JP2004354734A - 光走査装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光源1と、光源からの光ビームを偏向する偏向手段6と、偏向手段により偏向された光ビームを被走査面8a上に導く走査結像光学系7を有する光走査装置において、走査結像光学系7は少なくとも2つの走査レンズL1,L2よりなり最も偏向手段に近い走査レンズL1は主走査方向に正の屈折力を持ち副走査方向の屈折力はゼロまたはゼロに近く、最も被走査面に近い走査レンズL2は主走査方向で負、副走査方向で正の屈折力を持ち、最も被走査面に近い走査レンズの副走査方向の入射側の面は偏向手段側に凸の面となるように構成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成装置の光書込み手段に用いられる光走査装置、及びその光走査装置を具備するデジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ、レーザプロッタ等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザプリンタ等に関連して広く知られた光走査装置は一般に、光源側からの光ビームを光偏向器等の偏向手段により偏向させ、fθレンズ等の走査結像光学系により被走査面に向けて集光して被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットで被走査面を主走査方向に光走査するように構成されている。被走査面の実体をなすものは光導電性の感光体等からなる感光媒体の感光面である。
【0003】
近年、光走査装置の書込み密度は高密度化の一途をたどり、1200dpi(dots per inch)、1600dpi、あるいはそれ以上の書込み密度の実現が意図されている。このような高密度書込みを実現するためには、光スポットの安定性を欠くことはできない。光スポットの安定性は、「被走査面上での光スポット径の像高による変化」が小さいことを言い、その実現のためには、偏向器により偏向された光束を被走査面上に光スポットとして結像させる走査結像光学系が高性能であることを要する。光スポット径を変動させる要因としては、周知の如く「走査結像光学系による像面湾曲」があり、像面湾曲を良好に補正した走査結像光学系は、従来より多数提案されている。さらに、光スポットを安定させ、高書込み密度に対応するためのマルチビーム化に対応するために、走査結像光学系の光学倍率が、像高によらず一定であることも重要である。
【0004】
前記光走査装置を用いた画像形成装置の一例として、4つの感光体を記録紙の搬送方向に配列し、これらの各感光体に対応した複数の光源装置から放射された光ビームの光束を1つの偏向手段により偏向走査し、各感光体に対応する複数の走査結像光学系により各感光体に同時に露光して潜像を形成し、これらの潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各々異なる色の現像剤を使用する現像器で可視像化した後、これらの可視像を同一の記録紙に順次重ね合わせて転写し定着することで、カラー画像を得る画像形成装置がある。
このように、光走査装置と感光体の組み合わせを2組以上用いて、2色画像や多色画像、カラー画像等を得るようにした画像形成装置は「タンデム方式の画像形成装置」として知られている。
【0005】
このようなタンデム方式の画像形成装置の一例として、複数の感光媒体が単一の光偏向器を共用する方式のものが開示されている。例えば、
▲1▼光偏向器の両側より光束を入射し、光束を振り分けて走査する対向走査方式(特許文献1,2)、
▲2▼略平行でかつ副走査方向に離れた複数の光束を光偏向器に入射し、複数の光束に対応する複数の走査光学素子を副走査方向に並べて走査する方式(特許文献3)、
▲3▼光偏向器の片側より光束を入射し、3枚構成の走査結像光学系で、走査レンズL1,L2は異なる被走査面に向かう複数の光束が通過し、走査レンズL3は各被走査面毎に設けられている方式(特許文献4,5,6)、
などがある。
このように、複数の被走査面で光偏向器を共用し、光偏向器の数を減らすことにより、画像形成装置をコンパクト化・低コスト化することが可能になる。
また、本出願人が提案している前記タンデム方式の画像形成装置に対応した光走査装置としては下記の特許文献7に記載のものがある。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−157128号公報
【特許文献2】
特開平9−127443号公報
【特許文献3】
特開平9−54263号公報
【特許文献4】
特開2001−4948号公報
【特許文献5】
特開2001−10107号公報
【特許文献6】
特開2001−33720号公報
【特許文献7】
特開2000−350110号公報
【特許文献8】
特開平9−58053号公報
【特許文献9】
特開平7−278180号公報
【特許文献10】
特開平7−230051号公報
【特許文献11】
特開平7−110451号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光走査装置の走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定していることを第1の課題としている。
【0008】
近来、前記走査特性の向上を目して光走査装置の光学素子に、非球面に代表される特殊な面の採用が一般化しており、このような特殊な面を容易に形成でき、尚且つコストも安価な「樹脂(プラスチック)製の光学素子」が多用されている。特に、前記説明のタンデム方式の画像形成装置では、使用する光学素子の数が多いことから、樹脂製の光学素子を使用することによるコストダウン効果は非常に大きい。
【0009】
このように、光走査装置に樹脂製の光学素子が用いられる場合、レンズ表面は製作が容易である点などから、反射防止のためのコートがされていないことが多く、レンズの表面反射やレンズ面間の反射により発生する反射光が光偏向器の偏向面に戻り、再度偏向走査され被走査面に入射し、ゴースト光(フレア光)となる問題がある。特に、近年においては感光体の感度が高くなっており、ゴースト光の存在は無視できなくなっている。
【0010】
さらに、光走査装置では、発熱が大きいポリゴンミラー等の偏向手段により光学箱内の温度が上昇するとき、ポリゴンミラーが回転して作る気流や、光学箱内の形状の違いなどにより、熱は一律に伝達していくことはなく、光学箱内の温度は温度分布を持つ。また、走査レンズにおいても、熱の伝わり方の違いや、レンズ形状の違い(光学箱への設置面積の違い)等により、一律な温度変化は生じず、走査レンズの場所による温度差が発生する。
このような光走査装置に樹脂製の光学素子を用いる場合、樹脂はガラスに比べて熱膨張係数が大きいため、温度変化による形状変化が大きく発生し、樹脂製光学素子の光学特性が変化する。
【0011】
前記タンデム方式の画像形成装置では、各感光体に向かう光束は異なる走査レンズを通過し、走査レンズを保持する光学箱内の温度分布により、各走査レンズ間で異なる温度分布が生じることより、走査レンズの形状変化、屈折率の変化などは一律ではなく、各感光体上での走査線長さの変化量や等速性の変化は異なる。これらの潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各々異なる色の現像剤を使用する現像器で可視像化した後、これらの可視像を同一の記録紙に順次重ね合わせて転写し定着することでカラー画像を得る場合、所謂「色ずれ」が生じてしまう。特に光学箱内で発熱が大きいポリゴンミラー等の偏向手段に最も近い走査レンズを樹脂とした場合には、光学特性の変化は大きくなる。
【0012】
さらに、連続出力する場合、特に連続出力枚数が多い場合には、偏向手段の発熱により、機内温度(光学箱内温度)は上昇していく。このため、各走査レンズの温度分布は変化していき、先に説明した如く色ずれが発生し、その変動量も変化していく。この結果、最初に出力された画像と、最後に出力された画像で、色ずれにより色味が変化してしまうという問題がある。
【0013】
前記「走査線長さの変化」の問題に対処する方法として、書込み開始側と書込み終了側とに各々受光手段を配置し、各受光手段の受光時間差に基づき、各光ビームの画周波数を調整する方法があるが(特許文献8)、この方式を上記「複数の被走査面で光偏向器を共用」するタンデム方式の画像形成装置に採用しようとすると、書込み終了側に受光手段配置用のスペースを必要とするため、有効書込み幅の確保がより困難になる。
【0014】
また、前記書込み開始側と書込み終了側とに各々受光手段を配置し、各受光手段の受光時間差に基づき、各光ビームの画周波数を調整する方法では、各感光体での走査線の長さは補正可能であるが、各走査レンズの持つ温度分布による等速性の変化は補正することができない。このため、例えば書込み開始と書込み終了での主走査方向のドット位置を各感光体で補正しても、中間での主走査方向のドット位置は一致せず、色ずれが発生してしまう。
