JPWO2012046272A1 - レトルト米飯の製造方法及びレトルト米飯 - Google Patents

レトルト米飯の製造方法及びレトルト米飯 Download PDF

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Abstract

レトルト殺菌処理に至る前処理時間を短縮し生産効率を向上させるとともに生産工程のライン化が可能なレトルトパウチ米飯の製造方法を提供する。生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となし、該米粒を冷却することなく直ちに所定量の炊飯液とともに容器に充填して密封し、前記米粒を炊飯液に浸漬・吸水させて当該米粒の吸水状態及び容器内の炊飯液の量を調整し、レトルト殺菌することを特徴とする。

Description

本発明は、レトルトパウチ等の耐熱容器を用いたレトルト米飯の製造方法及び該方法により製造されるレトルト米飯に関する。
近年、熱湯に浸漬するか、電子レンジで加温するだけで食べることができる各種レトルト米飯が市販されており、該レトルト米飯の製造方法も数多く提案されている(例えば、特許文献1〜5を参照。)。
特許文献1には、生米と炊飯のための水溶液との体積合計量に対し25〜40%の含気量とされた密封パウチを、品温が70〜90℃において1〜2分毎に回転速度1〜15rpmで半回転させて所定温度まで昇温する加熱昇温工程と、該所定温度以上で保持する加熱殺菌工程と、冷却工程とを順次行ってレトルト米飯を製造する方法が記載されている。
当該レトルト米飯の製造方法は、炊飯時におけるパウチ内の水分分布を均一に調整でき、得られる米の形状が崩れてモチ状になることを防止し、しかも米飯をパウチ内に均一に、且つ容易に分散させることを可能にするものである。
特許文献2には、精白米を常温の水で洗米した後、該精白米を水に浸漬することなく、常温の水を米粒の周囲に通過させ当初の水分含量約10〜24%を維持させたまま水切りし、次いで炊飯直前の米に対して0.7〜1.5倍量の炊き水を添加して常圧炊飯し、炊飯後、無菌設備中でガスバリヤー性耐熱容器中に充填し完全密封してレトルト処理を行い加工米飯を製造する方法が記載されている。
当該方法によれば、米粒が原形を留めており、澱粉質が流出してベトついたりせず、ドロドロになったりせず、湯や調味液が濁ったりせず、軟らかくなり過ぎて糊のような食感にならず、食すると適度な歯応えを有する、安価で食味・食感に優れる長期保存可能な加工米飯を容易に低コストで製造することができる。
特許文献3には、生米に対して100〜250℃の温度で10〜240秒間蒸煮処理を行い米の表面に0.1〜1.5mmの糊化層を形成し、その後冷却しレトルト処理するレトルト粥の製造方法が記載されている。
当該方法によれば、割れた米飯や煮崩れている米飯の発生を減少させ、かつ、ぬか臭や古米臭などの好ましくない臭いを抑制することができ、品質の改良されたレトルト粥を製造することができる。
特許文献4には、生米を洗米・浸漬等の前処理をせず、蒸煮等の方法で表面のみ一部糊化させた後冷却し、容器に充填してレトルト殺菌するレトルト米飯の製造方法が記載されている。
当該方法によれば、粘り気の少ない食感の洋風レトルト米飯を製造することができる。
特許文献5には、洗米後、含水させた米を水切りし、あらかじめ加熱した後、さらにこの処理米を適切な量の水と共に容器に充填して密封し、反転吸水させた後、レトルト調理殺菌する米飯レトルト食品の製造方法が記載されている。
当該方法によれば、品質の不均一性がなく、食味、食感に優れ、保存性の高い米飯レトルト食品を製造することができる。
しかしながら、上記特許文献1〜3及び5に記載された方法は、レトルト殺菌に至る前工程において洗米や吸水処理に時間を要するものであり生産効率上問題がある。また、上記特許文献3及び4に記載された方法は、蒸煮処理後の米を冷却する工程を設ける必要があり生産効率上問題がある。
