JP2012037682A - ロール状偏光板及びその製造方法並びに偏光板チップ及びこれを備えた液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】偏光板生産のタクトタイムを短縮し、生産性を向上させることができるロール状偏光板及びその製造方法並びに偏光板チップ及びこれを備えた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25、偏光フィルム21、及び透明樹脂フィルム23がこの順に積層されてなるロール状偏光板20であって、偏光フィルム21の吸収軸Aと集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rとが任意の交差角度θcで交差しており、偏光フィルム21と集光フィルム25とは、ロール状の偏光フィルム21及びロール状の集光フィルム25を用いて、ロール・トゥ・ロール方式で貼合されている。偏光フィルム21や集光フィルム25を枚葉体にチップカットする工程が不要となるため、偏光板生産のタクトタイムを短縮することが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25、偏光フィルム21、及び透明樹脂フィルム23がこの順に積層されてなるロール状偏光板20であって、偏光フィルム21の吸収軸Aと集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rとが任意の交差角度θcで交差しており、偏光フィルム21と集光フィルム25とは、ロール状の偏光フィルム21及びロール状の集光フィルム25を用いて、ロール・トゥ・ロール方式で貼合されている。偏光フィルム21や集光フィルム25を枚葉体にチップカットする工程が不要となるため、偏光板生産のタクトタイムを短縮することが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、ロール状偏光板及びその製造方法並びに偏光板チップ及びこれを備えた液晶表示装置に関し、特に、プリズム状又はレンズ状の集光フィルムを備えたロール状偏光板及びその製造方法並びに偏光板チップ及びこれを備えた液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力が少ない、低電圧で動作する、軽量で薄型であるなどの特徴があるため、これらの特徴を生かして、各種の表示用デバイスに用いられている。特に、液晶テレビの市場拡大は著しく、また、低コスト化の要求も著しい。
通常の液晶表示装置は、冷陰極管やLEDを用いた面光源素子、光拡散板、1つ又は複数の拡散シート、集光シート、液晶セルに偏光板が貼合された液晶パネルなどにより構成されている。近年、壁掛け可能な大画面液晶テレビ用途などにおいて、液晶表示装置の薄型化の要求が顕在化しているが、この場合、液晶表示装置の薄型化に対応して、これに使用する部材の薄肉化、部材点数削減が必要となる。
一般的な液晶表示装置では、偏光板とバックライトとの間にプリズムシート(「集光シート」ともいう)を配置することで、バックライトからの光を液晶セルに向けて輝度向上を図っている。しかしながら、偏光板とバックライトとの間にプリズムシートを設ける場合、プリズムシートと偏光板との接触を防止するために、これらの部材間に一定のスペースを設ける必要があった。このため、液晶パネルやこれを備えた液晶表示装置が厚くなるという不都合があった。
そこで従来、偏光板のバックライト側の表面に集光性プリズム構造を有する保護フィルム(以下、「集光フィルム」という)を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、偏光板とは別にプリズムシートを設けたり、偏光板とプリズムシートとの間にスペースを設ける必要がないため、構成部品数を減らしたり、液晶表示装置を薄型化したりすることが可能となる。
ところで、保護フィルム等の樹脂フィルムが偏光フィルムに貼合された偏光板を製造する際、シート・トゥ・シート貼合やシート・トゥ・ロール貼合(ロール・トゥ・シート貼合ともいう)などの方式が用いられている。シート・トゥ・シート貼合方式は、偏光フィルムと樹脂フィルムをいずれも枚葉体にチップカットして貼合する方式である。一方、シート・トゥ・ロール貼合方式は、偏光フィルムと樹脂フィルムのうち一方がロール状フィルムで、もう一方のフィルムを枚葉体にチップカットしてこのロール状フィルムに貼合する方式である。
一方で、ロール状の偏光フィルムとロール状の樹脂フィルムを貼合するロール・トゥ・ロール貼合方式も知られている。本発明の発明者らも、以前、ロール状の直線偏光板と、光学補償機能を発現する塗料を塗布したロール状の光学補償フィルムとを、それぞれの長手方向を略平行にしてロール・トゥ・ロール貼合方式で積層させる技術を開発している(例えば、特許文献2参照)。
上述したようなプリズム形状を有する集光フィルムを偏光板に設ける場合、シート・トゥ・シート貼合方式やロール・トゥ・シート貼合方式では、偏光フィルムや集光フィルムを枚葉体にチップカットする工程や、偏光フィルムの吸収軸の方向と集光フィルムのプリズム形状の配列方向とを位置合わせして貼合する工程が必要となる。このため、偏光板の生産時のタクトタイムが長くなり、生産性が低下するという不都合がある。
一方で、ロール・トゥ・ロール貼合方式では、このようなチップカット工程が不要となるが、これまでは上述した特許文献2のような偏光フィルムと位相差フィルムとの貼合に用いられてきただけであり、特許文献1のようなプリズム形状を備えた偏光板の製造において偏光フィルムと集光フィルムとの貼合時に用いた例は知られていない。
本発明の目的は、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有する集光フィルムを備えたロール状偏光板であって、タクトタイムが短く生産性に優れたロール状偏光板及びその製造方法を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、タクトタイムが短く生産性に優れた偏光板チップやこれを備えた液晶表示装置を提供することである。
上記課題は、本発明のロール状偏光板によれば、プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム、偏光フィルム及び透明樹脂フィルムがこの順に積層されてなるロール状偏光板であって、前記偏光フィルムの吸収軸と前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状の稜線とが任意の交差角度で交差しており、前記偏光フィルムと前記集光フィルムとは、ロール状の偏光フィルム及びロール状の集光フィルムを用いて、ロール・トゥ・ロール方式で貼合されていることにより解決される。
この場合、前記交差角度が、ほぼ30°〜60°、又はほぼ120°〜150°の範囲であることが好ましい。
あるいは、前記交差角度が、ほぼ−15°〜15°、又はほぼ75°〜105°の範囲であると好適である。
また、前記偏光フィルムの前記吸収軸は、前記ロール状の偏光フィルムから繰り出される長尺状の偏光フィルムの長手方向に対して平行であり、前記集光フィルムの前記稜線は、前記ロール状の集光フィルムから繰り出される長尺状の集光フィルムの長手方向に対して前記交差角度で交差しており、前記長尺状の偏光フィルムと前記長尺状の集光フィルムとが、互いに長手方向が平行となるように貼合されていることが好ましい。
また、前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状は、一つのプリズム又はレンズの斜面の終点から隣り合う次のプリズム又はレンズの斜面の始点に至る距離が、前記稜線のピッチ間隔に対して30%以下となるように形成されていることが好ましい。
なお、前記集光フィルムは、熱可塑性樹脂で構成されると好適である。
この場合、前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂で構成されることが好ましい。
さらにこの場合、前記ポリプロピレン系樹脂は、実質的にプロピレンの単独重合体からなると好適である。
あるいは、前記ポリプロピレン系樹脂は、10重量%以下のエチレンユニットを含有するプロピレンとエチレンとの共重合体からなるものでもよい。
また、前記集光フィルムは、活性エネルギー線硬化性樹脂で構成されると好適である。
また、上記課題は、本発明のロール状偏光板の製造方法によれば、上記のいずれかに記載のロール状偏光板の製造方法であって、ロール状の偏光フィルム及びロール状の集光フィルムを用いて、ロール・トゥ・ロール方式により、連続的に前記偏光フィルムと前記集光フィルムとを貼合する工程を備えることにより解決される。
この場合、前記貼合する工程における前記偏光フィルムと前記集光フィルムとの貼合圧力が5MPa以下であり、かつライン速度が1m/分以上であることが好ましい。
また、上記課題は、本発明の偏光板チップによれば、上記のいずれかに記載のロール状偏光板を裁断してなることにより解決される。
さらにまた、上記課題は、本発明の液晶表示装置によれば、上記に記載の偏光板チップと、前記偏光板チップが貼合された液晶セルとを備えることにより解決される。
この場合、前記偏光板チップは、前記偏光フィルムの前記吸収軸と前記集光フィルムの前記稜線との交差する角度がほぼ30°〜60°、又はほぼ120°〜150°の範囲であるロール状偏光板を裁断してなり、前記液晶セルのモードがTNモードであると好適である。
あるいは、前記偏光板チップは、前記偏光フィルムの前記吸収軸と前記集光フィルムの前記稜線との交差する角度がほぼ−15°〜15°、又はほぼ75°〜105°の範囲であるロール状偏光板を裁断してなり、前記液晶セルのモードがVAモード又はIPSモードであると好適である。
本発明のロール状偏光板によれば、偏光フィルムや集光フィルムを枚葉体にチップカットすることなく、ロール・トゥ・ロール貼合方式で貼合することが可能である。このため、これらのフィルムを枚葉体にチップカットする工程が不要となり、偏光板生産のタクトタイムを短縮し、生産性を向上させることができる。また、本発明のロール状偏光板の製造方法によれば、ロール・トゥ・ロール貼合方式で連続的に偏光フィルムと集光フィルムとを貼合することが可能であるため、偏光板の連続生産が可能であり、生産性を向上させることができる。
また、本発明の偏光板チップや液晶表示装置によれば、このような生産性に優れたロール状偏光板を用いることで、偏光板チップや液晶表示装置の生産性を向上させ、低コスト化、短納期化を図ることが可能になる。特に、偏光フィルムの吸収軸と集光フィルムの稜線との交差する角度がほぼ30°〜60°、又はほぼ120°〜150°の範囲であるロール状偏光板は、液晶セルのモードがTNモードの液晶表示装置に好適に使用することができる。また、偏光フィルムの吸収軸と集光フィルムの稜線との交差する角度がほぼ−15°〜15°、又はほぼ75°〜105°の範囲であるロール状偏光板は、液晶セルのモードがVAモードやIPSモードの液晶表示装置に好適に使用することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明する部材や配置等によって限定されず、これらの部材等は本発明の趣旨に沿って適宜改変することができる。
<ロール状偏光板>
図1と図2は、本発明の一実施形態におけるロール状偏光板を示す図面である。このうち図2は、ロール状偏光板の断面模式図を示している。この図に示すように、ロール状偏光板20は、プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25と、偏光フィルム21と、を少なくとも備えている。本実施形態では更に、偏光フィルム21の面のうち集光フィルム25が積層される側とは反対側の面に透明樹脂フィルム23が積層された層構成を有している。なお、本発明において透明樹脂フィルム23は必須の構成要素ではない。
図1と図2は、本発明の一実施形態におけるロール状偏光板を示す図面である。このうち図2は、ロール状偏光板の断面模式図を示している。この図に示すように、ロール状偏光板20は、プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25と、偏光フィルム21と、を少なくとも備えている。本実施形態では更に、偏光フィルム21の面のうち集光フィルム25が積層される側とは反対側の面に透明樹脂フィルム23が積層された層構成を有している。なお、本発明において透明樹脂フィルム23は必須の構成要素ではない。
<液晶パネル及び液晶表示装置>
図3は、本発明の液晶パネル2及びこれを適用した液晶表示装置1の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。この図に示すように、ロール状偏光板20は、液晶セル40に貼合され、液晶パネル2の構成部品として用いられる。液晶パネル2は、液晶表示装置1の構成部材となる。液晶パネル2は、液晶セル40と、液晶セル40の背面側に貼合された偏光板20と、液晶セル40の視認側に貼合された偏光板30とにより構成されている。液晶表示装置1は、液晶セル2と、バックライト10と、光拡散板50とにより構成される。液晶表示装置1において、液晶パネル2は、偏光板20がバックライト側となるように、すなわち、集光フィルム25が光拡散板50と対向するように配置される。偏光板20と偏光板30は、いずれも粘着剤層27を介して液晶セル40に貼合されている。
図3は、本発明の液晶パネル2及びこれを適用した液晶表示装置1の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。この図に示すように、ロール状偏光板20は、液晶セル40に貼合され、液晶パネル2の構成部品として用いられる。液晶パネル2は、液晶表示装置1の構成部材となる。液晶パネル2は、液晶セル40と、液晶セル40の背面側に貼合された偏光板20と、液晶セル40の視認側に貼合された偏光板30とにより構成されている。液晶表示装置1は、液晶セル2と、バックライト10と、光拡散板50とにより構成される。液晶表示装置1において、液晶パネル2は、偏光板20がバックライト側となるように、すなわち、集光フィルム25が光拡散板50と対向するように配置される。偏光板20と偏光板30は、いずれも粘着剤層27を介して液晶セル40に貼合されている。
光拡散板50は、バックライト10からの光を拡散させる機能を有する光学部材であって、例えば、熱可塑性樹脂に光拡散剤である粒子を分散させて光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂フィルムの表面に凹凸を形成して光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂フィルムの表面に粒子が分散された樹脂組成物の塗布層を設け、光拡散性を付与したものなどであり得る。その厚みは、0.1〜5mm程度とすることができる。
光拡散板50と液晶パネル2との間には、輝度向上シート(反射型偏光フィルムである(「DBEF」など))、光拡散シートなど、他の光学機能性を示すシート又はフィルムを配置することもできる。他の光学機能性を示すシート又はフィルムは、必要に応じて2枚以上、複数種類配置することも可能である。
ロール状偏光板20は、液晶セル40の背面側に積層される偏光板20を形成するための、長尺の偏光板20を巻き取ったロールである。ここで、背面側とは、液晶パネル2を液晶表示装置1に搭載した際のバックライト10側を意味する。また、視認側とは、液晶パネル2を液晶表示装置1に搭載した際のバックライト10とは反対側を意味する。ロール状偏光板20の巻き回し方向は、特に制限されないが、例えば透明樹脂フィルム23の側が内側となるように巻き回すことができる。以下に、ロール状偏光板20を構成するフィルムについて説明する。
(1)偏光フィルム
偏光フィルム21は、自然光を直線偏光に変換する機能を有する部材である。偏光フィルム21としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができ、ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
