JP4713377B2 - 光走査装置および画像形成装置 - Google Patents

光走査装置および画像形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4713377B2
JP4713377B2 JP2006074457A JP2006074457A JP4713377B2 JP 4713377 B2 JP4713377 B2 JP 4713377B2 JP 2006074457 A JP2006074457 A JP 2006074457A JP 2006074457 A JP2006074457 A JP 2006074457A JP 4713377 B2 JP4713377 B2 JP 4713377B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optical
optical system
scanning device
diffractive
scanning direction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006074457A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007248977A (ja
Inventor
善紀 林
浩司 酒井
大輔 市井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2006074457A priority Critical patent/JP4713377B2/ja
Priority to US11/714,162 priority patent/US7443558B2/en
Publication of JP2007248977A publication Critical patent/JP2007248977A/ja
Priority to US12/230,077 priority patent/US7554708B2/en
Application granted granted Critical
Publication of JP4713377B2 publication Critical patent/JP4713377B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Lenses (AREA)
  • Diffracting Gratings Or Hologram Optical Elements (AREA)
  • Facsimile Scanning Arrangements (AREA)
  • Mechanical Optical Scanning Systems (AREA)

Description

本発明は、光ビームにて被走査面上を走査する光走査装置、および光走査装置を搭載する画像形成装置に係り、特に、それらの装置における光学系を構成する樹脂製レンズに関するものである。
光走査装置は、従来から、光プリンタ,デジタル複写機あるいは光プロッタなどの画像形成装置に広く用いられているが、近年、低価格化、および環境変動の影響を受け難く、かつ高精細な画像を形成することに対応できる構成のものが求められている。
光走査装置に用いられる各種のレンズを樹脂材料で形成すると、樹脂製レンズは、軽量であり、低コストで形成することができると共に、非球面に代表される特殊な面形状の形成が容易であるため、樹脂製レンズに特殊面を採用することにより、光学的な特性を向上させると共に、光学系を構成するレンズ枚数を低減させることができる。すなわち、樹脂製レンズの採用は、光走査装置のコンパクト化、軽量化、低コスト化に資する。
しかし反面、樹脂製レンズは、環境変化、特に温度変化に伴って、形状が変化したり、屈折率が変化したりするため、光学特性、特にパワーが設計値から変化し、光ビームを被走査面上に集光させたときの光スポットの径であるビームスポット径が環境変動により変動するという問題がある。
温度変化に伴う樹脂製レンズのパワー変動は、正レンズと負レンズとで互いに逆に発生するため、光走査装置の光学系内に、正と負の樹脂製レンズを含め、これら正・負樹脂製レンズにおいて発生する、環境変化に起因する光学特性変化を互いに相殺させる方法が知られている。
また、光走査装置の光源として一般的な半導体レーザは、温度が上昇すると発光波長が長波長側へずれるという性質(温度変化による波長変化)があり、また、モードホップによる波長変化もある。光源における波長変化は、光走査装置に用いられる光学系の色収差による特性変化を惹起し、この特性変化もビームスポット径変動の原因となる。
したがって、光学系内に樹脂製レンズを備え、かつ光源に半導体レーザを用いる光走査装置では、温度変化に伴う光学特性の変化と共に、光源における波長変化に伴う光学特性の変化をも考慮した光学設計を行う必要がある。
温度変化に伴う光学特性の変化と光源における波長変化とを考慮し、回折面を採用して光学特性を安定させた光走査装置(レーザ走査装置)として、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1には、レーザ光源から出射されたレーザ光を主走査方向に平行光とし、また副走査方向に光偏向器の偏向反射面近傍に集光させる光源光学系を、「回転対称軸を持たない1面以上の反射面と、2面の透過面とを有し、透過面にパワー回折面を設け、樹脂で構成された1つの光学素子」とした光走査装置が記載され、さらに比較例として、「半導体レーザからの光ビームをコリメートする樹脂製のコリメータレンズと、コリメートされた光ビームを副走査方向に集束させる樹脂製のシリンドリカルレンズの各々に1面ずつ回折面を設けた光走査装置」が記載されている。回折面は回折によるレンズパワーを持つ回折面である。
特許文献2には、偏向器前に回折面を有するレンズを配備する構成の光走査装置が記載されている。
特開2002−287062号公報 特開2005−258392号公報
しかし、特許文献1に記載された「回転対称軸を持たない1面以上の反射面と、2面の透過面とを有し、透過面にパワー回折面を設け、樹脂で構成された1つの光学素子」による光源光学系は、1つの光学素子内に透過面と反射面とを形成しなければならず、曲面形状の反射面が含まれるため、製造が必ずしも容易ではなく、光走査装置の低コスト化の面からしてなお改善の余地がある。
また、一般に回折面は微細加工の技術が必要な上に、その精度も極めて高いものが要求される。例えば、図10(a)のような球面レンズと等価なパワーを有するパワー回折面は、図10(b)のような形状である。すなわち、球面を基盤に対して均一の高さとなるように折り返した形状である。
図10(b)から明らかなように、このパワー回折面は光軸から離れるに従い溝の間隔が狭くなり加工が飛躍的に難しくなる。さらに、バックカットに挟まれたパワー回折面は、いずれも球面の一部をなしている必要がある。これを直線として近似することもできるが、この場合には回折効率の低下を免れない。
しかし、球面の一部をなすようにパワー回折面を形成すると、面形状に粗さが目立ち、波面収差の劣化によりビームスポット径が太ったり、散乱光の発生によりゴーストの発生や光の伝達効率の低下などの問題が発生する。
また、回折面と逆面がパワーを有する屈折面となっている場合、2面間の偏心により光学特性が劣化する。
また、特許文献2に記載の光走査装置では、偏向器前に回折面を用いた光学素子を用いているが、回折面のパワーが強いため、面間偏心に対して許容度が少ない回折レンズとなってしまう。また、回折面の各セグメントが平面から大きくずれるため、加工、計測が困難になり、結果として良好な光学特性が得られない。
本発明は、前記従来の技術の課題に鑑み、光学系に用いられる光学素子における回折面の形状精度を高くすることなく、安価で成形しやすいものにし、しかも温度変動によるビームスポット径の変動のみならず、モードホップによる発振波長の変化によるビームスポット径の変動をも低減し、より安定したビームスポット径で光走査を行い得る光走査装置、およびその光走査装置を搭載する画像形成装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、光源からの光ビームをカップリングする第1光学系と、該第1光学系からの光ビームを偏向手段に導く第2光学系と、前記偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に集光させて光スポットを形成する第3光学系とを備えた光走査装置において、前記第1光学系と前記第2光学系を構成するレンズの少なくとも1つを樹脂製レンズとし、該樹脂製レンズの少なくとも1つは以下の条件(1)〜(4)を満足することを特徴とする。
