JPWO2018164226A1 - (メタ)アクリレートの製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリレートの製造方法 Download PDF

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Abstract

着色が少ない高品質の(メタ)アクリレートを得ることが可能な(メタ)アクリレートの製造方法を提供する。本発明は、下記第1工程〜第3工程を含み、下記第1工程〜第3工程を順次実施する(メタ)アクリレートの製造方法に関する。○第1工程エステル交換触媒の存在下、アルコールと1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をエステル交換反応させ(メタ)アクリレートを製造する工程○第2工程第1工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物中のエステル交換触媒を除去する工程○第3工程第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物に、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを添加する工程

Description

本発明は、(メタ)アクリレートの製造方法に関するものであり、(メタ)アクリレートの製造方法及び(メタ)アクリレートを使用する技術分野に属する。
尚、本明細書においては、アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれか、又は、その両方を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリレート及びメタクリレートのいずれか、又は、その両方を(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸及びメタクリル酸のいずれか、又は、その両方を(メタ)アクリル酸と表す。
(メタ)アクリレートは、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射により、又は加熱によって硬化するため、塗料、インキ、接着剤、光学レンズ、充填剤及び成形材料等の組成物の主成分、架橋成分及び反応性希釈剤成分等として大量に使用されている。
これら(メタ)アクリレートは、スルホン酸等の酸性触媒の存在下にアルコールと(メタ)アクリル酸を反応させる脱水エステル化反応や、有機錫化合物等のエステル交換触媒の存在下にアルコールと1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕を原料にエステル交換反応等により製造されている。
しかし、これらの反応に用いられる(メタ)アクリル酸及び単官能(メタ)アクリレートは、その分子中にビニル基等を有するため非常に重合しやすい性質を有しており、酸や塩基と接触したり、加熱や光等によりしばしば重合を起こすことが知られている。
重合物を含む(メタ)アクリレートは、硬化むらや濁りを生じるため、均一性や光透過性が重視される光学レンズ用途等では好適に使用することができない。そのため、一般に(メタ)アクリレートを製造する際に重合禁止剤を添加する方法が実施されているが、重合禁止剤の種類及び量等により着色することがある。
着色した(メタ)アクリレートは、透明性が求められる光学レンズ用途等では到底使用できないため、蒸留等により精製する方法が実施されているが、高沸点の(メタ)アクリレートの場合には蒸留精製は困難である。
そこで、(メタ)アクリレートの着色防止方法として、脱水エステル化反応時にハイドロタルサイト等の塩基性物質を添加する方法(特許文献1)、エステル交換反応時に硫酸マグネシウム等の脱水剤を添加する方法(特許文献2)、(メタ)アクリレートを経時で安定化させることを目的として(メタ)アクリレートにアルカリ金属塩を添加する方法(特許文献3)、メタクリレートを金属水素化錯化合物の水溶液で還元処理する方法(特許文献4)等が提案されている。
しかし、特許文献1及び2の方法においては、反応時に塩基性物質又は脱水剤を添加する方法であるため、反応時にこれら成分が反応を阻害してしまう問題点があった。
又、特許文献3の方法においては、高温処理が必要であるため、熱に不安定な(メタ)アクリレートは品質の劣化(着色)が生じてしまうことがあった。又、特許文献4の方法においては、水相から有機相を分離する必要があるため、水溶性アクリレート又は水に不安定なアクリレートの場合は、収率が著しく低下してしまう問題があった。
特開2007−314502号公報 特開2012−236805号公報 特開平09−067307号公報 特開平07−258160号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、(メタ)アクリレートの製造において着色が少ない高品質の(メタ)アクリレートを得ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。
その結果、アルコールと単官能(メタ)アクリレートを、エステル交換触媒の存在下にエステル交換反応させて(メタ)アクリレートを製造した後、エステル交換触媒の除去処理を実施し、さらにヒドロキシルアミン又はヒドラジンを添加することで、着色が少ない(メタ)アクリレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記第1工程〜第3工程を含み、下記第1工程〜第3工程を順次実施する(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
○第1工程
エステル交換触媒の存在下、アルコールと単官能(メタ)アクリレートをエステル交換反応させ(メタ)アクリレートを製造する工程
○第2工程
第1工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物中のエステル交換触媒を除去する工程
○第3工程
第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物に、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを添加する工程
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法によれば、着色の少ない高品質の(メタ)アクリレートを得ることができる。
尚、得られる(メタ)アクリレートは、その化合物の種類により要求される着色の程度が異なり、本発明の製造方法によれば、目的とする(メタ)アクリレートが、通常のエステル交換法により得られる(メタ)アクリレートと比較して着色の少ない(メタ)アクリレートとして得られるものである。
従って、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリレートは、塗料、インキ、接着剤、光学レンズ、充填剤及び成形材料等の組成物の主成分、架橋成分及び反応性希釈剤成分等として各種工業用途に好適に使用することができる。
本発明は、下記第1工程〜第3工程を含み、下記第1工程〜第3工程を順次実施する(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
○第1工程
エステル交換触媒の存在下、アルコールと単官能(メタ)アクリレートをエステル交換反応させ(メタ)アクリレートを製造する工程
○第2工程
第1工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物中のエステル交換触媒を除去する工程
○第3工程
第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物に、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを添加する工程
以下、第1工程〜第3工程、その他の工程及び用途について説明する。
1.第1工程
第1工程は、エステル交換触媒の存在下、アルコールと単官能(メタ)アクリレートをエステル交換反応させ(メタ)アクリレートを製造する工程である。
エステル交換反応による(メタ)アクリレートの製造方法は、常法に従えばよく、アルコール及び単官能(メタ)アクリレートを、エステル交換触媒の存在下に加熱・攪拌する方法等が挙げられる。
以下、アルコール、単官能(メタ)アクリレート、エステル交換触媒、及び反応条件について説明する。
1−1.アルコール
本発明において原料として使用するアルコールは、分子中に少なくとも1個以上のアルコール性水酸基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができ、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール及び多価アルコールエーテル等が挙げられる。
当該アルコールは、分子内にその他の官能基や結合を有する化合物であっても良い。官能基の例としては、フェノール性水酸基、ケトン基、アシル基、アルデヒド基、チオール基、アミノ基、イミノ基、シアノ基及びニトロ基等が挙げられ、結合の例としては、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、イミド結合、ペプチド結合、ウレタン結合、アセタール結合、ヘミアセタール結合及びヘミケタール結合等が挙げられる。