一方、特許文献2に記載された製造方法は炊飯後の粘りのある米飯を、特許文献3に記載された方法は水に浸漬した後の米を、それぞれ容器やパウチに充填するものであるが、該容器やパウチへの充填に際し、いずれも結着しやすくなった米を計量する必要があり、生産工程をライン化する上で問題がある。また、特許文献5に記載された方法は、水洗等の工程を経て15〜40%の水分含量に吸水膨潤させ加熱処理した後の米を容器に充填するものであるが、当該処理後の米は結着しやすいため、容器への充填に際し計量が不安定になり、生産工程をライン化する上で問題がある。
特許第3250953号公報 特許第4300161号公報 特開2006−180737号公報 特開平6−303926号公報 特公昭62−5574号公報
そこで、本発明は、レトルト殺菌処理に至る前処理時間を短縮し生産効率を向上させるとともに生産工程のライン化が可能なレトルト米飯の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、米飯の種類に応じ適切な食感をもつレトルト米飯を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のレトルト米飯の製造方法は、生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となし、該米粒を冷却工程を経ることなく直ちに所定量の炊飯液とともに容器に充填して密封し、前記米粒を炊飯液に浸漬・吸水させて当該米粒の吸水状態及び容器内の炊飯液の量を調整し、レトルト殺菌することを特徴とするものである。
ここで、本発明において炊飯液とは、米粒とともに容器内に充填される具材などの固形物、水及び調味液などの液状物のうち、少なくとも液状物を含むものである。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、水分量9%以上、13%以下の前記生米に対し0.07〜0.38MPaの圧力及び115〜150℃の温度条件で1〜5分間加圧加熱蒸気処理を行い、前記米粒の表層部に0.3〜0.8mmのアルファ化層を形成することが好ましい。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、前記密封後の容器を20〜40分間浸漬・反転吸水させることが好ましい。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、前記浸漬・吸水に際し、前記容器を数回乃至十数回反転させると共に、該容器を60〜80℃の温風で加温することが好ましい。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、前記容器がパウチであり、前記浸漬・吸水に際し、前記パウチ内において内容物が移動・反転できるよう45〜70%のヘッドスペースを確保することが好ましい。
本発明のレトルト米飯は、生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となし、該米粒を冷却することなく直ちに所定量の炊飯液とともに容器に充填して密封し、前記米粒を炊飯液に浸漬・吸水させて該米粒の吸水状態及び容器内の炊飯液の量により、レトルト殺菌により炊き上がる米飯のアルファ化の深度及び汁気の度合いを調整したことを特徴とするものである。
本発明のレトルト米飯の製造方法によれば、生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となしたため、容器への充填密封後における米粒への炊飯液の吸水・浸透速度が速く、吸水量も増加する。また、前記加圧加熱蒸気処理により中心部が多孔状を呈するような水分量が通常程度又は通常よりも低い生米を加圧加熱蒸気処理するため、該処理後の米粒が結着することがなく容器への充填に際し計量が容易となる。その結果、レトルト殺菌に至る前処理時間を短縮し生産効率を向上させることができるとともに、生産工程のライン化も可能となる。
