A.液晶表示装置
図1は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。図2は、この液晶表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板の概略断面図であり、図3は、図2のアクティブマトリクス基板の概略平面図である。図2は、図3のII−II線による断面に対応する。
液晶表示装置100は、液晶セル10と、液晶セル10の外側の一方に配された光学補償素子20と、光学補償素子20の外側に配された偏光板30と、液晶セル10の光学補償素子20が設けられていない側に配された偏光板30’とを備える。偏光板30、30’は、それぞれ、偏光子と必要に応じて透明保護層とを有する。偏光板30、30’は、代表的には、その偏光子の吸収軸が互いに直交するようにして配置されている。液晶セル10は、一対のガラス基板11、11’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層12とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)11には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板(カラーフィルター基板)11’には、カラーフィルター13が設けられる。なお、カラーフィルター13は、アクティブマトリクス基板11に設けてもよい。好ましくは、カラーフィルター13は視認側(図示例では基板11’)に設けられる。基板11、11’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。基板11、11’の液晶層12と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
本発明の液晶表示装置においては、光学補償素子20は、液晶層12を基準にして、カラーフィルター13と反対側(図示例ではバックライト側)に配されている。カラーフィルター13を基準にして言い換えると、光学補償素子20と液晶層12とが同じ側に配置されている。より具体的には、光学補償素子20は、カラーフィルター13が設けられていない基板(図示例では基板11)の外側(図示例ではバックライト側)に配置されている。特定の光学補償素子20を液晶セルの片側、かつ、カラーフィルターと特定の位置関係で配置することにより、きわめて優れた視野角補償および斜め方向のコントラストを有する液晶表示装置が得られる。このような効果は理論的には明らかではなく、実際に液晶表示装置を作製してはじめて得られた知見であり、予期せぬ優れた効果である。
カラーフィルターが設けられた基板のヘイズ値は10%より大きく、好ましくは12%以上であり、さらに好ましくは14%以上であり、最も好ましくは15%以上である。ヘイズ値の上限は、好ましくは25%であり、さらに好ましくは20%である。このような高いヘイズ値を有するカラーフィルターが設けられた基板を用いる場合に、上記のような効果が顕著となる。なお、カラーフィルターが設けられた基板のヘイズ値とは、遮光層(ブラックマトリクス層)を含めた基板のヘイズ値を意味する。
アクティブマトリクス基板11には、液晶層12側の表面全体に層間絶縁膜61が設けられている。層間絶縁膜61は、例えば、感光性アクリル樹脂をスピンコートすることにより形成される。層間絶縁膜61上には、図2に示すように、画素電極62がマトリクス状に設けられており、この画素電極62が設けられた領域が表示を行う表示部となる。画素電極62は、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電材料で構成される。画素電極62は、例えばスパッタリング法などにより薄膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてその薄膜をパターニングすることにより形成され得る。層間絶縁膜61の下には、マトリクス状に配設された任意の適切なTFT63と、各TFT63にゲート信号を送るための走査線64およびソース信号(表示信号)を送るための信号線65とが設けられている。走査線64と信号線65とは、互いに直交するように設けられる。TFT63は、代表的には、アモルファスシリコンまたはポリシリコンなどからなる半導体層と、アルミニウム、モリブデン、クロム、銅、またはタンタルなどからなるメタル層とを有する。走査線64および信号線65はいずれも、アルミニウム、モリブデンまたは銅などからなる。この走査線64の一部がTFT63のゲート電極を構成し、信号線65の一部がソース電極を構成する。TFT63のドレイン電極66には接続片の一方の端部が電気的に接続され、この接続片の他方の端部が、層間絶縁膜61を貫通して設けられたコンタクトホール67を介して画素電極62と電気的に接続されている。さらに、コンタクトホール67の下部には、寄生容量配線68が延びている。このような構成により、所望の画素電極60に対して選択的に電圧を印加することが可能となる。
カラーフィルター基板11’には、遮光層(ブラックマトリックス層)14で仕切られた赤(R)、緑(G)、青(B)用のカラー層13R,13G,13Bを有するカラーフィルター13が設けられる。カラー層13R,13G,13Bは、アクリル系樹脂またはゼラチンなどを用いて形成され、上記表示部の画素電極62に対応する箇所に設けられる。ブラックマトリクス層14は、金属で構成してもよく、樹脂材料で構成してもよい。樹脂材料を用いる場合には、代表的には、アクリル系樹脂に顔料を分散したものが用いられる。
液晶セル10の駆動モードとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な駆動モードが採用され得る。駆動モードの具体例としては、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、VA(Vertical Aligned)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モードおよびASM(Axially Symmetric
Aligned Microcell)モードが挙げられる。VAモードおよびOCBモードが好ましい。本発明の光学補償素子20と組み合わせると、視野角補償および斜め方向のコントラストの改善が著しいからである。
図4は、VAモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。図4(a)に示すように、電圧無印加時には、液晶分子は基板11、11’面に垂直に配向する。このような垂直配向は、垂直配向膜(図示せず)を形成した基板間に負の誘電率異方性を有するネマティック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で一方の基板11の面から光を入射させると、偏光板30を通過して液晶層12に入射した直線偏光の光は、垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、偏光板30と直交する偏光軸を有する偏光板30’で吸収される。これにより電圧無印加時において暗状態の表示が得られる(ノーマリブラックモード)。図4(b)に示すように、電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸が基板面に平行に配向する。この状態の液晶層12に入射した直線偏光の光に対して液晶分子は複屈折性を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の傾きに応じて変化する。所定の最大電圧印加時において液晶層を通過する光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、偏光板30’を透過して明状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により暗状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光板30’からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。
