JP2915045B2 - カチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法 - Google Patents

カチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、カチオン染料可染性(以下、カチオン可
染)極細加工糸の製造方法に関する。更に詳しくは、カ
チオン染料で染色可能でかつ、力学特性に優れ、しかも
超ソフト風合を有し、主として、婦人用インナー衣料,
高密度織物(スキーウエアー),ワイピングクロス(メ
ガネ拭き),吸水性タオル等の広い分野に供せられる極
細仮撚加工糸の製造法に関するものである。
<従来技術> ポリエステル繊維は、強度が大きく化学的に安定で寸
法安定性,プリーツ保持性,防しわ性能等に優れている
という長所を有することから、これに仮撚加工を施した
仮撚加工糸は、多くの衣料分野,インテリヤ分野に広く
用いられている。しかし、周知の如く、ポリエステル繊
維は染色性が低く、特に分散染料以外の染料には染色困
難である。この染色性を改良するために種々の提案がな
されている。その一つとして従来からスルホン酸金属塩
基を含有するイソフタル酸成分、例えば5−ナトリウム
スルホイソフタル酸成分をポリエステルに共重合するこ
とによりカチオン染料で染色可能にする方法が知られて
いる(特公昭34-10497号公報)。
しかしながら、この方法では、スルホン酸金属塩基を
含有するイソフタル酸成分の増粘作用のため、重合反応
物の溶融粘度が著しく増大し、重合度を充分にあげるこ
とが困難になると同時に、紡糸をも困難にならしめてい
た、従って、かかる量のスルホン酸金属塩基を含有する
イソフタル酸成分を共重合した改質ポリエステルの溶融
粘度を、重合が容易でかつ溶融紡糸ができる範囲にまで
低下させるために、改質ポリエステルの重合度を低くし
ておく必要がある。その結果、得られる糸の強度が低下
し、これが得られるカチオン染料可染型ポリエステル繊
維の用途を著しく制限している。
一方、カチオン染料可染化剤としてスルホン酸ホスホ
ニウム塩基を有するイソフタル酸成分を用いる方法が知
られている(特公昭47-22334号公報、米国特許第373218
3号明細書)。この方法によれば重合反応中での増粘作
用が小さいので、改質ポリエステルの重合度を高くして
も、溶融粘度が通常の溶融紡糸ができる範囲におさえら
れる。このため高強度のカチオン染料可染型ポリエステ
ル繊維が容易に得られる。
しかしながら、この方法においては使用するスルホン
酸ホスホニウム塩基を有するイソフタル酸成分の耐熱性
が、スルホン酸金属塩基を含有するイソフタル酸成分に
比べて劣るために、改質ポリエステルの重合反応過程や
溶融紡糸過程等の高熱条件下で自ら分解したり、ポリマ
ーの分解を促進して生成ポリエステルや成形品を黄褐色
に着色させ、かつ改質ポリエステルの重合度を著しく低
下させるという重大な欠点があり、更にこの着色が染色
した際に色調を悪化させることになる。このため、この
方法が工業的に採用されることは従来皆無であった。
また、“カチオン染料可染ポリエステル繊維”として
は、例えば特公昭55-26205号公報や、特開昭56-26034号
公報には、5−Naスルホイソフタル酸成分と、イソフタ
ル酸成分とを共重合させたエチレンテレフタレート系ポ
リエステルを用いたカチオン可染型の仮撚加工糸が提案
されている。
他方、ポリエステル繊維よりなる織編物に独特のソフ
トで良好な風合を与えるために単糸繊度を小さくするこ
とも知られており、この場合2000〜4000m/分の高速紡糸
を利用して製造した単糸繊度1.0〜0.1deの極細糸が利用
されている。
しかしながら、上記の金属スルホネート基を含有せし
めて、カチオン染料で染色可能にした、変性ポリエステ
ルを用いて、高速紡糸により単糸繊度1.0de以下の極細
糸を製造しようとしても、上記変性ポリエステルは曳糸
性が極めて悪く、紡糸中に単糸切れが頻発して、紡糸不
能であったり、仮に紡糸できたとしても、得られた糸は
力学特性が著しく低く、使用に耐えないため、実際には
利用されていない。
この対策として、特開昭63-211322号公報には、スル
ホン酸ホスホニウム塩を共重合した極限粘度が0.5以上
のポリエステルを3000m/分以上で紡糸して1.0de以下の
極細糸を得ることが提案されており、その際、必要に応
じて捲縮加工してよい旨記載されている。しかしなが
ら、通常の仮撚加工法においては、加工毛羽の発生が多
く、織物品位が低下するという問題がある。
この理由は、カチオン染料可染ポリエステル繊維を仮
撚加工する場合に、高仮撚数と、高仮撚セット温度を施
さねばならず、このため、加工された糸条は“毛虫毛羽
状”となり、糸条は強力低下が著しくなり、実用に耐え
ないものとなるのである。
更に、得られた加工糸の織編物は、ペーパーライタで
糸自体に締まりがなく弾力性がない。
<発明の目的> 本発明の目的は、カチオン可染極細仮撚加工糸におけ
る、上述の問題を解消して、市場の要望にこたえてなさ
れたものであり、力学特性,製糸性,加工性,解舒性,
染色性,染色堅牢性,風合に優れたポリエステル極細仮
撚加工糸の製造法を提供することにある。
<発明の構成> 本発明によれば、仮撚捲縮加工後の単糸繊度が0.7デ
ニール以下のカチオン可染ポリエステルマルチフィラメ
ントを、延伸仮撚加工するに際して、加工用原糸とし
て、下記の改質ポリエステルからなる複屈折率(Δn)
が0.03以上0.08以下の、高配向ポリエステル未延伸マル
チフィラメントを用いて交絡を付与した後、延伸仮撚加
工することを特徴とする、カチオン可染極細加工糸の製
造方法が提供される。
本発明でいうポリエステルは、テレフタル酸を主たる
酸成分とし、少なくとも1種のグリコール、好ましくは
エチレングリコール,トリメチレングリコール,テトラ
メチレングリコールから選ばれた少なくとも1種のアル
キレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエ
ステルを主たる対象とする。
また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボ
ン酸成分で置換えたポリエステルであってもよく、及び
/又はグリコール成分の一部を主成分以外の上記グリコ
ールもしくは他のジオール成分で置換えたポリエステル
であってもよい。