また、本発明のレトルト米飯の製造方法によれば、加圧加熱蒸気処理後における米粒の吸水量が増加することから、米粒とともに容器に充填する炊飯液の量や、容器への充填密封後における浸漬・吸水にかける時間等を調整することにより、炊き上がる米飯の種類に応じ食感を自由に調整できる。
特に、本発明のレトルト米飯の製造方法によれば、加圧加熱蒸気処理により水分量が通常程度又は通常よりも低い生米が米粒中心部において多孔状を呈し、該米粒中心部まで吸水することができるため、従来、主に粘り気の少ない食感の米飯の製造に使用されていた水分量が低い長粒種を原料米とする場合であっても、従来の長粒種の場合に比して粘りのある米飯を製造することができる。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、生米の加圧加熱蒸気処理時における圧力、温度及び処理時間の各種条件を適宜設定することで、米粒表層部に形成されるアルファ化層の厚みや米粒中心部に現れる多孔状態を調整することができる。
水分量9%以上13%以下の生米を原料米として用い、例えば、加圧加熱蒸気処理下において米粒表層部に形成されるアルファ化層を0.3mm程度に薄く形成するとともに中心部に少量の多孔状態を呈するものとすれば、米粒とともに容器に充填する炊飯液を少量とし、かつ容器への充填密封後における浸漬・吸水にかける時間を短く設定することで、粘り気の少ない食感の米飯を短時間で効率よく製造できる。
一方、水分量9%以上13%以下の生米を原料米として用い、例えば、加圧加熱蒸気処理下において米粒表層部に形成されるアルファ化層を0.8mm程度に厚く形成するとともに中心部に多くの多孔状態を呈するものとすれば、上記粘り気の少ない食感の米飯を製造する場合と比べ、米粒とともに容器に充填する炊飯液を増量し、かつ容器への充填密封後における浸漬・吸水にかける時間を若干長く設定することで、粘りのある米飯を効率よく製造できる。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、密封後の容器を20〜40分間、浸漬・反転吸水させることで、米粒内に均一に、かつ米飯の種類に応じた量の炊飯液を吸水・含浸させることができる。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、浸漬・吸水に際し、容器を数回乃至十数回反転させることで、米粒内に均一に炊飯液を吸水・含浸させることができる。また、前記容器を60〜80℃の温風で加温することで、前記吸水・含浸にかかる時間を短縮することができるとともに、レトルト殺菌において米粒中心部の温度を早期に所定温度に昇温することが可能となる。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、前記容器がパウチであれば、前記浸漬・吸水に際し、前記パウチ内において内容物が移動・反転できるよう45〜70%のヘッドスペースを確保することで、該パウチ内において原料米や固形物への均一な吸水・浸透が促進される。
本発明のレトルト米飯は、容器内における米粒の吸水状態や、容器内で米粒に吸水されずに残留する炊飯液の量により、レトルト殺菌により炊き上がる米飯のアルファ化の深度や汁気の度合いを調整した、米飯の種類に応じた適切な食感をもつ米飯である。
本発明の実施の形態におけるレトルト米飯の製造工程のフロー図。 加圧加熱蒸気処理前における米粒の外観写真。 加圧加熱蒸気処理後における米粒の外観写真。 加圧加熱蒸気処理前における米粒の断面写真。 図4に示す米粒断面の中心部の拡大写真。 加圧加熱蒸気処理後における米粒の断面写真。 図6に示す米粒断面の中心部の拡大写真。 加圧加熱蒸気処理時と非処理時における、米粒の浸漬水への浸漬時間と米粒の含水量との関係を示すグラフ。
本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるレトルト米飯の製造工程のフロー図を示す。
