JP4172310B2 - 偏光板 - Google Patents

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    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B5/00Optical elements other than lenses
    • G02B5/30Polarising elements
    • G02B5/3083Birefringent or phase retarding elements

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂よりなる位相差フィルムを有する偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
環状ポリオレフィン系樹脂は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも屈折率の異方性が小さいことによる低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されている。
かかる環状ポリオレフィン系樹脂としては、種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献6等参照。)。
【0003】
近年、上記の特徴を利用して、例えば光ディスク、光学レンズ、光ファイバーなどの光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において、環状ポリオレフィン系樹脂を応用することが検討されている。また、光学用フィルムに応用し、以下に示したように、従来の光学用フィルムの問題点を改良する試みもなされている。
【0004】
従来から光学用フィルムとして使用されているポリカーボネート、ポリエステルあるいはトリアセチルアセテート等よりなるフィルムは、光弾性係数が大きいために微小な応力変化によって位相差が発現したり変化する、あるいは耐熱性や吸水変形等の問題があるため、環状ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが光学用の各種フィルムとして提案されている。例えば、特許文献7〜特許文献10には、環状ポリオレフィン系樹脂よりなるフィルムからなる位相差板が記載されている。また、特許文献11〜特許文献13には、環状ポリオレフィン系樹脂よりなるフィルムを偏光板の保護フィルムとして使用することが記載されている。更に、特許文献14には、環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムからなる液晶表示素子用基板が記載されている。
【0005】
これらの特許文献には、環状ポリオレフィン系樹脂として吸水率が0.05%以下のものが容易に得られること、低吸水性の点が特徴でありかつ必要であることが記載されている。
しかしながら、このような低吸水性の環状ポリオレフィン系樹脂よりなるフィルムを、例えば位相差板や液晶表示素子用基板として用いる場合には、それらの表面に形成されるハードコート層、反射防止膜や透明導電層との密着性、あるいは、偏光板やガラスとの接着性に問題が生じることがある。また、偏光板の保護フィルムとして用いる場合には、上記の問題に加えて、偏光膜との貼合に通常水系接着剤が使用されるため、当該水系接着剤中の水分が乾燥し難いという問題も生じる。
【0006】
また、環状ポリオレフィン系樹脂は、種々の構図のものがあって、それら全ての環状ポリオレフィン系樹脂の吸水率0.05%以下になるとは限らず、吸水率が0.05%以下の環状ポリオレフィン系樹脂を得るためには、環状ポリオレフィン系樹脂を炭素原子と水素原子とのみからなる構造のものとするか、あるいは一部の水素の代わりにハロゲン原子を含む構造のものとすることが必要であった。
而して、上記の低吸水性に由来する問題を解決するために、分子内に極性基を導入した熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含有してなる光学用フィルムが提案されている(例えば、特許文献15および特許文献16参照。)。これらの光学用フィルムは、透明性が高いこと、透過光に与える位相差が小さいこと、更に延伸配向させたときには均一で安定した位相差が付与されること等の優れた光学特性を有すると共に、耐熱性および他材料との密着性や接着性等が良好であり、しかも吸水変形が小さいという利点を有するものであるが、加工時や使用時における取り扱い性を十分に有するものではなかった。
【0007】
また、近年における液晶ディスプレイの大型化や、液晶パネルがテレビモニターに採用されていることなどに伴い、液晶表示素子として、一層精細で輝度のコントラスト比が高く、視野角認知性などの優れた光学特性を有するものが要求されている。このため、例えば延伸配向させることによって位相差の付与された位相差フィルムを視野角補償用フィルムとして用いた液晶表示素子が提案されており、また、視野角補償用フィルムとして用いられる位相差フィルムとして、例えば特許文献17に記載の位相差フィルムが提案されている。この位相差フィルムは位相差バラツキが小さくて優れた視野角特性を有する位相差フィルムではあるが、このような位相差フィルムを備えてなる液晶表示素子は要求されている所望の特性を十分に有するものではなかった。
【0008】
更に、液晶表示素子に用いられる液晶としては、従来は液晶分子が面内に水平配向されているTNタイプのものが用いられていたが、テレビモニターを中心として液晶分子が面内に垂直配向されているVAタイプのものが用いられてきていることから、このVAタイプの液晶よりなる液晶表示素子に最適な視野角特性を発現するできる位相差フィルムが求められている。
しかしながら、このような要求を満足するためには、その特性の不十分さから複数の位相差フィルムを重ねて用いる必要があり、また、偏光板にあらためて貼合することが必要であることなどから、その製造工程においては工業的な生産ロスがあり高い生産効率が得られないという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平1−132625号公報
【特許文献2】
特開平1−132626号公報
【特許文献3】
特開昭63−218726号公報
【特許文献4】
特開平2−133413号公報
【特許文献5】
特開昭61−120816号公報
【特許文献6】
特開昭61−115912号公報
【特許文献7】
特開平4−245202号公報
【特許文献8】
特開平4−36120号公報
【特許文献9】
特開平5−2108号公報
【特許文献10】
特開平5−64865号公報
【特許文献11】
特開平5−212828号公報
【特許文献12】
特開平6−51117号公報
【特許文献13】
特開平7−77608号公報
【特許文献14】
特開平5−61026号公報
【特許文献15】
特開平7−287122号公報
【特許文献16】
特開平7−287123号公報
【特許文献17】
特開平11−183724号公報
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が有する各種の光学特性、耐熱性および他素材との密着性・接着性等が発揮され、しかも、靱性が高く、フィルム面内の位相差と共にフィルム厚み方向の位相差が調整された薄膜な位相差フィルムからなる保護フィルムを有し、位相差板を貼合する必要がなく、例えば液晶表示素子などの製品の薄膜化および高機能化を図ることが可能で、VAタイプの液晶に対して良好な光学補償機能を発現することができる偏光板を提供することにある。
【0011】
本発明の偏光板は、偏光膜の両面の各々に保護フィルムが積層されてなる構成を有し、偏光膜の一面に積層されてなる保護フィルムがフィルムCよりなり、当該偏光膜の他面に積層されてなる保護フィルムがフィルムAおよびフィルムBを積層したもの、あるいはフィルムAまたはフィルムBよりなり、
前記フィルムA、前記フィルムBおよび前記フィルムCの各々は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂よりなる位相差フィルムよりなり、
面内進相軸方向の屈折率をnx、面内遅相軸方向の屈折率をny、フィルム厚み方向の屈折率をnz、フィルム厚みをd〔nm〕とし、光線波長400〜700nmの範囲内において選択される光線波長λ〔nm〕の透過光のフィルム面内の位相差を式α(λ)=(ny−nx)×dで表される値α(λ)〔nm〕、当該光線波長λ〔nm〕の透過光のフィルム厚み方向の位相差を式β(λ)={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値β(λ)〔nm〕とするとき、
前記フィルムAは下記の条件(a)〜(e)を満たし、
前記フィルムBは下記の条件(a)〜(c)、(f)および(g)を満たし、
前記フィルムCは下記の条件(a)〜(d)および(h)を満たす
ことを特徴とする。
【0013】
条件;
(a)100<d≦100000
(b)0.95≦α(λ)/α(550)≦1.05
(c)0.95≦β(λ)/β(550)≦1.05
(d)0≦α(550)≦40
(e)150≦β(550)≦300
(f)50≦α(550)≦150
(g)30≦β(550)≦100
(h)0≦β(550)≦80
【0014】
本発明の偏光板においては、フィルムA、フィルムBおよびフィルムCを構成する熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が100〜250℃のものであることが好ましい。
【0015】
本発明の偏光板においては、フィルムA、フィルムBおよびフィルムCを構成する熱可塑性ノルボルネン系樹脂が下記一般式(1)で表される構造単位aと、下記一般式(2)で表される構造単位bとを有するものであることが好ましい。
【0016】
【化3】
Figure 0004172310
【0017】
[式中、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であり、Xは、ビニレン基(−CH=CH−)またはエチレン基(−CH2 CH2 −)を示し、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
【0018】
【化4】
Figure 0004172310
【0019】
[式中、Yは、ビニレン基(−CH=CH−)またはエチレン基(−CH2 CH2 −)を示し、R5 〜R8 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R5 とR6 、R7 とR8 またはR6 とR7 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(但し、一般式(1)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
【0020】
本発明の偏光板においては、フィルムA、フィルムBおよびフィルムCの各々の面上における1m2 当たりの輝点の数が10個以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の偏光板においては、保護フィルム面上における1m2 当たりの輝点の数が10個以下であることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の偏光板に用いられる位相差フィルムは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂樹脂よりなる透過光に位相差を与える機能を有するフィルムであり、下記(1)〜(3)の3種のフィルムが包含される。
これらの位相差フィルムは、材料の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の高分子鎖が一定の方向に配向しているため、透過光に位相差を与えることができるものである。
【0025】
(1)下記条件(a)〜(e)を満たすフィルム(フィルムA)
(2)下記条件(a)〜(c)、(f)および(g)を満たすフィルム(フィルムB)
(3)下記条件(a)〜(d)および(h)を満たすフィルム(フィルムC)
【0026】
(a)100<d≦100000
(b)0.95≦α(λ)/α(550)≦1.05
(c)0.95≦β(λ)/β(550)≦1.05
(d)0≦α(550)≦40
(e)150≦β(550)≦300
(f)50≦α(550)≦150
(g)30≦β(550)≦100
(h)0≦β(550)≦80
【0027】
ここに、「d〔nm〕」は、フィルム厚みを示す。
「α(λ)〔nm〕」は、面内進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率をnx、面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率をny、フィルム厚み方向の屈折率をnz、フィルム厚みをd〔nm〕とするとき、式α(λ)=(ny−nx)×dで表される、光線波長400〜700nmの範囲内において選択される任意の光線波長λ〔nm〕の透過光のフィルム面内の位相差を示し、「α(550)〔nm〕」は、光線波長550nmの透過光のフィルム面内の位相差を示す。
また、「β(λ)〔nm〕」は、式β(λ)={(nx+ny)/2−nz}×dで表される、光線波長400〜700nmの範囲内において選択された任意の光線波長λ〔nm〕の透過光のフィルム厚み方向の位相差を示し、「β(550)〔nm〕」は、光線波長550nmの透過光のフィルム厚み方向の位相差を示す。
【0028】
また、「α(λ)/α(550)」は、光線波長550nmの透過光のフィルム面内の位相差α(550)〔nm〕の波長分散性を示し、また、「β(λ)/β(550)」は、光線波長550nmの透過光のフィルム厚み方向の位相差β(550)〔nm〕の波長分散性を示す。
【0029】
フィルムAにおいては、フィルム厚みdは、0.1〜100μm(100〜100,000nm)、好ましくは0.5〜80μm(500〜80,000nm)、最も好ましくは1〜70μm(1,000〜70,000nm)である。
このような厚みのフィルムAを用いることにより、例えば液晶表示素子などの製品の小型化および薄肉化を図ることができる。
【0030】
また、位相差α(550)は、0〜40nmであり、好ましくは0〜20nm、更に好ましくは0〜10nm、最も好ましくは0〜5nmである。
位相差β(550)は、150〜300nm、好ましくは170〜270nm、更に好ましくは190〜250nmである。
位相差α(550)の波長分散性α(λ)/α(550)は、光線波長400〜700nmの範囲において0.95〜1.05、好ましくは0.97〜1.03である。
位相差β(550)の波長分散性β(λ)/β(550)は、光線波長400〜700nmの範囲において0.95〜1.05、好ましくは0.97〜1.03である。
【0031】
フィルムBにおいては、フィルム厚みdは、0.1〜100μm(100〜100,000nm)、好ましくは0.5〜80μm(500〜80,000nm)、最も好ましくは1〜70μm(1,000〜70,000nm)である。
このような厚みのフィルムBを用いることにより、例えば液晶表示素子などの製品の小型化および薄肉化を図ることができる。
【0032】
また、位相差α(550)は、50〜150nm、好ましくは70〜130nm、更に好ましくは90〜110nmである。
位相差β(550)は、30〜100nm、好ましくは40〜90nm、更に好ましくは40〜80nmである。
位相差α(550)の波長分散性α(λ)/α(550)は、光線波長400〜700nmの範囲において0.95〜1.05、好ましくは0.97〜1.03である。
位相差β(550)の波長分散性β(λ)/β(550)は、光線波長400〜700nmの範囲において0.95〜1.05、好ましくは0.97〜1.03である。
【0033】
フィルムCにおいては、フィルム厚みdは、0.1〜100μm(100〜100,000nm)、好ましくは0.5〜80μm(500〜80,000nm)、最も好ましくは1〜70μm(1,000〜70,000nm)である。
このような厚みのフィルムCを用いることにより、例えば液晶表示素子などの製品の小型化および薄肉化を図ることができる。
【0034】
また、位相差α(550)は、0〜40nm、好ましくは0〜20nm、更に好ましくは0〜10nmである。
