JP2017179653A - 海島複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】高次加工および製編織工程における工程通過性が良好で、かつアルカリ減量処理後に優れたストレッチ性を発現する潜在捲縮性複合繊維の提供。【解決手段】3成分よりなる複合繊維であって、繊維断面おいて高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBとがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合されて島部を形成し、ポリマーA、Bよりもアルカリ溶出速度が5倍以上速いポリマーCが海部を形成する海島型複合構造を有し、かつ下記(1)〜(4)の要件を具備する潜在捲縮性複合繊維。(1)高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの極限粘度差が0.15以上、(2)高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの複合比が3:7〜7:3、(3)島部繊度が0.01〜0.4dtex、(4)島成分が、0.2以上の異型度差を示す2種類以上の異なる断面形状を有する群からなること【選択図】図1

Description

本発明は、高次加工および 製編織工程における工程通過性に優れ、かつアルカリ減量処理後に優れたストレッチ性を発現するポリマーからなる潜在捲縮性複合繊維に関する。より詳しくは、アルカリ減量処理前はフラット糸として捲縮コイルを有さず、優れた高次/製編織での通過性を発揮し、アルカリ減量処理後に捲縮コイルを発現して優れたストレッチ性を発揮する、衣料、靴、鞄、基布材等の用途に好適な潜在捲縮性複合繊維に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーを用いた繊維は力学的特性、寸法安定性をはじめ様々な優れた特性を有しているため衣料用途をはじめ、インテリア、車両内装、産業資材等各種分野で利用されている。繊維の用途が多様化するに伴い、その要求特性も多様なものになってきている。特に近年においては超極細でありながら嵩高性、ストレッチ性、風合い、発色性、審美性等々の複合機能性も要求されてきている。
超極細繊維を得る方法としては、海島複合繊維から海成分を溶出し、残った超極細化された島成分を
利用する方法がよく知られており、このような方法で得られた極細繊維を用い、織物、編物をはじめとする衣料用途を始め、靴、鞄、基布材等の用途でも適用が拡大されてきている。
近年、健康・快適志向の高まりから極細繊維においても適度のストレッチ性を有し、心地良い着用感を有するストレッチ素材が注目されてきており、布帛にストレッチ性を与える方法が種々検討されている。
複合繊維から、一成分を溶出除去または、剥離させる方法によって極細繊維束を得る方法は、良く知られており、このような方法で得られた極細繊維を用い、織物をはじめとする衣料用途で優れた特性や風合いを持つ素材の提案が数多くなされてきた。
また、糸条、布帛にストレッチを付与する方法も種々提案されてきている。
繊維に仮撚加工を施し、加撚/解撚トルクを発現させた繊維を用いることによって、織編物にストレッチ性を付与する方法がある。しかし、このトルクは織物表面のシボに転移し易い傾向があり、織物欠点が発生し易いという問題があった。こうした欠点を改善するため、熱処理やS/Z撚りとすることでトルクバランスを取り、ストレッチ性とシボ立ちによる欠点をバランスさせることも行われているが、概ねストレッチ性が大きく低下することが問題となっていた。
また、織物中にゴム弾性をもつポリウレタン系の繊維を混用し、ストレッチ性を付与する方法がある。しかしながら、ポリウレタン系繊維はポリウレタン固有の性質として風合いが硬く、織物の風合いやドレープ性が低下するといった問題があった。さらに、ポリウレタン系繊維はポリエステル用の染料には染まり難く、ポリエステル繊維と併用したとしても、染色工程が複雑になるばかりか所望の色彩に染色することが困難であった。
ポリウレタン系繊維や仮撚加工糸を用いない方法として、サイドバイサイド複合を利用した潜在捲縮発現性繊維が種々提案されている。潜在捲縮発現性繊維とは熱処理により捲縮が発現する、あるいは熱処理前より微細な捲縮が発現する能力を有する繊維のことを言い、通常の仮撚加工糸とは区別されるものである。
特許文献1には固有粘度の異なる2種類のポリエステルからなるサイドバイサイド型複合繊維が、2群以上の異型度の異なる単糸群から構成されており、このように異型度をミックスすることで、ストレッチ性を有しながら、捲縮周期がずれて高嵩高性が得られる技術が開示されている。
しかしながら、該公報に開示されている複合繊維は単糸繊度が0.3〜5dtexと太く、超極細繊維のもつ良好な風合いには及ばず、払拭性にも劣るものであった。
特許文献2には、3成分ポリマーを用い、海島型複合構造による極細糸のバイメタル複合繊維が開示されている。しかしながら、該技術では島成分の異型度が同一のために、嵩高性に劣るものであった。
また、特許文献3には、海島複合繊維からなり、単糸繊度は10〜1000nmの超極細で、島成分が0.2以上の異型度差を示す2種類以上の異なる断面形状を有する繊維が開示されている。該繊維を用いた製品は風合いがサラサラで、丸断面形状と三角断面形状が混在したミックス効果により、拭き取り性の向上と断面形状差による独特の空隙ができ、保水性、集塵性がアップするとしている。しかしながら該繊維はバイメタル構造とはなっておらずストレッチ性は不十分であった。
従って、超極細繊維の特長を具備しつつ、スエード調素材や立毛素材、裏地、インナー、靴、鞄、基布材等に適用できる良好な嵩高性、ストレッチ性を呈することのできる複合繊維の開発が強く望まれていた。