【0015】
前記タンデム方式の光走査装置においては、上記問題を解決するために、発熱が大きいポリゴンミラー等の偏向手段に最も近い走査レンズの材料をガラスとした例も多くあるが、ガラス製の走査レンズは樹脂製の走査レンズに比べ、大幅なコストアップとなってしまうという課題がある。
【0016】
さらに、前記の▲1▼から▲3▼のタンデム方式の画像形成装置においては下記の課題がある。
前記▲1▼の方式だけでは、2つの異なる被走査面しか走査できず、4色書込みには対応できない。また、異なる走査光学素子を各被走査面に向かう光ビームが通過するため、各被走査面でビーム位置が相対的にずれ、上記「色ずれ」が発生しやすい。
前記▲2▼の方式では、光偏向器が大きくなるなど装置が大型化する。また、これに伴う騒音、消費電力の増加、耐久性劣化の問題や、光学素子が増加しコストアップとなる問題がある。さらに、異なる走査光学素子を各被走査面に向かう光ビームが通過するため、各被走査面でビーム位置が相対的にずれ、上記「色ずれ」が発生しやすい。
前記▲3▼の方式では、走査レンズL1が副走査方向に正のパワーを持っており、各被走査面に向かう光束は収束され、各被走査面への分離が困難になる。
【0017】
また、ゴースト光に関する問題に対処する方法としては、特許文献9,10等に記載の発明があるが、走査レンズのシフトやチルト、もしくは、装置内部に遮光部材を設けており、光学特性の劣化や、装置の複雑化の課題があり、また、いずれの発明も、走査レンズのレンズ面による反射や面間による反射光が光偏向器に戻り被走査面上でゴースト光になるということについては解決されていない。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、請求項1に係る発明は、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、レンズ面やレンズ面間の反射光による被走査面上でのゴースト光を低減し、走査レンズのレイアウト自由度を向上した光走査装置を提供することを目的とする。
請求項2に係る発明は、請求項1の目的に加え、さらに色ずれや色味の変化の発生を抑制する光走査装置を提供することを目的とする。
請求項3に係る発明は、請求項2の目的に加え、さらに光学倍率が光スポットの像高に対して一定しており、さらに色ずれや色味の変化の発生を抑制し、走査線の曲がりの発生を抑制した光走査装置を提供することを目的とする。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかの目的に加え、環境変動時においても良好なビーム位置精度を確保しつつ、良好な光学性能を得ることができ、また、偏向手段を小さくすることが可能となり、騒音を低減した光走査装置を提供することを目的とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかの目的に加え、さらに光学倍率が光スポットの像高に対して一定している光走査装置を提供することを目的とする。
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかの目的に加え、光学倍率が光スポットの像高に対して一定しており、マルチビーム化による高密度化、高速化にも対応可能な光走査装置を提供することを目的とする。
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかの目的に加え、さらに光学倍率を光スポットの像高に対して一定にしつつ、各被走査面に向かう光ビームを分離可能であり、十分な光量を得られる光走査装置を提供することを目的とする。
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれかの目的に加え、さらに光学倍率を光スポットの像高に対して一定にしつつ、各被走査面に向かう光ビームを分離可能である光走査装置を提供することを目的とする。
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれかの目的に加え、さらに光学倍率が光スポットの像高に対して一定している光走査装置を低コストにて提供することを目的とする。
請求項10に係る発明は、請求項9の目的に加え、さらに光学倍率が光スポットの像高に対して一定している光走査装置を低コストにて提供することを目的とする。
請求項11に係る発明は、高品位な画像再現性が確保できる画像形成装置を実現することを目的とする。
請求項12に係る発明は、高品位な画像再現性が確保でき、さらには多色やフルカラー画像を形成でき、色ずれや色味の変化の発生を抑制し、色ずれの小さい画像形成装置を実現することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段として、請求項1に係る発明は、光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、該偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に導く走査結像光学系とを有する光走査装置において、前記走査結像光学系は少なくとも2つの走査レンズよりなり、最も偏向手段に近い走査レンズは、主走査方向に正の屈折力を持ち、副走査方向の屈折力はゼロもしくはゼロに近く、最も被走査面に近い走査レンズは、主走査方向で負、副走査方向で正の屈折力を持ち、最も被走査面に近い走査レンズの副走査方向の入射側の面は、偏向手段側に凸の面であることを特徴とする。これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、レンズ面やレンズ面間の反射光による被走査面上でのゴースト光を低減し、走査レンズのレイアウト自由度を向上した光走査装置を提供することが可能となる。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の光走査装置において、複数の光源を有し、各光源からの光ビームは、単一の偏向手段により偏向され、走査結像光学系により異なる被走査面上に導かれ、走査結像光学系の最も偏向手段に近い走査レンズは、異なる被走査面に向かう複数の光ビームが通過することを特徴とする。
これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに色ずれや色味の変化の発生を抑制する光走査装置を提供することが可能となる。
また、請求項3に係る発明は、請求項2記載の光走査装置において、異なる被走査面に向かう複数の光ビームは、偏向手段に最も近い走査レンズを副走査方向に略平行に通過することを特徴とする。これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定しており、さらに色ずれや色味の変化の発生を抑制し、走査線の曲がりの発生を抑制した光走査装置を提供することが可能となる。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の光走査装置において、前記偏向手段の同一の偏向面で偏向される全ての光ビームは、該偏向手段の偏向面近傍の主走査断面で略一点で交わるように構成さていることを特徴とする。これにより、環境変動時においても良好なビーム位置精度を確保しつつ、良好な光学性能を得ることができる。また、偏向手段を小さくすることが可能となり、騒音を低減した光走査装置を提供することが可能となる。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の光走査装置において、前記走査レンズは2枚で構成され、被走査面側の走査レンズの主形状は被走査面に凸面を向けた負メニスカスレンズであることを特徴とする。これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定している光走査装置を提供することが可能となる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の光走査装置において、偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とし、任意像高の副走査方向の横倍率をβhとしたとき、次の条件式:
0.9<|βh/β0|<1.1
を満足することを特徴とする。これにより、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定しており、マルチビーム化による高密度化、高速化にも対応可能な光走査装置を提供することが可能となる。
【0024】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一つに記載の光走査装置において、偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とするとき、次の条件式:
0.2<|β0|<0.6
を満足することを特徴とする。これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率を光スポットの像高に対して一定にしつつ、各被走査面に向かう光ビームを分離可能であり、十分な光量を得られる光走査装置を提供することが可能となる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の光走査装置において、光軸上の偏向面の基点から被走査面までの距離をL、複数の走査レンズ間隔で最も離れている光軸上の距離をaとしたとき、次の条件式:
0.3<|a/L|<0.6
を満足することを特徴とする。これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率を光スポットの像高に対して一定にしつつ、各被走査面に向かう光ビームを分離可能である光走査装置を提供することが可能となる。
【0026】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか一つに記載の光走査装置において、前記走査レンズの少なくとも1枚の材質はプラスチックであることを特徴とする。これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、更に、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定している光走査装置を低コストにて提供することが可能となる。
また、請求項10に係る発明は、請求項9記載の光走査装置において、最も偏向手段に近い走査レンズの材質はプラスチックであることを特徴とする。これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定している光走査装置を低コストにて提供することが可能となる。
【0027】
請求項11に係る発明は、像担持体と、該像担持体に画像情報に応じた光書込みを行ない潜像を形成する光書込み手段と、像担持体上の潜像を現像して可視像化する現像手段と、像担持体上の可視像を記録材に直接または中間転写体を介して転写する転写手段と、記録材に転写された画像を定着する定着手段を有する画像形成装置において、前記光書込み手段として、請求項1〜10のいずれか一つに記載の光走査装置を具備することを特徴とする。これにより、高品位な画像再現性が確保できる画像形成装置を実現することが可能となる。
【0028】
請求項12に係る発明は、複数の像担持体と、各像担持体に画像情報に応じた光書込みを行ない潜像を形成する光書込み手段と、各像担持体上の潜像を現像して可視像化する現像手段と、各像担持体上の可視像を同一の記録材に直接または中間転写体を介して転写する転写手段と、記録材に転写された画像を定着する定着手段を有し、多色またはフルカラー画像対応の画像形成装置において、前記光書込み手段として、請求項1〜10のいずれか一つに記載の光走査装置を具備することを特徴とする。これにより、高品位な画像再現性が確保でき、さらには多色やフルカラー画像を形成でき、色ずれや色味の変化の発生を抑制し、色ずれの小さい画像形成装置を実現することが可能となる。
【0029】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
まず請求項1に係る光走査装置の実施形態を説明する。
本実施形態の光走査装置は、光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、該偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に導く走査結像光学系とを有している。そして走査結像光学系は、少なくとも2つの走査レンズよりなり、最も偏向手段に近い走査レンズは、主走査方向に正の屈折力を持ち、副走査方向の屈折力はゼロもしくはゼロに近く、最も被走査面に近い走査レンズは、主走査方向で負、副走査方向で正の屈折力を持つ。
【0030】
一例として、図1に2枚構成の走査レンズよりなる走査結像光学系を備えた光走査装置を示す。図1において、光源装置(例えば半導体レーザ)1から射出された光ビームは、第1光学系(例えばコリメートレンズ)2により平行光束(弱い収束光束もしくは発散光束でも良い)にカップリングされる。カップリングされた光ビームは、被走査面上で所望のビームスポット径を得るための開口絞り(アパーチャ)3を通過後、第2光学系(例えばシリンドリカルレンズ)4を通過し、折返しミラー5で光路を折返されて偏向手段である光偏向器6の近傍で主走査方向に長い線像を形成する。そして光偏向器6の偏向面6aで走査された光束は第3光学系(走査結像光学系)7の走査レンズL1,L2を通過し、光導電性の感光体等からなる感光媒体8の被走査面8a上を略等速に走査するとともに被走査面上近傍で集光する。
【0031】
本実施形態の光走査装置は、主走査方向に関して、最も光偏向器6に近い走査レンズL1は正の屈折力を持ち、等速性を良好に補正している。また、被走査面8aに最も近い走査レンズL2は負の屈折力を持つことで、環境変動時、及び波長変動時における光学特性の劣化をキャンセルしている。さらに、被走査面8aに最も近い走査レンズL2は長尺形状となるため、加工性に課題が大きい。しかし、本実施形態の走査レンズL2によれば、負の屈折力を有しており、レンズの肉厚を主走査方向に亘り均一化しやすく加工上有利となる。
【0032】
副走査方向に関しては、最も光偏向器6に近い走査レンズL1の屈折力はゼロもしくはゼロに近い。しかし、この走査レンズL1は、前記説明の如く主走査方向に関しては強い正の屈折力を持ち、等速性を良好に補正している。
この走査レンズL1は、副走査方向には屈折力を殆ど持たないことにより、主走査断面形状は副走査方向に変化しない。このため、入射する光束が副走査方向にずれた場合においても等速性は劣化しない。また、主走査方向の結像性能の劣化も抑制することが可能である。
さらに本実施形態では、光偏向器6に最も近い走査レンズL1の副走査方向の屈折力がほぼゼロであるため、最も被走査面側の走査レンズL2は、正の強い屈折率を持つ。この結果、走査結像光学系7の副走査方向の倍率は縮小系となり、部品の組み付け誤差、部品の形状誤差などによる性能劣化を抑制可能である。また、副走査方向は、光偏向器6の偏向面6aの基点と被走査面8aが共役関係にあり、光偏向器6の偏向面6aの面倒れ補正機能を有していることは言うまでもない。
【0033】
さらに本実施形態では、例えば最も光偏向器6に近い走査レンズL1の主走査方向の面形状を非円弧形状としたり、その他の走査レンズL2の面形状を主走査方向に非円弧形状とし、且つ、副走査断面内の曲率中心を主走査方向に連ねた曲率中心線が、主走査断面内で前記主走査方向の非円弧形状とは異なる曲線となるように、副走査断面内の曲率半径を主走査方向に変化させた面を用いることで、主走査方向、副走査方向共に像面湾曲を良好に補正することが可能である。
この結果、本実施形態によれば、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現することができる。
【0034】
また、本実施形態の光走査装置では、先に説明したように第2光学系(例えばシリンドリカルレンズ)4を通過した光束は、光偏向器6の近傍で主走査方向に長い線像を形成するように副走査方向で絞られている。このため、光偏向器6で反射された光束は、第3光学系(走査結像光学系)7へ副走査方向で発散光束として入射する。
【0035】
本実施形態の走査結像光学系7の副走査方向の光束は、最も光偏向器6側の走査レンズL1の副走査方向のパワーはほぼゼロであるため、最も被走査面8a側の走査レンズL2に発散光束として入射する。そこで、最も被走査面側の副走査方向のレンズ面を、光偏向器側に凸面を向けたメニスカス形状とし、レンズ面の反射光を発散光束とすることで、レンズ面や面間の反射光が光偏向器6により再度反射されることによる被走査面上でのゴースト光の影響を低減可能となる。
【0036】
さらに、最も被走査面側の走査レンズL2の副走査方向の形状を、光偏向器6側に凸のメニスカス形状とすることで、後ろ側主点の位置を光偏向器6側にくり出すことができ、光偏向器6と像面間の副走査方向の倍率が上がる。この結果、設定する前記副走査方向の倍率の下限値に対し、最も被走査面側の走査レンズL2は、被走査面側に近接して配置することが可能となり、特に後述するタンデム方式の画像形成装置に対応する光走査装置においては、走査レンズ間の間隔を広くすることが可能となり、レンズレイアウトの自由度を向上することが可能となる。
【0037】
(実施形態2)
次に請求項2に係る光走査装置の実施形態を説明する。
