A.偏光素子全体の概略
図1は、本発明の好ましい実施形態による偏光素子の概略断面図である。なお、見やすくするために、図1における各構成部材の縦、横および厚みの比率は、実際とは異なって記載されていることに留意されたい。この偏光素子1は、偏光子20と、第1の光学素子30と、第2の光学素子40とをこの順に備える。第1の光学素子30は、下記式(1)および(2)を満足し、ならびに、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含む。好ましくは、第1の光学素子30の遅相軸は、偏光子20の吸収軸と実質的に平行又は直交である。第2の光学素子40は、実質的に光学的に負の一軸性を有する。
200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
0nm<Rth[590]<Re[590] …(2)
ただし、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。
B.液晶パネル全体の概略
図2は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。本発明の液晶パネル100は、液晶セル10と、液晶セル10の少なくとも一方の側に配置された偏光素子1(1’)とを備える。好ましくは、上記液晶セル10は、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を備える。上記偏光素子1(1’)は、第1の偏光子20(20’)と、第1の光学素子30(30’)と、第2の光学素子40(40’)とをこの順に備え、上記第1の光学素子30(30’)および上記第2の光学素子40(40’)が、上記偏光子20(20’)と上記液晶セル10との間に配置されてなる。上記第1の光学素子30(30’)は、下記式(1)および(2)を満足し、ならびに、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含む。上記第2の光学素子40(40’)は、実質的に光学的に負の一軸性を有する。
200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
0nm<Rth[590]<Re[590] …(2)
ただし、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。
本発明の液晶パネルの好ましい実施形態の具体例としては、図2(a)〜(c)が挙げられる。図2(a)は、液晶セル10の一方の側に本発明の偏光素子1が配置され、液晶セル10の他方の側に偏光子21が配置される。図2(b)は、液晶セル10の一方の側に本発明の偏光素子1が配置され、液晶セル10の他方の側には、他の光学素子50(好ましくは、実質的に光学的に負の一軸性を有する光学素子)と、偏光子21が配置される。図2(c)は、液晶セル10の両側に本発明の偏光素子1、1’が配置される。この場合、偏光素子1および1’は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、これらの図示例では、第1の光学素子の遅相軸が隣接する偏光子の吸収軸と平行である場合を示しているが、これは直交であってもよい。このような特定の光学素子を液晶セルに積層することにより、きわめて良好な光学補償が行われ、その結果、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比が高く、且つ、斜め方向のカラーシフト量が小さい液晶表示装置を実現できる。図2(a)〜(c)のうち、最も好ましい実施形態としては、(a)および(b)の構成である。液晶パネルが少ない部材で構成されるため、光学素子の軸ずれにより、光学特性が低下しにくく、且つ、経済的であるからである。なお、本発明の液晶パネルは、上記の実施形態に限定されず、例えば、図2に示した各構成部材の間に他の構成部材(好ましくは、等方性フィルム)が配置されたものであっても良い。以下、本発明の偏光素子および液晶パネルの構成部材について詳細に説明する。
C.偏光子
本明細書において、偏光子とは、自然光または偏光を任意の偏光に変換し得る光学フィルムをいう。本発明の偏光板に用いられる偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。好ましくは、自然光または偏光を直線偏光に変換するフィルムが用いられる。
上記偏光子の厚みとしては、任意の適切な厚みが採用され得る。偏光子の厚みは、代表的には5μm〜80μmであり、好ましくは10μm〜50μmであり、さらに好ましくは20μm〜40μmである。上記の範囲であれば、光学特性や機械的強度に優れる。
C−1.偏光子の光学特性
上記偏光子の23℃で測定した波長440nmの透過率(単体透過率ともいう)は、好ましくは41%以上、さらに好ましくは43%以上である。なお、単体透過率の理論的な上限は50%である。また、偏光度は、好ましくは99.8%〜100%であり、更に好ましくは、99.9%〜100%である。上記の範囲であれば、液晶表示装置に用いた際に正面方向のコントラスト比をより一層高くすることができる。
上記単体透過率および偏光度は、分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光子の平行透過率(H0)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H0)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlSZ8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
C−2.偏光子の配置手段
図1を参照すると、偏光子20を配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記偏光子20は、液晶セルに対向する側の表面に接着剤層または粘着剤層(図示せず)を設け、第1の光学素子30の表面に接着される。各光学素子の隙間をこのように接着剤層または粘着剤層で満たすことによって、液晶表示装置に組み込んだ際に、各光学素子の光学軸の関係がずれることを防止したり、各光学素子同士が擦れて傷がついたりすることを防ぐことができる。また、各光学素子の隙間の界面反射を少なくし、液晶表示装置に用いた際に、正面方向および斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
上記接着剤または粘着剤の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、接着剤の好適な厚みの範囲は、一般には、0.1μm〜50μmであり、好ましくは0.1μm〜20μmであり、特に好ましくは0.1μm〜10μmである。粘着剤の好適な厚みの範囲は、一般には、1μm〜100μmであり、好ましくは5μm〜80μmであり、特に好ましくは10μm〜50μmである。
上記接着剤または粘着剤層を形成する接着剤または粘着剤としては、被着体の種類に応じて、任意の適切な接着剤または粘着剤が採用され得る。接着剤としては、特に偏光子にポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムが使用された場合には、水性接着剤が好ましく用いられる。特に好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするものが用いられる。具体例としては、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」]が挙げられる。粘着剤としては、特に光学的透明性に優れ、適度なぬれ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるという点で、アクリル系重合体をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。具体例としては、アクリル系粘着剤を粘着剤層として備える光学用両面テープ[綜研化学(株)製 商品名「SK−2057」]が挙げられる。
上記図2を参照すると、好ましくは、液晶セルの一方の側に配置された上記偏光子20は、その吸収軸が、液晶セルの他方の面に配置される偏光子21(20’)の吸収軸と実質的に直交するように配置される。なお、本明細書において、「実質的に直交」とは、偏光子20の吸収軸と偏光子21(20’)の吸収軸とのなす角度が、90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、更に好ましくは90°±0.5°である。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、液晶表示装置に用いた際に、正面および斜め方向のコントラスト比が低下する傾向がある。
C−3.偏光子に用いられる光学フィルム
上記偏光子は、例えば、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムからなる。上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、例えば、特開2000−315144号公報[実施例1]に記載の方法により製造される。
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。これらのなかでも好ましくは、酢酸ビニルである。
上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度としては、任意の適切な平均重合度が採用され得る。平均重合度は、好ましくは1200〜3600であり、さらに好ましくは1600〜3200であり、最も好ましくは1800〜3000である。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じた方法によって測定することができる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、偏光子の耐久性の点から、好ましくは90.0〜99.9モル%であり、さらに好ましくは95.0〜99.9モル%であり、最も好ましくは98.0〜99.9モル%である。
上記けん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、好ましくは、可塑剤として多価アルコールを含有し得る。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用され得る。本発明においては、延伸性、透明性、熱安定性等の観点から、エチレングリコールまたはグリセリンが好ましく用いられる。
本発明における多価アルコールの使用量としては、ポリビニルアルコール系樹脂の全固形分100に対して、好ましくは1〜30(重量比)であり、さらに好ましくは3〜25(重量比)であり、最も好ましくは0.05〜0.3(重量比)である。上記の範囲であれば、染色性や延伸性をより一層向上させることができる。
上記ニ色性物質としては、任意の適切なニ色性物質が採用され得る。具体的には、ヨウ素またはニ色性染料等が挙げられる。本明細書においては、「ニ色性」とは、光軸方向とそれに直交する方向との2方向で光の吸収が異なる光学的異方性をいう。
上記ニ色性染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジSおよびファーストブラック等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、図3を参照して説明する。図3は、本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム201は、繰り出し部200から繰り出され、ヨウ素水溶液浴210中に浸漬され、速比の異なるロール211及び212でフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤および染色工程に供される。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液の浴220中に浸漬され、速比の異なるロール221及び222でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理に供される。架橋処理されたフィルムは、ロール231および232によって、ヨウ化カリウムを含む水溶液浴230中に浸漬され、水洗処理に供される。水洗処理されたフィルムは、乾燥手段240で乾燥されることにより水分率が調節され、巻き取り部260にて巻き取られる。偏光子250は、これらの工程を経て、上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを元長の5〜7倍に延伸することで得ることができる。
上記偏光子の水分率としては、任意の適切な水分率が採用され得る。好ましくは、水分率は5〜40%であり、さらに好ましくは10〜30%であり、最も好ましくは20〜30%である。
また、本発明に用いられる偏光子としては、上述した偏光子の他に、例えば、二色性物質を練り込んだ高分子フィルムの延伸フィルム、二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプのO型偏光子(米国特許5,523,863号)、およびリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型偏光子(米国特許6,049,428号)等も用いることができる。
なお、本発明の液晶パネルにおいて、液晶セルの両側に配置される偏光子は、同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
D.第1の光学素子
上記図1を参照すると、上記第1の光学素子30は、偏光子20と第2の光学素子40との間に配置される。このような形態によれば、当該第1の光学素子30が、偏光子20の液晶セル側の保護層として機能することとなり、偏光子の劣化を防ぎ、結果として、液晶表示装置の表示特性を長時間高く維持することができる。この第1の光学素子30は、下記式(1)および(2)を満足し、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含む。
200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
0nm<Rth[590]<Re[590] …(2)
ただし、Re[590]およびRth[590]は、それぞれ、23℃における波長590nmの光で測定したフィルム面内の位相差値および厚み方向の位相差値である。
本発明において、上記第1の光学素子は、光の波長(通常、可視光領域)に対して、面内の位相差値が約1/2であるλ/2板として用いられる。本明細書において「λ/2板」とは、ある特定の振動方向を持った直線偏光を、当該直線偏光の振動方向とは直交する振動方向を持った直線偏光に変換したり、右円偏光を左円偏光(または、左円偏光を右円偏光)に変換したりする機能を有するものをいう。通常、直交配置にした2枚の偏光子は、正面方向からは光漏れは生じにくいが、斜め方向では光漏れが生じ、各偏光子の吸収軸を0°、90°とした場合に、45°方位で光漏れ量が最大となる傾向がある。本発明に用いられる第1の光学素子は、液晶表示装置の斜め方向で生じる光漏れを低減し、斜め方向のコントラスト比を高くするために用いられる。