(1)該樹脂製レンズの一面は回折面を有し、他面は回折面を有さない、
(2)|P3|≧|P1+P2|、
(3)|P1|>|P1+P2|かつ|P2|>|P1+P2|、
(4)P1×P3>0。
ただし、P1は該樹脂製レンズの回折面における回折部の主走査方向または副走査方向のパワー、P2は前記P1で定義した方向の回折面における屈折部のパワー、P3は該樹脂製レンズの回折面でない面における前記P1で定義した方向のパワー。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光走査装置において、樹脂製レンズがP3>0を満足することを特徴とする。
前記構成により、温度変動によるビームウェスト位置変化が少なく(条件(4))、光利用効率が高く、高速化への対応が容易となり(条件(1))、面間偏心が発生しても、ビームスポット径劣化が少なく(条件(2),(3))、加工、計測に優れた面形状となり(条件(3))、マルチビーム間での光学特性の差が少なくなり、複数のビームに対して同じ光学特性を得ることができる(条件(3))。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の光走査装置において、第3光学系を構成するレンズの少なくとも1つを、主走査方向または副走査方向に正のパワーを持つ樹脂製レンズとしたことを特徴とし、この構成により、低コスト化、軽量化が実現でき、なおかつ、請求項1または2記載の条件(1)〜(4)を満たすことにより、小径ビームスポット化が図れる。さらに、樹脂製走査レンズは、非球面、自由曲面への対応が容易で、初期特性としては小径ビームスポットをはじめとした良好な光学特性の確保が可能であり、本構成により、唯一問題であった温度特性まで含めた光学特性を得ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3いずれか1項記載の光走査装置において、回折面の面形状は、階段構造でほぼノンパワーとなる形状であることを特徴とし、この構成によって、面間偏心が発生してもビームスポット径の劣化が少なく、マルチビーム間での光学特性の差が少なくなり、複数のビームに対して良好な光学特性を得ることができる。また、回折面がノンパワーとなっているため、マルチビーム採用時に回折レンズを通過する位置が相対的に異なっていても、面間の偏心の影響を受けにくく良好な光学特性を有する光走査装置を提供することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の光走査装置において、回折面の少なくとも1つは第1光学系の樹脂製レンズに採用され、該第1光学系の樹脂製レンズに採用されている回折面は回転対称面となっていることを特徴とし、この構成によって、光軸まわりに光学素子が回転しても良好な光学特性が得られる。
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の光走査装置において、第1光学系の樹脂製レンズの回折面と反対側の面は、回転対称な非球面であることを特徴とし、この構成によって、面間の偏心に強く、かつ波面収差を良好に補正し、ビームスポットの小径化が実現できる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の光走査装置において、回折面の少なくとも1つは第2光学系の樹脂製レンズに採用され、該第2光学系の樹脂製レンズに採用されている回折面は副走査断面形状が主走査方向の位置によらず同一であることを特徴とし、この構成によって、回折レンズが主走査方向にずれても、光学特性は全く変化せず、組付誤差を緩和することが可能になる。また、マルチビーム時には複数のビームが主走査方向に離れて通過するが、主走査方向にビームが離れても、複数のビームの温度補正効果が全く同じで、かつ同じ光学特性を得ることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の光走査装置において、回折面と反対側の面は主走査方向にノンパワーであり、副走査方向に正のパワーを有する屈折面であることを特徴とし、この構成によって、回折面の反対側の面は副走査方向に正のパワーを有することにより、線像形成の機能を果たし、主走査方向にノンパワーとすることにより、副走査断面形状を主走査方向の位置によらず、同一とすることができる。また、マルチビーム時には複数のビームが主走査方向に離れて通過するが、主走査方向にビームが離れても、複数のビームの温度補正効果が全く同じで、かつ同じ光学特性を得ることができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の光走査装置において、回折面の少なくとも1つは回折溝が楕円形状をしていることを特徴とし、この構成によって、回折溝を楕円状とすることにより、回折面採用を1面のみとしても任意の温度補正効果を得ることができる。また、回折面の採用を1面のみとすることができるため、光量を確保することができ、高速化が容易になる。さらに階段状とすることにより、請求項4の説明にて記載した作用効果を奏する。
請求項10に記載の発明は、請求項9記載の光走査装置において、回折面の反対側の面は主走査方向よりも副走査方向の方がパワーが強い屈折面であることを特徴とし、この構成によって、主走査方向のパワーよりも副走査方向のパワーを大きくすることにより、線像形成機能を回折レンズに持たせることができる。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10いずれか1項記載の光走査装置において、第1光学系と第2光学系と第3光学系を構成する全てのレンズが樹脂製レンズであることを特徴とし、この構成によって、全てのレンズを樹脂製レンズとすることにより、低コスト化、軽量化が実現でき、かつリサイクルが容易になる。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11いずれか1項記載の光走査装置において、回折面を有する樹脂製レンズの少なくとも1つは複数のビームが通過するものであることを特徴とし、この構成によって、マルチビーム化することにより、高速対応が可能になる。
請求項13に記載の発明は、少なくとも1つの画像担持体と、該画像担持体に対応させて走査結像光学系が設けられる光走査装置とを備え、前記画像担持体に対して光走査を行うことにより画像形成を行う画像形成装置において、少なくとも1つの前記光走査装置に請求項1〜12いずれか1項記載の光走査装置を採用したことを特徴とし、この構成によって、常に安定したビームスポット径を得ることができ、高精細な印字に適した画像形成装置をコンパクトで、かつ安価に提供することが実現する。
本発明に係る光走査装置によれば、回折面を用いた光走査装置において、温度変動によるビームスポット径の変動のみならず、モードホップによる発振波長の変化によるビームスポット径変動を低減し、より安定したビームスポット径で光走査を行うことができる。
また、搭載される光学素子に採用される回折面の形状精度を高くすることなく、安価で成形しやすい構成となる。また、回折面を1面にしか用いていないため、光量ロスがなく、高速書き込みに対応できる。回折面をノンパワーに近くすることにより、面間の偏心が発生してもビームスポット径劣化が少ない。マルチビーム採用時に回折レンズを通過する位置が相対的に異なっていても、面間の偏心の影響を受けにくく、良好な光学特性を有するなどの効果を奏する光走査装置が実現する。
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る光走査装置を用いることにより、常に安定したビームスポット径を得ることができ、高精細な印字に適し、かつコンパクトで安価な画像形成装置が実現する。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る光走査装置の実施形態の光学系の概略構成図であり、1は光源である半導体レーザ、2は第1光学系に含まれるカップリングレンズ、3はアパーチュア、4は第2光学系に含まれるアナモフィック光学素子、5は光偏向器である回転多面鏡のポリゴンミラー、6は第3光学系に含まれる走査レンズ、8は被走査面を示す。