偏光フィルム21は、自然光を直線偏光に変換する機能を有する部材である。偏光フィルム21としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができ、ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルム21の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば10〜150μm程度である。
偏光フィルム21は、通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、を経て製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間で一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いて一軸に延伸する方法などが採用できる。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水等の溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸方向は、長尺状の偏光フィルム21の長手方向に平行な方向としている。このため、偏光フィルム21の吸収軸Aは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸方向、すなわち長尺状の偏光フィルム21の長手方向に平行な方向となる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10−4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10−3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒程度、更に好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルム21が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色とホウ酸処理が施され、偏光フィルム21が得られる。偏光フィルム21の厚みは、例えば2〜40μm程度とすることができる。
偏光フィルム21は、ロール状に巻かれた状態で保管される。使用時には、ロール状に巻かれた状態から、長尺状に繰り出して用いられる。図1に示すように、偏光フィルム21の吸収軸Aは、長尺状の偏光板20の長手方向、すなわちポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸方向と平行な方向である。
(2)集光フィルム
集光フィルム25は、後述するバックライト10から出射する光を液晶セル40に集光する輝度向上機能を有するとともに、偏光フィルム21を保護する保護機能も兼ねた部材である。集光フィルム25の一方の面は、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有している。集光フィルム25は、バックライト10から斜めに出射する光をプリズム形状やレンズ形状の斜面の部分で変角し、液晶セル40に向けて反射することで、液晶セル40に集光している。
集光フィルム25は、後述するバックライト10から出射する光を液晶セル40に集光する輝度向上機能を有するとともに、偏光フィルム21を保護する保護機能も兼ねた部材である。集光フィルム25の一方の面は、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有している。集光フィルム25は、バックライト10から斜めに出射する光をプリズム形状やレンズ形状の斜面の部分で変角し、液晶セル40に向けて反射することで、液晶セル40に集光している。
図2や図3に示すように、通常、集光フィルム25は、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有する面とは反対側の面が偏光フィルム21に対向するように偏光フィルム21の上に積層された、所謂「下向きプリズム」が使用される。一方で、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有する面が偏光フィルム21に対向するように配置される「上向きプリズム」も使用可能である。
このような上向きプリズムでは、プリズム形状又はレンズ形状の稜線R(プリズム形状又はレンズ形状の高さhが最も高い頂端部のなす線)で偏光フィルム21と接着剤などを用いて接着するが、偏光フィルム21の平面に対して線で接するため、ある程度接着力の高い接着剤を使用することが好ましい。また、プリズム形状又はレンズ形状の頂端部を平らにして偏光フィルム21と接着しやすくすることも可能であるが、平らな部分が広くなりすぎると、この平らな部分が暗くなり、液晶パネル2に筋状のしま模様ができて視認性が悪化するため、可能な限り線で接するようにすることが好ましい。
本発明において、「プリズム形状」とは、図4(a)に示すような三角形形状(ただし、一部に曲線を含んでいてもよい)を平行移動させた軌跡で示されるライン状の突起の複数を平行又は略平行に配置した形状を意味する。また、「レンズ形状」とは、図4(b)に示すような半円弧形状などの曲面から形成される凸形状(ただし、一部に直線を含んでいてもよい)を平行移動させた軌跡で示されるライン状の突起の複数を平行又は略平行に配置した形状を意味する。
図4(a)は、プリズム形状を表面に有する集光フィルム25(以下、プリズムシートともいう)の一例を示す斜視部分断面図である。また、図5(a)と(b)は、プリズム形状を表面に有する集光フィルム25の断面模式図である。プリズム形状の稜線Rのピッチ間隔P(隣り合うライン状突起の稜線R間の最短距離)は、1μm以上70μm以下が好ましく、10μm以上50μmがより好ましい。ピッチ間隔Pが70μmを超えると、液晶セルのカラーフィルターが有する規則的なマトリックス構造との干渉により強いモアレが発生し、視認性が悪化する。また、ピッチ間隔Pが70μmを超える場合、相対的にライン状突起の高さhが高くなるため、シート部材の厚みが増し、偏光板20の薄型化の観点から好ましくない。一方、ピッチ間隔Pが1μm未満であると、光の回折が生じ、液晶表示装置1の視認性に悪影響を与える可能性がある。また、ピッチ間隔Pが1μm未満であるプリズムシートは、プリズム形状の成形が困難であり、製造上の観点から好ましくない。
プリズムシートが有するライン状突起において、断面三角形形状における頂点の角度(頂角θa)は、10〜120°以下の範囲とすることができるが、好ましくは30〜100°である。断面三角形形状のライン状突起の高さhは、例えば10〜200μmとすることができるが、好ましくは15〜100μmである。断面三角形形状における二辺は、同じ長さであってもよいし、異なる長さを有していてもよい。また、プリズムシートが有するライン状突起の高さhは、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。
さらに、プリズムシートが有する複数のライン状突起は、図5(a)に示すように連続して配置されていてもよく、図5(b)に示すように一定の間隔を設けて配置されてもよい。図5(b)のように一定の間隔を空けてプリズム形状を配置する場合、1つのプリズムの斜面の終点から隣り合う次のプリズムの斜面の始点に至る距離Lが、プリズム形状の稜線Rのピッチ間隔Pに対して30%以下となることが好ましい。距離Lがピッチ間隔Pに対して30%を超えると、プリズムどうしの間隔が広くなりすぎるため、プリズム間を通過する光が多くなり、反対にプリズム形状又はレンズ形状の斜面で反射して液晶セル40に向かう光が少なくなる。このため、集光フィルム25により輝度向上機能が低下したり、プリズム間の領域とプリズム部分とで明暗のしま模様が生じたりするため好ましくない。なお、複数のライン状突起は、同じピッチ間隔Pで配置されることが好ましい。
図4(b)は、レンズ形状を表面に有する集光フィルム25(以下、レンズシートともいう)の一例を示す概略斜視図である。また、図5(c)は、レンズ形状を表面に有する集光フィルム25の断面模式図である。これらの図に示されるレンズシートを有するレンズ形状は、レンチキュラーレンズと呼ばれているものである。このようなレンズシートにおいても、上記と同様の理由から、レンズ形状の稜線Rのピッチ間隔P(隣り合うライン状突起の稜線R間の最短距離)は、1μm以上70μm以下が好ましく、10μm以上50μmがより好ましい。
レンズシートが有するライン状突起の高さhは、例えば5〜100μmとすることができる。ライン状突起の高さhは、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、レンズシートが有する複数のライン状突起は、連続して配置されていてもよく、一定の間隔を設けて配置されてもよい。複数のライン状突起は、同じピッチ間隔Pで配置されることが好ましい。
集光フィルム25の厚みHは、特に制限されないが、例えば20μm以上200μm以下程度とすることができ、好ましくは30μm以上100μm以下である。ここでいう集光フィルム25の厚みHとは、集光フィルム25の一方の面を構成する平坦面(ライン状突起がある面とは反対側の面)からプリズム形状やレンズ形状における頂点までの最短距離を意味する。
また集光フィルム25は、JIS L 1096に準処して測定されるガーレ法剛軟度が300mgf以下であることが好ましく、より好ましくは250mgf以下である。このように、剛軟度が小さい集光フィルム25を使用することにより、得られるロール状偏光板20の剛性が低減されるため、液晶セル40に貼合する際のハンドリング性を向上させることができる。
プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25は、熱可塑性樹脂にプリズム形状やレンズ形状を熱転写する製造方法や、樹脂フィルム状に紫外線などで硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂でプリズム形状やレンズ形状を賦形する製造方法などが挙げられる。
前者の熱可塑性樹脂に熱転写する製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂を溶融混練し、これをTダイからフィルム状に吐出する。続いて、プリズム状又はレンズ状の形状が刻設された転写型を備えたロール(以下、転写ロールとも称する)と、表面が平坦なロールとによってフィルム状シートを挟圧し、冷却固化することでフィルム状シートの表面にプリズム形状又はレンズ形状を形成する。この製造方法によれば、プリズム形状又はレンズ形状の稜線Rのピッチ間隔Pなど、突起形状が精密に制御されたシート部材を生産性良く製造することができる。
このような熱可塑性樹脂としては、透明性や透湿性、生産性の観点から、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体又はアクリロニトリル−スチレン共重合体を用いることが好ましい。このうち特に、ポリプロピレン系樹脂として、実質的にプロピレンの単独重合体からなる樹脂や、10重量%以下のエチレンユニットを含有するプロピレンとエチレンとの共重合体からなる樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、必要に応じて、紫外線吸収剤や酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を含有することができる。
また、後者の活性エネルギー線硬化性樹脂を使用した賦形による製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まず、ポリエステルフィルムなどのシート状基材を用意し、このシート状基材の表面にプリズム状又はレンズ状のパターンを形成した転写型を配置してシート状基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂を流し込む。そして、シート状基材を搬送しながらシート状基材側から活性エネルギー線を照射して樹脂組成物を硬化することで、シート状基材の表面にプリズム形状又はレンズ形状を形成する。
このような活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレートなどのアクリレート系化合物や、ポリエンとポリチオールとからなるエンチオール系化合物などと、ラジカル性光重合開始剤とを含む樹脂組成物や、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物などと、カチオン性光重合開始剤とを含む樹脂組成物などが挙げられる。この中で、特に、ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、エステル系(メタ)アクリレート化合物と、ラジカル性光重合開始剤とを含む樹脂組成物が好ましい。
以上のような集光フィルム25は、市販品として容易に入手することができる。このような集光フィルム25の市販品としては、3M社の「BEF」や、三菱レイヨン(株)の「ダイヤアート」などが挙げられる。
集光フィルム25は、ロール状に巻かれた状態で保管される。使用時には、ロール状に巻かれた状態から、長尺状に繰り出して用いられる。図1に示すように、集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rは、長尺状の集光フィルム25の長手方向に対して任意の角度で交差するように形成されている。この角度は、後述するように液晶セル40のモードに応じて適宜決定される。具体的には、液晶セル40のモードがTNモードの場合、長尺状の偏光板20の長手方向に対してほぼ30°〜60°、又はほぼ120°〜150°の範囲内となるように稜線Rが形成される。また、液晶セル40のモードがVAモード又はIPSモードの場合、長尺状の偏光板20の長手方向に対してほぼ−15°〜15°、又はほぼ75°〜105°の範囲内となるように稜線Rが形成される。
集光フィルム25のうち偏光フィルム21と反対側の面には、プリズム状又はレンズ状の表面形状を保護する目的でプロテクトフィルム26を積層してもよい。プロテクトフィルム26は、保管、運搬などの過程で集光フィルム25の表面形状に損傷等が生じることを防止するための保護フィルムである。偏光フィルム21を液晶セル40に貼合して液晶パネル2を製造する際には、プロテクトフィルム26は集光フィルム25から剥離される。
プロテクトフィルム26を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。このうち特に、フィッシュアイが少なく、歩留まりが良好なポリエチレンテレフタレートが好ましい。
[プロテクトフィルム]
集光フィルム25をロール状に巻くにあたっては、そのプリズム状又はレンズ状の表面にプロテクトフィルム26を貼合し、使用時までそのプリズム状又はレンズ状の表面を保護しておくことが好ましい。このために用いられるプロテクトフィルム26は、一般に、基材フィルム26aの表面に粘着剤層26bが形成されたものであり、その粘着剤層26bが集光フィルム25のプリズム状又はレンズ状の表面と接触するように貼合される。
集光フィルム25をロール状に巻くにあたっては、そのプリズム状又はレンズ状の表面にプロテクトフィルム26を貼合し、使用時までそのプリズム状又はレンズ状の表面を保護しておくことが好ましい。このために用いられるプロテクトフィルム26は、一般に、基材フィルム26aの表面に粘着剤層26bが形成されたものであり、その粘着剤層26bが集光フィルム25のプリズム状又はレンズ状の表面と接触するように貼合される。
プロテクトフィルム26を構成する基材フィルム26aは、透明樹脂からなるものであれば特に限定されない。このような透明樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルに代表されるアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるオレフィン系樹脂、ポリブチレンテフタレートやポリエチレンテフタレートに代表されるポリエステル系樹脂などが挙げられる。特に、後述するゴム系粘着剤との密着性の観点からは、オレフィン系樹脂を基材フィルム26aとすることが好ましい。
