JP2019183330A - ポリエステルマルチフィラメントおよび布帛 - Google Patents

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Abstract

【課題】キシミ感に優れた風合いを有する布帛を得ることが可能なポリエステルマルチフィラメントおよび布帛を提供する。【解決手段】ポリエステルマルチフィラメントであって、単繊維の横断面形状が三葉形断面であり、かつ単繊維の繊維表面上に微細孔が形成されている。【選択図】図3

Description

本発明は、キシミ感に優れた風合いを有する布帛を得ることが可能なポリエステルマルチフィラメントおよび布帛に関する。
絹の生糸を使用した織編物は高級感のある光沢やソフトで膨らみがあり適度なハリコシ、キシミ感等の優れた風合い、快適な着用感等から古くから愛用されてきた。しかし絹製品は高価であり、洗濯等の取り扱いなど注意事項も多く問題があった。
これに対して、合成繊維の分野でも、絹の生糸の高いキシミ感を呈する織編物用繊維を得る努力がなされてきた。例えば、特許文献1には、同様な異型断面糸を太細構造とすることで、より自然な斑感を付加することが提案されている。また、特許文献2では、葉部に溝を付けた多葉断面の異繊度混繊糸も提案されている。
これらの提案のように、繊維表面に溝を作れば、確かにキシミ性は向上するが、いずれも複合繊維であり、芯部の難溶出成分ポリマーの周辺全体が易溶出ポリマーで囲まれており、易溶出ポリマーを溶出させてキシミ性を向上させている為、製造コストが高く、製造工程において易溶出ポリマーを多く排出するため環境負荷の高い製造方法であった。
特開昭59―192709号公報 特開平9―228173号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、キシミ感に優れた風合いを有する布帛を得ることが可能なポリエステルマルチフィラメントおよび布帛を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、単繊維の横断面形状が三葉形断面であり、かつ単繊維の繊維表面上に微細孔が形成されているポリエステルマルチフィラメントで布帛を構成すると、きわめてキシミ感に優れた風合いを呈することを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「ポリエステルマルチフィラメントであって、単繊維の横断面形状が三葉形断面であり、かつ単繊維の繊維表面上に微細孔が形成されていることを特徴とするポリエステルマルチフィラメント。」が提供される。
その際、前記単繊維の繊維表面に形成されている微細孔の短軸方向における平均長さが0.1〜1.0μm、長軸方向における平均長さが0.5〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。また、微細孔の個数が、繊維軸方向の長さ10μm当たり5個以上であることが好ましい。また、三葉形断面における各々の頂点を直線で結んだ三角形の面積のバラツキCV%が5〜15%の範囲内であることが好ましい。また、単繊維繊度が0.5〜5.0dtexの範囲内であることが好ましい。また、フィラメント数が12本以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、下記一般式で表される含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)を含む芯部ポリエステルマルチフィラメントと、下記一般式で表される含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)を含む、単繊維の横断面形状が三葉形断面であるポリエステルマルチフィラメントを得た後、水酸化ナトリウム水溶液中処理することにより、ポリエステルマルチフィラメントにおいて、単繊維表面上に微細孔を形成することを特徴とする布帛の製造方法が提供される。
(式中、R1およびR2は一価の有機基であって、R1およびR2は同一でも異なってもよく、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であって、mはMがアルカリ金属の場合は1、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2である。)
また、本発明によれば、前記のポリエステルマルチフィラメントを用いてなる布帛が提供される。
本発明によれば、キシミ感に優れた風合いを有する布帛を得ることが可能なポリエステルマルチフィラメントおよび布帛が得られる。
本発明のポリエステルマルチフィラメントにおいて、単繊維断面の模式図を示すものであり、三葉形断面における各々の頂点を直線で結んだ三角形ABCを示している。 実施例1で得られたポリエステルマルチフィラメントの単繊維表面の図面代用写真(2500倍)である。 実施例1のポリエステルマルチフィラメントにおける繊維表面に形成されている微細孔を模式的に示す図である。
