JP2012123182A - 光学フィルム及びこれを備えた偏光板並びに液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オレフィン系樹脂からなる光学フィルムにおいて、位相差が過度に発現せず表示ムラが少ない光学フィルム及びこれを備えた偏光板並びに液晶表示装置を提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂からなる光学フィルムFであって、フィルム長手方向(MD)の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度と、フィルム長手方向(MD)に略垂直な方向(TD)の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度とのうち、大きい方の値を小さい方の値で除した値が1.3以下であることを特徴とする。さらに、オレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルム及びこれを備えた偏光板並びに液晶表示装置に関し、特に、オレフィン系樹脂からなる光学フィルム及びこれを備えた偏光板並びに液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力が少ない、低電圧で動作する、軽量で薄型である等の特徴があるため、これらの特徴を生かして、各種の表示用デバイスに用いられている。液晶表示装置は、液晶セル、偏光板、位相差フィルム、集光シート、拡散フィルム、導光板、光反射シート等、多くの材料から構成されている。そのため、構成フィルムの枚数を減らしたり、フィルム又はシートの厚みを薄くしたりすることで、生産性や軽量化、明度の向上等を目指した改良が盛んに行われている。
一方で、液晶表示装置は、用途によっては厳しい耐久条件に耐えうる製品が必要とされている。例えば、カーナビゲーションシステム用の液晶表示装置は、それが置かれる車内の温度や湿度が高くなることがあり、通常のテレビやパーソナルコンピュータ用のモニターと比べると、温度及び湿度条件が厳しい。そのような用途には、偏光板も高い耐久性を示すものが求められる。
偏光板は通常、二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面又は両面に、透明な保護フィルムが積層された構造を有する。偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに縦一軸延伸と二色性色素による染色とを行った後、ホウ酸処理して架橋反応を起こさせ、次いで水洗、乾燥する方法により製造されている。二色性色素としては、ヨウ素又は二色性有機染料が用いられる。このようにして得られる偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムを積層して偏光板が形成され、液晶表示装置に組み込まれて使用される。
保護フィルムには、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースアシレート系樹脂フィルムが多く使用されており、その厚みは通例30〜120μm程度の範囲内である。また、保護フィルムの積層には、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を用いることが多い。
しかしながら、二色性色素が吸着配向している偏光フィルムの片面又は両面に、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介してトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを積層した偏光板は、湿熱条件下で長時間使用した場合に、偏光性能が低下したり、保護フィルムと偏光フィルムとが剥離し易くなったりするという問題がある。
そこで、少なくとも一方の保護フィルムを、セルロースアシレート系樹脂以外の樹脂材料で形成する方法が提案されている。例えば、偏光フィルムの両面に保護フィルムを積層した偏光板において、その保護フィルムの少なくとも一方を、オレフィン系樹脂の一種であるポリプロピレン系樹脂で構成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。オレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂は、他の樹脂に比べて比較的安価であるため、保護フィルムの製造コストを低減することができる。また、ポリプロピレン系樹脂は柔軟性が高いため、延伸等により膜厚を薄くすることが可能であり、このため保護フィルムが貼合された偏光板を薄型化することも可能となる。
ところで、フィルムを構成する分子の配向性は、X線回折により測定することができる。従来、フィルム長手方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度と、フィルム長手方向に略垂直な方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度のうち、大きい方の値を小さい方の値で除した値(以下、「X線回折強度の比」という)が1.6以上の光学フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。このような光学フィルムは、フィルムを一方向に延伸するとともに、この延伸方向に垂直な方向に収縮することで製造することができる。この方法で製造した光学フィルムは、フィルム長手方向又はこれに略垂直方向のうちいずれかの方向に分子が偏って配向しているため、適度に位相差を発現する。したがって、このような光学フィルムを偏光フィルムの保護フィルムとして使用することで、高コントラストを実現するとともに視野角方向に依存した色ずれも補償することが可能となる。
特開2007−334295号公報(請求項1〜3、段落0009〜0018) 特開2008−20895号公報(請求項1,3、段落0288〜0366)
特許文献2の実施例及び比較例では、光学フィルムの材料としてセルロースアシレート系樹脂が用いられている。しかしながら、セルロースアシレート系樹脂フィルムでは、オレフィン系樹脂フィルムに比べて柔軟性に乏しく、引っ張り強度も低いため、延伸によりフィルムが破断したり、膜厚が大きくなったりする傾向にある。したがって、光学フィルムの薄膜化にはセルロースアシレート系樹脂は最適とは言えない。
そこで発明者らは、従来のセルロースアシレート系樹脂フィルムではなく、より柔軟性の高いオレフィン系樹脂を光学フィルムの材料として研究を行った。その研究の過程で、特許文献2のようにX線回折強度の比を1.6以上にすると、オレフィン系樹脂では位相差が過度に発現しすぎることがわかった。その結果、位相差値が発現しすぎた光学フィルムを液晶セルに実装すると、得られる画像に表示ムラが生じやすくなり視認性が悪化するという問題があることがわかった。これは、上述したように、オレフィン系樹脂は柔軟性が高く、セルロースアシレート系樹脂に比べて延伸により位相差を発現しやすいためと考えられる。なお、特許文献2では、オレフィン系樹脂で光学フィルムを作成作製した例については記載されていない。
本発明の目的は、オレフィン系樹脂からなる光学フィルムにおいて、位相差が過度に発現せず表示ムラが少ない光学フィルム及びこれを備えた偏光板並びに液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らは、オレフィン系樹脂を用いてX線回折強度の比と位相差値との関係を検討したところ、X線回折強度の比が所定値以下であれば過度に位相差が発現せず、光学特性が良好となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記課題は、本発明の光学フィルムによれば、オレフィン系樹脂からなる光学フィルムであって、フィルム長手方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度と、前記フィルム長手方向に略垂直な方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度とのうち、大きい方の値を小さい方の値で除した値が1.3以下であることにより解決される。
上記の場合において、下記式で定義される波長590nmにおける面内位相差値Rが0〜400nmの範囲であり、かつ波長590nmにおける厚み方向位相差値Rthが0〜400nmの範囲であることが好ましい。
=(n−n)×d
th=((n+n)/2−n)×d
(式中、n、n、nはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表し、かつn、nは前記光学フィルム面内方向の屈折率を、nは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
また、前記光学フィルムが無配向性フィルム又は二軸延伸フィルムであると好適である。
さらに、前記光学フィルムが二軸延伸フィルムであり、膜厚が5〜40μmの範囲にあることが好ましい。
また、前記オレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であると好適である。
また、上記課題は、本発明の偏光板によれば、上記のいずれかに記載の光学フィルムと、前記光学フィルムに貼合された偏光フィルムとを備えることにより解決される。
この場合において、前記光学フィルムは無配向性フィルムからなる保護フィルムであることが好ましい。
あるいは、前記光学フィルムは二軸延伸フィルムからなる位相差フィルムであってもよい。
上記課題は、本発明の液晶表示装置によれば、上記のいずれかに記載の偏光板と、前記偏光板が貼合された液晶セルとを備えることにより解決される。