前記実施形態1の説明の光走査装置を例えばタンデム方式のカラー画像形成装置に展開した場合についての一例として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4つの感光体に対応する4つの光源装置(例えば4つの半導体レーザ、あるいは4つの発光部を有する半導体レーザアレイ)を具備する光走査装置について、図2(a),(b),(c)に基づいて説明する。
4つの光源装置11−1〜11−4の各光源(または発光部)からの光ビームは、第1光学系(例えばコリメートレンズ)12によりそれぞれ平行光束(弱い収束光束もしくは発散光束でも良い)にそれぞれカップリングされる。カップリングされた光ビームは、被走査面上で所望のビームスポット径を得るための開口絞り(アパーチャ)13を通過後、第2光学系(例えばシリンドリカルレンズ)14を通過し、偏向手段である単一の光偏向器15の近傍で主走査方向に長い線像を形成する。そして光偏向器15の偏向面15aで走査された4つの光束は、第3光学系である走査結像光学系16により異なる感光体17の被走査面17a上に導かれ、各被走査面17a上を略等速に走査するとともに被走査面上近傍で集光する。尚、走査結像光学系16の最も光偏向器15に近い走査レンズL1は、異なる被走査面に向かう複数の光ビームが通過する構成とする。
【0038】
ここで、図2(a)は光走査装置の主走査断面を示し、便宜上、折返しミラーは全て省略し、これらにより走査ビームの光路が変更されない状態に展開して示す図である。また、図2(b)は光走査装置の副走査断面を示し、光偏向器15から被走査面17aまでの光路を折返しミラーを省略して示す図である。さらに図2(c)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4つの感光体17C,17M,17Y,17Kの感光面を被走査面として光走査する場合の副走査断面の例であり、光偏向器15から4つの感光体17C,17M,17Y,17Kまでの光路を折返しミラー18,19を含めて示す図である。
【0039】
図2(a)に示すように、各色に対応する光源装置(副走査方向に平行に配列している4つの光源装置)11−1〜11−4から射出された光ビームは、第1光学系(例えばコリメートレンズ)12によりそれぞれ平行光束(弱い収束光束もしくは発散光束でも良い)にそれぞれカップリングされる。この時、第1光学系12によりカップリングされた各光ビームのビーム形態は「同じビーム形態」である。このビーム形態は「平行ビーム」となることも、「収束性もしくは発散性のビーム」となることもできる。それぞれの光ビームの光束は、被走査面上で所望のビームスポット径を得るための開口絞り13を通過後、第2光学系(例えばシリンドリカルレンズ)14を通過し、光偏向器15の近傍で主走査方向に長い線像を形成する。
【0040】
尚、本実施形態においては、光源装置を副走査方向に平行配置しているが、光走査装置のレイアウト上、折返しミラーなどで折返す構成とし、複数の光源装置を主走査方向に距離を持って配置してもよい。
また、図2(a),(b)に示すが如く、光偏向器15で走査された光束は第3光学系(走査結像光学系)16の走査レンズL1,L2を通過し、それぞれ対応する被走査面上を略等速に走査するとともに被走査面上の近傍で集光する。この時、図2(b)に示すが如く、第3光学系(走査結像光学系)16の走査レンズL1は、全ての光源から射出された光ビームの光束が副走査方向に並び通過する。被走査面17aは実体的には感光媒体17の感光面であり、この実施の形態では図2(c)に示すような「光導電性の感光体17C,17M,17Y,17Kの感光面」であり、図2(a)の上下方向に光走査される。すなわち、図2(a)の上下方向は主走査方向(主走査線の方向)である。
【0041】
第3光学系(走査結像光学系)16の最も光偏向器15に近い走査レンズL1は、異なる被走査面に向かう複数の光ビームが通過する構成となっているため、異なる被走査面間、つまり各色間の主走査方向のビームスポット位置ずれを低減でき、色ずれや色味による画像劣化を抑制可能である。
また、光偏向器15に最も近い走査レンズL1は、主走査方向に強い正の屈折力を持ち、等速性を補正している。この走査レンズL1に、異なる被走査面に向かう複数の光束を通過させることで、走査レンズの加工ばらつきによる主走査方向のビームスポット位置ずれが、異なる被走査面で同一となり、色ずれの発生を抑制することができる。
【0042】
さらに、光偏向器15としての回転多面鏡は、モーター部や基盤による発熱が大きい。基盤に関しては、光学箱の外に出すなどして、光学箱内の温度変動を低減することができるが、モーター部の発熱による温度上昇は発生する。この温度変動による熱が光学箱内を伝搬し、走査結像光学系、特に、回転多面鏡に最も近い走査レンズに温度分布を生じさせる。この温度分布は、特に回転多面鏡による光学箱内の気流や、走査レンズの形状等により、走査レンズ内で一様な温度変化が生じないために発生する。この結果、異なる走査光学素子を各被走査面に向かう光ビームが通過する対向走査方式のタンデム方式のカラー画像形成装置などにおいては、連続プリント時に各被走査面での相対的な主走査方向のビームスポット位置が変動し、色味が変化してしまう。
しかしながら、本実施形態の光走査装置においては、光偏向器16に最も近い走査レンズL1は異なる被走査面に向かう複数の光束を通過させているため、走査レンズL1が主走査方向に温度分布を待った場合においても、主走査方向のビームスポット位置ずれは異なる被走査面で同一となり、連続プリント時の色味の変化、色ずれの発生を抑制することができる。
【0043】
ここで、図3に光偏向器の一例として回転多面鏡を用いたポリゴンスキャナの実施形態について説明する。
図3において、ポリゴンスキャナ21の軸方向に離間したポリゴンミラー部を形成する多面体(回転多面鏡)28a,28b,28c,28dには各々各色に対応した複数のレーザビームLBA,LBB,LBC,LBDが軸方向に配置された各々4面に入射され、高速に偏向走査される。
【0044】
次にポリゴンスキャナ21について詳述する。図3(a)に示すように、このポリゴンスキャナ21では、マルテンサイト系のステンレス鋼からなる軸受シャフト30の上部外周が、ポリゴンミラー部を形成する多面体28a,28b,28c,28dを有するアルミ純度99.9%以上のポリゴンミラー28の内径部28mに焼キバメ固定されている。マルテンサイト系ステンレス(例えばSUS420J2)は焼入れが可能で表面硬度を高くでき、軸受シャフトとしては耐磨耗性が良好で好適である。ポリゴンミラー28の下部にはロータ磁石31が固定されステータコア24a(巻線コイル24)とともにアウターロータ型のブラシレスモータを構成している。
【0045】
ポリゴンミラー部を形成する多面体28a,28b,28c,28dの反射面は所定のレーザビームを偏向するのに十分な軸方向長さ(厚み)を有しており、この軸方向長さ(厚み)は具体的には1〜3mmに設定している。この範囲に設定している理由は1mm以下の場合、薄板となるため鏡面加工時の剛性が低く平面度が悪化する。また、3mm以上だと回転体としてイナーシャが大きく、起動時間が長くなる問題がある。
【0046】
空間部28j(軸方向長さH11,H12,H13)は多面体28a,28b,28c,28dの外接円径よりも小径な形状とすることにより、風損の低減を図っている。空間部28jの風損は最大外周円径で決まり、外接円部の角部が大きく影響する。したがって、角部を丸めることが好適である。一方、内接円径よりも小径にすることにより、風損をより小さくすることも可能であるが、多面体部に挟まれているので、その低減効果は相対的に小さくなる。空間部28jの軸方向長さH11,H12,H13に対して、外接円径と空間部28jの最大外径との差Dは、加工性を考慮して5倍以下となるように設定されている(5倍以上の場合、掘り込み量が多くなるため加工バイトの寿命が短くなり、かつ加工時間が長くなる)。
【0047】
一方、最下部の空間部28jの軸方向長さH13は、バランス修正時に円周溝28kに接着剤を塗布する必要が有るため、作業性を考慮し1mmに設定している。1mm以下の場合、接着剤塗布機の先端と盛り上がった接着剤がポリゴンミラーに接触し、ミラー部の傷、汚損の問題が発生する。尚、円周溝28kを反対面(下方の面28g側)に設けることも考えられるが、下方に開放した溝に接着剤を塗布する際には回転体22を軸受25から外して、回転体22を上下倒立して設置固定した上で塗布する必要があり、複雑な工程を経る必要があるばかりか、軸受25との脱着工程が入るため、その都度油の飛散等が発生し、軸受の劣化を誘発するという問題がある。
尚、ここでは、ポリゴンスキャナの反射面は各色毎に4面設けた例で説明したが、2面もしくは1面で構成しても良い。
【0048】
(実施形態3)
次に請求項3に係る光走査装置の実施形態を説明する。
