JP4743213B2 - 熱可塑性ノルボルネン系樹脂系光学用フィルム - Google Patents

熱可塑性ノルボルネン系樹脂系光学用フィルム Download PDF

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本発明は、特定の熱可塑性ノルボルネン系樹脂を主成分とした光学用フィルムに関するものである。さらに詳しくは、他材料との密着性や接着性が良好で、高透明であり、透過光に与える位相差(ここで、位相差とはレターデーション[Retardation]を意味する。
以下同じ。)の均一性が高く、またこの位相差の特性が環境の温度や湿度に影響されにくく経時安定性に優れ、さらに、この位相差の絶対値が透過光の波長が長波長になるほど大きくなる(以下、「正の波長依存性」という。)光学用フィルムに関する。また、本発明は、光拡散機能、透明導電性、反射防止機能等の機能を有する光学用フィルムに関する。
従来から光学用フィルムとして使用されているポリカーボネート、ポリエステル等のフィルムは、光弾性係数が大きいために微小な応力の変化などにより透過光に位相差が発現したりして位相差が変化する問題がある。また、あるいはトリアセチルアセテート等アセテートフィルムは、耐熱性が低く吸水変形等の問題がある。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂)は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも屈折率の異方性が小さいことによる低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されている。
こうした環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば特許文献1〜6等に記載されている。
近年、上記の特徴を利用して、例えば、光ディスク、光学レンズ、光ファイバーなどの光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において、環状ポリオレフィン系樹脂を応用することが検討されている。
光学用フィルム用の樹脂としてみても、上記特性は前記従来の樹脂の問題点を改善できるものであり、このため、環状ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが光学用の各種フィルムとして提案されている。例えば、特許文献7〜10には、環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムからなる位相差板が記載されている。また、特許文献11〜13には、環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを偏光板の保護フィルムに使用することが記載されている。さらに、特許文献14には、環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムからなる液晶表示素子用基板が記載されている。
これらの公報には、環状ポリオレフィン系樹脂は吸水率が容易に0.05%以下のものが得られ、この低吸水性の点が特徴であり、かつ必要であると記載されている。しかしながら、このような低吸水性の環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを、例えば、位相差板や液晶表示素子用基板として用いる場合、ハードコート、反射防止膜や透明導電層の密着性、あるいは、偏光板やガラスとの接着性の点で問題が生じることがある。また、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、上記の問題に加えて、偏光子との貼り合わせに通常使用される水系接着剤の水が乾燥し難いという問題も生じる。
一方、環状ポリオレフィン系樹脂は広い範囲の構成からなり、すべてが吸水率0.05%以下になるとは限らない。吸水率を0.05%以下にするためには、環状ポリオレフィン系樹脂は炭素原子と水素原子のみからなるポリオレフィン構造かハロゲンを一部含む構造であることが必要である。
そこで、上記低吸水性に由来する問題を解決するために、極性基を分子内に導入した熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む光学用フィルムが特許文献15や16などに記載されている。
これらに開示された光学用フィルムは高透明性、透過光の低位相差、さらに延伸配向させると透過光に均一で安定した位相差を与える等の光学特性において優れ、耐熱性、他材料との密着性や接着性等が良好で、しかも吸水変形が小さいという特徴を有しており、前記従来の樹脂からなる光学用フィルムの問題点を改善したものとして、各種用途分野での応用が検討されている。
しかしながら、従来の環状ポリオレフィン系樹脂からなる光学用フィルムは、延伸配向させて得られる透過光に位相差を与える機能が、透過光の波長が長波長になるにつれて透過光の位相差の絶対値が小さくなる(以下、「負の波長依存性」という。)という特性を有するため、400〜800nmといういわゆる可視光領域全てにおいて、例えば、1/4λの位相差を透過光に与えることを1枚のフィルムで実現することはできなかった。こうした事情は、従来の環状ポリオレフィン系樹脂からなる光学用フィルムのみならず、前記他の樹脂からなる光学用フィルムでも同様であった。
このため、透過光に位相差を与えるフィルム(以下、「位相差フィルム」という。)を複数枚貼り合わせて用いることで可視光領域全てにおいて、特定の位相差、例えば1/4λの位相差を透過光に与えるようにしている(例えば、特許文献17)。しかしながら、この方法では、貼り合わせ時に高度な貼り合わせ角度調整が必要なことや貼り合わせ時に不良品が発生すること、また貼り合わせによって厚くなってしまう等問題点も多く、一枚のみで上記特性を成し得る光学用フィルムが長く望まれていた。
この課題を解決するためには、波長が長波長になるにつれて透過光の位相差の絶対値が大きくなる、すなわち、正の波長依存性を示す光学用フィルムが必要であるが、この正の波長依存性を示す光学用フィルムとしては、特定のセルロースアセテート系樹脂からなる位相差フィルムが提案されている(特許文献18)。しかしながら、この位相差フィルムはセルロース系樹脂からなるため、吸水による特性変化や耐熱性等の点において問題点が有る。
特開平1−132625号公報 特開平1−132626号公報 特開昭63−218726号公報 特開平2−133413号公報 特開昭61−120816号公報 特開昭61−115912号公報 特開平4−245202号公報 特開平4−36120号公報 特開平5−2108号公報 特開平5−64865号公報 特開平5−212828号公報 特開平6−51117号公報 特開平7−77608号公報 特開平5−61026号公報 特開平7−287122号公報 特開平7−287123号公報 特許第3174367号 特開2000−137116
本発明の課題は、400〜800nmの波長領域全てにおいて正の波長依存性を示し、1枚で前記波長範囲において透過光に特定の位相差を与えることができる光学用フィルムを提供することにある。さらに詳しくは、特定の構造を有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む光学用フィルムを提供することにある。
本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位aと下記一般式(2)で表される構造単位bを含む共重合体である熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含むことを特徴とする光学用フィルムを提供する。
Figure 0004743213
[式中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数である。Xは式:−CH=CH−で表
される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、R1、R2、R3及びR4は独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ又はケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;又は極性基を表し、あるいはR1とR2、R3とR4、又はR2とR3とが相互に結合して炭素環又は複素環(これらの炭素環又は複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。形成される炭素環又は複素環は芳香環でもよいし非芳香環でもよい。但し、R1
4のうち少なくとも1つは、下記一般式(1−1)及び/又は下記一般式(1−2)で
表される基である。また、上記共重合体中に存在する複数のX、R1、R2、R3及びR4各々は同一でも異なっていてもよい。]
Figure 0004743213
Figure 0004743213
〔一般式(1−1)及び一般式(1−2)において、R5〜R14、Z、RA及びRBは、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ又はケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜30の1価の炭化水素基;又は1価の極性基を表す。但し、一般式(1−1)において、R5〜R14のうち1個は、式記載の環構造を構成する炭素原
子にカルボニル基側で結合する、式:−C(O)O−で表わされる基であり、p及びqは独立に0〜2の整数であり、p=q=0のときは、R6とR9、R13とR9、R5とR14、又は、R12とR14は相互に結合して炭素環又は複素環(これらの炭素環又は複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。また、一般式(1−2)においてRA、RB又はZのうち1個は、式記載の環構造を構成する炭素原子にカルボニル基側で結合する、式:−C(O)O−で表わされる基であり、sは0又は1以上の整数である。更に、上記共重合体中に存在する複数のR5〜R14、Z、RA及びRB
々は同一でも異なっていてもよい。〕
Figure 0004743213
[式中、tは0又は1であり、uは0又は1以上の整数である。X、R1、R2、R3及び
4は前記のとおりである。但し、式(2)においてR1〜R4が、上記一般式(1−1)又は
上記一般式(1−2)で表わされる基である場合を除く。]
本発明は、更に、上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む有機溶剤溶液をキャストする工程を含むことを特徴とする直上記光学用フィルムの製造方法を提供する。
本発明は、更に、透過光に位相差を与えることを特徴とする上記光学用フィルムを提供する。
本発明は、更に、少なくとも片面に光拡散機能を有することを特徴とする上記光学用フィルムを提供する。
本発明は、更に、少なくとも片面に透明導電性層を有することを特徴とする上記光学用フィルムを提供する。
本発明は、更に、少なくとも片面に反射防止層を有することを特徴とする上記光学用フィルムを提供する。
本発明は、更に、上記光学用フィルムからなることを特徴とする偏光板保護フィルムを提供する。
本発明は、更に、上記光学用フィルムを有することを特徴とする偏光板を提供する。
