WO2006011652A1

WO2006011652A1 - ポリエステル混繊糸及びそれを含む織編物

Info

Publication number: WO2006011652A1
Application number: PCT/JP2005/014236
Authority: WO
Inventors: Ryuji Uemura
Original assignee: Teijin Fibers Limited
Priority date: 2004-07-30
Filing date: 2005-07-27
Publication date: 2006-02-02
Also published as: CN1993508B; ATE507334T1; EP1772543A4; US20090013662A1; JP4339760B2; KR101172338B1; CN1993508A; US7645508B2; DE602005027705D1; EP1772543B1; JP2006037315A; EP1772543A1; TW200612004A; KR20070039536A; TWI339225B

Abstract

伸縮性及び深色効果にすぐれ、外観上の染色色濃度の均一なポリエステル混繊糸は、２種のマルチフィラメント成分（Ａ），（Ｂ）を含みマルチフィラメント成分（Ａ）は、ポリエチレンテレフタレート（PET）ポリマー、含金属リン化合物（ａ）及びアルカリ土類金属化合物（ｂ）を含むポリエステルフィラメントを含み、複合マルチフィラメント成分（Ｂ）は互に異る２種のポリエステル樹脂（但し、その１種以上はポリトリメチレンテレフタレート樹脂）からなるサイド−バイ−サイド型又は偏心芯鞘型複合ポリエステルフィラメントを含み、成分（Ａ），（Ｂ）の質量比（Ａ）／（Ｂ）は、80／20～50／50の範囲内にあるものであって、この混繊糸を含む織編物は、婦人、及び紳士用ファッション及びブラックフォーマル織編物として有用である。

Description

ポリエステル混繊糸及びそれを含む織編物

技術分野

本発明はポリエステル混繊糸及びそれを含む織編物に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明はストレッチ性及び深色効果に優れ、かつ染着差のな明い織編物を形成することができるポリエステル混繊糸及びこのポリエステル混繊糸を含む織編物に関する田

ものである。

書背景技術

ストレツチ性織編物については、例えば特開 2002— 275736号公報 (特許文献 1 ) 及び特開 2003— 286621号公報（特許文献 2 ) は、 2 種のポリエステル樹脂から潜在捲縮性を有する複合フィラメントを製造し、この潜在捲縮性複合フィラメントを含む混繊糸を製造し、この混繊維を用いて織編物を製造し、この織編物に、加熱処理を含む染色加工を施して、前記複合フィラメン卜の潜在捲縮を発現させて、ストレッチ性に優れたポリエステル織編物を得ることを開示している。

また、特開 2003— 293234号公報（特許文献 3 ) には、弾性フイラメントと、加熱下において、自己伸長性を示すポリエステルフイラメントを混繊し、得られた混繊糸を用いて、ストレッチ性に優れた織編物を製造することが開示されている。

また、深色効果を有する織編物については、例えば特公昭 62— 44 064号公報（特開昭 58— 104215号、特許文献 4 ) には、ポリエステル樹脂と、含金属リン化合物及びアル力リ土類金属化合物とを含むポリエステル繊維を製造し、このポリエステル繊維を用いて織編物を製造し、このポリエステル織編物にアルカリ減量処理を施し、それによって、前記ボリエステル繊維の表面に微細孔を形成して、深色効果に優れた織編物を得ることが開示されている。

しかしながらストレツチ性及び深色効果の両方において優れたポリエステル織編物、及びそれを構成するポリエステル糸条については未だ知られていなかった。このようなス卜レツチ性及び深色効果に優れたポリエステル織編物には、染着差がないことが望まれている。

特許文献

1 . 特開 2002— 275736号公報

2 . 特開 2003— 28662 1号公報

3 . 特開 2003— 293234号公報

4 . 特公昭 62— 44064号公報（特開昭 58 _ 1042 15号公報）発明の開示

本発明の目的は、ストレッチ性及び深色効果に優れかつ染色差のない織編物を構成する糸条として有用なポリエステル混繊糸及びこの混繊糸を用いて得られ、かつストレツチ性及び深色効果に優れ、染着差のないポリエステル織編物を提供することにある。

上記目的は本発明のポリエステル混繊糸により達成される。

本発明のポリエステル混繊糸は、互に混繊されたマルチフィラメン卜成分（A ) 及び複合マルチフィラメント成分（B ) を含む混織糸であって

前記マルチフィラメント成分 ( A ) が、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなる複数のフィラメントを含み、前記ポリェチレンテレフ夕レート樹脂組成物が、ポリエチレンテレフタレ一トポリマー、並びに下記一般式 ( I ) により表される含金属リン化合物

( a )

〇

R ¹ 〇一 P—〇 Mm ( I )

O R²

〔但し、上記式（ I ) において、 R¹及び R²はそれぞれ、互に独立に 1価の有機基を表し、 Mはアル力リ金属原子又はアル力リ土類金属原子を表し、 mは、 Mが金属アルカリ金属原子を表す場合には、数字 1 を表し、それがアルカリ土類金属原子を表す場合は、数字 1 / 2 を表す〕

及びアルカリ土類金属化合物 ( b ) を含み、前記含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（ b) は、前記ポリエチレンテレフ夕レートポリマーの製造工程中において、その反応混合物中に混合されたものであり、

前記複合マルチフィラメント成分（B) が、互に異なる 2種のポリエステル樹脂から形成されたサイドーバイ一サイド型、又は偏心芯鞘型複合繊維構造を有する複数のポリエステル複合フィラメントを含み、かつ前記 2種のポリエステル樹脂の少なくとも 1方が、ポリトリメチレンテレフ夕レート樹脂であり、

前記マルチフィラメント成分（A) の、前記複合マルチフィラメント成分（B) に対する質量比（（A) / (B) ) が、 80： 20〜50： 50の範囲内にあることを特徴とするものである。

本発明の混繊糸において、前記マルチフィラメント成分（A) 中に含まれる前記ポリエチレンテレフ夕レートフィラメント中に、前記含金属リン化合物（ a ) が、前記ポリエチレンテレフ夕レート樹脂を構成するテレフタル酸成分のモル量の 0.5〜 3.0モル％の含有量で含まれ、かつ前記アルカリ土類金属化合物（ b ) 力前記金属リン化合物（ a ) のモル量の 50〜120モル％の含有量で含まれることが好ましい。

