液晶セルの視認側の面になるように粘着剤で積層した。一方、反対側の面には実施例1で用いた偏光板を粘着剤で積層して、液晶表示装置を作製した。
【0081】
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=8であった。
【0082】
比較例6
実施例1で作成した偏光板に、ポリカーボネートフィルムを延伸することにより得られた、面内位相差120nm、Nz=1.0の位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行状態になるように粘着剤を用いて積層することにより偏光光学フィルムを作製した。このようにして作製した偏光光学フィルムを、実施例1と同様に、位相差フィルム側をIPSモードの液晶セルの視認側の面になるように粘着剤で積層した。一方、反対側の面には実施例1で用いた偏光板を粘着剤で積層して、液晶表示装置を作製した。
【0083】
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=8であった。
【0084】
比較例7
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて延伸したフィルム(偏光子:20μm)の両面に、透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを接着剤を用いて積層して偏光板を作製した。当該偏光板に、実施例1で作成したポリカーボネート製の位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行状態になるように粘着剤を用いて積層することにより偏光光学フィルムを作製した。このようにして作製した偏光光学フィルムを、実施例1と同様に、位相差フィルム側をIPSモードの液晶セルの視認側の面になるように粘着剤で積層した。一方、反対側の面には実施例1で用いた偏光板を粘着剤で積層して、液晶表示装置を作製した。
【0085】
この液晶表示装置において、直交する偏光板の光軸に対する方位方向45度において法線方向からの傾き70度方向のコントラスト比を測定したところ、コントラスト比=4であった。また、この液晶表示装置を60℃、95%RHの条件下に200時間投入した後、黒表示の面内ムラを目視に確認したところ、偏光板の収縮により引き起こされる位相差フィルムの位相差値の変化によるムラが観測された。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の光学フィルムの断面図である。
【図2】
本発明の液晶表示装置の概念図である。
【図3】
本発明の液晶表示装置の概念図である。
【符号の説明】
1  偏光板
1a 偏光子
1b 透明保護フィルム
2  位相差フィルム
3  光学フィルム
4  IPSモード液晶セル

Claims (7)

  1. 偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板の片面に、偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が直交または平行となるように積層した光学フィルムにおいて、
    前記位相差フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さd(nm)とした場合に、
    Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表されるNz値が、0.4〜0.6を満足し、
    かつ面内位相差Re=(nx−ny)×dが、200〜350nmを満足し、
    透明保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有してなることを特徴とする光学フィルム。
  2. 透明保護フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さd(nm)とした場合に、
    面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
    かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz)×d)が、30nm以下であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルム。
  3. 請求項1または2記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする画像表示装置。
  4. 画像表示装置がIPSモードの液晶表示装置であり、
    視認側のセル基板には請求項1または2記載の光学フィルムが配置され、
    視認側と反対側のセル基板には、偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板が配置されており、かつ、電圧無印加状態において液晶セル内の液晶物質の異常光屈折率方向と当該偏光板の吸収軸が平行状態にあることを特徴とする液晶表示装置。
  5. 画像表示装置がIPSモードの液晶表示装置であり、
    視認側のセル基板には偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板が配置され、
    視認側と反対側のセル基板には、請求項1または2記載の光学フィルムが配置されており、かつ、電圧無印加状態において液晶セル内の液晶物質の異常光屈折率方向と当該光学フィルムの吸収軸が直交状態にあることを特徴とする液晶表示装置。
  6. 偏光板の透明保護フィルムが、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有してなることを特徴とする請求項4または5記載の液晶表示装置。
  7. 透明保護フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さd(nm)とした場合に、
    面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
    かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz)×d)が、30nm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。
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