前述のように、IPSモードでは、斜め方向から観察した場合に生じる偏光板の幾何学的な軸ズレを、位相差フィルムにより補償した偏光板が用いられている。このような効果を得られる偏光板、例えば、偏光子の透明保護フィルムとして熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を使用する偏光板は、通常の使用環境では問題がないものの、高温度下や高湿度下では偏光子の寸法変化により直接積層されている透明保護フィルムが剥離してしまうという問題点があった。
一方、透明保護フィルムとして一般的に用いられているトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)は、偏光子との接着性は、優れるものの、無視できない厚み方向の位相差値が存在するため、位相差フィルムの設計を困難にしていた。
そこで我々は、セルロ−スエステルフィルムに、エチレン性二重結合を含む化合物を重合してなる重量平均分子量500〜30000のポリマーを用いたところ、厚み方向の位相差値を低減することができ、かつ透湿性、保留性が優れた透明保護フィルムが得られることを見出した。
すなわち本発明は、偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板の片面に、該偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が直交または平行となるように積層した光学フィルムにおいて、前記位相差フィルムが、当該フィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx1、ny1、nz1、フィルムの厚さをd1(nm)とした場合に、Nz=(nx1−nz1)/(nx1−ny1)で表されるNz値が0.4〜0.6であり、かつ面内位相差Re1=(nx1−ny1)×d1が200〜350nmであり、前記透明保護フィルムがセルロースエステルフィルムであって、セルロースエステルフィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx2、ny2、nz2、フィルムの厚さをd2(nm)とした場合に、面内位相差Re2=(nx2−ny2)×d2が0〜5nmであり、かつ厚み方向位相差Rth={(nx2+ny2)/2−nz2}×d2が−20〜20nmであり、少なくともメチルアクリレートを有するアクリル酸エステル組成物、及びカルボン酸ビニル組成物のいずれかを有する組成物を重合して得られた、重量平均分子量が500〜30000のポリマーを含有することを特徴とする光学フィルムである。
上記本発明の光学フィルムは、偏光板をクロスニコル状態で配置した場合に、光軸からズレた方向での光漏れを、上記特定の位相差フィルムにより解消することができる。特にIPSモードの液晶表示装置において、液晶層の斜め方向におけるコントラストの低下を補償する機能を有する。位相差フィルムは前記Nz値が0.4〜0.6であり、かつ面内位相差が200〜350nmである。Nz値は補償機能の点から0.45以上、さらには0.48以上であることが好ましい。一方、Nz値は0.55以下、さらには0.52以下であることが好ましい。面内位相差Re1は補償機能の点から230nm以上、さらには250nm以上であることが好ましい。一方、面内位相差Re1は300nm以下、さらには280nm以下であることが好ましい。位相差フィルムの厚さd1は特に制限されないが、通常40〜100μm程度、好ましくは50〜70μmである。
また偏光板の透明保護フィルムはセルロースエステルフィルムであって、セルロースエステルフィルム面内の面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx2、ny2、nz2、フィルムの厚さをd2(nm)とした場合に、面内位相差Re2=(nx2−ny2)×d2が0〜5nmであり、かつ厚み方向位相差Rth={(nx2+ny2)/2−nz2}×d2が−20〜20nmであり、少なくともメチルアクリレートを有するアクリル酸エステル組成物、及びカルボン酸ビニル組成物のいずれかを有する組成物を重合して得られた、重量平均分子量が500〜30000のポリマーを含有する。
このような厚み方向の位相差値の低いセルロースエステルフィルムは、セルロ−スエステルフィルムに、エチレン性二重結合を含む化合物を重合してなる重量平均分子量500〜30000のポリマーを用いることで得ることができ、このようなフィルムは、透湿性、保留性が優れ、耐熱性、耐湿性、耐候性に優れており、これ主成分として含有する透明性保護フィルムは、高温度下や高湿度下において偏光子が寸法変化し、その応力を受けた場合にも安定した位相差値を確保できる。すなわち、高温度、高湿度の環境下においても位相差が生じにくく、特性変化の少ない光学フィルムを得ることができる。
透明保護フィルムの面内位相差は5nm以下、より好ましくは2nm以下であり、かつ厚み方向位相差は−20nm以上20nm以下、より好ましくは−10nm以上10nm以下である。このように、偏光子の透明保護フィルムの残留位相差を小さくすることにより、積層する位相差フィルムの設計が容易になるとともに、位相差フィルムによる補償効果の高い光学フィルムを得ることができる。透明保護フィルムの厚さd2は特に制限されないが、一般には200μm以下であり、30〜150μmが好ましい。特に30〜60μmとするのが好ましい。
さらに本発明は、前記光学フィルムを用いたことを特徴とする画像表示装置に関する。
また本発明は、画像表示装置がIPSモードの液晶表示装置であり、視認側のセル基板には前記光学フィルムが配置され、視認側と反対側のセル基板には、偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板が配置されており、かつ、電圧無印加状態において液晶セル内の液晶物質の異常光屈折率方向と当該偏光板の吸収軸が平行状態にあることを特徴とする液晶表示装置に関する。
また本発明は、画像表示装置がIPSモードの液晶表示装置であり、視認側のセル基板には偏光子の両面に透明保護フィルムを積層してなる偏光板が配置され、視認側と反対側のセル基板には、前記光学フィルムが配置されており、かつ、電圧無印加状態において液晶セル内の液晶物質の異常光屈折率方向と当該光学フィルムの吸収軸が直交状態にあることを特徴とする液晶表示装置に関する。
前記IPSモードの液晶表示装置において、偏光板の透明保護フィルムが、エチレン性二重結合を含む化合物を重合してなる重量平均分子量500〜30000のポリマーを含有するセルロースエステルフィルムであることが好ましい。
本発明の画像表示装置としては、IPSモードの液晶表示装置が好適である。前記本発明の偏光板と特定位相差値の位相差フィルムを積層した光学フィルムをIPSモードの液晶セルのいずれか一方の表面に配置することにより、IPSモードの液晶表示装置おいて従来生じていた黒表示時の光漏れを低減することができる。かかるIPSモードの液晶表示装置は、全方位にわたり高いコントラスト比を有し、広視野角で見やすい表示を実現可能である。
本発明のIPSモードの液晶表示装置は横電界方式の液晶表示装置を意味しており、フリンジ電場スイッチング(FFS:Fringe−Field Switching)モードも本発明に含まれる。
特に、前記液晶セル表面に配置する偏光板の透明保護フィルムとして、前記エチレン性二重結合を含む化合物を重合してなる重量平均分子量500〜30000のポリマーを含有するセルロースエステルフィルムを透明保護フィルムを用いた場合には、広視野角で、安定した位相差を確保できる液晶表示装置を得る上で好適である。
以下、本発明の光学フィルム及び画像表示装置を図面を参照しながら説明する。図1に示す通り、本発明の光学フィルムは、偏光子1aの両面に透明保護フィルム1bを積層してなる偏光板1の片面に、位相差フィルム2が積層されている。偏光板1の吸収軸と位相差フィルム2の遅相軸は直交または平行となるように積層されている。偏光板1の吸収軸と位相差フィルム2の遅相軸は、積層時における連続貼り合わせ工程の点から平行して積層するのが好ましい。
位相差フィルムとしては、前記Nz値及び面内位相差Re1値を満足するものを特に制限なく使用することができる。例えば、高分子ポリマーフィルムの複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム等が挙げられる。
高分子ポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリノルボルネン等の脂環式ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等が挙げられる。位相差フィルムは、高分子ポリマーフィルムを面方向に二軸に延伸する方法、面方向に一軸または二軸に延伸し、厚さ方向にも延伸する方法等により厚さ方向の屈折率を制御することにより得られる。また高分子ポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理または/及び収縮処理して傾斜配向させる方法等により得られる。
液晶性ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のもの等が挙げられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマー等が挙げられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するもの等が挙げられる。これら液晶性ポリマーの配向フィルムは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したもの等の配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより、液晶ポリマーを配向させたもの、特に傾斜配向させたものが好ましい。