本発明の光学フィルムによれば、X線回折強度の比が1.3以下であるため、フィルム長手方向又はこれに略垂直方向のいずれかに偏ってオレフィン系樹脂が配向しておらず、したがって位相差が過度に発現していない。このため、このような光学フィルムを備えた液晶表示装置では、表示ムラが少なく光学特性が良好となる。加えて、柔軟性の高いオレフィン系樹脂で光学フィルムを製造するため、従来のセルロースアシレート系樹脂からなる光学フィルムに比べて光学フィルムを薄膜化することができる。これにより、この光学フィルムを備えた偏光板や、更にこれを備えた液晶表示装置の薄型化を実現することも可能となる。
また、本発明の偏光板や液晶表示装置によれば、このような位相差値が過度に発現していない光学フィルムを備えることで、表示ムラを少なくして光学特性を良好とすることができる。また、薄膜化が可能なオレフィン系樹脂からなる光学フィルムを備えることで、偏光板や液晶表示装置の薄型化を実現することも可能となる。
X線回折強度の比の測定方法を模式的に示した斜視図である。 本発明の一実施形態における偏光板の断面模式図である 偏光板を用いた液晶表示装置の断面模式図である。 実施例1(未延伸フィルム)の光学フィルムのX線回折パターンを示すグラフである。 実施例2(二軸延伸フィルム)の光学フィルムのX線回折パターンを示すグラフである。 比較例(一軸延伸フィルム)の光学フィルムのX線回折パターンを示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明する部材や配置等によって限定されず、これらの部材等は本発明の趣旨に沿って適宜改変することができる。
(光学フィルム)
本発明の光学フィルムは、オレフィン系樹脂からなる光学フィルムであって、フィルム長手方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度と、フィルム長手方向に略垂直な方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度とのうち、大きい方の値を小さい方の値で除した値(以下、「X線回折強度の比」という)が1.3以下であることを特徴とする。このX線回折強度の比は、下限が1.0以上であるものが好ましい。
X線回折強度の比について、図1を参照して説明する。図1は、透過−イメージング法によるX線回折強度の測定方法について模式的に示した斜視図である。光学フィルムFは、長尺状であり、長手方向(図のMD)と、これに略垂直な方向(TD)が規定される。ここで、後述するように、光学フィルムFは、溶融樹脂をフィルム状に製膜し、その後必要に応じて延伸することにより製造される。ここで光学フィルムFが未延伸フィルムの場合、溶融樹脂の機械流れ方向(Machine Direction:MD)とフィルムの長手方向が一致する。また、光学フィルムFが延伸フィルムである場合、通常はフィルムの長尺方向、すなわち機械流れ方向(MD)に沿って縦延伸を行うため、縦延伸方向がフィルムの長手方向(機械流れ方向:MD)に一致する。光学フィルムFが二軸延伸フィルムの場合、横延伸方向がフィルムの長手方向に略垂直な方向(TD)に一致する。
なお、「フィルム長手方向に略垂直な方向」は、フィルム長手方向(MD)と完全に垂直(90°)に交差(直交)する方向が好ましいが、直交する方向からある程度のずれも許容することができる。すなわち、本明細書において「フィルム長手方向に略垂直な方向」とは、フィルム長手方向(MD)と完全に垂直(90°)に交差する方向のみならず、90°から±10°程度斜めに傾斜した範囲(すなわち80°〜100°の範囲)まで含むものと定義する。
光学フィルムFの法線方向から平面に向けて垂直にX線を照射し、得られた回折パターンをイメージングプレートなどに記録すると、光学フィルムFを構成する結晶の格子間距離や配向性によって種々の回折パターンを得ることができる。
次に、本発明におけるX線回折強度の比の算出方法について具体的に説明する。まず、図1(a)に示すように、光学フィルムFの表面の法線方向から光学フィルムFの表面に対して垂直にX線を照射する。光学フィルムFを透過したX線は、ブラッグの法則を満たす方向に回折され、入射X線の延長線上を中心Oとして、この延長線と2θの角度をなす同心円状のX線回折像をイメージングプレートI上に示す。このX線回折像から各回折線の積分強度を計算し、縦軸をX線回折強度、横軸を2θとするX線回折パターンのプロファイルを作成する。次に、このX線回折パターンから2θ=10〜40°の範囲内でのX線回折強度の最大値を算出し、フィルム長手方向(MD)の最大X線回折強度として採用する。
続いて、図1(b)に示すように、法線方向を中心に光学フィルムFを90°回転させ、TDとMDを入れ替えてX線を照射する。そして、上記と同様にX線回折像を記録し、X線回折パターンを作成する。このX線回折パターンから2θ=10〜40°の範囲内でのX線回折強度の最大値を算出し、フィルム長手方向(MD)に略垂直な方向(TD)の最大X線回折強度とする。
最大X線回折強度の比は、上記で得られた長手方向の最大X線回折強度と垂直方向の最大X線回折強度のうち、大きい方の値を分母、小さい方の値を分子としたときの比で表される。具体的には、下記の式で算出することができる。
最大X線回折強度の比=長手方向の最大X線回折強度/垂直方向の最大X線回折強度
(ここで、「長手方向の最大X線回折強度」>=「垂直方向の最大X線回折強度」である。)、あるいは、
最大X線回折強度の比=垂直方向の最大X線回折強度/長手方向の最大X線回折強度
(ここで、「長手方向の最大X線回折強度」<「垂直方向の最大X線回折強度」である。)
X線回折測定の具体的方法としては、例えばフィルム試料10cm×10cmを切り出し、(株)リガク製X線回折装置RotaFlex RU200Bを用いてCuKα線からX線ビームを得てフィルムに照射し、回折ビームをイメージングプレートに回折パターンとして記録する方法が挙げられる。
次に、光学フィルムFの位相差値について説明する。光学フィルムFは、波長590nmにおける面内位相差値Rが0〜400nmの範囲であり、かつ波長590nmにおける厚み方向位相差値Rthが0〜400nmの範囲であるものが好ましい。面内位相差値Rや厚み方向位相差値Rthが400nmを超えると、位相差が発現しすぎて光学フィルムFとしては好ましくなく、特に後述するように偏光フィルムの保護フィルムや位相差フィルムとして光学フィルムFを用いる場合には、表示ムラ等が生じやすくなる。
ここで、光学フィルムFの面内遅相軸方向の屈折率をn、光学フィルムFの面内進相軸方向の屈折率をn、位相差層の厚み方向の屈折率をn、フィルムの厚みをdとしたときに、面内位相差値Rと厚み方向位相差値Rthは以下の式で表すことができる。
=(n−n)×d (1)
th=〔(n+n)/2−n〕×d (2)
なお、厚み方向位相差値Rthは、面内位相差値R、遅相軸を傾斜軸として40°傾斜して測定した位相差値R40、フィルムの厚みd、フィルムの平均屈折率nを用いて、式(1)と次式(4)〜(7)から数値計算によりn、n、nを求め、これらを式(2)に代入して算出することができる。参考までに、N係数=は、式(3)から算出することができる。以下、本明細書の他の記載において同様である。
係数=(n−n)/(n−n) (3)
40=(n−ny′)×d/cos(φ) (4)
(n+n+n)/3=n (5)
ここで、
φ=sin−1[sin(40°)/n] (6)
y′=n×n/[n ×sin(φ)+n ×cos(φ)]1/2 (7)
市販の位相差測定装置では、ここに示した数値計算を装置内で自動的に行い、面内位相差値Rや厚み方向位相差値Rthなどを自動的に表示するようになっているものが多い。このような測定装置としては、例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を挙げることができる。
次に、光学フィルムFを構成するオレフィン系樹脂について説明する。オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン又は他のシクロペンタジエン誘導体等の環状オレフィンモノマーを、重合用触媒を用いて重合した環状オレフィン系樹脂や、エチレン又はプロピレン等の鎖状オレフィンモノマーを、重合用触媒を用いて重合した鎖状オレフィン系樹脂が挙げられる。
ここで、環状オレフィン系樹脂としては、例えば、以下の樹脂を例示することができる。
(1)シクロペンタジエンとオレフィン類とからディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;
(2)ジシクロペンタジエンとオレフィン類又はメタクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;
(3)ノルボルネン、テトラシクロドデセン及びそれらの誘導体類並びにその他の環状オレフィンモノマーから選択される2種以上を用いて同様に開環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;
(4)ノルボルネン、テトラシクロドデセン又はそれらの誘導体に、ビニル基を有する芳香族化合物等を付加共重合させて得られる樹脂。
また、鎖状オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が例示される。これらの樹脂材料のうち、偏光フィルムとの接着性が比較的良好であり、製膜したフィルムの柔軟性が高く薄膜化が可能であること、原料が安価であり製造コストが低いことなどの点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体で構成されてもよく、ポリプロピレンと他のコモノマーとの共重合体であってもよい。