位相差β(550)は、0〜80nm、好ましくは10〜60nm、更に好ましくは20〜40nmである。
位相差α(550)の波長分散性α(λ)/α(550)は、光線波長400〜700nmの範囲において0.95〜1.05、好ましくは0.97〜1.03である。
位相差β(550)の波長分散性β(λ)/β(550)は、光線波長400〜700nmの範囲において0.95〜1.05、好ましくは0.97〜1.03である。
【0035】
フィルムA、フィルムBおよびフィルムC(以下、これらをまとめて「特定位相差フィルム」ともいう。)においては、特定位相差フィルムを透過した光の位相差の均一性が高いことが好ましく、光線波長550nmにおけるバラツキは通常は±20%以下であり、好ましくは10%以下、更に好ましくは±5%以下である。位相差のバラツキが±20%の範囲を超えると、液晶表示素子等に用いた場合、色ムラ等が発生し、ディスプレイ本体の性能が悪化する。
【0036】
以上のような特定位相差フィルムは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を成形材料とし、例えば後述する溶融押し出し法やキャスト法等によって成形されたフィルム(以下、「加工前フィルム」ともいう。)に延伸配向処理等の加工を施すことによって高分子鎖を規則的に配向させることで得ることができる。
ここで、「規則的な配向」とは、通常の高分子(ポリマー)を溶融押し出し法やキャスト法等によりフィルム状に成形した場合には、その工程中で発生するフィルムの歪みの大小にもよるが分子鎖は特定方向を向かずランダムな状態であるのに対し、特定位相差フィルムは全体として分子鎖がフィルム平面の一軸方向、又は二軸方向、更に厚み方向に規則的に配向していることを意味する。配向の規則性の程度はさまざまである。
【0037】
特定位相差フィルムは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂よりなるものであるが、この特定位相差フィルムを得るための熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、下記の(イ)〜(ホ)に示す(共)重合体(以下、「特定重合体」ともいう。)が挙げられる。
(イ)下記一般式(3)で表される化合物(以下、「特定単量体a」ともいう。)の開環重合体。
(ロ)特定単量体aと、当該特定単量体aと共重合可能な化合物(以下、「共重合性単量体」ともいう。)との開環重合体。
(ハ)上記(イ)の開環重合体または(ロ)の開環重合体の水素添加物。
(ニ)上記(イ)の開環重合体または(ロ)の開環重合体をフリーデルクラフト反応により環化して得られた化合物若しくはその水素添加物。
(ホ)特定単量体aの付加型重合体または特定単量体aと不飽和二重結合含有化合物との付加型重合体若しくはその水素添加物。
【0038】
【化5】
Figure 0004172310
【0039】
[式中、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であり、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
【0040】
特定重合体は、共重合性単量体として下記一般式(4)で表される化合物(以下、「特定単量体b」ともいう。)を用い、特定単量体aと、特定単量体bとを共重合して得られるものであることが好ましい。このような構成の特定重合体によれば、最終的に得られる特定位相差フィルムが靱性等の機械的な特性が一層優れたものとなり、また、延伸加工により特定位相差フィルムに必要とされる所望の位相差を得やすくなる。
【0041】
【化6】
Figure 0004172310
【0042】
[式中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R1 とR2 、R3 とR4 またはR2 とR3 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(但し、一般式(1)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
【0043】
更に、特定重合体は、特定単量体aと特定単量体bとの開環重合体であって、上記一般式(1)で表される特定単量体aに由来の構造単位(以下、「構造単位a」ともいう。)と、上記一般式(2)で表される特定単量体bに由来の構造単位(以下、「構造単位b」ともいう。)とを有するものであることが好ましい。このような構成の特定重合体は、耐熱性と延伸加工等による加熱加工性とのバランスを図ることができる点で好ましい。
【0044】
一般式(1)〜一般式(4)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0045】
また、一般式(1)〜一般式(4)における置換または非置換の炭化水素基は、直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。
連結基としては、例えば炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基〔例えば、−(CH2 q −(式中、qは1〜10の整数)で表されるアルキレン基〕;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基〔例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルホン基(−SO2 −)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R9 2 )−(式中、R9 はメチル、エチル等のアルキル基)〕、あるいはこれらの2種以上が結合されたものなどが挙げられる。
【0046】
極性基としては、例えば水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド環含有基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル含有基、およびカルボキシル基などが挙げられる。更に具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等が挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0047】
特定単量体aの具体例としては、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[9.2.1.13,9 .02,10.04,8 ]−12−ペンタデセン、
ペンタシクロ[9.2.1.15,8 .02,10.04,9 ]−12−ペンタデセン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.7,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12, 5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
【0048】
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0049】
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
【0050】
8−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(4−ビフェニルカルボニルオキシエチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
1,2−(2H、3H−[1,3]エピシクロペンタ)−1,2−ジヒドロアセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体
などを挙げることができるが、特定単量体aは、これらの化合物に限定されるものでなはい。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて特定単量体aとして用いることができる。
【0051】
これらの中では、分子内に少なくとも1つの極性基を有する化合物が好ましく、特に、一般式(3)において、R1 およびR3 が水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2 およびR4 が水素原子または一価の有機基に相当するものであって、かつR2 およびR4 の少なくとも一つが水素原子および炭化水素基以外の極性基であるものが、他素材との密着性・接着性を高めるので好ましい。
【0052】
ここに、得られる特定重合体中の極性基の含有量は、最終的に得られる特定位相差フィルムに要求される所望の機能等により決定されるものであり、特に限定はされないが、特定単量体aに由来する全構造単位中に極性基を有する特定単量体aに由来の構造単位が、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、特定単量体aに由来する全構造単位が極性基を有するものであってもよい。
【0053】
また、特定単量体aとしては、一般式(3)において、R2 およびR4 の少なくとも一つが一般式(5)で表される極性基を有するものであることが、得られる特定重合体のガラス転移温度と吸水性を制御しやすい点で好ましい。
【0054】
【化7】
Figure 0004172310
【0055】
〔式中、nは0〜5の整数であり、R10は一価の有機基である。〕
【0056】
一般式(5)においてR10で表される一価の有機基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニリル基等のアリール基;この他にもジフェニルスルホン、テトラヒドロフルオレン等のフルオレン類等の芳香環やフラン環、イミド環等の複素環を有する一価の基等が挙げられる。
また、一般式(5)において、nは0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0である。nの値が小さいものほど得られる特定重合体のガラス転移温度が高くなるので好ましく、特にnが0である特定単量体aは、その合成が容易である点で好ましい。
【0057】
更に、特定単量体aは、一般式(3)において、一般式(5)で表される極性基が結合した炭素原子に更にアルキル基が結合したものであることが好ましく、これにより、得られる特定重合体の耐熱性と吸水性のバランスを図ることができる。ここで、アルキル基の炭素原子数は1〜5であることが好ましく、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
また、特定単量体aとしては、一般式(3)においてmが1でありpが0であるものは、ガラス転移温度の高い特定重合体が得られる点で好ましい。
【0058】
而して、前述の特定単量体aの具体例の中から挙げるならば、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセンが特に好ましく、このような特定単量体aを用いることにより、ガラス転移温度が高く、吸水による変形等の悪影響を殆ど受けずかつ他材料との密着性や接着性が良好となる程度の吸水性を有する特定重合体を得ることができる。
【0059】
特定単量体bの具体例としては、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−8−エン、
トリシクロ[6.2.1.02,7 ]ウンデカ−9−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(α体およびβ体)、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0060】
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−フェニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0061】
4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)フェニルスルホニルベンゼン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(3−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0062】
5−メチル−5−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−アントラセニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
アセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体などを挙げることができるが、特定単量体bは、これらの化合物に限定されるものでなはい。また、これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて特定単量体bとして用いることができる。
【0063】
これらの中では、一般式(4)におけるR5 〜R8 が、全て水素原子であるもの、またはいずれか1つが炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、その他の全部が水素原子であるものが、最終的に得られる特定位相差フィルムの吸水性を制御することができる点で好ましく、特に、R5 〜R8 が、全て水素原子であるもの、またはいずれか1つがメチル基、エチル基若しくはフェニル基であり、その他の全部が水素原子であるものが、耐熱性の高い特定重合体が得られる点で好ましい。更に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−8−エン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが、最終的に得られる特定位相差フィルムの靱性を向上させる効果が極めて顕著である点で好ましい。
【0064】
特定単量体aと特定単量体bとを共重合させることによって得られる特定重合体は、当該特定単量体aおよび特定単量体b以外の他の共重合性単量体と共に共重合されてなるものであってもよい。
他の共重合性単量体としては、例えばシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素原子数としては、4〜20が好ましく、更に好ましくは5〜12である。
更にポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体aおよび必要に応じて特定単量体bを重合させてもよく、このようにして得られる特定重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
【0065】
特定重合体の30℃クロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh )は、0.2〜5dl/gであることが好ましい。更に好ましくは0.3〜4dl/g、特に好ましくは0.5〜3dl/gである。5dl/gを超えると、溶液粘度が高くなりすぎ、加工性が悪化することがあり、0.2dl/g未満であるとフィルム強度が低下することがある。
【0066】
特定重合体の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常は8,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、更に好ましくは20,000〜100,000、特に好ましくは30,000〜100,000、また、重量平均分子量(Mw)が、通常は20,000〜3,000,000、好ましくは30,000〜1,000,000、更に好ましくは40,000〜500,000、特に好ましくは40,000〜300,000の範囲である。
また、特定重合体の分子量分布は、上記のMw/Mnが通常1.5〜10、好ましくは2〜8、更に好ましくは2.5〜5、特に好ましくは2.5〜4.5である。
【0067】
