明 細 書 磁石粉末、 焼結磁石、 これらの製造方法、 ボンディッ ド磁石、 モー夕およ び磁気記録媒体 技術分野
本発明は、 自動車用モ一夕等の永久磁石材料として好適に使用されるハ 方晶フェライ ト、 特に六方晶 M型フェライ トを有する磁石材料およびその 製造方法に関する。 背景技術
酸化物永久磁石材料には、 マグネトプランバイ ト型 (M型) の六方晶系 の S rフェライ小または B aフェライ トが主に用いられており、 これらの 焼結磁石やボンディッド磁石が製造されている。
磁石特性のうち特に重要なものは、 残留磁束密度 (B r ) および固有保 磁力 (H c J) である。
B rは、 磁石の密度およびその配向度と、 その結晶構造で決まる飽和磁 化 (4 π I s ) とで決定され、
B r = 4 π I s X配向度 X密度
で表わされる。 M型の S rフェライトゃ B aフェライトの 4 π I sは約 4 . 6 5 kGである。 密度と配向度とは、 最も高い値が得られる焼結磁石の場合 でもそれぞれ 9 8 %程度が限界である。 したがって、 これらの磁石の B r は 4 . 4 6 kG程度が限界であり、 4 . 5 kG以上の高い B rを得ることは、 従来、 実質的に不可能であった。
本発明者らは、 米国特許出願 0 8 Z 6 7 2 , 8 4 8号において、 M型フ
ェライ 卜に例えば L aと Z nとを適量含有させることにより、 4 TT I Sを 最高約 20 0G高めることが可能であり、 これによつて 4. 5kG以上の B r が得られることを見出した。 しかしこの場合、 後述する異方性磁場 (HA) が低下するため、 4. 5kG以上の B rと 3. 5 kOe以上の He! [とを同時に得 ることは困難であった。
HcJは、 異方性磁場 {HA (= 2 K1/ I s ) } と単磁区粒子比率 ( f c) との積 (HAx f c) に比例する。 ここで、 K,は結晶磁気異方性定数で あり、 I s と同様に結晶構造で決まる定数である。 M型 B aフェライ 卜の 場合、 K,= 3. 3 X 1 06erg/cm3であり、 M型 S rフェライトの場合、 K, = 3. 5 X 1 06erg/cm3である。 このように、 M型 S rフェライトは最大の K,をもつことが知られているが、 K,をこれ以上向上させることは困難で めった。
—方、 フェライ ト粒子が単磁区状態となれば、 磁化を反転させるために は異方性磁場に逆らって磁化を回転させる必要があるから、 最大の He Jが 期待される。 フェライ ト粒子を単磁区粒子化するためには、 フェライ ト粒 子の大きさを下記の臨界径 (d c) 以下にすることが必要である。
d c = 2 (k · T c · K,/ a) 1 2/ I s 2
ここで、 kはボルツマン定数、 T cはキュリー温度、 aは鉄イオン間距 離である。 M型 S rフェライ トの場合、 d cは約 1 imであるから、 例えば 焼結磁石を作製する場合は、 焼結体の結晶粒径を 1 xm以下に制御すること が必要になる。 高い B rを得るための高密度化かつ高配向度と同時に、 こ のように微細な結晶粒を実現することは従来困難であつたが、 本発明者ら は特開平 6— 5 30 64号公報において、 新しい製造方法を提案し、 従来 にない高特性が得られることを示した。 しかし、 この方法においても、 B r力 4. 4kGのときには HcJが 4. OkOe程度となり、 4. 4kG以上の高い
B rを維持してかつ 4. 5 kOe以上の高い He Jを同時に得ることは困難であ つた。
また、 焼結体の結晶粒径を 1 D1以下に制御するためには、 焼結段階での 粒成長を考慮すると、 成形段階での粒子サイズを好ましくは 0. 5 wra以下 にする必要がある。 このような微細な粒子を用いると、 成形時間の増加や 成形時のクラックの増加などにより、 一般的に生産性が低下するという問 題がある。 このため、 高特性化と高生産性とを両立させることは非常に困 難であった。
—方、 高い He! [を得るためには、 A 12〇3や C r 2〇:iの添加が有効である ことが従来から知られていた。 この場合、 A 1 :i+や C r 3 +は M型構造中の 「上向き」 スピンをもつ F e を置換して HAを増加させると共に、 粒成長 を抑制する効果があるため、 4. 5k0e以上の高い HcJが得られる。 しかし、 I sが低下すると共に焼結密度も低下しやすくなるため、 B rは著しく低 下する。 このため、 HcJが 4. 5 kOeとなる組成では最高でも 4. 2 kG程度 の B rしか得られなかった。
ところで、 従来の異方性 M型フェライ ト焼結磁石の Hc】の温度依存性は + 1 3 OeZ°C程度で、 温度係数は + 0. 3〜十 0. 5 %Z°C程度の比較的 大きな値であった。 このため、 低温側で HcJが大きく減少し、 減磁する場 合があった。 この減磁を防ぐためには、 室温における HcJを例えば 5k0e程 度の大きな値にする必要があるので、 同時に高い B rを得ることは実質的 に不可能であった。 M型フェライ トの粉末の HcJの温度依存性は焼結磁石 に比べると優れているが、 それでも少なくとも + 8 OeZ°C程度で、 温度係 数は + 0. 1 5 %/°C以上であり、 温度特性をこれ以上改善することは困 難であった。 フェライ ト磁石は、 耐環境性に優れ安価でもあることから、 自動車の各部に用いられるモー夕などに使用されることが多い。 自動車は、
寒冷あるいは酷暑の環境で使用されることがあり、 モー夕にもこのような 厳しい環境下での安定した動作が要求される。 しかし、 従来のフェライ ト 磁石は、 上述したように低温環境下での保磁力の劣化が著しく、 問題があ つた。
また、 これらの特性を満足するものであっても、 減磁曲線における角型 性 (Hk / H c J) が低いものでは (B H ) max が低くなると共に、 経時変化 が大きくなるなどの問題がある。
一方、 水系溶媒を用いた製造工程においても、 有機溶媒系を用いた場合 に得られる高い配向度を得ることができれば製造が容易となり、 生産性の 面で有利であるばかりか、 環境を汚染する恐れもなく、 汚染防止のための 設備の必要もなくなる。 発明の開示
本発明の目的は、 M型フェライ トの飽和磁化と磁気異方性とを同時に高 めることにより、 従来の M型フェライ 卜磁石では達成不可能であった高い 残留磁束密度と高い保磁力とを有し、 保磁力の温度特性が極めて優れ、 特 に低温域においても保磁力の低下が少ない優れた磁気特性を有し、 しかも 減磁曲線の角形性にも優れたフェライ ト磁石およびその製造方法を提供す ることである。
また、 本発明の他の目的は、 高価な C oの含有量を少なく しても高特性 を得ることの可能なフェライ ト磁石およびその製造方法を提供することで ある。
また、 本発明の他の目的は、 水系の製造工程でも配向度が溶剤系に匹敵 する値の得られるフェライ ト磁石の製造方法を提供することである。
さらには、 良好な特性を有するモー夕および磁気記録媒体を提供するこ
とである。
このような目的は、 下記 ( 1 ) 〜 (2 6) のいずれかの構成により達成 される。
( 1) A (Aは S r, B aまたは C a) , C oおよび R 〔Rは希土類 元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表 す〕 を含有する六方晶フェライ卜の主相を有する磁石粉末であって、 少なくとも 2つの異なるキュリ一温度を有し、 この 2つの異なるキュリ —温度は 400t〜 480での範囲に存在し、 かつこれらの差の絶対値が 5で以上である磁石粉末。
(2) 前記 Rが少なくとも L aを含むものである上記 ( 1 ) の磁石粉 末。
(3) 前記六方晶フェライ トは、 マグネトプランバイ ト型フェライ ト である上記 (1) または (2) の磁石粉末。
(4) 前記六方晶フェライトは、
S r、 B a、 C aおよび P bから選択される少なくとも 1種の元素であ つて、 S rまたは B aを必ず含むものを A' とし、
希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元 素を Rとし、
C oであるか C oおよび Z nを Mとしたとき、
A' , R, F eおよび Mから構成され、
それぞれの金属元素の総計の構成比率が、 全金属元素量に対し、
A' : 1〜 1 3原子%、
R : 0. 05〜 1 0原子%、
F e : 80〜 9 5原子%、
M: 0. 1〜 5原子%
である上記 (1) 〜 (3) のいずれかの磁石粉末。
( 5 ) 前記 M中の C oの比率が 1 0原子%以上である上記 ( 1 ) 〜 (4) のいずれかの磁石粉末。
(6) — 5 0〜 5 0でにおける保磁力の温度係数 (絶対値) が 0. 1 %Z°C以下である上記 (1) 〜 (5) のいずれかの磁石粉末。
(7) 上記 ( 1) 〜 (6) のいずれかの磁石粉末を含むボンディッ ド 磁石。
(8) 上記 (7) のボンディット磁石を有するモー夕。
(9) 上記 (1) 〜 (6) のいずれかの磁石粉末を含む磁気記録媒体。
( 1 0) A (八は 8 &または〇 &) , C oおよび R 〔Rは希土 類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表 す〕 を含有する六方晶フェライ卜の主相を有する焼結磁石であって、 少なくとも 2つの異なるキュリ一温度を有し、 この 2つの異なるキュリ 一温度は 40 0 〜 48 0°Cの範囲に存在し、 かつこれらの差の絶対値が 5で以上である焼結磁石。
( 1 1 ) 前記 Rが少なくとも L aを含むものである上記 ( 1 0) の焼 結磁石。
( 1 2) 前記六方晶フェライ トは、 マグネトプランバイ ト型フェライ トである上記 (10) または ( 1 1) の焼結磁石。
(1 3) 前記六方晶フェライトは、
S r、 B a、 C aおよび P bから選択される少なくとも 1種の元素であ つて、 S rまたは B aを必ず含むものを A ' とし、
希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元 素を Rとし、
C oであるか C oおよび Z nを Mとしたとき、
A' , R, F eおよび Mから構成され、
それぞれの金属元素の総計の構成比率が、 全金属元素量に対し、
A' : 1〜 1 3原子%、
R : 0. 05〜 1 0原子%、
F e : 80〜 95原子%、
M: 0. 1〜 5原子%
である上記 ( 10) 〜 (1 2) のいずれかの焼結磁石。
( 14) 前記 M中の C oの比率が 1 0原子%以上である上記 ( 1 0) 〜 ( 1 3) のいずれかの焼結磁石。
( 1 5 ) 角形性 Hk ZHcJが 9 0 %以上である上記 ( 1 0 ) 〜 ( 1
4) のいずれかの焼結磁石。
( 1 6 ) 配向度 I r / I s が 9 6 %以上である上記 ( 1 0) 〜 ( 1
5) のいずれかの焼結磁石。
( 1 7) c面からの X線回折強度の合計 (∑ I (0 0 L) ) と全ての 面からの X線回折強度の合計 (∑ I (h k L) ) との比が 0. 8 5以上で ある上記 ( 1 0) 〜 ( 1 5) のいずれかの焼結磁石。
( 1 8) — 50〜 5 0°Cにおける保磁力の温度係数 (絶対値) が 0. 25 %Z°C以下である上記 ( 1 0) 〜 ( 1 7) のいずれかの焼結磁石。
( 1 9) 上記 ( 1 0) ~ ( 1 8) のいずれかの焼結磁石を有するモー 夕。
(2 0) A (Aは S r, B aまたは C a) , C o, R 〔Rは希土類元 素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表す〕 および F eを含有する六方晶フェライ卜の主相を有し、
少なくとも 2つの異なるキュリー温度を有し、 この 2つの異なるキュリ 一温度は 40 0t:〜 48 0°Cの範囲に存在し、 かつこれらの差の絶対値が
