JP2008240169A - カチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法 - Google Patents

カチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カチオン染料で染色可能でかつ、力学特性に優れ、しかも超ソフト風合を有し、主として、婦人用インナー衣料、高密度織物(スキーウエアー等のスポーツ衣料)、ワイピングクロス(メガネ拭き)、吸水性タオル等の広い分野に供せられるポリエステル極細仮撚加工糸(単糸繊度0.8dtex以下)を工業的に安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】特定のスルホン酸4級ホスホニウム塩を0.1〜6.0モル%共重合した極限粘度0.6以上の改質ポリエステルを高速紡糸した複屈折率(Δn)が0.03〜0.08の高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメントに交絡を付与した後、延伸仮撚加工してカチオン可染極細仮撚加工糸を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、カチオン染料で染色可能なポリエステル極細繊維からなる仮撚加工糸(以下「カチオン可染ポ極細仮撚加工糸」という)の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、カチオン染料によって鮮明な色調に染色可能で、かつ、力学特性に優れ、しかも超ソフト風合を有しており、主として、婦人用インナー衣料、高密度織物(スキーウエアー)、ワイピングクロス(メガネ拭き)、吸水性タオル等の広い分野に用いられるポリエステル極細仮撚加工糸を工業的に安定して製造する方法に関するものである。
ポリエステル繊維は、強度が大きく化学的に安定で寸法安定性、プリーツ保持性、防シワ性能等に優れているという長所を有することから、これに仮撚加工を施した仮撚加工糸は、多くの衣料分野、インテリア分野に広く用いられている。しかし、周知の如く、ポリエステル繊維は染色性が低く、特に分散染料以外の染料には染色困難であるため、染色性を改良するために種々の提案がなされている。
その一つとして、従来からスルホン酸金属塩基を含有するイソフタル酸成分、例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分をポリエステルに共重合することによりカチオン可染にする方法が良く知られている(下記特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、スルホン酸金属塩基を含有するイソフタル酸成分の増粘作用のため、重合反応物の溶融粘度が著しく増大し、重合度を充分にあげることが困難になると同時に、紡糸をも困難にならしめている。従って、染色性改善可能な量のスルホン酸金属塩基を含有するイソフタル酸成分を共重合した改質ポリエステルでは、その溶融粘度を重合が容易でかつ溶融紡糸ができる範囲にまで低下させるべく、該ポリマーの重合度を低くしておく必要がある。その結果、得られる繊維の強度が低下し、このため得られるカチオン可染ポリエステル繊維の用途を著しく制限されている。
また、カチオン可染ポリエステル仮撚加工糸として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分とイソフタル酸成分とを共重合させたエチレンテレフタレート系ポリエステルを用いた仮撚加工糸が提案されているが、これも上述の問題を解消し得るものではない。
一方、カチオン染料可染化剤としてスルホン酸ホスホニウム塩基を有するイソフタル酸成分を用いる方法が知られている(下記特許文献2参照)。この方法によれば重合反応中での増粘作用が小さいので、改質ポリエステルの重合度を高くしても、溶融粘度が通常の溶融紡糸ができる範囲におさえられる。このため高強度のカチオン染料可染型ポリエステル繊維が容易に製造できる。
しかしながら、この方法においては使用するスルホン酸ホスホニウム塩基を有するイソフタル酸成分の耐熱性が、スルホン酸金属塩基を含有するイソフタル酸成分に比べて劣るために、改質ポリエステルの重合反応過程や溶融紡糸過程等の高熱条件下で自ら分解したり、ポリマーの分解を促進して生成ポリエステルや紡糸した繊維を黄褐色に着色させ、かつ該改質ポリエステルの重合度を著しく低下させるという重大な欠点があり、さらにこの着色が染色した際に色調を悪化させることになる。このため、従来この方法が工業的に採用されることは事実上皆無であった。
他方、ポリエステル繊維よりなる織編物に独特のソフトで良好な風合を与えるために単糸繊度を小さくすることも知られており、この場合2000〜4000m/分の高速紡糸を利用して製造した単糸繊度0.11〜1.1デシテックス(1.0〜0.1デニール)の極細繊維が利用されている。
しかしながら、上記の金属スルホネート基を含有せしめてカチオン可染とした改質ポリエステルを用いて、高速紡糸により単糸繊度1.0de以下の極細糸を製造しようとしても、上記改質ポリエステルは曳糸性が極めて悪く、紡糸中に単糸切れが頻発して、紡糸不能であったり、仮に紡糸できたとしても、得られた糸は力学特性が著しく低く、使用に耐えないため、実際には利用されていない。
この対策として、スルホン酸ホスホニウム塩を共重合した極限粘度が0.5以上のポリエステルを3000m/分以上で紡糸して1.0デニール以下の極細糸を得ることが提案されており(下記特許文献3参照)、その際、必要に応じて捲縮加工するが可能なことも示唆されている。しかしながら、通常の仮撚加工法を適用すると加工毛羽の発生が多く、織物品位が低下するという問題がある。
この理由は、カチオン可染ポリエステル繊維を仮撚加工する場合には、高仮撚数と、高仮撚セット温度を施さねばならず、このため、加工された糸条は“毛虫毛羽状”となり、糸条の強力低下が著しくなり、実用に耐えないものとなるのである。さらに、得られた加工糸の織編物は、ペーパーライクで糸自体に締まりがなく、弾力性がないという問題もある。
