本発明の光学フィルムにおいて、前記λ/2板の面内位相差Reが、180〜320nmの範囲であることが好ましい。
本発明の光学フィルムにおいて、前記光学補償層が、nx≧ny>nzの屈折率分布を有することが好ましい。なお、本発明において、「nx≧ny>nz」とは、「nx=ny>nzおよびnx>ny>nzの少なくとも一方」を意味する。
本発明の光学フィルムにおいて、前記光学補償層が、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一つの非液晶性ポリマーから形成されていることが好ましい。
本発明の光学フィルムにおいて、前記光学補償層が、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびセルロース系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂から形成されていることが好ましい。
本発明の光学フィルムにおいて、前記λ/2板が、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂およびポリスルホン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂から形成されていることが好ましい。
本発明の光学フィルムにおいて、前記λ/2板と前記光学補償層とが、粘着剤層および接着剤層の少なくとも一方を介して貼り合わされていてもよい。
つぎに、本発明の光学フィルム、液晶パネルおよび液晶表示装置について、例をあげて詳細に説明する。
〔A.定義等〕
本発明において、前記偏光子の吸収軸と前記λ/2板の遅相軸とのなす角度とは、前記偏光子の吸収軸と前記λ/2板の遅相軸とのなす角度のうち、小さい方の角度(狭角)をいう。
本発明において、屈折率「nx」は、層(λ/2板、光学補償層、液晶セル等、以下同じ)の面内の屈折率が最大となる方向(遅相軸方向)の屈折率である。屈折率「ny」は、層の面内で前記nxの方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率である。屈折率「nz」は、前記nxおよび前記nyの各方向に対し直交する層の厚み方向の屈折率である。
本発明において、層の面内の位相差値Re[λ]とは、例えば、23℃での波長λ(nm)における式:Re[λ]=(nx−ny)×dにより算出される面内位相差値である。dは、層の厚み(nm)である。
本発明において、層の厚み方向の位相差値Rth[λ]とは、例えば、23℃での波長λ(nm)における式:Rth[λ]=(nx−nz)×dにより算出される位相差値である。dは、層の厚みである。
本発明において、Nz係数は、式:Nz係数=Rth[λ]/Re[λ]によって算出される値である。前記λは、例えば、590nmとすることができる。
本発明において、「λ/2板」とは、ある特定の振動方向を有する直線偏光を、前記直線偏光の振動方向とは直交する振動方法を有する直線偏光に変換したり、右円偏光を左円偏光に(または、左円偏光を右円偏光に)変換したりする機能を有するものをいう。λ/2板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内の位相差値が約1/2である。
本発明において、「nx=ny」または「ny=nz」とは、これらが完全に一致する場合だけでなく、実質的に同一である場合を包含する。したがって、例えば、nx=nyと記載する場合には、Re[590]が10nm未満である場合を包含する。
本発明において、「直交」は、実質的に直交している場合を含み、前記実質的に直交している場合とは、例えば、90±2度の範囲であり、好ましくは、90±1度の範囲である。また、本発明において、「平行」とは、実質的に平行の場合を含み、前記実質的に平行の場合とは、例えば、0±2度の範囲であり、好ましくは、0±1度の範囲である。
〔B.本発明の光学フィルム〕
〔B−1.本発明の光学フィルムの全体構成〕
図1の模式断面図に、本発明の光学フィルムの構成の一例を示す。同図においては、分かりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は、実際とは異なっている。図示のとおり、この光学フィルム10は、透明高分子フィルム11、偏光子12、λ/2板13、および光学補償層14が、この順序で積層され構成されている。本例では、前記λ/2板13は、保護層を兼ねている。前記透明高分子フィルム11、前記偏光子12および前記λ/2板13により、偏光板15が構成されている。前記偏光子12の吸収軸と前記λ/2板13の遅相軸とのなす角度は、理想的には0度または90度であるが、実質的には0±5度の範囲または90±5度の範囲であり、好ましくは、0±3度の範囲または90±3度の範囲であり、より好ましくは、0±1度の範囲または90±1度の範囲である。
前記光学フィルムの各構成部材(光学部材)の間には、任意の接着層(図示せず)や、任意の光学部材(好ましくは、等方性を示すもの)が配置されてもよい。前記「接着層」とは、隣り合う光学部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。前記接着層を形成する材料としては、例えば、従来公知の接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等が挙げられる。前記接着層は、接着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
本発明の光学フィルムの全体厚みは、例えば、50〜1000μmの範囲であり、好ましくは、80〜500μmの範囲であり、より好ましくは、100〜300μmの範囲である。本発明によれば、偏光子と光学補償層との間にλ/2板を配置し、かつ、前記偏光子の吸収軸と前記λ/2板の遅相軸とのなす角度を前記所定の範囲に設定することにより、マルチドメイン方式VAモードの液晶セルを用いた液晶表示装置において、白表示の輝度を向上させることが可能である。
〔B−2.透明高分子フィルム〕