特定重合体の23℃における飽和吸水率は、通常は0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜0.7重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%である。飽和吸水率がこの範囲内であると、各種光学特性、例えば透明性、位相差や位相差の均一性あるいは寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持され、他材料との密着性や接着性に優れるため使用途中で剥離などが発生せず、また、酸化防止剤等の添加物との相溶性も良好であるため、添加の自由度が大きくなる。飽和吸水率が0.05重量%未満であると、他材料との密着性や接着性が乏しくなり使用中に剥離を生じやすくなり、また、酸化防止剤等の添加物の配合に制限が生じる。一方、1重量%を超えると、吸水により光学特性の変化や寸法変化を起こしやすくなる。なお、上記の飽和吸水率はASTMD570に準拠し、23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる値である。
【0068】
特定重合体のSP値(溶解度パラメーター)は、好ましくは10〜30(MPa1/2 )、更に好ましくは12〜25(MPa1/2 )、特に好ましくは15〜20(MPa1/2 )である。SP値が上記の範囲にある特定重合体を用いることにより、後述するフィルム製膜加工において、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を汎用の溶剤に容易に溶解することができると共に、フィルムの製造を安定に行うことができ、また、最終的に得られる特定位相差フィルムの特性も均一となり、更に接着性・基板との密着性を良好なものとすることができ、更に吸水率を適度にコントロールすることが可能となる。
【0069】
特定重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば特定重合体の構造単位aおよび構造単位bの種類若しくは構造単位aと構造単位bとの比の調整、あるいは添加剤の添加等により適宜変えることが可能であるが、通常は100〜250℃、好ましくは110〜200℃、更に好ましくは120〜180℃である。Tgが100℃以下の場合は、熱変形温度が低くなり、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、最終的に得られるフィルムの光学特性が温度により大きく影響を受けることがある。また、Tgが250℃以上であると、延伸加工等にTg近辺まで加熱して加工する場合に熱可塑性ノルボルネン系樹脂が熱劣化する可能性が高くなる。
【0070】
構造単位aおよび構造単位bを有する特定重合体においては、構造単位aと構造単位bとの比(a/b)は、好ましくは、モル比ではa/b=95/5〜5/95、更に好ましくは95/5〜60/40である。構造単位aの割合が上記範囲より大きいと靱性改良の効果や所望の光学特性が期待できない場合があり、逆に、構造単位aの割合が上記範囲より小さいとガラス転移温度が低くなり、耐熱性に問題が生じる場合がある。
【0071】
更に、構造単位aおよび構造単位bを有する特定重合体において、当該重合体中の構造単位aと構造単位bの比率(組成比)は、分子量分布全範囲においてバラツキが小さいことが好ましい。具体的には、重合反応に供した特定単量体aと特定単量体bとの比率に対して、任意の分子量における組成比を、±50%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内のバラツキ範囲に収めることで、より一層均一な特定位相差フィルムを得ることができる。また、こうした範囲に収めることで、延伸配向した際に、位相差のより一層の均一性を得ることが可能となる。
【0072】
以下に、特定単量体a、および必要に応じて特定単量体bあるいはその他の共重合性単量体を開環共重合することにより、あるいはこれらの単量体を開環共重合した後、得られる開環共重合体を水素添加することにより得られる特定重合体を製造するための条件について説明する。
【0073】
開環重合触媒:
単量体の開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えばMg、Caなど)、IIB族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、IIIB族元素(例えばB、Alなど)、IVA族元素(例えばTi、Zrなど)あるいはIVB族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。またこの場合に触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0074】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6 、MoCl5 、ReOCl3 など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−C4 9 Li、( C2 5)3 Al 、( C2 5 ) 2 AlCl、( C2 5 ) 1.5 AlCl1.5 、( C2 5 )AlCl2 、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、更に特開平1−240517号公報に記載の化合物を使用することができる。
【0075】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体aおよび特定単量体b(以下、双方を併せて「特定単量体」という。)とのモル比で(a)成分:特定単量体が、通常1:500〜1:50000となる範囲、好ましくは1:1000〜1:10000となる範囲である。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲である。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲である。
【0076】
分子量調節剤:
特定重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。
好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
【0077】
開環重合反応用溶媒:
開環重合反応において用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素類;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素化合物類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類;ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、上記芳香族炭化水素類が好ましい。
溶媒の使用量としては、溶媒:特定単量体(重量比)が、通常1:1〜10:1となる量、好ましくは1:1〜5:1となる量である。
【0078】
水素添加:
以上の開環重合により得られる開環共重合体は、そのまま特定重合体として使用することもできるが、当該開環共重合体において残留するオレフィン性不飽和結合を水素添加された水素添加物とすることが好ましい。
【0079】
この水素添加物は、優れた熱安定性を有するものとなり、フィルム製膜加工時および延伸加工時、あるいは製品としての使用時において、加熱によってその特性が劣化しにくくなる。
このような水素添加物において、オレフィン性不飽和結合に対する水素添加率は、50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上である。
また、水素添加に供される開環共重合体が分子内に芳香環を有するものである場合には、水素添加後において、当該芳香環が実質的に水素添加されていないことが好ましい。
【0080】
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環共重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
【0081】
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が公知である。なお、芳香環を有する置換基を分子内に有する開環重合体を水素添加する場合には、芳香環の不飽和結合が実質的に水素添加されない条件を選択することが好ましい。
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属類を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。
これらの水素添加触媒は、開環重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
【0082】
特定重合体には、透明性・耐熱性を損なわない範囲で公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合してもよい。
また、特定重合体には、酸化防止剤等の添加剤などを添加してもよい。
【0083】
酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスチルテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−(β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]、2,4,8,10−テトラオキスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。
【0084】
紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、特定重合体100重量部に対して、通常、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。
更に、酸化防止剤および紫外線吸収剤以外に、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0085】
本発明においては、加工前フィルムは、特定重合体よりなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルム状若しくはシート状に成形することによって得られるが、厚みの均一性が高く、表面平滑性が良好な加工前フィルムが得られる点で、溶剤キャスト法を利用することが好ましい。
溶剤キャスト法としては、例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が適度の濃度で含有されてなるフィルム形成液を調製し、このフィルム形成液を適当なキャリヤー上に注ぐかまたは塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
【0086】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際には、当該熱可塑性ノルボルネン系樹脂の濃度を、通常0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは10〜35重量%にする。
この濃度が0.1重量%未満である場合には、所要の厚みを有する加工前フィルムを得ることが困難になるおそれがあり、また、乾燥により溶媒を除去する際に、当該溶媒の蒸発に伴って発泡等が生じやすく、表面平滑性が良好な加工前フィルムを得ることが困難になるおそれがある。一方、この濃度が90重量%を超える場合には、フィルム形成液の溶液粘度が高くなりすぎるため、厚みや表面状態が均一なフィルムを得ることが困難となるおそれがある。
【0087】
また、フィルム形成液の粘度は、室温で、通常1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、更に好ましくは100〜50,000(mPa・s)、特に好ましくは1000〜40,000(mPa・s)である。
【0088】
フィルム形成液の調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。
【0089】
また、上記の溶媒以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が、通常10〜30(MPa1/2 )、好ましくは10〜25(MPa1/2 )、更に好ましくは15〜25(MPa1/2 )、特に好ましくは15〜20(MPa1/2 )の範囲の溶媒を使用すれば、表面均一性と光学特性の良好な加工フィルムを得ることができる。
【0090】
上記の溶媒は単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒を2種以上組み合わせて用いる場合には、得られる混合溶媒のSP値の範囲を上記範囲内とすることが好ましい。このとき、混合溶媒のSP値の値は、当該混合溶媒を構成する各溶媒の重量比から求めることができ、例えば2種の溶媒から得られる混合溶媒においては、各溶媒のSP値およびそれらの重量分率をW1およびW2とし、また、SP値をSP1およびSP2とすると、混合溶媒のSP値は式:SP値=W1・SP1+W2・SP2により算出することができる。
【0091】
フィルム形成液における溶媒として混合溶媒を用いる場合において、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に対して良溶媒となるものと貧溶媒となるものとを組み合わせることにより、光拡散機能を有する加工前フィルムを得ることができる。具体的には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のSP値をSPx、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の良溶媒のSP値をSPy、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の貧溶媒のSP値をSPzとしたとき、SPxとSPyとの差が好ましくは7以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下であり、SPxとSPzとの差が好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは9以上であり、SPyとSPzとの差が好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは7以上とすることにより、得られる加工前フィルムに光拡散機能を付与することができ、その結果、最終的に得られる特定位相差フィルムを光拡散機能を有するものとすることができる。
また、混合溶媒中に占める貧溶媒の割合は、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。また、貧溶媒の沸点と良溶媒の沸点との差は好ましくは1℃以上、更に好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上であり、特に貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高いことが好ましい。
【0092】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際の温度は、室温でも高温でもよく、十分に撹拌することにより、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が均一に溶解または分散したフィルム形成液が得られる。
また、必要に応じてフィルム形成液に染料、顔料等の着色剤を適宜添加することができ、これにより、着色された加工前フィルムを得ることができる。
また、得られる加工前フィルムの表面平滑性を向上させることを目的として、フィルム形成液にレベリング剤を添加してもよい。かかるレベリング剤としては、一般的なものであれは種々のものを用いることができ、その具体例としては、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
【0093】
フィルム形成液の液層を形成するためのキャリヤーとしては、金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等よりなるポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどを用いることができる。
フィルム形成液を塗布する方法としては、ダイスやコーターを使用する方法、スプレー法、刷毛塗り法、ロールコート法、スピンコート法、ディッピング法などを利用することができる。