さらに、上記第1の光学素子は、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含むことによって、光弾性係数の絶対値を小さくすることができるので、偏光子の収縮応力や、バックライトの熱によって発生する位相差値のずれやムラを防ぎ、良好な表示均一性を有する液晶パネルおよび液晶表示装置を得ることができる。
D−1.第1の光学素子の光学特性
本明細書において、Re[590]とは、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値をいう。Re[590]は、波長590nmにおける光学素子(または、位相差フィルム)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)を光学素子(または、位相差フィルム)の厚みとしたとき、式:Re[590]=(nx−ny)×dによって求めることができる。なお、遅相軸とは、面内の屈折率の最大となる方向をいう。
本発明に用いられる第1の光学素子のRe[590]は、200nm〜350nmであり、さらに好ましくは220nm〜320nmであり、特に好ましくは240nm〜300nmであり、最も好ましくは260nm〜280nmである。上記Re[590]を測定波長の約1/2とすることによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。
一般的に、光学素子(又は位相差フィルム)の位相差値は、波長に依存して変化する場合がある。これを位相差フィルムの波長分散特性という。本明細書において、上記波長分散特性は、23℃における波長480nmおよび590nmの光で測定した面内の位相差値の比:Re[480]/Re[590]によって求めることができる。
本発明に用いられる第1の光学素子のRe[480]/Re[590]は、好ましくは0.8〜1.2であり、さらに好ましくは0.8〜1.1であり、特に好ましくは0.8〜1.0である。上記の範囲内で値が小さいほど、可視光の広い領域で位相差値が一定になるため、液晶表示装置に用いた場合に、光漏れする光に、波長の偏りが生じ難く、液晶表示装置の斜め方向のカラーシフト量をより一層小さくすることができる。本発明において、第1の光学素子は、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含むことによって、従来の芳香族系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムに比べ、波長分散特性を小さくすることができる。その結果、液晶表示装置の斜め方向のカラーシフト量をより一層小さくすることができる。
本明細書において、Rth[590]とは、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rth[590]は、波長590nmにおける光学素子(または、位相差フィルム)の遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれnx、nzとし、d(nm)を光学素子(または、位相差フィルム)厚みとしたとき、式:Rth[590]=(nx−nz)×dによって求めることができる。なお、遅相軸とは、面内の屈折率の最大となる方向をいう。
本発明に用いられる第1の光学素子のRth[590]は、式:0nm<Rth[590]<Re[590]を満足する範囲であれば特に制限はない。このような範囲に設定することによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。好ましくは、後述する第1の光学素子のNz係数に応じて適宜、適切な範囲が選択され得る。例えば、Nz係数が0.5である場合、Rth[590]として好ましくは80nm〜175nmであり、さらに好ましくは110nm〜160nmであり、特に好ましくは120nm〜150nmであり、最も好ましくは130nm〜140nmである。
Re[590]およびRth[590]は、王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA21−ADH」〕を用いても求めることができる。23℃における波長590nmの面内の位相差値(Re)、遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値(R40)、光学素子(または、位相差フィルム)の厚み(d)及び光学素子(または、位相差フィルム)の平均屈折率(n0)を用いて、以下の式(i)〜(iv)からコンピュータ数値計算によりnx、ny及びnzを求め、次いで式(iv)によりRthを計算できる。ここで、φ及びny’はそれぞれ以下の式(v)及び(vi)で示される。
Re=(nx−ny)×d …(i)
R40=(nx−ny’)×d/cos(φ) …(ii)
(nx+ny+nz)/3=n0 …(iii)
Rth=(nx−nz)×d …(iv)
φ =sin-1[sin(40°)/n0] …(v)
ny’=ny×nz[ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)]1/2 …(vi)
本明細書において、Rth[590]/Re[590]は、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値と面内の位相差値との比をいう(Nz係数ともいう)。
上記第1の光学素子のNz係数は、0を超え1より小さいものが用いられる。すなわち、上記第1の光学素子は、0nm<Rth[590]<Re[590]であるものが用いられる。上記第1の光学素子は、Nz係数を、0を超え1より小さくすることによって、nx>nz>nyの特性を有するものを得ることができる。Nz係数を上記の範囲とすることによって、斜め方向の位相差値が適切に調整され(例えば、位相差値の角度依存性が小さくする)液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
上記第1の光学素子の、Nz係数の好ましい範囲は、本発明の偏光素子が液晶セルの片側のみに用いられる場合と、両側に用いられる場合で異なる。図2を参照すると、図2(a)(b)に示すように、偏光素子1が液晶セル10の片側のみに用いられる場合、第1の光学素子30のNz係数として好ましくは0.2〜0.8であり、さらに好ましくは0.3〜0.7であり、特に好ましくは0.4〜0.6である。最も好ましくは、上記第1の光学素子のNz係数は、実質的に0.5である。なお、本明細書において、「実質的に0.5」とは、Nz係数が0.5±0.05である場合を包含し、好ましくは0.5±0.03であり、特に好ましくは0.5±0.02である。図2(c)に示すように、偏光素子1(1’)が液晶セルの両側にそれぞれ用いられる場合、好ましくは、第1の光学素子30(30’)のNz係数が共に実質的に0.75であるか、または、一方の側の、第1の光学素子30のNz係数が実質的に0.75であり、他方の側の、第1の光学素子30’のNz係数が実質的に0.25である。なお、本明細書において、「実質的に0.75」とは、Nz係数が0.75±0.05である場合を包含し、好ましくは0.75±0.03であり、特に好ましくは0.75±0.02である。また、「実質的に0.25」とは、Nz係数が0.25±0.05である場合を包含し、好ましくは0.25±0.03であり、特に好ましくは0.25±0.02である。
D−2.第1の光学素子の配置手段
図1を参照すると、上記第1の光学素子30を、偏光子20と第2の光学素子40との間に配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記第1の光学素子30は、その両面に接着剤層または粘着剤層を設け(図示せず)、偏光子20および第2の光学素子40に接着させる。各光学素子の隙間をこのように接着剤層または粘着剤層で満たすことによって、液晶表示装置に組み込んだ際に、各光学素子の光学軸の関係がずれることを防止したり、各光学素子同士が擦れて傷がついたりすることを防ぐことができる。また、各光学素子の隙間の界面反射を少なくし、液晶表示装置に用いた際に、正面方向および斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
上記接着剤層または粘着剤層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて、適宜、適切な範囲に決定できる。接着剤層の好適な厚みの範囲は、一般には、0.01μm〜50μmであり、好ましくは0.05μm〜20μmであり、最も好ましくは0.1μm〜10μmである。粘着剤層の好適な厚みの範囲は、一般には、1μm〜100μmであり、好ましくは5μm〜80μmであり、最も好ましくは10μm〜50μmである。
上記接着剤層または粘着剤層を形成する接着剤または粘着剤としては、任意の適切な接着剤または粘着剤が採用され得る。接着剤としては、例えば、熱可塑性接着剤、ホットメルト接着剤、ゴム系接着剤、熱硬化性接着剤、モノマー反応型接着剤、無機系接着剤、天然物接着剤などが挙げられる。粘着剤としては、例えば、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系型粘着剤、ホットメルト型粘着剤、液状硬化型粘着剤、硬化型粘着剤、カレンダー法による粘着剤などが挙げられる。特に好ましくは、光学透明性に優れ、適度なぬれ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性に優れるという点で、アクリル系重合体をベースポリマーとする溶剤型粘着剤(アクリル系粘着剤ともいう)が好ましく用いられる。具体例としては、アクリル系粘着剤を粘着剤層として備える光学用両面テープ[綜研化学(株)製 商品名「SK−2057」]が挙げられる。
好ましくは、上記第1の光学素子30は、その遅相軸が、偏光子20の吸収軸と実質的に平行または直交するように配置される。最も好ましくは、上記第1の光学素子30は、その遅相軸が、偏光子20の吸収軸と実質的に平行となるように配置される。このような形態によれば、第1の光学素子30と偏光子20を積層したロール状の光学素子の作製が可能で、生産性を大幅に向上し得るからである。なお、本明細書において、「実質的に平行」とは、第1の光学素子30の遅相軸と第1の偏光子20の吸収軸とのなす角度が、0°±2.0°である場合を包含し、好ましくは0°±1.0°であり、更に好ましくは0°±0.5°である。また、「実質的に直交」とは、第1の光学素子30の遅相軸と第1の偏光子20の吸収軸とのなす角度が、90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、更に好ましくは90°±0.5°である。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、液晶表示装置に用いた際に、正面および斜め方向のコントラスト比が低下する傾向がある。
D−3.第1の光学素子の構成
第1の光学素子の構成(積層構成)は、上記D−1項に記載の光学特性を満足するものであれば、特に制限はない。具体的には、第1の光学素子は、位相差フィルム単独であってもよく、2枚以上の位相差フィルムの積層体であってもよく、位相差フィルムと他のフィルム(好ましくは、等方性フィルム)との積層体であってもよい。好ましくは、第1の光学素子は、単独の位相差フィルムである。
図4は、上記第1の光学素子の好ましい実施形態の代表例を示す概略斜視図である。図4(a)は、第1の光学素子が単独の位相差フィルム31である場合を示す。このような形態であれば、位相差フィルムが偏光子の液晶セル側の保護層を兼ねることとなり、液晶パネルの薄型化に貢献し得る。図4(b)は、第1の光学素子30が位相差フィルム31と等方性フィルム32との積層体である場合を示す。このような形態によれば、等方性フィルム32を介することにより、偏光子の収縮応力やバックライトの熱が位相差フィルム31に伝播することを防ぐので、より光学均一性に優れた液晶パネルを得ることができる。図4(c)は、第1の光学素子30が位相差フィルム33と位相差フィルム34の積層体である場合を示す。位相差フィルム33と位相差フィルム34は、それぞれの遅相軸が平行となるように配置される。これら図示例では、位相差フィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸と平行である場合を示しているが、これは直交でもよい。また、第1の光学素子が積層体である場合には、接着剤層や粘着剤層(いずれも図示せず)を含んでもよい。積層体が2枚以上の位相差フィルムを含む場合には、これらの位相差フィルムは、同一であっても異なっていてもよい。位相差フィルムの詳細についてはD−4項で、等方性フィルムについてはF項で後述する。
第1の光学素子に用いられる位相差フィルムのRe[590]は、用いられる位相差フィルムの枚数によって、適宜、選択することができる。例えば、第1の光学素子が位相差フィルム1枚のみで構成される場合には、位相差フィルムのRe[590]は、第1の光学素子のRe[590]と等しくすることが好ましい。したがって、上記第1の光学素子を、偏光子や液晶セルに積層する際に用いられる粘着剤層や接着剤層等の位相差値は、できるかぎり小さいことが好ましい。また、例えば、第1の光学素子が2枚以上の位相差フィルムを含む積層体である場合には、それぞれの位相差フィルムのRe[590]の合計が、第1の光学素子のRe[590]と等しくなるように設計することが好ましい。具体的には、2枚の位相差フィルムをそれぞれの遅相軸が平行となるように積層して、Nz係数が0.5であり、Re[590]が270nmである第1の光学素子を作製する場合には、Nz係数が0.5である位相差フィルムのRe[590]を、それぞれ135nmとすることができる。なお、ここでは簡単のため、位相差フィルムが2枚以下の場合についてのみ示したが、3枚以上の位相差フィルムを含む積層体についても本発明が適用可能であることはいうまでもない。
上記第1の光学素子の全体厚みは、20μm〜400μmであることが好ましく、さらに好ましくは30μm〜300μmであり、最も好ましくは40μm〜200μmである。上記第1の光学素子は、上記の厚みの範囲とすることによって、実用的に十分な機械的強度を有し、且つ、薄型の液晶パネルを得ることができる。
D−4.第1の光学素子に用いられる位相差フィルム
第1の光学素子に用いられる位相差フィルムとしては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムが用いられる。なお、本明細書において「延伸フィルム」とは、適当な温度で未延伸のフィルムに張力を加え、または予め延伸されたフィルムにさらに張力を加え、特定の方向に分子の配向を高めたプラスチックフィルムをいう。ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、他の脂肪族系樹脂を主成分とする高分子フィルムよりも、延伸によって位相差が生じやすく、芳香族系樹脂を主成分とする高分子フィルムよりも、光弾性係数の絶対値が小さいという特徴を有する。本発明の大きな成果の一つは、光弾性係数の絶対値が小さく、nx>nz>nyの関係を有し、且つ、上記式(1)および(2)を満足する位相差フィルムを実際に作製したことである。