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン/酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元の長さの3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
前記偏光子の両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、重量平均分子量が500〜30000で、エチレン性二重結合を有する化合物を重合して得られたポリマーを含有するセルロースエステルフィルムを使用する。かかるエチレン性二重結合を有する化合物を重合して得られたポリマーを含有する透明保護フィルムは、前述の通り、偏光子の寸法変化による応力を受けた場合にも位相差が生じにくい。
エチレン性二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチルアクリレート2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを例示することができる。
またカルボン酸ビニルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、ビバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルを例示することができる。
上記以外のビニルモノマーとして、スチレン、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができ、これらの化合物の単独重合体または共重合体が本発明に使用できる。
上記ポリマーの溶剤への溶解性が不十分の場合は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の極性基を付加させてもよい。
前記以外の透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性等に優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン/プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物等も前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
また、本発明に用いられる偏光板保護フィルムは視認側に好ましく配置されるフィルムであり、少なくとも一方の面に下記機能性層を設けることが好ましい。
(ハードコート層)
本発明に用いられる透明保護フィルム(偏光板保護フィルム)に機能性層としてハードコート層が設けられていることが好ましい。
本発明に用いられるハードコート層は、少なくとも偏光板保護フィルムの一方の面に設けられる。本発明の偏光板保護フィルムは、該ハードコート層上に、反射防止層(高屈折率層、低屈折率層等)が設けられ反射防止フィルムを構成することが好ましい。
ハードコート層としては、活性線硬化樹脂層が好ましく用いられる。
活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これらの活性線硬化樹脂層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。これらの光源は空冷若しくは水冷方式のものが好ましく用いられる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜150mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
また照射部には窒素パージにより酸素濃度を0.01〜2%に低減することが好ましい。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性が優れたフィルムを得ることができる。
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
また、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは、2000〜50000が適当であり、数平均分子量が1000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。また、ドライ膜厚としては0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜150mJ/cm2という活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/cm2であることが好ましい。
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止するため、また対擦り傷性等を高めるため、或いは防眩性や光拡散性を持たせるためまた屈折率を調整するために無機化合物或いは有機化合物の微粒子を加えることもできる。
本発明に用いられるハードコート層に微粒子を添加することは好ましく、使用される無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であるか、若しくはRaが0.1〜1μm程度の防眩層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製RST/PLUSを用いて測定することができる。
また、本発明に用いられるハードコート層には帯電防止剤を含有させることも好ましく、帯電防止剤としては、例えば、Sn、Ti、In、Al、Zn、Si、Mg、Ba、Mo、W及びVからなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分として含有し、かつ、体積抵抗率が107Ω・cm以下であるような導電性材料が好ましい。
前記帯電防止剤としては、上記の元素を有する金属酸化物、複合酸化物等が挙げられる。
金属酸化物の例としては、例えば、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、In2O3、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、またSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。また、これらの導電性を有するこれら金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下である。
(反射防止層)
本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、上記ハードコート層上に、機能性層として更に反射防止層を設けることが好ましい。特に中空微粒子を含有する低屈折率層であることが好ましい。
(低屈折率層)
本発明に用いられる低屈折率層は、中空微粒子を含有することが好ましく、その他に珪素アルコキシド、シランカップリング剤、硬化剤等を含有することがより好ましい。
〈中空微粒子〉
低屈折率層には下記の中空微粒子が含有されることが好ましい。
ここでいう中空微粒子は、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層用塗布液には(1)複合粒子または(2)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような無機微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される無機微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持できないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
前記複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁には、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても導電性を発現しない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が小さく、かつ屈折率の低い粒子を得られないことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような無機微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から無機化合物粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。尚、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料は、アルカリ可溶の前記導電性化合物が用いられる。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度にはとくに制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al2O3、TiO2またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。更に前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整したのち、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにして、シード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、或いは、シード粒子上に析出して粒子成長が起こる。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOx/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、或いは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