5 以上である薄膜磁性層を有する磁気記録媒体。
(2 1 ) A (Aは S r, B aまたは C a) , C o, R 〔Rは希土類元 素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表す〕 および F eを含有する六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石を製造す るに当たり、
前記構成元素の一部、 または全部を、
少なくとも S r, B aまたは C aを含有する六方晶フェライ トを主相と する粒子に添加し、
その後、 成形し、 本焼成を行う六方晶フヱライト焼結磁石の製造方法。
(2 2) 前記構成元素の一部は、 C oおよび R 〔Rは希土類元素 (Y を含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表す〕 から選 択される 1種または 2種以上の元素である上記 (2 1 ) の六方晶フェライ ト焼結磁石の製造方法。
(23) 前記構成元素の一部、 または全部を添加するに際し、 さらに、 S iおよび C aを添加する上記 (2 1 ) または (2 2) の六方 晶フェライト焼結磁石の製造方法。
(24) 前記構成元素の一部、 または全部を添加するに際し、 さらに、 分散剤を添加する上記 (2 1 ) 〜 (2 3) のいずれかの六方晶 フェライト焼結磁石の製造方法。
(2 5) 前記構成元素の一部または全部は、 粉砕時に添加される上記 (2 1) 〜 (24) のいずれかの六方晶フェライ ト焼結磁石の製造方法。
(2 6) 前記分散剤は、 水酸基およびカルボキシル基を有する有機化 合物またはその中和塩もしくはそのラク トンであるか、 ヒロドキシメチル カルボ二ル基を有する有機化合物であるか、 酸として解離し得るエノ一ル 形水酸基を有する有機化合物またはその中和塩であり、
前記有機化合物が、 炭素数 3〜2 0であり、 酸素原子と二重結合した炭 素原子以外の炭素原子の 5 0 %以上に水酸基が結合しているものである請 求項 24または 2 5の六方晶フェライ ト焼結磁石の製造方法。 作用
本発明者らは、 特願平 9— 5 6 8 5 6号において、 上記磁気特性の改善 について検討した結果、 例えば L aや C oを含有するマグネ卜ブランパイ ト型 S rフェライ トにおいて、 高い磁気特性と優れた HcJの温度特性が得 られることを見出した。 しかし、 この組成におけるフェライ ト焼結磁石を 従来の製法、 すなわち、 基本組成となる全ての原料を混合した後、 仮焼、 粉砕、 成形、 焼成を行う製法により製造すると、 8 0〜 9 0 %の角型性 (Hk /HcJ) しか得ることができなかった。 ここで、 上記のような 「原 料混合時における添加による製法」 とは、 S r, F eおよび L aや C oな どの主組成成分を仮焼前の原料混合段階で添加する方法であり、 成分の均 一性が向上し易いため優れた製法と従来は考えられていた。
例えば、 特開平 1 0— 1 49 9 1 0号公報、 第 3頁第 4欄第 1 1行〜第 1 7行には、 「以上の基本組成物は以下に示すフェライ ト磁石の標準製造 工程の仮焼段階で、
混合—仮焼—粉砕—成形—焼結
実質的に形成し原料粉末として粉砕に供することが望ましい。 即ち、 尺お よび M元素は上記工程の混合段階で加えた方が仮焼と焼結の 2回の高温過 程を経ることとなり、 固体拡散が進行してより均一な組成物が得られ る。 」 という記述がある。 前記特願平 9一 568 56号に記載の実施例も、 全てこの製法により焼結磁石を作製している。 一方、 本発明者らは、 国際 公開 WO 98 / 2 5 278号公報 (特願平 8 - 3 3 7445号) において、
水系プロセスでも高配向度が得られる製法を提案するに至った。 しかしな がら、 この製法を用いたとしても、 例えば、 特開平 6— 5 3 0 64号で提 案されているような有機溶剤系を用いたプロセスで得られる配向度 I r / I s = 9 7〜98 %と比較すると十分なものとはいえなかった。
そこで、 本発明者らはこれらの点に鑑み、 鋭意研究を重ねた結果、 上記 特願平 9 - 5 6 8 56号に示されるようなマグネトプランバイ ト型フェラ ィ 卜において、 2つの異なるキュリー温度を有する構造とすることにより、 角型性の高い磁石を作製可能であることを見出した。 さらに、 この構造と することにより C o含有量を少量化することも可能となる。
また、 本発明者らはこの構造を実現する 1つの製法として、 A (Aは S r , B a, または C a) , R 〔Rは希土類元素 (Yを含む) および B iか ら選択される少なくとも 1種の元素を表す〕 , C oおよび F eのうち少な くとも 1種類の元素の一部、 または全部を、 それらの元素の一部、 または 全部を除いたフェライ トに添加し、 成形、 焼成する方法が適していること を見出した。 そして、 この製造方法の場合に、 例えば、 ダルコン酸カルシ ゥムのような国際公開 WO 9 8 / 2 5 2 7 8号公報 (特願平 8 - 3 3 74 45号) に記載の水系分散剤をさらに添加すると、 有機溶剤系に匹敵する ほどの配向度が得られることを見出した。
ここで、 この製法についてより具体的に説明する。
例えば、 S r : L a : F e : C o = 0. 8 : 0. 2 : 1 1. 8 : 0. 2 の組成の焼結磁石を作製する場合、 従来は、 S i〇2 や C a C〇3 等の焼結 助剤としての添加物を除いた全ての元素を仮焼前の原料配合段階で混合し て仮焼を行い、 その後 S i 0, や C a C〇:i 等を添加して粉砕、 成形、 焼成 を行うという方法により主に製造されてきた。
これに対して、 例えば、 原料配合時には S r : F e = 0. 8 : 9. 6
(= 1 : 1 2) の組成で混合し、 仮焼を行い (このとき、 仮焼粉は M型 S rフェライ トとなる) 、 その後、 L a, F e , C oを各々 0. 2 : 2. 2 : 0. 2の比率で添加することにより、 S r : L a : F e : C o = 0. 8 : 0. 2 : 1 1. 8 : 0. 2の最終組成とすることができる。 この場合、 L a, F e, C oの添加は、 例えば共沈法、 フラックス法等によって作製 した S rフェライト粉末に対して行ってもよい。
また、 配合時には S r : F e = 0. 8 : 1 1. 8 (= 1 : 1 4. 7 5) の組成で混合し、 仮焼を行い (このとき、 仮焼粉は M型 S rフェライ トと α - F e 2 O の 2相状態となる) 、 その後 L a, (: 0を各々 0. 2 : 0. 2の比率で添加することにより、 S r : L a : F e : C o= 0. 8 : 0. 2 : 1 1. 8 : 0. 2の最終組成とすることもできる。
上記の例のように、 A (Aは S r , B aまたは C a) , C o, R 〔Rは 希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素 を表す〕 , および F eを含有する六方晶マグネトプランパイ ト型フェライ 卜の主相を有する焼結磁石の製造方法において、 前記構成元素、 少なくと も Rおよび C oの一部、 またはその全部を仮焼後に添加し、 成形し、 本焼 成を行う焼結磁石の製造方法の場合に 2つの異なるキュリー温度 (T c ) を有する構造が実現可能となり、 上記のような優れた特性を実現すること ができる。 なお、 A (Aは S r, B aまたは C a) , C o, R 〔Rは希土 類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表 す〕 , および F eの各元素は、 その酸化物、 または炭酸塩や水酸化物等の 焼成により酸化物となる化合物として添加すればよい。
以上は 2つのキュリ一点 T cを有する焼結磁石の製造法であるが、 フエ ライ ト粒子の製造法に応用することもできる。 すなわち、 上記焼結磁石の 製造工程における成形に代えて造粒を行い、 焼成後必要に応じて再度粉砕
を行うことにより、 少なくとも 2つの T cを有するフェライ ト粒子を得る ことができる。 また、 S r, ? 6ぉょびし &, C o等の主組成成分を、 仮 焼前の原料混合段階で添加する方法でも、 仮焼時の温度、 時間、 および雰 囲気等を制御することによって、 L aや C oの拡散過程を制御して、 少な くとも 2つの T cを有するフェライト粒子を得ることができる。
上記のような製造方法により、 何故 2つの異なるキユリ一温度を有する 構造とすることができるのか、 詳細は不明であるが、 次のように考えられ る。 すなわち、 上記の例の場合、 本焼成時において S r (または B a、 ま たは C a) フェライ トと、 後から添加した添加物 (L a, C o, F e) の 反応が生じるが、 その過程で L aと C oの濃度の高い M型フェライ ト部分 と、 濃度の低い M型フェライ ト部分ができると考えられる。 M型フェライ 卜の粒子に対して、 L aや C oが拡散していくとすると、 粒子 (焼結体グ レイン) の中心部よりも表層部で L aや C oの濃度が高いとも考えられる。 キュリー温度は、 L aや C oの置換量、 特に L aの置換量に依存するため、 キュリー温度が少なくとも 2つ発現する現象は、 このような組成成分が不 均一になっているような構造を反映しているためと考えられる。
また、 本発明における好ましい組成の M型フェライ トは、 少なくとも、 構造物全体として L aと C oを共に最適量含有させるような組成とする。 その結果、 I sを低下させず、 むしろ I sを高めると同時に K,を高めるこ とにより ΗΛを増加させることができ、 これにより高 B rかつ高 HcJを実現 した。 具体的には、 本発明の焼結磁石では、 2 5 °C程度の常温において、 保磁力 Hc】 (単位 kOe) と残留磁束密度 B r (単位 kG) とが、 HcJ≥4のと さ
式 I B r + 1ノ 3 HcJ≥ 5. 7 5
で、 HcJく 4のとき
式 II B r + 1 / 1 0 HcJ≥4. 82
を満足する特性が容易に得られる。 従来の S rフェライ ト焼結磁石では、 4. 4kGの B rと 4. OkOeの HcJとが得られたことは報告されているが、 He Jが 4 kOe以上であって、 かつ上記式 Iを満足する特性のものは得られて いない。 すなわち、 HcJを高くした場合には B rが低くなつてしまう。 本 発明の焼結磁石において、 C oと Z nとを複合添加した場合、 保磁力は C o単独添加よりも低くなり、 4k0e を下回ることもある力 残留磁束密度 は著しく向上する。 このとき、 上記式 IIを満足する磁気特性が得られる。 従来、 HcJが 4k0e未満の S rフェライト焼結磁石において、 上記式 IIを満 足するものは得られていない。
本発明によるフェライ トは、 異方性定数 (Κ,) または異方性磁場 (Η Α) が従来のフェライ トよりも大きくなるため、 同じ粒子サイズであればよ り大きな HcJが得られ、 また同じ HcJを得るのであれば、 粒子サイズを大 きくすることができる。 例えば焼結体の平均粒径が、 0. 3〜 l im だと 4. 5 kOe以上の HcJが得られ、 l〜2 im でも 3. 5k0e 以上の HcJを得 ることができる。 粒子サイズを大きくした場合は、 粉砕時間や成形時間を 短縮することができ、 また、 製品歩留まりの改善が可能となる。
本発明は、 特に焼結磁石に適用した場合に HcJ向上効果が大きいが、 本 発明にしたがって製造されたフェライ ト粉末をプラスチックやゴムなどの バインダと混合したボンディッド磁石としてもよい。
また、 磁石粉末をバインダと混練して塗料化し、 これを樹脂等からなる 基体に塗布し、 必要に応じて硬化することにより磁性層を形成すれば、 塗 布型の磁気記録媒体とすることができる。