本発明の実施の形態におけるレトルト米飯は、加圧加熱蒸気処理工程(S1)、袋詰め工程(S2)、浸漬・吸水工程(S3)、レトルト殺菌工程(S4)の各工程を経て製造される。
(1)原料米
本発明では、原料米として、ジャポニカ米(短粒種、日本型)、インディカ米(長粒種、インド型)、ジャバニカ米(大粒種、ジャワ型)のいずれの種のものも用いることができる。また、原料米として無洗米又は湿式研磨米を使用することが好ましいが、通常の精白米を使用しても良い。これら原料米には、水分量が通常程度又は通常よりも低い15%未満、好ましくは9〜14%、より好ましくは9〜13%、さらにより好ましくは11〜12%のものを用いる。
ここで、無洗米とは、精白米に15%以下の水分又は除糠用粘着物質を添加した後、精白米の表面の研磨を行い、該表面の微細溝に残存する糠を除去した米をいう。また、湿式研磨米とは、1%以下の水を添加して研米し、精白米に残存する糠の大半を除去した米をいう。無洗米や湿式研磨米を使用すると、洗米により発生する排水の汚水処理設備が必要ない。
(2)加圧加熱蒸気処理工程(S1)
次に、加圧加熱釜(日本バイオコン株式会社製、蒸気循環式調理殺菌装置100−1B)を用い、前記原料米を圧力0.07〜0.38MPa、温度115〜150℃の加圧加熱蒸気下で1〜5分間処理する。
当該処理により、前記原料米は表面から0.3〜0.8mmの表層部のみアルファ化され、中心部には微小なクラックが生じるとともに多孔状を呈する。なお、原料米の水分量が15%以上の場合、米粒は中心部付近までアルファ化され、上記のように中心部が多孔状態となりにくい。
ここで、図2は加圧加熱蒸気処理前における米粒の一例であってその外観写真を、図3は加圧加熱蒸気処理後における米粒の一例であってその外観写真をそれぞれ示す。
両者の比較から、処理後の米粒は、表層部が透明で中心部が白濁していることが分かる。
図4は加圧加熱蒸気処理前における米粒の一例であって、その断面の顕微鏡(日本電子データム株式会社製、JSM−6461)による写真(倍率50倍)、図5は図4に示す米粒断面の中心部を拡大した顕微鏡(日本電子データム株式会社製、JSM−6461)による写真(倍率750倍)をそれぞれ示す。また、図6は加圧加熱蒸気処理後における米粒の一例であって、その断面の顕微鏡(日本電子データム株式会社製、JSM−6461)による写真(倍率50倍)、図7は図6に示す米粒断面の中心部を拡大した顕微鏡(日本電子データム株式会社製、JSM−6461)による写真(倍率750倍)をそれぞれ示す。
図4と図6の比較から、加圧加熱蒸気処理前の米粒は、表層部と中心部とで断面の様子が大きく異ならないのに対し、処理後の米粒は、表層部がアルファ化(糊化)し、中心部に放射状の微小なクラックが生じていることが分かる。当該処理後の米粒断面の特徴は、表層部が透明で中心部が白濁している前記図3に示す米粒の外観写真の特徴と一致する。また、図5と図7の比較から、当該処理後の米粒は中心部が多孔の状態を呈していることが分かる。
本発明は、水分量が通常よりも低い原料米を使用し、かつ洗米・浸漬処理をしておらず、加圧加熱蒸気処理による水分量の上昇も4〜6%にとどまるため、当該処理後において米粒同士は結着しない。また、仮に結着したとしても簡易な解し装置で容易に単粒化できる。したがって、後の袋詰め工程(S2)において、充填に際しての原料米の計量が容易となり、生産工程をライン化する上で有利である。
(3)袋詰め工程(S2)
次に、計量包装機等を用い、前記加圧加熱蒸気処理工程(S1)を経た後の原料米を計量して袋状のレトルトパウチ内に充填する。この時、米飯の種類に応じ、具材などの固形物、水及び調味液などの液状物も併せて前記パウチ内に充填し原料米と混合して密封する。前記液状物の温度を60〜80℃とすることで、原料米や固形物への吸水・浸透が促進される。
当該工程では、原料米や固形物に液状物を均一に吸水・浸透させることを目的として、レトルトパウチ内への前記充填物の充填順序を自由に選択することができる。