本発明の光学用フィルムは、従来の熱可塑性ノルボルネン系樹脂系フィルムの有する高透明性、低複屈折性、あるいは延伸配向した場合に得られる透過光の位相差の均一性や安定性等の光学特性、並びに高耐熱性、他材料との密着性や接着性が良好で吸水変形が小さい等の特長を維持したうえに、従来の熱可塑性ノルボルネン系樹脂系フィルムでは得られなかった正の波長分散性を示す。したがって、本発明の光学用フィルムを位相差フィルムとして使用すると、400〜800nmの波長領域において一定の位相差を示すλ板を一枚の位相差フィルムで実現できる。また、光拡散機能、透明導電性、反射防止機能等の機能を有する光学用フィルムとしても有用である。
以下、本発明にについて詳述する。
−−第1の発明−−
[光学用フィルム(1)]
先ず始めに、高分子化合物の複屈折性について定義しておく。正の複屈折性とは、延伸等により高分子化合物の分子鎖を一軸配向した際に延伸方向の屈折率がそれと垂直方向の屈折率より大きくなる性質を示し、また負の複屈折性とは、逆に延伸方向(一軸配向方向)の屈折率の方がそれと垂直方向の屈折率よりも小さくなる性質を示す。すなわち、延伸方向をx軸、それと面内垂直方向をy軸(なお、厚み方向をz軸)とし、x軸方向の屈折率をNx、Y軸方向の屈折率をNyとすると、
△N=Nx−Ny>0 : 正の複屈折性
△N=Nx−Ny<0 : 負の複屈折性
となる。
因みに、正の複屈折性を示す高分子化合物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリカーボネート等が挙げられる。一方、負の複屈折性を示す高分子化合物としては、ポリメチルメタクリレートやポリスチレン等が挙げられる。
また、位相差(レターデーション:Retardation):Reは、下記式:
Re=(Nx−Ny)×d
=△N×d
[ここで、dは光路長を示す。]
で定義される値であり、複屈折性の正負に対応して位相差は正負の値となる。
一般に知られている高分子化合物の場合、複屈折性の正負に拘わらず、位相差は透過する光の波長が長くなるに従ってその絶対値が小さくなること(上記の定義でいう「負の波長依存性」)が知られている。ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の代表的なポリマーはいずれもこのような性質を示す。例えば、波長550nmでの位相差Re(550)を基準にして波長400〜800nmの範囲の任意の波長:λにおける位相差を調べると、550nmより短い波長の範囲ではいずれもRe(λ)/Re(550)は1以上となり、また550より長い波長の範
囲ではいずれもRe(λ)/Re(550)は1以下となる。
本発明者らは、波長400〜800nmの範囲において、波長が短いほど位相差の絶対値が小さくなる波長依存性(正の波長依存性)を示す光学用フィルムを提供することを課題とし、多大なる努力を持って鋭意検討を行ったところ、おどろくべき事に、正の複屈折性を示す構造単位と負の複屈折性を示す構造単位とからなるノルボルネン系開環共重合体において、複屈折性の加成性が近似的に成立する、即ち、共重合体の示す複屈折性がその構造単位の複屈折性(△N)を足し合わせた値と相関していることを見出し、共重合体を形成する両構造単位の複屈折の絶対値の大小関係及び両構造単位の複屈折の波長依存性:△N(λ)/△N(800)の大小関係が下記式の全てを満たすようにすると上記課題を達成しうることを見出し本発明に至った。
すなわち、本件第1の発明は、波長400〜800nmにおいて、正の複屈折性を示す構造単位(I)と負の複屈折性を示す構造単位(II)とからなり、構造単位(I)のみからなる重合体又は構造単位(II)のみからなる重合体を同一条件で一軸延伸した場合の任意の波長:λにおけるx軸方向の屈折率:Nx(λ)とy軸方向の屈折率:Ny(λ)の差、すなわち、Nx(λ)−Ny(λ)をそれぞれ△NI(λ)及び△NII(λ)としたとき

△NI(λ)+△NII(λ)>0
△NI(λ)−△NI(800)<△NII(800)−△NII(λ)
[ここで、△NI(800)及び△NII(800)は、波長800nmにおけるx軸方向とy軸方向
の屈折率の差を示す。なお、x軸は延伸方向、y軸はx軸に対して面内垂直方向を示す。]
である熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む光学用フィルムに係るものである。
構造単位の複屈折性の正負を調べる方法としては、各構造単位のみからなる重合体を一軸延伸して複屈折を測定し確認する方法やCAC(Computer Aided Chemistry)、例えば、市販の半経験的分子軌道法プログラム「MOPAC97」等を利用し、該構造単位の主鎖方向と側鎖方向の屈折率を計算してその大小を比較する方法等が挙げられる。
また、構造単位の複屈折の絶対値の大小については、以下の方法から求めることができる。すなわち、本発明の共重合体の正の複屈折性を示す構造単位のみ、又は負の複屈折性を示す構造単位のみからなる重合体からなるフィルムを、同一条件下[延伸速度:同一速度、延伸倍率:同一倍率、温度:重合体のガラス転移温度(Tg)+同一温度]で一軸延伸し、発生した複屈折を調べることにより、構造単位の複屈折の絶対値の大小を知ることができる。
さらに、構造単位の複屈折の波長依存性の大小については、以下の方法から求めることができる。すなわち、本発明の共重合体の正の複屈折性を示す構造単位のみ、又は負の複屈折性を示す構造単位のみからなる重合体からなるフィルムを、同一条件下[延伸速度:同一速度、延伸倍率:同一倍率、温度:重合体のガラス転移温度(Tg)+同一温度]で一軸延伸し、発生した複屈折を複数の光線波長を用いて測定して調べる方法ことにより、構造単位の複屈折の波長依存性の大小を知ることができる。具体的には、波長400〜800nmの範囲において複数の波長(例えば、450nm、550nm、650nm、750nm等)における複屈折を測定し、Cauchyの分散式やSellmeierの分散式を用い、そ
の他の光線波長における位相差を計算することで、複屈折の波長依存性の大小を知ることができる。
本発明者らは、また、例えば下記の特定の構造を有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含むフィルムが、上記課題を達成し得ることを見出した。
−−第2の発明−−
[光学用フィルム(2)]
<熱可塑性ノルボルネン系樹脂>
本発明の光学用フィルム(2)に用いられる重合体、即ち、熱可塑性ノルボルネン系樹脂(以下、「本発明の樹脂」ということがある。)は、下記一般式(1)で表される構造単位aと下記一般式(2)で表される構造単位bを含む共重合体であり、さらに必要に応じて他の構造単位を含むことは任意である。
Figure 0004743213
[式中、X及びR1〜R4は、前記のとおりであり、R1〜R4のうち少なくとも1つは、下記一般式(1−1)及び/又は下記一般式(1−2)で表される基である。nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、好ましくは0〜3、更に好ましくは0〜2、特に好ましくは0である。]
Figure 0004743213
Figure 0004743213
〔一般式(1−1)及び一般式(1−2)において、R5〜R14、Z、RA、RB、p及びqは前記のとおりである。sは0又は1以上の整数であり、好ましくは0〜3、更に好ましくは0〜2、特に好ましくは0である。〕
Figure 0004743213
[式中、X及びR1〜R4は、前記のとおりである。tは0又は1であり、uは0又は1以上の整数であり、好ましくは0〜3、更に好ましくは0〜2、特に好ましくは1である。但し、式(2)においてR1〜R4が、上記一般式(1−1)又は上記一般式(1−2)で表わさ
れる基である場合を除く。]
ここで、上記一般式(1)、一般式(1−1)、一般式(1−2)及び一般式(2)において、R1〜R14、Z、RA及びRBは、水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ
又はケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;又は極性基を表すが、これらの原子及び基について説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族基等が挙げられる。これらの炭化水素基は置換されていてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、フェニルスルホニル基等が挙げられる。
また、上記の置換又は非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば炭素原子数
1〜10の2価の炭化水素基(例えば、−(CH2)m−(mは1〜10の整数)で表されるアル
キレン基);酸素、窒素、イオウ又はケイ素を含む連結基(例えば、カルボニル基(−CO
−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、スルホニル基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R2)−(式中、Rはメチル、エチル等の
アルキル基);あるいはこれらの2種以上が組合さって連なったものが挙げられる。
極性基としては、例えば、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド環含有基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル含有基、及びカルボキシル基などあげられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等があげられ;アシルオキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基があげられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等があげられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等があげられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等があげられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等があげられ;アミノ基としては第1級アミノ基があげられ、アルコキシシリル基としては例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等があげられる。
本発明の光学用フィルムに用いられる共重合体、すなわち熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、前記一般式(1)で表される構造単位a及び前記一般式(2)で表される構造単位bを必須の構造単位として含む共重合体であるが、該共重合体は、下記一般式(3)で表される1種以上の単量体(以下、「特定単量体A」という。)と下記一般式(4)で表される1種以上の単量体(以下、「特定単量体B」という。)を含む単量体混合物を開環共重合して得ることができる。
Figure 0004743213
[式中、R1〜R4は一般式(1)に関して定義のとおりであり、R1〜R4のうち少なくとも1つは前記一般式(1−1)及び/又は前記一般式(1−2)で表される基である。また、vは0又は1であり、wは0又は1以上の整数であり、好ましくは0〜3、更に好ましくは0〜2、特に好ましくは0である。]