前記透明高分子フィルムの形成材料は、特に限定されないが、透明性に優れるポリマーが好ましい。具体的には、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂(例えば、商品名「ARTON」(JSR社製)、商品名「ZEONOR」、商品名「ZEONEX」(日本ゼオン社製)等)、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。さらに、例えば、特開2001−343529号公報(WO 01/37007号)に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。具体例としては、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物等である。これらの形成材料の中でも、例えば、透明フィルムを形成した際の複屈折率を、相対的により一層低く設定できる材料が好ましく、具体的には、前述の側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物が好ましい。前記の樹脂のなかで、TAC等のセルロース系ポリマーフィルム、ノルボルネン系ポリマーフィルム(「ARTON」(JSR)、「ZEONOR」、「ZEONEX」(日本ゼオン)等)が代表的ものとして挙げられる。
前記透明高分子フィルムの厚みは、例えば、10〜1000μmの範囲であり、好ましくは、20〜500μmの範囲であり、より好ましくは、30〜100μmの範囲である。
〔B−3.偏光子〕
前記偏光子は、例えば、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムを延伸して得ることができる。前記偏光子のヨウ素含有量は、例えば、1.8〜5.0重量%の範囲であり、好ましくは、2.0〜4.0重量%の範囲である。前記偏光子は、さらに、カリウムを含むことが好ましい。前記カリウムの含有量は、例えば、0.2〜1.0重量%の範囲であり、好ましくは、0.3〜0.9重量%の範囲であり、より好ましくは、0.4〜0.8重量%の範囲である。前記偏光子は、さらに、ホウ素を含むことが好ましい。前記ホウ素の含有量は、例えば、0.5〜3.0重量%の範囲であり、好ましくは、1.0〜2.8重量%の範囲であり、より好ましくは、1.5〜2.6重量%の範囲である。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することで得ることができる。前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、好ましくは、95.0〜99.9モル%の範囲である。ケン化度が前記範囲であるポリビニルアルコール系樹脂を用いることで、より耐久性に優れた偏光子を得ることができる。前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。前記平均重合度は、好ましくは、1200〜3600の範囲である。前記平均重合度は、例えば、JIS K 6726(1994年版)に準じて求めることができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、例えば、特開2000−315144号公報[実施例1]に記載の方法が挙げられる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムは、好ましくは、可塑剤および界面活性剤の少なくとも一方を含む。前記可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。前記界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤等が挙げられる。前記可塑剤および前記界面活性剤の含有量は、好ましくは、前記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、1〜10重量部の範囲である。前記可塑剤および前記界面活性剤は、例えば、偏光子の染色性や延伸性をより一層向上させる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムは、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。前記市販のポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
〔B−4.λ/2板〕
前記λ/2板の面内位相差値Reは、180〜320nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、200〜300nmの範囲であり、さらに好ましくは、220〜280nmの範囲である。
前記λ/2板の厚みは、例えば、10〜100μmの範囲であり、好ましくは、20〜80μmの範囲であり、より好ましくは、30〜60μmの範囲である。
前記λ/2板は、例えば、ポリマーフィルムを延伸処理することにより形成できる。例えば、前記ポリマーの種類、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)、延伸方法等を適切に選択することにより、所望の光学特性(例えば、屈折率分布、面内位相差値、厚み方向位相差値、Nz係数)を有するλ/2板を形成できる。より具体的には、延伸温度は、例えば、120〜180℃の範囲であり、好ましくは、140〜170℃の範囲である。延伸倍率は、例えば、1.05〜2.0倍の範囲であり、好ましくは、1.3〜1.6倍の範囲である。延伸方法としては、例えば、横一軸延伸法が挙げられる。延伸方向は、好ましくは、前記偏光子の吸収軸に対して実質的に直交する方向(前記ポリマーフィルムの幅方向、すなわち、長手方向に対して直交する方向)である。
前記ポリマーフィルムを構成するポリマーとしては、任意の適切なポリマーを用いればよい。具体例としては、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー等の正の複屈折フィルムが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーが好ましい。
〔B−5.光学補償層〕
前述のとおり、前記光学補償層は、nx≧ny>nzの屈折率分布を有することが好ましい。前記光学補償層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。本発明において、前記光学補償層の厚みは、特に限定されないが、液晶表示装置の薄型化を図り、また、視野覚補償機能に優れ、かつ位相差が均一の光学フィルムを提供できることから、0.1〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.5〜30μmの範囲であり、さらに好ましくは、1〜20μmの範囲である。
前記光学補償層の形成材料としては、例えば、つぎに二つのタイプが挙げられる。