1個のアルコール性水酸基を有する1価アルコールの具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテル等の分子内にエーテル結合を有する1価アルコール;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(別名エチレングリコールモノビニルエーテル)、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、及び2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル等の分子内にビニル基とエーテル結合を有する1価アルコール;トリシクロ[5.2.1.02,6]デセノール(別名ヒドロキシジシクロペンタジエン)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセニルオキシエタノール、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエタノール等の環構造を有する1価アルコール;並びにベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、及びp−キシレングリコールモノメチルエーテル等の芳香環を有するアルコール等が挙げられる。
2個のアルコール性水酸基を有する2価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等のグリコール;ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAP)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)等のフェノール性水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物;並びにポリカーボネートジオール等のカーボネート結合を有するアルコール等が挙げられる。
上記2価アルコールの具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げたアルコールが挙げられる。
3個のアルコール性水酸基を有する3価アルコールの具体例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリエタノールアミン及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
上記3価アルコールの具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げたアルコールが挙げられる。
4個のアルコール性水酸基を有する4価アルコールの具体例としては、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
上記4価アルコールの具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げたアルコールが挙げられる。
5個のアルコール性水酸基を有する5価アルコールの具体例としては、トリトリメチロールエタン、トリトリメチロールプロパン、トリグリセリン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、キシリトール及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
上記5価アルコールの具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げたアルコールが挙げられる。
6個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの具体例としては、ポリトリメチロールエタン、ポリトリメチロールプロパン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、L−ソルビトール及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
上記多価アルコールの具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げたアルコールが挙げられる。
前記したアルコールのアルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイド等が挙げられる。
本発明ではこれらのアルコールを単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
これらのアルコールの中では、3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールが好ましい。
さらに、3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリエタノールアミン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、D−ソルビトール及びポリグリセリンが好ましい。
尚、これらのアルコールについて、その水和物又は溶媒和物が存在する場合には、該水和物及び溶媒和物も本発明の製造方法におけるアルコールとして使用できる。
1−2.単官能(メタ)アクリレート
単官能(メタ)アクリレートは、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、例えば、下記一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2018164226
式(3)において、R5は水素原子又はメチル基を表す。R6は炭素数1〜50の有機基を表す。
上記一般式(3)におけるR6の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、及び2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜8のアルキル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基及び2−メトキシブチル基等のアルコキシアルキル基、並びにN,N−ジメチルアミノエチル基、N,N−ジエチルアミノエチル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基及びN,N−ジエチルアミノプロピル基等のジアルキルアミノ基等が挙げられる。
上記一般式(3)におけるR6の具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げた官能基が挙げられる。
本発明ではこれらの単官能(メタ)アクリレートを単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
これらの単官能(メタ)アクリレートの中では、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
さらに、殆どのアルコールに対して良好な反応性を示し、入手が容易なメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及び2−メトキシエチルアクリレートが好ましい。特に、アルコールの溶解を促進し、極めて良好な反応性を示す2−メトキシエチルアクリレートがより好ましい。
本発明のエステル交換反応におけるアルコールと単官能(メタ)アクリレートとの使用割合は特に制限はないが、好ましくはアルコールの水酸基1モルに対して単官能(メタ)アクリレートを0.4〜10.0モル、より好ましくは0.6〜5.0モルである。
単官能(メタ)アクリレートを0.4モル以上使用することで、目的の(メタ)アクリレートの生成量を多くすることができ、10.0モル以下とすることで、副生成物の生成や反応液の着色を抑制し、反応終了後の精製工程を簡便にすることができる。
1−3.エステル交換触媒
本発明のエステル交換反応におけるエステル交換触媒としては、エステル交換反応で通常使用されるものであれば良い。
例えば、テトラブチルチタナート等のチタン系触媒;テトラブチルジルコナート等のジルコニウム系触媒;ジアルキルスズジハライド、ジアルキルスズジカルボキシラート、ジアルキルスズジアルコラート、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジアセタート、ジオクチルスズジラウラート、ジスタノキサン及びトリスタノキサン等の錫系触媒;水酸化リチウム等のアルカリ系触媒;酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛及び亜鉛アセチルアセトナート等の亜鉛系触媒;並びに硫酸等が挙げられる。
これらエステル交換触媒は単独で使用してもよく、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明のエステル交換反応におけるエステル交換触媒としては、高収率で目的の(メタ)アクリレートを含む反応生成物を製造できるとの理由で、特に下記触媒X及びYを併用することが好ましい。
触媒X:アザビシクロ構造を有する環状3級アミン又はその塩若しくは錯体(以下、「アザビシクロ系化合物」という)、アミジン又はその塩若しくは錯体(以下、「アミジン系化合物」という)、ピリジン環を有する化合物又はその塩若しくは錯体(以下、「ピリジン系化合物」という)、及びホスフィン又はその塩若しくは錯体(以下、「ホスフィン系化合物」という)からなる群から選ばれる1種以上の化合物。
触媒Y:亜鉛を含む化合物。
以下、触媒X及び触媒Yについて説明する。
1−3−1.触媒X