上記位相差フィルムの厚みは、第1の光学素子の積層構造や目的に応じて、適宜選択され得る。好ましくは20μm〜200μmであり、さらに好ましくは30μm〜180μmであり、最も好ましくは40μm〜150μmである。上記の範囲であれば、機械的強度や光学均一性に優れ、上記D−1項に記載の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。
上記位相差フィルムの光弾性係数の絶対値(C[590](m2/N))は、好ましくは1×10-12〜100×10-12であり、さらに好ましくは1×10-12〜60×10-12であり、特に好ましくは1×10-12〜30×10-12であり、最も好ましくは1×10-12〜8×10-12である。光弾性係数の絶対値は、小さいほど、液晶表示装置に用いた際に、偏光子の収縮応力やバックライトの熱により発生する位相差値のずれやムラを防ぎ、良好な表示均一性を有する液晶パネルおよび液晶表示装置を得ることができる。
上記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。第2の光学素子も同様の光透過率を有することが好ましい。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーをメタセシス反応させて、開環重合体を得、さらに、当該開環重合体を水素添加して得ることができる。例えば、(株)エヌ・ティー・エス出版「オプティカルポリマー材料の開発・応用技術」p.103〜p.111(2003年版)に記載の方法や、特開2001−350017号公報の段落[0035]〜[0037]に記載の方法により製造される。
上記メタセシス反応に用いられる開環重合用の触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物;硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;あるいは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等の反応条件は、ノルボルネン系モノマーの種類や目的とする分子量等に応じて適宜選択され得るが、通常、重合温度の範囲は−50℃〜100℃が好ましく、重合圧力の範囲は0〜50kgf/cm2が好ましい。
上記水素添加したシクロオレフィン系樹脂は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う水素添加反応によって得ることができる。水素化触媒の具体例としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組合せからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナ等の金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
上記ノルボルネン系モノマーとしては、従来公知のものから適宜、適切なものが選択され得る。具体例としては、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−エチリデン−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2.3−シクロペンタジエノナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。上記ノルボルネン系モノマーは、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記ノルボルネン系モノマーは、任意の適切な変性を行ってから用いることもできる。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂の水素添加率は、耐熱劣化性、耐光劣化性の観点から、通常90%以上のものが用いられる。好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。上記水素添加率は、当該樹脂の1H−NMR(500MHz)を測定し、パラフィン系水素とオレフィン系水素の、それぞれの積分強度比から求めることができる。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは20,000〜400,000、さらに好ましくは30,000〜300,000、最も好ましくは40,000〜200,000の範囲のものである。重量平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が用いられ得る。例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、およびソルベントキャスティング法等から適宜、適切なものが選択され得る。これらの成形加工法のなかでも、特に好ましくは、押出成形法またはソルベントキャスティング法である。得られる高分子フィルムの平滑性を高め、良好な光学均一性(例えば、位相差値が面内にも厚み方向にも均一であるもの)を得ることができるからである。
上記押出成形法は、具体的には、主成分となる樹脂、可塑剤、添加剤等を含む樹脂組成物を加熱溶融し、これを、Tダイ等を用いてキャスティングロール等の基材(支持体ともいう)の表面に、薄膜状に押出して、冷却させてフィルムを製造する方法である。上記ソルベントキャスティング法は、具体的には、主成分となる樹脂、可塑剤、添加剤等を含む樹脂組成物を溶剤に溶解した濃厚溶液(ドープ)を脱法し、エンドレスステンレスベルト、回転ドラム表面、高分子フィルム(例えばPETフィルム)などの基材(支持体ともいう)の表面に均一に薄膜状に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを製造する方法である。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの成形時に採用される条件は、樹脂の組成や種類、成形加工法によって適宜選択され得る。上述した押出成形法の場合、特に制限はないが、押出法として好ましくはTダイを用いた方法であり、樹脂温度は240℃〜300℃で、引き取りロール(冷却ドラム)の温度は100℃〜150℃とし、高温から徐々に冷却させることが好ましい。上述したソルベントキャスティング法の場合、特に制限はないが、用いられる溶剤として好ましくは、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等が挙げられる。上記溶剤の乾燥温度として好ましくは、50℃〜250℃であり、さらに好ましくは80℃〜150℃であり、低温から徐々に昇温して乾燥させることが好ましい。このような条件を選択することによって、光学均一性の高い位相差フィルムを得ることができる。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムには、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、上記添加剤の含有量は、高分子フィルムの全固形分100に対して、好ましくは10(重量比)〜0.01(重量比)であり、さらに好ましくは8(重量比)〜0.05(重量比)であり、最も好ましくは5(重量比)〜0.1(重量比)である。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、上述したほかにも、市販の光学フィルムをそのまま用いることもできる。また、市販の光学フィルムに延伸処理/または緩和処理などの2次加工を施してから用いても良い。市販のノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの例としては、日本ゼオン(株)製 商品名「ゼオネックスシリーズ」(480、480R等)、同社製 商品名「ゼオノアシリーズ」(ZF14、ZF16等)、JSR(株)製 商品名「アートンシリーズ」(ARTON G、ARTON F等)などが挙げられる。
第1の光学素子に用いられる位相差フィルムは、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で、加熱延伸して得ることができる。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向の収縮力を付与し、厚み方向の屈折率(nz)を高めるために用いられる。上記高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せる方法としては、特に制限はないが、上記高分子フィルムと上記収縮性フィルムとの間に、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層を設けて接着する方法が、作業性、経済性に優れる点から好ましい。
第1の光学素子に用いられる位相差フィルムの製造方法の一例について、図5を参照して説明する。図5は、第1の光学素子に用いられる位相差フィルムの代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルム302は、第1の繰り出し部301から繰り出され、ラミネートロール307、308により、当該高分子フィルム302の両面に、第2の繰り出し部303から繰り出された粘着剤層を備える収縮性フィルム304と、第3の繰り出し部305から繰り出された粘着剤層を備える収縮性フィルム306とが貼り合される。両面に収縮性フィルムが貼着された高分子フィルムは、温度制御手段309によって一定温度に保持されながら、速比の異なるロール310、311、312および313でフィルムの長手方向の張力を付与され(同時に収縮性フィルムが収縮することによって、当該高分子フィルムへ厚み方向にも張力が付与される)ながら、延伸処理に供される。延伸処理されたフィルム318は、第1および第2の巻き取り部314および316にて、収縮性フィルム315、317が粘着剤層と共に剥離された後、第3の巻き取り部319で巻き取られる。
上記収縮性フィルムは、140℃におけるフィルム長手方向の収縮率:S(MD)が、2.7%〜9.4%であって、幅方向の収縮率:S(TD)が、4.6%〜15.8%であるものが好ましく用いられる。また、上記収縮性フィルムは、幅方向の収縮率と長手方向の収縮率の差:ΔS=S(TD)−S(MD)が、3.2%〜9.6%の範囲にあるものが好ましい。上記の範囲であれば、光学均一性に優れ、上記D−1項に記載の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。
上記収縮率S(MD)およびS(TD)は、JIS Z 1712−1997の加熱収縮率A法に準じて求めることができる(ただし、加熱温度は120℃に代えて140℃とし、試験片に荷重3gを加えたことが異なる)。具体的には、幅20mm、長さ150mmの試験片を縦(MD)、横(TD)方向から各5枚採り、それぞれの中央部に約100mmの距離において標点をつけた試験片を作製する。該試験片は、温度140℃±3℃に保持された空気循環式乾燥オーブンに、荷重3gをかけた状態で垂直につるし、15分間加熱した後、取り出し、標準状態(室温)に30分間放置してから、JIS B 7507に規定するノギスを用いて、標点間距離を測定して、5個の測定値の平均値を求め、S(%)=[[加熱前の標点間距離(mm)−加熱後の標点間距離(mm)]/加熱前の標点間距離(mm)]×100より算出することができる。
上記収縮性フィルムは、好ましくは、二軸延伸フィルムおよび一軸延伸フィルム等の延伸フィルムである。上記収縮性フィルムは、例えば、押出法によりシート状に成形された未延伸フィルムを同時二軸延伸機等で所定の倍率に縦および/または横方向に延伸して得ることができる。なお、成形および延伸条件は、用いる樹脂の組成や種類や目的に応じて、適宜選択され得る。
上記収縮性フィルムを形成する材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。本発明に用いられる収縮性フィルムとしては、これらのなかでも、特に、機械的強度、熱安定性、表面均一性等に優れる点で、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましく用いられる。
また、上記収縮性フィルムとしては、本発明の目的を満足するものであれば、一般包装用、食品包装用、パレット包装用、収縮ラベル用、キャップシール用、および電気絶縁用等の用途に使用される市販の収縮性フィルムも適宜、選択して用いることができる。これら市販の収縮性フィルムは、そのまま用いてもよく、延伸処理や収縮処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販の収縮性フィルムの具体例としては、王子製紙(株)製 商品名「アルファンシリーズ」、グンゼ(株)製 商品名「ファンシートップシリーズ」、東レ(株)製 商品名「トレファンシリーズ」、サン・トックス(株) 商品名「サントックス−OPシリーズ」、東セロ(株) 商品名「トーセロOPシリーズ」等が挙げられる。
ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を加熱延伸する際の温度制御手段内の温度(延伸温度ともいう)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。好ましくは、上記高分子フィルムのガラス転移点(Tg)に対し、Tg+1℃〜Tg+30℃の範囲で行う。位相差値が均一になり易く、かつ、フィルムが結晶化(白濁)しにくいからである。より具体的には、上記延伸温度は、好ましくは110℃〜185℃であり、さらに好ましくは120℃〜170℃であり、最も好ましくは130℃〜160℃である。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121−1987に準じたDSC法により求めることができる。
上記温度制御手段としては、特に制限はないが、熱風又は冷風が循環する空気循環式恒温オーブン、マイクロ波もしくは遠赤外線などを利用したヒーター、温度調節用に加熱されたロール、ヒートパイプロール又は金属ベルトなどを用いた公知の加熱方法や温度制御方法を挙げることができる。
また、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の延伸する倍率(延伸倍率)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。上記延伸倍率は、好ましくは1.05倍〜1.7倍であり、さらに好ましくは1.05倍〜1.50倍である。また、延伸時の送り速度は、特に制限はないが、延伸装置の機械精度、安定性等から好ましくは0.5m/分〜30m/分、より好ましくは1m/分〜20m/分である。上記の延伸条件であれば、上記D−1項に記載の光学特性を満足し得るのみならず、光学均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