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボ
ン酸としては、例えばイソフタル酸,ナフタリンジカル
ボン酸,ジフェニルジカルボン酸,ジフェノキシエタン
ジカルボン酸,β−ヒドロキシエトキシ安息香酸,p−オ
キシ安息香酸,アジピン酸,セバシン酸,1,4−シクロヘ
キサンジカルボン酸の如き芳香族,脂肪族,脂環族の二
官能性カルボン酸をあげることができる。更に本発明の
効果が実質的に奏せられる範囲で5−ナトリウムスルホ
イソフタル酸等のスルホン酸金属塩基を有するイソフタ
ル酸を共重合成分として用いてもよい。
また、上記グリコール以外のジオール化合物として
は、例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール,ネオ
ペンチルグリコール,ビスフェノールA,ビスフェノール
Sの如き脂肪族,脂環族,芳香族のジオール化合物及び
ポリオキシアルキレングリコール等をあげることができ
る。
更に、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリ
メリット酸,ピロメリット酸の如きポリカルボン酸,グ
リセリン,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリト
ールの如きポリオールを使用することができる。
かかるポリエステルは任意の方法によって合成され
る。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明す
れば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直
接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如
きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリ
コールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸
とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル
酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成
させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧
下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第
2段階の反応によって製造される。
本発明の方法において共重合成分として使用するスル
ホン酸ホスホニウム塩は下記一般式(I) で表わされる。式中、Aは芳香族基又は脂肪族基を示
し、なかでも芳香族基が好ましい。X1はエステル形成
性官能基を示し、具体例として 等をあげることができる。X2はX1と同一もしくは異な
るエステル形成性官能基又は水素原子を示し、なかでも
エステル形成性官能基であることが好ましい。R1,R2,R
3及びR4はアルキル基及びアリール基よりなる群から選
ばれた同一又は異なる基を示す。nは正の整数である。
かかるスルホン酸ホスホニウム塩は、一般に対応する
スルホン酸とホスフィン類との反応又は対応するスルホ
ン酸金属塩とホスホニウムハライド類との反応により容
易に合成できる。
上記スルホン酸ホスホニウム塩の好ましい具体例とし
ては、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブ
チルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスルホ
ン酸エチルトリブチルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキ
シベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム
塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリ
ブチルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスル
ホン酸テトラフェニルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキ
シベンゼンスルホン酸エチルトリフェニルホスホニウム
塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフ
ェニルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスル
ホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩,3,5−ジカ
ルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニ
ウム塩,3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸エチ
ルトリブチルホスホニウム塩,3,5−ジカルボメトキシベ
ンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩,3
−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホス
ホニウム塩,3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テト
ラフェニルホスホニウム塩,3,5−ジ(β−ヒドロキシエ
トキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホ
スホニウム塩,3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボ
ニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム
塩,3−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼン
スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩,3−(β−ヒド
ロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラ
フェニルホスホニウム塩,4−ヒドロキシエトキシベンゼ
ンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩,2,6−ジカル
ボキシナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホ
ニウム塩,α−テトラブチルホスホニウムスルホコハク
酸等をあげることができる。上記スルホン酸ホスホニウ
ム塩は1種のみを単独で用いても2種以上併用してもよ
い。
上記スルホン酸ホスホニウム塩をポリエステルに共重
合するには、前述したポリエステルの合成が完了する以
前の任意の段階で、好ましくは第1段の反応が終了する
以前の任意の段階で添加すればよい。スルホン酸ホスホ
ニウム塩をポリエステルに共重合させる割合は、ポリエ
ステルを構成する二官能性カルボン酸成分(スルホン酸
塩を除く)に対して0.1〜〜10モル%の範囲が適当であ
り、特に0.5〜10モル%の範囲が好ましい。共重合割合
が0.1モル%より少いと、得られる共重合ポリエステル
のカチオン染料に対する染色性が不充分になる傾向があ
り、10モル%より多くなるとカチオン染色性は最早著し
い向上を示さず、かえってポリエステルの物性が低下
し、本発明の目的を達成し難くなる。
また、上記改質ポリエステルを製造する際に、前記一
般式(I)で表わされるスルホン酸4級ホスホニウム塩
と共に少量の下記一般式(II)で表わされるスルホン酸
3級ホスホニウム塩を併用すると、その重合過程におけ
る分解反応が抑制され、得られる改質ポリエステル及び
それよりなる成形物の色調が極めて良好になるので、好
ましい。
ここで使用するスルホン酸3級ホスホニウム塩は下記
一般式(II) で表わされ、式中、Bは前記一般式(I)におけるAと
同様に定義され、X3は前記一般式(I)におけるX1
同様に定義され、X4は前記一般式(I)におけるX2
同様に定義され、R5,R6及びR7は前記一般式(I)に
おけるR1,R2及びR3と同様に定義され、nは正の整数
である。
かかるスルホン酸3級ホスホニウム塩は、例えば対応
するスルホン酸金属塩と3級ホスホニウムハライド類と
の反応により容易に合成できる。
上記スルホン酸3級ホスホニウム塩の好ましい具体例
としては、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリ
ブチルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスル
ホン酸トリエチルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキシベ
ンゼンスルホン酸トリプロピルホスホニウム塩,3,5−ジ
カルボキシベンゼンスルホン酸トリフェニルホスホニウ
ム塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸トリベンジ
ルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン
酸トリヘキシルホスホニウム塩,3,5−ジカルボキシベン
ゼンスルホン酸トリオクチルホスホニウム塩,3,5−ジカ
ルボキシベンゼンスルホン酸トリシクロヘキシルホスホ
ニウム塩等をあげることができる。
かかるスルホン酸3級ホスホニウム塩の使用量は、あ
まりに少ないと改質ポリエステルが黄褐色に着色するこ
とを防止する効果が不十分になり、あまりに多くても、
着色防止効果は飽和し、かえって物性特に耐熱性を悪化
させることがあるので、前記スルホン酸4級ホスホニウ
ム塩に対して0.5〜10モル%の範囲が適当であり、特に
1〜4モル%の範囲が好ましい、このスルホン酸3級ホ
スホニウム塩の添加時期はスルホン酸4級ホスホニウム
塩と同様に、ポリエステルの合成が完了する以前の任意
の段階で添加すればよく、スルホン酸4級ホスホニウム
塩と同時に添加しても、別々に添加してもよい。また、
前記スルホン酸4級ホスホニウム塩の製造段階におい
て、スルホン酸3級ホスホニウム塩が副生して、生成ス
ルホン酸4級ホスホニウム塩の中に一部残存することが
ある。この場合精製条件を制御して残存するスルホン酸
3級ホスホニウム塩の量を上記範囲にすれば、別に使用
しなくてもよい。
改質ポリエステルを製造するに当って、第4級オニウ
ム塩を添加する、第4級オニウム塩としては第4級アン
モニウム塩,第4級ホスホニウム塩等があり、具体的に
は第4級アンモニウム塩としては水酸化テトラメチルア
ンモニウム,塩化テトラメチルアンモニウム,水酸化テ
トラエチルアンモニウム,塩化テトラエチルアンモニウ
ム,臭化テトラエチルアンモニウム,沃化テトラエチル
アンモニウム,水酸化テトラプロピルアンモニウム,塩
化テトラプロピルアンモニウム,水酸化テトライソプロ
ピルアンモニウム,塩化テトライソプロピルアンモニウ
ム,水酸化テトラブチルアンモニウム,塩化テトラブチ
ルアンモニウム,水酸化テトラフェニルアンモニウム,
塩化テトラフェニルアンモニウム等が例示される。
上記第4級オニウム塩の使用量はあまりに少ないと耐
熱性を改善する効果が不十分になり、逆にあまりに多く
なると、かえって耐熱性が悪化するようになり、その上
生成ポリエステルや成形物が黄褐色に着色する傾向が顕
著になる。このため第4級オニウム塩の使用量は、前記
スルホン酸ホスホニウム塩に対して0.1〜20モル%の範
囲が好ましく、なかでも1〜10モル%の範囲が特に好ま
しい。
かかる第4級オニウム塩の添加時期は前記ポリエステ
ルの合成が完了するまでの任意の段階でよく、例えばポ
リエステルの原料中に添加しても、第1段階の反応中に
添加しても、第1段階の反応終了後から第2段階の反応
開始までの間に添加しても、第2段階の反応中に添加し
てもよい。
第4級オニウム塩と前記スルホン酸ホスホニウム塩と
の添加順序は任意でよく、両者を予め混合した後に添加
することもできる。また、スルホン酸ホスホニウム塩の
製造に際して、第4級ホスホニウムハライド等の第4級
ホスホニウム塩とスルホン酸金属塩との反応による合成
方法を採用することがあり、その場合原料の第4級ホス
ホニウム塩が反応生成物であるスルホン酸ホスホニウム
塩の中に残存することがある。かかる場合には別に第4
級ホスホニウム塩を使用することを要さず、この残存第
4級ホスホニウム塩を利用することもできる。
こうすることにより高強力に必要である極限粘度が0.