また、フィルム形成液を繰り返し塗布することにより、得られる加工前フィルムの厚みや表面平滑性を制御することもできる。
【0094】
また、キャリヤーとしてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。
表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーテイングやラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
【0095】
溶剤キャスト法において、液層中の溶媒を除去するための具体的な方法としては、特に限定されず、一般的に用いられる乾燥処理法、例えば多数のローラーによって乾燥炉中を通過させる方法を利用することができるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴って気泡が発生すると、最終的に得られる特定位相差フィルムの特性を著しく低下させるので、これを回避するために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程における温度あるいは風量を制御することが好ましい。
【0096】
このようにして得られる加工前フィルム中の残留溶媒量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、加工前フィルム中の残留溶媒量が10重量%を超える場合には、当該加工前フィルムを延伸加工することによって得られる特定位相差フィルムを実際に使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりガラス転移温度が低くなり、耐熱性も低下することため好ましくない。
【0097】
また、後述する延伸加工を好適に行うためには、加工前フィルム中の残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節することが必要となる場合がある。具体的には、延伸配向処理によってフィルムに位相差を安定して均一に発現させるために、加工前フィルム中の残留溶媒量を通常10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、更に好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。加工前フィルム中に微量の溶媒を残留させることにより、延伸配向処理が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
【0098】
本発明において、加工前フィルムの厚みは、通常1〜500μm(1,000〜500,000nm)、好ましくは1〜300μm(1,000〜300,000nm)、更に好ましくは1〜200μm(1,000〜200,000)、最も好ましくは1〜100μm(1,000〜100,000nm)である。この厚みが1μm未満である場合には、当該加工前フィルムを実質的にハンドリングすることが困難となる。一方、この厚みが500μm以上である場合には、当該加工前フィルムをロール状に巻き取った際に、いわゆる「巻きぐせ」がついてしまい後加工等における取扱いが困難になる場合がある。
加工前フィルムの厚み分布は、平均値に対して通常±20%以内、好ましくは±10%以内、更に好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下であることが望ましい。加工前フィルムの厚み分布を上記の範囲内に制御することにより、当該加工前フィルムに対して延伸配向処理を行う際に、位相差ムラが発生することを防止することができる。
【0099】
特定位相差フィルムを製造するための延伸加工法としては、具体的に、公知の一軸延伸法又は二軸延伸法を挙げることができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なる二組のロールを利用する縦一軸延伸法等あるいは横一軸と縦一軸を組合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、更に好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、延伸後のフィルムの屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、更に好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0100】
延伸配向処理における処理温度は、特に限定されるものではないが、用いられる熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、通常Tg±30℃、好ましくはTg±15℃、更に好ましくはTg−5℃〜Tg+15℃の範囲である。処理温度を上記の範囲内とすることにより、位相差ムラの発生を抑制することが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
延伸倍率は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、更に好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が10倍以上であると、位相差の制御が困難になる場合がある。
【0101】
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、更に好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
【0102】
特定位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の原料である、例えば特定単量体a、特定単量体bあるいはその他の共重合性単量体の選択に加え、キャスト方法や延伸方法によりコントロールすることが可能である。
なお、延伸配向処理を施していない状態の加工前フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0103】
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向していることにより、透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、原料として用いる熱可塑性ノルボルネン系樹脂の種類、延伸倍率、延伸処理温度あるいは延伸前のフィルム(加工前フィルム)の厚み等を調整することにより制御することができる。例えば、延伸倍率については、延伸前の厚みが同じフィルムであっても、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与えるフィルムを得ることができる。また、延伸前のフィルム(加工前フィルム)の厚みについては、延伸倍率が同じであっても、延伸前のフィルムの厚みが大きいほど透過光に与える位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚みを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、延伸処理温度については、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
【0104】
また、特定位相差フィルムの厚みを調整するためには、加工前フィルムの厚み、延伸倍率等を調整することにより制御することができる。具体的には、例えば加工前フィルムの厚みを小さくすること、あるいは延伸倍率を大きくすることにより位相差フィルムの厚みを小さくすることができる。
【0105】
このような特定位相差フィルムにおいては、フィルム面上における1m2 当たりに換算したときの輝点の数は、10個以下、好ましくは7個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0または1とされる。ここに、「輝点」とは、特定位相差フィルムをクロスニコル状態の偏光板に挟んで観察したときに肉眼で確認される部分的な光の漏れであり、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)のものを計測する。もちろん、要求される性能によっては、これよりも小さいものを輝点として計測する場合がある。
また、かかる輝点は、微小領域における位相差の部分的なムラが原因と考えられている。すなわち、加工前フィルム中に異物や泡等が存在すると、それらが肉眼では確認できないような大きさであっても、延伸加工した際に、異物や泡等が存在する部分に応力が集中し、この応力が集中した部分の位相差が周辺部分の位相差と異なってしまうことがあり、係る位相差の違いにより光が漏れてしまうと考えられている。
【0106】
また、特定位相差フィルムにおいては、フィルム面上における1m2 当たりに換算したときの異物の数が、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0または1とされる。
ここでいう「異物」とは、特定位相差フィルムに光を透過させた場合に、実質的に光の透過を妨げるものである。このような異物が特定位相差フィルム中に存在する場合には、透過光強度に影響を与え、液晶表示素子等に用いた場合、画素抜けや特性の低下を招くおそれがある。
なお、計測すべき異物の大きさは、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)であるが、要求される性能によっては、これよりも小さいものを異物として計測する場合がある。
【0107】
特定位相差フィルムは、単独で、あるいは種類の異なるフィルムを2枚以上積層した状態のものを、保護フィルムとして偏光膜に貼合することができ、このような保護フィルムが偏光膜の両面の各々に貼合されてなる構成の積層体は、偏光板として好適に用いることができる。
偏光板として用いることのできる積層体の構成の具体例は、例えば下記の通りである。
【0108】
(1)偏光膜の一面にトリアセチルセルロース(以下、「TAC」と略する。)フィルムを貼合し、当該偏光膜の他面にフィルムAを貼合してなる積層体
(2)偏光膜の一面にTACフィルムを貼合し、当該偏光膜の他面にフィルムBを貼合してなる積層体
(3)偏光膜の一面にフィルムCを貼合し、当該偏光膜の他面にフィルムAを貼合してなる積層体
(4)偏光膜の一面にフィルムCを貼合し、当該偏光膜の他面にフィルムBを貼合してなる積層体
(5)偏光膜の一面にTACフィルムを貼合し、当該偏光膜の他面に、フィルムAおよびフィルムBをこの順に重ねて貼合してなる構成の積層体
(6)偏光膜の一面にフィルムCを貼合し、当該偏光膜の他面に、フィルムAおよびフィルムBを重ねてこの順に貼合してなる積層体
(7)偏光膜の一面にフィルムCを貼合し、当該偏光膜の他面にフィルムCを貼合してなる積層体
【0109】
特定位相差フィルムを他のフィルム、シート、基板に積層する場合には、粘着剤や接着剤を用いることができる。かかる粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものを用いることが好ましく、その具体例としては、天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂等の粘着剤や、水酸基、アミノ基等の官能基を有する前記樹脂等にイソシアナト基含有化合物などの硬化剤を添加した硬化型粘着剤、ポリウレタン系のドライラミネート用接着剤、合成ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
また、特定位相差フィルムは、他のフィルムやシート、基板などとの積層の作業性を向上させるために、あらかじめ、粘着剤層または接着剤層を積層することができる。積層する場合には、粘着剤や接着剤としては前述のような粘着剤あるいは接着剤を用いることができる。
【0110】
特定位相差フィルムには、その少なくとも片面に透明導電層を積層することもできる。
透明導電層を形成するための材料としては、Sn、In、Ti、Pb、Au、Pt、Ag等の金属またはそれらの酸化物を用いことができる。
金属酸化物よりなる透明導電層は、金属酸化物を基板上に直接堆積させることにより形成することもできるが、金属単体または低級酸化物の形態で基板上に堆積させて被膜を形成し、しかるのち、加熱酸化処理、陽極酸化処理あるいは液相酸化処理等の酸化処理を施して透明化することによって形成することができる。また、透明導電層は、透明導電層を有するその他のシート、フィルムなどを光学フィルムに接着することにより形成してもよく、プラズマ重合法、スパッタリング法、真空蒸着法、メッキ、イオンプレーティング法、スプレー法、電解析出法などによって特定位相差フィルム上に直接形成してもよい。
このような透明導電層の厚みは、所望の特性に応じて決定され、特に限定はされないが、通常10〜10,000Å、好ましくは50〜5,000Åである。
【0111】
特定位相差フィルム上に透明導電層を直接形成する場合には、当該特定位相差フィルムと透明導電層との間に必要に応じて接着層またはアンカーコート層を形成してもよい。
ここで、接着層を構成する材料としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリブタジエン、フェノール樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱樹脂を例示することができる。
また、アンカーコート層としては、エポキシジアクリレート、ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート等のいわゆるアクリルプレポリマーなどを成分として含むものを用いて、公知の硬化手法、例えばUV硬化や加熱硬化により硬化させたものが挙げられる。
【0112】
また、透明導電層を積層してなる特定位相差フィルム(以下、「光学用複合フィルム」ともいう。)には、必要に応じて、酸素や水蒸気の透過性を小さくするために、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアルコール等のガスバリア性材料を、少なくとも光学用複合フィルムの一方の面に積層することもできる。
更に、光学用複合フィルムの耐傷性および耐熱性を向上させることを目的として、光学用複合フィルム上に直接またはガスバリア層の上にハードコート層が積層されていてもよい。ここで、ハードコート剤としては、有機シリコン系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの有機ハードコート材料、または二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料を用いることができる。これらの中では、有機シリコン系樹脂、アクリル樹脂などのハードコート材料が好ましい。有機シリコン系樹脂としては、各種の官能基を有するものが使用されるが、エポキシ基を有するものが好ましい。
【0113】
特定位相差フィルムには、少なくともその片面に反射防止層を積層することができる。
反射防止層の形成方法としては、例えば、一般的に使用される、例えばシリコン、チタン、タンタル、ジルコニウム等の金属酸化物などよりなる無機系や、例えばフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンの(共)重合体や含フッ素(メタ)アクリレート(共)重合体等の含フッ素化合物などよりなる有機系の反射防止膜を0.01〜10μm程度の厚みで、スパッタリング、蒸着、コーティング、ディッピングなどの方法により形成することができる。反射防止層の厚みは、通常は0.01〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、更に好ましくは0.5〜20μmである。0.01μm未満であると反射防止効果が発揮できず、50μmを超えると塗膜の厚みにムラが生じやすくなり外観などが悪化し好ましくない。
【0114】
また、反射防止層が積層されてなる特定位相差フィルムには、公知のハードコート層や防汚層が積層されていてもよく、また、上記の透明導電層が積層されていてもよい。更に、反射防止層が積層されてなる特定位相差フィルムとしては、当該特定位相差フィルムとして光拡散機能を有するものを用いることができる。このように、複数の機能を有することにより、反射防止層が積層されてなる特定位相差フィルムは、例えば液晶表示素子に用いた場合、反射防止フィルムが位相差板、光拡散フィルム、偏光膜保護フィルムあるいは電極基板(透明導電層)の幾つかの機能を兼用することとなり、従来よりもその部品点数を低減することが可能となる。