Figure 0004743213
[式中、R1〜R4は一般式(1)に関しての定義のとおりである。但し、前記一般式(1−1)又は前記一般式(1−2)で表される基である場合を除く。また、xは0又は1であり、yは0又は1以上の整数であり、好ましくは0〜3、更に好ましくは0〜2、特に
好ましくは1である。]
構造単位aの含有量は、本発明の樹脂中に95〜5重量%、好ましくは90〜10重量%、さらに好ましくは80〜20重量%である。構造単位aの含有量が5重量%以下の場合、正の波長依存性を示す光学用フィルムが得られないことがある。また、構造単位aの含有量が95重量%以上の場合も、正の波長依存性を示す光学用フィルムが得られないことがある。
本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂のより具体的な例としては、下記〈1〉〜〈3〉に示す重合体を挙げることができる。
〈1〉 特定単量体Aと特定単量体Bとの開環共重合体。
〈2〉 特定単量体Aと特定単量体Bとその他の共重合性単量体との開環共重合体。
〈3〉 〈1〉〜〈2〉の開環共重合体の水素添加物。
<特定単量体A>
以下に特定単量体Aについて具体的な例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
5−ベンゾイルオキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ベンゾイルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ビフェニルカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(3−ビフェニルカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(3−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−フルオレンカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−フルオレンカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−フルオレンカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−フルオレンカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−アントラセンカルボニルオキシ)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(9−アントラセンカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−ベンゾイルオキシ−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−ベンゾイルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(1−ナフチルカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ナフチルカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−(3−ビフェニルカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(3−ビフェニルカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−(2−ビフェニルカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ビフェニルカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−(9−フルオレンカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(9−フルオレンカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−(2−フルオレンカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2−フルオレンカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−(9−アントラセンカルボニルオキシ)−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(9−アントラセンカルボニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<特定単量体B>
特定単量体Bの具体的な例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−イソプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n-オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−フェニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−アミノメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリプロポキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリブトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,
5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイ
コセン、
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘン
エイコセン等。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの単量体Bのうち、一般式(4)において、x=0及びy=1である特定単量体Bは、得られる重合体の耐熱性と靱性のバランスの点で好ましい。すなわち、xが2以上若しくはyが1の特定単量体Bを用いると、得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が高くなり耐熱性が向上する傾向があり、好ましい場合もあるが、靱性が低下する傾向があり、フィルムとした時に加工あるいは使用時に割れたり破断したりしやすくなる問題が生じる場合がある。
また、分子内に少なくとも1つ極性基を有する特定単量体Bを使用することが好ましい。すなわち、上記一般式(4)中、R1〜R4のうち任意の3つが水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、残りの1つが炭化水素基以外の極性基であるものが、他の素材との密着性及び接着性を高めるので好ましい。
さらに、該極性基が一般式(5):
−(CH2zCOOR15 (5)
〔ここで、zは通常0〜5の整数であり、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0である。R15は一価の有機基である。〕
で表される極性基である特定単量体Bは、得られる重合体のガラス転移温度と吸水性を制御しやすい点で好ましい。一般式(5)においてR15で表される一価の有機基としては、
例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニリル基等のアリール基;この他にもジフェニルスルホン、テトラヒドロフルオレン等のフルオレン類等の芳香環やフラン環、イミド環等の複素環を有する一価の基等が挙げられる。また、一般式(5)において、zは上述のように通常0〜5であるが、zの値が小さいものほど得られる重合体のガラス転移温度が高くなるので好ましく、特にzが0である特定単量体Bは、その合成が容易である点で好ましい。
さらに、上記一般式(4)において、一般式(5)で表される極性基が結合した炭素原
子にアルキル基が結合していることが、得られる重合体の耐熱性と吸水性のバランスを図る上で好ましい。当該アルキル基の炭素原子数は1〜5であることが好ましく、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
上記特定単量体Bの具体例の中から挙げるならば、特に、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセンが、ガラス転移温
度を高め、吸水による変形等の悪影響を殆ど受けずかつ他材料との密着性や接着性が良好となる程度の吸水性を維持できるので好ましい。
重合体中の極性基の含有量は、所望する機能等により決定されるものであり特に限定はされないが、全構造単位中に極性基を有する構造単位が、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上含まれる。全ての構造単位が極性基を有していてもよい。
極性基の含有量は、特定単量体Aと特定単量体B(あるいは下記の「他の共重合性単量体」)との共重合比率や共重合性単量体の種類を適宜選択することで調整できる。
<他の共重合性単量体>
特定単量体A及び特定単量体Bとともに、共重合させることができる他の共重合性単量体としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン、ジシクロペンタジエンなどのシクロ
オレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素原子数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。
さらにポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下で、特定単量体Aと特定単量体B(及び他の共重合性単量体)を重合させてもよい。そして、この場合に得られる共重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
<重合条件>
1種以上の特定単量体Aと、特定単量体B及び/又はその他の共重合性単量体との開環重合反応の条件を説明する。
・触媒:
該開環重合反応はメタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、Mo及びReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えばMg、Caなど)、IIB族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、IIIB族元素(例えばB、Alなど)、IVA族元素(例えばTi、Zrなど)あるいはIVB族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。またこの場合に触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が
添加されたものであってもよい。
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6
MoCl5、ReOCl3など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlC
l、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHな
ど特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、更に特開平1−240517号公報に記載の化合物を使用することができる。
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体A〜D(以下、特定単量体A〜Dを総称する場合は、単に「特定単量体」という。)とのモル比で、(a)成分:特定単量体が、通常1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範囲とされる。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲とされる。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲とされる。
・分子量調節剤:
重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。
好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類及びスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
・開環重合反応用溶媒:
重合反応において用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、上記芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、溶媒:特定単量体(重量比)が、通常1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
・重合体の水素添加:
以上のようにして得られる重合体は、そのまま本発明の樹脂として使用することもできるが、残留するオレフィン性不飽和結合を水素添加して使用することが好ましい。
水素添加反応は、通常の方法、すなわち、重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒及び均一系触媒が公知である。
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属類を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。
これらの水素添加触媒は、重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
水素添加することにより得られる水素添加重合体は優れた熱安定性を有するものとなり、フィルム製膜時及び、延伸加工時や製品としての使用時の加熱によってはその特性が劣化しにくくなる。オレフィン性不飽和結合の水素添加率は、通常50%以上、好ましく70%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上である。
なお、特定単量体Aに由来する構造単位a中の芳香環は、上記水素添加反応によっても実質的に水素添加されないことが必要である。そのような水素添加反応は、上記通常のオレフィン性化合物の水素添加反応の条件を用いれば実施可能であるが、水素ガス圧や反応温度を上記範囲の中で低めに設定する、あるいは、水素添加触媒の種類や添加量を調整する等条件調整をする必要がある場合もある。
また、その他の共重合性単量体が芳香環を含む置換基を有し係る単量体に由来する構造単位が芳香環を含む場合も、水素添加によって芳香環の不飽和結合が実質的に水素添加されない条件を選択することが望ましい。
<熱可塑性ノルボルネン系樹脂の特性>
本発明の樹脂の30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は、0.2〜5
dl/gであることが好ましい。さらに好ましくは0.3〜4dl/g、特に好ましくは0.5〜3dl/gである。5dl/gをこえると、溶液粘度が高くなりすぎ、加工性が悪化し好ましくなく、0.2dl/g未満であるとフィルム強度が低下する。
本発明の樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常は8,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは20,000〜10
0,000、特に好ましくは30,000〜100,000、また、重量平均分子量(Mw)は、通常は20,000〜3,000,000、好ましくは30,000〜1,000,000、さらに好ましくは40,000〜500,000、特に好ましくは40,000〜300,000の範囲である。Mw、Mnが上記範囲より大きい場合、溶液粘度が高くなりすぎて加工性が悪化することがあり、上記範囲より小さい場合、フィルムの強度が低下することがある。
また、分子量分布は、上記のMw/Mnが通常1.5〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2.5〜5、特に好ましくは2.5〜4.5である。Mw/Mnが上記範囲より大きい場合、低分子量の成分が多くなりすぎ、フィルムを製造した場合にフィルムの表面に係る低分子量成分がブリードしてべとつきが発生することがある。一方、上記範囲より小さい場合、フィルムの強度、特に靱性が低下することがある。
本発明の樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常は80〜350℃、好ましくは100〜250℃である。Tgが80℃未満の場合、熱変形温度が低くなり、得られるフィルムの耐熱性に問題が生じる場合がある。一方、Tgが350℃以上の場合、得られるフィルムを延伸加工等加熱して加工する場合の加工温度が高くなりすぎて、フィルムが熱劣化する問題が生じる場合がある。
本発明の樹脂の23℃における飽和吸水率は、通常は0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜0.7重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。飽和吸水率がこの範囲内であると、各種光学特性、例えば透明性、位相差や位相差の均一性あるいは寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持され、他材料との密着性や接着性に優れるため使用途中で剥離などが発生せず、また、酸化防止剤等の添加物との相溶性も良好であるため、添加の自由度が大きくなる。
飽和吸水率が0.05重量%未満であると、他材料との密着性や接着性が乏しくなり使用中に剥離を生じやすくなる。また、酸化防止剤等の添加物の配合に制限が生じる。一方、1重量%を超えると、吸水により光学特性の変化や寸法変化を起こしやすくなる。
なお、上記の飽和吸水率はASTMD570に準拠し、23℃水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められた値である。
本発明の樹脂のSP値(溶解度パラメーター)は、好ましくは10〜30(MPa1/2
)、さらに好ましくは12〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)である。SP値を本範囲にすることで、一般的な汎用溶剤に良好に溶解できるとともにフィルム製造時に安定して製造でき、得られるフィルムの特性も均一でさらに良好な接着性や、基板との密着性を得ることもでき、適度な吸水率をコントロールすることが可能となる。
<添加物>
本発明の樹脂には、透明性・耐熱性を損なわない範囲で公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合しても良い。
また、本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂には、酸化防止剤等の添加剤などを添加しても良く、かかる酸化防止剤等の添加剤としては、例えば次の化合物が挙げられる。
酸化防止剤:
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5
−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−(β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト;
紫外線吸収剤:
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
これらの酸化防止剤等の添加量は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、通常、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。
さらに、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
<光学用フィルム>
本発明の光学用フィルムは、上記の本発明の樹脂を溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルム若しくはシートとすることができる。このうち、膜厚の均一性及び表面平滑性が良好になる点から溶剤キャスト法が好ましい。
溶剤キャスト法としては、例えば、本発明の樹脂を溶媒に溶解又は分散させて適度の濃度の液にし、適当なキャリヤー上に注ぐか又は塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
本発明の樹脂を溶媒に溶解又は分散させる際には、該樹脂の濃度を、通常は0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%にする。該樹脂の濃度を上記未満にすると、フィルムの厚みを確保することが困難になる、また、溶媒蒸発にともなう発泡等によりフィルムの表面平滑性が得にくくなる等の問題が生じる。一方、上記を超えた濃度にすると溶液粘度が高くなりすぎて得られる光学用フィルムの厚みや表面が均一になりにくくなるために好ましくない。
また、室温での上記溶液の粘度は、通常は1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、さらに好ましくは100〜50,000(mPa・s)、特に好ましくは1,000〜40,000(mPa・s)である。
使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。
また、上記以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が通常10〜30(MPa1/2
、好ましくは10〜25(MPa1/2)、さらに好ましくは15〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲の溶媒を使用すれば、表面均一性と光学特
性の良好な光学用フィルムを得ることができる。
上記溶媒は単独であるいは2種以上併用して使用することができる。溶媒を2種以上併用する場合には、混合物としてのSP値の範囲を上記範囲内とすることが好ましい。このとき、混合物としてのSP値の値は、その重量比から求めることができ、例えば二種の混合物の場合は、各溶媒の重量分率をW1,W2、また、SP値をSP1,SP2とすると混合溶媒のSP値は下記式:
SP値=W1・SP1+W2・SP2
により計算した値として求めることができる。
上記の混合系を使用する際、本発明の樹脂の良溶媒と貧溶媒を組み合わせると、光拡散機能を有する光学用フィルムを得ることができる。具体的には、樹脂、良溶媒及び貧溶媒のSP値をそれぞれ(SP値:樹脂)、(SP値:良溶媒)及び(SP値:貧溶媒)と規定すると、(SP値:樹脂)と(SP値:良溶媒)の差が好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下の範囲であり、かつ、(SP値:樹脂)と(SP値:貧溶媒)の差が好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは9以上であり、(SP値:良溶媒)と(SP値:貧溶媒)の差が好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上とすることにより、得られる光学用フィルムに光拡散機能を付与することができる。
なお、貧溶媒の混合溶媒中にしめる割合は、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。また、貧溶媒の沸点と良溶媒の沸点の差は好ましくは1℃以上、さらに好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上であり、特に貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高いことが好ましい。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒で溶解する場合の温度は、室温でも高温でもよい。十分に撹拌することにより均一な溶液が得られる。なお、必要に応じて着色する場合には、溶液に染料、顔料等の着色剤を適宜添加することもできる。
また、光学用フィルムの表面平滑性を向上させるためにレベリング剤を添加してもよい。一般的なレベリング剤であれば何れも使用できるが、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが使用できる。
本発明の光学用フィルムを溶剤キャスト法により製造する方法としては、上記溶液をダイスやコーターを使用して金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどの基材の上に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離する方法が一般に挙げられる。また、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、ディッピングなどの手段を用いて,樹脂溶液を基材に塗布し、その後溶剤を乾燥・除去して基材よりフィルムを剥離することにより製造することもできる。なお、塗布の繰り返しにより厚みや表面平滑性等を制御してもよい。
また、基材としてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーテイングやラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
また、上記溶液を塗布する基材、例えば金属ドラム、スチールベルト、ポリエステルフィルム等の表面にサンドマット処理やエンボス処理を施したものを使用すると、フィルムの表面に上記処理による凹凸が転写して、本発明の光拡散機能を有する光学用フィルムを
製造することができる。
上記のようにして光拡散機能を付与する場合は、低波長から高波長までの光の透過率を安定して維持する特性から、一定の大きさで凹凸を付けることが好ましい。この時の凹凸の形状については、凹凸を付ける手法に左右されるために特に制約は無いが、通常は表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra)が0.001〜100μm、好ましくは0.005〜10μm、さらに好ましくは0.01〜1μm、特に好ましくは0.05〜1μmである。Raの値が0.001μm未満あるいは100μmを超えると、良好な光拡散機能が期待できにくい。なお、フレネルレンズのようなレンズ機能を付与する場合は、Raの値が100μmを超えることがあってもよい。
さらに、本発明の樹脂の溶液に該樹脂と非相溶の樹脂やフィラーを添加し均一化したものをキャストする方法でも、本発明の光拡散機能を有する光学用フィルムを製造することができる。
具体的には、上記非相溶の樹脂を添加する場合には、本発明の樹脂との屈折率差が通常は0.00001以上、好ましくは0.0001以上、さらに好ましくは0.001以上、特に好ましくは0.01以上の樹脂を選択して使用し、また、溶液に混合した後にキャストして乾燥した後に得られるフィルム中の前記相溶性を有しない樹脂の数平均の粒子径範囲が通常は0.01〜1,000μm、好ましくは0.05〜500μm、さらに好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは0.5〜50μmの範囲にすることで、低波長から高波長における光拡散効果を発揮することができる。上記屈折率差が0.00001未満であったり、また、上記粒子径が0.01μm未満であると良好な光拡散機能を付与するのが困難であり、一方、上記粒子径が1,000μmを超えた場合には光線透過率が著しく低下したり、フィルムの厚み精度や表面性に悪影響を及ぼすことがあるために好ましくない。
また、上記非相溶の樹脂の添加量は、要求される光拡散の性能により変化するが、本発明の樹脂100重量部に対し、通常は0.001〜100重量部、好ましくは0.01〜70重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部、特に好ましくは1〜25重量部である。添加量が0.001重量部未満であると、良好な光拡散機能が期待できにくい。また、添加量が100重量部以上になると光線透過率が著しく低下するために好ましくない。
一方、フィラーとしては市販の無機フィラーや熱硬化性樹脂の硬化物を微細化した有機フィラー等を任意に使用することもできる。また、その粒子径及び添加量は、上記非相溶の樹脂を添加する場合と同様である。
上記本発明の樹脂と非相溶の樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、ポリアミドあるいはポリイミドなどを挙げることができる。また、上記フィラーとしては、例えば、金、銀等の金属、SiO2、Ti
2、ZnO2、Al23等の金属酸化物、ガラス、石英などの粒子を挙げることができる。
上記溶剤キャスト法の乾燥(溶剤除去)工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法等で実施できるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴い気泡が発生すると、フィルムの特性を著しく低下させるので、これを避けるために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程での温度あるいは風量を制御することが好ましい。
また、光学用フィルム中の残留溶媒量は、通常は10重量%以下、好ましくは5重量%
以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、残留溶媒量が10重量%以上であると、実際に該光学用フィルムを使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりTgが低くなり、耐熱性も低下することから好ましくない。
なお、後述する延伸工程を好適に行うためには、上記残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節する必要がある場合がある。具体的には、延伸配向時の位相差を安定して均一に発現させるために、残留溶媒量を通常は10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。溶媒を微量残留させることで、延伸加工が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
本発明の光学用フィルムの厚さは、通常は0.1〜3,000μm、好ましくは0.1〜1,000μm、さらに好ましくは1〜500μm、最も好ましくは5〜300μmである。0.1μm未満の厚みの場合実質的にハンドリングが困難となる。一方、3,000μm以上の場合、ロール状に巻き取ることが困難になる。
本発明の光学用フィルムの厚み分布は、通常は平均値に対して±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下であることが望ましい。かかる厚み制御を実施することにより、延伸配向した際の透過光の位相差ムラを防ぐことができる。
−−第3の発明等−
<透過光に位相差を与える光学用フィルム>
本発明の透過光に位相差を与える光学用フィルム(以下、「位相差フィルム」という。)は、上記方法によって得た光学用フィルムを延伸加工して得る。具体的には、公知の一軸延伸法あるいは二軸延伸法により製造することができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、周遠の異なるロールを利用する縦一軸延伸法等あるいは横一軸と縦一軸を組合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
延伸加工温度は、特に限定されるものではないが、本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、通常はTg±30℃、好ましくはTg±15℃、さらに好ましくはTg−5〜Tg+15℃の範囲である。前記範囲内とすることで、位相差ムラの発生を抑えることが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
延伸倍率は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常はは1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、さらに好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が10倍以上の場合、位相差の制御が困難になる場合がある。
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、さらに好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
延伸加工を施さない本発明の光学用フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
また、本発明の位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、本発明中の特定単量体の選択やその他の共重合性単量体の選択に加え、キャスト方法や延伸方法の条件を調整することも有力な手段である。