触媒Xは、アザビシクロ系化合物、アミジン系化合物、ピリジン系化合物及びホスフィン系化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物である。
触媒Xとしては、前記した化合物群の中でも、アザビシクロ系化合物、アミジン系化合物及びピリジン系化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。これら化合物は、触媒活性に優れ(メタ)アクリレートを好ましく製造できる他、反応中及び反応終了後に後記する触媒Yと錯体を形成し、当該錯体は吸着等による簡便な方法により反応終了後の反応液から容易に除去できる。特に、アザビシクロ系化合物は、その触媒Yとの錯体が反応液に難溶解性となるため、ろ過及び吸着等によりさらに容易に除去することができるためより好ましい。
一方、ホスフィン系化合物は、触媒活性に優れるものの、触媒Yと錯体を形成し難いか、又は、錯体を形成した場合は反応液に易溶解性であり、反応終了後の反応液中にホスフィン系化合物又は錯体の大部分が溶解したままとなるため、ろ過及び吸着等による簡便な方法により反応液から除去し難い。このため、最終製品中にもホスフィン系化合物が残存してしまい、これにより製品の保存中に、濁りや触媒の析出が発生したり、経時的に増粘又はゲル化してしまうという保存安定性の問題を生じることがある。
アザビシクロ系化合物の具体例としては、アザビシクロ構造を有する環状3級アミン、当該アミンの塩、又は当該アミンの錯体を満足する化合物であれば種々の化合物が挙げられ、好ましい化合物としては、キヌクリジン、3−ヒドロキシキヌクリジン、3−キヌクリジノン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−カルボン酸、及びトリエチレンジアミン(別名:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン。以下、「DABCO」という)等が挙げられる。
アザビシクロ系化合物の具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げた化合物等が挙げられる。
アミジン系化合物の具体例としては、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−アリルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(以下、「DBU」という)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(以下、「DBN」という)、N−メチルイミダゾール塩酸塩、DBU塩酸塩、DBN塩酸塩、N−メチルイミダゾール酢酸塩、DBU酢酸塩、DBN酢酸塩、N−メチルイミダゾールアクリル酸塩、DBUアクリル酸塩、DBNアクリル酸塩、及びフタルイミドDBU等が挙げられる。
ピリジン系化合物の主な具体例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、「DMAP」という)等が挙げられる。
ピリジン系化合物の具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げた化合物等が挙げられる。
ホスフィン系化合物は、下記一般式(4)で示される構造を含む化合物等が挙げられる。
Figure 2018164226
式(4)において、R7、R8及びR9は、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、又は、炭素数5〜20のシクロアルキル基を意味する。R7、R8及びR9としては、同一であっても異なっていても良い。
ホスフィン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、及びトリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。
ホスフィン系化合物の具体例としては、前記以外にも特開2017−39916号公報、特開2017−39917号公報及び国際公開第2017/033732号で挙げた化合物等が挙げられる。
本発明ではこれらの触媒Xを単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
これらの触媒Xの中では、キヌクリジン、3−キヌクリジノン、3−ヒドロキシキヌクリジン、DABCO、N−メチルイミダゾール、DBU、DBN及びDMAPが好ましく、特に殆どの多価アルコールに対して良好な反応性を示し、入手が容易な3−ヒドロキシキヌクリジン、DABCO、N−メチルイミダゾール、DBU及びDMAPがより好ましい。
第1工程における触媒Xの使用割合は特に制限はないが、アルコールの水酸基1モルに対して、触媒Xを0.0001〜0.5モル使用することが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.2モルである。
触媒Xを0.0001モル以上使用することで、目的の(メタ)アクリレートの生成量を多くすることができ、0.5モル以下とすることで、副生成物の生成や反応液の着色を抑制し、反応終了後の精製工程を簡便にすることができる。
1−3−2.触媒Y
触媒Yは、亜鉛を含む化合物である。
触媒Yとしては、亜鉛を含む化合物であれば種々の化合物を使用することができるが、反応性に優れることから有機酸亜鉛及び亜鉛ジケトンエノラートが好ましい。
有機酸亜鉛としては、蓚酸亜鉛等の二塩基酸亜鉛及び下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2018164226
式(5)において、R10及びR11は、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、又は、炭素数5〜20のシクロアルキル基を意味する。R10及びR11としては、同一であっても異なっていても良い。
前記式(5)の化合物としては、R10及びR11が、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基又はアルケニル基である化合物が好ましい。R10及びR11において、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基又はアルケニル基は、フッ素及び塩素等のハロゲン原子を有しない官能基であり、当該官能基を有する触媒Yは、高収率で目的の(メタ)アクリレートを製造できるため好ましい。
亜鉛ジケトンエノラートとしては、下記一般式(6)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2018164226
式(6)において、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数5〜20のシクロアルキル基を意味する。R12、R13、R14、R15、R16及びR17としては、同一であっても異なっていても良い。
上記一般式(5)で表される亜鉛を含む化合物の具体例としては、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、プロピオン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、シクロヘキサン酪酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、t−ブチル安息香酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、及びメタクリル酸亜鉛等が挙げられる。
尚、これらの亜鉛を含む化合物について、その水和物又は溶媒和物又は触媒Xとの錯体が存在する場合には、該水和物及び溶媒和物及び触媒Xとの錯体も第1工程における触媒Yとして使用できる。
上記一般式(6)で表される亜鉛を含む化合物の具体例としては、亜鉛アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート水和物、ビス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)亜鉛、及びビス(5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオナト)亜鉛等が挙げられる。なお、これらの亜鉛を含む化合物について、その水和物又は溶媒和物又は触媒Xとの錯体が存在する場合には、該水和物及び溶媒和物及び触媒Xとの錯体も第1工程における触媒Yとして使用できる。
触媒Yにおける、有機酸亜鉛及び亜鉛ジケトンエノラートとしては、前記した化合物を直接使用することができるが、反応系内でこれら化合物を発生させ使用することもできる。例えば、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛及び硝酸亜鉛等の亜鉛化合物(以下、「原料亜鉛化合物」という)を原料として使用し、有機酸亜鉛の場合は、原料亜鉛化合物と有機酸を反応させる方法、亜鉛ジケトンエノラートの場合は、原料亜鉛化合物とアセチルアセトンを反応させる方法等が挙げられる。
本発明ではこれらの触媒Yを単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。これらの触媒Yの中では、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛及び亜鉛アセチルアセトナートが好ましく、特に殆どの多価アルコールに対して良好な反応性を示し、入手が容易な酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛及び亜鉛アセチルアセトナートが好ましい。