一方のタイプは、非液晶性ポリマータイプである。例えば、前記非液晶性ポリマーを、前記λ/2板の前記透明高分子フィルム側とは反対側の表面に塗工して塗工膜を形成し、前記塗工膜における前記非液晶性ポリマーを固化することで、nx=ny>nzの屈折率分布を有する(光学的一軸性の)光学補償層を形成できる。また、例えば、前記非液晶性ポリマーを、前記λ/2板とは別の基材に塗工して塗工膜を形成し、前記基材と前記塗工膜とを共に収縮または延伸し、これを粘着剤層または接着剤層を介して前記λ/2板に貼り合わせることで、nx>ny>nzの屈折率分布を有する(光学的二軸性の)光学補償層を形成できる。この場合において、前記λ/2板とは別の基材は、前記貼り合わせの後、前記光学補償層から剥離してもよいし、剥離せずにそのまま残してもよい。
他方のタイプは、フィルムタイプである。例えば、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂等を含むフィルムを一軸延伸することで、nx=ny>nzの屈折率分布を有する(光学的一軸性の)光学補償層を形成できる。また、例えば、前記フィルムを二軸延伸することで、nx>ny>nzの屈折率分布を有する(光学的二軸性の)光学補償層を形成できる。
〔B−5−1.非液晶性ポリマータイプ〕
まず、前記非液晶性ポリマータイプについて説明する。前記非液晶性ポリマーとしては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性等に優れ、剛性にも富むことから、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等が好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜500,000の範囲である。前記重量平均分子量は、例えば、標準試料としてポリエチレンオキシド、溶媒としてDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)を使用して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定できる。
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
前記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3基である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC6〜20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10アルキル基、そのフッ素化誘導体、およびフッ素や塩素等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、およびC1〜3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
前記式(3)〜(5)中、Qは、置換基であり、fは、その置換数を表す。Qは、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また、前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、およびC1〜3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’−ビス(トリハロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンとしては、例えば、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンとしては、例えば、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
前記光学補償層の形成材料である前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくは、C1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは、C1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくは、メトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
前記式(8)中、X’は、置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、前記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは、前記式(8)と同義である。
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式(17)において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
また、これらの他に、前記光学補償層の形成材料である前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C1〜3アルキル基およびC1〜3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
また、前記式(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1〜9アルコキシカルボニル基、C1〜9アルキルカルボニルオキシ基、C1〜12アリールオキシカルボニル基、C1〜12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1〜12アリールカルバモイル基、ならびに、C1〜12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル基、C1〜3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
前記式(23)中、A、A’およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは、0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
前述のように、前記光学補償層は、例えば、基材上に、前記非液晶性ポリマーを塗工して塗工膜を形成し、前記塗工膜における前記非液晶性ポリマーを固化させることによって、前記基材上に形成できる。ポリイミドのような前記非液晶性ポリマーは、その性質上、前記基材の配向の有無に関わらず、nx=ny>nzの光学特性を示す。このため、光学的一軸性、すなわち、厚み方向にのみ位相差を示す光学補償層が形成できるのである。なお、前記光学補償層は、前記基材から剥離して使用してもよいし、基材上に形成した状態で使用してもよい。