特公昭34−10497号公報 特公昭47−22334号公報 特開2001−172485号公報
本発明は、カチオン可染極細仮撚加工糸における、上述の諸問題を解消して、市場の要望に応えるためになされたものであり、その目的は、力学特性、製糸性、加工性、解舒性、染色性、染色堅牢性、風合のいずれにも優れたポリエステル極細仮撚加工糸の製造方法を提供することにある。
かくして本発明によれば、上記の目的を達成するため、以下のようなポリエステル極細仮撚加工糸の製造方法が提供される。
〔1〕カチオン可染ポリエステルマルチフィラメントを延伸仮撚加工して加工後の単糸繊度が0.8デシテックス(0.7デニール)以下のカチオン可染極細仮撚加工糸を製造するに際し、加工用原糸として、下記一般式(I)で表されるスルホン酸4級ホスホニウム塩を0.1〜6.0モル%共重合した極限粘度0.6以上の改質ポリエステルからなる、複屈折率(Δn)が0.03〜0.08の高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメントを使用し、これに交絡を付与した後、延伸仮撚加工することを特徴とするカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
Figure 2008240169
〔2〕高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメントに50ケ/m以上の交絡を付与した後、延伸仮撚加工することを特徴とする上記〔1〕のカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
〔3〕改質ポリエステルが、スルホン酸4級ホスホニウム塩に加えて、さらに、下記一般式(II)で表されるスルホン酸3級ホスホニウム塩を共重合したポリエステルであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕のカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
Figure 2008240169
〔4〕改質ポリエステルが、さらに4級オニウム塩を含むポリエステルであることを特徴とする上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕のカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
以上の如き本発明の方法によれば、従来のカチオン可染ポリエステル、例えば、ナトリウムスルホイソフタル酸成分を共重合した変性ポリエステル、では決して製造できなかったカチオン可染ポリエステル極細仮撚加工糸を生産性良く製造することが可能になる。
さらに、スルホン酸ホスホニウム塩の存在に起因して、溶融紡糸中、さらには重合反応中のポリマー着色や重合度低下が著しく抑制されるため、高白度・高重合度のカチオン可染ポリエステル極細仮撚加工糸を工業的に安定に製造することが可能になる。また、かかるポリマーの耐熱性の向上に対応して仮撚加工糸の耐光性も向上する。
最近、スポーツ衣料等においては、鮮明に染色され、耐光堅牢性に優れたポリエステル極細仮撚加工糸が要求されているが、本発明により製造される仮撚加工糸は、高白度であり、染色したとき発色性の優れた鮮やかな色彩を持ち、しかも、耐光堅牢性に優れ、高強度であるため、良好なカチオン可染ポリエステル布帛を提供することができ、有用性を一段と高めた商品を開発することができるようになる。さらに、該仮撚加工糸は、極細繊維からなることで、ソフトで良好な風合を備えている。このため、特に、婦人用インナー衣料、高密度織物(スキーウエアー等のスポーツ衣料)、ワイピングクロス(メガネ拭き)、吸水性タオル等の素材として、広い分野において有効に使用される。
本発明の方法では、仮撚捲縮加工後の単糸繊度が0.8dtex(デシテックス)以下のカチオン可染ポリエステルマルチフィラメントを、延伸仮撚加工するに際して、加工用原糸として、下記の改質ポリエステルからなる複屈折率(Δn)が0.03〜0.08の高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメントを用い、これに予め交絡を付与した後、延伸仮撚加工を行う。
本発明でいうポリエステルとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、少なくとも1種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル、すなわちアルキレンテレフタレート系ポリエステル、を主たる対象とする。
このポリエステルは、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えたポリエステル及び/又はグリコール成分の一部を主成分以外の上記グリコールもしくは他のジオール成分で置換えたポリエステルであってもよい。
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物及びポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲で、少量のトリメリット酸、ピロメリット酸の如きポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如きポリオールを使用することもできる。
かかるポリエステルは任意の方法によって合成される。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造される。
本発明の方法においては、上記ポリエステルにスルホン酸4級ホスホニウム塩を0.1〜6.0モル%共重合した極限粘度0.6以上の改質ポリエステルを使用する。ここで共重合成分となるスルホン酸4級ホスホニウム塩は、下記一般式(I)で表わされる化合物である。
Figure 2008240169