E.第2の光学素子
図1および図2を参照すると、第2の光学素子40は、液晶セル10と第1の光学素子30との間に配置される。この第2の光学素子40は、実質的に光学的に負の一軸性を有する。本明細書において、「実質的に光学的に負の一軸性を有する」とは、面内の主屈折率をnx、nyとし、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、屈折率分布がnx=ny>nzを満足するものをいう。負の一軸性を有する光学素子は、理想的には、法線方向に光学軸を有する。なお、本明細書において、nx、nyおよびnzは、それぞれ完全に同一である場合だけでなく、nx、nyおよびnzが実質的に同一である場合も包含する。ここで、「nx、nyおよびnzが実質的に同一である場合」とは、例えば、面内の位相差値(Re[590])が10nm以下であり、厚み方向の位相差値(Rth[590])の絶対値が10nm以下であるものを包含する。
本発明において、上記第2の光学素子は、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を備える液晶セルの位相差値を光学的に補償し、キャンセルするために用いられる。図6は、第2の光学素子を用いて液晶セルの位相差値をキャンセルする方法を説明する代表的な概念図である。本明細書において、「液晶セルの位相差値をキャンセルする」とは、液晶セルと光学素子との積層体が、実質的にnx=ny=nzの関係を有する等方的な屈折率分布となるように、光学的に補償することをいう。図6に示すように、例えば、屈折率分布がnz>nx=nyの関係を示す液晶セル(すなわち、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を備える液晶セル)の位相差値をキャンセルするためには、好ましくは、屈折率分布がnx=ny>nzの関係を示す第2の光学素子を配置する。ここで、nx=ny>nzの関係を示す第2の光学素子とは、0nm≦Re[590]≦10nmであり、且つ、Rth[590]>10nmである光学素子とも言い換えることができる。
E−1.第2の光学素子の光学特性
上記第2の光学素子のRe[590]は、好ましくは0nm〜10nmであり、さらに好ましくは0nm〜5nmであり、最も好ましくは0nm〜3nmである。上記の範囲とすることによって、液晶表示装置の正面および斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
上記第2の光学素子のRth[590]は、液晶セルのRth[590]をキャンセルするために、10nmを超えるものが用いられる。低電圧印加時に暗状態(黒表示)となるノーマリーブラックモードの液晶セルに対しては、低電圧印加時の液晶セルの位相差値をキャンセルすればよい。上記第2の光学素子のRth[590]の好ましい範囲は、液晶パネルの構成によって異なる。図2を参照すると、図2(a)に示すように、偏光素子1が液晶セル10の片側のみに用いられる場合、好ましくは、第2の光学素子40のRth[590]は、液晶セルのRth[590]の70%〜120%(好ましくは80%〜100%)の範囲で設定される。具体的には、100nm〜800nmが好ましく、さらに好ましくは150nm〜600nmであり、最も好ましくは200nm〜500nmである。図2(b)に示すように、液晶セル10の偏光素子1が配置される側と反対の側に、他の光学素子50が配置される場合、好ましくは、第2の光学素子40のRth[590]と他の光学素子50のRth[590]との合計が、液晶セルのRth[590]の70%〜120%(好ましくは80%〜100%)の範囲となるように設定される。図2(c)に示すように、偏光素子1(1’)が液晶セルの両側にそれぞれ用いられる場合、好ましくは、一方の、第2の光学素子40のRth[590]と、他方の、第2の光学素子40’のRth[590]との合計が、液晶セルのRth[590]の70%〜120%(好ましくは80%〜100%)の範囲で設定される。上述のように、第2の光学素子のRth[590]を設定することによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
光学的に負の一軸性を有する光学素子の波長分散特性は、23℃において、波長480nmおよび590nmの光を、サンプル平面から40°傾けて入射して測定した位相差値の比:R40[480]/R40[590]によって求めることができる。
本発明に用いられる第2の光学素子のR40[480]/R40[590]は、液晶セルのR40[480]/R40[590]と等しくすることが好ましい。具体的には、好ましくは0.80〜1.50であり、さらに好ましくは1.10〜1.40であり、特に好ましくは1.10〜1.20である。第2の光学素子のR40[480]/R40[590]が、液晶セルのR40[480]/R40[590]と近い値であればあるほど、可視光の広い領域で液晶セルの位相差値をキャンセルすることができるため、光漏れがより一層低減でき、結果として液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比をより一層高くすることができる。また、光漏れする光に、波長の偏りが生じ難くなるため、結果として液晶表示装置の斜め方向のカラーシフト量をより一層小さくすることができる。本発明において、第2の光学素子が、例えば、ポリイミドを主成分とする高分子フィルムからなる位相差フィルムを含む場合には、第2の光学素子の波長分散特性と、液晶セルの波長分散特性とを、ほぼ等しくすることができるので、液晶表示装置に用いた際に、斜め方向のカラーシフト量をより一層小さくすることができる。なお、第2の光学素子に用いられる位相差フィルムについては、E−4項で後述する。
E−2.第2の光学素子の配置手段
図1および図2を参照すると、上記第2の光学素子40を、液晶セル10と第1の光学素子30との間に配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記第2の光学素子40は、その両面に接着剤層または粘着剤層を設け(図示せず)、液晶セル10および第1の光学素子30に接着させる。各光学素子の隙間をこのように接着剤層または粘着剤層で満たすことによって、液晶表示装置に組み込んだ際に、各光学素子の光学軸の関係がずれることを防止したり、各光学素子同士が擦れて傷がついたりすることを防ぐことができる。また、各光学素子の隙間の界面反射を少なくし、液晶表示装置に用いた際に、正面方向および斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
上記接着剤層または粘着剤層の厚み、および接着剤層または粘着剤層を形成する接着剤または粘着剤の種類は、上記D−2項に記載したものと、同様の範囲、同様のものが採用され得る。
上記第2の光学素子40は、nxとnyが完全に同一である場合は、面内の位相差値がないため、遅相軸は検出されず、偏光子20の吸収軸とは無関係に配置され得る。nxとnyとが実質的に同一であっても、nxとnyが僅かに異なる場合は、遅相軸が検出される場合がある。遅相軸が検出される場合は、好ましくは、上記第2の光学素子40は、その遅相軸が、偏光子20の吸収軸と実質的に平行または直交するように配置される。なお、本明細書において、「実質的に平行」とは、第2の光学素子40の遅相軸と偏光子20の吸収軸とのなす角度が、0°±2.0°である場合を包含し、好ましくは0°±1.0°であり、最も好ましくは0°±0.5°である。「実質的に直交」とは、第2の光学素子40の遅相軸と偏光子20の吸収軸とのなす角度が、90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、更に好ましくは90°±0.5°である。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、液晶表示装置に用いた際に、正面および斜め方向のコントラスト比が低下する傾向がある。
E−3.第2の光学素子の構成
第2の光学素子の構成(積層構成)は、上記E−1項に記載の光学特性を満足するものであれば、特に制限はない。具体的には、第2の光学素子は、位相差フィルム単独であってもよく、2枚以上の位相差フィルムの積層体であってもよく、位相差フィルムと他のフィルム(好ましくは、等方性フィルム)との積層体であってもよい。好ましくは、第2の光学素子は、単独の位相差フィルム、又は、少なくとも1枚の位相差フィルムを含み、2枚のフィルムからなる積層体である。
図7は、上記第2の光学素子の好ましい実施形態の代表例を示す概略斜視図である。図7(a)は、第2の光学素子が単独の位相差フィルム41である場合を示す。上記位相差フィルム41は、実質的に光学的に負の一軸性を有する。このような形態であれば、液晶パネルの薄型化に貢献し得る。図7(b)は、第2の光学素子40が、位相差フィルム42と位相差フィルム43との積層体である場合を示す。代表的には、上記位相差フィルム42、43は、nx=ny>nzの屈折率分布(光学的に正の一軸性ともいう)を有する位相差フィルム、および/またはnx>ny>nzの屈折率分布(光学的に負の二軸性ともいう)を有する位相差フィルムである。好ましくは、上記位相差フィルム42、43は、Re[590]が等しく、それぞれの遅相軸が直交するように配置される。このような形態によれば、Re[590]が互いにキャンセルされ、Re[590]を小さくすることができる。図7(c)は、第2の光学素子40が、位相差フィルム44と位相差フィルム45との積層体である場合を示す。上記位相差フィルム44,45は、いずれも実質的に光学的に負の一軸性を有する。第2の光学素子が積層体である場合には、フィルム同士を接着させるための、接着剤層、粘着剤層またはアンカーコート層など(いずれも図示せず)を含んでもよい。積層体が2枚以上の位相差フィルムを含む場合には、これらの位相差フィルムは、同一であっても異なっていてもよい。上記の形態であれば、上記E−1項に記載の光学特性を満足し得るのみならず、光学均一性に優れた光学素子を得ることができる。なお、位相差フィルムの詳細についてはE−4項で、等方性フィルムについてはF項で、後述する。
第2の光学素子に用いられる位相差フィルムのRth[590]は、用いられる位相差フィルムの枚数によって、適宜、選択することができる。例えば、第2の光学素子が位相差フィルム単独で構成される場合には、位相差フィルムのRth[590]は、第2の光学素子のRth[590]と等しくすることが好ましい。したがって、上記第2の光学素子を、偏光子や液晶セルに積層する際に用いられる粘着剤層や接着剤層等の位相差値は、できるかぎり小さいことが好ましい。また、例えば、第2の光学素子が2枚以上の位相差フィルムを含む積層体である場合には、それぞれの位相差フィルムのRth[590]の合計が、第2の光学素子のRth[590]と等しくなるように設計することが好ましい。具体的には、2枚の位相差フィルムを積層して、Rth[590]が400nmである第2の光学素子を作製する場合には、位相差フィルムのRth[590]を、それぞれ200nmとすることができる。このとき、2枚の位相差フィルムが、面内の位相差値(Re[590])を有する場合、好ましくは、積層体としてのRe[590]を小さくするために、それぞれの位相差フィルムのRe[590]を等しく設定し、それぞれの遅相軸が直交するように配置する。なお、ここでは簡単のため、位相差フィルムが2枚以下の場合についてのみ示したが、3枚以上の位相差フィルムを含む積層体についても本発明が適用可能であることはいうまでもない。
上記第2の光学素子の全体厚みは、2μm〜400μmであることが好ましく、さらに好ましくは2μm〜200μmであり、最も好ましくは2μm〜100μmである。上記第2の光学素子は、上記の厚みの範囲とすることによって、実用的に十分な機械的強度を有し、薄型の液晶パネルを得ることができる。
E−4.第2の光学素子に用いられる位相差フィルム
第2の光学素子に用いられる位相差フィルムとしては、特に制限はないが、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れ、歪によって光学的なムラの生じにくいものが好ましく用いられる。
上記位相差フィルムの厚みは、第1の光学素子の積層構造や目的に応じて、適宜選択され得る。好ましくは1μm〜30μmであり、さらに好ましくは2μm〜20μmであり、特に好ましくは3μm〜15μmであり、最も好ましくは5μm〜12μmである。上記の範囲であれば、機械的強度や光学均一性に優れ、上記E−1項に記載の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。さらに、位相差フィルムを薄くすることにより、光弾性係数の絶対値が大きな材料を用いても、偏光子の収縮応力やバックライトの熱によって発生する位相差値のずれやムラを防ぎ、良好な表示均一性を有する液晶パネルおよび液晶表示装置を得ることができる。
好ましくは、上記位相差フィルムの、面内の主屈折率(nx)と厚み方向の屈折率(nz)との差(厚み方向の複屈折率(Δnxz)ともいう)は0.03〜0.20である。さらに好ましくは0.04〜0.15であり、特に好ましくは0.05〜0.12であり、最も好ましくは0.06〜0.10である。上記の範囲とすることによって、上記E−1項を満足する単独の位相差フィルムが得られ得る。また、良好な光学均一性が得られ、且つ、厚みを薄くすることができる。なお、上記Δnxzは、用いる樹脂や溶剤の種類や、乾燥条件を適切に選択することにより調整することができる。具体的には、分子構造が剛直なものを選択すればΔnxzを大きくすることができ、柔軟なものを選択すればΔnxzを小さくすることができる。
上記位相差フィルムの光弾性係数の絶対値(C[590](m2/N))は、好ましくは1×10-12〜100×10-12であり、さらに好ましくは1×10-12〜90×10-12であり、特に好ましくは1×10-12〜80×10-12である。光弾性係数の絶対値は、小さいほど、液晶表示装置に用いた際に、偏光子の収縮応力やバックライトの熱によって発生する位相差値のずれやムラを防ぎ、表示均一性に優れた液晶パネルおよび液晶表示装置を得ることができる。
上記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。第2の光学素子も同様の光透過率を有することが好ましい。