本発明の混繊糸において、前記マルチフィラメン卜成分 ( A ) 中ヽ

の前記ポリェチレンテレフタレ —トフィラメノ卜が、温度 180°Cにおける乾熱下において、自己伸長性を示す未延伸マルチフイラメントから選ばれるとが好ましい

本発明の混繊糸におレて、刖記マルチフィラメン卜成分 ( B ) に含まれる、サイ ―バイ一サイド型又は偏心心サ鞘型ポリェステル複合フィラメン卜が、ボリエチレンテレフタレ一卜樹脂及びボリトリメチレンテレフタレ一卜樹脂から構成されていることが好ましい。本発明の混繊糸において、前記マルチフィラメン卜成分 ( A ) 及び複合マルチフィラメン卜成分 ( B ) が、空交絡ノズルを通ることにより互に混繊され、それによつて前記成分（A ) 及び（B ) 中の単フィラメン卜が互に混繊され、かつ互に交絡されているごとが好ましい。

本発明の混繊糸は、 150〜 3000 T Z mの撚り数を有することが好ましい。

本発明の織編物は、上記本発明のポリエステル混繊糸を含むものである。

本発明の織編物において、前記混繊維中に含まれるポリエチレンテレフ夕レートフィラメントの繊維表面に、アルカリ減量処理により形成された、複数の微細孔が形成されていることが好ましい。本発明の織編物において、前記マルチフィラメント成分（A ) 及び（B ) に含まれる少なくとも 1種のフィラメントが染色加工により着色されていることが好ましい。

本発明によってストレッチ性及び深色効果に優れたポリエステル混繊糸が提供され、それを用いることによりストレッチ性及び深色効果に優れ、染着差のない織編物の提供が可能になる。

図面の簡単な説明

図 1 は、本発明のポリエステル混繊糸の製造に用いられる混繊糸製造装置の一例の工程説明図である。発明を実施するための最良の形態

本発明の混繊糸は互に混繊されたマルチフィラメント成分（A ) 及び複合マルチフィラメント成分 ( B ) とにより構成されるものである。本発明の混繊糸用マルチフィラメント成分（A ) は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなる複数のフィラメントからなり、このフィラメント用ポリエチレンテレフ夕レート樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレートポリマーと、その製造工程中に添加され、かつ一般式（ I ) により表される含金属リン化合物（ a ) と、アルカリ土類金属化合物（ b ) とを含むものである。

前記マルチフィラメント成分 ( A ) 用ボリエチレンテレフ夕レー卜ポリマーは、テレフタル酸を主成分として含むジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分として含むダリコール成分との重縮合により製造されるものであって、エチレンテレフタレ一トグル —プからなる主繰り返えし単位を含むものである。

前記マルチフィラメント成分（A ) 用ポリエチレンテレフタレ一トポリマーはホモポリマーであってもよく、また、必要により、少量（好ましくは 30モル％以下）の共重合成分を含む共重合体であつてもよい。この共重合成分において、テレフタル酸以外の共重合用ジカルボン酸化合物は、例えばイソフ夕ル酸、ナフタリンジカルポン酸、ジフエニルジカルボン酸、ジフエノキシエタンジカルボン酸、 —ヒドロキシエトキシ安息香酸、 P —ォキシ安息香酸、 5 —ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、及び 1 , 4ーシクロへキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸から選ぶことができる。また、エチレンダリコール以外の共重合用ジオール化合物は、例えばシクロへキサン— 1 , 4ージメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフエノール A、及びビスフエノール Sのような脂肪族、脂環族、及び芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等から選ぶことができる。

マルチフィラメント成分 ( A ) 用ポリエチレンテレフ夕レー卜樹脂組成物の製造方法には格別の制限はなく、例えば、第 1段階工程において、テレフタル酸と、エチレングリコールとを、直接エステル化反応に供するか、或は、テレフタル酸の低級アルキルエステル、例えばテレフ夕ル酸ジメチル、とエチレングリコールとをエステル交換反応に供するか、或はテレフタル酸とエチレンォキサイドとを反応させて、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/ 又は、そのオリゴマーを製造し、第 2段階工程において、前記テレフタル酸のエチレングリコールエステル又はそのオリゴマーを、減圧下において加熱して重縮合反応させ、生成重合体の重合度が所望値に達したときに反応を終了する方法により製造することができるマルチフィラメント成分 ( A ) 用ポリエチレンテレフタレ一卜樹脂組成物は、ポリエチレンテレフ夕レートポリマ一、並びに、その製造工程中に添加され、かつ一般式（ I ) の含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（b ) を含み、さらに、これらに加えて必要により、安定剤、紫外線吸収剤、増粘分枝剤、艷消し剤、着色剤、その他の改良剤を含んでいてもよい。

前記含金属リン化合物（ a ) は、下記一般式（ I ) ： O

II

R ¹〇一 P—〇 Mm ( I )

OR²

により表される。

式（ I ) 中、 R¹および R²は一価の有機基を表す。この一価の有機基は具体的にはアルキル基、ァリール基、ァラルキル基、または [ (CH₂) ,0_k] R³ (ただし、 R³は水素原子、アルキル基、ァリール基またはァラルキル基を表し、 1 は 2以上の整数を表し、 kは 1以上の整数を表す）等であることが好ましく、 R¹と R²とは互に同一でも、或は異なっていてもよい。 Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、 Li， Na, K, Mg, Ca, Sr、又は Baを表すことが好ましく、特に Ca， Sr又は Baを表すことが好ましい。 mは Mがアル力リ金属のときは、 1であり、 Mがアルカリ土類金属のときは 1 Z 2 である。

一般式（ I ) の含金属リン化合物（ a) は、本発明に用いられるマルチフィラメント成分 ( A) 用ボリエチレンテレフ夕レー卜フィラメントの表面に適当な大きさの微細孔を形成して、得られる混繊維又はその製品の深色効果を高めることができる。

一般式（ I ) のリン化合物の代りに、一般式（ I ) において、 R ¹及び/又は R²が、金属原子（特にアルカリ金属原子、又はアル力リ土類金属原子）を表すリン化合物を用いると、得られるマルチフイラメント成分（A) 用ポリエステル繊維の表面に生成する微細孔の大きさが過大になり、目的とする深色効果が不十分になり、かつ耐フイブリル性も不十分になる。

上記含金属リン化合物（a) は、通常対応する正リン酸エステル (モノ、ジまたはトリ）と所定量の対応する金属の化合物とを溶媒の存在下加熱反応させることによって容易に製造することができる。なお、この際、溶媒として、ポリエチレンテレフ夕レートの原料として使用するグリコールを使用することが好ましい。