上記一般式(I)中、Aは芳香族基又は脂肪族基を示し、なかでもベンゼン環等の芳香族基が好ましい。Xはエステル形成性官能基を示し、具体例としてカルボキシル基又はその誘導体等をあげることができる。XはXと同一もしくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子を示し、なかでもエステル形成性官能基であることが好ましい。そして、R、R、R及びRは、それぞれアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一もしくは異なる基を示す。また、nは正の整数である。
かかるスルホン酸4級ホスホニウム塩は、一般に、対応するスルホン酸とホスフィン類との反応又は対応するスルホン酸金属塩とホスホニウムハライド類との反応により容易に合成できる。
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の好ましい具体例としては、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、4−ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、α−テトラブチルホスホニウムスルホコハク酸等をあげることができる。上記スルホン酸4級ホスホニウム塩は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩をポリエステルに共重合するには、既に述べたポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で、好ましくは第1段の反応が終了する以前の任意の段階で添加すればよい。
スルホン酸4級ホスホニウム塩をポリエステルに共重合させる割合は、ポリエステルを構成する二官能性カルボン酸成分(スルホン酸塩を除く)に対して0.1〜10モル%の範囲が適当であり、特に0.5〜10モル%の範囲が好ましい。共重合割合が0.1モル%より少ないと、得られる共重合ポリエステルのカチオン染料に対する染色性が不充分になる傾向があり、10モル%より多くなるとカチオン染料による染色性はもはや著しい向上を示さず、かえってポリエステル繊維の物性が低下するため、本発明の目的を達成し難くなる。
本発明では、上記改質ポリエステルを製造する際に、上記一般式(I)で表わされるスルホン酸4級ホスホニウム塩と共に少量の下記一般式(II)で表わされるスルホン酸3級ホスホニウム塩を併用すると、その重合過程における分解反応が抑制され、得られる改質ポリエステル及びそれよりなる成形物の色調が極めて良好になるので、好ましい。
Figure 2008240169
上記一般式(II)式中、Bは上記一般式(I)におけるAと同様に芳香族基又は脂肪族基を示し、なかでも芳香族基が好ましい。Xは上記一般式(I)におけるXと同様に、エステル形成性官能基を示し、その具体例としてカルボキシル基又はその誘導体等をあげることができる。Xは上記一般式(I)におけるXと同様に、Xと同一もしくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子を示し、なかでもエステル形成性官能基であることが好ましい。また、R、R及びRは、上記一般式(I)におけるR、R及びRと同様に、それぞれアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基を示す。そして、nは正の整数である。
かかるスルホン酸3級ホスホニウム塩は、例えば対応するスルホン酸金属塩と3級ホスホニウムハライド類との反応により容易に合成できる。
上記スルホン酸3級ホスホニウム塩の好ましい具体例としては、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリエチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリプロピルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリフェニルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリベンジルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリヘキシルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリオクチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリシクロヘキシルホスホニウム塩等をあげることができる。
かかるスルホン酸3級ホスホニウム塩の使用量は、あまりに少ないと改質ポリエステルが黄褐色に着色することを防止する効果が不十分になり、あまりに多くても、着色防止効果が飽和し、かえって物性特に耐熱性を悪化させることがあるので、上記スルホン酸4級ホスホニウム塩に対して0.5〜10モル%の範囲が適当であり、特に1〜4モル%の範囲が好ましい。
このスルホン酸3級ホスホニウム塩の添加時期はスルホン酸4級ホスホニウム塩と同様に、ポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で添加すればよく、スルホン酸4級ホスホニウム塩と同時に添加しても、別々に添加してもよい。また、上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の製造段階において、スルホン酸3級ホスホニウム塩が副生して、生成スルホン酸4級ホスホニウム塩の中に一部残存することがある。この場合精製条件を制御して残存するスルホン酸3級ホスホニウム塩の量を上記範囲にすれば、あらためて添加しなくてもよい。
