JP4628219B2 - ポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物及びその製造方法 - Google Patents
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このような透明樹脂の原料として用いられる(メタ)アクリル酸エステル化合物の1つに、構造中にポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物がある。ポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物から製造された透明樹脂を利用した製品として、例えば、エチレンオキサイドで変性されたビスフェノールAのジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールのエステルジアクリレート、及び、フェノキシ(エトキシ)エチルアクリレートを特定の割合で含む紫外線硬化型樹脂によるレンズ部を有するレンズシートが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この紫外線硬化型樹脂は、芳香族炭化水素構造を有しているため、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対する耐光性のレベルが充分なものではなかった。
また、本発明者等は、このようにして製造されたポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物において、アルカリ(土類)金属分の含有割合、及び、ブレンステッド酸及びその塩の含有割合が一定量以下となるようにすると、光による劣化が効果的に防止され、様々な産業分野において利用可能な透明樹脂の原料としてより好適に用いることができるものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
該ポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法は、(i)アルカリ(土類)金属水酸化物を触媒として用いてアルコールにアルキレンオキサイドを付加させてアルキレンオキサイド付加アルコールを製造する工程、(ii)該アルカリ(土類)金属水酸化物を除去する工程、(iii)該アルキレンオキサイド付加アルコールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応によりポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する工程、及び、(iv)エステル交換反応系から軽沸分を除去する工程をこの順に含んでなるポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法である。
本発明はまた、下記一般式(1);
以下に本発明を詳述する。
またアルコールに付加するアルキレンオキサイドの数としては、1〜100が好ましい。より好ましくは、1.5〜50である。更に好ましくは、2〜20モルである。上記一般式(1)におけるnは、アルキレンオキサイド付加アルコールを製造する工程において、アルコールに付加するアルキレンオキサイドの数によって決まることになる。
上記一般式(1)において、Xで表される有機残基部分の構造、及び、mの値は、使用するアルコールによって決まることになる。
溶媒の使用量としては、反応の総仕込み量100質量部に対して30〜150質量部が好ましい。より好ましくは、40〜120質量部である。更に好ましくは、50〜110質量部である。
なお、アルキレンオキサイド付加アルコールが含有するアルカリ(土類)金属水酸化物の含有割合、及び、後述するポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が含むアルカリ(土類)金属分、ブレンステッド酸及びその塩の含有割合は、誘導結合プラズマ分析(株式会社リガク製・CIROS 120:Inductively Coupled Plasma)等により測定することができる。
上記濾過助剤の使用量としては、固液分離前の液100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜1.5質量部である。
なお、濾過処理速度は、濾面の大きさ、減圧度又は加圧度、処理湿度にもよるが、100kg/m2・hr以上であることが好ましい。より好ましくは、300kg/m2・hr以上であり、更に好ましくは、500kg/m2・hr以上である。
これらアルカリ(土類)金属水酸化物のイオン交換のために使用される化合物の使用量としては、アルカリ(土類)金属水酸化物100質量部に対して、100質量部以上が好ましく、また、10000質量部以下が好ましい。より好ましくは、400質量部以上であり、また、5000質量部以下である。
重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル類に対して、0.0001質量%以上が好ましく、0.0002質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上が更に好ましく、0.001質量%以上が特に好ましい。また、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。上記重合禁止剤添加量の範囲が、収率の点、重合抑制の点及び経済性の点で好ましい。
溶媒の使用量としては、反応の総仕込み量100質量部に対して1〜70質量部が好ましい。より好ましくは、5〜50質量部である。更に好ましくは、10〜30質量部である。
分子状酸素濃度の設定は、分子状酸素又は空気等の分子状酸素を含むガスと、窒素やアルゴン等の不活性ガスとを、反応器に別々に供給したり、予め混合して供給したりすることにより行われる。
なお、軽沸分とは、エステル交換反応系に存在するポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物よりも低い沸点を有する化合物を意味し、上記副生アルコール、原料(メタ)アクリル酸エステル、共沸溶媒等が含まれる。
なお、本発明のポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物は、アルカリ(土類)金属分の含有割合が300ppm以下であり、かつブレンステッド酸及びその塩の含有割合が1ppm以下となるように調整されたものであれば、製造方法は特に制限されないが、上述した本発明のポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法によって製造されることが好ましい。
なお、ハーゼン色数は、JIS K0071−1:1998に準じて測定することができる。
<アルキレンオキサイド付加工程>
攪拌装置、温度計、アルキレンオキサイド導入管、並びに、窒素ガス導入管を備えたオートクレーブに、ネオペンチルグリコール 1042g、トルエン1042g、及び、水酸化カリウム2.8gを仕込み、攪拌下に90℃まで昇温した後、反応容器内を3回窒素置換した。次に、窒素を吹き込んで反応容器内の圧力を3.2kgf/cm2(1kgf/cm2=9.80665×104Pa)とした。次に、エチレンオキサイド1762gを、反応途中、発熱により温度が90℃以上にならないように注意し、また反応容器内圧力が8kgf/cm2以上にならないように注意しながら、約4時間かけて投入し、攪拌を行った。エチレンオキサイド投入完了後、5時間90℃で熟成した後、常温まで降温し、ポリエチレンオキサイド付加アルコールのトルエン溶液を得た。