上記含金属リン化合物（ a ) と併用するアルカリ土類金属化合物 ( b ) としては、上記含金属リン化合物（ a ) と反応して、ポリエチレンテレフ夕レートに不溶性の塩を形成するものを用いることが好ましく、例えばアルカリ土類金属の酢酸塩、しゅう酸塩、安息香酸塩、フ夕ル酸塩、ステアリン酸塩のような有機カルボン酸塩、ホゥ酸塩、硫酸塩、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩のごとき無機酸塩、塩化物のようなハロゲン化物、エチレンジァミン 4酢酸錯塩のようなキレート化合物、水酸化物、酸化物、メチラ一ト、ェチラート、グリコラート等のアルコラ一ト類、フエノラ一ト等をあげることができ、エチレングリコールに可溶な、アルカリ土類金属の有機力ルポン酸塩、ハロゲン化物、キレート化合物、及びアルコラートから選ばれることが好ましい。

これらのなかでも、アルカリ土類金属の有機カルボン酸塩を用いることがより好ましい。アルカリ土類金属化合物（ b ) は単一種で用いられてもよく、或は 2種以上の混合物として用いられてもよいマルチフィラメント成分 ( A ) 用ポリエチレンテレフ夕レート樹脂組成物を調製するに際し、得られるポリエチレンテレフ夕レート繊維に、高い深色効果及び摩擦耐久性を付与するために、含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（b ) の含有量を、適宜に調整することが好ましい。すなわち、ポリエチレンテレフタレ一卜樹脂中の含金属リン化合物（ a ) の含有量は、ポリエチレンテレフ夕レートポリマー中に含まれる酸成分のモル量に対して、 0. 5 〜 3モル％の範囲内にあることが好ましく、 0. 6〜 2モル％の範囲内にあることがより好ましい。また、アルカリ土類金属化合物（ b ) の含有量は、前記含金属リン化合物のモル含有量の 0. 5〜1. 2倍であることが好ましく、 0. 5〜 1. 0倍であることがより好ましい。

マルチフィラメント成分 ( A ) 用ポリエステル樹脂中の含金属リン化合物（ a ) の含有量が、酸成分のモル量の 0. 5モル％未満であると、得られるマルチフィラメント成分（A ) の染色物の視感色濃度が不十分になることがあり、前記含有量が、 3モル％をこえると、得られるマルチフィラメント成分（A ) の深色効果の向上効果が飽和し、耐摩擦耐久性が不十分になり、得られるボリエステルポリマーの重合度及び軟化点が、不十分なものになることがあり、さらに、得られるポリエステル樹脂の紡糸性が低下し、紡糸工程における糸切れが増大する。

アルカリ土類金属化合物（ b ) の含有量が、含金属リン化合物（ a ) のモル量の 0. 5倍未満であると、得られるポリエステル繊維の深色効果が不十分になることがあり、また、ボリエチレンテレフ夕レートポリマー製造の際の重縮合速度が低下し、高重合度のポリェチレンテレフ夕レートポリマーを得ることが困難になることがあり、さらに得られるポリエステルポリマーの軟化点が、低くなることがあり、また、アルカリ土類金属化合物（ b ) の含有量が、含金属リン化合物（ a ) のモル量の 1. 2倍をこえると、ポリエステル樹脂中に粗大粒子が生成し、得られるマルチフィラメント成分（A ) を染色したとき、視感色濃度が低下することがある。

マルチフィラメント成分（A ) 用ポリエチレンテレフ夕レート樹脂組成物中の含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物

( b ) とは、ポリエチレンテレフタレ一卜ポリマーの製造反応糸中に予じめ互に反応させることなく、添加されたものである。このようにすると、含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物

( b ) とは、生成するポリエチレンテレフ夕レー卜ポリマー中において反応して、ポリエチレンテレフ夕レートポリマーに不溶性の超微細粒子を形成して、ポリマ一中に均一に分散することができる。含金属リン化合物（ a ) と、アルカリ土類金属化合物（ b) とを、予じめ反応させて、不溶性微粒子を生成させ、これを、ポリェチレンテレフ夕レートポリマ一製造反応糸中に添加すると、ポリェチレンテレフタレートポリマ一中における不溶性微粒子の分散性が低く、かつ粗大粒子を形成することがあり、その結果、得られるマルチフィラメント成分（A) の深色効果の向上効果が不十分になる。含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（ b ) は、エチレンテレフ夕レートポリマーの製造開始から終了までの間の少なくとも 1段階において、両者を同時に、又は、別々に、任意の順序で、反応糸中に添加される。但し、含金属リン化合物（ a ) のみを、ポリエチレンテレフ夕レートポリマーの製造工程の第 1段階において反応糸に添加すると、この第 1段階の反応の完結が、阻割されることがあり、また、アルカリ土類金属化合物（ b ) のみを、前記第 1段階の反応終結前に反応糸に添加すると、当該反応がエステル化反応の場合には、その反応糸中に粗大粒子が形成されることがり、また当該反応がエステル交換反応のときは、その反応が異常に急速に進行して突沸現象を発生させることがある。このため、第 1 段階におけるアルカリ土類金属化合物（ b ) の添加量はその全添加量の 20質量％以下に規制することが好ましい。つまり、アルカリ土類金属化合物（ b) については、その全添加量の 80質量％以上を、第 1段階の反応が実質的に完結した後以降に、反応糸に添加することが好ましい。さらに、含金属リン化合物（ a) 及びアルカリ土類金属化合物（ b ) の添加は、ポリエチレンテレフタレートポリマーの製造工程の第 2段階において、生成ポリマ一の極限粘度が 0.3に到達する前に完了することが好ましい。第 2段階の反応糸が高い粘度を示す場合、このような高粘度反応糸に、含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（b ) を添加すると、形成される粒子が凝集し、粗大粒子を形成することがあり、そのため、得られるマルチフィラメント成分（A) の深色効果が、不十分になることがある。

含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（ b ) は、両者の全量を同時に添加してもよく、 2回以上に分割して逐次添加してもよく、或は連続的に添加してもよい。