基材フィルム26aの厚みは特に制限されないが、加工性の観点より10μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましく、さらには15μm以上100μm以下、とりわけ20μm以上70μm以下の範囲とすることがより好ましい。基材フィルム26aの厚みがあまり小さいと、表面保護性や、集光フィルム25からプロテクトフィルム26を剥離するときの強度が不十分になりやすい。一方で、その厚みがあまり大きいと、取扱い性やコスト面で不利になりやすい。
[プロテクトフィルムを構成する粘着剤]
プロテクトフィルム26を構成する粘着剤層26bは、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤など、公知の再剥離用粘着剤であることができる。特に、プリズム面への密着性の観点より、ゴム系粘着剤を採用することが好ましい。アクリル系粘着剤では、プリズム面への密着性が弱いため、集光フィルム25のプリズム状又はレンズ状の表面にプロテクトフィルム26を貼合したとき、プロテクトフィルム26に浮き剥がれを生じる可能性がある。
プロテクトフィルム26を構成する粘着剤層26bは、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤など、公知の再剥離用粘着剤であることができる。特に、プリズム面への密着性の観点より、ゴム系粘着剤を採用することが好ましい。アクリル系粘着剤では、プリズム面への密着性が弱いため、集光フィルム25のプリズム状又はレンズ状の表面にプロテクトフィルム26を貼合したとき、プロテクトフィルム26に浮き剥がれを生じる可能性がある。
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム又は合成ゴムを粘着剤成分とするもの、天然ゴム又は合成ゴムである二重結合を有するゴムにメタクリル酸メチル等のアクリル成分がグラフト重合された変性ゴムを粘着剤成分とするもの、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物のようなゴム弾性を示す共重合体を粘着剤成分とするものなどが挙げられる。
(3)透明樹脂フィルム
透明樹脂フィルム23は、偏光フィルム21の表面に貼合されるフィルムであり、液晶パネル2や液晶表示装置1に要求される特性に応じて種々の性質を有するフィルムを採用することができる。透明樹脂フィルム23の例としては、例えば偏光フィルム21の表面を保護するための保護フィルムや、液晶表示装置1の視野角特性の不具合を解消するための位相差フィルムなどを採用することができる。保護フィルムとしては、例えばヘイズ値が0.5%以下であり、かつ面内位相差値が30nm未満である無配向性フィルムを採用することができる。また、位相差フィルムとしては、面内位相差値が30〜200nmの範囲にあり、厚み方向位相差値が30〜350nmの範囲にある二軸性位相差フィルムを採用することができる。ここでいう面内位相差値R0及び厚み方向位相差値Rthは、波長590nmにおける値であり、以下同様である。
透明樹脂フィルム23は、偏光フィルム21の表面に貼合されるフィルムであり、液晶パネル2や液晶表示装置1に要求される特性に応じて種々の性質を有するフィルムを採用することができる。透明樹脂フィルム23の例としては、例えば偏光フィルム21の表面を保護するための保護フィルムや、液晶表示装置1の視野角特性の不具合を解消するための位相差フィルムなどを採用することができる。保護フィルムとしては、例えばヘイズ値が0.5%以下であり、かつ面内位相差値が30nm未満である無配向性フィルムを採用することができる。また、位相差フィルムとしては、面内位相差値が30〜200nmの範囲にあり、厚み方向位相差値が30〜350nmの範囲にある二軸性位相差フィルムを採用することができる。ここでいう面内位相差値R0及び厚み方向位相差値Rthは、波長590nmにおける値であり、以下同様である。
透明樹脂フィルム23は、JIS L 1096に準処して測定されるガーレ法剛軟度が350mgf以下であることが好ましく、200mgf以下であることがより好ましく、更には150mgf以下であることが一層好ましい。このように、剛軟度が小さい透明樹脂フィルム23を使用することにより、得られるロール状偏光板20の剛性が低減されるため、液晶セル40に貼合する際のハンドリング性を向上させることができる。
透明樹脂フィルム23を構成する樹脂材料は特に限定されない。このような樹脂材料の例としては、メタクリル酸メチル系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂〔(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂又はアクリル系樹脂を意味する〕、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン系共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等)、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、透明性や偏光フィルム21との接着性を阻害しない範囲で、添加物を含有することができる。
上記(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じてゴム微粒子を配合した材料であってもよい。ゴム粒子が配合された(メタ)アクリル系樹脂は、靭性が高くなり、フィルムの薄肉化を可能にする。
上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、4,4´−ジカルボキシジフェニール、4,4´−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分;プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記カルボン酸成分やジオール成分と共に、p−ヒドロキシ安息香酸やp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が用いられてもよい。
上記セルロース系樹脂とは、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等の原料セルロースから得られるセルロースの水酸基における水素原子の一部又は全部がアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロース有機酸エステル又はセルロース混合有機酸エステルをいう。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、及びそれらの混合エステル等からなるものが挙げられる。中でも、偏光フィルム21との接着性が良好なトリアセチルセルロースが好ましく用いられる。このようなセルロース系樹脂を用いた透明保護フィルムの市販品としては、コニカミノルタオプト(株)製のコニカミノルタタックフィルムシリーズ、富士フイルム(株)製のフジタックシリーズなどがある。
上記オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン又は他のシクロペンタジエン誘導体等の環状オレフィンモノマーを、重合用触媒を用いて重合した環状オレフィン系樹脂や、エチレン又はプロピレン等の鎖状オレフィンモノマーを、重合用触媒を用いて重合した鎖状オレフィン系樹脂が挙げられる。
ここで、環状オレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエンとオレフィン類とからディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンとオレフィン類又はメタクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン及びそれらの誘導体類並びにその他の環状オレフィンモノマーから選択される2種以上を用いて同様に開環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン又はそれらの誘導体に、ビニル基を有する芳香族化合物等を付加共重合させて得られる樹脂等が挙げられる。
また、鎖状オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が例示される。
ポリプロピレン系樹脂を透明樹脂フィルム23の構成樹脂として選択した場合、以下のような優位点がある。すなわち、ポリプロピレン系樹脂は、光弾性係数が2×10−13cm2/dyne前後と小さく、また、透湿度が低いため、それを透明樹脂フィルム23とする偏光板20を液晶セル40に適用することにより、湿熱条件での耐久性に優れた液晶表示装置1とすることができる。さらに、ポリプロピレン系樹脂フィルムの偏光フィルム21に対する接着性は、トリアセチルセルロースフィルムほどではないにしても良好であり、公知の各種接着剤を用いた場合に、ポリプロピレン系樹脂フィルムを十分な強度でポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム21に接着することができる。
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体で構成することができるほか、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマーを少量共重合させたものであってもよい。共重合体からなるポリプロピレン系樹脂は、コモノマーユニットを、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下の範囲で含有する樹脂であることができる。また、共重合体におけるコモノマーユニットの含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。コモノマーユニットの含有量を1重量%以上とすることにより、加工性や透明性を有意に向上させ得る。一方、コモノマーユニットの含有量が20重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂の融点が下がり、耐熱性が低下する傾向にある。なお、2種以上のコモノマーとプロピレンとの共重合体とする場合には、その共重合体に含まれる全てのコモノマーに由来するユニットの合計含有量が、上記範囲であることが好ましい。
プロピレンに共重合されるコモノマーは、例えば、エチレンや、炭素原子数4〜20のα−オレフィンであってもよい。α−オレフィンとして具体的には、次のようなものを挙げることができる。
1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上C4);
1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上C5);
1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上C6);
1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上C7);
1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン(以上C8);
1−ノネン(C9);1−デセン(C10);1−ウンデセン(C11);
1−ドデセン(C12);1−トリデセン(C13);1−テトラデセン(C14);
1−ペンタデセン(C15);1−ヘキサデセン(C16);1−ヘプタデセン(C17);
1−オクタデセン(C18);1−ノナデセン(C19)など。
1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上C5);
1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上C6);
1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上C7);
1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン(以上C8);
1−ノネン(C9);1−デセン(C10);1−ウンデセン(C11);
1−ドデセン(C12);1−トリデセン(C13);1−テトラデセン(C14);
1−ペンタデセン(C15);1−ヘキサデセン(C16);1−ヘプタデセン(C17);
1−オクタデセン(C18);1−ノナデセン(C19)など。
上記α−オレフィンの中でも、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが好ましく、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン;1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン;1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン;1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン;1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン;1−ノネン;1−デセン;1−ウンデセン;1−ドデセンなどを挙げることができる。共重合性の観点からは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが好ましく、とりわけ1−ブテン及び1−ヘキセンがより好ましい。
共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。好ましい共重合体として、プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体を挙げることができる。プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体において、エチレンユニットの含有量や1−ブテンユニットの含有量は、例えば、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により赤外線(IR)スペクトル測定を行い、求めることができる。
偏光フィルム21に貼り合わされる透明樹脂フィルム23としての透明度や加工性を上げる観点からは、共重合体は、プロピレンを主体とするプロピレンとエチレン又は上記α−オレフィンとのランダム共重合体であることが好ましく、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体であることがより好ましい。プロピレン/エチレンランダム共重合体におけるエチレンユニットの含有量は、上述のとおり、1〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましく、3〜7重量%であることが更に好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。本発明においては、耐熱性の点から、シンジオタクチックあるいはアイソタクチックのポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
ポリプロピレン系樹脂は、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレイト(MFR)が0.1〜200g/10分の範囲内であることが好ましく、0.5〜50g/10分の範囲内であることがより好ましい。MFRがこの範囲内にあるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負荷をかけることなく、均一なポリプロピレン系樹脂フィルムを得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、プロピレンと他の共重合性コモノマーとを共重合する方法によって、製造することができる。公知の重合用触媒としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。(1)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、