特開2007−247107号公報(特許請求の範囲) WO2015/129519号公報(特許請求の範囲) WO2013/129213号公報(特許請求の範囲)
本発明は、高次加工および 製編織工程における複合繊維糸条の工程通過性に優れ、かつアルカリ減量処理後に優れたストレッチ性を発現する潜在捲縮性複合繊維を提供することにある。
より詳しくは、アルカリ減量処理前はフラット糸として捲縮コイルを有さずに優れた高次/ 製編織通過性を発揮し、アルカリ減量処理後に捲縮コイルを発現して優れたストレッチ性、嵩高性を発揮する、衣料、靴、鞄、基布材等の用途に好適な潜在捲縮性複合繊維を提供することにある。
本発明の課題は、(1)〜(5)により達成できる。
(1)繊維断面おいて高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBとがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合されて島部を形成し、ポリマーA、Bよりもアルカリ溶出速度が5倍以上速いポリマーCが海部を形成する海島型複合構造を有し、かつ下記(A)〜(D)の要件を具備することを特徴とする海島複合繊維。
(A)高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの極限粘度差が0.15以上
(B)高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの複合比が3:7〜7:3
(C)島部繊度が0.01〜0.4dtex
(D)島成分が、0.2以上の異型度差を示す2種類以上の異なる断面形状を有する群からなる
(2)海島比率が5:95〜50:50である、上記(1)記載の海島複合繊維。
(3)脱海後の捲縮率が20%以上である、上記(1)または(2)記載の海島複合繊維。
(4)島成分の異型度が2.0以下である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の海島複合繊維。
(5)島成分における各断面形状の島数が同一である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の海島複合繊維。
本発明によれば、従来技術では成し得なかった超極細繊維でありながら、良好な工程通過性とストレッチ性、嵩高性を備え、かつ布帛とした際に優れた風合い、払拭性、均一染色性、品位が得られる潜在捲縮性複合糸を提供することができる。
本発明の海島複合繊維の断面の一例を示す。 本発明の海島複合繊維における島のサイドバイサイド型断面の一例を示す。 本発明の海島複合繊維における島の偏心芯鞘型断面の一例を示す。 本発明の海島複合繊維を製造する製糸工程(直接紡糸延伸法)を説明するための概略図を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の潜在捲縮性複合繊維の複合形態について説明する。本潜在捲縮性複合繊維は、3種のポリマーから成る海島構造を有しており、島部は高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBとがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型(以下、総称してバイメタル糸と略す)に複合された形状を有し、海部はポリマーA、Bのいずれよりもアルカリ減量速度が5倍以上速いポリマーCで形成される。断面形状の一例としては、図1に示すような形状が挙げられる。なお、サイドバイサイド型断面は2成分のポリマーが貼り合わされた構造であり、図2に一例を示す。また、偏心芯鞘型断面は芯成分が鞘成分に包含されており、繊維断面の中心と芯成分の中心が同一でない構造であり、図3に一例を示す。芯鞘型断面のうち、芯成分の内接円および鞘成分の内接円において鞘成分の内接円の半径Rと2つの内接円の中心間距離rの比率r/Rが0.03以上であれば偏心芯鞘型断面である。
ここで、島部を形成する高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの極限粘度差Δ[η]は0.15以上である必要がある。0.15以上であれば、アルカリ減量およびその後の熱処理にて、ポリマーA、B間に十分な収縮差が発現して捲縮コイルを成し、優れたストレッチ性を得ることができる。より好ましいΔ[η]は0.20以上、さらに好ましくは0.50以上であり、Δ[η]が大きい程、ストレッチ性が向上して好ましい。具体的には、低粘度成分に用いるポリマーは、[η]≦0.60のものが好ましい。
一方、Δ[η]の上限は溶融押出可能な範囲であれば特に規定はない。これは、島成分のバイメタル複合繊維を海成分のポリマーが包み込むことによって、ベンディングを大幅に抑制できるためである。従来の2成分系バイメタル糸で見られるベンディングは粘度の異なる2種のポリマー間での流速差により生じるものであるが、本発明の海島複合繊維ではバイメタル糸が複数個に分散され、かつ海成分がその周りを包み込んでいるために2種のポリマー間の流速差を低減できるためである。このような複合構造にすることで紡糸時の糸切れは、大幅に改善することを可能とした。
なお、高粘度ポリマーA、低粘度ポリマーBの配置は図1に例示したように任意の位置で構わない。
また、脱海処理後に十分なストレッチ性を得るためには、島部を形成する高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの複合比を3:7〜7:3とする必要があり、より好ましくは4:6〜6:4である。この範囲内であれば、得ようとするストレッチ性布帛の目的に合わせて複合比を適宜設定可能であり、例えば捲縮ピッチが細かくソフト感に優れた布帛を得るには、ポリマーAとBの複合比差を大きく設定すれば良く、タフネスを得るには高粘度ポリマーAの複合比を低粘度ポリマーBに比べて高く設定すると良い。より優れたストレッチ性能を得たい場合は、ポリマーAとBの粘度差を大きく設定したり、複合比を調節したりして、脱海後の捲縮率を20%以上とすると、仮撚り加工糸や2成分系の潜在捲縮糸と同等の優れた伸縮性能が得られるようになる。より好ましくは40%以上、さらに好ましくは70%以上である。