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸倍率、延伸温度あるいはフィルムの厚さ等により制御することができる。例えば、延伸前のフィルムの厚さが同じである場合、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。一方、延伸倍率が同じである場合、延伸前のフィルムの厚さが厚いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚さを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、上記延伸加工温度範囲においては、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
上記のように延伸して得た位相差フィルムが透過光に与える位相差の値は、その用途により決定されるものであり特に限定はされないが、液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはレーザー光学系の波長板に使用する場合は、通常は1〜10,000nm、好ましくは10〜2,000nm、さらに好ましくは15〜1,000nmである。
また、位相差フィルムを透過した光の位相差は均一性が高いことが好ましく、波長550nmにおける位相差のバラツキは通常は±20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは±5%以下である。位相差のバラツキが±20%を超えると、液晶表示素子等に用いた場合、色ムラ等が発生し、ディスプレイ本体の性能が悪化する。
さらに、波長550nmでの位相差Re(550)と波長400nmでの位相差Re(400)との比:Re(400)/Re(550)が1.0〜0.5、好ましくは0.8〜0.6、さらに好ましくは0.75〜0.65の範囲にあり、かつ前記位相差Re(550)と波長800nmでの位相差Re(800)の比:Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0、好ましくは1.5〜1.3、さらに好ましくは1.5〜1.4の範囲にあると、ある波長λでの位相差をRe(λ)としたとき、400〜800nmの全波長領域で、Re(λ)/λの値をほぼ一定とすることが可能となる。このRe(λ)/λの値を、400〜800nmの全波長領域で±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内に制御すると、例えば、当該波長領域全てにおいて位相差が1/4λあるいは1/2λであるような広帯域のλ板を得ることができる。すなわち、上記
Re(λ)/λの値が、400〜800nmの全波長領域で、0.20〜0.30、好ましくは0.22〜0.28、さらに好ましくは0.24〜0.26である場合、当該波長領域全域で、円偏光と直線偏光とを相互変換する1/4λ板としての機能を有することになり、また、同様に上記Re(λ)/λの値が、0.40〜0.60、好ましくは0.45〜0.55、さらに好ましくは0.48〜0.52である場合、当該波長領域全域で、直線偏光の偏光面を90度回転させる1/2λ板としての機能を有することになり、非常に有用である。
本発明の位相差フィルムは単独又は透明基板等に貼り合わせて位相差板として用いることができる。また、上記位相差板を他のフィルム、シート、基板に積層して使用することができる。積層する場合には、粘着剤や接着剤を用いることができる。これらの粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものが好ましく、具体例としては天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル系、変性ポリオレフィン系、及びこれらにイソシアナートなどの硬化剤を添加した硬化型粘着剤、ポリウレタン系樹脂溶液とポリイソシアナート系樹脂溶液を混合するドライラミネート用接着剤、合成ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
また、上記の位相差フィルム及び位相差板は、他のフィルムシート、基板などとの積層の作業性を向上させるために、あらかじめ、粘着剤層、又は接着剤層を積層することができる。積層する場合には、粘着剤や接着剤としては前述のような粘着剤あるいは接着剤を用いることができる。
<透明導電層を有する光学用フィルム>
本発明の光学用フィルムには、その少なくとも片面に透明導電層を積層することができる。透明導電層を形成するための材料としては、Sn、In、Ti、Pb、Au、Pt、Ag等の金属、又はそれらの酸化物が一般的に使用され、金属単体を基板上に形成したときは、必要に応じてその後酸化することもできる。当初から酸化物層として付着形成させる方法もあるが、最初は金属単体又は低級酸化物の形態で被膜を形成し、しかるのち、加熱酸化、陽極酸化あるいは液相酸化等の酸化処理を施して透明化することもできる。これらの透明導電層は、他の透明導電層を有するシート、フィルムなどを接着したり、プラズマ重合法、スパッタリング法、真空蒸着法、メッキ、イオンプレーティング法、スプレー法、電解析出法などによって本発明の光学用フィルム上に直接形成される。これらの透明導電膜の厚さは、所望する特性により決定され特に限定はされないが、通常は10〜10,000オングストローム、好ましくは50〜5,000オングストロームである。
本発明の光学用フィルムに直接透明導電層を形成する場合、当該フィルムと透明導電層との間に必要に応じて接着層及びアンカーコート層を形成してもよい。この接着層としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリブタジエン、フェノール樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱樹脂を例示することができる。またアンカーコート層としては、エポキシジアクリレート、ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート等のいわゆるアクリルプレポリマーなどを成分として含むものが用いられる。硬化の方法は公知の手法を用いることができ、例えばUV硬化や熱硬化などが用いられる。
本発明の透明導電層を有する光学用フィルムは、偏光フィルムと組み合わせて、積層体とすることができる。本発明の透明導電層を有する光学用フィルムと偏光フィルムの組み合わせ方法は特に限定されず、偏光膜の両面に保護フィルムが積層されてなる偏光フィルムの少なくとも片面に、本発明の透明導電層を有する光学用フィルムを、その透明導電性層形成面と反対側面上に適当な接着剤あるいは粘着剤を介して積層してもよいし、偏光膜の保護フィルムの代わりに、本発明の透明導電層を有する光学用フィルムを使用し、その透明導電性層形成面と反対側面上に適当な接着剤あるいは粘着剤を介して偏光膜に積層し
てもよい。もちろん、透明導電層を有さない本発明の光学用フィルムを偏光フイルムの保護フィルムとして用いることも可能である。係る場合、本発明の位相差付与性光学用フィルムを保護フィルムとして用いると、保護フィルムが位相差フィルムとしての機能を有するため、偏光フィルムにあらためて位相差フィルムを貼り合わせる必要が無くなる利点がある。
また、本発明の透明導電層を有する光学用フィルムには、必要に応じて酸素や水蒸気の透過を小さくする目的のために、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアルコール等のガスバリア性材料を、少なくともフィルムの一方の面に積層することもできる。さらにフィルムの耐傷性及び耐熱性を向上させる目的で、ガスバリア層の上にハードコート層が積層されていてもよい。ハードコート剤としては、有機シリコン系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの有機ハードコート材料、又は二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料を用いることができる。このうち、有機シリコン系樹脂、アクリル樹脂などのハードコート材料が好ましい。有機シリコン系樹脂の中には、各種官能基を持ったものが使用されるが、エポキシ基を持ったものが好ましい。
<反射防止層を有する光学用フィルム>
本発明の光学用フィルムには、少なくともその片面に反射防止層を積層することができる。反射防止層の形成方法としては、例えば、フッ素系共重合体を含む組成物の溶液をバーコーターやグラビアコーターなどを用いてコーテイングする方法がある。反射防止層の厚みは、通常は0.01〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.5〜20μmである。0.01m未満であると反射防止効果が発揮できず、50μmを超えると塗膜の厚みにムラが生じやすくなり外観などが悪化し好ましくない。
また、本発明の反射防止層を有する光学用フィルムには、公知のハードコート層や防汚層が積層されていてもよい。また、上記の透明導電層が積層されていてもよい。さらに、透過光に位相差を与える機能を有していてもよく、光拡散機能を有していてもよい。
上記のように複数の機能を有することにより、本発明の反射防止層を有する光学用フィルムは、例えば液晶表示素子に用いた場合、反射防止フィルムが位相差フィルム、光拡散フィルム、偏光板保護フィルムあるいは電極基板(透明導電層)の幾つかを兼用することとなり、従来よりもその部品点数を低減することが可能となる。
<用途>
本発明の光学用フィルムは、例えば、携帯電話、ディジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVD等の光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り「重量部」及び「重量%」を意味する。
各種測定方法を以下に示す。
[ガラス転移温度(Tg)]
セイコーインスツルメンツ社製、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気、昇温速度:20℃/分の条件で測定した。
[飽和吸水率]
ASTM D570に準拠し、23℃の水中に1週間サンプルを浸漬し、浸漬前後の重量変化を測定して求めた。
[残留溶媒量]
サンプルを塩化メチレンに溶解し、得られた溶液を島津製作所製:GC−7Aガスクロマトグラフィー装置を用いて分析した。
[全光線透過率、ヘイズ]
スガ試験機社製ヘイズメーター:HGM−2DP型を使用して測定した。
[複屈折、透過光の位相差]
王子計測機器社製KOBRA−21ADH、並びにKOBRA−CCDを用いて複屈折と透過光の位相差測定を行った。なお、測定は、1つの試料につき場所を変えて10回実施し、その平均値を該試料の複屈折及び位相差とした。また、下記式により位相差のバラツキを求めた。
Re(m)/Re(A)×100(%)
Re(m):最大値若しくは最小値と平均値の差の絶対値。
絶対値の大きい方をバラツキの計算に使用。
Re(A):平均値
<単量体合成例>
(1)5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの合成
Figure 0004743213
滴下ロートを取り付けた500 mLフラスコにノルボルネンアルコール(endo体/exo体のモル比が8/1)を28g(253.9 m mol)をはかり取り、系内の窒素置換を行った。これにピリジン41 mL(507.8 m mol)を滴下し、スターラーにてよく攪拌し、溶解させた。次に予め脱水THF(テトラヒドロフラン)200 mLに溶解させた4‐フェニルベンゾイルクロリド 50g(230.8 m mol)を氷冷バスで反応系の温度を4±2℃に保ち、十分に攪拌しながら徐