尚、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られるケイ酸液或いは加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。尚シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することができる。尚、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多過ぎると、シリカ保護膜が厚くなり過ぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。尚、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。尚、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.44未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
本発明に用いられる低屈折率層には中空微粒子の他に、アルコキシ珪素化合物の加水分解物及びそれに続く縮合反応により形成される縮合物を含むことが好ましい。特に、下記一般式(1)及び/または(2)で表されるアルコキシ珪素化合物またはその加水分解物を調整したSiO2ゾルを含有することが好ましい。
一般式(1) R1−Si(OR2)3
一般式(2) Si(OR2)4
(式中、R1はメチル基、エチル基、ビニル基、またはアクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基若しくはエポキシ基を含む有機基を、R2はメチル基またはエチル基を示す)
珪素アルコキシド、シランカップリング剤の加水分解は、珪素アルコキシド、シランカップリング剤を適当な溶媒中に溶解して行う。使用する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールブタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、或いはこれらの混合物が挙げられる。
上記珪素アルコキシドまたはシランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液に、加水分解に必要な量より若干多い量の水を加え、15〜35℃、好ましくは20〜30℃の温度で1〜48時間、好ましくは3〜36時間攪拌を行う。
上記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、このような触媒としては塩酸、硝酸、硫酸または酢酸等の酸が好ましく用いられる。これらの酸は0.001N〜20.0N、好ましくは0.005〜5.0N程度の水溶液にして用いる。該触媒水溶液中の水分は加水分解用の水分とすることができる。
アルコキシ珪素化合物を所定の時間加水分解反応させ、調製されたアルコキシ珪素加水分解液を溶剤で希釈し、必要な他の添加剤等を混合して、低屈折率層用塗布液を調製し、これを基材例えばフィルム上に塗布、乾燥することで低屈折率層を基材上に形成することができる。
〈アルコキシ珪素化合物〉
本発明において低屈折率層塗布液の調製に用いられるアルコキシ珪素化合物(以後アルコキシシランともいう)としては、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
一般式(3) R4−nSi(OR′)n
前記一般式中、R′はアルキル基であり、Rは水素原子または1価の置換基を表し、nは3または4を表す。
R′で表されるアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の基が挙げられ、置換基を有していてもよく、置換基としてはアルコキシシランとしての性質を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素等のハロゲン原子、アルコキシ基等により置換されていてもよいが、より好ましくは非置換のアルキル基であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。
Rで表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、シリル基等が挙げられる。中でも好ましいのは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基である。また、これらは更に置換されていてもよい。Rの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アセトキシ基等が挙げられる。
前記一般式で表されるアルコキシシランの好ましい例として、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、
また、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、更に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、これらの化合物が部分的に縮合した多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような数量体のケイ素化合物でもよい。
前記アルコキシシランは、加水分解重縮合が可能な珪素アルコキシド基を有しているため、これらのアルコキシシランを加水分解、縮合によって、架橋して、高分子化合物のネットワーク構造が形成され、これを低屈折率層塗布液として用い、基材上に塗布して、乾燥させることで均一な酸化珪素を含有する層が基材上に形成される。
加水分解反応は、公知の方法により行うことができ、疎水的なアルコキシシランと水が混和しやすいように、所定量の水とメタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒を共存させ溶解・混合したのち、加水分解触媒を添加して、アルコキシシランを加水分解、縮合させる。通常、10℃〜100℃で加水分解、縮合反応させることで、ヒドロキシル基を2個以上有する液状のシリケートオリゴマーが生成し加水分解液が形成される。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することができる。
本発明においては、アルコキシシランに水と共に添加する溶媒としては、メタノール、エタノールが安価であること、得られる被膜の特性が優れ硬度が良好であることから好ましい。イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール等も用いることができるが、得られた被膜の硬度が低くなる傾向にある。溶媒量は加水分解前のテトラアルコキシシラン100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜250質量部である。
このようにして加水分解液を調製し、これを溶剤によって希釈し、必要に応じて添加剤を添加して、低屈折率層塗布液を形成するに必要な成分と混合し、低屈折率層塗布液とする。
〈加水分解触媒〉
加水分解触媒としては、酸、アルカリ、有機金属、金属アルコキシド等を挙げることができるが、本発明においては硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸等の無機酸或いは有機酸が好ましく、特に硝酸、酢酸等のカルボン酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が好ましく、これらの内特に硝酸、酢酸、クエン酸または酒石酸等が好ましく用いられる。上記クエン酸や酒石酸の他に、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等も好ましく用いられる。
この中で、乾燥時に酸が揮発して、膜中に残らないものが好ましく、沸点が低いものがよい。従って、酢酸、硝酸が特に好ましい。
添加量は、用いるアルコキシ珪素化合物(例えばテトラアルコキシシラン)100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部がよい。また、水の添加量については部分加水分解物が理論上100%加水分解し得る量以上であればよく、100〜300%相当量、好ましくは100〜200%相当量を添加するのがよい。
上記アルコキシシランを加水分解する際には、下記無機微粒子を混合することが好ましい。