【0115】
本発明の偏光板は、偏光膜の両面の各々に保護フィルムが積層されてなる構成を有するものであって偏光膜の一面に積層されてなる保護フィルムがフィルムCよりなり、当該偏光膜の他面に積層されてなる保護フィルムがフィルムAおよびフィルムBを積層したもの、あるいはフィルムAまたはフィルムBよりなるものである。
このような構成の偏光板において、特定位相差フィルムおよび特定位相差フィルムの積層体よりなる保護フィルムは、特定位相差フィルムを有する積層体よりなるものであればよく、特定位相差フィルムと、例えばTACフィルムなどのフィルムとが積層されてなる構成のものを用いることができる。
【0116】
このような構成の偏光板によれば、保護フィルムが保護機能と共に位相差付与機能を有するものであるため、当該偏光板にあらためて位相差板を貼合する必要がなくなる利点があると共に、例えば液晶表示素子などの製品の薄膜化および高機能化を図ることが可能となり、なおかつVAタイプの液晶に対して良好な光学補償機能を発現することができる。
【0117】
本発明の偏光板においては、保護フィルム面上における1m2 当たの輝点の数は、10個以下、好ましくは7個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0または1とされる。
ここに、「輝点」とは、保護フィルムをクロスニコル状態の偏光板に挟んで観察したときに肉眼で確認される部分的な光の漏れであり、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)のものを計測する。もちろん、要求される性能によっては、これよりも小さいものを輝点として計測する場合がある。
また、保護フィルム面上における1m2 当たりの異物の数が、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0または1とされる。
ここでいう「異物」とは、保護フィルムに光を透過させた場合に、実質的に光りの透過を妨げるものである。
なお、計測すべき異物の大きさは、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)であるが、要求される性能によっては、これよりも小さいものを異物として計測する場合がある。
【0118】
本発明の偏光板は、例えば携帯電話、ディジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVD等の光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。
【0119】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。
また、以下の実施例において、ガラス転移温度、飽和吸水率、全光線透過率、透過光の位相差、輝点数、輝度および視野角並びにコントラスト比、耐傷性、フィルム靱性は、下記の方法により測定した。
【0120】
[ガラス転移温度(Tg)]
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気で昇温速度が20℃/分の条件でガラス転移温度を測定した。
[飽和吸水率]
ASTM D570に準拠し、23℃の水中に1週間サンプルを浸漬し、浸漬前後のサンプルの重量変化測定し、その値から飽和吸水率を求めた。
[全光線透過率]
スガ試験機社製のヘイズメーター「HGM−2DP型」を用い、全光線透過率を測定した。
[透過光の位相差]
王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、波長480、550nm、590nm、630nm、750nmで測定し、当該波長以外の部分については前記波長での位相差値に基づいてコーシー(Cauchy)の分散式を用いて算出した。
[輝点数]
輝度1000cd/m2 の光源上において、サンプルをクロスニコル状態の偏光板の間に挟み、肉眼で確認される外径1μm以上の大きさの部分的な光の漏れを輝点として計測した。
[輝度、視野角およびコントラスト比]
ミノルタ株式会社製の輝度計「LS−110」を用い、日本電子機械工業会規格
EIAJ ED−2522に準拠し、輝度と視野角並びにコントラスト比を測定した。
[耐傷性]
JIS K5400に準拠し、鉛筆硬度試験を行うことによって耐傷性を確認した。
[フィルム靱性]
JIS K7218に従い、フィルムサンプルの縦方向および横方向の各々についてそれぞれ5点ずつ試験を行い、エルメンドルフ引裂荷重値を測定し、得られたエルメンドルフ引裂荷重値の平均値をフィルム靱性値として評価した。
【0121】
<合成例1>
窒素置換した反応容器に、特定単量体aとして8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン225部と、特定単量体bとしてビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン25部と、分子量調節剤として1−ヘキセン18部と、溶媒としてトルエン750部とを仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する濃度0.05モル/lのトルエン溶液3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。
この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環共重合体溶液を構成する開環共重合体の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh )を測定したところ、0.65dl/gであった。
【0122】
得られた開環共重合体溶液4000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム:RuHCl(CO)[P(C6 5 3 3 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2 、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌することにより水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂(a−1)」ともいう。)を得た。
【0123】
得られた樹脂(a−1)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であった。
また、樹脂(a−1)におけるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに由来の構造単位bの割合を、400MHz 1H−NMRスペクトルを測定し、約3.7ppm付近に出現する、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセンに由来の構造単位aのメチルエステルのメチルのプロトンの吸収ピークと、0.15〜3ppmに出現する構造単位aおよび構造単位bの脂環構造のプロトンの吸収ピークとに基づいて算出したところ、20.1%であった。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算重量平均分子量Mwが1万以下のもの、1万を超えて3万以下の範囲のもの、および3万を超えたものを分取し、それぞれの構造単位bの割合を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより確認したところ、樹脂(a−1)全体における割合である20.1%の値に対するバラツキは、いずれも15%以内であった。
【0124】
また、樹脂(a−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39,000、重量平均分子量(Mw)は116,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.97であった。
また、樹脂(a−1)のガラス転移温度(Tg)は110℃であり、23℃における飽和吸水率は0.3重量%であった。また、樹脂(a−1)のSP値を測定したところ、19(MPa1/2 )であり、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ0.67dl/gであった。
【0125】
<合成例2>
特定単量体aとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン200部と、特定単量体bとして5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン50部とを用いたこと以外は合成例1と同様にして水素添加重合体(以下、「樹脂(b−1)」ともいう。)を得た。
得られた樹脂(b−1)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であり、また、芳香環は実質的に水素添加されていないことが確認された。
また、樹脂(b−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は47,000、重量平均分子量(Mw)は187,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.98であった。
また、樹脂(b−1)のガラス転移温度(Tg)は160℃であり、23℃における飽和吸水率は0.3重量%であった。また、樹脂(b−1)について、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ0.68dl/gであった。
【0126】
<合成例3>
特定単量体aとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン175部と、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(別称:1H,4H,4aH,9aH−1,4−メタノフルオレン)75部とを用いたこと以外は合成例1と同様にして水素添加重合体(以下、「樹脂(c−1)」ともいう。)を得た。
得られた樹脂(c−1)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であり、また、芳香環は実質的に水素添加されていないことが確認された。
また、樹脂(c−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は32,000、重量平均分子量(Mw)は120,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.75であった。
また、樹脂(c−1)のガラス転移温度(Tg)は155℃であり、23℃における飽和吸水率は0.2重量%であった。また、樹脂(c−1)について、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ0.61dl/gであった。
【0127】
<合成例4>
特定単量体aとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン200部と、特定単量体bとして1,2−(2H,3H−[1,3]エピシクロペンタ)−1,2−ジヒドロアセナフチレン50部とを用いたこと以外は合成例1と同様にして水素添加重合体(以下、「樹脂(d−1)」ともいう。)を得た。
得られた樹脂(d−1)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であり、また、芳香環は実質的に水素添加されていないことが確認された。
また、樹脂(d−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は42,000、重量平均分子量(Mw)は180,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.29であった。また、樹脂(d−1)のガラス転移温度(Tg)は175℃であった。
【0128】
<合成例5>
特定単量体aとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]ドデカ−3−エン175部と、特定単量体bとしてエンド体とエキソ体とのモル比が95:5であるトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−8−エン75部とを用いたこと以外は合成例1と同様にして水素添加重合体(以下、「樹脂(e−1)」ともいう。)を得た。
得られた樹脂(e−1)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であり、また、芳香環は実質的に水素添加されていないことが確認された。
また、樹脂(e−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は19,000、重量平均分子量(Mw)は75,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.7であった。
また、樹脂(e−1)のガラス転移温度(Tg)は155℃であり、23℃における飽和吸水率は0.2重量%であった。また、樹脂(e−1)について、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ0.52dl/gであった。
【0129】
<合成例6>
特定単量体aとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5 ,17.10]ドデカ−3−エン250部を用いたこと以外は合成例1と同様にして、水素添加重合体(以下、「樹脂(g−1)」ともいう。)を得た。
得られた樹脂(g−1)について、水素添加率を400MHz、 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であった。
また、樹脂(g−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は25,000、重量平均分子量(Mw)は100,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.0であった。
また、樹脂(g−1)のガラス転移温度(Tg)は169℃であり、23℃における飽和吸水率は0.49重量%であった。また、樹脂(g−1)について、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ0.72dl/gであった。
【0130】
<調製例1>
反応容器に蒸留水250部を仕込み、この反応容器にアクリル酸ブチル90部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8部と、ジビニルベンゼン2部と、オレイン酸カリウム0.1部とを添加した後、この系をテフロン(登録商標)製の撹拌羽根により撹拌して分散処理した。その後、この反応容器内を窒素置換した後、この系を50℃まで昇温し、過硫酸カリウム0.2部を添加して重合を開始した。重合開始から2時間経過後に、更に、重合反応系に過硫酸カリウム0.1部を添加した後、この系を80℃まで昇温し、1時間にわたって重合反応を継続させることにより重合体分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて、重合体分散液を固形分濃度が70重量%となるまで濃縮することにより、アクリル酸エステル系重合体の水系分散体からなる水系粘着剤(極性基を有する粘着剤)を得た。
このようにして得られた水系粘着剤(以下、「水系粘着剤A」という。)を構成するアクリル酸エステル系重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は69,000、重量平均分子量(Mw)は135,000であった。
また、水系粘着剤Aについて、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ1.2dl/gであった。
【0131】
[実施例1]