(2)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系、
(3)メタロセン系触媒など。
(2)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系、
(3)メタロセン系触媒など。
これら触媒系の中でも、ポリプロピレン系樹脂の製造においては、上記(2)の触媒系が最も一般的に使用できる。上記(2)の触媒系における有機アルミニウム化合物の好ましい例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサンなどが挙げられ、電子供与性化合物の好ましい例としては、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランなどが挙げられる。
上記(1)及び(2)の固体触媒成分としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報などに記載の触媒系が挙げられる。また、上記(3)のメタロセン系触媒としては、例えば、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、特許第2668732号公報などに記載の触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンのような炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
ポリプロピレン系樹脂には、公知の添加物が配合されていてもよい。添加物としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、また、1分子中に例えば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系やヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線遮断剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ステアリン酸等の高級脂肪酸及びその塩などが挙げられる。造核剤としては、例えば、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカン等の高分子系造核剤などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、球状あるいはそれに近い形状の微粒子が、無機系、有機系を問わず使用できる。上記の添加物は、複数種が併用されてもよい。
上述した樹脂材料は、任意の方法で製膜し、透明樹脂フィルム23にすることができる。この透明樹脂フィルム23は、透明で実質的に面内位相差のないものである。例えば、溶融樹脂からの押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延し、溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などによって、面内位相差が実質的にない透明樹脂フィルム23を得ることができる。
押出成形により透明樹脂フィルム23を製造する方法について、詳しく説明する。押出成形においては、樹脂材料は、押出機中でスクリューの回転によって溶融混練され、Tダイからシート状に押出される。押出される溶融状シートの温度は、180〜300℃程度である。このときの溶融状シートの温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になり、位相差ムラのあるフィルムとなる可能性がある。また、その温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、溶融状シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。
押出機は、単軸押出機であっても二軸押出機であってもよい。例えば単軸押出機を用いる場合は、スクリューの長さLと直径Dとの比であるL/Dが24〜36程度、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積V1と樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積V2との比である圧縮比V1/V2が1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ又はマドック型の混練部分を有するタイプなどのスクリューを用いることができる。樹脂材料の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36であり、圧縮比V1/V2が2.5〜3.5であるバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。
また、樹脂材料の劣化や分解を可及的に抑制するため、押出機内は、窒素雰囲気又は真空にすることが好ましい。さらに、樹脂材料が劣化したり分解したりすることで生じる揮発ガスを取り除くため、押出機の先端に1mmφ以上5mmφ以下程度のオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。オリフィスの設置により押出機先端部分の樹脂圧力を高めることは、当該先端部分での背圧を高めることを意味しており、これにより押出の安定性を向上させることができる。用いるオリフィスの直径は、より好ましくは2mmφ以上4mmφ以下である。
押出に使用されるTダイは、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましく、また、そのリップ部分は、溶融した樹脂材料との摩擦係数の小さい材料でめっき又はコーティングされ、更にリップ先端が0.3mmφ以下に研磨されたシャープなエッジ形状のものが好ましい。摩擦係数の小さい材料としては、タングステンカーバイド系やフッ素系の特殊めっきなどが挙げられる。このようなTダイを用いることにより、目ヤニの発生を抑制でき、同時にダイラインを抑制できるので、外観の均一性に優れる樹脂フィルムが得られる。このTダイは、マニホールドがコートハンガー形状であって、かつ以下の条件(i)又は(ii)を満たすことが好ましく、更には条件(iii)又は(iv)を満たすことがより好ましい。
(i)Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの厚み方向長さ>180mm、
(ii)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの厚み方向長さ>220mm、
(iii)Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの高さ方向長さ>250mm、
(iv)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの高さ方向長さ>280mm。
(ii)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの厚み方向長さ>220mm、
(iii)Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの高さ方向長さ>250mm、
(iv)Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの高さ方向長さ>280mm。
このような条件を満たすTダイを用いることにより、Tダイ内部での溶融状樹脂の流れを整えることができ、かつ、リップ部分でも厚みムラを抑えながら押出すことができるため、より厚み精度に優れ、位相差のより均一な透明樹脂フィルム23を得ることができる。
なお、樹脂材料の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプを取り付けることが好ましい。また、樹脂材料中の異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。
透明樹脂フィルム23は、Tダイから押出された溶融状シートを、金属製冷却ロール(チルロール又はキャスティングロールともいう)と、その金属製冷却ロールの周方向に圧接して回転する弾性体を含むタッチロールとの間で挟圧し、冷却固化させることにより得ることができる。この際、タッチロールは、ゴムなどの弾性体がそのまま表面となっているものでもよいし、弾性体ロールの表面を金属スリーブからなる外筒で被覆したものでもよい。弾性体ロールの表面が金属スリーブからなる外筒で被覆されたタッチロールを用いる場合は、通常、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に、溶融状シートを直接挟んで冷却する。一方、表面が弾性体となっているタッチロールを用いる場合は、溶融状シートとタッチロールとの間に熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを介在させて挟圧することもできる。
上記のような冷却ロールとタッチロールとで挟んで溶融状シートを冷却固化させるに際しては、冷却ロール及びタッチロールの表面温度を低くしておき、溶融状シートを急冷させることが好ましい。例えば、両ロールの表面温度は0℃以上30℃以下の範囲に調整されることが好ましい。これらの表面温度が30℃を超えると、溶融状シートの冷却固化に時間がかかるため、樹脂材料中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなることがある。一方、ロールの表面温度が0℃を下回ると、金属製冷却ロールの表面が結露して水滴が付着し、得られるフィルムの外観を悪化させる傾向がある。
使用する金属製冷却ロールは、その表面状態が透明樹脂フィルム23の表面に転写されるため、その表面に凹凸がある場合には、得られる透明樹脂フィルム23の厚み精度を低下させる可能性がある。そこで、金属製冷却ロールの表面は可能な限り鏡面状態であることが好ましい。具体的には、金属製冷却ロールの表面の粗度は、最大高さの標準数列で表して0.4S以下であることが好ましく、更には0.05S〜0.2Sであることがより好ましい。
金属製冷却ロールとニップ部分を形成するタッチロールは、その弾性体における表面硬度が、JIS K 6301に規定されるスプリング式硬さ試験(A形)で測定される値として、65〜80であることが好ましく、70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度のタッチロールを用いることにより、溶融状シートにかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に溶融状シートのバンク(樹脂溜り)を生じさせることなくフィルムに成形することが容易となる。
溶融状シートを挟圧するときの圧力(線圧)は、金属製冷却ロールに対してタッチロールを押し付ける圧力により決まる。線圧は、50N/cm以上300N/cm以下とすることが好ましく、100N/cm以上250N/cm以下とすることがより好ましい。線圧を上記範囲とすることにより、バンクを形成することなく、一定の線圧を維持しながら透明樹脂フィルム23を製造することが容易となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で、溶融状シートとともに熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを挟圧する場合、この二軸延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、溶融状シートと強固に熱融着しない樹脂であればよく、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの中でも、湿度や熱などによる寸法変化の少ないポリエステルが最も好ましい。二軸延伸フィルムの厚みは、通常5〜50μm程度であり、好ましくは10〜30μmである。
Tダイのリップから金属製冷却ロールとタッチロールとで挟圧されるまでの距離(エアギャップ)は、200mm以下とすることが好ましく、160mm以下とすることがより好ましい。Tダイから押出された溶融状シートは、リップからロールまでの間引き伸ばされて、配向が生じやすくなる。エアギャップを上記のように短くすることで、配向のより小さいフィルムを得ることができる。エアギャップの下限値は、使用する金属製冷却ロールの径とタッチロールの径、及び使用するリップの先端形状により決定され、通常50mm以上である。
透明樹脂フィルム23を製造するときの加工速度は、溶融状シートを冷却固化するために必要な時間により決定される。使用する金属製冷却ロールの径が大きくなると、溶融状シートがその冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、600mmφの金属製冷却ロールを用いる場合、加工速度は、最大で5〜20m/分程度となる。
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧された溶融状シートは、ロールとの接触により冷却固化する。そして、必要に応じて端部をスリットした後、巻き取り機に巻き取られてロール状保護フィルムとなる。なお、巻き取りの際、透明樹脂フィルム23を使用するまでの間、その表面を保護するために、その片面又は両面に別の熱可塑性樹脂からなる表面保護フィルムを貼合した状態で巻き取ってもよい。溶融状シートを熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムとともに金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧した場合には、その二軸延伸フィルムを一方の表面保護フィルムとすることもできる。
透明樹脂フィルム23の厚みは、通常、20〜200μmであり、好ましくは20〜120μmである。透明樹脂フィルム23の厚みが20μm未満であると、ハンドリング性に劣る傾向にあり、厚みが200μmを超える場合にも、フィルムの剛性が高くなることによってハンドリング性が低下することがある。
透明樹脂フィルム23は、透明性に優れていることが必要である。具体的には、JIS K 7361に従って測定されるヘイズ値が10%以下、好ましくは7%以下である。へイズ値が10%を超えると、得られる偏光板20を液晶表示装置1に適用したときに、白輝度が低下し、画面が暗くなる傾向にある。なお、JIS K 7361に従って測定されるヘイズ値は、下記式:
(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)
で定義される。
(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)
で定義される。
透明樹脂フィルム23のうち偏光フィルム21と反対側の面には、液晶パネル2やこれを用いた液晶表示装置1の製造工程における擦り傷防止の観点から、ハードコート処理を施してもよい。また、プリズムシートとカラーフィルターの干渉によるモアレ低減の観点から、アンチグレア処理を施してもよい。
また、透明樹脂フィルム23のうち偏光フィルム21と反対側の面には、プロテクトフィルム又は粘着剤層を積層してもよい。さらに、その粘着剤層を介して、3M社から販売されている「DBEFシリーズ」に例示されるような反射型偏光フィルムなどの光学フィルムを設けてもよい。
透明樹脂フィルム23を構成する樹脂材料は、上述した樹脂材料を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの樹脂材料は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。このポリマー変性としては、共重合、架橋、分子末端変性、立体規則性制御、及び異種ポリマー同士の反応を伴う場合を含む混合等の変性が挙げられる。