第1工程における触媒Yの使用割合は特に制限はないが、アルコールの水酸基1モルに対して、触媒Yを0.0001〜0.5モル使用することが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.2モルである。
触媒Yを0.0001モル以上使用することで、(メタ)アクリレートの生成量を多くすることができ、0.5モル以下とすることで、副生成物の生成や反応液の着色を抑制し、反応終了後の精製工程を簡便にすることができる。
第1工程において使用するエステル交換触媒は、上記反応の最初から添加してもよいし、途中から添加してもよい。又、所望の使用量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。又、エステル交換触媒が固体の場合には、溶媒で溶解した後に添加してもよい。
1−4.エステル交換反応による(メタ)アクリレートの製造方法
第1工程は、エステル交換触媒の存在下に、アルコールと単官能(メタ)アクリレートを加熱及び撹拌してエステル交換反応させ(メタ)アクリレートを製造する工程である。
第1工程における反応温度は40〜180℃であることが好ましく、60〜160℃であることが特に好ましい。反応温度を40℃以上にすることで、反応速度を速くすることができ、180℃以下とすることで、原料や生成物中の(メタ)アクリロイル基の熱重合を抑制し、反応液の着色を抑制でき、反応終了後の精製工程を簡便にすることができる。
第1工程における反応圧力は所定の反応温度を維持できれば特に制限はなく、減圧状態で実施してもよく、加圧状態で実施してもよい。反応圧力としては、0.000001〜10MPa(絶対圧力)が好ましい。
第1工程においては、エステル交換反応の進行に伴い、原料として使用した単官能(メタ)アクリレートに由来する1価アルコールが副生する。
当該1価アルコールは反応系内に共存させたままでもよいが、1価アルコールを反応系外に排出することにより、エステル交換反応の進行をより促進することができる。
第1工程においては、有機溶媒を使用せずに実施することもできるが、必要に応じて有機溶媒を使用してもよい。
有機溶媒の具体例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、アミルベンゼン、ジアミルベンゼン、トリアミルベンゼン、ドデシルベンゼン、ジドデシルベンゼン、アミルトルエン、イソプロピルトルエン、デカリン及びテトラリン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルアセタール、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、トリオキサン、ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテル、ジメチルセロソルブ、ジグライム、トリグライム及びテトラグライム等のエーテル類;18−クラウン−6等のクラウンエーテル類;安息香酸メチル及びγ−ブチロラクトン等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン及びベンゾフェノン等のケトン類;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等のカーボネート化合物;スルホラン等のスルホン類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;尿素類又はその誘導体;トリブチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類;イミダゾリウム塩、ピペリジニウム塩及びピリジニウム塩等のイオン液体;シリコンオイル;並びに水等が挙げられる。
これらの有機溶媒の中では、炭化水素類、エーテル類、カーボネート化合物及びイオン液体が好ましい。
これらの有機溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を任意に組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。
有機溶媒の使用割合は、前記アルコールと単官能(メタ)アクリレートの合計量に対して10〜75重量%となる割合が好ましく、15〜55重量%となる割合がより好ましい。
第1工程においては、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で系内に含酸素ガスを導入してもよい。含酸素ガスの具体例としては、空気、酸素と窒素の混合ガス、酸素とヘリウムの混合ガス等が挙げられる。該ガスの導入方法としては、反応生成物中に吹込む(いわゆるバブリング)方法等が挙げられる。
第1工程においては、(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で、反応液中に重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、有機系重合禁止剤、無機系重合禁止剤及び有機塩系重合禁止剤等が挙げられる。
有機系重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール及び4−t−ブチルカテコール等のフェノール系化合物;ベンゾキノン等のキノン化合物;フェノチアジン;N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム;並びにN−オキシル化合物等が挙げられる。
N−オキシル化合物としては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が挙げられる。
無機系重合禁止剤としては、塩化銅、硫酸銅及び硫酸鉄等が挙げられる。
有機塩系重合禁止剤としては、ブチルジチオカルバミン酸銅及びN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
重合禁止剤は、1種を単独で添加しても又は2種以上を任意に組み合わせて添加してもよく、本発明の最初から添加してもよいし、途中から添加してもよい。又、所望の使用量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。又、精留塔を経由して連続的に添加してもよい。
重合禁止剤としては、前記した化合物の中でも、N−オキシル化合物を使用することが好ましい。N−オキシル化合物としては、前記した化合物が好ましい。
さらに、重合禁止剤としては、N−オキシル化合物とこれ以外の重合禁止剤を併用することが好ましい。その場合のN−オキシル化合物以外の重合禁止剤としては、フェノール系化合物及びフェノチアジンが好ましく、フェノール系化合物がより好ましい。
重合禁止剤の添加割合は、反応液中に重量で5〜30,000ppmが好ましく、25〜10,000ppmがより好ましい。この割合を5ppm以上とすることで重合防止効果を充分にすることができ、30,000ppm以下とすることで、着色を防止したり、生成物の硬化性低下を防止することができる。
上記は反応液中に存在させる重合禁止剤の割合であるが、反応の進行に伴い原料の単官能(メタ)アクリレートが反応してアルコールとなるため、逐次単官能(メタ)アクリレートを反応液中に供給する。この際に、重合禁止剤も反応液に同時に追加供給される。反応全体で使用する重合禁止剤の割合としては、反応液の合計100重量部に対して、0.0005〜3.0重量部が好ましく、より好ましくは0.0025〜1.0重量部である。
さらに、重合禁止剤として、N−オキシル化合物とこれ以外の重合禁止剤を併用する場合、重合禁止剤の合計100重量%中にN−オキシル化合物を2〜80重量%含むことが、重合防止効果をより充分発揮させるため好ましい。
第1工程における反応時間は、使用するアルコール及び単官能(メタ)アクリレート、目的とする(メタ)アクリレートの構造、エステル交換触媒の種類と使用量、反応温度及び反応圧力等により適宜設定すれば良いが、0.1〜150時間が好ましく、より好ましくは0.5〜80時間である。
第1工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法によっても実施できる。
回分式の一例としては、反応器にアルコール、単官能(メタ)アクリレート、エステル交換触媒、重合禁止剤を仕込み、含酸素ガスを反応液中にバブリングさせながら所定の温度で撹拌する。
その後、エステル交換反応の進行に伴い、単官能(メタ)アクリレートに由来する1価アルコールが副生する。該1価アルコールを所定の圧力で反応器から抜き出すことで、目的の(メタ)アクリレートの生成を促進させることができる。
前記した通り、第1工程においては、触媒として前記触媒X及び触媒Yを併用する製造方法が好ましく、以下、当該製造方法について説明する。
触媒Xと触媒Yの使用割合は特に制限はないが、触媒Yの1モルに対して、触媒Xを0.005〜10.0モル使用することが好ましく、より好ましくは0.05〜5.0モルである。0.005モル以上使用することで、目的の(メタ)アクリレートの生成量を多くすることができ、10.0モル以下とすることで、副生成物の生成や反応液の着色を抑制し、反応終了後の精製工程を簡便にすることができる。
本発明で併用する触媒Xと触媒Yの組合せとしては、触媒Xがアザビシクロ系化合物で、触媒Yが前記一般式(5)で表される化合物の組み合わせが好ましく、さらに、アザビシクロ系化合物がDABCOであり、前記一般式(5)で表される化合物が酢酸亜鉛及び/又はアクリル酸亜鉛である組み合わせが特に好ましい。