一方、海成分に用いるポリマーCは島部を構成する2種のポリマーのいずれよりもアルカリ減量速度が5倍以上速いポリマーである必要がある。より好ましくは8倍以上であり、さらに好ましくは10倍以上である。
ここで、海成分の減量速度差を5倍以上とすることにより、アルカリ減量処理(脱海処理と称す)における、不完全脱海(海成分の溶出が不完全で海部の一部が島部が融着した状態)を回避することができ、染色斑や収縮斑等の欠点が少ない優れた布帛を得ることができる。
本発明の潜在捲縮性複合繊維において島部繊度は0.01dtex以上、0.4dtex以下である。ここで言う島部繊度とは、高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBが形成するバイメタル構造の1島の繊度のことを指す。島部繊度を0.01dtex以上とすることで、高次/ 製編織工程における部分的な破断や、加工工程における脱海処理が容易とすることができる。そして、ストレッチ性、嵩高性、物性安定性、を得ることができるので好ましい。一方、島部繊度を0.4dtex以下とすることで、ナノファイバーの有する独特のしなやかさ、風合い、吸水性、保水性、払拭性、研磨性能といった特性を活かすことができるので好ましい。ストレッチ性、嵩高性、しなやかさ、風合い、吸水性、保水性、払拭性、研磨性能、物性安定性を高いレベルで調和した原糸を得るには、島部繊度0.05〜0.4dtexがより好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.4dtexである。
上記の範囲内であれば海島複合状態での繊度や島数に特に規定はなく、対象となる最終製品や生産性を考慮して任意に設定できる。例えば、衣料用として用いる場合は、総繊度を500dtex以下とすると生産性、加工性の面で取扱いしやすく、薄地〜中厚地の布帛を得るには40〜250dtexが適しており、ボトム用途等の厚地の布帛を得るには250〜500dtexが適している。また島数は2〜10島とすると、均一な断面形状や物性を得やすく、より好ましくは3〜8島である。
本発明の海島複合繊維の島成分異型度は2.0以下が好ましい。2.0以下とすることで、強伸度が良好な、捲縮の高い繊維を得ることができる
本発明の海島複合繊維は、島成分が0.2以上1.0以下の異型度差からなる2種類以上の異なる断面形状を有する群からなることが必要である。
以下、詳細に説明する。本発明の海島複合繊維の島成分は、異なる複数の断面形状を有することを特徴としており、島成分の単糸形状が円、三角、四角、楕円、これらの中間形状など、種々の形状が混在している。そして、いずれの形状の島成分においても、全てのA.B成分がサイドバイサイド型、または偏心芯鞘型に複合されているのである。そして、この島成分が0.2以上の異型度差を有しており、かつ異形度の異なる2群以上の単糸群から構成されている必要がある。
ここで、本発明で定義する異形度とは、各島成分の断面の外接円の直径を内接円の直径で除した値であり、値の大きいほど異型が大きいことを示している。
サイドバイサイド型の複合繊維糸条では、個々の単糸の捲縮の位相が一致してしまい、あたかもスパイラル状のモノフィラメントの如き強く収束した外観を呈しやすく、この収束部は布帛表面にスジ状となって現れ、同時に風合いが硬くなる。そのため、マルチフィラメントを構成する単糸の断面形状を制御して、異なる異形度の単糸を混在させることにより、捲縮の位相をずらした嵩高性の複合繊維とすることが重要となるのである。
異形度の異なる2群以上の単糸群とは、例えば図1に例示するように、マルチフィラメントにおいて、異形度が異なる2種類以上の単糸が混在しているような場合を指す。これにより、布帛にハリ、コシが付与されて独特な風合いを呈し、布帛の表面に極めて好ましい効果が得られる。
本発明における海島複合繊維の単糸の断面形状の例を図1に図示する。
また、海部と島部の複合比は、任意に設定可能であるが、脱海性と脱海に伴う製品量損失分を考慮すると、海:島複合重量比は5:95〜50:50の範囲であることが好ましく、より好ましくは10:90〜40:60の範囲である。海成分の複合比は5%以上とすることにより、島部同士の融着を回避できるほか、海成分ポリマーの溶融後の配管通過時間を短縮できるために、熱劣化による強度低下を抑制でき製糸性の向上が可能となる。また、海成分の複合比を50%以下にすることで、減量による製品量損失を軽減できるため、生産効率を高く維持でき好ましい。
ここで、本発明に用いるポリマーの組み合わせは、上記の極限粘度差、アルカリ溶出速度差の規定を満たしていれば、公知のいずれのポリマーを組み合わせても良い。
例えば、ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタンなどの溶融成形可能なポリマーを挙げることができる。特にポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点が高く、好ましい。ポリマーの融点は165℃以上あると耐熱性が良好で好ましい。
特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、3GTと称す)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸(以下、PLAと称す)などの脂肪族ポリエステル等が挙げられる。また、これらのポリエステルは、ジオール成分および酸成分の一部が各々、20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができ、これらは艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していても構わない。