実施形態2で説明した図2の構成の光走査装置においては、異なる被走査面に向かう複数の光ビームは、光偏向器15に最も近い走査レンズL1を副走査方向に略平行に通過させることで、入射する光束が副走査方向にずれた場合においても等速性は劣化しない。また、主走査方向の結像性能の劣化も抑制することが可能である。また、走査線の曲がりの発生も抑制することが可能である。
【0049】
尚、図2の例では、光偏向器(例えば回転多面鏡)15の一方側に走査結像光学系16と被走査面17aを配置し、光偏向器15から第1番目の走査レンズL1は4つの感光体17C,17M,17Y,17Kに対応する光ビームの光束を副走査方向に並べて通過させる例について説明したが、同様にして、光偏向器(例えば回転多面鏡)の両側に対称に走査結像光学系と2つの感光体(被走査面)を配置するような形態とし、光偏向器から第1番目の走査レンズは、2つの異なる被走査面に向かう光ビームの光束を副走査方向に並べて通過させるようにすることにより、4つの被走査面(感光体)に対応するようにしても良い。
【0050】
(実施形態4)
次に請求項4に係る光走査装置の実施形態を説明する。
図4は第4の実施形態を示す光走査装置の概略斜視図である。図4において、この光走査装置は一つの被走査面(例えば感光体の感光面)47に対して2つの光ビームを照射するマルチビーム光源40を備えており、マルチビーム光源40の各半導体レーザ41−1,41−2からの光ビームは、第1光学系(例えばコリメートレンズ)42−1,42−2によりそれぞれ平行光束(弱い収束光束もしくは発散光束でも良い)にそれぞれカップリングされる。カップリングされた光ビームは、第2光学系(例えばシリンドリカルレンズ)43を通過し、偏向手段である光偏向器(例えばポリゴンミラー)44の近傍で主走査方向に長い線像を形成する。そして光偏向器44の偏向面で走査された光ビームは、第3光学系である走査結像光学系45と折返しミラー46により被走査面(例えば感光体の感光面)47上に導かれ、被走査面47上を略等速に走査するとともに被走査面上近傍で集光する。
このような構成の光走査装置においては、図4に示すように、マルチビーム光源40の複数の半導体レーザ41−1,41−2から射出された全ての光ビームは、光偏向器(例えばポリゴンミラー)44の偏向面近傍で主走査方向において交差させるのが好ましい。以下、その理由について述べる。
【0051】
図5は図4に示す光走査装置の光学系の主走査断面を示し、便宜上、第1光学系、第2光学系、及び折返しミラーは省略した状態を示す図であり、(a)は2つの半導体レーザ41−1,41−2からの光ビームがポリゴンミラー44の偏向面に入射するときに、ある角度αだけ分離されている例、(b)は半導体レーザ41−1,41−2からの光ビームをポリゴンミラー44の偏向面近傍で主走査方向において交差させた例である。
図5(a)において、D1は、半導体レーザ41−1から射出した光ビームが被走査面47においてある像高に到達する際のポリゴンミラー44の偏向面の位置を表しており、D2は半導体レーザ41−2から射出した光ビームが被走査面47において同像高に到達する際のポリゴンミラー44の偏向面の位置を表している。各々の光ビームはポリゴンミラー44に入射するときに、ある角度αだけ分離されている。従って、この角度差だけ同像高に到達するための偏向面の位置にD1とD2のような時間的な遅れが生じる。このように図5(a)の場合は、2つの光ビームはかなり異なった光路を通っているが、同図(b)のように半導体レーザ41−1,41−2からの光ビームをポリゴンミラー44の偏向面近傍で主走査方向において交差させた場合は、2つの光ビームは全く同じ光路を通っている。
【0052】
2つの光ビームが図5(a)のように、走査結像光学系45の各走査レンズの異なる位置を通過してくると、当然異なる光学作用を受けるから、被走査面47上で主走査方向の同じ像高に達する2つの光ビームの収差等の光学特性は違ったものとなり、特に走査線ピッチの像高間変動に対する影響は非常に大きい。
そこで、図5(b)のようにポリゴンミラー44の偏向面近傍で2つの光ビームを交差させることにより、被走査面上の主走査方向の同一像高に達するときに、走査結像光学系45の各走査レンズの主走査方向のほぼ同じ光路を通るようになり、走査線曲がりを効果的に低減することができる。また、ポリゴンミラー44より像面側の各部品ばらつきによる各光ビーム間の主走査方向の書込み位置変動は、全ての光ビームでほぼ同量となり、各ビーム間での主走査方向の書込み位置ずれは抑えられる。さらに、同じ像高へ結像する全ての光ビームを、走査結像光学系45の主走査方向のほぼ同じ位置を通過させることにより、走査結像光学系45を構成する走査レンズの収差の影響を小さく抑え、且つ、主走査方向の結像位置は各ビームとも精度良く合致でき、同期検知器48による同期検知後、全ての光ビームに共通に遅延時間を設定しても、書込み始めの像高での主走査方向の位置ずれを抑えることが可能となる。
また、図5(b)のように設定することにより、ポリゴンミラー44の内接円半径を最小にすることができる。
【0053】
尚、本実施形態の説明では、マルチビーム光源について例を挙げ説明したが、異なる被走査面に向かう光ビームをポリゴンミラーの同一の反射面で偏向する場合にも、各光ビームをポリゴンミラー44の偏向面近傍で主走査方向において交差させることで、同様の効果が得られる。
また、各光ビームの主走査断面での交差位置のずれは、ポリゴンミラーの偏向面上で0.5mm以内にするのが望ましい。
【0054】
(実施形態5)
次に請求項5,6に係る光走査装置の実施形態を説明する。
実施形態1〜4に述べた光走査装置において、走査結像光学系の走査レンズを例えば図1または図2に示すように2枚で構成した場合、被走査面側の走査レンズの主形状は被走査面に凸面を向けた負メニスカスレンズとすることで、像高に対して光学倍率を一定にすることができる。
また、副走査方向の少なくとも2つの面を、副走査断面内の曲率中心を主走査方向に連ねた曲率中心線が、主走査断面内で前記主走査方向の非円弧形状とは異なる曲線となるように、副走査断面内の曲率半径を主走査方向に変化させた面を用い、2つのレンズ面をベンディングさせて「副走査方向の主点位置を調整する」場合、これら2つの面の間隔は広い方が、主点位置の変化量を大きく取ることができる。つまり、副走査方向の横倍率を像高間で補正可能となる。
【0055】
しかし、本実施形態においては、光走査装置の低コスト化を目指して走査結像光学系の走査レンズを2枚構成としており、最も光偏向器に近い走査レンズの副走査方向では、屈折力をほぼゼロとしている。このため、前記2つの面は被走査面に最も近い走査レンズの第1面、第2面となる。この場合、副走査方向の横倍率を像高間で良好に補正することが難しい。
そこで、本実施形態の光走査装置においては、被走査面側の走査レンズの主形状は被走査面に凸面を向けた負メニスカスレンズとすることで、像高に対して光学倍率を一定にしている。
【0056】
また、中心像高に対し、周辺像高は光路長が長くなるため、中心像高と副走査方向の横倍率を一定に保つためには、周辺像高での主点位置は中心像高に対し光偏向器側にする必要がある。そこで、被走査面側の走査レンズの主形状は被走査面に凸面を向けた形状とし、周辺像高での主点位置を中心像高に対し光偏向器側とし、さらに、被走査面に最も近い走査レンズの第1面、第2面の副走査方向の断面内の曲率中心を主走査方向に連ねた曲率中心線が、主走査方向の断面内で前記主走査方向の非円弧形状とは異なる曲線となるように、副走査方向の断面内の曲率半径を主走査方向に変化させた面を用い、2つのレンズ面をベンディングさせて「副走査方向の主点位置を調整する」ことで、像高に対して光学倍率を一定にすることができる。
【0057】
さらに、本実施形態の光走査装置では、光偏向器の偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とし、任意像高の副走査方向の横倍率をβhとしたとき、次の条件式:
0.9<|βh/β0|<1.1 (1)
を満足することが望ましい。
さらに、像高に対して光学倍率を一定にすることで、マルチビーム化により、被走査面を複数の光ビームで同時に走査する場合、複数ビーム間の副走査方向のビームピッチは一定に保たれ、マルチビーム化による高密度化、高速化にも対応可能な光走査装置を提供することが可能となる。
【0058】
(実施形態6)
次に請求項7に係る光走査装置の実施形態を説明する。
実施形態1〜5に述べた光走査装置においては、偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とするとき、次の条件式:
0.2<|β0|<0.6 (2)
を満足することが望ましい。