この組合せが、(メタ)アクリレートを収率よく得られることに加え、反応終了後の色調に優れることから、色調が重要視される各種工業用途に好適に使用できる。さらには比較的安価に入手可能な触媒であることから、経済的に有利な製造方法となる。
本発明で使用する触媒X及び触媒Yは、上記反応の最初から添加してもよいし、途中から添加してもよい。又、所望の使用量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。
反応温度、反応圧力、有機溶媒、重合禁止剤及び反応時間等の反応条件は、前記と同様の方法に従えば良い。
2.第2工程
第2工程は、第1工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物中のエステル交換触媒(以下、単に「触媒」という)を除去する工程である。
触媒を除去する方法としては、固液分離、抽出、晶析及び吸着等の操作が挙げられる。
これらの操作は、原料のアルコール及び単官能(メタ)アクリレートの種類、触媒の種類、得られる(メタ)アクリレートの種類、並びに反応条件等に応じて適宜選択すればよい。
さらに、これらの操作は単独でも2種以上を併用することもできる。
例えば、原料アルコールとしてペンタエリスリトール及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等を使用する場合は、反応生成物中に触媒が析出しないことが多く、吸着処理のみで触媒を除去することができる。一方、原料アルコールとしてジペンタエリスリトール及びグリセリン等を使用する場合は、反応生成物中に触媒が析出することが多く、ろ過を行った後、吸着処理で触媒を除去することが好ましい。
触媒が反応生成物中に固体として含まれる場合は、濾過及び遠心分離等の固液分離を行う。
固液分離において、濾過方法としては、濾紙、濾布、カートリッジフィルター、セルロースとポリエステルとの2層フィルター、金属メッシュ型フィルター、及び金属焼結型フィルター等を用いて減圧又は加圧下で濾過を行い、触媒を濾過残渣として分離除去する方法等が挙げられる。
遠心分離方法としては、デカンターや遠心清澄機等を用いて触媒を沈降させた後、液相と沈降成分を分離する方法等が挙げられる。
触媒が反応生成物中に溶解している場合は、水、酸又はアルカリを含む水溶液による抽出洗浄を行う。
抽出としては、水、硫酸や塩酸等の酸性水溶液、及び/又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液等(以下、「洗浄剤」という)を添加して撹拌等の接触処理を施した後、有機層と水層を液液分離して触媒を除去する方法等が挙げられる。この場合において、洗浄剤の液量や酸、アルカリ濃度は、公知の範囲であればよく、洗浄処理は1回のみ行ってもよいし、2回以上実施してもよい。
晶析としては、貧溶媒の添加、温度降下及び減圧濃縮による方法が挙げられる。
晶析の具体的な方法としては、触媒の溶解度が低い溶媒である貧溶媒を添加したり、温度を降下させながら撹拌等を行い、固体化して析出した触媒を固液分離する方法、減圧濃縮により系内の溶媒や単官能(メタ)アクリレート、副生水及び副生アルコールを系外に留去し、触媒を固体化して析出させた後、固液分離する方法等により行うことができる。
貧溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。
貧溶媒の使用割合は特に制限はないが、目的の(メタ)アクリレート100重量部に対して5〜100重量部添加することが好ましく、より好ましくは10〜50重量部である。貧溶媒の添加割合が5重量部より少ないと触媒の除去効果が不充分であり、100重量部より多いと溶媒と目的の(メタ)アクリレートの分離が煩雑になる。
吸着としては、触媒に対して吸着能及び/又はイオン交換能を有する固体(以下、「吸着剤」という)を添加して撹拌等の接触処理を施した後、固液分離する方法等が挙げられる。
吸着剤としては、例えば、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の珪酸塩、活性白土、酸性白土、シリカゲル、及びイオン交換樹脂等が挙げられる。
珪酸塩としては、珪酸マグネシウム〔市販品としては、例えば、協和化学工業(株)製キョーワード600(商品名)、水澤化学工業(株)製ミズカライフ(商品名)等がある。以下、括弧書きは市販品の例を意味する。〕、珪酸アルミニウム〔協和化学工業(株)製キョーワード700(商品名)、水澤化学工業(株)製ネオビードSA(商品名)等〕、活性白土としては、モンモリロナイト系化合物〔水澤化学工業(株)製ガレオンアース(商品名)、ミズカエース(商品名)、ガレオナイト(商品名)等〕、酸性白土としては、ベントナイト系化合物〔水澤化学工業(株)製ベンクレイ(商品名)等〕、イオン交換樹脂としては、例えばダウケミカル社製のアンバーリスト(登録商標)やアンバーライト(登録商標)、三菱化学社製のダイヤイオン(登録商標)、ダウケミカル社製のダウエックス(登録商標)等が挙げられる。
これらの吸着剤は、単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
吸着剤の使用割合は特に制限はないが、目的の(メタ)アクリレート1部に対して吸着剤を0.001〜1.5部使用することが好ましく、0.005〜0.8部使用することがより好ましい。0.001部以上とすることで、触媒の除去効果を充分にすることができ、1.5部以下とすることで、吸着剤と目的の(メタ)アクリレートとの分離を容易にすることができる。
第2工程の実施温度は、特に制限はないが、−10〜140℃であることが好ましく、30〜100℃であることが特に好ましい。実施温度を−10℃以上とすることで目的の(メタ)アクリレートや溶媒の固体化を抑制することができ、固液分離が煩雑になることを抑制することができ、140℃以下とすることで目的の(メタ)アクリレートの重合を防止することができる。
第2工程の実施圧力は特に制限はなく、減圧状態で実施してもよく、加圧状態で実施してもよい。実施圧力としては、0.000001〜10MPa(絶対圧力)が好ましい。
第2工程の実施時間は、(メタ)アクリレートの種類、実施温度等により異なるが、0.05〜80時間が好ましく、より好ましくは0.2〜40時間である。
第2工程を実施することにより、第1工程で使用した触媒のうち、80重量%以上の触媒を目的の(メタ)アクリレートを含む反応生成物から除去することが好ましく、90重量%以上除去することがさらに好ましい。触媒の除去が80重量%未満では、色調に対する本発明の効果が不充分となったり、後記する第3工程や活性炭処理工程を実施中に目的の(メタ)アクリレートが重合することがある。
3.第3工程
第3工程は、第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物に、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを添加する工程である。第3工程を実施することにより、着色が低減された高品質の(メタ)アクリレートを得ることができる。
第3工程で使用するヒドロキシルアミン又はヒドラジンとしては、種々の化合物を使用することができる。
ヒドロキシルアミンとしては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018164226
〔上記一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数6〜12のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基を意味する。R1及びR2は、同一でも異なっていても良い。〕
ヒドロキシルアミンの具体例としては、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジプロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジブチルヒドロキシルアミン、N,N−メチルエチルヒドロキシルアミン、N,N−エチルプロピルヒドロキシルアミン、N,N−プロピルブチルヒドロキシルアミン、N,N−ジデシルヒドロキシルアミン、N,N−ジフェニルヒドロキシルアミン、及びN,N−ジベンジルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
これら化合物の中でも、容易に入手可能で優れた着色低減効果が得られるN,N−ジエチルヒドロキシルアミン及びN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンが好ましい。
ヒドラジンとしては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018164226
〔上記一般式(2)において、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数6〜12のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基を意味する。R3及びR4は、同一でも異なっていても良い。〕
ヒドラジンの具体例としては、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、N−フェニルヒドラジン、N−アセチルヒドラジン、N−ベンゾイルヒドラジン、N,N−ジメチルヒドラジン、N,N−ジエチルヒドラジン、N,N−ジプロピルヒドラジン、N,N−ジブチルヒドラジン、N,N−メチルエチルヒドラジン、N,N−エチルプロピルヒドラジン、N,N−プロピルブチルヒドラジン、N,N−ジデシルヒドラジン、N,N−ジフェニルヒドラジン及びN,N−ジベンジルヒドラジン等が挙げられる。