図5は、OCBモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。OCBモードは、液晶層12をいわゆるベンド配向といわれる配向によって構成する表示モードである。ベンド配向とは、図5(c)に示すように、ネマチック液晶分子の配向が基板近傍においては、ほぼ平行の角度(配向角)を有し、配向角は液晶層の中心に向かうに従って基板平面に対して垂直な角度を呈し、液晶層の中心から離れるに従って対向する基板表面と配向になるように漸次連続的に変化し、かつ、液晶層全体にわたってねじれ構造を有しない配向状態をいう。このようなベンド配向は、以下のようにして形成される。図5(a)に示すように、何ら電界等を付与していない状態(初期状態)では、液晶分子は実質的にホモジニアス配向をとっている。ただし、液晶分子は、プレチルト角を有し、かつ、基板近傍のプレチルト角とそれに対向する基板近傍のプレチルト角とが異なっている。ここに所定のバイアス電圧(代表的には、1.5V〜1.9V)を印加すると(低電圧印加時)、図5(b)に示すようなスプレイ配向を経て、図5(c)に示すようなベンド配向への転移が実現され得る。ベンド配向状態からさらに表示電圧(代表的には、5V〜7V)を印加すると(高電圧印加時)、液晶分子は図5(d)に示すように基板表面に対してほぼ垂直に立ち上がる。ノーマリーホワイトの表示モードにおいては、偏光板30を通過して、高電圧印加時に図5(d)の状態にある液晶層に入射した光は、偏光方位を変えずに進み、偏光板30’で吸収される。したがって、暗状態の表示となる。表示電圧を下げると、ラビング処理の配向規制力により、ベンド配向に戻り、明状態の表示に戻すことができる。また、表示電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光板からの透過光強度を変化させることにより、階調表示が可能となる。なお、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置は、スプレイ配向状態からベンド配向状態への相転移を非常に高速でスイッチングできるため、TNモードやIPSモード等の他駆動モードの液晶表示装置に比べ、動画表示特性に優れるという特徴を有する。
B.光学補償素子
図6は、本発明に用いられる光学補償素子20の好ましい一例を説明する概略断面図である。光学補償素子20は、光学補償層21と、必要に応じて偏光子22および/または透明保護層23とを有する。以下、それぞれについて詳細を説明する。
B−1.光学補償層
光学補償層21のフィルム面内位相差(正面位相差)Δndは、液晶セルの表示モードに対応して最適化され得る。例えば、Δndの下限は、好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、最も好ましくは15nm以上である。Δndが5nm未満の場合には、斜め方向のコントラストが低下する場合が多い。一方、Δndの上限は、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、特に好ましくは150nm以下、とりわけ好ましくは100nm以下、最も好ましくは80nm以下である。Δndが400nmを超えると、視野角が小さくなる場合が多い。より具体的には、液晶セルがVAモードを採用する場合には、Δndは、好ましくは5〜150nm、さらに好ましくは10〜100nm、最も好ましくは15〜80nmである。液晶セルがOCBモードを採用する場合には、Δndは、好ましくは5〜400nm、さらに好ましくは10〜300nm、最も好ましくは15〜200nmである。なお、Δndは、式:Δnd=(nx−ny)×dで求められる。ここで、nxは光学補償層の遅相軸方向の屈折率であり、nyは光学補償層の進相軸方向の屈折率であり、d(nm)は光学補償層の厚みである。代表的には、Δndは、波長590nmの光を用いて測定される。遅相軸は、フィルム面内の屈折率が最大になる方向をいい、進相軸は、面内で遅相軸に垂直な方向をいう。
光学補償層21の厚み方向位相差Rthもまた、液晶セルの表示モードに対応して最適化され得る。例えば、Rthの下限は、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上、最も好ましくは50nm以上である。Rthが10nm未満の場合には、斜め方向のコントラストが低下する場合が多い。一方、Rthの上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは400nm以下、特に好ましくは300nm以下、とりわけ好ましくは280nm以下、最も好ましくは260nm以下である。Rthが1000nmを超えると、光学補償が大きくなりすぎて結果的に斜め方向のコントラストが低下してしまう可能性がある。より具体的には、液晶セルがVAモードを採用する場合には、Rthは、好ましくは10〜300nm、さらに好ましくは20〜280nm、最も好ましくは50〜260nmである。液晶セルがOCBモードを採用する場合には、Rthは、好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは20〜500nm、最も好ましくは50〜400nmである。なお、Rthは、式:Rth=(nx−nz)×dで求められる。ここで、nzは、フィルム(光学補償層)の厚み方向の屈折率である。Rthもまた、代表的には波長590nmの光を用いて測定される。
光学補償層21のNz係数(=Rth/Δnd)もまた、液晶セルの表示モードに対応して最適化され得る。例えば、Nz係数は、好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜10、とりわけ好ましくは2〜8、最も好ましくは2〜6である。より具体的には、液晶セルがVAモードを採用する場合には、Nz係数は、好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜8、最も好ましくは2〜6である。液晶セルがOCBモードを採用する場合には、Nz係数は、好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜10、最も好ましくは2〜8である。また、光学補償層21は、nx>ny>nzの屈折率分布を有する。このような光学特性(すなわち、Δnd、Rth、屈折率分布およびNz係数)を有する光学補償層を、液晶層を基準にしてヘイズ値の高いカラーフィルター基板と反対側に配置することにより、非常に優れた視野角補償と斜め方向のコントラストとを有する液晶表示装置が得られる。
光学補償層21は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。積層体の場合には、積層体全体として上記のような光学特性を有する限り、各層を構成する材料および各層の厚みは適宜設定され得る。
光学補償層の厚みとしては、本発明の効果を奏する限りにおいて任意の適切な厚みが採用され得る。代表的には、光学補償層の厚みは1〜20μmであり、好ましくは1〜12μmであり、さらに好ましくは1〜8μmである。液晶表示装置の薄型化に寄与し得るとともに、視野角補償性能に優れ、かつ位相差が均一な光学補償層が得られ得るからである。本発明によれば、従来の位相差板より格段に小さい厚みを有する光学補償層(光学補償素子)を用いて、しかも、そのような光学補償層(光学補償素子)を1枚のみ用いて、優れた視野角補償が実現され得る。