また、G1はポリゴンミラー5を収納する防音ハウジング(図示せず)の窓を塞ぐ防音ガラス、G2は光学系全体を収納するハウジング(図示せず)の偏向光ビームの出射部に設けられた防塵ガラスを示している。
図1において、半導体レーザ1から出射した発散性の光ビームLは、カップリングレンズ2により所望の形態の光ビームLに変換され、アパーチュア3によりビーム整形されてアナモフィック光学素子4に入射する。アナモフィック光学素子4を透過した光ビームLは、副走査方向に集束しつつ防音ガラスG1を透過して、ポリゴンミラー5の偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像として結像する。そして光ビームLは、ポリゴンミラー5の偏向反射面に反射されて防音ガラスG1を透過して走査レンズ6に入射する。
走査レンズ6は1枚のレンズにより構成され、走査レンズ6を透過した光ビームLは防塵ガラスG2を通って被走査面8に入射し、走査レンズ6の作用により被走査面8上に光スポットを形成する。
ポリゴンミラー5が等速回転すると、偏向反射面により反射された光ビームLは等角速度的に偏向する。走査レンズ6は、等角速度的に偏向しつつ入射する光ビームLによる光スポットが、被走査面上において主走査方向(図の上下方向)へ等速的に移動するようにするfθ特性を有している。この構成により、光スポットは被走査面8を等速的に光走査する。
走査レンズ6はアナモフィックな光学素子であり、副走査方向においてはポリゴンミラー5の偏向反射面位置と被走査面位置とを幾何光学的な共役関係としており、これによりポリゴンミラー5の面倒れを補正している。また、被走査面8は、例えば電子写真式画像形成装置では感光性媒体の感光面である。
前記カップリングレンズ2は、一面が階段形状の同心円状のパワー回折面、また他面が回転対称非球面の樹脂製レンズである。
図2(a),(b)は本実施形態における前記カップリングレンズの説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図であって、左右方向が主走査方向、上下方向が副走査方向である。
図2(a),(b)において、カップリングレンズ2の一方の面2aには、階段形状に構成された同心円状の溝の集合による同心円状のパワー回折面が形成され、他方の面2bには、回転対称非球面形状の屈折面が形成されている。
半導体レーザ1からカップリングレンズ2に入射する光ビーム(発散光ビーム)Lは、カップリングレンズ2を透過すると、所望の形態の光ビームLに変換され、第2光学系に導光される。回折面のパワーは、半導体レーザ1におけるモードホップや温度変化に起因する、主走査方向および/または副走査方向のビームウェスト位置の変動を略ゼロとするように設定される。
このようにカップリングレンズ2は、一面が回折面2a、また他面が屈折面2bとなっているが、回折面2aは、加工誤差が光源の波長ばらつきにより、どうしても光利用効率が低下する。このように、回折面2aを一面のみに採用することにより(条件(1))、光利用効率の向上を図ることができる。さらに、カップリングレンズ2の回折面2aのパワーは以下の条件(2)〜(4)を満足する。
(2)|P3|≧|P1+P2|
(3)|P1|>|P1+P2|かつ|P2|>|P1+P2|
(4)P1×P3>0→温度補正効果
ただし、P1:該樹脂製レンズの回折面の回折部の主走査方向または副走査方向のパワー、P2:P1で定義した方向の回折面の屈折部のパワー、P3:該樹脂製レンズの回折面でない面のP1で定義した方向のパワーである。
ここで、条件(3)の式は、回折面2aの回折部のパワーと屈折部のパワーが相殺されるように設定されるということを示す。|P1|>|P1+P2|は回折部のパワーの絶対値は屈折部のパワーを追加することにより相殺されることを示し、|P2|>|P1+P2|は屈折部のパワーの絶対値は回折部のパワーを追加することにより相殺されることを示す。このとき、回折面2aの全体としてのパワーが小さくなる。
さらに、条件(2)の式は、|P3|≧|P1+P2|を満足することにより、屈折部に面全体のパワーを配分することができ、面間の偏心に強い光学素子とすることができる。
また、条件(3)の式を満足することにより、回折面2aのパワーは低減されるが、このとき回折面形状は階段状に近づいていく。最も理想的な形状としては、階段状になるのがよいが、(3)式を満足するだけで、シェーパー加工のような加工痕を発生させないような形成方法を採用することができ、これにより加工時間の短縮化もできる。加工時間の短縮化は、加工時の熱の発生の低減など副次的なメリットも派生し、高精度の回折面2aを得るためには好ましい。回折面2aの面精度も非常に滑らかに仕上げることにより、散乱光の発生やビームスポット径太りが殆ど発生しないようにすることができる。
条件(4)の式は屈折部と回折部のパワーの符号を同じにするということを示している。
通常、正のパワーを有する屈折レンズは温度上昇に伴い、以下のように変化する。
・膨張による曲率半径増大
・屈折率減少
・半導体レーザの波長増加
これらの変化は全て、屈折レンズの焦点距離を増大させる方向に作用する。一方、正のパワーを有する回折部は波長増加に伴い焦点距離が短くなる。したがって、屈折部と回折部とのパワーの符号が同じであれば、温度上昇時に焦点距離の変動が相殺され、トータルとして焦点距離の変動を低減することができる。温度が下がるときは、屈折部と回折部による焦点距離変動は、それぞれ温度上昇時とは逆方向に変動し、やはり、トータルとして焦点距離変動が低減される。
一般的に第1光学系(カップリングレンズ2)は発散光束をカップリングする機能が必要であり、主走査方向/副走査方向に正のパワーを有することが必要である。第2光学系(アナモフィック光学素子4)は第1光学系からの光ビームを、光偏向器(ポリゴンミラー5)の偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像として形成させることが必要であって、そのためには、少なくとも副走査方向に正のパワーを有することが必要である。つまり、温度補償だけでなく、カップリング機能、または線像形成機能を果たすためには、全体のパワーとしてはP1+P2+P3が正のパワーとする必要がある。ここで、P3>0とすれば前記条件(2)の式より、P1+P2+P3を満たすことができる。
前述したように、第1光学系または第2光学系に回折レンズを用いることにより、素子単体として温度によるビームウエスト位置変動を低減することができるが、素子単体としての温度補正効果を補正過剰とすることにより、光走査装置全系における温度補償が可能になる。したがって、第3光学系(走査レンズ6)に少なくとも1つの主走査方向、または副走査方向に正のパワーを有する樹脂製レンズを採用することにより、低コスト化、軽量化を実現することができ、かつ前記条件(1)〜(4)を満たすことにより、ビームスポットの小径化が図れる。
さらに、樹脂製走査レンズは、非球面および自由曲面への対応が容易であって、初期特性としては小径ビームスポットをはじめとした良好な光学特性の確保が可能であり、本構成により、唯一問題であった温度特性まで含めた光学特性を得ることができる。
既述したように、屈折面2bの屈折部に面全体のパワーを配分することにより、面間の偏心に強い光学素子とすることができるが、最も望ましいのは、回折面2aのパワーをゼロとするのがよく、具体的にはP1=−P2とすればよい。このようにすることにより、屈折面2bに対し、回折面2aが偏心していてもビームスポット径の劣化が少ない光走査装置を提供することができる。
また、回折面2aが階段構造であれば、シェーパー加工のような加工痕を発生させないような形成方法を採用することができ、加工時間の短縮化も図ることができる。加工時間の短縮化は、加工時の熱の発生の低減など副次的なメリットも派生し、高精度のパワー回折面2aを得るために好ましい。