プロピレンに共重合されるコモノマーとしては、例えば、エチレンや炭素原子数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。この場合、α−オレフィンの具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上C);1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上C);1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上C);1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上C);1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン(以上C);1−ノネン(C);1−デセン(C10);1−ウンデセン(C11);1−ドデセン(C12);1−トリデセン(C13);1−テトラデセン(C14);1−ペンタデセン(C15);1−ヘキサデセン(C16);1−ヘプタデセン(C17);1−オクタデセン(C18);1−ノナデセン(C19)等。このうち、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが好ましい。共重合性の観点からは、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、とりわけ1−ブテンや1−ヘキセンが好適である。
共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。好ましい共重合体として、プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体が挙げられる。プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体において、エチレンユニットの含量や1−ブテンユニットの含量は、例えば、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により赤外線(IR)スペクトル測定を行うことで求めることができる。
光学フィルムFとしての透明度や加工性を上げる観点からは、プロピレンを主体とし、任意の不飽和炭化水素とのランダム共重合体にするのが好ましく、中でもエチレンとの共重合体が好ましい。共重合体とする場合、プロピレン以外の不飽和炭化水素類の共重合割合は、1〜10重量%の範囲内にするのが有利であり、より好ましい共重合割合は3〜7重量%の範囲内である。プロピレン以外の不飽和炭化水素類のユニットを1重量%以上とすることで、光学フィルムFの加工性や透明性が上がるため好ましい。一方、その割合が10重量%を超えると、樹脂の融点が下がり、耐熱性が悪くなるため好ましくない。なお、二種類以上のコモノマーとポリプロピレンとの共重合体とする場合には、その共重合体に含まれるすべてのコモノマーに由来するユニットの合計含量が1〜10重量%であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、プロピレンと他の共重合性コモノマーとを共重合する方法によって製造することができる。公知の重合用触媒としては、例えば、以下の触媒を挙げることができる。
(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒;
(2)マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系;
(3)メタロセン系触媒等
これら触媒系の中でも、(2)に示す触媒系が一般的である。より具体的には、有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、テトラエチルジアルモキサン等が好ましい。また、電子供与性化合物としては、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン等が好ましい。
一方、(1)に示す固体触媒成分としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載の触媒系が挙げられる。また、(3)に示すメタロセン系触媒としては、例えば、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、特許第2668732号公報等に記載の触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンのような炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法等によって製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。なお、耐熱性の点から、シンジオタクチックか、あるいはアイソタクチックが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜200g/10分、特に0.5〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。なお、このMFRの値は、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定される値である。MFRがこの範囲にあるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負荷をかけることなく均一なフィルム状物を得ることができる。
このポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加物が配合されていてもよい。添加物としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、酸化防止剤としては、例えば1分子中にフェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤等を用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば2−ヒドロキシベンゾフェノン系やヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系のような紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線遮断剤等が挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリン酸のような高級脂肪酸、それらの塩等が挙げられる。造核剤としては、例えばソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンのような高分子系造核剤等が挙げられる。アンチブロッキング剤としては、無機系、有機系を問わず球状やそれに近い形状の微粒子を使用できる。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
オレフィン系樹脂は、任意の方法で製膜し、必要に応じて延伸処理を行うことで光学フィルムFにすることができる。この光学フィルムFは、後述する保護フィルム25や位相差フィルム23として使用される場合には、透明で実質的に面内位相差のないものが好ましい。面内位相差が実質的にない光学フィルムFは、例えば、溶融樹脂からの押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延し、溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などによって得ることができる。
(未延伸フィルム)
以下、押出成形法により未延伸フィルムである光学フィルムFを製造する方法について詳しく説明する。押出成形においては、オレフィン系樹脂は、押出機中でスクリューの回転によって溶融混練され、Tダイからシート状に押出される。押出される溶融状シートの温度は、180〜300℃程度である。このときの溶融状シートの温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になり、フィルムに位相差ムラが生じやすくなる。また、その温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、溶融状シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。
押出機は、単軸押出機であっても二軸押出機であってもよい。例えば単軸押出機を用いる場合は、スクリューの長さLと直径Dとの比であるL/Dが24〜36程度、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積Vと樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積Vとの比である圧縮比V/Vが1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ又はマドック型の混練部分を有するタイプなどのスクリューを用いることができる。オレフィン系樹脂の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36であり、圧縮比V/Vが2.5〜3.5であるバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。
また、オレフィン系樹脂の劣化や分解を可及的に抑制するため、押出機内は、窒素雰囲気又は真空にすることが好ましい。さらに、オレフィン系樹脂が劣化したり分解したりすることで生じる揮発ガスを取り除くため、押出機の先端に1mmφ以上5mmφ以下程度のオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。オリフィスの設置により押出機先端部分の樹脂圧力を高めることは、当該先端部分での背圧を高めることを意味しており、これにより押出の安定性を向上させることができる。用いるオリフィスの直径は、より好ましくは2mmφ以上4mmφ以下である。