本発明では、改質ポリエステルを製造するに当って、さらに4級オニウム塩を添加するのが好ましい。かかる4級オニウム塩としては4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等があり、具体的には4級アンモニウム塩としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトライソプロピルアンモニウム、塩化テトライソプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラフェニルアンモニウム、塩化テトラフェニルアンモニウム等が例示される。また、4級ホスホニウム塩としては、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等が例示される。
上記4級オニウム塩の使用する場合、その量があまりに少ないと耐熱性を改善する効果が不十分になり、逆にあまりに多くなると、かえって耐熱性が悪化するようになり、その上、生成ポリエステルや成形物が黄褐色に着色する傾向が顕著になる。このため4級オニウム塩の使用量は、上記スルホン酸ホスホニウム塩の合計量に対して0.1〜20モル%の範囲が好ましく、なかでも1〜10モル%の範囲が特に好ましい。
かかる4級オニウム塩の添加時期は上記ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階でよく、例えばポリエステルの原料中に添加しても、第1段階の反応中に添加しても、第1段階の反応終了後から第2段階の反応開始までの間に添加しても、第2段階の反応中に添加してもよい。
4級オニウム塩と上記スルホン酸ホスホニウム塩との添加順序は任意でよく、両者を予め混合した後に添加することもできる。また、スルホン酸ホスホニウム塩の製造に際して、4級ホスホニウムハライド等の4級ホスホニウム塩とスルホン酸金属塩との反応による合成方法を採用することがあり、その場合、原料の4級ホスホニウム塩が反応生成物であるスルホン酸ホスホニウム塩の中に残存することがある。かかる場合には特別に4級オニウム塩を添加することを要さず、この残存4級ホスホニウム塩を4級オニウム塩として利用することもできる。
こうすることにより繊維の高強力に必要である極限粘度が0.60以上、さらに好ましくは0.63〜0.85で、黄色の少ない白度に優れた4級オニウム塩改質ポリエステルが得られる。
本発明ではこうして得られた改質ポリエステルを溶融紡糸する。この溶融紡糸には通常の紡糸方法が採用される。一般に溶融紡糸は、ポリマーをその融点より30〜50℃高い温度で溶融し、紡糸口金より吐出する。上記改質ポリエステルにこの紡糸方法を適用すると、紡糸時に分解して着色したり、重合度が低下したりすることがあるが、このようなときには、280℃を超えない温度で紡糸するのが好ましい。
上述したように、4級オニウム塩を添加することによって、さらに好ましくは4級オニウム塩を添加したうえで上記の低温溶融紡糸法を採用することによって、改質ポリエステルの重合度の低下や黄変を大幅に減少させることができるため、その極限粘度が0.6以上、特に好ましくは0.63〜0.85のカチオン可染改質ポリステル繊維の提供が可能となる。またこの繊維はシルクファクターが25以上、好ましくは28〜35の高強度を示すものとなり、かつ、高白度を呈し、染色した際に優れた鮮明性を示す。
最近、スポーツ衣料においては、鮮明に染色され、耐光堅牢性に優れたポリエステル繊維が要求され、さらに布帛における高引裂強力が要求されている。布帛の引裂強力は、その布帛の織編組織に依存する部分があるものの、大きくは極限粘度、さらにはシルクファクターに依存する。スポーツ衣料においては、その用途からもわかるように高シルクファクターが要求され、シルクファクターとして25以上、好ましくは28以上が必要であるが、本発明によってはじめて高シルクファクターでかつ耐熱性に優れたカチオン可染のポリエステル極細繊維が得られるようになった。
本発明で使用するスルホン酸ホスホニウム塩を共重合した改質ポリエステルは、従来のスルホン酸金属塩共重合の改質ポリエステルに対比して次のような利点を有する。
(1)スルホン酸金属塩の金属イオンに比べて、スルホン酸ホスホニウム塩のホスホニウム塩の方がバルキーであるためか、カチオン染料の拡散速度が大きく、そのためスルホン酸ホスホニウム塩の場合には、より少量の使用でスルホン酸金属塩と同程度のカチオン染料による染色性が得られ、かつ染色物の鮮明性に優れる。
(2)スルホン酸金属塩に固有の増粘作用が起らないため、高重合度ポリマーの溶融紡糸を通常の紡糸方法によって容易に行なうことができ、高強度のカチオン染料可染型ポリエステル繊維が容易に得られる。
(3)本発明によれば金属塩の代りにホスホニウム塩を使用するので、重縮合反応中に副生する異物量が少なく、成形時、特に紡糸時のパック圧上昇や得られる糸品位の低下が小さいという効果が得られる。
(4)上記(2)、(3)に関連して、本発明の方法で使用する改質ポリエステルは曳糸性に極めて優れており、引取り速度が3000m/分以上、特に5000m/分以上の超高速紡糸において1.1dtex(1.0de)以下、さらには0.5de以下の極細繊維の紡糸が可能である。
(5)さらに、本発明の改質ポリエステルからなる繊維は、耐熱性に優れているので、高温における仮撚加工においても、強度低下や融着の問題を生ずることなく、優れた加工糸を与えることができる。
(6)スルホン酸金属塩を共重合した改質ポリエステル繊維が極めて静電気を発生し易いのとは逆に、本発明の改質ポリエステル繊維は優れた制電性を呈する。
(7)さらに、本発明の改質ポリエステル繊維はホスホニウム塩を含有するために難燃性と抗菌性に優れる。
なお、本発明で使用する上記改質ポリエステルには、必要に応じて、任意の添加剤、例えば触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、酸化防止剤、艶消剤、着色剤、無機微粒子等が含まれていてもよい。
本発明方法にあっては、上記改質ポリエステルを、3000m/分以上、好ましくは3000〜5000m/分の引取り速度で溶融紡糸(高速紡糸)して、未延伸単糸の平均繊度が1.1dtex(1.0de)以下、好ましくは0.4〜0.8dtex(0.4〜0.7de)のマルチフィラメント糸にする。この際、上記改質ポリエステルを高速紡糸して得られる高配向カチオン可染ポリエステル未延伸は、その複屈折率(Δn)が、0.03〜0.08の範囲内になければならない。複屈折率(Δn)が0.03未満では、後述する延伸仮撚加工において糸条が脆化して糸切れが多発し、延伸仮撚加工が困難となり、一方、複屈折率(Δn)が0.08を超えると、毛羽が多発するので好ましくない。