60以上、更に好ましくは0.64以上で、黄色の少ない白度
に優れた改質ポリエステルが得られる。
こうして得られた改質ポリエステルを溶融紡糸する。
この溶融紡糸には通常の紡糸方法が採用される。一般に
溶融紡糸は、ポリマーをその融点より30〜50℃高い温度
で溶融し、紡糸口金より吐出する。上記改質ポリエステ
ルにこの紡糸方法を適用すると、紡糸時に分解して着色
したり、重合度が低下したりすることがある。このよう
な時には、280℃を下回る温度で紡糸するのが好まし
い。
上述したように、第4級オニウム塩を添加することに
よって、更に好ましくは第4級オニウム塩を添加したう
えで上記の低温紡糸法を採用することによって改質ポリ
エステルの重合度の低下や黄変を大幅に減少させること
ができたため、その極限粘度が0.6以上、特に好ましく
は0.63以上のカチオン可染改質ポリステル繊維の提供を
はじめて可能にし、またこの繊維はシルクファクター が25以上、好ましくは28以上の高強度を示すことがで
き、かつ、高白度を呈し、染色した際に優れた鮮明性を
示す。
最近、スポーツ衣料においては、鮮明に染色され、耐
光堅牢性に優れたポリエステル繊維が要求され、更に布
帛における高引裂強力が要求されている。布帛の引裂強
力は、その布帛の織編組織に依存する部分があるもの
の、大きくは極限粘度、さらにはシルクファクターに依
存する。スポーツ衣料においては、その用途からもわか
るように高シルクファクターが要求され、シルクファク
ターとして25以上、好ましくは28以上が必要であり、本
発明によってはじめて高シルクファクターでかつ耐熱性
に優れたカチオン染料可染のポリエステル繊維が得られ
るようになった。
本発明の工程を添付図面により説明すると、高配向カ
チオン染料可染ポリエステル未延伸糸(原糸)1は、フ
ィードローラ2と第1デリベリーローラーとの間に設け
た交絡用空気噴射ノズル3で交絡を付与された後、第1
ヒーター5、冷却プレート6を経て仮撚付与装置に導入
され第2デリベリーローラー8にて引取られ、この間に
仮撚−セット−解撚される。その後、第3デリベリーロ
ードラー9、給油装置10を経てチーズ11に巻取られる。
本発明にあっては、上記変性ポリエステルを高速紡糸
して得られる高配向カチオン染料可染ポリエステル未延
伸の複屈折率(Δn)が、0.03以上〜0.08以下になけれ
ばならない。
複屈折率(Δn)が0.03未満では、後述する延伸仮撚
加工において糸条が脆化して糸切れが多発し、延伸仮撚
加工が困難となり、一方、Δnが0.08を超えると、毛羽
が多発するので好ましくない。
更に、本発明にあっては、上記変性ポリエステルを、
3000m/分以上の引取り速度で溶融紡糸して、単糸の平均
繊度が1.0de以下、好ましくは0.7de以下のマルチフィラ
メント糸にする。そして、得られる極細糸の強度は3.5g
r/de以上、更には4.0gr/de以上のものが得られる。
これに対して、従来のナトリウムスルホイソフタル酸
を共重合したカチオン染料可染ポリエステルでは製糸特
性が著しく劣るため、上記のような極細糸は製糸不可能
であった。
つまり、従来のカチオン染料可染ポリエステル繊維の
強度は、高々2.0〜2.59r/de程度であって、その用途は
著しく制限されていた。
次に、このようにして得られた原糸を仮撚又は延伸仮
撚加工する。ここで、大事なことは、上記のカチオン可
染ポリエステルマルチフィラメントからなる未延伸原糸
に、あらかじめ交絡を付与した後、延伸仮撚加工するこ
とにある。
更に本発明にあっては、延伸仮撚加工前に、あらかじ
め交絡を付与しておくことによって、交絡部での仮撚加
工時の層転移が阻止され、捲縮クリンプの付与が妨げら
れる。
一方、交絡が付与されていない部分では、単糸の層転
移が起こり、捲縮クリンプが付与される。交絡が付与さ
れた状態で、熱セットされるため、マルチフィラメント
の長さ方向に一般には50ケ/m以上、特に60ケ/m以上の交
絡を付与することで、毛虫毛羽の発生のないカチオン可
染極細加工糸が得られる。更に、マルチフィラメントの
長さ方向に捲縮クリンプ形態が変化したふくらみの豊か
な嵩高で、弾力性があり、ふくよかな感覚の望ましい形
態の仮撚加工糸が得られるのである。