(3−1)二軸性位相差フィルム
透明樹脂フィルム23としては、上述したように位相差フィルムを採用することができる。このような位相差フィルムとしては、上述した樹脂材料からなる未延伸フィルムを延伸して位相差を発現させ、透明樹脂フィルム23としたものが挙げられる。また、液晶のような配向する材料を基材に塗工し、配向させることで位相差を発現させ、固定化することによって、位相差フィルムとする方法もある(例えば、特開2004−272202号公報の実施例4、又は特開2004−233872号公報の実施例3に記載の、透明支持体上に棒状液晶性化合物を含む光学異方性層を形成する方法)。特に、逐次二軸延伸により二軸方向の複屈折性を発現させたものが好ましい。このときの延伸倍率は、縦方向及び横方向のうち、光軸を発現させる方向(延伸倍率が大きい方向であって、遅相軸となる方向)で1.1〜10倍程度、それと直交する方向(延伸倍率が小さい方向であって、進相軸となる方向)で1.1〜7倍程度の範囲から、必要とする位相差値に合わせて、適宜選択すればよい。フィルムの横方向に光軸を発現させてもよいし、縦方向に光軸を発現させてもよい。かかる位相差特性が付与された酢酸セルロース系樹脂フィルムの市販品としては、KC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4HR−1(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
透明樹脂フィルム23としては、上述したように位相差フィルムを採用することができる。このような位相差フィルムとしては、上述した樹脂材料からなる未延伸フィルムを延伸して位相差を発現させ、透明樹脂フィルム23としたものが挙げられる。また、液晶のような配向する材料を基材に塗工し、配向させることで位相差を発現させ、固定化することによって、位相差フィルムとする方法もある(例えば、特開2004−272202号公報の実施例4、又は特開2004−233872号公報の実施例3に記載の、透明支持体上に棒状液晶性化合物を含む光学異方性層を形成する方法)。特に、逐次二軸延伸により二軸方向の複屈折性を発現させたものが好ましい。このときの延伸倍率は、縦方向及び横方向のうち、光軸を発現させる方向(延伸倍率が大きい方向であって、遅相軸となる方向)で1.1〜10倍程度、それと直交する方向(延伸倍率が小さい方向であって、進相軸となる方向)で1.1〜7倍程度の範囲から、必要とする位相差値に合わせて、適宜選択すればよい。フィルムの横方向に光軸を発現させてもよいし、縦方向に光軸を発現させてもよい。かかる位相差特性が付与された酢酸セルロース系樹脂フィルムの市販品としては、KC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4HR−1(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
次に、透明樹脂フィルム23の位相差値について説明する。フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、厚みをdとしたときに、面内位相差値R0及び厚み方向位相差値Rthは、それぞれ下式(I)及び(II)で定義される。
R0 =(nx−ny)×d (I)
Rth =[(nx+ny)/2−nz]×d (II)
Rth =[(nx+ny)/2−nz]×d (II)
さらに、透明樹脂フィルム23は、その屈折率に関して、下式(III):
nx>ny>nz (III)
の関係を満たすものである。
nx>ny>nz (III)
の関係を満たすものである。
本発明において、透明樹脂フィルム23には、面内位相差値R0が30〜200nmの範囲にあり、厚み方向位相差値Rthが30〜350nmの範囲にあるものを用いるが、この範囲から、適用される液晶表示装置1に要求される特性に合わせて、適宜位相差値を選択すればよい。面内位相差値R0は、好ましくは100nm以下であり、厚み方向位相差値Rthは、好ましくは80nm以上、200nm以下である。
面内位相差値R0の精度は、中心値±7nm以内、好ましくは中心値±5nm以内であり、厚み方向位相差値Rthの精度は、中心値±15nm以内、好ましくは中心値±10nm以内である。これらの値の精度が上記範囲を超えると、適用される液晶表示装置1の視覚特性が低下する傾向にある。
透明樹脂フィルム23におけるフィルム面内の遅相軸角度は、実質的に0°又は90°である。この角度から遅相軸がずれると、偏光板20と偏光板30をクロスニコルの状態にしたときに光漏れが発生し、液晶表示装置1に適用したときに、正面コントラストなどの視覚特性が大幅に低下する傾向にある。また、遅相軸の精度は、中心値±0.7°以内であることが好ましく、中心値±0.5°以内であることがより好ましい。ここで光漏れとは、偏光フィルム21の二軸位相差フィルム23に対する軸精度、あるいは偏光板20の液晶セル40に対する軸精度が悪い場合、液晶表示装置1が黒表示するときに表示域全面から光が漏れる現象をいう。上記のように、透明樹脂フィルム23における遅相軸のずれを小さくし、したがって遅相軸と偏光フィルム21の吸収軸Aとのなす角度のずれも小さくすることにより、また液晶セル40の表裏両面に貼合される偏光板(偏光板20及び偏光板30)の軸精度を高め、両偏光板の吸収軸がなす角度の90°からのずれを小さくすることにより、光漏れを低減させることができる。
透明樹脂フィルム23を偏光フィルム21に接着するにあたり、両者の軸関係は、目的とする液晶表示装置1における視野角特性や色変化特性を考慮したうえで最適なものを選べばよい。正面コントラストが重要視される大型液晶テレビ用途においては、透明樹脂フィルム23の遅相軸と偏光フィルム21の吸収軸Aとが、略平行又は略直交の関係となるように配置することが多い。ここで、「略平行又は略直交」とは、完全に平行又は直交である場合のほか、±10°程度の範囲内で平行又は直交の関係からずれている場合を含む。角度のずれは、好ましくは±5°以内、より好ましくは±2°以内である。透明樹脂フィルム23の遅相軸と偏光フィルム21の吸収軸Aとは、完全に平行又は直交の関係にあることが好ましい。
(3−2)無配向性フィルム
透明樹脂フィルム23としては、上述したように保護フィルムを採用することができる。このような保護フィルムとしては、面内や厚み方向に実質的に位相差がない無配向性フィルムを採用することができる。無配向性フィルムとは、樹脂材料を膜状に製膜した、延伸されていない樹脂フィルム(未延伸フィルム)を意味する。
透明樹脂フィルム23としては、上述したように保護フィルムを採用することができる。このような保護フィルムとしては、面内や厚み方向に実質的に位相差がない無配向性フィルムを採用することができる。無配向性フィルムとは、樹脂材料を膜状に製膜した、延伸されていない樹脂フィルム(未延伸フィルム)を意味する。
無配向性フィルムは、位相差を有していないため、二軸性位相差フィルムのように液晶表示装置1の視野角を広げる機能はないが、二軸性位相差フィルムのように延伸処理を行う必要がないため製造コストが低い。したがって、後述する二軸性位相差フィルムを2枚採用した場合と比較して、液晶表示装置1の製造コストをより低くすることができる。
また、無配向性フィルムは、延伸処理を行わないことで、膜厚が厚くなるため透明樹脂フィルム23のハンドリング性が良好になる。このような透明樹脂フィルム23は、上記樹脂組成物を製膜して得られた未延伸フィルム(原反フィルム)から得ることができる。
上述した樹脂材料は、任意の方法で製膜して未延伸フィルムとする。この未延伸フィルムは、透明で実質的に面内位相差がないものが好ましい。製膜方法としては、例えば、溶融樹脂を膜状に押し出して製膜する押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延した後で溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などを採用することができる。
なお、厚み方向の位相差値Rthの観点では、透明樹脂フィルム23の厚みが薄いほうが、位相差値を低減できるため好ましい。具体的には、透明樹脂フィルム23の厚みは15〜45μmのものが好ましい。偏光板20のハンドリング性だけでなく、透明樹脂フィルム23自体のハンドリング性も考慮すると、35〜45μmのものがより好ましい。
(4)接着剤層
偏光フィルム21への集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23の貼合、積層は、通常、図示しない接着剤層を介してなされる。偏光フィルム21の両面に設けられる接着剤層を形成する接着剤は、同種であってもよく、異種であってもよい。
偏光フィルム21への集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23の貼合、積層は、通常、図示しない接着剤層を介してなされる。偏光フィルム21の両面に設けられる接着剤層を形成する接着剤は、同種であってもよく、異種であってもよい。
速硬化性及びこれに伴うロール状偏光板20の生産性向上の観点から、接着剤層を形成する好ましい接着剤の例として、活性エネルギー線の照射で硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。このような活性エネルギー線硬化性接着剤の例として、例えば、紫外線や可視光などの光エネルギーで硬化する光硬化性接着剤が挙げられる。光硬化性接着剤としては、例えば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤を含む硬化性組成物などを挙げることができる。特に、集光フィルム25としてポリプロピレン系樹脂が使用される場合、上述したとおりポリプロピレン系樹脂フィルムは透湿度が低いため、後述する水系接着剤を使用した場合に水抜けが悪く、接着剤の水分によって偏光フィルム21の損傷や偏光性能の劣化などを引き起こす場合がある。したがって、このような透湿度の低い樹脂フィルムを接着する場合には、光硬化性樹脂が好ましい。
また、接着剤として、接着剤層を薄くする観点から、水系接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解した、又は接着剤成分を水に分散させた接着剤を用いることもできる。例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた水系組成物が、好ましい水系接着剤として挙げられる。
接着剤の主成分としてのポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールなどの、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。接着剤の主成分がポリビニルアルコール系樹脂である水系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液として調製されることが多い。水系接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部程度であり、好ましくは1〜5重量部である。
主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を含む水系接着剤には、接着性を向上させるために、グリオキザールや水溶性エポキシ樹脂などの硬化性成分又は架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を挙げることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている「スミレーズレジン 650」及び「スミレーズレジン 675」、日本PMC(株)から販売されている「WS−525」などがあり、これらを好適に用いることができる。これら硬化性成分又は架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部であり、好ましくは1〜50重量部である。その添加量が少ないと、接着性向上効果が小さくなり、一方でその添加量が多いと、接着剤層が脆くなる傾向にある。
接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な水系接着剤の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂それ自体は公知である。例えば、特開平7−97504号公報には、フェノール系樹脂を水性媒体中に分散させるための高分子分散剤の例としてポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が記載されており、また特開2005−070140号公報及び特開2005−181817号公報には、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにシクロオレフィン系樹脂フィルムを接合する形態が示されている。
偏光フィルム21の表面に、接着剤を用いて集光フィルム25と透明樹脂フィルム23を貼合する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光フィルム21及び/又はこれに貼合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
上記方法により接着剤を塗布した後、偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとをニップロールなどにより挟んで貼合することにより両者が接合される。また、偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴム等を用いることが可能である。さらに、偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましくは採用される。この場合、これらのロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。
なお、乾燥あるいは硬化前における、ニップロール等を用いて貼り合わされた後の接着剤層の厚みは、5μm以下であることが好ましく、また0.01μm以上であることが好ましい。
偏光フィルム21及び/又はそれに貼合されるフィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
水系接着剤を介して接合された積層体は、通常、乾燥処理が施され、接着剤層の乾燥、硬化が行われる。乾燥処理は、例えば熱風を吹き付けることにより行うことができる。乾燥温度は、通常40〜100℃程度の範囲から選択され、好ましくは60〜100℃である。乾燥時間は、例えば20〜1,200秒程度である。乾燥後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。接着剤層の厚みが大きくなりすぎると、偏光板20の外観不良となりやすい。
乾燥処理の後、室温以上の温度で少なくとも半日、通常は1日以上の養生を施して十分な接着強度を得てもよい。かかる養生は、典型的には、ロール状に巻き取られた状態で行われる。好ましい養生温度は、30〜50℃の範囲であり、より好ましくは35℃以上、45℃以下である。養生温度が50℃を超えると、ロール巻き状態において、いわゆる「巻き締まり」が起こりやすくなる。なお、養生時の湿度は、特に限定されないが、相対湿度が0%RH〜70%RH程度の範囲となるように選択されることが好ましい。養生時間は、好ましくは1〜10日程度、より好ましくは2〜7日程度である。