本発明によれば、このようにして得られた極細繊維からなるマルチフィラメントからなる未延伸原糸を、次に、延伸仮撚加工する。ここで重要なことは、上記のカチオン可染ポリエステル未延伸原糸に、予め交絡処理を施した後、延伸仮撚加工することである。このように、延伸仮撚加工前に予め原糸に単糸同士の交絡を付与しておくことによって、交絡部での仮撚加工時の層転移が阻止され、捲縮クリンプの付与が妨げられる。一方、交絡が付与されていない部分では、単糸の層転移が起こり、捲縮クリンプが付与される。このように交絡が付与された状態で、熱セットされるため、マルチフィラメントの長さ方向に一般には50ケ/m以上、特に60〜85ケ/mの交絡を付与することで、毛虫毛羽の発生のないカチオン可染極細繊維の仮撚加工糸が得られる。さらに、マルチフィラメントの長さ方向に捲縮クリンプ形態が変化したふくらみの豊かな、嵩高で、弾力性があり、ふくよかな感覚の望ましい形態の仮撚加工糸が得られる。なお、ポリエステルフィラメント原糸への交絡の付与には、通常の流体噴射交絡付与装置が用いられる。
図1は、仮撚加工の具体例を示す仮撚加工機の簡略化した側面図である。図中の1はカチオン可染ポリエステルフィラメントからなる未延伸原糸(POY)のパッケージ、2は仮撚加工機のフィードローラ、3は交絡用空気噴射ノズル(インターレースノズル)、4は第1デリベリローラ、5は第1ヒータ、6は冷却プレート、7は仮撚付与装置、8は第2デリベリローラ、9は第3デリベリローラ、10は給油装置であり、11は仮撚加工糸を巻き取ったパッケージである。図1において、パッケージ1から引き出された未延伸原糸は、フィードローラ2と第1デリベリローラ4と間で交絡用空気噴射ノズル(インターレースノズル)3によって所定の交絡が付与される。交絡付与時には糸条に0.5〜2%の弛緩を与えるのが好ましい。引き続き、第1デリベリローラ4と第2デリベリローラ8との間で、仮撚付与装置7によって仮撚りが加えられつつ所定倍率に延伸され、その撚りは仮撚付与装置7の上流側に設けた設定温度165〜200℃の第1ヒータ5で熱セットされる。その後、冷却プレート6で冷却された加工糸は、第2デリベリローラ8で引き取られ、さらに第3デリベリローラ9を経て給油装置10で油剤が付与され、仮撚加工糸パッケージ11として巻き取られる。
この際、フィードローラ2と第1デリベリローラとの周速比は、上記弛緩率が実現するよう、1:1〜1:0.95とするのが好適であり、第1デリベリローラ4と第2デリベリローラ8の周速比は、原糸の複屈折率(Δn)に応じて加工後の糸の強伸度が所望の範囲となる延伸倍率、例えば1.2〜1.8倍の延伸倍率、となるように設定される。なお必要に応じ第2デリベリローラ8と第3デリベリローラ9との間に第2ヒータ(図示せず)を設置して仮撚加工後にさらに熱セットを行うようにしてもよい。
かくして得られる加工後の極細糸の強度は3.5g/dtex以上、さらには4.0〜5.5g/dtexとなる。
これに対し、従来のナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したカチオン染料可染ポリエステルでは製糸特性が著しく劣るため、上記のような極細繊維は製糸不可能であった。また、従来のカチオン染料可染ポリエステル繊維の強度は、高々2.5〜3.5g/dtex程度であって、その繊度や用途は著しく制限されており、上述のような延伸仮撚加工を施すことは不可能であった。
本発明において、延伸仮撚加工前に付与する交絡は、従来の仮撚加工後の糸条に集束性を与えることを目的として付与する交絡とはまったく別異のものである。すなわち、仮撚加工後に交絡処理した加工糸は、本発明方法で得られた仮撚加工糸と類似の外観を呈するが、その交絡は、わずかなシゴキによって簡単に消滅してしまい、さらに、交絡部、非交絡部が共に同程度に仮撚付与されるので、弛緩熱処理によって加工糸の長さ方向に均一な捲縮クリンプ形態が発現してしまう。このことは、特にカチオン可染極細糸を仮撚加工後の交絡処理時に損傷を与え、毛羽足の長い“毛虫状毛羽”(毛羽の長さ3〜10mm)が発生し、品位低下を招くと共に、後加工での解舒性(市場での製織性)に問題を生じる。また、延伸仮撚加工前に交絡を付与しなかった場合や、交絡を付与しても交絡度が50ケ/mに満たない場合も同様に、“毛虫状毛羽”が発生する傾向があり、好ましくない。
かくして本発明方法によって、嵩高で、弾力性のあるふくらみ感のある優れたカチオン可染極細仮撚加工糸が初めて製造可能となったのである。従来の技術では、カチオン可染糸の場合、仮撚加工糸を製造するには、仮撚加工前の糸条に、予めイタリー撚糸機、ダブルツイスター等で300T/m前後の先撚を付与していた。この方法では、パッケージに巻かれた仮撚加工前の糸条を、一旦小さなパッケージに巻返した後で撚糸機にかけるため、操作がすこぶる繁雑となり、しかも、撚糸速度は20m/分程度と遅いため、生産効率も劣るという問題がある。しかるに、本発明方法によれば、上述した繁雑で生産効率の劣る撚糸工程を省略し、簡単で効率のよいカチオン可染仮撚加工糸の製造方法が提供される。
しかも、本発明方法によれば、従来のカチオン可染ポリエステル、例えば、ナトリウムスルホイソフタル酸成分を共重合した変性ポリエステルでは、決して製造できなかった極細繊維の仮撚加工糸を、生産性良く製造することが可能になる。
さらに、本発明方法では、改質ポリエステル中のスルホン酸ホスホニウム塩の存在に起因して溶融紡糸中さらには重合反応中のポリマー着色や重合度低下が著しく抑制されるため、高白度・高重合度のカチオン可染ポリエステル仮撚加工糸を工業的に得ることが可能になる。また、ポリマーの耐熱性の向上に対応して耐光性も向上している。