本発明の磁石材料は Hc】の温度依存性が小さく、 特に本発明の磁石粉末 では He]の温度依存性が著しく小さい。 具体的には、 本発明の焼結磁石の
一 5 0 5 0 における HcJの温度係数 (絶対値) は 0. 2 5 %Z°C以下 であり、 0. 2 0 % で以下とすることも容易にできる。 また、 本発明の 磁石粉末の一 50 ~ 5 0 における Hc】の温度係数 (絶対値) は 0. 1 % ノで以下であり、 0. 0 5 %Z°C以下とすることも容易にでき、 温度係数 をゼロとすることも可能である。 そして、 このように HcJの温度特性が良 好であることから、 ― 2 5 において下記式 IIIを満足する良好な磁気特性 が得られる。 低温環境下におけるこのような高磁気特性は、 従来の S rフ ェライト磁石では達成できなかったものである。
式 III B r + 1 / 3 HcJ≥ 5. 9 5
ところで、 Bull. Acad. Sci. USSR, phys. Ser. (English Trans 1. )vol.25, (19 61)ppl405-1408 (以下、 文献 1 ) には、
B a XM3 + XF e 12一 XM2 + X〇 19
で表される B aフェライ トが記載されている。 この B aフェライ 卜におい て、 M3 +は L a3 + P r 3 +または B i 3 +であり、 M2 +は C o 2 +または N i 2 + である。 文献 1の B aフェライ トは、 製造方法が不明確であり、 しかも粉 体か焼結体か不明確であるが、 L aおよび C oを含有する組成という点で は本発明のフェライ 卜と類似している。 文献 1の Fig. 1には、 L aおよび C oを含有する B aフェライ トについて Xの変化に伴う飽和磁化の変化が 記載されているが、 この Fig. 1では Xの増大にともなって飽和磁化が減少 している。 また、 文献 1には保磁力が数倍になったとの記載があるが、 具 体的数値の記載はない。 また、 キュリー温度 T cに関する記述も全く見ら れない。
これに対し本発明では、 六方晶フェライ ト焼結磁石において、 し &と〇 oとをそれぞれ最適量含有させた組成で、 かつ少なくとも 2つの T cを有 する構造とすることにより、 HcJの著しい向上と共に、 B rの微増を実現
し、 かつ、 HcJの温度依存性の著しい改善をも成し遂げたものである。 ま た、 本発明は、 六方晶フェライ ト磁石粉末において、 L aと C oとをそれ ぞれ最適量含有させた組成で、 かつ 2つの T cを有する構造とすることに より、 He Jを増大させると共にその温度依存性を著しく減少させたもので ある。 L aおよび C oを含有させ、 かつ少なくとも 2つの T cを有する構 造としたときにこのような効果が得られることは、 本発明において初めて 見出されたものである。
Indian Journal of Pure & Appl ied Physics Vol.8, July 1970, pp.412-41 5 (以下、 文献 2) には、
式 L a3+Me 2十 F e :'+,,0, 9
(Me 2 + =Cu2 +、 C d2 +、 Z n2 +、 N i 2 +、 C o2 +または Mg2+) で表わされるフェライ トが記載されている。 このフェライ トは、 S rまた は B aまたは C aを含有しないという点で、 本発明の磁石材料と異なる。 さらに、 文献 2において Me 2 + =C o の場合の飽和磁化 σ sは、 室温で 4 2cgs unit, O Kで 5 Ocgs unitという低い値である。 また、 具体的な値 は示されていないが、 文献 2には、 保磁力は低く磁石材料にはならない、 という記述がある。 これは、 文献 2記載のフェライ トの組成が本発明範囲 と異なるためと考えられる。 さらに、 Me 2 + =C o2+ の T cが 80 0 ° k
(= 5 2 7 °C) という記述があるが、 T cは本発明の温度範囲を大きくは ずれており、 さらに T cが 2段になるなどの記述は一切みられない。
特開昭 62 - 1 0041 7号公報 (以下、 文献 3) には、
式 Mx ( I ) My (II) Mz (III) F e , 2 - (y + z, O , «
で表される組成の等軸へキサフェライ ト顔料類が記載されている。 上記式 において、 M ( I ) は、 S r、 B a、 希土類金属等と、 一価の陽イオンと の組み合わせであり、 M (II) は、 F e (II) 、 Mn、 C o、 N i、 C u、
Z n、 C dまたは Mgであり、 M (III) は T i等である。 文献 3に記載さ れたへキサフェライ ト顔料類は、 希土類金属と C oとを同時に含みうる点 では本発明の磁石材料と同じである。 しかし、 文献 3には、 L aと C oと を同時に添加した実施例は記載されておらず、 これらの同時添加により飽 和磁化および保磁力が共に向上する旨の記載もない。 しかも、 文献 3の実 施例のうち C oを添加したものでは、 同時に元素 M (III) として T iが添 加されている。 元素 M (III) 、 特に T iは、 飽和磁化および保磁力を共に 低下させる元素なので、 文献 3において本発明の構成および効果が示唆さ れていないのは明らかである。
特開昭 62 - 1 1 9 760号公報 (以下、 文献 4) には、
マグネトプランバイ ト型のバリゥムフェライトの B aの一部を L aで置 換するとともに、 F eの一部を C oで置換したことを特徴とする光磁気記 録材料が記載されている。 この B aフェライ トにおいて、 L aおよび C o を含有する点では本発明の S rフェライトと類似しているようにも見える。 しかし、 文献 4のフェライ トは光の熱効果を利用して磁性薄膜に磁区を書 き込んで情報を記録し、 磁気光学効果を利用して情報を読み出すようにし た 「光磁気記録」 用の材料であり、 本発明の磁石材料とは技術分野が異な る。 また、 文献 4は ( I ) の組成式で B a, L a, C oを必須とし、 式 (I
I) および (ΙΠ) では、 これに 3価、 または 4価以上の金属イオン (特定 されていない) が添加された場合が示されているのみである。 また、 式 (I
II) において、 G a, A 1 , I η等の 3価のイオンを添加した場合に、 Τ cが低下する旨の記述があるが、 T cが 2段になる等の記述は全くみられ ない。
特開平 1 0— 1499 1 0号公報 (以下文献 5) には、 「 (S r ,— XRX) O - n 〔 (F e ,-yMv) 2〇:!〕 (ここで Rは、 L a、 N d、 P rの内少なく
とも 1種以上、 Mは、 Mn, C o, N i, Z nのうちの少なくとも 1種以 上) からなる基本組成を有するフェライト磁石において、
0. 05≤x≤ 0. 5
〔x (2. 2 n) ≤y≤ Cx · ( 1. 8 n) 〕
5. 70≤n< 6. 00
であることを特徴とするフェライ ト磁石およびその製造方法」 が記載され ている (なお、 この文献 5は先願であり、 特許法第 2 9条の 2の規定に該 当するものである) 。 このフェライ ト粒子は、 L aと C oを同時に含有す る点において本発明と一部組成を同じにしている。 しかし、 文献 5には、 キュリー温度に関する記載は一切なく、 実施例の特性も B r = 4. 3kG, HcJ= 3. 5k0e程度の低いものである。 さらに、 第 3頁第 4欄第 1 1行〜 第 1 7行には、 「以上の基本組成物は以下に示すフェライ ト磁石の標準製 造工程の仮焼段階で、
混合—仮焼—粉碎—成形—焼結
実質的に形成し原料粉末として粉碎に供することが望ましい。 即ち、 Rお よび M元素は上記工程の混合段階で加えた方が仮焼と焼結の 2回の高温過 程を経ることとなり、 固体拡散が進行してより均一な組成物が得られ る。 」 という記述があり、 本発明の製造方法とは明らかに異なっており、 これによつて得られる焼結体の構造も異なっていると考えられる。
本発明の組成とは異なる六方晶フェライ トにおいて、 キュリー温度が 4 0 0〜 48 0 °Cで 2段になる場合があることは、 従来から知られていた。 例えば、 特開平 9 - 1 1 5 7 1 5号公報の図 2には、 L aと Z nを含有さ せた S rフェライ トにおいて、 2つの T cを有する場合が示されている。
しかし、 このときに磁気特性等が改善されることはなく、 実施例 7に B2 0:, 添加などにより、 キュリー温度を一段にする方が好ましい旨の記述が
あることからわかるように、 むしろ組成成分の均一性を向上させて、 磁気 特性等の改善を図っていた。
これに対して、 A, C 0および Rを含有する組成の六方晶フェライ トに おいて、 キュリー温度を少なくとも 2段もつような、 ある種の不均一な構 造とすることで優れた磁気特性が得られるということは、 本発明者らが初 めて見出したことである。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の焼結磁石サンプル 1の a面の組織を S E Mにより撮影 した図面代用写真である。
図 2は、 本発明の焼結磁石サンプル 1の c面の組織を S E Mにより撮影 した図面代用写真である。
図 3は、 比較サンプル 3の a面の組織を S E Mにより撮影した図面代用 写真である。
図 4は、 比較サンプル 3の c面の組織を S E Mにより撮影した図面代用 写真である。
図 5は、 本発明サンプル 1の σ— Τ曲線を示すグラフである。
図 6は、 本発明サンプル 2の σ— Τ曲線を示すグラフである。
図 7は、 比較サンプル 1の σ— Τ曲線を示すグラフである。
図 8は、 本発明サンプルの L a C o置換量別配向度を示したグラフであ る。
図 9は、 本発明サンプルの、 H c J— B r 特性を示したグラフである。 図 1 0は、 水系後添加の本発明サンプルと、 有機溶剤系前添加の比較サ ンプルとの、 キュリー点 T cの Xに対する依存性を示したグラフである。 図 1 1は、 水系後添加の本発明サンプルと、 有機溶剤系前添加の比較サ
ンプルとの、 He Jの Xに対する依存性を示したグラフである。
図 1 2は、 水系後添加の本発明サンプルと、 有機溶剤系前添加の比較サ ンプルとの、 角型性 (Hk ZHcJ) の xに対する依存性を示したグラフで ある。
図 1 3は、 水系後添加の本発明サンプルと、 有機溶剤系前添加の比較サ ンプルとの異方性磁場 (HA ) を示したグラフである。
図 14は、 本発明サンプルの配向度を示すグラフである。
図 1 5は、 本発明サンプルの仮焼温度 1 2 50 °Cでの密度別磁気的配向 度を示したグラフである。
図 1 6は、 本発明サンプルの仮焼温度 1 2 50 °Cでの Hd-Br および H k ZHcJを示したグラフである。
図 1 7は、 本発明サンプルの 1 22 0 °Cでの焼結体サンプルの角型性 Hk ノ He Jを示したグラフである。
図 1 8は、 本発明サンプルの置換量別磁気的配向度 ( I r / I s ) を示 したグラフである。
ある。
図 1 9は、 1 20 0 °C、 1 2 2 0 °C、 1 240 °Cでそれぞれ焼成したサ ンプルの、 磁気特性を示したグラフである。
図 2 0は、 有機溶剤系前添加の本発明サンプルと、 水系前添加の比較サ ンプルとの、 キュリー点 T cの Xに対する依存性を示したグラフである。 図 2 1は、 有機溶剤系前添加の本発明サンプルと、 水系前添加の比較サ ンプルとの、 He Jの Xに対する依存性を示したグラフである。
図 2 2は、 2つのキユリ一温度の求め方を説明するための参考グラフで ある。
発明を実施するための最良の形態
本発明の磁石材料は、