これら化合物の中でも、容易に入手可能で優れた着色低減効果が得られるヒドラジン一水和物が好ましい。
着色低減効果がより優れるため、第3工程におけるヒドロキシルアミン又はヒドラジンとしては、ヒドロキシルアミンを使用することがより好ましい。
第3工程におけるヒドロキシルアミン又はヒドラジンの使用割合は特に制限はないが、第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物の合計量に対して10〜100,000重量ppm使用することが好ましく、50〜50,000重量ppm使用することが特に好ましい。
10重量ppm以上使用することで色調を低減することができ、100,000重量ppm以下とすることで、得られる(メタ)アクリレートの硬化速度の低下を抑制することができる。
第3工程において使用するヒドロキシルアミン又はヒドラジンは、所望の使用量を一括で使用してもよいし、分割して使用してもよい。
又、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを反応生成物に添加する際には、撹拌や振とうを行ってもよく、窒素等の不活性ガスや酸素と窒素の混合ガス等を導入してもよい。
第3工程における実施温度は、特に制限はないが、−10〜140℃であることが好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。
実施温度を−10℃以上とすることで着色低減効果を充分にすることができ、140℃以下とすることでヒドロキシルアミン又はヒドラジンの副反応を防止したり、重合を防止することができる。
第3工程における実施圧力は、特に制限はなく、減圧状態で実施してもよく、加圧状態で実施してもよい。実施圧力としては、0.000001〜10MPa(絶対圧力)が好ましい。
第3工程における実施時間は、(メタ)アクリレートの種類、実施温度等により異なるが、0.05〜80時間が好ましく、より好ましくは0.2〜40時間である。
第3工程は、前記した第2工程を実施した後に行う。
第1工程、又は第2工程を実施中にヒドロキシルアミン又はヒドラジンを添加すると、色調に対する本発明の効果が不充分となったり、特に重合禁止剤としてN−オキシル化合物を使用した場合に、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの有する還元性によりN−オキシル化合物が還元され、重合禁止剤としての作用が減退するため、(メタ)アクリレートの重合が惹起されることがある。
4.その他の工程
本発明の製造方法は、前記した第1工程〜第3工程を含む(メタ)アクリレートの製造方法であるが、必要に応じてその他の工程を含んでいても良い。
本発明の製造方法では、第3工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物に対して、活性炭との接触処理(以下、「活性炭処理工程」という)を行うことが好ましい。
これにより着色が低減されて長期間にわたって着色が抑制される高品質の(メタ)アクリレートを得ることができる。
接触処理とは、例えば(メタ)アクリレートを含む反応生成物に活性炭を添加して撹拌又は振とうしたり、活性炭を充填した固定層へ(メタ)アクリレートを含む反応生成物を通液することにより実施できる。
活性炭処理工程において使用する活性炭としては、薬品賦活された活性炭及び水蒸気賦活された活性炭等が使用できる。
活性炭は市販されており、具体的には、薬品賦活された活性炭としては、フタムラ化学(株)製商品名「太閤S」、大阪ガスケミカルズ(株)製商品名「カルボラフィン」、「強力白鷺」、「精製白鷺」及び「特製白鷺」等が挙げられる。
水蒸気賦活された活性炭としては、フタムラ化学(株)製商品名「太閤K」及び「太閤P」等、大阪ガスケミカルズ(株)製商品名「白鷺C」、「白鷺M」、「白鷺A」及び「白鷺P」等が挙げられる。
活性炭の性状としては、粉末、粒状、破砕及び造粒等のいずれでも良い。
活性炭の添加形態は、乾燥品及び水との混合品のどちらでも良い。
活性炭の処理方法は、バッチ式でも連続式でも良い。
活性炭処理工程における活性炭の使用割合は特に制限はないが、第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物の合計量に対して0.01〜50重量%使用することが好ましく、0.1〜5.0重量%使用することが特に好ましい。
活性炭の使用割合を0.01重量%以上とすることで色調を充分に低減させることができ、50重量%以下とすることで活性炭と目的の(メタ)アクリレートの分離を容易にすることができる。
活性炭処理工程において使用する活性炭は、所望の使用量を一括で使用してもよいし、分割して使用してもよい。
上記活性炭との接触処理を実施した後の活性炭は、上記した濾過等の固液分離により除去することが好ましい。
活性炭処理工程における実施温度は、特に制限はないが、0〜150℃であることが好ましく、20〜130℃であることが特に好ましい。反応温度を0℃以上とすることで、色調を充分低減することができ、150℃以下とすることで、(メタ)アクリロイル基の重合を抑制することができる。
活性炭処理工程における実施圧力は、特に制限はなく、減圧状態で実施してもよく、加圧状態で実施してもよい。実施圧力としては、0.000001〜10MPa(絶対圧力)が好ましい。
活性炭処理工程における実施時間は、(メタ)アクリレートの種類、実施温度、接触処理の方式等により異なるが、0.1〜150時間が好ましく、より好ましくは0.5〜80時間である。
本発明の製造方法では、第3工程と活性炭処理工程を同時に実施してもよい。即ち、第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物に対して、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンの添加と活性炭による接触処理を同時に実施してもよい。
5.用途
本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリレートは、従来(メタ)アクリレートが使用されている種々の用途に使用することができる。例えば、塗料、インキ、接着剤、フィルム、シート、光学レンズ等の光学用途、充填剤及び成形材料等の用途において、組成物の主成分、架橋成分、又は反応性希釈剤成分等として各種工業用途に好適に使用することができる。
上記用途で使用する場合には、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリレートに上記用途で使用される種々の成分、例えば光重合開始剤、熱重合開始剤、着色剤、顔料分散剤、有機溶剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、シランカップリング剤、表面改質剤及び重合禁止剤等を配合して使用する。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、「%」の表示は「重量%」、「ppm」の表示は「重量ppm」を意味する。
1.各種の定義
1)略号
実施例における略号は、下記を意味する。
MCA:2−メトキシエチルアクリレート
MEL:2−メトキシエタノール
GLY:グリセリン
DPET:ジペンタエリスリトール
PET:ペンタエリスリトール
THEIC:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
MEHQ:ハイドロキノンモノメチルエーテル
TEMPOL:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル
DEHA:N,N−ジエチルヒドロキシルアミン
DBHA:N,N−ジベンジルヒドロキシルアミン
2)反応収率
実施例1〜同11並びに比較例1〜同5におけるエステル交換反応の反応収率は、エステル交換反応の進行に伴い副生したMEL〔原料として使用したMCAに由来する〕を定量し、下記式(1)を用いて算出した。
尚、MELの定量は、示差屈折率検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(カラム:日本ウォーターズ(株)製 Atlantis(Part No.186003748、カラム内径4.6mm、カラム長さ250mm)、溶媒:純水又は10容量%イソプロパノール水溶液)を使用し、内部標準法にて実施した。

反応収率(モル%)=エステル交換反応の進行に伴い副生したMELのモル数/(原料として使用したアルコールのモル数×原料として使用したアルコール分子の有するアルコール性水酸基数)×100 ・・・(1)
3)精製収率
実施例及び比較例における精製収率は、第3工程終了後の反応生成物に対して、蒸留、晶析、ろ過等の分離精製操作を施した後に得られる、目的のアクリレートを含む精製処理物の重量を用い、下記式(2)を用いて算出した。

精製収率(%)=目的のアクリレートを含む精製処理物(g)/(原料として使用したアルコールの有するアルコール性水酸基が全てアクリレート化された場合に生成するアクリレートの分子量×原料として使用したアルコールのモル数)×100 ・・・(2)
4)定性
実施例及び比較例において目的のアクリレートが反応生成物及び精製処理物中に含まれることの確認は、UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(カラム:日本ウォーターズ株式会社製 ACQUITY UPLC BEH C18(Part No.186002350、カラム内径2.1mm、カラム長さ50mm)、検出波長:210nm、溶媒:0.03重量%トリフルオロ酢酸水溶液とメタノールの混合溶媒)を用いて行った。