一方、光硬化性接着剤を用いて偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとを接合する場合には、これらのフィルムを接合後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましく用いられる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、該光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2であることが好ましい。該照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱による光硬化性エポキシ樹脂の黄変や偏光フィルム21の劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤ごとに制御されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.1μm以上である。
活性エネルギー線の照射によって光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光フィルム21の偏光度、透過率及び色相、並びに透明樹脂フィルム23及び集光フィルム25の透明性などの偏光板20の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
(5)粘着剤層
ロール状偏光板20のうち透明樹脂フィルム23の表面には、あらかじめ粘着剤層27を形成してもよい。粘着剤層27は、ロール状偏光板20又はこれから所定形状に裁断された偏光板20を液晶セル40に貼合するために用いられる。粘着剤層27を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするものが挙げられる。なかでも、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、更に耐候性や耐熱性などに優れ、加熱や加湿の条件下でも、浮きや剥がれなどのセパレート問題が生じにくいため、好ましく用いられる。
ロール状偏光板20のうち透明樹脂フィルム23の表面には、あらかじめ粘着剤層27を形成してもよい。粘着剤層27は、ロール状偏光板20又はこれから所定形状に裁断された偏光板20を液晶セル40に貼合するために用いられる。粘着剤層27を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするものが挙げられる。なかでも、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、更に耐候性や耐熱性などに優れ、加熱や加湿の条件下でも、浮きや剥がれなどのセパレート問題が生じにくいため、好ましく用いられる。
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系ベースポリマーには、エステル部分が、メチル基、エチル基、ブチル基、又は2−エチルヘキシル基のような炭素数20以下のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのような官能基含有(メタ)アクリル系モノマーとのアクリル系共重合体が好ましく用いられる。このようなアクリル系共重合体を含む粘着剤層27は、液晶セル40に貼合した後で何らかの不具合があって剥離する必要が生じた場合に、ガラス基板に糊残りなどを生じさせることなく、比較的容易に剥離することができる。粘着剤に用いるアクリル系共重合体は、そのガラス転移温度が25℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。また、このアクリル系共重合体は、通常10万以上の重量平均分子量を有する。
粘着剤層27を形成する粘着剤として、光拡散剤が分散された拡散粘着剤を用いることもできる。光拡散剤は、粘着剤層27に光拡散性を付与するためのものである。光拡散剤は、粘着剤層27を構成するベースポリマーと異なる屈折率を有する微粒子であればよく、無機化合物からなる微粒子や有機化合物(ポリマー)からなる微粒子を用いることができる。上記したようなアクリル系ベースポリマーを含めて、粘着剤層27を構成するベースポリマーは1.4前後の屈折率を示すことが多いので、光拡散剤は、その屈折率が1〜2程度のものから適宜選択すればよい。粘着剤層27を構成するベースポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常0.01以上であり、適用される液晶表示装置1の明るさや視認性を確保する観点からは、0.01以上0.5以下であることが好ましい。光拡散剤として用いる微粒子は、球形のもの、それも単分散に近いものが好ましく、平均粒径が2〜6μm程度の微粒子が好適に用いられる。
無機化合物からなる微粒子としては、例えば、酸化アルミニウム(屈折率1.76)、酸化ケイ素(屈折率1.45)などを挙げることができる。また、有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、例えば、メラミン樹脂ビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などが挙げられる。
光拡散剤の配合量は、それが分散される粘着剤層27に必要とされるヘイズ値や、それが適用される液晶表示装置1の明るさなどを考慮して適宜決められるが、通常、粘着剤層27を構成するベースポリマー100重量部に対して3〜30重量部程度である。
光拡散剤が分散された粘着剤層27のJIS K 7361に従って測定されるヘイズ値は、適用される液晶表示装置1の明るさを確保するとともに、表示像のにじみやボケを生じにくくする観点から、20〜80%の範囲とすることが好ましい。
透明な粘着剤又は拡散粘着剤を構成する各成分(ベースポリマー、光拡散剤、架橋剤など)は、酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶かして粘着剤組成物とされる。ただし、光拡散剤などの溶剤に溶けない成分は、分散された状態となる。この粘着剤組成物を透明樹脂フィルム23又は離型フィルム上に塗布し、乾燥させることにより、粘着剤層27を形成することができる。
粘着剤層27は、偏光板20に帯電する静電気を除電するために、帯電防止性を有することが好ましい。ロール状偏光板20は、粘着剤層27上に積層された離型フィルムを剥離して液晶セル40に貼合するときなどに、静電気を帯びることがある。このとき、粘着剤層27が帯電防止性を有していると、その静電気が速やかに除電され、液晶セル40の表示回路が破壊されたり、液晶分子が配向を乱されたりすることが抑制される。
粘着剤層27に帯電防止性を付与する方法としては、例えば、粘着剤組成物に、金属微粒子、金属酸化物微粒子、又は金属等をコーティングした微粒子等を含有させる方法;電解質塩とオルガノポリシロキサンとからなるイオン導電性組成物を含有させる方法;有機塩系の帯電防止剤を配合する方法などが挙げられる。求められる帯電防止性の保持時間は、一般的なロール状偏光板20の製造、流通及び保管期間の観点から、最低6ヶ月程度である。
粘着剤層27は、上述の接着剤層を硬化させるため、活性エネルギー線を通す場合がある。そのため、活性エネルギー線の該当スペクトル領域に高透過率を有することが好ましい。なお、活性エネルギー線の照射により粘着剤としての諸特性が変化しないことが好ましい。
粘着剤層27は、例えば、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3〜20日程度熟成され、架橋剤の反応を十分に進行させた後、液晶セル40への貼合に供される。
粘着剤層27の厚みは、その接着力などに応じて適宜決定されるが、通常、1〜40μm程度である。加工性や耐久性などの特性を損なうことなく、薄型のロール状偏光板20を得るためには、粘着剤層27の厚みは3〜25μm程度とすることが好ましい。また、光拡散剤が分散された粘着剤層27を用いる場合、粘着剤層27の厚みをこの範囲とすることにより、液晶表示装置1を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケを生じにくくすることができる。
粘着剤層27を乾燥等から保護するため、粘着剤層27の表面には図示しない離型フィルムが貼合されていてもよい。離型フィルムとしては、通常、透明基材フィルムに易剥離層を形成して、粘着剤層27からの剥離性を付与したものが用いられる。透明基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフトレート、ポリエチレン、及びポリプロピレンのような熱可塑性樹脂の押出フィルム、それらを組み合わせた共押出フィルム、それらを一軸又は二軸に延伸したフィルムなどが挙げられる。
離型フィルムのJIS L 1096に準処して測定されるガーレ法剛軟度は、20mgf以上であることが好ましく、70mgf以上であることがより好ましい。ガーレ法剛軟度が20mgf未満であると、離型フィルムの剛性が不足であり、ハンドリング性が低下することがある。
<偏光フィルムと集光フィルムの配置>
次に、図1を参照して、偏光フィルム21と集光フィルム25の配置について説明する。上述したように、偏光フィルム21の表面には集光フィルム25が積層・貼合されている。この図は、ロール状の偏光フィルム21から繰り出された長尺状の偏光フィルム21と、同じくロール状から繰り出された長尺状の集光フィルム25とを、互いの長手方向が平行となるように一致させて積層する状態を模式的に示している。
次に、図1を参照して、偏光フィルム21と集光フィルム25の配置について説明する。上述したように、偏光フィルム21の表面には集光フィルム25が積層・貼合されている。この図は、ロール状の偏光フィルム21から繰り出された長尺状の偏光フィルム21と、同じくロール状から繰り出された長尺状の集光フィルム25とを、互いの長手方向が平行となるように一致させて積層する状態を模式的に示している。
この図に示すように、ロール状の偏光フィルム21の吸収軸Aとロール状の集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rは、交差角度θcで交わっている。この交差角度θcは、液晶セル40のモードなどに応じて任意の角度とすることができる。
(TNモードの液晶セル)
液晶セル40のモードがTNモードの場合、この交差角度θcがほぼ30°〜60°、又はほぼ120°〜150°の範囲内であることが好ましい。通常、TNモードでは、偏光フィルム21の吸収軸Aと集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rとが45°前後又は135°前後の角度で交差するように貼合されるためである。なお、交差角度θcは、45°又は135°を中心に、ある程度幅を有するように設定している。
液晶セル40のモードがTNモードの場合、この交差角度θcがほぼ30°〜60°、又はほぼ120°〜150°の範囲内であることが好ましい。通常、TNモードでは、偏光フィルム21の吸収軸Aと集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rとが45°前後又は135°前後の角度で交差するように貼合されるためである。なお、交差角度θcは、45°又は135°を中心に、ある程度幅を有するように設定している。
これは、交差角度θcが45°又は135°のときは、輝度が最も高く画像が明るくなるが、一方で、液晶セル40中のカラーフィルターの画素ピッチと、集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rのピッチ間隔Pが規則正しいため、干渉縞(モアレ)の現象が生じやすくなる。このため、交差角度θcを45°又は135°を中心にして多少角度をずらして貼合することで、輝度は多少下がるものの、モアレの発生を抑制することができるためである。また、集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rが波打つことも考慮して、交差角度θcは「ほぼ」30°〜60°、又は120°〜150°に設定している。ここで、「ほぼ」とは、具体的には±10°の範囲を意味する。なお、図6では、TNモード用として、交差角度θcがほぼ45°となるように偏光フィルム21と集光フィルム25とを積層している。
(VAモード又はIPSモードの液晶セル)
液晶セル40のモードがVAモード又はIPSモードの場合、この交差角度θcがほぼ−15°〜15°、又はほぼ75°〜105°の範囲内であることが好ましい。通常、VAモード又はIPSモードでは、偏光フィルム21の吸収軸Aと集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rとが0°前後又は90°前後の角度で交差するように貼合されるためである。なお、交差角度θcは、0°又は90°を中心に、ある程度幅を有するように設定している。理由は、上述したTNモードの場合と同様に、モアレ抑制の観点からである。また、集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rが波打つことも考慮して、交差角度θcは「ほぼ」−15°〜15°、又は75°〜105°に設定している。ここで、「ほぼ」とは、上記と同様に、具体的には±10°の範囲を意味する。
液晶セル40のモードがVAモード又はIPSモードの場合、この交差角度θcがほぼ−15°〜15°、又はほぼ75°〜105°の範囲内であることが好ましい。通常、VAモード又はIPSモードでは、偏光フィルム21の吸収軸Aと集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rとが0°前後又は90°前後の角度で交差するように貼合されるためである。なお、交差角度θcは、0°又は90°を中心に、ある程度幅を有するように設定している。理由は、上述したTNモードの場合と同様に、モアレ抑制の観点からである。また、集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状の稜線Rが波打つことも考慮して、交差角度θcは「ほぼ」−15°〜15°、又は75°〜105°に設定している。ここで、「ほぼ」とは、上記と同様に、具体的には±10°の範囲を意味する。
上述したとおり、偏光フィルム21の吸収軸Aは、偏光フィルム21の長手方向に対して平行な方向となるように設定している。また、集光フィルム25の稜線Rは、液晶セル40のモードに応じて集光フィルム25の長手方向に対してあらかじめ交差角度θcだけ傾斜させている。このため、偏光フィルム21と集光フィルム25を貼合する際に、長尺状のフィルムの長手方向どうしが平行となるように重ねることで、特段軸合わせなどを行うことなく吸収軸Aと稜線Rが上述した交差角度θcで交差するように貼合することが可能となる。これにより、ロール・トゥ・シート貼合方式やシート・トゥ・シート貼合方式のように偏光フィルム21や集光フィルム25を枚葉体に切り出して貼合する必要がなくなり、偏光フィルム21や集光フィルム25をチップカットする工程が不要となる。このため、偏光板20の生産ラインのタクトタイムを短縮し、生産性を向上させることが可能となる。また、偏光フィルム21や集光フィルム25をチップカットする必要がないため、カットした残りの部分で材料の無駄が生じることがない。このため、取り効率の向上と材料ロスの低減を図ることも可能となる。
ここで、「取り効率」とは、有効幅amm、有効長bmmのロール状のフィルムから、縦cmm×横dmmの継合部分のない枚葉状のフィルムがe枚切り出せたとき、以下の式から算出される値Rを意味する。取り効率Rが大きいほど、歩留まりがよいことになる。
取り効率(R)=(cde/ab)×100(%)
取り効率(R)=(cde/ab)×100(%)
<ロール状偏光板の製造方法>
以下、図6を参照してロール状偏光板20の製造方法の一実施形態を詳しく説明する。この製造方法では、偏光フィルム21の一方の面に、接着剤を介して集光フィルム25を貼合し、偏光フィルム21の他方の面に、接着剤を介して透明樹脂フィルム23を貼合して、ロール状偏光板20を製造する。ロール状偏光板20の製造方法は、原料フィルム搬送工程(A)と、貼合工程(B)と、硬化工程(C)とを備える。
以下、図6を参照してロール状偏光板20の製造方法の一実施形態を詳しく説明する。この製造方法では、偏光フィルム21の一方の面に、接着剤を介して集光フィルム25を貼合し、偏光フィルム21の他方の面に、接着剤を介して透明樹脂フィルム23を貼合して、ロール状偏光板20を製造する。ロール状偏光板20の製造方法は、原料フィルム搬送工程(A)と、貼合工程(B)と、硬化工程(C)とを備える。