また、レンズそのもののパワーは、入射面と出射面のパワーの合成として与えられるが、一方の面がノンパワーでも反対側の面のパワーを適切に設定することで、所望のレンズパワーを得ることができる。したがって、このような階段構造のパワー回折面は、いかなるパワーのレンズにも採用することができる。
もちろん、回折面2aの面精度も局所的に非平面であるところがないため、非常に滑らかに仕上げることができ、散乱光の発生やビームスポット径太りの発生も殆どない。
前記第1光学系(カップリングレンズ2)は、半導体レーザ1からの発散光束をカップリングするための光学系である。通常、第1光学系に含まれる光学素子は、主走査方向および/または副走査方向および/または光軸方向に調整が必要であり、このように調整な調整が必要な場合は、調整中に光軸回りに光学素子が回転してしまうおそれがある。アナモフィックな面が光軸回りに回転すると、ビームスポット径が劣化するため、できるだけ回転対称な面形状とした方がよい。また、第1光学系における回折面は全体のパワーをできるだけ小さくした方がよく、最も望ましいのは回折面のパワーをゼロとする場合であるため、波面収差を補正するためには、回折面と反対側の屈折面2bを回転対称な非球面とすればよい。
図3(a),(b)は本実施形態に係る第2光学系に含まれるアナモフィック光学素子4に使用可能なシリンドリカルレンズの構成を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図であって、第1面が副走査方向にのみパワーを有するシリンドリカルレンズ面(屈折面)4bであり、第2面が主走査方向に長く伸びる階段状の回折面4aとなっており、このとき、副走査方向のパワーは前記条件(1)〜(4)を満たしており、これにより、温度変動に対し、副走査ビームスポット径の変動が小さく、かつ面間偏心に強い光学素子とすることができる。
また、第2光学系(アナモフィック光学素子4)に採用されているレンズの回折面は、副走査断面形状が主走査方向の位置によらず、同一としている。これにより、このレンズが主走査方向にずれても、光学特性は全く変化せず、組付誤差を緩和することが可能になる。また、マルチビーム時には複数のビームが主走査方向に離れて通過するが、主走査方向にビームが離れても、複数のビームの温度補正効果が全く同じで、かつ同じ光学特性を得ることができる。また、回折面の反対側の面は副走査方向に正のパワーを有することにより、線像形成の機能を果たし、主走査方向にノンパワーとすることにより、副走査断面形状を主走査方向の位置によらず、同一とすることができて、前述の効果を得ることができる。
また、回折面4aは階段状としており、これにより既述したと同様に、シェーパー加工のような加工痕を発生させないような形成方法を採用することができ、加工時間の短縮化も図ることができる。加工時間の短縮化は、加工時の熱の発生の低減など副次的なメリットも派生し、高精度のパワー回折面2aを得るために好ましい。
図4(a),(b),(c)は本実施形態に係る回折レンズの構成例を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は正面図であって、回折レンズ10は、図示したように回折面10aに形成した回折溝が楕円形状であり、かつ階段状となっている。10bが屈折面である。
回折面10aにおける回折溝を楕円状とすることによって、回折面10aの採用を1面のみとしても任意の温度補正効果を得ることができる。また、回折面10aの採用を1面のみとしたことにより、光量を確保することができ、高速化が容易になる。さらに回折溝を階段状としたことにより、前述と同様の効果を得ることができる。
本実施形態において、第1光学系(カップリングレンズ2)と第2光学系(アナモフィック光学素子4)により、半導体レーザ1から出射した発散光束は偏向面近傍で主走査方向に長い線像となるため、第1光学系と第2光学系との合成パワーとしては、副走査方向の方が主走査方向よりも大きくなる。回折面側のパワーはゼロに近くなるため、屈折面側は主走査方向のパワーよりも副走査方向のパワーを大きくすることにより、線像形成機能を回折レンズに持たせることができる。
また、本実施形態において第1光学系(カップリングレンズ2)と第2光学系(アナモフィック光学素子4)と第3光学系(走査レンズ6)の全てのレンズを樹脂製レンズとすることにより、低コスト化および軽量化を図ることができ、かつリサイクルが容易になる。
また、本実施形態において、光源を複数の光ビームを出射するマルチビーム化することにより、高速対応が可能になる。特に、レンズの回折面の面形状を、階段構造でほぼノンパワーとなる形状にすることによって、マルチビーム採用時に回折レンズを通過する位置が相対的に異なっていても、面間の偏心の影響を受けにくく良好な光学特性を有する光走査装置を提供できる。
さらに、第2光学系(アナモフィック光学素子4)の樹脂製レンズに採用されている回折面を、副走査断面形状が主走査方向の位置によらず同一にしたり、回折面と反対側の面を、主走査方向にノンパワーにし、かつ副走査方向に正のパワーを有する屈折面にすることにより、マルチビーム時には複数のビームが主走査方向に離れて通過するが、主走査方向にビームが離れても、複数のビームの温度補正効果が全く同じで、かつ同じ光学特性を得ることができる。
図5は本発明に係る図1に示すような光走査装置を搭載した画像形成装置の実施形態の概略構成図であって、タンデム型フルカラー光プリンタを例示している。
装置本体の下側部には、水平方向に配設され、給紙カセット11から給紙される転写紙(図示せず)を搬送する搬送ベルト12が設けられている。搬送ベルト12の上部には、イエローY用の感光体13Y、マゼンタM用の感光体13M、シアンC用の感光体13C、およびブラックK用の感光体13Kが上流側から順に等間隔で配設されている。なお、以下において、符号中のY,M,C,Kでイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックを区別する。
感光体13Y,13M,13C,13Kは全て同一径に形成され、その周囲に、電子写真プロセスに従いプロセス部材が順に配設されている。感光体13Yを例に採れば、帯電チャージャ14Y、光走査装置15Y、現像装置16Y、転写チャージャ17Y、クリーニング装置18Yなどが順に配設されている。他の感光体13M,13C,13Kについても同様の構成になっている。
本画像形成装置は、感光体13Y,13M,13C,13Kを各色ごとに設定された被走査面とするものであり、各々に対して光走査装置15Y,15M,15C,15Kが1対1の対応関係で設けられている。これら光走査装置は、それぞれが図1に示したような光学配置を有するものを独立に用いることもできるし、例えば、図1を参照すれば、光偏向器(回転多面鏡)であるポリゴンミラー5を共用し、各光走査装置における走査光学系の走査レンズ6を、感光体13Mと13Y、および感光体13Kと13Cの光走査に共有する構成のものを採用することもできる。
搬送ベルト12の周囲には、感光体13Yよりも上流側に位置させてレジストローラ20と、ベルト帯電チャージャ21が設けられ、感光体13Kよりも下流側にベルト分離チャージャ22、除電チャージャ23、クリーニング装置24などが設けられている。ベルト分離チャージャ22よりも転写紙搬送方向下流側には定着装置25が設けられ、さらに定着装置25から搬送される転写紙を排紙トレイ26に排出する排紙ローラ27が設けられている。
このような構成において、例えば、フルカラーモード時であれば、各感光体13Y,13M,13C,13Kに対し、Y,M,C,Kの各色の画像信号に基づき各光走査装置15Y,15M,15C,15Kから出射する光ビームによる光走査により静電潜像が形成される。これら静電潜像は対応する色トナーで現像されてトナー顕像となり、搬送ベルト12上に静電的に吸着されて搬送される転写紙上に、順次転写されることにより重ね合わせられてフルカラー画像が形成され、転写後の転写紙は定着装置25を通って定着された後、排紙ローラ27により排紙トレイ26上に排紙される。
本画像形成装置に、本発明に係る光走査装置を用いることにより、各感光体13Y,13M,13C,13Kの表面に、常に安定したビームスポット径を得ることができ、高精細な印字に適した画像形成装置がコンパクトでかつ安価に実現することになる。
本発明に係る光走査装置は、走査光学系が複数あり、かつ像担持体(感光体)が複数設置されているような多色対応の画像形成装置に好適である。なお、このとき、偏向手段(ポリゴンミラー)の設置数は1つであっても、複数個あってもよい。