樹脂(a−1)をトルエンに濃度が30%となるように溶解した。得られた溶液の室温における溶液粘度は30,000mPa・sであった。この溶液に、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を、樹脂(a−1)100重量部に対して0.1重量部を添加し、得られた溶液を日本ポール製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過した後、クラス1000のクリーンルーム内に設置した井上金属工業製の「INVEXラボコーター」を用い、アクリル酸系表面処理剤によって親水化(易接着性化)処理された、厚みが100μmのPETフィルム(東レ(株)製の「ルミラーU94」)に塗布した。次いで、得られた液層に対して、50℃で一次乾燥処理を行い、更に、90℃で二次乾燥処理を行った後、PETフィルムから剥離させることにより、厚さ100μmの樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(a−2)」ともいう。)を形成した。得られた樹脂フィルム(a−2)の残留溶媒量は0.5重量%であり、光線透過率は93%以上であった。 また、上記と同様の手法により、残留溶媒量が0.4重量%であり厚みが80μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(a−3)」ともいう。)、および残留溶媒量が0.3重量%であり厚みが50μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(a−4)」ともいう。)を形成した。得られた樹脂フィルム(a−3)および樹脂フィルム(a−4)の各々の全光線透過率は何れも93%以上であった。
【0132】
更に、樹脂フィルム(a−2)をテンター内で、120℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.3倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.3倍に延伸し、その後、90℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(a−5)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(a−5)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0133】
また、樹脂フィルム(a−3)をテンター内で、120℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の横方向の幅を一定に保ちながら縦方向に1.3倍に延伸した後、90℃(Tg−20℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内からて取り出すことにより、位相差フィルム(a−6)を得た。
得られた位相差フィルム(a−6)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
樹脂フィルム(a−4)をテンター内で、120℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.1倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.1倍に延伸し、その後、90℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(a−7)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(a−7)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
また、位相差フィルム(a−5)〜(a−7)について、波長分散性α(λ)/α(550)、波長分散性β(λ)/β(550)を調べたところ、これらの値は位相差フィルム(a−5)〜(a−7)において実質的に同じであった。位相差フィルム(a−6)に係る結果を図1に示す。
また、位相差フィルム(a−5)〜(a−7)の各々の輝点の数は0〜1個であった。
【0136】
[実施例2]
実施例1において、樹脂(a−1)に代えて樹脂(b−1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、残留溶媒量が0.4重量%であり厚みが100μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(b−2)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが80μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(b−3)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが50μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(b−4)」ともいう。)とを得た。得られた樹脂フィルム(b−2)〜(b−4)の各々の全光線透過率は何れも93%以上であった。
【0137】
樹脂フィルム(b−2)をテンター内で、170℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.3倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.3倍に延伸し、その後、140℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(b−5)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(b−5)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0138】
また、樹脂フィルム(b−3)をテンター内で、170℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の横方向の幅を一定に保ちながら縦方向に1.3倍に延伸した後、140℃(Tg−20℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(b−6)を得た。
得られた位相差フィルム(b−6)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
樹脂フィルム(b−4)をテンター内で、170℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.1倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.1倍に延伸し、その後、140℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(b−7)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(b−7)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0140】
また、位相差フィルム(b−5)〜(b−7)について、波長分散性α(λ)/α(550)、波長分散性β(λ)/β(550)を調べたところ、これらの値は位相差フィルム(b−5)〜(b−7)において実質的に同じであった。位相差フィルム(b−6)に係る結果を図2に示す。
また、位相差フィルム(b−5)〜(b−7)の各々の輝点の数は0〜2個であった。
【0141】
[実施例3]
実施例1において、樹脂(a−1)に代えて樹脂(c−1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、残留溶媒量が0.4重量%であり厚みが100μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(c−2)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが80μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(c−3)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが50μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(c−4)」ともいう。)とを得た。得られた樹脂フィルム(c−2)〜(c−4)の各々の全光線透過率は何れも93%以上であった。
【0142】
樹脂フィルム(c−2)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.3倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.3倍に延伸し、その後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(c−5)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(c−5)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0143】
また、樹脂フィルム(c−3)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の横方向の幅を一定に保ちながら縦方向に1.3倍に延伸した後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温と更に冷却して取り出して位相差フィルム(c−6)を得た。
得られた位相差フィルム(c−6)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0144】
樹脂フィルム(c−4)をテンター内で、170℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.1倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.1倍に延伸し、その後、140℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(c−7)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(c−7)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0145】
また、位相差フィルム(c−5)〜(c−7)について、波長分散性α(λ)/α(550)、波長分散性β(λ)/β(550)を調べたところ、これらの値は位相差フィルム(c−5)〜(c−7)において実質的に同じであった。位相差フィルム(c−6)に係る結果を図3に示す。
また、位相差フィルム(c−5)〜(c−7)の各々の輝点の数は0〜2個であった。
【0146】
[実施例4]
実施例1において、樹脂(a−1)に代えて樹脂(d−1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、残留溶媒量が0.4重量%であり厚みが100μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(d−2)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが80μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(d−3)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが50μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(d−4)」ともいう。)とを得た。得られた樹脂フィルム(d−2)〜(d−4)の各々の全光線透過率は何れも93%以上であった。
【0147】
樹脂フィルム(d−2)をテンター内で、185℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.3倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.3倍に延伸し、その後、155℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(d−5)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(d−5)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0148】
また、樹脂フィルム(d−3)をテンター内で、185℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の横方向の幅を一定に保ちながら縦方向に1.3倍に延伸した後、155℃(Tg−20℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(d−6)を得た。
得られた位相差フィルム(d−6)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0149】
樹脂フィルム(d−4)をテンター内で、185℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.1倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.1倍に延伸し、その後、155℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(d−7)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(d−7)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0150】
また、位相差フィルム(d−5)〜(d−7)について、波長分散性α(λ)/α(550)、波長分散性β(λ)/β(550)を調べたところ、これらの値は位相差フィルム(d−5)〜(d−7)において実質的に同じであった。位相差フィルム(d−6)に係る結果を図4に示す。
また、位相差フィルム(d−5)〜(d−7)の各々の輝点の数は0個であった。
【0151】
[実施例5]
実施例1において、樹脂(a−1)に代えて樹脂(e−1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、残留溶媒量が0.4重量%であり厚みが100μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(e−2)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが80μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(e−3)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが50μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(e−4)」ともいう。)とを得た。得られた樹脂フィルム(e−2)〜(e−4)の各々の全光線透過率は何れも93%以上であった。
【0152】
樹脂フィルム(e−2)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.3倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.3倍に延伸し、その後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(e−5)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(e−5)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0153】
また、樹脂フィルム(e−3)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の横方向の幅を一定に保ちながら縦方向に1.3倍に延伸した後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(e−6)を得た。