すなわち、この条件式(2) の下限を越えると、狙いのビームスポット径に対し、偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率β0を大きく設定したときに、アパーチャ径を小さく設定する必要が生じる。この結果、光量不足の問題や、アパーチャにおける回折の影響によるビームスポット径の劣化の問題が大きく発生する(回折の影響については、特許文献11参照)。また、条件式(2) の上限を越えると、最も光偏向器に近い走査レンズを通過後、各色に対応する被走査面へ光路を分離するためのミラーなどを配置した場合、全体の光路長を長くする必要があり装置が大型化してしまう等、光走査装置内のレイアウトが困難になる。従って、これらの問題を解消するには上記の条件式(2) を満足することが望ましい。
【0059】
(実施形態7)
次に請求項8に係る光走査装置の実施形態を説明する。
実施形態1〜6に述べた光走査装置においては、光軸上の偏向面の基点から被走査面までの距離をL、複数の走査レンズ間で最も離れている光軸上の距離をaとしたとき、次の条件式:
0.3<|a/L|<0.6 (3)
を満足することが望ましい。
【0060】
通常、複数の走査レンズ間で最も離れている光軸上の距離内で、各色に対応する被走査面へ光路を分離するためのミラーなどを配置する。この時、上記の条件式(3) の下限を越えると、複数の走査レンズ間で最も離れている光軸上の距離が短くなり過ぎ、各色に対応する被走査面へ光路を分離するためのミラーなどの配置が困難となる。
一方、条件式(3) の上限を越えると、被走査面側の走査レンズに対し、少なくとも主走査方向に強い屈折力を持ち、等速性を補正している走査レンズは、光偏向器の偏向面側に近づく。この結果、被走査面上の画像領域を走査するための画角は狭くなり、画角が広い場合に比べ画像領域の走査時間は短くなる。画像領域の走査時間が短くなることにより、半導体レーザ等の光源のON−OFFが書込み密度に対し対応できなくなる(応答速度が間に合わない)という問題が発生する。従って、これらの問題を解消するには上記の条件式(3) を満足することが望ましい。
【0061】
(実施形態8)
次に請求項9,10に係る光走査装置の実施形態を説明する。
本実施形態では、実施形態1〜7に述べた光走査装置において、走査結像光学系を構成する走査レンズの少なくとも1枚の材質をプラスチック(樹脂)としたものである。すなわち走査結像光学系を構成する走査レンズをプラスチックとすることにより、前記走査特性の向上を目指して光走査装置の光学素子に非球面に代表される特殊な面を形成する場合にも容易に形成することができ、尚且つコストも安価にすることができる。特に、前記説明のタンデム方式の画像形成装置の場合においては、使用する光学素子の数が多いことから、樹脂製の光学素子を使用することでのコストダウン効果は非常に大きい。
【0062】
従来、光走査装置では、発熱が大きいポリゴンミラー等の偏向手段により光学箱内の温度が上昇し、ポリゴンミラーが回転して作る気流や光学箱内の形状の違いなどにより熱は一律に伝達せず、光学箱内の温度は温度分布を持つため、光走査装置に樹脂製の光学素子を用いる場合、樹脂製の光学素子はガラス製の光学素子に比べ熱膨張係数が大きいため形状変化が大きく発生し、樹脂製光学素子の光学特性が変化するという課題があった。また、走査レンズにおいても、熱の伝わり方の違い、レンズ形状の違い(光学箱への設置面積の違い)等により、一律な温度変化は生じず、走査レンズの場所による温度差が光学性能に与える影響が大きく、特に各色での等速性が異なることによる色ずれの発生が生じていた。
【0063】
しかし、本実施形態によれば、走査結像光学系の最も偏向手段に近い走査レンズは、異なる被走査面に向かう複数の光ビームが通過するので、等速性の変動は各色で同様に生じ、色ずれの発生は抑制される。このため、最も偏向手段に近い走査レンズを含み、全ての走査レンズの材質をプラスチックにした場合においても、走査結像光学系における「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正して光スポットの安定性を実現し、さらに色ずれや色味の変化の発生を抑制する光走査装置を実現することができる。
【0064】
(実施形態9)
次に請求項11に係る画像形成装置の実施形態を説明する。
ここでは画像形成装置の一例として、図6に示す構成のレーザプリンターを用いて説明する。このレーザプリンター50は像担持体51として「円筒状に形成された光導電性の感光体」を有している。像担持体51の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ52、現像手段としての現像装置53、転写手段としての転写ローラ54、クリーニング手段としてのクリーニング装置55が配備されている。帯電手段としては帯電ローラ52に代えて、コロナチャージャや帯電ブラシ等を用いることもできる。さらに、帯電した像担持体51上に画像情報に対応した潜像を形成するための光書込み手段として、レーザビームLBにより光走査を行う光走査装置57が設けられ、帯電ローラ52と現像装置53との間で「光書込による露光」を行うようになっている。この光走査装置57としては例えば実施形態1や実施形態4で説明したような構成の光走査装置が用いられる。
また、図6において、符号56は定着装置、58は給紙カセット、59は給紙コロ、60はレジストローラ対、61は搬送路、62は排紙ローラ対、63は排紙トレイであり、符号Pは記録材としての記録紙を示している。
【0065】
画像形成を行うときは、光導電性の感光体である像担持体51が時計回りに等速回転され、その表面が帯電ローラ52により均一帯電され、光走査装置57のレーザビームLBの光書込みによる露光を受けて静電潜像が形成される。形成された静電潜像は所謂「ネガ潜像」であって画像部が露光されている。
この静電潜像は現像装置53により反転現像され可視像化され、像担持体51上にトナー画像が形成される。
【0066】
記録紙Pを収納した給紙カセット58は、画像形成装置50本体に脱着可能であり、図のごとく装着された状態において、収納された記録紙Pの最上位の1枚が給紙コロ59により給紙され、給紙された記録紙Pは、その先端部をレジストローラ対60に捕らえられる。レジストローラ対60は、像担持体51上のトナー画像が転写位置へ移動するのにタイミングを合わせて、記録紙Pを像担持体51と転写ローラ54のニップ部である転写部へ送り込む。送り込まれた記録紙Pは、転写部において像担持体51上のトナー画像と重ね合わせられ、転写ローラ54の作用によりトナー画像を静電転写される。トナー画像を転写された記録紙Pは定着装置56へ送られ、定着装置56においてトナー画像を定着され、搬送路61を通り、排紙ローラ対62により排紙トレイ63上に排出される。
トナー画像を転写した後の像担持体51の表面は、クリーニング装置55によりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
【0067】
このように本実施形態では、像担持体51に光走査により潜像を形成し、上記潜像を可視像化して所望の記録画像を得る画像形成装置において、像担持体51を光走査する光走査装置として、例えば前述の実施形態4で説明した図4の構成の光走査装置を用いるものである。また、像担持体51は光導電性の感光体であるので、その均一帯電と光走査とにより静電潜像が形成され、形成された静電潜像がトナー画像として可視像化され、このトナー画像が記録紙Pに転写され、定着されて所望の画像が得られる。
【0068】
(実施形態10)
次に請求項12に係る画像形成装置の実施形態を説明する。
ここでは画像形成装置の一例として、図7に示す構成のタンデム型のフルカラーレーザプリンタを用いて説明する。
まず、装置内の下部側には水平方向に配設されて給紙カセット71から給紙される記録紙(図示せず)を搬送する搬送ベルト72が設けられている。この搬送ベルト72上にはイエローY用の感光体73Y,マゼンタM用の感光体73M,シアンC用の感光体73C及びブラックK用の感光体73Kが上流側から順に等間隔で配設されている。尚、以下においては符号に対する添字Y,M,C,Kを適宜付けて区別するものとする。
【0069】
これらの感光体73Y,73M,73C,73Kは全て同一径に形成されたものであり、その周囲には、電子写真プロセスに従って画像形成を行なうためのプロセス部材が順に配設されている。イエロー用の感光体73Yを例に挙げて説明すると、感光体73Yの周囲には帯電チャージャ74Y、光走査光学系75Yの露光部、現像装置76Y、転写チャージャ77Y、クリーニング装置78Y等が順に配設されている。他の感光体73M,73C,73Kに対しても同様である。すなわち、本実施の形態では、4つの感光体73Y,73M,73C,73Kを各色毎に設定された被走査面とするものであり、各々に対して光走査装置75の光走査光学系75Y,75M,75C,75Kが1対1の対応関係で設けられている。この光走査装置75は、例えば実施形態2で説明した光走査装置と略同様の構成であり、図2(c)に示したように、走査結像光学系の光偏向器16側の走査レンズL1は、Y,M,C,Kで共通使用とする。