S r , B aまたは C a, C o, R 〔Rは希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表す〕 を含有する六方晶マグ ネトプランバイ ト型フェライ トであって、 少なくとも 2つの異なるキユリ —温度 T c l, T c 2を有し、 この 2つの異なるキュリー温度 T c 1, T c 2は 40 0〜480 °Cであり、 かつこれら T c 1, T c 2の差の絶対値 が 5 °C以上である。 このように 2つの異なるキユリ一温度を有する構造と することで、 角形性 Hk ZHcJが著しく改善されると共に、 高価な C oや Rの含有量を少なくすることが可能になる。
キュリー温度 (T c ) は、 磁性材料が強磁性から常磁性に変化するとき の温度である。 T cを測定するにはいくつかの方法があるが、 特に複数の T cをもつ磁性材料の場合は、 ヒー夕などで測定サンプルの温度を変化さ せながら、 磁化一温度曲線 (σ _Τ曲線) を描くことにより T cを求める。 ここで、 磁化の測定には、 振動式磁力計 (V SM) が多く用いられる。 こ れは、 サンプルの周囲にヒー夕等を設置する空間を確保しやすいためであ る。
試料は粉末でも焼結体でもよいが、 粉体の場合は耐熱性の接着剤のよう なもので固定する必要がある。 また、 温度の均一性と追随性をよくするた め、 磁化の測定精度が確保できる範囲で、 サンプルはなるべく小さくする ことが好ましい (本発明の実施例では、 直径 : 5 mm、 高さ : 6 . 5 mm程 度) 。 また、 周囲温度とサンプルの温度を一致させるために、 周囲温度の 変化速度を遅くすることが好ましい。
サンプルは異方性でも、 等方性でもよいが、 異方性サンプルの場合は磁 化容易軸方向である c軸方向に着磁後、 c軸方向に測定することが好まし
い。 等方性サンプルの場合は、 着磁方向と同一方向の磁化を測定する。 サ ンプルの着磁は、 1 0 kOe以上の充分に大きな磁場を印加して行う。 通常 は常温で着磁した後、 温度を上げながらサンプルの磁化を測定していく力 このとき磁場は全く印加しないか、 印加しても 1 kOe以下の弱い磁場下で 測定することが好ましい。 これは、 大きな磁場を印加しながら測定すると、 キュリ一温度以上の常磁性成分も検出してしまい、 T cが不明確になりや すいためである。
2つのキュリー温度が表れる例を図 2 2に示す。 図に示すように、 T e l より高温の σ— T曲線は、 上に凸となる。 この場合、 一段目のキュリー温 度 (T e l ) は、 接線①と接線②の交点から求めることができる。 また、 二段目のキュリー温度 (T c 2 ) は、 接線③と σ = 0の軸との交点から求 められる。
2つの異なるキユリ一点 T c 1, T c 2は、 その差の絶対値が 5 °C以上、 好ましくは 1 0°C以上である。 これらのキュリー温度は 40 0〜48 0°C、 好ましくは 4 0 0〜 4 7 0で、 さらには 4 3 0〜 4 6 0 °Cの範囲である。 なお、 純粋な M型 S rフェライ 卜の T cは 46 5 °C程度である。
ここで、 温度 T e l における磁化 (σ ΐ ) の、 2 5 °Cの室温における磁 化 ( ひ RT) に対する割合 (σ ΐ /GRT) は、 好ましくは 0. 5 %〜 3 0 %、 より好ましくは 1 %〜 2 0 %、 さらに好ましくは 2 %〜 1 0 %である。 び 1 /σίΤが 0. 5 %未満の場合、 2段目の T c 2 は実質的に検出することが 困難になる。 また、 σ ΐ ΖσΙΤがこの範囲を外れると本発明の効果が得難 くなる。
この 2つのキュリー温度は、 本発明のフェライ ト結晶の組織構造が、 後 述する製造方法などにより磁気的に異なる Μ型フェライ 卜の 2相構造とな るために発現すると考えられる。 ただし、 通常の X線回折法では Μ相の単
相が検出される。
本発明の焼結磁石の角形性 Hk /HcJは、 好ましくは 90 %以上、 特に 9 2 %以上が得られる。 なお、 最高では 9 5 %に及ぶ。 また、 本発明の焼 結磁石の配向度 I r I sは、 好ましくは 96. 5 %以上、 より好ましく は 9 7 %以上が得られる。 なお、 最高では 9 8 %程度に及ぶ。 配向度の向 上により、 高い B rが得られる。 また、 成形体の場合は、 磁気的配向度は 成形体密度に影響されるため、 正確な評価ができない場合がある。 このた め成形体の表面に対し X線回折測定を行い、 回折ピークの面指数と強度と から成形体の結晶学的な配向度 (X線配向度) を求める。 すなわち、 X線 配向度として Σ Ι ( 0 0 L) Z∑ I (h k L) を用いる。 ここで、 (0 0 L) は、 ( 0 04) や ( 0 0 6 ) 等の c面を総称する表示であり、 ∑ I ( 0 0 L) は ( 0 0 L) 面のすべてのピーク強度の合計である。 また、 (h k L) は、 検出されたすベてのピークを表し、 ∑ I (h k L) はそれ らの強度の合計である。 実際には、 特性 X線に C uK α線を用いる場合は、 例えば、 20が 1 0 ° 〜 80 ° の範囲で測定を行って、 この範囲のピーク強 度を計算に用いる。 この成形体の X線配向度は、 焼結体の配向度をかなり の程度支配する。 焼結体 c面の、 Σ Ι ( 0 0 L) /∑ 1 (h k L) は好ま しくは 0. 8 5以上、 より好ましくは 0. 9以上であり、 その上限として は 1. 0である。 なお、 下記の各実施例において、 図中配向度を∑ I ( 0 0 1 ) /∑ I (h k 1 ) として記載する場合がある。
本発明の磁石は、 S r, B aまたは C a, C o , R 〔Rは希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を表す〕 を 含有する六方晶マグネトプランバイ ト型フェライ トを主相に有し、 この主 相は好ましくは S r、 B a、 C aおよび P bから選択される少なくとも 1 種の元素であって、 S rまたは B aを必ず含むものを A' とし、 希土類元
素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元素を Rとし、 C oであるか C oおよび Z nを Mとしたとき、 A' , R, F eおよび Mそ れぞれの金属元素の総計の構成比率が、 全金属元素量に対し、
A' : 1〜 1 3原子%、
R : 0. 05〜 1 0原子%、
F e : 80〜 95原子%、
M: 0. 1 ~ 5原子%
である。
また、 より好ましくは、
A' : 3〜; L 1原子%、
R : 0. 2〜 6原子%、
F e : 8 3〜 94原子%、
M: 0. 3〜 4原子%であり、
さらに好ましくは、
A' : 3〜9原子%、
R : 0. 5〜4原子%、
F e : 86〜 93原子%、
M: 0. 5〜 3原子%である。
上記各構成元素において、 A' は、 S r、 B a、 〇 3ぉょび? 13から選 択される少なくとも 1種の元素であって、 S rまたは B aを必ず含む。 A' が小さすぎると、 M型フェライトが生成しないか、 a— F e 2〇:i 等の 非磁性相が多くなつてくる。 A' は S rを必ず含むことが好ましく、 A' が大きすぎると M型フェライトが生成しないか、 S r F e〇3 x 等の非磁性 相が多くなつてくる。 A' 中の S rの比率は、 好ましくは 5 1原子%以上、 より好ましくは 7 0原子%以上、 さらに好ましくは 1 0 0原子%である。
Α' 中の S rの比率が低すぎると、 飽和磁化向上と保磁力の著しい向上と を共に得ることができなくなってくる。
Rは、 希土類元素 (Υを含む) および B iから選択される少なくとも 1 種の元素である。 Rには、 L a、 Nd、 P r、 特に L aが必ず含まれるこ とが好ましい。 Rが小さすぎると、 Mの固溶量が少なくなり、 本発明の効 果が得られ難くなる。 Rが大きすぎると、 オルソフェライ ト等の非磁性の 異相が多くなつてくる。 R中において L aの占める割合は、 好ましくは 4 0原子%以上、 より好ましくは 7 0原子%以上であり、 飽和磁化向上のた めには Rとして L aだけを用いることが最も好ましい。 これは、 六方晶 M 型フェライ トに対する固溶限界量を比較すると、 L aが最も多いためであ る。 したがって、 R中の L aの割合が低すぎると Rの固溶量を多くするこ とができず、 その結果、 元素 Mの固溶量も多くすることができなくなり、 本発明の効果が小さくなつてしまう。 また、 B iを併用すれば仮焼温度お よび焼結温度を低くすることができるので、 生産上有利である。
元素 Mは、 C oまたは C oおよび Z nである。 Mが小さすぎると、 本発 明の効果が得難くなり、 Mが大きすぎると、 B rや HcJが逆に低下し本発 明の効果を得難くなる。 M中の C oの比率は、 好ましくは 1 0原子%以上、 より好ましくは 2 0原子%以上である。 C oの比率が低すぎると、 保磁力 向上が不十分となってくる。
また、 好ましくは上記の六方晶マグネトプランバイ ト型フェライトは、
A' ,-xRx (F e 12-yMy) z〇19
と表したとき、
0. 04≤ x≤ 0. 9、 特に 0. 04 x≤ 0. 6、
0. 04≤y≤ 0. 5、
0. 8≤ x/y≤ 5 ,
0 . 7≤ z≤ 1 . 2
である。
また、 より好ましくは
0 . 0 4≤ x≤ 0 . 5 、
0 . 0 4≤y≤ 0 . 5 、
0 . 8≤x / y≤ 5 、
0 . 7≤ z≤ 1 . 2
であり、 さらに好ましくは
0 . 1≤ x≤ 0 . 4、
0 . 1≤y≤ 0 . 4、
0 . 8≤ z≤ 1 . 1
であり、 特に好ましくは
0 . 9≤ z≤ 1 . 0 5
である。
上記式において、 Xが小さすぎると、 すなわち元素 Rの量が少なすぎる と、 六方晶フェライ トに対する元素 Mの固溶量を多くできなくなり、 飽和 磁化向上効果およびノまたは異方性磁場向上効果が不十分となってくる。
Xが大きすぎると六方晶フェライ ト中に元素 Rが置換固溶できなくなり、 例えば元素 Rを含むオルソフェライ 卜が生成して飽和磁化が低くなつてく る。 yが小さすぎると飽和磁化向上効果および Zまたは異方性磁場向上効 果が不十分となってくる。 yが大きすぎると六方晶フェライ ト中に元素 M が置換固溶できなつてくる。 また、 元素 Mが置換固溶できる範囲であって も、 異方性定数 (Κ , ) や異方性磁場 (Η Λ) の劣化が大きくなつてしまう。 ζが小さすぎると S rおよび元素 Rを含む非磁性相が増えるため、 飽和磁 化が低くなつてしまう。 zが大きすぎると α— F e 〇 相または元素 Mを
含む非磁性スピネルフェライ ト相が増えるため、 飽和磁化が低くなつてし まう。 なお、 上記式は不純物が含まれていないものとして規定されている。 上記式 I において、 x Z yが小さすぎても大きすぎても元素 Rと元素 M との価数の平衡がとれなくなり、 W型フェライト等の異相が生成しやすく なる。 元素 Mは 2価であるから、 元素 Rが 3価イオンである場合、 理想的 には x Z y = lである。 なお、 x Z yが 1超の領域で許容範囲が大きい理 由は、 yが小さくても F e F e 2 +の還元によって価数の平衡がとれるた めである。
組成を表わす上記式 Iにおいて、 酸素 (〇) の原子数は 1 9となってい るが、 これは、 Rがすべて 3価であって、 かつ x = y、 z = lのときの化 学量論組成比を示したものである。 Rの種類や x、 y、 zの値によって、 酸素の原子数は異なってくる。 また、 例えば焼成雰囲気が還元性雰囲気の 場合は、 酸素の欠損 (ペイカンシー) ができる可能性がある。 さらに、 F eは M型フェライ ト中においては通常 3価で存在するが、 これが 2価など に変化する可能性もある。 また、 C o等の Mで示される元素も価数が変化 する可能性があり、 これらにより金属元素に対する酸素の比率は変化する。 本明細書では、 Rの種類や x、 y、 zの値によらず酸素の原子数を 1 9と 表示してあるが、 実際の酸素の原子数は化学量論組成比から多少偏倚して いてもよい。