上記位相差フィルムとして好ましくは、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムである。上記熱可塑性樹脂は、非晶性ポリマーであってもよく、結晶性ポリマーであってもよい。非晶性ポリマーは透明性に優れるという利点を有し、結晶性ポリマーは剛性、強度、耐薬品性に優れるという利点を有する。また、上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムは、延伸されていても、延伸されていなくてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン、ポリ塩化ビニル、セルロースエステル、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の汎用プラスチック;ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。上記の熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記の熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。上記ポリマー変性の例としては、共重合、架橋、分子末端、立体規則性等の変性が挙げられる。第2の光学素子に用いられる位相差フィルムとして特に好ましくは、ポリイミドを主成分とする高分子フィルムである。ポリイミドは、ポリイミド溶液を基材(支持体ともいう)の表面に塗工し乾燥させる際の溶剤の蒸発過程で、ポリイミド自身の性質により、分子が自発的に配向するため、延伸処理などの特別な二次加工を必要とせずに、厚み方向の複屈折率が大きい位相差フィルムを得ることができる。
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、上記D−4項に記載した成形加工法と、同様の方法が採用され得る。また、成形時に採用される条件は、樹脂の組成や種類、成形加工法によって適宜選択され得る。
上記ポリイミドとしては、任意の適切なポリイミドが採用され得る。具体例としては、芳香族ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、含フッ素ポリイミド、感光性ポリイミド、脂環式ポリイミド、液晶性ポリイミド、およびポリシロキサンブロックポリイミド等が挙げられる。これらのポリイミドは、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いられ得る。さらに、ポリイミドとポリイミドの前駆体であるポリアミック酸をブレンドした樹脂組成物等も用いることができる。これらのなかでも、本発明においては、透明性に優れ、目的とする厚み方向の位相差値を薄く得られ得るという理由で、含フッ素ポリイミドが好ましく用いられる。なお、本明細書において、「含フッ素ポリイミド」とは、分子中(テトラカルボン酸二無水物部位若しくはジアミン部位のうちの一方、または両方)に−CF2−基や−CF3基等のC−F結合を有するものをいう。上記含フッ素ポリイミドの具体例としては、日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド」p.274〜p.275(2002年版)に開示されているポリイミドが挙げられる。
上記ポリイミドは、代表的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって得ることができる。上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させる方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、2段階で進行する化学イミド化であってもよく、1段階で進行する熱イミド化であってもよい。
上記化学イミド化の具体例としては、ジアミンをジメチルアセトアミドや、N−メチルピロリドンのような極性アミド系溶剤に溶解させ、この溶液中にテトラカルボン酸二無水物を固体のまま加えて室温下で攪拌すると、固体のテトラカルボン酸二無水物の溶解とともに、上記ジアミンとの間で発熱を伴って開環重合付加反応が起こり、重合溶液の粘度上昇が見られポリアミック酸が生成する(第1ステップ)。次いで、上記ポリアミック酸を含む反応溶液に無水酢酸などの脱水剤を添加し、加熱すると脱水環化反応が起こり、ポリイミドが生成する(第2ステップ)という方法が挙げられる。
上記熱イミド化の具体例としては、ディーンスターク装置を備えた反応容器中で、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とイソキノリン(触媒)をm−クレゾール等の高沸点の有機溶剤に溶解させ、この溶液を攪拌しながら175〜180℃で加熱すると、脱水環化反応が起こり、ポリイミドが生成するという方法が挙げられる。
本発明に用いられるポリイミドの出発原料であるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等のピロメリト系酸二無水物;3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等のベンゾフェノン系テトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等のナフタレン系テトラカルボン酸二無水物;チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の複素環式芳香族系テトラカルボン酸二無水物;2,2′−ジブロモ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ジクロロ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等の2,2′−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−[4,4′−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等の芳香族系テトラカルボン酸二無水物などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、C−F結合を含むテトラカルボン酸二無水物としては、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。
また、本発明に用いられるポリイミドの出発原料であるジアミンの具体例としては、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン等のベンゼンジアミン;2,2′−ジアミノベンゾフェノン、および3,3′−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン;1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン等のナフタレンジアミン;2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン等の複素環式芳香族ジアミン;4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−(9−フルオレニリデン)-ジアニリン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2',5,5'−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族系ジアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。なお、C−F結合を含むジアミンとしては、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
本発明に用いられるポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ジメチルホルムアミド溶液(10mMの臭化リチウムと10mMのリン酸を加えメスアップして1Lのジメチルホルムアミド溶液としたもの)を展開溶媒とするポリエチレンオキサイド標準の重量平均分子量(Mw)が、20,000〜300,000であるものが好ましく用いられる。更に好ましくは、50,000〜200,000であり、特に好ましくは、70,000〜180,000である。上記の範囲であれば、機械的強度に優れたポリイミドを主成分とする高分子フィルムを得ることができる。
上記ポリイミドのイミド化率としては、特に制限はないが、90%以上であるものが好ましく用いられる。更に好ましくは95%以上であり、特に好ましくは98%以上である。上記イミド化率は、核磁気共鳴(NMR)スペクトルにて、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸由来のプロトンピークと、ポリイミド由来のプロトンピークとのピーク積分強度比から求めることができる。
第2の光学素子に用いられる位相差フィルムは、例えば、ポリイミド、添加剤等を含む樹脂組成物を溶剤に溶解したポリイミド溶液(ドープ)を脱泡し、エンドレスステンレスベルト回転ドラム、高分子フィルム(例えば、PETフィルム)などの基材(支持体ともいう)の表面に均一に薄膜状に流延し、溶剤を蒸発させて得ることができる。
上記ポリイミド溶液の全固形分濃度は、溶解性、塗工粘度、ぬれ性、塗工後の厚みなどによって異なるが、表面均一性の高いポリイミド層を得るためには、溶剤100に対して、固形分を2〜100(重量比)溶解させたものが好ましく用いられる。更に好ましくは、溶剤100に対して固形分が10〜50(重量比)であり、特に好ましくは、20〜40(重量比)である。上記の範囲であれば、薄型で、表面均一性、光学均一性に優れたポリイミド層を形成することができる。
上記溶剤としては、特に制限はないが、前記ポリイミドを均一に溶解して溶液とする液体物質が好ましく用いられる。好ましくは、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフランである。これらの溶剤であれば、良好な光学均一性を有する位相差フィルムを得ることができる。
上記ポリイミド溶液の粘度としては、特に制限はないが、23℃におけるせん断速度1000(1/s)で測定した値が、通常50〜600(mPa・s)であるものが好ましく用いられる。更に好ましくは100〜300(mPa・s)であり、特に好ましくは120〜200(mPa・s)である。上記の範囲であれば、薄型で、表面均一性、光学均一性に優れた位相差フィルムを形成することができる。
上記ポリイミド溶液を基材の表面に塗工する方法としては、特に制限はなく、従来公知のコータを用いた塗工方式を用いることができる。上記塗工方式に用いられるコータの種類としては、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、ロッドコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータ、エアドクタコータ、キスコータ、ディップコータ、ビードコータ、ブレードコータ、キャストコータ、スプレイコータ、スピンコータ、押出コータ、ホットメルトコータ等が挙げられる。これらのなかでも、本発明にはリバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータが好ましく用いられる。上記のコータを用いた塗工方式であれば、薄型で、表面均一性、光学均一性に優れたポリイミド層を形成することができる。
上記ポリイミド溶液の乾燥手段としては、特に制限はないが、熱風又は冷風が循環する空気循環式恒温オーブン、マイクロ波もしくは遠赤外線などを利用したヒーター、温度調節用に加熱されたロール、ヒートパイプロール又は金属ベルトなどを用いた公知の加熱方法や温度制御方法を挙げることができる。
上記ポリイミド溶液の乾燥温度としては、通常50℃〜250℃であることが好ましい。更に好ましくは、80℃〜150℃である。また、乾燥は一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇又は下降させながら行っても良い。段階的な乾燥の具体例としては、例えば40℃〜140℃(好ましくは40℃〜120℃)の温度で、1次乾燥を行った後、150℃〜250℃(好ましくは150℃〜180℃)の温度で、2次乾燥を行う二段階の乾燥処理が挙げられる。上記のように段階的な乾燥処理を行うことによって、より一層平滑性に優れたポリイミド層を形成することができる。
上記ポリイミド溶液の乾燥時間としては、特に制限はないが、表面均一性に優れたポリイミド層を得るためには、例えば1分〜20分であり、さらに好ましくは1分〜15分、特に好ましくは2分〜10分である。
第2の光学素子に用いられる位相差フィルムの製造方法の一例について、図8を参照して説明する。図8は、第2の光学素子に用いられる位相差フィルムの代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、基材として等方性フィルムが、繰り出し部401から繰り出され、コータ部402において、該等方性フィルムの表面に、ポリイミド溶液が塗工される。ポリイミド溶液が塗工された等方性フィルムは、乾燥手段403、404、405に送られ、溶媒を蒸発させてポリイミド層とア等方性フィルム層とを有する積層フィルム406が形成される。この積層フィルム406は、巻き取り部407に巻き取られる。
上記ポリイミドを主成分とする高分子フィルムの残留揮発成分量としては、特に制限はないが、位相差値の安定性に優れたものを得るためには、例えば0を超え5%以下、更に好ましくは0を超え3%以下である。上記ポリイミド層の残留揮発成分量は、250℃で10分間加熱したときの、加熱前後の重量減少量から求めることができる。
上記第2の光学素子に用いられる位相差フィルムは、上述したほかにも、市販の光学フィルムをそのまま用いることもできる。また、市販の光学フィルムに延伸処理/または緩和処理などの2次加工を施してから用いても良い。光学的に負の一軸性を示す市販の高分子フィルムの例としては、富士写真フィルム(株)製 商品名「フジタックシリーズ」などが挙げられる。
F.等方性フィルム
本明細書において、「等方性フィルム」とは、3次元的に方向によって光学的に差が小さく、複屈折などの異方的な光学的性質を実質的に示さないフィルムをいう。具体的には、面内の主屈折率をnx、nyとし、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、屈折率分布がnx=ny=nzを満足するものをいう。なお、本明細書において、nx、nyおよびnzは、それぞれ完全に同一である場合だけでなく、nx、nyおよびnzが実質的に同一である場合も包含する。ここで、「nx、nyおよびnzが実質的に同一である場合」とは、例えば、Re[590]が10nm以下であり、且つ、Rth[590]が10nm以下であるものを包含する。
上記等方性フィルムを得る方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、およびソルベントキャスティング法等から適宜、適切なものが選択され得る。これらの成形加工法のなかでも、特に好ましくは、押出成形法またはソルベントキャスティング法である。得られる等方性フィルムの平滑性を高め、良好な光学均一性(例えば、位相差値が面内にも厚み方向にも小さいもの)を得ることができるからである。