加水分解を開始してから所定の時間加水分解液を放置して加水分解の進行が所定の程度に達した後用いる。放置する時間は、上述の加水分解そして縮合による架橋が所望の膜特性を得るのに十分な程度進行する時間である。具体的には用いる酸触媒の種類にもよるが、例えば、酢酸では室温で15時間以上、硝酸では2時間以上が好ましい。熟成温度は熟成時間に影響を与え、一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、20〜60℃の加熱、保温が適切である。
このようにして加水分解、縮合により形成したシリケートオリゴマー溶液に上記中空微粒子、添加剤を加え、必要な希釈を行って、低屈折率層塗布液を調製し、これを前述したフィルム上に塗布して、乾燥することで、低屈折率層として優れた酸化珪素膜を含有する層を形成することができる。
また、本発明においては、上記のアルコキシシランの他に、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等の官能基を有するシラン化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)等により変性した変性物であってもよく、単独で使用または併用することも可能である。
〈フッ素化合物〉
本発明に用いられる低屈折率層は中空微粒子とフッ素化合物を含有することも好ましく、バインダーマトリックスとして、熱または電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)を含むことが好ましい。該含フッ素樹脂を含むことにより良好な防汚性反射防止フィルムを提供することができる。
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることができる。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入できることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
また上記モノマー加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることができる。
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することができる。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲、水に対する接触角が90〜120度の範囲にあることが好ましい。
〈添加剤〉
低屈折率層塗布液には更に必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤等の添加剤を含有させてもよい。シランカップリング剤は前記一般式(2)で表される化合物である。
具体的には、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
硬化剤としては、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム等の有機酸金属塩が挙げられ、特に酢酸ナトリウムが好ましい。珪素アルコキシシラン加水分解溶液に対する添加量は、加水分解溶液中に存在する固形分100質量部に対して0.1〜1質量部程度の範囲が好ましい。
また、本発明に用いられる低屈折率層の塗布液には各種のレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の低表面張力物質を添加することが好ましい。
シリコーンオイルとしては、具体的な商品としては、日本ユニカー(株)社のL−45、L−9300、FZ−3704、FZ−3703、FZ−3720、FZ−3786、FZ−3501、FZ−3504、FZ−3508、FZ−3705、FZ−3707、FZ−3710、FZ−3750、FZ−3760、FZ−3785、FZ−3785、Y−7499、信越化学社のKF96L、KF96、KF96H、KF99、KF54、KF965、KF968、KF56、KF995、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、FL100等がある。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は添加量が多過ぎると塗布時にハジキの原因となるため、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
〈溶媒〉
低屈折率層を塗設する際の塗布液に使用する溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、水等が挙げられ、それらを単独または2種以上混合して使用することができる。
〈塗布方法〉
低屈折率層の塗布方法としては、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、エアードクターコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート等の公知の塗布方法または公知のインクジェット法を用いることができ、連続塗布または薄膜塗布が可能な塗布方法が好ましく用いられる。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは0.5〜15μmである。塗布速度は10〜80m/minが好ましい。
本発明の組成物を基材に塗布する際、塗布液中の固形分濃度や塗布量を調整することにより、層の膜厚及び塗布均一性等をコントロールすることができる。
本発明では、更に下記中屈折率層、高屈折率層を設け、複数の層を有する反射防止層を形成することも好ましい。
本発明に用いることのできる反射防止層の構成例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/帯電防止層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
(中屈折率層、高屈折率層)
中屈折率層、高屈折率層は所定の屈折率層が得られれば構成成分に特に制限はないが、下記屈折率の高い金属酸化物微粒子、バインダ等よりなることが好ましい。その他に添加剤を含有してもよい。中屈折率層の屈折率は1.55〜1.75であることが好ましく、高屈折率層の屈折率は1.75〜2.20であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。塗布は前記低屈折率層の塗布方法と同様にして行うことができる。
〈金属酸化物微粒子〉
金属酸化物微粒子は特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、五酸化アンチモン、酸化インジウム−スズ(ITO)、酸化鉄、等を主成分として用いることができる。また、これらの混合物でもよい。二酸化チタンを用いる場合は二酸化チタンをコアとし、シェルとしてアルミナ、シリカ、ジルコニア、ATO、ITO、五酸化アンチモン等で被覆させたコア/シェル構造を持った金属酸化物粒子を用いることが光触媒活性の抑制の点で好ましい。
金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましく、1.90〜2.50であることが更に好ましい。金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は5nm〜200nmであるが、10〜150nmであることが更に好ましい。粒径が小さ過ぎると金属酸化物微粒子が凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが上昇し好ましくない。無機微粒子の形状は、米粒状、針状、球形状、立方体状、紡錘形状或いは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が最も好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
金属酸化物の種類、添加比率を適切に選択することによって、所望の屈折率を有する高屈折率層、中屈折率層を得ることができる。
〈バインダ〉
バインダは塗膜の成膜性や物理特性の向上のために添加される。バインダとしては例えば、前述の電離放射線硬化型樹脂、アクリルアミド誘導体、多官能アクリレート、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂等を用いることができる。
(金属化合物、シランカップリング剤)
その他の添加剤として金属化合物、シランカップリング剤等を添加してもよい。金属化合物、シランカップリング剤はバインダとして用いることもできる。
金属化合物としては下記一般式式(4)で表される化合物またはそのキレート化合物を用いることができる。
一般式(4):AnMBx-n
式中、Mは金属原子、Aは加水分解可能な官能基または加水分解可能な官能基を有する炭化水素基、Bは金属原子Mに共有結合またはイオン結合した原子団を表す。xは金属原子Mの原子価、nは2以上でx以下の整数を表す。