本発明は、ポリエステルマルチフィラメントであって、単繊維の横断面形状が三葉形断面であり、かつ単繊維の繊維表面上に微細孔が形成されている。
その際、前記単繊維の繊維表面に形成されている微細孔の短軸方向における平均長さが0.1〜1.0μmであり、かつ長軸方向における平均長さが0.5〜5.0μmの範囲内であると、繊維表面を低屈折率化させ、入射光の鏡面反射を抑える事で染色後の繊維において深みのある色相と優れた光沢を可能とし、また、布帛のキシミ感の優れた風合いを表現できる。微細孔の個数としては、繊維軸方向の長さ10μm当たり5個以上であることが好ましい。
また、三葉形断面における各々の頂点を直線で結んだ三角形の面積のバラツキCV%が5〜15%の範囲内であると、各フィラメントでの不均一性を制御しつつナチュラルな光沢が得られ、また、この面積のバラツキにより織編物にした際の生地のキシミ感の優れた風合いを表現でき好ましい。該バラツキCV%が5%未満または15%超となると、織編物での光沢感、キシミ感にてナチュラル感を失い優れた風合いを表現できないおそれがある。
本発明のポリエステルマルチフィラメントにおいて、優れたキシミ感を得る上で、単繊維繊度が0.5〜5.0dtexの範囲内であることが好ましい。また、優れたキシミ感を得る上で、フィラメント数が12本以上(より好ましくは12〜90本)であることが好ましい。
また、ポリエステルの種類としてはポリエチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートが好ましい。
以下、ポリエステルマルチフィラメントがポリエチレンテレフタレート繊維である場合を例にして製造方法を説明する。
まず、ポリエチレンテレフタレートは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであり、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とする。
かかるポリエチレンテレフタレートには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。
その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、P−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
かかるポリエチレンテレフタレートは任意の方法によって合成したものでよい。例えば、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造される。
また、ポリエチレンテレフタレート中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分枝剤、艶消し剤、着色剤、その他各種改良剤等が必要に応じて配合されていてもよい。
かかるポリエチレンテレフタレート中には、下記一般式で表される含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)が含まれることが肝要である。
式中、R1およびR2は一価の有機基である。この一価の有機基は具体的にはアルキル基、アリール基、アラルキル基または[(CH)lOk]R3(ただし、R3は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基、lは2以上の整数、kは1以上の整数)等が好ましく、R1とR2とは同一でも異なっていてもよい。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baが好ましく、特にCa、Sr、Baが好ましい。mはMがアルカリ金属のとき1であり、Mがアルカリ土類金属のとき1/2である。
上記含金属リン化合物(a)に代えてR1および/またはR2が金属(特にアルカリ金属、アルカリ土類金属)で置き換えたリン化合物を使用したのでは、得られるポリエステル繊維に生成する微細孔が大きくなって、目的とするキシミ感が得られず、また耐フィブリル性にも劣るようになる。
上記含金属リン化合物(a)を製造するには、通常対応する正リン酸エステル(モノ、ジまたはトリ)と所定量の対応する金属の化合物とを溶媒の存在下加熱反応させることによって容易に得られる。なお、この際溶媒として、ポリエチレンテレフタレートの原料として使用するグリコールを使用するのが最も好ましい。