押出に使用されるTダイは、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましく、また、そのリップ部分は、溶融したオレフィン系樹脂との摩擦係数の小さい材料でめっき又はコーティングされ、更にリップ先端が0.3mmφ以下に研磨されたシャープなエッジ形状のものが好ましい。摩擦係数の小さい材料としては、タングステンカーバイド系やフッ素系の特殊めっきなどが挙げられる。このようなTダイを用いることにより、目ヤニの発生を抑制でき、同時にダイラインを抑制できるので、外観の均一性に優れる樹脂フィルムが得られる。このTダイは、マニホールドがコートハンガー形状であって、かつ以下の条件(i)又は(ii)を満たすことが好ましく、更には条件(iii)又は(iv)を満たすことがより好ましい。
(i)Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの厚み方向長さ>180mm、
(ii)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの厚み方向長さ>220mm、
(iii)Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの高さ方向長さ>250mm、
(iv)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの高さ方向長さ>280mm。
このような条件を満たすTダイを用いることにより、Tダイ内部での溶融状オレフィン系樹脂の流れを整えることができ、かつ、リップ部分でも厚みムラを抑えながら押出すことができるため、より厚み精度に優れ、位相差のより均一な光学フィルムFを得ることができる。
なお、オレフィン系樹脂の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプを取り付けることが好ましい。また、オレフィン系樹脂中の異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。
光学フィルムFは、Tダイから押出された溶融状シートを、金属製冷却ロール(チルロール又はキャスティングロールともいう)と、その金属製冷却ロールの周方向に圧接して回転する弾性体を含むタッチロールとの間で挟圧し、冷却固化させることにより得ることができる。この際、タッチロールは、ゴムなどの弾性体がそのまま表面となっているものでもよいし、弾性体ロールの表面を金属スリーブからなる外筒で被覆したものでもよい。弾性体ロールの表面が金属スリーブからなる外筒で被覆されたタッチロールを用いる場合は、通常、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に、オレフィン系樹脂の溶融状シートを直接挟んで冷却する。一方、表面が弾性体となっているタッチロールを用いる場合は、オレフィン系樹脂の溶融状シートとタッチロールとの間に熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを介在させて挟圧することもできる。
オレフィン系樹脂の溶融状シートを、上記のような冷却ロールとタッチロールとで挟んで冷却固化させるに際しては、冷却ロール及びタッチロールの表面温度を低くしておき、溶融状シートを急冷させることが好ましい。例えば、両ロールの表面温度を0℃以上30℃以下の範囲に調整することが好ましい。これらの表面温度が30℃を超えると、溶融状シートの冷却固化に時間がかかるため、オレフィン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなることがある。一方、ロールの表面温度が0℃を下回ると、金属製冷却ロールの表面が結露して水滴が付着し、得られるフィルムの外観を悪化させる傾向がある。
使用する金属製冷却ロールは、その表面状態が光学フィルムFの表面に転写されるため、その表面に凹凸がある場合には、得られる光学フィルムFの厚み精度を低下させる可能性がある。そこで、金属製冷却ロールの表面は可能な限り鏡面状態であることが好ましい。具体的には、金属製冷却ロールの表面の粗度は、最大高さの標準数列で表して0.4S以下であることが好ましく、更には0.05S〜0.2Sであることがより好ましい。
金属製冷却ロールとニップ部分を形成するタッチロールは、その弾性体における表面硬度が、JIS K 6301に規定されるスプリング式硬さ試験(A形)で測定される値として、65〜80であることが好ましく、70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度のタッチロールを用いることにより、溶融状シートにかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に溶融状シートのバンク(樹脂溜り)を生じさせることなくフィルムに成形することが容易となる。
溶融状シートを挟圧するときの圧力(線圧)は、金属製冷却ロールに対してタッチロールを押し付ける圧力により決まる。線圧は、50N/cm以上300N/cm以下とすることが好ましく、100N/cm以上250N/cm以下とすることがより好ましい。線圧を上記範囲とすることにより、バンクを形成することなく、一定の線圧を維持しながら光学フィルムFを製造することが容易となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で、オレフィン系樹脂の溶融状シートとともに熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを挟圧する場合、この二軸延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂と強固に熱融着しない樹脂であればよく、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの中でも、湿度や熱などによる寸法変化の少ないポリエステルが最も好ましい。二軸延伸フィルムの厚さは、通常5〜50μm程度であり、好ましくは10〜30μmである。
Tダイのリップから金属製冷却ロールとタッチロールとで挟圧されるまでの距離(エアギャップ)は、200mm以下とすることが好ましく、160mm以下とすることがより好ましい。Tダイから押出された溶融状シートは、リップからロールまでの間引き伸ばされて、配向が生じやすくなる。エアギャップを上記のように短くすることで、配向のより小さいフィルムを得ることができる。エアギャップの下限値は、使用する金属製冷却ロールの径とタッチロールの径、及び使用するリップの先端形状により決定され、通常50mm以上である。
光学フィルムFを製造するときの加工速度は、溶融状シートを冷却固化するために必要な時間により決定される。使用する金属製冷却ロールの径が大きくなると、溶融状シートがその冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、600mmφの金属製冷却ロールを用いる場合、加工速度は、最大で5〜20m/分程度となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧された溶融状シートは、ロールとの接触により冷却固化する。そして、必要に応じて端部をスリットした後、巻き取り機に巻き取られてロール状フィルムとなる。なお、巻き取りから光学フィルムFを使用するまでの間において光学フィルムFの表面を保護するために、巻き取りの際に光学フィルムFの両面に別の熱可塑性樹脂からなる表面保護フィルムを貼合した状態で巻き取ってもよい。オレフィン系樹脂の溶融状シートを熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムとともに金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧した場合には、その二軸延伸フィルムを一方の表面保護フィルムとすることもできる。
未延伸の光学フィルムFの厚みは、通常、20〜200μmであり、好ましくは20〜120μmである。光学フィルムFの厚みが20μm未満であると、ハンドリング性に劣る傾向にあり、厚みが200μmを超える場合にも、フィルムの剛性が高くなることによってハンドリング性が低下することがある。
光学フィルムFは、透明性に優れていることが必要である。具体的には、JIS K 7361に従って測定されるヘイズ値が10%以下、好ましくは7%以下である。へイズ値が10%を超えると、得られる偏光板を液晶表示装置に適用したときに、白輝度が低下し、画面が暗くなる傾向にある。なお、JIS K 7361に従って測定されるヘイズ値は、下記式で定義される。
(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)
以上の工程により、未延伸フィルムを製造することができる。この製造方法の詳細については、特開2007−253377号公報を参照することができる。
(二軸延伸フィルム)
光学フィルムFとしては、上述した未延伸フィルムのほか、延伸フィルムでもよい。延伸フィルムとしては、二軸延伸フィルムが好適である。一軸延伸フィルムでは、延伸方向に分子が偏って配向するため位相差が大きくなりやすく、光学フィルムFとしては適切でない。反対に二軸延伸フィルムは、二軸方向に延伸するため、一方にのみ分子が偏って配向することがなく、位相差が過度に発現しにくい。
二軸延伸フィルムは、上記の工程で得られた未延伸フィルムに対して延伸処理を行うことで製造することができる。この延伸処理により、機械的強度が高く薄肉の光学フィルムFを得ることができる。延伸方法としては、未延伸フィルムのフィルム長手方向(MD)に延伸する縦延伸と、これに略垂直な方向(TD)に延伸する横延伸を行う。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。
(1)縦延伸