加水分解可能な官能基Aとしては、例えば、アルコキシル基、クロル原子等のハロゲン、エステル基、アミド基等が挙げられる。上記式(4)に属する金属化合物には、金属原子に直接結合したアルコキシル基を2個以上有するアルコキシド、または、そのキレート化合物が含まれる。好ましい金属化合物としては、屈折率や塗膜強度の補強効果、取り扱い易さ、材料コスト等の観点から、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ケイ素アルコキシドまたはそれらのキレート化合物を挙げることができる。チタンアルコキシドは反応速度が速くて屈折率が高く、取り扱いも容易であるが、光触媒作用があるため大量に添加すると耐光性が劣化する。ジルコニウムアルコキシドは屈折率が高いが白濁しやすいため、塗布する際の露点管理等に注意しなければならない。ケイ素アルコキシドは反応速度が遅く、屈折率も低いが、取り扱いが容易で耐光性に優れる。シランカップリング剤は無機微粒子と有機ポリマーの両方と反応することができるため、強靱な塗膜を作ることができる。また、チタンアルコキシドは紫外線硬化樹脂、金属アルコキシドの反応を促進する効果があるため、少量添加するだけでも塗膜の物理的特性を向上させることができる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
ケイ素アルコキシド及びシランカップリング剤は下記一般式(5)で表される化合物である。
一般式(5):RmSi(OR′)n
式中、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)、または、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、スルホニル基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基等の反応性基を表し、R′はアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)を表し、m+nは4である。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
遊離の金属化合物に配位させてキレート化合物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等であって分子量1万以下のものを挙げることができる。これらのキレート化剤を用いることにより、水分の混入等に対しても安定で、塗膜の補強効果にも優れるキレート化合物を形成できる。
金属化合物の添加量は、中屈折率組成物では金属酸化物に換算して5質量%未満であることが好ましく、高屈折率組成物では金属酸化物に換算して20質量%未満であることが好ましい。
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等が用いられる。
前記位相差フィルムと偏光板の積層法は特に制限されず、粘着剤層等により行うことができる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましく用いうる。
光学フィルムや粘着剤層等の各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式等の方式により紫外線吸収能をもたせたもの等であってもよい。
本発明の光学フィルムはIPSモードの液晶表示装置に好適に用いられる。IPSモードの液晶表示装置は、液晶層を狭持する一対の基板と、前記一対の基板の一方に形成された電極群と、前記基板間に挟持された誘電異方性を有する液晶組成物質層と、前記一対の基板の対向に形成されて前記液晶組成物質の分子配列を所定の方向に配列させるための配向制御層及び前記電極群に駆動電圧を印加するための駆動手段とを具備した液晶セルを有する。前記電極群は前記配向制御層及び前記液晶組成物質層の界面に対して、主として平行な電界を印加するごとく配置された配列構造を有している。
図2、図3に示すように本発明の光学フィルム3は液晶セルの視認側または光入射側に配置される。光学フィルム3は、位相差フィルム2側を液晶セル4側とするのが好ましい。光学フィルム3の配置された液晶セル4の反対側には偏光板1が配置される。セル基板4の両側に配置した偏光板1の吸収軸と光学フィルム3(偏光板1)の吸収軸は直交状態に配置されている。偏光板1は光学フィルム3に用いたものと同様の偏光子1aの両面に透明保護フィルム2bを積層したものが用いられる。
図2のように、光学フィルム3をIPSモードの液晶セル4の視認側に配置する場合には、視認側と反対側(光入射側)のセル基板4には、偏光板1を電圧無印加状態において液晶セル4内の液晶物質の異常光屈折率方向と偏光板1の吸収軸が平行状態になるように配置するのが好ましい。
また図3のように、光学フィルム3をIPSモードの液晶セル4の光入射側に配置する場合には、視認側のセル基板4には偏光板1を配置し、電圧無印加状態において液晶セル4内の液晶物質の異常光屈折率方向と光学フィルム3の吸収軸が直交状態になるように配置するのが好ましい。
前記光学フィルム、偏光板は、実用に際して他の光学層を積層して用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、偏光板にさらに反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板にさらに輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置等を形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすい等の利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式等の適宜な方式にて行うことができる。
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したもの等が挙げられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するもの等も挙げられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点等を有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点等も有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等の適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法等により行うことができる。
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シート等として用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点等より好ましい。
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等を形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板等が用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
楕円偏光板は液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青または黄等)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合等に有効に用いられる。さらに、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合等に有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置等のバックライトや裏側からの反射等により自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光をさらにその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部または全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライト等で液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、さらにその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライト等の光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの(3M社製、D−BEF等)、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの(日東電工社製、PCF350やMerck社製、Transmax等)如き、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すもの等の適宜なものを用いうる。
従って、前記した偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式等により得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層または3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層または3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板等であってもよい。
前記光学層を積層した光学フィルム、偏光板は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置等の製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性等に応じて適宜な配置角度とすることができる。