々に滴下した。滴下終了後、氷冷バス中で1時間攪拌を継続し、その後、室温で1時間攪拌、更に30分還流を行った。室温に冷却後、生成したピリジン塩を濾紙で濾過し、更に反応混合物を十分に蒸留水で水洗いした。減圧、加温して溶媒を除去し、得られた結晶をn‐ヘキサンで再結晶を繰り返し、白色結晶状の5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(単量体)63gを得た。得られた結晶をHPLCで分析した結果、純度は 98%であった。
(2)5−(2−ナフチルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの合成
Figure 0004743213
4‐フェニルベンゾイルクロリドに代えて、2−ナフトイルクロリド 44g(230.8 m mol)用い、反応物をカラム(充填材;Al2O3、展開溶媒;ヘキサン)にて精製した以外は
、実施例1(1)と同様にして、白色固体状の5−(2−ナフチルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 46gを得た。得られた単量体をHPLCにて分
析した結果、純度は 99%であった。
<合成例1>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5 ,17.10]−3−ドデセン(特定単量体B)100部と、5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)150部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン750部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部と、t−ブタノール及びメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh )は0.65dl/gであった。
このようにして得られた開環重合体溶液4,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2 、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(特定の環状ポリオレフィン系樹脂)を得た。
このようにして得られた水素添加重合体(以下、「樹脂(a−1)」という。)について400MHz、1H−NMRを用いてオレフィン性不飽和結合の水素添加率を測定した
ところ99.9%であった。また、特定単量体Aに由来する芳香環は実質的に水素添加されていなかった。
当該樹脂(a−1)についてTgを測定したところ110℃であった。また、当該樹脂(a−1)について、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39,000、重量平均分子量(Mw)は126,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.23であった。また、当該樹脂(a−1)について、23℃における飽和吸水率を測定したところ0.2%であった。また、SP値を測定したところ、17(MPa1/2)であった。また、当該樹脂(a−1)について、30℃のクロロホルム中で固有粘度
(ηinh)を測定したところ0.67dl/gであった。
<合成例2>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5 ,17.10]−
3−ドデセン(特定単量体B)を100部と、5−(2−ナフチルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)を150部を用いた以外は合成例1と同様にしてオレフィン性不飽和結合の水素添加率が99.9%であり、特定単量体Aに由来する芳香環が実質的に水素添加されていない樹脂(b−1)を得た。該樹脂のTgは105℃であった。また、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は33,000、重量平均分子量(Mw)は120,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.64であった。また、当該樹脂(b−1)について、23℃における飽和吸水率を測定したところ、0.2%であった。また、固有粘度(ηinh)を測定した
ところ、0.61dl/gであった。
<比較合成例1>
5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)のみを250部を用いた以外は合成例1と同様にしてオレフィン性不飽和結合の水素添加率が99.9%であり、特定単量体Aに由来する芳香環が実質的に水素添加されていない樹脂(c−1)を得た。該樹脂のTgは100℃であった。また、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は36,000、重量平均分子量(Mw)は142,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.94であった。
<比較合成例2>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5 ,17.10]−3−ドデセン(特定単量体B)のみを250部を用いた以外は合成例1と同様にしてオレフィン性不飽和結合の水素添加率が99.9%の樹脂(d−1)を得た。該樹脂のTgは170℃であった。また、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は38,000、重量平均分子量(Mw)は122,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
<比較合成例3>
5−(2−ナフチルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)のみを250部を用いた以外は合成例1と同様にしてオレフィン性不飽和結合の水素添加率が99.9%であり、特定単量体Aに由来する芳香環が実質的に
水素添加されていない樹脂(e−1)を得た。該樹脂のTgは85℃であった。また、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は40,000、重量平均分子量(Mw)は158,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.95であった。
[実施例1、比較例1]
上記樹脂(a−1)をトルエンに30%濃度になるように溶解し(室温での溶液粘度は30,000mPa・sであった。)、井上金属工業製INVEXラボコーターを用い、アクリル酸系で親水化(易接着)の表面処理した厚さ100μmのPETフィルム(東レ
(株)製、ルミラーU94)に、乾燥後のフィルム厚みが100μmになるように塗布し、これを50℃で一次乾燥の後、90℃で二次乾燥を行った。PETフィルムより剥がした樹脂フィルムを(a−2)とした。得られたフィルムの残留溶媒量は、0.5%であった。
このフィルムをテンター内で、Tg+5℃である115℃に加熱し、延伸速度1000%/分で2.5倍に延伸した後、Tgである110℃の雰囲気下で約1分間この状態を保
持しながら冷却し、室温へとさらに冷却して取り出し位相差フィルム(a−3)を得た。
樹脂(b−1)、(c−1)、(d−1)及び(e−1)を、前記と同様にしてフィルム化して(b−2)、(c−2)、(d−2)及び(e−2)を得るとともに、前記と同様の温度条件(樹脂のTg+5℃)と延伸条件でそれぞれで延伸して位相差フィルム(b−3)、(c−3)、(d−3)及び(e−3)を得た。
また、フィルム(c−2)及び(d−2)について、加熱温度をTg+10℃、延伸速度を400%/分、延伸倍率を1.3倍にしたこと以外は上記と同様にして位相差フィルム(c−3’)(d−3’)を得た。
こうして得たフィルム(a−2)、(a−3)、(b−2)、(b−3)、(c−2)、(c−3’)、(d−2)、(d−3’)、(e−2)及び(e−3)について、全光線透過率、ヘイズ、透過光の位相差測定を行った。結果を表1及び表2に示した。
また、同一条件で延伸することにより得られた(c−3)、(d−3)及び(e−3)の複屈折(Nx−Nyの値)を表3に示した。
さらに、(a−3)、(b−3)、(c−3)、(d−3)及び(e−3)について、透過光波長550nmを基準とした透過光の位相差の波長依存性(Re(λ)/Re(550))を測定した結果を図1に示した。
また、(a−3)、(b−3)、(c−3’)及び(d−3’)について、波長400〜800nmにおける透過光の位相差の波長依存性(Re(λ)/λ)を測定した結果を図2に示した。
Figure 0004743213
*)「透過光の位相差」は表中の波長における絶対値。
Figure 0004743213
*)「位相差のハ゛ラツキ」は波長550nmで測定。
「透過光の位相差」は表中の波長における値(絶対値ではない。)。
Figure 0004743213
*)「複屈折」は表中の波長における値
図1から明らかなように、特定単量体Aを含む単量体混合物を重合して得られた樹脂からなる本発明の位相差フィルムは正の波長依存性を示したのに対して、特定単量体Aのみを重合し、又は特定単量体Aが存在しない条件で重合して得られた樹脂からなる位相差フィルムは正の波長依存性を示さなかった。
また、図2から明らかなように、特定単量体Aを含む単量体混合物を重合して得られた樹脂からなる本発明の位相差フィルムは、Re(λ)/λの値が400〜800nmの波長領域においてほぼ一定の値(0.215〜0.247)を示し、当該波長領域全てにおいて1/4λ板としての作用が期待できるのに対して、特定単量体Aのみ、若しくは特定単量体Aが存在しない条件で重合して得られた樹脂からなる位相差フィルムは、波長550nmにおいては絶対値で約0.25を示しても、波長が550nmからずれるにしたがって大きく0.25からずれており、当該波長領域の一部でしか1/4λ板としての作用が期待できない。
更に、上記表3のデータから、上記<合成例1>に係る共重合体(a−1)から得られたフィルムを上記条件で延伸した位相差フィルム(a−3)及び上記<合成例2>に係る共重合体(b−1)から得られたフィルムを上記条件で延伸した位相差フィルム(b−3)は、上記第1の発明に係る光学用フィルム(1)の要件:
△NI(λ)+△NII(λ)>0、及び
△NI(λ)−△NI(800)<△NII(800)−△NII(λ)
を満足する光学用フィルムであることがわかる。
すなわち、位相差フィルム(a−3)については、8−メチル−8−メトキシカルボニ
ルテトラシクロ[4.4.0.12.5,17.10]−3−ドデセン(特定単量体B)のみの
重合体(d−1)<正の複屈折性を示す構造単位(I)に該当>から得られたフィルムを上記条件で延伸した位相差フィルム(d−3)、及び5−(4−ビフェニルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)のみの重合体(c−1)<負の複屈折性を示す構造単位(II)に該当>から得られたフィルムを上記条件で延伸した位相差フィルム(c−3)に係る各△NI(400)、△NI(550)及び△NI(800)の値に基づき、次のとおり確認できる。
△NI(400):0.0083+△NII(400):−0.0039>0
△NI(550):0.0082+△NII(550):−0.0027>0
△NI(800):0.0081+△NII(800):−0.0021>0