この際に前記基材として、前記λ/2板を使用することが好ましい。前記λ/2板を基材として、その上に前記非液晶性ポリマーを直接塗工すれば、λ/2板と光学補償層とを粘着剤や接着剤等によって積層することが不要となるため、積層数が軽減され、光学フィルムをより一層薄型化できると共に、光学フィルムの製造工程をより単純化できるからである。
また、前述のように、前記非液晶性ポリマーは光学的一軸性を示す性質を有することから、基材の配向性を利用する必要がない。このため、前記基材としては、配向性基材、非配向性基材の両方が使用できる。前記配向性基材としては、例えば、延伸フィルム等があげられ、厚み方向の屈折率が制御されたもの等も使用できる。前記屈折率の制御は、例えば、ポリマーフィルムを熱収縮性フィルムと接着し、さらに加熱延伸する方法等によって行うことができる。
前記基材上に、前記非液晶性ポリマーを塗工する方法としては、特に限定されないが、例えば、前述のような非液晶性ポリマーを加熱溶融して塗工する方法や、前記非液晶性ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗工する方法等があげられる。その中でも、作業性に優れることから、前記ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。
前記ポリマー溶液におけるポリマー濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記非液晶性ポリマーが5〜50重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、10〜40重量部の範囲である。
前記ポリマー溶液の溶媒としては、前記非液晶性ポリマーを溶解できれば特に制限されず、前記非液晶性ポリマーの種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノ−ル、バラクロロフェノ−ル等のフェノ−ル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記ポリマー溶液は、さらに、任意の適切な添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤、金属類等があげられる。
また、前記ポリマー溶液は、例えば、前記非液晶性ポリマーの配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテ−ト(POM)、ポリカーボネ−ト(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、およびポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレ−ト(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノ−ルノボラック樹脂等があげられる。
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記ポリマー材料に対して、例えば、0〜50重量%の範囲であり、好ましくは、0〜30重量%の範囲である。
前記ポリマー溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
前記塗工膜を形成する非液晶性ポリマーの固化は、例えば、前記塗工膜を乾燥することによって行うことができる。前記乾燥の方法としては、特に制限されず、例えば、自然乾燥や加熱乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記非液晶性ポリマーの種類や、前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、温度は、例えば、40〜300℃の範囲であり、好ましくは、50〜250℃の範囲であり、より好ましくは、60〜200℃の範囲である。なお、前記塗工膜の乾燥は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。乾燥時間も特に制限されないが、例えば、10秒〜30分の範囲であり、好ましくは、30秒〜25分の範囲であり、より好ましくは、1〜20分の範囲である。
なお、前記光学補償層中に残存する前記ポリマー溶液の溶媒は、その量に比例して光学フィルムの光学特性を経時的に変化させるおそれがあるため、その残存量は、例えば、5%以下が好ましく、より好ましくは、2%以下であり、さらに好ましくは、0.2%以下である。
また、前記基材として、前記λ/2板とは別の基材を使用することによって、光学的二軸性、すなわち、nx>ny>nzの屈折率分布を有する光学補償層を形成することもできる。具体的に説明すると、例えば、前述と同様にして、面内において一方向に収縮性を有する基材上に、直接、前記非液晶性ポリマーを塗工して塗工膜を形成した後、前記基板を収縮させる。前記基材が収縮すれば、これに伴って前記基材上の塗工膜も共に面方向において収縮するため、前記塗工膜は、さらに面内において屈折率差が生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。そして、前記塗工膜を形成する非液晶性ポリマーを固化することによって、前記二軸性の光学補償層が形成されるのである。
前記基材は、面内において一方向に収縮性を持たせるため、例えば、面内のいずれか一方向において、延伸しておくことが好ましい。このように、予め延伸しておくことによって、前記延伸方向と反対方向に収縮力が発生する。この基材の面内の収縮差を利用して、前記塗工膜を形成する非液晶性ポリマーに面内の屈折率差を付与するのである。延伸前の前記基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、10〜200μmの範囲であり、好ましくは、20〜150μmの範囲であり、より好ましくは、30〜100μmの範囲である。延伸倍率に関しては特に限定されない。
前記基材の収縮は、例えば、前述と同様にして前記基材上に塗工膜を形成した後、加熱処理を施すことによって行うことができる。前記加熱処理の条件としては、特に制限されず、例えば、基材の材料の種類等によって適宜決定できるが、例えば、加熱温度は、25〜300℃の範囲であり、好ましくは、50〜200℃の範囲であり、より好ましくは、60〜180℃の範囲である。前記収縮の程度は、特に制限されないが、収縮前の基材の長さを100%として、例えば、0を越え10%以下の収縮割合があげられる。