以下、具体的な実施例にて、より詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1において用いるガラス材料(ガラス(1)と称する)、および樹脂材料(樹脂(1)と称する)のデータを(表1)に示す。
Figure 0004713377
(表1)において「中央値」は基準温度:25℃における使用波長に対する屈折率、「波長飛び」はモードホップにより波長飛びを生じたときの屈折率、「温度変動」は温度が基準温度から20度上昇したときの屈折率である。モードホップによる「波長飛び」は、余裕を見て0.8nmの波長変化を想定している。
また、(表2)に、図1に示す光学系の構成におけるポリゴンミラー(光偏向器)5以降の光学系のデータを示す。
Figure 0004713377
(表2)において、Rmは「主走査方向の近軸曲率」、Rsは「副走査方向の近軸曲率」であり、Dx,Dyは「各光学素子の原点から次の光学素子の原点までの相対距離」を表している。単位はmmである。
例えば、ポリゴンミラー5に対するDx、Dyについてみると、ポリゴンミラー5の回転軸から見て、走査レンズ6の入射面の原点(入射側面の光軸位置)は、光軸方向(x方向、図1の左右方向)に42.99mm離れ、主走査方向(y方向、図1の上下方向)に6.91mm離れている。
また、走査レンズ6の光軸上の肉厚は13.5mm、走査レンズ6から被走査面8までの距離は176mmである。なお、走査レンズ6と被走査面8の間には、図1に示すように前記ガラス(1)を材質とする厚さ:1.9mmの防塵ガラスG2が配置される。
走査レンズ6は、各面が非球面であり、各面ともに主走査方向には、前記条件(1)の非円弧形状であり、副走査断面(光軸と副走査方向とに平行な仮想的断面)内の曲率が主走査方向に条件(2)の式に従って変化する特殊面である。
・非円弧形状について、
主走査断面内の近軸曲率半径:Rm、光軸からの主走査方向の距離:Y、円錐定数:K、高次の係数:A1、A2、A3、A4、A5、…、光軸方向のデプス:Xとして下記(数1)式で表現される。
Figure 0004713377
・副走査断面における曲率の変化について、
副走査断面内の曲率:Cs(Y)(Y:光軸位置を原点とする主走査方向の座標)が主走査方向に変化する状態を表現する式は、光軸を含む副走査断面内の曲率半径:Rs(0)、B1、B2、B3、…を係数として下記(数2)式の通りである。
Figure 0004713377
走査レンズ6の入射側面(特殊面)の係数を(表3)に示す。
Figure 0004713377
走査レンズ6の射出側面(共軸非球面)の係数を(表4)に示す。
Figure 0004713377
光学素子として図2にて説明した構成のものが形成される。回折面2aのパワーは、半導体レーザ1におけるモードホップや温度変化に起因する、主走査方向および/または副走査方向のビームウエスト位置の変動を低減するように設定される。
実施例1における光学系の各要素は以下のような構成のものである。なお、ポリゴンミラー5前の光学系の光学素子の配置は、全光学系の主走査/副走査の結像位置が被走査面8近傍になるように適切に配置している。
・光源について、
光源である半導体レーザ1は、設計上の発光波長:785nmであり、標準温度:25℃に対して温度が1℃上昇すると、発光波長が0.25nm、長波長側へずれる。モードホップは前記のように0.8nmの波長変化を想定している。
・カップリングレンズについて、
カップリングレンズ2は、前記のようなパワー回折面を有する樹脂製レンズであり、焦点距離:12.5mmで弱い発散性の光ビームに変換する機能を有するように配置される。カップリングレンズ2の片側の面には非球面が用いられ、カップリングされた光ビームの波面収差を非球面により十分に補正している。
半導体レーザ1とカップリングレンズ2とは、線膨張係数:2.3×10−5の例えばアルミなどの材質による保持部材に固定的に保持されている。
入射面のパワー回折面は、位相関数:win
in=C・r
で表されるものであり、rは、
=Y+Z
であり、Yは光軸を原点とする主走査方向の座標、Zは光軸を原点とする副走査方向の座標で、係数:Cは、C=5.415×10−2である。この回折部2aは、曲率半径−9.234mmの球面を構成している屈折部に形成される。このとき、P1=−P2となり、形成された回折面は階段形状になる。つまり、第1面のパワーはノンパワーとなる。
出射面の屈折面2bは、回転対称非球面であり、前記条件(式3)の式で与えられる非円弧形状である。
・回転対称非球面について、
近軸曲率半径:R、光軸からの距離:H、円錐定数:K、高次の係数をA1、A2、A3、A4、A5、…、光軸方向のデプス:Xとして下記(数3)式で表される。
Figure 0004713377
カップリングレンズ2の射出側面の係数を以下に挙げる。
Km=−4.293×10−1,Rm=−9.232,A=A=A=0,A=−1.896×10−4,A=4.258×10−6,A=−2.347×10−6,A10=2.269×10−7
・アパーチュアについて、
アパーチュア3は、主走査方向の開口径:2.76mm、副走査方向の開口径:2.36mmの長方形形状の開口を有し、カップリングレンズ2によりカップリングされた光ビームをビーム整形する。
・アナモフィック光学素子について、
アナモフィック光学素子4は、入射側面が副走査方向にのみパワーを有するシリンドリカル面であり、出射側面が副走査断面を主走査方向の位置によらず同一な階段状回折面としたものである。
入射面の副走査方向の曲率半径は19.723mmである。入射面の回折面は、位相関数:wが下式(4)で表されるものである。
w=Cz・Z‥‥(4)
係数:CzはCz=−2.82×10−2である。
この回折部は、曲率半径17.675mmのシリンドリカル面を構成している屈折部に形成される。このとき、P1=−P2となり、形成された回折面は階段形状になる。つまり、第2面の副走査方向のパワーはノンパワーとなる。
・光偏向器について、
光偏向器のポリゴンミラー5は、反射面数:6面で内接円半径:13mmのものである。
また、光偏向器の防音ガラスG1はガラス1を材質とし、厚さ:1.9mmで、図1におけるy方向(図の上下方向)からの傾き角:αは12度である。
また、光源の半導体レーザ1側から入射する光ビームの進行方向と、偏向反射面により被走査面8における像高:ゼロの位置へ向けて反射される光ビームの進行方向のなす角:θは68度である。
実施例1における、主走査方向および副走査方向のビームウェスト位置変動は(表5)に示すようになっている。
Figure 0004713377
回折面の効果で、それぞれのビームウェスト位置変動が低減されていることが分る。
実施例1のデフォーカスに対する主走査ビームスポット径について図6(a)に示し、実施例1のデフォーカスに対する副走査ビームスポット径について図6(b)に示した。
次に、実施例1の回折面が加工誤差を有している場合について考察する。
例えば、実施例1のアナモフィック光学素子4の入射面側に採用されている球面に形成された同心円状のパワー回折面の溝間隔は、光軸から離れるに従い徐々に短くなるが、この溝間隔は、本実施例においては最小値としても100m程度である。これに対して2μm、4μm、6μmの加工誤差を有したとする。この加工誤差はアナモフィック光学素子のパワーを大きく変動させ、そのまま光走査装置に搭載させると光ビームの集光点は被走査面から大きくずれてしまい、ビームスポットが大きくなってしまう。
このような光走査装置を、特にカラー光プリンタなどに展開すると、色再現性が劣化し階調性が失われてしまう。しかし、この光ビームの集光点のずれは、全像高に亘ってほぼ同量であるから、このアナモフィック光学素子を光軸方向に変位させれば、誤差を吸収することができる。
図7はアナモフィック光学素子を変位させるための変位構造を示す斜視図である。
図7において、30はアナモフィック光学素子、31はアナモフィック光学素子を固定するホルダであり、ホルダ31は、ハウジングに設けられた突き当て基準ピン32とギア33によって、図示しないバネにより反対側から付勢力を受けて位置決めされている。また、ホルダ31の側面には、ギア33と噛合する部分にギア部31aが刻設されており、ギア33と噛み合う構成をしている。