また、密封後のレトルトパウチ内において原料米や固形物への均一な吸水・浸透を促進させるため、後の浸漬・吸水工程(S3)で内容物が移動・反転できるよう45〜70%、好ましくは60%程度のヘッドスペースを確保する必要がある。当該ヘッドスペースは含気率が高いため、窒素ガス等の不活性ガスで置換することで製品の酸化防止を図ることが好ましい。
なお、前記加圧加熱処理後の原料米は、後の浸漬・吸水工程(S3)における吸水速度及び吸水量を考慮して、冷却工程等を経ることなく、高温状態を維持したまま速やかにレトルトパウチに充填することが望ましい。
(4)浸漬・吸水工程(S3)
前記袋詰め工程(S2)によりレトルトパウチ内に充填され、該パウチ内で液状物に浸漬される原料米は、前記液状物を10分程度で一気に吸水する。そして、その後、更に10〜30分程度時間をかけて該原料米が飽和吸水状態又は所定の吸水状態となるまでテンパリングを行うが、その間、前記パウチを数回乃至十数回、好ましくは4〜6回程度反転させることで当該原料米や固形物に対し液状物をムラなく均一に吸水・含浸させることができる。前記反転手段としては、多段状に横設されたベルト上を搬送されるパウチを順次下段のベルト上へ反転・落下させるようにすると良い。
また、当該工程において、レトルトパウチを60〜80℃の温風で加温すれば、前記テンパリング時間をさらに短縮することができる上、後のレトルト殺菌工程(S4)において米粒中心部の温度を早期に所定温度に昇温することが可能となる。
なお、当該浸漬・吸水工程(S3)の前工程として、連続的又は間欠的に常圧マイクロ波を照射しレトルトパウチを1〜5分間加熱処理する工程を設ければ、米粒中心部の温度が上昇し該中心部が膨張する結果、さらに短時間で原料米に液状物を吸水・含浸させることが可能となる。連続的に常圧マイクロ波を照射する工程を採用すれば、生産工程をライン化する上で有利である。
ここで、図8は加圧加熱蒸気処理時と非処理時における、米粒の浸漬水への浸漬時間と該米粒の含水量との関係のグラフを示す。
米粒には水分量12.7%の長粒種(スペイン産プンタル米(Puntal))を用いた。加圧加熱蒸気処理は、レトルト釜(日本バイオコン株式会社製、蒸気循環式調理殺菌装置100−1B)を用い、圧力0.18MPa、温度130℃の加圧加熱蒸気下で5分間行った。そして、当該処理した米粒を直ちに60℃及び22℃の水に浸漬した場合と、処理しない米粒を60℃の水に浸漬した場合の各米粒の含水量を時間の経過とともに測定した。
図8から、加圧加熱蒸気処理をした米粒は、処理をしない米粒と比較して吸水速度が速く、かつ吸水量も著しく増加することが分かる。加圧加熱蒸気処理した米粒は、図7に示すように、中心部が多孔状態を呈するため、表層に形成されたアルファ化層を通過した水を、前記多孔状を呈する中心部に対し短時間で効率よく、かつ多量に吸収・含浸するものと考えられる。
また、図8から、加圧加熱蒸気処理をした米粒は、浸漬する水の温度が高い程、吸水速度が速く、かつ吸水量も増加することが分かる。
(5)レトルト殺菌工程(S4)
レトルト殺菌工程における加熱処理条件は、常法に則り、食品中心部の温度を120℃とした状態で4分間相当の加熱処理を行うか、これと同等以上の効力を有する条件、例えば食品中心部の温度を115℃とした状態で35分程度加熱処理を行えばよい。
当該工程において、米粒中心部を前記所定温度に昇温することにより、前記浸漬・吸水工程(S3)において所定の吸水状態とされた米粒は中心部までアルファ化される。このとき、前記アルファ化の深度は米粒の前記吸水状態により異なる。米粒が飽和吸水状態の場合、当該米粒は中心まで完全にアルファ化される。
(6)レトルト米飯
本発明者らは、前記加圧加熱蒸気処理工程(S1)における処理により、水分量が通常程度又は通常よりも低い原料米が中心部に多孔状態を呈することを新たに見出し、それにより吸水速度が速く、かつ吸水量も著しく増加する性質を有することを突き止め、当該性質に着目して鋭意検討を行い、前記各工程(S1)〜(S4)からなる製造方法を発明するに至ったものである。