上記等方性フィルムの厚みは、目的に応じて、適宜選択され得る。好ましくは、20μm〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは20μm〜180μmであり、特に好ましくは20μm〜150μmである。上記の範囲であれば、機械的強度や光学均一性に優れる光学フィルムを得ることができる。
上記等方性フィルムの光弾性係数の絶対値(C[590](m2/N))は、好ましくは1×10-12〜100×10-12であり、さらに好ましくは1×10-12〜50×10-12であり、特に好ましくは1×10-12〜30×10-12であり、最も好ましくは1×10-12〜8×10-12である。光弾性係数の絶対値は、小さいほど、液晶表示装置に用いた際に、偏光子の収縮応力やバックライトの熱による位相差値のずれやムラを生じにくくし、表示均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
上記等方性フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記等方性フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽製などに優れるものが好ましく用いられる。なかでも好ましくは、さらに光弾性係数の絶対値が小さいという特徴と有する点で、セルロースエステル、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂、ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンモノマーの付加共重合体、およびマレイミド系モノマーとオレフィンモノマーの付加共重合体から選ばれる少なくとも1つの樹脂を主成分とする高分子フィルムである。
上記セルロースエステルは、任意の適切なセルロースエステルが採用され得る。具体例としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等の有機酸エステル等が挙げられる。また、上記セルロースエステルは、例えば、セルロースの水酸基の一部がアセチル基とプロピオニル基で置換された混合有機酸エステルであってもよい。上記セルロースエステルを主成分とするものであって、Re[590]およびRth[590]が共に小さい高分子フィルムを得るためには、キャスティング法によって成形されることが好ましく、Re[590]およびRth[590]は、成形条件、フィルム厚み等によって、適宜、調整できる。当該フィルムは、例えば、特開平7−112446号の実施例1に記載の方法により得ることができる。また、市販のフィルムをシクロペンタノンのようなケトン系溶剤で膨潤させたのち乾燥処理を施すことで、処理前のRth[590]を小さくして得ることもできる。
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂としては、例えば、上記D−4項に記載した同様のものから、適宜、適切なものが選択され得る。上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とするものであって、Re[590]およびRth[590]が共に小さい高分子フィルムを得るためには、押出成形法によって成形されることが好ましく、Re[590]およびRth[590]は、成形条件、フィルム厚み等によって、適宜、調整できる。具体的に例えば、当該フィルムは、例えば、特開平4−301415号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
上記ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンモノマーの付加共重合体は、例えば、特開昭61−292601号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。上記ノルボルネン系モノマーは、上記E−4項に記載した通りである。上記α−オレフィンモノマーとしては、炭素原子数2〜20であり、好ましくは2〜10であって、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキサン、1−オクタン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデカン、1−イコセンなどが挙げられる。これらのなかでも、特にエチレンが好ましい。これらのα−オレフィンモノマーは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、他のビニル系モノマ−を共重合させることもできる。上記ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンモノマーの付加共重合体を主成分とするものであって、Re[590]およびRth[590]が共に小さい高分子フィルムを得るためには、押出成形法によって成形されることが好ましく、Re[590]およびRth[590]は、成形条件、フィルム厚み等によって、適宜、調整できる。
上記等方性フィルムに用いられるマレイミド系モノマーとオレフィンモノマーの付加共重合体は、例えば、特開平5−59193号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。上記マレイミド系モノマーとしては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド類であり、このうちN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−i−プロピルマレイミドあるいはN−シクロヘキシルマレイミドが好ましい。また、これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。上記オレフィンモノマーとしては、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、1−メチル−1−ヘプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキセン等のオレフィンモノマーであり、これらのなかでも、特にイソブテンが好ましい。これらのオレフィンモノマーは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、他のビニル系モノマ−を共重合させることもできる。上記マレイミド系モノマーとオレフィンモノマーの付加共重合体を主成分とするものであって、Re[590]およびRth[590]が共に小さい高分子フィルムを得るためには、押出成形法によって成形されることが好ましく、Re[590]およびRth[590]は、成形条件、フィルム厚み等によって、適宜、調整できる。当該フィルムは、例えば、特開2004−45893号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
上記等方性フィルムとしては、上述した材料の他にも、特開2001−253960号公報に記載の9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを側差に有するポリカーボネート系樹脂や、(株)エヌ・ティー・エス出版「オプティカルポリマー材料の開発・応用技術」2003年版p.194〜p.207に記載の正の配向複屈折を示すポリマーを構成するモノマーと、負の配向複屈折を示すポリマーを構成するモノマーとのランダム共重合体や、異方性低分子もしくは複屈折性結晶をドープしたポリマーなどが例示できる。
G.液晶セル
本発明の液晶パネルに用いられる液晶セルは、一対の基板と、一対の基板の間に挟持された表示媒体としての液晶層とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターが設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板に設けてもよい。一対の基板の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。基板の液晶層と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
液晶層は、好ましくは、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向されたネマチック液晶を含む。このような液晶層(結果として、液晶セル)は、代表的には、nz>nx=nyの屈折率分布を示す(ただし、面内の屈折率をnx、nyとし、厚み方向の屈折率をnzとする)。なお、本明細書において、nx=nyとは、nxとnyとが完全に同一である場合だけでなく、nxとnyとが実質的に同一である場合も包含する。このような屈折率分布を示す液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、バーティカル・アライメント(VA)モードが挙げられる。VAモードの液晶セルにおいては、電圧制御複屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringence)効果を利用し、透明電極間に電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向させた誘電率異方性が負のネマチック液晶を、基板法線に対して平行な電界で応答させる。より具体的には、特開昭62−210423号公報や、特開平4−153621号公報に記載の液晶セルが挙げられる。また、上記VAモードの液晶セルは、特開平11−258605号公報に記載されているように、視野角拡大のために、画素内にスリットを設けたものや、表面に突起を形成した基材を用いることによって、マルチドメイン化したMVAモードの液晶セルであってもよい。さらに、特開平10−123576号公報に記載されているように、液晶中にカイラル剤を添加し、ネマチック液晶を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるVATNモードの液晶セルであってもよい。
上記ホメオトロピック配列に配向されたネマチック液晶とは、例えば、配向処理された基板とネマチック液晶分子の相互作用の結果として、上記ネマチック液晶分子の配向ベクトルが基板平面に対し、垂直(法線方向に)かつ、一様に配向した状態のものをいう。なお、本明細書においては、上記配向ベクトルが、基板法線方向に対し、わずかに傾いている場合、すなわち上記ネマチック液晶分子がプレチルトをもつ場合も、ホメオトロピック配列に包含される。ネマチック液晶分子がプレチルトをもつ場合は、そのプレチルト角は、基板法線から10°以下であるほうが、コントラスト比を高く保ち、良好な表示特性が得られる点で好ましい。
上記ネマチック液晶としては、目的に応じて任意の適切なネマチック液晶が採用され得る。例えば、ネマチック液晶は、誘電率異方性が正のものであっても、負のものであっても良い。VAモードの液晶表示装置においては、誘電率異方性が負のネマチック液晶が好ましく用いられる。誘電率異方性が正のネマチック液晶の具体例としては、メルク社製 商品名「ZLI−4535」が挙げられる。誘電率異方性が負のネマチック液晶の具体例としては、メルク社製 商品名「ZLI−2806」が挙げられる。また、上記ネマチック液晶の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)との差、すなわち複屈折率(ΔnLC)は、上記液晶セルの応答速度や透過率等によって任意に設定できるが、通常0.05〜0.30であることが好ましい。
上記液晶セルのセルギャップ(基板間隔)としては、目的に応じて任意の適切なセルギャップが採用され得る。セルギャップは、好ましくは1.0μm〜7.0μmである。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
H.液晶表示装置
本発明の液晶パネルは、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の液晶表示装置や、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機EL)、プロジェクター、プロジェクションテレビ、プラズマテレビ等の画像表示装置に用いることができる。なかでも、本発明の偏光素子および液晶パネルは、液晶表示装置に好適に用いられ、液晶テレビに特に好適に用いられる。
図9は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。この液晶表示装置150は、本発明の液晶パネル100と、液晶パネル100の両側に配置された保護層60、60’と、保護層60、60’の更に外側に配置された表面処理層70、70’と、表面処理層70'の外側(バックライト側)に配置された、輝度向上フィルム80、プリズムシート110、導光板120およびランプ130とを備える。上記表面処理層70、70’としては、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散処理(アンチグレア処理ともいう)などを施した処理層が用いられる。また、上記輝度向上フィルム80としては、偏光選択層を有する偏光分離フィルム(例:住友3M(株)製 商品名「D−BEFシリーズ」)などが用いられる。これらの光学部材を用いることによって、更に表示特性の高い表示装置を得ることができる。また、別の実施形態においては、図9に例示した光学部材は、本発明を満足する限りにおいて、用いられる液晶セルの駆動モードや用途に応じて、その一部が省略されるか、若しくは他の光学部材に代替され得る。
本発明の液晶パネルを備えた液晶表示装置の方位角45°方向、極角60°方向におけるコントラスト比(YW/YB)として好ましくは10〜150であり、更に好ましくは20〜150であり、特に好ましくは50〜150である。
また、上記液晶表示装置の方位角45°方向、極角60°方向におけるカラーシフト量(Δab値)として好ましくは0.05〜0.39であり、更に好ましくは0.05〜0.30であり、特に好ましくは0.05〜0.25である。
本発明について、以上の実施例および比較例を用いて更に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)偏光子の単体透過率、偏光度の測定方法:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて、23℃で測定した。
(2)ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂の分子量の測定方法:
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリスチレンを標準試料として算出した。具体的には、以下の装置、器具および測定条件により測定した。
・分析装置:TOSOH製「HLC−8120GPC」
・カラム:TSKgel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000
・カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流量:0.6ml/min.