最近、スポーツ衣料においては、鮮明に染色され、耐光堅牢性に優れたポリエステル繊維が要求されているが、改質ポリエステルが有する上記の(1)〜(7)の利点に起因して、高白度であり、染色したとき発色性の優れた鮮やかな色彩を持ち、かつ高強度のカチオン可染ポリエステル布帛を提供することができ、その有用性を一段と高めた商品を開発することができるようになる。
かくして、本発明方法によれば、カチオン可染でかつ良好な力学特性、特に高い強度や引裂強度を有する極細仮撚加工糸を容易に製造することが可能となる。そして、得られるカチオン可染極細仮撚加工糸は、超ソフトで、特に防水透湿機能を有する高密度織編物の分野、特にスポーツ衣料分野に最も適した繊維となる。
従来この分野においては、分散染料でのみ染色可能なポリエステル極細仮撚加工糸が用いられているが、この加工糸は、染色の堅牢性が不十分で、色移行の問題が生じていた。また、従来のカチオン可染ポリエステル糸を用いるには、高速曳糸性の欠如に基づく極細化に限界があるばかりでなく、糸強度が低いため、布帛の引裂強力が弱くなる等の問題があり、実用に供し得なかった。これに対し、本発明の方法により製造されるカチオン可染極細仮撚加工糸は、上記の諸問題を一挙に解消し、かかる分野において、初めてポリエステル糸の使用を可能ならしめたものであり、その実用的価値は大である。
以下に実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、各例中の部及び%は、特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。また、各例における測定値は、以下の方法により測定されたものである。
<極限粘度及び軟化点>
ポリマーの極限粘度[η]及び繊維の極限粘度[ηf]は、25℃のオルソクロロフェノール溶液で測定した値から求め、ポリマーの軟化点(SP)はペネトレーション法で測定した。
<色相>
ポリマーの色相はハンター型色差計によるL値とb値で示した。L値は値が大きくなるほど白度の良好なことを示し、b値は+側に大なるほど黄味の強いことを示す。
<カルボキシル基末端数>
ポリマーのカルボキシル基末端数は、試料をベンジルアルコールに加熱溶解し、水酸化ナトリウム溶液で滴定して求めた。カルボキシル基末端数が大きいほど熱分解がより多く起っていることを示す。
<DEG含有量>
ポリマー中のジエチレングリコール含有量(DEG含有量)は、ポリエステル試料を抱水ヒドラジンで熱分解し、上澄み液をガスクロマトグラフィーにかけて定量した(内部標準として1、4−ブタンジオールを使用)。
<耐熱性>
ポリマーの耐熱性は、共重合ポリマーの重合反応終了後、重合缶からのポリマー押出窒素ガス圧を調整し、ポリマー取出しに要する時間を60分以上とし、ポリマー取出し開始10分後と60分後のポリマーの極限粘度[η]の差をもって評価した。
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸マンガン4水塩0.03部(テレフタル酸ジメチルに対して0.024モル%)、整色剤として酢酸コバルト4水塩0.009部(テレフタル酸ジメチルに対して0.007モル%)、テレフタル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.050モル%の量のテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドをエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下3時間かけて140℃から220℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。続いて得られた生成物に、安定剤として正リン酸の56%水溶液0.03部(テレフタル酸ジメチルに対して0.003モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールの昇温追出しを開始した。10分後重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加した。内温が240℃に達した時点でエチレングリコールの追出しを終了し、反応生成物を重合缶に移した。
次いで、昇温しながら内温が260℃に到達するまで常圧反応させた後、1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて内温を280℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度280℃でさらに2時間重合した時点で窒素ガスにより真空を破って重合反応を終了し、窒素ガス加圧下に280℃でポリマーの吐出を行なった。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.5℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.68、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.672、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.648であった。
このポリマーを常法に従ってチップ化して乾燥し、孔径0.15φの円形吐出孔を72個穿設した紡糸口金を使用して、最高310℃で溶融し、引取速度毎分3200m/分で高速紡糸して、55dtex/72fil(単糸繊度:0.76dtex)で複屈折率(Δn)が0.045の極細繊維を得た。得られた紡出糸の極限粘度[ηf]は0.625であった。
この得られた糸を図1に示す工程で、交絡処理及び延伸仮撚加工を行なった。この工程では、交絡用空気噴射ノズル(インターレースノズル)により、オーバーフィード率1.5%、圧空圧3kg/cmで60ケ/mの交絡を付与し、引続いて延伸倍率1.50、ヒータ温度190℃、仮撚付与装置として外接式摩擦仮撚装置を用い、600m/分で延伸仮撚加工した。
このようにして得られた仮撚加工糸の物性は、単糸繊度0.5dtex、強度4.1g/dtex、シルクファクター25.0、L値84.7、b値6.8であった。また紡糸調子は良好で、加工糸の毛羽がなく、かつ強度も充分であった。