縦延伸方法としては、例えば二つ以上のロールの回転速度差により未延伸フィルムを延伸する方法や、ロングスパン延伸法などが挙げられる。ロングスパン延伸法とは、二対のニップロールとその間に配置されたオーブンを有する縦延伸機を用い、オーブン中で未延伸フィルムを加熱しながら二対のニップロールの回転速度差により延伸する方法である。光学的な均一性が高い光学フィルムFを得るためには、特にロングスパン縦延伸法が有利である。また、縦延伸法のうち、特にエアーフローティング方式のオーブンを用いる方法が好ましい。
縦延伸後は、縦延伸フィルムを一旦ロール状に巻き取り、次の横延伸に供する。縦延伸倍率は、限定はされないが、通常は1.01〜2.50倍であり、光学的な均一性に優れる光学フィルムを得るためには、1.05〜2.0倍であることが好ましい
(2)横延伸
次に、横延伸について説明する。上記の縦延伸工程で得られた縦延伸フィルムに対して、次に横延伸が行われる。本実施形態の横延伸は、下記の3つの工程から構成される。
(2−1)オレフィン系樹脂の融点以上の予熱温度でフィルムを予熱する工程(予熱工程);
(2−2)予熱温度よりも低い延伸温度でフィルムを横方向に延伸する工程(横延伸工程);
(2−3)横方向に延伸された横延伸フィルムを熱固定する工程(熱固定工程)。
代表的な横延伸の方法としては、テンター法が挙げられる。テンター法は、フィルム幅方向の両端をチャックで固定したフィルムを、オーブン中でチャック間隔を広げて延伸する方法である。テンター法においては、各工程はそれぞれのゾーンで行われる。この場合、予熱工程(Y1)を行うゾーン、横延伸工程(Y2)を行うゾーン、熱固定工程(Y3)を行うゾーンのオーブン温度は、独立に温度調節をすることができる装置を使用する。
(2−1)予熱工程
予熱工程は、フィルムを横方向に延伸する工程の前に行われる工程であり、フィルムを延伸するのに十分な高さの温度までフィルムを加熱する工程である。予熱温度は、オーブンの予熱工程を行うゾーン内の雰囲気温度を意味し、延伸するフィルムのオレフィン系樹脂の融点以上の温度である。予熱工程の具体的な温度は、オレフィン系樹脂の融点にもよるが、通常は90〜180℃、好ましくは110〜160℃、更に好ましくは135〜145℃の範囲内の温度である。
(2−2)横延伸工程
横延伸工程は、フィルムを横方向(幅方向)に延伸する工程である。この横延伸工程での延伸温度は予熱温度より低い温度である。予熱されたフィルムを予熱工程よりも低い温度で延伸することにより、フィルムを横方向に均一に横延伸できるようになり、その結果、光軸の均一性が優れた光学フィルムFを得ることができる。延伸温度は、予熱工程における予熱温度より5〜20℃低いことが好ましく、7〜15℃低いことがより好ましい。
延伸処理による延伸倍率は、50〜300%が好ましく、特に100〜250%、更に好ましくは150〜200%である。延伸倍率が50%を下回ると、光学フィルムFの機械的強度がそれほど向上しないため好ましくない。また、延伸倍率が300%を上回ると、膜厚が薄くなりすぎて逆に破断しやすくなったり、ハンドリング性が低下したりするため好ましくない。なお、ここでいう延伸倍率は、以下の数式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
(2−3)熱固定工程
熱固定工程は、延伸工程終了時におけるフィルム幅を保った状態でフィルムをオーブン内の所定温度の雰囲気内を通過させる工程であり、横延伸工程で延伸された光学フィルムFの光学的特性の安定性を効果的に確保するために実施される。この熱固定工程では、横延伸工程における光学フィルムFの幅をそのまま保持した状態で、所定の熱固定温度のゾーンにフィルムを通過させる。熱固定工程での熱固定温度は、オーブンの熱固定工程を行うゾーンにおける雰囲気温度を意味する。フィルムの光軸の振れを効率的に抑制するために、熱固定温度は、延伸工程における延伸温度よりも5℃低い温度から延伸温度よりも30℃高い温度までの範囲内であることが好ましい。
熱固定工程での光学フィルムFの滞留時間は、10〜120秒であることが好ましく、より好ましくは30〜90秒、更に好ましくは30〜60秒である。滞留時間とは、テンター延伸機の熱固定工程を行うゾーン内に光学フィルムFが存在する時間を意味する。熱固定工程での滞留時間が10秒に満たないと、最終的に得られる光学フィルムFの熱安定性が不十分となる場合がある。また、滞留時間が120秒を超えると、生産性が落ちる問題がある。
横延伸の工程は、更に熱緩和工程を有してもよい。熱緩和工程は、横延伸工程においてフィルムを所定の幅に延伸した後、チャックの間隔を数%(通常は、0.5〜7%)だけ狭くし、無駄な歪(残留歪)を取り除く工程である。通常、テンター法においては、熱緩和工程は、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとの間であって、かつ他のゾーンから独立して温度設定が可能な熱緩和ゾーンにおいて行われる。
以上の工程により二軸延伸フィルムを得ることができる。この延伸方法の詳細については、特開2007−286615号公報を参照することができる。
こうして得られた光学フィルムFは、延伸処理が施されているため、未延伸フィルムに比べて機械的強度が高く破断しにくいものとなる。
また、光学フィルムFは、二軸方向に延伸するため、未延伸フィルムに比べて薄肉となっている。具体的には、延伸後の光学フィルムFの膜厚は、未延伸フィルムの膜厚を1とした場合に対して、0.7〜0.25倍の厚みとなる。具体的な膜厚は、通常4〜140μmであり、薄膜化の観点からは特に5〜40μmが好ましい。このように40μmを下回る薄い膜厚の光学フィルムFは、特許文献1のようにセルロースアセテート系樹脂を用いた場合には実現が困難であり、本発明のようにオレフィン系樹脂を二軸延伸することによって得ることができる。
(偏光板20)
次に、本発明の光学フィルムFを使用した偏光板について説明する。図2は、本発明の一実施形態における偏光板を示す図面であり、偏光板の断面模式図を示している。図2(a)に示すように、偏光板20は、偏光フィルム21と、偏光フィルム21の一方の面に積層された位相差フィルム23と、を少なくとも備えている。偏光フィルム21と保護フィルム25は、接着剤層(不図示)を介して貼合され、積層されている。あるいは他の実施態様として、図2(b)に示すように、偏光板20は、偏光フィルム21と、この偏光フィルム21の一方の面に積層された保護フィルム25と、を備えるものでもよい。さらに他の実施形態として、図2(c)に示すように、偏光板20として、保護フィルム25と偏光フィルム21と位相差フィルム23がこの順に積層されたものでもよい。以下、偏光板20を構成する各層について説明する。
(1)偏光フィルム21
偏光フィルム21は、自然光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムである。偏光フィルム21としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができ、ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルム21の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば10〜150μm程度である。
偏光フィルム21は、通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、を経て製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速度の異なるロール間で一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いて一軸に延伸する方法などが採用できる。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水等の溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10−4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10−3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒程度、更に好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルム21が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色とホウ酸処理が施され、偏光フィルム21が得られる。偏光フィルム21の厚みは、例えば2〜40μm程度とすることができる。
(2)位相差フィルム23(光学フィルムF)
位相差フィルム23は、液晶セル40に貼合したときに視野角を広げる光学補償機能を有する光学補償フィルムである。本発明では、位相差フィルム23として上述した光学フィルムFを好ましく用いることができる。すなわち、保護フィルム25は、オレフィン系樹脂からなり、X線回折強度の比が1.3以下の光学フィルムFを用いた位相差フィルムが好ましい。なお、オレフィン系樹脂は、透明性や偏光フィルム21との接着性を阻害しない範囲で、添加物を含有することができる。
位相差フィルム23は、オレフィン系樹脂をフィルム状に成形した未延伸フィルムを二軸方向に延伸したものが好ましい。この場合、所望とする位相差値が得られるように、延伸倍率と延伸速度とを適切に調整するほか、延伸時の予熱温度、延伸温度、ヒートセット温度、冷却温度等の各種温度、及びそのパターンを適宜選択すればよい。
位相差フィルム23の厚みについては、特に制限されないが、4〜140μmの範囲内であることが好ましい。位相差フィルム23の厚みが4μm未満である場合には、フィルムの取り扱いが難しく、また所定の位相差値が発現し難くなる傾向にあるためであり、一方、位相差フィルム23の厚みが140μmを超える場合には、加工性に劣ったり、透明性が低下したり、得られた偏光板20の重量が大きくなったりするなどの場合がある。特に、薄膜化の観点からは、位相差フィルム23の厚みは5〜40μmの範囲内が好ましい。