したがって、ギア33を回転させると、それに伴ってホルダ31が光軸方向に沿って移動するため、アナモフィック光学素子30を光軸方向に変位させることができ、アナモフィック光学素子30に採用されているパワー回折面が加工誤差を有している場合でも、所望のビームスポットを被走査面上に得ることができる。
もちろん、このようなメカニカルな機構でなく、アナモフィック光学素子を光走査装置に固定する際に調整を実施し、接着剤で固定するという方法もある。このようにすると調整機構がなくなり、不要な部品を光走査装置内に残さない点で有利である。
なお、この方式の前提として、アナモフィック光学素子に加工誤差があっても、所望の回折効果が得られなければならない。しかし、溝間隔に2μm,4μm,6μmの加工誤差があったとしても、設計中央値と全く変わらない回折効果が期待できる。
(実施例2)
図8は実施例2の光学系の全体を示す構成図である。図8の説明において図1にて説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。実施例2が実施例1と異なる構成は、走査レンズ6として第1走査レンズ6−1と第2走査レンズ6−2との2枚を設けた点である。
実施例2において用いるガラス材料(ガラス(2)と称する)、および樹脂材料(樹脂(2)と称する)のデータを表6に示す。
Figure 0004713377
(表6)において、「中央値」は基準温度:25℃における使用波長に対する屈折率、「波長飛び」はモードホップにより波長飛びを生じたときの屈折率、「温度変動」は、温度が基準温度から20度上昇したときの屈折率である。モードホップによる「波長飛び」は、余裕を見て0.8nmの波長変化を想定している。
また、(表7)に光偏向器以降の光学系データを示す。
Figure 0004713377
(表7)において、Rmは主走査方向の近軸曲率、Rsは副走査方向の近軸曲率であり、Dx,Dyは各光学素子の原点から次の光学素子の原点までの相対距離を表している。単位はmmである。
例えば、ポリゴンミラー5に対するDx,Dyについてみると、光偏向器(ポリゴンミラー5)の回転軸から見て、走査レンズ6−1の入射面の原点(入射側面の光軸位置)は、光軸方向(x方向、図8の左右方向)に43.3mm離れ、主走査方向(y方向、図8の上下方向)に2.9mm離れている。
なお、図8に示すように、走査レンズ6−1と被走査面8の間には、前記ガラス(2)を材質とする厚さ:1.9mmの防塵ガラスG2が配置される。
走査レンズ6−1,走査レンズ6−2は、各面が非球面であり、全面ともに主走査方向には前記条件(1)で与えられる非円弧形状であり、副走査断面(光軸と副走査方向とに平行な仮想的断面)内の曲率が、主走査方向に前記条件(2)の式に従って変化する特殊面である。
走査レンズ6−1の入射側面(特殊面)の係数を(表8)に示す。
Figure 0004713377
走査レンズ6−1の射出側面(特殊面)の係数を(表9)に示す。
Figure 0004713377
走査レンズ6−2の入射側面(特殊面)の係数を(表10)に示す。
Figure 0004713377
走査レンズ6−2の射出側面(特殊面)の係数を(表11)に示す。
Figure 0004713377
実施例2における光学系の各要素は以下のような構成のものである。
なお、ポリゴンミラー5前の光学系の光学素子の配置は、全光学系の主走査/副走査の結像位置が被走査面8近傍になるように適切に配置している。
・光源について、
光源である半導体レーザ1は、設計上の発光波長:655nmであり、標準温度:25℃に対して温度が1℃上昇すると、発光波長が0.20nm、長波長側へずれる。モードホップは前記のように0.8nmの波長変化を想定している。
・カップリングレンズについて、
カップリングレンズ2はガラス製であり、(表6)記載の屈折率となり、焦点距離:15mmで略平行の光ビームに変換する機能を有するように配置される。カップリングレンズ2は両面とも非球面が用いられ、非球面係数は開示しないが、カップリングされた光ビームの波面収差を非球面により十分に補正している。
半導体レーザ1とカップリングレンズ2とは、線膨張係数:2.3×10−5の例えばアルミなどの材質による保持部材に固定的に保持されている。
・アパーチュアについて、
アパーチュア3は、主走査方向の開口径:5.4mm、副走査方向の開口径:2.28mmの長方形形状の開口を有し、カップリングレンズ2によりカップリングされた光ビームをビーム整形する。
・アナモフィック光学素子について、
アナモフィック光学素子4は、入射側面が副走査方向にのみパワーを有するシリンドリカル面であり、出射側面において回折溝が楕円状となる階段状回折面となっている。
入射面の副走査方向の曲率半径は63.4mmである。出射面は回折面であり、回折面の位相関数φ(y,z)は、下式で表される。
φ(y,z)=C1・Y2+C2・Z2
C1=−0.0006199,C2=−0.007537
この回折面は、主走査曲率半径が425.4,副走査曲率半径が35のトロイダル面上に形成され、回折溝が楕円状となる階段状回折面となる面が形成される。
このとき、主走査、副走査方向ともP1=−P2となり、形成された回折面は階段形状になる。つまり、第2面の副走査方向のパワーはノンパワーとなる。
・光偏向器について、
光偏向器は反射面数:4面で内接円半径:7mmのものである。
ポリゴンミラー5の防音ガラスG1は前記ガラス(1)を材質とし、厚さ:1.9mmで、y方向(図の上下方向)からの傾き角:αは16度である。
また、半導体レーザ1側から入射する光ビームの進行方向と、偏向反射面により被走査面8における像高:ゼロの位置へ向けて反射される光ビームの進行方向とのなす角:θは60.55度である。
実施例2における、主走査方向及び副走査方向のビームウェスト位置変動は(表12)に示すようになっている。
Figure 0004713377
回折面の効果により、それぞれのビームウェスト位置変動が低減されていることが分る。
実施例2のデフォーカスに対する主走査ビームスポット径について図9(a)に示し、実施例2のデフォーカスに対する副走査ビームスポット径について図9(b)に示した。
本発明は、樹脂製レンズを使用する光走査装置に適用され、例えばデジタル複写機,レーザプリンタ,レーザファクシミリ装置などの光書込系に用いられる光走査装置に用いることができ、またカラー画像を形成する多色画像形成装置にも実施可能である。
本発明に係る光走査装置の実施形態の光学系の概略構成図 (a),(b)は本実施形態におけるカップリングレンズの説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図 (a),(b)は本実施形態に係る第2光学系に含まれるアナモフィック光学素子に使用可能なシリンドリカルレンズの構成を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図 (a),(b),(c)は本実施形態に係る回折レンズの構成例を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は正面図 本発明に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の実施形態の概略構成図 (a)は本発明に係る走査装置の実施例1のデフォーカスに対する主走査ビームスポット径を示す図、(b)は実施例1のデフォーカスに対する副走査ビームスポット径を示す図 本実施例におけるアナモフィック光学素子の変位構造を示す斜視図 本発明に係る光走査装置の実施例2における光学系の概略構成を示す構成図 (a)は実施例2のデフォーカスに対する主走査ビームスポット径を示す図、(b)は実施例2のデフォーカスに対する副走査ビームスポット径を示す図 (a),(b)は球面レンズと等価なパワーを有するパワー回折面との説明図
符号の説明
1 半導体レーザ(光源)
2 カップリングレンズ(第1光学系)
2a,4b,10a 回折面
2b,4a,10b 屈折面
3 アパーチュア
4 アナモフィック光学素子(第2光学系)
5 ポリゴンミラー(光偏向器)
6,6−1,6−2 走査レンズ(第3光学系)
8 被走査面
13Y,13M,13C,13K 感光体
15Y,15M,15C,15K 光走査装置
30 アナモフィック光学素子