・検出器:RI
・カラム温度:40℃
・注入量:20μl
(3)ポリイミドの分子量の測定方法:
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリエチレンオキサイドを標準試料として算出した。具体的には、以下の装置、器具及び測定条件により測定した。
・サンプル:試料を溶離液に溶解して0.1重量%の溶液を調整した。
・前処理:8時間静置し、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
・分析装置:東ソー製「HLC−8020GPC」
・カラム:東ソー製 GMHXL+GMHXL+G2500HXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm(計90cm)
・溶離液:ジメチルホルムアミド(10mMの臭化リチウムと10mMのリン酸を加えメスアップして1Lのジメチルホルムアミド溶液としたもの)
・流量:0.8ml/min.
・検出器:RI(示差屈折計)
・カラム温度: 40℃
・注入量:100μl
(4)厚みの測定方法:
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
(5)位相差値(Re、Rth)の測定方法:
平行ニコル回転法を原理とする位相差計[王子計測機器(株)製 製品名「KOBRA21−ADH」]を用いて、23℃における波長590nmの光で測定した。なお、波長分散測定については、波長480nmの光も用いた。
(6)フィルムの平均屈折率の測定方法:
アッベ屈折率計[アタゴ(株)製 製品名「DR−M4」]を用いて、23℃における波長589nmの光で測定した屈折率より求めた。
(7)透過率の測定方法:
紫外可視分光光度計[日本分光(株)製 製品名「V−560」]を用いて、23℃における波長590nmの光で測定した。
(8)光弾性係数の測定方法:
分光エリプソメーター[日本分光(株)製 製品名「M−220」]を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5〜15N)をかけながら、サンプル中央の位相差値(23℃/波長590nm)を測定し、応力と位相差値の関数の傾きから算出した。
(9)液晶表示装置のコントラスト比の測定方法:
以下の方法、液晶セル[松下電器産業(株)製 32V型TH−32LX10に搭載されているもの]、測定装置を用いて、23℃の暗室でバックライトを点灯させてから、所定の時間が経過した後、測定を行った。液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」により、表示画面の方位角45°方向、極角60°方向におけるXYZ表示系のY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。なお、方位角45°とは、パネルの長辺を0°としたときに反時計周りに45°回転させた方位を表し、極角60°とは表示画面の正面方向を0°としたときに、角度60°に傾斜した方向を表す。
(10)液晶表示装置のカラーシフト量の測定方法:
以下の方法、液晶セル[松下電器産業(株)製 32V型TH−32LX10に搭載されているもの]、測定装置を用いて、23℃の暗室でバックライトを点灯させてから、所定の時間が経過した後、測定を行った。液晶表示装置に、黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」を用いて、極角60°方向における全方位(360°)の色相、a値およびb値を測定した。極角60°方向における全方位のa値、b値の平均値をそれぞれ、aave.値、bave.値とし、また、極角60°方位角45°におけるa値、b値をそれぞれa45°値、b45°値とした。斜め方向のカラーシフト量(Δab値)は、次式:[(a45°−aave.)2+(b45°−bave.)2]1/2から算出した。なお、方位角45°とは、パネルの長辺を0°としたときに反時計回りに45°回転させた方位を表す。また、極角60°とは、パネルに対し鉛直方向を0°としたときに60°斜めから見た方位を表す。
(11)液晶表示装置の表示画面の輝度分布の撮影:
以下の方法、液晶セル[松下電器産業(株)製 32V型TH−32LX10に搭載されているもの]、測定装置を用いて23℃の暗室で測定した。ミノルタ(株)製 2次元色分布測定装置「CA−1500」を用いて、バックライトを点灯させてから、所定の時間が経過した後、表示画面を撮影した。
偏光子の作製
[参考例1]
ポリビニルアルコールを主成分とする高分子フィルム[クラレ(株)製 商品名「9P75R(厚み:75μm、平均重合度:2,400、けん化度99.9モル%)」]を30℃±3℃に保持したヨウ素とヨウ化カリウム配合の染色浴にて、ロール延伸機を用いて、染色しながら2.5倍に一軸延伸した。次いで、60±3℃に保持したホウ酸とヨウ化カリウム配合の水溶液中で、架橋反応を行いながら、ポリビニルアルコールフィルムの元長の6倍となるように一軸延伸した。得られたフィルムを50℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内で30分間乾燥させて、水分率26%,厚み28μm、偏光度99.9%、単体透過率43.5%の偏光子P1およびP2を得た。
等方性フィルムの作製
[参考例2]
厚み100μmのノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルム[日本ゼオン(株)製 商品名「ゼオノアZF14−100」(平均屈折率=1.51)]をそのまま用い、等方性フィルム1−Aとした。得られた等方性フィルム1−Aの特性を、後述の参考例3〜5のフィルム特性と併せて下記表1に示す。
[参考例3]
イソブテンとN−メチルマレイミドからなる共重合体(N−メチルマレイミドの含有量50モル%、ガラス転移温度157℃)65重量部、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)(アクリロニトリルの含有量27モル%)35重量部、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(紫外線吸収剤)1重量部を押出機にてペレットにしたものを、100℃で5時間乾燥後、40nmφ単軸押出機と400mm幅のTダイを用いて270℃で押出し、シート状の溶融樹脂を冷却ドラムで冷却して幅約600mm、厚み40μmの高分子フィルム(平均屈折率=1.51)を作製した。この高分子フィルムを等方性フィルム1−Bとした。得られた等方性フィルム1−Bの特性は表1の通りである。
[参考例4]
シクロペンタノン80重量部に、ペレット状のノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂[JSR(株)製 商品名「ARTON」]20重量部を加えて調整した溶液を、厚み80μmのトリアセチルセルロースを主成分とする高分子フィルム[富士写真フィルム(株)製 商品名「UZ−TAC」(平均屈折率=1.48、Re[590]=0.8nm、Rth[590]=60.5nm)]上に、塗工厚み150μmで塗工し、当該高分子フィルムを膨潤されたのち、140℃で3分間乾燥させた。乾燥後、当該高分子フィルムの表面に形成された上記シクロオレフィン系樹脂フィルムは剥離して、透明なトリアセチルセルロースを主成分とする高分子フィルムを作製した。この高分子フィルムを等方性フィルム1−Cとした。得られた等方性フィルム1−Cの特性は表1の通りである。
第1の光学素子に用いる位相差フィルムの作製
[参考例5]
厚み100μmのノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルム[日本ゼオン(株)製 商品名「ゼオノアZF14−100」(平均屈折率=1.51、Re[590]=2.0nm、Rth[590]=8.0nm)]の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム[東レ(株)製 商品名「トレファンE60−高収縮タイプ」(厚み60μm)]をアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、146℃±1℃の空気循環式乾燥オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で、1.38倍に延伸し、位相差フィルム2−Aを作製した。得られた位相差フィルム2−Aの特性を、後述の参考例6〜9のフィルム特性と併せて下記表2に示す。
なお、本例(参考例5)で用いた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、140℃における収縮率が、MD方向に6.4%、TD方向に12.8%であった。アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとして、溶液重合により合成されたイソノニルアクリレート(重量平均分子量=550,000)を用い、該ポリマー100重量部に対して、ポリイソシアネート化合物の架橋剤[日本ポリウレタン(株)製 商品名「コロネートL」]3重量部、触媒[東京ファインケミカル(株)製 商品名「OL−1」]10重量部を混合したものを用いた。
[参考例6]
延伸温度を146℃に代えて148℃とし、延伸倍率を1.38倍に代えて1.40倍とした以外は、参考例5と同様の方法で位相差フィルム2−Bを作製した。得られた位相差フィルム2−Bの特性は表2の通りである。
[参考例7]
延伸温度を146℃に代えて148℃とし、延伸倍率を1.38倍に代えて1.35倍とした以外は、参考例5と同様の方法で位相差フィルム2−Cを作製した。得られた位相差フィルム2−Cの特性は表2の通りである。
[参考例8]
厚み40μmのノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルム[日本ゼオン(株)製 商品名「ゼオノアZF14−40」(平均屈折率=1.51、Re[590]=1.0nm、Rth[590]=3.0nm)]の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム[東レ(株)製 商品名「トレファンE60−高収縮タイプ」(厚み60μm)]をアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、143℃±1℃の空気循環式乾燥オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で、1.62倍に延伸し、位相差フィルム2−Dを作製した。得られた位相差フィルム2−Dの特性は表2の通りである。
[参考例9]
厚み55μmのポリカーボネート系樹脂(重量平均分子量60,000)とスチレン系樹脂(重量平均分子量1,300)とを含む高分子フィルム[(株)カネカ製 商品名「エルメックPFフィルム」(平均屈折率=1.55、Re[590]=5.0nm、Rth[590]=12.0nm)]の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム[東レ(株)製 商品名「トレファンE60−低収縮タイプ」(厚み60μm)]をアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、147℃±1℃の空気循環式乾燥オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で、1.27倍に延伸し、位相差フィルム2−Eを作製した。得られた位相差フィルム2−Eの特性は表2の通りである。
なお、本例(参考例9)で用いた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、140℃における収縮率が、MD方向に5.7%、TD方向に7.6%であった。アクリル系粘着剤は、参考例5と同様のものを用いた。
ポリイミドの合成例
[参考例10]
機械式攪拌装置、ディーンスターク装置、窒素導入管、温度計および冷却管を取り付けた反応容器(500mL)内に2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物[クラリアントジャパン(株)製]17.77g(40mmol)および2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル[和歌山精化工業(株)製]12.81g(40mmol)を加えた。続いて、イソキノリン2.58g(20mmol)をm−クレゾール275.21gに溶解させた溶液を加え、23℃で1時間攪拌して(600rpm)均一な溶液を得た。次に、反応容器をオイルバスを用いて反応容器内の温度が180±3℃になるように加温し、温度を保ちながら5時時間攪拌して黄色溶液を得た。更に3時間攪拌を行ったのち、加熱および攪拌を停止し、放冷して室温に戻すと、ポリマーがゲル状となって析出した。