位相差フィルム23としては、適用される液晶セルのモード等に応じて種々の物を適宜選択することができる。位相差フィルム23の例としては、ポジティブBプレート(正の二軸性位相差フィルム)を挙げることができる。ポジティブBプレートは、樹脂を製膜した未延伸フィルムを二軸方向に延伸することで作製することができる。ポジティブBプレートとは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をn、フィルムの面内進相軸方向の屈折率をn、フィルムの厚み方向の屈折率をnとしたときに、「n>n>n」の関係となる位相差フィルムである。位相差フィルム23の波長590nmにおける面内位相差値Rは0〜400nmが好ましく、更に好ましくは30〜150nmである。またN係数は、1.1〜7の範囲、とりわけ1.4〜5の範囲にあることが好ましい。これらの範囲から、適用される液晶表示装置に要求される視野角特性に合わせて、適宜光学特性の値を選択すればよい。
偏光フィルム21と位相差フィルム23(ポジティブBプレート)を積層する際の光軸は、偏光フィルム21の吸収軸に対して位相差フィルム23の遅相軸が0±0.5°、好ましくは0°であるか、あるいは90±0.5°、好ましくは90°であることが好ましい。
(3)保護フィルム25(光学フィルムF)
保護フィルム25は、偏光フィルム21の外側に積層され、偏光フィルム21の表面を保護するためのフィルムである。本発明では、保護フィルム25として上述した光学フィルムFを好ましく用いることができる。すなわち、保護フィルム25は、オレフィン系樹脂からなり、X線回折強度の比が1.3以下の光学フィルムFを用いた保護フィルムが好ましい。なお、オレフィン系樹脂は、透明性や偏光フィルム21との接着性を阻害しない範囲で、添加物を含有することができる。
保護フィルム25は、オレフィン系樹脂をフィルム状に成形したものを未延伸のまま用いてもよいが、延伸処理を施したものを用いてもよい。未延伸のまま用いることで、保護フィルム25の厚みが大きくなるため、保護フィルム25の耐摩耗性等の性能が向上するほか、ハンドリング性も向上する。また、未延伸フィルムでは、延伸処理を行う必要がないためフィルムの製造コストを低減することが可能となる。一方、延伸処理した場合には、保護フィルム25の厚みが薄くなるため偏光板20を薄型化することが可能となるとともに、延伸処理により保護フィルム25の機械的強度が向上するという利点もある。なお、延伸処理は、フィルム長手方向(MD)及びこれに略垂直な方向(TD)の双方に延伸する二軸延伸である。一軸延伸の場合は、上述したように延伸方向に偏って結晶が配向するため得られる光学フィルムFに位相差が発現しやすくなり、偏光板20の保護フィルム25として適さないためである。
また、保護フィルム25として各種の機能を兼ね備えた機能性フィルムを用いることもできる。このような機能性フィルムとしては、例えば防眩フィルムを挙げることができる。防眩フィルムとしては、微細な凹凸形状を表面に有するハードコート層が形成されたものを挙げることができる。このようなハードコート層は、基材フィルムの表面に有機微粒子又は無機微粒子を含有した塗膜を形成する方法や、有機微粒子又は無機微粒子を含有する、又は含有しない塗膜を形成後、該塗膜を、凹凸形状を付与したロールの凹凸表面に押し当てる方法(例えばエンボス法等)などによって製造することができる。
さらに、機能性を備えた保護フィルム25としては、上述した防眩フィルムに限定されず、他の機能性フィルムであってもよい。例えば、反射防止、低反射、防汚、帯電防止などの機能を有するフィルムであってもよい。
[反射防止・低反射性の付与(反射防止・低反射フィルム)]
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一つの層(すなわち、高屈折率層又は中屈折率層)を、延伸又は未延伸セルロースアセテート系等の樹脂フィルム上に設けることで形成される。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法、物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾル/ゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法などが挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗設してなる反射防止膜が各種提案されている。またこのような、塗布による反射防止フィルムの最上層表面に微細な凹凸の形状を付与した防眩性反射防止層からなる反射防止フィルムも挙げられる。
[防汚性等の付与]
防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、セルロースアセテート系等の樹脂フィルムに公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低n層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
[防塵性・帯電防止層の付与]
防塵性、帯電防止の特性を付与する目的で、セルロースアセテート等の樹脂フィルムに公知のカチオン系界面活性剤あるいはポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物にその構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には低n層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
(4)接着剤層(不図示)
偏光フィルム21と保護フィルム25の貼合は、通常、接着剤層を介してなされる。偏光フィルム21の両面に設けられる接着剤層を形成する接着剤は、同種であってもよく、異種であってもよい。
接着剤としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂などを接着剤成分とする接着剤を用いることができる。好ましく用いられる接着剤の1つは、無溶剤型の接着剤である。無溶剤型の接着剤は、有意量の溶剤を含まず、加熱や活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等)の照射により反応硬化する硬化性化合物(モノマー又はオリゴマーなど)を含み、この硬化性化合物の硬化により接着剤層を形成するものであり、典型的には、加熱や活性エネルギー線の照射により反応硬化する硬化性化合物と、重合開始剤とを含む。特に、保護フィルム25がポリプロピレン系樹脂からなる場合、ポリプロピレン系樹脂フィルムは透湿度が低いため、水系接着剤を使用した場合に水抜けが悪く、接着剤の水分によって偏光フィルム21の損傷や偏光性能の劣化などを引き起こす場合がある。したがって、このような透湿度の低い樹脂フィルムを接着する場合には、無溶剤系の接着剤が好ましい。
速硬化性及びこれに伴う偏光板20の生産性向上の観点から、接着剤層を形成する好ましい接着剤の例として、活性エネルギー線の照射で硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。このような活性エネルギー線硬化性接着剤の例として、例えば、紫外線や可視光などの光エネルギーで硬化する光硬化性接着剤が挙げられる。光硬化性接着剤としては、反応性の観点から、カチオン重合で硬化するものが好ましく、特に、エポキシ化合物を硬化性化合物とする無溶剤型のエポキシ系接着剤は、偏光フィルム21と保護フィルム25との接着性に優れているためより好ましい。
上記無溶剤型のエポキシ系接着剤に含有される硬化性化合物であるエポキシ化合物としては、特に制限されないが、カチオン重合により硬化するものが好ましい。特に、耐候性や屈折率などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を用いることがより好ましい。このような分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物の水素化物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが例示できる。なお、硬化性化合物であるエポキシ化合物は、通常、分子内に2個以上のエポキシ基を有する。
未硬化のエポキシ系接着剤からなる接着剤層を介して偏光フィルム21に保護フィルム25を貼合した後は、活性エネルギー線を照射するか、又は加熱することにより、接着剤層を硬化させ、偏光フィルム21上に保護フィルム25を固着させる。活性エネルギー線の照射により硬化させる場合、好ましくは紫外線が用いられる。具体的な紫外線光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどを挙げることができる。活性エネルギー線、例えば紫外線の照射強度や照射量は、カチオン重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム21などのフィルムに悪影響を与えないように適宜選択される。また、加熱により硬化させる場合は、一般的に知られた方法で加熱することができ、そのときの温度や時間も、カチオン重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム21などのフィルムに悪影響を与えないように適宜選択される。
以上のようにして得られる、硬化後のエポキシ系接着剤からなる接着剤層の厚みは、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であり、また通常は1μm以上である。
また、接着剤として、接着剤層を薄くする観点から、水系接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解した、又は接着剤成分を水に分散させた接着剤を用いることもできる。水系接着剤としては、例えば、主成分として架橋性エポキシ樹脂やウレタン樹脂を用いた水系組成物が挙げられる。