そして、前記各工程(S1)〜(S4)からなる本発明の実施の形態におけるレトルト米飯の製造方法によれば、前記袋詰め工程(S2)における具材などの固形物、水及び調味液などの液状物のレトルトパウチ内への充填量、並びに前記浸漬・吸水工程(S3)におけるテンパリング時間等の調整により、パウチ内における米粒の吸水状態や、パウチ内で米粒に吸水されずに残存する液状物の量を調整することで、前記レトルト殺菌工程(S4)により炊き上がる米飯のアルファ化の深度や汁気の度合いを調整することができ、米飯の食感を自由に調整することができる。
したがって、本発明の実施の形態におけるレトルト米飯の製造方法によれば、粒感があって粘りがあり、内軟外硬で芯まで完全にアルファ化された米飯(粘りのある米飯)や、粘り気の少ない食感の米飯(芯有り米飯)を製造することができ、白米、お粥、雑炊、五目ご飯、炊き込みご飯、カレー、クッパ、ピラフ、炒飯、パエリア、リゾットなど、いろいろな種類の米飯を製造することが可能である。
特に、本発明の実施の形態におけるレトルト米飯の製造方法によれば、従来、主に粘り気の少ない食感の米飯の製造に使用されていた水分量が低い長粒種を原料米とする場合であっても、従来の長粒種の場合に比して粘りのある米飯を製造することができる。
本発明の実施の形態におけるレトルト米飯の製造方法は、生米の加圧加熱蒸気処理時における圧力、温度及び処理時間の各種条件を適宜設定することで、米粒表層部に形成されるアルファ化層の厚みや米粒中心部に現れる多孔状態を調整することができる。
水分量が通常程度又は通常よりも低い15%未満、好ましくは水分量9%以上13%以下の生米を原料米として用い、例えば、加圧加熱蒸気処理下において米粒表層部に形成されるアルファ化層を0.3mm程度に薄く形成するとともに中心部に少量の多孔状態を呈するものとすれば、米粒とともに容器に充填する液状物を少量とし、かつ容器への充填密封後における浸漬・吸水にかける時間を短く設定することで、粘り気の少ない食感の米飯を短時間で効率よく製造できる。
一方、水分量が通常程度又は通常よりも低い15%未満、好ましくは水分量9%以上13%以下の生米を原料米として用い、例えば、加圧加熱蒸気処理下において米粒表層部に形成されるアルファ化層を0.8mm程度に厚く形成するとともに中心部に多くの多孔状態を呈するものとすれば、上記粘り気の少ない食感の米飯を製造する場合と比べ、米粒とともに容器に充填する液状物を増量し、かつ容器への充填密封後における浸漬・吸水にかける時間を若干長く設定することで、粘りのある米飯を効率よく製造できる。
500gの内容量の水分55%のパエリア風レトルト米飯(芯有り米飯)を得るために、水分量12%の長粒種(スペイン産プンタル米(Puntal))の無洗米178gを用い、該無洗米をレトルト釜(日本バイオコン株式会社製、蒸気循環式調理殺菌装置100−1B)内において圧力0.14MPa、温度125℃の加圧加熱蒸気下で2分間処理を行った。
次に、前記処理した無洗米と、60℃の温水96g及びいか、エビ等の固形物68gを含む60℃の調味液226gをレトルトパウチ内に充填密封するとともに60%のヘッドスペースを確保した。
さらに、無洗米及び固形物への水及び調味液の吸水・含浸のため、テンパリングを25分間行い、その間5回の反転を行った。
最後に、常法どおり、22分かけて昇温し、製品の中心を115℃で35分間加温した後、15分かけて降温するレトルト殺菌を行い、パエリア風のレトルト米飯を得た。
パウチを開封し米飯を試食したところ、粘り気の少ない食感のパエリアを製造できることが確認できた。
500gの内容量の水分62%の白飯レトルトパウチ米飯(粘りのある米飯)を得るために、水分量13%の長粒種(スペイン産プンタル米(Puntal))の無洗米218gを用い、該無洗米をレトルト釜(日本バイオコン株式会社製、蒸気循環式調理殺菌装置100−1B)内において圧力0.18MPa、温度130℃の加圧加熱蒸気下で3分間処理を行った。
次に、前記処理した無洗米と、80℃の温水282gをレトルトパウチ内に充填密封するとともに60%のヘッドスペースを確保した。