海成分ポリマーとしては、ポリエステルおよびその誘導体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニールアルコールなどの溶融成形可能で、他の成分よりも易溶解性を示すポリマーから選択することができる。易溶解成分としては、水系溶剤、あるいは熱水などに易溶解性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニールアルコールなどが好ましく、特に、ポリエチレングリコール、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独あるいは組み合わされて共重合したポリエステルやポリ乳酸を用いることが紡糸性および低濃度の水系溶剤に簡単に溶解するという観点から好ましい。また、脱海性および発生する極細繊維の開繊性という観点では、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独で共重合されたポリエステルが特に好ましい。
本発明の海島複合繊維の脱海後の捲縮率は20%以上が好ましい。
本発明の脱海後の嵩高性複合繊維において、捲縮率は布帛拘束下での捲縮発現能力に起因しており、
布帛内での拘束力に相当する荷重を繊維カセに吊して熱処理することで、布帛拘束下での捲縮発現能力を繊維カセの捲縮率で表せる。
この捲縮率が大きいほど捲縮発現能力が高いことを示しており、適度なストレッチを与えるためには20%以上が好ましい。本発明の脱海後の嵩高性複合繊維は単糸繊度がナノレベルの超極細繊維なので、捲縮率の上限は特に設けないが、100%程度がほぼ上限値と考えられる。
捲縮率が20%以上あると、布帛に適度なストレッチ率が付与され好ましい。捲縮率は高いほど布帛にしたときのストレッチ性能が向上するが、100%以上では捲縮が強くなりすぎて表面品位の悪化を来すので100%未満で抑える必要がある。
捲縮率を大きくするには島成分に用いるA.Bポリマーの粘度差を大きくすれば良く、ポリエチレンテレフタレート同士の組み合わせよりも一方のポリマーにポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートを用いることにより捲縮率は大きくなり、ストレッチ性、嵩高性も向上することになり好ましい。
本発明の海島複合繊維の島成分は、同一異型度である島の数が等しいことが好ましい。同一異型度である島の数が等しいことにより、同一捲縮周期である島の数も等しくなり、脱海後の単糸の糸長が同一となるためにタルミ状の単糸が発生することがないため好ましい。
本発明の嵩高性複合繊維は、構成する複合繊維間で捲縮位相がずれており、複合糸の嵩高度が高いものである。捲縮位相がずれているのは各単糸間で断面形状が異なることに起因しており、捲縮位相がずれていることによりストレッチ性に富み、嵩高度も高くなるのである。
嵩高度を高くすることによって適度なふくらみを与えるとともに、ソフトで反発感のある布帛とすることができる。さらには捲縮位相のずれがコイル捲縮によるトルクの分散効果を高め、高品位な布帛とすることができる。
嵩高度を大きくするためには、異形度の異なる2群以上の単糸群から構成された複合繊維を用いればよい。この点が公知の技術とは異なる点であり、優れた伸縮伸長率と嵩高度を両立させることが可能となるのである。
本発明の海島複合繊維は、破断伸度が15〜50%であることが好ましい。破断伸度を15%以上にすることで高次加工での糸切れの発生を抑えることができ、工業的に安定した製造が可能となる。または破断伸度を50%以下にすることで織編時の通過性が良好となる。更に好ましい破断伸度は20〜45%である。
本発明の嵩高性複合繊維は、糸長手方向の太さ斑の指標であるウースター斑U%(half inert)は1.2%以下であるものが好ましい。これにより、布帛の染め斑の発生を回避できるのみならず、布帛にした際の糸の収縮斑を抑制し、均質な布帛表面を得ることができる。ウースター斑U%(half inert)はより好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下である。
布帛拘束力に打ち勝って、安定的にコイル捲縮させるためには、収縮応力および収縮応力の極大を示す温度も重要な特性となる。収縮応力は高いほど布帛拘束下での捲縮発現性がよく、収縮応力の極大を示す温度が高いほど仕上げ工程での取り扱いが容易となる。したがって、布帛の熱処理工程で捲縮発現性を高めるためには、収縮応力の極大を示す温度は110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上であり、収縮応力の極大値は0.15cN/dtex以上、好ましくは0.18cN/dtex以上である。
次に、本発明の海島複合繊維の製造方法について説明する。
本発明の海島複合繊維の製造方法は、異なる2種類以上のポリマーを、複合紡糸機にて、所定の複合パックを用い、マルチフィラメントが2群以上の異形度の異なる単糸群から構成されるような口金を用いて、サイドバイサイド型に貼り合わせて複合紡糸し、一旦未延伸糸を巻き取った後、通常の延伸機で所定の破断伸度となるように延伸する2工程法、または一旦巻き取ることなく引き続き延伸を行う1工程法のいずれかによっても製造することができる。
但し、繊維長手方向での品質安定性、生産安定性を考慮すると、直接紡糸延伸法(以下、DSD法と称する)による生産が最も優れている。
本発明の潜在捲縮性複合繊維を製造する方法として、以下に、島成分ポリマーとしてポリマーAに3GT(高粘度)とポリマーBにPET(低粘度)、海成分ポリマーとしてポリマーCに5−ナトリウムスルホイソフタル酸とポリエチレングリコールを含有する共重合PETの易溶出ポリエステルを用い、テンションコントロールロール(以下、TCRと略す)付きの直接紡糸延伸機にて製造するのが好ましい。以下、その製造方法を詳しく説明する。