一方、前述と同様に前記λ/2板とは別の基材上に塗工膜を形成し、前記基材と前記塗工膜とを共に延伸することによって、光学的二軸性、すなわち、nx>ny>nzを示す光学補償層を基材上に形成することもできる。この方法によれば、前記基材と前記塗工膜との積層体を、面内の一方向に共に延伸することによって、前記塗工膜は、さらに面内において屈折率差を生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。
前記基材と塗工膜との積層体の延伸方法は、特に制限されないが、例えば、長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向を固定した状態で、幅方向に一軸延伸する固定端横延伸、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸等の方法があげられる。
そして、前記積層体の延伸は、例えば、前記基材と前記塗工膜との両方を共に引っ張ることによって行ってもよいが、例えば、つぎの理由から、前記基材のみを延伸することが好ましい。前記基材のみを延伸した場合、この延伸により前記基材に発生する張力によって、前記基材上の前記塗工膜が間接的に延伸される。そして、積層体を延伸するよりも、単層体を延伸する方が、通常、均一な延伸となるため、前述のように基材のみを均一に延伸すれば、これに伴って、前記基材上の前記塗工膜も均一に延伸できるためである。
延伸の条件としては、特に制限されず、例えば、前記基材や前記非液晶性ポリマーの種類等に応じて適宜決定できる。また、延伸時の加熱温度は、例えば、前記基材や前記非液晶性ポリマーの種類、それらのガラス転移点(Tg)、添加物の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、80〜250℃の範囲であり、より好ましくは、120〜220℃の範囲であり、さらに好ましくは、140〜200℃の範囲である。特に前記基材の材料のTg付近またはそれ以上の温度であることが好ましい。
このように、前記λ/2板とは別の基材上に前記塗工膜を形成し、前記基材と前記塗工膜とを共に収縮または延伸した後、これを粘着剤層や接着剤層を介して前記λ/2板に貼り合わせることで、nx>ny>nzの屈折率分布を有する(光学的二軸性の)光学補償層を形成できる。この場合において、前記λ/2板とは別の基材は、前記貼り合わせの後、前記光学補償層から剥離してもよいし、剥離せずにそのまま残してもよい。
前記粘着剤または接着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な感圧粘着剤や接着剤等、従来公知のものが使用できる。これらの中でも、光学フィルムの光学特性の変化を防止する点から、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、具体的には、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないアクリル系粘着剤が望ましい。
本発明の光学補償層は、前記ポリイミド等の非液晶性ポリマーから形成された非液晶性ポリマータイプであることが特に好ましい。前記非液晶性ポリマータイプの光学補償層の波長分散は、正分散特性であり、マルチドメイン方式VAモードの液晶セルの正分散特性に類似している。このため、表示特性に特に優れた液晶パネルおよび液晶表示装置が得られるようになるからである。
〔B−5−2.フィルムタイプ〕
つぎに、前記フィルムタイプの形成材料について説明する。前記フィルムタイプの形成材料としては、例えば、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂等を含むフィルムが挙げられる。
まず、前記ノルボルネン系樹脂を含むフィルムについて説明する。前記ノルボルネン系樹脂は、光弾性係数の絶対値(C[λ]、前記λは、例えば、590nmとすることができる)が小さいという特徴を有する。前記ノルボルネン系樹脂の波長590nmにおける光弾性係数の絶対値(C[590])は、好ましくは、1×10−12m2/N〜1×10−11m2/Nの範囲である。本発明において、「ノルボルネン系樹脂」とは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。前記「(共)重合体」は、ホモポリマーまたは共重合体(コポリマー)を表す。
前記ノルボルネン系樹脂は、出発原料としてノルボルネン環(ノルボルナン環に二重結合を有するもの)を有するノルボルネン系モノマーが用いられる。前記ノルボルネン系樹脂は、(共)重合体の状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても、有していなくてもよい。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有するノルボルネン系樹脂は、例えば、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン等が挙げられる。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系樹脂は、例えば、開裂により5員環となるモノマーを用いて得られる(共)重合体である。前記開裂により5員環となるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−フェニルノルボルネン等やそれらの誘導体等が挙げられる。前記ノルボルネン系樹脂が共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に限定されず、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
前記ノルボルネン系樹脂としては、例えば、(a)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体に水素添加した樹脂、(b)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂等が挙げられる。前記ノルボルネン系モノマーの開環共重合体に水素添加した樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および非共役ジエン類の少なくとも一つとの開環共重合体に水素添加した樹脂を包含する。前記ノルボルネン系モノマーを付加共重合させた樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および非共役ジエン類の少なくとも一つとを付加共重合させた樹脂を包含する。