架橋性エポキシ樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂を挙げることができる。かかるポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている"スミレーズレジン 650"や"スミレーズレジン 675"などがある。
接着剤成分として水溶性のエポキシ樹脂を用いる場合は、塗工性と接着性を更に向上させるために、ポリビニルアルコール系樹脂などの他の水溶性樹脂を混合するのが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。中でも、酢酸ビニルと不飽和カルボン酸又はその塩との共重合体のケン化物、すなわち、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。なお、ここでいう「カルボキシル基」とは、「−COOH」やその塩を含む概念である。
市販されている好適なカルボキシル基変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、それぞれ(株)クラレから販売されているクラレポバールKL−506、クラレポバールKL−318及びクラレポバールKL−118、それぞれ日本合成化学工業(株)から販売されているゴーセナール(登録商標)T−330及びゴーセナール(登録商標)T−350、電気化学工業(株)から販売されているDR−0415、それぞれ日本酢ビ・ポバール(株)から販売されているAF−17、AT−17及びAP−17などが挙げられる。
水溶性のエポキシ樹脂を含む接着剤とする場合、そのエポキシ樹脂及び必要に応じて加えられるポリビニルアルコール系樹脂などの他の水溶性樹脂を水に溶解して、接着剤溶液を構成する。この場合、水溶性のエポキシ樹脂は、水100重量部あたり0.2〜2重量部程度の範囲の濃度とするのが好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂を配合する場合、その量は、水100重量部あたり1〜10重量部程度、さらには1〜5重量部程度とするのが好ましい。
一方、ウレタン系樹脂を含む水系の接着剤を用いる場合、適当なウレタン樹脂の例として、アイオノマー型のウレタン樹脂、特にポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を挙げることができる。ここで、アイオノマー型とは、骨格を構成するウレタン樹脂中に、少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。また、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。このようなアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の市販品として、例えば、DCI(株)から販売されている"ハイドラン(登録商標) AP−20"、"ハイドラン(登録商標) APX−101H"などがあり、いずれもエマルジョンの形で入手できる。
アイオノマー型のウレタン樹脂を接着剤成分とする場合、通常はさらにイソシアネート系などの架橋剤を配合するのが好ましい。イソシアネート系架橋剤は、分子内にイソシアナト基(−NCO)を少なくとも2個有する化合物であり、その例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのようなポリイソシアネート単量体のほか、それらの複数分子がトリメチロールプロパンのような多価アルコールに付加したアダクト体、ジイソシアネート3分子がそれぞれの片末端イソシアナト基の部分でイソシアヌレート環を形成した3官能のイソシアヌレート体、ジイソシアネート3分子がそれぞれの片末端イソシアナト基の部分で水和・脱炭酸して形成されるビュレット体のようなポリイソシアネート変性体などがある。好適に使用しうる市販のイソシアネート系架橋剤として、例えば、DCI(株)から販売されている"ハイドラン(登録商標)アシスター C−1"などが挙げられる。
アイオノマー型のウレタン樹脂を含む水系接着剤を用いる場合は、粘度と接着性の観点から、そのウレタン樹脂の濃度が10〜70重量%程度、更には20重量%以上、また50重量%以下となるように、水中に分散させたものが好ましい。イソシアネート系架橋剤を配合する場合は、ウレタン樹脂100重量部に対してイソシアネート系架橋剤が5〜100重量部程度となるように、その配合量を適宜選択すればよい。
偏光フィルム21の表面に接着剤を用いて保護フィルム25を貼合する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光フィルム21及び/又はこれに貼合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
偏光フィルム21及び/又はそれに貼合されるフィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
水系接着剤を介して接合された積層体は、通常、乾燥処理が施され、接着剤層の乾燥、硬化が行われる。乾燥処理は、例えば熱風を吹き付けることにより行うことができる。乾燥温度は、通常40〜100℃程度の範囲から選択され、好ましくは60〜100℃である。乾燥時間は、例えば20〜1,200秒程度である。乾燥後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。接着剤層の厚みが大きくなりすぎると、偏光板20の外観不良となりやすい。
(偏光フィルム21と位相差フィルム23及び保護フィルム25の貼合)
次に、偏光フィルム21と位相差フィルム23及び保護フィルム25の貼合方法について説明する。まず、偏光フィルム21と位相差フィルム23の貼合方法について説明する。偏光板20は、シート・トゥ・シート貼合やシート・トゥ・ロール貼合(ロール・トゥ・シート貼合ともいう)、ロール・トゥ・ロール貼合方式など、公知の方法で製造することができる。なお、シート・トゥ・シート貼合方式は、偏光フィルム21と位相差フィルム23をいずれも枚葉体にチップカットして貼合する方式である。また、シート・トゥ・ロール貼合方式は、偏光フィルム21と位相差フィルム23のうち一方がロール状フィルムで、もう一方のフィルムを枚葉体にチップカットしてこのロール状フィルムに貼合する方式である。ロール・トゥ・ロール貼合方式は、ロール状の偏光フィルム21とロール状の位相差フィルム23を貼合する方式である。偏光フィルムと保護フィルム25を貼合する場合も同様である。
偏光フィルム21と位相差フィルム23を貼り合わせる際には、偏光フィルム21のうち位相差フィルム23と貼り合わされる側の表面にコロナ放電処理を施し、この処理面を介して位相差フィルム23に貼合するようにすることが好ましい。このように表面処理することで、偏光フィルム21と位相差フィルム23との密着性が良好となる。偏光フィルムと保護フィルム25を貼合する場合も同様である。
(液晶表示装置1)
次に、本発明の偏光板20を備えた液晶表示装置について説明する。以下の例では、図2(c)に記した偏光板20を備えた液晶表示装置について説明する。図3は、液晶表示装置1の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。この図に示すように、液晶表示装置1は、液晶パネル2と、バックライト10と、光拡散板50と、を備えている。液晶パネル2は、液晶セル40と、液晶セル40の背面側に貼合された偏光板20と、液晶セル40の視認側に貼合された偏光板30と、から構成されている。本実施形態の偏光板20は、保護フィルム25と、偏光フィルム21と、位相差フィルム23と、粘着剤層27とがこの順に積層された層構成を有している。
偏光板20は、液晶セル40側に位相差フィルム23が、液晶セル40と反対側(液晶セル40から最も遠い側)に保護フィルム25が配置されるように液晶セル40に貼合される。また、偏光板30についても同様の層構成を有している。なお、本実施形態では背面側の偏光板20に光学フィルムFが設けられる構成について説明したが、視認側の偏光板30の保護フィルムとして本発明の光学フィルムを使用してもよいことはもちろんである。さらに、視認側、背面側の両方の偏光板に本発明の光学フィルムを保護フィルムとしてもよい。これらの場合、視認側の保護フィルムは観察者と対向する位置にあるため損傷や摩耗等が生じやすく、したがって上述した反射防止、低反射、防汚、帯電防止などの機能を保護フィルムに付与することが好ましい。
液晶セル40は、ガラス基板の間に液晶物質を封入したセルを電気的に制御することで、画像を表示させる素子である。より詳細には、液晶セル40は、図示しない表示制御部からの電気的制御により液晶物質の分子配向を変化させることで、液晶セル40の背面側に配置した偏光板20により偏光化されたバックライト10の光の偏光状態を変化させ、液晶セル40の視認側に配置した偏光板30を透過する光の光量を制御することによって画像を表示させる。液晶セル40のモードは特に制限されないが、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモード、OCBモード、ASMモードなどを使用することができる。
液晶パネル2や液晶表示装置1は、公知の方法で製造することができる。液晶パネル2の製造方法としては、ロール状に巻かれた長尺状の偏光板20や偏光板30を枚葉に切り出し、液晶セル40に貼合することで製造することができる。
通常、TNモードの液晶セル40を用いて液晶パネル2が形成される場合には、偏光板20と偏光板30の吸収軸は互いに直交(クロスニコル)であり、かつこれらの吸収軸は矩形の液晶セル40の長辺方向又は短辺方向に平行となるように配置される。