本ポリマーの組み合わせにて紡糸する場合は、3GTは240〜280℃、PETは270〜290℃、易溶出ポリマーは260〜280℃で溶融されるのが好ましく、溶融するに際しては、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられるが、均一溶融と滞留防止の観点からエクストルーダーによる溶融が好ましい。別々に溶融されたポリマーは別々の配管を通って計量された後、口金パックへ流入する。この際、ポリマーの熱劣化を抑制するために、配管通過時間はいずれも30分以内であることが好ましい。パックへ流入したポリマーは口金にて合流し、海島型に複合され口金より吐出される。口金は公知のものを用いることができるが、例えば特開2005−163233号公報に記載されたものを使用することが好ましい。
口金より吐出された複合ポリマー流は、従来の溶融紡糸法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラで引き取られて、本発明の海島複合繊維となる。
この際の紡糸温度は、240〜295℃が適当である。この範囲であれば、易溶出ポリマーの熱劣化を抑えて糸切れの少ない複合繊維が製造できる。
口金から吐出されたポリマーは冷却、固化され、油剤が付与された後、交絡装置にて交絡を付与され、ホットロール、TCRを介して巻き取られる。巻取速度は2500〜5000m/分において製造可能であり、工程安定性を考慮すると2700〜4500m/分がより好ましい。交絡数は任意に設定可能であるが、3個/m以上であると良好な工程通過性を得易いほか、必要であれば油剤付与〜巻取の間に複数個の交絡装置を設けることで交絡数を上げることも可能である。また、巻取直前に、追加で油剤を付与するのも良い。
ここで、好ましく用いられる装置の概略を図4に示す。口金4より吐出された糸条はチムニー5にて冷却後、油剤付与装置6による油剤の付与を経て、交絡装置7にて交絡が付与される。次いで、温度50〜90℃、速度1000〜3500m/分、鏡面の第1ホットロール8上に数ターン巻付けられて予熱された後、第2ホットロール9との間で延伸される。更に、温度90〜180℃の第2ホットロール9上に数ターン巻付けられて熱セットが為され、交絡付与装置10を経て、第2ホットロール9より−10〜10%速い速度で回転するテンションコントロールロール(TCR)11、12へ引き回される。熱セットされた糸条はTCR11、12によって冷却されるとともに張力が調整され、巻取機にて速度2500〜5000m/分にてパッケージ14に巻付けられる。巻取機においては、パッケージに接するコンタクトロール13によってパッケージ巻付け張力が調整される。
ここで、第1ホットロール8は、鏡面ロールであることが好ましく、TCR11、12は鏡面または溝付き鏡面ロールとするのが好ましい。ここで言う、鏡面とはロールの表面粗さが1S以下であり、梨地とは2〜4Sを指す。表面粗さとは、JIS−B−0601に記載される最大高さ(Rmax)の区分である。鏡面または溝付き鏡面とすることにより、糸条を効率的に把持することができるため、糸条はロールの前後で一定の張力を保って安定した走行が可能となり、原糸の長手方向での物性ばらつきの小さい良好な品質の製品を易くなる。TCRとしては梨地ロールも使用可能であるが、糸条把持性を維持するためには、鏡面や溝付き鏡面ロールに比べて高度な張力管理が要求される。仮にTCR上で糸条のスリップが発生した場合、原糸の長手方向で繊度斑や収縮斑、染色斑を誘発し、仮撚工程における糸切れや、布帛とした際の品位低下を引き起こす。高度な張力管理が要求される場合は、TCRを複数個設置するのが有効な手段である。
一方、コンタクトロールの速度はパッケージの巻取速度に対して、1.001〜1.01倍早く設定することで得られるパッケージの良好なふくらみ率と耳高率が容易に得られる。コンタクトロール速度のオーバーフィードを1.001以上とすることで、パッケージに巻かれる際の張力を低減でき、ふくらみ率、耳高率を抑制することが可能となる。より好ましい範囲は、1.0015以上である。また、1.01以下とすることによりパッケージ端面からの糸落ちを防止することができ、良好な解舒性が確保できる。より好ましいオーバーフィードの範囲は1.008以下である。さらに、コンタクトロール入口での糸条の張力は、0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。張力を0.1cN/dtex以上に設定することで、TCRから巻取機間の糸揺れを低減でき、巻取速度を上げた場合でも安定して糸条を巻き取ることができる。より好ましい張力は0.12cN/dtex以上である。また、張力を0.3cN/dtex以下とするとコンタクトロールでの張力制御が容易となり、良好なパッケージフォームが得られる。より好ましい張力は0.25cN/dtex以下である。
本発明の海島複合繊維の布帛形態は、織物、編物、不織布、さらにはクッション材など目的に応じて適宜選択でき、シャツ、ブラウス、パンツ、スーツ、ブラウス、靴、鞄、基布材等に好適に用いることができる。主に編物としてシャツや水着、インナー等のニット製品に使用するのが好ましい。これは、本発明の嵩高性複合繊維を布帛拘束力の弱い編物に使用した際に、個々の単糸の捲縮(クリンプ)の位相が一致することなく、バンド状斑やスジ状欠点のない表面品位の良好な布帛を提供することができるからである。また、織物においてこのまま単独で経糸、緯糸に用いてもよく、他の糸と混繊して用いてもよく、本発明の複合繊維の特長を発揮させるいかなる方法を用いても何ら差し支えない。
以下、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、実施例の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度[η]