ポリエステルフィラメント原糸への交絡の付与には、
通常の流体噴射交絡付与装置が用いられる。
本発明において、延伸仮撚加工前に付与する交絡は、
従来の仮撚加工後の糸条に集束性を与えることを目的と
して付与する交絡とはまったく別異のものである。仮撚
加工後に交絡処理した加工糸は、本発明方法で得られた
仮撚加工糸と類似の外観を呈するが、その交絡は、わず
かなシゴキによって簡単に消滅してしまい、更に、交絡
部,非交絡部が共に同じ程度に仮撚付与されているの
で、弛緩熱処理によって加工糸の長さ方向に均一な捲縮
クリンプ形態が発現してしまう。
このことは、特にカチオン極細糸を仮撚加工後の交絡
処理時に損傷を与え、毛羽足の長い“毛虫状毛羽”(毛
羽の長さ3〜10mm)が発生し、品位低下を招くと共に、
後加工での解舒性(市場での製織性)で問題がある。
また、延伸仮撚加工前に、交絡を付与しなかった場合
や、交絡を付与しても交絡度が50ケ/mに満たない場合も
同様に、“毛虫状毛羽”が発生する傾向があり好ましく
ない。
本発明方法によって、はじめて優れた嵩高で、弾力性
のあるふくらみ感のあるカチオン可染極細加工糸が得ら
れるのである。
その他、従来の技術では、仮撚加工前にあらかじめ先
撚を付与して、仮撚加工糸を製造するには、仮撚加工前
の糸条に、イタリー撚糸機、ダブルツイスター等で300T
/m前後の撚を付与していた。この方法では、パッケージ
に巻かれた仮撚加工前の糸条を、一旦小さなパッケージ
に巻返した後で撚糸機にかけるため、操作がすこぶる繁
雑となり、しかも、撚糸速度は20m/分程度と遅いため、
生産効率も劣るという問題がある。
本発明は、上述した繁雑で生産効率の劣る撚糸工程を
省略し、簡単で効率のよいカチオン可染極細仮撚加工糸
が得られるのである。
<発明の作用・効果> 本発明によれば、従来のカチオン可染ポリエステル倒
えば、ナトリウムスルホイソフタル酸成分を共重合した
変性ポリエステルでは、決して製造できなかった極細仮
撚加工糸を、生産性良く製造することが可能になる。
更に、スルホン酸ホスホニウム塩の存在に起因する溶
融成形中、更には重合反応中のポリマー着色や重合度低
下が著しく抑制されるため、高白度・高重合度のカチオ
ン可染ポリエステル成形物を工業的に得ることが可能に
なる。また、耐熱性の向上に対応して耐光性も向上して
いる。
このようにして得られたスルホン酸ホスホニウム塩共
重合の改質ポリエステルは、従来のスルホン酸金属塩共
重合の改質ポリエステルに対比して次のようを利点を有
する。
(1)スルホン酸金属塩の金属イオンに比べて、スルホ
ン酸ホスホニウム塩のホスホニウム塩の方がバルキーで
あるためか、カチオン染料の拡散速度が大きく、そのた
めスルホン酸ホスホニウム塩の場合には、より少量の使
用でスルホン酸金属塩と同程度のカチオン染色性が得ら
れ、かつ鮮明性に優れるという特徴がある。
(2)スルホン酸金属塩に固有の増粘作用が起らないた
め、高重合度ポリマーの溶融紡糸を通常の紡糸方法によ
って容易に行なうことができ、高強度のカチオン染料可
染型ポリエステル成形物が容易に得られる。
(3)本発明によれば金属塩の代りにホスホニウム塩を
使用するので、重縮合反応中に副生する異物量が少な
く、成形時、特に紡糸時のパック圧上昇や得られる糸品
位の低下が小さいという効果が得られる。
(4)上記(2),(3)に関連して、本発明の方法に
よって得られる共重合ポリエステルは曳糸性に極めて優
れており、引取り速度が3000m/分以上、特に5000m/分以
上の超高速において1デニール以下、更には0.5デニー
ル以下の極細繊維の紡糸が可能である。
(5)更に、本発明の改質ポリエステル繊維は、耐熱性
に優れているので、高温における仮撚加工においても、
強度低下や融着の問題を生ずることなく、優れた加工糸
を与えることができる。
(6)スルホン酸金属塩を共重合した改質ポリエステル
繊維が極めて静電気を発生し易いのとは逆に、本発明の
改質ポリエステル繊維は優れた制電性を呈する。
(7)更に、本発明の改質ポリエステル繊維はホスホニ
ウム塩を含有するために難燃性と抗菌性に優れる。
最近、スポーツ衣料においては、鮮明に染色され、耐
光堅牢性に優れたポリエステル繊維が要求されている
が、特に上記の(1),(2),(3),(4),