バックライト10は、液晶セル40を照明するための装置である。バックライト10の種類としては、エッジライト式や直下型方式などが挙げられる。エッジライト式のバックライト10は、側面に配置した冷陰極管などの光源から導光板を通じて液晶セル40に光を照射する。また、直下型方式のバックライト10では、液晶セル40の背面側に光源を配置して液晶セル40に光を照射する。バックライト10の種類は、液晶表示装置1の用途に応じたものを適宜採用することができる。
光拡散板50は、バックライト10からの光を拡散させる機能を有する光学部材であって、例えば、熱可塑性樹脂に光拡散剤である粒子を分散させて光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂フィルムの表面に凹凸を形成して光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂フィルムの表面に粒子が分散された樹脂組成物の塗布層を設け、光拡散性を付与したものなどであり得る。光拡散板50の厚みは、0.1〜5mm程度とすることができる。
光拡散板50と液晶パネル2との間には、輝度向上シート(反射型偏光フィルムである(「DBEF」など))、光拡散シートなど、他の光学機能性を示すシート又はフィルムを配置することもできる。他の光学機能性を示すシート又はフィルムは、必要に応じて2枚以上、複数種類配置することも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例において、使用量を表す部は、特に断りがない限り重量基準である。
[X線回折強度の測定]
X線回折測定は、以下の装置及び条件で行った。また、測定サンプルは、フィルムから10cm×10cmのサイズを切り出して使用した。最大X線回折強度は、回折パターンから2θ=10〜40°の範囲において最も強度の値の大きいピークを検出し、そのピークの頂点におけるX線回折強度の値とした。
装置:(株)リガク製 RotaFlex RU200B
使用X線及び負荷:Cu−Kα 60kV−200mA(Max)
検出器:IP(イメージングプレート)
[位相差値の測定]
サンプルフィルムの面内位相差値R及び厚み方向位相差値Rthは、以下の装置及び条件で測定した。測定方法は、フィルム法線方向に対して片側50°の角度まで10°ステップで傾斜した方向から上記波長の光を入射し、全6点測定を行い、測定された位相差値と平均屈折率の過程値及び入力された膜厚値をもとに、KOBRA 21ADHのソフトウェアにより算出した。
測定装置:KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製
測定条件:波長590nmの単色光を用いた回転検光子法
[実施例1:未延伸フィルム]
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体、樹脂選定試験で求められたパラメータ(A)=0.011、Tm=136℃、MFR=8g/10分、エチレン含有量=4.6重量%、CXS=4%、住友化学(株)製、商品名:ノーブレンW151)を、シリンダー温度を200℃とした65mmφ押出機に投入して溶融混練し、65kg/hの押出量で前記押出機に取り付けられた1200mm幅Tダイより押出した。
押出された溶融ポリプロピレン系樹脂を、12℃に温調した400mmφのキャスティングロールと、12℃に温調した金属スリーブからなる外筒とその内部にある弾性体ロールから構成されるタッチロールにより挟圧して冷却し、厚さ90μmのポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。エアギャップは115mm、キャスティングロールとタッチロールとの間で溶融ポリプロピレン系樹脂を挟圧した距離は20mmであった。
上記により得られた光学フィルムのX線回折強度の比を「[X線回折強度の測定]」、位相差値を「[位相差値の測定]」に記載の方法でそれぞれ算出した。その結果を表1に記載した。表中の「TD/MD」が最大X線回折強度の比を表している。以下の実施例、比較例においても同様である。
[実施例2:二軸延伸フィルム]
ポリプロピレン系樹脂(住友化学(株)製、商品名:ノーブレンW151)を、上記実施例1と同様の条件で溶融混錬・押出し、未延伸フィルムを得た。次に、得られたポリプロピレン系樹脂フィルムを、2組のニップロール対と当該2組のニップロール対の間にエアーフローティング方式のオーブンとを備えるロングスパン縦延伸機に導入し、縦延伸を行った。当該オーブンは、ポリプロピレン系樹脂フィルムの入口側の第1ゾーンと中間の第2ゾーン、出口側の第3ゾーンとに区分することができ、各ゾーンの長さは2.5m(オーブン全長:7.5m)であった。縦延伸は、第1ゾーンの温度を70℃、第2ゾーンの温度を90℃、第3ゾーンの温度を110℃、ポリプロピレン系樹脂フィルムのオーブン入口における速度を5m/分、縦延伸倍率1.8倍の条件で行った。得られたフィルムを幅900mmにてスリットした後、巻き取り機にて巻き取った。このようにして得られた原反を温度23℃、湿度50%の条件下にて14日間保管した。
さらに、この縦延伸フィルムに対してテンター法で横延伸を行い、二軸延伸フィルムを得た。横延伸の条件は、予熱ゾーンの温度=141℃、延伸ゾーンの温度=130℃、熱固定ゾーンの温度=130℃、延伸倍率=3.4倍であった。得られた光学フィルムのX線回折強度の比と位相差値を算出した。その結果を表1に記載した。
[比較例1:一軸延伸フィルム]
ポリプロピレン系樹脂(住友化学(株)製、商品名:ノーブレンW151)を、上記実施例1と同様の条件で溶融混錬・押出し、未延伸フィルムを得た。次に、得られたポリプロピレン系樹脂フィルムを、2組のニップロール対と当該2組のニップロール対の間にエアーフローティング方式のオーブンとを備えるロングスパン縦延伸機に導入し、縦延伸を行った。当該オーブンは、ポリプロピレン系樹脂フィルムの入口側の第1ゾーンと中間の第2ゾーン、出口側の第3ゾーンとに区分することができ、各ゾーンの長さは2.5m(オーブン全長:7.5m)であった。縦延伸は、第1ゾーンの温度を70℃、第2ゾーンの温度を90℃、第3ゾーンの温度を110℃、ポリプロピレン系樹脂フィルムのオーブン入口における速度を5m/分、縦延伸倍率1.8倍の条件で行った。得られたフィルムを幅900mmにてスリットした後、巻き取り機にて巻き取った。このようにして得られた原反を温度23℃、湿度50%の条件下にて14日間保管した。得られた光学フィルムのX線回折強度の比と位相差値を算出した。その結果を表1に記載した。
Figure 2012123182
表1から、実施例1(未延伸フィルム)と実施例2(二軸延伸フィルム)では、面内位相差値R、厚み方向位相差値Rthともに比較例1の一軸延伸フィルムと比較して大幅に値が小さく、位相差が過度に発現していないことがわかる。特に、実施例2の二軸延伸フィルムでは、膜厚が16μmとかなり小さく、薄膜化において非常に有利であることがわかる。また、回折パターン(図4〜6)から、実施例1(未延伸フィルム)の結晶はスメチカ晶(スメクチック晶)が主要な結晶構造体であり、実施例2(二軸延伸フィルム)及び比較例1(一軸延伸フィルム)ではα晶が主要な結晶構造体であると考えられる。
F 光学フィルム、I イメージングプレート、MD 機械流れ方向(フィルム長手方向)、TD 機械流れ方向(フィルム長手方向)に略垂直な方向、1 液晶表示装置、2 液晶パネル、10 バックライト、20 偏光板、21 偏光フィルム、23 位相差フィルム、25 保護フィルム(光学フィルム)、27 粘着剤層、30 偏光板、40 液晶セル、50 光拡散板

Claims (9)

  1. オレフィン系樹脂からなる光学フィルムであって、フィルム長手方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度と、前記フィルム長手方向に略垂直な方向の2θ=10〜40°の範囲内における最大X線回折強度とのうち、大きい方の値を小さい方の値で除した値が1.3以下であることを特徴とする光学フィルム。
  2. 下記式で定義される波長590nmにおける面内位相差値Rが0〜400nmの範囲であり、かつ波長590nmにおける厚み方向位相差値Rthが0〜400nmの範囲である、請求項1に記載の光学フィルム。
    =(n−n)×d
    th=((n+n)/2−n)×d
    (式中、n、n、nはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表し、かつn、nは前記光学フィルム面内方向の屈折率を、nは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
  3. 前記光学フィルムが無配向性フィルム又は二軸延伸フィルムである、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
  4. 前記光学フィルムが二軸延伸フィルムであり、膜厚が5〜40μmの範囲にある、請求項3に記載の光学フィルム。
  5. 前記オレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムと、前記光学フィルムに貼合された偏光フィルムとを備えることを特徴とする偏光板。
  7. 前記光学フィルムは無配向性フィルムからなる保護フィルムである、請求項6に記載の偏光板。
  8. 前記光学フィルムは二軸延伸フィルムからなる位相差フィルムである、請求項6に記載の偏光板。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の偏光板と、前記偏光板が貼合された液晶セルとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
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