[η]=Lim(ηr−1)/c
c→0
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノールで溶解した3GTの希釈溶液の25℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。また、cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
(2)繊度(海島複合繊維、複合極細繊維)
採取した海島複合繊維は、温度25℃湿度55%RHの雰囲気下で単位長さ当たりの重量を測定し、その値から10,000mに相当する重量を算出する。これを10回繰り返して測定し、その単純平均値の小数点以下を四捨五入した値を繊度とした。
複合極細繊維の単糸繊度を評価する場合には、海島複合繊維から糸束のまま海成分を99%以上除去し、採取した複合極細繊維束を海島複合繊維と同じ雰囲気下で単位長さ当たりの重量を測定し、10,000mに相当する重量を算出する。該複合極細繊維束の重量を繊維束に存在するフィラメント数(島数に相当)で割り、単糸繊度を算出した。同じ操作を10回繰り返して、その単純平均値の小数点第4位以下を四捨五入した値を複合極細繊維の単糸繊度とした。
(3)強度、伸度
JIS L1013(1999)に従い、オリエンテック製テンシロンUCT−100にて測定した。
(4)繊度変動率(U%)
ツエルベガーウースター社製ウースターテスターUT−4CXを用い、下記の測定条件にて繊度変動チャート(Diagram Mass)を得、チャート上でhalf inertの変動幅(=最大値−最小値)を直読した。
給糸速度 :200m/分
測定糸長 :400m
ツイスター :S撚 12000ターン/分
ディスクテンション強さ:10%
スケール :−10〜+10% 。
(5)複合比
海島複合比および島部複合比(ポリマーA−ポリマーB複合比)は、繊維断面における各成分の断面積比を指す。
(6)アルカリ(N)減量速度
アルカリ減量速度は、濃度1wt%、95℃の水酸化ナトリウム水溶液で10分処理した時の減量速度を指す。
(7)異型度
島成分の異型度は以下の方法で求める。
異型度=L1/L2
L1:島成分横断面の外接円の直径
L2:島成分横断面の内接円の直径 。
(8)捲縮率
捲縮率は、次の定義式に基づいて求められる値である。
捲縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100
ここでA1は、繊維に90.91×10−3cN/dtexの張力を掛けながら、周長1.0mの検尺機で10回枷取りした枷に、島部繊度換算で1.67×10−4cN/dtexの荷重をかけて70℃、3wt%の水酸化ナトリウム水溶液中で海成分を完全脱海後、水浴で5分間希釈中和処理してから大気中で30分間乾燥させたときの枷長であり、A0はA1を測定後、島部繊度換算で4.4×10−2cN/dtexの荷重をかけて2分後の枷長である。なお、島部繊度とは総繊度×島部複合比(%)で求められる、減量処理後の島部の理論繊度を指す。
(9)嵩高度
試料台の上面に2本の切り込みを設け、その外側縁部間の間隔を6cmとし、この切り込みに巾2.5cm、厚さ5μmのPET フィルムを掛け渡し、その下に指針付き金具及び荷重を結合する。金具の指針は、試料を装着しない場合に目盛のゼロ位を示すようにセットする。試料は周長1mの検尺機を用いて表示繊度50000dtex、糸長50cmとなるようにカセを巻き取る。次いで得られたカセをPETフィルムと試料台との間に差し入れ、縮んでいる試料を引っ張り、カセ長25cmになるようにカセを固定する。荷重は指針付き金具と合計して50gになるようにし、ゆっくりと荷重をかけた後、指針の示すL(cm)を読みとる。測定は3回行い、平均のL値から次式によって嵩高度Bを算出した。
B(m/kg)=フィルム中の体積V/フィルム中の糸重量W
V(m)=L2/π×2.5×10−6
W(kg)=50000×(0.5/0.25)×(0.025/10000)×10−3
=0.25×10−3
以下の4段階にて評価した。合格レベルは△以上である。
◎ :0.01m/kg以上
○ :0.005m/kg以上0.01m/kg未満
△ :0.003m/kg以上0.005m/kg未満
× :0.003m/kg未満 。
(10)高次通過性
バック糸に評価する原糸、フロント糸に56dtex−36フィラメントのレギュラーPET糸(セミダル)を用いて、カールマイヤー社製KS−2型編機にてハーフトリコット布帛を編成した。編成条件は編速度を1000rpmとし、編地の機上密度が28ゲージ、70コース/2.54cm(インチ)、フロントの編込長が155cm/ラック、バックの編込長が85cm/ラック、総糸本数は4992本とし、453cm幅の編地をリラックスさせ、240cm幅で、50m編成して、このときの編成糸切れを以下の基準で評価した。合格レベルは△以上である。
◎ :0回
○ :1回
△ :2回
× :3回以上 。
(11)布帛ストレッチ性
前記の(8)項記載の方法で得た布帛を95℃にて精錬後、3wt%、70℃の水酸化ナトリウム水溶液にて海成分を完全にアルカリ減量除去した。更に130℃にて一旦乾燥させたのち、160℃、210cm幅にて仕上げ熱セットした。こうして得られたトリコット生地を、タテ方向のストレッチ性(伸び率)について以下の4段階で評価した。合格レベルは△以上である。
◎:25%以上
○ :20%〜25%未満
△ :15%〜20%
× :15%未満 。
(12)布帛品位
上記の(7)にて得られたリコット生地の全巾×3メートルにカットした布帛サンプルについて、一般人から無作為に選出した10人のパネラーに布帛均一性(表面質感、光沢斑、スジ感)について官能評価してもらい、不均一感があると指摘した人数を次の3段階で評価した。合格レベルは△以上である。
◎ :0人
○ :0人超2人未満
△ :2〜4人未満
× :4人以上 。