B−2.光学補償層の構成材料
光学補償層を構成する材料としては、上記のような光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。例えば、このような材料としては、非液晶性材料が挙げられる。特に好ましくは、非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料は、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成し得る。その結果、配向基板のみならず未配向基板も使用され得る。さらに、未配向基板を用いる場合であっても、その表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を省略することができる。
上記非液晶性材料としては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
上記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
上記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
上記式(1)中、R3〜R6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、それぞれ独立して、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基である。
上記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
上記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立して、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC6〜20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。R9は、それぞれ独立して、水素、フッ素、または塩素である。
上記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基が挙げられる。また、上記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された上記多環式芳香族基が挙げられる。
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等が挙げられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
上記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、それぞれ独立して、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から選択される基であり、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
上記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。上記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基が挙げられる。また、上記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
上記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。上記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。上記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基が挙げられる。また上記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基が挙げられる。fは、0から4までの整数であり、gは、0から3までの整数であり、hは、1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
上記式(4)中、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記式(5)中、M1およびM2は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。上記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。また、上記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基が挙げられる。
上記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等が挙げられる。
さらに、上記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーが挙げられる。
上記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
上記ピロメリット酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリット酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリット酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリット酸二無水物等が挙げられる。上記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。上記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。上記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。上記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等が挙げられる。
これらの中でも、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’−ビス(トリハロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
上記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンが挙げられる。
上記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンからなる群から選択されるジアミン等が挙げられる。上記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、および3,3’−ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。上記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等が挙げられる。上記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等が挙げられる。
また、芳香族ジアミンとしては、上記の他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
上記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンが挙げられる。