上記含金属リン化合物(a)と併用するアルカリ土類金属化合物(b)としては、上記含金属リン化合物(a)と反応してポリエチレンテレフタレートに不溶性の塩を形成するものであれば特に制限はなく、アルカリ土類金属の酢酸塩、しゅう酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、ステアリン酸塩のような有機カルボン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩のごとき無機酸塩、塩化物のようなハロゲン化物、エチレンジアミン4酢酸錯塩のようなキレート化合物、水酸化物、酸化物、メチラート、エチラート、グリコラート等のアルコラート類、フェノラート等をあげることができる。特にエチレングリコールに可溶性である有機カルボン酸塩、ハロゲン化物、キレート化合物、アルコラートが好ましく、なかでも有機カルボン酸塩が特に好ましい。上記のアルカリ土類金属化合物(b)は1種のみ単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
上記含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)を添加するにあたって、得られるポリエチレンテレフタレート繊維にキシミ感を与えるために、含金属リン化合物(a)の使用量および該含金属リン化合物(a)の使用量に対するアルカリ土類金属(b)の使用量の比を特定することが好ましい。すなわち、含金属リン化合物(a)の添加量があまりに少ないと色の深みが不十分になり、この量を多くするに従って色の深みは増加するが、あまりに多くなると最早色の深みは著しい向上を示さず、かえって耐摩擦耐久性が悪化し、その上十分な重合度と軟化点を有するポリエステルを得ることが困難となり、さらに紡糸時に糸切れが多発するというトラブルを発生するおそれがある。このため、含金属リン化合物(a)の添加量はポリエチレンタレフタレートを構成する酸成分に対して0.5〜3モル%の範囲が好ましく、特に0.6〜2モル%の範囲がより好ましい。また、アルカリ土類金属化合物(b)の添加量が含金属リン化合物(a)の添加量に対して0.5倍モルより少ない量では、得られるポリエステル繊維の深色性が不十分となるおそれがあり、その上重縮合速度が低下し高重合度のポリエステルを得ることが困難となり、また、生成ポリエステルの軟化点が大巾に低下するおそれがある。逆に含金属リン化合物(a)に対して1.2倍モルを超える量のアルカリ土類金属化合物(b)を添加すると、粗大粒子が生成するおそれがある。このため、含金属リン化合物に対するアルカリ土類金属化合物の添加量は、0.5〜1.2倍モルの範囲が好ましく、特に0.5〜1.0倍モルの範囲がより好ましい。
上記含金属リン化合物(a)とアルカリ土類金属化合物(b)とは予め反応させることなくポリエチレンテレフタレート反応系に添加することが好ましい。こうすることによって、不溶性粒子をポリエチレンテレフタレート中に均一な超微粒子状態で生成せしめることができるようになる。予め外部で上記含金属リン化合物(a)とアルカリ土類金属化合物(b)とを反応させて不溶性微粒子とした後にポリエチレンテレフタレート反応系に添加したのでは、ポリエチレンテレフタレート中での不溶性粒子の分散性が悪くなり、かつ粗大凝集粒子が含有されるようになるため、得られるポリエチレンテレフタレート繊維の色の深みを改善する効果は認められなくなるおそれがある。
上記の含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)の添加は、それぞれポリエチレンテレフタレートの合成が完了するまでの任意の段階において、任意の順序で行うことができる。しかし、含金属リン化合物(a)のみを第1段階の反応が未終了の段階で添加したのでは、第1段階の反応の完結が阻害されることがあり、またアルカリ土類金属化合物(b)のみを第1段階の反応終了前に添加すると、この反応がエステル化反応のときは、この反応中、粗大粒子が発生したり、エステル交換反応のときは、その反応が異常に早く進行し突沸現象を引き起こすことがあるので、この場合、その20重量%程度以下にするのが好ましい。アルカリ土類金属化合物(b)の少なくとも80重量%および含金属リン化合物(a)全量の添加時期は、ポリエチレンテレフタレートの合成の第1段階の反応が実質的に終了した段階以降であることが好ましい。また、含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)の添加時期が、第2段階の反応があまりに進行した段階では、粒子の凝集、粗大化が生じ易くなる傾向があるので、第2段階の反応における反応混合物の極限粘度が0.3に到達する以前であることが好ましい。
上記の含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)はそれぞれ一時に添加しても、2回以上に分割して添加しても、または連続的に添加してもよい。
また、第1段階の反応に任意の触媒を使用することができるが、上記アルカリ土類金属化合物(b)のなかで第1段階の反応、特にエステル交換反応の触媒能を有するものがあり、かかる化合物を使用する場合は別に触媒を使用することを要さず、このアルカリ土類金属化合物を第1段階の反応前または反応中に添加して、触媒としても兼用することができるが、前述したように突沸現象を引き起こすことがあるので、その使用量は添加するアルカリ土類金属化合物の全量の20重量%未満にとどめるのが好ましい。