原料フィルム搬送工程(A)では、偏光フィルム21が一定方向に搬送されるとともに、その一方の面に集光フィルム25が供給され、他方の面には透明樹脂フィルム23が供給される。原料フィルム搬送工程(A)の途中で、接着剤塗布装置12により、集光フィルム25の偏光フィルム21へ貼合される面に接着剤を塗布し、またもう一つの接着剤塗布装置13により、透明樹脂フィルム23の偏光フィルム21へ貼合される面に接着剤を塗布することができる。
貼合工程(B)は、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15と、透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16とで、集光フィルム25/偏光フィルム21/透明樹脂フィルム23の積層体を挟みながら行われる。第1の貼合ロール15及び第2の貼合ロール16は、それぞれが接触するフィルムの搬送方向に回転しており、図中の曲線矢印は、その回転方向を示している。
硬化工程(C)は、上の貼合工程(B)で得られた積層体に、接着剤を硬化させるためのエネルギーを硬化装置18から供給し、偏光フィルム21と集光フィルム25の間、及び偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23の間にある接着剤を硬化させるための工程である。これらの各工程について、順に説明を進めていく。
[原料フィルム搬送工程(A)]
原料フィルム搬送工程(A)では、ロール状に巻かれた偏光フィルム21から長尺状の偏光フィルム21が繰り出される。偏光フィルム21の一方の面側には、同じくロール状に巻かれた集光フィルム25から繰り出される長尺状の集光フィルム25が供給され、他方の面側には、ロール状に巻かれた透明樹脂フィルム23から繰り出される長尺状の透明樹脂フィルム23が供給される。
原料フィルム搬送工程(A)では、ロール状に巻かれた偏光フィルム21から長尺状の偏光フィルム21が繰り出される。偏光フィルム21の一方の面側には、同じくロール状に巻かれた集光フィルム25から繰り出される長尺状の集光フィルム25が供給され、他方の面側には、ロール状に巻かれた透明樹脂フィルム23から繰り出される長尺状の透明樹脂フィルム23が供給される。
集光フィルム25、透明樹脂フィルム23の搬送速度は、その製造装置に適した値に定めればよく、特に制限されないが、通常、前の工程で製造され、搬送されてくる偏光フィルム21の搬送速度に合わせた速度とされる。偏光板20の品種や品質に制約されない限り、その搬送速度が大きいほうが貼合工程(B)において単位時間当たりにフィルムにかかる圧力が小さくなる。このため、集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状が潰れにくく、光学特性が良好となる。また、搬送速度が大きいほうが、タクトタイムが速くなるため生産性の観点から好ましい。搬送速度としては、具体的には、例えば1〜100m/分程度に設定することができる。
それぞれのフィルムが搬送される方向は、搬送工程の最後に、集光フィルム25と透明樹脂フィルム23とで偏光フィルム21を挟むようになればよい。その途中段階では、例えば、偏光フィルム21の搬送方向に対して、集光フィルム25及び/又は透明樹脂フィルム23が、図示のように垂直に向かう方向へ搬送される部分があってもよいし、偏光フィルム21の搬送方向に対して、集光フィルム25及び/又は透明樹脂フィルム23が平行に搬送される部分があってもよい。また製造装置の配置上の制約がある場合には、集光フィルム25及び/又は透明樹脂フィルム23が、一旦偏光フィルム21の搬送方向と逆方向へ繰り出されてから、適当なロールによって偏光フィルム21の片面へ向かうように方向転換されて搬送されてもよいし、偏光フィルム21が搬送される横手方向から垂直方向を含む適当な角度で繰り出されてから、適当なロールによって偏光フィルム21の片面へ向かうように方向転換されて搬送されてもよい。
[プロテクトフィルム貼合工程]
図示は省略するが、集光フィルム25は、偏光フィルム21に貼合される面とは反対側にプロテクトフィルムが積層された状態で、原料フィルム搬送工程(A)に供することができる。集光フィルム25は、表面のプリズム形状又はレンズ形状が潰れたり、損傷したりしやすいため、表面形状を保護する目的で、このようなプロテクトフィルムを積層して供給することは有効である。この場合、集光フィルム25は、プロテクトフィルムを貼合するプロテクトフィルム貼合工程を経た後、原料フィルム搬送工程(A)に供される。
図示は省略するが、集光フィルム25は、偏光フィルム21に貼合される面とは反対側にプロテクトフィルムが積層された状態で、原料フィルム搬送工程(A)に供することができる。集光フィルム25は、表面のプリズム形状又はレンズ形状が潰れたり、損傷したりしやすいため、表面形状を保護する目的で、このようなプロテクトフィルムを積層して供給することは有効である。この場合、集光フィルム25は、プロテクトフィルムを貼合するプロテクトフィルム貼合工程を経た後、原料フィルム搬送工程(A)に供される。
プロテクトフィルムが貼合された集光フィルム25は、集光フィルム25側でやや凸となる正カールで、かつカール量が10mm以下となるものであることが好ましい。ここで、カール量とは、凸面を下にして平面上に置いたときに、フィルムの角部又は辺がその面から浮き上がる高さを意味する。プロテクトフィルムを貼合した集光フィルム25のカール量がこの範囲内にあると、得られる偏光板20のカール量をより好ましい範囲に調整することができる。
[接着剤塗布工程]
偏光フィルム21と集光フィルム25、偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23の貼合は、接着剤を介して行われる。接着剤は、原料フィルム搬送工程(A)中の任意の段階で、偏光フィルム21と集光フィルム25との貼合面の少なくとも一方、及び偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23との貼合面の少なくとも一方に塗布することができる。図6では、集光フィルム25と透明樹脂フィルム23の貼合面にそれぞれ接着剤を塗布しているが、例えば、偏光フィルム21の両面に接着剤を塗布することもできる。
偏光フィルム21と集光フィルム25、偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23の貼合は、接着剤を介して行われる。接着剤は、原料フィルム搬送工程(A)中の任意の段階で、偏光フィルム21と集光フィルム25との貼合面の少なくとも一方、及び偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23との貼合面の少なくとも一方に塗布することができる。図6では、集光フィルム25と透明樹脂フィルム23の貼合面にそれぞれ接着剤を塗布しているが、例えば、偏光フィルム21の両面に接着剤を塗布することもできる。
また、集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23が貼合ロール15,16によって貼合される直前に、偏光フィルム21の両面と集光フィルム25、透明樹脂フィルム23の貼合面のそれぞれに接着剤を塗布することもできる。ただ、操作性などの観点からは、図6に示すように、集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23の貼合面に接着剤を塗布しておくことが好ましい。すなわち、原料フィルム搬送工程(A)には、その後の貼合工程(B)に備えて、集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23が偏光フィルム21を挟むように搬送される部分が存在するので、その部分で接着剤を塗布しておくことが好ましい。
そこで、好ましくは、原料フィルム搬送工程(A)の途中に接着剤塗布工程が設けられる。接着剤は、この接着剤塗布工程において、集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23のそれぞれ偏光フィルム21へ貼合される面に塗布される。図6には、接着剤塗布装置12によって、集光フィルム25の貼合面に接着剤を塗布し、別の接着剤塗布装置13によって、透明樹脂フィルム23の貼合面に接着剤を塗布するように構成した例が示されている。
集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23は、接着剤が塗布される前に、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、又は電子線照射処理のような表面活性化処理が施されてもよい。また、それぞれのフィルムは、必要に応じて洗浄及び乾燥処理を経ていてもよいし、易接着処理剤や表面改質剤などの塗布とそれに引き続く乾燥処理を経ていてもよい。
接着剤塗布装置12,13の構造や塗布方法は特に限定されるものでなく、必要量の接着剤を均一に塗布できる装置と方法を採用すればよい。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、各種の塗工方式が採用できる。
[貼合工程(B)]
原料フィルム搬送工程(A)において、偏光フィルム21を挟むようにその両側から供給される集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23は、引き続く貼合工程(B)において、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15及び透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16により貼合される。
原料フィルム搬送工程(A)において、偏光フィルム21を挟むようにその両側から供給される集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23は、引き続く貼合工程(B)において、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15及び透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16により貼合される。
この貼合工程において、第1の貼合ロール15と第2の貼合ロール16による貼合圧力は、0.3MPa〜5.0MPa以下の範囲が好ましい。貼合圧力が高すぎると、貼合の際に集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状が押しつぶされて形状が崩れてしまいやすくなるため好ましくない。一方、貼合圧力が低すぎると、フィルムどうしが十分に接着せずに剥がれやすくなるため好ましくない。
この貼合工程(B)においては、第1の貼合ロール15の周速よりも第2の貼合ロール16の周速を早くして貼合を行うことが好ましい。このようにすることで、得られる偏光板20は、透明樹脂フィルム23の側が若干凸状になり、集光フィルム25の側が若干凹状になる、いわゆる正カール状となる。このような正カール状となった偏光板20は、透明樹脂フィルム23の側が凸状となっているため、液晶セル40に貼合する際に貼合面に気泡などが入りにくくなるため好ましい。
一方で、透明樹脂フィルム23側の凸状が大きくなりすぎる、すなわち正カールのカール量が大きくなりすぎると、偏光板20の四隅側が浮き上がりやすくなるため、端部に気泡が入りやすくなったり、偏光板20を液晶セル40に貼合した後で端部側からはがれやすくなったりするため好ましくない。したがって、具体的には、第1の貼合ロール15の周速度に対する第2の貼合ロール16の周速度の比が1.0105以上1.0118以下となるように周速度に差をつけて行われることが好ましい。この周速度の関係は、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15の周速度をR1、透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16の周速度をR2として、以下の式(1)を満たすことを意味する。
1.0105≦R2/R1≦1.0118 (1)
1.0105≦R2/R1≦1.0118 (1)
この周速度の比で規定されるそれぞれの貼合ロール15,16の周速度の差により、集光フィルム25には収縮応力が、透明樹脂フィルム23には引張応力がそれぞれ付与された状態で、次の硬化工程(C)へと搬送され、接着剤が硬化される。その硬化後、それぞれの応力解放に伴って偏光板20が歪み、カールとなる。透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16の周速度R2を、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15の周速度R1よりやや大きくし、両者の比が上記の範囲となるように設定することによって、得られる偏光板20のカール量が適切に制御される。
貼合ロール15,16を構成する表面の材質は、ステンレス鋼、銅合金、及びクロムメッキ処理品のような金属類;ポリウレタン、ポリフルオロエチレン、及びシリコーンのようなゴム類;酸化クロム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム又は酸化アルミニウムを溶射して得られるセラミック類などであってもよい。なかでも、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15はゴムロールとし、透明樹脂フィルム23の外側に接触する第2の貼合ロール16は金属ロールとすることが好ましい。すなわち、プリズム形状又はレンズ形状の表面凹凸があり、比較的薄肉で剛性が弱い集光フィルム25には、表面に弾性のあるゴムロールを当て、一般に集光フィルム25よりも比較的剛性が高い透明樹脂フィルム23側には、金属ロールを当てる。このようにすることにより、両者の周速度の差によって生じる応力を、効果的かつ均一にフィルムへ与えることができる。
[硬化工程(C)]
貼合工程(B)から搬送されてくる集光フィルム25/接着剤(図示せず)/偏光フィルム21/接着剤(図示せず)/透明樹脂フィルム23の順で貼合された積層体は、硬化工程(C)において、上記の接着剤が硬化され、集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23がそれぞれ偏光フィルム21に接着されて、ロール状偏光板20となる。図6では、貼合ロール15,16によって貼合された積層体が硬化装置18へ送り込まれ、そこで硬化処理が施されるようになっている。硬化処理は、接着剤の種類に応じて、活性エネルギー線の照射、加熱、又は乾燥により行うことができる。
貼合工程(B)から搬送されてくる集光フィルム25/接着剤(図示せず)/偏光フィルム21/接着剤(図示せず)/透明樹脂フィルム23の順で貼合された積層体は、硬化工程(C)において、上記の接着剤が硬化され、集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23がそれぞれ偏光フィルム21に接着されて、ロール状偏光板20となる。図6では、貼合ロール15,16によって貼合された積層体が硬化装置18へ送り込まれ、そこで硬化処理が施されるようになっている。硬化処理は、接着剤の種類に応じて、活性エネルギー線の照射、加熱、又は乾燥により行うことができる。
接着剤としては、上述した活性エネルギー線の照射により硬化する接着剤組成物、特に、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤を含有するものを用いることが好ましい。この場合、硬化工程(C)は、活性エネルギー線の照射により行われる。接着剤の硬化に用いられる活性エネルギー線は、例えば、波長が1pm〜10nmのX線、波長が10〜400nmの紫外線、波長が400〜800nmの可視光線などであることができる。なかでも、取扱いの容易さ、硬化性接着剤組成物の調製の容易さ及びその安定性、並びにその硬化性能の観点から、紫外線が好ましく用いられる。紫外線の光源には、例えば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。