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えたフラスコに、得られたポリエチレンオキサイド付加アルコールのトルエン溶液1000g、キョーワード600BUP−S(協和化学製) 18.7gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で95℃で2時間攪拌した。次に、ろ過助剤としてシリカ#600H(中央シリカ社製)7.3gを添加し、攪拌混合後、加圧ろ過器にて温度80℃、圧力1kgf/cm2にてろ布を用いてろ過したところ清澄なろ液が得られた。得られたろ液からトルエンを加熱、減圧によって除去し、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)を得た。ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)に含まれるカリウム原子の含有率を誘導結合プラズマ分析(株式会社リガク製・CIROS 120:Inductively Coupled Plasma;以下ICPと略すことがある)によって測定したところ、5ppmであった。
攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、液体添加ラインおよびオルダーショウ型精留塔(10段)を備えた3Lガラス製装置に、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)695.3g、メタクリル酸メチル640.8g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.070g、ジブチルスズオキサイド10.4gを添加し、攪拌混合した。ガス吹込みラインより7容量%酸素(窒素バランス)を液相部に吹込みながらオイルバスにより還流温度まで昇温した。塔頂部温度がメタクリル酸メチル/メタノールの共沸温度になるまで全還流し、共沸温度に達した時点を反応開始とした。塔頂部温度が共沸温度を維持するように還流比を調節しながら8時間反応を続けた。なお、副生するメタノールはメタクリル酸メチルとの共沸混合物として反応系外へ留去させ、共沸混合物中のメタクリル酸メチルと同質量のメタクリル酸メチルを反応開始から反応終了まで連続的に反応系へ添加した。
反応中、1質量%2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールのメタクリル酸メチル溶液を、上昇蒸気量に対して2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールが200質量ppmとなるよう塔頂部より連続的に添加した。
反応終了時にNMR(Varian社製・Unity Plus 400MHz)により分析した結果、原料であるポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)の水酸基の97%がエステル化していることが確認された。
攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、留出装置(留出ライン、コンデンサー、受器)および減圧装置を備えた2Lガラス製装置に、エステル化工程により得られた反応液を添加し、7容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に吹込みながら攪拌混合し、オイルバスにより内温を80℃に調整した。減圧装置により667hPaから徐々に67hPaまで減圧し、原料メタクリル酸メチルおよび副生メタノールを留去した。
この間、1質量%2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールのメタクリル酸メチル溶液を、上昇蒸気量に対して、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールが200質量ppmとなるようコンデンサーへ連続的に添加した。
得られたエステル化物のハーゼン単位色数をJIS K0071−1:1998に準じて測定したところ、300であった。
このエステル化物100部に光重合開始剤であるダロキュアー1173(チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.2部を入れ、ガラス板上の1mm厚のシリコーンゴムパッキンによって囲まれた内側に流し込んだ。これに厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルムを被せ、超高圧水銀ランプにより2J/cm2のUV照射を行って硬化させ、厚さ1mmの透明樹脂板を得た。
得られた透明樹脂板を超エネルギー照射試験機(スガ試験機社製)を用いて、光照射(照射強度900W/m2、波長295〜450nm、湿度70%Rh)を100時間連続して行った。光照射前後のイエローインデックスの差(ΔYI)を式差計(日本電色社製、シグマ90システム)を用いて透過モードで測定したところ、1.2であった。
アルカリ(土類)金属除去工程において、キョーワード600BUP−S(協和化学製)を 0.72g、シリカ#600H(中央シリカ社製)0.28gとする以外は実施例1と同様の操作を行いポリエチレンオキサイド付加アルコール(2)を得た。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(2)に含まれるカリウム原子の含有率は、46ppmであった。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)の代わりにポリエチレンオキサイド付加アルコール(2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエステル化工程を行ったところ、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(2)の水酸基のエステル化率は、97%であった。また、得られたエステル化物のハーゼン単位色数は、130であった。更に、得られたエステル化物を用いて実施例1と同様にして透明樹脂板を得、光照射後のΔYIを測定したところ、ΔYIは、1.0であった。
アルカリ(土類)金属除去工程において、キョーワード600BUP−S(協和化学製)を 0.32g、シリカ#600H(中央シリカ社製)0.13gとする以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(3)を得た。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(3)に含まれるカリウム原子の含有率は、111ppmであった。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)の代わりにポリエチレンオキサイド付加アルコール(3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエステル化工程を行ったところ、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(3)の水酸基のエステル化率は、97%であった。また、得られたエステル化物のハーゼン単位色数は、160であった。更に、得られたエステル化物を用いて実施例1と同様にして透明樹脂板を得、光照射後のΔYIを測定したところ、ΔYIは、1.1であった。