液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。液晶表示装置は、一般に必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むこと等により形成されるが、本発明において前記光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。
液晶表示装置は、照明システムあるいは反射板を用いたもの等の適宜な液晶表示装置を形成することができる。さらには液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライト等の適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
〔セルロ−スエステルフィルム〕
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%が機械強度が強くより好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性がよい綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用した方が生産性効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、さらには、単独で使用することが最も好ましい。
本発明に使用するセルロースエステルの数平均重合度は、低すぎると強度が低くなり、高すぎると溶液の粘度が高くなりすぎる場合があるので、70000〜300000が好ましく、さらに80000〜200000が好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルの具体的な製造方法については、例えば特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
また、目的の置換比率を得るには、予め各々の種類のアシル基で一定量置換した後に、2種類以上を混合して得ることもできる。
(高分子可塑剤)
本発明に用いられるセルロースエステルには高分子可塑剤を用いることが好ましい。高分子可塑剤としては、重量平均分子量が少なくとも1000以上であることが好ましい。
また、セルロースエステルに可塑効果を出すためにTgは、50℃以下が好ましい。
具体的には、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリカルボン酸エステル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホンが挙げられる。より好ましくは、エチレン性二重結合を有する化合物から合成されたアクリル樹脂、ポリカルボン酸ビニルポリマーである。
(紫外線吸収剤)
本発明に用いられるセルロースエステルには、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、エチレン性二重結合含有紫外線吸収剤を下記重合開始剤を用いて、「エチレン性二重結合を有する化合物を重合して得られたポリマー」とすることができる。エチレン性二重結合含有紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。少なくとも350nmでの吸光係数εが5000以上で前記エチレン性二重結合を有する化合物と共重合する必要がある。
具体的な化合物としては、ベンゾトリアゾールの骨格に、メタクリロイル基を導入したモノマー(商品名 反応型紫外線吸収剤RUVA−93(大塚化学社製))を挙げることができるが、これに限定されない。
公知のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系の紫外線吸収剤を含有させることもできる。
(帯電防止剤)
本発明に用いられるセルロースエステルには、帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤としては、エチレン性二重結合含有帯電防止剤を下記重合開始剤を用いて、「エチレン性二重結合を有する化合物を重合して得られたポリマー」とすることができる。エチレン性二重結合含有帯電防止剤としては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有マレイミド、4級アンモニウム含有メタクリルイミド、スチレンスルホン酸ソーダが挙げられる。
本発明に用いられるセルロースエステルには、エポキシ基またはビニルエーテル基を有する化合物を重合して得られたポリマーを含有することが好ましい。エポキシ基またはビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
(重合開始剤)
本発明に用いるラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ジアセチル、エオシン、チオニン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン、アンスラキノン、クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α,α′−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルベンゾインフォルメイト、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロペン、ジクロルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、フェニルジスルフィド−2−ニトロソフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等をあげることができる。
また、カチオン重合開始剤として、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン酸塩等の硫黄系開始剤、ジフェニルヨードニウム六フッ化アンチモン酸塩等のヨウ素系開始剤に代表されるオニウム塩が挙げられる。これらの光(消す)重合開始剤の1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
(溶剤)
セルロースエステル、可塑剤、エチレン性二重結合を有する化合物を重合して得られたポリマー等の添加剤の溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール等の低級アルコール類、シクロヘキサンジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族炭化水素塩化物類、アセトン、メチルエチルケトンのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類等を用いることができる。
溶剤比率としては、メチレンクロライドもしくは酢酸メチル、アセトン等の良溶媒が60〜96質量%、アルコール等のその他の溶剤は4〜40質量%が好ましい。より好ましくは、メチレンクロライドが90〜94質量%、その他の溶剤は6〜10質量%である。
また、セルロースエステルと可塑剤のドープ全体に対する濃度は15〜30質量%が好ましい。より好ましくは、18〜25質量%である。
また、セルロースエステルと前記ポリマーのドープ全体に対する濃度は15〜30質量%が好ましい。より好ましくは、18〜25質量%である。
溶剤を添加しての加熱溶解温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく、例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器等で冷却し、これを製膜に供する。
(セルロースエステルフィルムの製造方法)
本発明におけるセルロースエステルフィルムの製造方法は特に制限はなく、当業界で一般に用いられている方法でよく、例えば米国特許第2,492,978号、同第2,739,070号、同第2,739,069号、同第2,492,977号、同第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,607,704号、英国特許第64,071号、同第735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号等に記載の方法を参考にすることができる。
セルロースエステルと溶剤のほかに必要な添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入してもよい。
加圧容器の種類は特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器はそのほか圧力計、温度計等の計器類を適宜配設する。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。
加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器等で冷却し、これを製膜に供するが、このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行う方が、ドープ粘度を低減できるためより好ましい。
本発明においては、セルロースエステルを溶解して得られるドープを支持体上に流延(キャスト工程)した後、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