前記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体に水素添加した樹脂は、例えば、ノルボルネン系モノマー等をメタセシス反応させて、開環(共)重合体を得、さらに、前記開環(共)重合体に水素添加して得ることができる。具体的には、例えば、特開平11−116780号公報の段落[0059]〜[0060]に記載の方法、特開2001−350017号公報の[0035]〜[0037]に記載の方法等が挙げられる。前記ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂は、例えば、特開昭61−292601号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
前記ノルボルネン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(ポリスチレン標準)で測定した値が、好ましくは、20000〜500000の範囲である。前記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、120〜170℃の範囲である。前記の樹脂であれば、より一層、優れた熱安定性を有し、より一層、延伸性に優れた光学補償層を得ることができる。前記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、JIS K 7121に準じた示差走査熱量(DSC)法により算出される値である。
前記ノルボルネン系樹脂を含むフィルムは、例えば、ソルベントキャスティング法または溶融押出法によって、シート状に成形された高分子フィルムを、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、または縦横逐次二軸延伸法により、延伸して作製される。前記延伸法は、製造効率の観点から、横一軸延伸法であることが好ましい。前記高分子フィルムを延伸する温度(延伸温度)は、好ましくは、130〜160℃の範囲である。前記高分子フィルムを延伸する倍率(延伸倍率)は、好ましくは、1.2〜4.0倍の範囲である。前記延伸法は、固定端延伸法であってもよいし、自由端延伸法であってもよい。固定端延伸法によれば、nx>ny>nzの屈折率分布(光学的二軸性)を有する光学補償層を作製することが可能である。
前記ノルボルネン系樹脂を含むフィルムとしては、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることができる。あるいは、前記市販のフィルムに延伸処理および収縮処理の少なくとも一方の処理等の2次的加工を施したものを用いることができる。前記市販のノルボルネン系樹脂を含むフィルムとしては、例えば、JSR(株)製の商品名「アートンシリーズ(ARTON F、ARTON FX、ARTON D)」、(株)オプテス製の商品名「ゼオノアシリーズ(ZEONOR ZF14、ZEONOR ZF15、ZEONOR ZF16)」等が挙げられる。
つぎに、前記ポリカーボネート系樹脂を含むフィルムについて説明する。
前記ポリカーボネート系樹脂としては、芳香族2価フェノール成分とカーボネート成分とからなる芳香族ポリカーボネートが好ましく用いられる。芳香族ポリカーボネートは、通常、芳香族2価フェノール化合物とカーボネート前駆物質との反応によって得ることができる。すなわち、芳香族2価フェノール化合物を苛性アルカリおよび溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは芳香族2価フェノール化合物とビスアリールカーボネートとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法により得ることができる。
前記芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上のものを併用してもよい。
前記カーボネート前駆物質としては、ホスゲン、前記2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられ、なかでもホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。
前記ポリカーボネート系樹脂は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が、好ましくは、25,000〜250,000の範囲であり、より好ましくは、30,000〜200,000の範囲であり、さらに好ましくは、40,000〜100,000の範囲である。前記重量平均分子量を前記の範囲とすることで、溶解性、成形性、流延等の操作性に優れ、かつ、機械的強度に優れた光学補償層を形成できる。
これらのなかでも、前記ポリカーボネート系樹脂として、下記式(24)で表される繰り返し単位(C)と、フルオレン構造を含む下記一般式(25)で表される繰り返し単位(D)とを含むものが、波長分散特性に優れ、位相差値が発現しやすい点で、好ましく用いられる。
前記式(24)および(25)中、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、1〜5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1〜5個の炭素原子を有するアルキルカルボニルオキシ基およびそれらの置換誘導体から選ばれる基であり、jおよびkは、1以上の整数である。さらに好ましくは、R12およびR13は、いずれも1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であり、特に好ましくは、R12およびR13は、いずれもメチル基である。
前記一般式(24)で表される繰り返し単位(C)と、前記一般式(25)で表される繰り返し単位(D)とを含むポリカーボネートにおいて、繰り返し単位(C)と繰り返し単位(D)との比(C:D)は、好ましくは、C:D=2:8〜4:6である。前記比を前記の範囲とすることで、光学補償層を形成した場合に、可視光の広い領域で位相差値が一定になるため、液晶表示装置の黒表示における斜め方向のカラーシフトを改善することができる。なお、前記比は、各モノマー(芳香族2価フェノール成分)の仕込み比率によって、適宜調整できる。
前記ポリカーボネート系樹脂を含むフィルムは、例えば、ソルベントキャスティング法または溶融押出法によって、シート状に成形された高分子フィルムを、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、または縦横逐次二軸延伸法により、延伸して作製される。前記延伸法は、製造効率の観点から、横一軸延伸法であることが好ましい。前記高分子フィルムを延伸する温度(延伸温度)は、好ましくは、100〜170℃の範囲である。前記高分子フィルムを延伸する倍率(延伸倍率)は、好ましくは、1.01〜2.00倍の範囲である。前記延伸法は、固定端延伸法であってもよいし、自由端延伸法であってもよい。固定端延伸法によれば、nx>ny>nzの屈折率分布(光学的二軸性)を有する光学補償層を作製することが可能である。