(5)の特徴ゆえに、高白度であり、染色したとき発色
性の優れた鮮やかな色彩を持ち、高強度のカチオン可染
ポリエステル布帛を提供することができ、その有用性を
一段と高めた商品を開発することができるようになっ
た。
なお、本発明の改質ポリエステル繊維には必要に応じ
て任意の添加剤、例えば触媒,着色防止剤,耐熱剤,難
燃剤,酸化防止剤,艶消剤,着色剤,無機微粒子等が含
まれていてもよい。
この効果は、本明細書で述べる他の技術、例えば吐出
マルチ糸の集束,走行長の短縮等による空気抵抗の軽減
等と組合せた時、更に大きくなる。
このため、本発明によれば、カチオン染料可染でか
つ、良好な力学特性、特に高い強度や引裂強度を有する
ポリエステル極細仮撚糸を容易に製造することができ
る。得られたカチオン可染極細仮撚糸は、超ソフトで、
特に防水透湿機能を有する高密度織編物の分野、特にス
ポーツ衣料分野に最も適した繊維である。
従来この分野に、分散染料でのみ染色可能なポリエス
テル極細仮撚加工糸を用いたのでは、染色の堅牢性が不
十分で、色移行の問題が生じていたし、従来のカチオン
可染ポリエステル糸を用いるには、高速曳糸性の欠如に
基づく細デニールに限界があるばかりでなく、糸強度が
低いため、布帛の引裂強力が弱くなる等の問題があり、
現実に供し得なかったものである。かかる分野について
は、本発明によりはじめてポリエステル糸の使用を可能
ならしめたのである。
<実施例> 以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
実施例中の部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示
す。ポリマーの極限粘度[η]は25℃のオルソクロロフ
ェノール溶液で測定した値から求め、軟化点(SP)はペ
ネトレーション法で測定した。ポリマーの色相はハンタ
ー型色差計によるL値とb値で示した。L値は値が大き
くなるほど白度の良好なことを示し、b値は+側に大な
るほど黄味の強いことを示す。
ポリマーのカルボキシル基末端数は、試料をベンジル
アルコールに加熱溶解し、水酸化ナトリウム溶液で滴定
して求めた。カルボキシル基末端数が大きいほど熱分解
がより多く起こっていることを示す。
ポリマー中のジエチレングリコール含有量(DEG含有
量)は、ポリエステル試料を抱水ヒドラジンで熱分解
し、上澄液をガスクロマトグラフィーにかけて定量した
(内部標準として1,4−ブタンジオールを使用)。
ポリマーの耐熱性は、共重合ポリマーの重合反応終了
後、重合缶からのポリマー押出窒素ガス圧を調整し、ポ
リマー取出しに要する時間を60分以上とし、ポリマー取
出し開始10分後と60分後のポリマーの極限粘度[η]の
差をもって評価した。
実施例1及び比較例1 テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60
部、酢酸マンガン4水塩0.03部(テレフタル酸ジメチル
に対して0.024モル%)、整色剤として酢酸コバルト4
水塩0.009部(テレフタル酸ジメチルに対して0.007モル
%)、テレフタル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の
3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラ−n
−ブチルホスホニウム塩及びテレフタル酸ジメチルに対
して0.050モル%の量のテトラ−n−ブチルホスホニウ
ムブロマイドをエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲
気下3時間かけて140℃から220℃まで昇温して生成する
メタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させ
た。続いて得られた生成物に、安定剤として正リン酸の
56%水溶液0.03部(テレフタル酸ジメチルに対して0.00
3モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコール
の昇温追出しを開始した。10分後重縮合触媒として三酸
化アンチモン0.04部(テレフタル酸ジメチルに対して0.