2.評価方法
実施例及び比較例において得たアクリレートを含む精製処理物、及び該精製処理物に強制劣化試験を施した後の色調を測定して本発明の効果を評価した。
1)色調の測定
色差計(日本電色工業製 石油製品色試験器OME−2000)を使用し、APHA及びa1値を測定した。
2)強制劣化試験
50mlガラス容器にアクリレートを20g入れ、大気圧下105℃に保ったヒーティングブロック中で40時間加熱した。放冷後に色調を測定した。
3.実施例及び比較例
1)実施例1
(1)第1工程
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた3リットルのフラスコに、GLYを302.71g(3.29モル)、MCAを2312.76g(17.77モル)、触媒XとしてDABCO(トリエチレンジアミン)を9.76g(0.087モル)、触媒Yとしてアクリル酸亜鉛を36.10g(0.17モル)、MEHQを1.60g(仕込んだ原料の総重量に対して685ppm)、TEMPOLを0.074g(仕込んだ原料の総重量に対して28ppm)、純水を5.00g(0.28モル)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。
反応液温度105〜130℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を20.0×10-3〜101×10-3MPa(150〜760mmHg)の範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生したMELとMCAの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出した。
又、該抜出液と同重量のMCAを反応系に随時追加した。又、MEHQ及びTEMPOLを含むMCAを精留塔を介して反応系に随時追加した。反応系からの抜出液に含まれるMELを定量した結果、加熱撹拌開始から40時間後に反応収率は91%に到達したので、反応液の加熱を終了するとともに、反応系内の圧力を常圧に戻して抜出を終了した。
尚、第1工程においては、反応液の合計100gに対して、MEHQ0.078g及びTEMPOL0.031gの割合で使用した。
(2)第2工程
第1工程で得られた反応生成物を室温まで冷却し、析出物を加圧ろ過により分離回収した。該析出物の回収量は38.84gであった。
該析出物を特願2015−46655の実施例に記載の方法に準じて分析を行った結果、該析出物は触媒XであるDABCOと触媒Yであるアクリル酸亜鉛が1:2(モル比)の割合で形成した錯体であることを確認した。この結果より、第1工程で仕込んだ触媒Xと触媒Yのうち、85%を析出物として分離回収したことを確認した。
ろ液に吸着剤として珪酸アルミニウム〔協和化学工業(株)製キョーワード700(商品名)〕を14g投入し、内温80〜105℃の範囲で常圧下1時間加熱撹拌して接触処理して反応生成物に溶解している触媒を除去した後、内温20〜40℃の範囲で水酸化カルシウムを27g投入し、常圧下1時間撹拌した。
加圧ろ過により不溶物を分離した後、ろ液に乾燥空気をバブリングさせながら、温度70〜98℃、圧力13.3×10-6〜13.3×10-3MPa(0.001〜100mmHg)の範囲で16時間の減圧蒸留を行い、未反応のMCAを含む留出液を分離した。
(3)第3工程
得られた釜液を室温まで冷却してDEHAを0.16g(第2工程処理物に対して200ppm)添加し、常圧下1時間撹拌した。その後、活性炭〔フタムラ化学(株)製太閤S(商品名)〕を8.0g(第2工程処理物に対して1.0%)加えて室温で1時間撹拌して接触処理した後、加圧ろ過により活性炭を含む固形物を分離した。
UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて、加圧ろ過後のろ液の組成分析を行った結果、グリセリンジアクリレート及びグリセリントリアクリレートを主要成分として含むことを確認した。該ろ液を精製処理物とみなして算出した精製収率は89%であった。
得られた精製処理物を使用して、色調の測定及び強制劣化試験を行った結果を表1に示す。
2)実施例2〜同7、比較例1及び同2
実施例2〜同7については、第3工程において、ヒドロキシルアミン又はヒドラジン、活性炭の種類と使用量を表1に示す通りに変える以外は、実施例1と同様の方法で第1工程〜第3工程を行い、目的のアクリレートを含む精製処理物を得た。比較例1及び同2については、実施例1と同様の方法で第1工程及び第2工程を行うが、第3工程を行うことなく目的のアクリレートを含む精製処理物を得た。
得られた精製処理物の色調の測定及び強制劣化試験を行った。それらの結果を表1に示す。
Figure 2018164226
本発明の製造方法である実施例1〜同7により得られたアクリレートは、着色が少なく、さらに強制劣化試験後も着色が少なく、高品質のアクリレートを得ることができた。
これに対して、第3工程を実施しない比較例1及び同2で得られたアクリレートは、実施例と比較してAPHA及びa1の値が大きくなってしまい、強制劣化試験後のAPHA及びa1の値も大きくなってしまった。尚、比較例2では、強制劣化試験の結果は比較例1と同様の傾向を示すと推測され、評価を省略した。
3)実施例8及び同9、比較例3
(1)第1工程
実施例1において、GLYに代えDPET260.00g(1.02モル)、MCAを1437.00g(11.04モル)、触媒XとしてDABCOを6.07g(0.054モル)、触媒Yとしてアクリル酸亜鉛に代え酢酸亜鉛を19.86g(0.11モル)、MEHQを1.18g(仕込んだ原料の総重量に対して766ppm)、フェノチアジンを0.16g(仕込んだ原料の総重量に対して90ppm)、TEMPOLを0.022g(仕込んだ原料の総重量に対して150ppm)仕込み、含酸素ガスを液中にバブリングさせた。
反応液温度131〜133℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を37.3×10-3〜44.0×10-3MPa(280〜330mmHg)の範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生したMELとMCAの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出し、実施例1と同様に反応を行い18時間反応させた。
尚、第1工程においては、反応液の合計100gに対して、MEHQ0.024g及びTEMPOL0.0032gの割合で使用した。
(2)第2工程
実施例1と同様の方法に従い、ろ過により反応生成物の触媒を除去した後、ろ液に吸着処理を実施した後、減圧蒸留を行った。
(3)第3工程
得られた釜液に表2に示す割合でDEHAを添加し、80℃で常圧下1時間撹拌した。
比較例3については、実施例8及び9と同様の方法で第1工程及び第2工程を行うが、第3工程を行うことなく目的のアクリレートを含む精製処理物を得た。
得られた精製処理物の色調の測定及び強制劣化試験を行った。それらの結果を表2に示す。
4)実施例10、比較例4
(1)第1工程
実施例1において、GLYに代えPET300.00g(2.20モル)、MCAを2064.65g(15.87モル)、触媒XとしてDABCOを1.94g(0.017モル)、触媒Yとしてアクリル酸亜鉛を7.17g(0.035モル)、MEHQを0.77g(仕込んだ原料の総重量に対して413ppm)、TEMPOLを0.103g(仕込んだ原料の総重量に対して43ppm)仕込み、含酸素ガスを液中にバブリングさせた。
反応液温度110〜128℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を24.7×10-3〜101.0×10-3MPa(185〜760mmHg)の範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生したMELとMCAの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出し、実施例1と同様に反応を行い15時間反応させた。
尚、第1工程においては、反応液の合計100gに対して、MEHQ0.0044g及びTEMPOL0.0049gの割合で使用した。
(2)第2工程
実施例1と同様の方法に従い、反応生成物に吸着処理を実施して触媒を除去した後、減圧蒸留を行った。
(3)第3工程
得られた釜液に表2に示す割合でDEHAを添加し、80℃で常圧下1時間撹拌した。
比較例4については、実施例10と同様の方法で第1工程及び第2工程を行うが、第3工程を行うことなく目的のアクリレートを含む精製処理物を得た。
得られた精製処理物の色調の測定及び強制劣化試験を行った。それらの結果を表2に示す。
5)実施例11、比較例5
(1)第1工程
実施例1において、GLYに代えTHEIC679.98g(2.60モル)、MCAを1829.27g(14.06モル)、触媒XとしてDABCOを0.35g(0.0031モル)、触媒Yとしてアクリル酸亜鉛を1.29g(0.0062モル)、MEHQを1.25g(仕込んだ原料の総重量に対して572ppm)、TEMPOLを0.255g(仕込んだ原料の総重量に対して101ppm)仕込み、含酸素ガスを液中にバブリングさせた。