ポリエチレンテレフタレートポリマーの製造工程の第 1段階及び第 2段階のそれぞれにおいて触媒を用いることができる。但し、ァルカリ土類金属化合物（ b ) のなかには、第 1段階の反応、特にェステル交換反応に対し、触媒能を有するもの（例えばアルカリ土類金属の酢酸塩、安息香酸塩及び硫酸塩など）があるので、このような触媒能を有するアルカリ土類金属化合物を、第 1段階において、反応糸に添加するときは、前記触媒を用いなくてもよい。触媒を使用しない場合は、アルカリ.土類金属化合物（ b ) を、第 1段階用反応糸に、反応前に、又は反応中に添加する。しかし、この場合には、反応糸に突沸現象を生起することがあるので、アルカリ土類金属化合物（ b ) の、第 1段階の反応糸中への添加量は、アルカリ土類金属化合物（ b ) の全添加量の 20質量％以下に規制することが好ましい。

含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（ b ) を、予じめ反応させることなく、ポリエチレンテレフ夕レートポリマーの製造工程中において、その反応糸に添加し、両添加剤（ a ) ， ( b) の存在下に重縮合反応を完了することにより両添加剤（ a) , (b ) を含む、微細粒子を、ポリエチレンテレフ夕レートポリマ一中に均一に分散させることができる。このようにして調製されたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、高重合度、高軟化点及び良好なフィラメント形成性を有し、溶融紡糸工程により高い効率をもってフィラメントを製造することができる。また、このようなマルチフィラメント成分（A ) 用ポリエステルフィラメントは、染色されたとき、高い深色効果を示し、また優れた摩擦耐久性を示し、さらに、高いアルカリ減量速度を示すことができる。このため、本発明のポリエステル混繊糸において、それがアルカリ減量処理に供されたとき、マルチフィラメント成分 ( A ) は、複合マルチフィラメント成分（B ) よりも、優先的に速く減量し、それによつて、高い深色効果を示し、ポリエステル混繊糸に、特殊な色調（カラート —ン）を付与することができる。

マルチフィラメント成分 ( A ) 用ポリエチレンテレフタレ一トフイラメントは、通常のフィラメント製造工程により紡糸され、延伸されたものであってもよい力未延伸フィラメントであってもよい。この未延伸ポリエチレンテレフ夕レートフィラメントは、温度： 180°Cの乾熱されたとき、自己伸長性を示すものであることが好ましい。このような自己伸長性ポリエステルフィラメントを用いると、得られるポリエステル混繊糸の風合がソフトになる。上記のように 180°Cの乾燥加熱下において、自己伸長性を示すポリエチレンテレフ夕レート未延伸フィラメン卜は、前記ポリエチレンテレフタレ一ト樹脂組成物を 2000〜 4300m Z分の紡糸速度に溶融紡糸して巻き取り、この未延伸フィラメントを巻き戻しながら、弛緩状態（リラックス状態）又は、 5〜 10 %のオーバ一フィード率において、加熱処理工程に供し、 180〜200°Cに加熱されたヒ一夕一により熱処理することによって製造することができる。

本発明のポリエステル混繊糸に含まれるマルチフィラメント成分 ( A ) の総繊度及び単フィラメン卜繊度については格別の制限はないが、前記総繊度は 33〜330dtexの範囲内にあることが好ましく、この範囲は 33〜 220dtexであることがより好ましく、前記単フィラメント繊度は、 1〜 5 dtexの範囲内にあることが好ましく、この範囲は 1.0〜3.3dtexであることがより好ましい。また、マルチフイラメント成分（A) 用ポリエステル単フィラメントの断面形状には、制限はなく円形、三角形などの多角形、偏平形などを含む各種形状を有していてもよく、中空形状を有していてもよい。

本発明のボリエステル混繊糸はマルチフィラメント成分 ( A) とともに、複合マルチフィラメント成分（B) を含むものである。前記複合マルチフィラメント成分（B) を構成する複数の複合フイラメン卜は、互に異る 2種のポリエステル樹脂から形成されたサイド一バイ一サイド型又は偏心芯鞘型複合繊維構造を有し、かつ前記 2 種のポリエステル樹脂の一方がボリトリメチレンテレフタレ一ト樹脂から選ばれる。

前記マルチフィラメント成分（A) の、前記複合マルチフィラメント成分（B) に対する質量比（（A) / (B) ) は、 80 : 20〜50 ： 50の範囲内にあり、 80： 20〜60： 40であることが好ましい。

本発明のポリエステル混繊糸の、複合マルチフィラメン卜成分 ( B) 用複合フィラメントは、熱収縮性において互に異る 2種のポリエステル樹脂により形成されたサイドーバイ—サイド型又は偏心芯鞘型複合繊維構造を有している。このため、複合フィラメントに加熱処理が施されると、 2種のポリエステル樹脂の熱収縮性の差により、コイル状捲縮を発現して、複合マルチフィラメント成分（B) に伸縮性（ストレッチ性）を付与する。

本発明の混繊糸において、複合マルヂフィラメント成分（B) 用複合フィラメントを構成するポリエステル樹脂のうち少なくとも一方が、ポリトリメチレンテレフ夕レート樹脂である。ポリ卜リメチレンテレフ夕レ一ト樹脂の主成分はポリ卜 Uメチレンテレフ夕レー卜ポリマーでめり、このポリマ —の主な繰 Ό返えし単位はトリメチレンテレフ夕レ一卜グループからなるものである。この卜リメチレンテレフタレ一卜グループは、テレフタル酸からなる酸成分と、卜

U メチレング U コールからなるグリコール成分との縮合反応により形成されたものである。

卜リメチレンテレフタレ一ポリマーは、ホモポリマーであってもよく、またポリマー（共重合体）であてもよい。前記コポリマ一の場合、その酸成分に共重合酸成分としてテレフタル酸以外のシ力ルボン酸、例えば、ィソフタル酸、ナフ夕リンジカルボン酸、ジフエニルジカルボン酸、ジフエノキシェ夕ンジカルボン酸、）6 — ヒドロキシエトキシ安息香酸、 P —ォキシ安息香酸、 5 —ナトリウムスルホイソフ夕ル酸、アジピン酸、セバシン酸、 1 , 4—シクロへキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸の 1種以上が含まれていてもよく、また、そのグリコール成分に、共重合ダリコール成分として例えばシクロへキサン一 1 , 4ージメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフエノール A、ビスフエノ一ル Sのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコールなどの 1種以上を含んでいてもよい。共重合成分の含有量は、 30モル％以下であることが好ましい

前記ポリトリメチレンテレフ夕レート樹脂中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分枝剤、艷消し剤、着色剤、その他各種改良剤等が必要に応じて配合されていてもよい。