【0070】
また、搬送ベルト72の周囲には、感光体75Yよりも上流側に位置させてレジストローラ79と、ベルト帯電チャージャ80が設けられ、感光体75Kよりも下流側に位置させてベルト分離チャージャ81、ベルト除電チャージャ82、ベルトクリーニング装置83等が順に設けられている。また、ベルト分離チャージャ81よりも搬送方向下流側には定着装置84が設けられており、この定着装置84から排紙ローラ85に向けて図示しない搬送路で結ばれ、定着後の転写紙は排紙トレイ86に搬送される。
【0071】
このような概略構成において、例えば、フルカラーモード(複数色モード)時であれば、各感光体73Y,73M,73C,73Kに対してY,M,C,K用の各色の画像信号に基づき光走査装置75の各々の光走査光学系75Y,75M,75C,75Kによる光ビームの光走査で静電潜像が形成される。これらの静電潜像は各々の対応する現像装置76Y,76M,76C,76Kの色トナーで現像されて各色のトナー像となり、搬送ベルト72上に静電的に吸着されて搬送される記録紙上に順次転写されることにより重ね合わせられた後、搬送ベルト72から分離されて定着装置84に搬送され、定着装置84でフルカラー画像として定着された後、排紙ローラ85を経て排紙トレイ86に排紙される。
【0072】
上記の構成の画像形成装置においては、4つの光走査光学系75Y,75M,75C,75Kを配備した光走査装置75を、例えば実施形態2,3で説明した光走査装置とすることにより、色ずれが無く、高品位な画像再現性が確保できる画像形成装置を実現することができる。
また、以上の構成の画像形成装置において、1つの感光体(被走査面)に向かう光ビームは1つである必要は無く、複数ビーム(例えば図4に示したようなマルチビーム)であっても良い。
【0073】
【実施例】
次に本発明に係る光走査装置のより具体的な実施例について説明する。光走査装置の光学系は例えば図1(但し折返しミラーは省略)または図2(a)に示すような配置構成とする。
(数値実施例1)
[光偏向器前の光学系]
RY:主走査方向曲率半径
RZ:副走査方向曲率半径(レンズ中心)
N:使用波長(655nm)での屈折率
X:光軸方向の距離
【0074】
【表1】
【0075】
表1において、面番号に*を付けた面は共軸非球面である。数値は示さないが、カップリングレンズ(コリメートレンズ)を射出した波面収差は良好に補正されている。また、光偏向器は、A寸18mm、面数6面のポリゴンミラーとする。
【0076】
[光偏向器後の光学系]
β0(光偏向器と被走査面間の副走査方向の横倍率):0.51
βh/β0:0.98(中央像高との倍率差の最も大きい像高での値)
【0077】
【表2】
【0078】
表2において、面番号に*を付けた各面は、主走査方向の形状が非円弧形状であり、副走査方向は平面となっている。また、レンズ面形状は下式で与えられる。
但し、Cm=1/RY、Cs(Y)=1/RZとする。
尚、式中のY^2はYの2乗(=Y2)を表しており、他も同様の意味である。
また、面番号に**を付けた各面は、主走査方向の形状が非円弧形状であり、副走査方向の曲率半径は、レンズ高さにより連続的に変化する。各面形状は、上記式にて与えられる。但し、Cs(Y)は下式で与えられる。
【0079】
本実施例の非球面係数は以下の表3の通りである。但し、表3において、表中のE+01は×10+01、E−01は×10−01であり、他も同様の意味である。
尚、本光学系においては、厚さ1.9mmの防音ガラス(屈折率1.511)を挿入し、防音ガラスは8deg偏向面内で傾けて配置している。以上の数値実施例1の収差図を図8に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
(数値実施例2)
光偏向器前光学系は実施例1と同じとする。
[光偏向器後の光学系]
β0(偏向器と被走査面間の副走査方向の横倍率):0.36
βh/β0:0.97(中央像高との倍率差の最も大きい像高での値)
【0082】
【表4】
【0083】
表4において、面番号に*、**を付けた各面の形状は、数値実施例1と同じ数式で与えられる。また、本実施例の非球面係数は以下の表5の通りである。尚、本光学系において、厚さ1.9mmの防音ガラス(屈折率1,511)を挿入し、防音ガラスは8deg偏向面内で傾けて配置している。以上の数値実施例2の収差図を図9に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明は、光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、該偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に導く走査結像光学系とを有する光走査装置において、前記走査結像光学系は少なくとも2つの走査レンズよりなり、最も偏向手段に近い走査レンズは、主走査方向に正の屈折力を持ち、副走査方向の屈折力はゼロもしくはゼロに近く、最も被走査面に近い走査レンズは、主走査方向で負、副走査方向で正の屈折力を持ち、最も被走査面に近い走査レンズの副走査方向の入射側の面は、偏向手段側に凸の面であることを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、レンズ面やレンズ面間の反射光による被走査面上でのゴースト光を低減し、走査レンズのレイアウト自由度を向上した光走査装置を実現することができる。
【0086】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の光走査装置において、複数の光源を有し、各光源からの光ビームは、単一の偏向手段により偏向され、走査結像光学系により異なる被走査面上に導かれ、走査結像光学系の最も偏向手段に近い走査レンズは、異なる被走査面に向かう複数の光ビームが通過することを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに色ずれや色味の変化の発生を抑制する光走査装置を実現することができる。
また、請求項3に係る発明は、請求項2記載の光走査装置において、異なる被走査面に向かう複数の光ビームは、偏向手段に最も近い走査レンズを副走査方向に略平行に通過することを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定しており、さらに色ずれや色味の変化の発生を抑制し、走査線の曲がりの発生を抑制した光走査装置を実現することができる。
【0087】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の光走査装置において、前記偏向手段の同一の偏向面で偏向される全ての光ビームは、該偏向手段の偏向面近傍の主走査断面で略一点で交わるように構成さていることを特徴とするので、これにより、環境変動時においても良好なビーム位置精度を確保しつつ、良好な光学性能を得ることができる。また、偏向手段を小さくすることが可能となり、騒音を低減した光走査装置を実現することができる。
【0088】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の光走査装置において、前記走査レンズは2枚で構成され、被走査面側の走査レンズの主形状は被走査面に凸面を向けた負メニスカスレンズであることを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定している光走査装置を実現することができる。
【0089】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の光走査装置において、偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とし、任意像高の副走査方向の横倍率をβhとしたとき、次の条件式:
0.9<|βh/β0|<1.1
を満足することを特徴とするので、これにより、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定しており、マルチビーム化による高密度化、高速化にも対応可能な光走査装置を実現することができる。
【0090】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一つに記載の光走査装置において、偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とするとき、次の条件式:
0.2<|β0|<0.6
を満足することを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率を光スポットの像高に対して一定にしつつ、各被走査面に向かう光ビームを分離可能であり、十分な光量を得られる光走査装置を実現することができる。