実施例1
ポリマーAにη=1.1のホモ3GTを、ポリマーBにη=0.50のホモPETを、ポリマーCに5−ナトリウムスルホイソフタル酸とポリエチレングリコールを含有する共重合PETの易溶出ポリエステルを海成分に用い、それぞれエクストルーダーを用いて210℃、250℃、280℃にて溶融後、ポンプによる計量を行い、270℃にて図1に示すような海島型複合形態を形成すべく口金に流入させた。なお、口金は特開2005−163233号公報に記載されたものを使用した。複合重量比はポリマーC(海成分)が20%に対して、ポリマーA(3GT)が40%、ポリマーB(PET)が40%の割合とした。各ポリマーの配管通過時間は、海成分が25分、3GT、PETは10分であった。口金から吐出された糸条は、図4に示す装置にて冷却、油剤付与後、2700m/分の速度で55℃に加熱された第1ホットロール8に引き取られ、一旦巻き取ることなく、4300m/分の速度で150℃に加熱された第2ホットロール9に引き回し、延伸、熱セットを行った。さらに、4200m/分にて回転する2個のTCR10、11に引き回した後、コンタクトロール入口での張力を0.13cN/dtex、コンタクトロール速度4080m、パッケージ巻き取り速度4072m/分、すなわちオーバーフィードを1.0020として巻取り、図1に示す断面形状の56dtex―8フィラメント、8島の潜在捲縮性複合糸を得た。本複合糸の収縮応力は0.23cN/dtexであった。
なお、この海島複合繊維は、図1に示すような島成分のポリマーAとBが貼り合わされたバイメタル型の複合断面を形成していた。このバイメタル型の島成分は3角、4角、楕円形が混在していた。
得られた海島複合繊維を編物とした布帛を90°Cに加熱した1wt%の水酸化ナトリウム水溶液にて、海成分を99wt%以上脱海した。脱海処理は良好で、部分的に劣化した島成分が存在することなく、極細単糸となった島成分同士の融着も認められなかった。この布帛を顕微鏡にて側面および断面を観察したところ、3次元的にスパイラル構造を発現した極細繊維を観察でき、優れた嵩高性を有していることが確認できた。
この実施例1で得られた海島複合繊維の特性評価結果は表1の通りであり、狙い通り、優れた高次通過性が得られ、布帛評価結果も良好であった。
実施例2
島部のバイメタル複合比をA:B=7:3とした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合糸を得た。布帛ストレッチ性、高次通過性、および布帛品位に優れたものであった。結果を表1に示した。
実施例3
島部のバイメタル複合比をA:B=3:7とした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合糸を得た。布帛ストレッチ性、高次通過性、および布帛品位ともに優れ合格レベルであった。
実施例4
海島複合比を5:95とした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合糸を得た。高次通過性、布帛ストレッチ性は合格レベルであった。結果を表1に示した。
実施例5
海島複合比を50:50とした以外は、実施例1と同様にして海島複合繊維を得た。高次通過性、布帛ストレッチ性ともに良好であった。結果を表1に示した。
実施例6
島部単糸繊度を0.01dtexとした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合糸を得た。布帛ストレッチ性、高次通過性、および布帛品位は合格レベルであった。結果を表1に示した。
実施例7
島部単糸繊度を0.4dtexとした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合糸を得た。布帛ストレッチ性、高次通過性、布帛品位ともに優れていた。結果を表1に示した。
実施例8
口金を変更し、島成分異型度差を0.2とした以外は、実施例1と同様にして海島複合繊維を得た。高次通過性、布帛ストレッチ性、および布帛品位は合格レベルであった。結果を表1に示した
実施例9
口金を変更し、島成分異型度を2.0とした以外は、実施例1と同様にして海島複合繊維を得た。高次通過性、布帛ストレッチ性、および布帛品位は合格レベルであった。結果を表1に示した。
実施例10
バイメタル用口金から偏心芯鞘用口金に変更し、偏心芯鞘の複合繊維を得た。極細繊維の捲縮率、ストレッチ率とも合格レベルであった。結果を表2に示した。なお、繊維横断面での芯成分の内接円および鞘成分の内接円において、鞘成分の内接円の半径Rと2つの内接円の中心間距離rの比率r/Rは0.6であった。
実施例11
島部の極限粘度差が0.15になるようにポリマーA.Bの極限粘度を調整し、その他は実施例1に準じて紡糸を行い、海島複合繊維を得た。粘度差が小さいがストレッチ性は合格レベルに達していた。結果を表2に示した。
実施例12
島部ポリマーとのアルカリ減量速度(N減)差が5倍のポリマーをCポリマーに適用し、実施例1に準じて紡糸を行い、海島複合繊維を得た。島成分がダメージはなく脱海も良好であった。高次通過性、布帛ストレッチ性、および布帛品位は合格レベルであった。結果を表2に示した。
実施例13
島成分2をポリブチレンテレフタレート(PBT、溶融粘度:160Pa・s)に変更した以外は全て実施例1に従い海島複合繊維を得た。各特性ともほぼ実施例1並みで全てが良好であった。結果を表2に示した。
実施例14
島成分2をイソフタル酸7.0mol%および2,2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンを4mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、その他は実施例1に準じた。
嵩高性およびストレッチ性も良好なレベルであった。結果を表2に示した。
実施例15