フェライ トの組成は、 蛍光 X線定量分析などにより測定することができ る。 また、 上記の主相の存在は X線回折や電子回折等から確認される。 磁石粉末には、 B 20 :iが含まれていてもよい。 B 2〇3を含むことにより仮 焼温度および焼結温度を低くすることができるので、 生産上有利である。 B 20 :iの含有量は、 磁石粉末全体の 0 . 5重量%以下であることが好まし い。 B .,〇:i含有量が多すぎると、 飽和磁化が低くなつてしまう。
磁石粉末中には、 N a、 Kおよび R bの少なくとも 1種が含まれていて もよい。 これらをそれぞれ N a 20、 K2Oおよび R b 20に換算したとき、 これらの含有量の合計は、 磁石粉末全体の 3重量%以下であることが好ま しい。 これらの含有量が多すぎると、 飽和磁化が低くなつてしまう。 これ らの元素を M1で表わしたとき、 フェライ ト中において M1は例えば
S Γ 1. 3 - 2 a R aM ' a - 0. 3 F Θ I , . 7 M o .3〇19
の形で含有される。 なお、 この場合、 0. 3<a≤ 0. 5であることが好 ましい。 aが大きすぎると、 飽和磁化が低くなつてしまう他、 焼成時に元 素 M 1が多量に蒸発してしまうという問題が生じる。
また、 これらの不純物の他、 例えば S i, A 1, G a , I n , L i, M g, Mn, N i , C r, C u, T i, Z r , G e , S n, V, Nb, T a, S b, A s , W, Mo等を酸化物の形で、 それぞれ酸化シリコン 1重量% 以下、 酸化アルミニウム 5重量%以下、 酸化ガリウム 5重量%以下、 酸化 インジウム 3重量%以下、 酸化リチウム 1重量%以下、 酸化マグネシウム 3重量%以下、 酸化マンガン 3重量%以下、 酸化ニッケル 3重量%以下、 酸化クロム 5重量%以下、 酸化銅 3重量%以下、 酸化チタン 3重量%以下、 酸化ジルコニウム 3重量%以下、 酸化ゲルマニウム 3重量%以下、 酸化ス ズ 3重量%以下、 酸化バナジウム 3重量%以下、 酸化ニオブ 3重量%以下、 酸化タンタル 3重量%以下、 酸化アンチモン 3重量%以下、 酸化砒素 3重 量%以下、 酸化タングステン 3重量%以下、 酸化モリブデン 3重量%以下 程度含有されていてもよい。
次に、 焼結磁石を製造する方法を説明する。
上記フェライ トを有する焼結磁石は、 原料粉末として、 通常、 F e, A (Aは S r, B aまたは C aであって、 必要により P bを有する) , C o, R 〔Rは希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1
種類の元素〕 を含有する化合物の粉末を用い、 これらの原料粉末の 2種以 上の混合物 (ただし、 F eおよび Aを必ず含む) を仮焼する。 そして、 仮 焼後、 さらに前記 F e, A (Aは S r, B aまたは C aであって、 必要に より P bを有する) , C o, R 〔Rは希土類元素 (Yを含む) および B i から選択される少なくとも 1種類の元素〕 を含有する化合物の粉末のうち、 少なくとも 1種または 2種以上を添加混合し、 粉砕、 成形、 焼成して製造 される。 前記 F e, A (Aは S r, B aまたは C aであって、 必要により P bを有する) , C o, R 〔Rは希土類元素 (Yを含む) および B iから 選択される少なくとも 1種類の元素〕 を含有する化合物の粉末としては、 酸化物、 または焼成により酸化物となる化合物、 例えば炭酸塩、 水酸化物、 硝酸塩等のいずれであってもよい。 原料粉末の平均粒径は特に限定されな いが、 特に酸化鉄は微細粉末が好ましく、 一次粒子の平均粒径が 1 以下、 特に 0. 5 m以下であることが好ましい。 なお、 上記の原料粉末の他、 必 要に応じて B 20:i等や、 他の化合物、 例えば S i, A 1 , G a , I n, L i , Mg, Mn, N i, C r , C u, T i, Z r , G e, S n, V, Nb, T a, S b , A s , W, Mo等を含む化合物を添加物あるいは不可避成分 等の不純物として含有していてもよい。
仮焼は、 空気中において例えば 1 0 0 0〜 1 3 5 0 で 1秒間〜 1 0時 間、 特に 1秒間〜 3時間程度行えばよい。
このようにして得られた仮焼体は、 実質的にマグネトプランバイ ト型の フェライ ト構造をもち、 その一次粒子の平均粒径は、 好ましくは 2 ^zm以下、 より好ましくは 1 m以下、 さらに好ましくは 0. l〜 l ^m、 最も好まし くは 0. 1〜0. 5 mである。 平均粒径は走査型電子顕微鏡により測定す ればよい。
次いで、 仮焼体を粉砕した後、 または粉砕時に前記 F e, A (Aは S r,
B aまたは C aであって、 必要により P bを有する) , C o , R 〔Rは希 土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なく とも 1種類の元 素〕 を含有する化合物の粉末の少なくとも 1種または 2種以上を混合し、 成形し、 焼結することにより製造する。 具体的には、 以下の手順で製造す ることが好ましい。 化合物の粉末の添加量は、 仮焼体の 1〜 1 0 0体積%、 より好ましくは 5〜 7 0体積%、 特に 1 0〜 5 0体積%が好ましい。
前記化合物のうちの R酸化物は、 水に対する溶解度が比較的大きく、 湿 式成形の際に流出してしまうなどの問題がある。 また、 吸湿性もあるため、 抨量誤差の原因になりやすい。 このため、 R化合物としては、 炭酸塩また は水酸塩が好ましい。
前記化合物の添加時期は仮焼後、 焼成前であれば特に規制されるもので はないが、 好ましくは次に説明する粉碎時に添加することが好ましい。 添 加される原料粉末の種類や量は任意であり、 同じ原料を仮焼前後で分けて 添加してもよい。 ただし、 C oまたは Rについては全量の 3 0 %以上、 特 に 5 0 %以上は仮焼後に行う後工程で添加することが好ましい。 なお、 添 加される化合物の平均粒径は、 通常 0 . 1〜 2 m 程度とする。
本発明では、 酸化物磁性体粒子と、 分散煤としての水と、 分散剤と添加 物とを含む成形用スラリーを用いて湿式成形を行うことが好ましいが、 分 散剤の効果をより高くするためには、 湿式成形工程の前に湿式粉砕工程を 設けることが好ましい。 また、 酸化物磁性体粒子として仮焼体粒子を用い る場合、 仮焼体粒子は一般に顆粒状であるので、 仮焼体粒子の粗粉砕ない し解砕のために、 湿式粉砕工程の前に乾式粗粉碎工程を設けることが好ま しい。 なお、 共沈法や水熱合成法などにより酸化物磁性体粒子を製造した 場合には、 通常、 乾式粗粉砕工程は設けず、 湿式粉碎工程も必須ではない 力 配向度をより高くするためには湿式粉砕工程を設けることが好ましい。
以下では、 仮焼体粒子を酸化物磁性体粒子として用い、 乾式粗粉碎工程お よび湿式粉砕工程を設ける場合について説明する。
乾式粗粉砕工程では、 通常、 B ET比表面積が 2〜 1 0倍程度となるま で粉砕する。 粉砕後の平均粒径は、 0. l〜 l zm 程度、 B ET比表面積 は 4〜 1 0m2/g程度であることが好ましく、 粒径の CVは 8 0 %以下、 特 に 1 0〜 7 0 %に維持することが好ましい。 粉砕手段は特に限定されず、 例えば乾式振動ミル、 乾式アトライター (媒体撹拌型ミル) 、 乾式ボール ミル等が使用できるが、 特に乾式振動ミルを用いることが好ましい。 粉碎 時間は、 粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。 なお、 乾式粉碎工程時に、 前記原料粉末の一部を添加することが好ましい。
乾式粗粉碎には、 仮焼体粒子に結晶歪を導入して保磁力 HcBを小さくす る効果もある。 保磁力の低下により粒子の磁気的凝集が抑制され、 分散性 が向上する。 これにより配向度が向上する。 粒子に導入された結晶歪は、 後の焼結工程において解放され、 焼結後には高い保磁力を有する永久磁石 とすることができる。
なお、 乾式粗粉碎の際には、 通常、 S i〇2 と、 焼成により C a Oとな る C a C〇3 とが添加される。 S i 02 および C a CO., は、 一部を仮焼前 に添加してもよく、 その場合には特性向上が認められる。 また、 S i 〇2 および C a C03 は、 後の湿式粉砕時に添加してもよい。
乾式粗粉砕の後、 粉砕された粒子と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、 これを用いて湿式粉砕を行う。 粉砕用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、 1 0〜 7 0重量%程度であることが好ましい。 湿式粉碎に用いる粉砕手段 は特に限定されないが、 通常、 ボールミル、 アトライター、 振動ミル等を 用いることが好ましい。 粉砕時間は、 粉砕手段に応じて適宜決定すればよ い。
湿式粉砕後、 粉砕用スラリーを濃縮して成形用スラリーを調製する。 濃 縮は、 遠心分離などによって行えばよい。 成形用スラリー中の仮焼体粒子 の含有量は、 6 0〜 9 0重量%程度であることが好ましい。
湿式成形工程では、 成形用スラリーを用いて磁場中成形を行う。 成形圧 力は 0 . 1〜 0 . 5 t on/cm2 程度、 印加磁場は 5〜 1 5 k0e 程度とすれば よい。
成型用のスラリーに非水系の分散媒を用いると、 高配向度が得られ好ま しいが、 本発明では好ましくは水系分散媒に分散剤が添加された成形用ス ラリーを用いる。 本発明で好ましく用いる分散剤は、 水酸基およびカルボ キシル基を有する有機化合物であるか、 その中和塩であるか、 そのラク ト ンであるか、 ヒロドキシメチルカルボ二ル基を有する有機化合物であるか、 酸として解離し得るエノ一ル型水酸基を有する有機化合物であるか、 その 中和塩であることが好ましい。
なお、 非水系の分散媒を用いる場合には、 例えば特開平 6 _ 5 3 0 6 4 号公報に記載されているように、 トルエン、 キシレン等のような有機溶媒 に、 例えば、 ォレイン酸、 ステアリン酸、 およびその金属塩等のような界 面活性剤を添加して、 分散媒とする。 このような分散媒を用いることによ り、 分散しにくいサブミクロンサイズのフェライ ト粒子を用いた場合でも 最高で 9 8 %程度の高い磁気的配向度を得ることが可能である。
上記水系分散媒を用いる場合の分散剤としての有機化合物は、 炭素数が 3〜 2 0、 好ましくは 4〜 1 2であり、 かつ、 酸素原子と二重結合した炭 素原子以外の炭素原子の 5 0 %以上に水酸基が結合しているものである。 炭素数が 2以下であると、 本発明の効果が実現しない。 また、 炭素数が 3 以上であっても、 酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子への水 酸基の結合比率が 5 0 %未満であれば、 やはり本発明の効果は実現しない。
なお、 水酸基の結合比率は、 上記有機化合物について限定されるものであ り、 分散剤そのものについて限定されるものではない。 例えば、 分散剤と して、 水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物 (ヒドロキシカル ボン酸) のラク トンを用いるとき、 水酸基の結合比率の限定は、 ラク トン ではなくヒドロキシカルボン酸自体に適用される。
上記有機化合物の基本骨格は、 鎖式であっても環式であってもよく、 ま た、 飽和であっても不飽和結合を含んでいてもよい。
分散剤としては、 具体的にはヒドロキシカルボン酸またはその中和塩も しくはそのラク トンが好ましく、 特に、 ダルコン酸 (C= 6 ; OH= 5 ; C OOH= 1 ) またはその中和塩もしくはそのラク トン、 ラク トビオン酸 (C = 1 2 ; OH= 8 ; C OOH= 1 ) 、 酒石酸 (C= 4 ; OH= 2 ; C OOH= 2 ) またはこれらの中和塩、 ダルコヘプトン酸ァーラク トン (C = 7 ; OH= 5 ) が好ましい。 そして、 これらのうちでは、 配向度向上効 果が高く、 しかも安価であることから、 ダルコン酸またはその中和塩もし くはそのラク トンが好ましい。