紫外線の照射強度は、接着剤の種類や照射時間によって決定されるものであり、特に制限されないが、例えば、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜300mW/cm2となるように設定することが好ましく、更には1〜200mW/cm2となるように設定することがより好ましい。硬化性接着剤組成物への光照射強度が0.1mW/cm2を下回ると、硬化反応時間が長くなって、照射時間を長くしなければ硬化しなくなるので、生産性の面で不利になる。一方、光照射強度が300mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び硬化性接着剤組成物の重合時の発熱により、硬化性接着剤組成物の黄変や偏光フィルム21の劣化を生じることがある。
紫外線の照射時間も、接着剤の種類や照射強度によって決定されるものであり、特に制限されないが、例えば、照射強度と照射時間の積で表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定することが好ましく、更には50〜1,000mJ/cm2となるように設定することがより好ましい。硬化性接着剤組成物への積算光量が10mJ/cm2を下回ると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる傾向にある。一方、積算光量が5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなるので、生産性の面で不利になる。
硬化工程(C)を活性エネルギー線の照射により行う場合、硬化された接着剤層の厚みは、通常1μm以上、また50μm以下であるが、適度の接着力を保って偏光板20を薄くする観点から、20μm以下が好ましく、更には10μm以下がより好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。例中、含有量ないし使用量を表す「%」や「部」は、特記ない限り重量基準である。
[実施例1]
(a)ロール状偏光板の調製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのロール状のポリビニルアルコールフィルムを乾式で延伸倍率5倍に一軸延伸し、更に緊張状態を保ったまま、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。次に、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で10/9.5/100の水溶液に74℃で300秒間浸漬した。26℃の純水で20秒間水洗した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されたロール状偏光フィルムを得た。その厚みは約26μmであった。このとき、偏光フィルムの吸収軸は、ロール状偏光フィルムの長手方向と平行であった。
(a)ロール状偏光板の調製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのロール状のポリビニルアルコールフィルムを乾式で延伸倍率5倍に一軸延伸し、更に緊張状態を保ったまま、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。次に、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で10/9.5/100の水溶液に74℃で300秒間浸漬した。26℃の純水で20秒間水洗した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されたロール状偏光フィルムを得た。その厚みは約26μmであった。このとき、偏光フィルムの吸収軸は、ロール状偏光フィルムの長手方向と平行であった。
(b)ロール状集光フィルムの調製
ポリプロピレン(実質的にプロピレンの単独重合体)を溶融押出しし、Tダイの吐出口下方に配置された賦型ロールと表面が平坦なタッチロールとの間に挟んで冷却固化させ、さらに平坦面を冷却ロールに接触させることにより、上記賦型ロールと接触した面にプリズム形状が賦形された厚さ100μmのプリズムフィルム(集光フィルム)を作製した。ここで用いた賦型ロールは、断面が三角形のV字溝がロールの周方向に平行に設けられ、その形状がそのまま樹脂フィルムに転写されると、図5に示すとおり、フィルムのプリズム形状谷部に相当する部分に平坦部を有し、プリズムのピッチ間隔Pが33μm、プリズムのライン状突起の高さhが21μm、プリズムの頂角θaが65°になるものである。
ポリプロピレン(実質的にプロピレンの単独重合体)を溶融押出しし、Tダイの吐出口下方に配置された賦型ロールと表面が平坦なタッチロールとの間に挟んで冷却固化させ、さらに平坦面を冷却ロールに接触させることにより、上記賦型ロールと接触した面にプリズム形状が賦形された厚さ100μmのプリズムフィルム(集光フィルム)を作製した。ここで用いた賦型ロールは、断面が三角形のV字溝がロールの周方向に平行に設けられ、その形状がそのまま樹脂フィルムに転写されると、図5に示すとおり、フィルムのプリズム形状谷部に相当する部分に平坦部を有し、プリズムのピッチ間隔Pが33μm、プリズムのライン状突起の高さhが21μm、プリズムの頂角θaが65°になるものである。
(c)ロール状透明樹脂フィルムの調製
ロール状透明樹脂フィルムとして、日本ゼオン(株)から入手したシクロオレフィン系樹脂の二軸延伸フィルムであって厚み60μmの「ゼオノアフィルム」(商品名、面内の位相差値Ro=63nm、厚み方向の位相差値Rth=225nm)を使用した。
ロール状透明樹脂フィルムとして、日本ゼオン(株)から入手したシクロオレフィン系樹脂の二軸延伸フィルムであって厚み60μmの「ゼオノアフィルム」(商品名、面内の位相差値Ro=63nm、厚み方向の位相差値Rth=225nm)を使用した。
(d)接着剤組成物の調製
以下の各成分を混合して、紫外線硬化性接着剤組成物を調製した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 40部
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル 60部
ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート(光カチオン重合開始剤) 4部
以下の各成分を混合して、紫外線硬化性接着剤組成物を調製した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 40部
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル 60部
ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート(光カチオン重合開始剤) 4部
(e)集光フィルムへのプロテクトフィルムの貼合
片面に弱粘着性のゴム系粘着剤層が設けられた厚み60μmのオレフィン系樹脂フィルムを用意し、これをプロテクトフィルムとした。このプロテクトフィルムは、ヘイズが14.4%で、ゴム系粘着剤層の厚みが3μmであった。フィルム貼合用のロールタイプラミネーターに、集光フィルムを貼合前張力0.013N/mmで供給し、上記プロテクトフィルムを貼合前張力0.20N/mmで供給し、プロテクトフィルムのゴム系粘着剤層が集光フィルムと重なるように貼合した。
片面に弱粘着性のゴム系粘着剤層が設けられた厚み60μmのオレフィン系樹脂フィルムを用意し、これをプロテクトフィルムとした。このプロテクトフィルムは、ヘイズが14.4%で、ゴム系粘着剤層の厚みが3μmであった。フィルム貼合用のロールタイプラミネーターに、集光フィルムを貼合前張力0.013N/mmで供給し、上記プロテクトフィルムを貼合前張力0.20N/mmで供給し、プロテクトフィルムのゴム系粘着剤層が集光フィルムと重なるように貼合した。
(f)偏光板の作製
(a)で調製した偏光フィルムの片面に、上記(b)と(e)で調製したプロテクトフィルム貼合集光フィルムの集光フィルム側を貼合した。また、偏光フィルムの他面には、(c)で調製したシクロオレフィン系樹脂フィルム(透明樹脂フィルム)を貼合した。貼合にあたっては、まず、上記プロテクトフィルム貼合集光フィルム及びシクロオレフィン系樹脂フィルムのそれぞれの貼合面に、上記(a)で調製した紫外線硬化性接着剤組成物を塗布した。次に、それぞれの塗布面を上記偏光フィルムの両面に重ねた後、2本の貼合ロールの間に通して一体化した。ここで、集光フィルム側の第1の貼合ロールには、表面がゴムになっているゴムロールを使用し、シクロオレフィン系樹脂フィルム側の第2の貼合ロールには、表面にクロムメッキが施された金属ロールを使用した。
(a)で調製した偏光フィルムの片面に、上記(b)と(e)で調製したプロテクトフィルム貼合集光フィルムの集光フィルム側を貼合した。また、偏光フィルムの他面には、(c)で調製したシクロオレフィン系樹脂フィルム(透明樹脂フィルム)を貼合した。貼合にあたっては、まず、上記プロテクトフィルム貼合集光フィルム及びシクロオレフィン系樹脂フィルムのそれぞれの貼合面に、上記(a)で調製した紫外線硬化性接着剤組成物を塗布した。次に、それぞれの塗布面を上記偏光フィルムの両面に重ねた後、2本の貼合ロールの間に通して一体化した。ここで、集光フィルム側の第1の貼合ロールには、表面がゴムになっているゴムロールを使用し、シクロオレフィン系樹脂フィルム側の第2の貼合ロールには、表面にクロムメッキが施された金属ロールを使用した。
貼合後、メタルハライドランプを光源とする紫外線照射装置を用い、320〜400nmの波長における積算光量が200mJ/cm2となるようにシクロオレフィン系樹脂フィルム側から紫外線照射して接着剤を硬化させ、得られた偏光板をロールに巻き取った。
(g)偏光性能の評価
得られたロール状偏光板は、継合部分のない連続したものであった。この偏光板の厚みは、190μmであった。偏光板部分の単体透過率及び偏光度を測定したところ、それぞれ42.7%及び100.0%であった。
得られたロール状偏光板は、継合部分のない連続したものであった。この偏光板の厚みは、190μmであった。偏光板部分の単体透過率及び偏光度を測定したところ、それぞれ42.7%及び100.0%であった。
(h)取り効率の評価
ロール状偏光板(100mm幅×5m長、長手方向と偏光板の吸収軸は平行)から、枚葉状の楕円偏光板(縦100mm×横50mm)を、縦方向が直線偏光板の吸収軸となるように裁断したところ、継合部分のない円偏光板を100枚切り出すことができた。この例では、上述した取り効率の式により取り効率を算出したところ100%となった。
ロール状偏光板(100mm幅×5m長、長手方向と偏光板の吸収軸は平行)から、枚葉状の楕円偏光板(縦100mm×横50mm)を、縦方向が直線偏光板の吸収軸となるように裁断したところ、継合部分のない円偏光板を100枚切り出すことができた。この例では、上述した取り効率の式により取り効率を算出したところ100%となった。
1 液晶表示装置、2 液晶パネル、10 バックライト、12 接着剤塗布装置、13 接着剤塗布装置、15 第1の貼合ロール、16 第2の貼合ロール、18 硬化装置、20 偏光板(ロール状偏光板)、21 偏光フィルム、23 透明樹脂フィルム、25 集光フィルム、26 プロテクトフィルム、26a 基材フィルム、26b 粘着剤層、27 粘着剤層、30 偏光板、40 液晶セル、50 光拡散板、R 集光フィルムの稜線、A 偏光フィルムの吸収軸、θc 偏光フィルムの吸収軸と集光フィルムの稜線との交差角度、θa 頂角、h ライン状突起の高さ、P ピッチ間隔、L 1つのプリズムの斜面の終点から隣り合う次のプリズムの斜面の始点に至る距離、H 集光フィルムの厚み
Claims (16)
- プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム、偏光フィルム及び透明樹脂フィルムがこの順に積層されてなるロール状偏光板であって、
前記偏光フィルムの吸収軸と前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状の稜線とが任意の交差角度で交差しており、
前記偏光フィルムと前記集光フィルムとは、ロール状の偏光フィルム及びロール状の集光フィルムを用いて、ロール・トゥ・ロール方式で貼合されているロール状偏光板。 - 前記交差角度が、ほぼ30°〜60°、又はほぼ120°〜150°の範囲である、請求項1に記載のロール状偏光板。
- 前記交差角度が、ほぼ−15°〜15°、又はほぼ75°〜105°の範囲である、請求項1に記載のロール状偏光板。
- 前記偏光フィルムの前記吸収軸は、前記ロール状の偏光フィルムから繰り出される長尺状の偏光フィルムの長手方向に対して平行であり、
前記集光フィルムの前記稜線は、前記ロール状の集光フィルムから繰り出される長尺状の集光フィルムの長手方向に対して前記交差角度で交差しており、
前記長尺状の偏光フィルムと前記長尺状の集光フィルムとが、互いに長手方向が平行となるように貼合されている、請求項1〜3のいずれかに記載のロール状偏光板。 - 前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状は、一つのプリズム又はレンズの斜面の終点から隣り合う次のプリズム又はレンズの斜面の始点に至る距離が、前記稜線のピッチ間隔に対して30%以下となるように形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載のロール状偏光板。
- 前記集光フィルムは、熱可塑性樹脂で構成される、請求項1〜5のいずれかに記載のロール状偏光板。
- 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂で構成される、請求項6に記載のロール状偏光板。
- 前記ポリプロピレン系樹脂は、実質的にプロピレンの単独重合体からなる、請求項7に記載のロール状偏光板。
- 前記ポリプロピレン系樹脂は、10重量%以下のエチレンユニットを含有するプロピレンとエチレンとの共重合体からなる、請求項7に記載のロール状偏光板。
- 前記集光フィルムは、活性エネルギー線硬化性樹脂で構成される、請求項1〜5のいずれかに記載のロール状偏光板。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のロール状偏光板の製造方法であって、
ロール状の偏光フィルム及びロール状の集光フィルムを用いて、ロール・トゥ・ロール方式により、連続的に前記偏光フィルムと前記集光フィルムとを貼合する工程を備えることを特徴とするロール状偏光板の製造方法。 - 前記貼合する工程における前記偏光フィルムと前記集光フィルムとの貼合圧力が5MPa以下であり、かつライン速度が1m/分以上である、請求項11に記載のロール状偏光板の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のロール状偏光板を裁断してなることを特徴とする偏光板チップ。
- 請求項13に記載の偏光板チップと、前記偏光板チップが貼合された液晶セルとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
- 前記偏光板チップが請求項2に記載のロール状偏光板を裁断してなり、
前記液晶セルのモードがTNモードである、請求項14に記載の液晶表示装置。 - 前記偏光板チップが請求項3に記載のロール状偏光板を裁断してなり、
前記液晶セルのモードがVAモード又はIPSモードである、請求項14に記載の液晶表示装置。
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2010
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