△NI(400):0.0083−△NI(800):0.0081(=0.0002)<△NII(800):−0.0021−△
II(400):−0.0039(=0.0018)
△NI(550):0.0082−△NI(800):0.0081(=0.0001)<△NII(800):−0.0021−△
II(550):−0.0027(=0.0006)
また、同様に、位相差フィルム(b−3)についても、上記位相差フィルム(d−3)、及び5−(2−ナフチルカルボニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(特定単量体A)のみの重合体(e−1)<負の複屈折性を示す構造単位(II)に該当>から得られたフィルムを上記条件で延伸した位相差フィルム(e−3)に係る各△NI(400)、△NI(550)及び△NI(800)の値に基づき、次のとおり確認できる。
△NI(400):0.0083+△NII(400):−0.0037>0
△NI(550):0.0082+△NII(550):−0.0028>0
△NI(800):0.0081+△NII(800):−0.0019>0
△NI(400):0.0083−△NI(800):0.0081(=0.0002)<△NII(800):−0.0019−△
II(400):−0.0037(=0.0018)
△NI(550):0.0082−△NI(800):0.0081(=0.0001)<△NII(800):−0.0019−△
II(550):−0.0028(=0.0009)
[実施例2]
フィルム(a−2)にサンドマット処理を行いヘイズ55%、全光線透過率93%の光拡散機能を有する光学用フィルム(a−4)を得た。当該フィルムを80℃、90%相対湿度の雰囲気に500時間暴露し、ヘイズと全光線透過率を測定したが、初期値からの変化は認められなかった。
フィルム(b−2)及び(c−2)についても同様の処理を行い、ヘイズ55%、全光線透過率93%の光拡散機能を有する光学用フィルム(b−4)及び(c−4)を得た。フィルム(b−4)及び(c−4)についてもフィルム(a−4)と同条件で耐久性を評価したが、いずれも初期値からの変化は認められなかった。
[実施例3]
フィルム(a−3)の片面に酸化インジウム/酸化スズ(重量比95:5)からなるターゲットを用いて透明導電膜をスパッタリング法により形成させ、透明導電フィルム(a−5)を得た。この透明導電フィルムの全光線透過率は85%を超えて良好であり、目視で観察した外観(傷の有無、フィルムのそり具合)も良好であった。また、80℃、90%相対湿度の雰囲気に500時間暴露し、全光線透過率の測定と目視観察による外観変化の有無確認を行った。その結果、全光線透過率は85%を超えて良好であり、また、外観においても傷やそり、うねりの発生は認められず良好であった。
[実施例4]
フィルム(a−3)の片面にJSR(株)製オプスターJN7212を乾燥膜厚0.1
μmになるようにコートし、反射防止層を形成したフィルム(a−6)を得た。本フィルムは反射率が1%以下と良好な反射防止特性を示した。
[実施例5]
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素5g、ヨウ化カリウム250g
、ほう酸10g、水1,000gからなる40℃の浴に浸漬しながら約5分間で4倍まで
一軸延伸して得た偏光膜の表面に、n−ブチルアクリレート90重量%、エチルアクリレート7重量%、アクリル酸3重量%からなるアクリル系樹脂100部とトリレンジイソシアナート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物の75重量%酢酸エチル溶液2部からなる架橋剤を混合して得られた粘着剤をもちいて、フィルム(a−2)を両面に積層して偏光フィルム(a−7)を得た。該偏光フィルムを80℃、90%相対湿度の雰囲気に500時間暴露しその外観変化を目視で観察したところ、うねりや反り等の外観異常は認められず、また、偏光度も90%を超えた特性を維持しており良好なことが分かった。
[実施例6]
トルエンの代わりに、沸点40℃、SP値19.2(MPa1/2)の塩化メチレン(良
溶媒)と沸点65℃、SP値29.7( MPa1/2)のメタノール(貧溶媒)とをメタノールの溶媒中に占める割合を10重量%とした混合溶媒を使用し、実施例1と同様にして樹脂(a−1)のフィルムを作成し、光拡散層を有するフィルム(a−8)を得た。該フィルムは、ヘイズが40%であり全光線透過率が93%であった。該フィルムを80℃、90%相対湿度の雰囲気に500時間暴露し、ヘイズと全光線透過率を測定したが、初期値からの変化は認められなかった。
[実施例7]
室温での屈折率が1.515(d線)である樹脂(a−1)100部に対し、非相溶系で室温での屈折率が1.492(室温:d線)のPMMAを10部加えた他は実施例1と同様にしてフィルム(a−9)を得た。該フィルム中でのPMMAの平均分散粒子径(TEMにより測定)は20μmであり、ヘイズは20%、全光線透過率は92%であった。
該フィルムを80℃、90%相対湿度の雰囲気に500時間暴露し、ヘイズと全光線透過率を測定したが、初期値からの変化は認められなかった。
[実施例8]
PETフィルムとして表面凹凸の付いたマット処理済みのPETフィルムを用いた他は実施例1と同様にして、樹脂(a−1)フィルムのフィルムを作成し、光拡散層を有するフィルム(a−10)を得た。該フィルムは、ヘイズが10%、全光線透過率が93%であった。該フィルムを80℃、90%相対湿度の雰囲気に500時間暴露し、ヘイズと全光線透過率を測定したが、初期値からの変化は認められなかった。
実施例1・比較例1で得られた位相差フィルム(a−3)、(b−3)、(c−3)、(d−3)及び(e−3)の透過光波長550nmを基準とした透過光の位相差の波長依存性(Re(λ)/Re(550))を示す図。 実施例1・比較例1で得られた位相差フィルム(a−3)、(b−3)、(c−3’)及び(d−3’)について、波長400〜800nmにおける透過光の位相差の波長依存性(Re(λ)/λ)を示す図。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位aと下記一般式(2)で表される構造単位bからなる共重合体である熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなることを特徴とする光学用フィルム。
    Figure 0004743213
    [式中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数である。Xは式:−CH=CH−で表される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、R1、R2、R3及びR4は独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ又はケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;又は極性基を表し、あるいはR1とR2、R3とR4、又はR2とR3とが相互に結合して炭素環又は複素環(これらの炭素環又は複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。形成される炭素環又は複素環は芳香環でもよいし非芳香環でもよい。但し、R1〜R4のうち少なくとも1つは、下記一般式(1−1)で表される基である。また、上記共重合体中に存在する複数のX、R1、R2、R3及びR4各々は同一でも異なっていてもよい。]
    Figure 0004743213
    〔一般式(1−1)において、R5〜R14、Z、RA及びRBは、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ又はケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜30の1価の炭化水素基;又は1価の極性基を表す。但し、一般式(1−1)において、R5〜R14のうち1個は、式(1−1)記載の環構造を構成する炭素原子にカルボニル基側で結合する、式:−C(O)O−で表わされる基であり、かつ、この基のO-が式(1)の 環構造と直接結合しており、p及びqは独立に0〜2の整数であり、p=q=0のときは、R6とR9、R13とR9、R5とR14、又は、R12とR14は相互に結合して炭素環又は複素環(これらの炭素環又は複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい
    Figure 0004743213
    [式中、tは0又は1であり、uは0又は1以上の整数である。X、R1、R2、R3及びR4は前記のとおりである。但し、式(2)においてR1〜R4が、上記一般式(1−1)で表わされる基である場合を除く。]
  2. 前記一般式(1)において、n=m=0である構造単位a、及び前記一般式(2)において、t=0,u=1である構造単位bを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学用フィルム。
  3. 前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂を含む有機溶剤溶液をキャストする工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用フィルムの製造方法。
  4. 前記の有機溶剤として前記熱可塑性ノルボルネン樹脂の良溶媒と貧溶媒との混合溶剤を使用することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 透過光に位相差を与える請求項1又は2に記載の光学用フィルム。
  6. 波長550nmでの位相差Re(550)と波長400nmでの位相差Re(400)との比:Re(400)/Re(550)が1.0〜0.5の範囲にあり、かつ前記位相差Re(550)と波長800nmでの位相差Re(800)の比:Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0の範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の光学用フィルム。
  7. Re(λ)/λ
    [ここで、λは当該フィルムの透過光の波長を表し、Re(λ)は波長λにおける位相差を表す。]
    で表される値のバラツキが、波長400〜800nmのすべての範囲において、その平均値に対して±20%の範囲内にあることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学用フィルム。
  8. 少なくとも片面に光拡散機能を有することを特徴とする請求項1、2及び5〜7のいずれか1項に記載の光学用フィルム。
  9. 少なくとも片面に透明導電性層を有することを特徴とする請求項1、2及び5〜8のいずれか1項に記載の光学用フィルム。
  10. 少なくとも片面に反射防止層を有することを特徴とする請求項1、2及び5〜9のいずれか1項に記載の光学用フィルム。
  11. 請求項1、2及び5〜10のいずれか1項に記載の光学用フィルムからなることを特徴とする偏光板保護フィルム。
  12. 請求項1、2及び5〜11のいずれか1項に記載の光学用フィルムを有することを特徴とする偏光板。
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