複合マルチフィラメント成分（B ) 用複合フィラメントを形成する 2種のポリエステル樹脂のうち、 1方が、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂とは異るポリエステル樹脂である場合、この異種ポリエステル樹脂の種類及び組成には制限はないが、例えばポリェチレンテレフタレー卜ホモポリマー又はコポリマーから選択することができる。本発明の複合マルチフィラメント成分（B ) 用複合フィラメントを構成する 2種のポリエステル樹脂として、互に熱収縮性において異なる 2種のポリトリメチレンテレフ夕レート樹脂の組合せ、及び互に熱収縮性の異なるポリトリメチレンテレフタレ一ト樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂との組合せを用いることが好ましく、後者の組合せが、さらに好ましい。このような 2種のポリエステル樹脂を用いて、サイド一バイ一サイド型、又は偏心芯鞘型複合繊維構造を有する複合フィラメントを用いることにより、複合マルチフィラメント成分（B ) は良好な捲縮性と伸縮性を発現することができる。 '

本発明のポリエステル混繊糸において、複合マルチフィラメント成分（ B ) 用複合フィラメントを構成する 2種のポリエステル樹脂の少なくとも 1方が、ポリトリメチレンテレフタレ一ト樹脂であることにより、この複合マルチフィラメント成分（B ) を、ポリェチレンテレフタレ一トフィラメントからなるマルチフィラメント成分 ( A ) と混繊して得られる混繊糸は、それをアルカリ減量処理に供したとき、ポリトリメチレンテレフ夕レート樹脂と、ポリエチレンテレフタレ一ト樹脂組成物とのアル力リ減量速度の差により、ポリエチレンテレフ夕レー卜フィラメント (マルチフィラメント成分 ( A ) ) を優先的にアルカリ減量することが可能になる。

本発明の混繊糸の複合マルチフィラメント成分（B ) の複合フィラメントを構成する 2種のポリエステル樹脂の質量比は、 70 ： 30〜 30 ： 70であることが好ましく、 60 ： 40〜40 ： 60であることがより好ましい。

複合マルチフィラメント成分（B ) の総繊度、及び単複合フイラメントの繊度には格別の制限はないが、前記総繊度は 33〜 330dtex であることが好ましく、より好ましくは 33〜167dtexであり、単複合フィラメントの繊度は、 1〜 5 dtexであることが好ましく、 1.0 〜3.3d t exであることがより好ましい。また、単複合フィラメントの断面形状については格別の制限はなく、円形、三角形などの多角形、及び偏平形などのいずれであってもよく、中空形であってもよい。

本発明のポリエステル混繊糸において、マルチフィラメン卜成分 ( A) の、複合マルチフィラメント成分（B) に対する質量比が 80 ： 20〜50： 50であることが好ましく、 75 ： 25〜60： 40であることがより好ましい。前記質量比（A) / (B) 、 80/ 20より小さくなると、得られるポリエステル混繊糸の伸縮性が不十分になり、また質量比（A) / (B) 力 50/ 50未満であると、得られるポリエステル混繊糸、及びそれから製造された、染色された織編物において、複合マルチフィラメント成分 ( B )' の複合ボリエステル繊維フィラメン卜が、深色効果の高いマルチフィラメント成分 (A) のポリエチレンテレフ夕レート繊維によって、十分に被覆されず、深色効果の高いポリエチレンテレフタレートフィラメントの間に、深色効果において、マルチフイラメン卜成分 ( A) のポリエチレンテレフ夕レートフィラメントに劣る複合マルチフィラメント成分 (B) の複合ポリエステルフィラメントが露出し、両者の色差が、染色製品の品質を不満足なものにすることがある。尚質量比（A) / (B) の算出においてはマルチフィラメント成分（A) を構成する全ポリエチレンテレフ夕レートフィラメントの合計質量と、複合マルチフイラメン卜成分（B) を構成する全複合ポリエステルフィラメントの合計質量の比を算出する。

本発明のポリエステル混繊糸は、それとは異る 1本以上のフイラメン卜と、混繊されて用いられてもよいが、この異種フィラメントの混合量は、本発明のポリエステル混繊糸の質量の 30質量％以下であることが好ましく、 20質量％以下であることがさらに好ましい。本発明の混繊糸を製造する方法には、格別の制限はないが、その一例において、複数の複合ポリエステルフィラメントからなる複合マルチフィラメント成分（B) の周囲に、複数のポリエチレンテレフタレートフィラメン卜からなるマルチフィラメント成分 ( A) を巻きつけるカバリング法或は、マルチフィラメント成分（A) と複合マルチフィラメント成分 (B) とを、まわりに、マルチフィラメント成分（B) を引き揃えて、空気交絡ノズル、又は複合仮撚加工装置に供給し、複合マルチフィラメント成分（B) を芯とし、そのまわりにマルチフィラメント成分（A) のポリエチレンテレフタレ一卜フィラメントを、鞘状に配置し、複合マルチフィラメント成分 (B) の外周部分に位置する複合ポリエステルフィラメントと交絡させる空気混繊方法、及び複合仮撚方法を用いることができる。これらの方法のなかでも空気混繊法を用いることが好ましい。この空気混繊法を用いることにより、ふくらみ感（嵩高性）及び柔軟性に優れたポリエステル混繊糸が得られる。

上記空気混繊方法において、マルチフイラメン卜成分 (A) と複合マルチフィラメント成分（B) とは、互に同一の速度で、空気交絡ノズルに供給されてもよいが、マルチフィラメント成分（A) の供給速度を、複合マルチフィラメント成分（B) よりも高くして（オーバーフィートして）もよい。

マルチフィラメント成分 ( A) と複合マルチフィラメント成分 ( B) との混繊工程の後、得られた混繊糸に、熱処理を施すと、複合マルチフィラメント成分（B) 中に複合ポリエステルフィラメントに、コイル状の捲縮を発現して、見掛け上収縮させることができる。このようにすると、見掛け上収縮した複合フィラメント成分が混繊維の芯部を構成し、捲縮を発生しないマルチフィラメント成分（

A ) のボリエチレンテレフ夕レートフィラメン卜が、芯部のまわりに分布して混繊糸の鞘部を構成する。このような鞘部を構成するポリエチレンテレフ夕レー卜フィラメントは、芯部のまわりで屈曲して、嵩高性を発現し、得られた混繊糸は高い伸縮性（ストレッチ性 ) を発現する。