この加工糸よりなる布帛をカチオン染料:Cathilon CD-FRLH/Cathilon Blur CD-FBLH=1/1(保土谷化学(株)製)を2%owf含む染浴(助剤として芒硝3g/l、酢酸0.3g/lを含む)中にて120℃で60分間染色した。染色布は鮮明な濃青色を呈した。
[実施例2]
実施例1で使用した3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム塩及びテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.050モル%の量のテトラフェニルホスホニウムハイドロオキサイドを使用し、これらの添加時期をエステル交換反応終了後正リン酸添加前にする以外は実施例1と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は250.4℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.65、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.674、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.653であり、紡出糸の極限粘度([ηf])は0.630、複屈折率(Δn)は0.047であった。また、仮撚加工糸の単糸繊度は0.48dtex、強度は4.0g/dtex、シルクファクターは25.7、L値は84.9、b値は7、6であった。
[実施例3]
実施例2で使用した3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩及びテトラフェニルホスホニウムハイドロオキサイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.003モル%の量の水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムを使用する以外は実施例2と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.3℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.63、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.673、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.651であり、紡出糸の極限粘度([ηf])は0.623、複屈折率(Δn)は0.046であった。また、仮撚加工糸の単糸繊度は0.52dtex、強度は4.1g/dtex、シルクファクターは26.3、L値は85.3、b値は7.5であった。
[実施例4]
実施例3で使用した水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して0.050モル%の量の塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムを使用する以外は実施例3と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は254.0℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.70、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.675、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.646であり、紡出糸の極限粘度([ηf])は0.615、複屈折率(Δn)は0.047であった。また、仮撚加工糸の単糸繊度は0.50dtex、強度は4.3g/dtex、シルクファクターは24.3、L値は85.4、b値は7.3であった。
[実施例5]
実施例3で使用した水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムの使用量をテレフタル酸ジメチルに対して0.100モル%にする以外は実施例3と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は252.5℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.85、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.648、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.617であり、紡出糸の極限粘度([ηf])は0.600、複屈折率(Δn)は0.043であった。また、仮撚加工糸の単糸繊度は0.45dtex、強度は4.1g/dtex、シルクファクターは25.0、L値は86.3、b値は7.5であった。
[実施例6]
実施例2で使用したテトラフェニルホスホニウムハイドロオキサイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して0.050モル%の量の水酸化テトラフェニルアンモニウムを使用する以外は実施例2と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.2℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.85、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.673、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.652であり、紡出糸の極限粘度([ηf])は0.600、複屈折率(Δn)は0.046であった。また、仮撚加工糸の単糸繊度は0.55dtex、強度は4.1g/dtex、シルクファクターは26.2、L値は84.8、b値は7.3であった。