さらに、無洗米への水の吸水・含浸のため、テンパリングを35分間行い、その間5回の反転を行った。
最後に、常法どおり、22分かけて昇温し、製品の中心を115℃で35分間加温した後、15分かけて降温するレトルト殺菌を行い、白米のレトルト米飯を得た。
パウチを開封し米飯を試食したところ、内軟外硬の粘りのある米飯を得ることが確認できた。
なお、上記本発明の実施の形態におけるレトルト米飯の製造方法は、加圧加熱蒸気処理工程で処理された原料米をレトルトパウチに充填するものであったが、それ以外の耐熱容器に充填する場合でも、同様にレトルト米飯を製造することができる。
本発明のレトルト米飯の製造方法によれば、水分量が通常程度又は通常よりも低い15%未満、好ましくは9〜14%、より好ましくは9〜13%、さらにより好ましくは11〜12%の生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となしたため、容器への充填密封後における原料米への液状物の吸水・浸透速度が速く、吸水量も増加する。そのため、容器内の米粒は、従来に比べ短いテンパリング時間で十分な量の液状物を吸水することができる。また、お粥や雑炊等の汁気のある米飯以外の通常の米飯を製造する場合、テンパリング時間が短くても十分な量の吸水が行われてレトルト殺菌時に容器内の米粒が液状物に漬かった状態にならないので、米粒から澱粉が溶出することがなく、炊き上がりがべたついたご飯にならない。そして、水分量が通常程度又は通常よりも低い15%未満の生米を水に浸漬することなく加圧加熱蒸気処理するため、該処理後の米粒が結着することがなく、容器への充填に際し計量が容易となる。その結果、レトルト殺菌に至る前処理時間を短縮し生産効率を向上させることができるとともに、生産工程のライン化も可能となる。
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜構成を変更できることはいうまでもない。
本発明のレトルト米飯の製造方法は、レトルト殺菌処理に至る前処理時間を短縮し生産効率を向上させることができるとともに生産工程のライン化も可能となり、非常に利用価値の高いものである。

Claims (6)

  1. 生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となし、該米粒を冷却工程を経ることなく直ちに所定量の炊飯液とともに容器に充填して密封し、前記米粒を炊飯液に浸漬・吸水させて当該米粒の吸水状態及び容器内の炊飯液の量を調整し、レトルト殺菌することを特徴とするレトルト米飯の製造方法。
  2. 水分量9%以上、13%以下の前記生米に対し0.07〜0.38MPaの圧力及び115〜150℃の温度条件で1〜5分間加圧加熱蒸気処理を行い、前記米粒の表層部に0.3〜0.8mmのアルファ化層を形成する請求項1記載のレトルト米飯の製造方法。
  3. 前記密封後の容器を20〜40分間、浸漬・反転吸水させる請求項2記載のレトルト米飯の製造方法。
  4. 前記浸漬・吸水に際し、前記容器を数回乃至十数回反転させると共に、該容器を60〜80℃の温風で加温する請求項3記載のレトルト米飯の製造方法。
  5. 前記容器はパウチであり、前記浸漬・吸水に際し、前記パウチ内において内容物が移動・反転できるよう45〜70%のヘッドスペースを確保する請求項4記載のレトルト米飯の製造方法。
  6. 生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となし、該米粒を冷却することなく直ちに所定量の炊飯液とともに容器に充填して密封し、前記米粒を炊飯液に浸漬・吸水させて該米粒の吸水状態及び容器内の炊飯液の量により、レトルト殺菌により炊き上がる米飯のアルファ化の深度及び汁気の度合いを調整したレトルト米飯。
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