027モル%)を添加した。内温が240℃に達した時点でエ
チレングリコールの追出しを終了し、反応生成物を重合
缶に移した。
次いで昇温しながら内温が260℃に到達するまで常圧
反応させた後、1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧
し、同時に1時間30分かけて内温を280℃まで昇温し
た。1mmHg以下の減圧下、重合温度280℃で更に2時間重
合した時点で窒素ガスで真空を破って重合反応を終了
し、窒素ガス加圧下に280℃でポリマーの吐出を行なっ
た。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.5℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.68、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.672、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.648であった。
このポリマーを常法に従ってチップ化し、乾燥し、孔
径0.15φの円形吐出孔を72個穿設した紡糸口金を使用し
て、最高310℃で溶融し、引取速度毎分3200mで高速紡糸
して36デニール/72フィラメント(単糸デニール:0.5)
で複屈折率がΔn0.045の極細糸を得た。得られた紡出糸
の極限粘度[ηF]は0.625であった。この得られた糸を
図に示す工程で、交絡処理及び延伸仮撚加工を行なっ
た。
インターレースノズルにより、オーバーフィード率1.
5%、圧空圧3kg/cm2で60ケ/mの交絡を付与し、引続いて
延伸倍率1.50、ヒーター温度190℃、仮撚装置に外接式
摩擦仮撚装置を用い、600m/分で延伸仮撚加工した。
このようにして得られた加工糸の物性は、強度4.8g/d
e、シルクファクター25.0,L値84.7,b値6.8であった。ま
た紡糸調子、極細加工糸の毛羽がなく、かつ強度も充分
良好である。
この加工糸よりなる布帛をカチオン染料 Cathilon CD-FRLH/Cathilon Blur CD-FBLH=1/1(保土
谷化学(株)製)を2%owf含む染浴(助剤として芒硝3
g/l,酢酸0.3g/lを含む)で120℃で60分間染色した。染
色布の鮮明性は第1表に示したように、実施例による染
色布は鮮明な濃青色を呈したのに対し、比較例の染色布
はくすんだ青色にしか染まらなかった。
また、比較のため、テトラ−n−ブチルホスホニウム
ブロマイドを使用しない以外は実施例1と同様に行なっ
た。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.5℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.67、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.576、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.521であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.480、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は3.0g/de、シルクファクターは15.0、L値は7
9.8、b値は14.9、また極細加工糸は毛虫毛羽が発生
し、品位に欠けていた(第1表参照)。
実施例2及び比較例2 実施例1で使用した3,5−ジカルボメトキシベンゼン
スルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム塩及びテト
ラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドに代えて、テレ
フタル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカル
ボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム
塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.050モル%の量
のテトラフェニルホスホニウムハイドロオキサイドを使
用し、これらの添加時期をエステル交換反応終了後正リ
ン酸添加前にする以外は実施例1と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は250.4℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.65、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.674、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.653であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.630、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は5.0g/de、シルクファクターは25.7、L値は8
4.9、b値は7,6であった。
比較のため、テトラフェニルホスホニウムハイドロオ
キサイドを使用しない以外は実施例2と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.1℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.67、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.583、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.532であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.495、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は2.9g/de、シルクファクターは14.6、L値は7
8.8、b値は15.5であった。
実施例3 実施例2で使用した3,5−ジカルボキシベンゼンスル
ホン酸テトラフェニルホスホニウム塩及びテトラフェニ
ルホスホニウムハイドロオキサイドに代えて、テレフタ
ル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボキ
シベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム
塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.003モル%の量
の水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムを使用する以
外は実施例2と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.3℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.63、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.673、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.651であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.623、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は5.1g/de、シルクファクターは26.3、L値は8
5.3、b値は7.5であった。
実施例4 実施例3で使用した水酸化テトラ−n−ブチルアンモ
ニウムに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して0.050
モル%の量の塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムを使
用する以外は実施例3と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は254.0℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.70、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.675、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.646であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.615、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は4.7g/de、シルクファクターは24.3、L値は8
5.4、b値は7.3であった。
実施例5 実施例3で使用した水酸化テトラ−n−ブチルアンモ
ニウムの使用量をテレフタル酸ジメチルに対して0.100
モル%にする以外は実施例3と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は252.5℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.85、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.648、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.617であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.600、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は4.9g/de、シルクファクターは25.0、L値は8
6.3、b値は7.5であった。
実施例6 実施例2で使用したテトラフェニルホスホニウムハイ
ドロオキサイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対し
て0.050モル%の量の水酸化テトラフェニルアンモニウ
ムを使用する以外は実施例2と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.2℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.85、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.673、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.652であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.600、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は5.1g/de、シルクファクターは26.2、L値は8
4.8、b値は7.3であった。
実施例7 実施例1で使用したテトラ−n−ブチルホスホニウム
ブロマイドに代えて、テレフタル酸ジメチルに対して0.