前記ポリカーボネート系樹脂を含むフィルムとしては、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることができる。あるいは、前記市販のフィルムに延伸処理および収縮処理の少なくとも一方の処理等の2次的加工を施したものを用いることができる。前記市販のポリカーボネート系樹脂を含むフィルムとしては、例えば、帝人化成(株)製の商品名「ピュアエースシリーズ」、(株)カネカ製の商品名「エルメックシリーズ」(R140、R435等)、日本GEプラスチックス製の商品名「イルミネックスシリーズ」等が挙げられる。
つぎに、前記セルロース系樹脂を含むフィルムについて説明する。
前記セルロース系樹脂は、アセチル基およびプロピオニル基で置換されていることが好ましい。このセルロース系樹脂の置換度、「DSac(アセチル置換度)+DSpr(プロピオニル置換度)」(セルロースの繰り返し単位中に存在する3個の水酸基が、アセチル基またはプロピオニル基で平均してどれだけ置換されているかを示す)の下限は、好ましくは、2以上、より好ましくは、2.3以上、さらに好ましくは、2.6以上である。「DSac+DSpr」の上限は、好ましくは、3以下、より好ましくは、2.9以下、さらに好ましくは、2.8以下である。前記セルロース系樹脂の置換度を前記範囲とすることにより、前記のような所望の屈折率分布を有する光学補償層を得ることができる。
前記DSpr(プロピオニル置換度)の下限は、好ましくは、1以上、より好ましくは、2以上、さらに好ましくは、2.5以上である。前記DSprの上限は、好ましくは、3以下、より好ましくは、2.9以下、さらに好ましくは、2.8以下である。前記DSprを前記範囲とすることにより、セルロース系樹脂の溶剤に対する溶解性が向上し、得られる光学補償層の厚みの制御が容易となる。さらに、前記「DSac+DSpr」を前記の範囲とし、かつ、前記DSprを前記の範囲とすることにより、前記の光学特性を有し、かつ、逆分散の波長依存性を有する光学補償層が得ることができる。
前記DSac(アセチル置換度)およびDSpr(プロピオニル置換度)は、特開2003−315538号公報[0016]〜[0019]に記載の方法により求めることができる。
前記セルロース系樹脂は、アセチル基およびプロピオニル基以外のその他の置換基を有してもよい。その他の置換基としては、例えば、ブチレート等のエステル基;アルキルエーテル基、アラアルキレンエーテル基等のエーテル基等が挙げられる。
前記セルロース系樹脂の数平均分子量は、好ましくは、5千〜10万の範囲であり、より好ましくは、1万〜7万の範囲である。前記数平均分子量を前記範囲とすることにより、光学補償層の生産性に優れ、かつ、機械的強度が向上する。
アセチル基およびプロピオニル基への置換方法としては、適宜任意の方法が採用される。例えば、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを所定量の無水酢酸とプロピオン酸無水物との混合物によりアシル化する。アシル基を部分的に加水分解することにより、置換度「DSac+DSpr」を調整する。
セルロース系樹脂を含むフィルムは、例えば、セルロース系樹脂を溶剤で溶解して溶液を調製し、前記溶液を基材上に塗工して塗工膜を形成し、前記塗工膜を乾燥することによりフィルムを得ることにより製造できる。前記フィルムには、前述のような位相差を発現させるために、延伸処理が施される。前記延伸処理は、ノルボルネン系樹脂を含むフィルムと同様である。前記フィルムを延伸する温度(延伸温度)は、好ましくは、120〜160℃の範囲である。前記フィルムを延伸する倍率(延伸倍率)は、好ましくは、1.01〜1.05倍の範囲である。前記延伸は、特に制限するものではないが、フィルム長手方向の自由端延伸が好ましい。また、セルロース系樹脂を含むフィルムは、市販品を使用してもよい。
前記光学補償層として用いられるフィルムは、さらに、任意の適切な添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤等が挙げられる。前記添加剤の含有量は、好ましくは、主成分の樹脂100重量部に対し、0を超え10重量部以下である。
〔C.液晶パネル〕
〔C−1.液晶パネルの全体構成〕
前述のとおり、本発明の液晶パネルは、液晶セルと、2つの光学フィルムとを含む液晶パネルであって、前記液晶セルが、マルチドメイン方式VAモードであり、前記2つの光学フィルムが、それぞれ、前記本発明の光学フィルムであり、前記2つの光学フィルムが、それぞれ、前記光学補償層が前記液晶セル側に位置する状態で、前記液晶セルの視認側およびバックライト側に配置されていることを特徴とする。図2の模式断面図に、本発明の液晶パネルの構成の一例を示す。同図において、図1と同一部分には、同一符号を付している。図示のとおり、この液晶パネル20では、前記本発明の光学フィルム10が、前記光学補償層14が前記液晶セル21側に位置する状態で、前記液晶セル21の視認側(同図において上側)およびバックライト側(同図において下側)の双方に配置されている。前記視認側の光学フィルムと前記バックライト側の光学フィルムは、互いに吸収軸が直交する関係で配置されていることが好ましい。
〔C−2.液晶セル〕
前述のとおり、前記液晶セルは、マルチドメイン方式VAモードである。前記液晶セルは、一対の基板により液晶層が挟持されているという構成が一般的である。図4に、液晶セルの構成の一例を示す。図示のように、本例の液晶セル21は、一対の基板211の間に、スペーサー212が配置されることにより、空間が形成され、前記空間に、液晶層213が挟持されている。図示しないが、前記一対の基板のうち、一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、例えば、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(例えば、TFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を伝える信号線とが設けられる。前記一対の基板のうち、他方の基板には、例えば、カラーフィルターが設けられる。