以上のように、上記の含金属リン化合物(a)とアルカリ土類金属化合物(b)とを予め反応させることなくポリエチレンテレフタレート反応系に添加し、しかる後ポリエチレンテレフタレートの合成を完了することによって、高重合度、高軟化点および良好な製糸化工程通過性を有し、かつキシミ感に優れた繊維を与えることのできるポリエチレンテレフタレートを得ることができる。
また、ポリマー中には、その他、各種の添加剤、たとえば二酸化チタンなどの艶消剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤、耐衝撃剤の添加剤、または補強剤としてモンモリナイト、ベントナイト、ヘクトライト、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、板状ベーマイト、あるいはカーボンナノチューブなどの添加剤が含まれていてもよいことはいうまでもない。
次いで、三葉形断面の紡糸口金を用いて常法により紡糸、延伸し、必要に応じて布帛とした後、アルカリ減量加工を施すことにより、布帛に含まれるポリエチレンテレフタレート繊維の繊維表面に微細孔が形成される。その際、アルカリ減量率としては、ポリエチレンテレフタレート繊維重量に対して5〜40%(より好ましくは10〜30%)の範囲内であることが好ましい。アルカリ減量率が5%よりも小さいと、ポリエチレンテレフタレート繊維の繊維表面に微細孔が十分に形成されないおそれがある。
かくして得られたポリエステルマルチフィラメントにおいて、繊維での固有粘度〔η〕Fは、ポリエステルマルチフィラメントの強伸度特性、タフネス、及び布帛での耐破れ性に影響を及ぼす重要な要素であり、その範囲は0.60以上0.80以下であることが好ましく、より好ましくは0.60以上0.70以下である。この〔η〕Fが0.60未満の場合、布帛での耐破れ性も不十分になるおそれがある。一方、〔η〕Fが0.80を超える場合には、製糸性が大きく低下し、毛羽及び糸切れにより工程通過性が著しく低下するおそれがある。
次に、本発明の布帛は、前記ポリエステルマルチフィラメントを用いてなる布帛である。前記ポリエステルマルチフィラメントが布帛重量に対して40重量%以上含まれることが好ましい。
かかる布帛において、織編物の組織は限定されず通常の方法で製編織されたものでよい。例えば、織組織としては、平織、斜文織、サテン織物等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。また、編物としては、2枚筬または3枚筬を用いた、ハーフ組織、ハーフベース組織、サテン組織などが好適に例示される。
なかでも、布帛が織物の場合、織物のカバーファクターCFが1200〜3000の範囲内であると、優れたキシミ感が得られ好ましい。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義する。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
次いで、該布帛に染色加工を施すと、前記ポリエチレンテレフタレート繊維の繊維表面に形成された微細孔により、優れた深色性が得られ、染着差もない。
本発明の布帛には、エンボス加工、着色プリント、撥水加工、紫外線遮蔽剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
かくして得られた布帛には前記のポリエステルマルチフィラメントが含まれるので、キシミ感に優れる。
ここで、布帛の目付けとしては、200g/m以下(より好ましくは100〜190g/m)であることが好ましい。
前記布帛は、婦人用ブラックフォーマル衣料、パーテイドレス、紳士用スーツ、スラックス、スポーツ衣料などの衣料として好適に使用される。
次に、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
(1)固有粘度
樹脂あるいは繊維をフェノールとオルトジクロロベンゼンとの混合溶媒(容量比6:4)に溶解し、35℃でオストワルド型粘度計を用いて測定して求めた。
(2)繊維表面の微細孔
倍率3500倍で、繊維軸と直角方向から走査型電子顕微鏡による側面写真を撮影し、該側面写真における繊維幅両端から10%の長さを除いた繊維表面上の任意の20ヶ所において、繊維軸と直角方向に、上記10%の長さを除いた繊維幅の80%の長さに存在する、短軸方向における長さが0.1〜1μm、長軸方向における長さが0.5〜10μmの微細孔の個数を数えて長さ10μm当たりに換算し、この20ヶ所における平均値を微細孔の個数とした。
(3)生地の風合い 光沢とキシミ感