Claims (13)

  1. 光源からの光ビームをカップリングする第1光学系と、該第1光学系からの光ビームを偏向手段に導く第2光学系と、前記偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に集光させて光スポットを形成する第3光学系とを備えた光走査装置において、
    前記第1光学系と前記第2光学系を構成するレンズの少なくとも1つを樹脂製レンズとし、該樹脂製レンズの少なくとも1つは以下の条件(1)〜(4)を満足することを特徴とする光走査装置。
    (1)該樹脂製レンズの一面は回折面を有し、他面は回折面を有さない、
    (2)|P3|≧|P1+P2|、
    (3)|P1|>|P1+P2|かつ|P2|>|P1+P2|、
    (4)P1×P3>0。
    ただし、P1は該樹脂製レンズの回折面における回折部の主走査方向または副走査方向のパワー、P2は前記P1で定義した方向の回折面における屈折部のパワー、P3は該樹脂製レンズの回折面でない面における前記P1で定義した方向のパワー。
  2. 前記樹脂製レンズがP3>0を満足することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
  3. 前記第3光学系を構成するレンズの少なくとも1つを、主走査方向または副走査方向に正のパワーを持つ樹脂製レンズとしたことを特徴とする請求項1または2記載の光走査装置。
  4. 前記回折面の面形状は、階段構造でほぼノンパワーとなる形状であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の光走査装置。
  5. 前記回折面の少なくとも1つは前記第1光学系の樹脂製レンズに採用され、該第1光学系の樹脂製レンズに採用されている前記回折面は回転対称面となっていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の光走査装置。
  6. 前記第1光学系の樹脂製レンズの回折面と反対側の面は、回転対称な非球面であることを特徴とする請求項5記載の光走査装置。
  7. 前記回折面の少なくとも1つは前記第2光学系の樹脂製レンズに採用され、該第2光学系の樹脂製レンズに採用されている前記回折面は副走査断面形状が主走査方向の位置によらず同一であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の光走査装置。
  8. 前記回折面と反対側の面は主走査方向にノンパワーであり、副走査方向に正のパワーを有する屈折面であることを特徴とする請求項7記載の光走査装置。
  9. 前記回折面の少なくとも1つは回折溝が楕円形状をしていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の光走査装置。
  10. 前記回折面の反対側の面は主走査方向よりも副走査方向の方がパワーが強い屈折面であることを特徴とする請求項9記載の光走査装置。
  11. 前記第1光学系と前記第2光学系と前記第3光学系を構成する全てのレンズが樹脂製レンズであることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の光走査装置。
  12. 前記回折面を有する樹脂製レンズの少なくとも1つは複数のビームが通過するものであることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の光走査装置。
  13. 少なくとも1つの画像担持体と、該画像担持体に対応させて走査結像光学系が設けられる光走査装置とを備え、前記画像担持体に対して光走査を行うことにより画像形成を行う画像形成装置において、
    少なくとも1つの前記光走査装置に請求項1〜12いずれか1項記載の光走査装置を採用したことを特徴とする画像形成装置。
JP2006074457A 2006-03-13 2006-03-17 光走査装置および画像形成装置 Active JP4713377B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006074457A JP4713377B2 (ja) 2006-03-17 2006-03-17 光走査装置および画像形成装置
US11/714,162 US7443558B2 (en) 2006-03-13 2007-03-06 Optical scanning device and image forming apparatus
US12/230,077 US7554708B2 (en) 2006-03-13 2008-08-22 Optical scanning device and image forming apparatus