本発明の混繊糸の製造方法の一例を図 1 を参照して説明する。図 1 において、マルチフィラメント成分 ( A ) 及び複合マルチフイラメント成分 ( B ) を、それぞれ、そのパッケージ 1 A及び 1 B から、巻き戻し、引き揃えて、供給ロール 1 に供給し引揃え糸 1 a を糸条ガイド l aを経て、空気交絡ノズル 2に供給して、混繊糸 2 aを形成し、混繊糸 2 aを糸条ガイド 2 bを経て、所定の供給速度で（オーバーフィードであってもよい）第 1加熱装置（加熱ロール ) 3 に供給して、例えば、所望温度に加熱された。ロール周面上に 1 回以上、巻き廻されて、接触して、第 1熱処理（弛緩熱処理であつてもよい）される。第 1熱処理された混繊糸 3 aは、第 2熱処理装置 4に供給され、例えば、 1対のスリットヒータ一の間において、所定の温度において第 2熱処理される。このとき、第 1熱処理された混繊糸を弛緩状態（オーバ一フィード）で、第 2加熱装置 4に供給してもよい。第 2加熱装置 4において、混繊糸 3 a中のマルチフィラメント成分（A ) 及び镩合マルチフィラメント成分（B ) は、所状の状態、及び分布位置を得て、熱固定される。得られた第 2 熱処理された混繊糸 4 aは、引取りロール 5により、引き取られ、冷却されて、糸条ガイド 6 aを経て、ポビン 6 bのまわりに巻き取られ、混繊糸パッケージ 6 を形成する本発明の織編物は本発明のポリエステル混繊糸を用いて構成されたものである。織編物に用いられる本発明の混繊糸は無撚り糸であってもよいが、 150〜 3000 T Z mの撚り数を有することが好ましく、より好ましい撚り数は、 600 〜 2000 T Z mである。

本発明の織編物用ポリエステル混繊糸は、前記のように熱処理よりコイル状捲縮を発現した複合マルチフィラメント成分（B ) からなる芯部と、そのまわりを取り囲み、屈曲して外側に張り出しているマルチフィラメント成分（A ) により形成された嵩高鞘部とからなるものであることが好ましく、このような混繊糸は、織編物に良好な伸縮性（ストレッチ性）を付与する。

本発明のポリエステル混繊糸織編物は、その組織に格別の制限はなく、織物の織組織としては、例えば、三原織組織、すなわち平織、綾織、及び朱子織、並びにこれらの変化組織、片二重織（たて二重織及びよこ二重織）、及び経ビロード織などが用いられる。編組織はよこ編組織及びたて編組織を包含し、よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レ一ス編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シンダルデンビ一編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコッ卜編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。編層数は単層でもよいし、 2層以上の多層でもよい。

本発明の織編物には、前記本発明のポリエステル混繊糸が、織編物の総重量に対して 30 %以上好まれることが好ましく、よ.,り好ましくは 40 %以上であり、さらに好ましくは 100 %である。

本発明の織編物にアルカリ減量加工を施すことにより、織編物に含まれるポリエチレンテレフタレ一ト繊維の繊維表面に微細孔が形成される。その際、アルカリ減量率は、混繊糸質量に対して 5〜40 %の範囲内であることが好ましく、より好ましくは 15〜 30 %である。ここで、ポリエチレンテレフ夕レートはポリトリメチレンテレフ夕レートよりもアルカリ減量速度が速いため、ポリエチレンテレフ夕レートフィラメントが複合フィラメントよりも優先的にアルカリ減量される。アルカリ減量率が 5 %よりも小さいと、ポリエチレンテレフタレートフイラメン卜の繊維表面に微細孔が十分に形成されないおそれがある。逆に、アルカリ減量率が 40 %よりも大きいと、複合フィラメントも、アルカリ減量されて織編物の伸縮性（ストレツチ性）が損なわれることがある。

本発明の織編物に染色加工を施すと、前記ポリエチレンテレフ夕レートフィラメントの繊維表面に形成された微細孔により、優れた深色効果が発現される。同時に、染色加工の際の熱により芯鞘型混繊糸に含まれる複合フィラメントがコイル状捲縮を発現するため、優れた伸縮性（ストレッチ性）が得られる。また、混繊糸に含まれる前記ポリエチレンテレフ夕レー卜フィラメントと複合フィラメントとが前記の範囲内であるので、ポリエチレンテレフ夕レー卜フィラメン卜が鞘部を構成し、複合フィラメントが芯部を構成して、複合フィラメントが織編物表面に露出せず、染着差もない。

ポリエチレンテレフタレ一トフィラメントと複合フィラメントの見掛け色濃度の差が露出することがない。

本発明の織編物には、撥水加工又は起毛加工を施してもよく、また紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工剤による処理加工を施してもよい。実施例

本発明を、下記実施例によりさらに説明する。但し、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。

下記実施例の原料及び製品に対して、下記の測定が施された。 1. 固有粘度

オルソクロロフエノールを溶媒として使用し、 35°Cの温度で測定した。

2. 深色効果

深色効果を示す尺度として、深色度（KZ S ) を用いた。この値は、供試布帛の分光反射率（R) を島津 RC-330型自記分光光度計にて測定し、次に示すクベルカ一ムンク (KubelkaMunk) の式から算出した。この値が大きいほど深色効果が大きいことを示す。

K/ S = ( 1 - R ) ² / 2 R

なお、 Kは光吸収係数、 Sは光散乱係数を示す。

3. 伸縮（ストレツチ）性

島津製作所（株）製の引張り試験機を用いて、つかみ巾 2cm、つかみ間隔 IOCDK 引張り速度 lOcmZ分で、供試布帛片を緯方向に伸長させたときの 2.94N/ cmの応力下における伸び率 (%) をもって、供試布帛片の伸縮性（ストレッチ）性を表示した。なお、織物のこの伸縮性（ストレッチ）は、 10%以上なければ、伸縮性（ストレツチ）布帛として多用途に使用できない。

4. 織物品位

5人のパネラーが織物の表面を観察し、特に混繊糸の芯糸と鞘糸の色濃度差があるものを、「イラツキあり」と判定し、「イラツキなし」（ 3 ) 、「イラツキ若干あり」（ 2 ) 、「イラツキあり」（ 1 ) の 3段階に評価した。