得られた布帛を織、編、染色技術者からなるパネラー10人に、10段階で評価をさせ、その合計点で評価した。
80点以上:〇
50〜79点:△
49点以下:×
29点以下:××
(4)目付け
目付け(g/m)はJIS L―1096(8.3)により測定した。
[実地例1]
エステル化反応槽にて、テレフタル酸86部とエチレングリコール40部とを、常法に従ってエステル化反応させオリゴマーを得た。このオリゴマーに、テレフタル酸86部とエチレングリコール40部を65分間かけて連続的に供給し、245℃にてエステル化反応を行った。ついで三酸化アンチモン0.045部を添加して20分後、追加供給したテレフタル酸とエチレングリコールとから生成されるオリゴマー量と等モル量のオリゴマーを重縮合反応槽へ送液した。送液終了後直ちに酢酸カルシウムをポリマー中の酸成分に対して0.5モル%を重縮合反応槽に添加した。さらに5分後にフェニルホスホン酸をポリマー中の酸成分に対して0.6モル%を重縮合反応槽に添加した。その後290℃まで昇温し、0.03kPa以下の高真空化にて重縮合反応を行い、固有粘度が0.65dL/gのポリエステルチップを得た後、このチップを140℃にて6時間乾燥した。
該チップを溶融エクストルーダーにて溶融し紡糸温度290℃でポリマーを口金吐出孔から押し出した後、雰囲気温度が200〜250℃の冷却遅延ゾーンを通過させた後、冷却固化及びオイリングを施し1000m/min.の速度で未延伸糸を引き取り、得られた未延伸マルチフィラメントを3.8倍で延伸し、熱処理と交絡付与を施し、ポリエステルマルチフィラメントを得た。
次いで、該ポリエステルマルチフィラメントを用いて下記組織の織物を作製した。
組織 : 平織
経・緯密度 :170本/25.4mm・140本/25.4mm
生地目付:70g/m
得られた織物生機に常法より精練、プリセット、10%のアルカリ減量処理、染色工程を施し、次に、所定条件により熱処理を施した。
[実施例2〜4]
表1に記載のように実施した以外は実施例1と同様に行った。
[比較例1〜3]
表2に記載のように実施した以外は実施例1と同様に行った。
本発明によれば、キシミ感に優れた風合いを有する布帛を得ることが可能なポリエステルマルチフィラメントおよび布帛が提供され、その工業的価値は極めて大である。
A:繊維表面に形成されている微細孔の長軸方向
B:繊維表面に形成されている微細孔の短軸方向
C:繊維断面

Claims (8)

  1. ポリエステルマルチフィラメントであって、単繊維の横断面形状が三葉形断面であり、かつ単繊維の繊維表面上に微細孔が形成されていることを特徴とするポリエステルマルチフィラメント。
  2. 前記単繊維の繊維表面に形成されている微細孔の短軸方向における平均長さが0.1〜1.0μm、長軸方向における平均長さが0.5〜5.0μmの範囲内である、請求項1に記載のポリエステルマルチフィラメント。
  3. 微細孔の個数が、繊維軸方向の長さ10μm当たり5個以上である、請求項1または請求項2に記載のポリエステルマルチフィラメント。
  4. 三葉形断面における各々の頂点を直線で結んだ三角形の面積のバラツキCV%が5〜15%の範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルマルチフィラメント。
  5. 単繊維繊度が0.5〜5.0dtexの範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルマルチフィラメント。
  6. フィラメント数が12本以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルマルチフィラメント。
  7. 下記一般式で表される含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)を含む芯部ポリエステルマルチフィラメントと、下記一般式で表される含金属リン化合物(a)およびアルカリ土類金属化合物(b)を含む、単繊維の横断面形状が三葉形断面であるポリエステルマルチフィラメントを得た後、水酸化ナトリウム水溶液中処理することにより、ポリエステルマルチフィラメントにおいて、単繊維表面上に微細孔を形成することを特徴とする布帛の製造方法。
    (式中、R1およびR2は一価の有機基であって、R1およびR2は同一でも異なってもよく、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であって、mはMがアルカリ金属の場合は1、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2である。)
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載されたポリエステルマルチフィラメントを用いてなる布帛。
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