上記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。上記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくはメチル基およびエチル基である。上記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の上記低級アルキル基のハロゲン化物が挙げられる。上記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基がさらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。上記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の上記低級アルコキシ基のハロゲン化物が挙げられる。
上記式(7)中、qは、0から4までの整数である。上記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、上記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
上記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、上記式(7)におけるXと同様である。上記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。q’は、上記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
上記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等が挙げられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、上記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
上記式(7)中、R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは上記式(8)と同義である。
さらに、上記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合であってもよい。
さらに、上記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは上記式(7)と同様の重合度を表す。
上記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等が挙げられ、下記各式において、nは、上記式(7)と同様の重合度を表す。
また、これらの他に、上記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルが挙げられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
上記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。上記Eにおいて、Rは、C1−3アルキル基およびC1−3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
また、上記式(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
上記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、上記で定義したとおりである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1−9アルコキシカルボニル基、C1−9アルキルカルボニルオキシ基、C1−12アリールオキシカルボニル基、C1−12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1−12アリールカルバモイル基、ならびに、C1−12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。上記A’は、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。上記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせが挙げられる。上記tは、0から4までの整数であり、上記zは、0から3までの整数である。
上記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
上記式(23)中、A、A’およびYは、上記式(22)で定義したとおりであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
B−3.偏光子
上記の通り、光学補償素子20は、必要に応じて偏光子22をさらに有する。図6(a)〜(c)に示すように、偏光子22は光学補償層21が液晶セル10側になるように配置される。光学補償素子が偏光子を有する場合には、偏光板30を省略することができるので、液晶表示装置の薄型化に寄与し得る。偏光子を有する光学補償素子は、いわゆる位相差板付偏光板と同等の部材として提供され得る。
偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
B−4.透明保護層
上記の通り、光学補償素子20は、必要に応じて透明保護層23をさらに有する。図6(a)〜(c)に示すように、透明保護層23は、偏光子22の外側に(すなわち、最外層として)配置される。透明保護層を設けることにより、偏光子の劣化が防止され得る。さらに、必要に応じて、別の透明保護層が、光学補償層21と偏光子22との間(図6(b)参照)、および/または、光学補償層21と液晶セル10との間に配置され得る(図6(c)参照)。
透明保護層としては、目的に応じて任意の適切な保護層が採用され得る。透明保護層は、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるプラスチックフィルムから構成される。プラスチックフィルムを構成する樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂も用いられ得る。偏光特性および耐久性の観点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
さらに、例えば、特開2001−343529号公報(WO 01/37007号)に記載されているような樹脂組成物から形成されるポリマーフィルムも透明保護層に使用可能である。より詳細には、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とシアノ基とを有する熱可塑性樹脂との混合物である。具体例としては、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。例えば、このような樹脂組成物の押出成形物が用いられ得る。
上記透明保護層は、名前の通り透明であり、色付が無いことが好ましい。具体的には、透明保護層の厚み方向の位相差Rthが、好ましくは−90nm〜+75nm、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、最も好ましくは−70nm〜+45nmである。透明保護層の厚み方向の位相差Rthがこのような範囲であれば、保護層に起因する偏光子の光学的着色を解消し得る。
上記保護層の厚みは、目的に応じて適宜設定され得る。保護層の厚みは、代表的には500μm以下、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは5〜150μmである。