実施例 1

テレフタル酸ジメチル 100部、エチレングリコール 60部、酢酸力ルシゥム 1水塩 0.06部（テレフタル酸ジメチルに対して 0.066モル %) をエステル交換反応缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下、 4時間かけて 140°Cから 230°Cまで昇温し、生成するメタノールを系外に留去しながら、エステル交換反応を行った。続いて得られた反応生成物に、リン酸ジエステルカルシウム塩と酢酸カルシウムとの混合透明溶液 9. 88部を添加し、次いで三酸化アンチモン 0. 04部を添加して重合缶に移した。このリン酸ジエステルカルシウム塩と酢酸カルシゥムとの混合透明溶液は、下記のようにして調製したものである。すなわち 0. 5部のリン酸トリメチル（テレフ夕ル酸ジメチルに対して 0 . 693モル％) と 0. 3 1部の酢酸カルシウム 1水塩（リン酸トリメチルに対して 1 Z 2倍モル）とを、 8. 5部のエチレングリコール中において 120°Cの温度において全還流下 60分間反応せしめ、このようにして調製されたリン酸ジエステルカルシウム塩の透明溶液 9. 3 1部に、室温下、 0. 57部の酢酸カルシウム 1水塩（リン酸トリメチルに対して 0. 9倍モル）を溶解せしめて、前記混合透明溶液を調製した。前記反応混合液を含む重合缶内の圧力を、 1時間かけて、 760mmH gから 1 minHgまで減圧し、同時にその温度を 1時間 30分かけて、 230 °Cから 285°Cまで昇温した。 1 mmHg以下の減圧下、重合温度 285 °Cで更に 3時間、合計 4時間 30分重合して固有粘度 0. 641、軟化点 259°C のポリマーを得た。反応終了後ポリマ一を、ペレタイザ一を用いてチップ化した。

このチップを乾燥し、 36個の紡糸孔を有する溶融紡糸装置に供給して、紡糸速度 3300m Z分で紡糸し、含金属リン化合物およびアルカリ土類金属化合物を含むポリエチレンテレフタレ一卜未延伸フィラメント束（中間配合フィラメント束） 90d t ex/ 36フィラメントを製造した。

一方、固有粘度が 1. 3 1のポリ卜リメチレンテレフタレ一卜（PTT ) と固有粘度が 0. 52のポリエチレンテレフタレート（PET) をそれぞれ別々に溶融し、 24個の紡糸孔を有するサイドーバイ一サイド型複合繊維用溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度 260°Cで複合紡糸口金より？£1^/1^1の重量比率が50/ 50となるょうに吐出し、紡糸速度 14 50m/分で紡糸した。得られた未延伸フィラメント束を、 87°Cで 2. 9倍に延伸して、 56dtex/24フイラメントの延伸複合フィラメントを製造した。

前記含金属リン化合物およびアルカリ土類金属化合物を含むポリエチレンテレフ夕レート未延伸フィラメント束（A) および複合フイラメン卜束 (B) を用い、図 1 に示す装置で混繊糸を製造した。すなわち、両未延伸フィラメント束（A) および複合フィラメント束（B) それぞれパッケージ 1 A， 1 Bから巻き戻し、を引き揃えて、供給ロール 1 に供給し、この引揃え糸 1 aを、糸条ガイド 1 b を経てイン夕一レースノズル（空気交絡ノズル） 2に供給速度： 60 Om/分、オーバ一フィード率 1.2%の条件下に供給し、これに、 0. 2MPa ( 2 kgf/cni²) に加圧された空気を噴き当てて、引揃え糸 l b 中のフィラメントを互に交絡させた。この交絡したフィラメント束 2 aを、糸条ガイド 2 bを経て、 1.2%のオーバーフィード率で第 1加熱ロール 3 に供給し、 120°Cの表面温度を有する第 1加熱ロールの周面に 8回卷き回して、交絡フィラメント束に弛緩熱処理を施し、それによつて、ポリエチレンテレフ夕レートフィラメント ( A ) に温度 180°Cにおける自己伸長性を付与した。第 1加熱処理されたフィラメント束を、 1.8%のォ一バーフィード率で第 2熱処理装置 4に供して、これに 1対のスリツトヒ一夕一により 230°Cで 0.05 秒間の第 2弛緩熱処理を施して、供試フィラメント束を熱固定して、目的混繊糸を製造した。熱固定された混繊糸 4 aを、引取ロール 5に 4回巻き回して取り出し、これを、糸条ガイド 6 bを経て、巻取りポビン 6 b上に巻き取り混繊糸のパッケージ 6を形成した。上述工程により得られた混繊糸をパッケージから巻き戻し、 S方向に ΠΟΟΤ/mの撚り数の捲りを付与した。得られた混繊糸から 2 / 2綾組織を有し、経密度 101本 / 2.54cm 、緯密度 82本 54の織物を製造した。

この織物に、濃度 35g/リットルの水酸化ナトリウムを含むアルカリ減量処理液中に浸漬し、 95°C、 60分間のアルカリ減量処理を施した。この処理による織物の減量率は、 25% (質量）であった。このアル力リ減量処理された織物を、この織物を染色工程に供し、その質量に対して、 15% (質量）の分散染料（商標： Dianin Bla ck HG- FS、三菱化成（株）製）を含む染色浴中において、 130°C、 6 0分の染色を施した。染色された織物を、水酸化ナトリウム l g Z リットル及びハイドロサルフアイト 1 g リットルを含む水溶液中において、 70°C、 20分間の還元洗浄に供し、黒色に染色された織物を得た。

得られた黒色織物の試験結果を表 1 に示す。この黒色織物は、良好な伸縮性及び深色効果と外観上良好な色濃度均一性を有していた実施例 2

実施例 1 と同様にして、黒色混繊糸織物を製造した。但し、複合マルチフィラメント成分（B) は、 1.26の固有粘度を有するポリトリメチレンテレフ夕レート（PTT) ポリマーと、 0.92の固有粘度を有するポリトリメチレンテレフ夕レート（PTT) ポリマーとを用いて製造された。試験結果を表 1 に示す。この黒色織物は、良好な伸縮性と、深色効果と、外観上良好な色濃度均一性を有していた。比較例 1

実施例 1 と同様にして黒色織物を製造した。但し、混繊糸におけるマルチフィラメント成分（A) と複合マルチフィラメント成分（ B ) との合計質量に対する複合マルチフィラメント成分（B) の質量比（B ) / (A + B ) は、 17%、つまり質量比（A) / ( B) は、 83 ： 17であつた。