050モル%の量の塩化テトラブチルアンモニウムを使用
する以外は実施例1と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は252.7℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.84、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.683、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.656であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.620、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は5.2g/de、シルクファクターは26.5、L値は8
4.9、b値は7.2であった。
実施例8 実施例2で使用した3,5−ジカルボキシベンゼンスル
ホン酸テトラフェニルホスホニウム塩に代えて、テレフ
タル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボ
キシベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウ
ム塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.017モル%の
量の3,5−ジカルボキシベンセンスルホン酸トリ−n−
ブチルホスホニウム塩の混合物を使用し、更にテトラフ
ェニルホスホニウムハイドロオキサイドに代えて、テレ
フタル酸ジメチルに対して0.2モル%の量のテトラ−n
−ブチルホスホニウムクロライドを使用する以外は実施
例2と同様に行った。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.9℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.54、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.678、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.656であり、紡出糸の極限粘度
([η]f)は0.626、加工糸の単糸繊度は0.35デニー
ル、強度は5.0g/de、シルクファクターは25.1、L値は8
4.6、b値は6.2であった。
実施例9 実施例2で使用した3,5−ジカルボキシベンゼンスル
ホン酸テトラフェニルホスホニウム塩及びテトラフェニ
ルホスホニウムハイドロオキサイドに代えて、テレフタ
ル酸ジメチルに対して1.7モル%の量の3,5−ジカルボキ
シベンゼンスルホン酸テトラ−n−ブチルホスホニウム
塩及びテレフタル酸ジメチルに対して0.02モル%の量の
テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライドを使用する
以外は実施例2と同様に重合し、ポリマー吐出を行っ
た。
得られたポリマーの軟化点(SP)は253.6℃、ジエチ
レングリコール含有量(DEG含量)は1.65、吐出10分後
の極限粘度([η]10)は0.660、吐出60分後の極限粘
度([η]60)は0.638であった。
得られた紡出糸の極限粘度([η]f)は0.630であっ
た。次いで、0.35deとなる仮撚延伸倍率1.5で仮撚加工
を実施した。
得られた加工糸の単糸繊度は0.35デニール、強度は5.
2g/de、シルクファクターは26.5、L値は91.0、b値は
5.8であった。
比較例3,4 実施例1において、仮撚加工前の交絡付与を取り止め
て、仮撚加工後に第2デリベリーローラーと第3デリベ
リーローラーとの間で交絡付与すること(比較例3)、
仮撚加工前後共に交絡付与しなかったこと(比較例
4)、以外は実施例と同様に行った。その結果を第1表
に示す。
比較例5,6、実施例10,11 実施例1において、紡糸引取速度と延伸倍率を下記の
如く変更する以外は、実施例1と同様に行った。その結
果を第1表に示す。
引取速度 延伸倍率 比較例5 2300m/分 1.85 〃 6 5700 〃 1.20 実施例10 2800 〃 1.75 〃 11 5200 〃 1.30
【図面の簡単な説明】
図は、本発明方法を実施する装置の一例を示す概略図で
ある。 1……カチオン可染ポリエステルフィラメントからなる
原糸、 2……フィードローラー(プリ,フィードローラー)、 3……交絡用空気噴射ノズル、 7……仮撚付与装置、 4……第1デリベリローラー 8……第2デリベリローラー、 5……第1ヒーター、 6……冷却プレート、 9……第3デリベリローラー、 10……給油装置、 11……チーズ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−159537(JP,A) 特開 昭63−211322(JP,A) 特開 昭56−26034(JP,A) 特開 昭64−52833(JP,A) 特開 昭53−52723(JP,A) 特開 昭62−97940(JP,A) 特公 昭47−22334(JP,B2) 特公 昭55−26205(JP,B2) 特公 昭34−10497(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D02G 1/02 D02G 3/00 - 3/42

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加工後の単糸繊度が0.7デニール以下のカ
    チオン可染ポリエステルマルチフィラメントを、延伸仮
    撚加工するに際して、加工用原糸として、下記の改質ポ
    リエステルからなる複屈折率(Δn)が0.03以上、0.08
    以下の高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメントを
    用いて交絡を付与した後、延伸仮撚加工することを特徴
    とするカチオン可染極細仮撚加工糸の製造方法。 [下記一般式(I) (式中、Aは芳香族基又は脂肪族基、X1はエステル形
    成性官能基、X2はX1と同一もしくは異なるエステル形
    成性官能基又は水素原子、R1,R2,R3及びR4はアルキル
    基及びアリール基より選ばれた同一又は異なる基、nは
    正の整数を示す。)で表されるスルホン酸ホスホニウム
    塩を0.1〜10モル%共重合した極限粘度0.6以上の改質ポ
    リエステル。]
  2. 【請求項2】高配向ポリエステル未延伸マルチフィラメ
    ントに60ケ/m以上の交絡を付与する請求項1記載のカチ
    オン可染極細仮撚加工糸の製造方法。
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