ヒドロキシメチルカルボ二ル基を有する有機化合物としては、 ソルボー スが好ましい。
酸として解離し得るエノ一ル型水酸基を有する有機化合物としては、 ァ スコルビン酸が好ましい。
なお、 本発明では、 クェン酸またはその中和塩も分散剤として使用可能 である。 クェン酸は水酸基およびカルボキシル基を有するが、 酸素原子と 二重結合した炭素原子以外の炭素原子の 5 0 %以上に水酸基が結合してい るという条件は満足しない。 しかし、 配向度向上効果は認められる。
上記した好ましい分散剤の一部について、 構造を以下に示す。
D-ダルコン酸 - D -グルコヘプトン酸 ァ-ラク卜ン
H
ラク卜ビ才ン酸
石酸
磁場配向による配向度は、 スラリーの上澄みの p Hの影響を受ける。 具 体的には、 pHが低すぎると配向度は低下し、 これにより焼結後の残留磁 束密度が影響を受ける。 分散剤として水溶液中で酸としての性質を示す化 合物、 例えばヒドロキシカルボン酸などを用いた場合には、 スラリーの上 澄みの pHが低くなつてしまう。 したがって、 例えば、 分散剤と共に塩基 性化合物を添加するなどして、 スラリー上澄みの p Hを調整することが好 ましい。 上記塩基性化合物としては、 アンモニアや水酸化ナトリウムが好 ましい。 アンモニアは、 アンモニア水として添加すればよい。 なお、 ヒド ロキシカルボン酸のナトリウム塩を用いることにより、 p H低下を防ぐこ ともできる。
フェライ ト磁石のように副成分として S i 02 および C a CO3 を添加す る場合、 分散剤としてヒドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いると、 主として成形用スラリー調製の際にスラリーの上澄みと共に S i〇2 およ び C a C〇:i が流出してしまい、 HcJが低下するなど所望の性能が得られ なくなる。 また、 上記塩基性化合物を添加するなどして pHを高くしたと きには、 S i〇2 および C a C〇3 の流出量がより多くなる。 これに対し、 ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩を分散剤として用いれば、 S i〇2 および C a C03 の流出が抑えられる。 ただし、 上記塩基性化合物を添加 したり、 分散剤としてナトリウム塩を用いたりした場合でも、 S i〇2 お よび C a CO:i を目標組成に対し過剰に添加すれば、 磁石中の S i O, 量お よび C a〇量の不足を防ぐことができる。 なお、 ァスコルビン酸を用いた 場合には、 S i〇2 および C a C〇:i の流出はほとんど認められない。 上記理由により、 スラリー上澄みの pHは、 好ましくは 7以上、 より好ま しくは 8〜 1 1である。
分散剤として用いる中和塩の種類は特に限定されず、 カルシウム塩ゃナ
トリウム塩等のいずれであってもよいが、 上記理由から、 好ましくはカル シゥム塩を用いる。 分散剤にナトリウム塩を用いたり、 アンモニア水を添 加した場合には、 副成分の流出のほか、 成形体や焼結体にクラックが発生 しゃすくなるという問題が生じる。
なお、 分散剤は 2種以上を併用してもよい。
分散剤の添加量は、 酸化物磁性体粒子である仮焼体粒子に対し、 好まし くは 0 . 0 5〜 3 . 0重量%、 より好ましくは 0 . 1 0〜 2 . 0重量%で ある。 分散剤が少なすぎると配向度の向上が不十分となる。 一方、 分散剤 が多すぎると、 成形体や焼結体にクラックが発生しやすくなる。
なお、 分散剤が水溶液中でイオン化し得るもの、 例えば酸や金属塩など であるときには、 分散剤の添加量はイオン換算値とする。 すなわち、 水素 イオンや金属イオンを除く有機成分に換算して添加量を求める。 また、 分 散剤が水和物である場合には、 結晶水を除外して添加量を求める。 例えば、 分散剤がダルコン酸カルシウム一水和物である場合の添加量は、 ダルコン 酸イオンに換算して求める。
また、 分散剤がラク トンからなるとき、 あるいはラク トンを含むときに は、 ラク トンがすべて開環してヒドロキシカルボン酸になるものとして、 ヒドロキシカルボン酸イオン換算で添加量を求める。
分散剤の添加時期は特に限定されず、 乾式粗粉砕時に添加してもよく、 湿式粉砕時の粉砕用スラリ一調製の際に添加してもよく、 一部を乾式粗粉 砕の際に添加し、 残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。 あるいは、 湿式 粉碎後に撹拌などによって添加してもよい。 いずれの場合でも、 成形用ス ラリー中に分散剤が存在することになるので、 本発明の効果は実現する。 ただし、 粉砕時に、 特に乾式粗粉砕時に添加するほうが、 配向度向上効果 は高くなる。 乾式粗粉碎に用いる振動ミル等では、 湿式粉砕に用いるボー
ルミル等に比べて粒子に大きなエネルギーが与えられ、 また、 粒子の温度 が上昇するため、 化学反応が進行しやすい状態になると考えられる。 した がって、 乾式粗粉碎時に分散剤を添加すれば、 粒子表面への分散剤の吸着 量がより多くなり、 この結果、 より高い配向度が得られるものと考えられ る。 実際に、 成形用スラリー中における分散剤の残留量 (吸着量にほぼ等 しいと考えられる) を測定すると、 分散剤を乾式粗粉砕時に添加した場合 のほうが、 湿式粉砕時に添加した場合よりも添加量に対する残留量の比率 が高くなる。 なお、 分散剤を複数回に分けて添加する場合には、 合計添加 量が前記した好ましい範囲となるように各回の添加量を設定すればよい。 成形工程後、 成形体を大気中または窒素中において 1 0 0〜 5 0 0 の 温度で熱処理して、 添加した分散剤を十分に分解除去する。 次いで焼結ェ 程において、 成形体を例えば大気中で好ましくは 1 1 5 0〜 1 2 5 0 °C、 より好ましくは 1 1 6 0〜 1 2 2 0 °Cの温度で 0. 5〜 3時間程度焼結し て、 異方性フェライ ト磁石を得る。
本発明の磁石の平均結晶粒怪は、 好ましくは 2 xm以下、 より好ましくは 1 m以下、 さらに好ましくは 0. 5〜 1. 0 mである力 本発明では平 均結晶粒径が 1 mを超えていても、 十分に高い保磁力が得られる。 結晶粒 径は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。 なお、 比抵抗は 1 0 °Ωπι 程度以上である。
なお、 前記成形体をクラッシャー等を用いて解砕し、 ふるい等により平 均粒径が 1 00〜 7 0 0 /im程度となるように分級して磁場配向顆粒を得、 これを乾式磁場成形した後、 焼結することにより焼結磁石を得てもよい。 なお、 前記の仮焼体のスラリーを用いた粉砕後、 これを乾燥し、 その後 焼成を行って磁石粉末を得てもよい。
本発明には、 薄膜磁性層を有する磁気記録媒体も包含される。 この薄膜
磁性層は、 上記した本発明の磁石粉末と同様に、 六方晶マグネトプランバ イ ト型フェライ ト相を有する。 また、 不純物等の含有量は上記と同等であ る。
本発明の磁石を使用することにより、 一般に次に述べるような効果が得 られ、 優れた応用製品を得ることができる。 すなわち、 従来のフェライ ト 製品と同一形状であれば、 磁石から発生する磁束密度を増やすことができ るため、 モータであれば高トルク化等を実現でき、 スピーカーやヘッ ドホ ーンであれば磁気回路の強化により、 リニアリティ一のよい音質が得られ るなど応用製品の高性能化に寄与できる。 また、 従来と同じ機能でよいと すれば、 磁石の大きさ (厚み) を小さく (薄く) でき、 小型軽量化 (薄型 化) に寄与できる。 また、 従来は界磁用の磁石を卷線式の電磁石としてい たようなモータにおいても、 これをフェライ ト磁石で置き換えることが可 能となり、 軽量化、 生産工程の短縮、 低価格化に寄与できる。 さらに、 保 磁力 (HcO の温度特性に優れているため、 従来はフェライ ト磁石の低温 減磁 (永久減磁) の危険のあった低温環境でも使用可能となり、 特に寒冷 地、 上空域などで使用される製品の信頼性を著しく高めることができる。 本発明の磁石材料は所定の形状に加工され、 下記に示すような幅広い用 途に使用される。
例えば、 フユエールポンプ用、 パワーウィンド用、 AB S用、 ファン用、 ワイパ用、 パワーステアリング用、 アクティブサスペンション用、 スター 夕用、 ドアロック用、 電動ミラー用等の自動車用モ一夕 ; FDDスピンド ル用、 VTRキヤプスタン用、 VTR回転ヘッ ド用、 VTRリール用、 V TRローデイ ング用、 VT Rカメラキヤプスタン用、 VTRカメラ回転へ ッ ド用、 VTRカメラズーム用、 VTRカメラフォーカス用、 ラジカセ等 キヤプスタン用、 CD, LD, MDスピンドル用、 CD, LD, MD口一
デイング用、 CD, LD光ピックアップ用等の OA、 AV機器用モータ ; エアコンコンプレッサー用、 冷蔵庫コンプレッサー用、 電動工具駆動用、 扇風機用、 電子レンジファン用、 電子レンジプレート回転用、 ミキサ駆動 用、 ドライヤーファン用、 シェーバー駆動用、 電動歯ブラシ用等の家電機 器用モー夕 ; 口ポッ ト軸、 関節駆動用、 ロボッ ト主駆動用、 工作機器テー ブル駆動用、 工作機器ベルト駆動用等の F A機器用モータ ; その他、 ォー トバイ用発電器、 スピーカ · ヘッ ドホン用マグネッ ト、 マグネトロン管、 MR I用磁場発生装置、 CD— ROM用クランパ、 ディストリビュー夕用 センサ、 AB S用センサ、 燃料 · オイルレベルセンサ、 マグネッ トラッチ 等に好適に使用される。 実施例
実施例 1 〔焼結磁石:サンプル 1, 2 (水系後添加) 〕
原料としては、 次のものを用いた。
F e 203粉末 (一次粒子径 0. 3 DI) 、 1 000 0 g
(不純物として Mn, C r, S i , C 1を含む)
S r C〇3粉末 (一次粒子径 2 /im) 、 1 6 1. 2 g
(不純物として B a, C aを含む)
また添加物として、
S i〇2粉末 (一次粒子径 0. O l Di) 2. 30 g
C a C〇:i粉末 (一次粒子径 1 m) 1. 72 g を用いた。
上記出発原料および添加物を湿式ァトライターで粉砕後、 乾燥 ·整粒し、 これを空気中において 1 250でで 3時間焼成し、 顆粒状の仮焼体を得た。 得られた仮焼体に対し、 S i〇2、 C a C〇:い 炭酸ランタン 〔L a2 (C
〇3) · 8 H2〇〕 、 酸化コバルト (C oO) を、 それぞれ表 1に示す分量 で混合し、 さらにダルコン酸カルシウムを表 1に示す分量添加し、 バッチ の振動ロッ ドミルにより 20分間乾式粗粉砕した。 このとき、 粉砕による 歪みが導入され、 仮焼体粒子の HcJは、 1. 7k0e に低下していた。
次いで、 同様にして得られた粗粉砕材 1 7 7 gを採取し、 これに原料と して使用したのと同じ酸化鉄 (ひ— F e 2〇3) 3 7. 2 5 g加え、 分散媒 として水を 40 Occ加えて混合し、 粉砕用スラリーを調整した。
この湿式粉砕用スラリーを用いて、 ポールミル中で湿式粉砕を 40時間 行った。 湿式粉砕後の比表面積は、 8. 5m2/g (平均粒径 0. 5 111 ) で あった。 湿式粉碎後のスラリーの上澄み液の pHは、 9. 5であった。
湿式粉砕後、 粉碎用スラリーを遠心分離して、 スラリー中の仮焼体粒子 の濃度が 7 8 %となるように調整し、 成形用スラリーとした。 この成形用 スラリーから水を除去しながら圧縮成形を行った。 この成形は、 圧縮方向 に約 1 3k0e の磁場を印加しながら行った。 得られた成形体は、 直径 3 0m m、 高さ 1 8mmの円柱状であった。 成形圧力は 0. 4 ton/cm2とした。 また、 このスラリーの一部を乾燥後、 1 0 0 0 °Cで焼成して全て酸化物となるよ うに処理した後、 蛍光 X線定量分析法により各成分量を分析した。 結果を 表 2および表 3に示す。