上記反応容器内の黄色溶液にアセトンを加えて前記ゲルを完全に溶解させ、希釈溶液(7重量%)を作製した。この希釈溶液を、2Lのイソプロピルアルコール中に攪拌を続けながら少しずつ加えると、白色粉末が析出した。この粉末を濾取し、1.5Lのイソプロピルアルコール中に投入して洗浄した。さらにもう一度同様の操作を繰り返して洗浄した後、前記粉末を再び濾取した。これを60℃の空気循環式恒温オーブンで48時間乾燥した後、150℃で7時間乾燥して、白色粉末として下記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリイミドを得た(収率85%)。上記ポリイミドの重合平均分子量(Mw)は124,000、イミド化率は99.9%であった。
上記ポリイミドをメチルイソブチルケトンに溶解したポリイミド溶液(15重量%)を、ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ(株)製 商品名 ルミラーS27−E]の表面に、ロッドコータにより一方向に塗工し、130±1℃の空気循環式恒温オーブンで5分間乾燥させて、上記トリアセチルセルロースフィルム上に厚み3μmのポリイミド層を形成した。このポリイミド層を剥離して光学特性を測定したところ、透過率は90%、平均屈折率は1.55、Rth[590]は125nm、Δnxzは0.04であった。
第2の光学素子に用いる位相差フィルムの作製
[参考例11]
参考例10で得たポリイミド(白色粉末)17.7重量部をメチルイソブチルケトン(沸点116℃)100重量部に溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調整した。このポリイミド溶液を、参考例3で得た等方性フィルム1−Bの表面に、ロッドコータにより一方向に塗工した。次に、135±1℃の空気循環式恒温オーブン内で5分間、次いで、150±1℃の空気循環式恒温オーブン内で10分間乾燥して溶剤を蒸発させ、上記等方性フィルムの表面に厚み7.0μmのポリイミド層(残留揮発成分量=2%)を形成した。上記等方性フィルムを剥離して、得られたポリイミド層を位相差フィルム3−Aとした。得られた位相差フィルム3−Aの特性を、後述の参考例12〜13のフィルム特性と併せて下記表3に示す。
[参考例12]
2,2′−ジクロロ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(40mmol)と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(40mmol)とを出発原料(モノマー)とし、参考例10と同様の方法でポリイミド[重量平均分子量=94,000、平均屈折率=1.57、Δnxz=0.07]を合成した。このポリイミドを用いて、参考例11と同様の方法で、等方性フィルムの表面に厚み4.0μmのポリイミド層を形成した。上記等方性フィルムを剥離して、得られたポリイミド層を位相差フィルム3−Bとした。得られた位相差フィルム3−Bの特性を表3に示す。また、上記位相差フィルム3−Bの平滑性を評価するために、当該位相差フィルムを、吸収軸がそれぞれ直交する2枚の偏光子の間に挟み込み、バックライトに照らして、斜め方向から目視観察したところ(図10(a))、ムラは観察されず平滑性は良好であった。
[参考例13]
2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(40mmol)と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(20mmol)と、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン(20mmol)とを出発原料(モノマー)とし、参考例10と同様の方法でポリイミド[重量平均分子量=71,000、平均屈折率=1.55、Δnxz=0.02]を合成した。このポリイミドを用いて、参考例11と同様の方法で、等方性フィルムの表面に厚み14.0μmのポリイミド層を形成した。上記等方性フィルムを剥離して、得られたポリイミド層を位相差フィルム3−Cとした。得られた位相差フィルム3−Cの特性を表3に示す。また、上記位相差フィルム3−Cの平滑性を評価するために、当該位相差フィルムを、吸収軸がそれぞれ直交する2枚の偏光子の間に挟み込み、バックライトに照らして、斜め方向から目視観察したところ(図10(b))、ムラが観察された。
VAモードの液晶セルの作製
[参考例14]
VAモード(ノーマリーブラックモード)の液晶セルを含む液晶表示装置[松下電器産業(株)製 32V型TH−32LX10]から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板および位相差フィルムを取り除いて、上記液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。上記液晶セルの無電界印加時におけるRth[590]は310nm、R40[480]/R40[590]は、1.1であった。
偏光素子の作製
[実施例1]
参考例1で得た偏光子P1の一方の面に、第1の光学素子として、参考例5で得た位相差フィルム2−Aを、その遅相軸が、上記偏光子P1の吸収軸と平行(0°±0.5°)となるように、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤層(厚み1μm)[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」]を介して積層した。次いで、上記位相差フィルム2−Aの表面に、第2の光学素子として、参考例12で得た位相差フィルム3−Bを、その遅相軸が上記偏光子P1の吸収軸と平行(0°±0.5°)となるように、アクリル系粘着剤層(厚み20μm)を介して積層した。上記偏光子P1の光学素子が積層されない面には、参考例3で得た等方性フィルム1−Bを、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤層(厚み1μm)[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」]を介して積層した。このようにして作製した、偏光素子を偏光素子Aとした。
[参考例15]
参考例1で得た偏光子P2の両側に、参考例2で得た等方性フィルム1−Bを、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤層(厚み1μm)[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」]を介して積層した。このように作製した偏光素子を偏光素子Xとした。
液晶パネルおよび液晶表示装置の作製
[実施例2]
参考例14で得た液晶セルの視認側の表面に、実施例1で得られた偏光素子Aを、位相差フィルム2−Aが偏光子P1と上記液晶セルとの間に配置されるように、且つ、上記液晶セルの長辺と上記偏光子P1の吸収軸が互いに平行となるようにアクリル系粘着剤層(厚み20μm)を介して積層した。続いて、上記液晶セルのバックライト側に、参考例15で得られた偏光素子Xを、上記液晶セルの短辺と上記偏光子P2の吸収軸が互いに平行となるようにアクリル系粘着剤層(厚み20μm)を介して積層した。
このようにして得た液晶パネルAをバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Aを作成した。バックライトを点灯させた直後の液晶パネルは、全面で良好な表示均一性を有するものであった。バックライトを点灯し続けて10分経過後に斜め方向のコントラスト比と斜め方向のカラーシフト量を測定した。得られた特性は、表4の通りである。
さらに上記のパックライトを10時間点灯させた後、ミノルタ(株)製 2次元色分布測定装置「CA−1500」を用いて、暗室にて上記液晶表示装置の表示画面を撮影した。その結果、図11に示すように、バックライトの熱による表示ムラは殆ど見られなかった。
[実施例3]
第1の光学素子として、参考例7で得た位相差フィルム2−Cを用いたこと以外は、実施例1および実施例2と同様の方法で、液晶パネルBおよび液晶表示装置Bを作製した。バックライトを点灯させた直後の液晶パネルは、全面で良好な表示均一性を有するものであった。バックライトを点灯し続けて10分経過後に斜め方向のコントラスト比と斜め方向のカラーシフト量を測定した。得られた特性は、表4の通りである。さらに上記のパックライトを10時間点灯させた後、ミノルタ(株)製 2次元色分布測定装置「CA−1500」を用いて、暗室にて上記液晶表示装置の表示画面を撮影した。その結果、バックライトの熱による表示ムラは殆ど見られなかった。
[実施例4]
第1の光学素子として、参考例8で得た位相差フィルム2−Dを2枚用いた(各位相差フィルムの遅相軸が平行となるように、厚み20μmのアクリル系粘着剤を用いて積層した)こと以外は、実施例1および実施例2と同様の方法で、液晶パネルCおよび液晶表示装置Cを作製した。バックライトを点灯させた直後の液晶パネルは、全面で良好な表示均一性を有するものであった。バックライトを点灯し続けて10分経過後に斜め方向のコントラスト比と斜め方向のカラーシフト量を測定した。得られた特性は、表4の通りである。さらに上記のパックライトを10時間点灯させた後、ミノルタ(株)製 2次元色分布測定装置「CA−1500」を用いて、暗室にて上記液晶表示装置の表示画面を撮影した。その結果、バックライトの熱による表示ムラは殆ど見られなかった。
[比較例1]
第1の光学素子として、参考例9で得た位相差フィルム2−Eを用いたこと以外は、実施例1および実施例2と同様の方法で、液晶パネルDおよび液晶表示装置Dを作製した。バックライトを点灯させた直後の液晶パネルは、全面で良好な表示均一性を有するものであった。バックライトを点灯し続けて10分経過後に斜め方向のコントラスト比と斜め方向のカラーシフト量を測定した。得られた特性は、表4の通りである。さらに上記のパックライトを10時間点灯させた後、ミノルタ(株)製 2次元色分布測定装置「CA−1500」を用いて、暗室にて上記液晶表示装置の表示画面を撮影した。その結果、図12に示すように、バックライトの熱による表示ムラは、文字や画像の表示に悪影響を及ぼすほど大きかった。
[比較例2]
第1の光学素子として、参考例9で得た位相差フィルム2−Eを用いたことと、参考例11で得た位相差フィルム3−Aを用いたこと以外は、実施例1および実施例2と同様の方法で、液晶パネルEおよび液晶表示装置Eを作製した。バックライトを点灯させた直後の液晶パネルは、全面で良好な表示均一性を有するものであった。バックライトを点灯し続けて10分経過後に斜め方向のコントラスト比と斜め方向のカラーシフト量を測定した。得られた特性は、表4の通りである。さらに上記のパックライトを10時間点灯させた後、ミノルタ(株)製 2次元色分布測定装置「CA−1500」を用いて、暗室にて上記液晶表示装置の表示画面を撮影した。その結果、図13に示すように、バックライトの熱による表示ムラは、文字や画像の表示に深刻な悪影響を及ぼすほど非常に大きかった。
[評価]
実施例2〜4に示すように、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を備える液晶セルの一方の面に、偏光子と、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含む第1の光学素子と、実質的に光学的に負の一軸性を有する第2の光学素子とを、この順に備える偏光素子を配置した液晶パネルは、比較例1および2で示す第1の光学素子として、芳香族系樹脂の高分子フィルムを用いた液晶パネルよりも、斜め方向のコントラスト比を高め、且つ、斜め方向のカラーシフト量を小さくすることができた。また、本発明の液晶パネルを組み込んだ液晶表示装置は、長時間バックリライトを点灯しても、良好な表示均一性を有するものであった。このような素晴らしい効果が得られた要因としては、(1)光弾性係数の絶対値が小さい材料で、実際にnx>nz>nyの関係を有し、特定の位相差値を満足する位相差フィルムを作製したことが挙げられる。加えて、(2)第1の光学素子の波長分散特性を適切に値としたこと、(3)厚み方向の複屈折率が大きな材料で、第2の光学素子に用いる位相差フィルムを薄くしたこと、(4)第2の光学素子の波長分散特性を適切な値としたことなども、本発明の効果発現に役立ったものと考えられる。