アルカリ(土類)金属除去工程において、キョーワード600BUP−S(協和化学製)を 0.2g、シリカ#600H(中央シリカ社製)0.08gとする以外は実施例1と同様の操作を行いポリエチレンオキサイド付加アルコール(4)を得た。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(4)に含まれるカリウム原子の含有率は、230ppmであった。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)の代わりにポリエチレンオキサイド付加アルコール(4)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエステル化工程を行ったところ、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(4)の水酸基のエステル化率は、97%であった。また、得られたエステル化物のハーゼン単位色数は、250であった。更に、得られたエステル化物を用いて実施例1と同様にして透明樹脂板を得、光照射後のΔYIを測定したところ、ΔYIは、1.2であった。
実施例1と同様の操作により得られたポリアルキレンオキサイド付加アルコールのトルエン溶液1000gに対して、弱酸性陽イオン交換樹脂ダイヤイオンWK−10(三菱化学社製)4gを添加し、25℃で一晩放置した。
これをろ過した後、得られたろ液からトルエンを加熱、減圧によって除去し、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(5)を得た。その他の工程は実施例(1)と同様に行った。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(5)に含まれるカリウム原子の含有率は、121ppmであった。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)の代わりにポリエチレンオキサイド付加アルコール(5)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエステル化工程を行ったところ、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(5)の水酸基のエステル化率は、97%であった。また、得られたエステル化物のハーゼン単位色数は、170であった。更に、得られたエステル化物を用いて実施例1と同様にして透明樹脂板を得、光照射後のΔYIを測定したところ、ΔYIは、1.2であった。
実施例1と同様の操作により得られたポリエチレンオキサイド付加アルコールのトルエン溶液からトルエンを加熱、減圧によって除去し、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(6)を得た。得られたポリエチレンオキサイド付加アルコール(6)に含まれるカリウム原子の含有率は690ppmであった。
ポリエチレンオキサイド付加アルコール(1)の代りにポリエチレンオキサイド付加アルコール(6)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエステル化工程を行なったところ、ポリエチレンオキサイド付加アルコール(6)の水酸基のエステル化率は97%であった。また、得られたエステル化物のハーゼン単位色数は1000以上であった。更に得られたエステル化物を用いて実施例1と同様にして透明樹脂板を得、光照射後のΔYIを測定したところ、ΔYIは2.5であった。
Claims (5)
- 下記一般式(1);
[CH2=CR−COO−(AO)n−]m−X (1)
(式中、AOは、同一又は異なって、アルキレンオキサイド残基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、有機残基を表す。nは、1以上の正数である。mは、1以上の正数である。)で表されるポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法であって、
該ポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法は、(i)アルカリ(土類)金属水酸化物を触媒として用いてアルコールにアルキレンオキサイドを付加させてアルキレンオキサイド付加アルコールを製造する工程、(ii)該アルカリ(土類)金属水酸化物を除去する工程、(iii)該アルキレンオキサイド付加アルコールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応によりポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する工程、及び、(iv)エステル交換反応系から軽沸分を除去する工程をこの順に含んでなり、
該アルカリ(土類)金属水酸化物を除去する工程は、アルキレンオキサイドの付加反応により得られたアルキレンオキサイド付加アルコールから、吸着及び/又はイオン交換によりアルカリ(土類)金属を除去する工程である
ことを特徴とするポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法。 - 前記アルキレンオキサイド付加アルコールは、アルカリ(土類)金属水酸化物を除去した後のアルカリ(土類)金属分の含有割合が300ppm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法。 - 前記エステル交換反応によりポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する工程は、アルキレンオキサイド付加アルコールの有する水酸基の反応率が85モル%以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法。 - 前記エステル交換反応によりポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を製造する工程において、重合禁止剤としてN−オキシル化合物を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法。
- 前記エステル交換反応は、テトラ(2−エチルヘキサノキシ)チタン、ジルコニアアセチルアセトナート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルスズジアセテート及びジブチルスズジラウレートからなる群より選択される少なくとも1種を触媒として用いる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造方法。
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