反応液温度125〜127℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を30.7×10-3〜40.0×10-3MPa(230〜300mmHg)の範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生したMELとMCAの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出し、実施例1と同様に反応を行い8時間反応させた。
尚、第1工程においては、反応液の合計100gに対して、MEHQ0.0037g及びTEMPOL0.0041gの割合で使用した。
(2)第2工程
実施例1と同様の方法に従い、反応生成物に吸着処理を実施して触媒を除去した後、減圧蒸留を行った。
(3)第3工程
得られた釜液に表2に示す割合でDEHAを添加し、80℃で常圧下1時間撹拌した。
比較例5については、実施例11と同様の方法で第1工程及び第2工程を行うが、第3工程を行うことなく目的のアクリレートを含む精製処理物を得た。
得られた精製処理物の色調の測定及び強制劣化試験を行った。それらの結果を表2に示す。
Figure 2018164226
本発明の製造方法である実施例8〜同11により得られたアクリレートは、着色が少なく、さらに強制劣化試験後も着色が少なく、高品質のアクリレートを得ることができた。
これに対して、第3工程を実施しない比較例3〜同5で得られたアクリレートは、実施例8〜同11において対応する同じアルコールを使用した場合と比較して、APHA及びa1の値が大きくなってしまい、強制劣化試験後のAPHA及びa1の値も大きくなってしまった。
6)比較例6
撹拌機、温度計、ガス導入管、精留塔及び冷却管を取付けた3リットルのフラスコに、GLYを284.50g(3.09モル)、MCAを2173.65g(16.70モル)、触媒XとしてDABCOを12.23g(0.11モル)、触媒Yとしてアクリル酸亜鉛を45.24g(0.22モル)、MEHQを1.49g(仕込んだ原料の総重量に対して675ppm)、TEMPOLを0.074g(仕込んだ原料の総重量に対して29ppm)、DBHAを0.47g(仕込んだ原料の総重量に対して186ppm)、純水を12.69g(0.70モル)仕込み、含酸素ガス(酸素を5容量%、窒素を95容量%)を液中にバブリングさせた。
反応液温度105〜130℃の範囲で加熱撹拌させながら、反応系内の圧力を20.0×10-3〜101×10-3MPa(150〜760mmHg)の範囲で調整し、エステル交換反応の進行に伴い副生したMELとMCAの混合液を精留塔及び冷却管を介して反応系から抜出したところ、反応開始から10時間で重合が発生し、精製処理物の取得に至らなかった。
本発明の製造方法によれば、着色が少ない高品質の(メタ)アクリレートを製造することができる。
本発明の方法により得られた(メタ)アクリレートは、塗料、インキ、接着剤、フィルム、シート、光学レンズ等の光学用途、充填剤及び成形材料等の組成物の主成分、架橋成分及び反応性希釈剤等として各種工業用途に好適に使用できる。

Claims (15)

  1. 下記第1工程〜第3工程を含み、下記第1工程〜第3工程を順次実施する(メタ)アクリレートの製造方法。
    ○第1工程
    エステル交換触媒の存在下、アルコールと1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をエステル交換反応させ(メタ)アクリレートを製造する工程
    ○第2工程
    第1工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物中のエステル交換触媒を除去する工程
    ○第3工程
    第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物に、ヒドロキシルアミン又はヒドラジンを添加する工程
  2. 前記第3工程で使用するヒドロキシルアミンが下記一般式(1)で表される化合物であるか又はヒドラジンが下記一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
    Figure 2018164226
    〔上記一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基を意味する。R1及びR2は、同一でも異なっていても良い。〕
    Figure 2018164226
    〔上記一般式(2)において、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基で置換された炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基を意味する。R3及びR4は、同一でも異なっていても良い。〕
  3. 前記第3工程が、第2工程で得られた(メタ)アクリレートを含む反応生成物と活性炭との接触処理をさらに含む請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  4. 前記第1工程において、重合禁止剤としてN−オキシル化合物を添加する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  5. 前記N−オキシル化合物が、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルからなる群から選択される1種以上の化合物である請求項4に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  6. 前記第1工程において、重合禁止剤として、N−オキシル化合物と、さらにフェノール系化合物又は/及びフェノチアジンを併用する請求項4又は請求項5に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  7. 前記一般式(1)で表されるヒドロキシルアミンが、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジプロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジブチルヒドロキシルアミン、N,N−メチルエチルヒドロキシルアミン、N,N−エチルプロピルヒドロキシルアミン、N,N−プロピルブチルヒドロキシルアミン、N,N−ジデシルヒドロキシルアミン、N,N−ジフェニルヒドロキシルアミン、及びN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンからなる群から選択される1種以上の化合物である請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  8. 前記一般式(1)で表されるヒドロキシルアミンが、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン又はN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンである請求項7に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  9. 前記一般式(2)で表されるヒドラジンが、ヒドラジン一水和物である請求項2〜請求項8のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  10. 前記第1工程で使用されるアルコールが、3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールである請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  11. 前記3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールが、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリエタノールアミン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物、D−ソルビトール及びポリグリセリンからなる群から選択される1種以上の化合物である請求項10に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  12. 前記第1工程で使用される1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及び2−メトキシエチルアクリレートからなる群から選択される1種以上の化合物である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  13. 前記第1工程で使用されるエステル交換触媒が、下記触媒X及びYを併用することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
    触媒X:アザビシクロ構造を有する環状3級アミン又はその塩若しくは錯体、アミジン又はその塩若しくは錯体、ピリジン環を有する化合物又はその塩若しくは錯体、及びホスフィン又はその塩若しくは錯体からなる群から選ばれる1種以上の化合物。
    触媒Y:亜鉛を含む化合物。
  14. 前記触媒Yが、有機酸亜鉛及び/又は亜鉛ジケトンエノラートである請求項13に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
  15. 前記触媒Xがトリエチレンジアミンである請求項13又は請求項14に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
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