[実施例7]
実施例1で使用したテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して0.050モル%の量の塩化テトラブチルアンモニウムを使用する以外は実施例1と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は252.7℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.84、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.683、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.656であり、紡出糸の極限粘度([ηf])は0.620、複屈折率(Δn)は0.048であった。また、仮撚加工糸の単糸繊度は0.48dtex、強度は4.0g/dtex、シルクファクターは26.5、L値は84.9、b値は7.2であった。
[実施例8]
実施例2で使用した3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩に代えて、テレフタル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.017モル%の量の3,5−ジカルボキシベンセンスルホン酸トリ−n−ブチルホスホニウム塩の混合物を使用し、さらにテトラフェニルホスホニウムハイドロオキサイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して0.2モル%の量のテトラ−n−ブチルホスホニウムクロライドを使用する以外は実施例2と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.9℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.54、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.678、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.656であり、紡出糸の極限粘度([ηf])は0.626、複屈折率(Δn)は0.047であった。また、仮撚加工糸の単糸繊度は0.52dtex、強度は4.1g/dtex、シルクファクターは25.1、L値は84.6、b値は6.2であった。
[実施例9]
実施例2で使用した3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩及びテトラフェニルホスホニウムハイドロオキサイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.02モル%の量のテトラ−n−ブチルホスホニウムクロライドを使用する以外は実施例2と同様に重合し、ポリマー吐出を行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.6℃、ジエチレングリコール含有量(DEG含量)は1.65、吐出10分後の極限粘度([η]10)は0.660、吐出60分後の極限粘度([η]60)は0.638であった。
得られた紡出糸の極限粘度([ηf])は0.630、複屈折率(Δn)は0.046であった。次いで、仮撚延伸倍率1.5で仮撚加工を実施した。得られた仮撚加工糸の単糸繊度は0.44dtex、強度は3.9g/dtex、シルクファクターは26.5、L値は91.0、b値は5.8であった。
本発明方法を実施する仮撚加工装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 カチオン可染ポリエステル極細フィラメントからなる原糸
2 フィードローラ
3 交絡用空気噴射ノズル(インターレースノズル)
4 第1デリベリローラ
5 第1ヒータ
6 冷却プレート
7 仮撚付与装置
8 第2デリベリローラ
9 第3デリベリローラ
10 給油装置
11 仮撚加工糸パッケージ

Claims (4)

  1. カチオン可染ポリエステルマルチフィラメントを延伸仮撚加工して加工後の単糸繊度が0.8デシテックス(dtex)以下のカチオン可染極細繊維からなる仮撚加工糸を製造するに際し、加工用原糸として、下記一般式(I)で表されるスルホン酸4級ホスホニウム塩を0.1〜6.0モル%共重合した極限粘度0.6以上の改質ポリエステルからなる、複屈折率(Δn)が0.03〜0.08の高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメントを用い、これに交絡を付与した後、延伸仮撚加工することを特徴とするカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
    Figure 2008240169
  2. 高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメントに50ケ/m以上の交絡を付与した後、延伸仮撚加工することを特徴とする請求項1記載のカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
  3. 改質ポリエステルが、スルホン酸4級ホスホニウム塩に加えて、さらに、下記一般式(II)で表されるスルホン酸3級ホスホニウム塩を共重合したポリエステルであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
    Figure 2008240169
  4. 改質ポリエステルが、スルホン酸ホスホニウム塩のほかに、さらに4級オニウム塩を含む共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
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