試験結果を表 1 に示す。得られた黒色織物において、複合マルチフィラメント成分（ B ) の含有比率が過小であるため、得られた黒色織物の伸縮性は不十分なものであった。

比較例 2

実施例 1 と同様にして黒色織物を製造した。但し、混繊糸中のマルチフィラメント成分 ( A ) 及び複合マルチフィラメン卜成分 ( B ) の合計質量に対する複合マルチフィラメント成分（B ) の質量比は 53 %であった。すなわち、質量比（A ) / ( B ) は 47 : 53であつた。試験結果を表 1 に示す。

得られた黒色織物において、マルチフィラメント成分 ( A ) の含有率が過小であるため、得られた黒色織物の外観上の色濃度の均一性は不良であつた。

比較例 3

実施例 1 と同様にして黒色混繊糸織物を製造した。但し、複合マルチフイラメント成分 ( B ) 用複合フィラメントの製造において、固有粘度 0. 65のポリエチレンテレフ夕レート（PET) ポリマ一と、固有粘度 0. 50のポリエチレンテレフ夕レート（PET) とを用いた。試験結果を表 1 に示す。

得られた黒色織物は、深色効果において不良であった。

表 1

実施例 1 実施例 2 比較例 1 比較例 2 比較例 3 ポリエチレン微細孔含金属リン種類リン酸ジェリン酸ジェリン酸ジェテレフタレー卜形成剤化合物ステル Ca ステル Ca ステル Ca ステル Ca ステル Ca 繊維添加量 0. 693 0. 693 0. 693 0. 693 0. 693

(対腿

モル％)

アル力リ土類種類酢酸 Ca 酢酸 Ca 酢酸 Ca 酢酸 Ca 酢酸 Ca 金属化合物

添加 Ca/P 1. 5 1. 5 1. 5 1. 5 1. 5 モル比

複合繊維構成成分 PET/PTT PTT/PTT PET/PTT PET/PTT PET/PET

混繊糸全体に対する重量比（％) 37 37 17 53 37 布帛特性深色効果（K Z S ) 26 27 25 22 22

ストレツチ性 20 22 7 26 21 品位（芯糸と鞘糸の染着差）〇〇〇 X 〇

産業上の利用可能性

本発明のポリエステル混繊糸は、伸縮性及び深色効果が高く、外観上染色色濃度の均一な織編物を得るために有用な糸条であって、各種婦人用及び紳士用ファッション、ブラックフォ一マル織編物、及び中東諸国の民族衣装用織編物などの用途に有用なものである。

Claims

請求の範囲

1. 互に混繊されたマルチフィラメント成分 ( A) 及び複合マルチフイラメント成分 ( B ) を含む混織糸であって

前記マルチフィラメント成分 ( A) が、ポリエチレンテレフタレ ―卜樹脂組成物からなる複数のフィラメントを含み、前記ポリェチレンテレフ夕レート樹脂組成物が、ボリエチレンテレフ夕レー卜ポリマー、並びに下記一般式（ I ) により表される含金属リン化合物 ( a ) ：

〇

II

R ¹〇一 P—〇 Mm ( I )

O R²

〔但し、上記式（ I ) において、 R¹及び R²はそれぞれ、互に独立に 1価の有機基を表し、 Mはアルカリ金属原子又はアル力リ土類金属原子を表し、 mは、 Mが金属アルカリ金属原子を表す場合には、数字 1 を表し、それがアルカリ土類金属原子を表す場合は、数字 1 / 2 を表す〕

及びアルカリ土類金属化合物（ b ) を含み、前記含金属リン化合物（ a ) 及びアルカリ土類金属化合物（ b ) は、前記ポリエチレンテレフ夕レートポリマーの製造工程中において、その反応混合物中に混合されたものであり、

前記複合マルチフィラメント成分（B) 力互に異なる 2種のポリエステル樹脂から形成されたサイドーバイ一サイド型、又は偏心芯鞘型複合繊維構造を有する複数のポリエステル複合フィラメントを含み、かつ前記 2種のポリエステル樹脂の少なくとも 1方が、ポリトリメチレンテレフ夕レート樹脂であり、

前記マルチフィラメント成分（A) の、前記複合マルチフィラメント成分（B ) に対する質量比（（A) Z (B) ) 力 S、 80 : 20〜50 ： 50の範囲内にあることを特徴とするポリエステル混繊糸。

2. 前記マルチフィラメント成分（A) 中に含まれる前記ポリェチレンテレフタレートフィラメント中に、前記含金属リン化合物（ a ) が、前記ポリエチレンテレフ夕レート樹脂を構成するテレフ夕ル酸成分のモル量の 0.5〜 3.0モル％の含有量で含まれ、かつ前記ァルカリ土類金属化合物（ b ) が、前記金属リン化合物（ a ) のモル量の 50〜 120モル％の含有量で含まれる、請求の範囲第 1項に記載の混繊糸。

3. 前記マルチフィラメント成分（A) 中の前記ポリエチレンテレフタレ一トフィラメントが、温度 180°Cにおける乾熱下において、自己伸長性を示す未延伸マルチフィラメントから選ばれる、請求の範囲第 1項に記載の混繊糸。

4. 前記マルチフィラメント成分（ B) に含まれる、サイド—バイーサイド型又は偏心芯鞘型ポリエステル複合フィラメントが、ポリエチレンテレフ夕レート樹脂及びポリ卜リメチレンテレフタレ一ト樹脂から構成されている、請求の範囲第 1項に記載の混繊糸。

5. 前記マルチフィラメン卜成分 ( A) 及び複合マルチフィラメン卜成分（B ) が、空気交絡ノズルを通ることにより互に混繊され、それによつて前記成分（A) 及び（ B ) 中の単フィラメントが互に混繊され、かつ互に交絡されている、請求の範囲第 1項に記載の混繊糸。

6. 150〜 3000 T/mの撚り数を有する請求の範囲第 1項に記載の混繊糸。

7 . 請求項 1〜 6のいずれか 1項に記載のポリエステル混繊糸を含む織編物。

8. 前記混繊維中に含まれるポリエチレンテレフタレ一トフイラメントの繊維表面に、アルカリ減量処理により形成された、複数の微細孔が形成されている、請求の範囲第 7項に記載の織編物。

9 . 前記マルチフィラメント成分（A ) 及び（B ) に含まれる少なくとも 1種のフィラメントが染色加工により着色されている、請求の範囲第 7項に記載の織編物。