【0091】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の光走査装置において、光軸上の偏向面の基点から被走査面までの距離をL、複数の走査レンズ間隔で最も離れている光軸上の距離をaとしたとき、次の条件式:
0.3<|a/L|<0.6
を満足することを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率を光スポットの像高に対して一定にしつつ、各被走査面に向かう光ビームを分離可能である光走査装置を実現することができる。
【0092】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか一つに記載の光走査装置において、前記走査レンズの少なくとも1枚の材質はプラスチックであることを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、更に、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定している光走査装置を低コストにて実現することができる。
また、請求項10に係る発明は、請求項9記載の光走査装置において、最も偏向手段に近い走査レンズの材質はプラスチックであることを特徴とするので、これにより、走査結像光学系において「共役化機能」と「等速化機能」を良好に保ちつつ、主走査方向、副走査方向の像面湾曲を良好に補正し光スポットの安定性を実現し、さらに、光学倍率が、光スポットの像高に対して一定している光走査装置を低コストにて実現することができる。
【0093】
請求項11に係る発明は、像担持体と、該像担持体に画像情報に応じた光書込みを行ない潜像を形成する光書込み手段と、像担持体上の潜像を現像して可視像化する現像手段と、像担持体上の可視像を記録材に直接または中間転写体を介して転写する転写手段と、記録材に転写された画像を定着する定着手段を有する画像形成装置において、前記光書込み手段として、請求項1〜10のいずれか一つに記載の光走査装置を具備することを特徴とするので、これにより、高品位な画像再現性が確保できる画像形成装置を実現することができる。
【0094】
請求項12に係る発明は、複数の像担持体と、各像担持体に画像情報に応じた光書込みを行ない潜像を形成する光書込み手段と、各像担持体上の潜像を現像して可視像化する現像手段と、各像担持体上の可視像を同一の記録材に直接または中間転写体を介して転写する転写手段と、記録材に転写された画像を定着する定着手段を有し、多色またはフルカラー画像対応の画像形成装置において、前記光書込み手段として、請求項1〜10のいずれか一つに記載の光走査装置を具備することを特徴とするので、これにより、高品位な画像再現性が確保でき、さらには多色やフルカラー画像を形成でき、色ずれや色味の変化の発生を抑制し、色ずれの小さい画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す光走査装置の構成説明図である。
【図2】本発明の別の実施形態を示す光走査装置の構成説明図である。
【図3】本発明に係る光走査装置の偏向手段の一例を示すポリゴンスキャナの構成説明図であり、(a)はポリゴンスキャナの断面図、(b)はポリゴンスキャナの上面図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態を示す光走査装置の概略斜視図である。
【図5】図4に示す光走査装置の光学系の説明図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示すレーザプリンタの概略構成図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の別の実施形態を示すタンデム型フルカラーレーザプリンタの概略構成図である。
【図8】数値実施例1の光走査光学系の特性を示す収差図である。
【図9】数値実施例2の光走査光学系の特性を示す収差図である。
【符号の説明】
1,11−1〜11−4:光源
2,12:第1光学系
3,13:開口絞り(アパーチャ)
4,14:第2光学系
5:折返しミラー
6,15:光偏向器(偏向手段)
6a,15a:偏向面
7,16:第3光学系(走査結像光学系)
8,17:感光媒体(感光体)
8a,17a:被走査面
L1,L2:走査レンズ
Claims (12)
- 光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、該偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に導く走査結像光学系とを有する光走査装置において、
前記走査結像光学系は少なくとも2つの走査レンズよりなり、最も偏向手段に近い走査レンズは、主走査方向に正の屈折力を持ち、副走査方向の屈折力はゼロもしくはゼロに近く、最も被走査面に近い走査レンズは、主走査方向で負、副走査方向で正の屈折力を持ち、最も被走査面に近い走査レンズの副走査方向の入射側の面は、偏向手段側に凸の面であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1記載の光走査装置において、
複数の光源を有し、各光源からの光ビームは、単一の偏向手段により偏向され、走査結像光学系により異なる被走査面上に導かれ、走査結像光学系の最も偏向手段に近い走査レンズは、異なる被走査面に向かう複数の光ビームが通過することを特徴とする光走査装置。 - 請求項2記載の光走査装置において、
異なる被走査面に向かう複数の光ビームは、偏向手段に最も近い走査レンズを副走査方向に略平行に通過することを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜3のいずれか一つに記載の光走査装置において、
前記偏向手段の同一の偏向面で偏向される全ての光ビームは、該偏向手段の偏向面近傍の主走査断面で略一点で交わるように構成さていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜4のいずれか一つに記載の光走査装置において、
前記走査レンズは2枚で構成され、被走査面側の走査レンズの主形状は被走査面に凸面を向けた負メニスカスレンズであることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜5のいずれか一つに記載の光走査装置において、
偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とし、任意像高の副走査方向の横倍率をβhとしたとき、次の条件式:
0.9<|βh/β0|<1.1
を満足することを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜6のいずれか一つに記載の光走査装置において、
偏向面と被走査面の間の光軸上の副走査方向の横倍率をβ0とするとき、次の条件式:
0.2<|β0|<0.6
を満足することを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜7のいずれか一つに記載の光走査装置において、
光軸上の偏向面の基点から被走査面までの距離をL、複数の走査レンズ間隔で最も離れている光軸上の距離をaとしたとき、次の条件式:
0.3<|a/L|<0.6
を満足することを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜8のいずれか一つに記載の光走査装置において、
前記走査レンズの少なくとも1枚の材質はプラスチックであることを特徴とする光走査装置。 - 請求項9記載の光走査装置において、
最も偏向手段に近い走査レンズの材質はプラスチックであることを特徴とする光走査装置。 - 像担持体と、該像担持体に画像情報に応じた光書込みを行ない潜像を形成する光書込み手段と、像担持体上の潜像を現像して可視像化する現像手段と、像担持体上の可視像を記録材に直接または中間転写体を介して転写する転写手段と、記録材に転写された画像を定着する定着手段を有する画像形成装置において、
前記光書込み手段として、請求項1〜10のいずれか一つに記載の光走査装置を具備することを特徴とする画像形成装置。 - 複数の像担持体と、各像担持体に画像情報に応じた光書込みを行ない潜像を形成する光書込み手段と、各像担持体上の潜像を現像して可視像化する現像手段と、各像担持体上の可視像を同一の記録材に直接または中間転写体を介して転写する転写手段と、記録材に転写された画像を定着する定着手段を有し、多色またはフルカラー画像対応の画像形成装置において、
前記光書込み手段として、請求項1〜10のいずれか一つに記載の光走査装置を具備することを特徴とする画像形成装置。
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