得られた位相差フィルム(e−6)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0154】
樹脂フィルム(e−4)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.1倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.1倍に延伸し、その後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(e−7)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(e−7)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0155】
また、位相差フィルム(e−5)〜(e−7)について、波長分散性α(λ)/α(550)、波長分散性β(λ)/β(550)を調べたところ、これらの値は位相差フィルム(e−5)〜(e−7)において実質的に同じであった。位相差フィルム(e−6)に係る結果を図5に示す。
また、位相差フィルム(e−5)〜(e−7)の各々の輝点の数は0〜1個であった。
【0156】
[比較例1]
実施例1において、樹脂(a−1)に代えて出光石油化学製のポリカーボネート樹脂「A2700」を用い、トルエンに代えて塩化メチレンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、残留溶媒量が0.4重量%であり厚みが100μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(f−2)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが80μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(f−3)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.3重量%でありフィルム厚みが50μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(f−4)」ともいう。)とを得た。得られた樹脂フィルム(f−2)〜(f−4)の各々の全光線透過率は何れも91%であった。
【0157】
樹脂フィルム(f−2)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.03倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.03倍に延伸し、その後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(f−5)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(f−5)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0158】
また、樹脂フィルム(f−3)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の横方向の幅を一定に保ちながら縦方向に1.03倍に延伸した後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(f−6)を得た。
得られた位相差フィルム(f−6)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0159】
樹脂フィルム(f−4)をテンター内で、165℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.01倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.01倍に延伸し、その後、135℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(f−7)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(f−7)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0160】
また、位相差フィルム(f−5)〜(f−7)について、波長分散性α(λ)/α(550)、波長分散性β(λ)/β(550)を調べたところ、これらの値は位相差フィルム(f−5)〜(f−7)において実質的に同じであった。位相差フィルム(f−6)に係る結果を図6に示す。
また、位相差フィルム(f−5)〜(f−7)の各々の輝点の数は11〜18個であった。
【0161】
[比較例2]
実施例1において、樹脂(a−1)に代えて樹脂(g−1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、残留溶媒量が0.7重量%であり厚みが200μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(g−2)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.5重量%でありフィルム厚みが180μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(g−3)」ともいう。)と、残留溶媒量が0.4重量%でありフィルム厚みが120μmである樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(g−4)」ともいう。)とを得た。得られた樹脂フィルム(g−2)〜(g−4)の各々の全光線透過率は何れも93%以上であった。
【0162】
樹脂フィルム(g−2)をテンター内で、179℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.3倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.3倍に延伸し、その後、149℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(g−5)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(g−5)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0163】
また、樹脂フィルム(g−3)をテンター内で、179℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の横方向の幅を一定に保ちながら縦方向に1.3倍に延伸した後、149℃(Tg−20℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(g−6)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(g−6)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0164】
樹脂フィルム(g−4)をテンター内で、179℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.1倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.1倍に延伸し、その後、149℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(以下、「位相差フィルム(g−7)」ともいう。)を得た。
得られた位相差フィルム(g−7)について、位相差α(550)、位相差β(550)、フィルム厚み、フィルム靭性を測定した。結果を表1に示す。
【0165】
また、位相差フィルム(g−5)〜(g−7)について、波長分散性α(λ)/α(550)、波長分散性β(λ)/β(550)を調べたところ、これらの値は位相差フィルム(g−5)〜(g−7)において実質的に同じであった。位相差フィルム(g−6)に係る結果を図7に示す。
また、位相差フィルム(g−5)〜(g−7)の各々の輝点の数は0〜1個であった。
【0166】
【表1】
Figure 0004172310
【0167】
[実施例6]
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略する。)を、ヨウ素濃度が0.03重量%であってヨウ化カリウム濃度が0.5重量%である水溶液よりなる温度30℃の染色浴中において延伸倍率3倍で前延伸加工を行い、その後、ほう酸濃度が5重量%であってヨウ化カリウム濃度が8重量%である水溶液よりなる温度55℃の架橋浴中において延伸倍率2倍で後延伸加工を行って乾燥処理することにより、偏光膜(以下、「偏光子(1)」ともいう。)を得た。
次いで、偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(a−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、PVA系接着剤を用いてTACフィルムを貼付け、更にTACフィルムの上面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(a−5)を貼付けることにより、偏光板(以下、「偏光板(a−8)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(a−8)の透過率は44.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜1個であった。
また、偏光板(a−8)について、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
【0168】
更に、偏光板(a−8)とは別にして、偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(a−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(a−6)を貼付け、更に位相差フィルム(a−7)の上面に、圧力1×10-4Torrの真空下において窒化ケイ素を蒸着させて厚み80nmの第1蒸着膜を形成し、更に、テルビウム−鉄−コバルト合金(TbFeCo)を蒸着させて厚み20nmの第2蒸着膜、窒化ケイ素を蒸着させて厚み30nmの第3蒸着膜および再外層にアルミニウム(Al)を蒸着させて厚み50nmの第4蒸着膜をこの順に形成することにより、合計4つの蒸着膜が積層されてなる反射防止層に由来の反射防止機能を付与させた。
次いで、反射防止層上に、還流冷却器および撹拌機を備えた反応器内に、メチルトリメトキシシラン25部と、メタノール分散コロイダルシリカ(固形分濃度30%、日産化学工業(株)製、メタノールゾル)10部と、水道水6部とを仕込み、この系を70℃に加熱して2時間反応させた後、i−プロピルアルコール38部を添加することによって得られたコーティング組成物を、エアースプレーガンを用いて塗布し、140℃で60分間加熱して厚み10μmの硬化塗膜を形成することにより、偏光板(以下、「偏光板(a−9)」ともいう。)を得た。得られた偏光板(a−9)透過率は47.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜1個であった。
また、偏光板(a−9)に反射防止層側から波長400〜700nmの範囲の光を入射することによって反射率を測定したところ、いずれの波長の光に係る反射率は1%未満であり良好な反射防止機能を有することを確認した。
更に、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
【0169】
また、ASV方式の低反射ブラックTFT液晶を採用しているシャープ株式会社製の液晶テレビ「LC−13B1−S」の液晶パネル両面の各々に貼付されている偏光板と位相差フィルムとを剥離し、この液晶パネルのバックライト側の一面に、偏光板(a−8)を、当該偏光板(a−8)を構成する位相差フィルム(a−5)が液晶パネルに接触する状態で貼付け、当該液晶パネルの他面に、偏光板(a−9)を、当該偏光板(a−9)を構成する位相差フィルム(a−6)が液晶パネルに接触する状態で貼付けることにより、改造液晶テレビ(以下、「改造液晶テレビ(1)」ともいう。)を得た。
得られた改造液晶テレビ(1)の輝度と、視野角と、コントラスト比とをそれぞれ確認し、その後、当該改造液晶テレビ(1)を、温度100℃の環境下に2000時間放置した後、再び、輝度と、視野角と、コントラスト比とを確認することによって耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0170】
[実施例7]
実施例6と同様にして偏光子(1)を得、この偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(b−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、PVA系接着剤を用いてTACフィルムを貼付け、更にTACフィルムの上面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(b−5)を貼付けることにより、偏光板(以下、「偏光板(b−8)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(b−8)の透過率は44.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜2個であった。
また、偏光板(b−8)について、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
更に、偏光板(b−8)とは別にして、偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(b−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(b−6)を貼付け、この位相差フィルム(b−6)の上面に、実施例6と同様にして反射防止層に由来の反射防止機能を付与させ、更に反射防止層上に硬化塗膜を形成することにより、偏光板(以下、「偏光板(b−9)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(b−9)透過率は47.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜2個であった。
また、偏光板(b−9)に反射防止層側から波長400〜700nmの範囲の光を入射することによって反射率を測定したところ、いずれの波長の光に係る反射率は1%未満であり良好な反射防止機能を有することを確認した。
更に、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
【0171】
また、実施例6において、偏光板(a−8)に代えて偏光板(b−8)を用い、偏光板(a−9)に代えて偏光板(b−9)を用いたこと以外は実施例6と同様にして改造液晶テレビ(以下、「改造液晶テレビ(2)」ともいう。)を得た。
得られた改造液晶テレビ(2)について、実施例6と同様の手法によって耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0172】
[実施例8]
実施例6と同様にして偏光子(1)を得、この偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(c−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、PVA系接着剤を用いてTACフィルムを貼付け、更にTACフィルムの上面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(c−5)を貼付けることにより、偏光板(以下、「偏光板(c−8)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(c−8)の透過率は44.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜2個であった。
また、偏光板(c−8)について、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