B−5.光学補償素子の製造方法(光学補償層の形成方法)
次に、光学補償素子の製造方法(光学補償層の形成方法)について説明する。光学補償素子の製造方法としては、上記のような光学特性を有する光学補償素子が得られる限りにおいて任意の適切な方法が採用され得る。代表的な製造方法は、基材フィルムに上記非液晶性ポリマーの溶液を塗工する工程と、当該溶液中の溶媒を除去して非液晶性ポリマーの層を形成する工程とを含む。光学補償素子が光学補償層(光学補償フィルム)単独で構成される場合には、形成された光学補償層を基材フィルムから剥がして光学補償素子を得る。光学補償素子が偏光子と光学補償層とを有する場合には、上記製造方法は、光学補償層が形成されていない基材フィルムの面に偏光子を貼り合わせる工程をさらに含む。
上記基材フィルムとしては、任意の適切なフィルムが採用され得る。代表的な基材フィルムとしては、上記B−4項で説明した偏光板の保護層に用いられるプラスチックフィルムが挙げられる。
上記塗工溶液の溶媒は、特に制限されず、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t-ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。中でも、メチルイソブチルケトンが好ましい。非液晶材料に対して高い溶解性を示し、かつ、基板を侵食しないからである。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いられ得る。
上記塗工溶液における上記非液晶性ポリマーの濃度は、上記のような光学補償層が得られ、かつ塗工可能であれば、任意の適切な濃度が採用され得る。例えば、当該溶液は、溶媒100重量部に対して、非液晶性ポリマーを好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部含む。このような濃度範囲の溶液は、塗工容易な粘度を有する。
上記塗工溶液は、必要に応じて、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤をさらに含有し得る。
上記塗工溶液は、必要に応じて、異なる他の樹脂をさらに含有し得る。このような他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂を併用することにより、目的に応じて適切な機械的強度や耐久性を有する光学補償層を形成することが可能となる。
上記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等が挙げられる。上記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
上記塗工溶液に添加される上記異なる樹脂の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、このような樹脂は、上記非液晶性ポリマーに対して、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜30質量%の割合で添加され得る。
上記溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用され得る。
塗工後、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥(例えば、60〜250℃)により、上記溶液中の溶媒を蒸発除去させ、フィルム状の光学補償層を形成する。
好ましくは、上記の製造方法においては、光学的二軸性(nx>ny>nz)を付与するための処理が行われ得る。このような処理を行うことにより、面内に屈折率の差(nx>ny)を確実に付与することができ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を有する光学補償層が得られる。すなわち、上記B−1項に記載したような光学特性を有する光学補償層が得られる。言い換えれば、このような処理を行わなければ、光学的に一軸の特性(nx=ny>nz)を有する光学補償層が得られる。面内に屈折率の差を付与する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。第一の方法としては、延伸処理を施した透明高分子フィルムに上記溶液を塗工し、乾燥する方法が挙げられる。当該第一の方法によれば、透明高分子フィルムの収縮により光学的二軸性が達成され得る。第二の方法としては、未延伸の透明高分子フィルムに上記溶液を塗工し、乾燥し、加熱しながら延伸する方法が挙げられる。当該第二の方法によれば、透明高分子フィルムの延伸により光学的二軸性が達成され得る。これらの方法に用いられる高分子フィルムとしては、上記透明保護層(B−4項)に用いられるプラスチックフィルムが挙げられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)位相差の測定
試料フィルムの屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21−ADH)により計測し、面内位相差Δndおよび厚み方向位相差Rthを算出した。測定温度は23℃、測定波長は590nmであった。
(2)ヘイズの測定
(株)村上色彩技術研究所製「ヘーズメーター」HM−150型を使用し、室温で測定を行った。
(3)カラーシフトの測定
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、方位角0〜360°に変化させて、極角を60°方向にした液晶表示装置の色調を測定し、XY色度図上にプロットした。
(4)コントラスト比の測定
作製した液晶表示装置に白画像および黒画像を表示させ、ELDIM社製 商品名
「EZ Contrast160D」により測定した。
(参考例1:光学補償層の作製)
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)とから合成された下記式(6)で表される重量平均分子量(Mw)70,000のポリイミドを、メチルイソブチルケトンに溶解して、15質量%のポリイミド溶液を調製した。なお、ポリイミドの調製等は、文献(F. Li et al. Polymer40 (1999) 4571−4583)の方法を参照した。一方、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製、商品名TF80UL、厚み80μm)を、固定端横延伸によって175℃で1.3倍に横延伸して、厚み75μmの延伸TACフィルムを作製し、基材フィルムとした。そして、この基材フィルム上に上記ポリイミド溶液を塗工し、これを100℃で10分間乾燥した。その結果、基材フィルム上に光学補償層を有する積層フィルムを得た。光学補償層の厚みは6μm、Δn(=nx−nz)は約0.04であった。光学補償層の厚み方向の位相差は245nmであり、面内位相差は55nmであった。光学補償層は、nx>ny>nzの光学特性を有していた。
一方、ポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて6倍に一軸延伸して偏光子を作製した。この偏光子と上記積層フィルムとを接着剤を介して貼り合わせた。このとき、基材(保護層)と偏光子とが隣接するようにして貼り合わせた。また、偏光子の吸収軸と光学補償層の遅相軸とが直交するようにして貼り合わせた。さらに、積層フィルムが貼り合わされていない偏光子の面に接着剤を介して、一般的に用いられるTACフィルム(富士写真フィルム社製、商品名TF80UL、厚み80μm)を貼り合わせた。このようにして、TAC保護層/偏光子/TAC保護層/光学補償層(ポリイミド層)の構造を有する偏光板一体型積層光学フィルムAを得た。