実施例1の島成分1を3GTからPETに、島成分2をPETから3GTにそれぞれポリマー入れ替えて、その他は実施例1に準じた。結果は表2に示すように良好であった。
実施例16
実施例1のポリマーCをPLAに、また紡糸温度を280℃に変更した以外は実施例1に準じて海島複合繊維を得た。製糸性、布帛特性ともに優れたものが得られた。
実施例17
島成分1を高分子量ナイロン6(PA1、溶融粘度:170Pa・s)とし、島成分2を低分子量ナイロン6(PA2、溶融粘度:120Pa・s)とした以外は、実施例1に従い海島複合繊維を得た。
この海島複合繊維から海成分を除去して得られた極細繊維は、粘度の異なるポリマー1とポリマー2がバイメタル構造となっていることにより、曲率半径の大きいスパイラル構造を発現していた。極細繊維がナイロン6であることにより、試験片(編物)の触感は柔軟でありながらも、適度なストレッチ性を発現するものであり、優れた触感を有していた。結果を表2に併せて示す。
実施例18
海島複合比を4:65とした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合繊維を得た。高次通過性、布帛ストレッチ性ともに合格レベルであった。結果を表3に示した。
実施例19
海島複合比を55:45とした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合繊維を得た。高次通過性、布帛ストレッチ性、および布帛品位は合格レベルであった。結果を表2に示した。
実施例20
口金を変更し、島成分異型度を2.1、2.4、2.7とした以外は、実施例1と同様にして海島複合繊維を得た。高次通過性、布帛ストレッチ性、および布帛品位は合格レベルであった。結果を表2に示した。
比較例1
島部のポリマーA.Bのバイメタル複合比を20:80に変更した以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合繊維を得た。いずれも布帛ストレッチ性に劣り、布帛にはスジ感が認められた。結果を表3に示した。
比較例2
島部のポリマーA.Bのバイメタル複合比を比較例1とは逆に80:20に変更した以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合繊維を得た。いずれも布帛ストレッチ性に劣り、布帛にはスジ感が認められた。結果を表3に示した。
比較例3
島部の極限粘度差が0.13レベルになるようにポリマーA.Bの極限粘度を調整し、その他は実施例1に準じて紡糸を行い、潜在捲縮性複合繊維を得た。粘度差が小さい影響で捲縮特性が低下し、ストレッチ性も低かった。結果を表3に示した。
比較例4
海成分のCポリマーとして、島部ポリマーとのアルカリ減量速度(N減)差が4倍のポリマーを用い、実施例1に準じて紡糸を行い、海島複合繊維を得た。N減に長時間を要し、また島成分が一部ダメージを受けていた。結果を表3に示した。
比較例5
単糸島数580となる口金を用い、島部単糸繊度を0.008dtexとした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合糸を得た。布帛ストレッチ性、高次通過性、とも不良であった。結果を表3に示した。
比較例6
単糸島数8となる口金を用い、島部単糸繊度を0.45dtexとした以外は、実施例1と同様にして潜在捲縮性複合糸を得た。布帛ストレッチ性が不足し、単糸が太いため、風合いが粗硬で、品位に劣るものであった。結果を表3に示した。
比較例7
口金を変更し、島成分異型度差を0.18とした以外は、実施例1と同様にして海島複合繊維を得た。捲縮周期差が小さいため、布帛嵩高性が不足していた。結果を表3に示した。
比較例8
口金を変更し、島成分を芯鞘型断面に変更しした以外は、実施例1と同様にして海島複合繊維を得た。脱海後に極細芯鞘糸となり、捲縮が発生せず、ストレッチ性も認められなかった。結果を表3に示した。
1 ポリマーAを主成分とするポリマーからなる領域
2 ポリマーBを主成分とするポリマーからなる領域
3 ポリマーCのアルカリ易溶出性ポリマーからなる領域
4 口金
5 糸条冷却送風装置
6 油剤付与装置
7 交絡装置
8 第1ホットロール
9 第2ホットロール
10 交絡装置
11 テンションコントロールロール(TCR)
12 テンションコントロールロール(TCR)
13 コンタクトロール
14 パッケージ

Claims (5)

  1. 繊維断面おいて高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBとがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合されて島部を形成し、ポリマーA、Bよりもアルカリ溶出速度が5倍以上速いポリマーCが海部を形成する海島型複合構造を有し、かつ下記(1)〜(4)の要件を具備することを特徴とする海島複合繊維。
    (1)高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの極限粘度差が0.15以上
    (2)高粘度ポリマーAと低粘度ポリマーBの複合比が3:7〜7:3
    (3)島部繊度が0.01〜0.4dtex
    (4)島成分が、0.2以上の異型度差を示す2種類以上の異なる断面形状を有する群からなること
  2. 海島比率が5:95〜50:50である、請求項1記載の海島複合繊維。
  3. 脱海後の捲縮率が20%以上である、請求項1または2記載の海島複合繊維。
  4. 島成分の異型度がいずれも2.0以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の海島複合繊維。
  5. 島成分における各同一断面形状の島数が同一である、請求項1〜4のいずれかに記載の海島複合繊維。
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