更に、偏光板(c−8)とは別にして、偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(c−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(c−6)を貼付け、この位相差フィルム(c−6)の上面に、実施例6と同様にして反射防止層に由来の反射防止機能を付与させ、更に反射防止層上に硬化塗膜を形成することにより、偏光板(以下、「偏光板(c−9)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(c−9)透過率は47.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜2個であった。
また、偏光板(c−9)に反射防止層側から波長400〜700nmの範囲の光を入射することによって反射率を測定したところ、いずれの波長の光に係る反射率は1%未満であり良好な反射防止機能を有することを確認した。
更に、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
【0173】
また、実施例6において、偏光板(a−8)に代えて偏光板(c−8)を用い、偏光板(a−9)に代えて偏光板(c−9)を用いたこと以外は実施例6と同様にして改造液晶テレビ(以下、「改造液晶テレビ(3)」ともいう。)を得た。
得られた改造液晶テレビ(3)について、実施例6と同様の手法によって耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0174】
[実施例9]
実施例6と同様にして偏光子(1)を得、この偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(d−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、PVA系接着剤を用いてTACフィルムを貼付け、更にTACフィルムの上面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(d−5)を貼付けることにより、偏光板(以下、「偏光板(d−8)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(d−8)の透過率は44.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜1個であった。
また、偏光板(d−8)について、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
更に、偏光板(d−8)とは別にして、偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(d−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(d−6)を貼付け、この位相差フィルム(d−6)の上面に、実施例6と同様にして反射防止層に由来の反射防止機能を付与させ、更に反射防止層上に硬化塗膜を形成することにより、偏光板(以下、「偏光板(d−9)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(d−9)透過率は47.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0〜1個であった。
また、偏光板(d−9)に反射防止層側から波長400〜700nmの範囲の光を入射することによって反射率を測定したところ、いずれの波長の光に係る反射率は1%未満であり良好な反射防止機能を有することを確認した。
更に、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
【0175】
また、実施例6において、偏光板(a−8)に代えて偏光板(d−8)を用い、偏光板(a−9)に代えて偏光板(d−9)を用いたこと以外は実施例6と同様にして改造液晶テレビ(以下、「改造液晶テレビ(4)」ともいう。)を得た。
得られた改造液晶テレビ(4)について、実施例6と同様の手法によって耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0176】
[実施例10]
実施例6と同様にして偏光子(1)を得、この偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(e−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、PVA系接着剤を用いてTACフィルムを貼付け、更にTACフィルムの上面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(e−5)を貼付けることにより、偏光板(以下、「偏光板(e−8)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(e−8)の透過率は44.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0個であった。
また、偏光板(e−8)について、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
更に、偏光板(e−8)とは別にして、偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(e−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(e−6)を貼付け、この位相差フィルム(e−6)の上面に、実施例6と同様にして反射防止層に由来の反射防止機能を付与させ、更に反射防止層上に硬化塗膜を形成することにより、偏光板(以下、「偏光板(e−9)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(e−9)透過率は47.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は0個であった。
また、偏光板(e−9)に反射防止層側から波長400〜700nmの範囲の光を入射することによって反射率を測定したところ、いずれの波長の光に係る反射率は1%未満であり良好な反射防止機能を有することを確認した。
更に、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
【0177】
また、実施例6において、偏光板(a−8)に代えて偏光板(e−8)を用い、偏光板(a−9)に代えて偏光板(e−9)を用いたこと以外は実施例6と同様にして改造液晶テレビ(以下、「改造液晶テレビ(5)」ともいう。)を得た。
得られた改造液晶テレビ(5)について、実施例6と同様の手法によって耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0178】
[比較例3]
実施例6と同様にして偏光子(1)を得、この偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(f−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、PVA系接着剤を用いてTACフィルムを貼付け、更にTACフィルムの上面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(f−5)を貼付けることにより、偏光板(以下、「偏光板(f−8)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(f−8)の透過率は44.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は11〜18個であった。
また、偏光板(f−8)について、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
更に、偏光板(f−8)とは別にして、偏光子(1)の一面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(f−7)を貼付け、当該偏光子(1)の他面に、水系接着剤Aを用いて位相差フィルム(f−6)を貼付け、この位相差フィルム(f−6)の上面に、実施例6と同様にして反射防止層に由来の反射防止機能を付与させ、更に反射防止層上に硬化塗膜を形成することにより、偏光板(以下、「偏光板(f−9)」ともいう。)を得た。
得られた偏光板(f−9)透過率は47.0%、偏光度は99.9%であり、輝点の数は11〜18個であった。
また、偏光板(f−9)に反射防止層側から波長400〜700nmの範囲の光を入射することによって反射率を測定したところ、いずれの波長の光に係る反射率は1%未満であり良好な反射防止機能を有することを確認した。
更に、鉛筆硬度試験を行ったところ、硬度が2Hを示し良好な耐傷性を有することを確認した。
【0179】
また、実施例6において、偏光板(a−8)に代えて偏光板(f−8)を用い、偏光板(a−9)に代えて偏光板(f−9)を用いたこと以外は実施例6と同様にして改造液晶テレビ(以下、「比較用改造液晶テレビ(1)」ともいう。)を得た。
得られた比較用改造液晶テレビ(1)について、実施例6と同様の手法によって耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0180】
【表2】
Figure 0004172310
【0181】
【発明の効果】
本発明に用いられる位相差フィルムは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が有する高透明性、低位相差等の光学特性、耐熱性および他素材との密着性・接着性等が発揮され、また吸水変形が小さくいという特性を有し、しかも、靱性が高くフィルム面内の位相差と共にフィルム厚み方向の位相差が調整された薄膜であって位相差均一性および安定な位相差特性を有するものである。
このような位相差フィルムには、光拡散機能を付与することができ、また、透明導電層や反射防止層を積層することができる。
本発明の偏光板は、上記の位相差フィルムを保護フィルムとして用いてなるものであり、当該位相差フィルムが保護機能と位相差付与機能とを有するものであることから、液晶表示素子等に用いた場合に、従来よりもその部品点数を低減することができる。
従って、本発明位相差フィルムおよび偏光板によれば、VAタイプの液晶よりなる液晶表示素子等を高い生産効率で製造することができると共に、得られる液晶表示素子等に最適な視野角特性を発現することができ、更に薄膜化や小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた位相差フィルム(a−6)について、その透過光における波長分散性の値と光線波長との関係を示す図である。
【図2】実施例2で得られた位相差フィルム(b−6)について、その透過光における波長分散性の値と光線波長との関係を示す図である。
【図3】実施例3で得られた位相差フィルム(c−6)について、その透過光における波長分散性の値と光線波長との関係を示す図である。
【図4】実施例4で得られた位相差フィルム(d−6)について、その透過光における波長分散性の値と光線波長との関係を示す図である。
【図5】実施例5で得られた位相差フィルム(e−6)について、その透過光における波長分散性の値と光線波長との関係を示す図である。
【図6】比較例1で得られた比較用位相差フィルム(f−6)について、その透過光における波長分散性の値と光線波長との関係を示す図である。
【図7】比較例2で得られた比較用位相差フィルム(g−6)について、その透過光における波長分散性の値と光線波長との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 偏光膜の両面の各々に保護フィルムが積層されてなる構成を有し、偏光膜の一面に積層されてなる保護フィルムがフィルムCよりなり、当該偏光膜の他面に積層されてなる保護フィルムがフィルムAおよびフィルムBを積層したもの、あるいはフィルムAまたはフィルムBよりなり、
    前記フィルムA、前記フィルムBおよび前記フィルムCの各々は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂よりなる位相差フィルムよりなり、
    面内進相軸方向の屈折率をnx、面内遅相軸方向の屈折率をny、フィルム厚み方向の屈折率をnz、フィルム厚みをd〔nm〕とし、光線波長400〜700nmの範囲内において選択される光線波長λ〔nm〕の透過光のフィルム面内の位相差を式α(λ)=(ny−nx)×dで表される値α(λ)〔nm〕、当該光線波長λ〔nm〕の透過光のフィルム厚み方向の位相差を式β(λ)={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値β(λ)〔nm〕とするとき、
    前記フィルムAは下記の条件(a)〜(e)を満たし、
    前記フィルムBは下記の条件(a)〜(c)、(f)および(g)を満たし、
    前記フィルムCは下記の条件(a)〜(d)および(h)を満たす
    ことを特徴とする偏光板。
    条件;
    (a)100<d≦100000
    (b)0.95≦α(λ)/α(550)≦1.05
    (c)0.95≦β(λ)/β(550)≦1.05
    (d)0≦α(550)≦40
    (e)150≦β(550)≦300
    (f)50≦α(550)≦150
    (g)30≦β(550)≦100
    (h)0≦β(550)≦80
  2. フィルムA、フィルムBおよびフィルムCを構成する熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が100〜250℃のものであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
  3. フィルムA、フィルムBおよびフィルムCを構成する熱可塑性ノルボルネン系樹脂が下記一般式(1)で表される構造単位aと、下記一般式(2)で表される構造単位bとを有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏光板。
    Figure 0004172310
    [式中、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であり、Xは、ビニレン基(−CH=CH−)またはエチレン基(−CH 2 CH 2 −)を示し、R 1 〜R 4 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R 1 とR 2 、R 3 とR 4 またはR 2 とR 3 は、互いに結合して 、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環を形成していてもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
    Figure 0004172310
    [式中、Yは、ビニレン基(−CH=CH−)またはエチレン基(−CH 2 CH 2 −)を示し、R 5 〜R 8 は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を示す。更に、R 5 とR 6 、R 7 とR 8 またはR 6 とR 7 は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環または複素環(但し、一般式(1)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環または複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
  4. フィルムA、フィルムBおよびフィルムCの各々の面上における1m 2 当たりの輝点の数が10個以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の偏光板。
  5. 保護フィルム面上における1m 2 当たりの輝点の数が10個以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の偏光板。
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