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006074457A JP4713377B2 (ja) 2006-03-17 2006-03-17 光走査装置および画像形成装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007248977A JP2007248977A (ja) 2007-09-27
JP4713377B2 true JP4713377B2 (ja) 2011-06-29

Family

ID=38593320

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006074457A Active JP4713377B2 (ja) 2006-03-13 2006-03-17 光走査装置および画像形成装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4713377B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5037851B2 (ja) * 2006-04-28 2012-10-03 株式会社リコー 光走査装置および画像形成装置
JPWO2009101928A1 (ja) * 2008-02-12 2011-06-09 コニカミノルタオプト株式会社 レンズユニット、撮像レンズ、撮像装置および携帯端末
JP5343370B2 (ja) * 2008-03-04 2013-11-13 株式会社リコー 光走査装置及び画像形成装置
JP6007536B2 (ja) * 2012-03-23 2016-10-12 ブラザー工業株式会社 光走査装置および画像形成装置

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3224339B2 (ja) * 1995-10-11 2001-10-29 キヤノン株式会社 マルチビーム走査光学装置
JP4425363B2 (ja) * 1998-12-08 2010-03-03 フジノン株式会社 光走査装置
JP4827279B2 (ja) * 2000-05-16 2011-11-30 キヤノン株式会社 光走査装置及びそれを用いた画像形成装置
JP2002333585A (ja) * 2001-05-08 2002-11-22 Canon Inc 走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置
JP2003337295A (ja) * 2003-03-27 2003-11-28 Canon Inc 走査光学装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007248977A (ja) 2007-09-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4015065B2 (ja) 光走査装置及び画像形成装置
US7443558B2 (en) Optical scanning device and image forming apparatus
JP4340515B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
US6791729B2 (en) Adjusting imaging position of optical beam spot in main and sub-scanning directions by individually and/or collectively adjusting position(s) of temperature-compensating lens(es)
JP2009058677A (ja) 光走査装置・画像形成装置
JP4913347B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP4684470B2 (ja) 光走査装置及びそれを用いた画像形成装置
US7522324B2 (en) Optical scanning device and image forming apparatus using the same
JP2009069507A (ja) 光走査装置、および画像形成装置
US6683707B2 (en) Scanning optical apparatus and image forming apparatus using the same
JP2008070797A (ja) 回折光学素子および走査光学系および光走査装置および画像形成装置
JP2007011113A (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP2007233002A (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP4713377B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP4460865B2 (ja) 光走査装置及びカラー画像形成装置
JP4568618B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP2009003393A (ja) 光走査装置及びこれを備えた画像形成装置
JP4863736B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP4841268B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP5413244B2 (ja) 光走査装置及び該光走査装置を用いた画像形成装置
JP5765926B2 (ja) 光走査装置及びそれを用いた画像形成装置
JP5332087B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP3686643B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP3686644B2 (ja) 光走査装置および画像形成装置
JP5751528B2 (ja) 画像形成装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081120

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20100614

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20100625

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110112

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110308

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110324

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4713377

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150