次に、 成形体を 1 0 0〜3 0 0 °Cで熱処理してダルコン酸を十分に除去 した後、 空気中において、 昇温速度を 5°C/分間とし、 1 2 2 0 °Cで 1時 間保持することにより焼成を行い、 焼結体を得た。 得られた焼結体の上下 面を加工した後、 残留磁束密度 (B r) 、 保磁力 (Hc】および Hcb) およ び最大エネルギー積 [(BH)max]、 飽和磁化 (4 π I s) 、 磁気的配向度 ( I r / I s ) 、 角型性 (Hk /HcJ) を測定した。 次いでサンプルを直径 5 m mX高さ 6. 5mmの円柱に加工した (高さ方向が c軸方向) 。 試料振動式磁
力計 (V SM) によりサンプルを着磁後、 磁場を印加しない状態で c軸方 向の残留磁化の温度依存性を測定することによりキユリ一温度 T cを求め た。
この測定方法をさらに詳しく述べる。 最初に、 円柱サンプルの高さ方向 (c軸方向) に、 室温で約 2 0 kOeの磁場を印加することにより、 着磁し た。 次に、 磁場電流をゼロとし 〔ただし、 磁極の残留磁化により、 約 5 0 (0e) の磁場が発生〕 、 サンプルの周囲に配置したヒーターを加熱するこ とにより、 約 1 o°cz分の速度で昇温させて、 サンプルの温度と磁化を同 時に測定することにより、 ひ — T曲線を描いた。 結果を図 5, 図 6に示す。 また、 サンプル No.1の a軸方向と c軸方向の組織の S EM写真をそれぞれ 図 1, 2に示す。
図 5, 6から明らかなように、 本発明サンプル No. 1, 2のキュリー温 度 T cは、 44 CTCと 4 5 6°C、 および 4 34 °Cと 4 5 4 °Cのそれぞれ 2 段になっていることがわかる。 また、 一段目の T c (T e l ) の点におけ るひと 2 5 °Cの σの比は、 各々 5. 5 %および 6. 0 %であった。 なお、 T e l 以上の温度でひ — T曲線は上に凸の曲線となり、 T e l と T c 2 は明 確に決定できた。 このことから、 本発明サンプルの焼結体は、 磁気的性質 の異なる 2相構造となっているものと考えられる。 なお、 各試料を X線回 折により解析したところ、 いずれも M型フェライ ト単相であった。 また、 格子定数に大きな違いは認められなかった。
比較例 1 〔焼結磁石:サンプル 3 (水系前添加) 〕
原料としては、 次のものを用いた。
F e 2〇:,粉末 (一次粒子怪 0. 3 im) 、 1 0 0 0. 0 g
(不純物として Mn, C r , S i , C 1 を含む)
S r C〇:,粉末 (一次粒子径 2 /xm) 、 1 3 0. 3 g
(不純物として B a, C aを含む)
酸化コバルト 1 7. 56 g
L a 203 3 5. 6 7 g
また添加物として、
S i 02粉末 (一次粒子径 0. 0 1 m) 2. 30 g
C a C〇3粉末 (一次粒子径 1 m) 1. 72 g
を用いた。
上記出発原料および添加物を湿式アトライターで粉砕後、 乾燥 ·整粒し、 これを空気中において 1 2 5 O :で 3時間焼成し、 顆粒状の仮焼体を得た。 得られた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁力計 (VSM) で測定した結果、 飽和磁化 a sは 68 emu/g , 保磁力 He: [は 4. 6k0e であった。
得られた仮焼体に対し、 S i〇2、 C a C03を、 それぞれ表 1に示す分 量で混合し、 さらにダルコン酸カルシウムを表 1に示す分量添加し、 バッ チの振動ロッ ドミルにより 2 0分間乾式粗粉砕した。 このとき、 粉砕によ る歪みが導入され、 仮焼体粒子の HcJは、 1. 7k0e に低下していた。 次いで、 このようにして得られた粗粉砕材を 2 1 0 g採取し、 分散媒と して水を 40 Occ加えて混合し、 粉砕用スラリーを調整した。
この湿式粉砕用スラリーを用いて、 ボールミル中で湿式粉砕を 40時間 行った。 湿式粉砕後の比表面積は、 8. 5mVg (平均粒径 0. 5 ^m ) で あった。 湿式粉砕後のスラリーの上澄み液の pHは、 9〜 1 0であった。 湿式粉碎後、 粉砕用スラリーを遠心分離して、 スラリー中の仮焼体粒子 の濃度が約 7 8 %となるように調整し、 成形用スラリーとした。 この成形 用スラリーから水を除去しながら圧縮成形を行った。 この成形は、 圧縮方 向に約 1 3k0e の磁場を印加しながら行った。 得られた成形体は、 直径 3 0 mm, 高さ 1 8mmの円柱状であった。 成形圧力は 0. 4 ton/cm2とした。 ま
た、 このスラリーの一部を乾燥後、 1 0 0 0でで焼成して全て酸化物とな るように処理した後、 蛍光 X線定量分析法により各成分量を分析した。 分 析結果を表 2および表 3に示す。
次に、 成形体を 1 0 0〜 3 6 0 °Cで熱処理してダルコン酸を十分に除去 した後、 空気中において、 昇温速度を 5で 分間とし、 1 2 2 0 ^で 1時 間保持することにより焼成を行い、 焼結体を得た。 得られた焼結体の上下 面を加工した後、 残留磁束密度 (B r ) 、 保磁力 (HcJおよび HcB) およ び最大エネルギー積 [(BH)max]、 飽和磁化 (4 π Ι s ) 、 磁気的配向度 ( I rZ l s ) 、 角型性 (Hk /HcJ) および焼結密度を測定した。 結果を表 4に示す。 次いでサンプルを直径 5 mmx高さ 6. 5 mmに加工した。 実施例 1 と同様の方法で V S Mにより c軸方向の磁化の温度依存性を測定すること によりキュリー温度 T cを求めた。 結果を図 7に示す。 図から明らかなよ うに、 T cは 444°Cで 1段であった。
次に、 各焼結体サンプル No. 1〜 3の a軸方向と c軸方向の比抵抗を測 定した。 結果を表 5に示す。 また、 得られたサンプル No.3を a軸方向およ び c軸方向から観察した組織の S EM写真を図 3, 4にそれぞれ示す。 図 1, 2および図 3 , 4から明らかなように本発明のフェライ トはグレイン サイズが図 3, 4の従来品に比べ一回り大きくなつている。 表 1
仮焼材 炭酸ランタン 酸化コハ'ルト ク'ルコン酸 C a S i 0つ C a C〇3 サンフ°ル (g) (g) (g) (g) (g) (g)
1 87.26 6.12 1.63 1.13 0.44 1.38
2 87.26 7.23 1.63 1.13 0.44 1.38
3* 110 1.13 0.44 1.38
*) 比較例
表 2
Fe203 MnO SrO BaO Si02 CaO CoO (Fe+Co)/(Sr+La) La/Co サンフ。ル (モル ¾) (モル ) (モル ¾) (モル ¾) (モル ¾) (モル » (モル ¾) (モル ) (モル比) (モル比)
1 0.64 10.72 0.10 1.25 2.32 1.37 2.55 12.2 1 1
1. 1
2 80.91 0.64 10.59 0.10 1.24 2.31 1.55 2.53 12.0 1.2
3* 80.71 0.64 10.95 0.10 1.26 2.23 1.36 2.64 12.0 1.0
*) 比較例
3 (表中、 各元素の下の数字は全て原子%を表す) サンプル Fe Mn Sr Ba Si Ca Zn La Co Al Cr Cu
1 88.7 0.4 5.9 0.0 0.7 1. 3 0.0 1.5 1.4 0.0 0.1 0.0
2 88.6 0.3 5.8 0.0 0.7 1. 3 0.0 1.7 1.4 0.0 0.1 0.0
3* 88.7 0.3 6.0 0.1 0.7 1. 2 0.0 1.5 1.5 0.0 0.0 0.0
*) 比較例
サンフ。ル 47cIs(kG) Br (kG) HcJ(kOe) Ir/ls Hk/HcJ (BH) max 焼結密度
(¾) (¾) (MGOe) (g/cm3)
1 4.47 4.34 4.60 97.2 91.7 4.6 5.02
2 4.49 4.37 4.75 97.3 93.4 4.7 5.02
3* 4.52 4.33 4.61 95.8 89.5 4.5 5.06
*) 比較例
表 5
サンプル 条件 p -a(Qm) p -c (Qm)
後添加 (化学量論組成) 4.79X101 1.47X102 後添加 (La- rich組成) 1.00X101 6.13X10:
3* 前添加 (化学量論組成) 2.00X103 6.44X103
*) 比較例
表 4から明らかなように、 本発明範囲の焼結体コアは極めて優れた特性 を示している。
表 5から明らかなように、 後添加工程による本発明のサンプル 1, 2は、 比較例の前添加工程によるサンプルと比較して、 1 Z 1 0 ~ 1 Z 1 0 0と 小さい比抵抗の値を示した。 このことから、 前添加工程で得られるサンプ ルと、 後工程で得られるサンプルとでは、 焼結体の微細構造が異なるもの と考えられる。 また、 本発明のサンプルでも、 No. 2の L aリッチ組成の サンプルの方が 1 4〜 1 Z 2小さい比抵抗となっていた。 全てのサンプ ルにおいて、 a軸方向の値が c軸方向の比抵抗より小さくなつていた。
実施例 2 (F e , L a, C oの後添加量による比較)
実施例 1の組成物 〔S r F e 12〇19+S i〇2 : 0. 2重量% + C a C〇3
: 0. 1 5重量%〕 を実施例 1と同様にして仮焼し、 仮焼体を得た。 得ら れた顆粒状の仮焼体に対し、 添加後の組成が、
において、 x = y= 0, 0. 1, 0. 2, 0. 3となるように、 L a2 (C 〇3) :ί · 8H20、 C o Ox (C oO+C o:i〇4) 、 配合時に使用したものと 同じ酸化鉄 (a— F e 203) および S i〇2 ( 0. 4重量%) 、 C a CO:1
( 1. 2 5重量%) 、 ダルコン酸カルシウム (0. 6重量%) を添加して 小型振動ミルで粗粉砕を行った。 その後、 実施例 1と同様にして水微粉砕
を 40時間行い、 焼成した。 また、 ダルコン酸カルシウムを添加しないで 水だけを用いたもの、 分散媒として溶媒にキシレンを用い、 分散剤として ォレイン酸を用いたサンプルを用意した。
得られた各焼結体サンプルの L a, C o添加量別の成形体配向度を図 8 に、 HcJ— B r 特性を図 9に示す。 ここで、 F e, L a, C oの後添加量 は、 添加後の組成を
とした場合の xの値で示す。 水系分散剤にダルコン酸カルシウムを用いた 場合、 仮焼後の添加量 (後添加量) が増大するに従って明らかな配向度の 向上が見られ、 0. 4置換では非水系溶媒としてキシレンを用い、 界面活 性剤としてォレイン酸を用いた場合に迫る値となっている。 これに対し、 水にダルコン酸を添加しないものでは配向度の向上は見られない。 なお、 焼結体の特性は、 多くの場合で Hk /Hcl〉 90 %となり、 x = 0. 2の ものが最高であった。 一方、 添加量が多くなると (x〉0. 3 ) 成形性が 劣化した。
図 1 0に、 このときの T cの Xに対する依存性を、 有機溶剤系前添加 (実施例 5の方法) によって作製した焼結体と比較して示す。 2つのキュ リー温度のうち、 低い方の T c (T e l) は、 Xの増加と共に減少したが、 高い方の T c (T c 2 ) は、 あまり大きな変化を示さなかった。 このこと から、 T c 1は、 L aと C oの置換量の多い (少なくともし aの置換量の 多い) S rフェライト部分の T cであることが予想される。
また、 図 1 1は、 焼結体の HcJの Xに対する依存性を、 有機溶剤系前添 加 (実施例 5の方法) 、 水系前添加 (比較例 1の方法) によって作製した 焼結体との比較して示した図である。 これにより、 前添加の場合は x = 0. 3のとき HcJの極大値が得られるのに対し、 後添加の場合は x= 0. 2で
極大値をとることがわかる。 これにより、 後添加の場合は、 高価な C oな どの添加量を前添加の場合の 2 Z 3程度に少量化しても、 高い磁気特性が 得られることがわかる。