セルロースエステルフィルムの膜厚は30〜150μmであって、より好ましくは30〜60μmである。
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲、0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間を上げられるため好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。剥離限界時間とは透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープが支持体上にある時間をいう。剥離限界時間は短い方が生産性に優れていて好ましい。
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。支持体上での乾燥は残留溶媒量30〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、40〜120%がより好ましく、さらに好ましくは、80〜100%である。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度を上げることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5℃〜20℃がより好ましい。
フィルム中の残留溶媒量は次式で表される。
残留溶媒量=残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量×100%
なお残存揮発分質量はフィルムを115℃で1時間加熱処理したとき、加熱処理前のフィルム質量から加熱処理後のフィルム質量を引いた値である。
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に支持体より剥離した直後の残留溶媒量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため特に好ましい。
特に、支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは巾方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持もしくは延伸しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性をよくするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下でもよい。乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することはもちろんのことである。
本発明で紫外線照射による重合に用いる紫外線源は、例えば水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光線等を挙げることができる。紫外線を照射する時の雰囲気は、空気または不活性気体であることが好ましい。紫外線の照射強度は、0.1〜100mW/cm2が好ましく、照射量は100〜20,000mJ/cm2が好ましい。(消す)
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。
本発明に係るセルロースエステルフィルムの厚さは、LCDに使用される偏光板の薄肉化、軽量化が要望から、30〜150μmであることが好ましく、より好ましくは、30〜60μmである。これより薄い場合は、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板作製工程上でシワ等の発生によるトラブルが発生しやすく、また、これより厚い場合は、LCDの薄膜化に対する寄与が少ない。
本発明に係るセルロースエステルフィルムについて、80℃、相対湿度90%RHで50時間処理後の寸法変化率が、縦方向、横方向ともに、−0.5〜+0.5%であることが好ましい。より好ましくは、−0.4〜+0.4%であり、さらに好ましくは、−0.3〜+0.3%である。
本発明に係るセルロースエステルフィルムについて、23℃−80%RHでのカール値が、−20〜+40(単位:1/m)であることが好ましい。より好ましくは−20〜+35、さらに好ましくは、−20〜+25である。
本発明に係るセルロースエステルについて、40℃の水中でのカール値が、−20〜+60(単位:1/m)であることが好ましい。より好ましくは−20〜+50、さらに好ましくは、−20〜+40である。
また本発明に係るセルロースエステルフィルムには、他に必要ならマット剤として酸化珪素のような微粒子等を加えてもよい。酸化珪素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等が挙げられる。微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きく、平均径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜14nmである。酸化珪素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等が挙げられ、好ましくはAEROSILR972、R974、R202、R812等が挙げられる。
本発明において、セルロースエステルフィルム中に異物が少ない方が好ましい。特に偏光クロスニコル条件下で認識される異物が少ない方が好ましい。
偏光クロスニコル状態で認識される異物とは、2枚の偏光板を直行(クロスニコル)状態にし、その間にセルロースエステルフィルムを置いて測定されるものをいう。このような異物は、偏光クロスニコル状態では、暗視野中で、異物の箇所のみ光って観察されるので、容易にその大きさと個数を識別することができる。
異物の個数としては、面積250mm2当たり、偏光クロスニコル状態で認識される大きさが5〜50μmの異物が200個以下、50μm以上の異物が実質0個であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜50μmの異物が100個以下、より好ましくは50個以下である。
上記、異物の少ないセルロースエステルフィルムを得るには、特に手段を選ばないが、セルロースエステルを溶媒に溶解したドープ組成物を以下のような濾紙を用いて濾過することで達成できる。この場合、濾紙の種類としては、濾水時間(JIS P3801 7.5に準ずる)が20sec以上の濾紙を用い、かつ、濾過圧力を1.6MPa以下で濾過して製膜することが好ましい。より好ましくは、30sec以上の濾紙を用い、かつ濾過圧力を1.2MPa以下、さらに好ましくは、40sec以上の濾紙を用いかつ濾過圧力を1.0MPa以下で濾過することである。また、上記濾紙は、2枚以上重ねて用いるとより好ましい。また、濾過圧力は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
(偏光板)
本発明に係る偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、セルローストリエステルフィルムをアルカリ処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号,特開平6−118232号に記載されているような接着性を高める方法を使用してもよい。
(エチレン変性ポリビニルアルコール)
本発明においては、偏光子としてエチレン変性ポリビニルアルコールを延伸、染色したものが好ましく用いられる。特に、エチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。また、フィルムのTD方向に5cm離れた二点間の熱水切断温度の差が1℃以下であることが、色斑を低減させる上でさらに好ましく、さらにフィルムのTD方向に1cm離れた二点間の熱水切断温度の差が0.5℃以下であることが、色斑を低減させるうえでさらに好ましい。
またフィルムの膜厚が5〜20μmであることが色斑を低減させる上えで特に好ましい。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れている上に、色斑が少なく、IPS大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
本発明において用いられるエチレン変性ポリビニルアルコール(エチレン変性ポリビニルアルコール)としては、エチレンとビニルエステル系モノマーとを共重合して得られたエチレン−ビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。このビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢酸ビニルを用いるのが好ましい。
エチレン変性ポリビニルアルコールにおけるエチレン単位の含有量(エチレンの共重合量)は、1〜4モル%であり、好ましくは1.5〜3モル%であり、より好ましくは2〜3モル%である。
エチレン単位の含有量がこの範囲にあると、偏光性能及び耐久性能が向上し、色斑が低減されるため好ましい。
さらに、エチレン変性ポリビニルアルコールには、ビニルエステル系モノマーに下記のモノマーを共重合させることもできる。ビニルエステル系モノマーに共重合させる場合、好ましい範囲は15モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
このようなビニルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩、N−メチロールアクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩、N−メチロールメタクリルアミド及びその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸及びその塩またはそのエステル;イタコン酸及びその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類を挙げることができる。
偏光子を構成するエチレン変性ポリビニルアルコールの重合度は、偏光性能と耐久性の点から2000〜4000であり、2200〜3500が好ましく、2500〜3000が特に好ましい。重合度が2000より小さい場合には、偏光子の偏光性能や耐久性能が低下し、好ましくない。また、重合度が4000以下であることが偏光子の色斑が生じにくく好ましい。
エチレン変性ポリビニルアルコールの重合度は、GPC測定から求めた重量平均重合度である。この重量平均重合度は、単分散PMMAを標品として移動相に20ミリモル/リットルのトリフルオロ酢酸ソーダを加えたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、40℃でGPC測定を行って求めた値である。
偏光子を構成するエチレン変性ポリビニルアルコールのけん化度は、偏光子の偏光性能及び耐久性の点から99.0〜99.99モル%であり、99.9〜99.99モル%がより好ましく、99.95〜99.99モル%が特に好ましい。
エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを製造する方法としては特に限定されないが、流延製膜法及び溶融押出製膜法が、良好なエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを得る観点から好ましい。また、得られたエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムは、必要に応じて乾燥及び熱処理が施される。
エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを製造する際に使用されるエチレン変性ポリビニルアルコールを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好ましく使用される。
エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを製造する際に使用されるエチレン変性ポリビニルアルコール溶液または水を含むエチレン変性ポリビニルアルコールにおけるエチレン変性ポリビニルアルコールの割合はエチレン変性ポリビニルアルコールの重合度に応じて変化するが、20〜70質量%が好ましく、25〜60質量%がより好ましく、30〜55質量%がさらに好ましく、35〜50質量%が最も好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールの割合が70質量%を超えるとエチレン変性ポリビニルアルコール溶液または水を含むエチレン変性ポリビニルアルコールの粘度が高くなり過ぎて、フィルムの原液を調製する際に濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルムを得ることが困難となる。また、エチレン変性ポリビニルアルコールの割合が20質量%より低いとエチレン変性ポリビニルアルコール溶液または水を含むエチレン変性ポリビニルアルコールの粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚みを有するPVAフィルムを製造することが困難になる。また、このエチレン変性ポリビニルアルコール溶液または水を含むエチレン変性ポリビニルアルコールには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料等を含有させてもよい。
エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを製造する際に可塑剤として、多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも延伸性向上効果からジグリセリンやエチレングリコールやグリセリンが好ましく使用される。
多価アルコールの添加量としてはエチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対し1〜30質量部が好ましく、3〜25質量部がさらに好ましく、5〜20質量部が最も好ましい。1質量部より少ないと、染色性や延伸性が低下する場合があり、30質量部より多いと、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが柔軟になりすぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤の1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
界面活性剤の添加量としては、エチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましく、0.02〜0.5質量部がさらに好ましい。0.01質量部より少ないと、製膜性や剥離性向上の効果が現れにくく、1質量部より多いと、界面活性剤がエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムの表面に溶出してブロッキングの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
偏光子の作製に用いられるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムは厚みが10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがさらに好ましい。厚みが10μmより小さいと、フィルム強度が低すぎて均一な延伸が行いにくく、偏光子の色斑が発生しやすい。厚みが50μmを超えると、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸して偏光子を作製した際に端部のネックインによる厚み変化が発生しやすくなり、偏光子の色斑が強調されやすいので好ましくない。
また、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムから偏光子を製造するには、例えばエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理をし、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、一軸延伸、固定処理の操作の順番に特に制限はない。また、一軸延伸を二回またはそれ以上行ってもよい。
染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれでも可能である。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウムや二色性染料等が、1種または2種以上の混合物で使用できる。通常染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、PVAフィルムに混ぜて製膜する等、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法が使用でき、ホウ酸水溶液等の温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でもよい)または吸水後のエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は、特に限定されず、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が好ましく、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が好ましい。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸の場合には合計の延伸倍率)は、偏光子の偏光性能の点から4倍以上が好ましく、特に5倍以上が最も好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚さは、2〜20μmが好ましく、5〜15μmがより好ましい。
エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸及び/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
得られた偏光子の乾燥処理は、30〜150℃で行うのが好ましく、50〜150℃で行うのがより好ましい。
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に偏光板保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤等を挙げることができるが、なかでもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。