前記カラーフィルターは、前記アクティブマトリクス基板に設けてもよい。または、例えば、フィールドシーケンシャル方式のように液晶表示装置の照明手段として、RGBの3色光源(さらに、多色の光源を含んでもよい)が用いられる場合には、前記カラーフィルターは、省略してもよい。前記一対の基板の間隔(セルギャップ)は、例えば、スペーサーによって制御される。前記セルギャップは、例えば、1.0〜7.0μmの範囲である。各基板の前記液晶層に接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜が設けられる。または、例えば、パターニングされた透明基板によって形成されるフリンジ電界を利用して、液晶分子の初期配向が制御される場合には、前記配向膜は、省略してもよい。
前記液晶セルは、nz>nx=nyの屈折率分布を有する。電界が存在しない状態における前記液晶セルのRth[590]は、好ましくは、−500〜−200nmの範囲であり、より好ましくは、−400〜−200nmの範囲である。前記Rth[590]は、例えば、液晶分子の複屈折率および前記セルギャップを調整することにより、適宜、設定される。
前記液晶セルでは、例えば、一画素毎に、前記液晶セルの長手方向を基準として反時計回りに45度、135度、225度、315度の4方向に液晶分子が倒され、画素が複数のドメインに分割されている。このように、液晶セルに、異なる方向を向いて並んだ液晶分子を存在させることで、特定の方向にのみ視野が限られることがなく、広視野角化が実現される。前記液晶セルは、例えば、シャープ(株)製の商品名「ASV(Advanced Super View)モード」、同社製の商品名「CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード」、富士通(株)製の商品名「MVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード」、三星電子(株)製の商品名「PVA(Patterned Vertical Alignment)モード」、同社製の商品名「EVA(Enhanced Vertical Alignment)モード」、三洋電機(株)製の商品名「SURVIVAL(Super Ranged Viewing Vertical Alignment)モード」等が挙げられる。
前記液晶セルとしては、例えば、市販の液晶表示装置に搭載されているものをそのまま用いてもよい。前記液晶セルを含む市販の液晶表示装置としては、例えば、シャープ(株)製液晶テレビの商品名「AQUOSシリーズ」、ソニー社製液晶テレビの商品名「BRAVIAシリーズ」、SAMSUNG社製32V型ワイド液晶テレビの商品名「LN32R51B」、(株)ナナオ製液晶テレビの商品名「FORIS SC26XD1」、AU Optronics社製液晶テレビの商品名「T460HW01」等が挙げられる。
〔C−3.液晶パネルにおける白表示の輝度の向上〕
本例の液晶パネルにおいて、白表示の輝度の向上は、例えば、つぎのようにして実施される。すなわち、まず、バックライトからの光が、バックライト側の透明高分子フィルム11を透過した後、バックライト側の偏光子12を入射することにより、直線偏光に変換される。ついで、前記バックライト側の偏光子12を出射した直線偏光が、バックライト側のλ/2板13に入射すると、前記バックライト側の偏光子12の吸収軸と前記バックライト側のλ/2板13の遅相軸のなす角度が、0±5度の範囲または90±5度の範囲に設定されているため、円偏光に変換される。つぎに、前記バックライト側のλ/2板13を出射した円偏光が、バックライト側の光学補償層11を透過した後、液晶セル21に入射する。このように、本例の液晶パネル20では、前記液晶セル21に入射する光が円偏光であるため、前記液晶セル21において、一部の液晶分子の倒れる方向が所望の方向からずれていても、全ての偏光が前記液晶セル21を透過する。つぎに、前記液晶セル21を透過した円偏光が、視認側の光学補償層14を透過した後、視認側のλ/2板13に入射すると、視認側の偏光子12の吸収軸と前記視認側のλ/2板13の遅相軸のなす角度が、0±5度の範囲または90±5度の範囲に設定されているため、直線偏光に変換される。つぎに、前記視認側のλ/2板13を出射した直線偏光が、前記視認側の偏光子12を透過した後、視認側の透明高分子フィルム11を透過する。このようにして、本例の液晶パネル20では、白表示の輝度の向上が達成される。
〔D.液晶表示装置〕
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の液晶パネルを含むことを特徴とする。図3の概略断面図に、本発明の液晶表示装置の構成の一例を示す。同図においては、分かりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は、実際とは異なっている。図示のとおり、この液晶表示装置200は、液晶パネル100と、前記液晶パネル100の一方の側に配置された直下方式のバックライトユニット80とを少なくとも備える。前記直下方式のバックライトユニット80は、光源81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84と、輝度向上フィルム85とを少なくとも備える。なお、本例の液晶表示装置200では、バックライトユニットとして、直下方式が採用された場合を示しているが、本発明は、これに限定されず、例えば、サイドライト方式のバックライトユニットであってもよい。サイドライト方式のバックライトユニットは、前記の直下方式の構成に加え、さらに導光板と、ライトリフレクターとを少なくとも備える。なお、図3に例示した構成部材は、本発明の効果が得られる限りにおいて、液晶表示装置の照明方式や液晶セルの駆動モード等、用途に応じてその一部が省略され得るか、または、他の光学部材で代替され得る。
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルの裏面側から光を照射して画面を見る透過型であってもよいし、液晶パネルの表示面側から光を照射して画面を見る反射型であってもよいし、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であってもよい。
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
本発明の液晶表示装置の好ましい用途は、テレビである。前記テレビの画面サイズは、好ましくは、ワイド17型(373mm×224mm)以上であり、より好ましくは、ワイド23型(499mm×300mm)以上であり、さらに好ましくは、ワイド32型(687mm×412mm)以上である。