また、 図 1 2には、 焼結体の角型性 (Hk /HcJ) の xに対する依存性 を、 有機溶剤系前添加 (実施例 5の方法) 、 水系前添加の方法 (比較例 1 の方法) によって作製した焼結体と比較して示す。 これにより、 後添加の 場合は、 置換量 Xの多い組成においても、 高い角型性 (Hk /HcJ) が得 られることがわかる。 さらに、 図 1 3に、 トルクメータにより測定した異 方性定数 (K 1 ) を用いて計算した異方性磁場 (HA ) を、 有機溶剤系前 添加の場合と比較して示す。 図から明らかなように、 HA は、 有機溶剤系 前添加の場合とほぼ同じ値であった。
実施例 3 (F eのみ前添加、 L a, C oを後添加:仮焼温度による比較)
S r : F e = 0. 8 : 1 1. 8 = 1 : 1 4. 7 5となるように原料を抨 量し、 これをそれぞれ 1 1 5 0 ° (:、 1 2 0 0 °C、 1 2 5 0 °C、 1 3 0 0 °C で仮焼した他は実施例 1と同様にして仮焼体を得た。 得られた仮焼体サン プルを X線回折で分析したところ、 M相とへマ夕イ ト相 ( ひ 一 F e 2〇:i) の存在が確認された。 ここで、 化学量論組成 (S r : F e = l : 1 2 ) よ りも多い分の F eが全てひ一 F e 203 相となり、 残りが S r M相になって いると仮定して仮焼粉中の S r M相の σ sを計算すると、 同じ仮焼温度の S r M仮焼材の σ sとほぼ等しくなつていた。
得られた顆粒状の仮焼体に対し、
S r ! - x L a x F e i 2-yC o yO
において、 x = y= 0. 2となるように、 L a 2 (CO;i) 3 · 8 H2〇、 C o Ox (C o 0 + C o :tO J + S i〇2 ( 0. 4重量%) 、 C a C O :i ( 1. 2 5重量%) 、 ダルコン酸カルシウム (0. 6重量%) を添加して小型振
動ミルで粗粉砕を行った。 得られた粗粉碎材 2 1 Og に対して、 水 400c cを加えて実施例 1と同様にして (ただし、 F e 2〇3 は添加しない) 、 湿式 微粉砕を 40時間行い、 湿式磁場成形後焼成した。
得られた成形体の配向度を X線回折により調べその結果を図 14に示す。 図 14から明らかように、 1 2 5 0で仮焼体を用いたサンプルで成形体配 向度が高く、 全てを後添加したサンプル並になっている。 また、 図 1 5に 仮焼温度 1 2 50 °Cとした場合の焼結密度と磁気的配向度 ( I r Z I s ) の関係を示す。 成形体配向度が同じにも関わらず、 L a, C oだけ後添加 したサンプルの方が焼成後の密度と配向度が共に高くなつている。 また、 図 1 6に仮焼温度 1 2 50°Cとした場合の HcJ- Br および Hk ZHcJを示 す。 L a, C oだけ後添加したサンプルでは、 HcJが低くなるが、 密度と 配向度が高いため Br は高くなり、 実施例 2のサンプルと特性レベルはほ ぼ同じであった。
この製法によると、 仮焼後に微細な F e 2〇:i を大量に添加しなくても、 優れた磁気特性が得られる。 さらに、 成形性も比較的良好となるため、 製 造が容易になるメリッ トがある。 また、 これらの各サンプルについてキュ リ一温度を測定したところ、 2つ以上の異なるキュリ一温度を有すること が確認された。
実施例 4 (F e, L a前添加、 C oのみ後添加による比較)
S r : L a : F e = 0. 8 : 0. 2 : 1 1. 8となるように原料を秤量 し、 これをそれぞれ 1 2 0 0 ° (:、 1 2 5 0 °Cで仮焼した他は実施例 1と同 様にして仮焼体を得た。 得られた仮焼体サンプルを X線回折で分析したと ころ、 M相とへマ夕イ ト相 (a— F e 2〇:i相) の存在が確認されたが、 ォ ルソフェライト (F e L aO:,) は確認できなかった。
得られた顆粒状の仮焼体に対し、
S r i -x L a x F e 12— yC oy019
において、 x = y= 0. 2となるように、 C oOx (C o O-f C o 304) + S i 02 ( 0. 4重量%) 、 C a C O 3 ( 1. 25重量%) 、 ダルコン酸カ ルシゥム (0. 6重量%) を添加して小型振動ミルで粗粉砕を行った。 そ の後、 水微粉碎を 40時間行い、 成形後実施例 1と同様にして焼成した。 表 6に HcJ- Br および Hk ノ HcJを示す。 表 6
HcJ 4 π Is Br Ir/Is Hk/HcJ (BH)max 焼結密度
(kOe) (kG) (kG) (%) (%) (MGOe) (g/cm3)
4.62 4.58 4.40 9.59 88.5 4.69 5.05
特性的には実施例 2, 3とほぼ同一であった。
実施例 5 (溶剤系分散媒での後添加工程による比較)
実施例 1の組成物 〔S r F e 12O19+S i〇2 : 0. 2重量% + C a C03
: 0. 1 5重量%〕 を用いて、 添加後の組成が、
S r -x L a x F e 12— yC oy〇19
において、 x = y= 0. 1, 0. 2, 0. 3, 0. 4となるようにして、 分散剤をダルコン酸カルシウムに代えてォレイン酸、 分散媒を水に代えて キシレンとした以外は実施例 1と同様の方法により焼結体を作製した。
—方、 組成が、
S r L a F e し o y O
において、 x = y= 0. 1 , 0. 2, 0. 3, 0. 4となるようにして、 分散剤をダルコン酸カルシウムに代えてォレイン酸、 分散媒を水に代えて キシレンとした以外は比較例 1と同様の方法により焼結体を作製した。
得られた 1 220 での焼結体サンプルの角型比 Hk /HcJを図 1 7に、
添加量別磁気的配向度 ( I rZ l s ) 特性を図 1 8に示す。 配向度はほぼ 同レベルであるが、 Hk /Hclは後添加の方が改善されていた。
実施例 6 (L a, C o分割添加の検討)
原料としては、 次のものを用いた。
F e 203粉末 (一次粒子径 0. 3 m) 、 1 000. 0 g
S r C〇3粉末 (一次粒子径 2 rn) , 1 6 1. 2 g
上記出発原料を湿式アトライターで粉砕後、 乾燥 ·整粒し、 これを空気 中において 1 25 O :で 3時間焼成し、 顆粒状の仮焼体を得た。
得られた仮焼体に対し、 乾式振動ミル粉砕時に S i 02= 0. 6重量%、 C a CO.,= 1 · 4重量%と共に、 炭酸ランタン 〔L a2 (C〇3) 3 · 8 Η2 〇〕 、 酸化コバルト (C o〇) 、 ダルコン酸カルシウム (0. 9重量%) 添加した。 その際、 L a添加量を変えることにより、 L aZC o比を変化 させた。 また、 ポールミル粉砕時に酸化鉄 (F e2〇3) を添加した。 また、 前記仮焼体 (表中母材という) は炭酸ランタン 〔L a, (C〇3) :i · 8 H2 〇〕 、 酸化コバルト (C oO) の前添加量 x = 0および 0. 1としたもの を用意した。 表 7に各サンプルの組成比と、 微粉碎材の分析値を示す。
表 7
ランタンノコハ'ルト添加量 分 析 値
V ノ ル 母材 (X) 後添加 (X) La/Co tou La/し 0
No. (モル%) (モル ¾) (モル比) (モル比)
11 0 0.2 1. 1 1.37 2.55 1 .21 1.07
12 0 0.2 1. 3 1.55 2.53 12.02 1.22
13 0 0.2 1. 5 1.76 2.48 11.80 1.42
14 0.1 0.1 1. 1 1.42 2.62 11.88 1.08
15 0.1 0.1 1. 3 1.38 2.43 12.20 1.14
16 0.1 0.1 1. 5 1.47 2.38 12.25 1.23
得られた各サンプルを 1 2 0 0 °C 1 2 2 0°C 1 24 CTCでそれぞれ 焼成し、 磁気特性を測定した。 結果を図 1 9示す。 いずれのサンプルにお いても、 L aリツチ組成 (L aZC o= l . 1 4 1. 2 3) の場合に比 較的高い HcJおよび Hk が得られた。 L a /C oの最適点で比較すると、 X = 0. 1の母材に対し、 x= 0. 1後添加すると Hk が劣化する傾向を 示し、 X = 0の母材に対して X = 0. 2後添加の場合に高い焼結磁気特性 が得られた。 L aと C oの粉砕時添加 (後添加) は、 配合時添加 (前添 加) の場合よりも高い Hk が得られることがわかっているが、 本実施例に おいては両者の中間的な挙動を示し、 特に特徴的な結果は得られなかった。 なお、 上記の実施例においては、 S rを含有するフェライ トについて述 ベたが C aまたは B aを含有するフェライ トについても同等の結果が得ら れることが確認された。
さらに上記各実施例において、 本発明サンプルを、 測定用の円柱形状か ら C型のモー夕の界磁用磁石の形状に変えた他は同様にしてモー夕用 C型
形状焼結磁石を得た。 得られたコア材を従来の材質の焼結磁石に代えてモ 一夕中に組み込み、 定格条件で動作させたところ良好な特性を示した。 ま た、 そのトルクを測定したところ、 従来のコア材を用いたモー夕より上昇 していた。 また、 ボンディッド磁石でも同様の結果を得た。
実施例 7 (後添加の HcJ温度特性)
実施例 1、 および比較例 1で作製した焼結体サンプルの保磁力 (HcJ) 温度特性を測定した。 一 1 0 0°C〜十 1 0 0°Cの He: [測定値は、 相関係数 9 9. 9 %以上で、 最小自乗法直線近似ができた。 これに基づき、 HcJの 温度特性を計算すると、 下記表 8に示すような結果が得られた。 これによ り、 後添加による製造法により、 作製した 2つの T cを持つ L a C o含有 フェライ トも、 前添加の場合と同等以上の優れた HcJの温度特性を有する ことがわかる。 表 8
サンプル HcJ(kOe) :25°C AHcJ/AT(Oe/°C) AHcJ/HcJ/AT(%/°C)
1 4.47 6.9 0.153
4.54 7.4 0.163
3* 4.62 8.0 0.172
*) 比較例 実施例 8 (P r系後添加)
L a 2 (CO,) :i8 H2〇に代えて、 P r 2 (CO:i) 30. 5 H20とした以 外は、 実施例 2と同様の方法で焼結磁石を作製して磁気特性等を評価した。 図 2 0に、 キュリー点 T cの置換量 Xに対する依存性を、 有機溶剤系前添 加 (実施例 5の方法) によって作製した焼結体と比較して示す。 2つのキ ユリ一温度 T cのうち、 低い方の T c (T c 1 ) は、 置換量 Xの増加と共
に減少したが、 高い方の T c ( T c 2 ) は、 あまり大きな変化を示さなか つた。 このことから、 T e lは、 P rと C oの置換量の多い (少なくとも P r置換量の多い) S rフェライ ト部分の T cであることが予想される。 また、 図 2 1には、 焼結体の H e : [の Xに対する依存性を有機溶剤系前添 加 (実施例 5の方法) によって作製した焼結体と比較して示す。 これによ り、 後添加の場合は、 x = 0 . 1で極大値をとり、 有機溶媒系前添加の場 合よりも高い H c Jが得られた。 発明の効果
以上のように本発明によれば、 M型フェライ 卜の飽和磁化と磁気異方性 とを同時に高めることにより、 従来の M型フェライ ト磁石では達成不可能 であった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有し、 保磁力の温度特性が極 めて優れ、 特に低温域においても保磁力の低下が少ない優れた磁気特性を 有し、 しかも減磁曲線の角形性にも優れたフェライ ト磁石およびその製造 方法を提供することができる。
また、 高価な C oの含有量を少なく しても高特性を得ることの可能なフ エライ ト磁石およびその製造方法を提供することができる。
また、 水系の製造工程でも配向度が溶剤系に匹敵する値の得られるフエ ライ ト磁石およびその製造方法を提供することができる。
さらには、 良好な特性を有するモータおよび磁気記録媒体を提供するこ とができる。